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特表2024-537422子宮内膜組織を治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】子宮内膜組織を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/19 20150101AFI20241003BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K35/19
A61P15/00
A61P43/00 105
A61P43/00 107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523503
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022047119
(87)【国際公開番号】W WO2023069507
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,454
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】アッタ ベーファー
(72)【発明者】
【氏名】ザラク カーン
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB38
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB21
4C087ZB22
4C087ZC54
(57)【要約】
損傷した子宮内膜組織を有するか、又は有するリスクのある対象を治療するための方法は、一般に、対象の子宮内膜組織を治療するために有効な量のPEP製剤を、対象に投与することを含む。PEP製剤は、治療的又は予防的に投与されてもよい。別の態様において、子宮内膜細胞の増殖を促進する方法は、一般に、子宮内膜細胞を、子宮内膜細胞の増殖を促進するために有効な量のPEP製剤と接触させることを含む。別の態様において、子宮内膜細胞による創傷閉鎖を促進する方法は、一般に、創傷が生じた子宮内膜細胞に、創傷閉鎖を促進するために有効な量のPEP製剤を投与することを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における子宮内膜組織を治療する方法であって、前記対象の子宮内膜組織を治療するために有効な量のPEP製剤を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記対象が損傷した子宮内膜組織を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象がアッシャーマン症候群を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が子宮手術を受けたことがある、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が損傷した子宮内膜組織を有するリスクのある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PEP製剤を子宮手術の前に前記対象に投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PEP製剤を処置の準備で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PEP製剤を体外受精処置の前に投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
子宮内膜細胞の増殖を促進する方法であって、前記子宮内膜細胞を、前記子宮内膜細胞の増殖を促進するために有効な量のPEP製剤と接触させることを含む、方法。
【請求項10】
子宮内膜細胞による創傷閉鎖を促進する方法であって、創傷が生じた子宮内膜細胞に、創傷閉鎖を促進するために有効な量のPEP製剤を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月19日に出願された米国仮特許出願第63/257,454号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、一態様において、対象における子宮内膜組織を治療する方法を記載する。一般に、本方法は、対象の子宮内膜組織を治療するために有効な量の精製エクソソーム生成物(a purified exosome product)(PEP)製剤(preparation)を対象に投与することを含む。
【0003】
1つ以上の実施形態において、PEP製剤は、損傷した子宮内膜組織を有する対象に治療的に投与される。いくつかの実施形態では、対象はアッシャーマン症候群を有する場合がある。他の実施形態では、対象は子宮手術を受けていた場合がある。
【0004】
1つ以上の実施形態において、PEP製剤は、子宮内膜組織の損傷を発症するリスクのある対象に予防的に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、PEP製剤は、子宮手術の前に対象に投与される。
【0005】
1つ以上の実施形態において、PEP製剤は、受精のために子宮内膜を整えるように対象に予め投与される。
【0006】
別の態様において、本開示は、子宮内膜細胞の増殖を促進する方法を記載する。一般に、この方法は、子宮内膜細胞を、子宮内膜細胞の増殖を促進するために有効な量のPEP製剤と接触させることを含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、子宮内膜細胞による創傷閉鎖を促進する方法を記載する。一般に、この方法は、創傷が生じた子宮内膜細胞に、創傷の閉鎖を促進するために有効な量のPEP製剤を投与することを含む。
【0008】
上の概要は、本発明の開示される各実施形態又は全ての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の説明で実例となる実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの箇所において、実施例のリストを通してガイダンスを提供し、これらの実施例は様々に組合せて使用することができる。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ示され、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】子宮内膜腺癌細胞の共焦点顕微鏡画像。PEPを、培養中の細胞に添加する前にDiR親油性色素で標識した。共インキュベーション後、細胞を固定し、DAPI、ファロイジン、又は抗CD63蛍光抗体で染色した。次いで、共焦点蛍光顕微鏡法を行って、DAPI(青色、左端)、ファロイジン(緑色、左から2番目)、CD63(赤色、中央)、及びDiR標識PEP(紫色、右から2番目)の代表的な画像を得て、これらを使用してマージ画像(右端)を生成した。スケールバーは20μmである。
