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特表2024-537417電気フィールドフローフラクショネータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電気フィールドフローフラクショネータ
(51)【国際特許分類】
   B03C 5/00 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 57/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B03C5/00 Z
G01N30/02 L
B01D57/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523443
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022047190
(87)【国際公開番号】W WO2023069560
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】17/505,618
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524141924
【氏名又は名称】ワイアット・テクノロジー・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレイノフ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】エリス,カイル
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054FA08
4D054FB02
4D054FB20
(57)【要約】
本開示は、(a)上部導電性電極を含む上部プレートアセンブリと、(b)Oリングと、(c)電気絶縁フリットと、(d)上部電極の下面とOリングおよびフリットとの間の電気絶縁スペーサと、(e)スペーサとフリットとの間の膜と、(f)下部導電性電極を含む下部プレートアセンブリと含むフィールドフローフラクショネータを説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドフローフラクショネータであって、
上部導電性電極を備える上部プレートアセンブリと、
Oリングと、
電気絶縁フリットと、
上部電極の下面とOリングおよびフリットとの間の電気絶縁スペーサと、
スペーサとフリットとの間の膜と、
下部導電性電極を備える下部プレートアセンブリと
を備える、フィールドフローフラクショネータ。
【請求項2】
Oリングを保持するように構成されるOリング支持体をさらに備える、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項3】
Oリング支持体が、ポリマーおよびセラミックのうちの一方を含む、請求項2に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項4】
上部プレートアセンブリ、スペーサ、および下部プレートアセンブリを整列させるように構成され、またスペーサが圧力下で押し出されることを防ぐように構成される少なくとも1つの電気絶縁整列ピンをさらに備える、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項5】
少なくとも1つの電気絶縁整列ピンが、ポリマーおよびセラミックのうちの一方を含む、請求項4に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項6】
上部電極が、自己不動態化金属を含む、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項7】
自己不動態化金属が、チタンおよびニッケルのうちの一方である、請求項6に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項8】
上部電極の下面の領域にめっきされた導電性材料をさらに備える、請求項6に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項9】
導電性材料が、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つを含む、請求項8に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項10】
上部電極が、非酸化性金属を含む、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項11】
非酸化性金属が、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである、請求項10に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項12】
フリットが、多孔質セラミックおよび多孔質ポリマーのうちの一方である、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項13】
スペーサが、薄板状の空間、ポリマースペーサ、およびセラミックスペーサのうちの1つである、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項14】
