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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】マルチ周波数領域タッチ検知
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241003BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 A
G06F3/041 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523632
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022043140
(87)【国際公開番号】W WO2023080952
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】17/518,307
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/564,159
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】シェン、グオジョーン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チュヌボ
(57)【要約】
入力デバイスが、該入力デバイスの検知領域に設けられたトランスミッタ電極と該検知領域内のレシーバ電極と処理システムとを備えている。処理システムは、複数の復調器を備えており、固有の周波数を有する多くのトランスミッタ信号を用いてトランスミッタ電極の少なくともサブセットを同時に駆動するように構成されている。処理システムは、レシーバ電極で結果信号を受信し、該複数の復調器を用いて結果信号を復調して多くの検知信号を生成するようにも構成されている。復調器のそれぞれが、該固有の周波数のうちの異なる周波数で動作する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デバイスであって、
前記入力デバイスの検知領域内の複数の別々の周波数領域に設けられたトランスミッタ電極であって、前記複数の別々の周波数領域のそれぞれが前記トランスミッタ電極の複数を備える、トランスミッタ電極と、
前記検知領域内のレシーバ電極と、
複数の復調器を備える処理システムと、
を備え、
前記処理システムが、
固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて前記複数の別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極の少なくとも2つを同時に駆動し、
前記レシーバ電極で結果信号を受信し、
前記複数の復調器を用いて前記結果信号を復調して複数の検知信号を生成するように構成され、
前記複数の復調器のそれぞれが、前記固有の周波数の異なる周波数で動作し、
前記複数の別々の周波数領域のそれぞれが、前記固有の周波数の一つに固有である
入力デバイス。
【請求項2】
固有の周波数を有する前記複数のトランスミッタ信号を用いて前記複数の別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極の少なくとも2つを同時に駆動することが、前記固有の周波数のうちの前記周波数領域に固有な周波数で、前記複数の別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極の少なくとも2つを同時に駆動することを含む
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項3】
固有の周波数を有する前記複数のトランスミッタ信号を用いて前記複数の別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極の少なくとも2つを同時に駆動することが、
前記複数の別々の周波数領域のうちの第1の周波数領域内の前記複数のトランスミッタ電極のうちの少なくとも2つを、前記固有の周波数のうちの第1の周波数で同時に駆動する一方で、
前記複数の別々の周波数領域のうちの第2の周波数領域内の前記複数のトランスミッタ電極のうちの少なくとも2つを、前記固有の周波数のうちの第2の周波数で同時に駆動することを含む
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項4】
前記複数のトランスミッタ信号が互いに直交している
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項5】
前記複数のトランスミッタ信号が、直交周波数分割多重化(OFDM)スペクトルから選択される
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項6】
前記複数の復調器のそれぞれが、同相(I)復調器及び直交(Q)復調器を備えている、
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項7】
前記複数の復調器のそれぞれがデジタル的に実装されている
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項8】
更に、前記結果信号の復調の前に前記結果信号を処理するアナログ-デジタル変換器(ADC)を備えている
請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項9】
入力デバイスのための処理システムであって、
前記処理システムが、複数の復調器を備えており、かつ、
固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて前記入力デバイスの検知領域内の、それぞれが複数のトランスミッタ電極を備える複数の別々の周波数領域に設けられた複数のトランスミッタ電極のそれぞれの少なくとも2つを同時に駆動し、
前記検知領域内のレシーバ電極で結果信号を受信し、
前記複数の復調器を用いて前記結果信号を復調して複数の検知信号を生成するように構成され
前記複数の復調器のそれぞれが、前記固有の周波数の異なる周波数で動作し、
前記複数の別々の周波数領域のそれぞれが、前記固有の周波数の一つに固有である
処理システム。
【請求項10】
固有の周波数を有する前記複数のトランスミッタ信号を用いて前記別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極のそれぞれの少なくとも2つを同時に駆動することが、前記固有の周波数のうちの前記周波数領域に固有な周波数で、前記複数の別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極のそれぞれの少なくとも2つを同時に駆動することを含む
請求項9に記載の処理システム。
【請求項11】
固有の周波数を有する前記複数のトランスミッタ信号を用いて前記別々の周波数領域のそれぞれにある前記複数のトランスミッタ電極のそれぞれの少なくとも2つを同時に駆動することが、
前記複数の別々の周波数領域のうちの第1の周波数領域内の前記複数のトランスミッタ電極のうちの少なくとも2つを、前記固有の周波数のうちの第1の周波数で同時に駆動する一方で、前記複数の別々の周波数領域のうちの第2の周波数領域内の前記複数のトランスミッタ電極のうちの少なくとも2つを、前記固有の周波数のうちの第2の周波数で同時に駆動することを含む
請求項9に記載の処理システム。
【請求項12】
前記複数のトランスミッタ信号が互いに直交している
請求項9に記載の処理システム。
【請求項13】
複数のトランスミッタ信号が、直交周波数分割多重化(OFDM)スペクトルから選択される
請求項9に記載の処理システム。
【請求項14】
入力デバイスを動作するための方法であって、前記方法が、
固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて前記入力デバイスの検知領域内の、それぞれが複数のトランスミッタ電極を備える複数の別々の周波数領域にある複数のトランスミッタ電極のそれぞれの少なくとも2つを同時に駆動することと、
前記入力デバイスの前記検知領域に設けられたレシーバ電極で結果信号を受信することと、
複数の復調器を用いて前記結果信号を復調して複数の検知信号を生成することと、
前記結果信号を用いてタッチ検知を行うことと、
含み、
前記複数の復調器のそれぞれが前記固有の周波数の異なる周波数で動作し、
前記複数の別々の周波数領域のそれぞれが、前記固有の周波数の一つに固有である
方法。
【請求項15】
入力デバイスを動作するための方法であって、前記方法が、
固有の基本周波数を有する複数の非正弦波トランスミッタ信号を得ることと、
前記非正弦波トランスミッタ信号の高調波に関連する複数のエイリアシング歪みが前記基本周波数と異なる周波数に位置するようにアナログ-デジタルコンバータ(ADC)のサンプリング周波数を選択することと、
を含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2021年11月3日に出願された米国特許出願第17/518,307号及び2021年12月28日に出願された米国特許出願第17/564,159号への特許協力条約第8条による優先権を主張する。
【0002】
記載された実施形態は、全体として電子デバイスに関しており、より具体的にはタッチセンサに関している。
【背景技術】
【0003】
タッチセンサデバイスを備える入力デバイス(例えば、タッチパッドやタッチセンサデバイス)は、様々な電子システムにおいて広く使用されている。タッチセンサデバイスは、典型的には、しばしば表面によって区画される、タッチセンサデバイスが一以上の入力物体の存在、位置及び/又は動きを特定する検知領域を有している。タッチセンサデバイスは、電子システムのためのインタフェースを提供するために使用されることがある。例えば、タッチセンサデバイスは、しばしば、より大きなコンピューティングシステムのための入力デバイス(例えば、ノートブックやデスクトップコンピュータに組み込まれ、又は周辺機器となる不可視のタッチパッド)として使用される。タッチセンサデバイスには、様々な大きさのものがある。タッチセンサデバイス内のセンサ電極の数は、タッチセンサデバイスの大きさに依存することがある。特により高いタッチ検知の時間解像度が望まれる場合、大型のタッチセンサデバイスでは、センサ電極の数が問題を生じさせることがある。
【発明の概要】
【0004】
一般に、一の観点において、一以上の実施形態が、入力デバイスの検知領域に設けられた複数のトランスミッタ電極と、検知領域内のレシーバ電極と、複数の復調器を備える処理システムとを備える入力デバイスに関している。処理システムは、固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて複数のトランスミッタ電極の少なくともサブセットを同時に駆動し、レシーバ電極で結果信号を受信し、複数の復調器を用いて結果信号を復調して複数の検知信号を生成するように構成されている。複数の復調器のそれぞれは、該固有の周波数のうちの異なる周波数で動作する。
