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特表2024-537470エンバクの分画方法及びそれから製造される飲料
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  • 特表-エンバクの分画方法及びそれから製造される飲料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エンバクの分画方法及びそれから製造される飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20241003BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L2/38 J
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L5/00 M
A23C11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524710
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022078602
(87)【国際公開番号】W WO2023076865
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,259
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301926
【氏名又は名称】フェアライフ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン・グロスビアー
(72)【発明者】
【氏名】シャキル・ウア・レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ピー・ドールマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・アダムソン
【テーマコード(参考)】
4B023
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LC05
4B023LC09
4B023LE26
4B023LG05
4B023LK01
4B023LK04
4B023LK17
4B023LL02
4B023LL03
4B023LL05
4B023LP07
4B023LP19
4B023LP20
4B023LQ03
4B035LP22
4B117LC02
4B117LC04
4B117LE10
4B117LG13
4B117LK01
4B117LK08
4B117LK09
4B117LK16
4B117LK21
4B117LK24
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL03
4B117LL06
4B117LL07
4B117LP01
4B117LP14
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
エンバクベースの飲料等のエンバク組成物を製造する方法は、エンバク粉組成物を塩基と合わせて、pHが8.5から11.5までの第1の水性混合物を生成する工程と、第1の水性混合物を固体画分及び液体画分に分離する工程と、液体画分を酸と合わせて、pHが5から9までの第2の水性混合物を形成する工程と、第2の水性混合物を限外ろ過して、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成する工程と、UF保持液画分、1種又は複数の原材料及び場合により水を合わせて、エンバク組成物を形成する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンバク組成物を製造する方法であって、
(i) エンバク粉組成物を塩基と合わせて、pHが8.5から11.5までの範囲の第1の水性混合物を生成する工程と、
(ii) 第1の水性混合物を固体画分及び液体画分に分離する工程と、
(iii) 液体画分を酸と合わせて、pHが5から9までの範囲の第2の水性混合物を形成する工程と、
(iv) 第2の水性混合物を限外ろ過して、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成する工程と、
(v) UF保持液画分、原材料及び場合により水を合わせて、エンバク組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程(i)のエンバク粉組成物が、乾燥量基準で、
7から30質量%まで、8から25質量%まで、又は9から18質量%までのタンパク質含有量、
0から10質量%まで、1から10質量%まで、又は2から8質量%までの脂肪含有量、及び
2から20質量%まで、3から18質量%まで、又は3から15質量%までの全食物繊維含有量
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)が、エンバク粉組成物、塩基及び場合により水を合わせて、pHが8.5から11.5までの範囲の第1の水性混合物を生成する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)のpHが、9から11.5まで、9から11まで、9.5から11まで、10から11.5まで、10から11まで、又は10から10.5までの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)の塩基が、食品グレードの塩基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の水性混合物が、2℃から30℃まで、3℃から25℃まで、2から20℃まで、3から20℃まで、3℃から15℃まで、又は5から15℃までの温度で生成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