(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アノード・カソード間の差圧を制御するための水素燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241003BHJP
H01M 8/04089 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04089
H01M8/04119
H01M8/04537
H01M8/04828
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/04791
H01M8/0662
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524010
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022078437
(87)【国際公開番号】W WO2023070037
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503400008
【氏名又は名称】ウッドワード,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Woodward,Inc.
【住所又は居所原語表記】1081 Woodward Way,Fort Collins,Colorado 80524 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【復代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,イー
(72)【発明者】
【氏名】ポーリー,ノーラン
(72)【発明者】
【氏名】キエラ,ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ハンプソン,グレゴリー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC05
5H127AC14
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB37
5H127DB03
5H127DB23
5H127DB46
5H127DB63
5H127DC04
5H127DC05
5H127DC07
5H127DC86
5H127DC88
(57)【要約】
本明細書の主題は、とりわけ、加圧水素を受け取るように構成された水素入口と、水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口と、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口と、水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータと、水素圧力レギュレータと再循環入口から受け取った水素を混合し、水素混合物を水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュールと、水素燃料電池のアノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュールと、測定される差圧に基づいて、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラと、を含む水素燃料電池アノード制御システムに具体化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水素を受け取るように構成された水素入口と、
水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口と、
前記アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口と、
前記水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータと、
前記水素圧力レギュレータ及び前記再循環入口から受け取った水素を混合し、水素混合物を前記水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュールと、
前記水素燃料電池の前記アノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュールと、
前記測定された差圧に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラと、を備える、
水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記差圧がほぼゼロとなるように水素圧力を制御するように構成される、
請求項1に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項3】
前記水素圧力レギュレータは、制御可能なガス圧力レギュレータシステムである、
請求項1又は請求項2に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項4】
前記水素再循環モジュールは、ガス再循環ポンプを備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項5】
前記水素再循環モジュールは、ジェットポンプを備える、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項6】
前記燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートをさらに備え、前記コントローラは、前記電流測定値に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも一方を制御するようにさらに構成される、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項7】
前記カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されるコンプレッサの入力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートをさらに備え、前記コントローラは、前記電流測定値に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも一方を制御するようにさらに構成される、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、所定の制御モデルに基づいて水素圧力を制御するように構成される、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項9】
前記水素混合物の湿度レベルを制御するように構成された湿度コントローラをさらに備える、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項10】
前記オーバーフローした水素又は前記水素混合物の少なくとも一方の窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器をさらに備える、
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記オーバーフローした水素の圧力を制御するように構成された可変圧力制御バルブを制御するようにさらに構成される、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の水素燃料電池アノード制御システム。
【請求項12】
アノードマニホールド圧力を測定するステップと、
