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特表2024-537414アクリル酸アルキルを二量化するための触媒としてのビス-アミノホスフィン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アクリル酸アルキルを二量化するための触媒としてのビス-アミノホスフィン
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/50 20060101AFI20241003BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 69/593 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 67/303 20060101ALN20241003BHJP
   C07C 69/34 20060101ALN20241003BHJP
   C07C 51/06 20060101ALN20241003BHJP
   C07C 57/13 20060101ALN20241003BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C07F9/50 CSP
C07C67/343
C07C69/593
B01J31/24 Z
B01J27/053 Z
B01J23/44 Z
C07C67/303
C07C69/34
C07C51/06
C07C57/13
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523181
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022078789
(87)【国際公開番号】W WO2023066844
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203095.1
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バック, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA08B
4G169BA21A
4G169BA42
4G169BB02B
4G169BB10B
4G169BC72B
4G169BE13B
4G169BE14B
4G169BE15B
4G169BE27B
4G169BE33B
4G169CB02
4G169CB35
4G169CB46
4G169DA02
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169FA01
4G169FB05
4H006AA02
4H006AC11
4H006AC21
4H006AC46
4H006BA25
4H006BA53
4H006BA81
4H006BB14
4H006BB25
4H006BC35
4H006BE20
4H006BS10
4H006KA31
4H039CA10
4H039CA65
4H039CB10
4H039CE20
4H039CL11
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB40
4H050AD17
4H050BB11
4H050BB25
4H050WA15
4H050WA27
(57)【要約】
本発明は、アクリル酸アルキルを二量化するための触媒として有用なビス-アミノホスフィンに関する。更に、本発明は、ビス-アミノホフィン(bis-aminophophine)を調製するためのプロセス、アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としてのこれらのビス-アミノホスフィンの使用、及び、触媒としてビス-アミノホスフィンを使用する、アクリル酸アルキルの二量体を得るためのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、各々1~6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であるか、又はN原子と共に3若しくは4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成し、
はアリール基又はヘテロアリール基である]
の化合物。
【請求項2】
式中、Rが、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、デュリル、ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ジtert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メトキシトリル、メチレンジオキシフェニル、ビフェニル、ニトロフェニル、ハロゲン置換フェニル、トリフルオロメチルフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル、ピロリル、チオフェニル、2-インドリル、ベンゾフリル、及びこれらすべての位置異性体から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
及びRが、1~6個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を含む同一の直鎖アルキル基である、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
及びRが、前記N原子と共に3又は4個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成し、前記ヘテロ脂肪族環が他の種類のヘテロ原子を含まず、好ましくは、形成された前記ヘテロ脂肪族環が、前記N原子である1つのヘテロ原子のみを含む、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
a)式(II):
【化2】
[式中、両方のXは、同一であるか又は異なり、クロリド、ブロミド、又はヨージドであり、Rは請求項1又は2で定義される通りである]
の化合物を、
ジイソプロピルアミンと反応させて、式(III):
【化3】
のハロアミノホスフィン中間体を得る、工程と、
b)工程a)で得られた前記式(III)の化合物を、式(IV):RNH(IV)のアミンであって、R及びRが請求項1、3、又は4のいずれか一項で定義される通りである、式(IV)のアミンと反応させて、請求項1~4のいずれか一項で定義される式(I)の化合物を得る工程と、を含む、請求項1~4のいずれか一項で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセス。
【請求項6】
前記工程a)及びb)が、各工程で同じであっても異なっていてもよい有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルから選択される非プロトン性溶媒、より好ましくはトルエン又はMeTHF中で行われる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記工程b)の後に、形成された塩化アンモニウム塩副生成物を除去するための濾過工程が続く、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としての、請求項1~4のいずれか一項で定義される式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
以下の反応スキーム:
【化4】
[式中、Rはアルキル基である]
に従い、触媒として請求項1~4のいずれか一項で定義される式(I)の化合物を用いて式(V)のアクリル酸アルキルを二量化し、式(VI)の二量体を得る工程i)を含む、プロセス。