)の前に、エンバク粉組成物を酵素と接触させる工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酵素が、ベータグルカナーゼを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)の第1の水性混合物が、1から40質量%まで、2から30質量%まで、3から20質量%まで、又は5から18質量%までの固形分含有量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の分離する工程が、デカンテーション、プレス、遠心分離、ハイドロサイクロン、分級、ふるい分け、ふるいかけ、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)の前に、液体画分から脂肪/油性画分を除去する工程を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)における及び工程(iii)の前の液体画分が、
乾燥量基準で、35から75質量%まで、40から70質量%まで、又は40から65質量%までのタンパク質含有量、
乾燥量基準で、10から40質量%まで、12から38質量%まで、又は15から35質量%までの脂肪含有量、及び
0.3から8質量%まで、0.5から5質量%まで、又は1から4質量%までの固形分含有量
を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(iii)のpHが、5から8.5まで、5から8まで、5.5から8.5まで、5.5から7.5まで、6から8.5まで、又は6から7.5までの範囲である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(iii)の酸が、食品グレードの酸である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酸が、クエン酸、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、乳酸、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(iv)の第2の水性混合物を限外ろ過する工程が、分画分子量(MWCO)が1,000ダルトン、3,000ダルトン、5,000ダルトン、又は10,000ダルトンである限外ろ過膜を通して第2の水性混合物画分を限外ろ過する工程を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(iv)の第2の水性混合物を限外ろ過する工程が、限外ろ過膜を通して第2の水性混合物画分を透析ろ過する工程を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(iv)のUF保持液画分が、UF保持液画分の総質量に対して、
4から25質量%まで、5から20質量%まで、又は7から18質量%までの固形分含有量、
1から15質量%まで、2から14質量%まで、又は3から12質量%までのタンパク質含有量、
0から5質量%まで、0から3質量%まで、又は0.5から4.5質量%までの脂肪含有量、
0.01から0.7質量%まで、0.05から0.5質量%まで、又は0.1から0.4質量%までのミネラル含有量、及び
0.5から5質量%まで、1から5質量%まで、又は1から4質量%までの全食物繊維含有量
を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(iv)の限外ろ過の前に、第2の水性混合物を酵素と接触させる工程、及び/又は
工程(v)の前に、UF保持液画分を酵素と接触させる工程を更に含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
酵素がプロテアーゼを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
原材料が、塩、糖/甘味料、香味料、保存料、安定剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、酸化防止剤、着色剤、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(v)の後に、エンバク組成物をホモジナイズする工程を更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程(v)の後に、エンバク組成物を熱処理する工程を更に含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
熱処理する工程が、低温殺菌、保存期間延長(ESL)熱処理、又は超高温(UHT)滅菌を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(ii)の後に、固体画分の加水分解処理を更に含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
加水分解処理が酵素を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固体画分から第2の液体画分を分離する工程を更に含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
分離する工程が、デカンテーション、プレス、遠心分離、ハイドロサイクロン、分級、ふるい分け、ふるいかけ、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程(iv)の前に第2の液体画分を第2の水性混合物と合わせる工程を更に含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
