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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ABCB5幹細胞のプロセシング
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/02 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241003BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241003BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20241003BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20241003BHJP
【FI】
C12M3/02
A61K35/28
A61P17/02
C12M1/26
A61J1/05 310
C12N5/074
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522479
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2022000617
(87)【国際公開番号】W WO2023062429
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522425507
【氏名又は名称】レアセル ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】RHEACELL GMBH & CO.KG
【住所又は居所原語表記】Im Neuenheimer Feld 517, 69120 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスターレヒナー,ジャスミナ
(72)【発明者】
【氏名】クリングル,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】バリカヤ,セダ
(72)【発明者】
【氏名】クルス,マーク,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】コーノル,マキシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ガンス,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C047
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029GA02
4B029GB10
4B029HA05
4B029HA09
4B065AA90X
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
4C047AA05
4C047BB11
4C047BB12
4C047BB17
4C047CC04
4C047DD02
4C047DD03
4C047DD22
4C047DD35
4C047GG15
4C087AA01
4C087BB63
4C087MA17
4C087NA20
4C087ZA89
(57)【要約】
使用単位低温貯蔵バイアル中で提示される治療用ABCB5+幹細胞の集団が提供される。また提供されるのは、治療用細胞を作製する方法および使用の方法である。閉鎖システム低温貯蔵バイアルは、細胞容器に接続された充填チューブおよびエアベントを含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1mlあたり10.4×10±20%~15.6×10のABCB5+幹細胞を含む使用単位バイアル(1)、ここで、使用単位バイアル(1)は、クローズドシステム低温貯蔵バイアルである、
を含む、デバイス。
【請求項2】
バイアル(1)が、細胞容器(6)に接続された少なくとも1つの充填チューブ(3)を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
バイアル(1)が、1~2ml、1.45~1.50ml、4~5ml、1~5ml、または4.05~4.96mlの体積を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
バイアル(1)が、1mlあたり13×10+/-10%のABCB5+幹細胞、または10.5×10+/-10%の細胞/mlを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
上端および下端を有する細胞容器(6)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイスであって、ここで、上端は、エアベント(4)および充填チューブ(3)に接続され、ここで、エアベント(4)および充填チューブ(3)は、各々、遠位面および近位面を有し、およびここで、各々の近位面は、細胞容器(6)の上端に隣接する、前記デバイス。
【請求項6】
充填チューブ(3)が、充填ポート(2)を細胞容器(6)の上端に接続する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
充填ポート(2)が、細胞送達デバイス(16)を取り付けるためのハーメチックシールされた充填取り付け片を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
充填取り付け片が、ルアーロックである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
微生物学的フィルター(5)が、エアベント(4)内に配置される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
治療用細胞溶液の単位用量を調製するための方法であって、
ABCB5陽性細胞を含むプールされた集団を調製すること、細胞を濃縮すること、および濃縮された細胞を再懸濁して、13×10±20%の細胞/ml~24×10/mlの細胞濃度を有するプールされた試料を産生すること、任意に、プールされた試料からの細胞の単位試料を分取すること、および単位試料を、クローズドシステム低温貯蔵バイアル(1)の充填ポート(2)を通して充填チューブ(3)に移すこと、
を含み、単位試料は、細胞容器(6)中に移されて治療用細胞溶液(7)の単位用量を産生する、
前記方法。
【請求項11】
単位試料が細胞容器(6)に移された後で、バイアル(1)に角度をつけて、無菌の試験試料を充填チューブ(3)中に戻して通過させることを可能にすること、バイアル(1)に角度をつけて直立位置にすること、および充填チューブ(3)から無菌の試験試料を取り出すことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プールされた試料が、1mlあたり約13×10+/-10%の細胞の細胞濃度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単位試料が、約2mlまたは約5mlである、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
バイアル(1)が、約90度の角度において傾けられる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単位試料が、充填ポート(2)に取り付けられたルアーロックシリンジ(16)を用いて、充填チューブ(3)に移される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
充填ポート(2)が、細胞送達デバイス(16)を取り付けるためのハーメチックシールされた充填取り付け片を含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
無菌の試験試料が、シリンジを用いて充填チューブ(3)から取り出される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
バイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量が、少なくとも約1.5mlまたは4.50mlの体積を含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
バイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量が、1mlあたり約13×10±20%のABCB5+幹細胞を含む、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
