(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】場増強素子を備えた電磁暴露評価のための装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N22/00 X
G01N22/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523947
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022079267
(87)【国際公開番号】W WO2023067091
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523150772
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】523169039
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・デ・シアンス・ザプリケ・ドゥ・レンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】523224741
【氏名又は名称】サントラルシュペレック
【氏名又は名称原語表記】CENTRALESUPELEC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ザドボフ
(72)【発明者】
【氏名】アルテム・ボリスキン
(72)【発明者】
【氏名】ロナン・ソロー
(57)【要約】
電磁波源(2)によって発される電磁(EM)場に関連した物理量を測定するための装置(1)であって、損失媒質でできている参照物体、例えば生体組織、特にヒト組織のEM特性をシミュレートするように構成され、
- 電磁波源(2)に向けられた上面(31)および下面(32)を備える少なくとも1つの誘電層(3)であって、電磁波源(2)によって発されるEM場に対して少なくとも部分的に透明である、誘電層(3)と、
- 少なくとも1つの誘電層(3)に対して配置され、所定のゾーン(12)において少なくとも1つの誘電層(3)を透過した電磁場の強度を増強するようにして構成される少なくとも1つの電磁場増強素子(4)と、
- 少なくとも1つの電磁場増強素子(4)の下に配置され、少なくとも1つの誘電層(3)および少なくとも1つの電磁場増強素子(4)を透過した電磁場に関連した上記物理量を測定するように構成される少なくとも1つのセンサ(5)とを備える、装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波源(2)によって発される電磁(EM)場に関連した物理量を測定するための装置(1)であって、損失媒質でできている参照物体、例えば生体組織、特にヒト組織のEM特性をシミュレートするように構成され、
- 前記電磁波源(2)に向けられた上面(31)および下面(32)を備える少なくとも1つの誘電層(3)であって、前記電磁波源(2)によって発されるEM場に対して少なくとも部分的に透明である、誘電層(3)と、
- 前記少なくとも1つの誘電層(3)に対して配置され、所定のゾーン(12)において前記少なくとも1つの誘電層(3)を透過した前記電磁場の強度を増強するようにして構成される少なくとも1つの電磁場増強素子(4)と、
- 前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)の下に配置され、前記少なくとも1つの誘電層(3)および前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)を透過した前記電磁場に関連した前記物理量を測定するように構成される少なくとも1つのセンサ(5)とを備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)が前記少なくとも1つの誘電層(3、33)の前記下面(32、33.2)から前記少なくとも1つのセンサ(5)の方へ延びる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)が前記少なくとも1つの誘電層(3)に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記少なくとも1つの誘電層(3)は、絶対値が前記EM場増強素子(4)の材料の複素誘電率の絶対値より小さい複素誘電率を有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも2つの誘電層(33、34)を備え、前記センサ(5)に向けられた下面(34.2)を有する前記誘電層(34)が、ホスト媒質で満たされたキャビティ(43)を備え、前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)が前記キャビティ(43)に置かれ、前記ホスト媒質は、絶対値が前記EM場増強素子(4)の材料の複素誘電率の絶対値より小さい複素誘電率を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの誘電層(3、34)の前記下面(32、34.2)に位置付けられた少なくとも1つの導電層(6)を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導電層(6)が1つの開口キャビティ(7)を備え、前記電磁場増強素子(4)が前記開口キャビティ(7)に置かれる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導電層(6)が少なくとも1つの貫通孔(71)を備え、前記少なくとも1つの貫通孔(71)のサイズが前記EM場増強素子(4)のサイズより小さく、前記EM場増強素子(4)が、前記少なくとも1つの貫通孔(71)を覆うようにして前記導電層(6)の前記下面(62)に位置付けられる、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの導電層(6)が少なくとも1つの貫通孔(71)を備え、前記少なくとも1つの貫通孔(71)のサイズが前記EM場増強素子(4)のサイズより小さく、前記キャビティ(43)に置かれた前記EM場増強素子(4)が前記少なくとも1つの貫通孔(71)と位置合わせされる、請求項4および5に記載の装置。
【請求項9】
前記電磁場増強素子(4)の寸法が、前記電磁場増強素子(4)の一端に近い決定された位置(Z
m)に、電磁場強度の増強に相当するホットゾーン(12)を発生させるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