カソードマニホールド圧力を測定するステップと、
前記測定されたアノードマニホールド圧力及び前記測定されたカソードマニホールド圧力に基づいて、差圧値を特定するステップと、
前記特定された差圧に基づいて、水素圧力レギュレータ、水素再循環モジュール又はアノード出口バルブのうちの少なくとも1つを制御するステップと、を備える、
水素燃料電池のアノードマニホールド圧力を制御する方法。
【請求項13】
加圧水素を受け取るステップと、
前記水素圧力レギュレータにより、前記受け取った加圧水素を調整圧力に調整するステップと、
アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るステップと、
水素再循環モジュールにより、前記水素圧力レギュレータから受け取った加圧水素を前記受け取ったオーバーフローした水素と混合し、水素混合物を水素出口に供給するステップと、をさらに備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特定された差圧に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するステップは、前記差圧がほぼゼロとなるように、前記アノードマニホールド圧力を制御するステップをさらに備える、
請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水素燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取るステップと、
前記受け取った電流測定値に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するステップと、をさらに備える、
請求項12乃至請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されたコンプレッサの消費電力に基づく電流測定値を受け取るステップと、
前記受け取った電流測定値に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するステップと、をさらに備える、
請求項12乃至請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コントローラにより、所定の湿度レベルに基づいて前記水素混合物から湿度を制御可能に添加又は除去するために、湿度制御モジュールを制御するステップをさらに備える、
請求項12乃至請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記オーバーフローした水素又は前記水素混合物の少なくとも1つの窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器モジュールをさらに備える、
請求項12乃至請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
可変圧力制御により、前記オーバーフローした水素の圧力を制御するステップをさらに備える、
請求項12乃至請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
アノードマニホールド、スタック及びカソードマニホールドを備える水素燃料電池と、
水素燃料電池アノード制御システムであって、
加圧水素を受け取るように構成された水素入口と、
水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口と、
前記アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口と、
前記水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータと、
前記水素圧力レギュレータ及び前記再循環入口から受け取った水素を混合し水素混合物を前記水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュールと、
前記水素燃料電池の前記アノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュールと、
前記測定された差圧に基づいて、前記水素圧力レギュレータ又は前記水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラと、を備える前記水素燃料電池アノード制御システムと、を備える、
水素燃料電池アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月20日に出願された米国仮特許出願第63/262,798号及び2022年10月19日に出願された米国特許出願第18/047,976号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、水素燃料電池に関する。
【背景技術】
【0003】
水素燃料電池は、触媒作用による電気化学的プロセスで水素と酸素を消費し、主な生成物として電気を生成し、排出物として水と熱を生成するように構成された装置である。このような装置の魅力は明白であるが、その構造が高度にカスタマイズされ用途に特化していること、大量生産の基盤が開発されていないためコストが高いこと、燃料インフラがまだ確立されていないこと、及び、従来の制御では堅牢性及び耐久性に欠けることから、その実現は遅れている。制御を改善することで、効率及び出力を向上させるだけでなく、堅牢性ならびに耐久性も向上させることができ、結果として燃料電池システムの提案価値が高まる。
【発明の概要】
【0004】
一般に、本明細書は、水素燃料電池における水素供給を制御するためのシステム及び技術について説示している。
【0005】
第1の実施例において、水素燃料電池アノード制御システムは、加圧水素を受け取るように構成された水素入口と、水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口と、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口と、水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータと、水素圧力レギュレータ及び再循環入口から受け取った水素を混合し、水素混合物を水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュールと、水素燃料電池のアノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュールと、測定された差圧に基づいて、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラと、を含む。
【0006】
実施例1に係る第2の実施例では、コントローラは、差圧がほぼゼロとなるように水素圧力を制御するように構成される。
【0007】
実施例1又は2に係る第3の実施例では、水素圧力レギュレータは、制御可能なガス圧力レギュレータシステムである。
【0008】
実施例1から3のいずれか1つに係る第4の実施例では、水素再循環モジュールは、ガス再循環ポンプを含む。
【0009】
実施例1から4のいずれか1つに係る第5の実施例では、水素再循環モジュールは、ジェットポンプを含む。
【0010】
実施例1から5のいずれか1つに係る第6の実施例では、システムは、燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートをさらに含み、コントローラは、電流測定値に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される。
【0011】