【0005】
一般に、一の観点において、一以上の実施形態が、入力デバイスのための処理システムに関している。処理システムは、複数の復調器を備えており、固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて入力デバイスの検知領域に設けられた複数のトランスミッタ電極の少なくともサブセットを同時に駆動し、検知領域内のレシーバ電極で結果信号を受信し、複数の復調器を用いて結果信号を復調して複数の検知信号を生成するように構成されている。複数の復調器のそれぞれは、該固有の周波数のうちの異なる周波数で動作する。
【0006】
一般に、一の観点において、一以上の実施形態が、入力デバイスを動作するための方法に関している。該方法は、固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて複数のトランスミッタ電極の少なくともサブセットを同時に駆動することと、レシーバ電極で結果信号を受信することと、複数の復調器を用いて結果信号を復調して複数の検知信号を生成することと、結果信号を用いてタッチ検知を行うことと、を含んでいる。複数のトランスミッタ電極とレシーバ電極は、入力デバイスの検知領域に設けられている。複数の復調器のそれぞれは、該固有の周波数のうちの異なる周波数で動作する。
【0007】
実施形態の他の観点は、下記の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一以上の実施形態による入力デバイスのブロック図を図示している。
【0009】
図2図2は、一以上の実施形態による検知構成を図示している。
【0010】
図3図3は、一以上の実施形態による処理構成を図示している。
【0011】
図4図4は、一以上の実施形態によるマルチ周波数領域タッチ検知のための方法を説明するフローチャートを図示している。
【0012】
図5図5は、一以上の実施形態によるサンプルデータを図示している。
【0013】
図6A図6Aは、一以上の実施形態による検知構成を図示している。
【0014】
図6B図6Bは、一以上の実施形態による検知構成を図示している。
【0015】
図7図7は、一以上の実施形態による処理構成を図示している。
【0016】
図8図8は、一以上の実施形態によるバンド間干渉分析の例を図示している。
【0017】
図9図9は、一以上の実施形態による、マルチ周波数領域並行スキャンのためのバンド間高調波干渉の緩和のための方法を説明するフローチャートを図示している。
【0018】
図10図10は、一以上の実施形態による、マルチ周波数領域タッチ検知のための方法を説明するフローチャートを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の発明を実施するための形態は、本質的に例示的なものであり、発明を限定することも、発明の用途及び使用法を限定することも意図していない。更に、上記の技術分野、背景技術、発明の概要、図面の簡単な説明、又は下記の発明を実施するための形態において提示されている、明示の又は暗示の理論によって拘束される意図はない。
【0020】
出願全体に渡り、序数(例えば、第1、第2、第3、等)は要素(即ち、出願中の任意の名詞)のための形容詞として使用されることがある。4つの連続4分の1サイクルを例外として、序数の使用は、例えば「前」、「後」、「単一の」という語や他の類似の用語の使用によって明示的に開示されていない限り、要素の特定の順序付けを示唆するものでも生成するものでもなく、任意の要素が単一の要素のみであると限定するものでもない。むしろ、序数の使用は、要素を互いに区別するためのものである。一例として、第1要素は第2要素と異なるものであり、そして、第1要素は一つより多い要素を包含し、要素の順序付けにおいて第2要素に後行する(又は先行する)ことがある。
【0021】
4つの連続4分の1サイクルに関する序数の使用は、当該4つの連続4分の1サイクルにおける順序付けを示している。特に、第1連続4分の1サイクルは、第2連続4分の1サイクルに先行する最初の4分の1サイクルである。第2連続4分の1サイクルは、第3連続4分の1サイクルに先行しており、第3連続4分の1サイクルは、順に、第4(即ち、最終)連続4分の1サイクルに先行している。
【0022】
様々な実施形態が、様々な他の利益と共にユーザビリティの向上を容易にする入力デバイス及び方法を提供する。本開示の実施形態は、検知領域が大きくてもタッチ検知に対するフレームレートを高くするために使用され得る。本開示の実施形態は、異なる周波数を有するトランスミッタ信号を用いて検知領域内の複数の検知電極を同時に駆動する。複数の検知電極の同時駆動は、同数の検知電極の順次駆動よりも短い時間間隔で実行可能である。従って、固定の時間期間中に、より多数の検知動作が実行され得る。従って、検出に使用されるフレームレートの不所望な又は受け入れ不能な低下を起こさずに、タッチ検知がより大きな検知領域について実行され得る。同様に、複数の検知電極の同時駆動を使用する場合、より小さな検知領域についてはフレームレートが増大され得る。以下に、詳細に説明する。
【0023】
図1は、実施形態による、例示的な入力デバイス(100)のブロック図である。入力デバイス(100)は、電子システム(図示されない)に入力を提供するように構成され得る。本文書において、「電子システム」(又は「電子デバイス」)という用語は、広く、電子的に情報を処理可能な任意のシステムをいう。電子システムの非限定的な幾つかの例としては、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータのようなパーソナルコンピュータ、タブレット、ウェブブラウザ、電子ブックリーダ、及び、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)が挙げられる。追加の電子システムの例としては、入力デバイス(100)と、それとは別のジョイスティック又はキースイッチとを含む物理キーボードのような複合入力デバイスが挙げられる。電子システムの更なる例としては、(リモートコントローラ及びマウスを含む)データ入力装置や(表示スクリーン及びプリンタを含む)データ出力装置のような周辺機器が挙げられる。他の例としては、リモート端末、キオスク、(例えば、ビデオゲームコンソール及び携帯ゲーム機等の)ゲーム機が挙げられる。他の例としては(スマートフォンのような携帯電話を含む)通信デバイス、(レコーダ、エディタ、及び、テレビ、セットトップボックス、音楽プレーヤー、デジタルフォトフレーム、デジタルカメラのようなプレーヤーを含む)メディアデバイスが挙げられる。加えて、電子システムは、ホストであり得るし、また、入力デバイスのスレーブであり得る。
【0024】
図1において、入力デバイス(100)は、検知領域(120)内の一以上の入力物体によって提供される入力を検知するように構成されたタッチセンサデバイス(例えば「タッチパッド」又は「タッチセンサデバイス」)として図示されている。入力物体の例としては、スタイラス、アクティブペン(140)及び指(142)が挙げられる。更に、いずれの個々の入力物体が検知領域内にあるかは、一以上のジェスチャーの過程で変化することがある。例えば、第1入力物体が、第1ジェスチャーを行うために検知領域に存在することがあり、次に、該第1入力物体と第2入力物体とが、上記の表面検知領域内に存在することがあり、最後に、第3入力物体が第2ジェスチャーを行うことがある。説明を不必要に複雑にすることを避けるために、入力物体の単数形が使用されて上記のバリエーションの全てを指す。
【0025】
検知領域(120)は、入力デバイス(100)がユーザ入力(例えば、一以上の入力物体によって提供されるユーザ入力)を検知可能な、入力デバイス(100)の上方、周囲、内部及び/又は近くのあらゆる空間を包含している。個別の検知領域の大きさ、形状及び位置は、実施形態によって大きく変化し得る。
【0026】
入力デバイス(100)は、検知領域(120)内のユーザ入力を検出するためにセンサコンポーネントと検知技術の任意の組み合わせを使用し得る。入力デバイス(100)は、ユーザ入力を検出するための一以上の検知素子を備えている。該検知素子は、容量性であってもよい。
【0027】
入力デバイス(100)の容量性実装には、電圧又は電流が電界を生成するために印加されるものがある。近傍の入力物体は電界に変化を生じさせ、電圧、電流等における変化として検出され得る容量カップリングにおける検出可能な変化を生じさせる。
【0028】
容量性実装には、電界を生成するために容量検知素子のアレイ又は、他の規則的な又は不規則的なパターンを使用するものがある。容量性実装によっては、別々の検知素子がオーミック的にショートされ、より大きなセンサ電極を形成するものがある。容量性実装には、抵抗が均一であり得る抵抗シートを用いるものがある。
【0029】
容量性実装には、センサ電極と入力物体の間の容量カップリングの変化に基づく「自己容量」(又は「絶対容量」)検知方式を使用するものがある。様々な実施形態において、センサ電極の近くの入力物体は、センサ電極の近くの電界を変化させ、従って、測定される容量カップリングを変化させる。一の実装では、絶対容量検知方式が、参照電圧(例えば、システム接地)に対してセンサ電極を変調し、センサ電極と入力物体の間の容量カップリングを検出することによって作動する。様々な実施形態において、参照電圧は、実質的に一定な電圧であってもよく、変化する電圧であってもよい。参照電圧はシステム接地であってもよい。絶対容量検知方式を用いて得られた測定値は、絶対容量測定値ということがある。
【0030】
容量性実装には、センサ電極の間の容量カップリングの変化に基づく「相互容量」(又は「トランス容量」)検知方式を使用するものがある。様々な実施形態において、センサ電極の近くの入力物体は、センサ電極の間の電界を変化させ、従って、測定される容量カップリングを変化させる。一の実装では、相互容量検知方式は、一以上のトランスミッタセンサ電極(「トランスミッタ電極」又は「トランスミッタ」ともいう)と一以上のレシーバセンサ電極(「レシーバ電極」又は「レシーバ」ともいう)との間の容量カップリングを検出することによって作動する。トランスミッタセンサ電極は、参照電圧(例えば、システム接地)に対して変調されてトランスミッタ信号を送信することがある。レシーバセンサ電極は、結果信号の受信を容易にするために参照電圧に対して実質的に一定に保持されることがある。参照電圧は実質的に一定な電圧であってもよく、様々な実施形態において、参照電圧はシステム接地であってもよい。
【0031】
実施形態によっては、トランスミッタセンサ電極とレシーバセンサ電極との両方が変調されることがある。トランスミッタ電極は、レシーバ電極に対して変調されてトランスミッタ信号を送信し、結果信号の受信を容易にすることがある。結果信号は、一以上のトランスミッタ信号及び/又は一以上の周囲の干渉源(例えば、他の電磁気信号)に対応する効果を含むことがある。当該効果は、トランスミッタ信号である場合があり、一以上の入力物体及び/又は周囲の干渉によって生じるトランスミッタ信号の変化である場合があり、又は他の同類の効果である場合がある。センサ電極は、専用のトランスミッタ又はレシーバであってもよく、送信と受信の両方を行うように構成されてもよい。相互容量検知方式を用いて得られる測定値は、相互容量測定値ということがある。