【0010】
図2】DiR及びCD63の蛍光シグナルをImageJを使用して定量化し、T検定を使用してPEP処理細胞と対照細胞との間で比較した。(A)DiRで染色したHEC-1A細胞。(B)抗CD63抗体で染色したHEC-1A細胞。対照細胞と比較して、Pep処理細胞においてCD63及びDiRは両方とも統計的により高い量が見られた。
【0011】
図3】ヒト子宮内膜間質細胞(HESC)の共焦点顕微鏡画像。PEPを、培養中の細胞に添加する前にDiR親油性色素で標識した。共インキュベーション後、細胞を固定し、DAPI、ファロイジン、又は抗CD63蛍光抗体で染色した。次いで、共焦点蛍光顕微鏡法を行って、DAPI(青色、左端)、ファロイジン(緑色、左から2番目)、CD63(赤色、中央)、及びDiR標識PEP(紫色、右から2番目)の代表的な画像を得て、これらを使用してマージ画像(右端)を生成した。スケールバーは20μmである。
【0012】
図4】DiR及びCD63蛍光シグナルを、Image Jを使用して定量化し、T検定を使用してPEP処理細胞と対照細胞との間で比較した。(A)DiRで染色したHESC。(B)抗CD63抗体で染色したHESC。対照細胞と比較して、PEP処理細胞においてCD63及びDiRは両方とも統計的により高い量が見られた。
【0013】
図5】未処理のHEC-1A細胞に対するPEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞における細胞増殖の増加を示した3つの時点での代表的な画像。
【0014】
図6】未処理のHEC-1A細胞と比較した様々な用量のPEPエクソソームで処理した後の48時間にわたるHEC-1Aの増殖を示した折れ線グラフ。
【0015】
図7】未処理のHESCに対するPEPエクソソームで処理したHESCにおける細胞増殖の増加を示した3つの時点での代表的な画像。
【0016】
図8】未処理のHESCと比較した様々な用量のPEPエクソソームで処理した後の48時間にわたるHESCの増殖を示した折れ線グラフ。
【0017】
図9】スクラッチ傷をつけて無血清培地(対照)又はPEPエクソソーム(1×1012PEPエクソソーム/mL)で処理した時点、スクラッチ傷及び処理の12時間後、並びにスクラッチ傷及び処理の36時間後のHEC-1A細胞の代表的な画像。
【0018】
図10】未処理のHEC-1A細胞と比較した様々な用量のPEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞による創傷治癒を示した折れ線グラフ。
【0019】
図11】スクラッチ傷をつけて無血清培地(対照)又はPEPエクソソーム(1×1012PEPエクソソーム/ml)で処理した時点、スクラッチ傷及び処理の12時間後、並びにスクラッチ傷及び処理の36時間後のHESCの代表的な画像。
【0020】
図12】未処理のHESCと比較した様々な用量のPEPエクソソームで処理したHESCによる創傷治癒を示した折れ線グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、子宮及び/又は子宮頸部の組織を治療するための組成物及び方法を記載する。本組成物は、凍結乾燥プロセスによる、血小板エクソソームに由来する精製エクソソーム生成物(PEP)を含む。
【0022】
ヒト子宮内膜は、結合組織又は間質の層を覆う円柱上皮の単一層からなり、上部2/3の機能層と下部1/3の基底層に分けることができる。女性の生殖寿命の間、機能層は毎月、成長し、脱落し、及び修復される。子宮内膜は、月経での喪失の後に新しい機能層を構築するための下部基底層で始まる顕著な再生能力を有する。
【0023】
アッシャーマン症候群では、子宮内膜の損傷により子宮内膜の再生プロセスが崩壊し、瘢痕化した腔が生じ、機能的な子宮内膜が失われる。患者は、月経の変化、周期性骨盤痛、及び不妊症を含むがこれらに限定されない続発症を発症する場合がある。病因は完全には理解されていないが、アッシャーマン症候群は、最も一般的には、低エストロゲン状態での基底層の子宮筋層そのものへの外傷的露出から生じる。アッシャーマン症候群治療の目標は、解剖学的及び生理学的に機能的な腔を回復することである。解剖学的な腔の修復のゴールドスタンダードは、子宮鏡検査での癒着の溶解である。しかしながら、子宮鏡検査での溶解の後に機能的な子宮内膜を再生し、癒着の再形成を防止する最良の方法に関する明確なコンセンサスはない。再生技術は、アッシャーマン症候群の治療及び予防の手段の両方としてますます注目されている。
【0024】
本開示は、PEPを含む組成物、並びに子宮内膜の基底層及び/又は機能層を治療するためにPEP組成物を使用する治療方法を記載する。PEPエクソソームを含む組成物は、2つの異なるヒト子宮内膜細胞株、HEC-1A細胞及びヒト子宮内膜間質細胞(HESC)において、子宮内膜の再生を誘導する。HEC-1Aは、ステージIAの子宮内膜癌細胞株である。HESCは、ホルモン刺激に応答する正常核型を有する不死化間質細胞株である。本開示において提示するデータは、両方の子宮内膜細胞株がPEPエクソソームを取り込み、PEP組成物が両方の細胞株において細胞増殖を誘導し、PEP組成物が両方の細胞株において創傷閉鎖を増加させることを示している。これらの結果は、PEP組成物が、損傷した子宮内膜組織の修復及び/又は子宮内膜組織への損傷の軽減のための有効な治療的及び/又は予防的療法となり得ることを示唆している。
【0025】
国際特許出願第PCT/US2018/065627号(国際公開番号WO2019/118817号として公開されている)に、PEPが特徴付けられ、PEPの調製方法が記載されており、それ全体が参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、PEPは、従来の方法を使用して調製されたエクソソームとは異なる構造を有する生成物を生成する凍結乾燥工程を使用して調製された精製エクソソーム生成物である。例えば、PEPは、典型的には、結晶構造ではなく球状又はスフェロイド状の構造を有する。球状又はスフェロイド状のエクソソーム構造は、一般に、300nm以下の直径を有する。典型的には、PEP製剤は、比較的狭いサイズ分布を有する球状又はスフェロイド状エクソソーム構造を含有する。いくつかの製剤において、PEPは、約110nm±90nmの平均直径を有する球状又はスフェロイド状のエクソソーム構造を含み、エクソソーム構造の大部分は、110nm±50nm、例えば、110nm±30nmなどの平均直径を有する。
【0026】
未改変PEP製剤、すなわち、製剤中のエクソソームの集団の選別又は分離によってその特徴に変化のないPEP製剤は、CD63エクソソームとCD63エクソソームとの混合物を天然に含む。CD63エクソソームは無制限の細胞増殖を阻害することができることから、CD63及びCD63エクソソームを天然に含む未改変PEP製剤は、創傷の修復及び/又は組織再生のための細胞増殖を刺激することも、無制限の細胞増殖を制限することもできる。