【請求項10】
Rが、C~C18アルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキル、最も好ましくはメチルである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
二量化の工程i)が、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルから選択される非プロトン性溶媒、最も好ましくはMeTHF中で行われる、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項12】
二量化の工程i)が、第3級アルコール又はシラノール、好ましくは第3級アルコール、より好ましくはtert-ブタノール、ピナコール、又はtert-アミルアルコールである共溶媒の存在下で行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
式(V)の共溶媒/アクリル酸アルキルのモル比が約4:1~約0.01:1、好ましくは約2:1~約0.1:1、より好ましくは約0.5:1~約0.1:1である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
二量化の工程で得られた式(VI)の二量体を、H及び水素化触媒、例えばPd系触媒、Ru系触媒、Pt系触媒、Ni系触媒、Co系触媒、Rh系触媒、及びIr系触媒、好ましくはPd系触媒又はNi系触媒を用いて水素化し、式(VII):
【化5】
[式中、Rが請求項9又は10で定義される通りである]
の化合物を得る工程ii)を更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
二量化の工程で得られた式(VI)の二量体を、ルイス酸又はブレンステッド酸などの酸触媒を用いて加水分解し、式(VIII):
【化6】
の化合物を得る工程ii’)を更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸アルキルを二量化するための触媒として有用なビス-アミノホスフィンに関する。更に、本発明は、ビス-アミノホフィン(bis-aminophophine)を調製するためのプロセス、アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としてのこれらのビス-アミノホスフィンの使用、及び、触媒としてビス-アミノホスフィンを使用する、アクリル酸アルキルの二量体を得るためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
Rauhut-Currier反応を介してアクリル酸アルキルを二量化するために触媒として特定のホスフィンを使用することは、従来技術で既に説明されてきている。
【0003】
米国特許第3074999A号明細書は、3つのアルキル基、3つの脂環式基、又は3つのアリール基を有する第3級ホスフィン類、例えばトリブチルホスフィン又はトリフェニルホスフィンによって触媒される、アクリル酸アルキルの二量化反応を説明している。しかしながら、これらの触媒は、二量化反応においては低い活性を示す。開示されるプロセスに関しては、中程度の収率が報告されており、これは商業的生産の場合は重大な欠点である。
【0004】
米国特許第3227745A号明細書は、溶媒としての大量のtert-ブチルアルコールの存在下で第3級ホスフィンによって触媒されるアクリル酸アルキルの二量化反応を説明している。開示される第3級ホスフィンは、トリアルキルホスフィンである。しかし、説明されるプロセスでは50%未満の低い転化率しか達成されず、産業生産プロセスには適していない。
【0005】
米国特許第3342853A号明細書は、二量化反応の前にPClから生成され得るトリアミノホスフィンによって触媒されるアクリル酸エステルの二量化について説明している。反応を60~65℃で実施した場合で70~80%のメチレングルタル酸エステル二量体の収率が報告されているが、多量の副生成物もまた生成される。更に、トリアミノホスフィンは、一般的に毒性であり、またCMR試薬(発癌性、変異原性、且つ生殖毒性の試薬)であり、触媒がインサイチュで生成されるときはPClが前駆体として用いられるが、これは非常に有害な化学物質である。これらのプロセスには、商業化及び産業化に対する重大な欠点が存在する。
【0006】
米国特許第3342854A号明細書は、モノ-アミノホスフィン又はビス-アミノホスフィンのいずれかによって触媒されるアクリル酸エステルの二量化反応について説明している。しかしながら、アクリル酸エステルの二量化に対するジフェニルアミノホスフィンの活性が低いため、高いホスフィンの使用量が必要となり、これは商業的生産の場合は重大な欠点である。これは、インサイチュで生成されたジブチルアミノジフェニルホスフィン触媒又はジエチルアミノジフェニルホスフィン触媒のいずれかを使用し、10%以下の二量体の収率をもたらす、本特許出願の2つの実施例によって示されている。更に、米国特許第3342854A号明細書のプロセスを使用すると、多量の副生成物が得られる。
【0007】
Weiping Su et al.は、“P(RNCHCHN:Catalysts for the Head-to-Tail Dimerization of Methyl Acrylate”J.Org.Chem.2003,68,9499-9501で、ホスフィン触媒としてプロアザホスファトランを使用した、室温での、溶媒としてのTHF又はジオキサン中での、アクリル酸メチルの二量化を説明している。1モル%の触媒使用量で、最大82%の収率が得られる。しかし、この論文に記載される触媒は、非常に複雑且つ合成が困難であるため、触媒の全体的な費用は高額となり、これは、産業化の可能性に対する重大な欠点である。更に、低い触媒使用量(1モル%)を用いると、室温での反応速度が遅くなり、その結果、反応時間が長くなり(最大24時間)、これは産業生産には欠点である。
【0008】
その他の特定のホスフィン類は、T.Aran Luiz et alの“Synthesis and X-Ray Structural Characterization of(Diisopropylamino)(morpholino)(phenyl)phosphine and its dimeric copper(I)”Synthesis and Reactivity in Inorganic,Metal-Organic,and Nano-Metal chemistry,2007,37:9,669-675、又はY.Chevallier et alの“Les aminophosphines dans l’hydrogenation homogene par les catalyseurs au Rhodium” Tetrahedron Lett.1969,15,1197-1200によって説明されている。しかしながら、これら2つの文献のどちらも、アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としてのかかるホスフィン類の使用については説明していない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、アクリル酸アルキルの二量化反応のための、耐久性があり、強固であり、再利用可能であり、安価であり、且つ容易に入手可能な触媒を提供することである。更に、本発明の課題は、毒性が比較的低く、比較的低い触媒使用量で用いることが可能であり、且つ優れた選択性を提供する、アクリル酸アルキルを二量化するための触媒を提供することである。
【0010】
また、本発明の課題は、アクリル酸アルキルの二量化反応のための安価な触媒を調製するための効率的なプロセスを提供することである。
