(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液状薬学的製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20241003BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241003BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K47/20
A61K47/40
A61K47/02
A61K47/10
A61K9/08
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523610
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022079468
(87)【国際公開番号】W WO2023067188
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520374852
【氏名又は名称】プロジェクト ファーマシューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ヘルムート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC43
4C076CC44
4C076CC47
4C076DD23Q
4C076DD37
4C076DD55
4C076EE23
4C076EE39
4C076FF12
4C076FF36
4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA08
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、水を本質的に含まず、(a)ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分と、(b)少なくとも1種の結晶化阻害剤と、(c)式(I)による溶媒と、(d)少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属とを含む液状薬学的製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を本質的に含まず、
(a)ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分と、
(b)(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSOからなる群より選択される1種または複数種の結晶化阻害剤と、
(c)式(I):
(式中、nは350~500である)による溶媒と、
(d)少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属と
を含む、液状薬学的製剤。
【請求項2】
透明な溶液がもたらされるよう、製剤の全ての構成要素が完全に溶解している、請求項1記載の液状薬学的製剤。
【請求項3】
前期薬学的製剤が、カルシウム塩およびマグネシウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩、好ましくはカルシウム塩を含む、請求項1または2記載の液状薬学的製剤。
【請求項4】
少なくとも1種のアルカリ土類金属塩の陰イオンが、グルコン酸、クロリド、ブロミド、酢酸、または乳酸、好ましくはクロリドである、請求項3記載の液状薬学的製剤。
【請求項5】
少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩が、
(i)液状製剤の総体積に基づき、0.1~3mol/L、好ましくは0.1~1.5mol/L、より好ましくは0.3~1.5mol/L、特別に好ましくは0.7~1.1mol/L、より特別に好ましくは0.1~1.0mol/L、最も特別に好ましくは0.8~1.0mol/L、特に好ましくは0.1~0.5mol/Lの濃度で存在するか、または
(ii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1~4%(w/w)、好ましくは2~3%(w/w)、より好ましくは2.5%(w/w)の重量で存在する、
請求項3または4のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項6】
少なくとも1種の薬学的活性成分が、
(i)製剤の総重量に基づき、1~200mg/g、好ましくは5~150mg/g、より好ましくは10~100mg/g、最も好ましくは20~40mg/gの濃度で、または、
(ii)液状薬学的製剤の総量に基づき、1~3.5%(w/w)、好ましくは1.5~3%(w/w)、より好ましくは2.16~2.59%(w/w)、最も好ましくは2~2.5%(w/w)の重量で
存在する、請求項1~5のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項7】
(a)少なくとも1種の薬学的活性成分がベンダムスチンであり、かつ/または
(b)nが380~450、好ましくは390~430、より好ましくは400である、
請求項1~6のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項8】
(I)結晶化阻害剤が、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンであり;かつ/または
(II)少なくとも1種の結晶化阻害剤が、
(i)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.5~5%(w/w)、好ましくは0.7~4.3%(w/w)、より好ましくは1~4%(w/w)、もしくは
(ii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.8~3%(w/w)、好ましくは0.85~2%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)、もしくは