【0027】
さらに、CD63エクソソームを選別することによって、天然に単離されたPEP製剤からCD63エクソソームを取り出し、次いで所望の量のCD63エクソソームを添加し戻すことによって、PEP生成物中のCD63エクソソームに対するCD63エクソソームの比を制御することができる。1つ以上の実施形態において、PEP製剤は、CD63エクソソームのみを有し得る。
【0028】
1つ以上の実施形態において、PEP製剤は、CD63エクソソームとCD63エクソソームの両方を有し得る。CD63エクソソームのCD63エクソソームに対する比は、少なくとも部分的に、特定の用途において所望される細胞増殖の量に応じて変動し得る。例えば、CD63/CD63エクソソーム比は、CD63エクソソームによって誘導される所望の細胞増殖、及び細胞接触阻害を介して達成されるCD63エクソソームによって提供される細胞増殖の阻害を与える。非接着性細胞が存在する組織(例えば、血液由来成分)などの特定のシナリオでは、この比は、治療する組織に対して細胞増殖又は細胞阻害の適切なバランスを提供するように調整することができる。例えば、非接着性細胞を有する組織においては、細胞間接触はきっかけではないので、CD63エクソソームの比を減らして、無制限の細胞増殖を回避することができる。逆に、同種異系細胞をベースとする治療又は免疫療法などにおいて、細胞のクローン集団を拡大したい場合、非常に小さな供給源から大きな細胞集団を確実に得ることができるように、CD63エクソソームの比を増加させることができる。
【0029】
したがって、様々な実施形態において、PEP製剤中のCD63エクソソームのCD63エクソソームに対する比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、又は30:1であり得る。特定の実施形態において、PEP生成物は、9:1の比のCD63エクソソーム対CD63エクソソームを含有するように製剤化される。
【0030】
細胞株によるPEPの取り込み
図1に、DiR標識PEPエクソソームと共にインキュベートした子宮内膜腺癌細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。共インキュベーション後、細胞を固定し、DAPI、ファロイジン、又は抗CD63蛍光抗体で染色した。対照細胞は、HEC-1Aがヒト細胞株であり、したがって細胞が正常な細胞機能の一部としてCD63エクソソームを含有するため、CD63について陽性に染色された。このため、DiR染色を使用して内因性エクソソームをPEPエクソソームから区別し、PEPエクソソームが明確に核周囲に局在化することが分かる。細胞によって認識されるエクソソームは、容易に取り込まれ、細胞の核周囲の領域に送られる。DiR及びCD63染色を、Image Jを使用して定量化した。対照細胞と比較して、PEP処理細胞においてCD63及びDiRは両方とも統計的により高い量が見られた(図2)。
【0031】
図3に、DiR標識PEPエクソソームと共にインキュベートしたヒト子宮内膜間質細胞(HESC)の共焦点顕微鏡画像を示す。共インキュベーション後、細胞を固定し、DAPI、ファロイジン、又は抗CD63蛍光抗体で染色した。対照細胞は再びCD63について陽性に染色された。DiR染色もまたPEPエクソソームの核周囲への局在化を示している。DiR及びCD63染色を、Image J及びノンパラメトリック分布によるマン-ホイットニーのU検定を使用して定量化した。対照細胞と比較して、PEP処理細胞においてCD63及びDiRは両方とも統計的により高い量が見られた(図4)。
【0032】
細胞増殖
図5に、1012PEPエクソソーム/mlで処理したHEC-1A細胞が、未処理のHEC-1A細胞と比較して細胞増殖の増加を示したことを示す顕微鏡画像を示す。処理の12時間後及び処理の36時間後に画像を撮影した。両方の時点で、増加した細胞増殖及び組織培養ウェルの被覆を明確に見ることができた。図6に、処理後12時間までに、試験した全てのPEP用量、1.25×1011PEPエクソソーム/ml~1012PEPエクソソーム/mlで、未処理の対照HEC-1A細胞と比較して、PEP処理HEC-1A細胞において細胞増殖が増加したことを示す。
【0033】
図7に、1012PEPエクソソーム/mlで処理したHESCが、未処理のHESCと比較して細胞増殖の増加を示したことを示す顕微鏡画像を示す。組織培養ウェル内の増加した細胞密度によって証明されるように、処理後12時間及び36時間で、増加した細胞増殖を明確に見ることができる。図8に、処理後12時間までに、試験した全てのPEP用量、1.25×1011PEPエクソソーム/ml~1012PEPエクソソーム/mlで、未処理の対照HESCと比較して、PEP処理HESCにおいて細胞増殖が増加したことを示す。
【0034】
創傷治癒に対するPEPの効果
スクラッチアッセイを使用して、インビトロでの創傷治癒をモデル化した。簡潔に述べると、細胞を96ウェル組織培養プレートに播種し、コンフルエントな単層を形成するまで増殖させた。次いで、創傷をシミュレートするために各ウェルの中心に均一なスクラッチ傷をつけた。次いで、ウェルを、無血清培地(対照)又はPEPエクソソームを補充した無血清培地のいずれかで処理した。
【0035】
図9に、処理後12時間及び36時間のHEC-1A細胞における創傷閉鎖の代表的な画像を示す。PEP処理したHEC-1A細胞における創傷閉鎖は、未処理のHEC-1A細胞よりも顕著に大きかった。図10に、様々な濃度のPEPエクソソームの創傷治癒能力を示す。処理の18時間後、全ての濃度のPEPエクソソームはHEC-1A細胞において、未処理のHEC-1A細胞において誘導されたよりも、より大きな創傷閉鎖を誘導した。
【0036】
HESCを使用したスクラッチアッセイにおいて、同様の結果が観察された。図11に、処理後12時間及び36時間のHESCにおける創傷閉鎖の代表的な画像を示す。PEP処理したHESCにおける創傷閉鎖は、未処理のHESCよりも顕著に大きかった。PEPで処理したHESCと未処理のHESCとの間の創傷治癒の差は、HEC-1A細胞において観察された差ほど大きくなかったが、PEPの全ての濃度において、未処理のHESCよりも大きな創傷治癒が誘導された(図12)。
【0037】
したがって、本開示は、対象における子宮内膜組織を治療するためのPEP組成物及び方法を記載する。いくつかの場合において、子宮内膜組織は損傷を受けていてもよい。子宮内膜への損傷としては、子宮内膜における瘢痕組織及び/又は子宮内膜における癒着が挙げられる。いくつかの場合において、対象は、子宮又は子宮頸部における瘢痕組織及び/又は癒着によって特徴付けられるアッシャーマン症候群を有していてもよく、又はそれを発症するリスクを有してもよい。
【0038】