【0032】
図1においては、処理システム(110)が入力デバイス(100)の一部として図示されている。処理システム(110)は、入力デバイス(100)のハードウェアを動作させて検知領域(120)における入力を検出するように構成されている。処理システム(110)は、一以上の集積回路(IC)及び/又は他の回路コンポーネントの一部又は全部を備えている。例えば、相互容量センサデバイスのための処理システム(110)は、トランスミッタセンサ電極を用いて信号を送信するように構成されたトランスミッタ回路部、及び/又は、レシーバセンサ電極を用いて信号を受信するように構成されたレシーバ回路部を備えている。更に、絶対容量センサデバイスのための処理システム(110)は、絶対容量信号をセンサ電極に印加するように構成されたドライバ回路部及び/又はそれらのセンサ電極で信号を受信するように構成されたレシーバ回路部を備えている。一以上の実施形態において、相互及び絶対容量複合センサデバイスのための処理システム(110)は、上記の相互及び絶対容量回路部の任意の組み合わせを備えることがある。処理システム(110)は、更に、異なる信号源、例えばアクティブペン(140)によって放射された信号を受け取るように構成されたレシーバ回路部を備えることがある。アクティブペン(140)による信号は、レシーバセンサ電極によって受信されることがあり、送信信号は、必ずしも、トランスミッタセンサ電極によって放射されるとは限らない。
【0033】
実施形態によっては、処理システム(110)は、例えばファームウェアコード、ソフトウェアコード等のような電子的読み取り可能な命令も含むことがある。実施形態によっては、処理システム(110)を構成するコンポーネントは、例えば入力デバイス(100)の検知素子の近くのように、纏めて配置されることがある。他の実施形態では、処理システム(110)のコンポーネントは、一以上のコンポーネントが入力デバイス(100)の検知素子の近くにある一方で、一以上のコンポーネントが他の位置にあり、物理的に分離される。例えば、入力デバイス(100)が、コンピューティングデバイスに結合された周辺機器であってもよく、処理システム(110)が、コンピューティングデバイスの中央処理装置上で実行されるように構成されたソフトウェアと、中央処理装置から分離された(恐らくはファームウェアと関連する)一以上のICとを備えてもよい。他の例としては、入力デバイス(100)が移動デバイスに物理的に集積化されることがあり、処理システム(110)が移動デバイスの主プロセッサの一部である回路及びファームウェアを備えることがある。実施形態によっては、処理システム(110)が入力デバイス(100)を実装するための専用であるものがある。他の実施形態では、処理システム(110)が、例えば表示スクリーン(155)を動作させ、触覚アクチュエータを駆動する等の他の機能も実行する。
【0034】
処理システム(110)は、処理システム(110)の異なる機能を取り扱う一組のモジュールとして実装され得る。各モジュールは、処理システム(110)の一部である回路、ファームウェア、ソフトウェア又はその組み合わせを備えることがある。様々な実施形態において、異なるモジュールの組み合わせが使用され得る。例えば、図1に図示されているように、処理システム(110)は、判定モジュール(150)とセンサモジュール(160)とを備えることがある。判定モジュール(150)は、検知領域に少なくとも一の入力物体がある場合、信号対ノイズ比、入力物体の位置情報、ジェスチャー、該ジェスチャーに基づいて実行すべき動作、ジェスチャー又は他の情報の組み合わせ、及び/又は他の動作を判定する機能を備えている。
【0035】
センサモジュール(160)は、検知素子を駆動してトランスミッタ信号を送信し、結果信号を受信する機能を備えている。例えば、センサモジュール(160)は、検知素子に結合されたセンサ回路部を備えることがある。センサモジュール(160)は、例えば、トランスミッタモジュールとレシーバモジュールとを備えることがある。トランスミッタモジュールは、検知素子のうちの送信する一部に結合されるトランスミッタ回路部を備えることがある。レシーバモジュールは、検知素子のうちの受信する一部に結合されるレシーバ回路部を備えることがあり、結果信号を受信する機能を備えることがある。センサモジュール(160)のレシーバモジュールは、例えばトランスミッタモジュールによって生成された検知周波数を有する容量検知信号を用いて電極パターン内のセンサ電極から結果信号を受信することがある。結果信号は、例えばアクティブペンデータや、入力物体が電極パターンの近傍にあることによって生じた信号成分のような所望の信号と、例えばノイズや干渉のような不所望な信号とを含むことがある。以下により詳細に説明するように、センサモジュール(160)は、結果信号に対して一以上の復調動作を行うことがある。
【0036】
図1は判定モジュール(150)とセンサモジュール(160)とを図示しているが、一以上の実施形態によれば、代替又は追加のモジュールが存在し得る。そのような代替又は追加のモジュールは、上記で議論したモジュールの一以上とは別のモジュール又はサブモジュールに対応し得る。代替又は追加のモジュールの例としては、例えばセンサ電極及び表示スクリーン(155)のようなハードウェアを動作させるためのハードウェア動作モジュール、例えばセンサ信号及び位置情報のようなデータを処理するためのデータ処理モジュール、情報を報告するための報告モジュール、例えばモード変更ジェスチャーのようなジェスチャーを識別するように構成された識別モジュール、及び、動作モードを変更するためのモード変更モジュールとが挙げられる。更に、様々なモジュールが別々の集積回路において組み合わせられ得る。例えば、第1モジュールが少なくとも部分的に第1集積回路に含まれることがあり、別のモジュールが少なくとも部分的に第2集積回路に含まれることがある。更に、単一のモジュールの複数の部分が、複数の集積回路に及んでいることがある。実施形態によっては、処理システムが、全体として、様々なモジュールの動作を実行することがある。
【0037】
実施形態によっては、処理システム(110)が直接に一以上のアクションを起こすことによって検知領域(120)内のユーザ入力(又はユーザ入力の欠如)に応答するものがある。アクションの例としては、動作モードの変更と共に、例えばカーソルの移動、選択、メニューナビゲーション、その他の機能のようなグラフィカルユーザインタフェース(GUI)アクションが挙げられる。実施形態によっては、処理システム(110)が、電子システムのある部分に(例えば、もし、処理システム(110)から分離された、電子システムの中央処理システムが存在するのであれば、そのような中央処理システムに)入力(又は入力の欠如)に関する情報を提供するものがある。実施形態によっては、電子システムのある部分が、例えばモード変更アクションやGUIアクションのようなアクション全般を容易化するためにユーザ入力に従って動作するように処理システム(110)から受け取った情報を処理するものがある。
【0038】
実施形態によっては、入力デバイス(100)が、タッチスクリーンインタフェースと、表示スクリーン(155)のアクティブ領域の少なくとも一部と重なる検知領域(120)とを備えるものがる。例えば、入力デバイス(100)が表示スクリーンに重なる実質的に透明なセンサ電極を備えており、関連する電子システムにタッチスクリーンインタフェースを提供することがある。表示スクリーンは、視覚的インタフェースをユーザに表示することができる任意の種類の動的ディスプレイであってもよく、任意の種類の発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマ、有機ルミネッセンス(EL)又は他の表示技術を備えることがある。入力デバイス(100)と表示スクリーン(155)とは、物理的要素を共有することがある。例えば、実施形態によっては、表示と検知とに同一の電気的コンポーネントの一部を使用するものがある。様々な実施形態において、表示デバイスの一以上の表示電極が、表示更新と入力検知の両方を行うように構成され得る。他の例としては、表示スクリーン(155)は、部分的に、又は、全面的に、処理システム(110)によって作動され得る。
【0039】
図1はコンポーネントの構成を図示しているが、本開示の範囲から乖離することなく他の構成が使用され得る。例えば、様々なコンポーネントが単一のコンポーネントを生成するために組み合わされ得る。他の例としては、単一のコンポーネントで実行される機能が、2以上のコンポーネントによって実行され得る。更に、タッチ検知のための構成が説明されているが、例えば力のような他の変量が検知され得る。
【0040】
図2は、一以上の実施形態による検知構成(200)を図示している。検知構成(200)は、検知領域(120)内のセンサ電極の配置に依拠している。トランスミッタ(Tx)電極(220)とレシーバ(Rx)電極(230)とが、検知領域(120)に設けられることがある。図2の例では、Tx電極(220)が、列に配置された、細長い矩形構造である一方で、Rx電極(230)が、行に配置された細長い矩形構造である。一般に、任意の形状のTx及びRx電極が使用され得る。
【0041】
一以上の実施形態では、Tx電極(220)とRx電極(230)とが、共に、相互容量又はトランス容量検知を実施する。Tx電極(220)とRx電極(230)との交差部において、局所的な容量カップリングが、Tx電極(220)の一部分とRx電極(230)との間で形成される。この局所的な容量カップリングの領域は、「容量ピクセル」と称されることがあり、また、本明細書において検知素子(225)ということもある。トランス容量Ctは、検知素子(225)に関連している。入力物体(図示されない)が検知素子(225)に近づくと、トランス容量Ctが、量ΔCtだけ変化することがある。従って、入力物体の存在又は不存在が、ΔCtを監視することによって検出されることがある。ΔCtは、Tx電極(220)にトランスミッタ信号(222)を印加し、Rx電極(230)から結果信号(232)を受け取ることによって測定されることがある。結果信号は、入力物体の存在又は不存在により、トランスミッタ信号とΔCtの関数となる。ΔCtは、例えば検知領域(120)全体に渡る容量イメージを生成するために複数の検知素子について取得され得る。
【0042】
一以上の実施形態では、複数のTx電極(220)が同時に駆動される。図2の例では、3つのTx電極が、同時に、トランスミッタ信号TXF1、TXF2及びTXF3(222)で駆動されると、Rx電極Rx1…RXn(230)のそれぞれ上の結果信号(232)は、TXF1、TXF2及びTXF3による影響を受けるであろう。結果信号(232)のそれぞれは、従って、3つの検知素子(225)の近傍における入力物体の存在又は不存在に関する情報を有し得る。