切断平面(X-Y)における前記電磁場増強素子(4)の最小サイズが前記EM場増強素子(4)の前記媒質中での波長の半分以上であり、切断平面(X-Y)における前記電磁場増強素子(4)の最大サイズが前記EM場増強素子(4)の前記媒質中での波長の10倍以下である、請求項10に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのセンサ(5)が、前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)と直接接触して位置付けられたまたは前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)に埋め込まれた熱センサ(53)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサ(5)が、前記電磁波源(2)の周波数で動作する電磁センサ(51)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのセンサ(5)が、前記電磁波源(2)の周波数と異なる周波数で動作する電磁センサ(52)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電磁場増強素子(4)の一端に接触したまたは埋め込まれた周波数変換器(18)を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
複数の電磁場増強素子(4)を備え、各素子が、前記電磁波源(2)によって発される電磁場によって照射された前記参照物体の表面積の1つのゾーンを透過した電磁場の補完部分をカバーするように構成され、前記電磁場の前記補完部分が照射条件によって定められる、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
電磁波源(2)によって発される電磁(EM)場に関連した線量測定量を測定するためのシステム(100、200、300)であって、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置(1、10A、10B、20A、20B、20C)と、前記少なくとも1つのセンサ(5)から送信される信号を分析するように構成される信号分析ユニット(101、201、301)と、前記電磁線量測定量を計算するように構成される処理ユニット(102、202、302)と、メモリユニット(103、203、303)とを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁線量測定のための装置に関し、より詳細には、本発明は、損失媒質でできている参照物体、例えば生体組織、特にヒト組織の電磁的特性の一部をシミュレートし、電磁波源によって発される電磁場によって損失媒質に誘発される電磁線量測定量を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス技術の発展につれて、特に人体と接触して使用される携帯電話の場合には、人体における電磁(EM)波の放射の暴露レベルを精密に測定することが重要な要因になる。
【0003】
電磁波への人体の暴露を評価するための「ファントム」と通例呼ばれる、生体組織の電磁的性質を再現する装置の様々なカテゴリが存在し、液体ファントム、半固体ファントム、固体ファントムの他にハイブリッドファントムがある。液体ファントムは、生体組織中のように、典型的に高含水量のために提供される測定周波数でヒト生体組織のものと同様のEM性質を有するゲルまたは液体で満たされたプラスチック部品または固体シェルを備える。これらの装置は、一般に30MHzから6GHzまでの周波数範囲で使用される。これらの装置には幾つかの問題があり、すなわち、時間経過に伴う液体の蒸発および/または誘電的性質の劣化により液体を頻繁に変える必要がある。これらの装置は、特別な試験機器がそれらの重量を支えることを必要とする。6GHzを超える周波数でのそのような装置の使用は、水分子によるEM場の強い吸収が、埋込センサにとって非常に浅いEM場侵入深さと、したがって不十分な信号対雑音比(SNR)とに至るため、可能でない。半固体ファントムの構成は液体ファントムと同様であり、固体シェルを使用することなくファントムの形状を保持するために液体の代わりにゼリー化剤が通常使用される。それらの主な欠点は、限られた寿命である(典型的には数日または数週間に限られる)。固体ファントムは、グラファイト、炭素または金属のような導電粒子がドープされたプラスチック、ポリマー、セラミックまたは合成ゴムのような、固体誘電材料から作られる固体片である。その主な利点は、時間経過に伴うその信頼性および誘電的性質の安定度である。しかしながら、これらの装置は、製造がかなり複雑かつ高コストである。更には、それらは、6GHzを超える測定を許容しない高いEM損失も被る。例えば、60GHzでは、ヒト組織における電磁放射の侵入深さは0.5mmのオーダーであり、放射の吸収は、本質的に身体の表層に限られる。これは、上記生体組織のEM性質を再現するファントムに埋め込まれたいかなるセンサにとっても極端に低い信号対雑音比(SNR)に至る。
【0004】
加えて、最近のワイヤレス通信デバイスは、2つ以上のアンテナを有し、複数周波数帯およびモードで動作することができる。従前の線量測定装置の使用には幾つかの制限および欠点があり、中でも複雑でかつ時間を消費する準拠性試験手順がそうである。
【0005】
この観点では、人体とワイヤレスデバイスとの間の周波数依存相互作用の特異性が、より低い反射に至るのと同時により強いEM損失に至ること、ならびに6GHzを超える周波数で動作する5G以降の世代のワイヤレスデバイスの準拠性試験に起因して、比吸収率(SAR)のような体積線量測定量の測定の代わりに、EM場強度に比例する、所与の表面積当たりの透過および/または吸収電磁力密度に関して新たな線量測定標準および指針が策定されている。
【0006】
文献WO2017/0173350は、
図1を参照すると、ヒト組織の特性を有する一方で6GHzより大きな周波数で電磁波を測定することができる装置を提案している。それは、誘電材料(S)の1つの層と、貫通孔(OSH)のある半透明金属シールド(MSH)と、貫通孔の下方に置かれたセンサ(SENS)のアレイとを備える。センサは、電磁波源(EMS)によって発される電磁場を測定するように構成される。
【0007】
この文献で提案される装置は、信頼性および誘電的性質の安定度を与え、6GHzを超える周波数での電磁波の測定を潜在的に可能にするが、提案された解決策は、特に6GHzを超える高周波数で電磁場の強い吸収を招く40%の炭素微粒子を含む複合誘電材料を通る伝搬中の電磁場強度の著しい損失を低減させるまたは制限する方策を教示していない。