疾患の治療は、予防的であってもよく、あるいは、対象が疾患の1つ以上の症状又は臨床徴候を示した後に開始してもよい。予防的である治療、例えば、対象が疾患の症状又は臨床徴候を示す前に開始される治療は、本明細書において、疾患を有する「リスクのある」対象の治療と称される。本明細書で使用される場合、「リスクのある」という用語は、記載されたリスクを実際に有していても有していなくてもよい対象を指す。従って、例えば、損傷した子宮内膜組織を有する「リスクのある」対象とは、例えば、遺伝的素因、家系、年齢、又は病歴(例えば、拡張及び掻爬(D&C)、特定の妊娠合併症、予定された子宮手術など)のような疾患に関連する1つ以上の危険因子を有する対象である。治療はまた、症状が消失した後も、例えば、それらの再発を予防又は遅延させるために継続することができる。
【0039】
したがって、PEP組成物は、対象が損傷した子宮内膜組織の症状又は臨床徴候を最初に示す前、示している間、又は示した後に投与することができる。対象が損傷した子宮内膜組織に関連する症状又は臨床徴候を最初に示す前に治療を開始することによって、組成物が投与されていない対象と比較して、対象が損傷した子宮内膜組織の臨床的証拠を経験する可能性を少なくし、損傷した子宮内膜組織の症状及び/又は臨床徴候の重症度を軽減し、並びに/あるいは損傷した子宮内膜組織を完全に解消することができる。対象が損傷した子宮内膜組織に関連する症状又は臨床徴候を最初に示した後に治療を開始することによって、組成物が投与されていない対象と比較して、損傷した子宮内膜組織の症状及び/又は臨床徴候の重症度を軽減し、並びに/あるいは損傷した子宮内膜組織を完全に解消することができる。
【0040】
1つ以上の実施形態において、PEP組成物は、次の事象に備えて予め投与することができる。例えば、PEP組成物は、受精卵の着床をより受容しやすいように子宮内膜を準備するために投与されてもよい。卵は、インビトロ(例えば、体外受精(IVF)処置の結果)で、又はインビボ(例えば、人工授精又は自然受精の結果)で受精されてもよい。
【0041】
したがって、1つ以上の実施形態において、本方法は、損傷した子宮内膜組織を有するか、又は有するリスクのある対象に有効量のPEP組成物を投与することを含む。この文脈において、「有効量」とは、疾患に関連する症状又は臨床徴候を、任意の程度まで、軽減する、進行を制限する、改善する、又は解消するために有効な量である。損傷した子宮内膜組織の例示的な症状又は臨床徴候としては、月経期間が軽い(過少月経)、月経期間がない(無月経)、重度の月経痙攣、妊娠困難、又は妊娠継続困難が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
他の実施形態において、前記方法は、子宮内膜の予備的治療を必要とする対象に有効量のPEP組成物を投与することを含む。この文脈において、「有効量」とは、子宮内膜が、予備的治療を受けていない同様の対象の子宮内膜よりも受精卵の着床をより受容しやすいように子宮内膜を準備するために有効な量である。
【0043】
一般に、組成物は、PEPと薬学的に許容される担体を含む。外科的な設定では、PEPは、例えば、外科用接着剤、組織接着剤、及び/又は支持マトリックス(例えば、コラーゲンスキャフォールド)などのPEP製剤の子宮内膜組織への送達に適した担体と組み合わせることができる。
【0044】
したがって、本方法は、有効量のPEP製剤を対象に、場合によっては子宮内膜組織に直接投与することを含む。この文脈において、「有効量」とは、子宮内膜細胞の増殖を促進するため、及び/又は子宮内膜組織における創傷閉鎖を促進するために有効な量である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、ヒト又は任意の非ヒト動物であり得る。例示的な非ヒト動物の対象としては、家畜動物又はコンパニオンアニマルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な非ヒト動物の対象としては、ヒト科(例えば、チンパンジー、ゴリラ、又はオランウータンを含む)、ウシ亜科(例えば、畜牛を含む)、ヤギ亜科(例えば、ヤギを含む)、ヒツジ属(例えば、ヒツジを含む)、ブタ(例えば、ブタを含む)、ウマ科(例えば、ウマを含む)、シカ科のメンバー(例えば、シカ、エルク、ムース、カリブー、トナカイなどを含む)、バイソン科のメンバー(例えば、バイソンを含む)、ネコ科(例えば、飼いネコ、虎、ライオンなどを含む)、イヌ科(例えば、飼いイヌ、オオカミなどを含む)、鳥類(例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウなどを含む)、齧歯類(例えば、マウス、ラットなどを含む)、ウサギ科のメンバー(例えば、ウサギ又は野ウサギを含む)、イタチ科のメンバー(例えば、フェレットを含む)、又は翼手目のメンバー(例えば、コウモリを含む)が挙げられるが、これらに限定されない:
【0046】
PEPは、薬学的に許容される担体と共に製剤化して、医薬組成物を形成することができる。本明細書で使用される場合、「担体」としては、任意の溶媒、分散媒体、ビヒクル、ヒドロゲル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び/又は抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが挙げられる。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体及び/又は薬剤の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助的な活性成分もまた、その組成物内に組み込むことができる。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、生物学的又は他の点で望ましくないものではない物質を指し、すなわち、その物質は、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、PEPとともに個体に投与することができる。上記のように、外科的環境において、例示的な適切な担体としては、外科用接着剤又は組織接着剤が挙げられる。
【0047】
PEPを含有する医薬組成物は、好ましい投与経路に適した様々な形態で製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、例えば、経口、非経口(例えば、皮内、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内など)、又は局所(例えば、手術中に曝露された神経組織への適用、鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮、直腸など)を含む公知の経路を介して投与することができる。医薬組成物は、例えば、鼻又は呼吸器粘膜への投与などによって(例えば、スプレー又はエアロゾルによって)、粘膜表面に投与することができる。医薬組成物はまた、持続性又は遅延性の放出を介して投与してもよい。
