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特表2024-5373901つまたは複数の酵素の固定化のためのヒドロゲルおよびそれを調製するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】1つまたは複数の酵素の固定化のためのヒドロゲルおよびそれを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 11/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K38/44
A61K47/36
A61K47/38
A61K38/43
C12N11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522468
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022078635
(87)【国際公開番号】W WO2023062185
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202802.1
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509160867
【氏名又は名称】ヘルムホルツ・ツェントルム・ミュンヘン・ドイチェス・フォーシュンクスツェントルム・フュア・ゲズントハイト・ウント・ウンベルト・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】500437566
【氏名又は名称】ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ・ウニヴェルジテート・ハノーヴァー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】プレッテンブルク オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】アールブレヒト クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】アル ムバラク サマ
(72)【発明者】
【氏名】ディバート ニック
【テーマコード(参考)】
4B033
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B033NA23
4B033NA24
4B033NA27
4B033NB44
4B033NB47
4B033NB48
4B033NC05
4C076AA09
4C076AA95
4C076CC50
4C076DD59
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE36
4C076EE37
4C076FF65
4C076GG01
4C084AA02
4C084DC01
4C084DC23
4C084MA28
4C084NA03
4C084NA13
(57)【要約】
本発明は、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法、該方法によって得ることができるヒドロゲル、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための生体適合性ヒドロゲル、および該ヒドロゲルのいずれかを含む組成物を提供する。本発明はさらに、本明細書に記載のヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法、およびヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための該ヒドロゲルのいずれかについての使用、またはバイオセンサーにおける該ヒドロゲルのいずれかについての使用を提供する。加えて、本発明は、本発明の組成物またはヒドロゲルを含むキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつnが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、および
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【請求項2】
第1の多糖および第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは第1の多糖および第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは第1の多糖および第2の多糖がプルランである、請求項1記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項3】
第1および/または第2の多糖がデキストランまたはプルランであり、かつデキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化が、工程b)において実施される、請求項1または2記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項4】
工程c)において、第1の多糖が、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のAもしくはXによって官能基化され、かつ/または工程c)において、第2の多糖が、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のA'もしくはYによって官能基化される、前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項5】
工程e)が、架橋ポリマーを形成するための、XとYとの間の熱誘導性付加環化反応である、前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項6】
N3の含有量が、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のN3であり、かつ/またはQの含有量が、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5である、前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項7】
工程c)において、-A-Xが、第1の多糖の少なくとも1つの一級もしくは二級OH-基へと、好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4もしくはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結され、かつ/または工程c)において、-A'-Yが、第2の多糖の少なくとも1つの一級もしくは二級OH-基へと、好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4もしくはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結される、前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項8】
官能基化されていない第1の多糖の分子量が、5~2000kDaの範囲であり、かつ/または官能基化されていない第2の多糖の分子量が、5~2000kDaの範囲である、前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
【請求項9】
好ましくは1つまたは複数の封入酵素を含む、請求項1~8のいずれか一項の方法によって得ることができるヒドロゲル。
【請求項10】
1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲル:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、かつ
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【請求項11】
1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化が、1つまたは複数の酵素の封入およびヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合を含む、請求項10記載のヒドロゲル。
【請求項12】
第1および/もしくは第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、かつ/または第1および/もしくは第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは第1および/もしくは第2の多糖がプルランである、請求項10または11記載のヒドロゲル。
【請求項13】
-A-Z1-が式-CH2-CO-NH-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-を有し、ここでnが好ましくは1~5であり、かつ/または
第1および/もしくは第2の多糖が、全ヒドロゲルに対して、5~120mg/ml、好ましくは10~80mg/ml、より好ましくは20~60mg/mlの濃度を有し、かつ/または
非共有結合的固定化についての酵素が、リパーゼおよびオキシダーゼ、好ましくはグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、コルチゾールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、およびアルコールオキシダーゼからなる群より選択される、
請求項10~12のいずれか一項記載のヒドロゲル。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項記載のヒドロゲルを含む、組成物。
【請求項15】
請求項9~13のいずれか一項記載のヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法、該方法によって得ることができるヒドロゲル、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための生体適合性ヒドロゲル、および本発明の該ヒドロゲルのいずれかを含む組成物を提供する。本発明はさらに、本明細書に記載のヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法、およびヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための該ヒドロゲルのいずれかについての使用、またはバイオセンサーにおける該ヒドロゲルのいずれかについての使用を提供する。加えて、本発明は、本発明の組成物またはヒドロゲルを含むキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
溶液中の酵素は、通常は、周囲温度で速やかに分解し得るため、限定された寿命を有する。さらに、有機溶媒に対する耐容性も限定的である。本発明の目的は、特に、酵素の安定化のための有効な方法を提供することである。様々な目的のための酵素封入は、通常は、共有結合による修飾を必要とし、活性の低下を引き起こす。さらに、ヒドロゲル形成のために使用する結合は、例えばシッフ塩基を使用する場合、安定でないことが多く、ゲルの早期分解と続くペイロードの浸出につながるか、または毒性および発癌性の、例えばヒドラゾン官能基を含むこともある。
【0003】
酵素をヒドロゲルネットワーク内に固定化するために、例えばグルタルアルデヒドを用いて、種々の方法が開発されてきた。しかし、例えば、BSA混合物は限定的な酵素保護しか提供できず、短い寿命および毒性に悩まされる。ワイヤード酵素を使用する他の方法は、毒性成分を用いる化学を必要とし、移植可能な装置における適用は限られている[1]。
【0004】
先行技術の他の方法は、ポリ(エチレングリコール)と反応するフラン/フラン誘導体(メチルフラン)で修飾されたポリマーを使用する[2]。先行技術の他の方法は、ヒドロゲルの調製のために、シッフ塩基の形成(アミノ基とアルデヒド基との間で)を使用し、イミン結合の形成につながる[3]。例えば、Maらは、注入可能なヒドロゲルを構築するためにシッフ塩基(アルデヒド基およびヒドラジド基)の形成を使用している[4]。
【0005】
他の可能性には、オキシム架橋による化学特異的「クリック反応」が含まれる。オキシム結合はヒドラジンよりも安定であるが、これにはヒドロゲルが一部の生物学的環境において可逆的であり得るという欠点がある[5]。
【0006】
Pengらは代わりに、グルタルアルデヒドによるコラーゲンスポンジの安定化を提供し、蒸気架橋を使用している[6]。Jiaら[7]は、酢酸中で酵素溶液およびBSA安定剤をキトサンと共に使用することを教示しているが、ヒドロゲルの最終架橋はグルタルアルデヒド蒸気で行った。
【0007】
しかしながら、これらの先行技術に記載の方法はすべて、いくつかの欠点を有し、それにより酵素の封入には適用不可能である。例えば、シッフ塩基の形成は可逆的であるという問題があり、ヒドラゾンはその毒性のために望ましくない。さらに、先行技術で提供されたヒドロゲルでは、例えば層の厚さに関して、再現性が限られている。さらなる欠点は、イミン/ヒドラゾンによるコーティングが生分解性であること、分解されたヒドラゾンの生成物(ヒドラジン)が毒性であること、グルタルアルデヒドにスピンをかけることができないこと、および品質管理が不十分であることであり、加えて、任意の蒸気プロセスは無作為であり、再現性がない[6]。
【0008】
さらに、例えば、ヒドロゲル内の酵素の封入に関して、先行技術の主要な欠点は、グルタルアルデヒドによる架橋が、酵素におけるアミノ基の共有結合的修飾をもたらし得ることで、これは酵素の構造および立体配座の変化を引き起こし、ことによると酵素の望ましくない不活性化を引き起こす。
【0009】
また、ゲル化プロセスは、個々の成分を混合した直後に始まり、形状因子の充填が不完全になり、不均一なヒドロゲルとなる可能性がある。
【0010】
本発明は、これらの前述の必要性を目的とし、これに対処するものである。
【発明の概要】
【0011】
前述の問題は、特許請求の範囲に定義されかつ本明細書において定義されるとおりの主題によって解決される。