細胞のバイアルを解凍すること、細胞をバイアルから取り出すこと、および細胞をシリンジ中で再構成することをさらに含む、請求項10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
細胞のバイアルを解凍すること、細胞をバイアルから取り出すこと、および細胞を注入バッグ中で再構成することをさらに含む、請求項10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象を処置するための方法であって、対象に治療用細胞溶液の単位用量を投与することを含み、ここで、治療用細胞溶液の単位用量は、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイスから得られるか、または、請求項10~21のいずれか一項に記載の方法に従って作製される、前記方法。
【請求項23】
細胞溶液が、対象の創傷に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療用細胞溶液の複数の単位用量が、対象に投与される、請求項22または23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年10月14日に出願された米国仮出願番号63/255620の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張し、該仮出願は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
十分に定義されていない、自己複製する成体多能性間葉系幹細胞(MSC)は、真皮を含むほぼすべての成体結合組織内に存在する。典型的には、それらは、組織のホメオスタシス、修復、臓器の維持のために不可欠な長期的な自己複製能力を保護するための重要な要件である、微小環境(niche environment)を維持する。
【0003】
ATP結合カセットサブファミリーBメンバー5、略称ABCB5、別名P-糖タンパク質ABCB5は、細胞膜貫通型タンパク質である。がん患者において薬剤耐性を引き起こす原因となることが示唆されているABCB1(MDR1)、ABCB4(MDR2/3)、ABCG2(Bcrp1、MXR1)のようなトランスポーターを含む、活性トランスポーターのABCスーパーファミリーは、非悪性の細胞型において、正常な細胞輸送、分化および生存の機能を果たす。これらの周知のABCトランスポーターは、幹細胞および前駆細胞の集団において、高レベルで発現することが示されている。これらの、および関連するABCトランスポーターにより媒介される蛍光色素Rhodamine123およびHoechst 33342についての排出能力は、複数の組織からのかかる細胞のサブセットの単離のために利用されてきた。例えば、ABCB5は、新規の真皮および眼球の細胞の亜集団を同定する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
ABCB5+幹細胞集団の組成物は、確実に単離され、正確な治療的な量において使用単位(unit of use)容器中にパッケージングされることが、本明細書において開示される。
本開示のいくつかの側面において、1mlあたり10.4×10±20%~15.6×10±20%のABCB5+幹細胞を、任意に1~2ml、1.45~1.50ml、4~5ml、1~5ml、または4.05~4.96mlの体積において含む、使用単位バイアル(1)を含むデバイス、ここで、使用単位バイアル(1)は、クローズドシステム低温貯蔵バイアルである、が提供される。
【0005】
いくつかの側面において、解凍後に1mlあたり8×10±20×10~13×10±20%、8.5×10±20%~12.5×10±20%、8.9×10±20%~12.1×10±20%または8.9×10±20%~12.4×10±20%のABCB5+幹細胞を、任意に、1.5~5ml、1.5~4ml、2~5ml、または2~4mlの体積で含む使用単位バイアル(1)、ここで、使用単位バイアル(1)は、クローズドシステム低温貯蔵バイアルである、が提供される。
【0006】
いくつかの態様において、バイアル(1)は、細胞容器(6)に接続された少なくとも1つの充填チューブ(3)を含む。いくつかの態様において、バイアル(1)は、4.50mlの体積を含む。いくつかの態様において、バイアル(1)は、4.0mlの体積を含む。
【0007】
いくつかの態様において、バイアル(1)は、1mlあたり13×10±20%のABCB5+幹細胞を含む。
いくつかの態様において、バイアル(1)は、バイアルが解凍された後、1mlあたり10×10±20%~11×10±20%のABCB5+幹細胞を含む。他の態様において、バイアル(1)は、バイアルが解凍された後、1mlあたり8×10~13×10±20%、8.5×10±20%~12.5×10±20%、8.9×10±20%~12.1×10±20%または8.9×10±20%~12.4×10±20%のABCB5+幹細胞を含む。
【0008】
いくつかの態様において、バイアル(1)は、上端および下端を有する細胞容器(6)を含み、ここで、上端は、エアベント(4)および充填チューブ(3)に接続される。エアベント(4)および充填チューブ(3)は、各々、遠位面および近位面を有し、およびここで、各々の近位面は、細胞容器(6)の上端に隣接している。いくつかの態様において、充填チューブ(3)は、充填ポート(2)を細胞容器(6)の上端に接続する。いくつかの態様において、充填ポート(2)は、細胞送達デバイス(16)を取り付けるためのハーメチックシールされた充填取り付け片を含む。いくつかの態様において、充填取り付け片はルアーロックである。いくつかの態様において、微生物学的フィルター(5)は、エアベント(4)内に配置される。
【0009】
他の側面において、治療用細胞溶液の単位用量を調製するための方法が提供される。方法は、ABCB5陽性細胞を含むプールされた集団を調製すること、細胞を濃縮すること、濃縮された細胞を再懸濁して、16×10/ml~24×10/ml、13×10/ml~24×10/ml、13×10/ml±20%、13×10/ml±10%、13×10/ml±5%、13×10/ml±1%、または13×10/mlの細胞濃度を有するプールされた試料を産生すること、プールされた試料から細胞の単位試料を分取すること、および、単位試料をクローズドシステム低温貯蔵バイアル(1)の充填ポート(2)を通して充填チューブ(3)に移すことを含み、単位試料は、細胞容器(6)中に移されて、治療用細胞溶液(7)の単位用量を産生する。
【0010】
いくつかの態様において、方法は、単位試料が細胞容器(6)に移された後、バイアル(1)に角度をつけて単位試料を充填チューブ(3)に曝露すること、および無菌の試験試料を充填チューブ(3)中へ通過させること、バイアル(1)に角度をつけて直立位置にすること、および充填チューブ(3)から無菌の試験試料を取り出すことを、さらに含む。いくつかの態様において、プールされた試料は、約20×10/mlまたは約13×10/ml±10%の細胞濃度を有する。いくつかの態様において、バイアル(1)は、約90度の角度で角度がつけられている。
【0011】
いくつかの態様において、単位試料は約5mlである。
いくつかの態様において、単位試料は、充填ポート(2)に取り付けられたルアーロックシリンジ(16)を用いて、充填チューブ(3)に移される。
いくつかの態様において、充填ポート(2)は、細胞送達デバイス(16)を取り付けるためのハーメチックシールされた充填取り付け片を含む。いくつかの態様において、無菌の試験試料は、シリンジを用いて充填チューブ(3)から取り出される。
【0012】
いくつかの態様において、バイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量は、約1.5mlまたは4.0~4.50mlの体積を含む。
いくつかの態様において、バイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量は、1mlあたり約13×10のABCB5+幹細胞を含む。いくつかの態様において、細胞が解凍された後のバイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量は、1mlあたり約10×10~10.5×10のABCB5+幹細胞を含む。細胞が解凍された後のバイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量は、バイアルが解凍された後、1mlあたり約8×10~13×10、8.5×10~12.5×10、8.9×10~12.1×10または8.9×10~12.4×10のABCB5+幹細胞を含む。
【0013】