【0048】
したがって、医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、スプレー、エアロゾル、又は任意の混合物の形態を含むがこれらに限定されない任意の適切な形態で提供され得る。医薬組成物は、任意の薬学的に許容される賦形剤、担体、又はビヒクルを含む製剤で供給され得る。例えば、製剤は、例えば、クリーム、軟膏、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー、ゲル、ローションなどの従来の局所剤形で供給されてもよい。製剤は、例えば、アジュバント、皮膚浸透促進剤、着色剤、芳香剤、香味剤、保湿剤、増粘剤などを含む1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0049】
製剤は、便利な単位剤形で提供されてもよく、薬学の分野で公知の方法によって調製することができる。薬学的に許容される担体を含む組成物を調製する方法は、PEPを、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、PEPを液体担体、細かく割られた固体担体、又はその両方と均一に及び/又は密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製することができる。
【0050】
投与されるPEPの量は、投与されるPEPの含有量及び/又は供給源、対象の体重、健康状態、及び/又は年齢、並びに/若しくは投与経路を含むがこれらに限定されない様々な因子に応じて変動し得る。したがって、所与の単位剤形に含まれるPEPの絶対重量は、広く変動する可能性があり、対象の種、年齢、体重、及び健康状態、及び/又は投与方法などの因子に依存する。したがって、全ての考えられる用途に有効なPEPの量を構成する量を一般的に記載することは現実的ではない。しかしながら、当業者は、そのような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0051】
1つ以上の実施形態において、PEPの用量は、送達されるPEPエクソソームの観点で測定することができる。したがって、1つ以上の実施形態において、本方法は、例えば、約1×10PEPエクソソーム~約1×1015PEPエクソソームの用量を対象に提供するために十分なPEPを投与することを含み得るが、いくつかの実施形態では、本方法は、この範囲外の用量でPEPを投与することによって行われてもよい。
【0052】
したがって、1つ以上の実施形態において、本方法は、少なくとも1×10PEPエクソソーム、少なくとも1×10PEPエクソソーム、少なくとも1×10PEPエクソソーム、少なくとも1×10PEPエクソソーム、少なくとも1×1010PEPエクソソーム、少なくとも1×1011PEPエクソソーム、少なくとも1.25×1011PEPエクソソーム、少なくとも2×1011PEPエクソソーム、少なくとも2.5×1011PEPエクソソーム、少なくとも3×1011PEPエクソソーム、少なくとも4×1011PEPエクソソーム、少なくとも5×1011PEPエクソソーム、少なくとも6×1011PEPエクソソーム、少なくとも7×1011PEPエクソソーム、少なくとも7.5×1011PEPエクソソーム、少なくとも8×1011PEPエクソソーム、少なくとも9×1011PEPエクソソーム、少なくとも1×1012PEPエクソソーム、少なくとも2×1012PEPエクソソーム、少なくとも3×1012PEPエクソソーム、少なくとも4×1012PEPエクソソーム、少なくとも5×1012PEPエクソソーム、少なくとも1×1013PEPエクソソーム、又は少なくとも1×1014PEPエクソソームの最小用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0053】
1つ以上の実施形態において、本方法は、1×1015以下のPEPエクソソーム、1×1014以下のPEPエクソソーム、1×1013以下のPEPエクソソーム、1×1012以下のPEPエクソソーム、1×1011以下のPEPエクソソーム、又は1×1010以下のPEPエクソソームの最大用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0054】
1つ以上の実施形態において、本方法は、上で特定された任意の最小用量と最小用量より大きい任意の最大用量によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。例えば、1つ以上の実施形態において、本方法は、例えば、1×1011~5×1012PEPエクソソームの用量、1×1012~1×1013PEPエクソソームの用量、5×1012~1×1013PEPエクソソームの用量、又は1.25×1011PEPエクソソーム~1×1012PEPエクソソームの用量など、1×1011~1×1013PEPエクソソームの用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。ある特定の実施形態において、本方法は、上に列挙された任意の最小用量又は任意の最大用量に等しい用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。したがって、例えば、本方法は、1×1010PEPエクソソーム、1×1011PEPエクソソーム、1.25×1011PEPエクソソーム、2.5×1011PEPエクソソーム、5×1011PEPエクソソーム、7.5×1011PEPエクソソーム、1×1012PEPエクソソーム、5×1012PEPエクソソーム、1×1013PEPエクソソーム、又は1×1014PEPエクソソームの用量を投与することを含み得る。
【0055】
あるいは、1つ以上の実施形態において、本方法は、例えば、約0.01%溶液~100%溶液の用量を対象に提供するために十分なPEPを投与することを含み得るが、いくつかの実施形態では、本方法は、この範囲外の用量でPEPを投与することによって行われてもよい。本明細書中で使用される場合、PEPの100%溶液とは、1mlの液体又はゲル担体(例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水、無血清培養培地、外科用接着剤、組織接着剤など)中に可溶化された約75mgのPEPをいう。比較のために、0.01%PEPの用量は、標準的な細胞馴化培地を使用したインビトロでの細胞からのエクソソーム単離などのエクソソームを得る従来の方法を使用して調製されたエクソソームの標準的な用量とほぼ等しい。
【0056】