【0008】
その上、他の先行技術の解決策と同様に、WO2017/0173350で使用される測定手順は、センサ(SENS)のアレイにおけるセンサの位置によって定められる複数の空間点における透過場のサンプリングに依存する。これは、所与の表面積または体積に対して定義される線量測定量を算出するために、センサトポロジのアレイによって決まるサンプリング点の固定メッシュにより、および測定量のデジタル積分の追加の後処理ステップにより、不正確の原因となり得る。
【0009】
高いEM損失は、測定の正確さを犠牲にし、信号対雑音比(SNR)を低下させ得る。低電力測定のための重要なパラメータである信号雑音比を増加させるためには、センサの感度か送信電磁信号のレベルかを上昇させることが必要である。後者の方が高い雑音レベルを扱うことを許容するので、それが通常好まれる。これらの制限は、ワイヤレスデバイスの第5世代以降の準拠性のための線量測定装置の正確さおよびコストに関して重要であることがある。
【0010】
したがって、特に6GHzを超える周波数で以前の解決策より精密に測定を実施するために使用できる電磁線量測定のための改善された装置の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ファントム構造によって表される参照物体、例えば生体組織のEM散乱特性を再現すること、およびファントム構造を透過した電磁場の強度を増強することが同時にできる電磁線量測定装置を提供することである。そのため、ファントム構造中の電磁場の不可避の損失にもかかわらず、適切なSNRを保つこと、および高周波数でさえ測定の正確さを維持することが依然として可能である。
【0013】
本発明の別の目的は、ファントム材料中の不可避の電磁損失を、求められる線量測定量と相関する測定可能な物理量、すなわち局所熱へ変換することを許容する装置を提案し、よって、EM線量測定システムを構築するための代替手法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、製造がより容易で、より安価である装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、この状況を改善する。
【0016】
電磁波源によって発される電磁(EM)場に関連した物理量を測定するための装置であって、損失媒質でできている参照物体、例えば生体組織、特にヒト組織のEM特性をシミュレートするように構成され、
- 電磁波源に向けられた上面および下面を備える少なくとも1つの誘電層であって、電磁波源によって発されるEM場に対して少なくとも部分的に透明である、誘電層と、
- 少なくとも1つの誘電層に対して配置され、所定のゾーンにおいて少なくとも1つの誘電層を透過した電磁場の強度を増強するようにして構成される少なくとも1つの電磁場増強素子と、
- 少なくとも1つの電磁場増強素子の下に配置され、少なくとも1つの誘電層および少なくとも1つの電磁場増強素子を透過した電磁場に関連した上記物理量を測定するように構成される少なくとも1つのセンサとを備える、装置が提案される。
【0017】
一実施形態において、少なくとも1つの電磁場増強素子は、少なくとも1つの誘電層の下面から少なくとも1つのセンサの方へ延びる。
【0018】
別の実施形態において、少なくとも1つの電磁場増強素子は、少なくとも1つの誘電層に少なくとも部分的に埋め込まれ、上記少なくとも1つの誘電層は、絶対値がEM場増強素子の材料の複素誘電率の絶対値より小さい複素誘電率を有する。
【0019】
1つの更なる実施形態において、装置は、少なくとも2つの誘電層を備え、センサに向けられた下面を有する誘電層が、ホスト媒質で満たされたキャビティを備え、少なくとも1つの電磁場増強素子がキャビティに置かれ、ホスト媒質は、絶対値がEM場増強素子の材料の複素誘電率の絶対値より小さい複素誘電率を有する。
【0020】
一実施形態において、装置は、少なくとも1つの誘電層の下面に位置付けられた少なくとも1つの導電層を更に備える。
【0021】
1つの変形例において、少なくとも1つの導電層は、1つの開口キャビティを備え、電磁場増強素子が開口キャビティに置かれる。
【0022】
別の変形例において、少なくとも1つの導電層は、少なくとも1つの貫通孔を備え、少なくとも1つの貫通孔のサイズは、EM場増強素子のサイズより小さく、EM場増強素子が、少なくとも1つの貫通孔を覆うようにして導電層の下面に位置付けられる。
【0023】
別の更なる変形例において、少なくとも1つの導電層は、少なくとも1つの貫通孔を備え、少なくとも1つの貫通孔のサイズは、EM場増強素子のサイズより小さく、キャビティに置かれたEM場増強素子が少なくとも1つの貫通孔と位置合わせされる。
【0024】
一実施形態において、電磁場増強素子の寸法は、電磁場増強素子の一端に近い決定された位置(Zm)に、電磁場強度の増強に相当する、ホットゾーンを発生させるように構成される。
【0025】
好適な実施形態において、切断平面(X-Y)における電磁場増強素子の最小サイズは、EM場増強素子の媒質中での波長の半分以上であり、切断平面(X-Y)における電磁場増強素子の最大サイズは、EM場増強素子の媒質中での波長の10倍以下である。
【0026】
一実施形態において、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの電磁場増強素子と直接接触して位置付けられたまたは少なくとも1つの電磁場増強素子に埋め込まれた熱センサである。
【0027】
別の実施形態において、少なくとも1つのセンサは、源の周波数で動作する電磁センサである。
【0028】
別の更なる実施形態において、少なくとも1つのセンサは、電磁波源の周波数と異なる周波数で動作する電磁センサである。
【0029】
更に別の実施形態において、装置は、少なくとも1つの電磁場増強素子の一端に接触したまたは埋め込まれた周波数変換器を更に備える。
【0030】
好適な実施形態において、装置は、複数の電磁場増強素子を備え、各素子が、電磁波源によって発される電磁場によって照射された参照物体の表面積の1つのゾーンを透過した電磁場の補完部分をカバーするように構成され、電磁場の上記補完部分が照射条件によって定められる。
【0031】
別の態様において、電磁波源によって発される電磁(EM)場に関連した線量測定量を測定するためのシステムであって、上記の請求項のいずれかの装置と、少なくとも1つのセンサから送信される信号を分析するように構成される信号分析ユニットと、電磁線量測定量を計算するように構成される処理ユニットと、メモリユニットとを備える、システムが提案される。
【0032】
