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特表2024-537389ALS阻害剤除草剤耐性ベータ・ブルガリス(BETA VULGARIS)突然変異体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ALS阻害剤除草剤耐性ベータ・ブルガリス(BETA VULGARIS)突然変異体
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/02 20180101AFI20241003BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241003BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20241003BHJP
   C12N 15/01 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241003BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   A01M 21/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01H6/02 ZNA
C12N15/54
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/6895 Z
C12N15/01 Z
C12N15/09 100
A01H1/00 A
A01H1/00 Z
A01M21/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522458
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078627
(87)【国際公開番号】W WO2023062184
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202922.7
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275560
【氏名又は名称】カー・ヴェー・エス ザート エス・エー ウント コー. カー・ゲー・アー・アー
【氏名又は名称原語表記】KWS SAAT SE & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Grimsehlstrasse 31, 37574 Einbeck, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ クツァルネッキ
(72)【発明者】
【氏名】マイク ゲアツ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス クリストフ ライン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィット ヴアプス
【テーマコード(参考)】
2B121
4B063
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CC39
2B121EA21
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA18
4B063QQ04
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質を有するベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分に関する。そのような植物は、ALS阻害剤除草剤に対する耐性が増加しているという点で特徴付けられる。本発明はさらに、そのような植物を作出するための方法の他、そのような植物を同定するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質、または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードするポリ核酸を含むか、発現するか、または発現することができる、ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項2】
371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含む、請求項1記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項3】
1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性がある、請求項1または2記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項4】
(スルホン)アミド、例えばスルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホンアニリド、またはトリアゾロピリミジン;イミダゾリノン;およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択される、好ましくは、スルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、イミダゾリノン、およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択される1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性がある、請求項1から3までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項5】
突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードするポリ核酸を含むか、または569位にトリプトファン(W)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項6】
前記ALSがホモ接合またはヘテロ接合である、請求項1から5までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項において定義される突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードする(単離された)ポリ核酸。
【請求項8】
前記ALSタンパク質が、配列番号3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%同一である配列を有する、請求項7記載の(単離された)ポリ核酸。
【請求項9】
請求項7または8記載のポリ核酸を含むベクター。
【請求項10】
請求項7または8記載のポリ核酸、その相補体、またはその逆相補体と特異的にハイブリダイズする(単離された)ポリ核酸であって、好ましくは、前記ポリ核酸がプライマーまたはプローブである、(単離された)ポリ核酸。
【請求項11】
ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するための方法であって、ALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸の存在についてスクリーニングすること、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンの存在についてスクリーニングすることを含む、方法。
【請求項12】
ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための方法であって、植物もしくは植物の一部分のゲノムにおいて、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードするALS対立遺伝子をもたらす内因性ALS対立遺伝子を突然変異させること、または植物もしくは植物の一部分のゲノムにおいて、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性ALSタンパク質をコードするポリ核酸を導入する(および発現させる)ことを含む、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法によって(直接)得られるか、または得ることができるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、またはその子孫。
【請求項14】
ベータ・ブルガリス生育地域における望ましくない植生を防除するための、またはベータ・ブルガリス生育地域における収量を増加させるための方法であって、
a)請求項1から6までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物を植え付けるか、またはベータ・ブルガリス種子を播種するステップ;
b)生育中の植物に、好ましくは、望ましくない植生の生育を阻害するのに十分な用量で、より好ましくは、望ましくない植生を枯死させるのに十分な用量で、1つ以上のALS阻害剤除草剤を適用するステップ;および
c)任意選択的に、生育期中にステップb)を繰り返すステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記望ましくない植生が、とう立ち、雑草ビート、または一年生ビートを含む、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物保護の技術分野に関する。特に、本発明は、アセト乳酸シンターゼ(ALS)除草剤に対して抵抗性または耐性があるベータ・ブルガリス植物またはその部分、ならびにそのような植物もしくは植物の一部分を作出および/または同定するための方法、ならびにそのような植物もしくは植物の一部分を、望ましくない植生を防除するための方法において使用することに関する。
【0002】
発明の背景
アセト乳酸シンターゼ(ALS)は、ロイシン、イソロイシン、およびバリンにつながる分岐鎖アミノ酸生合成経路の必須部分である。ALSは、種を超えて保存されており、細菌、酵母および高等植物の酵素はかなりの配列類似性を示す(Mazur et al. (1987): Isolation and characterization of plant genes-coding for acetolactate synthase, the target enzyme for 2 classes of herbicides. Plant Physiol. 85, 1110-1117)。興味深いことに、動物は分岐鎖アミノ酸経路を有しておらず、したがって、これらのアミノ酸をそれらの食事から摂取しなければならない。ALSは、葉緑体に存在するロイシンおよびバリンの生合成サイクルに関与する一連の酵素の中で最初のものである。シロイヌナズナ(Arabidopsis)では、AtALSは4つの同一のサブユニットからなる四量体を形成する。各サブユニットはチアミンピロリン酸(TPP)を補欠分子族として含み、2分子のピルビン酸からアセト乳酸の生成を触媒する。これによって、TPPは1分子のピルビン酸と反応してヒドロキシエチル-TPPおよびCOを形成する。その後、TPPのヒドロキシエチル残基が2分子目のピルビン酸に転移し、アセト乳酸が形成される。次いで、アセト乳酸はさらにバリンおよびロイシンに処理される。並行して、ALSは、スレオニン、および1分子のピルビン酸を触媒して2-アセト-2-ヒドロキシ酪酸にし、これをさらにイソロイシンに処理する。ALS活性はロイシンおよびバリンによってフィードバック阻害されるが、これらはALSの2つの別々のドメインに相乗的に結合してその活性を阻害する。
【0003】
ALSは、スルホニル尿素、スルフニルアミノ-カルボニル-トリアゾリノン、イミダゾリノン、およびトリアゾロピリミジンの4つのクラスの構造的に無関係な除草剤(HRACクラスB)の標的酵素である。これらの除草剤クラスは50超の市販の除草剤の基礎を成しており、米、トウモロコシ、小麦、および綿花の重要作物の保護に世界的に使用されている。スルホニル尿素およびイミダゾリノンはALSに結合し、その後、ALS活性を阻害する。除草剤のスルホニル基および隣接する芳香環は、酵素の活性部位につながる基質チャネルの入口に位置し、分子の残りの部分はチャネルに挿入される(McCourt et al. (2006): Herbicide-binding sites revealed in the structure of plant acetohydroxyacid synthase. Proe. Natl. Aead. Sei. USA 103, 569-573)。基質、例えばピルビン酸は酵素活性中心に到達できなくなる。これは、ロイシン、バリンおよびイソロイシンの生合成の阻害につながり、除草効果を引き起こす。
【0004】
スルホニル尿素およびイミダゾリノンが除草剤市場に導入されてから間もなく、抵抗性雑草が出現し始めた(www.weedscience.org)。これらの抵抗性はアミノ酸置換をもたらす一点突然変異によるものが最も一般的である。最も包括的に特徴付けられた突然変異はW574(数字はアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)のタンパク質配列に基づく位置を示す)のもので、これが幾つかの植物に除草剤耐性をもたらしている。トリプトファン残基は両クラスの除草剤を酵素に固定する役割を果たし、活性部位チャネルの形状を画定するのに重要である。その結果、この残基のロイシンへの一般的に観察される突然変異が除草剤結合部位の形状を変化させ、幾つかの相互作用の喪失をもたらす(Endo et al. (2013): Herbicide-resistant mutations in acetolactate synthase can reduce feedback inhibition and lead to accumulation of branched-chain amino acids. Food and Nutrition Sei. 4, 31233.)。
【0005】
スルホニル尿素およびイミダゾリノン抵抗性テンサイ(Beta vulgaris L.spp.vulgaris)突然変異体は、SU含有培地上でのテンサイ細胞培養のインキュベーションとその後のカルス誘導および植物修復とによって何年も前に同定されている。この突然変異体系統は、突然変異W569L(アラビドプシス・タリアナタンパク質配列のW574Lに対応)を保有し、スルホニル尿素およびイミダゾリノン、すなわちホラムスルフロンおよびチエンカルバゾン-メチルに対して耐性があり、除草剤抵抗性品種を開発するためのドナー系統として役割を果たす(国際公開第2012/049268号)。前述の除草剤抵抗性を利用したテンサイにおける雑草防除システムは、CONVISO(登録商標)SMART(www.convisosmart.com)というブランドで数年前から商品化されている。そのような除草剤抵抗性テンサイは、最大限の保護を確実にするためにW569Lをホモ接合的に保有している。国際公開第2014/091021号は、テンサイにおける22種類の異なるALS阻害剤除草剤を用いた研究を開示しており、ホモ接合状態のW569Lが試験した全ての除草剤に対する耐性を付与し、7種類の除草剤組成物のみが中程度の毒性を有することを示している。それとは対照的に、569位でヘテロ接合であるテンサイ植物は、幾つかの除草剤組成物に対して部分的にのみ抵抗性を有することになった。12種類の除草剤組成物はかなりの毒性効果を示し、7種類は中程度の毒性を示した。したがって、商業的応用にはホモ接合状態のW569Lの使用が明らかに有利である。
【0006】
しかしながら、W569Lのホモ接合である交雑テンサイ種子の生産には、母系および父系の両方のプールに突然変異を導入し、維持する必要があるので、育種中に多大な労力を要する。さらに、交雑生産中に、例えば野生ビートによる外来の望ましくない何らかの受粉があると、ヘテロ接合交雑種子をもたらすため、W569Lをホモ接合的に保有する種子のみを農家に提供するには、種子品質管理に対する高い要求を満たす必要がある。これには、交雑種子生産のための追加のコストおよび時間を伴う。
【0007】
したがって、テンサイおよび飼料用ビート、レッドビートまたはスイスチャードのような他の栽培品種のベータ・ブルガリスにおけるALS阻害剤抵抗性をさらに改善する必要がある。
【0008】
発明の概要
本発明は、テンサイ、飼料用ビート、スイスチャードまたはレッドビートなどのベータ・ブルガリス植物の生育地域における望ましくない植生に対してALS(アセト乳酸シンターゼ;AHAS(アセトヒドロキシ酸シンターゼ;EC 2.2.1.6;以前はEC 4.1.3.18)としても知られる)阻害剤除草剤を使用することによる作物保護の技術分野に関する。
【0009】
幾つかの雑草でALS突然変異が報告されているが、そのような突然変異を作物植物に導入することが実現可能であり、所望の効果を取り次ぐことは先験的に期待することはできない。実際、ALS阻害剤抵抗性を、とりわけ作物植物、特にALS阻害剤除草剤に対して極めて感受性が高いことが知られているベータ・ブルガリスに付与するには、強固な除草剤抵抗性を確立する必要がある。これに関連して、幾つかの同定されたALS突然変異は部分的な除草剤抵抗性しか付与せず、それによって、商業的利用が妨げられていることが知られている。多くの場合、農学的に有用で安定したALS阻害剤除草剤抵抗性を達成するためには、複数の突然変異を組み合わせる必要がある場合さえある。さらに、ALS突然変異は、選択された数のALS阻害剤除草剤にのみ耐性を付与する可能性があり、その結果、雑草防除の選択肢が制限されることになる。加えて、ALS突然変異は生育特性および/または稔性に悪影響を及ぼす可能性があり、このことは、特に作物植物においては望ましくないことが記載されている。また、強固な除草剤抵抗性を付与するためには、ALS突然変異がホモ接合的に存在する必要がある場合があり、これは育種、特に交雑の作出が望まれる場合に問題を引き起こす可能性がある。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、ベータ・ブルガリスALSタンパク質を371位で突然変異させると、生育特性を維持したまま、多種多様なALS阻害剤除草剤に対して強固なALS阻害剤除草剤抵抗性を付与できることを見出した。さらに驚くべきことに、ヘテロ接合ALS突然変異体も同様に適していることが判明した。
【0011】
したがって、一態様において、本発明は、コードされたALS酵素の371位のアスパラギン酸が他のアミノ酸(好ましくはグルタミン酸)で置換されているALS遺伝子の突然変異を含むベータ・ブルガリス植物に関する。本発明はさらに、ALS阻害性除草剤に対して抵抗性がある交雑ベータ・ブルガリス品種を開発するために使用できる新規な非トランスジェニックベータ・ブルガリスドナー系統を提供する。
【0012】
アミノ酸置換D371Eは、配列番号4のヌクレオチド位1141の点突然変異に基づいており、TがAに置き換えられている。その結果、野生型GATにあるヌクレオチド位1139からヌクレオチド位1141までのコドンはGAAに変更される。cDNA中の対応する位置はヌクレオチド位1111-1113である。
【0013】
本発明の別の態様は、コードされたALS酵素の371位のアスパラギン酸が他のアミノ酸(好ましくはグルタミン酸)で置換されているALS遺伝子の突然変異を含むベータ・ブルガリス植物の生育領域における望ましくない植生に対してALS阻害剤除草剤を使用することによる作物保護方法を提供することである。
【0014】
本発明の有利な態様は、ALS阻害性除草剤の抵抗性のための新しいかつ独立したドナーが存在することであり、これは、例えば、それぞれの突然変異の多面効果または突然変異に関連する別の負のリンケージドラッグが原因で生じる既知の他のドナー系統で起こり得る望ましくない悪影響を回避するのに役立ち得る。
【0015】
さらに、交雑テンサイの生産のために、両方の交雑プールに同一のドナーが使用された場合、同系交雑抑制が観察され、潜在的な収量ギャップにつながり得ることもある。本発明の新しいドナーは、除草剤耐性のための異なるドナーが両方のプール、例えば、W569L突然変異(配列番号10~12を参照のこと)を有する1つのプールと、本発明による別の、例えばALS D371E突然変異(配列番号1~3を参照のこと)を有するプールとに使用され得ることを可能にし、それによって上記の問題を解決することができる。
【0016】
さらに、本発明による突然変異、例えばALS D371E突然変異のみをヘテロ接合またはホモ接合で保有する独立した産物(除草剤耐性テンサイ系統)に新しいドナーを使用することも選択肢となり得る。
【0017】
更なる態様において、本発明は、本発明による突然変異型ALSタンパク質をコードするポリ核酸、ならびにそのようなポリ核酸を含むベクター、およびそのようなポリ核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0018】
更なる態様において、本発明は、本発明による突然変異型ALSタンパク質を含む植物を作出するための方法、ならびに本発明による突然変異型ALSタンパク質を含む植物を同定するための方法に関する。
【0019】
更なる態様において、本発明は、作物植物が本発明による突然変異型ALSタンパク質を含む、作物地域における望ましくない植生を防除するためのALS阻害剤除草剤の使用に関する。
【0020】
本発明は、特に、添付の特許請求の範囲によって捕捉され、これらは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の本システムおよび方法を説明する前に、本発明は、説明された特定のシステムおよび方法または組み合わせに限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は限定を意図したものではないことを理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上特に明記されていない限り、単数形および複数形の両方の指示対象を含む。
【0023】
本明細書で使用される用語「comprising(含む)」、「comprises(含む)」、および「comprised of(から構成される)」は、「including(含む)」、「includes(含む)」、または「containing(含む)」、「contains(含む)」と同義であり、包括的または非限定的であり、かつ追加の、記載されていないメンバー、要素または方法ステップを除外するものではない。本明細書で使用される用語「comprising(含む)」、「comprises(含む)」および「comprised of(から構成される)」は、用語「consisting of(からなる)」、「consists(からなる)」および「consists of(からなる)」、ならびに用語「consisting essentially of(から実質的になる)」、「consists essentially(から実質的になる)」、および「consists essentially of(から実質的になる)」を含むことが理解されるであろう。
【0024】
端点による数値範囲の記載は、記載された端点の他、それぞれの範囲内に包含される全ての数値および分数も含む。
【0025】
本明細書で使用される用語「約」または「およそ」は、例えばパラメーター、量、時間的持続などの測定可能な値を指す場合、指定された値の±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、一層より好ましくは±1%以下の変動を、開示された発明でそのような変動を行うのに適切な限りにおいて包含することを意味する。修飾語「約」または「およそ」が指す値自体も、具体的に、好ましくは開示されることを理解されたい。
【0026】
用語「1つ以上」または「少なくとも1つ」、例えば一群のメンバーのうちの1つ以上または少なくとも1つのメンバーがそれ自体明確であるのに対し、更なる例示によって、この用語は、とりわけ、前述のメンバーのうちの任意の1つ、または前述のメンバーのうちの任意の2つ以上、例えば前述のメンバーのうちの任意の≧3、≧4、≧5、≧6または≧7など、および全ての前述のメンバーまでの指示対象を包含する。
【0027】
本明細書で引用される全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に参照される全ての文献の教示は、参照により組み込まれる。
【0028】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含め、本発明を開示する際に使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる指針として、本発明の教示をよりよく理解するための用語の定義が含まれる。
【0029】
組換えDNA技術の一般原理を明記する標準的な文献としては、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., (Green and Sambrook et al., 2012, Cold Spring Harbor Laboratory Press); Current Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (with periodic updates) (“Ausubel et al. 1992”); the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Innis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press: San Diego, 1990; PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995); Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, a Laboratory Manual; and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987)が挙げられる。微生物学の一般原理は、例えば、Davis, B. D. et al., Microbiology, 3rd edition, Harper & Row, publishers, Philadelphia, Pa. (1980)に明記されている。
【0030】
以下の文章では、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。このように定義された各態様は、反対のことが明確に示されない限り、他の任意の態様または複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の任意の特徴と組み合わせることができる。
【0031】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で「一実施形態において」または「ある実施形態において」という表現が現れるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、そうである場合もある。さらに、本開示から当業者に明らかであるように、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造または特性を任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載される幾つかの実施形態は幾つかの特徴を含むが、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まない一方で、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも任意の組み合わせで使用することができる。
【0032】
本発明の以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成し、かつ本発明が実施され得る特定の実施形態の例示のみを目的として示す添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、構造的または論理的な変更を加えてもよいことを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0033】
ここで本発明の好ましい記述(特徴)および実施形態を以下に示す。このように定義された本発明の各記述および実施形態は、反対のことが明確に示されない限り、他の任意の記述および/または実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の任意の特徴または複数の特徴または記述と組み合わせることができる。この点に関して、本発明は、特に、以下の番号付けされた態様および実施形態1~76のうちのいずれか1つまたは1つ以上の任意の組み合わせと、他の任意の記述および/または実施形態とによって捕捉される。
【0034】
1.突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質、または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードするポリ核酸を含むか、発現するか、または発現することができる、ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0035】
2.ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団であって、任意選択的に、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含む、項目1記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0036】