【0043】
図3を参照して説明されるように、3つの検知素子(225)のそれぞれについて別々に検知信号が得られるように、復調が行われ得る。説明される動作は、Rx電極RX1…RXn(230)上の結果信号(232)のそれぞれについて行われ得る。その後、完全な容量イメージを得るために、該動作は、同じTXF1、TXF2及びTXF3を用いて他の3つのTx電極の組について繰り返されることがある。この繰り返しは、全てのTx電極(220)が駆動されるまで継続されることがある。Tx電極(220)を駆動する目的で、Tx電極が、周波数領域によってグループ化されることがある。図2の例における同時駆動に3つの周波数を使用することに基づき、検知構成(200)は、3つの周波数領域(242、244及び246)を備えている。
【0044】
3つの周波数領域(242、244、246)のそれぞれは、同数の、又は同一に近い数のTx電極を備えている。例えば、検知構成(200)が60個のTx電極を備えている場合、周波数領域(242、244、246)のそれぞれが20個のTx電極を備えていてもよい。各グループから1つのTx電極が同時駆動のために選択されることがある。例えば、図2に図示されているように、周波数領域(242、244、246)それぞれの最も左のTx電極が同時駆動のために選択される。次に、周波数領域(242、244、246)それぞれのすぐ隣のTx電極が同時駆動のために選択されることがある。3つ全ての周波数領域(242、244、246)における全てのTx電極(220)が一度駆動され、対応する結果信号(232)がRx電極(230)上で受信されると完全な容量イメージが得られることがある。
【0045】
一以上の実施形態では、複数のTx電極(220)が同時に駆動される。図2の例において、周波数1領域(242)内の複数のTx電極が、周波数2領域(244)内の複数のTx電極と同時に、そして周波数3領域(246)内の複数のTx電極と同時に駆動されるとしよう。周波数1領域(242)内の同時に駆動されるTx電極は、第1の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよく、周波数2領域(244)内の同時に駆動されるTx電極は、第2の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよく、周波数3領域(246)内の同時に駆動されるTx電極は、第3の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよい。トランスミッタ信号の周波数が、(図3を参照して下記で議論する)ある直交原理を満足するように選択される場合、干渉無しに又は干渉を最小にしながら、異なる周波数領域について信号処理が別々に実施されることがある。個別の検知素子(225)におけるタッチの位置特定を可能にするために、下記の例で説明するように、トランスミッタ信号(222)のバーストを用いて繰り返し駆動が行われることがある。本例において、一つの周波数領域(242、244、246)あたり、20個のTx電極(220)、即ち、3周波数領域を仮定して全部で60個のTx電極が存在するとしよう。従って、本例では、20個のTx電極と交差する一つのRx電極当たり、一つの周波数領域当たり、20個の検知素子(225)が存在する。20個の検知素子(225)のそれぞれにおけるタッチの存在又は不存在を評価することができるように、当該20個のTx電極は、20の未知数を有する連立方程式の唯一の解を可能にする20個の一連のバーストを有するバーストパターンを用いて、順に、20回、同時に駆動される。検知領域内で使用されるトランスミッタ信号の周波数がバーストパターン全体について同一であり得る一方で、バーストパターン内で、一連のバーストに渡り、及び、駆動されているTx電極に渡り、トランスミッタ信号の位相が相違されることがある。全20個のTx電極上の20バーストに応答して単一のRx電極上で得られる結果信号(232)を処理することにより、検知素子のそれぞれについてΔCtが決定されることがある。同じ動作が、全てのRx電極(230)上の全ての結果信号(232)について同時に実施されることがある。同じ動作が、更に、他の周波数領域内において同時に実施されることがある。従って、3周波数領域を備える当該例においては、全部で60個のTx電極が、それぞれトランスミッタ信号の一連の20バーストで、同時に駆動されることがある。
【0046】
図2の例では、Tx電極(220)の同時駆動により、他のパラメータが調整されないと仮定すると、完全な容量イメージを得るために必要な時間を3分の1に短縮することができる。例えば、60個のTx電極を備える17インチタッチスクリーンについて必要なフレームレートが240fpsであると仮定すると、トランスミッタ信号の1バーストでTx電極を駆動するために利用可能な時間は、1/(240×60)=70μsに制限されるであろう。これは、ノイズ耐性を低下させ得る。これに対して、3つの周波数領域に渡ってTx電極のセットを同時に駆動する場合には、1バースト当たり、Tx電極を駆動するために利用可能な時間は1/(240×20)=210μsになるであろう。これにより、フレームレートを減少させずに優れたノイズ耐性を提供し得る。同じことが、より小さいタッチスクリーンを一層高いフレームレート、例えば480fpx又は600fpsで動作させる場合にも成り立つことがある。
【0047】
図2が特定の検知構成を図示しており、当該例が、特定のタッチスクリーンシナリオを説明している一方で、本開示の実施形態は、多くの異なる構成と共に使用され得る。例えば、本開示の実施形態は、異なる種類の電極配置を使用することがあり、より少ない又はより多いTx電極を同時に駆動することがあり、より大きい又はより小さい検知領域を対象とする等の場合がある。図2は、3つのTx電極(220)のセットを同時に駆動するために特定の順序を示唆しているが、本開示から乖離せずに、Tx電極を駆動するのに任意の順序が使用され得る。更に、図2は、周波数領域(242、244、246)の特定の構成を図示しているが、周波数領域は、異なる構成であってもよい。例えば、周波数領域は、連続したものである必要はなく、同一数のTx電極が、ランダムに周波数領域に割り当てられる等してもよい。
【0048】
図3は、一以上の実施形態による処理構成(300)を図示している。処理構成(300)は、図2の検知構成(200)と共に使用されてもよい。具体的には、図3に図示されている例では、3つの異なる周波数のトランスミッタ信号が同時に放射されて(例えば図2に図示されるような)Tx電極(220)を駆動する。図3は、Rx電極(230)のうちの一つで得られる結果信号(332)の処理を図示している。複数のRx電極上の複数の結果信号を処理するために、処理構成(300)が、複数倍、並行で動作するように実装され得る。例えば、n個のRx電極について、図3に図示されているコンポーネントがn倍実装されてもよい。
【0049】
処理実装(300)は、アナログフロントエンド(340)とデジタル処理ブロック(360)とを備えている。アナログフロントエンド(340)は、電荷積分器(342)とアナログ-デジタルコンバータ(ADC)(344)とを備えることがある。デジタル処理ブロック(360)は、一組の復調器(362)を実施する演算を含むことがある。図示された例では、デジタル的に実装された一組の復調器(362)が、アナログフロントエンド(340)によって得られた結果信号(332)を復調して検知信号(364)を生成する。検知信号(364)は、3つの検知素子(225)におけるトランス容量についての測定値を提供することがあり、従って、入力物体(図示されない)の存在又は不存在を示していることがある。タッチ検知を実行するために、追加の下流の演算が検知信号(364)に対して行われることがある。以下で詳細な説明を行う。
【0050】
一以上の実施形態では、一組のトランスミッタ電極(230)を同時に駆動するためのトランスミッタ信号が、異なる周波数を有している。より具体的には、同時に駆動されるトランスミッタ電極のそれぞれが、一つの固有の周波数のトランスミッタ信号(322)で駆動される。一以上の実施形態において、同時駆動に使用されるトランスミッタ信号(322)が直交している。一以上の実施形態において、同時駆動に使用されるトランスミッタ信号(322)は、図3に図示されているように、副搬送波の直交周波数分割多重化(OFDM)スペクトルから選択される。図3は、11の副搬送波を有するOFDMスペクトルの例を図示している。副搬送波のいずれかが、副搬送波の直交性によって使用され得る。例えば、ωの副搬送波と、直ぐ左及び右にある副搬送波とが、3つの異なる周波数を有するトランスミッタ信号(322)を取得するために選択され得る。次に、トランスミッタ信号(322)のバーストが検知領域(120)内のTx電極(220)を同時に駆動するために使用され得る。3つの周波数のうちの第1の周波数が、周波数1領域(242)内のTx電極を駆動するために使用されることがあり、該3つの周波数のうちの第2の周波数が、周波数2領域(244)内のTx電極を駆動するために使用されることがあり、該3つの周波数のうちの第3の周波数が、周波数3領域(246)内のTx電極を駆動するために使用されることがある。一つの周波数領域では単一の周波数が使用されることがあるが、該周波数領域内のトランスミッタ信号の位相は、電極間で、及び/又は、トランスミッタ信号の一連のバーストの間で相違され得る。一実施形態では、Tx電極の駆動のためにトランスミッタ信号と反転されたトランスミッタとを使用するために位相が180°だけ変化されることがある。任意の他の位相変化が、本開示から乖離せずに使用され得る。
【0051】
単一の結果信号RXF1、F2、F3(332)が、更なる処理のために一つのRx電極(232)から得られることがある。結果信号RXF1、F2、F3(332)は、3つの異なる周波数と異なる位相を有するトランスミッタ信号で駆動されたTx電極に対応する全ての検知素子(225)で放射されるトランスミッタ信号(322)の効果を含むことがある。図5に例が提示されている。結果信号RXF1、F2、F3(332)は、更に、検知素子(225)における入力物体の存在又は不存在の効果を含むことがある。
【0052】
電荷積分器(342)は、結果信号RXF1、F2、F3(332)を受け取り、ある積分期間に渡って結果信号RXF1、F2、F3(332)を積分することがある。ADC(344)は、積分後の結果信号RXF1、F2、F3(332)を受け取り、アナログ-デジタル変換を行う。ADCの追加の議論が下記に説明されている。
【0053】