他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明および図に示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】先行技術の電磁線量測定のための装置の断面図の概略図である。
【
図2】電磁線量測定のための装置の1つの実施形態の断面図の概略図である。
【
図3A】2つの誘電層を備える電磁線量測定のための装置の1つの実施形態の断面図の概略図である。
【
図3B】2つの誘電層を備える電磁線量測定のための装置の別の実施形態の断面図の概略図である。
【
図4A】1つの誘電層および1つの導電層を備える電磁線量測定のための装置の1つの実施形態の断面図の概略図である。
【
図4B】1つの誘電層および1つの導電層を備える電磁線量測定のための装置の別の実施形態の断面図の概略図である。
【
図4C】2つの誘電層および1つの導電層を備える電磁線量測定のための装置の更に別の実施形態の断面図の概略図である。
【
図5】
図3Bおよび
図4Cの電磁線量測定のための装置のための電磁場増強素子の汎用トポロジの断面図を概略的に表す。
【
図6A】法線照射の場合に、増強された電磁場強度に相当するホットゾーンの形成を概略的に表す。
【
図6B】傾斜照射の場合に、増強された電磁場強度に相当するホットゾーンの形成を概略的に表す。
【
図7】傾斜円錐形状およびテーパ端がセンサの方へ方向付けられた電磁場増強素子を概略的に表す。
【
図8】電磁センサを備える線量測定装置を概略的に表す。
【
図9】電磁センサおよび周波数変換器を備える線量測定装置を概略的に表す。
【
図10】熱センサを備える線量測定装置を概略的に表す。
【
図11】複数の2種類の単位セルAおよびBを備え、各単位セルが、決定された特定の照射条件である、EM場の偏光、入射角の範囲、および周波数範囲で、電磁波源によって発される電磁場によって照射される表面積の1つのゾーンをカバーするように適合されている、線量測定装置の上面図および側面図を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語「上」、「下」、「上方」、「下方」、「間」、「上に」および本明細書で使用される他の同様の用語は相対位置を指す。用語の相対位置は、層をベクトル空間方向に定義または限定しない。
【0035】
理解を容易にするために、各図に共通である同一の要素を示すために、可能な場合には同一の参照数字が使用された。1つの実施形態に開示される要素が具体的な詳述なく他の実施形態に有益に活用され得ることが企図される。
【0036】
本開示において、用語「層」は、一定の厚さまたは可変の厚さを有する構造を指す。層は平面であっても曲面であってもよい。特に、層は、人体の一部、例えば頭または手の3D形状を再現するために成形されてよい。層は、円柱物体の側壁のような閉ループを形成するように成形されてよい。
【0037】
本開示において、用語「線量測定量」は、平均表面積または体積に関して定義される電力密度、エネルギー密度、比吸収率、比エネルギー吸収、電場強度、磁場強度、電圧または電流を含む、電磁暴露レベルを定量化するために使用される任意の尺度を指す。
【0038】
本開示において、用語「導電層」は、導電率σ≧103S/mを有する導電材料から作られる層を指す。
【0039】
本開示において、用語「誘電層」は、103S/mより厳密に小さな導電率σを有する熱伝導かつ電気絶縁材料から作られる層を指す。
【0040】
図2を参照しつつ、本開示の一実施形態に係る電磁線量測定のための装置1が次いで説明される。装置1は、直交空間座標系(XYZ)に置かれる。
【0041】
装置は、有利には、参照物体の電磁応答、特に空気/皮膚界面における反射特性を再現するように、および装置に入射する電磁場に関連した物理量を測定するように構成される。測定された物理量は、EM場の振幅、空気/誘電体界面に入射または透過したEM場の強度および/または電力密度に比例し得る。
【0042】
図2において、装置は、平面(XY)に沿って感知可能に延びる1つの誘電層3を備える。誘電層は、平面(XY)に沿って延びる2つの主面、上面31および下面32を画定する。装置は、2つ以上の誘電層を備えてよい。
【0043】
誘電層は、参照物体、例えば生体組織、特にヒト皮膚組織、のEM反射特性をシミュレートするのに適切な任意の材料から作られてよい。非限定的な例として、誘電層は、プラスチック、ポリマー、セラミック、ガラスのような、複素誘電率の関連値によって特徴付けられる任意の固体誘電材料から作られてよい。当業者は、本発明と関連して記載される実施形態に複素誘電率の異なる値を容易に適合させるであろう。
【0044】
1つの例では、誘電層は、別の誘電層または導電材料と混合された誘電材料から作られてよい。導電材料は、好ましくは、サイズが誘電層3の誘電ホスト媒質中のEM波の波長の1/4より小さい小型要素の形態で提供される、高導電率を有するものとして選ばれる。
【0045】
別の例では、誘電層3は、導電フィリングがドープされたアモルファスかつゲル型誘電材料から作られて、懸濁型複合材料を形成してよい。ヒト皮膚組織の空気-誘電体界面における反射特性のような、参照物体の電磁応答を再現するために、導電フィリングの割合は変更され得る。
【0046】
誘電層の厚さT1は、好ましくはλ1/10と10×λ1との間に含まれ、ここでλ1は誘電層3の媒質中のEM場の波長である。例えば、誘電層の厚さT1は、60GHzで約1mmでよい。層3の最適厚さは、上記層3の媒質の複素誘電率に依存する。
【0047】
別の実施形態において、誘電層3は、媒質、例えば液体、ゲル、発泡体または気体、で満たされた密閉または部分密閉シェルを形成する。この構造は、特に人体の一部の場合、例えば頭状ファントムをシミュレートするように適合される。媒質は、脳として作用するように選ばれてよく、上面は、頭の形状を模すように凹面を呈してよい。代替的に、媒質は、誘電層3の下に置かれた少なくとも1つのセンサ素子5のための機械的支持体および/またはホスト媒質としてのみ使用できる。
【0048】
装置は、誘電層3の下面32に位置付けられた電磁(EM)場増強素子4および電磁場増強素子4の下に配置されたセンサ5を更に備える。EM場増強素子4は、誘電層3およびEM場増強素子4を透過した電磁場を増強するように構成される。電磁場増強素子4の一端42がセンサ5の方へ向けられる。
【0049】
好適な実施形態において、EM場増強素子4は、電磁波伝搬の方向に沿ってセンサ5と位置合わせされる。
【0050】
電磁場源2が装置1への距離Hに設けられる。この距離Hは、好ましくは、
図2で円によって表されるアンテナ近接場ゾーンより大きい。電気的小型アンテナにとって、反応近接場ゾーンは、R
NF=λ
0/2πとして波長に対して近似的に定められ、ここでλ