スペーサが、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリから電気的に絶縁するように構成される、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項15】
下部電極が、自己不動態化金属を含む、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項16】
自己不動態化金属が、チタンおよびニッケルのうちの一方である、請求項15に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項17】
下部電極の上面の領域にめっきされた導電性材料をさらに備える、請求項15に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項18】
導電性材料が、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つを含む、請求項17に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項19】
下部電極が、非酸化性金属を含む、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項20】
非酸化性金属が、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである、請求項19に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項21】
ボルトを上部プレートアセンブリから電気的に絶縁するように構成されるワッシャをさらに備え、
ボルトが、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリにボルト固定するように構成される、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項22】
ワッシャが、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つを含む、請求項21に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【請求項23】
上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリにボルト固定するように構成されるボルトをさらに備え、
ボルトが、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つを含む、請求項1に記載のフィールドフローフラクショネータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年10月19日に出願した米国特許出願第17/505,618号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、フィールドフローフラクショネータ(field flow fractionator)に関し、より詳細には、電気フィールドフローフラクショネータ(electrical field flow fractionator)に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、(a)上部導電性電極を含む上部プレートアセンブリと、(b)Oリングと、(c)電気絶縁フリットと、(d)上部電極の下面とOリングおよびフリットとの間の電気絶縁スペーサと、(e)スペーサとフリットとの間の膜と、(f)下部導電性電極を含む下部プレートアセンブリとを含むフィールドフローフラクショネータを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】既存のフィールドフローフラクショネータによる装置を描写する図である。
図1B】既存のフィールドフローフラクショネータによる装置を描写する図である。
図1C】既存のフィールドフローフラクショネータによる装置を描写する図である。
図2】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図3A】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図3B】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図3C】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図3D】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図3E】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図4A】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図4B】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
図4C】例示的な実施形態による装置を描写する図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示は、(a)上部導電性電極を含む上部プレートアセンブリと、(b)Oリングと、(c)電気絶縁フリットと、(d)上部電極の下面とOリングおよびフリットとの間の電気絶縁スペーサと、(e)スペーサとフリットとの間の膜と、(f)下部導電性電極を含む下部プレートアセンブリとを含むフィールドフローフラクショネータを説明する。