(iii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1.5~3.5%(w/w)、好ましくは1.8~2.5%(w/w)、より好ましくは2%(w/w)、もしくは
(iv)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、2.5~4.5%(w/w)、好ましくは2.8~3.5%(w/w)、より好ましくは3%(w/w)、もしくは
(v)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、3.5~5%(w/w)、好ましくは3.8~4.5%(w/w)、より好ましくは4%(w/w)、もしくは
(vi)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき5~15%(w/w)、好ましくは7~12%(w/w)、より好ましくは10%(w/w)
の量で、または少なくともその量で、前記液状薬学的製剤中に存在する、
請求項1~7のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項9】
抗酸化剤をさらに含み、
好ましくは、抗酸化剤がチオグリセロール、ブチルヒドロキシトルエン、チオグリコール酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロールからなる群より選択され、より好ましくは、抗酸化剤がブチルヒドロキシトルエンである、
請求項1~8のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項10】
抗酸化剤の量が、液状薬学的製剤の総重量に基づき、0.01~0.1%(w/w)、好ましくは0.03~0.07%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)である、請求項9記載の液状薬学的製剤。
【請求項11】
デキストランを含まない、請求項1~10のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項12】
(ii)式(I)による溶媒が、液状薬学的製剤中に存在する全ての溶媒の総重量に基づき、少なくとも90%(w/w)、より好ましくは少なくとも95%(w/w)、最も好ましくは少なくとも98%(w/w)、最も好ましくは少なくとも100%(w/w)の溶媒を表すか;または
(iii)
(a)少なくとも1種の薬学的活性成分が、液状薬学的製剤の総量に基づき、1~3.5%(w/w)、好ましくは1.5~3%(w/w)、最も好ましくは2~2.5%(w/w)の重量で存在し;かつ
(b)結晶化阻害剤が、
(i)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.8~3%(w/w)、好ましくは0.85~2%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)、もしくは
(ii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1.5~3.5%(w/w)、好ましくは1.8~2.5%(w/w)、より好ましくは2%(w/w)、もしくは
(iii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、2.5~4.5%(w/w)、好ましくは2.8~3.5%(w/w)、より好ましくは3%(w/w)、もしくは
(iv)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、3.5~5%(w/w)、好ましくは3.8~4.5%(w/w)、より好ましくは4%(w/w)、もしくは
(v)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、5~15%(w/w)、好ましくは7~12%(w/w)、より好ましくは10%(w/w)
の重量で存在し;かつ
(d)カルシウム塩およびマグネシウム塩からなる群より選択される薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩、好ましくはカルシウム塩が、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1~4%(w/w)、好ましくは2~3%(w/w)、より好ましくは2.5%(w/w)の重量で存在し;かつ
(e)任意で、抗酸化剤が、液状薬学的製剤の総重量に基づき、0.01~0.1%(w/w)、好ましくは0.03~0.07%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)の量で存在し;かつ
(c)液状薬学的製剤全体に存在する溶媒の量が、100%(w/w)から、前記定義の液状薬学的製剤全体に存在する(a)、(b)、(d)、および(e)の量の合計、もしくは(a)、(b)、(d)、(e)、および任意のさらなる成分の量の合計を差し引いたものに相当する、
請求項1~11のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項13】
医薬において使用するための、請求項1~12のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項14】
癌の処置において使用するための、請求項1~12のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【請求項15】