実施例1から6のいずれか1つに係る第7の実施例では、システムは、カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されるコンプレッサの入力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートをさらに含み、コントローラは、電流測定値に基づいて、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される。
【0012】
実施例1から7のいずれか1つに係る第8の実施例では、コントローラは、所定の制御モデルに基づいて水素圧力を制御するように構成される。
【0013】
実施例1から8のいずれか1つに係る第9の実施例では、システムは、水素混合物の湿度レベルを制御するように構成された湿度コントローラをさらに含む。
【0014】
実施例1から9のいずれか1つに係る第10の実施例では、システムは、オーバーフローした水素又は水素混合物の少なくとも1つの窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器をさらに含む。
【0015】
実施例1から10のいずれか1つに係る第11の実施例では、コントローラは、オーバーフローした水素の圧力を制御するように構成された可変圧力制御バルブを制御するようにさらに構成される。
【0016】
第12の実施例において、水素燃料電池のアノードマニホールド圧力を制御する方法は、アノードマニホールド圧力を測定することと、カソードマニホールド圧力を測定することと、測定されたアノードマニホールド圧力と測定されたカソードマニホールド圧力に基づいて差圧値を特定することと、特定された差圧に基づいて、水素圧力レギュレータ、水素再循環モジュール又はアノード出口バルブの少なくとも1つを制御することと、を含む。
【0017】
実施例12に係る第13の実施例では、本方法は、加圧水素を受け取ることと、水素圧力レギュレータにより受け取った加圧水素を調整圧力に調整することと、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取ることと、水素再循環モジュールにより、水素圧力レギュレータから受け取った加圧水素を、受け取ったオーバーフローした水素と混合し水素混合物を水素出口に供給することと、をさらに含む。
【0018】
実施例12又は13に係る第14の実施例では、特定された差圧に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することは、差圧がほぼゼロとなるようにアノードマニホールド圧力を制御することをさらに含む。
【0019】
実施例12から14のいずれか1つに係る第15の実施例では、本方法は、水素燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取ることと、受け取った電流測定値に基づいて、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することと、をさらに含む。
【0020】
実施例12から15のいずれか1つに係る第16の実施例では、本方法は、カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されるコンプレッサの消費電力に基づく電流測定値を受け取ることと、受け取った電流測定値に基づいて、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することと、をさらに含む。
【0021】
実施例12から16のいずれか1つに係る第17の実施例では、本方法は、コントローラにより、湿度制御モジュールを制御して、所定の湿度レベルに基づいて水素混合物から湿度を制御可能に添加又は除去することをさらに含む。
【0022】
実施例12から17のいずれか1つに係る第18の実施例では、本方法は、オーバーフローした水素又は水素混合物の少なくとも1つの窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器モジュールをさらに含む。
【0023】
実施例12から18のいずれか1つに係る第19の実施例では、本方法は、可変圧力制御バルブにより、オーバーフローした水素の圧力を制御することをさらに含む。
【0024】
第20の実施例では、水素燃料電池アセンブリは、アノードマニホールド、スタック及びカソードマニホールドを含む水素燃料電池、並びに加圧水素を受け取るように構成された水素入口、水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口、水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータ、水素圧力レギュレータ及び再循環入口から受け取った水素を混合し水素混合物を水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュール、水素燃料電池のアノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュール、及び測定された差圧に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラを含む水素燃料電池アノード制御システム、を含む。
【0025】
例示的な実施形態において、水素燃料電池アノード制御システムは、加圧水素を受け取るように構成された水素入口と、水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口と、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口と、水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータと、水素圧力レギュレータ及び再循環入口から受け取った素を混合し水素混合物を水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュールと、水素燃料電池のアノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュールと、測定された差圧に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラと、を含む。
【0026】
様々な実施形態として、以下の特徴の一部、又は全てを含むことも、まったく含まないこともできる。コントローラは、差圧がほぼゼロとなるように水素圧力を制御するように構成することができる。水素圧力レギュレータは、制御可能なガス圧力レギュレータシステムとすることができる。水素再循環モジュールは、ガス再循環ポンプを含むことができる。水素再循環モジュールは、ジェットポンプを含むことができる。システムは、燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートを含むことができ、コントローラは、電流測定値に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される。システムは、カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されたコンプレッサの入力電力に基づく電流測定値を受け取るように構成された電流フィードバック入力ポートを含むことができ、コントローラは、電流測定値に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される。コントローラは、所定の制御モデルに基づいて水素圧力を制御するように構成することができる。システムは、水素混合物の湿度レベルを制御するように構成された湿度コントローラを含むことができる。システムは、オーバーフローした水素又は水素混合物の少なくとも1つの窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器を含むことができる。コントローラは、オーバーフローした水素の圧力を制御するように構成された可変圧力制御バルブを制御するようにさらに構成することができる。