【0006】
設計の核心は、ポリマーフレームを除去し、電極を全体的なチャネルにすることである。電圧が+-30Vを超えること、および電流が+-30mAを超えることは決してないため、伝導性表面を露出させることに関連した安全性の問題はない。2番目に大きな設計変更は、接液材料としてステンレス鋼を除去することである。白金の固体ブロックからアセンブリ全体を作製することを想像できるが、それは法外に高価となるであろう。より費用対効果の高いソリューションは、白金でめっきされたチタンから上部および下部電極を作製することである。基板は、自己不動態化するチタンで作製される。露出した金属Tiは、絶縁体であるTiO2へと酸化する。非常に迅速に、露出したTiのすべてが、Ptコーティングのみを試料および移動相と接触させたまま、TiO2層により保護される。PtめっきされたTi電極を、高濃度の過酸化水素Hなどの強酸化性溶液に浸すだけで、コーティング後の不動態化プロセスを加速させることができる。これは、金属Ptには影響を及ぼさないが、TiO2の厚い層を成長させる。
【0007】
上部プレートは、Oリングおよび非伝導性フリットを使用することにより、下部プレートから電気的に隔離される。Oリングは、非伝導性バッキングプレートにより維持される。最後に、上部ブロックが、下部ブロック内へ直接ボルト固定されるが、一連の絶縁ワッシャによって電気的に隔離される。電気FFFを再組み立てするためには、膜をセラミックフリットの上に置き、チャネルスペーサを整列ピンの上に置き、その後に上部電極をボルト固定する。
【0008】
電気FFFのさらなる利点は、アセンブリ全体が、良好な熱導体から作製されることである。温度変化は、移動相の粘度の変化を結果としてもたらし、そのことがピーク溶出時間の変化も引き起こすことが理由で、一定の温度で移動度実験を実行することが非常に望ましい。温度が一定に保たれない場合、不十分な熱調節に起因するピークシフトが、適用した電場に起因するピークシフトと混同されることとなり、測定した電気泳動移動度の正確性を低減する。電気FFFは、下部にボルト固定された温度調節されたステージを有し得る。このステージは、温度センサ、およびアセンブリを室温よりも数度高く保つヒータを有する。チャネル全体が温度調節されたステージと良好に熱的に接触しているため、チャネル内の流体の温度は、正確に制御される。
【0009】
フィールドフローフラクショネータは、耐腐食性、機械的にロバスト、および製造するのに高い費用対効果であり得る。追加的に、ほぼ全体的に高伝導性材料から構築されることによって、フィールドフローフラクショネータは、熱的に調節するのが容易であり得る。
【0010】
定義
粒子
粒子は、液体試料アリコートの一成分であり得る。そのような粒子は、様々なタイプおよびサイズの分子、ナノ粒子、ウイルス様粒子、リポソーム、エマルション、バクテリア、およびコロイドであってもよい。これらの粒子は、サイズがナノメートルからミクロンのオーダーの範囲であり得る。
【0011】
溶液中の巨大分子または粒子種の分析
溶液中の巨大分子または粒子種の分析は、適切な溶媒中に試料を調製し、次いでそのアリコートを、試料内に含まれる粒子の異なる種がそれらの様々な成分へと分離される液体クロマトグラフィ(LC)カラムまたはフィールドフローフラクショネーション(field flow fractionation)(FFF)チャネルなどの分離システム内へ注入することによって達成され得る。一般的にはサイズ、質量、またはカラム親和性に基づいて分離されると、試料は、光散乱、屈折率、紫外線吸収、電気泳動移動度、および粘度応答を用いた分析に供され得る。
【0012】
フィールドフローフラクショネーション
フィールドフローフラクショネーション、FFF、を用いた溶液中の粒子の分離は、1960年代初頭以降、J.C.Giddingsによって広範に研究および開発された。これらの技術の基礎は、チャネル制約された試料とフローの方向に垂直に適用される印加場(impressed field)との相互作用にある。それらの技術のなかでもここで関心があるのは、多くの場合対称フロー(SFlFFF)と呼ばれる、クロスフローFFFであり、ここでは印加場は、チャネル内の試料により運ばれる流体に垂直に二次フローを導入することによって達成される。非対称フローFFF(すなわち、A4F)、および中空ファイバ(H4F)フロー分離を含む、この技術のいくつかのバリエーションが存在する。
【0013】
他のFFF技術は、(i)重力/遠心分離のクロス力(cross force)がチャネルフローの方向に垂直に適用される、沈降(sedimentation)FFF(SdFFF)、(ii)電場がチャネルフローに垂直に適用される、電気FFF(EFFF)、および(ii)温度勾配が横方向に適用される、サーマルFFF(ThFFF)を含む。
【0014】
フィールドフローフラクショネーションのこれらすべての方法に共通するのは、流体、すなわち移動相であり、その中へ試料のアリコートが注入され、試料の成分分画への分離は、クロス場(cross field)の適用によって達成される。フィールドフローフラクショネータの多くは、試料アリコートがチャネルを下って流れる時間の間、クロス場の強度の制御および変動を、それが、電場、クロスフロー、熱勾配、または他の可変場であっても、可能にする。
【0015】