3.前述のALSタンパク質が、配列番号3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%同一である配列を有する、項目1または2記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0037】
4.前述のALSタンパク質を発現するか、または発現することができる、項目1から3までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0038】
5.前述のALSタンパク質がALS活性を有する、項目1から4までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0039】
6.前述のALSタンパク質が371位にグルタミン酸塩(E)を含む、項目1から5までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0040】
7.前述のALSタンパク質が配列番号3の配列を有する、項目1から6までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0041】
8.前述のALSがヘテロ接合である、項目1から7までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0042】
9.前述のALSがホモ接合である、項目1から7までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0043】
10.1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性がある、項目1から9までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0044】
11.(スルホン)アミド、例えばスルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホンアニリド、またはトリアゾロピリミジン;イミダゾリノン;およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択される、好ましくは、スルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、イミダゾリノン、およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択される1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性がある、項目1から10までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0045】
12.前述のスルホニル尿素が、以下:
アミドスルフロン[CAS RN 120923-37-7](=A1-1);
アジムスルフロン[CAS RN 120162-55-2](=A1-2);
ベンスルフロン-メチル[CAS RN 83055-99-6](=A1-3);
クロリムロン-エチル[CAS RN 90982-32-4](=A1-4);
クロルスルフロン[CAS RN 64902-72-3](=A1-5);
シノスルフロン[CAS RN 94593-91-6](=A1-6);
シクロスルファムロン[CAS RN 136849-15-5](=A1-7);
エタメトスルフロン-メチル[CAS RN 97780-06-8](=A1-8);
エトキシスルフロン[CAS RN 126801-58-9](=A1-9);
フラザスルフロン[CAS RN 104040-78-0](=A1-10);
フルセトスルフロン[CAS RN 412928-75-7](=A1-11);
フルピルスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144740-54-5](=A1-12);
ホラムスルフロン[CAS RN 173159-57-4](=A1-13);
ハロスルフロン-メチル[CAS RN 100784-20-1](=A1-14);
イマゾスルフロン[CAS RN 122548-33-8](=A1-15);
ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144550-36-7](=A1-16);
メソスルフロン-メチル[CAS RN 208465-21-8](=A1-17);
メトスルフロン-メチル[CAS RN 74223-64-6](=A1-18);
モノスルフロン[CAS RN 155860-63-2](=A1-19);
ニコスルフロン[CAS RN 111991-09-4](=A1-20);
オルトスルファムロン[CAS RN 213464-77-8](=A1-21);
オキサスルフロン[CAS RN 144651-06-9](=A1-22);
プリミスルフロン-メチル[CAS RN 86209-51-0](=A1-23);
プロスルフロン[CAS RN 94125-34-5](=A1-24);
ピラゾスルフロン-エチル[CAS RN 93697-74-6](=A1-25);
リムスルフロン[CAS RN 122931-48-0](=A1-26);
スルホメツロン-メチル[CAS RN 74222-97-2](=A1-27);
スルホスルフロン[CAS RN 141776-32-1](=A1-28);
チフェンスルフロン-メチル[CAS RN 79277-27-3](=A1-29);
トリアスルフロン[CAS RN 82097-50-5](=A1-30);
トリベヌロン-メチル[CAS RN 101200-48-0](=A1-31);
トリフロキシスルフロン[CAS RN 145099-21-4](ナトリウム)(=A1-32);
トリフルスルフロン-メチル[CAS RN 126535-15-7](=A1-33);
トリトスルフロン[CAS RN 142469-14-5](=A1-34);
NC-330[CAS RN 104770-29-8](=A1-35);
NC-620[CAS RN 868680-84-6](=A1-36);
TH-547[CAS RN 570415-88-2](=A1-37);
モノスルフロン-メチル[CAS RN 175076-90-1](=A1-38);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミド(=A1-39);
一般式(I)の化合物
【化1】
[式中、Mは、化合物(I)のそれぞれの塩、すなわち、
そのリチウム塩(=A1-40);そのナトリウム塩(=A1-41);そのカリウム塩(=A1-42);そのマグネシウム塩(=A1-43);そのカルシウム塩(=A1-44);そのアンモニウム塩(=A1-45);そのメチルアンモニウム塩(=A1-46);そのジメチルアンモニウム塩(=A1-47);そのテトラメチルアンモニウム塩(=A1-48);そのエチルアンモニウム塩(=A1-49);そのジエチルアンモニウム塩(=A1-50);そのテトラエチルアンモニウム塩(=A1-51);そのプロピルアンモニウム塩(=A1-52);そのテトラプロピルアンモニウム塩(=A1-53);そのイソプロピルアンモニウム塩(=A1-54);そのジイソプロピルアンモニウム塩(=A1-55);そのブチルアンモニウム塩(=A1-56);そのテトラブチルアンモニウム塩(=A1-57);その(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-58);そのビス-N,N-(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-59);そのトリス-N,N,N-(2-ヒドロキシエチル-1-イル)アンモニウム塩(=A1-60);その1-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-61);その2-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-62);そのトリメチルスルホニウム塩(=A1-63);そのトリメチルオキソニウム塩(=A1-64);そのピリジニウム塩(=A1-65);その2-メチルピリジニウム塩(=A1-66);その4-メチルピリジニウム塩(=A1-67);その2,4-ジメチルピリジニウム塩(=A1-68);その2,6-ジメチルピリジニウム塩(=A1-69);そのピペリジニウム塩(=A1-70);そのイミダゾリウム塩(=A1-71);そのモルホリニウム塩(=A1-72);その1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-7-エニウム塩(=A1-73);その1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エニウム塩(=A1-74)である];
式(II)の化合物またはその塩
【化2】
[式中、R、およびRは、以下の表に定義される意味を有する]
【表1】
式(III)(=A1-87)の化合物、すなわち化合物(A1-83)のナトリウム塩
【化3】
および式(IV)の化合物(=A1-88)、すなわち化合物(A1-82)のナトリウム塩
【化4】
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0046】
13.前述のスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノンが、以下:
フルカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-17-9](=A2-1);
プロポキシカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-15-7](=A2-2);および
チエンカルバゾン-メチル[CAS RN 317815-83-1](=A2-3)
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0047】
14.前述のトリアゾロピリミジンが、以下:
クロランスラム-メチル[147150-35-4](=A3-1);
ジクロスラム[CAS RN 145701-21-9](=A3-2);
フロラスラム[CAS RN 145701-23-1](=A3-3);
フルメトスラム[CAS RN 98967-40-9](=A3-4);
メトスラム[CAS RN 139528-85-1](=A3-5);
ペノキススラム[CAS RN 219714-96-2](=A3-6);
ピロクススラム[CAS RN 422556-08-9](=A3-7)
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0048】
15.前述のスルホンアニリドが、以下:
一般式(V)で記載される群からの化合物またはその塩
【化5】
[式中、
はハロゲン、好ましくはフッ素または塩素であり、
は水素であり、かつRはヒドロキシルであるか、または
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になってカルボニル基C=Oであり、
は水素またはメチルである];
より具体的には、以下の所与の化学構造(A4-1)~(A4-8)の化合物
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0049】
16.前述のイミダゾリノンが、以下:
イマザメタベンズメチル[CAS RN 81405-85-8](=B1-1);
イマザモックス[CAS RN 114311-32-9](=B1-2);
イマザピック[CAS RN 104098-48-8](=B1-3);
イマザピル[CAS RN 81334-34-1](=B1-4);
イマザキン[CAS RN 81335-37-7](=B1-5);
イマゼタピル[CAS RN 81335-77-5](=B1-6);
SYP-298[CAS RN 557064-77-4](=B1-7);
SYP-300[CAS RN 374718-10-2](=B1-8)
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0050】
17.前述のピリミジニルオキシベンゾエートが、以下:
ビスピリバック-ナトリウム[CAS RN 125401-92-5](=C1-1);
ピリベンゾキシム[CAS RN 168088-61-7](=C1-2);
ピリミノバック-メチル[CAS RN 136191-64-5](=C1-3);
ピリバムベンズ-イソプロピル[CAS RN 420138-41-6](=C1-4);
ピリバムベンズ-プロピル[CAS RN 420138-40-5](=C1-5)
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0051】
18.前述のピリミジニルチオベンゾエートが、以下:
ピリフタリド[CAS RN 135186-78-6](=C2-1);
ピリチオバク-ナトリウム[CAS RN 123343-16-8](=C2-2)
のうちの1つ以上から選択される、項目11記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0052】
19.前述の植物の一部分が、ルートビート、種子、細胞、組織、または器官である、項目1から18までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物の一部分。
【0053】
20.以下:
113位に、アラニン(A)とは異なるアミノ酸;
188位に、プロリン(P)とは異なるアミノ酸;
196位に、アラニン(A)とは異なるアミノ酸;
372位に、アルギニン(R)とは異なるアミノ酸;
569位に、トリプトファン(W)とは異なるアミノ酸;
648位に、セリン(S)とは異なるアミノ酸;
649位に、グリシン(G)とは異なるアミノ酸
のうちのいずれか1つ以上を含む突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードするポリ核酸を含む、項目1から19までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0054】
21.以下:
113位に、アラニン(A)とは異なるアミノ酸;
188位に、プロリン(P)とは異なるアミノ酸;
196位に、アラニン(A)とは異なるアミノ酸;
372位に、アルギニン(R)とは異なるアミノ酸;
569位に、トリプトファン(W)とは異なるアミノ酸;
648位に、セリン(S)とは異なるアミノ酸;
649位に、グリシン(G)とは異なるアミノ酸
のうちのいずれか1つ以上を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含む、項目1から20までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0055】
22.前述のALSタンパク質が、569位に、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリンまたはアルギニン、好ましくはロイシンを含む、項目1から20までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0056】
23.遺伝子導入、遺伝子編集、または突然変異が誘発されている、項目1から22までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0057】
24.前述のベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分がテンサイ植物もしくは植物の一部分である、項目1から23までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0058】
25.項目1から24までのいずれかに定義される突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードする(単離された)ポリ核酸。
【0059】
26.単離されたポリ核酸である、項目25記載の(単離された)ポリ核酸。
【0060】
27.項目25または26記載のポリ核酸を含むベクター。
【0061】
28.前述のポリ核酸が、ALSタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含む、項目25から27までのいずれか1項記載の(単離された)ポリ核酸またはベクター。
【0062】
29.項目25から28までのいずれか1項記載のポリ核酸またはベクターを含む宿主細胞。
【0063】
30.植物宿主細胞、好ましくはベータ・ブルガリス宿主細胞である、項目29記載の宿主細胞。
【0064】
31.項目25から28までのいずれか1項記載のポリ核酸、その相補体、またはその逆相補体と特異的にハイブリダイズする(単離された)ポリ核酸。
【0065】
32.10~200ヌクレオチドの範囲の長さを有する、項目31記載の(単離された)ポリ核酸。
【0066】
33.プライマーまたはプローブである、項目31または32記載の(単離された)ポリ核酸。
【0067】
34.KASPプライマーである、項目31から33までのいずれか1項記載の(単離された)ポリ核酸。
【0068】
35.配列番号7の少なくとも10個の最も3末端側のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15個の最も3末端側のヌクレオチド、その相補体、またはその逆相補体を含む、項目31から34までのいずれか1項記載の(単離された)ポリ核酸。
【0069】
36.配列番号7、その相補体、またはその逆相補体を含むか、またはそれらからなる、項目31から35までのいずれか1項記載の(単離された)ポリ核酸。
【0070】
37.ベータ・ブルガリス植物を同定するための、項目31から36までのいずれか1項記載のポリ核酸の使用。
【0071】
38.項目1から24までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物を同定するための、項目31から36までのいずれか1項記載のポリ核酸の使用。
【0072】
39.1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性があるベータ・ブルガリス植物を同定するための、項目31から36までのいずれか1項記載のポリ核酸の使用。
【0073】
40.前述のALS阻害剤除草剤が、項目11から18までのいずれかに定義される1つ以上のALS阻害剤除草剤である、項目39記載の使用。
【0074】
41.ベータ・ブルガリス植物を作出するための、項目25から30までのいずれか1項記載のポリ核酸、ベクター、または宿主細胞の使用。
【0075】
42.項目1から24までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物を作出するための、項目25から30までのいずれか1項記載のポリ核酸、ベクター、または宿主細胞の使用。
【0076】
43.1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性があるベータ・ブルガリス植物を作出するための、項目25から30までのいずれか1項記載のポリ核酸、ベクターまたは宿主細胞の使用。
【0077】
44.前述のALS阻害剤除草剤が、項目11から18までのいずれかに定義される1つ以上のALS阻害剤除草剤である、項目40記載の使用。
【0078】
45.ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するための方法であって、ALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸の存在についてスクリーニングすること、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンの存在についてスクリーニングすることを含む、方法。
【0079】
46.371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質を含むか、または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードするポリ核酸を含むベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を選択することをさらに含む、項目45記載の方法。
【0080】
47.配列番号3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%同一である配列を有するALSタンパク質の存在についてスクリーニングすること、または配列番号3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%同一である配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸の存在についてスクリーニングすることを含む、項目45または46記載の方法。
【0081】
48.前述の植物もしくは植物の一部分が、前述のALSタンパク質を発現するか、または発現することができる、項目45から47までのいずれか1項記載の方法。
【0082】
49.前述のALSタンパク質がALS活性を有する、項目45から48までのいずれか1項記載の方法。
【0083】
50.前述のALSタンパク質が371位にグルタミン酸塩(E)を含む、項目45から49までのいずれか1項記載の方法。
【0084】
51.前述のALSタンパク質が配列番号3の配列を有する、項目45から50までのいずれか1項記載の方法。
【0085】
52.前述のALSがヘテロ接合である、項目45から51までのいずれか1項記載の方法。
【0086】
53.前述のALSがホモ接合である、項目45から51までのいずれか1項記載の方法。
【0087】
54.前述の植物もしくは植物の一部分が、1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性がある、項目45から53までのいずれか1項記載の方法。
【0088】
55.前述のALS阻害剤除草剤が、項目11から18までのいずれかに定義される1つ以上のALS阻害剤除草剤である、項目45から54までのいずれか1項記載の方法。
【0089】
56.ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための方法であって、植物もしくは植物の一部分のゲノムにおいて、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードするALS対立遺伝子をもたらす内因性ALS対立遺伝子を突然変異させることを含む、方法。
【0090】
57.以下のステップ:
a)少なくとも0.5%のEMSまたは少なくとも0.3%のENUを用いて、ベータ・ブルガリスの細胞または組織に突然変異を誘発するステップ;
b)突然変異を誘発された細胞または組織(M0)から挿木(stecks)を栽培するステップ;
c)挿木を植え替えて種子(M1)の集団を栽培するステップ;
d)M1の種子から生育した植物から種子(M2)を栽培するステップ;
e)M2の種子を播種し、ALS阻害剤除草剤を適用するステップ;
f)任意選択的に、生き残った植物を鉢に植え替え、生育中の植物にALS阻害剤除草剤を適用するステップ;および
g)除草剤によるダメージを受けずに生き残った植物を選択し、かつ/または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードするALS対立遺伝子を含む植物を選択するステップ
を含む、項目55記載の方法。
【0091】
58.ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための方法であって、植物もしくは植物の一部分のゲノムにおいて、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性ALSタンパク質をコードするポリ核酸を導入する(および発現させる)ことを含む、方法。
【0092】
59.前述のポリ核酸が、ALSタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含む、項目58記載の方法。
【0093】
60.ゲノムに導入することが、遺伝子導入、遺伝子編集、または突然変異誘発を含む、項目58または59記載の方法。
【0094】
61.植物もしくは植物の一部分、好ましくは植物細胞、より好ましくはプロトプラストを、項目25から29までのいずれか1項記載のポリ核酸またはベクターで形質転換すること、および任意選択的に前述の植物細胞、好ましくはプロトプラストから植物を再生することを含む、項目58から60までのいずれか1項記載の方法。
【0095】
62.ゲノムに導入することが遺伝子移入を含む、項目58または59記載の方法。
【0096】
63.項目56から62までのいずれか1項記載の方法によって(直接)得られるか、またはその方法によって得ることができるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、またはその子孫。
【0097】
64.前述の植物の一部分が、ルートビート、種子、細胞、組織、または器官である、項目63記載の植物の一部分。
【0098】
65.ベータ・ブルガリス生育地域における望ましくない植生を防除するための、またはベータ・ブルガリス生育地域における収量を増加させるための方法であって、以下のステップ:
a)項目1から24までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物を植え付けるか、またはベータ・ブルガリス種子を播種するステップ;
b)生育中の植物に、好ましくは、望ましくない植生の生育を阻害するのに十分な用量で、より好ましくは、望ましくない植生を枯死させるのに十分な用量で、1つ以上のALS阻害剤除草剤を適用するステップ;および
c)任意選択的に、生育期中にステップb)を繰り返すステップ
を含む、方法。
【0099】
66.ステップb)が、望ましくない植生の受粉前、好ましくは開花前段階または遅くとも花が開く時期に行われる、項目65記載の方法。
【0100】
67.前述の収量がルートビート収量である、項目65または66記載の方法。
【0101】
68.ベータ・ブルガリス生育地域における望ましくない植生を防除するための1つ以上のALS阻害剤除草剤の使用であって、ベータ・ブルガリス植物が、項目1から24までのいずれかに記載のものである、使用。
【0102】
69.前述の望ましくない植生が、とう立ち(bolters)、雑草ビート、もしくは一年生ビートであるか、またはそれらを含む、項目65から68までのいずれか1項記載の方法または使用。
【0103】
70.前述の1つ以上のALS阻害剤除草剤が、項目11から18までのいずれかに定義されるような1つ以上のALS阻害剤除草剤である、項目65から69までのいずれか1項記載の方法または使用。
【0104】
71.ベータ・ブルガリスルートビートを生産するための方法であって、以下のステップ:
a)項目65から67、69、または70のいずれか1項記載の方法を実施するステップ;および
b)ベータ・ブルガリスルートビートを、好ましくは生育期の終わりまでに収穫するステップ
を含む、方法。
【0105】
72.糖生産、嫌気性消化、または発酵のための方法における、項目1から24までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団の使用。
【0106】
73.バイオガスまたはバイオ燃料生産のための方法における、項目1から24までのいずれか1項記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団の使用。
【0107】
74.ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団であって、
a)配列番号1に記載される配列を含むポリ核酸;
b)配列番号2に記載される配列を含むポリ核酸;
c)配列番号2に記載されるcDNA配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸;
d)配列番号3に記載される配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸
を含む、ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0108】
75.以下:
a)配列番号10に記載される配列を含むポリ核酸;
b)配列番号11に記載される配列を含むポリ核酸;
c)配列番号11に記載されるcDNA配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸;
d)配列番号12に記載される配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸
を含む、項目74記載のベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団。
【0109】
76.配列番号7に記載される配列を含む(単離された)ポリ核酸。
【0110】