エンバク組成物を容器に包装する工程を更に含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項に記載の方法によって調製される、エンバク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2022年10月24日にPCT国際特許出願として出願され、2021年10月25日に出願された米国仮特許出願第63/271,259号の利益及び優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、pH調整、液固分離、及び限外ろ過の工程の組合せを使用して、エンバク粉組成物からエンバクベースの組成物又は飲料を調製することに関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997)
【非特許文献2】Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004)、American Public Health Association、Washington DC
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この概要は、本明細書で更に説明される概念を選択したものを簡略化した形で紹介するために提供される。この概要は、請求された発明主題の必須又は本質的な特徴を特定することを意図するものではない。また、この概要は、請求された発明主題の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。
【0005】
エンバクベースの飲料等のエンバクベースの組成物を調製する方法が本明細書で開示され、説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの方法は、(i) エンバク粉組成物を塩基と合わせて、pHが8.5から11.5までの範囲の第1の水性混合物を生成する工程と、(ii) 第1の水性混合物を固体画分及び液体画分に分離する工程と、(iii) 液体画分を酸と合わせて、pHが5から9までの範囲の第2の水性混合物を形成する工程と、(iv) 第2の水性混合物を限外ろ過して、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成する工程と、(v) UF保持液画分、原材料及び場合により水を合わせて、エンバク組成物を形成する工程とを含むことができる。
【0007】
上記の概要及び以下の詳細な説明は両方とも例を示しており、説明的なものにすぎない。したがって、上記の概要及び以下の詳細な説明は、制限的なものとみなされるべきではない。更に、本明細書に記載されているものに加えて、特徴又は変形形態を提供することができる。例えば、特定の態様は、詳細な説明に記載されているさまざまな特徴の組合せ及び副組合せの構成要素を対象とすることができる。
【0008】
以下の図面は本明細書の一部を構成し、本発明の特定の態様を更に実証するために含まれている。本発明は、詳細な説明及び実施例と組み合わせてこの図面を参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エンバク粉からエンバク組成物を製造するための製造方法の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義を提供する。別段に指示しない限り、以下の定義が本開示に適用できる。ある用語が本開示で使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示若しくは定義と矛盾しないか、又はその定義を適用できる請求項を不明確若しくは無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997)の定義を適用できる。参照により本明細書に組み込まれている任意の文書によって提供される任意の定義又は使用法が、本明細書で提供される定義又は使用法と矛盾する限りにおいて、本明細書で提供される定義又は使用法が優先される。
【0011】
本明細書では、発明主題の特徴が、特定の態様内で異なる特徴の組合せを想定できるように説明されている。本明細書に開示されるあらゆる態様及び/又は特徴について、本明細書に記載される設計、組成物、プロセス、及び/又は方法に悪影響を与えないすべての組合せは、特定の組合せの明示的な説明の有無にかかわらず企図される。更に、明示的に別段の記載がない限り、本明細書に開示される任意の態様及び/又は特徴は、本発明と一致する発明的な設計、組成物、プロセス、及び/又は方法を説明するために組み合わせることができる。
【0012】
本開示では、組成物及び方法は、多くの場合、さまざまな成分又は工程を「含む」という観点から説明されているが、別段に明記しない限り、組成物及び方法は、さまざまな成分又は工程「から本質的になる」か、又はそれら「からなる」こともできる。例えば、本発明の態様と一致するエンバクベースの組成物は、UF保持液画分、1種又は複数の原材料、及び水を含むことができるか、或いはそれらから本質的になることができるか、或いはそれらからなることができる。
【0013】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、別段に指定しない限り、複数の代替物、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「原材料」の開示は、別段に指定しない限り、2種以上の原材料のうちの1種、又は混合物、又は組合せを包含することを意味する。
【0014】
開示された方法では、「合わせる」という用語は、別段に指定しない限り、任意の順序、任意の方法、及び任意の時間の長さで成分を接触させることを包含する。例えば、成分はブレンド又は混合によって合わせることができる。
【0015】