【0027】
例示的な実施態様において、水素燃料電池のアノードマニホールド圧力を制御する方法は、アノードマニホールド圧力を測定することと、カソードマニホールド圧力を測定することと、測定されたアノードマニホールド圧力及び測定されたカソードマニホールド圧力に基づいて差圧値を特定することと、特定される差圧に基づいて、水素圧力レギュレータ、水素再循環モジュール又はアノード出口バルブの少なくとも1つを制御することと、を含む。
【0028】
様々な実施態様として、以下の特徴の一部、又は全てを含むことも、まったく含まないこともできる。本方法は、加圧水素を受け取ること、水素圧力レギュレータによって受け取った加圧水素を調整圧力に調整すること、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取ること、水素再循環モジュールによって水素圧力レギュレータから受け取った加圧水素を受け取ったオーバーフローした水素と混合すること、及び水素混合物を水素出口に供給することを含むことができる。特定された差圧に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することは、差圧がほぼゼロとなるように、アノードマニホールド圧力を制御することを含み得る。本方法は、水素燃料電池の出力電力に基づく電流測定値を受け取ることと、受け取る電流測定値に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することと、を含むことができる。本方法は、カソードマニホールドに酸素を供給するように構成されるコンプレッサの電力消費に基づく電流測定値を受け取ることと、受け取った電流測定値に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御することと、を含むことができる。本方法は、コントローラによって、所定の湿度レベルに基づいて水素混合物から湿度を制御可能に添加又は除去する湿度制御モジュールを制御することを含むことができる。本方法は、オーバーフローした水素又は水素混合物の少なくとも1つの中の窒素レベルを低減するように構成された窒素分離器モジュールを含むことができる。本方法は、可変圧力制御バルブによって、オーバーフローした水素の圧力を制御することを含むことができる。
【0029】
別の例示的な実施形態において、水素燃料電池アセンブリは、アノードマニホールド、スタック、及びカソードマニホールドを含む水素燃料電池、並びに、加圧水素を受け取るように構成された水素入口、水素燃料電池のアノードマニホールドに流体的に結合するように構成された水素出口、アノードマニホールドからオーバーフローした水素を受け取るように構成された再循環入口、水素入口から加圧水素を受け取るように構成された水素圧力レギュレータ、水素圧力レギュレータ及び再循環入口から受け取った水素を混合し水素混合物を水素出口に供給するように構成された水素再循環モジュール、水素燃料電池のアノードマニホールドとカソードマニホールドとの間の差圧を測定するように構成された差圧測定モジュール及び、測定された差圧に基づいて水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラを有する水素燃料電池アノード制御システムを含む。
【0030】
本明細書に記載のシステム及び技術は、以下の利点の1つ以上を提供し得る。第一に、水素サブシステムは、燃料電池アセンブリの迅速な実装を提供することができる。第二に、本システムは燃料電池の効率を向上させることができる。第三に、本システムは燃料電池の寿命を向上させることができる。第四に、本システムは、燃料電池アセンブリに、燃料電池システムの保守性を向上させるモジュール式ソリューションを提供することができる。
【0031】
1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、明細書、図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】水素燃料電池システムの一例を示す概略図である。
【0033】
【
図2】水素燃料電池システムの他の一例を示す概略図である。
【0034】
【
図3】電子式圧力レギュレータシステムの一例を示す斜視図(透視図)である。
【0035】
【0036】
【0037】
【
図6】水素燃料電池における水素供給制御プロセスの一例を示すフローチャートである。
【0038】
【
図7】一般的なコンピュータシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書では、水素燃料電池における水素供給を制御するためのシステム及び技術について説明する。一般に、アノード燃料モジュールは、有用な水素燃料電池アプリケーションを迅速に実装するために水素燃料電池スタックと組み合わせて用いることができる統合モジュールとして、流体流導管、制御ループ電子回路、制御可能バルブ及び関連するコンポーネントと共に構成される。一般に、アノード燃料モジュールは、電気需要に基づいて燃料電池アノードへの水素の流れを制御し、燃料電池カソードにおける酸素(例えば、空気)の量を制御し、燃料電池アノードにおける窒素及び水の量を制御し、燃料電池膜を隔てた差圧を監視及び制御し、アノード(陽極)における水素の効率的な再循環を提供するように構成される。
【0040】
図1は、水素燃料電池システム100の一例を示す概略図である。システム100は、負のアノード膜113のアノードマニホールド112、スタック114、及び、正のカソード膜117のカソードマニホールド116を備える水素燃料電池110を含む。アノードマニホールド112は、水素燃料を受け取るように構成され、カソードマニホールドは、一般に、コンプレッサ124によって圧縮されて又はその他の方法で供給される空気122から酸素120を受け取るように構成される。水素燃料電池では、アノードマニホールド内の触媒が水素分子を陽子と電子に分離し、それぞれ異なる経路でカソードに向かう。電子は電力経路(power outlet)120を通って外部回路に向かい、電気の流れを作る。陽子はスタック114を通ってカソードに至り、そこで陽子は酸素及び電子と結合し、排出132で水と熱を生成する。
【0041】
スタック114は、水素燃料電池110内で起こる電気化学反応から直流(DC)電力の形で電気を生成する。図で示した例では、単一の水素燃料電池が示されているが、いくつかの実施形態では、複数(例えば、数十個又は数百個)の燃料電池を組み合わせることができる。例えば、単一の燃料電池は、通常、約1Vを生成することができるので、いくつかの実施形態では、個々の燃料電池を複数直列に組み合わせて燃料電池スタックとすることができる。例えば、燃料電池スタックの中には数百個の燃料電池を含むものもある。いくつかの実施形態では、燃料電池によって生成される電力量は、燃料電池のタイプ、セルのサイズ、作動温度及びセルに供給されるガスの圧力などの様々な要因に依存し得る。
【0042】
アノードマニホールド112は、触媒層の集合体を含む。いくつかの実施形態において、触媒層は、大きな表面積を有する炭素支持体上に分散されるナノメートルサイズの白金微粒子を含むことができる。この白金微粒子触媒は、イオン伝導性ポリマー(例えば、アイオノマー)と混合し、膜とガス拡散層(GDL)との間に配置することができる。アノードマニホールド112では、白金触媒によって水素分子を陽子と電子に分離することを可能にする。カソードマニホールド116では、白金触媒がアノードマニホールド112で生成される陽子と反応することによって酸素還元を可能にし、水を生成する。アイオノマーは触媒層に混合されると、非導電性でありながら、陽子がこれらの層を通過できるようになり、生成される電子を、電気回路を通って移動させて、電力を生成する。