製剤の調製がベンダムスチン塩酸塩一水和物を溶媒(c)に溶解させることを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の液状薬学的製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、水を本質的に含まず、(a)ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分と、(b)1種または複数種の結晶化阻害剤と、(c)式(I)による溶媒と、(d)少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属とを含む液状薬学的製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの薬学的成分は、例えば、加水分解によって、分解可能である。分解性薬学的成分の例示的な群は、様々な癌の処置のために使用されているアルキル化剤である。この群の1つの物質は、例えば、ベンダムスチンである。ベンダムスチンは、アルキル化-N((CH2)2Cl)2基を含むが、これは、クロリド基の置換によって、対応するモノヒドロキシ化合物およびジヒドロキシ化合物に急速に加水分解される。水中でのベンダムスチンの加水分解は数時間で起こり、したがって、ベンダムスチンの溶液は長期保存には適していない。ベンダムスチンは、Treanda(商標)として、凍結乾燥形態の粉末として市販されている。凍結乾燥形態は、化学的安定性の意味により、良好な化学的安定性を示す。したがって、長期間保管され得る液状薬学的製剤においてベンダムスチンを安定化する努力がなされている。
【0003】
この点に関して、WO2011/094565(特許文献1)は、ベンダムスチンまたは薬学的に許容されるその塩と;ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、および安定化する量の抗酸化剤、例えばチオグリセロールを含む薬学的に許容される液体とを含む、長期保存のための製剤を開示している。もう1つの製剤は、ベンダムスチンまたは薬学的に許容されるその塩と、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、エタノール、ベンジルアルコール、およびグリコフロール(glycofurol)を含む薬学的に許容される液体と、塩化物塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化コリン、およびアミノ酸の塩酸塩とを含む。
【0004】
WO2013/112762 A1(特許文献2)は、改善された安定性を有する水性ベンダムスチン製剤を扱っている。これらは、非水性溶媒系と水性塩化物含有水相との混合物を含む。非水性溶媒は、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含んでいてよく、任意で、抗酸化剤および保存剤、例えば、チオグリセロールを含んでいてよい。
【0005】
WO2019/185859(特許文献3)においては、その発明の薬学的製剤が、少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩を含まない試料と比較して、易分解性薬学的活性成分を安定化するために適していることが開示されている。アルカリ土類金属塩がCaCl2である態様は、易分解性薬学的活性成分を安定化するために特に有効であることが判明した。さらに、そこに開示された発明の薬学的製剤は、特に、当技術分野において公知の、分解性薬学的活性成分の安定化という同じ目的のための他の薬学的製剤と比較して、保管中の分解を示す色の変化を減少させるか、または防止する。有機的な保存剤および抗酸化剤とは異なり、そこに記載された量の、カルシウムまたはマグネシアからのアルカリ土類金属塩の添加は、生理学的に安全であると見なされ、検証を必要としない。例えば、WO2011/094565(特許文献1)に開示される製剤とは対照的に、本発明の薬学的製剤は、有毒なチオグリセロールの抗酸化剤としての存在を必要としない。
【0006】
ポリエチレングリコール、特別には、PEG400は、高い溶解度、ベンダムスチンのアルコール分解を引き起こし得るヒドロキシル基の少ない量、および極めて低い毒性のため、これに関して、アルカリ土類金属塩を安定化剤として含む、WO2019/185859(特許文献3)の薬学的製剤のための特に有用な溶媒として見出されている。しかしながら、市販のベンダムスチンは、最初は、適用量で、ポリエチレングリコールに極めて易溶性であったが、ある一定時間の製剤の保管の後、薬学的製剤にとって望ましくない、未知の化合物の沈殿/結晶化が観察された。したがって、保管中に観察される沈殿/結晶化を防止するため、ポリエチレングリコールを溶媒として含むWO2019/185859(特許文献3)の製剤をさらに安定化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2011/094565
【特許文献2】WO2013/112762
【特許文献3】WO2019/185859
【発明の概要】
【0008】
本発明は、水を本質的に含まず、
(a)ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分と、
(b)(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSOからなる群より選択される少なくとも1種の結晶化阻害剤と、
(c)式(I):
(式中、nは350~500である)による溶媒と、
(d)少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属と
を含む、液状薬学的製剤に関する。
【0009】
さらに、本発明は、医薬において使用するための薬学的製剤に関し、癌の処置において使用するための薬学的製剤にも関する。
【0010】
市販のベンダムスチン塩酸塩は、本質的に常に、一水和物の形態である。この一水和物は、適用量でポリエチレングリコールに易溶性である。現在、市販のベンダムスチンは、溶液中でこの結晶水を経時的に失うことが見出されている。結果として生じる結晶水を含まないベンダムスチンは、結晶水を含むベンダムスチンより低いポリエチレングリコールへの溶解度を有し、結果として、沈殿/結晶化する。(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSOからなる群より選択される少なくとも1種の結晶化阻害剤を添加することによって、この問題を克服することができることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】PEG400溶液中で形成されたベンダムスチン結晶を示す。