【0012】
本発明は、1つまたは複数の酵素の共有結合を必要としない、生体適合性ヒドロゲル中に酵素を固定化する新規戦略を記載する。本発明のヒドロゲルは、酵素のための完璧な安定化環境を提供し、より優れた寿命および酵素安定性をもたらす。本発明のヒドロゲルは、酵素を、生物付着および身体の免疫応答から保護する。
【0013】
第1の局面において、本発明は、以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法を提供する:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつnが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、
ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0014】
1つの局面において、本発明は、以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法を提供する:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつnが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、
ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法によって得ることができるヒドロゲルを目的とする。
【0016】
1つの局面において、本発明は、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲルを提供する:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0017】
本発明はさらに、本明細書に記載の本発明の任意の局面のヒドロゲルを含む組成物を提供する。
【0018】
さらに本発明は、本明細書に記載の本発明の任意の局面のヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、
a)ヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、
b)バイオセンサーにおける、
本明細書に記載の任意の局面のヒドロゲルの使用を提供する。
【0020】
本発明はさらに、本明細書に記載の本発明の任意の局面の組成物またはヒドロゲルを含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の生体適合性ヒドロゲルの例示的構造を示す。
図2】本発明の方法に従って生体適合性ヒドロゲルを形成するためのゲル化の例示的基本原理を示す。
図3A-1】図3は、3D-ヒドロゲルネットワークを強制イオンビーム(forced ion beam)(FIB)を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)により分析した、微細形態を示す。図3Aは、PBS緩衝液中で重合したプルランヒドロゲルを示し、図3Bおよび3Cは、dH2O中で重合したプルランヒドロゲルを示す。
図3A-2】図3A-1の説明を参照のこと。
図3B-1】図3A-1の説明を参照のこと。
図3B-2】図3A-1の説明を参照のこと。
図3C-1】図3A-1の説明を参照のこと。
図3C-2】図3A-1の説明を参照のこと。
図4-1】図4は、原子間力顕微鏡(AFM)により分析した外表面の表面層、粗さ、および細孔を示す。修飾度が高くなるにつれて、層の密度は高くなり、層に含まれるマイクロキャビティおよび細孔は少なくなる。
図4-2】図4-1の説明を参照のこと。
図4-3】図4-1の説明を参照のこと。
図4-4】図4-1の説明を参照のこと。
図4-5】図4-1の説明を参照のこと。
図4-6】図4-1の説明を参照のこと。
図5】導入したカルボキシメチル基の量が異なるプルランバイオポリマーの置換度を示す。これは、プルランのカルボキシメチル化度(PCM1、PCM3およびPCM5)を特徴付けるために、FT-IRスペクトルにおける異なるフィンガープリント領域を示す。1600~1000cm-1の間のバンドの強度は、置換度と共に増大する。
図61H-NMR分光法によるバイオポリマー中の導入したカルボキシメチル基の増加を示す。多糖のアノマープロトンのシグナル強度(四角)は、修飾度が高くなるにつれて低減するが、多糖骨格のシグナルは広幅になり(破線)、導入したカルボキシメチル基のシグナル強度(点線)は増大する。
図71H-NMR分光法による多糖(例えばプルラン)の段階的修飾プロセスを示す。これはカルボキシメチル化された多糖を非修飾多糖と比較している。この場合、アノマープロトンのシグナル強度は低減する(cおよびd参照)。「PCM3リンカー」のNMRスペクトルにおいて、銅フリー付加環化反応によって多糖鎖に導入したオキサノルボルナジエンリンカー単位のシグナルが見られる(aおよびb参照)。
図81H-NMR分光法による多糖の置換度と、導入したオキサノルボルナジエンリンカー単位との直接相関を示す。cおよびdは、置換度の増大に伴うアノマープロトンのシグナル強度の低減を示す。aおよびbは、多糖中のカルボキシメチル基の数の増加による、導入したリンカーのシグナル強度の増大を示す。
図9】導電性滴定により測定した、繰り返しのカルボキシメチル化反応による置換度の増大を示す。低分子量デキストラン(10kDa)および分子量プルラン(100kDa)のデータを示す。
図10】5回カルボキシメチル化したプルラン鎖(PCM5)の5つの異なるバッチのIRスペクトルを示し、これはアジドリンカー単位((-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=3))を含む。分子量プルラン(100kDa)のデータを示す。
図11】カルボキシメチル化度が異なる3つの修飾プルランヒドロゲルのレオロジー測定における貯蔵モジュールの時間経過を示す。
図12】プルラン鎖に導入したリンカーの19F-NMRスペクトルにおける、内部標準に対しての、置換度および導入したリンカー単位の数の増大によるシグナル強度の増加を示す。
図13A-1】図13Aおよび13Bは、実施例6の手順に従って得た、低修飾および高修飾プルラン(PCM1およびPCM8)によるプルランヒドロゲルで判定された膨潤率の結果を示す。W=dH2O;P3=PBS緩衝液;pH3.1、P7=PBS緩衝液;pH7.4;W-P3は、dH2O中でのゲル化および凍結乾燥後のPBS緩衝液、pH3.1中での膨潤を意味する。
図13A-2】図13A-1の説明を参照のこと。
図13A-3】図13A-1の説明を参照のこと。
図13B-1】図13A-1の説明を参照のこと。
図13B-2】図13A-1の説明を参照のこと。
図14A図14は、溶液中のグルコースオキシダーゼ(50mU/mL)の酵素飽和曲線(図14A)と、低修飾(PCM2、図14B)および高修飾(PCM8、図14C)の、酵素を固定化したプルランヒドロゲル試料の2つの曲線を示す。
図14B図14Aの説明を参照のこと。
図14C図14Aの説明を参照のこと。
図15A図15は、ヒドロゲル中のグルコースオキシダーゼ(25mU/mL)の寿命を、PCM9に固定化後と、溶液中の酵素について詳細に示す。溶液中のグルコースオキシダーゼおよびヒドロゲル中に固定化したグルコースオキシダーゼの動態を、10日後(図15A参照)および43日後(図15B参照)に示す。
図15B図15Aの説明を参照のこと。
図16A図16は、ヒドロゲル中のグルコースオキシダーゼ(100mU/mL)の寿命を、PCM5に固定化後と、溶液中の酵素について詳細に示す。溶液中のグルコースオキシダーゼおよびヒドロゲル中に固定化したグルコースオキシダーゼの動態を、10日後(図16A参照)および15日後(図16B参照)に示す。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図17】酵素ウリカーゼ(100mU/mL)の寿命データ、詳細には、ヒドロゲル(PCM1)中に固定化したウリカーゼの経時的動態を示す。
図18】導入したカルボキシメチル基の量が異なるデキストランバイオポリマー(10kDa)の置換度を示す。これは、異なるカルボキシメチル化度(CM1、CM3およびCM5)を特徴付けるために、FT-IRスペクトルにおける異なるフィンガープリント領域を示す。1600~1000cm-1の間のバンドの強度は、置換度と共に増大する。
図19】未修飾レンチナンとカルボキシメチル化レンチナン(CM1)との間の差を示す。これは、カルボキシメチル化度(レンチナンおよびレンチナンCM1)を確認するために、FT-IRスペクトルにおける異なるフィンガープリント領域を可視化している。1600~1000cm-1の間のバンドの強度は、置換度と共に増大する。
図20】ヒアルロナンとリンカー単位(アジド単位およびオキサノルボルナジエン単位)を有するヒアルロナンとの間の差を示す。FT-IRスペクトルのバンドの波数は、リンカー単位の異なる用い方により、1600~1000cm-1の間で変動する。
図21】アジドリンカー単位(-NH-(CH2)r-N3、r=6)を有する5回カルボキシメチル化したプルランバイオポリマーの1H-NMRスペクトルを示す。
図22】オキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=6、Q=Q-1(CF3)およびM/M'=H)を有する5回カルボキシメチル化したプルランの1H-NMRスペクトルを示す。
図23】アジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=8)を有する5回カルボキシメチル化したプルランの1H-NMRスペクトルを示す。
図24】オキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=2、Q=Q-1(CF3)およびM/M'=H)を有するヒアルロナン(B)、およびアジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=3)を有するヒアルロナン(C)と比較したヒアルロナン(A)の1H-NMRスペクトルを示す。
図25】異なる量のカルボキシメチル基を導入したデキストラン(10kDa)の1H-NMRスペクトルである。
図26A図26は、せん断速度100s-1での様々なバイオポリマーの粘度を示す。異なる多糖(A)、様々なカルボキシメチル基を有するプルラン(B)、プルラン修飾による粘度の差(未修飾プルラン、6回カルボキシメチル化したプルランおよびプルラン混合物(混合物:アジドリンカーを有するプルランおよびオキサノルボルナジエン単位を有するプルラン、ゲル化前)(C)、アルギネート修飾による粘度の差(未修飾アルギネートおよびアルギネート混合物(混合物:アジドリンカーを有するアルギネートおよびオキサノルボルナジエン単位を有するアルギネート、ゲル化前)(D)。
図26B図26Aの説明を参照のこと。
図26C図26Aの説明を参照のこと。
図26D図26Aの説明を参照のこと。
図27】異なる洗浄工程後のプルランヒドロゲル(PCM1およびPCM9)中の固定化GOxの酵素動態を示す。
図28A図28は、非洗浄および洗浄プルランヒドロゲル(PCM1)(A)および上清(B)中の固定化UOxの酵素動態を示す。
図28B図28Aの説明を参照のこと。
図29】プルランヒドロゲル(PCM5)中の固定化UOxの酵素動態を示す。
図30A図30は、様々なヒドロゲル中の固定化GOxの酵素動態を示す。ゲル化前の以下の2つのリンカー単位からなる、デキストランヒドロゲル(A)、ヒアルロナンおよびアルギネートヒドロゲル(B)、アルギネート-プルランヒドロゲル(C)およびプルランヒドロゲル:オキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=6、Q=Q-1(CF3)およびM/M'=H)を有する5回カルボキシメチル化したプルランおよびアジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=8)を有する5回カルボキシメチル化したプルラン(D)。
図30B図30Aの説明を参照のこと。
図30C図30Aの説明を参照のこと。
図30D図30Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、第1の局面において、以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法を提供する:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0023】
本発明は、1つの局面において、以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法を提供する:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0024】
1つの態様において、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は以下の工程を含む:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0025】
1つの態様において、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は以下の工程を含む:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0026】
1つの態様において、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は以下の工程を含む:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0027】
1つの態様において、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は以下の工程を含む:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、30℃~60℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
【0028】
1つの態様において、本発明の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法は以下の工程を含む:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、1~10時間インキュベートする工程。
