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特表2024-537459水素圧縮機の乾燥ガスシールからの水素漏れ回収を含むアンモニア生成のためのシステム及び方法
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  • 特表-水素圧縮機の乾燥ガスシールからの水素漏れ回収を含むアンモニア生成のためのシステム及び方法 図1
  • 特表-水素圧縮機の乾燥ガスシールからの水素漏れ回収を含むアンモニア生成のためのシステム及び方法 図2
  • 特表-水素圧縮機の乾燥ガスシールからの水素漏れ回収を含むアンモニア生成のためのシステム及び方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水素圧縮機の乾燥ガスシールからの水素漏れ回収を含むアンモニア生成のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C01C1/04 J
C01C1/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524363
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022025493
(87)【国際公開番号】W WO2023078584
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021000028343
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリエルモ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】マティーナ,ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】マシ,ガイド
(72)【発明者】
【氏名】メアッジーニ,ジュリア
(57)【要約】
【解決手段】 システム(1)は、水素源(19)及び窒素源(15)を含む。水素圧縮ユニット(2)は、水素源(19)からの水素を圧縮する。水素圧縮ユニット(2)及び窒素源(19)に流体連結されたアンモニア合成ユニット(5)は、アンモニア合成ユニット(5)に送達される水素及び窒素ブレンドを圧縮する。使用時、シールガス供給ライン(37)は、圧縮水素を水素圧縮機の乾燥ガスシール(35)に送達し、分離ガス供給ライン(20)は、窒素を少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)に送達する。アンモニア合成ユニット(5)は、水素圧縮ユニット(2)からの圧縮水素、窒素源(15)からの窒素、及び乾燥ガスシール(35)からのガス排出を受け入れて処理するために、乾燥ガスシール(35)のベント(45、47)に流体結合される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを生成するためのシステム(1)であって、前記システム(1)が、
水素源(19)と、
窒素源(15)と、
前記水素源(19)に流体結合された吸引側(3.1)と、送達側(3.2)と、少なくとも1つの圧縮機(3;3A、3B、3C)と、を備える水素圧縮ユニット(2)であって、前記少なくとも1つの圧縮機(3;3A、3B、3C)が、ケーシング(3.3)と、前記ケーシング(3.3)内で回転するように収容された回転シャフト(3.4)と、前記回転シャフト(3.4)をシールして取り囲む少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)と、を備える、水素圧縮ユニット(2)と、
前記水素圧縮ユニット(2)及び前記窒素源(19)に流体結合されたアンモニア合成ユニット(5)と、
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)に圧縮水素を送達するように適合されたシールガス供給ライン(37)と、
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)に窒素を送達するように適合された分離ガス供給ライン(20)と、を含み、