一態様において、本発明は、突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質、または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含む突然変異型内因性アセト乳酸シンターゼ(ALS)タンパク質をコードするポリ核酸を含むか、発現するか、または発現することができる、ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団に関する。ある実施形態において、ベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団は、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含む。
【0111】
一態様において、本発明は、371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードする突然変異型内因性対立遺伝子を含むベータ・ブルガリス植物、植物の一部分、または植物集団に関する。
【0112】
種ベータ・ブルガリスの植物は、特に、亜種ベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリス(Beta vulgaris subsp.vulgaris)である。例えば、これらの中に含まれるのは、Beta vulgaris subsp.vulgaris var.altissima(狭義のテンサイ)、Beta vulgaris ssp.vulgaris var.favescens(チャード)、Beta vulgaris ssp.vulgaris var.cicla(スピナッチビート)、Beta vulgaris ssp.vulgaris var.conditiva(ビートルート/レッドビート/ガーデンビート)、Beta vulgaris ssp.vulgaris var.crassa/alba(飼料用ビート)である。好ましい実施形態において、本発明に従って本明細書で言及されるベータ・ブルガリスは、ベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリスであり、より好ましくはBeta vulgaris subsp.var.altissima(すなわちテンサイ)である。
【0113】
本明細書で使用される場合、ALS(アセト乳酸シンターゼ;AHAS(アセトヒドロキシ酸シンターゼ;EC 2.2.1.6;以前はEC 4.1.3.18)としても知られる)は、2つのピルビン酸分子からアセト乳酸分子および二酸化炭素への変換に関与する。この反応では、2つのピルビン酸分子を連結するためにチアミンピロリン酸が使用される。この反応の結果得られる生成物のアセト乳酸は、最終的にバリン、ロイシンおよびイソロイシンになる(Singh (1999) “Biosynthesis of valine, leucine and isoleucine”, in Plant Amino Acids, Singh, B.K., ed., Marcel Dekker Inc. New York, New York, pp. 227-247)。ALSの阻害剤は、植物におけるバリン、ロイシンおよびイソロイシンの生合成を阻害する。その結果、それぞれのアミノ酸プールが即座に枯渇し、タンパク質生合成の停止が引き起こされて植物生育の中断につながり、最終的に植物は枯れるか、または少なくともダメージを受ける。
【0114】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALSは、配列番号6に提供されるようなアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスALSは、配列番号6の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)である。本明細書で使用されるアスパラギン酸はアスパラギン酸塩と互換的に使用され得ることが理解されるであろう。ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALSは、NCBI参照配列XP_010695365.1で提供されるようなアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスALSは、NCBI参照配列XP_010695365.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)である。
【0115】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ベータ・ブルガリスALSは、配列番号3に提供されるようなアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALSは、配列番号3の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)ではない。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALSは、NCBI参照配列XP_010695365.1で提供されるようなアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALSは、NCBI参照配列XP_010695365.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)ではない。
【0116】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号6に提供されるようなアミノ酸配列をコードする配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号6の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有し、好ましくはALSシンターゼ活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)である。ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、NCBI参照配列XP_010695365.1で提供されるようなアミノ酸配列をコードする配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスALS遺伝子は、NCBI参照配列XP_010695365.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有し、好ましくはALSシンターゼ活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)である。
【0117】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号3に提供されるようなアミノ酸配列をコードする配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号3の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有し、好ましくはALSシンターゼ活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)ではない。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、NCBI参照配列XP_010695365.1で提供されるようなアミノ酸配列をコードする配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、NCBI参照配列XP_010695365.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有し、好ましくはALSシンターゼ活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基はアスパラギン酸(D)ではない。
【0118】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号4に提供されるようなヌクレオチド配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号4の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基に対応するコドンはアスパラギン酸(D)をコードする。
【0119】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号1に提供されるようなヌクレオチド配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALS遺伝子は、配列番号1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基に対応するコドンはアスパラギン酸(D)をコードしない。
【0120】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALSコード配列(cDNA)は、配列番号5に提供されるようなヌクレオチド配列を有する。ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスALSコード配列は、配列番号5の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基に対応するコドンはアスパラギン酸(D)をコードする。
【0121】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ベータ・ブルガリスALSコード配列(cDNA)は、配列番号2に提供されるようなヌクレオチド配列を有する。ある実施形態において、突然変異型ベータ・ブルガリスALSコード配列は、配列番号2の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、好ましくはALS活性を有し、ただし、371位のアミノ酸残基に対応するコドンはアスパラギン酸(D)をコードしない。
【0122】
好ましくは、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基の位置がALSについて言及されるとき、番号付けは配列番号6のアミノ酸位に対応する。配列番号3は、D371E突然変異を有する配列番号6の配列に対応する。
【0123】
本発明に従って使用される場合、用語「位置」は、本明細書に示されるアミノ酸配列内のアミノ酸の位置または本明細書に示されるヌクレオチド配列内のヌクレオチドの位置のいずれかを意味する。本明細書で使用される用語「対応する」は、位置が先行するヌクレオチド/アミノ酸の数によってのみ決定されるわけではないことも含む。
【0124】
置換され得る本発明に従った所与のヌクレオチドの位置は、プロモーターおよび/または他の任意の調節配列もしくは遺伝子(エキソンおよびイントロンを含む)を含むALS5’非翻訳領域(UTR)の他の場所での欠失または追加のヌクレオチドに起因して変化し得る。同様に、本発明に従って置換され得る所与のアミノ酸の位置は、ALSポリペプチドの他の場所でのアミノ酸の欠失または付加に起因して変化し得る。
【0125】
したがって、本発明に従った「対応する位置」の下では、ヌクレオチド/アミノ酸は示された数が異なり得るが、類似の隣接ヌクレオチド/アミノ酸を有し得ることも理解される。交換、欠失または付加され得る前述のヌクレオチド/アミノ酸もまた、用語「対応する位置」に含まれる。
【0126】
所与のALSヌクレオチド/アミノ酸配列中のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が、配列番号1、2、4、もしくは5のヌクレオチド配列、または配列番号3もしくは6のアミノ酸配列のような、ある位置に対応するかどうかを決定するために、当業者は、当該技術分野で周知の手段および方法、例えばアラインメントを、手動で、またはコンピュータープログラム、例えばBasic Local Alignment Search Toolの略であるBLAST(Altschul et al. (1990), Journal of Molecular Biology, 215, 403-410)またはClustalW(Thompson et al. (1994), Nucleic Acid Res., 22, 4673-4680)または配列アラインメントを生成するのに適した他の任意の適切なプログラムを使用することのいずれかによって使用することができる。
【0127】
B.ブルガリス(B.vulgaris)野生型ALS遺伝子と、本発明のB.ブルガリス植物に含まれるALS遺伝子との差異を考慮すると、本発明のB.ブルガリス植物に含まれるALS遺伝子(またはポリヌクレオチドもしくはヌクレオチド配列)は、「突然変異体ALS遺伝子」、「突然変異体ALS対立遺伝子」、「突然変異体ALSポリヌクレオチド」または同種のものとみなすこともできる。したがって、本明細書を通じて、用語「突然変異対立遺伝子」、「突然変異体ALS対立遺伝子」、「突然変異体ALS遺伝子」または「突然変異体ALSポリヌクレオチド」は、互換的に使用される。
【0128】
一方、別段の指示がない限り、用語「野生型対立遺伝子」、「野生型ALS対立遺伝子」、「野生型ALS遺伝子」または「野生型ALSポリヌクレオチド」は、D371置換を欠くALSタンパク質をコードするヌクレオチド配列を指す。そのような「野生型対立遺伝子」、「野生型ALS対立遺伝子」、「野生型ALS遺伝子」または「野生型ALSポリヌクレオチド」は、D371置換を引き起こす突然変異以外の突然変異を含んでもよいし、含んでなくてもよい。また、ALSにおいて自然に生じる多型(371位以外)も用語「野生型」に含まれると考えることができる。
【0129】
本明細書で使用される場合、用語「ALS活性」は、ALSタンパク質の酵素活性を指す。ある好ましい実施形態において、上記のようなバリアントALS(例えば、記載された配列番号と、あるパーセンテージ配列同一性を有するALSタンパク質)の文脈における用語「ALS活性を有する」は、酵素活性が、野生型またはネイティブALS(例えば、記載された配列番号の配列を有するALS)と比較して影響を受けないか、または実質的に影響を受けないALSを指す。ある実施形態において、酵素活性は、野生型ALS活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%である。酵素活性は、ピルビン酸からアセト乳酸への変換の測定など、当該技術分野で公知の手段によって測定することができる。
【0130】
ある実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、酵素活性が1つ以上のALS阻害剤除草剤による影響を受けないか、または実質的に影響を受けない(突然変異型)ALSを有する。ある実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、酵素活性が、1つ以上のALS阻害剤除草剤の存在下で、そのような除草剤の非存在下と比較して、多くとも50%低い、好ましくは多くとも40%低い、より好ましくは多くとも30%低い、さらにより好ましくは多くとも20%低い、最も好ましくは多くとも10%低い、例えば多くとも5%低いALSを有する。酵素活性は、当該技術分野で公知の手段によって測定することができる。酵素活性は、好ましくは、ALS阻害剤除草剤の存在下で、関連する適用可能な除草用量、例えば推奨される圃場適用に対応する用量で測定される。
【0131】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に類似のアミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に保存的置換を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に非類似アミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に非保存的置換を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に極性アミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位にグルタミン-Gln-Q、アスパラギン-Asn-N、ヒスチジン-His-H、セリン-Ser-S、スレオニン-Thr-T、チロシン-Tyr-Y、システイン-Cys-Cから選択されるアミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に酸性アミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に酸性極性アミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位にグルタミン酸(グルタミン酸塩、E)を含む。ある実施形態において、本発明による突然変異型ALS、すなわち371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する突然変異型ALSは、371位に非極性アミノ酸を含む。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「発現することができる」は、タンパク質が植物もしくは植物の一部分において発現され得ることを意味する。そのため、タンパク質の遺伝子配列またはタンパク質のコード配列が、植物もしくは植物の一部分、好ましくは植物もしくは植物の一部分のゲノム中に存在することが必要である。また、転写を確実にするために、適切な調節配列も存在するべきである。したがって、ALSをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターなどの1つ以上の調節配列に作動可能に連結されるべきである。しかしながら、転写が遍在的(構成的)であることは(あり得るが)必須ではない。転写は、細胞特異的、組織特異的、または器官特異的であってもよい。転写は、代替的あるいは追加的に、発生特異的(すなわち、ある発生段階でのみタンパク質が発現される)であってもよい。転写は、代替的あるいは付加的に、条件的または誘導的であってもよい。これらの各例に適したプロモーターは当該技術分野で公知である。ある好ましい実施形態において、本発明による突然変異型ALS遺伝子は、ゲノム中のそのネイティブ(内因性)位置(遺伝子座)に位置し、したがってそのネイティブ(内因性)プロモーターの制御下にある。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「作動的に連結された(operatively linked)」または「作動可能に連結された(operably linked)」は、核酸分子の転写が起こり得るように、連結された要素が互いに対して位置決めされ、配向されるような様式で、共通の核酸分子において連結されたことを意味する。プロモーターと作動的に連結されているDNAは、このプロモーターの転写制御下にある。
【0134】
本明細書で使用される場合、特に別段の指示がない限り、用語「植物」は、任意の発生段階の植物を意味することが意図される。
【0135】
本発明のベータ・ブルガリス植物は、正倍数体または異倍数体であることが好ましい。正倍数体植物は、好ましくは、一倍体、二倍体、四倍体、六倍体、八倍体、十倍体または十二倍体であり得、一方、異倍数体植物は、好ましくは、三倍体または五倍体であってもよい。ある好ましい実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は二倍体である。
【0136】
本発明による用語「植物」は、植物全体またはそのような植物全体の一部分を含む。植物全体は、好ましくは種子植物、または作物である。「植物の一部分」とは、例えば、シュート栄養器官/構造体、例えば、葉、茎および塊茎;根、花および花器官/構造体、例えば、苞、萼片、花弁、雄しべ、心皮、葯および胚珠;胚、胚乳、および種皮を含む種子;果実および成熟子房;植物組織、例えば、脈管組織、基本組織など;ならびに細胞、例えば、孔辺細胞、卵細胞、花粉、トリコームなど;ならびにこれらの子孫である。植物の一部分は、無傷の植物全体に付着している場合もあれば、それから分離している場合もある。植物のそのような部分には、植物の器官、組織、および細胞、好ましくは種子が含まれるが、これらに限定されない。「植物細胞」は、プロトプラストおよび細胞壁を含む、植物の構造的および生理学的単位である。植物細胞は、単離された単一細胞または培養細胞の形態であってもよく、または例えば、植物組織、植物器官、もしくは植物全体などのより高度に組織化された単位の一部としてであってもよい。「植物細胞培養物」とは、例えば、プロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合子、および様々な発生段階の胚などの植物単位の培養物を意味する。「植物材料」とは、植物の葉、茎、根、花または花の一部分、果実、花粉、卵細胞、接合子、種子、挿穂、細胞もしくは組織培養物、または他の任意の部分または生成物を指す。これにはまた、カルスもしくはカルス組織の他、抽出物(主根からの抽出物など)またはサンプルも含まれる。「植物器官」は、根、茎、葉、花芽、または胚など、植物の明瞭で目に見えて構造化および分化された部分である。本明細書で使用される「植物組織」とは、構造的および機能的な単位に組織化された植物細胞の群を意味する。植物体(planta)または培養中の植物の任意の組織が含まれる。この用語には、植物全体、植物器官、植物種子、組織培養、および構造的および/または機能的な単位に組織化された植物細胞の任意の群が含まれるが、これらに限定されない。この用語を、上に列挙した、またはそれ以外のこの定義に包含されるような任意の特定の種類の植物組織と組み合わせて使用したり、それらなしで使用したりすることは、他の任意の種類の植物組織を排除することを意図したものではない。ある好ましい実施形態において、本明細書で言及される植物の一部分または植物器官は、ルートビート(root beet)(もしくはルートビート(rootbeet))または種子である。用語ルートビート(root beet)(もしくはルートビート(rootbeet))は、主根もしくは胚軸、または肉質の貯蔵器官に変化したビートを指す。ある実施形態において、本明細書で使用される植物の一部分はプロトプラストである。
【0137】
本明細書で使用される場合、用語「植物集団」は、植物の集団と互換的に使用され得る。植物集団は、好ましくは少なくとも10個、例えば20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、または90個、より好ましくは少なくとも100個、例えば200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、または900個、さらにより好ましくは少なくとも1000個、例えば少なくとも10000個、または少なくとも100000個などの多数の個々の植物を含む。
【0138】
本明細書で使用される用語「配列」は、用語「配列」が使用される文脈に応じて、ヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド、核酸配列、核酸、核酸分子、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関する。
【0139】
用語「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのポリマー非分岐形態のリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはその両方の組み合わせのいずれかであるヌクレオチドを指す。核酸配列は、当業者には容易に理解されるように、DNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、合成形態および混合ポリマー、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含むか、または非天然もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含み得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」または「タンパク質」(両方の用語は、本明細書で互換的に使用される)は、アミノ酸残基が共有結合ペプチド結合によって連結されている、所与の長さのアミノ酸鎖を包含するペプチド、タンパク質、またはポリペプチドを意味する。しかしながら、アミノ酸および/またはペプチド結合が機能的アナログによって置き換えられたそのようなタンパク質/ポリペプチドのペプチド模倣物も、セレノシステインなどの20個の遺伝子コードアミノ酸以外のものと同様に、本発明に包含される。ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドと呼ばれることがある。用語ポリペプチドは、ポリペプチドの修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化なども指し、それらを排除するものではない。そのような修飾は、基本的なテキストおよびより詳細なモノグラフ、ならびに研究文献によく説明されている。
【0141】
アミノ酸置換は、アミノ酸が異なる天然に存在するアミノ酸残基で置き換えられるアミノ酸改変を包含する。そのような置換は、野生型タンパク質に含まれるアミノ酸残基が、類似した性質の天然に存在する別のアミノ酸、例えば、Gly<>Ala、Val<>lle<>Leu、Asp<>Glu、Lys<>Arg、Asn<>GlnまたはPhe<>Trp<>Tyrで置き換えられる「保存的」として分類され得る。本発明に包含される置換はまた、「非保存的」であってもよく、その場合、野生型タンパク質中に存在するアミノ酸残基が、異なる群からの天然に存在するアミノ酸などの異なる性状を有するアミノ酸で置換される(例えば、荷電したまたは疎水性のアミノ酸をアラニンで置換する)。「類似アミノ酸」とは、本明細書で使用される場合、類似アミノ酸側鎖を有するアミノ酸、すなわち、極性、非極性または実質的に中性の側鎖を有するアミノ酸を指す。「非類似アミノ酸」とは、本明細書で使用される場合、異なるアミノ酸側鎖を有するアミノ酸を指し、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は、非極性側鎖を有するアミノ酸と類似していない。極性側鎖は、通常、タンパク質の表面に存在する傾向があり、それらは細胞内に見出される水環境(「親水性」アミノ酸)と相互作用し得る。一方、「非極性」アミノ酸は、タンパク質の中心内に存在する傾向があり、それらは類似した非極性の隣接物(「疎水性」アミノ酸)と相互作用し得る。極性側鎖を有するアミノ酸の例としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リジン、セリン、およびスレオニン(疎水性であるシステインを除き、全て親水性)が挙げられる。非極性側鎖を有するアミノ酸の例としては、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、およびトリプトファン(中性であるグリシンを除き、全て疎水性)が挙げられる。
【0142】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語には、二本鎖および一本鎖のDNAおよびRNAが含まれる。また、それには既知の種類の修飾、例えばメチル化、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つ以上のアナログによる置換も含まれる。好ましくは、遺伝子は、本明細書で定義されるポリペプチドをコードするコード配列を含む。「コード配列」とは、適切な調節配列の制御下に置かれるか、または制御下にあるときに、mRNAに転写され、かつ/またはポリペプチドに翻訳されるヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンおよび3’末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード配列には、mRNA、cDNA、組換え核酸配列またはゲノムDNAが含まれ得るが、これらに限定されず、ある状況下ではイントロンも同様に存在し得る。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「内因性」は、その天然のゲノム位置に存在する遺伝子または対立遺伝子を指す。用語「内因性」は、「ネイティブ」と互換的に使用され得る。しかしながら、これは野生型対立遺伝子との1つ以上の核酸の差異の存在を排除するものではない。特定の実施形態において、野生型対立遺伝子との差異は、9個未満のヌクレオチド、好ましくは6個未満のヌクレオチド、より詳細には3個未満のヌクレオチドの差異に限定され得る。より詳細には、野生型配列との差異は、1ヌクレオチドのみであり得る。好ましくは、内因性対立遺伝子は、野生型タンパク質と9個未満、好ましくは6個未満、より詳細には3個未満、さらにより好ましくは1個のみのアミノ酸差異を有する改変タンパク質をコードする。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「ホモ接合体」は、1つ以上または全ての遺伝子座に同じ対立遺伝子を有する個々の細胞または植物を指す。この用語が特定の遺伝子座または遺伝子に関連して使用される場合、それは少なくともその遺伝子座または遺伝子が同じ対立遺伝子を有することを意味する。本明細書で使用される場合、用語「ホモ接合」は、同一の対立遺伝子が相同染色体上の対応する遺伝子座にあるときに存在する遺伝的状態を意味する。本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ接合体」は、1つ以上または全ての遺伝子座に異なる対立遺伝子を有する個々の細胞または植物を指す。この用語が特定の遺伝子座または遺伝子に関連して使用される場合、それは少なくともその遺伝子座または遺伝子が異なる対立遺伝子を有することを意味する。本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ接合」は、異なる対立遺伝子が相同染色体上の対応する遺伝子座にあるときに存在する遺伝的状態を意味する。