ADCの出力は、デジタル的に実装される一組の復調器(362)に提供される。一以上の実施形態において、復調器(362)は、検知信号(364)を生成するように構成されている。一以上の実施形態において、復調器(362)は、該3つのトランスミッタ信号(322)の固有な周波数のそれぞれに特化した同相(I)復調及び直交(Q)復調のための復調器を備えている。言い換えれば、図3に図示されているように、3つのI/Q復調を実行するように構成された6つの復調器(3つのI復調器と3つのQ復調器)が存在し得る。6つの復調器のそれぞれは、検知信号のI成分及びQ成分を生成するために、乗算器演算と窓処理演算とを含んでいることがある。乗算器は、該乗算器の入力(即ち、積分され、アナログ-デジタル変換された結果信号RXF1、F2、F3(332))を復調波形で乗算して復調を行うことがある。窓処理演算は、例えば(乗算器演算から得られる)ミキサー結果の加重平均のような低域通過フィルタリングを行うことがある。復調波形は、トランスミッタ信号(322)に基づいていることがある。
【0054】
具体的には、乗算器のそれぞれに3つのトランスミッタ信号(322)のうちの1つのコピーが提供され、提供されたトランスミッタ信号の周波数での復調を実施させることがある。従って、復調器(362)は、組み合わせて、該3つの周波数それぞれでの符号分割多重化(CDM)復号化を実行して3つの検知素子(225)に対応する検知信号(364)を分離する。ある検知素子に対応する検知信号の復調後のI成分及びQ成分は、起こり得る位相シフトが存在してもなお、許容可能な程度に正確な検知信号を得るために組み合わされ得る。
【0055】
このIQ複合復調を使用すると、積分され、アナログ-デジタル変換された結果信号RXF1、F2、F3(332)と復調波形との間の正確な位相整合は、復調を実施するために必ずしも必要ではない。その結果、ADC(344)は比較的低速でよく、例えば、トランスミッタ信号周波数の3から5倍のスピードであってもよい。これにより位相オフセットが導入され得るが、位相オフセットはIQ複合復調の使用によって緩和される。低速のADCの使用は、電力消費及びコストを低減する一方で、追加のQ復調器は、デジタル的に実装されるために、無視可能な追加コスト及び電力にしか関連していない。したがって、デジタルI/Q復調と復調前のアナログ-デジタル変換を用いる上述の構成は、費用対効果が高く、エネルギー効率が良い。デジタルI/Q復調を説明したが、本開示から乖離することなく、アナログI/Q復調を行い、その後にアナログ-デジタル変換を行ってもよい。
【0056】
一実施形態では、(Q復調器を使用せずに)I復調器のみが使用されて復調を実行する。I復調器のみを使用して完全ではないが満足のいく程度には正確な位相整合を得るために、より高速なADC(344)が、起こり得る位相オフセットを低減するために使用され得る。例えば、ADCは、トランスミッタ信号周波数のスピードの少なくとも16倍で動作することがある。
【0057】
図3は特定の処理構成を図示しているが、本開示から乖離せずに他の構成が使用され得る。例えば、図3は、3つの固有の周波数を有するトランスミッタ信号を用いる3つのTx電極の同時駆動を図示しているが、任意の数のTx電極が同時に駆動され得る。更に、図3は、3つのRx電極から得られる単一の結果信号の処理のための処理構成を図示しているが、図示されているようなアナログ及びデジタル処理コンポーネントが、追加の結果信号を処理するために複数使用されてもよい。
【0058】
図4は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。図4の一以上のステップが、図1図2及び図3を参照して上記で議論したコンポーネントによって実施され得る。このフローチャートの様々なステップが順次に提示されて説明されるが、当業者は、ブロックの少なくとも一部が異なる順序で実行されることがあり、組み合わされ、又は、省略されることがあり、ブロックのいくつかが並行して実施され得ることがあると理解するであろう。追加のステップが更に実施されてもよい。従って、開示の範囲は、図4のステップの特定の配置に限定されると考えるべきではない。
【0059】
図4のフローチャートは、一以上の実施形態によるマルチ周波数領域タッチ検知のための方法(400)を示している。
【0060】
ステップ402において、一組のTx電極が、固有の周波数を有する複数のトランスミッタ信号を用いて同時に駆動される。任意の数のTx電極が同時に駆動され得る。追加の詳細は、図2及び図3を参照して説明されている。
【0061】
ステップ404において、結果信号がRx電極上で得られる。ステップ404は、ステップ402と並行して実行され得る。更に、ステップ404は、複数のRx電極について同時に実行され得る。Rx電極で受信された結果信号は、Rx電極に結合される複数のトランスミッタ信号による影響を受ける。Rx電極がTx電極に空間的に近接している場所で(例えば、Tx電極がRx電極に交差する検知素子において)カップリングが発生する。容量カップリングは入力物体の存在又は不存在によって影響を受けるので、結果信号も、検知素子の近傍での入力物体の存在又は不存在によって影響を受ける。
【0062】
ステップ406において、結果信号が、一組の検知信号を生成するように復調される。特定の周波数を有するトランスミッタ信号を用いて駆動された一以上のTx電極のそれぞれについて一つの結果信号が得られることがある。I復調とQ復調の両方が実施される場合、結果として得られる検知信号のI成分及びQ成分が処理されて検知信号の振幅及び/又は位相を決定することがある。追加の詳細は、図2及び図3を参照して説明されている。復調の前に追加のステップが実施され得る。例えば、結果信号は、上述のように、積分され、及び/又は、アナログ-デジタル変換されることがある。個々の検知素子に特有な検知信号の解は、トランスミッタ信号の複数のバーストに渡って検知信号の値を求めることによって得られることがある。例えば、20個の検知素子を含む構成については20バーストが使用されると、唯一の解が得られることがある。ステップ404が複数のRx電極について実施される場合、ステップ406も、複数のRx電極に対応する結果信号のそれぞれを復調するために複数回実施されることがある。
【0063】
上述のステップは繰り返されることがある。例えば、ステップ402~406は、図2及び図3を参照して前述したように、周波数領域内のTx電極から選択されたTx電極の異なるセットを駆動する間に繰り返されてもよい。容量イメージの完全なセットの検知素子に対応する検知信号を伴う容量イメージは、検知領域内の全てのTx電極についてステップ402~406を実行した後で利用可能になり得る。
【0064】
ステップ408において、タッチ検知が、検知信号を用いて実行され得る。タッチ検知では、以前に決定されたベースライン値と対照して検知信号を評価することがある。検知信号が少なくとも一定量だけベースラインから外れている場合、該検知信号に対応する検知素子の近傍に入力物体が存在すると考えられる場合がある。ステップ408は、容量イメージの検知素子に対応する一部の又は全部の検知信号に対して実施され得る。
【0065】
経時的にタッチ検知を実施するために、ステップ402~408は、例えば周期的に繰り返されてもよい。
【0066】
図5は、一以上の実施形態によるサンプルデータ(500)を図示している。該サンプルは、3つの固有の周波数を有する3つのトランスミッタ信号を用いて同時に駆動される3つのTx電極についてのものである。該3つの周波数は、100kHz、109.9kHz及び119.8kHzである。該3つの周波数は、(例えば、図3に図示されているような)OFDMスペクトルから選択されている。
【0067】
Rx電極での結果信号が、時間ドメイン(502)に図示されている。該結果信号は、周波数ドメイン(504)にも図示されている。(トランスミッタ信号の単一バーストに適用されるFFTを用いて得られる)周波数スペクトルの解像度は、3つのTx周波数を区別するには十分でないが、3つのトランスミッタ信号による寄与は、明確に識別可能である。50kHzにおけるノイズ信号による寄与も更に可視化されている。
【0068】
本開示の実施形態は、様々な利点を有している。異なる周波数を有して同時に放射されるトランスミッタ信号を使用することにより、ノイズ耐性を落とすことなく相対的に高いフレームレートを用いて広い検知領域に渡るタッチ検知が可能になる。具体的には、本開示の実施形態によれば、複数のトランスミッタ電極が異なる周波数で同時に駆動されることがあるため、放射されるトランスミッタ信号のバーストを短くすることなく、高いフレームレートで、(より大きなタッチスクリーンのために必要であり得る)多数のTx電極を駆動することが可能になる。提案されているようなバースト長を使用する場合、高程度のノイズ耐性が達成される。更に、本開示の実施形態によれば、タイミングを大きく変更することなく、(例えば、ノイズ測定、絶対容量検知等のために)他のバーストの追加が可能になる。例えば、1フレーム当たり20バーストを必要とする例では、バーストを追加してフレームを完結するために必要な時間が、5%だけ増加するであろう。本開示の実施形態は、相対的に遅いACDが使用されてもよく、また、多くの復調演算が標準的なDSPを用いてデジタル的に実施され得るので、費用対効果が高く、エネルギー効率が良い。本開示の実施形態は、また、多くの高調波を含む波形に基づくトランスミッタ信号の使用を可能にする。例えば、正弦波の使用と比較して、例えば、トランジスタの積層を用いて高電圧を比較的容易に生成でき、(なぜなら、1Vの方形波について、基本波形の振幅が1.27Vであるため)低い伝送電力しか用いずに動作可能であるというような複数の利点を有し得る台形波が使用され得る。
【0069】
一以上の実施形態において、非正弦波のトランスミッタ信号が、検知電極の同時駆動のために使用される。非正弦波のトランスミッタ信号の使用は、様々な利点があるが、高調波の放射に繋がり得る。一以上の実施形態は、高調波の存在に起因し得る干渉を緩和する。詳細な説明を以下に提示する。
【0070】
図6Aは、一以上の実施形態による検知構成(600)を図示している。検知構成(600)は、検知領域(120)内のセンサ電極の配置に依拠している。トランスミッタ(Tx)電極(620)とレシーバ(Rx)電極(630)とが検知領域(120)内に設けられることがある。図6Aの例では、Tx電極(620)が列に配置された細長い矩形構造であり、Rx電極(630)が、行に配置された細長い矩形構造である。一般に、任意の形状のTx電極及びRx電極が使用され得る。
【0071】
一以上の実施形態では、Tx電極(620)とRx電極(630)とが、共に、相互容量又はトランス容量検知を実施する。Tx電極(620)とRx電極(630)との交差部において、局所的な容量カップリングがTx電極(620)の一部分とRx電極(630)との間で形成される。この局所的な容量カップリングの領域は、「容量ピクセル」と称されることがあり、また、本明細書において検知素子(625)ということもある。トランス容量Ctは、検知素子(625)に関連している。入力物体(図示されない)が検知素子(625)に近づくと、トランス容量Ctが、量ΔCtだけ変化することがある。従って、入力物体の存在又は不存在が、ΔCtを監視することによって検出されることがある。ΔCtは、Tx電極(620)にトランスミッタ信号(622)を印加し、Rx電極(630)から結果信号(632)を受信することによって測定されることがある。結果信号は、入力物体の存在又は不存在により、トランスミッタ信号とΔCtの関数となる。ΔCtは、例えば検知領域(120)全体に渡る容量イメージを生成するために複数の検知素子について取得され得る。