前記アンモニア合成ユニット(5)が、前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)のベント(45、47)に流体結合され、前記水素圧縮ユニット(2)からの圧縮水素、前記窒素源(15)からの窒素、及び前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)から排出されるガスを受け取り、処理するように適合される、システム(1)。
【請求項2】
前記ベントが、一次ベント(45)と、二次ベント(47)と、を含み、前記一次ベント(45)及び前記二次ベント(47)が、前記アンモニア合成ユニット(5)に流体結合されている、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記水素源(19)が電解槽(21)を含む、請求項1又は2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
再生可能エネルギー源からの動力を電力に変換するように適合された電力変換ユニット(23)を更に備え、前記電解槽(21)が前記電力変換ユニット(23)によって電力供給される、請求項3に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記窒素源(15)が、空気から窒素を分離するように適合された窒素分離設備を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記アンモニア合成ユニット(5)が、前記水素圧縮ユニット(2)の前記送達側(3.2)、前記窒素源(15)、及び前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)の前記ベント(45、47)に流体結合された合成ガス圧縮機(11)を備え、前記合成ガス圧縮機(11)が、窒素及び水素を含有するガス状ブレンドを圧縮するように適合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)の前記ベント(45、47)から排出されるガスの圧力を前記アンモニア合成ユニット(5)のガス入口圧力まで上昇させるように適合された昇圧ユニット(53)を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記昇圧ユニット(53)は、前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)の前記ベント(45、47)から排出されるガスの前記圧力を前記水素圧縮ユニット(2)の送達圧力まで上昇するように適合されている、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
アンモニアを製造する方法であって、前記方法が、
水素圧縮ユニット(2)において水素を圧縮するステップであって、前記水素圧縮ユニット(2)が、水素源(19)に流体連結された吸引側(3.1)と、アンモニア合成ユニット(5)に流体連結された送達側と、少なくとも1つの圧縮機(3;3A、3B、3C)と、を備え、前記圧縮機が、ケーシング(3.3)と、前記ケーシング(3.3)内で回転するように収容された回転軸(3.4)と、前記回転軸(3.4)をシールして取り囲む少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)と、を備える、ステップと、
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)に、前記乾燥ガスシール(35)のためのシールガスとして圧縮水素を送達するステップと、
窒素源(15)から前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)に、前記乾燥ガスシール(35)のための分離ガスとして窒素を送達するステップと、
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)から排出されるガス状混合物を収集するステップであって、前記ガス状混合物が水素及び窒素を含有する、ステップと、