【0145】
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子」とは、遺伝子また任意の種類の同定可能な遺伝要素の異なる形態に関連する様々な遺伝単位の代替形態を指し、これらは相同染色体の同じ遺伝子座に場所を定めるため、遺伝において代替的である。二倍体の細胞または生物では、通常、所与の遺伝子(またはマーカー)の2つの対立遺伝子は、一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0146】
用語「遺伝子座(locus)」(lociの複数形)は、例えば、本発明の(突然変異)ALSコード配列などの、QTL、遺伝子または遺伝マーカーが見出される染色体上の特定の場所または複数の場所または部位を意味する。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性」は、任意の所与の核酸配列と標的核酸配列との間の同一性の程度を指す。配列同一性パーセントは、整列された核酸配列中の一致した位置の数を決定し、一致した位置の数を整列されたヌクレオチドの総数で除し、100を乗じることによって計算される。一致した位置とは、整列された核酸配列の同じ位置に同一のヌクレオチドが存在する位置を指す。配列同一性パーセントは、任意のアミノ酸配列についても決定することができる。配列同一性パーセントを決定するには、BLASTNおよびBLASTPを含むBLASTZのスタンドアローンバージョンからBLAST2配列(Bl2seq)プログラムを使用して、標的核酸またはアミノ酸配列を同定された核酸またはアミノ酸配列と比較する。このBLASTZのスタンドアローンバージョンは、Fish & Richardsonのウェブサイト(fr.com/blastのWorld Wide Web)または米国政府の国立生物工学情報センターのウェブサイト(ncbi.nlm.nih.govのWorld Wide Web)から入手できる。Bl2seqプログラムの使用方法を説明する説明書は、BLASTZに付属するreadmeファイルに見出すことができる。BI2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を行う。
【0148】
BLASTNは核酸配列の比較に使用され、BLASTPはアミノ酸配列の比較に使用される。2つの核酸配列を比較するには、オプションを次のように設定する:-iには、比較する第1の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seql.txt)を設定し、-jには、比較する第2の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq2.txt)を設定し、-pにはblastnを設定し、-oには任意の望ましいファイル名(例えば、C:\output.txt)を設定し、-qには-1を設定し、-rには2を設定し、他の全てのオプションはデフォルト設定のままとする。次のコマンドは、2つの配列の比較を含む出力ファイルを生成する:C:\B12seq-i c:\seql.txt-j c:\seq2.txt -p blastn -o c:\output.txt -q -1 -r 2。標的配列が同定された配列の任意の部分と相同性を持つ場合、指定された出力ファイルはそれらの相同性領域を整列した配列として提示する。標的配列が同定された配列の任意の部分と相同性を持たない場合、指定された出力ファイルは整列した配列を提示しない。一旦整列されると、長さは、任意の一致した位置から始まり他の任意の一致した位置で終わる同定された配列からの配列と整列されて提示される標的配列からの連続したヌクレオチドの数を数えることによって決定される。一致した位置とは、標的配列および同定された配列の両方に同一のヌクレオチドが提示される任意の位置である。ギャップはヌクレオチドではないため、標的配列に提示されるギャップはカウントされない。同様に、標的配列のヌクレオチドがカウントされ、同定された配列のヌクレオチドはカウントされないため、同定された配列に提示されるギャップはカウントされない。特定の長さにわたる同一性パーセントは、その長さにわたって一致した位置の数を数え、その数を長さで除し、結果得られる値に100を乗じることによって決定される。例えば、(i)500塩基の核酸標的配列が対象核酸配列と比較され、(ii)Bl2seqプログラムが、対象配列の領域と整列された標的配列から200塩基を提示し、その200塩基領域の最初と最後の塩基は一致し、(iii)それらの整列された200塩基にわたる一致の数が180である場合、500塩基の核酸標的配列は200の長さを含み、その長さにわたる配列同一性は90%である(すなわち、180/200×100=90)。同定された配列と整列する単一の核酸標的配列内の異なる領域は、各々独自の同一性パーセントを有し得ることが理解されるであろう。同一性パーセント値は、小数点以下第2位で四捨五入されることに留意されたい。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は78.1に切り捨てられ、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は78.2まで切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることにも留意されたい。
【0149】
「単離された核酸」とは、その自然環境または元の環境から単離された核酸と理解される。この用語には、合成製造された核酸も含まれる。したがって、「単離された核酸配列」または「単離されたDNA」とは、それが単離された自然環境にもはや存在しない核酸配列、例えば、細菌宿主細胞中の核酸配列または植物核または色素体ゲノム中の核酸配列を指す。本明細書で「配列」に言及する場合、そのような配列を有する分子は、例えば核酸分子を指すと理解される。「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」または「形質転換細胞」は、少なくとも1つの核酸分子が前述の細胞に導入された結果として生じる新しい個々の細胞(または生物)を指す用語である。宿主細胞は、好ましくは植物細胞または細菌細胞である。宿主細胞は、染色体外(エピソーム)複製分子として核酸を含んでもよく、または宿主細胞の核もしくは色素体ゲノムに組み込まれた核酸を含むか、または導入された染色体、例えばミニ染色体としての核酸を含んでもよい。
【0150】
参照配列と「実質的な配列同一性」を有するか、または参照配列と少なくとも80%>、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%>もしくは99%>の核酸配列同一性の配列同一性を有する核酸配列(例えば、DNAまたはゲノムDNA)に言及する場合、一実施形態において、前述の核酸配列は、所与の核酸配列と実質的に同一であると考えられ、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用して同定することができる。別の実施形態において、核酸配列は、所与のヌクレオチド配列と比較して1つ以上の突然変異を含むが、それでもストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用して同定することができる。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を同定するために使用することができる。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況が異なることで異なる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHで、特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に一致したプローブにハイブリダイズする(定義されたイオン強度およびpHの下での)温度である。典型的には、塩濃度がpH7で約0.02モルであり、温度が少なくとも60℃であるストリンジェントな条件が選択される。塩濃度を下げ、かつ/または温度を上げるとストリンジェンシーが高まる。RNA-DNAハイブリダイゼーション(例えば、100ntのプローブを使用するノーザンブロット)のためのストリンジェントな条件とは、例えば、0.2×SSC中、63℃で20分間、少なくとも1回の洗浄を含む条件、または同等の条件である。DNA-DNAハイブリダイゼーション(例えば、100ntのプローブを使用するサザンブロット)のためのストリンジェントな条件とは、例えば、0.2×SSC中、少なくとも50℃、通常は約55℃の温度で20分間、少なくとも1回の洗浄(通常は2回)を含む条件、または同等の条件である。Sambrook et al. (1989)およびSambrook and Russell (2001)も参照のこと。
【0151】
用語「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイゼーション」とは、一本鎖核酸分子がそれ自体を相補的な核酸鎖に付着させる、すなわちこの塩基対形成に一致するプロセスを意味する。ハイブリダイゼーションの標準的な手順は、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd edition 2001)に記載されている。好ましくは、これは核酸鎖の塩基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%、より好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が相補的核酸鎖と塩基対を形成することを意味すると理解されるであろう。そのような結合の可能性は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。用語「ストリンジェンシー」は、ハイブリダイゼーション条件を指す。高ストリンジェンシーは塩基対形成がより困難な場合であり、低ストリンジェンシーは塩基対形成が促進される場合である。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、例えば、塩濃度またはイオン強度と、温度とに依存する。一般に、ストリンジェンシーは、温度を上げ、かつ/または塩分濃度を下げることによって高めることができる。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーションが主に相同核酸分子間でのみ起こる条件と定義される。用語「ハイブリダイゼーション条件」は、一般的な条件における核酸の実際の結合だけでなく、その後の洗浄ステップの一般的な条件も指す。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、例えば、主に、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する核酸分子のみがハイブリダイズする条件である。あまりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件には、4×SSC中、37℃でハイブリダイゼーションを行い、それに続けて、1×SSC中、室温で洗浄を繰り返すことが含まれる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、4×SSC中、65℃でハイブリダイゼーションを行い、それに続けて、0.1×SSC中、65℃で合計約1時間洗浄を繰り返すことが含まれる。ある実施形態において、ある他のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすると言われている。
【0152】
ある態様において、本発明は、1つ以上のALS阻害剤、特に最適な除草活性をもたらすのに十分な高用量のALS阻害剤への耐性があるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分に関する。ある実施形態において、本明細書に記載されるベータ・ブルガリス植物は、除草活性のために推奨される用量で1つ以上のALS阻害剤への耐性がある。好ましくは、前述の用量は単回適用用量である。生育期中に複数回の適用が必要な場合、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、好ましくは前述の複数回の適用に対して耐性があることが理解されるであろう。好ましくは、本発明によるALS阻害剤耐性ベータ・ブルガリス植物は、生育、収量、品質、病原体耐性、生理学的機能などの他の重要な農学的特性に関して欠点を有しない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「抵抗性がある(resistant)」、「抵抗性(resistance)」、「耐性(tolerance)」または「耐性がある(tolerant)」とは、1つ以上のALS阻害剤除草剤、例えば本明細書の他の箇所に記載されるものの適用が、それぞれのベータ・ブルガリス植物、特に371位に突然変異を含むALSポリペプチドを含むテンサイに適用した場合に、生理学的機能/細胞毒性に関する任意の明らかな影響を示さないことを意味し、一方、非耐性のベータ・ブルガリス植物に同量のそれぞれのALS阻害剤除草剤を適用すると、植物生育、その生理学的機能に関する重大な悪影響をもたらすか、または植物毒性徴候を示す。観察された影響の質および量は、適用されたALS阻害剤制除草剤の化学組成、適用率および適用の時期、ならびに処理された植物の生育条件/段階に依存し得る。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「耐性の増加」および「抵抗性の増加」は、ALS阻害剤除草剤の適用による任意の徴候(例えばダメージまたはバイオマスの損失など)のあらゆる軽減、提示の減少、改善、またはそれらの組み合わせに関する。また、本明細書で言及される抵抗性または耐性の増加とは、例えば、ALS阻害剤除草剤の適用時または適用後に、植物がそのバイオマス生産量(例えば収穫可能なバイオマス生産量、例えば種子収量)を維持する能力に関し得る。ALS阻害剤除草剤抵抗性または耐性の植物、植物細胞または植物の一部分は、本明細書において、それぞれ、それらが由来する親植物と比較してALS阻害剤除草剤に対して抵抗性/耐性が増加した(かつ371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質を有しない)植物、植物細胞または植物の一部分を指し得る。抵抗性または耐性は、本明細書において、1つ以上のALS阻害剤除草剤による植物の適応度、収量、バイオマス(生産)などへの影響を低減するその能力に関し得る。除草剤抵抗性/耐性を決定する方法、例えば、除草剤誘発ダメージの目視によるスコアリング、バイオマス(収量)の決定などが当業者に知られている。
【0155】
ALS阻害剤耐性は、0(枯死した植物)~9(完全に影響を受けていない植物)の尺度に基づく植物の活力および植物の退緑に関する目視損傷評価、例えば、グリホサート適用の2週間後に個々の植物に対して取得された評価によって決定することができる。0~3の評価は感受性植物の特性である。3~7の評価は低レベル~中間レベルの耐性を示し、8または9の評価は良好なレベルの耐性を示す。特に、評価は次の意味を有する:9.影響を受けていない植物は未処理の対照と同一である;8.葉の先端にごく小さな壊死がみられ、葉の面積の5%未満が影響を受けて黄色になる;7.葉の先端にごく小さな壊死があり、カールし始める;葉の面積の5%未満が影響を受けて黄色になる;6,5,4.壊死および葉のカールの増加;葉が通常よりも小さくなってくる;3,2.葉の生育がないか、または非常に限られている;全ての葉がカールし、壊死の影響を受けている;1.植物が生育しない;植物の5%までが緑色のままである;0.枯死した植物。ある好ましい実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、少なくとも3、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは9の評価を有する。
【0156】
ある実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、対応する野生型ベータ・ブルガリス植物よりも、ALS阻害剤除草剤に対して感受性が低い。ある実施形態において、本発明によるベータ・ブルガリス植物は、少なくとも10倍感受性が低く、例えば100倍感受性が低く、より好ましくは500倍、さらにより好ましくは1000倍、最も好ましくは2000倍未満である。本明細書で使用される場合、用語「耐性の増加」および「抵抗性の増加」は、「感受性の低下(reduced sensitivity)」または「感受性の低下(reduced susceptibility)」と互換的に使用され得る。したがって、1つ以上のALS阻害剤除草剤に対してより耐性があるか、またはより抵抗性がある本発明による植物、植物の一部分、または植物集団は、そのような除草剤に対してより感受性が低いと考えられる。本明細書で使用される場合、感受性が低い(less sensitive)または感受性が低い(less susceptible)とは、「より耐性がある」または「より抵抗性がある」とみなすことができる。同様に、「より耐性がある」または「より抵抗性がある」とは、逆に、「感受性が低い(less sensitive)」または「感受性が低い(less susceptible)」とみなすことができる。本明細書で使用される場合、「感受性が高い(more sensitive)」または「感受性が高い(more susceptible)」とは、逆に、「耐性が低い」または「抵抗性が低い」とみなすことができる。同様に、「耐性が低い」または「抵抗性が低い」とは、逆に「感受性が高い(more sensitive)」または「感受性が高い(more susceptible)」とみなすことができる。
【0157】
一般に、本発明のB.ブルガリス植物およびその一部は、農学的に利用可能であることが好ましい。「農学的に利用可能」とは、B.ブルガリス植物およびその一部が農学的目的に有用であることを意味する。例えば、B.ブルガリス植物は、糖生産、バイオ燃料生産(例えばバイオガス、バイオブタノール)、エタノール生産、ベタインおよび/またはウリジン生産に有用であるという目的のために役立つべきである。本明細書で使用される用語「農学的に利用可能な」は、本発明のB.ブルガリス植物がALS阻害剤除草剤に対して好ましくは感受性が低いこと、より好ましくは少なくとも100倍感受性が低いこと、より好ましくは500倍、さらにより好ましくは1000倍、最も好ましくは2000倍未満感受性が低いことも含む。ALS阻害剤除草剤は、本明細書に記載される1つ以上であり、それは好ましくは、ホラムスルフロン単独、またはスルホニル尿素系除草剤のサブクラスまたはALS阻害剤除草剤の他の任意のサブクラスからの1つ以上の更なるALS阻害剤除草剤との組み合わせのいずれかであり、最も好ましくは、それはホラムスルフロンと更なるスルホニル尿素系除草剤および/またはスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系除草剤のサブクラスのALS阻害剤との組み合わせである。
【0158】
好ましくは、本発明の農学的に利用可能なB.ブルガリス植物、最も好ましくはテンサイ植物は、完全に稔性であり、より好ましくは野生型の稔性を有する。稔性は、本発明のB.ブルガリス植物が農学的に利用可能であるために最も重要である。
【0159】
農学的に利用可能なB.ブルガリス植物の例はテンサイである。本発明のテンサイ植物は、1ヘクタールの面積(約80,000~90,000本のテンサイ)で栽培される場合、好ましくは少なくとも4トンの砂糖の生産に役立つべきである。代替的に、本発明のテンサイ植物は、農業的に利用可能であるように、好ましくは、15~20%、好ましくは少なくとも17%の糖含量を含むべきである。したがって、15~20%、好ましくは少なくとも17%の糖含量を含むテンサイ植物は、本発明の好ましい実施形態である。
【0160】
本発明のある実施形態において使用され得るALS阻害剤のクラスに属する除草化合物には、(a)スルホニル尿素系除草剤(Beyer E.M et al. (1988), Sulfonylureas in Herbicides: Chemistry, Degradation, and Mode of Action; Marcel Dekker, New York, 1988, 117-189)、(b)スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系除草剤(Pontzen, R., Pflanz.- Nachrichten Bayer, 2002, 55, 37-52)、(c)イミダゾリノン系除草剤(Shaner, D.L., et al., Plant Physiol., 1984, 76, 545-546; Shaner, D.L., and O’Connor, S.L. (Eds.) The Imidazolinone Herbicides, CRC Press, Boca Rato, FL, 1991)、(d)トリアゾロピリミジン系除草剤(Kleschick, W.A. et al., Agric. FoodChem, 1992, 40, 1083-1085)、および(e)ピリミジニル(オキシ/チオ)ベンゾエート系除草剤(Shimizu, T.J., Pestic. Sci.,1997, 22, 245-256; Shimizu, T. et al., Acetolactate Synthase Inhibitors in Herbicide Classes in Development, Boger, P., Wakabayashi. K., Hirai, K., (Eds.), Springer Verlag, Berlin, 2002, 1-41)が含まれる。
【0161】
ある実施形態において、ALS阻害剤は、スルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、トリアゾロピリミジン、スルホンアニリド、イミダゾリノン、ピリミジニルオキシベンゾエ酸、ピリミジニルチオベンゾエ酸から選択される。本発明のある態様において使用され得る更なるALS阻害剤は、例えば、国際公開第2014/090760号、国際公開第2012/049268号、国際公開第2012/049266号、欧州特許第2627183号明細書、および国際公開第2014/091021号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0162】
ある実施形態において、ALS阻害剤は、国際公開第2012/049266号の請求項2~4に列挙されたALS阻害剤から選択され、これらの全ては、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0163】
(スルホン)アミドの群からの化合物は、望ましくない植生を防除するための除草活性化合物としてすでに知られている;例えば、欧州特許第239414号明細書、米国特許第4288244号明細書、西独国特許第3303388号明細書、米国特許第5457085号明細書、米国特許第3120434号明細書、米国特許第3480671号明細書、欧州特許第206251号明細書、欧州特許第205271号明細書、米国特許第2556664号明細書、米国特許第3534098号明細書、欧州特許第53011号明細書、米国特許第04385927号明細書、欧州特許第348737号明細書、西独国特許出願公開第2822155号明細書、米国特許第3894078号明細書、英国特許出願公告第869169号明細書、欧州特許第447004号明細書、西独国特許第1039779号明細書、ハンガリー国特許第176582号明細書、米国特許第3442945号明細書、西独国特許第2305495号明細書、西独国特許第2648008号明細書、西独国特許第2328340号明細書、西独国特許第1014380号明細書、ハンガリー国特許第53483号明細書、米国特許第4802907号明細書、英国特許出願公告第1040541号明細書、米国特許第2903478号明細書、米国特許第3177061号明細書、米国特許第2695225号明細書、西独国特許第1567151号明細書、英国特許出願公告第574995号明細書、西独国特許第1031571号明細書、米国特許第3175897号明細書、特許第1098331号明細書、米国特許第2913327号明細書、国際公開第8300329号、特開昭55-127302号公報、西独国特許第1300947号明細書、西独国特許第2135768号明細書、米国特許第3175887号明細書、米国特許第3836524号明細書、特開昭60-067463号公報、米国特許第3582314号明細書、米国特許第53330821号明細書、欧州特許第131258号明細書、米国特許第4746353号明細書、米国特許第4420325号明細書、米国特許第4394506号明細書、米国特許第4127405号明細書、米国特許第4479821号明細書、米国特許第5009699号明細書、欧州特許第136061号明細書、欧州特許第324569号明細書、欧州特許第184385号明細書、国際公開第2002030921号、国際公開第09215576号、国際公開第09529899号、米国特許第4668277号明細書、欧州特許第305939号明細書、国際公開第09641537号、国際公開第09510507号、欧州特許第7677号明細書、中国特許第1080116号明細書、米国特許第4789393号明細書、欧州特許第971902号明細書、米国特許第5209771号明細書、欧州特許第84020号明細書、欧州特許第120814号明細書、欧州特許第87780号明細書、国際公開第08804297号、欧州特許第5828924号明細書、国際公開第2002036595号、米国特許第5,476,936号明細書、国際公開第2009/053058号および上述の刊行物に記載されている文献を参照のこと。
【0164】
イミダゾリノンの群からの化合物は、望ましくない植生を防除するための除草活性化合物としてすでに知られている;例えば、Proc. South. Weed Sci. Soc. 1992. 45, 341 , Proc. South. Weed Sci. Soc. Annu. Mtg. 36th, 1983, 29, Weed Sci. Soc. Annu. Mtg. 36th, 1983, 90-91 , Weed Sci. Soc. Mtg., 1984, 18, Modern Agrochemicals, 2004, 14-15を参照のこと。
【0165】
ピリミジニル(チオ)ベンゾエートの群からの化合物は、望ましくない植生を防除するための除草活性化合物としてすでに知られている;例えば、米国特許第4906285号明細書、欧州特許第658549号明細書、米国特許第5118339号明細書、国際公開第91/05781号、米国特許第4932999号明細書、および欧州特許第315889号明細書を参照のこと。
【0166】
スルホンアミドの群からの化合物は、望ましくない植物を防除するための除草活性化合物としてすでに知られている;例えば、国際公開第93/09099号、国際公開第2006/008159号、および国際公開第2005/096818号を参照のこと。
【0167】
本開示において引用される全ての刊行物および特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0168】
ある実施形態において、ALS阻害剤に対する抵抗性を付与する適切な突然変異型ALSは、欧州特許第2931902号明細書および国際公開第2012/049268号に記載されているとおりであり、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0169】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、(スルホン)アミド、例えばスルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホンアニリド、またはトリアゾロピリミジン;イミダゾリノン;およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択され、好ましくは、スルホニル尿素、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、イミダゾリノン、およびピリミジニル(チオ/オキシ)ベンゾエートから選択される。これらのクラスのALS阻害剤除草剤は、グループA(サブグループA1、A2、A3およびA4を有する)、B(B1)、およびC(サブグループC1およびC2を有する)に分類することができる。
【0170】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、以下:
アミドスルフロン[CAS RN 120923-37-7](=A1-1);
アジムスルフロン[CAS RN 120162-55-2](=A1-2);
ベンスルフロン-メチル[CAS RN 83055-99-6](=A1-3);
クロリムロン-エチル[CAS RN 90982-32-4](=A1-4);