【0011】
加えて、本発明の課題は、アクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセスを提供することである。具体的には、本発明の課題は、溶媒としての大量の第3級アルコール及び比較的高い触媒使用量を用いることが回避され得るアクリル酸アルキル二量体を調製するためのプロセスを提供することである。より具体的には、本発明の課題は、水素添加されたアクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセス、及び加水分解されたアクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセスを提供することである。
【0012】
今回、これらの及び他の課題が、本発明の触媒及びプロセスによって解決され得ることが見出された。本発明は、以下の式(I)の化合物に関し、
【化1】
式中、
同一か又は異なるR及びRは、1~6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であるか、或いは、N原子と共に3又は4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成するかのいずれかであり、
はアリール又はヘテロアリール基である。
【0013】
更に、本発明は、
a)以下の式(II)の化合物であって、
【化2】
式中、同一か又は異なる両方のXは、塩化物、臭化物、又はヨウ化物であり、Rは上記で定義される通りである、化合物を、
ジイソプロピルアミンと反応させて、以下の式(III)のハロアミノホスフィン中間体を得る、工程と、
【化3】
b)工程a)で得られた式(III)の化合物を、式(IV):RNH(IV)のアミンであって、R及びRが上記で定義される通りである、式(IV)のアミンと反応させて、上記で定義される式(I)の化合物を得る、工程と、を含む、上記で定義された式(I)の化合物を生産するためのプロセスに関する。
【0014】
更に、本発明は、アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としての、上記で定義された通りの式(I)の化合物の使用を提供する。
【0015】
更に、本発明は、式中、Rがアルキル基である、以下の反応スキームに従い、式(VI)の二量体を得るために、触媒として上記で定義される式(I)の化合物を用いて式(V)のアクリル酸アルキルを二量化する工程i)を含む、プロセスに関する。
【化4】
【0016】
更に、本発明は、上記で定義した工程i)を含み、
【化5】
式中、Rが上記で定義した通りである、式(VII)の化合物を得るために、二量化する工程で得られた式(VI)の二量体を、H及び水素添加触媒、例えばPd系触媒、Ru系触媒、Pt系触媒、Ni系触媒、Co系触媒、Rh系触媒、又はIr系触媒を用いて水素添加する工程ii)を更に含む、プロセスを提供する。
【0017】
最後に、本発明は、式(VIII)の化合物を得るために、二量化する工程で得られた式(VI)の二量体を、ルイス又はブレンステッド酸などの酸触媒を用いて加水分解する工程ii’)を更に含む、上記で定義した工程i)を含むプロセスに関する。
【化6】
【0018】
本発明は、アクリル酸アルキルの二量化反応のための、耐久性があり、強固であり、再利用可能であり、安価であり、且つ容易に入手可能な触媒が、式(I)の化合物の形態で提供されるという認識に基づく。式(I)のアクリル酸アルキルを二量化するための触媒は、毒性が比較的低く、再利用可能であり、比較的低い触媒使用量で用いることが可能であり、且つ優れた選択性を提供する。更に、本発明は、安価な方法での本発明のアクリル酸アルキルの二量化反応のために、触媒の調製に比較的安価な出発物質を用いた、効率的且つ簡単なプロセスを提供する。加えて、本発明は、アクリル酸アルキルに対して多量の第3級アルコールを用いること、及び比較的高い触媒使用量を用いることが回避され得る、触媒として式(I)の化合物を用いてアクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセスを提供する。具体的には、第3級アルコールのアクリル酸アルキルに対する量は、0.01:1のモル比まで低減することができ、触媒使用量は、0.20モル%まで低減することができる。最後に、本発明は、水素添加されたアクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセス、及び加水分解されたアクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的なプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、「約」という用語は、指定された数値の±10%、好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
【0020】
本発明は、以下の式(I)の化合物に関し、
【化7】
式中、
同一か又は異なるR及びRは、1~6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であるか、或いは、N原子と共に3又は4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成するかのいずれかであり、
はアリール又はヘテロアリール基である。
【0021】
好ましくは、式(I)の化合物は、Rが、フェニル;オルト-トリル、メタ-トリル、又はパラ-トリル;あらゆる位置異性体、例えば、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、及び3,5-ジメチルフェニルを含むキシリル;3-メチル-4-メトキシフェニル、2-メチル-4-メトキシフェニル、2-メチル-3-メトキシフェニル、4-メチル-3-メトキシフェニル、5-メチル-3-メトキシフェニル、6-メチル-3-メトキシフェニル、2-メトキシ-3-メチルフェニル、2-メトキシ-4-メチルフェニル、2-メトキシ-5-メチルフェニル、及び2-メトキシ-6-メチルフェニル;あらゆる位置異性体、例えば、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,3,6-トリメチルフェニル、2,4,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、及び3,4,5-トリメチルフェニルを含むメシチル;あらゆる位置異性体、例えば、2,3,4,5-テトラメチルフェニル、2,3,4,6-テトラメチルフェニル、及び2,3,5,6-テトラメチルフェニルを含むデュリル;ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-tert-ブチルフェニル;2,3-ジ-tert-ブチルフェニル、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、3,4-ジ-tert-ブチルフェニル、及び3,5-ジ-tert-ブチルフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-メトキシフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-クロロフェニル;2,3-ジメトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,5-ジメトキシフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、及び3,5-ジメトキシフェニル;2,3-メチレンジオキシフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニル、オルト-、メタ-、又はパラ-ニトロフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-ビフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-トリフルオロメチルフェニル、オルト-、メタ-、又はパラ-フルオロフェニル;1-又は2-ナフチル;2-ピリジル、3-ピリジル、又は4-ピリジル;2-フリル、3-フリル、1-ピロリル、2-ピロリル、又は3-ピロリル;2-チオフェニル、3-チオフェニル;2-インドリル、3-インドリル、及び2-ベンゾフリル、3-ベンゾフリル、好ましくはフェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-トリル又はキシリル、並びにその異性体位置から選択される化合物である。