本発明では、いくつかの種類の範囲が開示されている。任意の種類の範囲が開示又は請求されている場合、その意図は、範囲の終点だけでなく、そこに包含される任意の部分範囲及び部分範囲の組合せも含め、そのような範囲が合理的に包含できるそれぞれの可能な数値を独立して開示又は請求することである。例えば、本発明の態様では、UF保持液画分は1から15質量%までのタンパク質含有量を有することができる。タンパク質含有量が1から15質量%までであると開示することにより、その意図は、タンパク質含有量はこの範囲内の任意の量であることができ、例えば、1から15質量%までの任意の範囲又は範囲の組合せ、例えば、2から14質量%まで、3から15質量%まで、又は3から12質量%まで等を含むことができると記載することである。同様に、本明細書で開示される他のすべての範囲も、この例と同様の方法で解釈されるべきである。
【0016】
一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、範囲、又は他の数量若しくは特性は、明示的にそのように記載されているかどうかにかかわらず、「約」又は「およそ」である。「約」又は「およそ」という用語で修飾されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲には数量又は特性の同等物が含まれる。
【0017】
本明細書に記載されているものと同様か又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料は、本発明の実施又は試験に使用できるが、本明細書では典型的な方法、デバイス、及び材料について説明している。
【0018】
本明細書で言及されるすべての刊行物及び特許は、例えば、本明細書で説明する発明に関連して使用される可能性のある刊行物及び特許に記載されている構成及び方法論を説明及び開示する目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
エンバクは、健康志向の消費者の間で人気のある穀類である。実際、オートミールを定期的に摂取する人口層は、摂取しない人々よりも体格指数(BMI)が低い。更に、全粒エンバクを1日に2回摂取すると、可溶性繊維、特にβ-グルカンの存在により、全体的及びLDLプロファイルの低下につながる。
【0020】
エンバクベースの飲料等の植物ベースの飲料は、一部には健康上の利点及び環境への影響の軽減が認識されていることから人気が高まっている。しかし、栄養学的に言えば、これらの製品は、カロリーの大部分を内因性炭水化物と同様に添加炭水化物、主に糖類から得ている。炭水化物を多く含む食事は、トリグリセリド値を上昇させることがわかっている。更に、これらの製品はタンパク質含有量が比較的低く、肯定的な感覚的特性及び官能的特性を高めるために他の脂肪源を添加することに依存している。
【0021】
本発明の目的は、外部の脂肪源の使用を最小限に抑えるか、又は排除しながら、同時にタンパク質をカスタマイズ可能に強化し且つ糖類及び他の非繊維炭水化物を有利に低減した、エンバクベースの組成物又は飲料を得ることができる方法である。本発明の別の目的は、官能特性が改善され、糖/炭水化物含有量が低減されたエンバクベースの組成物又は飲料の調製のための方法である。特に、エンバクベースの組成物又は飲料は、草のような臭い及び酸化臭が少ない等、異臭及び悪臭を低減しながら、従来の2%の牛乳又は全乳に匹敵する粘稠度でクリーミーな(ざらざらしていない)口当たりを実現する。
【0022】
エンバク組成物を製造する方法
エンバク組成物を製造する方法は、(i) エンバク粉組成物を塩基と合わせて、pHが8.5から11.5までの範囲の第1の水性混合物を生成する工程と、(ii) 第1の水性混合物を固体画分及び液体画分に分離する工程と、(iii) 液体画分を酸と合わせて、pHが5から9までの範囲の第2の水性混合物を形成する工程と、(iv) 、第2の水性混合物を限外ろ過して、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成する工程と、(v) UF保持液画分、原材料及び場合により水を合わせて、エンバク組成物を形成する工程とを含む(又はそれらから本質的になる、又はそれらからなる)ことができる。一般に、方法の特徴(例えば、特にエンバク粉組成物の特性、各工程が実施される条件、UF保持液画分の特性、及びエンバク組成物の特性)は、本明細書では独立して説明されており、これらの特徴は、開示された方法を更に説明するために任意の組合せで組み合わせることができる。更に、別段に明記しない限り、開示された方法に列挙された工程のいずれかの前、間、及び/又は後に、他のプロセス工程を実行することができる。更に、開示された方法のいずれかに従って製造された任意のエンバク組成物(例えば、飲用可能なエンバクベースの飲料)は、本開示の範囲内であり、本明細書に包含される。
【0023】
ろ過技術(例えば、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過等)は、好適な条件(例えば、圧力)下で混合物を膜システム(又は選択的障壁)に通すことによって、混合物中の成分を分離又は濃縮することができる。したがって、濃縮又は分離は、分子サイズに基づき得る。膜によって保持される流れは、保持液(又は濃縮液)と呼ばれる。膜の孔を通過する流れは、透過液と呼ばれる。
【0024】
工程(i)のエンバク粉組成物は、任意の好適な成分を任意の相対量で含有してもよく、これには典型的なエンバク粉(例えば、粉砕されていないエンバク粉(unground oat flour))及びエンバクふすまが包含される。エンバク粉組成物は非常に酸化されやすく、これにより異臭及び味が劣化する可能性がある。エンバク粉組成物は、乾燥組成物(例えば、流動性粉末)であってもよいか、又は任意の好適な固形分含有量の水性混合物であってもよい。それらに限定されないが、エンバク粉組成物が水性混合物である場合、固形分含有量は、固形分1から40質量%までの範囲であり得るが、より多くの場合、固形分3から20質量%まで、又は固形分5から15質量%までの範囲である。
【0025】