クロルスルフロン[CAS RN 64902-72-3](=A1-5);
シノスルフロン[CAS RN 94593-91-6](=A1-6);
シクロスルファムロン[CAS RN 136849-15-5](=A1-7);
エタメトスルフロン-メチル[CAS RN 97780-06-8](=A1-8);
エトキシスルフロン[CAS RN 126801-58-9](=A1-9);
フラザスルフロン[CAS RN 104040-78-0](=A1-10);
フルセトスルフロン[CAS RN 412928-75-7](=A1-11);
フルピルスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144740-54-5](=A1-12);
ホラムスルフロン[CAS RN 173159-57-4](=A1-13);
ハロスルフロン-メチル[CAS RN 100784-20-1](=A1-14);
イマゾスルフロン[CAS RN 122548-33-8](=A1-15);
ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144550-36-7](=A1-16);
メソスルフロン-メチル[CAS RN 208465-21-8](=A1-17);
メトスルフロン-メチル[CAS RN 74223-64-6](=A1-18);
モノスルフロン[CAS RN 155860-63-2](=A1-19);
ニコスルフロン[CAS RN 111991-09-4](=A1-20);
オルトスルファムロン[CAS RN 213464-77-8](=A1-21);
オキサスルフロン[CAS RN 144651-06-9](=A1-22);
プリミスルフロン-メチル[CAS RN 86209-51-0](=A1-23);
プロスルフロン[CAS RN 94125-34-5](=A1-24);
ピラゾスルフロン-エチル[CAS RN 93697-74-6](=A1-25);
リムスルフロン[CAS RN 122931-48-0](=A1-26);
スルホメツロン-メチル[CAS RN 74222-97-2](=A1-27);
スルホスルフロン[CAS RN 141776-32-1](=A1-28);
チフェンスルフロン-メチル[CAS RN 79277-27-3](=A1-29);
トリアスルフロン[CAS RN 82097-50-5](=A1-30);
トリベヌロン-メチル[CAS RN 101200-48-0](=A1-31);
トリフロキシスルフロン[CAS RN 145099-21-4](ナトリウム)(=A1-32);
トリフルスルフロン-メチル[CAS RN 126535-15-7](=A1-33);
トリトスルフロン[CAS RN 142469-14-5](=A1-34);
NC-330[CAS RN 104770-29-8](=A1-35);
NC-620[CAS RN 868680-84-6](=A1-36);
TH-547[CAS RN 570415-88-2](=A1-37);
モノスルフロン-メチル[CAS RN 175076-90-1](=A1-38);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミド(=A1-39);
一般式(I)の化合物
【化7】
[式中、Mは、化合物(I)のそれぞれの塩、すなわち、
そのリチウム塩(=A1-40);そのナトリウム塩(=A1-41);そのカリウム塩(=A1-42);そのマグネシウム塩(=A1-43);そのカルシウム塩(=A1-44);そのアンモニウム塩(=A1-45);そのメチルアンモニウム塩(=A1-46);そのジメチルアンモニウム塩(=A1-47);そのテトラメチルアンモニウム塩(=A1-48);そのエチルアンモニウム塩(=A1-49);そのジエチルアンモニウム塩(=A1-50);そのテトラエチルアンモニウム塩(=A1-51);そのプロピルアンモニウム塩(=A1-52);そのテトラプロピルアンモニウム塩(=A1-53);そのイソプロピルアンモニウム塩(=A1-54);そのジイソプロピルアンモニウム塩(=A1-55);そのブチルアンモニウム塩(=A1-56);そのテトラブチルアンモニウム塩(=A1-57);その(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-58);そのビス-N,N-(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-59);そのトリス-N,N,N-(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-60);その1-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-61);その2-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-62);そのトリメチルスルホニウム塩(=A1-63);そのトリメチルオキソニウム塩(=A1-64);そのピリジニウム塩(=A1-65);その2-メチルピリジニウム塩(=A1-66);その4-メチルピリジニウム塩(=A1-67);その2,4-ジメチルピリジニウム塩(=A1-68);その2,6-ジメチルピリジニウム塩(=A1-69);そのピペリジニウム塩(=A1-70);そのイミダゾリウム塩(=A1-71);そのモルホリニウム塩(=A1-72);その1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-7-エニウム塩(=A1-73);その1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エニウム塩(=A1-74)である];
式(II)の化合物またはその塩
【化8】
[式中、R、およびRは、以下の表に定義される意味を有する]
【表2】
式(III)(=A1-87)の化合物、すなわち化合物(A1-83)のナトリウム塩
【化9】
および式(IV)の化合物(=A1-88)、すなわち化合物(A1-82)のナトリウム塩
【化10】
のうちの1つ以上から選択されるスルホニル尿素である。
【0171】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
フルカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-17-9](=A2-1);
プロポキシカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-15-7](=A2-2);および
チエンカルバゾン-メチル[CAS RN 317815-83-1](=A2-3)
のうちの1つ以上から選択されるスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノンである。
【0172】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
クロランスラム-メチル[147150-35-4](=A3-1);
ジクロスラム[CAS RN 145701-21-9](=A3-2);
フロラスラム[CAS RN 145701-23-1](=A3-3);
フルメトスラム[CAS RN 98967-40-9](=A3-4);
メトスラム[CAS RN 139528-85-1](=A3-5);
ペノキススラム[CAS RN 219714-96-2](=A3-6);
ピロクススラム[CAS RN 422556-08-9](=A3-7)
のうちの1つ以上から選択されるトリアゾロピリミジンである。
【0173】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
一般式(V)で記載される群からの化合物またはその塩
【化11】
[式中、
はハロゲン、好ましくはフッ素または塩素であり、
は水素であり、かつRはヒドロキシルであるか、または
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になってカルボニル基C=Oであり、
は水素またはメチルである];
より具体的には、以下の所与の化学構造(A4-1)~(A4-8)の化合物
【化12-1】
【化12-2】
のうちの1つ以上から選択されるスルホンアニリドである。
【0174】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
イマザメタベンズメチル[CAS RN 81405-85-8](=B1-1);
イマザモックス[CAS RN 114311-32-9](=B1-2);
イマザピック[CAS RN 104098-48-8](=B1-3);
イマザピル[CAS RN 81334-34-1](=B1-4);
イマザキン[CAS RN 81335-37-7](=B1-5);
イマゼタピル[CAS RN 81335-77-5](=B1-6);
SYP-298[CAS RN 557064-77-4](=B1-7);
SYP-300[CAS RN 374718-10-2](=B1-8)
のうちの1つ以上から選択されるイミダゾリノンである。
【0175】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
ビスピリバック-ナトリウム[CAS RN 125401-92-5](=C1-1);
ピリベンゾキシム[CAS RN 168088-61-7](=C1-2);
ピリミノバック-メチル[CAS RN 136191-64-5](=C1-3);
ピリバムベンズ-イソプロピル[CAS RN 420138-41-6](=C1-4);
ピリバムベンズ-プロピル[CAS RN 420138-40-5](=C1-5)
のうちの1つ以上から選択されるピリミジニルオキシベンゾエートである。
【0176】
ある実施形態において、本明細書で使用されるALS阻害剤除草剤は、
ピリフタリド[CAS RN 135186-78-6](=C2-1);
ピリチオバク-ナトリウム[CAS RN 123343-16-8](=C2-2)
のうちの1つ以上から選択されるピリミジニルチオベンゾエートである。
【0177】
グループA~Cに挙げられている名称(一般名)の後ろの角括弧内に記載されている「CAS RN」は、この「CAS RN」が、とりわけ、立体異性体を含む異性体を区別することから、指定された物質を一義的に分類することを可能にする慣例的な参照番号である「化学物質アブストラクトサービス登録番号」に対応する。
【0178】
用語「ALS阻害剤除草剤」または単に「ALS阻害剤」は互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「ALS阻害剤除草剤」または「ALS阻害剤」は、ALS酵素の活性を妨げる単一の除草剤に限定されることを意味しない。したがって、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、「ALS阻害剤除草剤」または「ALS阻害剤」は、当該技術分野で公知の1種の除草剤、または2種、3種、4種、またはそれよりも多い除草剤の混合物であり得、好ましくは本明細書で規定されるように、それらの各々がALS酵素の活性を妨げる。
【0179】
好ましくは、グループ(A)に属する本発明によるALS阻害剤除草剤は、以下のとおりである:
アミドスルフロン[CAS RN 120923-37-7](=A1-1);
クロリムロン-エチル[CAS RN 90982-32-4](=A1-4);
エタメトスルフロン-メチル[CAS RN 97780-06-8](=A1-8);
エトキシスルフロン[CAS RN 126801-58-9](=A1-9);
フルピルスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144740-54-5](=A1-12);
ホラムスルフロン[CAS RN 173159-57-4](=A1-13);
ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144550-36-7](=A1-16);
メソスルフロン-メチル[CAS RN 208465-21-8](=A1-17);
メトスルフロン-メチル[CAS RN 74223-64-6](=A1-18);
モノスルフロン[CAS RN 155860-63-2](=A1-19);
ニコスルフロン[CAS RN 111991-09-4](=A1-20);
スルホスルフロン[CAS RN 141776-32-1](=A1-28);
チフェンスルフロン-メチル[CAS RN 79277-27-3](=A1-29);
トリベヌロンメチル[CAS RN 101200-48-0](=A1-31);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミド(=A1-39);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミドナトリウム塩(=A1-41);
(A1-83)またはそのナトリウム塩(=A1-87);
プロポキシカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-15-7](=A2-2);
チエンカルバゾン-メチル[CAS RN 317815-83-1](=A2-3);
フロラスラム[CAS RN 145701-23-1](=A3-3);
メトスラム[CAS RN 139528-85-1](=A3-5);
ピロクススラム[CAS RN 422556-08-9](=A3-7)
(A4-1);
(A4-2);および
(A4-3)。
【0180】
グループ(A)に属する本発明に従って特に好ましくは使用されるALS阻害剤除草剤は以下のとおりである:
アミドスルフロン[CAS RN 120923-37-7](=A1-1);
ホラムスルフロン[CAS RN 173159-57-4](=A1-13);
ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144550-36-7](=A1-16);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミド(=A1-39);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミドナトリウム塩(=A1-41);
A1-83またはそのナトリウム塩(=A1-87);
チエンカルバゾン-メチル[CAS RN 317815-83-1](=A2-3)。
【0181】
グループ(B)に属する本発明に従って好ましくは使用される別のALS阻害剤除草剤は、イマザモックス[CAS RN 114311-32-9](=B1-2)である。
【0182】
グループ(C)に属する本発明に従って好ましくは使用される別のALS阻害剤除草剤は、ビスピリバック-ナトリウム[CAS RN 125401-92-5](=C1-1)である。
【0183】
上記で定義される全てのALS阻害剤除草剤に関して、それぞれのCAS RNによってすでに規定されていない場合には、酸、および塩などの全ての使用形態が本発明に従って適用され得ることをさらに理解されたい。
【0184】
さらに、本発明に従って使用されるALS阻害剤除草剤は、更なる成分、例えば、異なる種類の作用様式の農薬活性化合物および/または作物保護において慣用される配合補助剤および/または添加剤、例えば農学的に許容され得る担体を含んでもよく、またはこれらと一緒に併用することもできる。
【0185】
好ましい実施形態において、本発明に従って使用される除草剤の組み合わせは、グループ(A)、(B)および/または(C)に属するALS阻害剤除草剤の有効量を含み、かつ/または相乗作用を有する。この相乗作用は、例えば、グループ(A)、(B)、および/または(C)に属する1つ以上のALS阻害剤除草剤を、例えば、共配合またはタンクミックスとして一緒に適用する場合に観察され得るが、しかしながら、それらは活性化合物を異なる時期に適用(分割)する場合にも観察され得る。また、除草剤または除草剤の組み合わせを複数回に分けて適用すること(逐次適用)も可能であり、例えば、発芽前適用に続いて発芽後適用が行われるか、または発芽後早期適用に続いて中期もしくは後期発芽後適用が行われる。ここでは、当該組み合わせのグループ(A)、(B)および/または(C)に属するALS阻害剤除草剤を共同またはほぼ同時に適用することが好ましい。相乗効果により、個々のALS阻害剤除草剤の適用量の低減、同じ適用量でのより高い効果、まだ防除されていない種の防除(ギャップ)、個々のALS阻害剤除草剤または多数のALS阻害剤除草剤に対して抵抗性または耐性がある種の防除、適用期間の延長および/または必要な個々の適用回数の低減と、その結果、ユーザーにとって経済的および環境学的により有利な雑草防除システムとが可能になる。
【0186】
本発明に従って使用される除草剤は、全てアセト乳酸シンターゼ(ALS)阻害剤除草剤(代替的かつ交換可能に「ALS阻害剤除草剤」とも呼ばれ得る)であり、したがって植物におけるタンパク質生合成を阻害する。(上記で定義される)グループ(A)、(B)または(C)に属するALS阻害剤除草剤の適用量は、例えば、0.001g~1500gのai/ha(ai/haは、ここ以降「1ヘクタール当たりの活性物質」=100%純粋な活性化合物に基づくことを意味する)の広い範囲内で変動し得る。0.001g~1500gのai/haの適用量で適用すると、本発明によるクラスA、BおよびCに属する除草剤、好ましくは化合物A1-1;A1-4;A1-8;A1-9;A1-12;A1-13;A1-16;A1-17;A1-18;A1-19;A1-20;A1-28;A1-29;A1-31;A1-39;A1-41;A1-83;A1-87;A2-2;A2-3;A3-3;A3-5;A3-7、A4-3は、発芽前および発芽後方法によって使用される場合、比較的広範囲の有害植物、例えば、一年生および多年生の単子葉または双子葉雑草、およびまた、例えば、雑草ビート、または一年生ビート、またはとう立ちを含む、望ましくない作物植物(合わせて「望ましくない植生」とも定義される)を防除する。
【0187】
本発明による多くの適用では、適用量は一般に低く、例えば、0.001g~1000gのai/ha、好ましくは0.1g~500gのai/ha、特に好ましくは0.5g~250gのai/ha、さらにより好ましくは1.0g~200gのai/haの範囲である。複数のALS阻害剤除草剤の適用を行う場合、その量は適用された全てのALS阻害剤除草剤の総量を表す。
【0188】
例えば、(グループ(A)、(B)および/または(C)に属する)ALS阻害剤除草剤の本発明による組み合わせにより、(グループ(A)、(B)および/または(C)に属する)個々のALS阻害剤除草剤を使用して達成され得る活性をはるかに、かつ予想外の方法で凌ぐ活性を相乗的に増強することができる。
【0189】
ALS阻害剤除草剤の組み合わせについて、好ましい条件を以下に例示する。
【0190】
本発明に従って特に興味深いのは、以下のALS阻害剤除草剤の含有量を有する除草組成物の使用である:
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【0191】
さらに、本発明に従って使用されるALS阻害剤除草剤は、更なる成分、例えば、異なる種類の作用様式の農薬活性化合物および/または作物保護において慣用される配合補助剤および/または添加剤を含むことができ、またはこれらと一緒に併用することもできる。
【0192】
本発明に従って使用されるALS阻害剤除草剤またはそのようなALS阻害剤除草剤の種々の組み合わせは、さらに種々の農薬活性化合物、例えば、毒性緩和剤、殺菌剤、殺虫剤の群から、または作物保護において慣用される配合補助剤および添加剤の群からのものを含み得る。
【0193】
更なる実施態様において、本発明は、望ましくない植生を防除するための相乗効果を得るために、有効量のALS阻害剤除草剤(すなわち、グループ(A)、(B)および/または(C)のメンバー)と非ALS阻害剤除草剤(すなわち、ALS酵素[アセトヒドロキシ酸シンターゼ;EC 2.2.1.6]の阻害とは異なる作用様式を示す除草剤(グループD除草剤))とを使用することに関する。そのような相乗作用は、例えば、1つ以上のALS阻害剤除草剤(すなわち、グループ(A)、(B)、および/または(C)のメンバー)と1つ以上の非ALS阻害剤除草剤(グループD除草剤)とを、例えば、共配合またはタンクミックスとして一緒に適用する場合に観察され得るが、しかしながら、それらは活性化合物を異なる時期に適用(分割)する場合にも観察され得る。また、ALS阻害剤除草剤と非ALS阻害剤除草剤とを複数回に分けて適用すること(逐次適用)も可能である。例えば、発芽前適用に続いて発芽後適用が行われるか、または発芽後早期適用に続いて中期もしくは後期発芽後適用が行われる。ここでは、当該組み合わせの除草剤((A)、(B)および/または(C))と(D)とを共同またはほぼ同時に適用することが好ましい。
【0194】
ALS阻害剤除草剤と一緒に適用される適切なパートナー除草剤は、例えば、上記で定義されるようなグループ(A)、(B)および(C)に属する除草剤とは構造的に異なる次の除草剤であり、好ましくは、その作用が、例えば、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ、PS I、PS II、HPPDO、フィトエンデサチュラーゼ、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ、グルタミンシンターゼ、セルロース生合成、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンテターゼの阻害に基づく除草活性化合物であり、例えば、Weed Research 26, 441-445 (1986)、または“The Pesticide Manual”, 14th edition, The British Crop Protection Council, 2007、または15th edition 2010、または対応する“e-Pesticide Manual”, Version 5 (2010)、いずれの場合も英国作物保護協議会によって発行されている(以降、略して「PM」ともいう)、およびその中で引用されている文献に記載されている。一般名のリストは、インターネット上の“The Compendium of Pesticide Common Names”でも入手可能である。文献から知られている除草剤(以下、一般名の後ろの括弧内は指標D1~D426によっても分類される)、これは、グループ(A)、(B)および/または(C)のALS阻害剤除草剤と組み合わせることができ、本発明に従って使用される活性化合物は、例えば、以下に列挙される活性化合物である:(注:除草剤は、国際標準化機構(ISO)に準拠した「一般名」または化学名のいずれかで呼ばれる。必要に応じて慣例的なコード番号を併記し、それぞれの場合において、文脈が別段の指示をしない限り、酸、塩、エステルおよび異性体、例えば立体異性体および光学異性体などの全ての使用形態、特に商業形態を含む。与えられた引用は1つの使用形式のものであり、場合によっては2つ以上の使用形式のものである):
アセトクロール(=D1)、アシベンゾラル(=D2)、アシベンゾラル-S-メチル(=D3)、アシフルオルフェン(=D4)、アシフルオルフェン-ナトリウム(=D5)、アクロニフェン(=D6)、アラクロール(=D7)、アリドクロール(=D8)、アロキシジム(=D9)、アロキシジム-ナトリウム(=D10)、アメトリン(=D11)、アミカルバゾン(=D12)、アミドクロール(=D13)、アミノシクロピラクロール(=D14)、アミノピラリド(=D15)、アミトロール(=D16)、スルファミン酸アンモニウム(=D17)、アンシミドール(=D18)、アニロホス(=D19)、アシュラム(=D20)、アトラジン(=D21)、アザフェニジン(=D22)、アジプロトリン(=D23)、ベフルブタミド(=D24)、ベナゾリン(=D25)、ベナゾリン-エチル(=D26)、ベンカルバゾン(=D27)、ベンフルラリン(=D28)、ベンフレセート(=D29)、ベンスリド(=D30)、ベンタゾン(=D31)、ベンズフェンジゾン(=D32)、ベンゾビシクロン(=D33)、ベンゾフェナプ(=D34)、ベンゾフルオル(=D35)、ベンゾイルプロップ(=D36)、ビシクロピロン(=D37)、ビフェノックス(=D38)、ビラナホス(=D39)、ビラナホス-ナトリウム(=D40)、ブロマシル(=D41)、ブロモブチド(=D42)、ブロモフェノキシム(=D43)、ブロモキシニル(=D44)、ブロムロン(=D45)、ブミナホス(=D46)、ブソキシノン(=D47)、ブタクロール(=D48)、ブタフェナシル(=D49)、ブタミホス(=D50)、ブテナクロール(=D51)、ブトラリン(=D52)、ブトロキシジム(=D53)、ブチレート(=D54)、カフェンストロール(=D55)、カルベタミド(=D56)、カルフェントラゾン(=D57)、カルフェントラゾン-エチル(=D58)、クロメトキシフェン(=D59)、クロランベン(=D60)、クロラジホップ(=D61)、クロラジホップ-ブチル(=D62)、クロルブロムロン(=D63)、クロルブファム(=D64)、クロルフェナク(=D65)、クロルフェナク-ナトリウム(=D66)、クロルフェンプロップ(=D67)、クロルフルレノール(=D68)、クロルフルレノール-メチル(=D69)、クロリダゾン(=D70)、クロルメコート-クロリド(=D71)、クロルニトロフェン(=D72)、クロロフタリム(=D73)、クロルタール-ジメチル(=D74)、クロロトルロン(=D75)、シニドン(=D76)、シニドン-エチル(=D77)、シンメチリン(=D78)、クレトジム(=D79)、クロジナホップ(=D80)、クロジナホップ-プロパルギル(=D81)、クロフェンセット(=D82)、クロマゾン(=D83)、クロメプロップ(=D84)、クロプロップ(=D85)、クロピラリド(=D86)、クロランスラム(=D87)、クロランスラム-メチル(=D88)、クミルロン(=D89)、シアナミド(=D90)、シアナジン(=D91)、シクラニリド(=D92)、シクロエート(=D93)、シクロキシジム(=D94)、シクルロン(=D95)、シハロホップ(=D96)、シハロホップ-ブチル(=D97)、シペルコート(=D98)、シプラジン(=D99)、シプラゾール(=D100)、2,4-D(=D101)、2,4-DB(=D102)、ダイムロン/ダイムロン(daimuron/dymron)(=D103)、ダラポン(=D104)、ダミノジド(=D105)、ダゾメット(=D106)、n-デカノール(=D-107)、デスメディファム(=D108)、デスメトリン(=D109)、デトシル-ピラゾレート(=D110)、ジアレート(=D111)、ジカンバ(=D112)、ジクロベニル(=D113)、ジクロルプロップ(=D114)、ジクロルプロップ-P(=D115)、ジクロホップ(=D116)、ジクロホップ-メチル(=D117)、ジクロホップ-P-メチル(=D118)、ジエタチル(=D119)、ジエタチル-エチル(=D120)、ジフェノクスロン(=D121)、ジフェンゾコート(=D122)、ジフルフェニカン(=D123)、ジフルフェンゾピル(=D124)、ジフルフェンゾピル-ナトリウム(=D125)、ジメフロン(=D126)、ジケグラク-ナトリウム(=D127)、ジメフロン(=D128)、ジメピペレート(=D129)、ジメタクロール(=D130)、ジメタメトリン(=D131)、ジメテナミド(=D132)、ジメテナミド-P(=D133)、ジメチピン(=D134)、ジメトラスルフロン(=D135)、ジニトラミン(=D136)、ジノセブ(=D137)、ジノテルブ(=D138)、ジフェナミド(=D139)、ジプロペトリン(=D140)、ジコート(=D141)、ジコート-ジブロミド(=D142)、ジチオピル(=D143)、ジウロン(=D144)、DNOC(=D145)、エグリナジン-エチル(=D146)、エンドタール(=D147)、EPTC(=D148)、エスプロカルブ(=D149)、エタフルラリン(=D150)、エテホン(=D151)、エチジムロン(=D152)、エチオジン(=D153)、エトフメセート(=D154)、エトキシフェン(=D155)、エトキシフェン-エチル(=D156)、エトベンザニド(=D157)、F-5331(=2-クロロ-4-フルオロ-5-[4-(3-フルオロプロピル)-4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1H-テトラゾール-1-イル]-フェニル]-エタンスルホンアミド)(=D158)、F-7967(=3-[7-クロロ-5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-4-イル]-1-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン)(=D159)、フェノプロップ(=D160)、フェノキサプロップ(=D161)、フェノキサプロップ-P(=D162)、フェノキサプロップ-エチル(=D163)、フェノキサプロップ-P-エチル(=D164)、フェノキサスルホン(=D165)、フェントラザミド(=D166)、フェヌロン(=D167)、フラムプロップ(=D168)、フラムプロップ-M-イソプロピル(=D169)、フラムプロップ-M-メチル(=D170)、フルアジホップ(=D171)、フルアジホップ-P(=D172)、フルアジホップ-ブチル(=D173)、フルアジホップ-P-ブチル(=D174)、フルアゾレート(=D175)、フルクロラリン(=D176)、フルフェナセット(チアフルアミド)(=D177)、フルフェンピル(=D178)、フルフェンピル-エチル(=D179)、フルメトラリン(=D180)、フルミクロラック(=D181)、フルミクロラック-ペンチル(=D182)、フルミオキサジン(=D183)、フルミプロピン(=D184)、フルオメツロン(=D185)、フルオロジフェン(=D186)、フルオログリコフェン(=D187)、フルオログリコフェン-エチル(=D188)、フルポキサム(=D189)、フルプロパシル(=D190)、フルプロパネート(=D191)、フルレノール(=D192)、フルレノール-ブチル(=D193)、フルリドン(=D194)、フルロクロリドン(=D195)、フルロキシピル(=D196)、フルロキシピル-メプチル(=D197)、フルプリミドール(=D198)、フルルタモン(=D199)、