【0043】
GDL(図示せず)は、触媒層の外側に配置され、反応ガスを触媒層に運ぶとともに、反応によって生成される水を除去するように構成される。いくつかの実施形態において、GDLは、炭素繊維がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で部分的に被覆されたカーボン紙のシートで作ることができる。ガスはGDLの細孔を通って速やかに拡散し、細孔は疎水性であるPTFEによって開いた状態に保たれ、過剰な水の蓄積を防ぐことができる。いくつかの実施形態では、GDLの内表面を、PTFEと混合した高表面積炭素の薄層(例えば、微多孔層)で被覆することができる。微多孔層は、水の保持(例えば、膜の導電性の維持を助けることができる)と水の放出(例えば、水素及び酸素がアノードマニホールド112及びカソードマニホールド116に拡散することができるように細孔を開いた状態に維持するために行われる)との間のバランス調整を助けることができる。
【0044】
コンプレッサ124は、入口で受け取った大気を圧縮し、流体導管によってカソードマニホールド116の入口に流体的に接続された出口に、所定の圧力で供給するように構成される。一般に、燃料電池の性能は反応ガスの圧力が高くなるにつれて向上する。アノードマニホールド112内の圧力は、アノードマニホールドに流入する加圧水素の供給と、流量コントローラ119(例えば、固定オリフィス又は可変オリフィス)を通る流出する流れによって生成される。カソードマニホールド116内の圧力は、コンプレッサ124から供給される圧力に基づく。
【0045】
いくつかの実施形態において、コンプレッサ124は、入口からの空気122の圧力を周囲大気圧の約2~4倍まで上昇させるように構成することができる。しかしながら、アノードマニホールド112及びカソードマニホールド116内の反応ガスの圧力が不均衡である場合、差圧134が膜113、116及びスタック114を隔てて形成され得る。過度の圧力差(例えば、ゼロ付近の所定の許容範囲を超える差)は、膜113、116を損傷する可能性があるため、差圧134を防止、除去、又は他の方法で低減するためには、反応ガスの圧力を比較的等しく保つ必要がある。
【0046】
燃料電池110への水素の流れを制御し、差圧134を制御するために、水素燃料電池アノード制御システム150が提供される。一般に、システム150は、水素燃料電池ソリューションの迅速な展開及び設定を可能にするために、水素流体回路によって燃料電池110に迅速に接続することができるモジュール式システムとして構成され、閉じたフィードバックループに基づいて水素流を能動的に制御することによって、燃料電池膜を隔てた差圧を制御することができる。
【0047】
システム150は、加圧水素供給源に結合され所定の圧力で加圧水素154を受け取るように構成される水素入口ポート152と、アノードマニホールド112に加圧水素158を供給するように構成される流体導管に結合するように構成される水素出口ポート156と、を含む。システム150はまた、アノードマニホールド112の出口にも結合する流体導管に結合された再循環入口ポート160を含む。再循環入口ポート160は、アノードマニホールド122から再循環(例えば、オーバーフローした水素)ガス162を受け取るように構成される。再循環ガス162は、消費されていない水素を豊富に含む可能性があるため、システム150は、システム100を通して未使用の水素を再循環させ、燃料電池110によって消費される水素を補充するために加圧水素158を用いることによって、水素効率を維持するように構成される。
【0048】
消費される水素の補充は、電子制御圧力レギュレータシステム(EPRS)170とジェットポンプ172によって行われる。EPRS170は、加圧水素158を受け取り、圧力を使用可能なレベルまで制御可能に減圧するように構成される。EPRS170の例については、2018年3月19日に出願された米国特許出願第11,092,091号に詳しく記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。EPRS170は、コントローラ174によって制御され、燃料電池110によって消費される水素の補充を制御し、燃料電池100へ水素を供給するための全体的な圧力を制御するように構成される。
【0049】
ジェットポンプ172は、(運転余剰により)消費されなかった水素をスタック113から再循環させ、水素送り込み機構に戻すように構成される。ジェットポンプ172の作動は、コントローラ174によって制御される。ジェットポンプ172の例については、米国特許出願第10,316,803号(2017年9月25日出願)、及び米国特許出願第10,995,705号(2019年2月7日出願)に詳しく記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。特許第10,316,803号では、ジェットポンプは、排気ガス再循環(EGR)の文脈で用いられるが、ジェットポンプ172の例では、オーバーフローした水素を再循環させるために用いられる。詳細は後述するが、ジェットポンプ172は、2つの入口(inlet、吸気口)と1つの出口(outlet、排気口)を有し、(例えば、二次流体を受け取るように構成される)一方の入口は、再循環水素を受け取るためにアノードマニホールド112に流体的に結合して構成され、(例えば、一次加圧流体を受け取るように構成される)他方の入口は、新鮮な水素受け取るためにEPRS170に結合して構成される。ジェットポンプは、新鮮な流れが、再循環ガスの流れを新鮮な水素の流れに引き込む、吸い込む、汲み上げる又はその他の方法で促進する、ベンチュリー効果を生み出すことができるように構成された、収束/分岐流路で構成される。新鮮な水素及び再循環水素は、ジェットポンプ172内で混合され出口から排出され、適切に設計された面積膨張(area expansion)により、速度を圧力に変換して圧力を回復する。いくつかの実施態様では、ジェットポンプ172のベンチュリー効果により、ジェットポンプ172は、インペラ又は他の可動部品を用いずに、再循環ガスの流れを促すことができる。いくつかの構成では、ジェットポンプ172は、外部から供給される総ポンプ電力(これは寄生電力消費を表し、したがって、システム全体の電気効率を低下させる)を低減するために、動力付きのインペラと共に用いられ得る。詳細は後述するが、コントローラ174は、EPRS170及びジェットポンプ172の作動を制御し、必要に応じてアノード出口オリフィスを制御してアノードマニホールド112内の圧力を制御するように構成される。
【0050】
システム150は、窒素分離器176及び窒素パージバルブ178をさらに含む。窒素分離器は、ジェットポンプ172の出口に流体的に結合している。燃料電池110の運転中、カソードマニホールド116内の空気から、窒素がスタックを隔ててアノードマニホールド112に移動(例えば、窒素クロスオーバー)する。しかしながら、窒素は時間の経過とともに蓄積し、アノードマニホールド112への流れにおける窒素の存在は、水素によって占有され得る容積を占め、膜の細孔を塞ぎ、GDLへの水素のアクセスを制限し、選択された圧力で存在する水素の量を減少させ、システム100の効率を低下させる。窒素分離器176は、流れから窒素を除去し(例えば、窒素含有量を約5%以下に低減し)、パージバルブ178を通してシステム100から窒素を除去するように構成される。しかしながら、窒素を除去するとアノードの流れ内の分子体積が解放(frees up)され、アノード圧力の低下を引き起こす。窒素分離器176及び窒素パージバルブ178は、コントローラ174によって制御される。いくつかの実施態様では、コントローラ174は、アノードマニホールド112内のガス圧力に部分的に基づいて窒素分離器176を制御することができる。いくつかの実施形態では、窒素分離器が省略される場合があり、窒素を含む再循環ループ内の水素も除去(purge)される可能性があるため、消費可能な水素も失われることになる。これは、水素消費量の約5~7%の損失となる可能性があり、全体として非常に大きな効率損失となる。