【
図2】
図1に示される結晶化した結晶のディフラクトグラム。ベンダムスチン塩酸塩一水和物のディフラクトグラムとの比較は、これらが同一でなく、実際、結晶化した結晶はベンダムスチン塩酸塩一水和物ではないことを示す。
【
図3】ベンダムスチンHCl結晶形Iのパッケージ分析および計算されたディフラクトグラム(3A)。
【
図4】ベンダムスチンHCl一水和物結晶形IIのパッケージ分析および計算されたディフラクトグラム(4A)。
【
図5】40℃で6ヶ月後のHPBCD不含製剤(WP14製剤#1)中のベンダムスチン結晶。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の解決策は、以下に記載され、添付の実施例において例示され、図面において例示され、特許請求の範囲に反映される。
【0013】
本発明は、水を本質的に含まず、
(a)ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分と、
(b)(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSOからなる群より選択される少なくとも1種の結晶化阻害剤と、
(c)式(I):
(式中、nは350~500である)による溶媒と、
(d)少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属と
を含む、液状薬学的製剤を提供する。
【0014】
本発明に関して、「水を本質的に含まない」とは、5%(w/w)未満、好ましくは2%(w/w)未満、より好ましくは1%(w/w)未満、最も好ましくは0.5%(w/w)未満の水含量を意味する。
【0015】
ベンダムスチン、メルファラン、メルフルフェン、クロラムブシル、およびウラムスチンからなる群より選択される少なくとも1種の薬学的活性成分。好ましくは、少なくとも1種の薬学的活性成分は、ベンダムスチンである。
【0016】
「薬学的活性成分」という用語は、薬学的に許容される塩の形態での上記の薬学的活性成分の存在も含む。
【0017】
「薬学的に許容される塩」とは、特定の化合物の遊離の酸および塩基の生物学的有効性を保持しており、生物学的にも、またはその他の点でも望ましくないものではない塩を意味するものとする。本発明の化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、または両方の官能基を有し、したがって、多数の無機塩基または有機塩基ならびに無機酸および有機酸のうちの任意のものと反応して、薬学的に許容される塩を形成する。例示的な薬学的に許容される塩には、本発明の化合物の、鉱酸もしくは有機酸または無機塩基との反応によって調製された塩、例えば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩を含む塩が含まれる。
【0018】
好ましくは、薬学的活性成分は、塩酸塩および/または水和物の形態、より好ましくは、塩酸塩および/または一水和物の形態で存在する。
【0019】
1つの態様において、薬学的活性成分は、ベンダムスチン塩酸塩一水和物である。
【0020】
1つの態様において、製剤の調製は、ベンダムスチン塩酸塩一水和物を溶媒(c)に溶解させることを含む。これは、ベンダムスチン塩酸塩一水和物が、一定時間後に、ベンダムスチンの他の修飾型、例えば、無水ベンダムスチンまたは無水ベンダムスチン塩酸塩に変換される可能性を排除しない。
【0021】
本発明に関して、加水分解とは、少なくとも1個の水分子もしくはアルコール(HO-R)分子の付加による1つもしくは複数の結合の切断、または水分子に由来するヒドロキシル基による官能基の置換を意味する。加水分解には、付着した水分子またはアルコール分子に由来するプロトンから形成される低分子の形成が含まれ得、そこから放出される基は、例えば、HClまたはHBrである。
【0022】
ナイトロジェンマスタード類(第三級2,2'-ジクロロアルキルアミン類)のモノヒドロキシル生成物およびジヒドロキシル生成物への分解(例えば、加水分解またはアルコール分解)は、反応性3員環式中間体の形成を介して起こると推定されている。この反応が開始されるには、窒素原子の遊離電子対がアクセス可能でなければならない。正の電荷を有するカルシウム(またはその他のアルカリ土類金属)イオンの存在は、カルシウムイオンと遊離電子対の間の電荷相互作用によって、窒素原子の部分的な負の電荷を有する電子対のアクセス可能性を減少させる。窒素原子の電子対をカルシウムイオンでマスクすることによって、環化反応が遅くなるか、または完全に阻止され、ナイトロジェンマスタード化合物に対する証明可能な安定化効果がもたらされる。
【0023】
安定化効果は、アルカリ土類金属イオンの、窒素原子の電子対との電荷相互作用を起こす能力に依存する。したがって、有機溶媒におけるアルカリ土類金属塩の解離および溶媒和の程度、ならびに陽イオン自体(カルシウム、マグネシウム他)、ならびに対イオン(クロリド、ブロミド、酢酸等)は、安定化の程度に影響を与える:例えば、CaBr2は、CaCl2と比較して効果が低い安定化を示すが、これは、臭化物の原子半径が塩化物と比較してより大きいことによって引き起こされる。アルカリ土類金属陽イオンを含まない塩化物自体(例えば、塩化コリン:(2-ヒドロキシエチル)-トリメチルアンモニウム)の安定化効果は、無視し得る程度であることが示されている。
【0024】
好ましくは、製剤中の少なくとも1種の分解性薬学的活性成分の濃度は、製剤の総重量に基づき、1~200mg/g、より好ましくは5~150mg/g、さらに好ましくは10~100mg/g、最も好ましくは20~40mg/gである。
【0025】