フルチアセット(=D200)、フルチアセット-メチル(=D201)、フルチアミド(=D202)、ホメサフェン(=203)、ホルクロルフェニュロン(=D204)、ホサミン(=D205)、フリルオキシフェン(=D206)、ジベレリン酸(=D207)、グルホシネート(=D208)、グルホシネート-アンモニウム(=D209)、グルホシネート-P(=D210)、グルホシネート-P-アンモニウム(=D211)、グルホシネート-P-ナトリウム(=D212)、グリホサート(=D213)、グリホサート-イソプロピルアンモニウム(=D214)、H-9201(=O-(2,4-ジメチル-6-ニトロフェニル)-O-エチル-イソプロピルホスホルアミドチオエート)(=D215)、ハロサフェン(=D216)、ハロキシホップ(=D217)、ハロキシホップ-P(=D218)、ハロキシホップ-エトキシエチル(=D219)、ハロキシホップ-P-エトキシエチル(=D220)、ハロキシホップ-メチル(=D221)、ハロキシホップ-P-メチル(=D222)、ヘキサジノン(=D223)、HW-02(=1-(ジメトキシホスホリル)-エチル(2,4-ジクロルフェノキシ)アセテート)(=D224)、イナベンフィド(=D225)、インダノファン(=D226)、インダジフラム(=D227)、インドール-3-酢酸(IAA)(=D228)、4-インドール-3-イル酪酸(IBA)(=D229)、イオキシニル(=D230)、イプフェンカルバゾン(=D231)、イソカルバミド(=D232)、イソプロパリン(=D233)、イソプロツロン(=D234)、イソウロン(=D235)、イソキサベン(=D236)、イソキサクロルトール(=D237)、イソキサフルトール(=D238)、イソキサピリホップ(=D239)、KUH-043(=3-({[5-(ジフルオロメチル)-1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル]メチル}スルホニル)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール)(=D240)、カルブチレート(=D241)、ケトスピラドックス(=D242)、ラクトフェン(=D243)、レナシル(=D244)、リヌロン(=D245)、マレイン酸ヒドラジド(=D246)、MCPA(=D247)、MCPB(=D248)、MCPB-メチル、-エチルおよび-ナトリウム(=D249)、メコプロップ(=D250)、メコプロップ-ナトリウム(=D251)、メコプロップ-ブトチル(=D252)、メコプロップ-P-ブトチル(=D253)、メコプロップ-P-ジメチルアンモニウム(=D254)、メコプロップ-P-2-エチルヘキシル(=D255)、メコプロップ-P-カリウム(=D256)、メフェナセット(=D257)、メフルイジド(=D258)、メピコート-クロリド(=D259)、メソトリオン(=D260)、メタベンズチアズロン(=D261)、メタム(=D262)、メタミホップ(=D263)、メタミトロン(=D264)、メタザクロール(=D265)、メタゾール(=D266)、メチオピルスルフロン(=D267)、メチオゾリン(=D268)、メトキシフェノン(=D269)、メチルジムロン(=D270)、1-メチルシクロプロペン(=D271)、メチルイソチオシアネート(=D272)、メトベンズロン(=D273)、メトブロムロン(=D274)、メトラクロール(=D275)、S-メトラクロール(=D-276)、メトクスロン(=D277)、メトリブジン(=D278)、モリネート(=D279)、モナリド(=D280)、モノカルバミド(=D281)、モノカルバミド-硫酸二水素酸塩(=D282)、モノリヌロン(=D283)、モノスルフロン-エステル(=D284)、モヌロン(=D285)、MT-128(=6-クロロ-N-[(2E)-3-クロロプロップ-2-エン-1-イル]-5-メチル-N-フェニルピリダジン-3-アミン)(=D286)、MT-5950(=N-[3-クロロ-4-(1-メチルエチル)-フェニル]-2-メチルペンタンアミド)(=D287)、NGGC-011(=D288)、ナプロアニリド(=D289)、ナプロパミド(=D290)、ナフタラム(=D291)、NC-310(=4-(2,4-ジクロロベンゾイル)-1-メチル-5-ベンジルオキシピラゾール)(=D292)、ネブロン(=D293)、ニピラクロフェン(=D294)、ニトラリン(=D295)、ニトロフェン(=D296)、ニトロフェノレート-ナトリウム(異性体混合物)(=D297)、ニトロフルオルフェン(=D298)、ノナン酸(=D299)、ノルフルラゾン(=D300)、オルベンカルブ(=D301)、オリザリン(=D302)、オキサジアルギル(=D303)、オキサジアゾン(=D304)、オキサジクロメホン(=D305)、オキシフルオルフェン(=D306)、パクロブトラゾール(=D307)、パラコート(=D308)、パラコート-ジクロリド(=D309)、ペラルゴン酸(ノナン酸)(=D310)、ペンジメタリン(=D311)、ペンドラリン(=D312)、ペンタノクロール(=D313)、ペントキサゾン(=D314)、ペルフルイドン(=D315)、ペトキサミド(=D317)、フェニソファム(=D318)、フェンメディファム(=D319)、フェンメディファム-エチル(=D320)、ピクロラム(=D321)、ピコリナフェン(=D322)、ピノキサデン(=D323)、ピペロホス(=D324)、ピリフェノプ(=D325)、ピリフェノプ-ブチル(=D326)、プレチラクロール(=D327)、プロベナゾール(=D328)、プロフルアゾール(=D329)、プロシアジン(=D330)、プロジアミン(=D331)、プリフルラリン(=D332)、プロホキシジム(=D333)、プロヘキサジオン(=D334)、プロヘキサジオン-カルシウム(=D335)、プロヒドロジャスモン(=D336)、プロメトン(=D337)、プロメトリン(=D338)、プロパクロール(=D339)、プロパニル(=D340)、プロパキザホップ(=D341)、プロパジン(=D342)、プロファム(=D343)、プロピソクロール(=D344)、プロピザミド(=D345)、プロスルファリン(=D346)、プロスルホカルブ(=D347)、プリナクロール(=D348)、ピラクロニル(=D349)、ピラフルフェン(=D350)、ピラフルフェン-エチル(=D351)、ピラスルホトール(=D352)、ピラゾリネート(ピラゾレート)(=D353)、ピラゾキシフェン(=D354)、ピリバムベンズ(=D355)、ピリブチカルブ(=D356)、ピリダホール(=D357)、ピリデート(=D358)、ピリミノバク(=D359)、ピリミスルファン(=D360)、ピロキサスルホン(=D361)、キンクロラック(=D362)、キンメラック(=D363)、キノクラミン(=D364)、キザロホップ(=D365)、キザロホップ-エチル(=D366)、キザロホップ-P(=D367)、キザロホップ-P-エチル(=D368)、キザロホップ-P-テフリル(=D369)、サフルフェナシル(=D370)、セクブメトン(=D371)、セトキシジム(=D372)、シデュロン(=D373)、シマジン(=D374)、シメトリン(=D375)、SN-106279(=メチル-(2R)-2-({7-[2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-2-ナフチル}オキシ)-プロパノエート)(=D376)、スルコトリオン(=D377)、スルファレート(CDEC)(=D378)、スルフェントラゾン(=D379)、スルホセート(グリホサート-トリメシウム)(=D380)、SYN-523(=D381)、SYP-249(=1-エトキシ-3-メチル-1-オキソブタ-3-エン-2-イル-5-[2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-2-ニトロベンゾエート)(=D382)、テブタム(=D383)、テブチウロン(=D384)、テクナゼン(=D385)、テフリルトリオン(=D386)、テンボトリオン(=D387)、テプラロキシジム(=D388)、テルバシル(=D389)、テルブカルブ(=D390)、テルブクロール(=D391)、テルブメトン(=D392)、テルブチラジン(=D393)、テルブトリン(=D394)、テニルクロール(=D395)、チアフルアミド(=D396)、チアザフルロン(=D397)、チアゾピル(=D398)、チジアジミン(=D399)、チジアズロン(=D400)、チオベンカルブ(=D401)、チオカルバジル(=D402)、トプラメゾン(=D403)、トラルコキシジム(=D404)、トリアレート(=D405)、トリアジフラム(=D406)、トリアゾフェンアミド(=D407)、トリクロロ酢酸(TCA)(=D408)、トリクロピル(=D409)、トリジファン(=D410))、トリエタジン(=D411)、トリフルラリン(=D412)、トリメツロン(=D413)、トリネキサパック(=D414)、トリネキサパック-エチル(=D415)、チトデフ(tsitodef)(=D416)、ウニコナゾール(=D417)、ウニコナゾール-P(=D418)、ベルノレート(=D419)、ZJ-0862(=3,4-ジクロロ-N-{2-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)オキシ]ベンジル}アニリン)(=D420)、およびそれぞれそれらの化学構造によって定義される以下の化合物;
【化14】
【0195】
好ましくは、上記で定義されるようなグループ(A)、(B)、および(C)に属するALS阻害剤除草剤とは構造的におよびその作用様式によって異なり、かつ本発明に従って適用される更なる除草剤は、以下のグループに属するものである:クロリダゾン(=D70)、クレトジム(=D79)、クロジナホップ(=D80)、クロジナホップ-プロパルギル(=D81)、クロピラリド(=D86)、シクロキシジム(=D94)、デスメディファム(=D108)、ジメテナミド(=D132)、ジメテナミド-P(=D133)、エトフメセート(=D154)、フェノキサプロップ(=D161)、フェノキサプロップ-P(=D162)、フェノキサプロップ-エチル(=D163)、フェノキサプロップ-P-エチル(=D164)、フルアジホップ(=D171)、フルアジホップ-P(=D172)、フルアジホップ-ブチル(=D173)、フルアジホップ-P-ブチル(=D174)、グルホシネート(=D208)、グルホシネート-アンモニウム(=D209)、グルホシネート-P(=D210)、グルホシネート-P-アンモニウム(=D211)、グルホシネート-P-ナトリウム(=D212)、グリホサート(=D213)、グリホサート-イソプロピルアンモニウム(=D214)、ハロキシホップ(=D217)、ハロキシホップ-P(=D218))、ハロキシホップ-エトキシエチル(=D219)、ハロキシホップ-P-エトキシエチル(=D220)、ハロキシホップ-メチル(=D221)、ハロキシホップ-P-メチル(=D222)、レナシル(=D244)、メタミトロン(=D264)、フェンメディファム(=D319)、フェンメディファム-エチル(=D320)、プロパキザホップ(=D341)、キンメラック(=D363)、キザロホップ(=D365)、キザロホップ-エチル(=D366)、キザロホップ-P(=D367)、キザロホップ-P-エチル(=D368)、キザロホップ-P-テフリル(=D369)、セトキシジム(=D372)。
【0196】
さらにより好ましくは、上記で定義されるようなグループ(A)、(B)および(C)に属するALS阻害剤除草剤とは異なり、かつグループ(A)、(B)および(C)に属するALS阻害剤除草剤と関連して本発明に従って適用される更なる除草剤は、以下の群に属するものである:デスメディファム(=D108)、エトフメセート(=D154)、グルホシネート(=D208)、グルホシネート-アンモニウム(=D209)、グルホシネート-P(=D210)、グルホシネート-P-アンモニウム(=D211)、グルホシネート-P-ナトリウム(=D212)、グリホサート(=D213)、グリホサート-イソプロピルアンモニウム(=D214)、レナシル(=D244)、メタミトロン(=D264)、フェンメディファム(=D319)、フェンメディファム-エチル(=D320)。
【0197】
本発明に従って使用するために非常に興味深い、ALS阻害剤除草剤と非ALS阻害剤除草剤とを含む混合物、1つ以上のALS阻害剤除草剤(グループ(A)、(B)および(C)の1つ以上に属する化合物)と非ALS阻害剤除草剤(グループ(D)メンバー;上記で定義したとおり)との混合物を含む組成物は、以下のとおりである:
【化15-1】
【化15-2】
【0198】
ある実施形態において、非ALS阻害剤除草剤は、ALS阻害剤除草剤と組み合わせて適用され得る。ある実施形態において、それぞれの除草剤の適用は、(i)共同もしくは同時に行われるか、または(ii)異なる時間および/または複数の部分で行われ(逐次適用)、発芽前適用に続いて発芽後適用が行われるか、または発芽後早期適用に続いて中期もしくは後期発芽後適用が行われる。ある実施形態において、除草剤は、クロリダゾン、クレトジム、クロジナホップ、クロジナホップ-プロパルギル、クロピラリド、シクロキシジム、デスメディファム、ジメテナミド、ジメテナミド-P、エトフメセート、フェノキサプロップ、フェノキサプロップ-P、フェノキサプロップ-エチル、フェノキサプロップ-P-エチル、フルアジホップ、フルアジホップ-P、フルアジホップ-ブチル、フルアジホップ-P-ブチル、グルホシネート、グルホシネート-アンモニウム、グルホシネート-P、グルホシネート-P-アンモニウム、グルホシネート-P-ナトリウム、ハロキシホップ、ハロキシホップ-P、ハロキシホップ-エトキシエチル、ハロキシホップ-P-エトキシエチル、ハロキシホップ-メチル、ハロキシホップ-P-メチル、レナシル、メタミトロン、フェンメディファム、フェンメディファム-エチル、プロパキザホップ、キンメラック、キザロホップ、キザロホップ-エチル、キザロホップ-P、キザロホップ-P-エチル、キザロホップ-P-テフリル、セトキシジムから選択される。
【0199】
ALS阻害剤除草剤の適用は、根茎(rhizomes)、根茎(root stocks)および他の多年生器官から芽を出し、防除が難しい多年生雑草にも効率的に作用する。ここで、物質は、例えば、播種前方法、発芽前方法または発芽後方法によって、例えば、共同または別々に適用することができる。特に、発芽した有害植物に対しては、例えば、発芽後方法による適用が好ましい。
【0200】
特定の種に限定して列挙されることなく、ALS阻害剤除草剤によって防除され得る単子葉および双子葉の雑草叢の幾つかの代表的な具体例を挙げることができる。
【0201】
本発明による適用が効率的に作用する雑草種の例は、単子葉雑草種の中から、カラムスギ属(Avena spp.)、スズメノテッポウ属(Alopecurus spp.)、セイヨウヌカボ属(Apera spp.)、ブラキリア属(Brachiaria spp.)、スズメノチャヒキ属(Bromus spp.)、メヒシバ属(Digitaria spp.)、ドクムギ属(Lolium spp.)、ノビエ属(Echinochloa spp.)、パニカム属(Panicum spp.)、クサヨシ属(Phalaris spp.)、イチゴツナギ属(Poa spp.)、エノコログサ属(Setaria spp.)、およびまた一年草群からのカヤツリグサ(Cyperus)種、多年生種の中では、カモジグサ(Agropyron)種、ギョウギシバ(Cynodon)種、チガヤ(Imperata)種およびソルガム(Sorghum)種、およびまた多年生カヤツリグサ種である。
【0202】
双子葉雑草の場合、その作用スペクトルは、例えば、アブチロン属(Abutilon spp.)、アマランサス属(Amaranthus spp.)、アカザ属(Chenopodium spp.)、キク属(Chrysanthemum spp.)、ヤエムグラ属(Galium spp.)、サツマイモ属(Ipomoea spp.)、コキア属(Kochia spp.)、オドリコソウ属(Lamium spp.)、カミツレ属(Matricaria spp.)、アサガオ属(Pharbitis spp.)、タデ属(Polygonum spp.)、シダ属(Sida spp.)、シロガラシ属(Sinapis spp.)、ナス属(Solanum spp.)、ハコベ属(Stellaria spp.)、ベロニカ属(Veronica spp)、およびスミレ属(Viola spp.)、オナモミ属(Xanthium spp.)、ならびに一年生雑草の場合にはセイヨウヒルガオ属(Convolvulus)、アザミ属(Cirsium)、スイバ属(Rumex)およびヨモギ属(Artemisia)などの属に及ぶ。
【0203】
本明細書に記載される除草剤は、例えば雑草ビート(または一年生ビート)を防除するためにも使用することができる。栽培されるベータ・ブルガリスは二年草で、これは一年目に貯蔵根および葉のロゼットを形成する。シュートの伸長(抽だい)および花の形成は低温期間の後に始まるが、野生型フダンソウ(B.vulgaris ssp.maritima)属の多くの野生ビートは、B遺伝子座に抽だい遺伝子Bが存在することに起因して、一年草の生育習性を示す。抽だい遺伝子(B遺伝子)はテンサイにおける一年生習性の決定に関与している。ベータ種における年次性は、単因子性かつ優性形質であると考えられている。優性B対立遺伝子を保有する植物は、春化とは無関係に幼若期から生殖期に切り替わることができ、これとは対照的に、b対立遺伝子を保有する二年草の植物は、抽だいとそれに続く開花のために春化が必ず必要である。B遺伝子座の優性対立遺伝子は野生のビートに豊富に存在し、劣性対立遺伝子を保有する二年草の品種には通常不可欠な寒冷要件なしに、長日下で抽だいを引き起こす。本明細書で使用される「B遺伝子」とは、テンサイなどのベータ・ブルガリスにおける一年生習性(早期抽だい)の決定に関与する遺伝子を指す。優性対立遺伝子Bを保有する植物は、春化とは無関係に幼若期から生殖期に切り替わることができ、すなわち、低温に事前にさらすことなくシュートの伸長とそれに続く開花を行うことができる。
【0204】
一態様において、本発明は、ベータ・ブルガリス生育地域などにおける望ましくない植生を防除するための、またはベータ・ブルガリス生育地域の収量を維持もしくは増加させるための方法であって、以下のステップ:
a)本明細書の他の箇所に記載されるように、特に371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質を含む、本発明によるベータ・ブルガリス植物を植え付けるか、またはベータ・ブルガリス種子を播種するステップ;
b)生育中の植物に、好ましくは、望ましくない植生の生育を阻害するのに十分な量で、より好ましくは、望ましくない植生を枯死させるのに十分な量で、1つ以上のALS阻害剤除草剤を適用するステップ;および
c)任意選択的に、生育期中にステップb)を繰り返すステップ
を含む、方法に関する。
【0205】
関連する態様において、本発明は、本明細書の他の箇所で定義されるように、ベータ・ブルガリス生育地域などにおける望ましくない植生を防除するための、またはベータ・ブルガリス生育地域における収量を維持もしくは増加させるための、1つ以上のALS阻害剤除草剤の使用であって、ベータ・ブルガリス植物が、本明細書の他の箇所で記載されるような本発明によるものであり、特に371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質を含む。
【0206】
ビートルート(またはルートビート)の収量が維持または増加されることが特に好ましい。
【0207】
ある実施形態において、望ましくない植生を防除するための方法は、本明細書に記載されるように、とう立ち(bolters)、雑草ビート、または一年生ビートを防除するための方法を含み、ベータ・ブルガリス生育地域、好ましくはベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリス生育地域、特にBeta vulgaris subsp.vulgaris var.altissima生育地域のとう立ち、雑草ビート、または一年生ビートなどの望ましくない植生を防除するための方法に関し得る。ある実施形態において、本明細書に記載されるように、とう立ち、雑草ビート、または一年生ビートなどの望ましくない植生を防除するための方法は、二年草のベータ・ブルガリス生育地域、好ましくは二年草のベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリス生育地域、特に二年草のBeta vulgaris subsp.vulgaris var.altissima生育地域のとう立ち、雑草ビート、または一年生ビートなどの望ましくない植生を防除するための方法に関する。
【0208】
ある実施形態において、本明細書に記載される使用は、ベータ・ブルガリス生育地域、好ましくはベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリス生育地域、特にBeta vulgaris subsp.vulgaris var.altissima生育地域における使用に関する。ある実施形態において、本明細書に記載される使用は、二年草のベータ・ブルガリス生育地域、好ましくは二年草のベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリス生育地域、特に二年草Beta vulgaris subsp.vulgaris var.altissima生育地域における使用に関する。
【0209】
「二年草(biennial)」または「隔年草(biannual)」のベータ・ブルガリスは、生物学的なライフサイクルを完了するのに2年かかるベータ・ブルガリス植物を指す。「一年草」のベータ・ブルガリスとは、1年以内に発芽し、開花し、枯死するベータ・ブルガリス植物を指す。「一年草のベータ・ブルガリス」とは、B遺伝子座の優性対立遺伝子Bをヘテロ接合体またはホモ接合体の状態で含むベータ・ブルガリス植物を指す。「二年草のベータ・ブルガリス」とは、B遺伝子座の劣性対立遺伝子bをホモ接合状態で含むベータ・ブルガリス植物を指す。
【0210】
「抽だい」とは、植生ロゼット期から花序または生殖成長期への移行、特にシュート形成への移行を指す。抽だい(茎の伸長)は、植生から生殖生育への移行において、はっきりと目に見える最初のステップである。抽だいは、生育1年目の間に(望ましくない)シュートが出ることを特徴とすることがあり、これは収穫および加工に不利であるだけでなく、作物の収穫量も減少させる。たしかに、例えばテンサイの場合、種子または果実ではなく、むしろ植物の地下部分である貯蔵根が使用され、根に貯蔵されたエネルギーは、植物のとう立ちおよび開花の間に消費されてしまうことから、ベータ・ブルガリス植物の抽だいおよび開花は望ましくない。
【0211】
本明細書で使用される場合、用語「抽だい」は、生育期、特にベータ・ブルガリス植物が植え付けられるか、または播種されるのと同じ年に、好ましくはビートが収穫される時期または収穫される必要がある時期の前に、抽だいするベータ・ブルガリス植物を指す。ある実施形態において、とう立ちは一年生のベータ・ブルガリス植物である。ある実施形態において、とう立ちは雑草ビートである。ある実施形態において、とう立ちはシービート(すなわち、ベータ・ブルガリス・サブスプ・マリティマ(Beta vulgaris subsp.maritima)である。ある実施形態において、とう立ちは、ベータ・ブルガリス・サブスプ・ブルガリスではない。ある実施形態において、とう立ちは、Beta vulgaris subsp.vulgaris var.altissimaではない。ある実施形態において、とう立ちは、優性抽だい遺伝子(B遺伝子)を含む。本明細書で使用される場合、用語「雑草ビート」は、ビート生育地域における意図された栽培ビート植物とは対照的に、望ましくないビート植物を指す。雑草ビートは、典型的には野生のビートである。雑草ビートは、好ましくは一年生ビートであり、任意選択的にベータ・ブルガリス・サブスプ・マリティマである。
【0212】
本明細書で使用される場合、とう立ちまたは望ましくない植物もしくは植生などの望ましくない植生を防除するという文脈における「防除する」には、とう立ち、雑草ビートもしくは一年生ビートまたは望ましくない植物の生育を阻害もしくは防止すること、または雑草ビートもしくは一年生ビートの抽だいを阻害すること、または少なくとも雑草ビートもしくは一年生ビートの種子生産を阻害することが含まれる。「防除する」には、好ましくは抽だいが起こる前に、または少なくとも抽だい、雑草ビート、もしくは一年生ビートの種子生産の前に、抽だい、雑草ビート、もしくは一年生ビート、または望ましくない植物を枯死させることも含まれ得る。「防除する」には、好ましくは抽だいが起こる前に、または少なくとも抽だい、雑草ビート、もしくは一年生ビートの種子生産の前に、ビート生育地域における抽だい、雑草ビート、もしくは一年生ビート、または望ましくない植物の量を減少させることも含まれ得る。ある実施形態における抽だい植物または望ましくない植物などを防除することとは、抽だいまたは望ましくない植物などの量の少なくとも50%の減少、または抽だい植物または望ましくない植物などのバイオマスの少なくとも50%の減少、例えば、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%または少なくとも90%の減少を指す。
【0213】
本明細書で使用される場合、「望ましくない植物」または「望ましくない植生」とは、望ましくない場所に生育する全ての植物を意味すると理解される。これは、例えば、有害な植物(例えば、単子葉もしくは双子葉の雑草または望ましくない作物植物)であってもよい。
【0214】
本明細書で使用される場合、「ベータ・ブルガリス生育地域」とは、ビートルートの収穫または種子の収穫などの収穫を目的として、ベータ・ブルガリス植物が栽培される(すなわち、意図的に植え付けられるか、または播種される)農業地域を指す。
【0215】
本明細書に記載されるような本発明による方法および使用は、ある態様において、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分(すなわち、例えば雑草ビートとは対照的に、栽培されたベータ・ブルガリス植物)の収量を増加させるためのものであってもよい。収量の増加は、例えば、(栽培された)ベータ・ブルガリスの量の増加、または(栽培された)ベータ・ブルガリスのバイオマスの増加、例えば、収穫されたまたは収穫可能な植物の一部分、例えばビートルートのバイオマスの量の増加である。収量の増加はまた、例えばテンサイの場合、全体的な糖量または含量の増加(例えば、1ヘクタール当たりの糖収量の増加)であってもよい。
【0216】
本明細書で使用される場合、用語「生育期」は、一般に、ベータ・ブルガリス植物または種子を植え付けるか、または播種してからベータ・ブルガリス植物、特にビートルートを収穫するまでの間の期間を指す。通常、生育期は4月~10月/11月である。しかしながら、当業者であれば、例えば気候もしくは気象条件または地質学的条件に依存して生育期が長くなったり短くなったりする場合があることを理解するであろう。さらに、例えば冬ビートまたは春ビートの生産などにおいて、生育期がずれることがあることも理解されるであろう。
【0217】
ある態様において、本明細書に記載されるような除草剤は、本明細書に記載されるような本発明による方法および使用において、とう立ち、雑草ビート、または一年生ビートなどの望ましくない植生を防除(例えば、枯死、生育の阻害、開花の防止または遅延など)するのに十分な用量で適用される。ある実施形態において、そのような用量は、製造業者によって推奨されるとおりである。この用量は、好ましくは単回適用量を指す。生育期中に1回を超える適用、例えば2回または3回の適用などが必要な場合があることは理解されるであろう。そのような後続の適用の用量は、同じであってもよいし、または最初の適用の用量とは異なっていてもよい。
【0218】
ある実施形態において、本発明による植物もしくは植物の一部分は、D371突然変異に加えて、ALSにおける1つ以上の突然変異を含む。ある実施形態において、本発明による植物もしくは植物の一部分は、D371突然変異に代わるALSにおける1つ以上の突然変異を含む。
【0219】