したがって、1つ以上の実施形態において、本方法は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、少なくとも3.0%、少なくとも4.0%、少なくとも5.0%、少なくとも6.0%、少なくとも7.0%、少なくとも8.0%、少なくとも9.0%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%の最小用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0057】
1つ以上の実施形態において、本方法は、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、又は0.1%以下の最大用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。
【0058】
1つ以上の実施形態において、本方法は、上で特定された任意の最小用量と最小用量より大きい任意の最大用量によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。例えば、1つ以上の実施形態において、本方法は、1%~50%の用量、例えば、5%~20%の用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。ある特定の実施形態において、本方法は、上に列挙された任意の最小用量又は任意の最大用量に等しい用量を提供するために十分なPEPを投与することを含み得る。したがって、例えば、本方法は、0.05%、0.25%、1.0%、2.0%、5.0%、20%、25%、50%、80%、又は100%の用量を投与することを含み得る。
【0059】
単回用量は、全て一度に、処方された時間にわたって連続的に、又は複数回の別個の投与で投与されてもよい。複数回投与を使用する場合、各回の投与量は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、処方された1日用量は、単回用量として、24時間にわたって連続的に、又は等しくても等しくなくてもよい2回の投与として投与されてもよい。単回用量を送達するために複数回投与を使用する場合、投与間の間隔は同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態において、PEPは、例えば、外科的処置中に、1回の投与によって投与されてもよい。
【0060】
PEP組成物の複数回投与で対象に投与する特定の実施形態では、PEP組成物は、損傷した子宮内膜組織を所望の程度まで治療するために必要に応じて投与され得る。あるいは、PEP組成物は、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は少なくとも10回投与され得る。投与間の間隔は、最小で少なくとも1日、例えば、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも14日、又は少なくとも21日などであり得る。投与間の間隔は、最大で6ヶ月以下、例えば、3ヶ月以下、2ヶ月以下、1ヶ月以下、21日以下、又は14日以下であり得る。
【0061】
1つ以上の実施形態において、本方法は、上で特定された任意の最小間隔と最小間隔よりも大きい任意の最大間隔によって定義されるエンドポイントを有する範囲によって特徴付けられる間隔(2回投与の場合)又は複数間隔(3回以上の投与の場合)でのPEPの複数回投与を含み得る。例えば、1つ以上の実施形態において、本方法は、1日~6ヶ月、例えば3日~10日の間隔でのPEPの複数回投与を含み得る。特定の実施形態において、本方法は、上に列挙した任意の最小間隔又は任意の最大間隔に等しい間隔でのPEPの複数回投与を含むことができる。したがって、例えば、本方法は、3日、5日、7日、10日、14日、21日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月の間隔でのPEPの複数回投与を含むことができる。
【0062】
1つ以上の実施形態において、本方法は、様々な細胞型から調製されたPEPのカクテルを投与することを含んでもよく、ここで、各細胞型は、例えば、タンパク質組成及び/又は遺伝子発現などの固有のプロファイルを有する。このようにして、PEP組成物は、PEP組成物が単一の細胞型から調製される場合よりも広いスペクトルの子宮内膜組織治癒活性を提供することができる。
【0063】
前述の説明及び以下の特許請求の範囲において、用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味し、「含む」、「含んでいる」という用語及びそれらの変形は、無制限であると解釈されるべきであり、すなわち、追加の要素又は工程が任意であり、存在してもしなくてもよく、別段の指定がない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は互換的に使用されて、1つ又は2つ以上を意味し、また、エンドポイントによる数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0064】
前述の説明において、特定の実施形態は、明確にするために単独で説明される場合がある。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、又は「いくつかの実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所でそのような語句が出現しても、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成、及び特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせることができる。さらに、特定の特徴、構成、組成、及び特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせることができる。したがって、一実施形態の文脈で説明される特徴は、特徴が必然的に相互に排他的である場合を除いて、異なる実施形態の文脈で説明される特徴と組み合わせることができる。
【0065】
別々の工程を含む本明細書に開示される任意の方法において、工程は任意の実施可能な順序で行ってもよい。また、必要に応じて、2つ以上の工程の任意の組み合わせを同時に行ってもよい。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益をもたらすことができる本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0067】
本発明を以下の実施例で説明する。特定の実施例、材料、量、及び処置は、本明細書に記載される本発明の範囲及び精神に従って広く解釈されるべきであることが理解される。
【0068】
例示的な実施形態
実施形態1は、対象における子宮内膜組織を治療する方法であって、対象の子宮内膜組織を治療するために有効な量のPEP製剤を、対象に投与することを含む、方法である。
【0069】
実施形態2は、対象が損傷した子宮内膜組織を有する、実施形態1に記載の方法である。
【0070】