前記水素圧縮ユニット(2)からの圧縮水素、前記窒素源(15)からの窒素、及び前記排出されたガス状混合物を前記アンモニア合成ユニット(5)に送達し、そこからアンモニアを合成するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)の前記ベント(45、47)から排出されるガスの圧力を前記アンモニア合成ユニット(5)のガス入口圧力まで上昇させるステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水素と窒素のブレンドが前記水素圧縮ユニット(2)を通して処理されるように、窒素が前記水素圧縮ユニット(2)において水素とブレンドされる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
電解槽(21)で水素を生成するステップを更に含む、請求項9又は10又は11に記載の方法。
【請求項13】
再生可能エネルギー源からの動力を電力に変換するステップと、
前記電解槽(21)に前記電力を供給するステップと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
空気から窒素を分離するステップを更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水素圧縮ユニット(2)によって送達された水素、前記少なくとも1つの乾燥ガスシール(35)の前記ベント(45、47)から排出されたガス状混合物、及び窒素源(15)からの窒素を、前記アンモニア合成ユニット(5)の合成ガス圧縮機(11)内で圧縮するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニアを生成するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア(NH)は、水への溶解度が高いガスであり、水溶液中で使用されることが多い。アンモニアは、いくつかの工業用途において、とりわけ、硝酸、尿素、及び硝酸塩、リン酸塩などの他のアンモニア塩の製造のために使用される。アンモニア誘導体は、農業において広く使用されている。アンモニア生成の約80%が肥料の製造に使用される。
【0003】
一般に、アンモニアは、以下の発熱反応(すなわち、熱を放出する反応)に従って窒素及び水素の合成によって生成される。
【0004】
【数1】
式中ΔHは、反応によって放出される熱である。
【0005】
広く使用されている方法によれば、アンモニア製造は、通常、例えばメタンなどの水素源を提供する供給ガスから始まる。窒素は空気から得られる。
【0006】
アンモニア合成のための代替方法は、電気分解によって得られる水素を使用する。近年、温室効果ガスの生成を低減し、炭化水素の使用を回避する試みにおいて、いわゆるグリーンアンモニア生成プロセス及びシステムが集中的に研究されている。グリーンアンモニアを生成する1つの方法は、再生可能エネルギー源によって電力を供給される水電解からの水素と、空気から分離された窒素と、を使用することによるものである。次に、窒素と水素をハーバー法(ハーバー-ボッシュ法としても知られている)に供給し、そこで水素と窒素を高温高圧で反応させてアンモニアを生成する。
【0007】
ハーバー法は、通常、高圧高温条件下で行われ、これは次に高いエネルギーを必要とするが、より最近では、合成反応を促進する適切な触媒を使用する、より低い温度条件下での合成方法が研究されている。
【0008】
それにもかかわらず、アンモニア合成に使用される水素及び窒素は、比較的高い圧力値、例えば約30バールで圧縮される必要がある。通常、このような目的のために、動圧縮機、特に遠心圧縮機が使用される。
【0009】
水素圧縮機からの水素漏れを低減又は防止することが非常に望ましい。そのため、水素圧縮機の回転軸周りのシール部材としては、乾燥ガスシールが検討され、最も有望視されている。
【0010】
乾燥ガスシールは、遠心圧縮機又は他のターボ機械からのプロセスガスの漏れを効率的に低減するための非接触シールとしてますます普及してきている(Stahley,John S.「Dry Gas Seals Handbook」,Copyright 2005 by Pennwell Corporation,ISBN 1-59370-062-8を参照)。乾燥ガスシールは、プロセスガスの流れを使用して、回転シャフトと固定シールとの間に効率的な非接触シールを提供する。乾燥ガスシールは、動作するためにクリーンな乾燥ガスの流れを必要とする。通常、圧縮機によって処理されるのと同じガスがシールガス(「プロセスガス」)として使用される。シールガスは、圧縮機の送達側から取り出され、圧縮機は、十分に加圧されたシールガスを提供するように動作するものとする。
【0011】