【0029】
本明細書および本発明の文脈において使用される「生体適合性」なる用語は、特にヒドロゲルに関連して、生体適合性であると呼ばれるかまたは評価されているそれぞれの材料が、生物系に毒性もしくは傷害性作用を有しないという特質を有すること、受容者にいかなる望ましくない局所もしくは全身作用も誘発することはないが、その特定の状況において最も適した有益反応を生成して、その所望の機能を果たす能力を有すること、または有害な変化を引き起こすことなく、組織と調和して存在する能力を有することを意味する。生体適合性材料の好ましい特性は、炎症および免疫学的応答の低減、ならびに/または低い/限られた線維性被嚢化である。
【0030】
本明細書および本発明の文脈において使用される「ヒドロゲル」なる用語は、当業者には周知の用語であり、親水性の共有結合的に架橋されたポリマー鎖の任意のネットワークが含まれる。これは通常は、親水性ポリマー鎖からなり、特定の架橋剤によってまとめられている、三次元の固体を構築する。固有の架橋剤のため、ヒドロゲルネットワークの構造的完全性は水に溶解しない。ヒドロゲルは高吸収性(90%を超える水を含み得る)の天然または合成ポリマーネットワークである。
【0031】
本発明の文脈において使用される「第一の多糖」および「第二の多糖」は、当業者には公知の任意の多糖であり得る。しかし、第1の多糖および/または第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より、より好ましくは、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され得ることが好ましい。これに関連して、第1および/または第2の多糖に関するこれらの典型例のそれぞれの「モノマー反復単位」は、本明細書において以下のとおりに定義し得る。
【0032】
プルランは、マルトトリオース単位からなる多糖ポリマーである。マルトトリオースの3つのグルコース単位はα-1,4-グリコシド結合によって連結されているが、連続するマルトトリオース単位は互いにα-1,6-グリコシド結合によって連結されている。プルランは真菌アウレオバシジウム・プルランス(aureobasidium pullulans)によってデンプンから産生され得る。これは主に乾燥および捕食に抵抗するために細胞によって利用され得る。この多糖の存在は、細胞内への、および細胞から外への分子の拡散も促進する。本発明の文脈において、プルランのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはプルランのモノマー反復単位の数であり、かつnは10~10000の整数である。本発明の文脈において、プルランのカルボキシメチル化度は「PCM」なる表現と続く数字(例えば、PCM1、PCM3およびPCM5)で表される。この数字はそれぞれのカルボキシメチル化度を特徴づけ、カルボキシメチル化反応サイクルを指定の回数繰り返し適用することによってプルランに導入されたカルボキシメチル基を意味する。本明細書において用いられるCM1、CM2、CM3などは一般に、多糖のそれぞれのカルボキシメチル化度を記載する(特にプルランに関連付けることなく)。
【0033】
アルギン酸は、アルギンとも呼ばれ、親水性の褐藻の細胞壁に広く分布する多糖で、水和すると粘性のゴムを形成する。アルギン酸は直鎖コポリマーで、(1-4)-連結したβ-D-マンヌロン酸(M)およびそのC-5エピマーであるα-L-グルロン酸(G)残基のホモポリマーブロックがそれぞれ異なる配列またはブロックで共に共有結合している。モノマーは連続するG残基(Gブロック)、連続するM残基(Mブロック)または交互のMおよびG残基(MGブロック)のホモポリマーブロックで出現し得る。ナトリウムおよびカルシウムなどの金属とのその塩はアルギネートとして公知である。本発明の文脈において、アルギネートのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nおよびmはアルギネートのモノマー反復単位の数であり、かつnおよびmは、それぞれ互いに独立して、10~10000の範囲の整数である。
【0034】
ヒアルロン酸(略記HA;共役塩基:ヒアルロネート)は、ヒアルロナンとも呼ばれ、結合組織、上皮組織および神経組織全体に広く分布する、アニオンの、非硫酸化グリコサミノグリカンである。これは非硫酸化であるという点でグリコサミノグリカンの中でも独特であり、ゴルジ体の代わりに細胞膜中で生成し、非常に大きいものであり得る。ヒアルロン酸は二糖のポリマーで、二糖自体は交互のβ-(1→4)およびβ(1→3)グリコシド結合を介して連結されたD-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンからなる。本発明の文脈において、ヒアルロナンのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはヒアルロナンのモノマー反復単位の数であり、かつnは10~10000の整数である。
【0035】
デキストランは、複雑な分枝グルカン(グルコースの縮合から誘導される多糖)である。IUPACはデキストランを「主にC-1→C-6のグリコシド結合を有する、微生物起源の分枝ポリ-α-D-グルコシド」と定義している。デキストラン鎖は長さが様々である(3~2000キロダルトン)。ポリマー主鎖は、α-1,3-結合からの無作為な分枝を有する、グルコースモノマー間のα-1,6-グリコシド結合からなる。この特徴的な分枝によりデキストランはデキストリンと区別され、デキストリンはα-1,4-またはα-1,6-結合によってつながれた直鎖グルコースポリマーである。本発明の文脈において、デキストランのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはデキストランのモノマー反復単位の数であり、かつnは10~10000の整数である。
【0036】
本発明の方法の第1および/または第2の多糖を、工程b)において任意でカルボキシメチル化してもよく、ここで本明細書において上で定義した第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化してもよい。本発明の方法の1つの態様において、カルボキシメチル化を、好ましくは第1および/または第2の多糖がプルランまたはデキストランである場合に実施する。
【0037】
第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合、本発明の方法の工程c)において上で定義した第1の多糖の官能基化は、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって行ってもよく、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合、本発明の方法の工程c)において上で定義した第1の多糖の官能基化は、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって行ってもよく、
ここでAは-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdは1~3の整数であり、
ここでXは-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rは2~20の整数であり、
sは1~15の整数であり、かつ
tは1~15の整数である。
【0038】
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合、本発明の方法の工程c)において上で定義した第2の多糖の官能基化は、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって行ってもよく、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合、本発明の方法の工程c)において上で定義した第2の多糖の官能基化は、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって行ってもよく、ここでA'は-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdは1~3の整数であり、ここでYは-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQは
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである。
【0039】
本明細書において用いられるQは
であってもよく、ここでM、M'=HまたはMeであり、かつここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである。構造式
について、本明細書の他所で構造式
が用いられる場合、これは後者の構造式について、両方のMが同じ(それぞれHまたはそれぞれMe)でなければならないことを意味するものではない。むしろ、本発明は、1つの態様において両方のMがHであり得、1つの態様において両方のMがMeであり得、かつ1つの態様において一方のMがHであり得、かつ他方のMがMeであり得る(Mの位置とは独立して、一方のMがHであり、かつ他方のMがMeである2つの可能性)ことも含む。したがって、本発明の文脈において、2つの構造式
を本明細書において交換可能に使用し得る。
【0040】
さらに、本発明の文脈において、構造-A'-Yを有する1つまたは複数のリンカー単位であって、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
該リンカー単位による、第2の多糖の官能基化に関して、-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Qまたは-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-QにおけるQの連結が、構造式
に示す破線を介することは、当業者にとって完全に明白である。
【0041】
本明細書および本発明の文脈において使用される「官能基化」または「官能基化した」なる用語は一般に、化合物に新たな望ましい特性を与えるための特定の官能基の付加、例えば、本発明において、存在する多糖構造への上で定義したリンカー単位の付加を意味する。
【0042】
1つの態様では、本発明の方法の工程d)において、任意で、1つまたは複数の酵素の、工程a)~c)によって形成された混合物への添加を実施してもよい。本態様において、本発明の方法のためにいかなる酵素も原則として可能である。
【0043】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、25℃~70℃の範囲の温度で、少なくとも1時間実施する。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、25℃~70℃の範囲の温度で、1~15時間実施することがより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、25℃~70℃の範囲の温度で、1~10時間実施することがさらにより好ましい。
【0044】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、少なくとも1時間実施することが好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、1~15時間実施することがより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、1~10時間実施することがさらにより好ましい。
【0045】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、少なくとも1時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、1~15時間実施することがより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、1~10時間実施することがさらにより好ましい。
【0046】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、少なくとも1時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、1~15時間実施することがより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、1~10時間実施することがさらにより好ましい。
【0047】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、少なくとも1時間実施することがより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、1~15時間実施することがさらにより好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、1~10時間実施することがさらにより好ましい。
【0048】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、4~10時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、4~10時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、4~10時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、4~10時間実施することがより好ましい。
【0049】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、4~6時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、4~6時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、4~6時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、4~6時間実施することがより好ましい。