いくつかの態様において、ABCB5+幹細胞集団が提供され、これは、合成ABCB5+幹細胞の集団であり、ここで、集団の96%より多くは、生理学的に発生するABCB5陽性幹細胞のインビトロ子孫(in vitro progeny)である。いくつかの態様において、集団の96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.7%、99.9%、99.99%、99.998%、99.999%、または99.999997%より多くは、生理学的に発生するABCB5陽性幹細胞のインビトロ子孫である。いくつかの態様において、集団の100%は、生理学的に発生するABCB5陽性の皮膚幹細胞または眼幹細胞のインビトロ子孫である。
【0014】
幹細胞療法が有用である障害のいずれかを処置するための、本発明の幹細胞の集団の使用、貯蔵された細胞を用いる組織工学または創傷治癒もまた、本発明の側面として提供される。
【0015】
本発明の限定の各々は、本発明の様々な態様を包含することができる。したがって、任意の1つの要素または要素の組み合わせを含む本発明の限定の各々が、本発明の各々の側面において含まれ得ることが予想される。本発明は、その適用において、以下の説明において記載されるかまたは図面において例示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様が可能であり、様々な手法で実施されるかまたは実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書における「含むこと(including)」、「含むこと(comprising)」、または「有すること(having)」、「含むこと(containing)」、「含むこと(involving)」、およびそれらのバリエーションの使用は、その後に列挙される項目およびそれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0016】
添付の図面は、縮尺どおりに描画されることを意図したものではない。図面において、様々な図において説明されている各々の同一またはほぼ同一の構成要素は、同様の数字により表される。明確性を目的として、すべての図面においてすべての構成要素がラベルされているわけではない。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A~1Bは、単離されたABCB5+幹細胞試料を、最適な細胞濃度に濃縮および調整されたプールされた試料にプールする様々な態様を示す概略図である。
【0018】
図2図2A図2Bは、ABCB5+幹細胞のプールされた試料をクローズドシステム低温貯蔵バイアル(1)中に移し、試験のためにアリコートを単離し、貯蔵のためにバイアルを調製する方法の様々な態様を表す概略図である。
【0019】
図3図3は、細胞をクローズドシステム低温貯蔵バイアル(1)中にロードする方法を表す図のセットである。シリンジ(16)を、バイアル(1)の充填ポート(2)の上部の取り付け片に取り付け、細胞を、シリンジから充填ポート(2)を通して充填チューブ(3)中に注入し、フィルター(5)を通過させて細胞容器(6)中に入れる。
【0020】
図4図4は、クローズドシステム低温貯蔵バイアル(1)の側面図である。
【0021】
図5図5A図5Cは、解凍された細胞の再構成および送達の例示的な態様を示す図である。図5Aは、送達シリンジ中に取り込まれている再構成溶液を示す。図5Bは、シリンジを、次いで、バイアルから細胞を取り出すために用いてもよいことを示している。図5Cは、再構成溶液中の細胞は、シリンジから患者に送達してもよく、または、投与前に用量を減少させるために、一部を廃棄してもよいことを示している。
【0022】
図6図6は、細胞の再構成および送達のための代替的な態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の説明
いくつかの側面において、本発明は、ABCB5陽性幹細胞を含有する、使用単位のパッケージングされた製品である。細胞は、治療的使用のための有効量において、無菌バイアル中に充填される。本発明以前には、ABCB5+幹細胞を単回使用容器中での貯蔵のためにパッケージングする方法は、知られていなかった。1mlあたり10.4×10~15.6×10のABCB5+幹細胞の、4.05~4.96mlの体積における、細胞の臨界量のパッケージングを達成するための方法が提供される。細胞は、様々な治療目的のために使用してもよい。
【0024】
よって、パッケージングされたABCB5+幹細胞集団から構成される組成物が、本明細書において開示される。これらの細胞は単離され、正確な治療的な分量において使用単位容器にパッケージングされる。
【0025】
細胞は、図4において示されるもののような、使用単位バイアル(1)を含むデバイス中にパッケージングされる。使用単位バイアルとは、取り出して患者に直接投与することができる、単一の治療適用の細胞を収容するバイアルである。バイアルは、典型的には、治療剤または細胞などの組成物を収容するためのガラスまたはプラスチックの容器であり、それは、その中に、組成物または液体内容物を含有させるための閉鎖部を有する。
【0026】
バイアルは、様々な充填能力を有してもよく、無菌であっても非無菌であってもよい。好ましくは、バイアルは無菌または無菌化可能である。バイアルは、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、およびこれより大きいものを含むがこれらに限定されない、様々な液体の体積を収容するための、ある範囲のサイズにおいて利用可能である。いくつかの態様において、本明細書において用いられるバイアルは、少なくとも5mlの体積を保持する。他の態様において、バイアルは、1~5ml、1.5~5ml、5~10mlまたは5~6mlの体積を保持する。
【0027】
いくつかの態様におけるバイアルは、クローズドシステム低温貯蔵バイアルである。低温貯蔵バイアルは、超低温に耐えるように設計されたバイアルである。いくつかの態様において、低温貯蔵バイアルは、バイアルが著しい温度変化に耐えられるように、例えばポリプロピレンなどの低結合性の低温貯蔵グレードのプラスチックから製造される。いくつかの態様において、バイアルは、市販の環状オレフィン共重合体(TOPAS(登録商標)COC;TOPAS Advanced Polymers, GmbH)から構築される。COC樹脂は、低い吸湿性を有し、このことは、水性の細胞懸濁液がバイアル表面に付着することを防ぎ、かつ、-196℃もの低温に耐える熱特性を有する。他の材料もまた、利用してもよい。
【0028】
低温貯蔵プロセスは、凍結保存とも称され、生きている生物系を、液体窒素などの低温貯蔵媒体中で、超低温において、長期間にわたり貯蔵するために有用である。これらの低温においては、細胞の代謝活動が停止する。これらの条件下において貯蔵された細胞は、貯蔵前と同様の状態に蘇生および復元できる。細胞を使用する準備ができたら、バイアルを解凍し、シリンジなどのデバイスを用いて細胞を取り出してもよい。バイアルから取り出された解凍された細胞は、単位用量におけるものであり、患者への送達などによる治療プロセスにおいて利用する準備ができている。
【0029】
バイアルの細胞容器中の分量は、治療用細胞溶液の単位用量である。治療用細胞溶液の単位用量は、治療結果をもたらすための対象への送達のために有用な量である。単位用量は、細胞の濃度および/または体積により定義される。いくつかの態様において、治療用細胞溶液の単位用量は、1mlあたり10.4×10~15.6×10のABCB5+幹細胞を含む。いくつかの態様において、治療用細胞溶液の単位用量は、10.4×10、10.5×10、10.6×10、10.7×10、10.8×10、10.9×10、11.0×10、11.1×10、11.2×10、11.3×10、11.4×10、11.5×10、11.6×10、11.7×10、11.8×10、11.9×10、12.0×10、12.1×10、12.2×10、12.3×10、12.4×10、12.5×10、12.6×10、12.7×10、12.8×10、12.9×10、13.0×10、13.1×10、13.2×10、13.3×10、13.4×10、13.5×10、13.6×10、13.7×10、13.8×10、13.9×10、14.0×10、14.1×10、14.2×10、14.3×10、14.4×10、14.5×10、14.6×10、14.7×10、14.8×10、14.9×10、15.0×10、15.1×10、15.2×10、15.3×10、15.4×10、15.5×10、15.6×10、12.5×10~13.5×10、12.6×10~13.4×10、12.7×10~13.3×10、12.8×10~13.2×10、または12.9×10~13.1×10である。いくつかの態様において、バイアルは、1mlあたり13×10のABCB5+幹細胞を含む。