更に、乾燥ガスシールは、シールガスが、回転シャフトを支持し、乾燥ガスシールの外側に配置された軸受に接触することを防止する分離ガスの流れを必要とする。そのために、乾燥ガスシールと軸受との間にバリアシールが配置されている。窒素などのアモルファスガスがバリアシール内に注入される。
【0012】
要するに、シールガスは、高圧領域と低圧領域との間の乾燥ガスシールに注入される。シールガスの一部は、乾燥ガスシールとターボ機械の高圧領域との間に配置された内側ラビリンスシールを通って高圧領域に向かって流れる。シールガスの別の部分は、低圧領域に向かって流れる。分離ガスの一部は軸受に向かって流れ、分離ガスの一部は乾燥ガスシールに向かって流れる。
【0013】
乾燥ガスシール及び軸受装置から漏れるシールガス及び分離ガスは、ベントを通して排出される。いくつかの実施形態では、乾燥ガスシールは、一次ガスシール及び単一のベントのみを含む。タンデム乾燥ガスシールと呼ばれる、より高性能の乾燥ガスシールでは、乾燥ガスシールは、一次ガスシール及び二次ガスシールを含む。タンデム乾燥ガスシールは、シールガス及び分離ガスが排出される一次ベント及び二次ベントを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
アンモニア合成システムにおいて使用される場合、水素圧縮機における乾燥ガスシールは、水素分散の主要な源となる。
【0015】
アンモニア合成プラントにおいて、特にグリーンアンモニア合成プラント及びシステムにおいて、効率的な水素圧縮機シールを提供することが望ましい。
【0016】
本明細書に開示される実施形態によれば、アンモニア合成システムは、水素源、例えば電解槽と、窒素源、例えば圧縮空気から窒素を分離するように適合された窒素分離器とを含む。水素は水素圧縮機で処理される。圧縮水素及び圧縮窒素は、アンモニアの合成に必要な最終圧力まで更に昇圧するために合成ガス圧縮機に送達される。水素圧縮機の乾燥ガスシールにおいて、水素はシールガスとして使用され、窒素は分離ガスとして使用される。乾燥ガスシールから排出されるシールガス及び分離ガスは、水素損失を回避するために、収集され、合成ガス圧縮機に送達される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここで、添付図面を簡単に参照する。
図1図1は、一実施形態における本開示によるシステムの概略図を示す。
図2図2は、別の実施形態における本開示によるシステムの概略図を示す。
図3図3は、本開示による方法を要約するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
要するに、本明細書に開示されるのは、圧縮された水素及び窒素が、それぞれシールガス及び分離ガスとして水素圧縮機の乾燥ガスシールに送達される新規なアンモニア合成プラントである。乾燥ガスシールのベントを通って漏れるシールガス及び分離ガスは、収集され、アンモニア合成ユニットの合成ガス圧縮機に送達され、窒素分離ユニットなどの窒素源からの窒素の流れ、及び水素圧縮機によって送達される主水素流と共に処理される。水素漏れは、フレアで燃焼されたり、環境中に分散されたりしない。
【0019】
本開示及び添付の特許請求の範囲において、「乾燥ガスシール」という用語は、回転シャフトに沿ったガス漏れを防止するためにシールガス及び分離ガスを使用する任意のシールとすることができる。
【0020】
より具体的には、一態様によれば、本明細書に開示されるのは、水素及び窒素の合成によるアンモニア製造のためのシステムである。システムは、水素源及び窒素源を含む。システムは、水素圧縮ユニットを更に備える。水素圧縮ユニットは、水素源に流体結合された吸引側と、送達側と、を含む。圧縮ユニットは、1つ以上の圧縮機、例えば直列に配置された圧縮機を含むことができる。各圧縮機は、遠心圧縮機などの動的圧縮機とすることができる。本明細書に開示される実施形態では、各圧縮機は多段圧縮機とすることができる。水素圧縮ユニットの少なくとも1つの圧縮機は、ケーシングと、ケーシング内で回転するように収容された回転軸と、を備える。圧縮機は、回転シャフトの周りに回転シールを提供する少なくとも1つの乾燥ガスシールを含む。通常、圧縮機は、回転シャフトの両端に2つの乾燥ガスシールを含む。
【0021】
システムは、水素圧縮ユニット及び窒素源に流体結合されたアンモニア合成ユニットを更に含む。アンモニア合成ユニットに送達される窒素及び水素は、ブレンドされ、合成ガス圧縮機において更に圧縮され、最終的にアンモニア合成モジュールに送達され得る。