【0051】
システム150は、湿度コントローラ180及び凝縮水パージバルブ182をさらに含む。湿度コントローラ180は、窒素分離器176の出口に流体的に結合している。燃料電池110の運転中、アノードマニホールド112の水素ガスがカソードマニホールド116に供給される空気からの酸素と結合して水が形成され、追加の水(例えば、空気中の周囲湿度)がカソードマニホールド116からアノードマニホールド112にクロスオーバーする可能性がある。しかしながら、燃料電池110の効率的かつ長期的な運転を促進するためには、この湿度を制御する必要がある。いくつかの実施形態では、湿度コントローラは、コントローラ174によって制御することができる。いくつかの実施形態では、湿度コントローラ180は、独立して(例えば、所定の湿度閾値レベルに基づいて)作動することができる。
【0052】
過度の湿度は、膜113、117の細孔を塞ぎ、燃料電池110の効率を低下させる可能性がある。湿度コントローラ180は、水素流中の湿度を所定の湿度レベルまで制御可能に低下させ、パージバルブ182を通して抽出された水を除去するように構成される。しかしながら、水はアノードマニホールドへの水素流の容積を占めるため、湿度の除去は圧力の低下を引き起こす可能性がある。詳細は後述するが、コントローラ174は、アノードマニホールド112内の圧力を制御するように構成される。
【0053】
湿度が十分でない場合も、燃料電池に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、膜113、117は一般に乾燥すると適切に機能せず、最終的にはひび割れ又は破損して、燃料電池の効率低下及び/又はシステム故障につながる可能性がある。湿度コントローラ180は、水184の流入を受けて、水素流を所定の湿度レベルに制御可能に加湿するように構成される。しかしながら、水は水素流内の容積を占有するため、湿度が加わるとアノードマニホールド112の圧力が変化する可能性がある。詳細は後述するが、コントローラ174は、アノードマニホールド112内の圧力を制御するように構成される。
【0054】
コントローラ174は、圧力センサ及び温度センサとして構成されるアノードセンサ138から、アノードマニホールド112内の温度及び圧力を表す温度信号及び圧力信号を受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、温度センサ及び圧力センサの機能は、別々のセンサによって提供されてもよい。コントローラ174はまた、圧力センサとして構成されるカソードセンサ139から、カソードマニホールド116内の圧力を表す圧力信号を受け取るように構成される。コントローラ174は、圧力センサ138及び圧力センサ139によって提供される信号間の差を比較することによって、差圧136を特定するように構成される。いくつかの実施態様では、圧力信号及び温度信号は、コントローラ174で使用され得、アノードマニホールド112における圧力のモデルに基づくフィードバック制御を実行することができる。いくつかの実施形態では、制御精度要求(±1%)のため2つの独立した圧力センサの代わりに、本物の「デルタ圧力センサ」を用いることができ、いくつかの実施態様では、差圧目標は約100~200mbar(ミリバール)であり得、供給圧力は約1~4bar(バール)絶対圧であり得る。
【0055】
燃料測定バルブ161は、アノードマニホールド112の出口流路面積を制御するように構成される。バルブ161を制御することにより、コントローラ174はアノードマニホールド112内の背圧を制御することができる。さらに、ジェットポンプ172は、再循環流量測定に用い得る。
【0056】
コントローラ174は、差圧134及び感知された温度に基づいて、アノードマニホールド112における圧力を制御するように構成される。例えば、差圧134は、必要とされる圧力変化の量を表すことができる。追加の圧力が必要な場合、コントローラ174はEPRS170を制御してより多くの新鮮な水素を水素流に流入させることができ、コントローラ174は、ジェットポンプ172を制御して水素流に再流入させる再循環水素の量を減少させることができ(例えば、ジェットポンプ172を通る新鮮及び/又は再循環流を制御するように構成される1つ以上のバルブ、及び/又は可変面積ノズルを作動させることによって背圧を生成する)、及び/又はコントローラ174はバルブ161又はバルブ119を制御してアノードマニホールド112内の背圧を増加させることができる。圧力が高すぎる場合、コントローラ174は、EPRS170を制御して新鮮な水素の水素流への流れを減少させ、ジェットポンプ172を制御して(例えば、再循環流及び/又は新鮮流を制御するジェットポンプ172内の1つ以上のバルブを作動させて)水素流に再流入させる再循環水素の量を増加させ、及び/又は、バルブ161を制御してアノードマニホールド112内の背圧を減少させることができ、さらに、迅速に圧力を減少させる必要がある場合は、窒素パージバルブを開くことができる。水素が燃料電池で消費されるにつれて、アノードマニホールド112内の圧力は低下する。いくつかの実施態様では、水素流の湿度は、コントローラ174によって測定し用いることができ、アノードマニホールド112における圧力のモデルに基づくフィードバック制御を実行することができる。
【0057】
コントローラ174は、湿度コントローラ108を制御して、水素流から容積占有水を添加又は除去することにより、圧力を制御することもできる。コントローラ174はまた、窒素分離器176を制御して、水素流中の窒素を選択的に除去又は保持することにより、圧力を制御することもできる。いくつかの実施態様では、水素流中の窒素濃度は、コントローラ174によって測定し用いることができ、アノードマニホールド112における圧力の、モデルに基づくフィードバック制御を実行することができる。
【0058】
コントローラ174はまた、燃料電池110によって消費される水素量に基づいて圧力を制御するように構成される。電流センサ190は、燃料電池110の出力電力130の電流量を感知し、電流測定信号をコントローラ174に供給するように構成される。燃料電池110によって消費される水素の量は、生成される出力電力130の量に比例するため、コントローラ174は、消費量を補うために、加圧水素154から必要とされる追加の水素量をモデル化し、推定及び/又は予測することができる。
【0059】
コントローラ174はまた、アノードマニホールド112における圧力の(例えば、モデルに基づく)フィードフォワード制御を実行するように構成される。電流センサ191は、コンプレッサ124への入力電力192の電流量を感知し、コントローラ174に電流測定信号を供給するように構成される。カソードマニホールド116に供給される圧力量は、カソードマニホールド116に存在し得る圧力と比例し、及び/又は予測されるため、電流センサ191からの電流信号は、カソードマニホールド116の現在の圧力をモデル化して推定し、及び/又はカソードマニホールド116の将来の圧力を予測するために、コントローラ174によって使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、外部燃料電池システムコントローラからの「臨機応変の(heads-up、先行の)」電力要求により、性能を向上させることができる。いくつかの実施態様では、電力設定値を特定することができ、さらに、外部燃料電池システムコントローラは、有限の所定の期間にわたってコンプレッサの出力を増加させて(ramp、つりあげて)新しい設定値に移行させることができる。いくつかの例では、これを事前に検知することで、コントローラ174が補充水素の必要量を予測し、フィードフォワードモデルによって水素消費量を正確に一致させることができ、同時に再循環及びその他の流れを管理してアノードマニホールド圧力を維持し、膜を隔てた差圧を維持することができる。コントローラ174は、カソードマニホールド圧力を監視することができるのに対して、外部燃料電池システムコントローラは、カソードマニホールド116の変化率及び/又は目標圧力値を特定することができる。例えば、コントローラ174は、燃料電池の出力電流、コンプレッサへの電流といった不確実な情報と、公知の数学的-物理学的関係(例えば、モデル)の情報を橋渡しすることができ、物理モデルへの入力である現在及び/又は将来の水素需要を特定することができ、出力は、膜を隔てた差圧の非常に小さな偏差を維持しながら消費需要の変化を満たすように構成されるアクチュエータ設定とすることができる。