フィールドフローフラクショネーションは、薄いチャネルに垂直に場を適用する分子および粒子分離技術の広範なクラスである。場は、試料を蓄積壁の方へ駆動して試料を壁の近くで濃縮させる流束を作り出す。拡散は、蓄積壁から離れる拮抗する流束を作り出す。平衡化したとき、試料は、壁で最も高く、表面から離れると指数関数的に低下する濃度プロファイルに達する。
【0016】
フローFFFサブ技術は、キャリア溶媒は膜を通過できるが、試料は通過できないように、半透過性膜を蓄積壁として使用する。試料内の大きい粒子は、それらの粒子を膜に向かって押す大きなストークスの力、および反対方向における比較的小さい拡散流束を感知する。試料中の小さい粒子を形成したものよりも小さい指数関数的な減衰長を引き起こす。言い換えると、大きい粒子は、小さい粒子よりも平均して蓄積壁に近い。次いで、さらなるチャネルフローが、場に垂直にチャネルに沿って適用される。チャネルの表面におけるゼロ速度境界条件は、チャネルに沿ったフローが、壁ではゼロでありバルク内へとさらに移動すると増加するせん断を作り出す。これは、平均して蓄積壁から遠く離れている小さい粒子が、大きい粒子よりも素早く下流へ移動することを意味する。チャネルの端部で、試料は収集され、試料を特徴付けるために一連の分析機器を通して送られる。チャネルの入口に未分画の試料を注入する場合、試料は出口で分画されて溶出し、最初に小さい粒子が溶出し、徐々に大きい粒子が続く。
【0017】
対称フロークロスフローフラクショネータ(SFlFFF)
フィールドフローフラクショネーションによる粒子の分離の例証として、おそらくは最も簡単なシステム、SFlFFFを単純化したものが説明される。試料は、消費移動相(spending mobile phase)と一緒に入口ポート内へ注入される。試料は、適用されるチャネルフローのない、いわゆる「リラクゼーション相(relaxation phase)」を経ることが可能であるが、より大きい粒子は、より小さい粒子よりも、一定に適用されたクロスフローによって、チャネルの高さよりもさらに下へ強いられる。チャネルフローが再開されると、試料アリコートは、非立体的な分離を経ることを始める一方で、試料アリコートは、より小さい粒子が、チャネルフローが最も敏速であるチャネルの高さの中心により近いチャネルフローの断面の領域に存在するので、より小さい粒子がより大きい粒子の先を行き、長さチャネルを下へと移動する。クロスフローレートを増加させることにより、すべての種の分離は継続し、より大きい分画は、それらのより小さいサイズの片割れにさらに遅れをとり始める。出口ポートを通ってチャネルから出た後、分画された試料は、様々な検出器を使用して分析され得る。
【0018】
非対称フローFFF(A4F)
非対称フローFFF(A4F)は、一般的には、先に開発されたSFlFFFのバリエーションと見なされる。A4Fチャネルアセンブリは、(1)密閉Oリングで囲まれる液体透過性フリットを保持する下部アセンブリ構造体と、(2)フリットの上にある透過性膜と、(3)キャビティが切り込まれている約75μm-800μmの厚さのスペーサと、(4)ポリカーボネート材料またはガラスの透明プレートを全体的に保持する上部アセンブリ構造体とを含み得る。非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)において、試料を蓄積壁へと駆動する場は、膜を通るフローからのストークスの力である。
【0019】
結果として生じるサンドイッチは、漏れ出しに対してチャネルを密閉し続けるのに十分な適用圧力など、ボルトおよび他の手段により一緒に保持され、そのような圧力は、漏れ出しが発生しないようにチャネルアセンブリにわたって比較的均等な圧力を提供することができる限り、バイスまたはクランピング機構によって適用され得る。スペーサ110内の全体的に棺形状または先細のキャビティは、分離が発生するチャネルとして機能する。上部アセンブリ構造体140は、通常、ポートと呼ばれる3つの穴を含み、これらは、上部プレート110を通過し、チャネルの上に中心に置かれて、そこへの取り付け具の装着を可能にする。これらのポートは、(a)チャネルの開始部の近くに位置する、移動相入口ポートであって、そこを通じて、キャリア液体、いわゆる移動相が圧送される、移動相入口ポート、(b)入口ポートの下流の試料ポートであって、そこでは、分離されるべき試料のアリコートがチャネル内へ導入され、その下にフォーカスされる、試料ポート、および(c)出口ポートであって、そこを通じて、分画されたアリコートがキャビティの端部近くでチャネルから出る、出口ポートである。
【0020】
電気A4F
電気AF4において、標準AF4フラクショネーションを修正するさらなる場が適用される。さらなる場は、1つの伝導電極をチャネルの上に、および第2の電極を膜の下に置くことによってチャネルに適用される電場である。次いで、電流が適用される。ボルト/メートルの単位で粒子によって感知される、結果として生じる場Eは、E=I/(σA)であり、式中、Iは、アンペア単位での適用された電流であり、σは、ジーメンス/メートル単位での溶媒伝導度であり、Aは、平方メートル単位でのチャネル面積である。電場は、荷電粒子に作用して、フローからのストークスの力を修正するさらなる力を生成する。適用された場および試料電荷の両方がいずれかの符号のものであり得ることから、電場は、ストークスの力に協調してまたは反してのいずれかで作用し得る。電場およびストークスの力が同じ方向にある場合、粒子は、蓄積壁に対してより強く押し付けられ、指数関数的な減衰長を低減させる。その結果は、粒子が、場の不在において維持されたであろう場合よりも長くチャネル内に維持されることである。変化する電場強度を用いて複数の実験を実行する場合、ピーク到達時間のシフトは、基礎となる分子変化の大きさである。これは、ゼータ電位または電気泳動移動度として表され得る。