【0022】
より好ましくは、式(I)の化合物は、Rが、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、デュリル、ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ジtert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メトキシトリル、メチレンジオキシフェニル、ビフェニル、ニトロフェニル、ハロゲン置換フェニル、トリフルオロメチルフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル、ピロリル、チオフェニル、2-インドリル、ベンゾフリル、及びこれらすべての位置異性体から選択される化合物である。
【0023】
更により好ましくは、式(I)の化合物は、Rが、フェニル、トリル、キシリル、及びメシチルから選択される化合物である。なおより好ましくは、式(I)の化合物は、Rが、フェニル又はトリルから選択される化合物である。最も好ましくは、式(I)の化合物は、Rがフェニルである化合物である。
【0024】
好ましくは、式(I)の化合物は、式中、R及びRが、1~6個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、より好ましくは2個の炭素原子を含む同一の又は異なる直鎖アルキル基である、化合物である。
【0025】
好ましくは、式(I)の化合物は、式中、R及びRが、1~6個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、更により好ましくは2個の炭素原子を含む同一の直鎖アルキル基である、化合物である。
【0026】
好ましくは、式(I)の化合物は、式中、R及びRが、1~6個の炭素原子、好ましくは1又は2個の炭素原子を含む異なる直鎖アルキル基である、化合物である。
【0027】
好ましくは、式(I)の化合物は、式中、R及びRが、N原子と共に3又は4個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成する化合物である。なお更に好ましくは、R及びRは、N原子と共に3又は4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成し、好ましくはヘテロ脂肪族環は他の種類のヘテロ原子を含まず、好ましくは、形成されたヘテロ脂肪族環は、N原子である1つのみのヘテロ原子を含む。
【0028】
好ましくは、式(I)の化合物は、式中、Rがフェニルであり、R及びRが、N原子と共に4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成する、化合物である。
【0029】
最も好ましくは、式(I)の化合物は、以下の化合物(IX)である。
【化8】
【0030】
更に、本発明は、
a)式(II)の化合物であって、
【化9】
式中、同一か又は異なる両方のXは、塩化物、臭化物、又はヨウ化物であり、Rは上記で定義される通りである、化合物を、
ジイソプロピルアミンと反応させて、式(III)のハロアミノホスフィン中間体を得る、工程と、
【化10】
b)工程a)で得られた式(III)の化合物を、式(IV):RNH(IV)のアミンであって、R及びRが上記で定義される通りである、式(IV)のアミンと反応させて、上記で定義される式(I)の化合物を得る、工程と、を含む、上記で定義された式(I)の化合物を生産するためのプロセスに関する。
【0031】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程a)及びb)は、同じ反応容器内で連続して実施される。
【0032】
好ましくは、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程a)及びb)は、各工程で同じであっても異なっていてもよい有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アニソール、及びアセトニトリルから選択される非プロトン性溶媒、更により好ましくは、トルエン、アニソール、又はMeTHF、最も好ましくはMeTHF及びアニソール中で実施される。
【0033】
好ましくは、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程a)及びb)は、各工程で同じであっても異なっていてもよい、約0℃~約100℃、好ましくは約0℃~約80℃、より好ましくは約25~約60℃の範囲、最も好ましくは約40℃の温度で実施される。
【0034】
好ましくは、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程a)は、式(II)の反応体を、非プロトン性溶媒中のジイソプロピルアミンの溶液にゆっくりと添加することによって実施され、驚くべきことに、(II)中で、ジイソプロピルアミノ基によってハロゲンXが1つのみ置換され得るということが判明したため、ジイソプロピルアミンは、反応体(II)に対して2当量以上の量で用いられる。
【0035】
好ましくは、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程a)及びb)のどちらも、無水条件及び酸素の不在下で実施される。
【0036】
好ましくは、本明細書で定義される式(I)の化合物を生産するためのプロセスでは、工程b)の後に、形成された塩化アンモニウム塩副生成物を除去するための濾過工程が続く。
【0037】
また、本発明は、アクリル酸アルキルの二量化反応のための触媒としての、上記で定義される式(I)の化合物の使用に関する。
【0038】
更に、本発明は、式中、Rがアルキル基である、以下の反応スキームに従い、触媒として本明細書で定義される式(I)の化合物を用いて式(VI)の二量体を得るために、式(V)のアクリル酸アルキルを二量化する工程i)を含む、プロセスに関する。
【化11】
【0039】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、Rは、C~C18アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、t-ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキル、最も好ましくはメチルである。
【0040】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、二量化する工程i)が、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルら選択される非プロトン性溶媒、最も好ましくはMeTHF及びアニソールから選択される非プロトン性溶媒中で実施される。