0は真空中の波長である。例えば、60GHzで、距離R
NFは約0.8mmである。
【0051】
電磁場源2は、携帯電話または任意の他のポータブルもしくはウェアラブルワイヤレスデバイスでよい。当業者は、ユーザの頭に近い携帯電話のような現実的なユースケース状況を表す、正確な準拠性試験を保証するために、この距離Hの値を容易に適合させるであろう。距離Hおよび試験下のワイヤレスデバイスの位置は、ワイヤレスデバイスの製造によって定められる意図されたユースケースに依存する。例えば、上記距離はその範囲が数mm(頭に近いスマートフォンの場合)から数十cm(ハンドヘルドデバイスの場合)まで変化し得る。電磁場源2は、電磁信号を送信するためおよび受信するために源の本体に接続される1つまたは複数のアンテナを備えてよい。
【0052】
図2に図示されるように、電磁場源2は、中心がアンテナ17の位相中心と一致する円によって表される電磁場を発するアンテナ17を備える。電磁場源2によって発される電磁波の一部分が装置1の上面31を照射する。電磁場源2は、装置1の優先場所にEM放射を向けるように位置付けられてよい。
【0053】
EM源2は、約6GHzから約300GHzまでの範囲の周波数で動作し得るが、本発明の教示は、マクスウェル方程式のスケーラビリティのために、他の周波数帯にスケーリングすることができる。特に、それは、マイクロ波周波数範囲にダウンスケールまたは少なくともTHz周波数範囲にアップスケールできる。
【0054】
図2に図示されるように、電磁場源2によって発されるEM波14は、斜入射角θで誘電層3の上面31に入射し、入射波は、誘電層3の上面への法線と対頂角を形成する方向に上面によって部分的に反射される。反射EM波は、参照番号15によって示される。上面31に関連する空気/誘電体界面において反射されないEM波の一部分が、上面31から下面32まで誘電層3内を伝搬し、誘電層3の媒質に部分的に吸収される。誘電層3を透過したEM波16は、次いで電磁場増強素子4によって達成されるように(場増強素子のない同一構造の場合と比較して少なくとも2の増強係数で)局所的に増強され、センサ5の方へ向けられる。
【0055】
センサ5は、誘電層3およびEM場増強素子4を透過した電磁場に関連した物理量を測定するように適合され、そして電気信号を形成する。測定された物理量は、EM場強度または種々の層を透過した電磁場のEもしくはH場成分の振幅に関連し得る。物理量は、誘電層3に、および、特に、場強度の増強されたレベルによって特徴付けられる局所ゾーンにおいてEM場増強素子4に、EM場16によって誘発される温度または熱にも関連し得る。1つの実施形態において、場増強素子は、EM場増強素子として作用するのと同時に、EM場16を吸収して、それを赤外放射として再び発される熱へ変換する熱変換素子として作用することができる。物理量は、透過電磁場に暴露される周波数変換素子によって放射される電磁場に関連し得る。センサ5は、無線周波電磁センサ、THz電磁センサ、赤外電磁センサ、光電磁センサ、熱センサ、または層3および素子4を透過したEM場に関連した物理量を測定することが可能な任意の他のセンサでよい。以下では3種類のセンサの実装が
図8~
図10に関連して詳述される。
図8~
図10に図示されるように、電気信号は、次いで、参照物体を表す誘電層3の表面または内側においてEM源2によって生じた暴露レベルを計算するように構成される処理ユニットに送信される。
【0056】
電磁場増強素子4は、誘電層3を透過した電磁場16の強度を局所的に増強するように構成される。この素子は、誘電層3の損失媒質を通る伝搬路に沿ったEM場強度の減衰を補償することを許容する。EM場増強素子4は、複素誘電率εe
*の誘電材料から作られ、場増強素子の誘電媒質中の電磁場源2によって発されるEM場の波長の4分の1と上記波長の10倍との間の厚さT2を有する。
【0057】
EM場増強素子4は、平面(XY)において任意の形状を有してよく、例えばそれは正方形、長方形であることができ、またはそれは丸であることができる。しかし、以下に更に詳細に説明されるように、形状は、好ましくは、EM源からの放射の条件、例えば入射波の入射角、周波数および偏光に従って、EM場強度の局所増強レベルおよび場強度パターンの極大の位置を最適化するように選ばれる。
【0058】
図2に図示されるように、EM場増強素子4は、誘電層3の下面32からセンサ5の方へ延びる。場増強素子4の材料の複素誘電率の絶対値は、周囲のホスト媒質の複素誘電率ε
h
*より厳密に大きい。ホスト媒質は、気体、液体、ゲルまたは任意の固体誘電材料によって表すことができる。
【0059】
一部の実施形態において、EM場増強素子4は、誘電層3に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0060】
図3Aおよび
図3Bは、
図2の装置1の代わりに使用され得る、EM線量測定装置の別の実施形態の断面図の概略図である。線量測定装置10Aおよび10Bは、
図2の線量測定装置1と同様である。
【0061】
図3Aにおいて、装置10Aは、2つの誘電層、第1の誘電層33および第2の誘電層34、EM場増強素子4、ならびにEM場増強素子4の下に位置付けられたセンサ5を備える。各誘電層33、34は、2つの主面、上面33.1、34.1および下面33.2、34.2を画定する。
【0062】
EM場増強素子4は、第2の誘電層34に少なくとも部分的に埋め込まれる。1つの実施形態において、EM場増強素子4の上面41は、第1の誘電層33の下面33.2から延び、第2の誘電層34を通過する。第2の誘電層34の複素誘電率の絶対値は、EM場増強素子4の複素誘電率の絶対値より厳密に小さい。1つの実施形態において、第1の誘電層33および場増強素子4は、有益には、製造プロセスを簡素化するために同じ誘電材料から作ることができる。本実施形態において、両層33および34の複素誘電率の絶対値および厚さは、上面33.1から正しい反射係数を達成するように調節できる。
【0063】
参照物体、例えばヒト組織、の反射特性をシミュレートする誘電構造は、3つ以上の誘電層から構成されてよい。
【0064】
図3Bにおいて、装置10Bは、2つの誘電層33、34、EM場増強素子4、およびEM場増強素子4の下に位置付けられたセンサを備える。第2の誘電層34は、キャビティ43を更に備える。EM場増強素子4は、キャビティに置かれて、第1の誘電層33の下面33.2から延びる。キャビティ43は、絶対値がEM場増強素子4の材料の複素誘電率の絶対値より厳密に小さな複素誘電率によって特徴付けられる周囲のホスト媒質で満たされる。
【0065】
図4Aから
図4Cは、
図2の装置1および
図3の装置10A、10Bの代わりに使用され得る、EM線量測定装置の別の実施形態の断面図の概略図である。