【0072】
一以上の実施形態では、複数のTx電極(620)が同時に駆動される。図6Aの例では、3つのTx電極がトランスミッタ信号TXF1、TXF2及びTXF3(622)で同時に駆動されると、各Rx電極Rx1…RXn(630)上の結果信号(632)がTXF1、TXF2及びTXF3による影響を受けるであろう。結果信号(632)のそれぞれは、従って、3つの検知素子(625)の近傍における入力物体の存在又は不存在に関する情報を有し得る。
【0073】
図7を参照して説明されるように、3つの検知素子(625)のそれぞれについて別々に検知信号が得られるように、復調が行われ得る。説明される動作は、Rx電極RX1…RXn(630)上の結果信号(632)のそれぞれについて行われ得る。その後、完全な容量イメージを得るために、該動作は、同じTXF1、TXF2及びTXF3を用いて3つのTx電極の他のセットについて繰り返されることがある。この繰り返しは、全てのTx電極(620)が駆動されるまで継続されることがある。Tx電極(620)を駆動する目的で、Tx電極が、周波数領域によってグループ化されることがある。図6Aの例における同時駆動についての3つの周波数の使用に基づき、検知構成(600)は、3つの周波数領域(642、644及び646)を備えている。
【0074】
3つの周波数領域(642、644、646)のそれぞれは、同数の、又は同一に近い数のTx電極を備えている。例えば、検知構成(600)が60個のTx電極を備えている場合、周波数領域(642、644、646)のそれぞれが20個のTx電極を備えていてもよい。各グループから1つのTx電極が同時駆動のために選択され得る。例えば、図6Aに図示されているように、周波数領域(642、644、646)のそれぞれの最も左のTx電極が同時駆動のために選択される。次に、周波数領域(642、644、646)のそれぞれのすぐ隣のTx電極が同時駆動のために選択されることがある。3つ全ての周波数領域(642、644、646)の全てのTx電極(620)が一度駆動され、対応する結果信号(632)がRx電極(630)上で受信されると完全な容量イメージが得られることがある。
【0075】
一以上の実施形態では、複数のTx電極(620)が同時に駆動される。図6Aの例において、周波数1領域(642)内の複数のTx電極が、周波数2領域(644)内の複数のTx電極と同時に、そして周波数3領域(646)内の複数のTx電極と同時に駆動されるとしよう。周波数1領域(642)内の同時に駆動されるTx電極は、第1の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよく、周波数2領域(644)内の同時に駆動されるTx電極は、第2の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよく、周波数3領域(646)内の同時に駆動されるTx電極は、第3の周波数を有するトランスミッタ信号で駆動されてもよい。トランスミッタ信号の周波数が、(図7を参照して下記で議論する)ある直交原理を満足するように選択される場合、干渉無しに又は干渉を最小にしながら、異なる周波数領域について信号処理が別々に実施されることがある。個別の検知素子(625)におけるタッチの位置特定を可能にするために、下記の例で説明するように、トランスミッタ信号(622)のバーストを用いて繰り返し駆動が行われることがある。本例において、一つの周波数領域(642、644、646)あたり20個のTx電極(620)、即ち、3周波数領域を仮定して全部で60個のTx電極が存在するとしよう。従って、本例では、20個のTx電極と交差する一つのRx電極当たり、一つの周波数領域当たり、20個の検知素子(625)が存在する。20個の検知素子(625)のそれぞれでのタッチの存在又は不存在を評価することができるように、当該20個のTx電極は、20の未知数を有する連立方程式の唯一の解を可能にする20個の一連のバーストのバーストパターンを用いて、順に、20回、同時に駆動される。検知領域内で使用されるトランスミッタ信号の周波数がバーストパターン全体について同一であり得る一方で、バーストパターン内で、一連のバーストに渡り、及び、駆動されるTx電極に渡り、トランスミッタ信号の位相が相違されることがある。全20個のTx電極上の20バーストに応答して単一のRx電極上で得られる結果信号(632)を処理することにより、検知素子のそれぞれについてΔCtが決定されることがある。同じ動作が、全てのRx電極(630)上の全ての結果信号(632)について同時に実施されることがある。同じ動作が、更に、他の周波数領域内において同時に実施されることがある。従って、3周波数領域を備える当該例においては、全部で60個のTx電極が、それぞれトランスミッタ信号の一連の20バーストで同時に駆動されることがある。
【0076】
図6Aの例では、Tx電極(620)の同時駆動により、他のパラメータが調整されないと仮定すると、完全な容量イメージを得るために必要な時間を3分の1に短縮することができる。例えば、60個のTx電極を備える17インチタッチスクリーンについて必要なフレームレートが240fpsであると仮定すると、トランスミッタ信号の1バーストでTx電極を駆動するために利用可能な時間は、1/(240×60)=70μsに制限されるであろう。これは、ノイズ耐性を低下させ得る。これに対して、3つの周波数領域に渡ってTx電極のセットを同時に駆動する場合には、1バースト当たり、Tx電極を駆動するために利用可能な時間は1/(240×20)=210μsになるであろう。これにより、フレームレートを減少させずに優れたノイズ耐性を提供し得る。同じことが、より小さいタッチスクリーンを一層高いフレームレート、例えば480fps又は600fpsで作動させる場合にも成り立つことがある。
【0077】
図6Bは、一以上の実施形態による、検知構成(650)を図示している。Tx電極(620)及びRx電極(630)の配置を含む、検知構成の物理的構成は、図6Aを参照して説明した通りであり得る。
【0078】
一以上の実施形態では、複数のTx電極(620)が同時に駆動される。図6Bの例では、n個のTx電極が、同時に、トランスミッタ信号TXF1…TXFn(652)で駆動される。該n個のTx電極は、検知領域(120)内の全Tx電極のサブセットを含むことがあり、又は、検知領域内のTx電極の全てを含むことがある。従って、各Rx電極Rx1…RXn(630)上の結果信号(662)は、TXF1…TXFnによる影響を受けるであろう。結果信号(662)のそれぞれは、従って、検知素子(655)の近傍における入力物体の存在又は不存在に関する情報を有し得る。n個の検知素子(655)のそれぞれについてタッチの位置特定が可能であるように、TXF1…TXFn(652)は、互いに直交であるように選択されることがある。上述された動作は、Rx電極Rx1…RXn(630)上の結果信号(662)のそれぞれについて実施され得る。
【0079】
図6Aを参照して前述したように、図6Bの例では、Tx電極(620)の同時駆動により、完全な容量イメージを得るために必要な時間を低減できる。低減の程度は、例えば、幾つのTx電極が同時に駆動されるか、Tx電極を駆動するために使用されるバーストパターン等、様々な要因に依存し得る。
【0080】
図6A及び図6Bが、個別の検知構成を図示し、当該例は、特定のタッチスクリーンシナリオを説明しているが、本開示の実施形態は、多くの異なる構成と共に使用され得る。例えば、本開示の実施形態は、異なる種類の電極配置を使用することがあり、より少ない又はより多いTx電極を同時に駆動することがあり、より大きい又はより小さい検知領域を対象とする等の場合がある。
【0081】
図7は、一以上の実施形態による処理構成(700)を図示している。処理構成(700)は、図6Aの検知構成(600)と共に使用されてもよい。(追加の復調器を備える)修正された処理構成が、図6Bの検知構成(650)と共に使用され得る。具体的には、図7に図示されている例では、3つの異なる周波数を有するトランスミッタ信号(722)が同時に放射されて(例えば図6Aに図示されるような)Tx電極(620)を駆動する。トランスミッタ信号(722)の性質を以下で議論する。図7は、Rx電極(630)のうちの一つで得られる結果信号(732)の処理を図示している。複数のRx電極上の複数の結果信号を処理するために、処理構成(700)が、複数倍、並行で動作するように実装され得る。例えば、n個のRx電極について、図7に図示されているコンポーネントがn倍実装されてもよい。
【0082】
処理実装(700)は、アナログフロントエンド(740)とデジタル処理ブロック(760)とを備えている。アナログフロントエンド(740)は、電荷積分器(742)とアナログ-デジタルコンバータ(ADC)(744)とを備えることがある。デジタル処理ブロック(760)は、一組の復調器(762)を実施する演算を含むことがある。図示された例では、デジタル的に実装された一組の復調器(762)が、アナログフロントエンド(740)によって得られた結果信号(732)を復調して検知信号(764)を生成する。検知信号(764)は、3つの検知素子(625)におけるトランス容量についての測定値を提供することがあり、従って、入力物体(図示されない)の存在又は不存在を示していることがある。タッチ検知を実行するために、追加の下流の演算が検知信号(764)に対して行われることがある。以下で詳細な説明を行う。
【0083】
同時に駆動されるトランスミッタ電極のそれぞれが、一つの固有の周波数を有する非正弦波トランスミッタ信号(722)によって(例えば、固有の基本周波数を有する台形又は方形波形を用いて)駆動される。一以上の実施形態において、同時駆動に使用される非正弦波トランスミッタ信号(722)が直交している。図6Aを参照して、非正弦波トランスミッタ信号のバーストが、検知領域(120)内のTx電極(620)を同時に駆動するために使用され得る。3つの周波数のうちの第1の周波数が、周波数1領域(642)内のTx電極を駆動するために使用されることがあり、該3つの周波数のうちの第2の周波数が、周波数2領域(644)内のTx電極を駆動するために使用されることがあり、該3つの周波数のうちの第3の周波数が、周波数3領域(646)内のTx電極を駆動するために使用されることがある。一つの周波数領域では単一の周波数のみが使用されることがあるが、該周波数領域内の非正弦波トランスミッタ信号の位相は、電極間で、及び/又は、非正弦波トランスミッタ信号の一連のバーストの間で相違され得る。一実施形態では、Tx電極の駆動のために非正弦波トランスミッタ信号と反転非正弦波トランスミッタとを使用するために位相が180°だけ変化されることがある。任意の他の位相変化が、本開示から乖離せずに使用され得る。
【0084】