【0030】
いくつかの態様において、細胞が解凍された後のバイアル(1)中の治療用細胞溶液(7)の単位用量は、1mlあたり約10×10~10.5×10のABCB5+幹細胞を含む。いくつかの側面において、細胞が解凍された後の単位用量は、1mlあたり8×10~13×10、8.5×10~12.5×10、8.9×10~12.1×10または8.9×10~12.4×10のABCB5+幹細胞を含む。
【0031】
いくつかの態様において、治療用細胞溶液の単位用量は、1~5ml、1~2ml、4~5mlまたは4.05~4.96mlの体積を含む。いくつかの態様において、治療用細胞溶液の単位用量は、1.50、1.60、1.70、1.80、1.90、4.05、4.06、4.07、4.08、4.09、4.10、4.11、4.12、4.13、4.14、4.15、4.16、4.17、4.18、4.19、4.20、4.21、4.22、4.23、4.24、4.25、4.26、4.27、4.28、4.29、4.30、4.31、4.32、4.33、4.34、4.35、4.36、4.37、4.38、4.39、4.40、4.41、4.42、4.43、4.44、4.45、4.46、4.47、4.48、4.49、4.50、4.51、4.52、4.53、4.54、4.55、4.56、4.57、4.58、4.59、4.60、4.61、4.62、4.63、4.64、4.65、4.66、4.67、4.68、4.69、4.70、4.71、4.72、4.73、4.74、4.75、4.76、4.77、4.78、4.79、4.80、4.81、4.82、4.83、4.84、4.85、4.86、4.87、4.88、4.89、4.90、4.91、4.92、4.93、4.94、4.95、4.96、4.1~4.8、4.2~4.7、4.3~4.6、または4.4~4.5mlの体積を含む。いくつかの態様において、バイアルは、4.50mlの体積を含む。
【0032】
バイアルは、任意の従来のデザインまたは形状であってもよい。多くの低温貯蔵バイアルが、当該技術分野において公知である。いくつかの例示的な態様において、低温貯蔵バイアルは、図4において示される。例示的な低温貯蔵バイアルは、クローズドシステム低温貯蔵バイアルである。クローズドシステムバイアルは、特に含有される細胞の無菌性と純度を維持するために、完全に密封された、例えばハーメチックシールされた、バイアルである。
【0033】
図4において示されるバイアル(1)は、充填チューブ(3)と細胞容器(6)の2つの主要な区画を含む。充填チューブ(3)および細胞容器(6)は、上端および下端を有する。充填チューブ(3)の上端は、充填ポート(2)に取り付けられてもよい。充填チューブ(3)の下端は、細胞容器(6)の上端に接続される。エアベント(4)は、細胞容器(6)の上端に接続され、微生物学的フィルター(5)は、エアベント(4)内に配置される。エアベントチューブ(4)はまた、エアベントチューブ(4)の底部が充填チューブ(3)に隣接する細胞容器(6)の上端に対して露出するように、充填チューブ(3)に隣接して配置される。治療用細胞溶液(7)の単位用量は、容器中に含まれていてもよい。細胞回収ポート(8)は、細胞容器(6)の底部に配置される。
【0034】
エアベントおよび充填チューブは、細胞容器よりも柔軟な材料で作られていてもよい。例えば、充填チューブおよびベントチューブは、低温貯蔵バッグシステムにおいて一般的に用いられる材料で作られていてもよい。かかる材料として、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)が挙げられる。図4において示される例示的なバイアルにおいて、充填ポート、ベントポートおよび回収ポートの3つのポートが提供される。充填ポートは、細胞溶液が充填チューブに送達され得るように、細胞溶液へのアクセスを提供するように設計される。それは、バイアルを充填するために使用される針または無針セプタムを有していてもよい。エアベントポートは、特に細胞が細胞容器に添加されて細胞容器を充填し、これが空気にとって代わる際に、空気を逃がすことができるようにするために、フィルタープラグを有してもよい。プラグは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料で作られていてもよく、これは、圧力下での空気の移動を可能にし、また微生物バリアとしても機能し、よって、細胞が容器に添加されている間または容器から取り出されている間に汚染物質の導入を防ぐことができる材料として望ましい。充填ポートとエアベントポートは、細胞がバイアルに入れられ、無菌試料が取り出された後、例えば高周波(RF)またはヒートシールを用いて、密封される。回収ポートは、細胞容器の底部に配置され、バイアルからの細胞の無菌的かつ効率的な取り出しを可能にするように設計される。典型的には、回収ポートは、針を貫通させることができる柔軟なプラスチック材料から作られた針セプタムを有する。それは、無菌性を増強するために、使用前に被覆されてもよい。各々のポートは、ハーメチックシールされていてもよい。
【0035】
いくつかの態様において、充填ポートは、細胞送達デバイスを取り付けるための充填取り付け片を含む。細胞送達デバイスは、例えば、図2および3においてはシリンジ(16)として示される。シリンジ針を充填ポートを通して充填チューブ中に挿入することにより、シリンジを用いて細胞を充填チューブに送達してもよい。いくつかの態様において、充填取り付け片はルアーロックであり、シリンジはルアーロックチップを有する。ルアーロックは、隆起したガイドを有し、これは、シリンジチップをその上にねじ止めできるように、シリンジのルアーロックチップと嵌め合わせることができ、回転させることにより取り付け片とシリンジとの間に非常に緊密に適合した結合を達成することができる。緊密な適合は、漏洩および任意の汚染への暴露を防止する。
【0036】
本発明の治療用細胞溶液の単位用量を調製するための例示的な方法は、図1~3および5~6において示される。方法は、初めに、ABCB5陽性細胞を含むプールされた集団を調製することを含む。細胞は、一次供給源から直接調製して、合成超高純度細胞集団として開発してもよく、および/または細胞集団を操作することにより産生してもよい。
【0037】
ABCB5+幹細胞は、単離され、チューブ(10)に移される。細胞は、チューブ中で濃縮され、再懸濁される。再懸濁された材料は、プールされたチューブ(12)に添加されて、プールされた試料を産生する。例えば、ABCB5陽性細胞を含有する5つの単一の単離物を、50mlチューブ(12)などの容器にプールしてもよい。各々の50 mlチューブは、残りのすべてのABCB5+細胞をチューブから取り出すために、例えば10mlの単離溶液で、連続的にリンスされる。プールされた細胞の試料は、次いで、例えば遠心分離により、濃縮される。濃縮されたペレットは、所与の体積において再懸濁される。図1Aにおいて示される方法などのいくつかの態様において、細胞の濃度は、細胞ペレットが再懸濁された後に計算される。図1Bに示されるものなどの代替的な態様において、細胞の濃度は、細胞がペレット化される前に、すなわち、元の細胞濃度に基づいて、計算される。計算の後で、細胞の濃度を調整して、13×10/ml±20%または16×10/ml~24×10/ml、または20×10/mlの細胞濃度を有するマスタープール試料(14)を産生してもよく、これは、治療用単位用量を産生するのに重要であるだろう。いくつかの態様において、治療用細胞の単位用量は13×10/ml±20%である。
【0038】
いくつかの態様において、マスタープール試料中の細胞の濃度は、約13×10/ml±20%、13×10/ml±15%、13×10/ml±10%、13×10/ml±5%、13×10/ml±3%、13×10/ml±1%、13×10/ml、16×10、16.1×10、16.2×10、16.3×10、16.4×10、16.5×10、16.6×10、16.7×10、16.8×10、16.9×10、17.0×10、17.1×10、17.2×10、17.3×10、17.4×10、17.5×10、17.6×10、17.7×10、17.8×10、17.9×10、18.0×10、18.1×10、18.2×10、18.3×10、18.4×10、18.5×10、18.6×10、18.7×10、18.8×10、18.9×10、19.0×10、19.1×10、19.2×10、19.3×10、19.4×10、19.5×10、19.6×10、19.7×10、19.8×10、19.9×10、20.0×10、20.1×10、20.2×10、20.3×10、20.4×10、20.5×10、20.6×10、20.7×10、20.8×10、20.9×10、21.0×10、21.1×10、21.2×10、21.3×10、21.4×10、21.5×10、21.6×10、21.7×10、21.8×10、21.9×10、22.0×10、22.1×10、22.2×10、22.3×10、22.4×10、22.5×10、22.6×10、22.7×10、22.8×10、22.9×10、23.0×10、23.1×10、23.2×10、23.3×10、23.4×10、23.5×10、23.6×10、23.7×10、23.8×10、23.9×10、24.0×10、または19×10~21×10である。いくつかの態様において、マスタープール試料は、1mlあたり約13×10のABCB5+幹細胞を含む。いくつかの態様において、数字は、生細胞および/または無傷細胞を指す。