ある実施形態において、植物もしくは植物の一部分は、以下から選択される1つ以上の突然変異を有するALSを含む:113位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、188位にプロリン(P)とは異なるアミノ酸、196位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、372位にアルギニン(R)とは異なるアミノ酸、569位にトリプトファン(W)とは異なるアミノ酸、648位にセリン(S)とは異なるアミノ酸、649位にグリシン(G)とは異なるアミノ酸。ある実施形態において、植物もしくは植物の一部分は、以下から選択される1つ以上の突然変異を有する突然変異型ALSをコードするポリ核酸を含む:113位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、188位にプロリン(P)とは異なるアミノ酸、196位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、372位にアルギニン(R)とは異なるアミノ酸、569位にトリプトファン(W)とは異なるアミノ酸、648位にセリン(S)とは異なるアミノ酸、649位にグリシン(G)とは異なるアミノ酸。ある実施形態において、植物もしくは植物の一部分は、以下から選択される1つ以上の突然変異を有するALSタンパク質をコードする内因性ALS対立遺伝子を含む:113位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、188位にプロリン(P)とは異なるアミノ酸、196位にアラニン(A)とは異なるアミノ酸、372位にアルギニン(R)とは異なるアミノ酸、569位にトリプトファン(W)とは異なるアミノ酸、648位にセリン(S)とは異なるアミノ酸、649位にグリシン(G)とは異なるアミノ酸。アミノ酸置換は、本明細書の他の箇所で定義されるとおりである。特定の実施形態において、突然変異は保存的アミノ酸置換である。
【0220】
ある実施形態において、本発明による植物もしくは植物の一部分は、569位にトリプトファンとは異なるアミノ酸、例えばアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、バリンまたはアルギニン、好ましくはロイシンを有するALSタンパク質(または(内因性)ALSタンパク質をコードするポリ核酸、またはALSタンパク質をコードする内因性ALS対立遺伝)を含む。
【0221】
ある実施形態において、本発明による植物もしくは植物の一部分は、371位にアスパラギン酸、好ましくはグルタミン酸とは異なるアミノ酸と、569位にトリプトファン、好ましくはロイシンとは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質(または(内因性)ALSタンパク質をコードするポリ核酸、またはALSタンパク質をコードする内因性ALS対立遺伝子)を含む。
【0222】
これらの追加の突然変異は、同じ対立遺伝子上に存在してもよいし、異なる対立遺伝子上に存在してもよい(すなわち、二重突然変異体ALSまたは2つの別々の単一突然変異体ALS)。
【0223】
ある実施形態において、本発明による植物もしくは植物の一部分は、ALS以外の他の遺伝子における1つ以上の突然変異、特に除草剤抵抗性を付与する他の遺伝子における変異を含む。
【0224】
グリホサートは、芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンの合成を阻害することが知られている唯一の除草剤であるため、ユニークな除草剤である。これらの3つのアミノ酸を合成できない植物は生命力がない。芳香族アミノ酸につながる生合成経路の影響を受ける酵素は5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)であり、これはシキミ酸-3-リン酸(S3P)とホスホエノールピルビン酸(PEP)との反応を触媒して5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)を形成する。グリホサートはPEPと構造が似ており、EPSPSに結合し、酵素の反応を競合的に阻害する。グリホサートはEPSPSに作用する唯一の除草剤として知られている。芳香族アミノ酸の合成を阻害すると、多かれ少なかれ直ちに生育の停止が引き起こされ、最終的には適用後数日以内に植物が枯死する。したがって、グリホサートは一般に非選択的除草剤であり、接触したあらゆる生きた植物組織に深刻なダメージを与えるか、または枯死させる。しかしながら、それはテンサイ、トウモロコシ、ダイズ、綿花、およびカノーラを含む、グリホサート抵抗性作物に選択的に使用することができる。
【0225】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスepspシンターゼは、NCBI参照配列XP_010692222.1で提供されるようなアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスepspシンターゼは、NCBI参照配列XP_010692222.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくはepspシンターゼ活性を有し、ただし、179位のアミノ酸残基はプロリンであり、任意選択的に175位のアミノ酸残基はスレオニンである。
【0226】
ある実施形態において、野生型ベータ・ブルガリスepspシンターゼ遺伝子は、NCBI参照配列XP_010692222.1で提供されるようなアミノ酸配列をコードする配列を有する。ある実施形態において、野生型またはネイティブベータ・ブルガリスepspシンターゼ遺伝子は、NCBI参照配列XP_010692222.1の配列と、好ましくは全長にわたって、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有し、好ましくはepspシンターゼ活性を有し、ただし、179位のアミノ酸残基はプロリンであり、任意選択的に175位のアミノ酸残基はスレオニンである。
【0227】
好ましくは、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基位置がepspシンターゼについて言及される場合、番号付けは参照配列XP_010692222.1のアミノ酸位に対応する。好ましい実施形態において、突然変異型EPSPSは、アミノ酸位179における突然変異、特に、P179S突然変異などの、179位がプロリンでない突然変異を含む。好ましい実施形態において、突然変異型EPSPSは、アミノ酸位175における突然変異、特に、T175I突然変異などの、175位がスレオニンではない突然変異を含む。ある実施形態において、両方の突然変異がEPSPSに存在する。両方の突然変異はグリホサート抵抗性を付与する。
【0228】
ある実施形態において、本発明の植物もしくは植物の一部分は、好ましくは、(アミノ酸位371、または本明細書で言及される他のアミノ酸位のいずれかに突然変異を含んでいることは別として)内因性であるALS遺伝子に関して非トランスジェニックである。もちろん、本発明は、他の外来遺伝子を遺伝子工学または交雑などの従来の方法のいずれかによって植物に導入できることを排除するものではない。前述の遺伝子は、除草剤耐性を付与する遺伝子、好ましくはALS阻害剤除草剤耐性とは異なる除草剤耐性を付与する遺伝子、収量を改善する遺伝子、生物有機体に対する抵抗性を改善する遺伝子、および/または内容改変に関する遺伝子であり得る。
【0229】
ここでの用語「トランスジェニック」は、非内因性核酸配列の導入によって遺伝的に改変されたことを意味する。典型的には、種特異的な核酸配列は、ある形態、配置または量で細胞内に、その核酸配列が細胞内で天然に存在しない場所に導入される。本発明によるベータ・ブルガリス植物は、好ましくは突然変異型ALSシンターゼに関して非トランスジェニックであるが、そのようなベータ・ブルガリス植物は他の形質に関してトランスジェニックであってもよいことが理解されるであろう。
【0230】
ある態様において、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるような突然変異型ALSタンパク質をコードする(単離された)ポリ核酸に関する。ある実施形態において、(単離された)ポリ核酸は、配列番号3に記載される配列を有するALSタンパク質と、好ましくはその全長にわたって、少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、例えば少なくとも98%同一であるALSタンパク質をコードし、ただし、371位のアミノ酸はアスパラギン酸ではない。ある実施形態において、(単離された)ポリ核酸は、配列番号1に記載される配列(すなわち、突然変異型ALS遺伝子)と、好ましくはその全長にわたって、少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、例えば少なくとも98%同一であり、ただし、371位のALSアミノ酸に対応するコドンはアスパラギン酸をコードしない。ある実施形態において、(単離された)ポリ核酸は、配列番号2に記載される配列(すなわち、突然変異型ALS cDNAまたはコード配列)と、好ましくはその全長にわたって、少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、例えば少なくとも98%同一であり、ただし、371位のALSアミノ酸に対応するコドンはアスパラギン酸をコードしない。好ましくは、ALSタンパク質は、本明細書の他の箇所に記載されるような、ALS(酵素)活性を有する。ある実施形態において、371位のアミノ酸はグルタミン酸である。ある実施形態において、ALSタンパク質は、配列番号3に記載されるような配列を有する。ある態様において、本発明は、そのようなポリ核酸を含むベータ・ブルガリス植物もしくはその一部分に関する。好ましい実施形態において、ベータ・ブルガリス植物もしくはその一部分は、その内因性遺伝子座に、好ましくはその内因性プロモーターの制御下に、そのようなポリ核酸を含む。したがって、ある実施形態において、本発明は、そのようなポリ核酸が内因性ALSプロモーターに作動可能に連結されたベータ・ブルガリス植物もしくはその一部分に関する。ポリ核酸はALS cDNAに対応してもよいし、ALS遺伝子配列に対応してもよいことが理解されるであろう。
【0231】
ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、50000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、40000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、30000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、25000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、20000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、15000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、10000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、5000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ50000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ40000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100ヌクレオチドかつ30000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ25000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ20000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ15000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドかつ10000個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は、少なくとも100個のヌクレオチドおよび5000個未満のヌクレオチドを含む。
【0232】
一態様において、本発明は、本明細書で言及されるポリ核酸を含むベクターに関する。ベクターは、原核生物ベクターまたは真核生物ベクターなどの、当該技術分野で公知の任意のベクターであり得る。ある実施形態において、ポリ核酸は、当該技術分野で公知のように、プロモーターなどのベクター中の1つ以上の調節配列に作動可能に連結される。ある実施形態において、プロモーターは植物プロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0233】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は当該技術分野における通常の意味を有し、例えば、プラスミド、コスミド、ファージまたは発現ベクター、形質転換ベクター、シャトルベクターもしくはクローニングベクターであってもよく;それは二本鎖または一本鎖、直鎖または環状であってもよく;または原核生物宿主もしくは真核生物宿主を、そのゲノムへの組み込みを介してまたは染色体外のいずれかで形質転換してもよい。本発明による核酸は、好ましくは、原核生物または真核生物宿主細胞における転写、および任意選択的に発現を可能にする1つ以上の調節配列とベクター中で作動可能に連結される。調節配列-好ましくはDNA-は、本発明による核酸と相同であっても異種であってもよい。例えば、核酸は、適切なプロモーターまたはターミネーターの制御下にある。適切なプロモーターは、構成的に誘導されるプロモーター(例えば、「カリフラワーモザイクウイルス」からの35Sプロモーター(Odell et al., 1985);組織特異的なプロモーターが特に適している(例:花粉特異的プロモーター、Chen et al. (2010)、Zhao et al. (2006)、またはTwell et al. (1991)):または発生特異的なプロモーター(例:花特異的プロモーター)であってもよい。適切なプロモーターはまた、自然界には存在しない合成またはキメラプロモーターであり得、複数のエレメントから構成され、最小プロモーターの他、最小プロモーターの上流に、特別な転写因子の結合場所として機能する少なくとも1つのシス調節エレメントも含む。キメラプロモーターは、所望の仕様に従って設計することができ、異なる因子を介して誘導または抑制される。そのようなプロモーターの例は、Gurr & Rushton (2005)またはVenter (2007)に見出される。例えば、適切なターミネーターはnos-ターミネーターである(Depicker et al., 1982)。ベクターは、コンジュゲーション、動員、バイオリスティック形質転換、アグロバクテリア媒介形質転換、トランスフェクション、形質導入、真空浸潤、またはエレクトロポレーションを介して導入され得る。
【0234】
ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージもしくは発現ベクター、形質転換ベクター、シャトルベクター、またはクローニングベクターであってもよく;それは二本鎖または一本鎖、直鎖または環状であってもよい。ベクターは、原核生物宿主もしくは真核生物宿主を、そのゲノムへの組み込みを介してまたは染色体外のいずれかで形質転換してもよい。
【0235】
ある実施形態において、ベクターは発現ベクターである。核酸は、好ましくは、原核生物または真核生物宿主細胞における転写、および任意選択的に発現を可能にする1つ以上の調節配列とベクター中で作動可能に連結される。調節配列は、核酸と相同であっても異種であってもよい。例えば、核酸は、適切なプロモーターまたはターミネーターの制御下にある。適切なプロモーターは、構成的に誘導されるプロモーター、例えば、「カリフラワーモザイクウイルス」からの35Sプロモーターであってもよい(Odell et al., 1985. Identification of DNA sequences required for activity of the cauliflower mosaic virus 35S promoter)。Chen et al. (2010. Molecular Biology Reports 37(2):737-744)、Zhao et al. (2006. Planta 224(2): 405-412)、またはTwell et al. (1991. Genes & Development 5(3): 496-507)に記載されるような組織特異的なプロモーター、例えば花粉特異的プロモーターが特に適しており、発生特異的プロモーター、例えば開花特異的プロモーターも同様である。適切なプロモーターはまた、自然界には存在せず、かつ複数のエレメントから構成される合成またはキメラプロモーターであってもよい。そのような合成またはキメラプロモーターは、最小プロモーターの他、特別な転写因子の結合場所として機能する少なくとも1つのシス調節エレメントも含む。キメラプロモーターは、所望の仕様に従って設計することができ、異なる因子を介して誘導または抑制され得る。そのようなプロモーターの例は、Gurr & Rushton (2005. Trends in Biotechnology 23(6): 275-282)またはVenter (2007. Trends in Plant Science: 12(3): 118-124)に見出される。例えば、適切なターミネーターはnos-ターミネーターである(Depicker et al., 1982. Journal of Molecular and Applied Genetics 1(6): 561-573)。
【0236】
ある実施形態において、ベクターは条件付き発現ベクターである。ある実施形態において、ベクターは構成的発現ベクターである。ある実施形態において、ベクターは、組織特異的発現ベクター、例えば葉特異的発現ベクターである。ある実施形態において、ベクターは誘導性発現ベクターである。そのようなベクターは全て当該技術分野で周知である。
【0237】
記載されたベクターの調製方法は、当業者に知られている(Sambrook et al., 2001)。
【0238】
また、本明細書では、本明細書に記載されるような核酸、または本明細書に記載されるようなベクターを含む、植物細胞または(植物)プロトプラストなどの宿主細胞も想定される。宿主細胞は、染色体外(エピソーム)複製分子として核酸を含むか、または宿主細胞の核もしくはプラスチドゲノムに組み込まれた核酸を含むか、または導入された染色体、例えばミニ染色体としての核酸を含む。
【0239】
宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、植物細胞もしくは酵母細胞)である。例えば、宿主細胞は、アグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)であってもよい。好ましくは、宿主細胞は植物細胞である。
【0240】
本明細書に記載される核酸または本明細書に記載されるベクターは、例えば、コンジュゲーション、動員、バイオリスティック形質転換、アグロバクテリア媒介形質転換、トランスフェクション、形質導入、真空浸潤、またはエレクトロポレーションを含む、選択された宿主細胞に依存し得る周知の方法を介して宿主細胞中に導入され得る。特に、アグロバクテリウム細胞に核酸またはベクターを導入するための方法は当業者に周知であり、コンジュゲーションまたはエレクトロポレーション方法を含み得る。また、核酸またはベクターを植物細胞に導入するための方法も知られており(Sambrook et al., 2001)、バイオリスティック形質転換およびアグロバクテリウム媒介形質転換などの多様な形質転換法が含まれ得る。
【0241】
ある実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるような核酸、特に誘導促進核酸または本明細書に記載されるような二本鎖RNAをコードする核酸を、本明細書に記載されるような導入遺伝子またはベクターとして含むトランスジェニック植物細胞に関する。更なる実施形態において、本発明は、トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物細胞を含むその一部分に関する。
【0242】
例えば、そのようなトランスジェニック植物細胞またはトランスジェニック植物は、好ましくは安定的に、本明細書に記載されるような核酸または本明細書に記載されるようなベクターで形質転換された植物細胞または植物である。
【0243】
好ましくは、トランスジェニック植物細胞中の核酸は、植物細胞における転写、および任意選択的に発現を可能にする1つ以上の調節配列と作動可能に連結されている。調節配列は、核酸と相同であっても異種であってもよい。次いで本発明による核酸と調節配列とで構成される全構造は、導入遺伝子を表すことができる。
【0244】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるような本発明のポリ核酸分子のいずれか、またはその相補体もしくは逆相補体と特異的にハイブリダイズすることができるポリ核酸、好ましくは単離されたポリ核酸に関する。ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、配列番号1もしくは2のヌクレオチド配列分子;またはその相補体もしくは逆相補体と特異的にハイブリダイズすることができる。そのようなポリ核酸は、関連配列(例えば、突然変異型遺伝子対野生型遺伝子)と(機能的に)ハイブリダイズしない場合、記載された配列と特異的にハイブリダイズすることが理解されるであろう。したがって、そのようなポリ核酸は、例えば、本発明による突然変異型ALSと、例えば野生型ALSとを識別するために使用することができる。ある実施形態において、ポリ核酸は、500個未満のヌクレオチド、例えば400個未満のヌクレオチド、例えば300個未満のヌクレオチド、例えば200個未満のヌクレオチド、例えば100個未満のヌクレオチド、例えば好ましくは80個未満のヌクレオチド、より好ましくは60個未満のヌクレオチド、最も好ましくは50個未満のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、少なくとも5個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも10個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15個のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、5~500個のヌクレオチド、好ましくは10~100個のヌクレオチド、より好ましくは15~50個のヌクレオチド、例えば20~50個のヌクレオチドを含む。ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、本明細書の他の箇所に記載されるようなプライマーまたはプローブ、例えばKASPプライマー(競合対立遺伝子特異的PCR)である。
【0245】
ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、配列番号7の少なくとも10個の最も3末端側のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15個の最も3末端側のヌクレオチド、例えば少なくとも20個の最も3末端側のヌクレオチド、その相補体、またはその逆相補体を含む。ある実施形態において、そのようなポリ核酸は、配列番号7に記載される配列、その相補体、またはその逆相補体を含むか、またはそれらからなる。
【0246】
一態様において、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、特に371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する(内因性)ALSタンパク質を含むベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための、本明細書に記載されるようなポリ核酸(特に突然変異体ALSをコードするポリ核酸)、ベクター、または宿主細胞の使用に関する。
【0247】
ある態様において、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、特に371位にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する(内因性)ALSタンパク質を含むベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するための、本明細書に記載されるようなポリ核酸、特にプライマーまたはプローブの使用に関する。
【0248】
ある態様において、本発明は、
a)配列番号1に記載される配列を含むポリ核酸;
b)配列番号2に記載される配列を含むポリ核酸;
c)配列番号2に記載されるcDNA配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸;
d)配列番号3に記載される配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸
を含む、植物の一部分のベータ・ブルガリス植物に関する。
【0249】
ある実施形態において、そのようなベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分は、さらに、
a)配列番号10に記載される配列を含むポリ核酸;
b)配列番号11に記載される配列を含むポリ核酸;
c)配列番号11に記載されるcDNA配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸;
d)配列番号12に記載される配列を有するALSタンパク質をコードするポリ核酸
を含む。
【0250】
好ましくは、これらのポリ核酸は、植物もしくは植物の一部分のゲノムに含まれることが理解されるであろう。好ましくは、これらのポリ核酸は、条件付きまたは構成的に発現され、したがって、本明細書の他の箇所に記載されるように、適切な調節配列の制御下にある。好ましい実施形態において、これらのポリ核酸は、内因性ALSプロモーターの制御下で内因性ALSの位置にある。
【0251】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分などのベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための方法であって、植物もしくは植物の一部分、例えばプロトプラストに、本発明によるポリ核酸を、好ましくは植物もしくは植物の一部分のゲノムにおいて、特に、本明細書の他の箇所で定義されるような本発明による(内因性)突然変異体ALSをコードするポリ核酸を導入することを含む、方法に関する。ある実施形態において、そのような方法は、プロトプラストなどの植物の一部分から植物を再生することをさらに含む。
【0252】
一態様において、本発明は、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、例えば本明細書に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を作出するための方法であって、植物もしくは植物の一部分、例えばプロトプラストまたは種子に、(内因性)ALSをコードするポリ核酸を、好ましくは、植物もしくは植物の一部分のゲノムに、特に、本明細書の他の箇所で定義されるような本発明による(内因性)突然変異体ALSをコードするポリ核酸を突然変異させることを含む、方法に関する。ある実施形態において、そのような方法は、プロトプラストまたは種子などの植物の一部分から植物を再生することをさらに含む。
【0253】
突然変異誘発は、当該技術分野で公知の技術のいずれかに従って行うことができる。本明細書で使用される場合、「突然変異生成」または「突然変異誘発」には、従来の突然変異誘発と、位置特異的突然変異誘発または「ゲノム編集」または「遺伝子編集」との両方が含まれる。従来の突然変異誘発では、DNAレベルでの修飾が、標的化された方法ではもたらされない。植物細胞または植物は、UV光曝露または化学物質の使用を介して、TILLINGなどの変異誘発性条件にさらされる(Till et al., 2004)。ランダム突然変異誘発のもう一つの方法は、トランスポゾンを利用した突然変異誘発である。位置特異的突然変異誘発では、DNAの予め定義された位置に、標的指向の方法でDNAレベルでの修飾を導入することができる。例えば、TALENS、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR/Casシステムをこのために使用することができる。
【0254】
ある実施形態において、ALS遺伝子の核酸修飾はランダム突然変異誘発によって行われる。細胞または生物は、UV放射線または突然変異誘発性化学物質(例えば、メタンスルホン酸エチル(EMS)など)のような突然変異原にさらされる場合があり、次いで、所望の特性を有する突然変異体が選択される。突然変異体は、例えば、TILLING(Targeting Induced Local Lesions in Genomes)によって同定することができる。この方法は、メタンスルホン酸エチル(EMS)などの化学的な突然変異原を使用した突然変異誘発などの突然変異誘発と、標的遺伝子の一塩基突然変異/点突然変異を同定する高感度DNAスクリーニング技術とを組み合わせたものである。TILLING法は、複数の対立遺伝子がPCRで増幅され、次いで加熱され、ゆっくりと冷却されたときに形成されるDNAヘテロ二重鎖の形成に依拠している。2本のDNA鎖のミスマッチ部分に「バブル」が形成され、次いでこれが一本鎖ヌクレアーゼによって切断される。次いで生成物は、HPLCなどによってサイズ別に分離される。McCallum et al. “Targeted screening for induced mutations”; Nat Biotechnol. 2000 Apr;18(4):455-7 and McCallum et al. “Targeting induced local lesions IN genomes (TILLING) for plant functional genomics”; Plant Physiol. 2000 Jun;123(2):439-42も参照のこと。ある実施形態において、突然変異体ALSは、当該技術分野で公知のように、CRISPR/Cas、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはTALEN遺伝子編集技術を含む遺伝子編集技術などの標的化突然変異誘発によって得ることができる。