【0022】
シールガス供給ラインは、圧縮水素を水素圧縮ユニットの乾燥ガスシールに送達するように適合され、分離ガス供給ラインは、窒素を乾燥ガスシールに送達するように適合される。
【0023】
アンモニア合成ユニットは、乾燥ガスシール(複数可)のベント、又は一次ベント及び二次ベントに流体結合され、水素圧縮ユニットからの圧縮水素、窒素源からの窒素、及び乾燥ガスシール(複数可)から排出されるガスを受け取り、処理するように適合され、排出されるガスは、通常、水素と窒素のブレンドを含有する。
【0024】
このようにして、完全な水素回収が達成される。
【0025】
更なる態様によれば、アンモニア生産のための方法が本明細書に開示される。本明細書に開示される実施形態によれば、方法は、以下のステップ:
水素圧縮ユニットにおいて水素を圧縮するステップと、
水素圧縮ユニットの少なくとも1つの乾燥ガスシールに、好ましくは水素圧縮ユニットの各乾燥ガスシールに、シールガスとして圧縮水素を送達するステップと、
乾燥ガスシールのための分離ガスとして窒素源から乾燥ガスシールに窒素を送達するステップと、
乾燥ガスシールから排出されるガス状混合物を収集するステップであって、ガス状混合物は水素及び窒素を含有する、ステップと、
水素圧縮ユニットからの圧縮水素、窒素源からの窒素、及び乾燥ガスシール(複数可)からの排出されたガス状混合物をアンモニア合成ユニットに送達し、そこからアンモニアを合成するステップと、を含む。
【0026】
ここで図面を参照すると、本開示によるシステムの実施形態が図1に示されている。システム1は、水素圧縮ユニット2を含む。図1の実施形態では、水素圧縮ユニット2は、動的水素圧縮機、特に遠心水素圧縮機3として概略的に表されている。水素圧縮ユニット2は、実際には、直列に配置された複数の圧縮機を含み、必要な圧縮比、したがって、例えば30バールもの高さであり得る水素圧力を達成することができることを理解されたい。水素圧縮ユニット2を構成する複数の圧縮機は、単一の軸線に沿って配置されて圧縮機列を構成し、駆動装置7によって駆動されてもよい。他の構成において、圧縮機は、異なる回転速度で回転し得る2つ以上のシャフトラインに沿って配置されてもよい。
【0027】
図1の実施形態では、システム1は、アンモニア合成モジュール9と、合成ガス圧縮機11と、合成ガス圧縮機11に駆動接続されたドライバ13と、を備えるアンモニア合成ユニット5を更に含む。次に、合成ガス圧縮機11は、直列の1つ以上の合成ガス圧縮機又は圧縮機段を含むことができる。
【0028】
システム1は、窒素源15を更に備える。窒素源15は、空気圧縮機17及び窒素分離器19を含むことができる。窒素分離器19は、例えば、膜分離器、分画システム、又は他の空気成分、特に酸素及び二酸化炭素から窒素を分離するように適合された任意の他の装置を含むことができる。窒素分離器19は、窒素ライン20を通して合成ガス圧縮機11の吸引側11.1に流体結合される。
【0029】
アンモニア合成ユニット5の合成ガス圧縮機11は、合成ガスと呼ばれる窒素と水素のブレンドを処理し、合成ガスは、実施される合成プロセスに必要な圧力でアンモニア合成モジュール9に送達される。
【0030】
実施形態において、水素圧縮ユニット2は、水素源19に流体結合される。図1の実施形態では、水素源19は、電力を使用して水から水素を生成する電解槽21を含む。
【0031】
電解槽21が必要とする電力は、任意の電力源によって発生させることができる。現在好ましい実施形態では、電源は、再生可能エネルギー源からの動力を電力に変換するように適合された電力変換ユニット23を含む。図1の概略図において、電力変換ユニット23は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するために、太陽光発電パネル25及びインバータ27を含む。図示されていない他の実施形態では、太陽エネルギーの代わりに、又は太陽エネルギーに加えて、他の再生可能エネルギー源を使用することができる。再生可能エネルギー源としては、例えば、風力エネルギー、地熱エネルギー、波力エネルギー、潮流エネルギー等を用いることができる。
【0032】
電解槽21で生成された水素は、水素吸入ライン29を介して水素圧縮ユニット2の水素圧縮機3の吸入側3.1に送達される。
【0033】