【0039】
遠心分離中の細胞損失に起因して、個々の細胞単離物中の細胞の分量の合計は、プール後の総細胞数に対応しないことが実証されている。したがって、プールされた細胞が遠心分離後に再懸濁されるべき再懸濁物の体積が決定される。再懸濁物の体積を計算するために、約20×10/mlの細胞濃度が用いられる。細胞濃縮ステップにおけるこの調整は、細胞の最終的な単位用量を達成するために、アッセイにおける複数の要因を補うために不可欠である。このステップにおけるより高い濃度は、最終生成物における細胞生存率の低下をもたらした。さらに、ペレットの体積は、最終的な細胞数において役割を果たし、よって、プールされた試料のための目標濃度を設定することにおいて利用された。単位細胞用量について、13×10/ml+/-20%の目標濃度が検証された。
【0040】
細胞の単位試料は、さらなる処理のためにマスタープール試料から分離される。さらに処理および凍結保存される細胞の体積は、大きく異なる場合がある。例えば、処理および凍結保存される細胞の体積は、0.5ml~100ml、またはその間の任意の整数であってもよい。いくつかの態様において、さらなる処理のためにチューブに移される細胞の体積は、1ml、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、3.5ml、4ml、4.5ml、5ml、5.5ml、6ml、6.5ml、7ml、7.5ml、8ml、8.5ml、9ml、9.5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、40ml、または50mlである。全体を通して求められる一態様において、5mlの細胞がマスタープールから取り出され、直接的に、または個々のチューブ(18)に移した後に、シリンジ(16)に移される。5mlの例示的な体積が全体を通して用いられるが、他の体積が企図され、当業者は、使用される体積に基づいて細胞数を調整することができる。
【0041】
試験試料、すなわち、1mlのマスタープール試料を分離し、分析処理のために用いてもよい。分析処理のための試験試料は、凍結保存の前に、および/またはその後に、試料から取り出してもよい。残りの細胞懸濁液は、パッケージング単位の産生のために用いられる。この目的のために、図2A~2Bにおいて示されるとおり、5mlの細胞懸濁液が、5mlのチューブ(18)に移され、シリンジ(16)(すなわち、5ml)およびカニューレを用いて注意深くかつゆっくりと吸引される。プロセスを強化するために、1~2mlの空気がシリンジに添加される。好ましい態様において、充填、凍結保存、解凍および回収の後に、少なくとも4.0~4.5ml±10%の体積の最終生成物が提供されるように、パッケージング単位あたり5mlの体積の細胞懸濁液が検証される。細胞の単位試料は、一旦シリンジ(16)に入れられた後で、バイアル(1)に移されてもよい。具体的には、カニューレを取り外した後、シリンジは、上部に、すなわち低温貯蔵バイアルのルアーロックにより、接続される。細胞懸濁液は、クローズドシステム低温貯蔵バイアルの充填ポート(2)を通して充填チューブ(3)にゆっくりと移される。細胞懸濁液全体がバイアルに確実に入るように、1~2mlの空気を、シリンジ中に引き込む。
【0042】
別の態様において、図2Bにおいて示すとおり、2mlの細胞懸濁液を2mlのチューブ(18)に移し、シリンジ(16)(すなわち、2ml)およびカニューレを用いて注意深くかつゆっくりと吸引する。プロセスを強化するために、1~2mlの空気がシリンジに添加される。好ましい態様において、充填、凍結保存、解凍および回収の後に、少なくとも1.5ml±10%の体積の最終生成物が提供されるように、パッケージング単位あたり2mlの体積の細胞懸濁液が検証される。
【0043】
単位試料が充填チューブ中に移された後、それは、充填チューブ(3)から細胞容器(6)中にトラバース(traverse)する。方法は、単位試料が細胞容器(6)に移された後、バイアル(1)を傾けて、無菌試験のために単位試料のうちの少しの部分を充填チューブ(3)内に取り出すステップを、さらに含んでもよい。
【0044】
約90°の回転を用いることにより、バイアルが半分反転し、細胞容器(6)が横を向いて、細胞の一部が充填チューブに戻ることが可能となる。少量の試料、約0.95~0.05ml、好ましくは約0.50mlが充填チューブに移された後、バイアルの右側が上になるように、バイアルを再び90°回転させる。2つの液相は、ここで、別々に表示される。充填チューブ中にある無菌試料を、次いで、シリンジ中に引き込む。ルアーの接続を慎重に外し、シリンジをバイアルから取り外す。無菌試料は、無菌試験のために使用してもよい。次いで、充填チューブとエアベントチューブを、密封する。次いで、密封されたバイアルにラベルを付け、凍結保存してもよい。
【0045】
凍結保存とは、生体材料を、典型的には約-80℃から-196℃までの非常に低い温度で、例えば機械式ディープフリーザーまたは液体窒素低温貯蔵フリーザーまたはタンクにおいて、貯蔵できるようにする方法である。凍結保存は、細胞などの生体材料を、生体材料の機能低下や劣化を伴うことなく、比較的長期間にわたり、潜在的には無期限に貯蔵することが知られている。いくつかの態様において、本明細書において記載されるとおりに産生された細胞は、凍結保存され、液体窒素の気相(≦-130℃)中で貯蔵される。
【0046】
凍結細胞が使用のために準備された後で、バイアルを回収して解凍してもよい。細胞容器の底部としての細胞回収ポートに、シリンジでアクセスして細胞を取り出してもよく、これらは、次いで、治療的使用のために準備される。パッケージング単位は、完成した医薬品を含み、これは、治療用細胞溶液(7)の単位用量である。単回単位用量の細胞は、患者に直接送達されてもよいし、または患者のためのカスタム用量を創出するために再構成されてもよい。処置されている適応症の型および/または患者のサイズに依存して、用量は、単一の、または複数の単位用量の治療用細胞溶液を含んでもよい。例えば、治療的な分量は、5.8×10~1×1010の細胞、1×10~1×1010、または1×10~2×10、またはそれより多くの範囲であってもよく、投与は、特定の適応症および個体に適切であると決定された場合、一定の間隔(例えば、毎週、毎月など)で繰り返されてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、解凍されたバイアル中の単位用量は、10.5×10細胞/mlである。いくつかの態様において、解凍されたバイアル中の細胞の濃度は、10×10~11×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル中の細胞の濃度は、10.2×10~10.8×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル中の細胞の濃度は、10.4×10~10.6×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル内の単位用量は、8×10~13×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル内の単位用量は、8.5×10~12.5×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル内の単位用量は、8.9×10~12.1×10である。いくつかの態様において、解凍されたバイアル内の単位用量は、8.9×10~12.4×10である。
【0048】
解凍した細胞を再構成し、患者への送達のために調製してもよい。いくつかの態様において、解凍された細胞は、図5において示されるとおり再構成され、送達される。再構成溶液(20)の体積は、例えば、図5Aにおいて示されるとおり、送達シリンジ(22)中に取り込まれてもよい。シリンジは、次いで、図5Bにおいて示されるとおり、バイアル(1)から細胞を取り出すために用いてもよい。再構成溶液中の全細胞は、図5Cにおいて示されるとおり、シリンジから患者に送達されてもよく、または、投与前に用量を減らすために、一部を廃棄してもよい.