【0021】
成功裏にElAF4測定を行うためには、いくつかの目標がある。第一に、チャネルは、チャネルの上および膜の下に場を適用しなければならない。第二に、チャネル電極の腐食が測定に影響を及ぼさないように、チャネルは、化学的に不活性でなければならない。第三に、チャネルは、チャネルが圧力の影響下で形状を変化させない、または膨張しないことを確実にするのに十分に剛性でなければならない。最後の2つの点は、説明に値する。チャネルを通じて電流を適用することは、粒子が感知する場を作り出すだけでなく、界面での電気化学反応を誘起する。これらの反応は、電極自体を腐食させ得、またそれらは、溶媒自体を電解し得る。溶媒の電解は、いくつかの方法で測定を劣化させる。移動相中の塩の電解によって生成される反応性イオンは、溶媒のpHおよび伝導度を変化させ得る。電極で生成される反応性の種は、試料自体に損傷を及ぼし得るが、最悪の問題の1つは、溶媒自体の電解がガスを放出することである。移動相が水性である場合、水素および酸素ガスは、電極の近くに蓄積する。これは、局所場を変化させるか、または最悪の場合、電極を溶媒から完全に絶縁し得る。気泡形成の悪影響に対抗するためには、電流によって生成されるいかなるガスも溶液中に留まり、溶出プロセスの一部としてチャンネルの外へ出るように、圧力下でチャネルを動作させることが有利である。例えば、チャネルが25バールで動作される場合、溶媒は、それが大気圧で動作される場合よりも、溶液中に25倍のガスを持ち得る。これにより、より大きい場を適用すること、およびより大きいピークシフトを作り出すことが可能になる。したがって、高圧で動作させることが非常に望ましい。
【0022】
現在の技術
図1Aは、既存の電気AF4を描写する。上部電極3は、ねじによりPETポリマー1の絶縁されたブロック内に保持される。同様に、下部電極7は、第2のPETブロック2内へねじ留めされる。絶縁フリット5は、下部ブロックアセンブリ内のキャビティに入れられ、分離膜は、支持体として作用するフリットの上に置かれる。上部ブロックアセンブリは、一連のねじ8により下部ブロックアセンブリに装着され、チャネルの内部は、スペーサ4内の切り欠きによって形成される。スペーサ厚は、分離チャネルの高さを設定する。スペーサは、クランピング圧力によって上部アセンブリに対して密閉し、下部アセンブリは、Oリング6によりスペーサに対して密閉する。この構造は、上部プレートが下部ブロックから電気的に隔離されたままであることを確実にする。電流は、上部および下部ブロックの両方の電極に接触するコネクタ9によって適用される。電極は、白金コーティングが塗布されている研磨したステンレス鋼で作製される。
【0023】
図1Bは、組み立て済みのチャネルおよび流体ポートを示す。入口、注入、および出口ポートは、上部電極に対して密閉し、流体は、電極内の穴を通過してチャネルへ入る。
【0024】
図1Aおよび図1Bに描写されるアセンブリは、いくつかの限界を有する。この設計における第1の問題は、電極が白金めっきステンレス鋼で作製されることである。電気めっきプロセスは、流体をチャネル内へ運ぶ穴などのような穴の内側をコーティングすることはできない。さらには、ステンレス鋼の多結晶構造および白金とステンレス鋼との格子不整合に起因して、白金コーティングにステンレス鋼基板を完全に保護させることは極めて困難である。典型的には、十分にめっきされた表面上でさえ、基礎となるステンレス鋼が流体に接触することを可能にする極小のひびおよびピンホールは存在する。また、流体ポートの内側が完全に露出されるということは、ステンレス鋼が決して完全には保護されないことを意味する。電流が適用されるとき、ステンレス中の鉄は酸化し得、次第にめっき表面が損傷される。図1Cは、サービスから数カ月後の既存の電気AF4の例を描写する。
【0025】
既存の電気AF4における別の問題は、電極がPETポリマーフレーム内に保持され、チャネルがMylarスペーサによって密閉されることである。10バール超の圧力でアセンブリは曲がり、15バールでそれは空いている所へとひどく漏れ出す。また、既存の電気AF4は、熱(および電気)絶縁されたブロック内に取り付けられる。それが熱的に安定したまま保たれ得る唯一の方法は、アセンブリ全体をオーブンの中に入れることによるものであり、これは、効果的ではあるが、嵩張り、高価である。故に、これらの問題を解決し、性能を改善する電気フィールドフローフラクショネータが必要とされている。
【0026】
図2図3A図3B図3C、および図3Dを参照すると、例示的な実施形態において、フィールドフローフラクショネータは、(a)上部導電性電極を含む上部プレートアセンブリと、(b)Oリングと、(c)電気絶縁フリットと、(d)上部電極の下面とOリングおよびフリットとの間の電気絶縁スペーサ、スペーサとフリットとの間の膜、ならびに下部導電性電極を含む下部プレートアセンブリとを含む。
【0027】
Oリング支持体
さらなる実施形態において、図3A図3B図3C、および図3D、および図3Eに描写されるように、フィールドフローフラクショネータは、Oリングを保持するように構成されるOリング支持体をさらに含む。一実施形態において、Oリング支持体は、ポリマーおよびセラミックのうちの一方を含む。一実施形態において、Oリング支持体は、ポリマーおよびセラミックのうちの一方である。例えば、ポリマーは、アセタールホモポリマーであり得る。また、セラミックは、例えば、ガラスであり得る。