乾燥量基準で、エンバク粉組成物のタンパク質含有量は、一態様では7から30質量%まで、別の態様では8から25質量%まで、更に別の態様では9から18質量%までの範囲であり得る。エンバク粉組成物は、任意の好適な脂肪含有量を有することができ、無脂肪及び低脂肪のエンバク粉及びエンバクふすまを包含する。したがって、エンバク粉組成物の脂肪含有量の範囲には、多くの場合、脂肪分0から10質量%まで、脂肪分1から10質量%まで、又は脂肪分2から8質量%までが含まれる。
【0026】
エンバク粉組成物の全食物繊維含有量は、2から20質量%まで、3から18質量%まで、又は3から15質量%までの範囲であることが多いが、これらに限定されない。エンバク粉組成物中の全食物繊維のうち、可溶性食物繊維含有量は、全繊維の大部分を占めることが多い可能性があり、全食物繊維の40から100質量%まで、或いは全食物繊維の50から100質量%まで、或いは全食物繊維の60から100質量%までであり得る。したがって、一部の態様では、エンバク粉組成物中の全食物繊維のすべて又は実質的にすべてが可溶性食物繊維であり得る。エンバク粉中に存在する可溶性食物繊維のうち、低分子量可溶性食物繊維の含有量は、0から100質量%までの範囲であり得るが、より多くの場合、低分子量可溶性食物繊維の含有量は、可溶性食物繊維に対して、10から100質量%まで、又は50から100質量%までの範囲である。
【0027】
工程(i)は、高pHタンパク質抽出工程と呼ぶことができ、工程(i)では、エンバク粉組成物を塩基と合わせて、pHが8.5から11.5までの範囲の第1の水性混合物を生成する。エンバク粉組成物の形態(乾燥組成物又は水性混合物)及び塩基の形態(固体又は液体)に応じて、工程(i)はさまざまな方法で実施することができ、本発明はそれらに限定されない。例えば、エンバク粉組成物が水性混合物である場合、固体形態の、又は代替的に液体形態の塩基をエンバク粉組成物に添加して混合することができる。必要に応じてエンバク粉組成物、塩基、若しくはエンバク粉組成物及び塩基の混合物、又はこれらの任意の組合せに、場合により水を添加することができる。同様に、エンバク粉組成物が乾燥/固体である場合、水及び固体又は液体の形態の塩基を工程(i)でエンバク粉組成物と合わせることができる。
【0028】
工程(i)の塩基は特に限定されないが、多くの場合、この塩基は食品グレードの塩基である。工程(i)で使用できる塩基の例示的且つ非限定的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等が挙げられる。2種以上の塩基の組合せを使用してもよい。
【0029】
工程(i)でエンバク粉組成物を塩基と合わせた後、得られる第1の水性混合物のpHは8.5から11.5までの範囲である。一部の態様では、工程(i)のpHは、9から11.5まで、或いは9から11まで、或いは9.5から11まで、或いは10から11.5まで、或いは10から11まで、或いは10から10.5までの範囲であり得る。多くの場合、pHは高いほどよいが、pHが高くなりすぎて高温が発生すると鹸化が起こる可能性がある。
【0030】
工程(i)は、任意の好適な温度で実施することができ、且つ/又は第1の水性混合物は、任意の好適な温度で形成することができる。有益には、比較的低温が使用され、例えば最低温度が2℃、3℃、又は5℃、最高温度が30℃、25℃、20℃、又は15℃である。工程(i)の温度及び/又は第1の水性混合物の形成の温度の代表的且つ非限定的な範囲には、2℃から30℃まで、3℃から25℃まで、2から20℃まで、3から20℃まで、3℃から15℃まで、又は5から15℃まで等が含まれる。工程(i)を低温で行うと、一般に、高温で行う場合に比べて、優れた製品の品質及び官能特性が得られ、鹸化も少なくなる。
【0031】
工程(i)でエンバク粉組成物及び塩基を合わせる前に、場合により、エンバク粉組成物(例えば、エンバク粉又はエンバクふすまと水の水性混合物)を任意の好適な温度で酵素と接触させるか、又は合わせることができる。使用される場合、酵素は多くの場合ベータグルカナーゼである。この酵素修飾により、固体画分を液体画分から分離する効率が向上すると考えられている。
【0032】
工程(ii)では、工程(i)の第1の水性混合物を固体画分及び液体画分に分離する。一般に、分離工程の前の第1の水性混合物の固形分含有量は、1から40質量%まで、例えば2から30質量%まで、3から20質量%まで、又は5から18質量%までであるが、これらに限定されない。固体画分及び液体画分を生じる分離工程を実施するために、任意の好適な技術を使用することができ、そのような工程は任意の好適な条件で実施することができるが、室温が簡便である。工程(ii)で使用できる代表的且つ非限定的な分離技術には、デカンテーション、プレス、遠心分離、ハイドロサイクロン、分級、ふるい分け(sieving)、又はふるいかけ(sifting)等が含まれる。これらの技術の組合せ又は2つ以上を、工程(ii)で利用することもできる。
【0033】
場合により、工程(ii)の液体画分は、工程(iii)の前に更に処理され、液体画分(主に水をベースとすることになる)から脂肪/油性画分を除去することができる。脂肪/油性画分が除去されると、最終的なエンバク組成物は脂肪含有量が低くなり、風味プロファイルも良くなる可能性があるが、これは、脂肪/油性画分が非常に酸化されやすいためである。工程(iii)の前に液体画分から脂肪/油性画分の除去を実施するために、任意の好適な技術を使用することができ、そのような工程は任意の好適な条件で実施することができるが、室温が簡便である。上記のように、使用できる代表的且つ非限定的な分離技術には、デカンテーション、プレス、遠心分離、ハイドロサイクロン、分級、ふるい分け、又はふるいかけ等が含まれる。
【0034】
工程(ii)における及び工程(iii)の前の液体画分は、典型的には、0.3から8質量%までの固形分含有量を有することができ、より多くの場合、液体画分の固形分含有量は、0.5から5質量%まで、又は1から4質量%までの範囲である。この液体画分には、グロブリンタンパク質(エンバクタンパク質)、エンバク粉組成物由来の脂肪の大部分、及び典型的には0.1から0.4質量%までの可溶性繊維が含有されている。