実施形態3は、対象がアッシャーマン症候群を有する、実施形態1又は2のいずれか1つに記載の方法である。
【0071】
実施形態4は、対象が子宮手術を受けたことがある、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0072】
実施形態5は、対象が損傷した子宮内膜組織を有するリスクのある、形態1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0073】
実施形態6は、PEP製剤を子宮手術の前に対象に投与する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0074】
実施形態7は、PEP製剤を処置の準備で投与する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0075】
実施形態8は、PEP製剤を体外受精処置の前に投与する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0076】
実施形態9は、子宮内膜細胞の増殖を促進する方法であって、子宮内膜細胞を、子宮内膜細胞の増殖を促進するために有効な量のPEP製剤と接触させることを含む、方法である。
【0077】
実施形態10は、子宮内膜細胞による創傷閉鎖を促進する方法であって、創傷が生じた子宮内膜細胞に、創傷閉鎖を促進するために有効な量のPEP製剤を投与することを含む、方法である。
【0078】
実施形態11は、PEP製剤がCD63+エクソソームを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0079】
実施形態12は、PEP製剤が少なくとも1×10PEPエクソソーム/mLの濃度を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0080】
実施形態13は、PEP製剤が1×10~1×1011PEPエクソソーム/mLの濃度を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0081】
実施形態14は、創傷が、PEP製剤で治療されていない同等の創傷の2倍の速さで閉じる、実施形態10~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0082】
実施形態15は、細胞が、PEP製剤で処理されていない比較細胞の少なくとも2倍の速さで増殖する、実施形態9又は11~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0083】
実施形態16は、治療によって癒着の形成を防止する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0084】
実施形態17は、治療によって子宮の機能性を回復させる、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【実施例
【0085】
PEPのDiR標識
凍結乾燥したPEPを、以前に記載されているように調製し(国際公開第2019/118817号)、次いで、ヘパリン化無血清培地中で再構成し、親油性色素(DiR)と共にインキュベートしてエクソソームを標識した。次いで、この製剤を濾過し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて洗浄し、培養中の細胞に投与した。約30,000個のHEC-1A細胞又はHESCを、デュアルチャンバガラススライドの両側に播種した。PEPを、4.6mLの無血清培地+400μlのヘパリンで再構成した。エクソソームを、親油性の膜特異的な遠赤色色素DiR(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨージド)で標識した。1mLの再構成PEPをデュアルチャンバスライドの片側に添加した。1mLのPEPを含まない無血清培地を他側に添加し、スライドを1時間インキュベートし、次いで、すすいで、パラホルムアルデヒド(PFA)で一晩固定した。
PFAで固定した後、抗CD63抗体、ファロイジン及びDAPIを用いて細胞を染色した。抗CD63抗体を、ALEXA FLUOR 555で標識した二次抗体を用いて可視化した。アクチンの可視化にファロイジンを使用した。核の可視化にDAPIを使用した。Prolonged gold anti-fade reagent with DAPIと共にカバースリップを取り付けた。各標識の画像を共焦点蛍光顕微鏡によって得て、図1及び図3に示した。
【0086】
PEPで処理したHESC及びHEC-1A細胞はいずれも、DiRの点状のサイトゾルへの局在化を示し、このことは、PEPが細胞によって取り込まれ、別々の核の周囲の位置に局在化されたことを示している(図1図3)。この観察は、PEPを含むエンドサイトーシス小胞が、エンドサイトーシスの際に細胞によって認識され局在化されるという知識と一致する。PEPで処理されていないHEC-1A細胞は、低レベルのCD63染色を示し、このことは、HEC-1Aが、CD63によって染色されるエクソソームを本質的に有するという知識と一致する。HESCは、最小レベルのCD63染色を示した。
【0087】
図1及び図3の画像データを、図2及び図4において定量化する。HEC-1A細胞(図2)及びHESC(図4)の両方において、処理細胞と未処理細胞との間のDiR及びCD63の量に統計的に有意な差が観察された。
【0088】
細胞増殖アッセイ
細胞増殖を試験するために、INCUCYTE S3画像化システム(Sartorius AG,Goettingen,Germany)を使用して、PEPエクソソームによる処理を通して細胞を画像化して計数した。
【0089】
アッセイを実施するために、細胞を凍結保存から解凍し、続いて96ウェル組織培養プレートの標準増殖培地中に播種した。HEC-1A細胞を約5,000細胞/ウェルで播種した。HESCを約1,000細胞/ウェルで播種した。播種した細胞をPBSで1回すすいだ。50μlの無血清培地を対照ウェルに添加した。実験ウェルを、50μlの1.25×1011PEPエクソソーム/ml、50μlの2.5×1011PEPエクソソーム/ml、50μlの5×1011PEPエクソソーム/ml、50μlの7.5×1011PEPエクソソーム/ml、又は50μlの1×1012PEPエクソソーム/mlで処理した。次いで、プレートを生細胞解析システム(INCUCYTE,Sartorius AG,Goettingen,Germany)中で48時間インキュベートした。
【0090】
イメージングシステム(INCUCYTE C3,Sartorius AG,Gottingen,Germany)によって、インキュベーション時間を通して一定の時間間隔で各ウェル内の細胞の画像を取得した。インキュベーション時間の終了後、付属のソフトウェアパッケージ(INCUCYTE,Sartorius AG,Goettingen,Germany)を使用して画像を解析して、各ウェルにおける細胞のコンフルエンシーを評価した。