【0050】
本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、30℃~60℃の範囲の温度で、6~8時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~50℃の範囲の温度で、6~8時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、35℃~45℃の範囲の温度で、6~8時間実施することがさらに好ましい。本発明の方法の工程e)において、工程a)~d)によって形成された混合物のインキュベーションを、水性媒質中、約40℃の温度で、6~8時間実施することがより好ましい。
【0051】
生体適合性ヒドロゲルを調製するこの方法は、工程e)と共に、例えば、適切に形成された型の完全な無気泡充填によって、または個々の成分の2つの非粘性溶液の混合物を親油性有機媒質中に滴下して規定された直径の液滴を形成することによって、特定の形状因子の形成を可能にする、熱誘導性ゲル化を含む工程を含み得る。生体適合性ヒドロゲルの共有結合的、非分解性ネットワークの形成は、酵素がその中に封入されている場合、酵素活性の維持に適合する前述の温かい温度に加熱することによって誘導することができる。この方法は、1,3-双極子付加環化反応を介した架橋、副反応および毒性試薬(例えば、グルタルアルデヒド)なしの非常に穏やかな反応条件下(例えば、水性媒質中40℃)での熱ゲル化を含んでもよい。生体適合性ヒドロゲルの孔径の最適化は、パラメータの実現可能な調節および任意のカルボキシメチル化度の調節によって可能である。工程d)に記載のとおり、酵素を加える場合、生成した生体適合性ヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素が固定化され、ここで1つまたは複数の酵素は周囲温度または高温、例えば体温である37℃の溶液中の遊離酵素よりも、著しく長く安定かつ活性である。アルコールオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼのような不安定な感受性酵素は、これらの条件下でより優れた寿命性能を有する。本態様は、他の感受性酵素にも適用可能である。そのように製造された生体適合性ヒドロゲルは、より多くの酵素活性を失うことなく乾燥貯蔵することができる。さらに、酵素の浸出を完全に、またはほとんど防ぐことができる。本発明のこの方法に従って調製したそのようなヒドロゲルは、酵素活性を維持しながら、水性または有機溶媒(例えばアセトン)に懸濁することができる。個々の成分、ならびに混合物の粘度は容易に調節することができる。
【0052】
したがって、酵素の安定性を、本明細書に記載の封入によって著しく改善することができ、その結果、長期使用可能な酵素が得られる。
【0053】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。多糖プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストランは、本明細書において上で定義している。
【0054】
セルロースは、式(C6H10O5)nの有機化合物であり、数百から数千のβ(1→4)-連結D-グルコース単位の直鎖からなる多糖である。セルロースは、緑色植物、藻類の多くの形態および卵菌の一次細胞壁の重要な構造成分である。細菌のいくつかの種はセルロースを分泌してバイオフィルムを形成する。本発明の文脈において、セルロースのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはセルロースのモノマー反復単位の数であり、かつnは10から10000の整数である。
【0055】
リケニンは、リケナンまたは地衣デンプンとしても公知で、一定の種の地衣類に存在する複合グルカンである。化学的には、β-1,3-およびβ-1,4-グリコシド結合で連結された反復グルコース単位からなる混合連結グリカンである。本発明の文脈において、リケニンのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはリケニンのモノマー反復単位の数であり、かつnは10から10000の整数である。
【0056】
レンチナンは、シイタケの子実体から単離された多糖である。化学的には、レンチナンは、β-1,6分枝を有するβ-1,3β-グルカンである。本発明の文脈において、レンチナンのそれぞれのモノマー反復単位は
の構造を有し、nはレンチナンのモノマー反復単位の数であり、かつnは10から10000の整数である。
【0057】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニンおよびレンチナンからなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、リケニンおよびレンチナンからなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストランおよびレンチナンからなる群より選択される。生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる態様において、第1の多糖および第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択される。これらの多糖のそれぞれのモノマー反復単位は、本明細書において上で定義したとおりである。
【0058】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、第1の多糖および第2の多糖はそれぞれプルランである。
【0059】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、第1および/または第2の多糖はデキストランまたはプルランであり、かつデキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化を工程b)において実施する。この態様のために、デキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化を、工程b)において、デキストランおよび/またはプルランのC6で実施することが好ましい。この態様のために、デキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化を、工程b)において、デキストランおよび/またはプルランのC2で実施することが好ましい。この態様のために、デキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化を、工程b)において、デキストランおよび/またはプルランのC3で実施することが好ましい。この態様のために、デキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化を、工程b)において、デキストランおよび/またはプルランのC4で実施することが好ましい。
【0060】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のAによって官能基化する。生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.5のAによって官能基化する。生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.0のAによって官能基化する。
【0061】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のために、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のA'によって官能基化することが好ましい。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.5のA'によって官能基化する。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.0のA'によって官能基化する。
【0062】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のXによって官能基化する。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.5のXによって官能基化する。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第1の多糖を、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.0のXによって官能基化する。
【0063】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のために、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のYによって官能基化することが好ましい。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.5のYによって官能基化する。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のさらなる好ましい態様では、工程c)において、第2の多糖を、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.05~1.0のYによって官能基化する。
【0064】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、dは1である。
【0065】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のために、工程e)が、架橋ポリマーを形成するための、XとYとの間の熱誘導性付加環化反応であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、N3の含有量は、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のN3である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、N3の含有量は、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.0のN3である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つのさらに好ましい態様において、N3の含有量は、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.1~1.0のN3である。
【0067】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.0である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、Qの含有量は、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.1~1.0である。
【0068】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様では、工程c)において、-A-Xを、第1の多糖の少なくとも1つの一級または二級OH-基へと、好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4またはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結する。
【0069】
前記請求項のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様では、工程c)において、-A'-Yを、第2の多糖の少なくとも1つの一級または二級OH-基へと、好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4またはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結する。
【0070】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法のために、毒性試薬を使用せず、好ましくはグルタルアルデヒドを使用しないことがさらに好ましい。
【0071】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、官能基化されていない第1の多糖の分子量は5~2000kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、官能基化された第1の多糖の分子量は5から2500kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、官能基化された第1の多糖の分子量は5から2000kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つのより好ましい態様において、官能基化された第1の多糖の分子量は5から1500kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つのさらにより好ましい態様において、官能基化された第1の多糖の分子量は10から1500kDaの範囲である。
【0072】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、官能基化されていない第2の多糖の分子量は5~2000kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの態様において、官能基化された第2の多糖の分子量は5から2500kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つの好ましい態様において、官能基化された第2の多糖の分子量は5から2000kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つのより好ましい態様において、官能基化された第2の多糖の分子量は5から1500kDaの範囲である。本発明の生体適合性ヒドロゲルの調製方法の1つのさらにより好ましい態様において、官能基化された第2の多糖の分子量は10から1500kDaの範囲である。