【0028】
整列ピン
さらなる実施形態において、図3A図3B図3C図3D、および図3Eに描写されるように、フィールドフローフラクショネータは、上部プレートアセンブリ、スペーサ、および下部プレートアセンブリを整列させるように構成され、またスペーサが圧力下で押し出されることを防ぐように構成される少なくとも1つの電気絶縁整列ピンをさらに含む。一実施形態において、少なくとも1つの電気絶縁整列ピンは、ポリマーおよびセラミックのうちの一方を含む。一実施形態において、少なくとも1つの電気絶縁整列ピンは、ポリマーおよびセラミックのうちの一方である。例えば、ポリマーは、PEEKまたはエポキシであり得る。また、セラミックは、例えば、ガラスであり得る。
【0029】
上部電極
一実施形態において、上部電極は、自己不動態化金属を含む。一実施形態において、上部電極は、自己不動態化金属である。一実施形態において、自己不動態化金属は、チタンおよびニッケルのうちの一方である。一実施形態において、上部電極は、上部電極の下面の領域にめっきされた導電性材料をさらに含む。一実施形態において、導電性材料は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つを含む。一実施形態において、導電性材料は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである。
【0030】
一実施形態において、上部電極は、非酸化性金属を含む。一実施形態において、非酸化性金属は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである。
【0031】
フリット
一実施形態において、フリットは、多孔質セラミックおよび多孔質ポリマーのうちの一方である。例えば、多孔質セラミックは、ガラスまたはアルミニウムシリカセラミックであり得る。また、多孔質ポリマーは、例えば、PEEKまたはプラスチックであり得る。
【0032】
スペーサ
一実施形態において、スペーサは、薄板状(laminated)のスペーサ(薄板状のスペーサ特許より)、ポリマースペーサ、およびセラミックスペーサのうちの1つである。一実施形態において、スペーサは、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリから電気的に絶縁するように構成される。
【0033】
下部電極
一実施形態において、下部電極は、自己不動態化金属を含む。一実施形態において、下部電極は、自己不動態化金属である。一実施形態において、自己不動態化金属は、チタンおよびニッケルのうちの一方である。一実施形態において、下部電極は、下部電極の上面の領域にめっきされた導電性材料をさらに含む。一実施形態において、導電性材料は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つを含む。一実施形態において、導電性材料は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである。
【0034】
一実施形態において、下部電極は、非酸化性金属を含む。一実施形態において、非酸化性金属は、白金、パラジウム、金、クロム、およびロジウムのうちの1つである。
【0035】
ワッシャ
さらなる実施形態において、図4A図4B、および図4Cに描写されるように、フィールドフローフラクショネータは、ボルトを上部プレートアセンブリから電気的に絶縁するように構成されるワッシャをさらに含み、ボルトは、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリにボルト固定するように構成される。一実施形態において、ワッシャは、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つを含む。一実施形態において、ワッシャは、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つである。
【0036】
ボルト
さらなる実施形態において、図3A図3B、および図3Cに描写されるように、フィールドフローフラクショネータは、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリにボルト固定するように構成されるボルトをさらに含み、ボルトは、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つを含む。さらなる実施形態において、フィールドフローフラクショネータは、上部プレートアセンブリを下部プレートアセンブリにボルト固定するように構成されるボルトをさらに含み、ボルトは、ガラス充填エポキシ、セラミック、およびポリマーのうちの1つである。
【0037】
本開示の様々な実施形態の説明は、例証の目的のために提示されているが、網羅的であること、または開示される実施形態に限定されることは意図されない。多くの修正形態および変異形態が、説明された実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明白であるものとする。本明細書で使用される専門用語は、実施形態の原則、実践的応用、もしくは市場で見られる技術に対する技術的改善を説明するため、または当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするために選ばれたものである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】