【0035】
乾燥量基準で、液体画分のタンパク質含有量は、一態様では35から75質量%まで、別の態様では40から70質量%まで、更に別の態様では40から65質量%までの範囲であり得る。液体画分は、任意の好適な脂肪含有量を有することができ、これは、エンバク粉組成物の供給源及び脂肪含有量に応じて大幅に異なる可能性がある。しかしながら、液体画分の脂肪含有量の範囲には、乾燥量基準で、脂肪分10から40質量%まで、脂肪分12から38質量%まで、又は脂肪分15から35質量%までが含まれ得る。
【0036】
工程(iii)及び酸の添加の前に、液体画分を冷却しても、加熱しても、又はおおむね室温に維持してもよい。例えば、一態様では、液体画分は、1~5分から3~4時間までの範囲であり得る時間、又は必要に応じてそれ以上の時間、約70℃以下の温度に加熱することができる。
【0037】
工程(iii)では、液体画分を酸と合わせて、pHが5から9までの範囲の第2の水性混合物を形成する。工程(iii)は、UF処理前のpH中和工程と呼ぶことができる。pHの低下は多くの場合沈殿を引き起こす可能性があるため、第2の水性混合物は水性スラリー/懸濁液であり得る。工程(iii)の酸は特に限定されないが、多くの場合、この酸は食品グレードの酸である。工程(iii)で使用できる酸の例示的且つ非限定的な例としては、クエン酸、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、又は乳酸等が挙げられる。2種以上の酸の組合せを使用してもよい。
【0038】
工程(iii)で液体画分を酸と合わせた後、得られる第2の水性混合物のpHは5から9までの範囲である。一部の態様では、工程(iii)のpHは、5から8.5まで、或いは5から8まで、或いは5.5から8.5まで、或いは5.5から7.5まで、或いは6から8.5まで、或いは6から7.5までの範囲であり得る。
【0039】
工程(iv)では、第2の水性混合物(一部又は全部)を限外ろ過して、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成する。第2の水性混合物は、典型的には0.01~0.1ミクロンの範囲の孔径を持つ限外ろ過膜を使用して限外ろ過できる。乳製品業界等の特定の業界では、限外ろ過膜は、多くの場合孔径ではなく分画分子量(MWCO)に基づいて識別される。限外ろ過膜の分画分子量は、1,000~100,000ダルトン、又は10,000~100,000ダルトンで変化する場合がある。例えば、第2の水性混合物は、ポリマー膜システム(セラミック膜も採用することができる)を使用して限外ろ過することができる。ポリマー膜システム(又はセラミック膜システム)は、分子量が1,000ダルトンを超える、3,000ダルトンを超える、5,000ダルトンを超える、又は10,000ダルトンを超える材料が保持される一方、低分子量の種が通過するような孔径で構成することができる。例えば、分画分子量が1,000~10,000ダルトンのUF膜システムは、乳製品業界で乳タンパク質を分離及び濃縮するのに使用できる。一部の態様では、限外ろ過の工程は、0.01から0.1μmまでの範囲の孔径、及び典型的には運転圧力が15~150psigの範囲、又は45~150psigの範囲である膜システムを利用する。これらに限定されないが、限外ろ過工程は、多くの場合、3から15℃まで、例えば4から12℃まで、又は5から10℃までの範囲の温度で実行することができる。低温で限外ろ過すると、一般に、高温の限外ろ過(例えば、約25~50℃)を行う場合に比べて、優れた製品の品質及び官能特性が得られる。
【0040】
本発明の一態様では、工程(iv)の第2の水性混合物(一部又は全部)を限外ろ過する工程は、限外ろ過膜を通して第2の水性混合物を透析ろ過する工程を含むことができる。例えば、第2の水性混合物を透析ろ過する工程は、第2の水性混合物及び水の混合物を透析ろ過する工程を含むことができ、この混合物では、第2の水性混合物及び水の任意の好適な割合又は相対量が利用できる。理論に束縛されることを望むものではないが、UF工程で透析ろ過を使用すると、UF保持液中に存在する酸化生成物の量が減り、異臭及び悪臭化合物の多くがUF透過液画分へ至ると考えられている。
【0041】
限外ろ過工程後のUF保持液画分の固形分含有量は、多くの場合、固形分4から25質量%までであり、いくつかの場合では、固形分5から20質量%まで、又は固形分7から18質量%までである。UF保持液画分のタンパク質含有量は、エンバク粉組成物及び酸/塩基処理に応じて大きく異なる場合があるが、一般に、1から15質量%まで、2から14質量%まで、又は3から12質量%までのタンパク質含有量が典型的である。UF保持液は比較的低い脂肪含有量を有し、例えば、0から5質量%まで、0から3質量%まで、又は0.5から4.5質量%までである。UF保持液のミネラル含有量は、0.01から0.7質量%までで変化し、0.05から0.5質量%まで及び0.1から0.4質量%までが代表的な範囲である。UF保持液の全食物繊維含有量は、一態様では0.5から5質量%まで、別の態様では1から5質量%まで、更に別の態様では1から4質量%までの範囲であり得るが、これらに限定されない。工程(iv)のUF保持液画分のこれらの組成的特徴は、UF保持液画分の総質量に対する。
【0042】
工程(v)の前に、場合により、UF保持液画分を任意の好適な温度で酵素と接触させるか、又は酵素と合わせることができる。使用される場合、酵素は多くの場合プロテアーゼである。追加的に、又は代替的に、第2の水性混合物は、工程(iv)の限外ろ過の前に、任意の好適な温度で酵素(例えば、プロテアーゼ)と接触させるか、又は合わせることができる。タンパク質加水分解工程により、タンパク質の溶解度及び熱安定性が向上し、UF保持液画分のざらつきが少なくなると考えられている。
【0043】