【0049】
他の態様において、細胞は、図6において示されるとおり、再構成され、送達されてもよい。輸液バッグ(24)は、すぐにまたは後で再構成および適用するために、再構成溶液で充填されるか、またはこれで予め充填されていてもよい。細胞バイアルの解凍後、細胞懸濁液をシリンジ中に引き込み、輸液バッグ(24)中に移してもよい。細胞は、患者への投与の前に、輸液バッグ中の溶液と混合されてもよい。細胞は、輸液バッグから患者に直接投与することができる。
【0050】
本明細書において開示されるデバイスにおいて貯蔵される細胞は、ABCB5+幹細胞の集団である。「細胞の集団」という用語は、本明細書において用いられる場合、少なくとも2つ、例えば、2つ以上、例えば、1つより多くの、ABCB5+幹細胞を含む組成物を指し、別段に特定されない限り、任意のレベルの純度または他の細胞型の存在もしくは不在を示すものではない。例示的態様において、集団は、他の細胞型を実質的に含まない。別の例示的態様において、集団は、指定された細胞型の、または指定された機能もしくは特性を有する、少なくとも2つの細胞を含む。
【0051】
ABCB5+幹細胞は、単離された細胞であってよい。細胞は、皮膚または眼組織などの組織、例えばヒト組織から単離されてもよい。単離された組織は、直接用いられてもよく、または培養されてもよい。
【0052】
細胞集団は、いくつかの態様において、高純度の合成細胞集団であってもよい。いくつかの好ましい態様において、細胞の100%が合成のものであり、ヒト組織などのドナー組織に由来する細胞は0%である。いくつかの態様において、細胞集団は、少なくとも95%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.86%、99.87%、99.88%、99.89%、99.90%、99.95%、99.96%、99.97%、99.98%、99.99%、または99.99%~99.999997%の、in vitroで製造されたかまたは合成のABCB5+幹細胞を含む。
【0053】
ABCB5+幹細胞は、当該技術分野において公知の方法を用いて単離され、処理されてもよい。例えば、細胞は、例えばABCB5特異的抗体を用いて、皮膚または眼組織などの組織から単離されてもよい。ABCB5+幹細胞の複数のバッチを増殖させ、継代し、次いでプールして、プールされた試料を形成してもよい。プールされた試料は、ABCB5陽性細胞(すなわち、単離された細胞、培養された細胞、または合成された細胞)の複数の単一のバッチが1つに組み合わされた試料である。典型的には、いくつかの態様において、1つのプールされた試料(マスターバッチとも称される)は、例えば、同じ出発材料(すなわち、同じドナー)に由来するかまたは同じ日に同じ継代番号で並行して単離された、複数の単一のバッチから構成される。
【0054】
試料中の細胞の量および細胞生存率は、当該技術分野において公知の方法を用いて測定してもよい。細胞数および細胞活力の測定のための自動化された方法として、フローサイトメトリーが挙げられる。フローサイトメトリー(すなわち、BD Accuri C6フローサイトメーター)は、細胞懸濁液中の生細胞を定量するための迅速かつ信頼できる方法を提供する。細胞の活力を評価するための1つの方法は、色素排除法を用いることである。生細胞は、無傷の膜を有し、これは、非生細胞の損傷を受けた透過可能な膜に容易に浸透する多様な色素を排除する。
【0055】
細胞の数ならびに活力の決定は、合成幹細胞の単離の後、それらの凍結保存の直前に行われる。
例示的な細胞分析は、単一のもしくはプールされた試料または低温貯蔵バイアルから、1.5mlの反応チューブ(80μlのVerseneを含む)中に、10μlの細胞懸濁液をピペッティングすることを含む。10μlのPI溶液(1mg/ml)の添加の後、総体積をVerseneで500μlに調整し、BD Accuri C6フローサイトメーターで測定を行う。細胞の数および活力が計算される。細胞の活力についての理想的な受入基準は≧90%である。
【0056】
細胞生存率は、また、カルセイン-AM(カルセインアセトキシメチルエステル)(Acetoxymethylester:Aおよびmは太字)染色によるフローサイトメトリーを用いて評価してもよい。カルセインAMは、無傷の生細胞に容易に浸透する非蛍光性の疎水性化合物である。細胞内に入ると、細胞内エステラーゼがアセトキシメチル(AM)エステル基を切断して、細胞質によく保持される親水性の強蛍光化合物であるカルセインを生成する。細胞膜が損なわれたアポトーシス細胞や死細胞はカルセインを保持しない。カルセインは、495nmにおいて最適に励起され、515nmのピーク発光を有する。
【0057】
細胞生存率の測定は、細胞生存率に関する情報を提供するために、細胞の凍結保存の直前に実施されてもよい。細胞生存率は、細胞が生きているか死んでいるかを決定するだけのPIによる細胞活力の決定とは異なり、単離された細胞の実際の代謝活性に関する情報を提供する。
【0058】
ABCB5+幹細胞は、好ましくは単離される。「単離された合成ABCB5+幹細胞」とは、本明細書で用いる場合、それらの自然環境以外の条件に置かれた細胞の調製物を指す。「単離された」という用語は、他の細胞との組み合わせもしくは混合物における、またはin vivoでの環境における、その後のこれらの細胞の後からの使用を排除するものではなく、ドナー、培養細胞および合成細胞から単離された初代細胞を含む。
【0059】
治療用ABCB5+幹細胞は、実質的に純粋な調製物として調製されてもよい。「実質的に純粋」という用語は、調製物がABCB5陽性幹細胞以外の細胞を実質的に含まないことを意味する。例えば、ABCB5細胞は、存在する全細胞の少なくとも70%を構成するべきであり、より高い割合、例えば、少なくとも85、90、95または99%が好ましい。
【0060】
本発明の治療用ABCB5+幹細胞は、多くの異なる治療目的のために用いてもよい。例えば、治療用細胞は、組織の修復および再生、同系移植、皮膚創傷治癒、同種移植、末梢動脈閉塞性疾患-PAOD、慢性肝不全の急性増悪-AOCLF、表皮水疱症-EB、ならびに他の多くの疾患のために用いられてもよい。例えば、角膜上皮幹細胞疲弊症(limbal stem cell deficiency:LSCD)ならびに他の角膜および眼の障害の処置のための、KRT12+角膜分化能力。ABCB5+幹細胞は、生着して創傷治癒促進因子を放出するそれらの能力に起因して、急性および慢性創傷を処置するために有用である。
【0061】
治療用ABCB5+幹細胞は、いくつかの態様において、免疫介在性疾患を処置するために有用である。免疫介在性疾患とは、有害な免疫応答、すなわち組織を損傷する免疫応答に関連する疾患である。これらの疾患は、移植、自己免疫疾患、心血管疾患、肝疾患、腎疾患、および神経変性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0062】
治療用ABCB5+幹細胞は、移植において、抗原(単数または複数)に対する免疫応答が減少または除去されるように、免疫系による応答を改善するために用いることができることを見出した。