【0041】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、二量化する工程i)が、第3級アルコール又はシラノール、好ましくは第3級アルコール、より好ましくはtert-ブタノール、ピナコール、又はtert-アミルアルコール、最も好ましくはtert-ブタノールである共溶媒の存在下で実施される。
【0042】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、式(V)の共溶媒/アクリル酸アルキルのモル比は、約4:1~約0.01:1、好ましくは約2:1~約0.1:1、より好ましくは約0.5:1~約0.1:1である。
【0043】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、工程i)で、本明細書で定義される式(I)の化合物は、アクリル酸アルキルの量に対して約0.20モル%~約0.90モル%、より好ましくは約0.25モル%~約0.80モル%、更により好ましくは約0.30モル%~約0.70モル%、なおより好ましくは約0.30モル%~約0.50モル%、なお更により好ましくは約0.30モル%~約0.45モル%、最も好ましくは約0.33モル%の量で用いられる。
【0044】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、二量化工程i)は、約20℃~約100℃、好ましくは約20℃~約80℃、より好ましくは約25℃~約60℃の範囲の、最も好ましくは約45℃の温度で実施される。
【0045】
好ましくは、本明細書で定義される工程i)を含むプロセスでは、二量化工程i)は、無水条件及び酸素の不在下で実施される。
【0046】
好ましくは、上記で定義される工程i)を含むプロセスは、式中、Rが上記で定義した通りである、式(VII)の化合物を得るために、二量化する工程で得られた式(VI)の二量体を、H及び水素添加触媒、例えばPd系触媒、例えばPd/C、Pd/Al、Pd/SiO、Ru系触媒、例えばRu/C、Pt系触媒、例えばPt/C、Ni系触媒、例えば担持ニッケル又はラネーニッケル、Co系触媒、例えば担持コバルト又はラネーコバルト、Rh系触媒、例えばRh/C、Ir系触媒、例えばIr/C、好ましくはPd/C又はラネーニッケルを用いて水素添加する工程ii)を更に含む。
【化12】
【0047】
好ましい実施形態では、工程i)及びii)を含むプロセスで、工程i)及びii)の後に、式(X)の化合物を得るために、二量化する工程及び水素添加する工程によって得られた式(VII)の水素添加二量体を、ルイス又はブレンステッド酸などの酸触媒、例えば、HCl、HSO、パラ-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフリン酸、及び固形酸性触媒、例えばAmberlyst樹脂、ゼオライト、又はNafionを用いて加水分解する工程ii’)が続く。
【化13】
【0048】
好ましくは、上記で定義される工程i)を含むプロセスは、式(VIII)の化合物を得るために、二量化する工程で得られた式(VI)の二量体を、ルイス又はブレンステッド酸などの酸触媒、例えばHCl、HSO、パラ-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフリン酸、並びに固形酸性触媒、例えばAmberlyst樹脂、ゼオライト、及びNafionを用いて加水分解する工程ii’)を更に含む。
【化14】
【0049】
好ましい実施形態では、工程i)及びii)を含むプロセスにおいて、工程i)及びii’)の後に、式(X)の化合物を得るために、二量化する工程及び加水分解する工程で得られた式(VIII)の加水分解二量体を、H及び水素添加触媒、例えばPd系触媒、例えばPd/C、Pd/Al、Pd/SiO、Ru系触媒、例えばRu/C、Pt系触媒、例えばPt/C、Ni系触媒、例えば担持ニッケル又はラネーニッケル、Co系触媒、例えば担持コバルト又はラネーコバルト、Rh系触媒、例えばRh/C、Ir系触媒、例えばIr/C、好ましくはPd/C又はラネーニッケルを用いて水素添加する工程ii)が続く。
【化15】
【0050】
好ましくは、工程i)及び/又はii)及び/又はii’)を含むプロセスは、上記で定義される式(I)の触媒を調製する初期工程0)を更に含む。
【0051】
好ましい実施形態では、工程i)及び/又はii)及び/又はii’)を含み、初期工程0)を更に含むプロセスでは、工程0)及びi)は、工程0)の後に触媒を単離することのない連続的工程である。
【実施例
【0052】
1.アミノホスフィン触媒アクリル酸メチルの二量化
ホスフィン類のスクリーニング研究の一般的プロトコル:
様々なホスフィン類を「インサイチュ」反応によって調製した。つまり、アクリル酸メチルの二量化反応を開始する前に、形成されたホスフィン触媒を反応媒体から単離しなかった。
【0053】
a)ジクロロホスフィンから対称ビス-アミノホスフィンによって触媒される二量化:
全ての反応は、不活性アルゴン雰囲気下、入念に乾燥させた容器内で実施した。アクリル酸メチル及びtert-ブタノールを4Aのモレキュラーシーブを用いて乾燥させ、各反応の前にtert-ブタノールをアルゴン下で蒸留させた。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0054】
25mLの二口丸底フラスコに、以下を添加した:
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
【0055】
電磁攪拌装置を装備した50mLの三口丸底フラスコに、以下を添加した:
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体に対して4当量の所望のアミン(7.2ミリモル)。
【0056】
ジクロロホスフィン溶液を、反応媒体の温度を40℃未満に維持しながら、1時間にわたって攪拌(1400rpm)しながらアミン溶液に漸進的に添加した.(発熱反応)。ジクロロホスフィンをアミン溶液に添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩副生成物に相当する白色の沈殿物が生じた。添加を完了時に、混合物を続いて雰囲気温度で攪拌し、31P NMRにより反応の進行を監視した(調査対象のアミノホスフィンの31P化学シフトの結果は下記の表1を参照されたい)。
【0057】
ホスフィン形成が完了した後(通常、これはクロロホスフィンの添加後に、非立体障害アミン(unhindered amine)の場合には1時間、立体障害アミンの場合は2時間室温で攪拌することが必要である)、続いて混合物をカニューレで濾過して、電磁攪拌機、冷却管、加熱機、及び温度プローブを装備し、32mLの融解したtert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1v/v)を含有する100mLの三口丸底フラスコに入れた。続いて、混合物を60℃で攪拌した。すぐに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を、1時間かけて(発熱(exothermy))慎重に反応容器へと添加し、H NMRにより反応の進行を監視した。反応を、進行が停止するまで、又は反応が1日間になるまで追跡した。続いてアクリル酸メチルの転化を、生成物のメチレンプロトン及び出発アクリル酸メチルのメチレンプロトンを積分することにより、H NMRによって推定した。
【0058】
生成物のNMRスペクトル:
H NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):6.03(s,1H),5.46(s,1H),3.60(s,3H),3.51(s,3H),2.48(t,J=7.6Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H).