エンバク組成物を製造する方法の工程(v)は、UF保持液画分、原材料及び場合により水を合わせて、エンバク組成物を形成する工程を含む。これらの成分の任意の組合せを、任意の好適な相対的割合で混合し又は合わせて、エンバク組成物を形成することができる。一部の態様では、少なくともUF保持液画分及び原材料を合わせて、エンバク組成物を形成することができるが、他の態様では、少なくともUF保持液画分、原材料、及び水を合わせて、エンバク組成物を形成することができる。
【0044】
合わせる工程では、1種の原材料又は原材料の組合せを添加することができる。好適な原材料の非限定的な例としては、塩、糖/甘味料、香味料、保存料(例えば、酵母又はカビの増殖を防ぐため)、安定剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、酸化防止剤、又は着色剤等、及びこれらの任意の混合物又は組合せを挙げることができる。一態様では、UF保持液画分(及び必要に応じて水)と合わせる原材料には塩が含まれる場合があり、別の態様では、UF保持液画分(及び必要に応じて水)と合わせる原材料には香味料が含まれる場合があり、更に別の態様では、UF保持液画分(及び必要に応じて水)と合わせる原材料には塩と香味料の両方が含まれる場合がある。
【0045】
場合により、エンバク組成物を製造する方法は、工程(v)の後に、エンバク組成物をホモジナイズする工程を更に含むことができる。更に、エンバク組成物を製造する方法は、工程(v)の後に、エンバク組成物を熱処理する工程を更に含むこともできる。好適な種類の熱処理には、低温殺菌、保存期間延長(ESL)熱処理、又は超高温(UHT)滅菌等が含まれ得る。一態様では、熱処理する工程は、80℃から95℃までの範囲の温度で2から15分までの範囲の時間にわたって低温殺菌する工程を含み得る。別の態様では、熱処理する工程は、135℃から145℃までの範囲の温度で1から10秒までの範囲の時間にわたってUHT滅菌する工程を含み得る。更に別の態様では、熱処理する工程は、148℃から165℃までの範囲の温度で0から0秒まで(例えば、0.05から1秒、0.05から0.5秒)の範囲の時間にわたってUHT滅菌する工程を含み得る。他の適切な低温殺菌又は滅菌の温度及び時間条件は、この開示から容易に明らかである。更に、本発明は、低温殺菌/滅菌プロセスを実施するために使用される方法又は装置によって限定されず、バッチ式で操作するか連続式で操作するかにかかわらず、任意の好適な技術及び装置を採用することができる。
【0046】
例えば、典型的なUHT滅菌技術には、間接蒸気加熱、ダイレクトスチームインジェクション、ダイレクトスチームインフュージョン等が含まれる。間接蒸気加熱の場合、エンバク組成物は、例えば熱交換器のような熱源又は熱媒体と直接接触しない。熱伝達の制限により、間接加熱では滅菌に長い時間が必要となる。有益には、本発明の態様では、エンバク組成物は直接UHT滅菌を使用して熱処理される。ダイレクトスチームインジェクションでは、エンバク組成物を収容しているパイプ又は他の容器に高温蒸気を注入し、したがってエンバク組成物を急速に滅菌する。ダイレクトスチームインジェクションは、一般に連続的に実施され、エンバク組成物の連続的なフローが蒸気の連続的な注入と組み合わされる。ダイレクトスチームインフュージョンでは、エンバク組成物は蒸気を収容するチャンバー内に噴霧され、エンバク組成物を急速且つ均一に滅菌する。ダイレクトスチームインジェクションと同様に、ダイレクトスチームインフュージョンは一般に連続的に実施される。熱処理工程の後、エンバク組成物は、任意の好適な温度、例えば5℃から40℃まで、又は10℃から30℃までの範囲に冷却することができる。
【0047】
本発明の一部の態様では、エンバク組成物を製造する方法は、熱処理工程の後に、エンバク組成物を任意の好適な容器に任意の好適な条件下で(無菌で、又は他の方法で)包装する工程を更に含むことができる。したがって、本明細書に記載のさまざまな成分及び原材料を合わせてエンバク組成物を形成した後、エンバク組成物を、無菌条件(又は非無菌条件)下で容器に包装することができる。任意の好適な容器を使用でき、例えば小売販売店でのエンバクベースの製品又は飲料の流通及び/又は販売に使用されているであろうものを使用してもよい。典型的な容器の例示的且つ非限定的な例としては、カップ、ボトル、袋、又はパウチ等が挙げられる。容器は、任意の好適な材料、例えばガラス、金属、プラスチック等、及びこれらの組合せから作製することができる。
【0048】
ここで、エンバク組成物を製造する方法の工程(ii)で形成される固体画分について述べると、この固体画分は非常に密度が高く、スラッジ状になる可能性があり、本発明の一部の態様では、熱(温度上昇)の適用の有無にかかわらず、追加の水に再懸濁することができる。必要に応じて、工程(ii)後の固体画分をタンパク質/デンプン加水分解処理に供することができ、加水分解処理は、アミラーゼ、プロテアーゼ等の任意の好適な酵素を含むことができる。典型的には、この加水分解処理にはアミラーゼが含まれる。
【0049】
次いで、第2の液体画分を固体画分から分離することができる。この分離工程を実施するために任意の好適な技術を使用することができ、そのような工程は任意の好適な条件で実施することができるが、室温が簡便である。固体画分から第2の液体画分を分離するために使用できる代表的且つ非限定的な分離技術には、デカンテーション、プレス、遠心分離、ハイドロサイクロン、分級、ふるい分け、又はふるいかけ等が含まれ得る。これらの技術の組合せ又は2つ以上を、この分離工程で利用することもできる。
【0050】
開示されたエンバク組成物を製造する方法では、第2の液体画分は、工程(iv)及び限外ろ過の前に、場合により第2の水性混合物と合わせて、本明細書に記載のUF透過液画分及びUF保持液画分を形成することができる。
【0051】