単一の結果信号RXF1、F2、F3(732)が、更なる処理のために一つのRx電極(632)から得られることがある。結果信号RXF1、F2、F3(732)は、3つの異なる基本周波数と異なる位相とを有する非正弦波トランスミッタ信号で駆動されるTx電極に対応する全ての検知素子(625)で放射される非正弦波トランスミッタ信号(722)の効果を含むことがある。結果信号RXF1、F2、F3(732)は、更に、検知素子(625)における入力物体の存在又は不存在の効果を含むことがある。
【0085】
電荷積分器(742)は、結果信号RXF1、F2、F3(732)を受け取り、ある積分期間に渡って結果信号RXF1、F2、F3(732)を積分することがある。ADC(744)は、積分後の結果信号RXF1、F2、F3(332)を受け取り、アナログ-デジタル変換を行う。
【0086】
ADCの出力は、デジタル的に実装される一組の復調器(762)に提供される。一以上の実施形態において、復調器(762)は、検知信号(764)を生成するように構成されている。一以上の実施形態において、復調器(762)は、該3つの非正弦波トランスミッタ信号(722)の固有の周波数のそれぞれに特化した同相(I)復調及び直交(Q)復調のための復調器を備えている。言い換えれば、図7に図示されているように、3つのI/Q復調を実行するように構成された6つの復調器(3つのI復調器と3つのQ復調器)が存在し得る。6つの復調器のそれぞれは、検知信号のI成分及びQ成分を生成するために、乗算器演算と窓処理演算とを含んでいることがある。乗算器は、該乗算器の入力(即ち、積分され、アナログ-デジタル変換された結果信号RXF1、F2、F3(732))を復調波形で乗算して復調を行う。窓処理演算は、例えば(乗算演算から得られる)ミキサー結果の加重平均のような低域通過フィルタリングを行うことがある。以下に更に議論するように、窓処理演算は、他の(直交する)非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数で強く減衰させる一方で、対応する非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数における信号を通過させることがある。復調波形は、非正弦波トランスミッタ信号(722)に基づいていることがある。例えば、復調波形は、対応する非正弦波のトランスミッタ信号の基本周波数における正弦波波形であってもよい。
【0087】
従って、復調器のそれぞれは、対応する非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数で復調を行う。相まって、復調器(762)は、3つの基本周波数のそれぞれで符号分割多重化(CDM)復号化を行って3つの検知素子(625)に対応する検知信号(764)を分離する。ある検知素子に対応する検知信号の復調後のI成分及びQ成分は、起こり得る位相シフトが存在してもなお、許容可能な程度に正確な検知信号を得るために組み合わされ得る。
【0088】
このIQ複合復調を使用すると、積分され、アナログ-デジタル変換された結果信号RXF1、F2、F3(732)と復調波形の間の正確な位相整合は、復調を実施するために必ずしも必要ではない。その結果、ADC(744)は比較的低速でよく、例えば、非正弦波トランスミッタ信号周波数の基本周波数の3から5倍のスピードであってもよい。これにより位相オフセットが導入され得るが、位相オフセットはIQ複合復調の使用によって緩和される。低速のADCの使用は、電力消費及びコストを低減する一方で、追加のQ復調器は、デジタル的に実装されるために、無視可能な追加コスト及び電力にしか関連していない。したがって、デジタルI/Q復調と復調前のアナログ-デジタル変換を用いる上述の構成は、費用対効果が高く、エネルギー効率が良い。デジタルI/Q復調を説明したが、本開示から乖離することなく、アナログI/Q復調を行い、その後にアナログ-デジタル変換を行ってもよい。
【0089】
一実施形態では、復調を実行するために(Q復調器を使用せずに)I復調器のみが使用される。I復調器のみを使用して完全ではないが満足のいく程度には正確な位相整合を得るために、より高速なADC(744)が、起こり得る位相オフセットを低減するために使用され得る。例えば、ADCは、非正弦波トランスミッタ信号周波数の基本周波数のスピードの少なくとも16倍で動作することがある。
【0090】
上述のように、一以上の実施形態は、非正弦波トランスミッタ信号(722)を使用する。図7の例では、台形波形を有する単一の非正弦波トランスミッタ信号が使用され得る。任意の他の非正弦波形、例えば、方形波が、本開示から乖離することなく使用され得る。正弦波波形と比較すると、非正弦波波形は、様々な利点を有し得る。例えば、基本的な回路素子を用いて非正弦波波形を合成することは比較的容易であり得る。更に、システム電圧よりも高い振幅の非正弦波波形を生成することは比較的容易であり得る。例えば、3Vのシステム電圧を用いて9Vの振幅が達成され得る。また、非正弦波波形は、同一の公称振幅を有する正弦波波形よりも、基本周波数においてより高い信号エネルギーを有し得る。図7において、非正弦波トランスミッタ信号(722)として使用される台形波形が、時間ドメイン(左)及び周波数ドメイン(右)で図示されている。該台形波形は、100kHzの基本周波数と1Vの振幅を有している。周波数スペクトルが示すように、基本周波数での振幅は、1.254V(1.97dB)である。従って、基本周波数において、非正弦波トランスミッタ信号の同一電圧について、台形波形は正弦波波形と比較してより高い信号エネルギーを有しており、これにより、例えば低いトランスミッタ信号電圧が使用可能になり、同じ電圧を使用するときにより高い信号対雑音比を得られる等、様々な潜在的な利点を提供する。しかしながら、図7が図示しているように、台形波形のような非正弦波波形は、基本周波数と異なる高調波も含んでいる。図7に図示されている台形波の場合、3次(700kHz)、5次(100kHz)等の高調波が存在する。図7に図示されている周波数スペクトルにおいて、3次高調波の基本周波数の振幅は、基本周波数よりも10.6dB低く、5次高調波の基本周波数の振幅は、基本周波数よりも17.4dB低い等である。初めの10高調波についての全体の高調波歪みは、-9.6dBである。
【0091】
高調波の存在により、一以上の実施形態では、ADC(744)においてエイリアシングが発生する。エイリアシングの効果は、検知信号(764)の正確性に有害であり得る。この効果を、下記のシナリオに基づいて以下で説明する。非正弦波トランスミッタ信号(722)の3つの基本周波数が100kHz、109.9kHz及び119.8kHzであるとしよう。200μsのバースト長に対して基本周波数は9.9kHz間隔であり、これにより、ハニング窓を用いた(以下で議論する)復調を実行する際に直交(又は、ほぼ直交)となる。他の周波数間隔が、他の種類の窓、他のバースト長等について使用され得る。更に、ADC(744)のADCサンプリング周波数Fが500kHzに設定されるとしよう。F=500kHzでは、ナイキスト周波数は250kHzである。従って、3つ全ての非正弦波トランスミッタ信号(722)の高調波についてエイリアシングが発生する。エイリアシングの結果、一以上の実施形態において、高調波が、ADC(744)の出力において、より低い周波数でエイリアシング歪みとして現れる。
【0092】
エイリアシング歪みが現れる当該低い周波数は、シフト演算及び折り畳み演算の組み合わせで特定され得る。エイリアシングの結果、高調波が、非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数の一つ又はその近傍においてエイリアシング歪みとして現れると、誤りを含む検知信号が生じ得る。上記の例では、119.8kHzの非正弦波トランスミッタ信号の5次高調波は、5×119.8kHz=599kHzである。シフト演算及び折り畳み演算を用いてエイリアシング解析を行うと、500kHzのADCサンプリング周波数を用いる場合、5次高調波は、99kHzにおいてエイリアシング歪みとして現れる。99kHzは非正弦波トランスミッタ信号の一つの100kHzの基本周波数に近いため、100kHzで行われる復調について得られる検知信号は正確ではない。
【0093】
一以上の実施形態では、ADCサンプリング周波数Fが、基本周波数の近くでエイリアシング歪みとして現れる高調波によって生じる誤差を低減するように選択される。より具体的には、Fは、いずれの基本周波数の近傍においてもエイリアシング歪みが無いように調節される。望ましいFは、バンド間干渉(即ち、基本周波数の近傍におけるエイリアシング歪みの存在)を監視する間に、体系的にFを変化することによって選択され得る。望ましいFは、バンド間干渉が最小であるFである場合がある。バンド間干渉について、図8に図示された例を参照して以下で説明する。
【0094】
図7は、特定の処理構成を図示しているが、本開示から乖離せずに他の構成が使用され得る。例えば、図7は、3つの固有の基本周波数を有する非正弦波トランスミッタ信号を用いた3つのTx電極の同時駆動を図示しているが、任意の数のTx電極が、任意の数の非正弦波トランスミッタ信号を用いて同時に駆動され得る。更に、図7は、3つのRx電極から得られた単一の結果信号を処理するための処理構成を図示しているが、図示されるようなアナログ及びデジタル処理コンポーネントは、追加の結果信号を処理するために複数が使用され得る。
【0095】
図8は、一以上の実施形態による、バンド間干渉の分析の例を図示している。この例では、Fが、許容可能である程度に低いバンド間干渉のFを特定するために500kHz±10%の範囲で調節される。外来ノイズ(入力デバイスと異なるノイズ源に由来するノイズ)によって生じる干渉の可能性を低減するために、分析される周波数の範囲は(この例では±10%に)制限されている。外来ノイズは、例えば電源、表示デバイスのような様々なコンポーネントに由来し得る。外来ノイズは、特定の周波数に集中することがあり、最初のF(500kHz)は、外来ノイズによる干渉の可能性が低いように選択されることがある。従って、限定された範囲でFを変化させることは、外来ノイズが重大な干渉を生じさせる周波数を選択する可能性を低減する。
【0096】
図8がバンド干渉プロット(802)において図示しているように、Fが450kHzから550kHzまでの周波数範囲で調節されてバンド間干渉が特定される。バンド間干渉は、第2の周波数で(A/D変換と発生し得るエイリアシングの後で)デジタル的に復調を行う間に、一以上のTx電極を第1の周波数で駆動することによって生じる干渉を示す量である。非正弦波トランスミッタ信号について100kHz、109.9kHz及び119.8kHzを使用する、以前に導入した例を参照して、エイリアシングによって下記のバンド間干渉が生じ得る。
(i) 100kHzで駆動し、109.9kHzで復調する
(ii) 100kHzで駆動し、119.8kHzで復調する
(iii)109.9kHzで駆動し、100kHzで復調する
(iv) 109.9kHzで駆動し、119.8kHzで復調する
(v) 119.8kHzで駆動し、100kHzで復調する
(vi) 119.8kHzで駆動し、109.9kHzで復調する
【0097】