移植とは、組織または臓器を、1つの身体または身体の部位から別の身体または身体の部位に移植する行為またはプロセスである。治療用ABCB5+幹細胞は、宿主に対して自家(同じ宿主から得られるもの)であってもよく、または、宿主に対して同種または同系である細胞などの非自家であってもよい。非自家細胞は、患者以外の誰かまたは臓器のドナーに由来する。あるいは、治療用ABCB5+幹細胞は、宿主に対して異種である供給源から得ることができる。いくつかの態様において、細胞は合成のものである。よって、治療用ABCB5+幹細胞は、治療用ABCB5+幹細胞を移植に対する免疫応答を抑制または改善するための有効量において移植レシピエントに投与することにより、移植(組織、臓器、細胞など)に対する免疫応答を抑制または改善するために用いられる。
【0063】
本発明の治療用ABCB5+幹細胞はまた、自己免疫疾患を処置および予防するためにも有用である。自己免疫疾患は、対象自身の抗体が宿主組織と反応する疾患、または免疫エフェクターT細胞が内因性の自己ペプチドに対して自己反応性であり、組織の破壊を引き起こす疾患のクラスである。よって、自己抗原と称される対象自身の抗原に対して、免疫応答が開始される。自己免疫疾患として、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、重症筋無力症(MG)、橋本甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、天疱瘡(例えば尋常性天疱瘡)、グレーヴス病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合結合組織疾患、多発性筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎(例えば、半月体形成性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、インスリン抵抗性、および自己免疫性真性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。「自己抗原」とは、本明細書において用いられる場合、正常な宿主組織の抗原を指す。正常な宿主組織は、がん細胞を含まない。
【0064】
自己免疫疾患の例は、抗糸球体基底膜(GBM)疾患である。GBM疾患は、IV型コラーゲンの3鎖の非コラーゲン性ドメイン1(3(IV)NC1)に対して向けられた自己免疫反応に起因し、罹患した患者において、迅速に進行する糸球体腎炎(GN)および最終的には腎不全を引き起こす。別の自己免疫疾患は、クローン病である。合成のABCB5+幹細胞を用いるクローン病の処置についての臨床試験が行われている。クローン病は、腸および消化管の炎症に関連する慢性の状態である。
【0065】
自己免疫疾患の処置において用いられる場合、治療用ABCB5+幹細胞は、好ましくは静脈内注射によって投与され、有効用量は、疾患の進行を遅らせるか、または疾患に関連する1つ以上の症状を緩和するために必要な量である。例えば、再発性の多発性硬化症の場合においては、有効用量は、少なくとも、発作の頻度または重篤度を減少させるために必要とされる量であるべきである。関節リウマチの場合においては、有効量は、少なくとも、患者により経験される疼痛および炎症を軽減するために必要とされる細胞の数であろう。
【0066】
治療用ABCB5+幹細胞はまた、肝疾患の処置においても有用である。肝疾患は、肝炎などの肝組織に損傷をもたらす疾患を含む。より一般的には、本発明の治療用ABCB5+幹細胞は、以下を含むがこれらに限定されない、肝臓の疾患、障害または状態の処置のために用いることができる:アルコール性肝疾患、肝炎(A、B、C、Dなど)、限局性肝病変、原発性肝細胞癌、肝臓の大きな嚢胞性病変、限局性結節性過形成肉芽腫性肝疾患、肝肉芽腫、遺伝性ヘモクロマトーシスなどのヘモクロマトーシス、鉄過剰症候群、急性脂肪肝、妊娠悪阻、妊娠中の介入性肝疾患、肝内胆汁うっ滞、肝不全、劇症肝不全、黄疸または無症候性高ビリルビン血症、肝細胞に対する損傷、クリグラー・ナジャー症候群、ウィルソン病、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症、ギルバート症候群、高ビリルビン血症、非アルコール性脂肪性肝炎、ポルフィリン症、非硬変性門脈圧亢進症、門脈線維症、住血吸虫症、原発性胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、骨髄移植後の肝静脈閉塞性疾患など。
【0067】
いくつかの態様において、本発明は、ABCB5+幹細胞により神経変性疾患を処置することに向けられる。いくつかの場合において、本発明は、神経変性疾患、または神経変性を生じ得る神経細胞への損傷を有する対象の処置を企図する。「神経変性障害」または「神経変性疾患」は、本明細書において、末梢神経系においてまたは中枢神経系において進行性のニューロンの喪失が起こる障害として定義される。神経変性障害の非限定的な例として、以下が挙げられる:(i)慢性神経変性疾患、例えば、家族性および散発性の筋萎縮性側索硬化症(それぞれ、FALSおよびALS)、家族性および散発性のパーキンソン病、ハンチントン病、家族性および散発性のアルツハイマー病、多発性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、びまん性レビー小体病、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性ミオクローヌスてんかん、線条体黒質変性症(strionigral degeneration)、捻転ジストニア、家族性振戦、ダウン症候群、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、ハラーホルデン・スパッツ病、糖尿病性末梢神経障害、ボクサー認知症、AIDS認知症、加齢性認知症、加齢性記憶障害、ならびにアミロイドーシス関連神経変性疾患、例えば伝達性海綿状脳症に関連するプリオンタンパク質(PrP)によって引き起こされるもの(クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、スクレイピー、およびクル)、および過剰なシスタチンC蓄積によって引き起こされるもの(遺伝性シスタチンC血管障害);ならびに、(ii)急性神経変性疾患、例えば、外傷性脳傷害(例えば、手術関連の脳傷害)、脳浮腫、末梢神経損傷、脊髄損傷、リー病、ギラン・バレー症候群、リポフスチン沈着症などのリソソーム蓄積障害、アルパー病、CNS変性の結果としてのめまい;慢性的なアルコールまたは薬物の乱用に伴い生じる病態(例えば、青斑核および小脳におけるニューロンの変性を含む);加齢に伴い生じる病態(認知障害および運動障害をもたらす小脳ニューロンおよび皮質ニューロンの変性を含む);慢性的なアンフェタミン乱用に伴い生じる病態(運動障害をもたらす大脳基底核ニューロンの変性を含む);脳卒中、局所虚血、血行不全、低酸素性虚血性脳症、高血糖、低血糖または直接的な外傷などの局所外傷から生じる病理学的変化;治療的な薬物および処置の負の副作用として生じる病態(例えば、グルタミン酸受容体のNMDAクラスのアンタゴニストの抗けいれん薬用量に対して応答しての帯状皮質および嗅内皮質ニューロンの変性)、ならびに、ウェルニッケ・コルサコフ関連認知症。感覚ニューロンに影響を与える神経変性疾患として、フリードライヒ運動失調症、糖尿病、末梢神経障害、および網膜神経変性が挙げられる。大脳辺縁系および皮質系の神経変性疾患として、脳アミロイドーシス、ピック萎縮症、およびレット症候群が挙げられる。前述の例は、包括的であることを意図したものではなく、単に「神経変性障害」または「神経変性疾患」という用語の例示として役立つ。