【0059】
b)モノ-クロロホスフィンからモノ-アミノホスフィンによって触媒される二量化:
全ての反応は、不活性アルゴン雰囲気下、入念に乾燥させた容器内で実施した。アクリル酸メチル及びtert-ブタノールを4Aのモレキュラーシーブを用いて乾燥させ、各反応の前にtert-ブタノールをアルゴン下で蒸留させた。モノ-クロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0060】
25mLの二口丸底フラスコに、以下を添加する:
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・モノ-クロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
【0061】
電磁攪拌装置を装備した50mLの三口丸底フラスコに、以下を添加した:
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・モノ-クロロホスフィン前駆体に対して2当量の所望のアミン(3.6ミリモル)。
【0062】
モノ-クロロホスフィン溶液を、反応媒体の温度を40℃未満に維持しながら、1時間にわたって攪拌(1400rpm)しながらアミン溶液に漸進的に添加した.(発熱反応)。モノ-クロロホスフィンをアミン溶液に添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩副生成物に相当する白色の沈殿物が生じた。添加を完了時に、混合物を続いて雰囲気温度で攪拌し、31P NMRにより反応の進行を監視した。
【0063】
ホスフィン形成が完了した後(通常、これはモノ-クロロホスフィンの添加後に、非立体障害アミン(unhindered amine)の場合には1時間、立体障害アミンの場合は2時間室温で攪拌することが必要である)、続いて混合物をカニューレで濾過して、電磁攪拌機、冷却管、加熱機、及び温度プローブを装備し、32mLの融解したtert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1v/v)を含有する100mLの三口丸底フラスコに入れた。続いて、混合物を60℃で攪拌した。すぐに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を、1時間かけて(発熱(exothermy))慎重に反応容器へと添加し、H NMRにより反応の進行を監視した。反応を、進行が停止するまで、又は反応が1日間になるまで追跡した。続いてアクリル酸メチルの転化を、生成物のメチレンプロトン及び出発アクリル酸メチルのメチレンプロトンを積分することにより、H NMRによって推定した。
【0064】
c)ジクロロホスフィン、ジイソプロピルアミン、及び追加のアミンから非対称ビス-アミノホスフィンによって触媒される二量化:
全ての反応は、不活性アルゴン雰囲気下、入念に乾燥させた容器内で実施した。アクリル酸メチル及びtert-ブタノールを4Aのモレキュラーシーブを用いて乾燥させ、各反応の前にtert-ブタノールをアルゴン下で蒸留させた。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0065】
25mLの二口丸底フラスコに、以下を添加した:
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
【0066】
電磁攪拌装置を装備した50mLの三口丸底フラスコに、以下を添加した:
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体に対して3当量のジイソプロピルアミン(5.4ミリモル)。
【0067】
ジクロロホスフィン溶液を、反応媒体の温度を40℃未満に維持しながら、1時間にわたって攪拌(1400rpm)しながらアミン溶液に漸進的に添加した.(発熱反応)。ジクロロホスフィンをアミン溶液に添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩副生成物に相当する白色の沈殿物が生じた(本発明の塩化ジイソプロピルアンモニウムの場合)。続いて、混合物を雰囲気温度で攪拌し、31P NMRにより反応の進行を監視した。中間体クロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの形成を、31P NMRによって確認した(例えば、クロロフェニル(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの場合は一重項が+132.5ppmで観察された)。
【0068】
クロロアミノホスフィン中間体の形成が完了した後(通常、これは、ジクロロホスフィンの添加後に室温で1時間攪拌することが必要である)、1当量の第2のアミン(1.8ミリモル)を、室温で攪拌しながら混合物に添加し、反応塊を室温で更に1時間攪拌した。
【0069】
ビス-アミノホスフィンの完了後、続いて混合物をカニューレで濾過して、電磁攪拌機、冷却管、加熱機、及び温度プローブを装備し、32mLの融解したtert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1v/v)を含有する100mLの三口丸底フラスコに入れた。続いて、混合物を60℃で攪拌した。すぐに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を、1時間かけて(発熱(exothermy))慎重に反応容器へと添加し、H NMRにより反応の進行を監視した。反応を、進行が停止するまで、又は反応が1日間になるまで追跡した。続いてアクリル酸メチルの転化を、生成物のメチレンプロトン及び出発アクリル酸メチルのメチレンプロトンを積分することにより、H NMRによって推定した。
【0070】
目標の触媒が首尾よく合成されたことを確認するために、31P NMRを用いて粗製の反応媒体を分析した。実際、このパラメーター(31P NMRの化学シフト)は、合成されたアミノホスフィンに特徴的であり、ピーク下面積は、溶液中のアミノホスフィンのモル濃度に比例していた。31P NMRのスペクトルを、Bruker Avance 400MHz分光計を用いて記録した。二量化反応容器に移す前のMe-THF溶液上で記録された31P NMRスペクトルのピーク面積から推定されるアミノホスフィン合成反応のモル選択率に対応するホスフィンのNMR収率(%)も測定した。
【0071】
ホスフィン触媒及びその調製プロセスに関する全ての結果を下記の表1にまとめる。
【0072】
【表1】
【0073】
結論:
ジ-tert-ブチルピロリジノホスフィン(Cp4)を除く全てのホスフィンを合成した。クロロホスフィン前駆体は嵩高過ぎであり、本発明者らの条件下での置換反応においてアミン配位子に適合できない。
【0074】
クロロジフェニルホスフィン前駆体(Cp1)は、ジイソプロピルアミンとの反応によって得られるアミノホスフィンの収率は中程度にすぎなかった。ビス-ピロリジノ-tert-ブチルホスフィン(Cp5.1及び5.2)は、空気及び水分に対する感受性が非常に高く、ホスフィン合成によってもたらされるアミノホスフィンの収率は中程度にすぎなかった。