【0061】
図2は、他の一例の水素燃料電池システム200を示す概略図である。一般に、システム200は、
図1の例示的なシステム100と実質的に類似しており、水素燃料電池アノード制御システム250を備え、EPRS170が圧力レギュレータ270に置き換えられ、EGRシステム172が再循環ポンプ272に置き換えられている。
【0062】
いくつかの実施形態では、圧力レギュレータ270は、加圧水素154の圧力を所定の固定圧力に調整するように構成される固定圧力レギュレータとすることができる。いくつかの実施形態では、圧力レギュレータ270は、所定の圧力に設定できる手動調整可能な圧力レギュレータとすることができる。いくつかの実施形態では、圧力レギュレータ270は、制御可能な圧力レギュレータとすることができる。例えば、圧力レギュレータ270は、コントローラ174によって、コントローラ174により予め特定される制御圧力に制御することができる。
【0063】
再循環ポンプ272は、アノード再循環ブロワであり、スタック113から(運転余剰により)消費されなかった水素を再循環させ、水素流に戻すように構成される。再循環ポンプ272の作動は、コントローラ174によって制御される。
【0064】
図3は、例示的な電子式圧力レギュレータシステム(EPRS)300の斜視図である。いくつかの実施形態では、EPRS300は、
図1の例示的なEPRS170とすることができる。
【0065】
EPRS300は、入口310及び出口320、ならびに入口310から出口320への流れを選択的に許可、制限、及び/又は遮断するように構成されるバルブ330を含む。バルブ330は、外部コントローラ(例えば、
図1のコントローラ174)によって制御されるように構成されるアクチュエータ340によって作動される。EPRS300は、高精度かつ大規模な遮断をするためにポート付きボールバルブを用い、バルブを正確に動かすのに十分なトルク能力を有するロータリーバルブによって作動される。いくつかの実施形態では、EPRS300はまた、水素一次流量を測定することを可能にする、モデルに基づく数学的処理を実装することができる。
【0066】
図4は、例示的なジェットポンプ400の斜視図である。いくつかの実施形態では、ジェットポンプ400は、
図1の例示的なジェットポンプ172とすることができる。
【0067】
ジェットポンプ400は、1つ以上のハウジング又はケーシング402で構成される。ケーシングの端壁の開口部は、ケーシング402によって画定される内部流路422の水素入口410及び出口420を画定する。内部流路422は、水素入口410からの流れを出口420に導き、ジェットポンプ400を通る流れを可能にする。ジェットポンプ400は、ケーシング402内で、水素入口410から出口420への流路に収束ノズルを含んでいる。この収束ノズルは、収束端に向かって流れ方向に収束する収束部分を含む。すなわち、収束ノズルの下流端(出口)は、収束ノズルの上流端(入口)よりも小さい断面積、例えば、小さい流路面積を有する。収束ノズルは、収束せず、断面の流路面積を変えることなく比較的直線のままである部分を含み得る。このような部分は、収束ノズルをジェットポンプ400内に保持するために用いることができる。ジェットポンプ400は、ガス受けハウジング430を含み、ハウジング430は、再循環流(例えば、例示的な再循環入口ポート160に接続され、再循環ガス162を受け取る)から、ガスハウジング430の内部受けキャビティに供給される、再循環流に流体的に接続される1つ以上のガス入口432を含む。図示された実施態様において、ハウジング430は、収束ノズルの一部が内部受けキャビティ422内にあるように、収束ノズルを取り囲む。収束ノズルは、収束ノズルの収束端からガスの自由噴流を形成するように配置される。さらに、ガス入口432は、収束ノズルの収束端の上流にある。図示された実施態様は、収束ノズルが少なくとも部分的にガス受けハウジング430内にあることを示しているが、他の設計を利用することもできる。
【0068】
収束-分岐ノズルは、収束ノズルの収束部分の下流にあり、収束端であるガス入口432からの流体流を受けるように流体的に結合している。混合を促進するために、収束-分岐ノズルの入口は、収束ノズルの出口よりも大きな面積を有する。収束-分岐ノズルは、水素入口410、スロート、出口420の3つの部分を含む。スロートは収束-分岐ノズルの最も狭い箇所であり、収束-分岐ノズルの水素入口410の下流に位置し、流体的に接続している。スロートで収束-分岐ノズルが狭くなることにより、収束-分岐ノズルを通過する流体流の流速が増加する。収束-分岐ノズルの出口420は、アノードマニホールド112に流体的に接続し、アノードマニホールド112の上流にある。スロートと出口420との間で、収束-分岐ノズルを通る流路の断面積が増加する。断面積の増加は流速を遅くし、流体流の圧力を上昇させる。場合により、断面積の増加は、ジェットポンプ400を隔てて圧力降下がゼロ、公称値(nominal、定格)、それ以外の場合は小さい値になるように、ジェットポンプ400内の圧力を増加させるような大きさにすることができる。
【0069】
図5は、差圧のチャート500である。チャート500は、例示的なアノードマニホールド圧力(P1)、例示的なカソードマニホールド圧力(P2)、及び差圧P3=P2-P1を示す。既存の燃料電池の中には、カソード圧力が2つの圧力のうち高い方になるように設計されるものもある。チャート500は、パワーアップ過渡(transient、移行)時に、スタック水素と空気消費量の増加により、P1及びP2の圧力が減少することを示している。チャート500は、独立して制御されるカソードマニホールド圧力の差圧の所定許容範囲内でアノード圧力を管理するために、モデルに基づく制御を用いて水素流を管理する方法の例を示す。
【0070】
図6は、水素燃料電池における水素供給制御プロセス600の一例を示すフローチャートである。いくつかの実施態様において、プロセス600は、
図1及び
図2の例示的なコントローラ174によって実行され得る。
【0071】
610では、アノードマニホールド圧力が測定される。例えば、コントローラ174は、センサ138から圧力信号を読み取り、アノードマニホールド112内の圧力を測定することができる
【0072】
620では、カソードマニホールド圧力が測定される。例えば、コントローラ174は、センサ139から圧力信号を読み取り、カソードマニホールド116内の圧力を測定することができる。
【0073】
630では、測定されたアノードマニホールド圧力及び測定されたカソードマニホールド圧力に基づいて、差圧値が特定される。例えば、コントローラ174は、センサ138から特定される圧力値とセンサ139から特定される圧力値とを比較(例えば、減算)し、差圧134を特定することができる。
【0074】