【0073】
本発明はさらに、前述の生体適合性ヒドロゲルの任意の調製方法によって得ることができるヒドロゲルを提供する。このヒドロゲルは1つまたは複数の封入酵素を含むことが好ましい。ヒドロゲルは膨潤性または膨潤ヒドロゲルマトリックスであることがさらに好ましい。
【0074】
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲルを提供する:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0075】
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲルを提供する:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0076】
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲルを提供する:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
ここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0077】
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲルを提供する:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
ここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0078】
生体適合性ヒドロゲルの調製方法に関する前述の定義は、同じ用語が使用される場合、生体適合性ヒドロゲルにも適用される。本発明の生体適合性ヒドロゲルについて本明細書で使用する場合、パラメータr、sおよびt、すなわち本明細書においてrは2~20の整数であり、sは1~15の整数であり、かつtは1~15の整数であると定義されるパラメータは、Z1およびZ2の両方に適用される。
【0079】
好ましい態様において、生体適合性ヒドロゲルは、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
ここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
【0080】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つの態様において、ヒドロゲルは膨潤性または膨潤ヒドロゲルマトリックスである。
【0081】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる態様において、1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化は、1つまたは複数の酵素の封入およびヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合を含む。本明細書および本発明の文脈において使用される「非共有結合的」なる用語は、結合の共有に関与しないが、むしろ双極子-双極子または電荷-電荷相互作用のような分子間または分子内の電磁相互作用の分散型変化に関与するという点で共有結合とは異なる、相互作用を意味する。非共有結合的相互作用の形成において放出される化学エネルギーは、典型的には約1~5kcal/molである。非共有結合的相互作用は、静電効果、π効果、ファンデルワールス力、および疎水効果などの異なる範疇に分類することができる。非共有結合的相互作用は、タンパク質および核酸などの大きい分子の三次元構造を維持する上で重要である。加えて、これらは、大きい分子が互いに特異的であるが、一時的に結合する、多くの生物学的プロセスにも関与している。
【0082】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つの態様において、第1および/または第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0083】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる態様において、第1および/または第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる態様において、第1および/または第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる態様において、第1および/または第2の多糖は、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0084】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つの態様において、第1および/または第2の多糖はプルランである。
【0085】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる好ましい態様において、-A-Z1-は式-CH2-CO-NH-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-を有し、ここでnは好ましくは1~5である。
【0086】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つの態様において、第1および/または第2の多糖は、全ヒドロゲルに対して、5~120mg/ml、好ましくは10~80mg/ml、より好ましくは20~60mg/mlの濃度を有する。
【0087】
本発明の生体適合性ヒドロゲルの1つのさらなる態様において、非共有結合的固定化についての1つまたは複数の酵素は、リパーゼおよびオキシダーゼ、好ましくはグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、コルチゾールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、およびアルコールオキシダーゼからなる群より選択されてもよい。
【0088】
本発明はさらに、本発明の、および本明細書に定義する生体適合性ヒドロゲルを含む組成物を提供する。
【0089】
本発明はさらに、本発明の、および本明細書に定義する生体適合性ヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法を提供する。この方法は、生体適合性ヒドロゲルを1つまたは複数の酵素と接触させる段階、およびその後の、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは約40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間のそのインキュベーションを含む。この方法は、好ましくは、生体適合性ヒドロゲルを1つまたは複数の酵素と接触させる段階、およびその後の、水性媒質中、25℃~70℃の範囲の温度で1~15時間のそのインキュベーションを含む。この方法は、より好ましくは、生体適合性ヒドロゲルを1つまたは複数の酵素と接触させる段階、およびその後の、水性媒質中、25℃~70℃の範囲の温度で1~10時間のそのインキュベーションを含む。
【0090】
さらなる局面において、本発明は、
a)ヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、または
b)バイオセンサーにおける、
本発明の、および本明細書に定義するヒドロゲルの使用を提供する。本明細書において用いられる「バイオセンサー」なる用語は、生物センサーまたはバイオテストとは異なり、空間的に直接接触している生物学的認識素子(生化学的受容体または酵素)および変換器(例えば電極)からなる、特定の定量的または半定量的分析情報を提供する自己内蔵型統合システムを意味する。
【0091】
本発明は、本発明の、および本明細書に定義する組成物またはヒドロゲルを含むキットも提供する。
【0092】
本明細書において用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり、複数の言及を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの試薬」への言及は、そのような異なる試薬の1つまたは複数を含み、「その方法」への言及は、本明細書に記載の方法のために改変または置換し得る、当業者には公知の等価な工程および方法への言及を含む。
【0093】
特に記載がないかぎり、一連の要素に先行する「少なくとも」なる用語は、その一連のすべての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験だけを用いて確認することができよう。そのような等価物は、本発明に包含されることが意図される。
【0094】
本明細書のどこであれ用いられる「および/または」なる用語は、「および」、「または」、および「前記用語によって接続される要素のすべてまたは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0095】
「未満」または転じて「より多く」なる用語は、具体的な数を含まない。
【0096】
例えば、「20未満」は、示された数未満を意味する。同様に、「より多い」または「より大きい」とは、示された数より多いか、またはそれより大きいことを意味し、例えば、「80%より多い」とは、80%という示された数より多いか、または大きいことを意味する。
【0097】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈がそれ以外を必要としないかぎり、「含む(comprise)」なる語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくは工程または整数群もしくは工程群の包含を意味するが、任意の他の整数もしくは工程または整数群もしくは工程群の除外を意味しないことが理解される。本明細書において用いられる場合、「含む(comprising)」なる用語は、「含む(containing)」もしくは「含む(including)」なる用語、または時には、本明細書において用いられる場合、「有する」なる用語で置き換えることができる。本明細書において用いられる場合、「からなる」は、特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。
【0098】
「含む(including)」なる用語は、「含むが限定されるわけではない」という意味である。「含む」および「含むが限定されるわけではない」は交換可能に使用される。
【0099】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、および物質などに限定されず、したがって変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において用いられる用語は、特定の態様を記載するためにすぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定する意図はない。
【0100】
本明細書の本文全体を通して引用されるすべての出版物(すべての特許、特許出願、科学出版物、説明書などを含む)は、前述または後述にかかわらず、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書のいかなる部分も、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利を有しないことの自認と解釈されるべきではない。参照により組み入れられる資料が本明細書と矛盾する、または一致しない範囲内で、本明細書が任意のそのような資料に優先する。
【0101】
本明細書において引用されるすべての文書および特許文書の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0102】
本発明およびその利点のより良い理解は、例示のみを目的として提供される以下の実施例から得られるであろう。実施例は、本発明の範囲をいかなる様式でも限定する意図はない。
【実施例
【0103】
材料および方法:
オキサノルボルナジエンリンカーの合成:
スキーム1:オキサノルボルナジエンリンカーNH2-(CH2)r-Q(r=2/3/6、Q=Q-1(CF3)、M=HまたはMeおよびM'=HまたはMe)のTFA塩としての合成
【0104】
4,4,4-トリフルオロ-3-オキソ-2-(トリフェニル-λ 5 -ホスファネイリデン)-ブタン酸エチル(化合物1)
0℃で、臭化(2-エトキシ-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウム(100g、0.233mol)を無水THF(400mL)にアルゴン雰囲気下で溶解した。トリエチルアミン(65mL、0.47mol)を反応混合物に20分かけてゆっくり加えた。次いで、無水トリフルオロ酢酸(36mL、0.26mol)を滴加した。反応混合物を室温までゆっくり加温しながら24時間撹拌した。沈殿をろ過し、冷THFで洗浄した。ろ液の溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、H2O/THF(3:1、400mL)を残渣に加えた。次いで、沈殿した淡黄色固体をろ過し、減圧下、40℃で乾燥し、メタノール/H2Oから数回再結晶させた。生成物(90.9g、0.205mol、88%)を結晶性固体で得た。
【0105】
4,4,4-トリフルオロブタ-2-イン酸エチル(化合物2)
4,4,4-トリフルオロ-3-オキソ-2-(トリフェニル-λ5-ホスファネイリデン)ブタン酸エチル(10g、23mmol)を熱分解装置により220℃、100~160mbarで4~5時間蒸留した。生成物(3.30g、19.9mmol、89%)を澄明無色液体で得た。
【0106】
1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸エチル(化合物3)
4,4,4-トリフルオロブタ-2-イン酸エチル(3.30g、19.9mmol)を2,5-ジメチルフラン(3.15mL、29.8mmol)と混合し、マイクロ波反応器中、60℃で60分間加熱した。反応混合物をトルエンとの共沸(3×)により濃縮した。生成物を褐色油状残渣で得た(2.91g、0.11mol、56%)。