【0075】
上記の表1に示された試験の一部では、アクリル酸エステルの二量化中の最大転化率も測定し、これは、H NMRから測定されたアクリル酸メチルの最大転化率に相当する。単位v:v(及びモル/モル)のtBuOH:アクリル酸エステルの比も示す。
【0076】
本発明1.3では、反応は、0.5モル%の初期ジクロロフェニルホスフィン使用量から開始し、続いて、20時間の反応時間の後で追加量のアクリル酸メチルを添加した(0.33モル%初期ジクロロフェニルホスフィン使用量に到達するために0.5当量)。
二量化プロセスに関する全ての結果を下記の表2にまとめる。
【0077】
【表2】
【0078】
結論:
表2から分かるように、ジフェニルアミノホスフィン(Comp1及び2)は、良好な触媒活性をもたらさなかった(最大転化率はゼロ又は10と等しい)。ビス-ピロリジノ-フェニルホスフィン(Comp3)がもたらしたアクリル酸メチルの転化率は中程度にすぎなかった(55の最大転化率)。上述したように、ジ-tert-ブチルクロロホスフィン(Comp4)は嵩高過ぎであり、置換反応においてアミン配位子に適合できないため、クロロホスフィン前駆体からアミノホスフィンへの転化をもたらさない。
【0079】
一方で、本発明のアミノホスフィン(Inv 1.1~1.4)は、中程度から良好の触媒活性をもたらした。最高の性能を示した最高の系は、ジイソプロピルアミノ-ピロリジノ-フェニルホスフィン(Inv 1.1~1.3)であった。
【0080】
非常に驚くべきことに、わずか0.33モル%の初期ジクロロホスフィン使用量で、ジイソプロピルアミノ-ピロリジノ-フェニルホスフィン(Inv 1.3)によって91%のアクリル酸エステル転化率に達したことが観察された。更に、このホスフィンは非常に強固であるため、より容易な取り扱いが可能となり、また、数回のバッチで再利用さえ可能となることが観察された(下記を参照)。
【0081】
二量化反応中のtert-ブチルアルコールの存在によって、期待される二量体に対する反応の選択性を改善することが可能となった。驚くべきことに、t-BuOHを非常に少量の塩基性アミノホスフィンと共に使用して、ホスフィンの触媒活性を損なわず、良好な選択性を提供することが可能な、好適な条件を見出すことが依然として可能であった。
【0082】
d)(ジイソプロピルアミノ)ピロリジノフェニルホスフィンは、触媒を再利用して、60℃で、tert-ブタノール中で(1:8v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.12モル/モル)アクリル酸メチルの二量化を触媒した(アクリル酸メチルに対して0.4モル%のクロロホスフィン前駆体)。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。アクリル酸メチル及びtert-ブタノールを4Aのモレキュラーシーブを用いて乾燥させ、各反応の前にtert-ブタノールをアルゴン下で蒸留させた。ジクロロフェニルホスフィン、ジイソプロピルアミン、及びピロリジンはそのまま使用した。
【0083】
50mLの二口丸底フラスコに、以下を添加した:
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・3.6mLのジクロロフェニルホスフィン(4.77g、0.027モル、0.012当量)
【0084】
電磁攪拌装置を装備した100mLの三口丸底フラスコに、以下を添加した:
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・11.15mLのジイソプロピルアミン(8.05g、0.08モル、0.036当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して3当量)
【0085】
ジクロロフェニルホスフィンの2-メチルテトラヒドロフラン溶液を、反応媒体の温度を40℃未満に維持しながら、1時間にわたって攪拌(1400rpm)しながらアミン溶液に漸進的に添加した.(発熱反応)。混合物を室温で攪拌し、1当量(0.027モル、1.92g)のピロリジンを反応混合物に添加し、これを室温で更に1時間攪拌して、ビス-(アミノ)ホスフィンの形成を完了させた。
【0086】
反応混合物をカニューレで濾過して、温度プローブ、冷却管、及び機械的攪拌機(4つの傾斜プラウ(inclined plow)を備えたプロペラ)を装備した500mLの2層ジャケット反応容器に入れた。該反応容器は以下を含んでいた。
・25mLの蒸留tert-ブタノール(1:8v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・200mLのアクリル酸メチル(190.1g、2.2モル、1当量)
【0087】
続いて、混合物を60℃で19時間にわたり攪拌した。反応の進行を、H NMRによって監視した。H NMRによれば、出発アクリル酸メチルの転化率は約86モル%であった。揮発物(t-BuOH、Me-THF、及び未転化のアクリル酸メチル)を留去して、20gのアクリル酸メチルを回収した。続いて、所望の生成物(2-メチレングルタル酸ジメチル)を真空下(125℃、7ミリバール)で蒸留して、103gの分析的に純粋な(analytically pure)生成物を得た。
【0088】
続いて、190gのアクリル酸メチル(2.2モル、1当量)を、活性のホスフィン触媒を依然として含有している残留物に添加し、続いて20gのtert-ブタノールを添加した。この混合物を60℃で更に16時間にわたって攪拌し、アクリル酸メチルの第2のバッチを転化させた。揮発物を留去して37gのアクリル酸メチルを回収し、この生成物を真空下(125℃、8ミリバール)で蒸留して126gの分析的に純粋な生成物を得た。
【0089】
最後に、更に190gのアクリル酸メチル(2.2モル、1当量)を、活性ホスフィンを依然として含有する残留物に添加し、混合物を70℃で20時間にわたり再び攪拌した。反応完了時に、揮発物を真空下で除去して44gのアクリル酸メチルを回収し、生成物を真空下で蒸留して91gの純粋な生成物を得た。
【0090】
合計で320gの2-メチレングルタル酸ジメチル生成物を回収し、これは56%の全体単離精製収率(global isolated purified yield)に相当した。
【0091】
これは、アクリル酸エステル二量化反応後に再利用することが可能なアミノホスフィン触媒の最初の例である。
【0092】
e)t-BuOHの有無の影響
全ての反応は、不活性アルゴン雰囲気下、入念に乾燥させた容器内で実施した。アクリル酸メチルを、4Aのモレキュラーシーブを用いて乾燥させた。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0093】
25mLの二口丸底フラスコに、以下を添加した:
・18mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(10.5ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.005当量)