本発明の方法の態様と一致する好適な分離方法100の例示的且つ非限定的な例を図1に示す。最初に、エンバク粉組成物105を好適な容器115に導入し(108)、そこに塩基112を添加し、それによりpHが8.5~11.5の第1の水性混合物118を生成する。次いで、分離デバイス120が第1の水性混合物118を固体画分123及び液体画分122に分離し、容器125内で酸124と合わせて、pHが5から9までの範囲の第2の水性混合物127を形成する。第2の水性混合物127は、限外ろ過145(場合により透析ろ過を使用)にかけられ、UF透過液画分(図示せず、大部分が水)及びUF保持液画分147を生成する。
【0052】
図1では、UF保持液画分147はタンパク質加水分解150にかけられ、次いで好適な容器155に導入され(152)、そこで1種又は複数の原材料154と合わされるか、又は混合されてエンバク組成物157を形成する。その後、エンバク組成物はホモジナイズされ(160)、次いでUHT滅菌等の熱処理システム165に供給される(162)。
【0053】
分離デバイス120から排出される固体画分123は、タンパク質/デンプン加水分解130にかけられ、処理された固体画分132は分離デバイス135に入る。分離デバイス135から排出されるのは、不溶性デンプン及び繊維成分を含有し、貯蔵容器140に供給できる不溶性画分138、並びに第2の液体画分137である。第2の液体画分137は、限外ろ過145の前に第2の水性混合物127と合わせることができる。
【実施例
【0054】
本発明は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例は、決して本発明の範囲に制限を課すものとして解釈されるべきではない。他のさまざまな態様、変更形態、及びそれらの同等物は、本明細書の説明を読んだ後であれば、それ自体を、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆できる。
【0055】
全固形分(質量%)は、CEM Turbo Solids and Moisture Analyzer(CEM Corporation社、Matthews、North Carolina)による手順SMEDP15.10Cに従って測定した。灰は、好適な装置にて550℃で一定質量になるまで強熱した後に残る残留物であり、このような550℃での処理では、典型的にはすべての有機物が除去され、残留物は主にミネラルである(Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004)、American Public Health Association、Washington DC)。灰分試験は、Phoenix(CEMマイクロ波焼成炉)を使用して実施し、試料を550℃で30分間加熱した。ミネラル含有量(質量%単位)は、一般に灰分含有量(質量%)と同様であり、したがって、本開示では灰分試験の結果が全ミネラル含有量の定量化に使用される。タンパク質含有量及び脂肪含有量は、AOAC(Association of Official Analytical Chemists(公認分析化学者協会))法によって測定した。全食物繊維は、AOAC 2011.25及び2009.01の方法に準拠してHPLCで測定した。
【0056】
(実施例1)
実施例1は、図1に示すプロセススキームの一部を使用して行い、表Iは、関連する図1のプロセス流の固形分、ミネラル、脂肪、全食物繊維(可溶性繊維、低分子量、及び高分子量)、並びにタンパク質含有量をまとめたものである。別段に明記しない限り、方法の各工程は3~10℃で実行した。出発スラリーは、表Iに示す組成を有するエンバク粉と水を混合することによって形成した。十分な水和時間の後、食品グレードの水酸化ナトリウムを使用してスラリーのpHを10.5に調整した。得られた第1の水性混合物は、最低でも10分間撹拌し、場合により、コロイドミル又は他の任意のそのような混合技術で見られるような高せん断にかけることができる。
【0057】
固形分含有量が固形分15.3質量%である第1の水性混合物を、次いでデカンタ分離器を使用して遠心分離にかけた。場合により、研磨分離器(polishing separator)を使用して、タンパク質及び可溶性繊維(液体画分)を、デンプン及び不溶性繊維(固体画分)から更に分離することができる。液体画分の特性を表Iに示す。
【0058】
食品グレードの塩酸を液体画分に添加して、pH8.0の第2の水性混合物を形成し、pH調整後、限外ろ過(UF膜を通した水と第2の水性混合物との組合せの透析ろ過)にかけ、UF透過液画分及びUF保持液画分を生成した。限外ろ過ユニットでは、分子排除範囲が約1,000~10,000ダルトンの膜フィルターを採用した。UF膜フィルターはポリスルホン/ポリプロピレン支持体を有し、最大圧力負荷は150psigであった。UF保持液画分の特性を表Iに示す。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、実施例1のUF保持液画分を、表IIに示すように水及び他の原材料と混合して、エンバクベースの組成物を形成した。この最終的なエンバク組成物は、有益には、マイルドな風味及びクリーミーな口当たりを示し、従来の植物ベースの飲料に典型的に見られる粉っぽい舌触りがなかった。また、表IIのエンバク組成物(エンバクベースの飲料)は、予想外に標準的な乳脂肪分2%の牛乳と全乳の中間の粘稠度、舌触り、及び口当たりを有していた。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【符号の説明】
【0062】
100 分離方法
105 エンバク粉組成物
108 導入
112 塩基
115 容器
118 第1の水性混合物
120 分離デバイス
122 液体画分
123 固体画分
124 酸
125 容器
127 第2の水性混合物
130 タンパク質/デンプン加水分解
132 処理された固体画分
135 分離デバイス
137 第2の液体画分
138 不溶性画分
140 貯蔵容器
145 限外ろ過
147 UF保持液画分
150 タンパク質加水分解
152 導入
154 原材料
155 容器
157 エンバク組成物
160 ホモジナイズ
162 供給
165 熱処理システム
図1
【国際調査報告】