水素圧縮ユニット2の水素圧縮機3は、合成ガス圧縮機11の吸引側11.1に流体結合することができる送達側3.2を含む。参照番号31は、水素圧縮機3を合成ガス圧縮機11に接続するラインを示す。
【0034】
水素圧縮機3は、ケーシング3.3と、ケーシング3.3内に回転可能に収容された回転軸3.4と、を備えている。回転軸3.4は、1つ以上のインペラ3.5と一体的に回転する。回転軸3.4は、軸受33を介してケーシング3.3に支持されている。水素圧縮機3は、各軸受33の内側に、それぞれの乾燥ガスシール35を備える。各乾燥ガスシール35は、ケーシング3.3内の低圧領域と、高圧領域と、を分離する。低圧領域は、乾燥ガスシール35の外側にあり、それぞれの軸受33を含む。高圧領域は、乾燥ガスシール35の内側にあり、回転インペラ3.5が配置されるケーシング3.3の内部、又はその一部を含む。
【0035】
各乾燥ガスシール35は、例えば水素圧縮機3の送達側から分流された圧縮水素をシールガスとして各乾燥ガスシール35に供給するように適合されたシールガス供給ライン37に流体結合されている。図1の実施形態では、シールガス供給ライン37は、水素圧縮機3の送達側3.2に流体結合される。
【0036】
各乾燥ガスシール35は更に、分離ガス供給ライン39に流体結合される。図1の実施形態において、分離ガス供給ライン39は、窒素ライン20に流体結合される。分離ガス供給ライン39は、減圧装置41、例えば、積層弁又は絞り弁、又はエキスパンダを含む。この構成により、窒素源15からの窒素を分離ガスとして適切な圧力で各乾燥ガスシール35に送達することができる。
【0037】
各乾燥ガスシール35は、例えば、シングル乾燥ガスシール又はタンデム乾燥ガスシールとすることができる。第1の場合には、各乾燥ガスシール35は単一のベントを有し、そこから乾燥ガスシールから漏れる分離ガスとシールガスの混合物が排出される。図1の実施形態では、各乾燥ガスシール35は、タンデム乾燥ガスシールであり、一次ガスシール及び第2のガスシールを含む。一次ガスシールは、二次ガスシールの内側に配置される。各一次ガスシールは一次ベント45を含み、各二次ガスシールは二次ベント47を含む。シールガス(水素)は、一次ベント45を通って漏出し、シールガス(水素)と分離ガス(窒素)との混合物は、各乾燥ガスシール35の二次ベント47を通って漏出する。
【0038】
水素損失を低減又は防止するために、一次ベント45及び二次ベント47の両方が、アンモニア合成ユニット5に流体結合されて、乾燥ガスシール35から漏れる水素を回収する。より具体的には、一次ベント45から漏れる水素は一次ベント回収ライン49によって回収され、二次ベント47から漏れる窒素/水素ブレンドは二次ベント回収ライン51によって回収される。
【0039】
いくつかの実施形態では、一次ベント45及び二次ベント47を通して漏出するガスは、合成ガス圧縮機11の吸込圧力よりも低い圧力であるため、一次ベント45及び二次ベント47の両方からのガス漏出の圧力を、水素圧縮機3の送達圧力及び窒素源15によって送達される窒素の圧力と実質的に同じである合成ガス圧縮機11の吸込圧力まで上昇するために、昇圧ユニット53が使用される。
【0040】
一般に、一次ベントの圧力は二次ベントの圧力よりも高い。このように、昇圧ユニット53は、一次ベント45から漏れるガスと二次ベント47から漏れるガスとで異なる昇圧装置53.1及び53.2を備えていてもよい。各昇圧装置は、圧縮機、例えば、往復圧縮機などの低流量及び高圧縮比を有する圧縮機を含むことができる。他の実施形態では、エジェクタを使用して、乾燥ガスシールから漏れるガスの圧力を高めることができる。
【0041】
合成ガス圧縮機11は、アンモニア合成モジュール9に送達される水素と窒素とのブレンドを処理するので、乾燥ガスシールから排出される漏出ブレンド中の窒素と水素との分離は必要ない。したがって、水素圧縮ユニット2の乾燥ガスシールから排出されたガス全体を回収し、アンモニア合成ユニット5で処理することができる。必要とされない限り、例えば、合成ガス圧縮機11が利用できない場合、水素はフレア状にされない。後者の場合、乾燥ガスシール35からの漏れは、ダクト57を通して部分的に又は完全にフレア状にすることができる。
【0042】