【0107】
3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(化合物4)
丸底フラスコ中、4,4,4-トリフルオロ-3-オキソ-2-(トリフェニル-λ5-ホスファネイリデン)ブタン酸エチル(38.8g、87.4mmol)を熱分解装置により210℃、100~160mbarで4~5時間蒸留した。次いで、フラン(38.0mL、52.4mmol)を無色蒸留物(4,4,4-トリフルオロブタ-2-イン酸エチル)に加え、マイクロ波反応器中、60℃で60分間反応させた。反応混合物を減圧下でトルエンとの共沸(3×)により濃縮した。エステルを油状残渣で得ることができ、それ以上精製せずにH2O/THF(7:1、100mL)に溶解し、1M LiOH水溶液(100mL、100mM)と混合し、室温で3日間撹拌した。次いで、水相を2M HClでpH1~2に調節し、ジエチルエーテル(3×)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。油状残渣をジクロロメタンに溶解し、石油エーテルを加えた。沈殿した固体をろ過し、石油エーテルで洗浄した。これにより生成物(6.16g、29.9mmol、3工程で35%)を結晶性固体で得た。
【0108】
1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(化合物5)
1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸エチル(191mg、0.73mmol)をH2O/THF(7:1、2mL)に溶解し、1M LiOH水溶液(2mL、2mM)と混合し、室温で1.5日間撹拌した。次いで、水相を2M HClでpH1~2とし、ジエチルエーテル(3×)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。生成物(127mg、0.54mmol、75%)を褐色油状物で得た。
【0109】
(2-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチル(化合物6)
3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(1.18g、5.73mmol)を無水ジクロロメタン(16mL)にアルゴン雰囲気下で溶解した。4-DMAP(1.4g、11mmol)、EDC-HCl(1.6g、8.6mmol)、およびBoc-エチレンジアミン(1.1mL、6.9mmol)を段階的に添加した後、混合物を室温で22時間撹拌した。反応混合物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:PE/EtOAc 1:1)で精製した後、生成物を白色固体で得た(1.01g、2.91mmol、51%)。
【0110】
(2-(1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチル(化合物7)
1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(0.68g、2.90mmol)を無水ジクロロメタン(12mL)にAr雰囲気下で溶解した。4-DMAP(0.71g、5.8mmol)、EDC-HCl(0.83g、4.3mmol)、およびBoc-エチレンジアミン(0.55mL、3.5mmol)を段階的に添加した後、混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:PE/EtOAc 3:1;1:1)で精製した後、生成物を油状物で得た(0.23g、0.60mmol、21%)。
【0111】
(3-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)プロピル)-λ 2 -アザンカルボン酸tert-ブチル(化合物8)
3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(512mg、2.49mmol)を無水ジクロロメタン(6mL)にAr雰囲気下で溶解した。4-DMAP(607mg、4.97mmol)、EDC-HCl(715mg、3.73mmol)、およびN-Boc-1,3ジアミノプロパン(0.52mL、3.0mmol)を段階的に添加した後、混合物を室温で22時間撹拌した。反応混合物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:PE/EtOAc 1:1)で精製した後、生成物を油状物で得た(528mg、1.46mmol、55%)。
【0112】
(6-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)ヘキシル)-λ 2 -アザンカルボン酸tert-ブチル(化合物9)
3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボン酸(0.50g、2.4mmol)を無水ジクロロメタン(10mL)にAr雰囲気下で溶解した。4-DMAP(597mg、4.88mmol)、EDC-HCl(702mg、3.66mmol)、およびN-Boc-1,6-ジアミノヘキサン(657μL、2.93mmol)を段階的に添加した後、混合物を室温で22時間撹拌した。反応混合物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:PE/EtOAc 7:1、3:1、1:1)で精製した後、生成物を油状物で得た(610mg、1.51mmol、収率62%)。
【0113】
2-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エタン-1-アンモニウムトリフルオロ酢酸塩(化合物10)
(2-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチル(1.00g、2.87mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解した。0℃で、TFA(8.8mL、0.12mol)を滴加した。同じ温度で30分間撹拌した後、TLCにより出発原料は観察されず、反応混合物をトルエン(3×)との共沸蒸留(aceotropic distillation)により濃縮した。続いて、褐色残渣を酢酸エチルで処理し、4℃で終夜結晶化した。ろ過後に生成物を結晶性固体として得た(0.98g、2.7mmol、95%)。
【0114】
2-(1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エタン-1-アンモニウムトリフルオロ酢酸塩(化合物11)
(2-(1,4-ジメチル-3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチル(88.6mg、0.235mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解した。0℃で、TFA(0.72mL、9.4mmol)を滴加した。同じ温度で30分間撹拌した後、TLCにより出発原料は観察されず、反応混合物をトルエン(3×)との共沸蒸留により濃縮した。生成物を油状物で得た(88.9mg、0.228mmol、97%)。
【0115】
3-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)プロパン-1-アンモニウムトリフルオロ酢酸塩(化合物12)
(3-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)プロピル)-λ2-アザンカルボン酸tert-ブチル(100mg、0.28mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解した。0℃で、TFA(0.85mL、0.011mol)を滴加した。同じ温度で30分間撹拌した後、TLCにより出発原料は観察されず、反応混合物をトルエン(3×)との共沸蒸留により濃縮した。次いで、残渣を酢酸エチルおよびジエチルエーテルで処理し、デカントした。生成物を油状物で得た(66mg、0.18mmol、67%)。
【0116】
6-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)ヘキサン-1-アンモニウムトリフルオロ酢酸塩(化合物13)
(6-(3-(トリフルオロメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-2-カルボキサミド)ヘキシル)-λ2-アザンカルボン酸tert-ブチル(205mg、0.507mmol)をジクロロメタン(4mL)に溶解した。0℃で、TFA(1.55mL、0.020mol)を滴加した。同じ温度で30分間撹拌した後、TLCにより出発原料は観察されず、反応混合物をトルエン(3×)との共沸蒸留により濃縮した。続いて、残渣をジエチルエーテルおよび石油エーテルで処理し、デカントした。生成物を油状物で得た(215mg、0.051mmol、定量的)。
【0117】
(表1)前述の化合物の化学式を本表に示す
【0118】
一般手順:
バイオポリマーのカルボキシメチル化:
所望のバイオポリマー(例えば、プルラン(25g))を脱イオン水(375mL)に溶解した。続いて、8M NaOH水溶液(125mL)およびクロロ酢酸(50.1g、0.53mol)を加え、反応混合物を62℃まで加熱した。90分後、溶液を6M HCl水溶液でpH6.5に調節し、蒸留メタノール(3L)に加えた。得られた沈殿をろ過し、残渣を40℃、20mbarで乾燥した。カルボキシメチル化バイオポリマーを白色固体で得た。
【0119】
得られた生成物をカルボキシメチル化反応に繰り返しかけることにより、より高い置換度を達成した。繰り返しサイクルの回数は、接尾辞CMを使用して記載される(例えば、CM3は、3回の繰り返しカルボキシメチル化サイクルに対応する)。
【0120】
2成分システム(カルボキシメチル化バイオポリマーへのリンカー単位の付加):
所望のバイオポリマー(デキストラン250kDa CM6、100mg、0.50mmol)を0.025M MES緩衝液(50mL)に溶解した。所望のリンカー単位NH2-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3(s=3)(98.15μL、0.50mmol)、EDC-HCl(0.948g、4.95mmol)およびNHS(56.93mg、0.50mmol)を逐次加えた。反応混合物を室温で2.5日間撹拌し、次いで透析チューブ(カットオフ:14kDa)に移した。後者を、NaCl脱イオン水溶液を含む5Lビーカーに入れ、NaCl濃度を漸減させながら(1日目:20g/L、2日目:10g/L、および3~4日目:0g/L)4日間透析した。毎日3回、NaCl脱イオン水溶液を取り替えた。続いて、透析した溶液を脱脂綿でろ過し、凍結乾燥した。修飾バイオポリマーを生綿様固体で単離することができた(87.80mg)。
【0121】
ヒドロゲルゲル化反応:
異なる官能基(置換度は不定)を有する修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルラン、デキストラン、アルギネート、およびヒアルロナン)を、適切な溶媒(例えば、脱イオン水、緩衝液、有機溶媒混合物)に溶解し、2成分(図2による)を混合した。ゲル化は、熱誘導性の銅フリー「クリック」反応による穏やかな条件下(40℃、終夜)で進行して、共役結合により架橋したヒドロゲルを不可逆的に形成し、これは2つのバイオポリマー鎖を接続するトリアゾール単位を含む。
【0122】
NMR分析:
1Hおよび13Cおよび19F NMRスペクトルをBruker AVANCE-400/500/600およびDPX-200/400分光計により、示した重水素化溶媒中、室温で測定した。溶媒の残留プロトンシグナル(CDCl3:δ(1H-NMR)=7.26ppm、D2O:δ(1H-NMR)=4.79ppmおよびDMSO:δ(1H-NMR)=2.50ppm)は1H-NMRスペクトルの基準として、および較正のために役立った。13C-NMRスペクトルは広幅デカップリングにより記録し、溶媒シグナルに対して較正した(CDCl3:(13C-NMR)=77.2ppm、およびDMSO:(13C-NMR)=39.5ppm)。19F-NMRに基づく定量のために、トリフルオロ酢酸メチルエステルを内部標準として用いた。重水中の試料を水抑制法を用いて測定した。
【0123】
カップリング定数JはHzで表し、化学シフトはppmで表した。シグナル多重度は単純にするため以下のとおりに略した:一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、および多重線(m)。
【0124】
高分解能質量分析(HR-MS):
高分解能質量スペクトルをQTof Premier検出器を備えたWater Aquity UPLC装置(ESIおよびAPCI-MS/MS)またはMicromass LCTPremier検出器を備えたWater Allicance 2695により測定した。試料を水、アセトニトリル、またはメタノールに溶解し、HPLC装置または直接注入口のいずれかを用いて注入した。測定値は質量/電荷(m/z)で示す。
【0125】
カラムクロマトグラフィ:
手動カラムクロマトグラフィを過圧を用いて実施した。このために、Macherey-Nagelのシリカゲル(粒径:40~63μm、順相)および表示の溶出媒質混合物(例えば、PE/EtOAc 1:1)を用いた。Merckの薄層クロマトグラフィ(DCシリカゲル60 F254ガラスプレート)(孔径:60Å、層厚:210~270μm、蛍光指示薬UV254)を用いて生成物を検出した。
【0126】
SEM:
ヒドロゲルネットワークの形態学的調査を、集束イオンビームを追加した走査型電子顕微鏡(FEI Nova 600 FEGおよびFEI NOVA 200 NanoLAB)を用いて実施した。このために、液体ヒドロゲル試料を小さいシリコンチップ表面にドロップおよびスピンコーティングし、40℃で終夜重合させてヒドロゲルを得た。次いで、LEICA EMACE600を用いて試料を5nm厚さの元素炭素層でコーティングした後、SEMで観察した。
【0127】
膨潤能力:
首尾よくゲル化させた後、ヒドロゲルを-20℃で凍結し、次いで凍結乾燥した。脱イオン水/緩衝液を凍結乾燥したヒドロゲル(m0)に加えて、最大に膨潤させた。過剰な液体を除去し、膨潤ヒドロゲルを秤量した(m1)。
【0128】
膨潤率を以下のとおりに計算した:
【0129】
多糖のレオロジー測定:
多糖のレオロジー特性を、Anton PaarのレオメーターMCR302を用いて試験した。40℃でのヒドロゲルのゲル化速度を、PP20-SN33813システムを用い、法線力0N、周波数1Hz、振幅γ=0.1%およびギャップサイズ1mmで調べた。試料を以下のとおりに調製した:異なる官能基(置換度は不定)を有する修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルラン、デキストラン、アルギネート、およびヒアルロナン)を、適切な溶媒(例えば、脱イオン水、緩衝液、有機溶媒混合物)に溶解し、2成分(図2による)を混合した。貯蔵モジュールの増加によって示されたとおり、測定中にゲル化反応が起こった。
【0130】
多糖の粘度測定:
多糖の粘度特性を、Anton PaarのレオメーターMCR302を用いて試験した。粘度測定を、PP20-SN33813システムを用い、法線力0N、振幅γ=0.1、100%log、[勾配]=10ポイント/ディケード、10s-1~10,000s-1までの所定のせん断速度
、温度19.3℃、およびギャップサイズ1mmで調べた。試料を以下のとおりに調製した:異なる官能基(置換度は不定)を有する修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルラン、デキストラン、アルギネート、およびヒアルロナン)を、適切な溶媒(例えば、脱イオン水、緩衝液、有機溶媒混合物)に溶解し、レオメーターで分析した。
【0131】
比色検定による酵素活性の測定:
異なる官能基(置換度は不定)を有する修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルラン、デキストラン、アルギネート、およびヒアルロナン)を、適切な溶媒(例えば、脱イオン水、緩衝液、有機溶媒混合物)に溶解し、2成分(図2による)を混合した。
【0132】
この混合物に、一定の濃度の酵素を加えた。ゲル化を、容量25μlのマイクロタイタープレート中、40℃、終夜のインキュベーションにより行った。その後、ヒドロゲル試料を、脱イオン水により50rpmで30分間振盪して洗浄し、過剰な脱イオン水を除去した。すべての標準品、ブランク、および試料に指定の反応混合物(表1参照)を加え、BioTekのCytation5により蛍光(励起:530/13、発光:590/18;AmplexRed(登録商標))を測定した。測定は37℃の一定温度で行った。
【0133】
(表2)AmplexRed(登録商標)検定の反応混合物の組成
*ウェル中の最終濃度は2で割る(25μl試料、25μl検定反応混合物)
【0134】
フーリエ変換赤外分光法:
赤外スペクトル(IR)を、Shimadzu ATR-FT-IR分光計で記録した。すべてのバイオポリマー試料を凍結乾燥物として測定した。
【0135】
原子間力顕微鏡法:
Bruker Dimension ICONを使用してヒドロゲルの表面形状を分析した。
【0136】
導電性滴定:
バイオポリマーの置換度を、TitroLine(登録商標)7000での導電性滴定により決定した。
【0137】
図1に従って2成分システム(3つの度合いの可変性を有する架橋多糖)を提供する:反応性官能基(一方のバイオポリマーはアジド残基を有し、他方のバイオポリマーはオキサノルボルナジエン誘導体を有する;置換度は不定)を有する2つの修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルラン、デキストラン、レンチナン、アルギネート、およびヒアルロナン)は、熱誘導性の銅フリー「クリック」反応によりトリアゾールを形成し、以下に具体的な実施例により詳細に記載する。
【0138】
実施例1:デキストランのカルボキシメチル化
デキストラン(500kDa、10.00g、0.06mol)を脱イオン水(150mL)に溶解した。続いて、8M NaOH水溶液(50mL)およびクロロ酢酸(20.40g、0.22mol)を加え、反応混合物を62℃まで加熱した。90分後、溶液を6M HCl水溶液でpH6.5に調節し、蒸留メタノール(1.4L)に加えた。得られた沈殿をろ過し、残渣を40℃、20mbarで乾燥した。カルボキシメチル化バイオポリマーを白色固体で得た(12.34g)。
【0139】
得られた生成物をカルボキシメチル(CM)反応に繰り返しかけることにより、より高い置換度を達成した。
【0140】
以下の例を、実施例1について前述したのと同様の様式で得た。
【0141】
(表3)カルボキシメチル化バイオポリマー
【0142】
カルボキシメチル化レンチナン
レンチナン(400~800kDa)CM1:スケール:8g;収量:3.49g。
【0143】
(表4)カルボキシメチル化プルラン
【0144】
得られた多糖の置換度を、FT-IR分光法(図5参照)、1H-NMR分光法(図6参照)および導電性滴定(図9参照)によって特徴付けた。
【0145】
両方のバイオポリマー鎖を、官能基化スペーサー、例えばPEG-リンカー単位に結合させる。PEG-リンカーの長さは不定であり、短いものであるべきである(PEG(3)~PEG(25))。異なるPEG-リンカー単位(図2に示す、「R-N3」参照)およびカルボキシメチル化バイオポリマーは、異なる孔径をもたらす。孔径は酵素の活性ならびに基質および他の分子の拡散挙動に影響する(図1参照)。この文脈において、「官能基化」なる用語は、前述のようなアジド部分またはオキサノルボルナジエン誘導体Qのいずれかを有するスペーサーを指す(スキーム1参照)。結合は、バイオポリマーのカルボキシ基とリンカーのアミン基とのアミドカップリングを介して達成される。
【0146】
実施例2:デキストランのアジド官能基化
所望のバイオポリマー(デキストラン、250kDa、CM4、100mg、0.45mmol)を0.025M MES緩衝液(50mL)に溶解した。所望のリンカーNH2-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3(s=3)(90.12μL、0.45mmol)、EDC-HCl(0.87g、4.54mmol)およびNHS(52.27mg、0.45mmol)を逐次加えた。反応混合物を室温で2.5日間撹拌し、次いで透析チューブ(カットオフ:14kDa)に移した。後者を、NaCl脱イオン水溶液を含む5Lビーカーに入れ、NaCl濃度を漸減させながら(1日目:20g/L、2日目:10g/L、および3~4日目:0g/L)4日間透析した。毎日3回、NaCl脱イオン水溶液を取り替えた。続いて、透析した溶液を脱脂綿でろ過し、凍結乾燥した。修飾バイオポリマーを生綿様固体で単離することができた(95mg)。
【0147】
以下の例を前述のとおりに得た。
【0148】
(表5)多糖鎖へのアジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=3)の導入
アルギネート(120~190kDa):スケール:200mg;収量:172mg。
ヒアルロナン(70~80kDa):スケール:100mg;収量:80mg。
レンチナンCM1(400~800kDa):スケール:100mg;収量:74mg。
【0149】
(表6)プルランへのアジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=3)の導入
【0150】
プルランへのアジド単位(-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、s=8)の導入
プルラン(100kDa)PCM5:スケール:50mg;収量:63mg。
【0151】
プルランへのアジド単位(-NH-(CH2)r-N3、r=6)の導入
プルラン(100kDa)PCM1:スケール:150mg;収量:122mg。
プルラン(100kDa)PCM5:スケール:150mg;収量:147mg。
アルギネート(120~190kDa):スケール:200mg;収量:89mg。
【0152】
実施例3:デキストランのオキサノルボルナジエン官能基化
所望のバイオポリマー(デキストラン、250kDa、CM4、100mg、0.45mmol)を0.025M MES緩衝液(50mL)に溶解した。所望のリンカーNH2-(CH2)r-Q(r=2、Q-1(CF3)およびM/M'=H)(112.74mg、0.45mmol)、EDC-HCl(0.87g、4.54mmol)およびNHS(52.27mg、0.45mmol)を逐次加えた。反応混合物を室温で2.5日間撹拌し、次いで透析チューブ(カットオフ:14kDa)に移した。後者を、NaCl脱イオン水溶液を含む5Lビーカーに入れ、NaCl濃度を漸減させながら(1日目:20g/L、2日目:10g/L、および3~4日目:0g/L)4日間透析した。毎日3回、NaCl脱イオン水溶液を取り替えた。続いて、透析した溶液を脱脂綿でろ過し、凍結乾燥した。修飾バイオポリマーを生綿様固体で単離することができた(88mg)。
【0153】
以下の例を前述のとおりに得た。
【0154】
(表7)多糖鎖へのオキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=2、Q-1(CF3)およびM/M'=H)の導入
アルギネート(120~190kDa):スケール:200mg;収量:234mg。
ヒアルロナン(70~80kDa):スケール:100mg;収量:99mg。
レンチナンCM1(400~800kDa):スケール:100mg;収量:65mg。
【0155】
(表8)プルランへのオキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=2、Q-1(CF3)およびM/M'=H)の導入
【0156】
プルランへのオキサノルボルナジエン単位(-NH-(CH2)r-Q、r=6、Q-1(CF3)およびM/M'=H)の導入
プルラン(100kDa)PCM5:スケール:100mg;収量:122mg。
【0157】
得られた生成物を、1H-および19F-NMR分光法によって分析することができる(例えば、図7、8および12参照)。1つの誘導体の異なるバッチからの試料の特定のIRスペクトルを図10に示す。
【0158】
実施例4:生体直交型1,3-双極子付加環化反応
反応(図2参照)は、銅フリー「クリック」反応である、生体直交型1,3-双極子付加環化による架橋を含む。この反応を可能にするために、前述の実施例のバイオポリマー(それぞれアジド連結バイオポリマーおよびオキサノルボルナジエン連結バイオポリマー)に連結したリンカー単位を、混合した。特異的な熱ゲル化が、穏やかな条件下(例えば、水性媒質中、<40℃)で起こる。穏やかな反応条件は感受性酵素に適している。こうして得られた固定化酵素を有する糖鎖の不可逆的ネットワークは、高い特異性および選択性、ならびに均質な溶液中の生体直交物質を提供する。さらに、粘度の調節も容易に達成することができる。加えて、架橋していないバイオポリマーおよび酵素を洗浄することができる。ゲル化は一定時間(約1時間~10時間)後に起こる。例えば、材料の印刷またはスピンコーティングによる、異なる形状因子への加工が可能である。したがって、本発明のヒドロゲルは、酵素の共有結合を必要としない生体適合性ネットワークに酵素を固定化することを可能にする(図2参照、ここで、材料、温かい反応温度、および水性媒質に応じて、a=1~10時間)。
【0159】
副反応は起こらず、毒性試薬(例えば、グルタルアルデヒド)も使用しない。非常に穏やかな反応条件(水性媒質中40℃)を前述のとおりに適用するが、ゲル化時間は材料(置換度)の選択およびバイオポリマーの濃度(例えば、10~40mg/ml)によって制御することができる。より高度に修飾したバイオポリマー(PCM5~PCM9)はゲル化時間が短い(2~5時間;40mg/mlの材料)。低修飾バイオポリマー(PCM1~3)は、3~10時間(40mg/mlの材料)のゲル化時間を有する。
【0160】
実施例5:
本発明の生体適合性ヒドロゲルはモジュラーシステムであり、その合成工程は様々な方法を用いて分析することができ、詳細に明らかにされた様式で製造することができる。
【0161】
多糖の繰り返しのカルボキシメチル化を導電性滴定によって分析することができ(図7参照)、置換度はカルボキシメチル化工程の増加とともに上昇する。さらに、置換の増加をFT-IRおよび1H-NMRにより測定することができる。FT-IRスペクトルにおいて、フィンガープリント領域の特定のバンドは、置換度が高く、官能基数が増えるほど強くなる(図5参照)。1H-NMRスペクトルにおいて、導入したカルボキシメチル基の増加に伴い、アノマープロトンのシグナル強度の低下が観察された(図6参照)。19F-NMRによる定量は、異なる修飾多糖に導入したリンカーのシグナル強度の増大を示した。導入したリンカー単位の数は、多糖中に存在するカルボキシメチル基に相関する(図10参照)。ゲル化速度に関連してのレオロジー特性を調べると、架橋可能な官能基の数が多いため、高度に修飾した多糖ほど速くゲル化することが示された。経時的な貯蔵弾性率の特異的増大が、様々な材料で記録された(図11参照)。さらに、アジドリンカーを有する5重繰り返し修飾プルランの5つの異なるバッチは、同様のFT-IRスペクトルを示した(図8参照)。
【0162】
実施例6:
ヒドロゲル(低修飾および高修飾プルランヒドロゲル)の膨潤率の調査:
調査:使用した溶媒(dH2OまたはPBS緩衝液)のゲル化およびネットワーク形成、ならびに得られる孔径に対する影響を決定し、凍結乾燥したヒドロゲルを異なるpH値の塩存在下で再溶解した場合の膨潤率の変化を決定する。
【0163】
結果(図13参照):示したヒドロゲルはいずれもdH2O中で1000%を超えて膨潤する能力を有する。低修飾プルランは、より多くの遊離OH-基および高度に多孔性の構造を含む。水は容易に侵入し、多糖構造の親水性基と相互作用し得る。PCM8:架橋度が高いほど高密度のヒドロゲルが得られ、吸水性が低下する。
【0164】
低修飾ヒドロゲル(PCM1)において、生理的pH値で塩濃度が減少するにつれて膨潤率が増大した。ヒドロゲルが重合したdH2Oの場合、最も高い膨潤率を示した。対照的に、pH3のPBS緩衝液中でゲル化させ、pH3のPBS緩衝液に再溶解したヒドロゲル(PCM1およびPCM8)は、非常に低い膨潤性を示した。