好ましくは、製剤中の少なくとも1種の分解性薬学的活性成分は、液状薬学的製剤の総量に基づき、1~3.5%(w/w)、好ましくは1.5~3%(w/w)、より好ましくは2.16~2.59%(w/w)、最も好ましくは2~2.5%(w/w)の重量で存在する。
【0026】
少なくとも1種の結晶化阻害剤は、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSO(ジメチルスルホキシド)からなる群より選択され、好ましくは、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンが液状薬学的製剤中に存在する。(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンおよびDMSO(ジメチルスルホキシド)を組み合わせて適用してもよい。
【0027】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.5~5%(w/w)、好ましくは0.7~4.3%(w/w)、より好ましくは1~4%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0028】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.8~3%(w/w)、好ましくは0.85~2%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0029】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1.5~3.5%(w/w)、好ましくは1.8~2.5%(w/w)、より好ましくは2%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0030】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、2.5~4.5%(w/w)、好ましくは2.8~3.5%(w/w)、より好ましくは3%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0031】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、3.5~5%(w/w)、好ましくは3.8~4.5%(w/w)、より好ましくは4%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0032】
1つの態様において、少なくとも1種の結晶化阻害剤は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、5~15%(w/w)、好ましくは7~12%(w/w)、より好ましくは10%(w/w)の量で、または少なくともその量で、液状薬学的製剤中に存在する。
【0033】
溶媒は、式(I)によるポリエチレングリコール溶媒である。
式中、nは350~500、好ましくは390~430、より好ましくは400である。ポリエチレングリコール溶媒は、好ましくは、環境温度で液状であるべきである。ここで、環境温度は18~28℃である。
【0034】
好ましくは、溶媒はPEG400である。
【0035】
好ましくは、溶媒は薬学的に許容されるものである。
【0036】
好ましくは、式(I)による溶媒は、液状薬学的製剤中に存在する全ての溶媒の総重量に基づき、少なくとも90%(w/w)、より好ましくは少なくとも95%(w/w)、最も好ましくは少なくとも98%(w/w)、最も好ましくは少なくとも100%(w/w)の溶媒を表す。
【0037】
少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩は、当業者に公知の任意の薬学的に許容されるアルカリ土類金属であり得る。本発明に関して、「アルカリ土類金属塩」とは、アルカリ土類金属の配位化合物およびキレート錯体を含む任意のイオン性化合物を意味する。
【0038】
好ましくは、少なくとも1種のアルカリ土類金属塩は、カルシウム塩またはマグネシウム塩、より好ましくはカルシウム塩である。好ましくは、少なくとも1種のアルカリ土類金属塩の陰イオンは、グルコン酸、クロリド、ブロミド、酢酸、オロト酸、または乳酸、より好ましくは、クロリド、酢酸、または乳酸、最も好ましくはクロリドである。
【0039】
最も好ましくは、少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩は、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム、特に好ましくは塩化カルシウムである。
【0040】
少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩は、好ましくは、液状製剤の総体積に基づき、0.1~3mol/L、より好ましくは0.1~1.5mol/L、さらに好ましくは0.3~1.5mol/L、特別に好ましくは0.7~1.1mol/L、さらに特別に好ましくは0.1~1.0mol/L、最も特別に好ましくは0.8~1.0mol/L、特に好ましくは0.1~0.5mol/Lの濃度で存在する。
【0041】
さらなる態様において、少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩は、好ましくは、液状製剤の総重量の量に基づき、1~4%(w/w)、好ましくは2~3%(w/w)、より好ましくは2.5%(w/w)の重量で存在する。
【0042】
前記濃度の少なくとも1種の薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩は、好ましくは、透明な薬学的溶液がもたらされるよう、薬学的に許容される有機溶媒に完全に溶解している。
【0043】
液状薬学的製剤は、当業者に公知のさらなる付加的な成分を含んでもよい。これらには、例えば、緩衝剤、界面活性剤、および抗酸化剤などが含まれ得る。
【0044】