これらの6つの場合のそれぞれについてのバンド間干渉が、上記の周波数範囲に渡って取得されることがある。従って、プロット(802)は、該6つの場合のそれぞれについて取得されることがある。各プロットは、バンド間干渉が許容不能な程度に高い周波数を含むことがあり、更に、バンド間干渉が許容可能な程度に低い、又は、非常に低い周波数を含むことがある。プロット(802)が示すように、当該特定のシナリオを前提とすると、バンド間干渉は、低いFについて特に高く、一方で、高いFについては、バンド間干渉が非常に低く低減される。
【0098】
バンド間干渉の概要(804)は、ワースト周波数(F=449kHz)と、ベスト周波数(F=520kHz)についての結果を要約している。ワーストケースの干渉は、非正弦波トランスミッタ信号がF2(109.9kHz)で放射される一方で復調がF3(119.8kHz)で行われる場合に21.491%であると見出されている。このバンド間干渉は、プロット(802)において顕著に見られる(最も左のピーク)。これに対し、ベスト周波数については、全ての干渉が0.02%未満にとどまっている。プロット(802)において(拡大された周波数範囲)、干渉のほぼ完全な不存在が見られる。
【0099】
最適化は、6つ全ての場合について干渉が許容可能である周波数Fを選択するように行われ得る。Fを決定する方法を、以下で議論する。図8の例は、3つの非正弦波トランスミッタ信号についてのものであるが、同様の分析が任意の数の非正弦波トランスミッタ信号について実行され得る。
【0100】
図9及び図10は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。図9及び図10におけるステップの一以上は、図1図6A図6B及び図7を参照して上記で議論したコンポーネントによって実行され得る。これらのフローチャートの様々なステップが順に提示され説明されるが、当業者は、ステップの少なくとも一部が異なる順序で実行され得ること、組み合わされ又は省略され得ること、及び、ステップの一部が並行して実行され得ると理解するであろう。追加のステップが更に実行され得る。従って、開示の範囲は、図9及び図10に図示されているステップの具体的な並びに限定されると考えるべきでない。
【0101】
図9のフローチャートは、一以上の実施形態による、マルチ周波数領域並行スキャンについてのバンド間高調波干渉の緩和のための方法(700)を示している。
【0102】
ステップ902において、ノイズ測定が行われる。ノイズは、例えば、ディスプレイ、電源などの存在し得るノイズ源が存在する、現実の動作条件の下で測定されることがある。このノイズ測定は、ノイズが多い周波数領域を、ノイズが少ない又はノイズが無い周波数領域から区別するために使用され得る。スペクトル分析が、この区別を行うために実行され得る。
【0103】
ステップ904において、ステップ902において識別されたノイズによる干渉が回避され、又は少なくとも低減されるように非正弦波トランスミッタ信号が選択される。言い換えれば、比較的少ないノイズしか存在しない周波数領域が非正弦波トランスミッタ信号のために選択され得る。例えば、ステップ902の実行に基づき、ノイズが50kHzで検出されたと仮定しよう。検出されたノイズを回避するために、非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数が、100kHzの周囲の領域に配置され得る。基本周波数の周波数間隔、バースト長、非正弦波トランスミッタ信号の形状等は、上記で議論されているように、特定の直交性の要求及びタイミングの要求が満たされるように選択されることがある。ステップ904は、同時に放射される任意の数の非正弦波トランスミッタ信号について実施され得る。フローチャートは、ノイズの測定と非正弦波トランスミッタ信号の選択とを別々のステップとして図示しているが、これらのステップは組み合わされることがある。例えば、測定が、非正弦波トランスミッタ信号の選択されたセットについて行われることがある。測定に基づいて過剰に多いノイズが存在すると見出された場合には、非正弦波トランスミッタ信号の異なるセットが選択されることがある。非正弦波トランスミッタ信号の異なるセットへの切り換えは、ノイズが許容可能と判断されるセットが特定されるまで継続することがある。
【0104】
ステップ906において、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)のサンプリング周波数Fが選択される。一以上の実施形態において、Fは、非正弦波トランスミッタ信号の高調波に関連するエイリアシング歪みが非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数と異なる周波数に位置するように選択される。言い換えれば、Fは、基本周波数におけるエイリアシング歪みの振幅を低減してバンド間高調波干渉を低減又は消滅するように調整される。追加の詳細は、図7を参照して説明されている。Fの選択は、デフォルトのサンプリング周波数から開始されてもよい。最適化は、デフォルトのサンプリング周波数の周囲の限定された範囲内で行われてもよい。この最適化は、非正弦波トランスミッタ信号の基本周波数におけるエイリアシング歪みを最小化するように実行されることがある。基本周波数におけるエイリアシングの許容可能なレベルを指定するために任意の基準が使用され得る。例えば、1/1000のバンド間高調波干渉が、閾値として設定されてもよい。ステップ906は、非正弦波トランスミッタ信号の単一のセットについて行われてもよく、異なる周波数範囲の非正弦波トランスミッタ信号の複数のセットについて行われてもよい。非正弦波トランスミッタ信号の複数のセットを使用することにより、入力デバイスを、例えばノイズ環境に応じて異なる周波数範囲で動作させることが可能になり得る。ステップ906の動作は、実際の入力デバイスでバンド間高調波干渉を測定することによって実行されてもよく、シミュレーションによって実行されてもよい。シミュレーションが使用される場合、入力デバイスの様々なコンポーネントが、シミュレーションモデルによって近似されることがある。例えば、検知素子とアナログフロントエンドの特性が、実際の検知素子と実際のアナログフロントエンドの特性をそれぞれに近似する時定数を有する第一近似(単一極)シミュレーションモデルによって近似されてもよい。
【0105】
ステップ902~906の動作は、非正弦波トランスミッタ信号の周波数の一以上のセットと、整合するサンプリング周波数Fとを入力デバイスにプログラムするように設定又は製造の間に実行されることがある。その代わりに、ステップ902~906が、入力デバイスの動作の間に実行されてもよい。
【0106】
ステップ908において、タッチ検知が実行されることがある。図10を参照しながら以下で説明する。
【0107】
図10のフローチャートは、一以上の実施形態による、マルチ周波数領域タッチ検知のための方法(1000)を示している。
【0108】
ステップ1002において、1セットのTx電極が、固有の基本周波数を有する複数の非正弦波トランスミッタ信号を用いて同時に駆動される。任意の数のTx電極が同時に駆動され得る。追加の詳細は、図6A図6B図7を参照して説明されている。
【0109】
ステップ1004において、結果信号がRx電極で取得される。ステップ1004は、ステップ1002と並行して実行され得る。更に、ステップ1004は、複数のRx電極について同時に実行され得る。Rx電極で受信された結果信号は、該Rx電極に結合された複数の非正弦波トランスミッタ信号による影響を受ける。カップリングは、Rx電極がTx電極に空間的に近接している場所(例えば、Tx電極がRx電極と交差する検知素子において)発生する。容量カップリングは入力物体の存在又は不存在による影響を受けるので、結果信号も、検知素子の近傍における入力物体の存在又は不存在による影響を受ける。
【0110】
ステップ1006において、ステップ906で決定されたサンプリング周波数Fで動作するアナログ-デジタルコンバータを用いて結果信号がアナログ-デジタル変換される。
【0111】
ステップ1008において、アナログ-デジタル変換後の結果信号が復調されて1セットの検知信号を生成する。1つの検知信号が、個別の周波数を有する非正弦波トランスミッタ信号を用いて駆動された一以上のTx電極のそれぞれについて取得されることがある。I復調とQ復調の両方が実行される場合、得られた検知信号のI成分及びQ成分が検知信号の振幅及び/又は位相を特定するように処理されることがある。追加の詳細は、図6A図6B図7を参照して説明されている。個別の検知素子に特有な検知信号の解は、非正弦波トランスミッタ信号の複数のバーストに渡って該検知信号の値を求めることによって得られることがある。例えば、20個の検知素子を含む構成について20バーストを使用すると唯一の解が得られることがある。ステップ1004が複数のRx電極について実行される場合、複数のRx電極に対応する結果信号のそれぞれを復調するためにステップ1008も複数回実行されることがある。
【0112】
上述のステップは繰り返されることがある。例えば、図6A図6B及び図7を参照して前述しているように、ステップ602~606は、周波数領域内のTx電極から選択された異なるセットのTx電極を駆動する間に繰り返されることがある。容量イメージの完全なセットの検知素子に対応する検知信号を伴う容量イメージは、検知領域内の全てのTx電極についてステップ602~608を実行した後で利用可能になり得る。
【0113】
ステップ1010において、検知信号を用いてタッチ検知が行われることがある。タッチ検知では、以前に決定されているベースライン値と対照して検知信号を評価することがある。検知信号が少なくとも一定量だけベースライン値から外れている場合、該検知信号に対応する検知素子の近傍に入力物体が存在すると考えられ得る。ステップ1010は、容量イメージの検知素子に対応する一部の又は全部の検知信号に対して実施され得る。
【0114】
経時的にタッチ検知を実施するために、ステップ1002~1008が、例えば周期的に繰り返されてもよい。
【0115】
本開示の実施形態は、様々な利点を有している。異なる周波数で同時に放射されるトランスミッタ信号を使用することにより、放射されるトランスミッタ信号のバーストを短くすることなく高いフレームレートで(大きなタッチスクリーンに必要となり得る)多数のTx電極の駆動が可能になる。本開示の実施形態は、非正弦波波形を使用している。非正弦波波形は、たとえシステム電圧よりも高い振幅を有していても、相対的に生成が容易であるという利点を有している。更に、非正弦波波形は、正弦波波形よりも基本周波数における電圧振幅が高い。結果として得られる、基本周波数における高い信号エネルギーにより、例えば低いトランスミッタ信号電圧が使用可能になり、同じ電圧を使用するときにより高い信号対雑音比を得られる等の様々な利点が提供される。
【0116】
本発明が限られた数の実施形態について説明されているが、本開示の利益を有する当業者は、本明細書に開示されているような本発明の範囲から乖離せずに他の実施形態が考案可能であると理解するであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】