【0255】
ある実施形態において、本発明による突然変異型ALSは、
a)EMSおよび/またはEMU、例えば少なくとも0.5%のEMSまたは少なくとも0.3%のENUを用いて、ベータ・ブルガリスの細胞または組織、例えば種子に突然変異を誘発するステップ;
b)突然変異を誘発された細胞または組織(M0)から挿木を栽培するステップ;
c)挿木を植え替えて種子(M1)の集団を栽培するステップ;
d)M1の種子から生育した植物から種子(M2)を栽培するステップ;
e)M2の種子を播種し、ALS阻害剤除草剤を適用するステップ;
f)任意選択的に、生き残った植物を鉢に植え替え、生育中の植物にALS阻害剤除草剤を適用するステップ;および
g)除草剤によるダメージを受けずに生き残った植物を選択し、かつ/または371位にアスパラギン酸(D)とは異なるアミノ酸を含むALSタンパク質をコードするALS対立遺伝子を含む植物を選択するするステップ
によって得ることができる。
【0256】
本発明による突然変異型ALSは、遺伝子移入によっても得ることができる。
【0257】
本明細書において、用語「遺伝子移入」、「遺伝子移入された」および「遺伝子移入する」は、ある植物、種、品種または栽培品種の染色体断片または遺伝子が、別の植物、種、品種、または栽培品種のゲノムに、それらの植物または種を交雑することによって移動する、自然および人工プロセスの両方を指す。このプロセスは、任意選択的に、反復親への戻し交雑によって完了することができる。例えば、特定の遺伝子座における所望の対立遺伝子の遺伝子移入は、少なくとも一方の親がそのゲノム中に所望の対立遺伝子を有する、同じ種の2つの親間の有性交雑を介して、少なくとも1つの子孫に伝達することができる。代替的に、例えば、対立遺伝子の伝達は、ドナープロトプラストのうちの少なくとも1つがそのゲノム中に所望の対立遺伝子を有する、融合プロトプラストなどの2つのドナーゲノム間の組換えによって起こり得る。所望の対立遺伝子は、例えば、表現型、QTL、導入遺伝子または同種のものに関連するマーカーによって検出することができるか、または例えば、本明細書の他の箇所で定義されるように、配列決定、ハイブリダイゼーション、PCRなどのような標準的な技術を通して同定することができる。いずれにせよ、所望の対立遺伝子を含む子孫を、所望の遺伝的背景を有する系統に繰り返し戻し交雑し、所望の対立遺伝子について選択することにより、選択された遺伝的背景に対立遺伝子を固定させることができる。この「遺伝子移入」のプロセスは、このプロセスが2回以上繰り返される場合、「戻し交雑」と呼ばれることが多い。「遺伝子移入断片」または「遺伝子移入セグメント」または「遺伝子移入領域」とは、交雑または伝統的な育種技術、例えば戻し交雑によって、人工的または自然的に同じ種または近縁種の別の植物に導入された染色体断片(または染色体の一部分もしくは領域)を指し、すなわち、遺伝子移入された断片は、動詞「遺伝子移入する」が指す育種方法(例えば戻し交雑)の結果である。用語「遺伝子移入断片」は、染色体全体を含むことは決してなく、染色体の一部分のみを含むことが理解される。遺伝子移入断片は、例えば、染色体の4分の3または半分でも大きい可能性があるが、好ましくは、より小さく、例えば、約15Mb以下、例えば約10Mb以下、約9Mb以下、約8Mb以下、約7Mb以下、約6Mb以下、約5Mb以下、約4Mb以下、約3Mb以下、約2.5Mbまたは2Mb以下、約1Mb(1,000,000塩基対に等しい)以下、または約0.5Mb(500,000塩基対に等しい)以下、例えば、約200,000bp(200キロ塩基対に等しい)以下、約100,000bp(100kb)以下、約50,000bp(50kb)以下、約25,000bp(25kb)以下である。ある実施形態において、遺伝子移入断片は、本明細書に記載されるような本発明による突然変異型ALS(対立遺伝子)を含むか、それらからなるか、またはそれらから実質的になる。
【0258】
遺伝要素、遺伝子移入断片、または形質(例えばALS阻害剤除草剤耐性)を付与する遺伝子もしくは対立遺伝子が、本明細書の他の箇所に記載されるような植物もしくは植物の一部分「から得ることができる」か、または「得られる」ことができるか、または「に由来し得る」か、または「由来することができる」か、または「に存在する」か、または「に見出される」と言われるのは、遺伝要素、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子によって付与される形質の付加を別にして、レシピエント植物の表現型の変化をもたらすことなく、伝統的な育種技術を使用して、それが存在する植物から、それが存在しない別の植物(例えば系統または品種)に移入することができる場合である。これらの用語は互換的に使用され、したがって、遺伝要素、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子は、形質を欠く任意の他の遺伝的背景に移入することができる。遺伝要素、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を含む植物を使用することができるだけでなく、遺伝要素、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を保持するように選択された、そのような植物からの子孫/派生も使用することができ、本明細書に包含される。植物(または植物のゲノムDNA、細胞または組織)が、そのような植物から得られるのと同じ遺伝要素、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を含んでいるかどうかは、当業者によって、表現型アッセイ、全ゲノム配列決定、分子マーカー分析、形質マッピング、染色体ペインティング、対立遺伝子検定などの当該技術分野で公知の1つ以上の技術、または技術の組み合わせを使用して決定することができる。トランスジェニック植物もまた包含され得ることが理解されるであろう。
【0259】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子工学」、「形質転換」および「遺伝子組換え」は全て、単離されクローン化された遺伝子を他の生物のDNA、通常は染色体DNAまたはゲノムに導入することの同義語として使用される。
【0260】
本明細書で使用される「トランスジェニック」または「遺伝子組換え生物」(GMO)とは、一般に「組換えDNA技術」として知られる技術を使用して遺伝物質が改変された有機体である。組換えDNA技術は、異なる供給源からのDNA分子を生体外(例えば、試験管内)で1つの分子に組み合わせる能力を包含する。この用語は一般に、従来の交雑育種または「突然変異誘発」育種によって遺伝子組成が変化した生物は対象としていない。なぜなら、これらの方法は組換えDNA技術が発見される以前のものだからである。本明細書で使用される「非トランスジェニック」とは、上記で定義されるような「トランスジェニック」または「遺伝子組換え生物」ではない植物および植物由来の食品を指す。
【0261】
「導入遺伝子」または「キメラ遺伝子」とは、アグロバクテリウム媒介形質転換などの形質転換によって植物のゲノムに導入された組換え遺伝子などのDNA配列を含む遺伝子座を指す。ゲノムに安定的に組み込まれた導入遺伝子を含む植物は「トランスジェニック植物」と呼ばれる。
【0262】
「遺伝子編集」または「ゲノム編集」とは、生命有機体のゲノムにDNAまたはRNAを挿入、欠失、改変、置換する遺伝子工学を指す。遺伝子編集には、標的および非標的(ランダム)突然変異誘発が含まれ得る。標的突然変異誘発は、例えば、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR/Cas9)システムなどのデザイナーヌクレアーゼを用いて達成することができる。これらのヌクレアーゼは、ゲノムの所望の位置に部位特異的二本鎖切断(DSB)を作り出す。誘導された二本鎖切断は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え(HR)によって修復され、標的突然変異または核酸修飾をもたらす。デザイナーヌクレアーゼの使用は、遺伝子ノックアウトまたはノックダウンの作出に特に適している。ある実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されているように、ALS遺伝子に特異的に突然変異を誘導するデザイナーヌクレアーゼが開発される。デザイナーヌクレアーゼシステムの送達および発現系は当該技術分野で周知である。
【0263】
ある実施形態において、ヌクレアーゼまたは標的化/部位特異的/ホーミングヌクレアーゼは、(改変された)CRISPR/Casシステムもしくは複合体、(改変された)Casタンパク質、(改変された)ジンクフィンガー、(改変された)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、(改変された)転写因子様エフェクター(TALE)、(改変された)転写因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または(改変された)メガヌクレアーゼであるか、それらを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。ある実施形態において、前述の(改変された)ヌクレアーゼまたは標的化/部位特異的/ホーミングヌクレアーゼは、(改変された)RNAガイドヌクレアーゼであるか、(改変された)RNAガイドヌクレアーゼを含むか、(改変された)RNAガイドヌクレアーゼから本質的になるか、または(改変された)RNAガイドヌクレアーゼからなる。ある実施形態において、ヌクレアーゼは、植物における発現のためにコドン最適化され得ることが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、選択された核酸配列の用語「標的化」は、ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼ複合体がヌクレオチド配列特異的な様式で作用することを意味する。例えば、CRISPR/Casシステムの文脈では、ガイドRNAは選択された核酸配列とハイブリダイズすることができる。
【0264】
遺伝子編集は、遺伝子編集コンポーネントまたはシステムの一過性、誘導性、または構成的発現を含むことができる。遺伝子編集は、遺伝子編集コンポーネントまたはシステムのゲノム統合またはエピソームでの存在を含むことができる。遺伝子編集コンポーネントまたはシステムは、プラスミドなどのベクター上で提供され得、これらは、当該技術分野で公知のように、適切な送達ビヒクルによって送達され得る。好ましいベクターは発現ベクターである。
【0265】
遺伝子編集は、相同性指向性修復(HDR)を行うための組換えテンプレートを提供することを含み得る。例えば、組換えテンプレートが提供される遺伝子編集によって遺伝子エレメントが置き換えられ得る。DNAは、置き換えが必要な配列の上流および下流で切断され得る。したがって、置き換えられる配列はDNAから切除される。次いでHDRを通して、切除された配列はテンプレートに置き換えられる。ある実施形態において、本明細書に記載されるような本発明の突然変異型ALS遺伝子またはcDNA(または本発明の突然変異を含むその断片、すなわちALSのアミノ酸371位のアスパラギン酸とは異なるアミノ酸に対応する)をテンプレート上に/テンプレートとして提供することができる。突然変異体ALSを含まない植物のゲノムの対応する領域の上流および下流に二重鎖切断が導入されるようにシステムを設計することによって、この領域は切除され、本発明の突然変異体ALS(または断片)を含むテンプレートと置き換えることができる。このようにして、本発明の突然変異体ALSを植物に導入する場合、特に、特定の遺伝的背景を持つ植物において、複数回の戻し交雑を行う必要はない。
【0266】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物を作出するための方法によって(直接)得られるか、または得られることができるベータ・ブルガリス植物(もしくは植物の一部分)に関する。好ましい実施形態において、植物の一部分はルートビート(またはビートルート)である。
【0267】
ある実施形態において、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分における突然変異体ALSはホモ接合である。ある実施形態において、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分における突然変異体ALSはヘテロ接合であり、すなわち、植物もしくは植物の一部分は、1つの突然変異体ALS対立遺伝子および1つの野生型対立遺伝子、または代替的に、本発明による1つの突然変異体ALS対立遺伝子(すなわち、本明細書の他の箇所に記載されるようにアミノ酸位371にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有する)、および異なる突然変異を有する(例えば、本明細書の他の箇所に記載されるように、好ましくはアミノ酸位569にトリプトファンとは異なるアミノ酸を有する)1つの突然変異体ALS対立遺伝子を含む。
【0268】
ある実施形態において、本発明のベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分は、本明細書の他の箇所に記載されるようにアミノ酸位371にアスパラギン酸とは異なるアミノ酸を有し、本明細書の他の箇所に記載されるようにアミノ酸位569にトリプトファンとは異なるアミノ酸を有するALSタンパク質(すなわち、同じ対立遺伝子における二重突然変異)を含む。
【0269】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分などのベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するための方法であって、ALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸の存在についてスクリーニングすること、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンの存在についてスクリーニングすることを含む方法に関する。本方法は、アスパラギン酸(D)とは異なるALSタンパク質の371位のアミノ酸が同定された場合、またはアスパラギン酸(D)とは異なるALSタンパク質の371位のアミノ酸をコードするコドンが同定された場合に、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を選択するステップをさらに含み得る。
【0270】
一態様において、本発明は、1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性があるか、または耐性が増加したベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分などのベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するための方法であって、ベータ・ブルガリス植物のALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸の存在についてスクリーニングすること、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンの存在についてスクリーニングすることを含む、方法に関する。本方法は、ALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸が同定された場合、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンが同定された場合に、1つ以上のALS阻害剤除草剤に対して耐性があるか、または1つ以上のALS阻害剤除草剤に対する耐性が増加したベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を同定するステップをさらに含み得る。本方法は、ALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸が同定された場合、またはALSタンパク質におけるアスパラギン酸(D)とは異なる371位のアミノ酸をコードするコドンが同定された場合に、1つ以上のALS阻害剤除草剤に耐性があるか、または1つ以上のALS阻害剤除草剤に対する耐性が増加したベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分を選択するステップをさらに含み得る。
【0271】
ある態様において、本発明は、本明細書に記載されるような本発明によるALS突然変異を検出または同定するための方法に関する。
【0272】
本明細書の他の箇所に記載されるように、任意の手段を適用することができ、この任意の手段には、例えば、配列決定、ハイブリダイゼーションに基づく方法(例えば(動的)対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、分子ビーコン、SNPマイクロアレイ)、酵素に基づく方法(PCR、KASP(競合対立遺伝子特異的PCR)、RFLP、ALFP、RAPD、フラップエンドヌクレアーゼ、プライマー伸長、5’-ヌクレアーゼ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイなど)、DNAの物理的性質に基づく増幅後方法(例えば一本鎖コンフォメーション多型、温度勾配ゲル電気泳動)、変性高速液体クロマトグラフィー、アンプリコン全体の高分解能融解、DNAミスマッチ結合タンパク質の使用、SNPlex、サーベイヤーヌクレアーゼアッセイなど)が挙げられる。
【0273】
ある実施形態において、突然変異型ALSの検出はKASPによって行われる。ある実施形態において、(突然変異型ALSの)対立遺伝子特異的KASPプライマーは、配列番号7の少なくとも10個の最も3末端側のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15個の最も3末端側のヌクレオチド、例えば少なくとも20個の最も3末端側のヌクレオチド、その相補体、またはその逆相補体を含む。ある実施形態において、そのようなKSAPプライマーは、配列番号7、その相補体、またはその逆相補体に記載されるような配列を含むか、またはそれらからなる。
【0274】
ある実施形態において、野生型ALSの検出はKASPによって行われる。ある実施形態において、(野生型ALSの)対立遺伝子特異的KASPプライマーは、配列番号8の少なくとも10個の最も3末端側のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15個の最も3末端側のヌクレオチド、例えば少なくとも20個の最も3末端側のヌクレオチド、その相補体、またはその逆相補体を含む。ある実施形態において、そのようなKSAPプライマーは、配列番号8、その相補体、またはその逆相補体に記載されるような配列を含むか、またはそれらからなる。
【0275】
共通のKASPプライマー(突然変異型ALSおよび野生型ALSの両方の検出において使用される)は、当業者によって適切に選択され得、その位置は特に限定されない。ある実施形態において、共通のプライマーは、配列番号9に記載されるような配列を含むか、またはそれからなる。
【0276】
ある態様において、本発明は、本明細書に記載されるようなポリ核酸、特にプライマーまたはプローブ、および任意選択的に突然変異型ALSを検出するための、または突然変異型ALSと野生型ALSとを識別するための試薬、例えば本明細書に記載されるようなKASPプライマーを含むキットに関する。
【0277】
一態様において、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるような本発明によるベータ・ブルガリス植物を播種するか、または植え付ける、好ましくは生育期の終わりにルートビート(またはビートルート)を収穫することを含む、ベータ・ブルガリスルートビート(またはビートルート)を生産するための方法に関する。
【0278】
ある態様において、本発明は、糖生産、嫌気性消化、または発酵のための方法における、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、好ましくはルートビート(またはビートルート)の使用に関する。
【0279】
ある態様において、本発明は、バイオガスまたはバイオ燃料生産のための方法における、ベータ・ブルガリス植物もしくは植物の一部分、好ましくはルートビート(またはビートルート)の使用に関する。
【0280】
本明細書で使用される「発酵」とは、微生物を使用して有機分子を別の分子に変換するプロセスを指す。例えば、「発酵」とは、本発明の植物材料などの植物材料から糖または他の分子を好気的に変換して、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、ブタノール);有機酸[例えば、クエン酸、酢酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸);ケトン[例えば、アセトン]、アミノ酸{例えば、グルタミン酸};ガス{例えば、H2およびCO2}、抗生物質{例えば、ペニシリンおよびテトラサイクリン};酵素;ビタミン{例えば、リボフラビン、B12、β-カロチン};および/またはホルモンを産生する。発酵には、消費可能なアルコール産業{例えば、ビールおよびワイン}で使用される発酵が含まれる。発酵には、例えばバイオ燃料の製造のための嫌気性発酵も含まれる。発酵は、細菌、真菌、古細菌、および原生生物を含むがこれらに限定されない、所望の発酵ステップでの使用に適した任意の生物によって達成され得る。適切な発酵生物には、単糖、二糖、および三糖、特にグルコースおよびマルトース、または他の任意のバイオマス由来分子を、直接的または間接的に所望の発酵生成物(例えば、エタノール、ブタノールなど)に変換できるものが含まれる。適切な発酵生物には、非糖類分子を所望の発酵生成物に変換できるものも含まれる。そのような生物および発酵方法は当業者に知られている。
【0281】
本明細書で使用される用語「バイオ燃料」は、バイオマス、すなわち、植物または動物の排泄物など、生きている、または最近生きている生物有機体に由来する燃料を指す。バイオ燃料には、バイオディーゼル、バイオ水素、バイオガス、バイオマス由来のジメチルフラン(DMF)などが含まれるが、これらに限定されない。特に、用語「バイオ燃料」は、エタノール、メタノール、プロパノール、またはブタノールなどの植物由来のアルコールを指すために使用することができ、これらは使用前に必要に応じて変性させることができる。また、「バイオ燃料」という用語は、アルコール/ガソリン混合物(すなわち、ガソホール)などの植物由来燃料を含む燃料混合物を指すために使用することもできる。ガソホールは、任意の所望された植物由来アルコールのパーセンテージ(すなわち、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の植物由来アルコール)を含み得る。例えば、有用なバイオ燃料ベースの混合物には、85%のエタノールと15%のガソリンとを含むE85がある。バイオ燃料は、植物原料の好気性発酵または嫌気性発酵によって産生される任意のバイオ燃料であり得る。好気性発酵によって得られるバイオ燃料の非限定的な例は、バイオエタノールである。嫌気性発酵によって得られるバイオ燃料には、バイオガスおよび/またはバイオディーゼルが含まれるが、これらに限定されない。好気性発酵および/または嫌気性発酵の方法は、当業者に知られている。本発明にさらに包含されるのは、1つ以上のバイオ燃料を製造するための方法または本発明によって製造されるエタノール、バイオガスおよび/またはバイオディーゼルを含む群から選択されるバイオ燃料である。
【0282】
本発明は、本発明のテンサイ植物における抗体またはバイオプラスチックの生産などの、他の工業的用途も含む。さらに、本発明のテンサイ植物もしくはその一部は、例えば、家畜の飼料など、さらに加工することなく使用することもできる。
【0283】
用語「糖」は、発酵可能な単糖類、二糖類、および三糖類、特に単糖類および二糖類を指す。したがって、本発明において糖は、スクロース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、およびマンノースを含むが、これらに限定されず、好ましくはスクロースである。
【0284】
本発明の態様および実施形態は、以下の非限定的な例によってさらに裏付けられる。
【0285】
実施例
実施例1
メタンスルホン酸エチル(EMS)およびN-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)で突然変異誘発した世代M2のKWS独自の遺伝子型のテンサイ種子250kgを15haの圃場に播種した。発芽から6週間後および8週間後に、除草剤CONVISO(登録商標)ONE(50g/Lホルムスルフロン、30g/Lチエンカルバゾン-メチル)を0.5L ha-1の濃度で圃場に散布した。2回目の処理から2週間後、生き残った植物を選択し、移植し、さらに温室で栽培した。さらにもう1回、温室でCONVISO(登録商標)ONE(0.5L ha-1)処理を適用した。合計7つの植物を選択した。5つの個体全てからDNAサンプルを抽出し、BvALSコード配列を標準的な方法(サンガー配列決定法)を使用して配列決定した。
【0286】
18ZZJZJ7MS1001-0019および18ZZJZJ7MS1001-0023と名付けられた2つの突然変異体は、(BvALS_g8976.t1_T807_genomic_DNA参照配列の配列番号1の1141位(提供されたCDSの1113位、配列番号2)で同一のTからAへの突然変異を偶然にも保有し、BvALSタンパク質配列(配列番号3)の371位でAsp(D)からGlu(E)へのアミノ酸変化に変換された。他の3つの突然変異体については、配列決定が明確でなかったため、BvALSタンパク質コード配列内で突然変異していないとまず考えられた。
【0287】
接合状態を決定し、BvALSの置換D371Eにつながる点突然変異を明確に同定するために、KASPマーカーとして適用可能な特異的マーカーsytxalss14as001が開発された:
プライマー_AlleleX(突然変異対立遺伝子):
【化16】
プライマー_AlleleY(野生型対立遺伝子):
【化17】
プライマー_共通:
【化18】
【0288】
マーカーの適用により、突然変異体植物18ZZJZJ7MS1001-0019および18ZZJZJ7MS1001-0023は、BvALSの置換D371Eにつながる点突然変異に対してホモ接合であることが示された。このマーカーによって、3つの未知の突然変異体のうち2つである18ZZJZJ7MS1001-0018および18ZZJZJ7MS1001-0030は、BvALSの置換D371Eにつながる点突然変異に対してヘテロ接合であることが同定された。
【0289】
同定されたALS突然変異体は、圃場処理に使用される濃度のCONVISO(登録商標)ONE処理、ならびにCONVISO(登録商標)ONEの各有効成分、ホラムスルフロンおよびチエンカルバゾン-メチルによる処理、Pulsar(登録商標)40(有効成分:イマザモックス)による処理、有効成分ビスピリバックによる処理、およびBroadway(登録商標)(有効成分:フロラスラム、ピロキシラム)による処理で繰り返し試験された(表1)。いずれの除草剤処理も、推奨される圃場適用濃度の1倍に相当する量で行った:BvALS_D371E突然変異およびM0-バックグラウンド遺伝子型について、ホモ接合およびヘテロ接合である植物の両方の子孫種子を播種し、温室で栽培し、発芽後に単一ポットに移植した。除草剤処理は本葉が出た時点で行った。
【0290】
【表3】
【0291】
耐性の評価は処理後14日目に行った。除草剤耐性の指標として、最初の一対の本葉の生育を使用した。驚くべきことに、ホモ接合だけでなくヘテロ接合のBvALS_D371E突然変異体も、既知の5つのクラスのALS阻害剤のうち4つに加え、2つのそのようなクラスのALS阻害剤の混合物であるCONVISO(登録商標)ONEにも、目に見える植物毒性を示す除草剤のダメージを受けることなく生き残った(表2)。
【0292】
【表4】
【0293】
さらに、突然変異BvALS_D371E(RR)のホモ接合であるテンサイ遺伝子型の1つを、第2のテンサイ遺伝子型と交雑した。子孫をCONVISO(登録商標)ONEに対する耐性に関して表現型分析した。遺伝学的にRR:Rs:ss(1:2:1)の分離が予想された。観察により、3:1(抵抗性:感受性)の表現型の分離が示される。このことから、ヘテロ接合突然変異体であっても商業用途に適した高レベルの耐性を示すことが再確認される。
【配列表】
2024537389000001.xml
【国際調査報告】