液状薬学的製剤は、抗酸化剤をさらに含んでもよい。好ましくは、抗酸化剤は、チオグリセロール、ブチルヒドロキシトルエン、チオグリコール酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロールからなる群より選択され、より好ましくは、抗酸化剤は、ブチルヒドロキシトルエンである。
【0045】
好ましくは、抗酸化剤の量は、液状薬学的製剤の総重量に基づき、0.01~0.1%(w/w)、より好ましくは0.03~0.07%(w/w)、最も好ましくは0.05%(w/w)である。
【0046】
1つの態様において、液状薬学的製剤は、デキストランを含まない。
【0047】
液状薬学的製剤の1つの態様において、
(a)少なくとも1種の薬学的活性成分は、液状薬学的製剤の総量に基づき、1~3.5%(w/w)、好ましくは1.5~3%(w/w)、最も好ましくは2~2.5%(w/w)の重量で存在し;かつ
(b)結晶化阻害剤は、
(i)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、0.8~3%(w/w)、好ましくは0.85~2%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)、または
(ii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1.5~3.5%(w/w)、好ましくは1.8~2.5%(w/w)、より好ましくは2%(w/w)、または
(iii)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、2.5~4.5%(w/w)、好ましくは2.8~3.5%(w/w)、より好ましくは3%(w/w)、または
(iv)液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、3.5~5%(w/w)、好ましくは3.8~4.5%(w/w)、より好ましくは4%(w/w)
の量で存在し;かつ
(d)カルシウム塩およびマグネシウム塩からなる群より選択される薬学的に許容されるアルカリ土類金属塩、好ましくはカルシウム塩は、液状薬学的製剤の総重量の量に基づき、1~4%(w/w)、好ましくは2~3%(w/w)、より好ましくは2.5%(w/w)の重量で存在し;かつ
(e)任意で、抗酸化剤は、液状薬学的製剤の総重量に基づき、0.01~0.1%(w/w)、好ましくは0.03~0.07%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)の量で存在し;かつ
(c)液状薬学的製剤全体に存在する溶媒の量は、100%(w/w)から、前記定義の液状薬学的製剤全体に存在する(a)、(b)、(d)、および(e)の量の合計、または(a)、(b)、(d)、(e)、および任意のさらなる成分の量の合計を差し引いたものに相当する。
【0048】
液状薬学的製剤は、さらなる希釈なしに適用してもよく、または事前に希釈して適用してもよい。薬学的製剤は、投与前に、注射用水、生理食塩水、または緩衝液で希釈され得る。好ましくは、薬学的製剤は、投与前の8時間以内、好ましくは4時間以内、最も好ましくは2時間以内に、注射用水、生理食塩水、または緩衝液で希釈される。
【0049】
液状薬学的製剤は、当業者に公知の任意の適当な様式で投与され得る。好ましくは、液状薬学的製剤は、非経口的に、より好ましくは注射として、最も好ましくは静脈内注入または静脈内ボーラス注射として投与される。
【0050】
さらに、本発明は、医薬において使用するための、前記定義の液状薬学的製剤の使用に関する。
【0051】
本発明の液状薬学的製剤は、患者への適用前に、生理学的に許容される水性溶液と組み合わせてもよい。例えば、液状薬学的製剤は、適当な量の等張塩化ナトリウム溶液と組み合わせてもよい。好ましくは、等張塩化ナトリウム溶液の濃度は、9mg/Lの塩化ナトリウムを含み、好ましくは4.5~7.0のpH値を示す。
【0052】
本発明は、(a)前記の本発明の液状薬学的製剤と、(b)生理学的に許容される水性溶液とを含む、製剤をさらに含み、医薬におけるその使用も含む。
【0053】
さらに、本発明は、癌の処置において使用するための、任意で、水の存在下での、前記定義の液状薬学的製剤の使用に関する。
【0054】
本発明に関して「安定化」という用語は、易分解性薬学的活性成分の分解の防止または減少を意味する。好ましくは、それは、特別には、安定化されていない試料と比較して、薬学的製剤の規定された貯蔵期間の終わりに、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の、適当な分析方法によって決定される純度が維持されることを意味する。例えば、純度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、特別には、逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)によって決定され得る。さらに、安定化とは、特別には、安定化されていない試料と比較して、生成物の貯蔵期間中の分解によって引き起こされる調製物の目に見える色の変化が、防止されるか、または減少することを意味する。
【実施例】
【0055】
発明の実施例
実施例1:1.0 本発明の製剤の安定性
ベンダムスチン塩酸塩の15の製剤の安定性を、4週間および8週間にわたる加速安定性試験において試験した。主溶媒(PG、PEG300、およびPEG400)、溶媒添加剤(DMSO、TBA、NMP、アセトン、ソルケタール、グリコフロール、グリセロール、ポリソルベート20/ツイーン20、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HPBCD))、安定化剤(CaCl2)、ならびに抗酸化剤BHTの安定化効果を評価することとした。
【0056】
以下の製剤を試験することとした(1バイアル当たりの組成):
(表1)安定性試験のために選択された製剤バリアント
【0057】
1.1 材料および方法
物質および材料
(表2)物質および材料
【0058】
1.2 材料および装置