【0094】
電磁攪拌装置を装備した50mLの三口丸底フラスコに、以下を添加した:
・6mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体に対して3当量のジイソプロピルアミン(31.4ミリモル)。
【0095】
ジクロロホスフィン溶液を、反応媒体の温度を40℃未満に維持しながら、1時間にわたって攪拌(1400rpm)しながらアミン溶液に漸進的に添加した.(発熱反応)。ジクロロホスフィンをアミン溶液に添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩副生成物に相当する白色の沈殿物が生じた。続いて、混合物を雰囲気温度で攪拌し、31P NMRにより反応の進行を監視した。中間体クロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの形成を、31P NMRによって確認した(例えば、クロロフェニル(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの場合は一重項が+132.5ppmで観察された)。
【0096】
クロロアミノホスフィン中間体の形成が完了した後(通常、これは、ジクロロホスフィンの添加後に室温で1時間攪拌することが必要である)、1当量のピロリジン(10.5ミリモル)を、室温で攪拌しながら混合物に添加し、反応塊を室温で更に1時間攪拌した。
【0097】
ビス-アミノホスフィンの完了後、混合物を続いてカニューレで濾過して、機械的攪拌機(4つの傾斜プラウを備えたプロペラ)、冷却管、加熱機、及び温度プローブを装備し、190mLのアクリル酸メチル(180g、2.1モル)を含有する、500mLの2層ジャケット反応容器に入れた。続いて、混合物を60℃で20時間にわたり攪拌した。続いてアクリル酸メチルの転化を、生成物のメチレンプロトン及び出発アクリル酸メチルのメチレンプロトンを積分することにより、H NMRによって推定した。
【0098】
66%のアクリル酸メチルの転化率で、H NMRによって決定して、二量体に対する選択性は78モル%であると推定された。
【0099】
同様の転化率(66%)において、0.5モル%のジクロロフェニルホスフィン初期使用量、60℃(Inv 1.2bisに相当する)で、反応中にt-BuOHが存在した場合(1:1v/vのtert-BuOH:アクリル酸メチル)と比較すると、二量体に対する選択性は87%であり、これは反応選択性に対するt-BuOHの肯定的な影響を示す。
【0100】
2.2-メチレングルタル酸ジメチルから2-メチルグルタル酸ジメチルへの触媒水素添加
上記の二量化反応で得た、基質2-メチレングルタル酸ジメチル(50g、0.29モル)(Inv 1.3)を、はじめに、機械的攪拌機(ラシュトンタービン)を装備した100mLのオートクレーブ反応容器に添加し、続いてPd/C(3%)触媒(粉末、含水率51%、1gの水分が0.49gの乾燥分に対応する、基質に対して1重量%)を添加した。次に、反応容器をしっかりと密閉し、20バールの窒素で3回パージし、続いて5バールの水素で3回パージした。反応混合物を1400rpmで攪拌し、続いて反応混合物の温度を40℃に設定した。次に、反応媒体を、5バールの水素圧(1400rpm)、40℃で6時間攪拌し、水素消費量を経時的に追跡した。
【0101】
水素消費がないことにより確認された反応の終了時に、反応混合物を室温に冷却し、攪拌を停止し、オートクレーブを減圧した。反応容器を窒素でパージし、粗製物を反応容器から取り除き、触媒を濾過によって除去した。触媒を濾過した後で、生成物である2-メチルグルタル酸ジメチルを清澄な液体として得(50gが99%の収率に相当する)、これをそのまま使用した。
【0102】
3.2-メチレンペンタン二酸ジメチルからの2-メチレンペンタン二酸の合成
【化16】
機械的攪拌機(4つの傾斜プラウを備えたプロペラ)、バッフル、温度プローブ、及び受器に接続された蒸留塔を装備した2Lの2層ジャケット反応容器中に、以下を添加した。
-700g(4.07モル、1当量)の2-メチレンペンタン二酸ジメチル。
-879mLの水(48.8モル、12当量)。
-硫酸95%(9mL、16.6g、0.163モル、2-メチレンペンタン二酸ジメチルに対して4モル%)(これは室温で添加漏斗によって反応混合物に滴下する)。
【0103】
続いて、混合物を120℃で攪拌し、H NMR分析によって反応の進行を追跡する。反応の過程全体にわたって、反応平衡を所望のメチレングルタル酸に向けて移動させるために、生成されたメタノールを反応媒体から留去する。
【0104】
120℃で2h30攪拌した後、H NMR分析が、ジエステルから二塩基酸への緩慢な転化を示すため、反応速度を上げるために追加量の硫酸2.26mL(0.04モル、1モル%)を反応混合物に添加し、混合物の温度を130℃に上げる。
【0105】
しかし、130℃で更に2時間攪拌した後、ジエステルの転化率は依然として遅すぎるため、2.26mL(0.04モル、1モル%)のHSOを反応塊に再度添加する。
【0106】
130℃で11h30攪拌した後、1060mLの水/MeOH混合物を留去し、50mLの新鮮な水を反応容器に添加する。
【0107】
130℃で16h30攪拌した後、H NMR分析は、10モル%前後の残留する加水分解されていないエステル官能基と、著しいポリマー副生成物の形成とを示す。
【0108】
この段階で、回収された蒸留物の質量は1195gであり、これは6gの不溶性出発ジエステルを含む。
【0109】
反応媒体の温度を80℃に下げ、36mLの35重量%NaOH水溶液(HSOに対して2当量)を容器にゆっくりと添加して、触媒を中和する(発熱(exothermy))。
【0110】
80℃に保たれた反応容器の内容物を絶え間なく攪拌しながらビーカーに流し込み、冷却すると、混合物は凝固して硬度を増し続ける白色のペーストになる。
【0111】
濾過可能な液状ペーストを得るために147mLの水をペーストに添加し、混合物を室温で冷却させ、二塩基酸生成物の沈殿を完了させる。
【0112】
続いて生成物を焼結フィルターで濾過して、非常に粘性の高い濾液を得る。
【0113】
このケークを80mLの水で4回洗浄し、続いて70mLの水で6回洗浄し、各濾過の前に混合物を十分に振盪する。
【0114】
室温で終夜沈殿させて得られた水性濾液を濾過し、20mLの水で10回再洗浄し、追加の生成物を回収する。
【0115】
固形画分を集め、生成物を50℃の真空下(10ミリバール)で2時間乾燥させると286gの白色の粉末が得られ、これは有機純度が98重量%を超え、48%の単離収率に相当する3重量%の水を含む。
【0116】
NMRスペクトル:
H NMR(MeOD-d,400MHz)δ(ppm):6.16(s,1H),5.63(s,1H),2.6-2.56(t,J=7.6Hz,2H),2.51-2.47(t,J=7.6Hz,2H).
13C NMR(MeOD-d,101MHz)δ(ppm):176.7,170.12,141.16,126.38,34.07,28.52.
【国際調査報告】