【0066】
参照物体のEM特性の一部をシミュレートする構造は、少なくとも1つの誘電層3および少なくとも1つの導電層6を備える。誘電層3は、導電層6の厚さT3より大きな厚さT1を有する。
【0067】
図4Aを参照すると、線量測定装置20Aは、1つの誘電層3、1つの導電層6、EM場増強素子4およびセンサ5を備える。誘電層3は、上面31および下面32を備える。導電層6は、導電層6を通って、誘電層の下面32から延びる開口キャビティ7を備える。開口キャビティ7によって、キャビティが底およびその底と反対の開口端を有することが理解される。開口キャビティ7の底は、誘電層の下面32の一部分によって形成される。開口キャビティ7は、底からその開口端まで延びる壁を有し、ここで各壁は導電層の厚さによって形成される。場増強素子4は、開口キャビティ7に置かれ、誘電層3の下面32からセンサ5の方へ延びる。
【0068】
開口キャビティ7のサイズは、場増強素子4より大きい。素子4は、誘電層3と同じ材料からまたは異なる誘電材料から作られる。好ましくは、EM場増強素子4は、開口キャビティ7に位置付けられ、開口キャビティに心合わせされる。
【0069】
図4Bを参照すると、装置20Bは、1つの誘電層3および1つの導電層6、EM場増強素子4ならびにセンサを備える。誘電層3は、上面31および下面32を備える。導電層6は、上面61および下面62を備える。導電層6は、誘電層3の下面32と接触している。導電層6は、導電層6を通って、誘電層の下面32から延びる複数の貫通孔71を備える。別の実施形態において、導電層は、1つだけの貫通孔を有してよい。各貫通孔71は、底およびその底と反対の開口端を有する。貫通孔71の底は、誘電層の下面32の一部分によって形成される。EM場増強素子4は、導電層6の下面62に位置付けられる。貫通孔71のサイズは、少なくとも1つの貫通孔71を覆うEM場増強素子4のサイズより小さい。好適な実施形態において、EM場増強素子4は、少なくとも1つの貫通孔と位置合わせされる。
【0070】
これらの貫通孔71は、EM場の透過のための透明ゾーンを形成する。EM場増強素子4は、貫通孔に位置付けられ、誘電層3および少なくとも1つの貫通孔71を透過したEM場の波面に対して位相補正効果を提供する。
【0071】
図4Cを参照すると、装置20Cは、第1の誘電層33、第2の誘電層34、1つの導電層6、EM場増強素子4、およびEM場増強素子4の下に位置付けられたセンサ5を備える。各誘電層33、34は、2つの主面、上面33.1、34.1および下面33.2、34.2を画定する。導電層6は、第2の誘電層の下面34.2を覆う。加えて、導電層は、貫通孔71を備える。
【0072】
EM場増強素子4は、開口キャビティ43に位置付けられて貫通孔71と位置合わせされ、また孔71を通るEM場16の増強された透過も提供することができ、孔71は、場増強素子4がない場合にはEM場16の伝搬を反射または吸収することによって遮断し得る。貫通孔71は、サブ波長の寸法を有することができる。言い換えれば、貫通孔71のサイズは、ホスト媒質中の波長より小さいものであり得る。
【0073】
第2の誘電層34は、第2の誘電層34を通って、第1の誘電層33の下面33.2から延びるキャビティ43を更に備える。キャビティ43によって、キャビティが底およびその底と反対の開口端を有することが理解される。キャビティ43の底は、第1の誘電層の下面33.2の一部分によって形成され、開口端は、導電層6の貫通孔71によって形成される。EM場増強素子4は、キャビティ43に置かれて、第1の誘電層33の下面33.2から導電層6の上面まで延びる。好適な実施形態において、EM場増強素子4は、キャビティ43に心合わせされ、貫通孔71およびセンサ5と位置合わせされる。キャビティ43は、絶対値がEM場増強素子4の材料の複素誘電率の絶対値より厳密に小さな複素誘電率によって特徴付けられる周囲のホスト媒質で満たされる。
【0074】
貫通孔71は、EM場増強素子4の下端より小さいかまたは等しい。そのため、素子4は、第2の誘電層34に完全に埋め込まれる。EM場増強素子4は、局所場増強を達成することを可能にし、貫通孔71を通るEM場の増強された透過を提供できる。
【0075】
図4Bおよび
図4Cの貫通孔の形状は重要でなく、すなわちそれは正方形、長方形であることができ、それは円形等であることができるが、以下に更に詳細に説明されるように、好ましくはEM場増強素子との位置合わせを容易にするように選ばれる。追加的に、貫通孔の形状は、有利にはEM透過を最適化するように構成される。貫通孔71の最小サイズは、
図4Bの貫通孔71の下端と接触している誘電層3の媒質中の、または
図4Cの貫通孔71の下端と接触している場増強素子4の媒質中の、または貫通孔71を満たすホスト媒質中の、EM場の波長の4分の1に長さが少なくとも等しいものとするその等高線に対して定められる。1つの実施形態において、貫通孔71は、層6を表す導電材料から作られた絶縁島を囲む透明メッシュを形成することを含むことができる。
【0076】
好ましくは、少なくとも1つの貫通孔によって形成される透明ゾーンの表面は、導電層によって形成される反射ゾーンの表面の80%より小さい。
【0077】
図5は、
図3Bの装置10Bまたは
図4Cの装置20CのX-Y平面における断面図を例示し、第2の誘電層34に存在するキャビティ43に置かれた場増強素子4の汎用的トポロジを図示する。場増強素子4を埋め込むキャビティ43の最小サイズは、場増強素子4およびキャビティ43を横断する少なくとも1つの垂直切断平面44における開口キャビティの最小サイズに対して定められる。最小サイズは、少なくともキャビティを満たすホスト媒質中の波長(λ
h)の半分に等しく、すなわちmax(C
1, C
2)≧λ
h/2であり、ここでC
1およびC
2は切断平面44における開口キャビティ43のサイズを示す。ホスト媒質が少なくとも誘電層3全体の下に延びることができる(
図2におけるように)ので、切断平面における開口キャビティの最大サイズは定められない。
【0078】
図5を参照すると、素子4の最小サイズは、同じ切断平面44におけるその寸法に対して定められる。最小サイズD
minは、少なくとも場増強素子4の媒質中の波長(λ
e)の半分に等しく、すなわちD
min≧λ
e/2であるのに対して、同じ切断平面44における場増強素子4の最大サイズD
maxは、素子4の媒質中の波長の10倍として定められ、すなわちD
max≧10×λ
eである。
【0079】
EM場増強素子4の形状および寸法は、有利には少なくとも1つの誘電層3(
図2、
図3)をおよび貫通孔71(