HPLC機器
製造業者:Agilent Technologies(Santa Clara、California USA)
タイプ:1290シリーズ
クロマトグラフィ分析ソフトウェア:Thermo Scientific、Chromeleon 7.2.9
【0059】
付加的な実験機器:
ロータリーエバポレーター:Buchi、Rotavapor(登録商標)R-100
マルチステップピペットおよびピペットチップ:Brand、Handystep
精製水供給:Ultra Clean UV UF TM
細胞増殖抑制安全キャビネット:Berner、C-MaxPro 190
化学天秤:Eppendorf、DE120K10A
マグネチックスターラー:2mag、MIXdrive6
体積測定ピペット:Gillson/Eppendorf
【0060】
1.3 材料および方法
一次包装材料の準備
材料および装置:
(表3)一次包装材料
【0061】
付加的な実験機器:
実験器具洗浄機:Miele、G7783
オートクレーブ:Systec、DX65
乾燥炉(パイロジェン除去):Memmert、UFP500
使用された全ての機器が、妥当な認定および保守計画による定期的な校正および認定を受ける。
【0062】
手順:
バイアル:バイアルは、実験器具洗浄機において精製水で洗浄され、300℃で2時間、パイロジェン除去された。
栓:栓は、105℃で8時間乾燥させた。
【0063】
1.4 配合
手順:
最初に、対応する溶媒(PG、PEG300、PEG400)によるCaCl2/BHTのストック溶液を調製した。次いで、表1による溶媒調製物が完成するよう、溶媒バリアントに添加剤を添加した。未溶解の粒子を除去するため、溶媒を0.22μmフィルターユニットでろ過した。ベンダムスチン一塩酸塩一水和物を6Rバイアルにおいて計量し、対応する溶媒を目標重量まで充填した。完全に溶解させた後、窒素を不活性ヘッドスペースガスとして、6Rバイアルにおいて、バリアントの体積を4gに分割した。
【0064】
全てのバリアント#01~#10および#11~#15を並行して配合した。配合中、大気中の酸素との接触を可能な限り回避した。配合容器は、厳密な密封状態に維持され、ヘッドスペースを減少させるため、可能な限り小さく選択された。専用バッチサイズは、各バリアントにつき2バイアル、1バイアル当たり4.0gの充填量であった。
【0065】
1.5 逆相クロマトグラフィ(RP-HPLC)
材料および装置:
(表4)RP-HPLC分析において使用された材料
【0066】
HPLC機器
製造業者:Agilent Technologies(Santa Clara、California USA)
タイプ:1290シリーズ
クロマトグラフィ分析ソフトウェア:Thermo Scientific、Chromeleon 7.2.9
【0067】
付加的な実験機器:
ロータリーエバポレーター:Buchi、Rotavapor(登録商標)R-100
マルチステップピペットおよびピペットチップ:Brand、Handystep
精製水供給:Ultra Clean UV UF TM
細胞増殖抑制安全キャビネット:Berner、C-MaxPro 190
化学天秤:Eppendorf、DE120K10A
マグネチックスターラー:2mag、MIXdrive6
体積測定ピペット:Gillson/Eppendorf
【0068】
手順:
クライアントによって提供されたRP-HPLC法によって、ベンダムスチン塩酸塩の純度を決定した。試料の希釈にはDMSOが使用された。オートサンプラーの温度は、DMSO(融点18℃)の結晶化を回避するため、25℃に設定された。
カラムタイプ:Kinetex C18、100×4.6mm、2.6μm(Phenomenex)
移動相:A:水/ACN/TFA=950/50/1 v/v/v
B:水/ACN/TFA=50/950/1 v/v/v
カラム温度:25℃
オートサンプラー温度:25℃(最初の値5℃)
流速:1.2mL/分
検出波長:234nm
スリット:4nm
参照波長:550nm
参照スリット:100nm
検出範囲:0~30分
【0069】
表5は勾配のチャートを示す。
【0070】
【0071】
【0072】
1.5.2 試料調製
各バイアルの1gを50mLサンプルチューブに移し、19mL DMSOで希釈した。次いで、溶液を1:10に希釈し、HPLCサンプルバイアルに移した。
【0073】
1.6.結果および考察
表1に記載された製剤におけるベンダムスチンHClの安定性を評価した。溶液を室温で配合し、FluroTecコーティングされた血清ストッパーを有するISO 6R透明ガラスバイアルに充填した。試料を、40℃で、それぞれ、4週間(T4w)、8週間(T8w)、12週間(T12w)保存した。視覚的外観(色および結晶化状態)ならびにRP-HPLCによる純度を測定した。表6は結果を要約したものである。
【0074】
【0075】
安定性研究T6mの終了時の最も有望な製剤は、製剤#5および#16(40℃で6ヶ月後に、無色で無結晶の溶液、5%未満の純度減少)である。
【0076】
実施例2:結晶化/沈殿した結晶の同一性の決定
調査の目的は、細胞傷害性活性成分ベンダムスチン-HClの沈殿した結晶の固体形態(solid-state form)を決定すること(相分析)である(
図1を参照)。
【0077】
バイアル内の溶液の初期組成は、以下の通りである:Benda-H2O-HCl 2.50% w/w、CaCl2 2.50% w/w、BHT 0.05% w/w、アセトン 2.50% w/w、PEG400 92.45% w/w。PXRD測定のため、母液の存在下で、いわゆるリンデマン(Lindemann)キャピラリー(直径1mm)に結晶を充填し、4時間の測定を実施する。PXRDは、固体形態の決定のみならず、結晶の結晶化度(非結晶/結晶)の決定も可能にする。特許文献US8445524B2からのベンダムスチン-HCl(4種の結晶形)のディフラクトグラム、および単一の結晶データから計算されたものを、参照として使用することができる。単一の結晶データから計算されたマンニトールについての適当な参照も、利用可能である。