【0091】
対照の未処理HEC-1A細胞及び50μlの1×1012エクソソーム/mL(全エクソソームでは5×1010)で処理したHEC-1A細胞を示した代表的な画像を図5に示す。PEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞は、対照細胞よりも速く増殖した。図6に、各濃度のPEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞の複数の画像から定量化したデータを示す。より高い濃度のPEPで処理した細胞は、より速く増殖した。
【0092】
対照の未処理HESC及び50μlの1×1012エクソソーム/mL(全エクソソームでは5×1010)で処理したHESCを示した代表的な画像を図7に示す。HEC-1A細胞と同様に、PEPエクソソームで処理したHESCは、対照細胞よりも速く増殖した。図8に、各濃度のPEPエクソソームで処理したHESCの複数の画像から定量化したデータを示す。驚くべきことに、最も高い濃度のPEPエクソソームで処理したHESCは、48時間で50%未満の増殖を示した対照細胞と比較して、400%近い増殖を示した。3つの最高濃度のPEPで処理したHESCは、処理後わずか6時間で統計的に有意に増加したレベルの増殖を示した。
【0093】
スクラッチアッセイ(インビトロの創傷治癒)
マルチチャンネルピペットを使用して細胞を96ウェルプレートに播種し、接着させ、コンフルエントになるまで増殖させた。HEC-1A細胞は50,000細胞/ウェルのコンフルエンシーで播種した。HESCは30,000細胞/ウェルのコンフルエンシーで播種した。
【0094】
細胞がコンフルエントになったら、創傷作製ツール(Sartorius AG,Goettingen,Germany)を使用して、各ウェルの中心に均一なスクラッチ創傷を作製し、単層を破壊した。顕微鏡によって均一なスクラッチを確認した後、ウェルをPBSで1回すすぎ、細胞増殖アッセイについて記載したように、無血清培地又は様々な濃度のPEPを含む培地のいずれかを添加した。次いで、プレートを、組織培養インキュベーター内に収容された生細胞解析システム(INCUCYTE,Sartorius AG,Goettingen,Germany)中に48時間置いた。
【0095】
各ウェルの画像を取得し、細胞増殖アッセイについて上述したように解析した。
【0096】
対照の未処理HEC-1A細胞及び50μlの1×1012エクソソーム/mL(全エクソソームでは5×1010)で処理したHEC-1A細胞の創傷治癒を示した代表的な画像を図9に示す。36時間後、PEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞は、創傷をほぼ覆うまで増殖していた。対照的に、未処理HEC-1A細胞は、36時間で部分的にのみ創傷を覆うように増殖した。図10に、各濃度のPEPエクソソームで処理したHEC-1A細胞のイメージデータの定量化を示す。PEPエクソソームで処理した細胞は、創傷密度によって測定されるように、より多くの創傷治癒を示した。この効果は全体として用量依存的であった。処理の6時間後、50μlの1×1012エクソソーム/mL及び50μlの5×1011エクソソーム/mLで処理した細胞は、未処理HEC-1A細胞と比較して、統計的に有意な創傷密度を有していた。処理の18時間後、各濃度のPEPエクソソームで処理した細胞は、未処理HEC-1A細胞と比較して統計的に有意な創傷密度を有していた。
【0097】
対照の未処理HESC及び50μlの1×1012エクソソーム/mL(全エクソソームでは5×1010)で処理したHESCの創傷治癒を示した代表的な画像を図11に示す。36時間後、PEPエクソソームで処理したHESCは創傷を覆うまで増殖していた。36時間後、対照の未処理HESCは、創傷を完全にではなく部分的に覆うように増殖した。図12に、各濃度のPEPエクソソームで処理したHESCのイメージデータの定量化を示す。興味深いことに、この効果は用量依存的であるようには見えず、むしろ、全ての濃度のPEPエクソソームで処理した細胞は、未処理のHESCと比較して創傷密度の増加を示した。36時間後、50μlの1×1012エクソソーム/mL、50μlの7.5×1011エクソソーム/mL、又は50μlの1.25×1011エクソソーム/mLで処理したHESCは、対照のHESCよりも統計的に有意に高い創傷密度を示した。これらの結果は、投与したPEPエクソソームの用量とHESCの創傷治癒との間の予想外の関係を示唆している。
【0098】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に入手可能な資料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列の寄託、並びにSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列の寄託、並びにGenBank及びRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示は、その全体が参照により組み込まれる。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書の開示との間に何らかの不一致が存在する場合、本出願の開示が優先するものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にするためにのみ示されている。それらによって不必要に限定されると理解してはならない。本発明は、示され説明された正確な詳細に限定されるものではなく、当業者に明らかな変更は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
他に示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などを表す全ての数は、用語「約」によって、全ての場合において修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、そして請求の範囲の均等論を制限するための試みとしてではなく、それぞれの数値的なパラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点において、及び一般的な丸め技術によって解釈すべきである。
【0100】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は、それらのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に由来する範囲を本質的に含む。
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【国際調査報告】