図4)を透過したEM場の増強を最適化するように構成される。X-Y平面におけるEM場増強素子4の形状および開口キャビティ43の形状は重要でなくてよく、例えばそれらは正方形、長方形または円形であることができる。それぞれ、対称および非対称形状の場合に偏光非感受および感受挙動に至るEM場増強素子4の形状とキャビティの形状との間の種々の組合せがある。キャビティ7内の場増強素子4の相対位置も、有利には法線入射のために使用される心合わせにより照射条件に対して適合するために、変更できる。
【0080】
図6Aおよび
図6Bを参照しつつ、EM場増強素子4の機能が以下に詳述される。
【0081】
図6Aおよび
図6Bの装置の上面31が電磁場源2によって発されるEM場によって照射されると、EM波の一部分は誘電層3の上面31から反射され、EM波の一部分は誘電層3およびEM場増強素子4によって吸収され、EM波の一部分はセンサ5の方へ伝搬する。
【0082】
図6Aに図示されるように、誘電層3の下面32に対して法線入射の照射の場合には、Z=0において平面を横断した後、波面の一部分は、複素誘電率ε
e
*によって特徴付けられる誘電材料から作られた場増強素子4と交差しており、波面の一部分は、絶対値が場増強素子の複素誘電率の絶対値より厳密に小さな複素誘電率ε
h
*(|ε
e
*|>|ε
h
*|)によって特徴付けられるホスト媒質を通過している。波面は、対応する媒質の異なる誘電率に関連した異なる位相速度を有する。場増強素子4の軸に沿った2つの波の干渉は、EM場増強素子4内をL
1で示される経路に沿って伝搬する波とより長い経路L
2=L
2′+L
2″に沿って部分的にホスト媒質43内をおよび部分的にEM場増強素子4内を伝搬する他方の波との間の建設的干渉により、増強された場強度レベルに相当する、ホットゾーン12の生成に至る。ホットゾーン12内のこれらの2つの経路の光路長の等しさは、より高い位相速度を招くホスト媒質のより低い誘電率に起因してもたらされる。
【0083】
EM場増強素子の存在のために、決定された位置Zm≒D/2×(1-nh/ne)-1においてEM場を増強することが可能であり、ここでDはz=0での垂直切断平面44におけるEM場増強素子の横断面サイズであり、ここでneおよびnhは、それぞれ素子4の誘電媒質の複素屈折率の絶対値(ne=(|(εe
*)1/2|)およびホスト媒質のそれ(nh=(|(εh
*)1/2|)を示す。ホットゾーン12の位置は、屈折率の比率nh/neによって定められ、EM場の周波数に依存しない。これは、有利には、広周波数範囲内の、例えば特に5Gおよび将来の6Gワイヤレス通信デバイスのために適合された24GHz前後または60GHz前後の、決定された位置ZmにおいてEM場強度を少なくとも2の係数だけ増強することが可能な非共鳴増強素子を提供することを許容する。厚さT1は、下面32とスポットゾーン12との間の距離を表すZm以上である。
【0084】
別の利点によれば、増強素子4は、例えば300MHzから30THzまで、電磁場源2の別の動作周波数範囲に、容易にスケーリングできる。
【0085】
図6Bを参照しつつ、誘電層3の下面32に対する斜角θ
1での照射の場合には、z=0に到達したときの波面の異なる部分間の位相の初期差が、入射EM波の伝搬方向によって決定される方向にホットゾーン12のずれを招く。ずれは、初期位相差に比例し、入射角θ
1の関数として計算できる。場増強素子の機能性は、少なくともθ
1≦30°まで保たれる。
【0086】
好適な実施形態において、EM場増強素子4は、最小厚さT1が誘電層3の誘電材料中の波長の10分の1以上の上記層3によって覆われる。
【0087】
別の好適な実施形態において、EM場増強素子4の高さは、EM場増強素子4の端部の近くに、増強された場強度のゾーンに相当する、ホットゾーン12を形成するようにして定められる。
【0088】
ホットスポットゾーンにおいて提供される有用信号の増強されたレベルにより、高さが誘電層3の下面32から場増強素子4内のホットゾーン12の位置までの距離に等しいか僅かに大きい(T2≧Zm)EM場増強素子4の端部の下に置かれるEMセンサ5のために改善された信号対雑音比(SNR)を提供することが可能である。
【0089】
ホットゾーン12内のEM場強度の増強されたレベルにより達成される別の利点によれば、熱対話に有効なEM場を場増強素子4内に提供できる。
【0090】
図7に例示される別の実施形態において、X-Y平面における任意の横断面のEM場増強素子4の円柱形状を、場増強素子4のテーパ端がセンサ5の方へ方向付けられた傾斜円錐形状に変換することができる。テーパ先端のサイズは、有利には、意図されたユースケースシナリオに従って定められる2つの極端な照射角、すなわち(θ
min, θ
max)が、屈折率n
1=(ε
1
*)
1/2によって特徴付けられる誘電層3の上面へのEM波の可能な入射角の範囲を定めるとして、角度θ
1=sin
-1(sin(θ)/n
1)の最小および最大値、に対するホットゾーンサイズおよび位置に関して選択できる。
【0091】
図8から
図10は、電磁波源2によって発される電磁場に関連した物理量を測定するためのシステム100、200、300を例示する。システムは、上記したような線量測定装置1、10A、10B、20A、20B、20Cと、少なくとも1つのセンサ51、52、53から送信される信号を分析するように構成される信号分析ユニット101、201、301と、線量測定量を計算するように構成される処理ユニット102、202、302と、メモリユニット103、203、303とを備える。
【0092】
提案された線量測定装置は、数種類のセンサを実装することを許容する。
【0093】
図8は、増強された透過EM場を測定するために電磁センサ51を使用する線量測定システム100の一実施形態を図示する。このセンサは、例えばEM源2の周波数範囲で動作する導波管プローブまたはマイクロストリップパッチアンテナによって表されてよい。センサ51によって取得される無線周波数信号は、測定されたデータを後処理するためおよび記憶するために使用される処理ユニット102(PU)およびメモリユニット103(MU)に接続された、信号分析ユニット101(SAU)に導かれる。
【0094】
図9は、EM源2の周波数範囲と異なる周波数範囲で動作するEMセンサを使用する線量測定システム200の一実施形態を図示する。言い換えれば、電磁センサ52は、電磁場源の動作周波数と異なる周波数f
2で発されるEM場を測定するように適合される。範囲は、赤外または光範囲でよい。1つのセンサは、光電磁センサ52であることができる。光EMセンサ52によって取得される光信号は、測定データを後処理するためおよび記憶するために使用される処理ユニット202およびメモリユニット203に接続された、信号分析ユニット201によって処理される。
【0095】