【0068】
本発明の方法はまた、腎臓病に関連する障害の治療にも有用である。以前に腎臓に注入された治療用ABCB5+幹細胞は、腎機能および細胞再生のほぼ即時の改善をもたらすことが実証されている。Resnick, Mayer, Stem Cells Brings Fast Direct Improvement, Without Differentiation, in Acute Renal Failure, EurekAlert!(2005年8月15日)。よって、本発明のABCB5+幹細胞は、単独で、または透析などの他の治療または手順と組み合わせて、腎機能および細胞再生を改善するために、腎疾患を有する対象に投与することができる。
【0069】
本発明の方法に従って処置され得る他の疾患として、角膜および肺の疾患が挙げられる。これらの組織における治療用ABCB5+幹細胞の投与に基づく治療は、肯定的な結果を実証している。例えば、ヒトの治療用ABCB5+幹細胞は、損傷した角膜を再建するために用いられている。Ma Y et al, Stem Cells(2005年8月18日)。加えて、骨髄由来の幹細胞は、肺の修復および肺の傷害に対する保護のために重要であることが見出された。Rojas, Mauricio, et al., American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology、第33巻、145~152頁(2005年5月12日)。よって、本発明のABCB5+幹細胞はまた、角膜組織または肺組織の修復において用いてもよい。
【0070】
本発明のABCB5+幹細胞についての別の用途は、組織再生におけるものである。本発明のこの側面において、ABCB5陽性細胞は、分化の誘導により組織を生成するために用いられる。単離され、精製された治療用ABCB5+幹細胞は、特定の培地中での有糸分裂による増殖を通して、未分化状態において増殖させ、それらが使用のための準備ができるまで貯蔵することができる。次いで、細胞は、解凍され、機械的、細胞的、生化学的な刺激を含む多数の要因により、骨、軟骨、および様々な他の型の結合組織に分化するように活性化される。ヒト治療用ABCB5+幹細胞は、多種多様な間葉系組織の細胞、ならびに腱、靭帯および真皮を産生する骨芽細胞および軟骨細胞などの細胞に分化する潜在能力を有し、この潜在能力は、単離後も、培養における数回の集団の増殖にわたり保持される。よって、治療用ABCB5+幹細胞を単離し、精製し、大量に増殖させ、および次いで治療用ABCB5+幹細胞を活性化させて、所望される特定の型の細胞、例えば骨格および結合組織、例えば骨、軟骨、腱、靭帯、筋肉および脂肪に分化させることが可能であることにより、骨格およびその他の結合組織の障害を処置するためのプロセスが存在する。結合組織という用語は、本明細書において、特化された要素を支持する身体の組織を包含するために用いられ、骨、軟骨、靭帯、腱、間質、筋肉および脂肪組織を包含する。
【0071】
別の側面において、本発明は、結合組織の損傷を修復するための方法に関する。方法は、細胞を修復に必要な結合組織の型に分化させるために好適な条件下で、結合組織損傷の領域に幹細胞を適用するステップを含む。
【0072】
「結合組織の欠損」という用語は、正常な結合組織と比較して、外傷、疾患、年齢、先天性の欠損、外科的介入などにより生じ得る任意の損傷または不規則性を含む欠損を指す。結合組織の欠損はまた、例えば美容整形のために、骨形成のみが所望される、損傷を受けていない領域も指す。
【0073】
ABCB5+幹細胞の単回単位用量は、任意の公知の投与の様式により対象に直接投与されてもよく、またはin vitro でマトリックスまたはインプラントに播種される(および次いで in vivoで移植(transfer)される)か、もしくは 直接in vivoで播種されてもよい。マトリックスまたはインプラントは、線維性またはヒドロゲルベースのデバイスなどのポリマー性マトリックスを含む。2つの型のマトリックスが、治療用ABCB5+幹細胞が軟骨または骨に分化する際にこれらを支持するために一般的に用いられる。マトリックスの1つの形態は、ポリマー性のメッシュまたはスポンジである;他のものは、ポリマー性のヒドロゲルである。マトリックスはまた、眼組織に送達されてもよい。
【0074】
マトリックスは、生分解性であっても、非生分解性であってもよい。生分解性という用語は、本明細書において用いられる場合、約25℃~38℃の間の温度を有するpH6~8の生理学的溶液に一度さらされた後、所望される適用において許容され得る期間内、約6か月未満、および最も好ましくは約12週間未満で、溶解または分解するポリマーを意味する。マトリックスは、例えば、1年未満、より好ましくは6か月未満、最も好ましくは2~10週間以上の期間にわたり生分解性であってもよい。
【0075】
また、細胞をハイドロゲル溶液と混合して、ハイドロゲルの硬化の前に、細胞を移植することが所望される部位中に直接的に注射してもよい。しかしながら、マトリックスはまた、特定の適用に適するように、成型して、身体の1つ以上の異なる領域において移植してもよい。この適用は、特定の構造的設計が所望される場合、または、細胞が移植されるべき領域が、細胞の成長および増殖を促進するための特定の構造もしくは支持体を欠く場合に、特に関連する。
【0076】
細胞が移植されるべき部位(単数または複数)は、必要な細胞数と同様に、個々の必要性に基づいて決定される。また、外部成型型を適用して、注入された溶液を成形することもできる。懸濁液は、シリンジと針を介して、特定の領域中に、増量剤が所望されればどこでも、特に軟部組織の欠損の領域に、直接注入することができる。
【0077】
本明細書で用いられる場合、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類である。ヒトABCB5+幹細胞およびヒト対象は、特に重要な態様である。
【0078】
このように、本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面を説明してきたが、様々な変更、修飾、および改善が当業者に容易に想起されるであろうことが、理解されるべきである。このような変更、修飾、および改善は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲の内にあることが意図される。したがって、前述の説明および図面は、単なる例である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】