【0165】
実施例7:
酵素をヒドロゲル中に非共有結合的に固定化することができる。完全なゲル化の後、非固定化酵素を洗浄により除去することができる。
【0166】
調製:異なる反応性官能基(プルランに対してs=3のアジド単位-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3ならびにプルランに対してr=2、Q=Q-1(CF3)およびM/M'=Hの-NH-(CH2)r-Q)を有する得られた修飾バイオポリマー鎖(例えば、プルランCM5)をリン酸緩衝液pH7.4に溶解し(各多糖鎖個別に4mg/100μL)、2つの得られた成分(図2による)を混合した。
【0167】
この混合物に、一定濃度の酵素(例えば、ウェル中のグルコースオキシダーゼ最終濃度100mU/mL)を加えた。ゲル化を、マイクロタイタープレート中、容量25μL(各試料)で、40℃、終夜のインキュベーションにより行った。その後、ヒドロゲル試料を脱イオン水(25μL)を用い50rpmで30分間振とうして洗浄し、過剰な脱イオン水を除去した。すべての標準品、ブランク、試料に指定の反応混合物(表1参照)を加え、蛍光を測定した。
【0168】
固定化ウリカーゼの例を前述のとおりに得た。反応混合物を表1に従って調節した。
【0169】
結果:酵素飽和曲線を、異なる修飾プルランヒドロゲル(例えば、PCM2およびPCM8、すなわちそれぞれ2回、8回のカルボキシメチル化サイクルを実行することによって得たプルランバイオポリマー)で記録することができた。対照として、酵素を溶液中で使用した(図14参照)。
【0170】
固定化グルコースオキシダーゼを有する異なるヒドロゲル試料の長期データ(図15および16)を実施し、酵素活性を、対照としての溶液中の酵素と比較して、異なる日にプロットした。
【0171】
固定化ウリカーゼを有する低修飾ヒドロゲル(PCM1)の長期データを実施し、酵素活性を22日間にわたってプロットした(図17)。
【0172】
本発明を以下の項目によってさらに特徴付ける。
【0173】
項目:
1. 以下の工程を含む、生体適合性ヒドロゲルを調製する方法:
a)第1の多糖および第2の多糖を提供する工程であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつnが10から10000の整数である、
工程、
b)任意で、第1および/または第2の多糖の少なくとも1つのOH-基をカルボキシメチル化する工程、
c)第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程、または第1の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Xを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第1の多糖を官能基化する工程であって、
ここでAが-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでXが-NH-(CH2)r-N3、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2N3、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-N3からなる群より選択され、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数である、
工程、
ならびに
第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含まない場合に、構造-A'-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程、または第2の多糖のモノマー反復単位がカルボン酸残基を含む場合に、構造-Yを有する1つもしくは複数のリンカー単位によって、第2の多糖を官能基化する工程であって、
ここでA'が-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでYが-NH-(CH2)r-Q、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2Q、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-Qからなる群より選択され、
ここでQが
であり、
ここでM、M'=HまたはMeであり、かつ
ここでW=OMe、OEt、OH、NH2またはNHMeである、
工程、
d)任意で、1つまたは複数の酵素を、工程a)~c)によって形成された混合物に添加する工程、
e)工程a)~d)によって形成された混合物を、水性媒質中、25℃~70℃の範囲、好ましくは40℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは1~10時間インキュベートする工程。
2. 第1の多糖および第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目1記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
3. 第1の多糖および第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目1または項目2記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
4. 第1の多糖および第2の多糖がプルランである、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
5. 第1および/または第2の多糖がデキストランまたはプルランであり、かつデキストランまたはプルランの少なくとも1つのOH-基についてのカルボキシメチル化が、工程b)において実施される、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
6. 工程c)において、第1の多糖が、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のAまたはXによって官能基化される、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
7. 工程c)において、第2の多糖が、第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のA'またはYによって官能基化される、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
8. dが1である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
9. 工程e)が、架橋ポリマーを形成するための、XとYとの間の熱誘導性付加環化反応である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
10. N3の含有量が、第1の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5のN3である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
11. Qの含有量が、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位あたり0.01~1.5である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
12. 工程c)において、-A-Xが、第1の多糖の少なくとも1つの一級または二級OH-基へと、好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4またはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第1の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結される、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
13. 工程c)において、-A'-Yが、第2の多糖の少なくとも1つの一級または二級OH-基へと、好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC2、C3、C4またはC6の少なくとも1つを介して、より好ましくは第2の多糖のモノマー反復単位のC6を介して連結される、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
14. 毒性試薬を使用せず、好ましくはグルタルアルデヒドを使用しない、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
15. 官能基化されていない第1の多糖の分子量が、5~2000kDaの範囲である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
16. 官能基化されていない第2の多糖の分子量が、5~2000kDaの範囲である、前記項目のいずれか一項記載の生体適合性ヒドロゲルを調製する方法。
17. 項目1~16のいずれか一項の方法によって得ることができるヒドロゲル。
18. 1つまたは複数の封入酵素を含む、項目17記載のヒドロゲル。
19. 膨潤性または膨潤ヒドロゲルマトリックスである、項目17または18記載のヒドロゲル。
20. 1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、以下の構造を含む架橋ポリマーを含む生体適合性ヒドロゲル:
-第1の多糖および第2の多糖であって、
好ましくはここで、第1の多糖および/または第2の多糖が独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、およびデキストランからなる群より選択され、
nが、第1および/または第2の多糖のモノマー反復単位の数であり、かつ
nが10から10000の整数である、
第1の多糖および第2の多糖、
-第1の多糖を第2の多糖と連結させる1つまたは複数のリンカー単位であって、ここで1つまたは複数のリンカー単位の構造が
-A-Z1-B-Z2-A'-であり、
ここでAおよびA'が、互いに独立して、-(CH2)d-C(O)-または-C(O)-NH-であり、ここでdが1~3の整数であり、
ここでZ1が-O-、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
dが1~4の整数であり、
rが2~20の整数であり、
sが1~15の整数であり、かつ
tが1~15の整数であり、
かつ、
ここでZ2が-OH、-(CH2)r-、-NH-(CH2CH2O)s-CH2CH2-、および-NH-(CH2-CH2-C(O))t-CH2-CH2-からなる群より選択され、
ここでBが
であり、
ここでR'が-CF3、-C(O)-OMe、-C(O)-OEt、-C(O)-OH、-C(O)-NH2、および-C(O)-NHMeからなる群より選択される、
1つまたは複数のリンカー単位。
21. 膨潤性または膨潤ヒドロゲルマトリックスである、項目20記載のヒドロゲル。
22. 1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化が、1つまたは複数の酵素の封入およびヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合を含む、項目20または項目21記載のヒドロゲル。
23. 第1および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、セルロース、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目20~22のいずれか一項記載のヒドロゲル。
24. 第1および/または第2の多糖が、互いに独立して、プルラン、アルギネート、ヒアルロナン、デキストラン、リケニン、レンチナン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、項目20~23のいずれか一項記載のヒドロゲル。
25. 第1および/または第2の多糖がプルランである、項目20~24のいずれか一項記載のヒドロゲル。
26. -A-Z1-が式-CH2-CO-NH-(CH2-CH2-O)n-CH2-CH2-を有し、ここでnが好ましくは1~5である、項目20~25のいずれか一項記載のヒドロゲル。
27. 第1および/または第2の多糖が、全ヒドロゲルに対して、5~120mg/ml、好ましくは10~80mg/ml、より好ましくは20~60mg/mlの濃度を有する、項目20~26のいずれか一項記載のヒドロゲル。
28. 非共有結合的固定化についての1つまたは複数の酵素が、リパーゼまたはオキシダーゼ、好ましくはグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、コルチゾールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、およびアルコールオキシダーゼからなる群より選択される、項目20~27のいずれか一項記載のヒドロゲル。
29. 項目17~28のいずれか一項記載のヒドロゲルを含む組成物。
30. 項目17~28のいずれか一項記載のヒドロゲル中に1つまたは複数の酵素を封入するための方法。
31. a)ヒドロゲル中での1つまたは複数の酵素の非共有結合的固定化のための、または
b)バイオセンサーにおける、
項目17~28のいずれか一項記載のヒドロゲルの使用。
32. 項目17~29のいずれか一項記載の組成物またはヒドロゲルを含むキット。
【0174】
参照文献
図1
図2
図3A-1】
図3A-2】
図3B-1】
図3B-2】
図3C-1】
図3C-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A-1】
図13A-2】
図13A-3】
図13B-1】
図13B-2】
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28A
図28B
図29
図30A
図30B
図30C
図30D
【国際調査報告】