本実施形態において、EM源2によって放射された周波数f1によって定められるEM場の、周波数f2によって定められるEM場への変換は、ホットゾーン12内のEM場の強度に比例する、EM波吸収による、場増強素子4に誘発される温度上昇により生じることができる。これは、EM源2によって放射され、誘電層3および場増強素子4に入射して透過したEM場の強度を、熱力学に、またはセンサ52によって測定される加熱に関連した物理パラメータの任意の他の変化に関連したデータを後処理することによって、定量的に特性化することを許容する。
【0096】
光EMセンサ52は、EM場増強素子4の下方に置かれる赤外線(IR)カメラでよく、その視野が複数のEM増強素子4をカバーし、EM増強素子は、周波数変換器として作用し、EM波16のEM電力を吸収し、それを熱へ変換して、センサ52によって取得されるIR放射を発生させる。
【0097】
別の実施形態において、線量測定システム200は、周波数f1の入射EM場を周波数変換素子18によって発される周波数f2のEM場へ変換するように構成される周波数変換器18を更に備える。この周波数変換器18は、周波数f2で動作する光EMセンサ52のSNRを改善するために周波数f1のEM場を周波数f2のEM場へ効果的に変換することを許容する。好適な実施形態において、EM場増強素子4は、そのようなRFからIR範囲への周波数変換器として作用してよい。別の実施形態において、周波数変換器は、周波数f1では高EM損失によって、周波数f2では高放射効率によって特徴付けられる、場増強素子4の端部を覆う損失誘電材料の薄膜によって表すことができる。例えば、これは、炭素、グラファイト、グラフェン、または導電微粒子がドープされた塗料であることができる。
【0098】
周波数変換器は、周波数f2での有用信号の変換効率および改善されたレベルを保証するためにホットゾーン12の近くに置かれる。好適な実施形態において、周波数変換器は、場増強素子4に直接接触して位置付けられるまたは組み込まれる。
【0099】
周波数変換器18は、外部電源のため、再び発されたEM場の強度を増幅するようにも構成できる。そのような周波数変換器は、放出光の強度または周波数を調整するために使用されるトランジスタ型スイッチに対するトリガとして作用する周波数f1のEM場に暴露されると周波数f2の可視光を発生させることが可能な、液晶ベースの素子または発光ダイオード(LED)によって表されてよい。
【0100】
図10は、熱センサ53を使用する線量測定システム300の更に別の実施形態を図示する。熱センサ53は、熱電対または光ファイバ温度計でよい。光ファイバ温度計は、光ファイバの先端に取り付けられた感熱素子、例えばGaAs半導体結晶を備える。
図10に図示されるように、感熱素子は、EM場増強素子4と直接接触している。熱センサ53によって取得される信号は、測定データを後処理するためおよび記憶するために使用される処理ユニット302およびメモリユニット303に接続された、信号分析ユニット301に導かれる。
【0101】
図2から
図10は、1つだけのEM場増強素子4を備える装置の実施形態を図示する。装置は、1つの貫通孔7、71およびEM場増強素子4と位置合わせされる1つだけのセンサ5を有してよい。これらの構成では、装置は、誘電層の下面32の単一点においてまたは基本表面積においてEM場量の測定を許容する。測定された線量測定量は、後処理を介して、誘電層3内のその伝搬路に沿ったEM場減衰を考慮することによって上面31における平均表面積当たりまたは誘電層3内の平均体積当たりの任意の他のEM場量(例えば入射、透過または吸収電力密度)を計算するために更に使用できる。1つの実施形態において、少なくとも1つの場増強素子4と関連付けられる基本表面積のサイズは、有益には、装置によって測定される線量測定量の定義における平均表面積または体積に等しいかまたはその倍数となるように選択できる。
【0102】
別の実施形態において、提案された装置は、誘電層3に取り付けられたまたは埋め込まれた複数のEM場増強素子4を備えてよく、各EM場増強素子4が、EM場測定仕様の補完部分、例えばEM源2の動作周波数の範囲の一部分、入射角のサブレンジ、および/または少なくとも1つの偏光をカバーするように構成される。この構成では、提案された線量測定装置は、複数の単位セルを含むと考えることができる。装置は、複数の同一のセルを有してよい。各単位セルは、或る照射条件、例えば入射角、周波数、偏光下でEM場量を測定することが可能な装置の基本測定ユニットを備える。そのような線量測定装置は、各単位セルに対して物理量を同時に測定することが可能な、1つだけのセンサ5(例えば広視野の赤外もしくは光イメージセンサ)、または各センサが複数のEM場増強素子4の少なくとも1つと位置合わせされる、複数のセンサ5を備えてよい。
【0103】
図11は、2種類の単位セルAおよびBを備える装置400の一実施形態を図示する。単位セルAは、0とθ
Aとの間の角度範囲に対してEM場量を測定するように構成されるEM場増強素子を含む。単位セルBは、θ
Aとθ
Bとの間の角度範囲に対してEM場量を測定するように構成されるEM場増強素子を含む。
【0104】
図11の実施形態において、複数の単位セルAおよびBは、装置の中心点(X=0およびY=0)と位置合わせされた2つの同心ゾーンAおよびB内に配置される。中心点は、装置400に関してEM源2のアンテナ17の必要試験位置に対応する。言い換えれば、アンテナ位相中心が縦軸Zに沿って試験位置と位置合わせされる。2つのゾーンAおよびBの半径は、EM源2の相対位置のならびに
図5~
図7で説明されたように異なる形状によって特徴付けられたA型のおよびB型のEM場増強素子4の動作角度範囲の関数として決定される。
【符号の説明】
【0105】
1、10A、10B、20A、20B、20C 線量測定装置
2 電磁波源、電磁場源、EM源
3 誘電層、層
4 電磁場増強素子、EM場増強素子、場増強素子、素子
5 センサ、センサ素子
6 導電層
7 開口キャビティ、キャビティ
12 ホットゾーン、スポットゾーン
14 EM波
15 反射EM波
16 EM波、EM場、電磁場
17 アンテナ
18 周波数変換器、周波数変換素子
31、33.1、34.1、41、61 上面
32、33.2、34.2、62 下面
33 第1の誘電層
34 第2の誘電層
42 一端
43 キャビティ、ホスト媒質
44 切断平面、垂直切断平面
51 電磁センサ、センサ
52 電磁センサ、センサ、光電磁センサ、光EMセンサ
53 熱センサ、センサ
71 貫通孔
100、200、300 システム、線量測定システム
101、201、301 信号分析ユニット
102、202、302 処理ユニット
103、203、303 メモリユニット
400 装置
【国際調査報告】