動作中、電力変換ユニット23によって電力供給される電解槽21は水から水素を生成し、窒素分離器19は圧縮空気から分離することによって窒素を生成する。水素は、窒素源15によって送達される窒素の圧力に達するまで、水素圧縮ユニット2において圧縮される。加圧された水素及び窒素は、アンモニア合成モジュール9におけるアンモニア合成に必要な最終圧力に達するまで、合成ガス圧縮機11を通して混合及び処理される。
【0043】
少量の水素流量が水素ライン31から分流され、シールガスとして適切な圧力で水素圧縮ユニット2の乾燥ガスシール35に供給される。窒素ライン20からの少量の減圧窒素が分離ガスとして水素圧縮ユニット2の乾燥ガスシール35及び軸受33に送達される。
【0044】
乾燥ガスシール35から排出される水素及び窒素は、収集され、合成ガス圧縮機11の吸入圧力まで加圧され、水素圧縮ユニット2によって送達される圧縮水素及び窒素源15からの窒素と共に合成ガス吸入側に供給される。
【0045】
引き続き図1を参照すると、本開示によるアンモニア生成システム1の更なる実施形態が図2に示されている。図2で使用されている同じ参照番号は、図1と同じ又は同等の構成要素を示しており、再度詳細には説明しない。
【0046】
図2の実施形態では、水素圧縮ユニット2は、順に配置された3つの圧縮機3A、3B、3Cを備える。第1の圧縮機3Aは低圧圧縮機であり、第2の圧縮機3Bは中圧圧縮機であり、第3の圧縮機3Cは高圧圧縮機である。図2の実施形態では、3つの圧縮機3A、3B、3Cは、やはり符号3.4が付された共通シャフトを含む共通シャフト線に沿って配置される。各圧縮機3A、3B、3Cは、図1に関連して説明した圧縮機3と実質的に同様に構成され、ケーシング3.3と、吸込側3.1と、送達側3.2と、回転軸3.4を支持する軸受(図2には図示せず)と、回転軸3.4の周りに回転シールを提供する乾燥ガスシール35と、を含む。
【0047】
水素源19の電解槽21によって生成された水素は、最上流圧縮機3Aの吸引側3.1に送達され、圧縮水素は、最下流圧縮機3Cの送達側3.2から合成ガス圧縮機11に送達される。低圧圧縮機3Aの送達側は、中圧圧縮機3Bの吸入側に流体連結されている。中圧圧縮機3Bの送達側は、高圧圧縮機3Cの吸入側に流体連結されている。
【0048】
各圧縮機3A、3B、3Cは、シャフト3.4を支持する軸受を備えている。軸受は、通常、単一の水素圧縮機3について図1に関連して開示したのと全く同じ方法で、それぞれの乾燥ガスシール35の外側に配置される。
【0049】
図2の例示的な実施形態では、各乾燥ガスシール35のためのシールガスは、最も下流の高圧圧縮機3Cの送達側3.2から分流され、シールガス供給ライン37を通して各乾燥ガスシール35に送達される。圧縮機列の異なる乾燥ガスシールに対して異なる圧力値でシールガス圧力を調整するために、適切な減圧装置を予見することができる。
【0050】
図示されていない他の実施形態では、各個々の圧縮機3A、3B、3Cの乾燥ガスシール35のためのシールガスは、各圧縮機3A、3B、3Cの送達側から別々に分流することができる。シールガスが圧縮経路に沿った様々な点から、例えば中間圧縮機3A、3Bのうちの1つ又はいくつかの下流及び高圧圧縮機3Cの下流から分流される中間解決策も想定され得る。
【0051】
各乾燥ガスシール35のための分離ガスは、窒素ライン20を圧縮機3A、3B、3Cの乾燥ガスシール35に流体結合する分離ガス供給ライン39によって供給することができる。窒素源15から乾燥ガスシール35に窒素を供給する前に窒素圧力を低下させなければならない場合には、分離ガス供給ライン39に沿って減圧装置41を配置することができる。異なる乾燥ガスシール35に対して可変圧力の分離ガスを有することが望ましいか又は有用である場合には、異なる減圧装置を使用することができる。
【0052】
一次ベント45から漏れる水素及び二次ベント47から漏れる窒素/水素ブレンドは、それぞれ一次ベント回収ライン49及び二次ベント回収ライン51によって収集され、図1に関連して説明したのと全く同じ方法で昇圧ユニット53に送達される。図2の実施形態において、昇圧ユニット53は、図1に関連して説明した理由のために、2つの昇圧装置53.1及び53.2を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、水素圧縮ユニット2は、例えば2%~20%、好ましくは5%~15%の範囲の特定のモル百分率の窒素を含有する水素のブレンドを圧縮するように構成することができる。したがって、水素圧縮ユニット2によって処理されるガスブレンドの分子量(Mw)は、純粋な水素の分子量よりも高く、圧縮はそれほど困難ではなくなる。例えば、水素圧縮機3A、3B、3Cのより低い回転速度を使用することができ、圧縮比は同じであり、及び/又はより少ない数の圧縮段が同じ圧縮比を達成するのに十分であり得る。