【0078】
母液の存在下で、いわゆるリンデマンキャピラリー(直径1mm)に結晶を充填し、8時間の測定を実施した。
【0079】
得られた結晶(pjpBEN003)のディフラクトグラムは、ベンダムスチン塩酸塩一水和物のディフラクトグラムとの比較において一致を示さない。したがって、沈殿した固体は一水和物ではないと結論付けることができる(
図2)。
【0080】
拡張された探索によって、結晶化した固体(pjpBEN003)は、ベンダムスチン塩酸塩の結晶形Iであることが明らかになった(
図3を参照)。融解熱の法則によると、結晶形Iは、ベンダムスチン塩酸塩の熱力学的に最も安定している形態である(US8445524B2)。
【0081】
実施例3:結晶化阻害の試験
4種の異なる無水ベンダムスチン製剤を配合し、25℃および40℃での安定性試験に供した。
【0082】
以下の製剤を試験した。
【0083】
(表7)安定性試験のために選択された製剤バリアント
【0084】
製剤は、ヒドロキシプロピルベータデックス(HPBCD)濃度含量(1~4%HPBCD)において異なっている。
【0085】
以前のワークパッケージ(WP14)において、HPBCD不含製剤の結晶化開始時点を評価した(製剤:ベンダムスチン-HCl-H
2O 2.3%、CaCl
2 2.5%、BHT 0.05%、PEG400 95.15%)。40℃で約4週間保管した後、結晶がバイアル底部に肉眼的に観察された。その後の試料採取時点(6ヶ月保管)での代表的な写真を
図5に示す。
【0086】
実施例2において報告されたように、結晶を単離し、XRPDによって分析した。結晶は、結晶水を含まない純粋なベンダムスチン塩酸塩からなることが立証された。したがって、ベンダムスチン*HCl*H2O中の水分子が保管中に分離し、PEG400におけるベンダムスチン*HCl(無水)の溶解度がベンダムスチン*HCl*H2Oと比較して低いため、結晶化が起こると結論付けることができる。
【0087】
この研究の目的は、HPBCDの添加がこのタイプのベンダムスチン結晶化を防止し得るか否かを評価すること、そして結晶化を防止するための臨界/最小ヒドロキシプロピルベータデックス(HPBCD)濃度を決定することである。
【0088】
【0089】
カメラ機器
製造業者:Canon(Tokio、Japan)
本体:EOS 600D
レンズ:DGMacro 105mm 1:2.8
【0090】
付加的な実験機器:
ロータリーエバポレーター:Buchi、Rotavapor(登録商標)R-100
マルチステップピペットおよびピペットチップ:Brand、Handystep
精製水供給:Ultra Clean UV UF TM
細胞増殖抑制安全キャビネット:Berner、C-MaxPro 190
化学天秤:Eppendorf、DE120K10A
マグネチックスターラー:2mag、MIXdrive6
体積測定ピペット:Gillson/Eppendorf
実験器具洗浄機:Miele、G7783
オートクレーブ:Systec、DX65
乾燥炉(パイロジェン除去):Memmert、UFP500
【0091】
一次包装材料の準備
バイアル:バイアルは、実験器具洗浄機において精製水で洗浄され、300℃で2時間、パイロジェン除去された。
栓:栓は、オートクレーブ処理され(121℃、2bar、20分)、80℃で8時間乾燥させた。
【0092】
3.2 配合
3.2.1 手順:
最初に、PEG400中のCaCl2/BHTのストック溶液を調製した。次いで、表1による溶媒調製物が完成するよう、添加剤(HPBCDおよび付加的なPEG400)を溶媒バリアントに添加した。未溶解の粒子を除去するため、溶媒を0.65μmガラス繊維フィルターユニット(Sartopure GF+)でろ過した。ベンダムスチン一塩酸塩一水和物を6Rバイアルにおいて計量し、対応する溶媒を目標重量まで充填した。バルク溶液を350rpmで約1時間撹拌した。完全に溶解させた後、窒素を不活性ヘッドスペースガスとして、6Rバイアルにおいて、バリアントの体積を5gに分割した。
【0093】
全てのバリアント#01~#04を並行して配合した。配合中、大気中の酸素との接触を可能な限り回避した。配合容器は、厳密な密封状態に維持され、ヘッドスペースを減少させるために可能な限り小さく選択された。専用バッチサイズは、各バリアントにつき2バイアル、1バイアル当たり5.0gの充填量であった。
【0094】
3.3(加速)安定性研究
各バリアントについて、1個のバイアルを25℃で保管し、もう1個のバイアルを40℃で保管した。
【0095】
3.4 ベンダムスチン結晶化の測定
T0で、そして最後の分析の時点から2週間の等間隔で、全てのバイアルを肉眼的に調査した。バイアルを外部光源の下に置き、種々の視点から肉眼で調査した。
【0096】
3.5 結果および考察
表1にリストされた製剤におけるベンダムスチン-HClの安定性を、特に結晶化に関して、評価した。溶液を室温で配合し、FluroTecコーティングされた血清ストッパーを有するISO 6R透明ガラスバイアルに充填した。試料を25℃および40℃で保存した。
【0097】
3.6 結晶化
表8は、ベンダムスチン結晶の視覚的調査の結果を記載したものである。
【0098】
【0099】
一水和物型の結晶水は、評価された両方の温度で、分離する可能性が最も高い。しかしながら、ベンダムスチン無水物の溶解度は、(固体の構成要素について一般的であるように)25℃と比較して、40℃でより高い。したがって、25℃では、より早く結晶化が観察される。
【0100】
3.7 要約
HPBCD含量(1%、2%、3%、および4%)において異なる4種の無水PEG400/CaCl2/BHTベンダムスチン製剤を、調製した。結晶化が起こり始める時点を観察するため、バイアルを25℃および40℃で保管した。
【0101】
現在の状態(T10w):25℃で保管した後、1%(w/w)HPBCD製剤において、極少量の結晶のみが検出され得る。製剤中の2%(w/w)HPBCD以上の含量は、ベンダムスチンの結晶化を安全に防止する。
【国際調査報告】