640では、水素圧力レギュレータ又は水素再循環モジュールの少なくとも1つが、特定された差圧に基づいて制御される。例えば、コントローラ174は、EPRSモジュール170又はジェットポンプ172の一方又は両方の作動を制御して、アノードマニホールド112の圧力を上昇又は下降させ、差圧134をゼロ又は別の適切な所定の値に向けて駆動することができる。
【0075】
図7は、一般的なコンピュータシステム700の一例の概略図である。システム700は、一実施態様に従って、方法300に関連して説明する操作のために用いることができる。例えば、システム700は、
図1及び
図2の例示的なコントローラ174に含まれ得る。
【0076】
システム700は、プロセッサ710、メモリ720、記憶装置730、及び入出力装置740を含む。各コンポーネント710、720、730、及び740は、システムバス750を用いて相互に接続されている。プロセッサ710は、システム700内で実行する命令を処理することができる。一実施態様では、プロセッサ710はシングルスレッドプロセッサである。別の実施態様では、プロセッサ710はマルチスレッドプロセッサである。プロセッサ710は、メモリ720又は記憶装置730に記憶された命令を処理して、入出力装置740上のユーザインタフェースにグラフィカル情報を表示することができる。
【0077】
メモリ720は、システム700内の情報を記憶する。一実施態様では、メモリ720はコンピュータ読取可能媒体である。一実施態様では、メモリ720は揮発性メモリユニットである。別の実施態様では、メモリ720は不揮発性メモリユニットである。
【0078】
記憶装置730は、システム700に大容量記憶を提供することができる。一実施態様では、記憶装置730はコンピュータ読取可能媒体である。様々な異なる実施態様では、記憶装置730は、フロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置又はテープ装置であってもよい。
【0079】
入出力装置740は、システム700に入出力操作を提供する。一実施態様では、入出力装置740は、キーボード及び/又はポインティングデバイスを含む。別の実施態様では、入出力装置740は、グラフィカルユーザインタフェースを表示するための表示装置を含む。
【0080】
説明した機能は、デジタル電子回路、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらを組み合わせて実装することができる。本装置は、プログラム可能なプロセッサによる実行のために、情報担体、例えば機械読取可能記憶装置において実体的に具現化されたコンピュータプログラム製品に実装することができ、方法ステップは、入力データに対して動作し出力を生成することによって、説明した実装の機能を実行するための命令プログラムを実行するプログラム可能なプロセッサによって実行することができる。説明した機能は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、データ及び命令を送信するように結合した少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおいて有利に実装することができる。コンピュータプログラムは、ある作動を実行するため、又はある結果をもたらすために、直接若しくは間接的にコンピュータで用いることができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタプリタ型言語を含むあらゆる形式のプログラミング言語で記述することができ、独立型プログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど、あらゆる形式で展開することができる。
【0081】
命令プログラムの実行に適したプロセッサには、一例として、汎用のマイクロプロセッサ及び特殊な用途のマイクロプロセッサの両方、並びにあらゆる種類のコンピュータの単独プロセッサ又は複数のプロセッサの1つが含まれる。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリ又はランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令とデータを受け取る。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するプロセッサと、命令及びデータを記憶する1つ以上のメモリである。一般に、コンピュータは、データファイルを記憶するための1つ以上の大容量記憶装置をも含むか、又は大容量記憶装置と通信するように作動可能に結合する。このような装置には、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びに光ディスクなどがある。コンピュータプログラムの命令及びデータを実体的に具体化するのに適した記憶装置には、一例として、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM及びDVD-ROMディスクなどのあらゆる形態の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補うことも、ASICに組み込むこともできる。
【0082】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本特徴は、ユーザに情報を表示するためのCRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示装置と、ユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボードと、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、を有するコンピュータ上に実装することができる。
【0083】
本特徴は、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含むコンピュータシステム、アプリケーションサーバ若しくはインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含むコンピュータシステム、グラフィカルユーザインタフェース若しくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネントを含むコンピュータシステム、又はそれらの任意の組み合わせで実装することができる。システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどのデジタルデータ通信の任意の形式又は媒体によって接続することができる。通信ネットワークの例としては、例えば、LAN、WAN、並びにインターネットを形成するコンピュータ及びネットワークが挙げられる。
【0084】
コンピュータシステムは、クライアント及びサーバを含むことができる。クライアント及びサーバは、一般に互いに遠隔にあり、通常、説明したようなネットワークを介してインタラクト(相互作用)する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバの関係を有するコンピュータプログラムに依って生じる。
【0085】
以上、いくつかの実施態様を詳細に説明したが、他の変更も可能である。さらに、図に描かれた論理フローは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序、又は連続した順序を必要としない。さらに、説明したフローに他のステップを設けたり、ステップを削除したりすることができ、説明したシステムに他のコンポーネントを追加又は削除することもできる。従って、他の実施態様も以下の特許請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】