【0054】
図2は、ある量の窒素が水素源21からの水素とブレンドされる構成を示す。同じ構成を図1の実施形態において使用することができる。
【0055】
図2では、二次窒素流が窒素ライン20から分流され、水素圧縮ユニット2を通して処理される水素流に加えられる。図2の実施形態では、二次窒素流は、低圧圧縮機3Aの吸込側又はその上流で水素流に加えられる。図示しない他の実施形態では、二次窒素流は、低圧圧縮機3Aの吸込側3.1と高圧圧縮機3Cの送達側3.2との間の中間圧縮段のうちの1つに注入することができる。更に別の実施形態では、二次窒素流は、吸引側3.1と送達側3.2との間の水素の流路に沿って異なる圧力で異なる箇所に注入される2つ以上の副流に分割することができる。
【0056】
窒素源15からの窒素は、吸引側3.1の上流の水素圧力よりも高い圧力であるため、二次窒素流は減圧されなければならない。図2の概略図において、二次窒素流は、二次窒素ライン60を通って窒素ライン20から分流され、二次窒素ライン60に沿って減圧装置63が配置される。減圧装置63は、絞り弁又は積層弁を含むことができる。他の実施形態では、図2に概略的に示されるように、減圧装置63は、エキスパンダを含むことができる。弁とエキスパンダとの組み合わせは除外されない。
【0057】
エキスパンダ63は、エキスパンダ63内で膨張する窒素のエンタルピー低下の少なくとも一部を有用な電力に変換する発電機65に駆動可能に結合することができる。発電機65によって生成された電力は、電力分配グリッド67に送達することができ、電力分配グリッド67は、インバータ27が接続されるグリッドと同じグリッドであってもよく、又はインバータ27に電気的に結合されてもよい。したがって、窒素膨張から回収された電力は、電解水素製造に使用することができる。他の実施形態では、エキスパンダ63によって生成される機械的動力は、システム1の圧縮機のうちの1つ以上を駆動するために使用されることができ、すなわち、エキスパンダ63は、圧縮機駆動のヘルパーとして使用されてもよい。
【0058】
図2の実施形態では、図1の実施形態と同様に、水素圧縮機又は圧縮機列3A、3B、3Cのすべての乾燥ガスシールから漏れる水素全体が回収され、合成ガス圧縮機11に送達され、そこで加圧窒素及び水素が更に加圧され、アンモニア合成モジュール9に送達される。窒素と水素のブレンドが合成ガス圧縮機11で処理され、アンモニア合成モジュール9で使用されるので、乾燥ガスシール35から排出される窒素と水素の分離は必要ない。
【0059】
引き続き図1及び図2を参照すると、図3は、システム1によって実行されるステップを要約するフローチャートを示す。ステップ101において、水素は水素圧縮ユニット2において圧縮される。圧縮水素は、シールガスとして水素圧縮ユニット2の乾燥ガスシール35に送達される(ステップ102)。窒素は、水素圧縮ユニット2の乾燥ガスシール35に分離ガスとして更に送達される(ステップ103)。乾燥ガスシール35の一次及び二次ベントから漏出する水素及び窒素は、収集され(ステップ104)、水素圧縮ユニット2からの圧縮水素及び窒素源15からの圧縮窒素と共に、アンモニア合成ユニット9の合成ガス圧縮機11に送達され、そこからアンモニアを合成する(ステップ105)。
【0060】
本明細書に開示されるシステム、装置、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態を上記に記載してきた。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付の図面に例示されている。当業者は、本明細書に明確に記載され、添付の図面に例示されるシステム、装置、及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して記載又は例示される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。このような修正例及び変形例は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】