(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】二次電池用包装材料
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20241003BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/105
H01M50/133
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525312
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022014485
(87)【国際公開番号】W WO2023080449
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0151769
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、ジュ イ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ホ
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
(57)【要約】
耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、低い熱縫合温度条件で熱縫合が可能であると共に、高温環境で向上された耐熱性と形態安定性を示す二次電池用包装材料が開示される。本発明は、耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、前記内層をなす組成物は示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を利用した熱的分画分析法(Successive Self-nucleation and Annealing、SSA)を測定する際、温度-熱量曲線に少なくとも3つの吸熱ピークを有するが、前記吸熱ピークは90乃至180℃の範囲で現れることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、
前記内層をなす組成物は示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を利用した熱的分画分析法(Successive Self-nucleation and Annealing、SSA)を測定する際、温度-熱量曲線に少なくとも3つの吸熱ピークを有するが、前記吸熱ピークは90乃至180℃の範囲で現れることを特徴とする二次電池用包装材料。
【請求項2】
前記内層をなす組成物は、前記熱的分画分析法の分析の際、全体ピークの面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が10%を超過せず、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用包装材料。
【請求項3】
前記内層をなす組成物は、少なくとも1種の酸変性ポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用包装材料。
【請求項4】
前記酸変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸が1乃至10重量%の含量でグラフトされた変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用包装材料。
【請求項5】
前記耐熱性樹脂は、ポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用包装材料。
【請求項6】
前記金属箔は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、及びタングステン(W)からなる群より選択される1種以上の金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用包装材料。
【請求項7】
前記外層の厚さは15乃至30μmであり、前記金属箔気体遮断層の厚さは25乃至45μmであり、前記内層の厚さは25乃至120μmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池用包装材料に関し、より詳しくは、外層、金属箔気体遮断層、及び内層が積層される構造の二次電池用包装材料に関する。
【0002】
本出願は2021年11月5日付けで出願された韓国特許出願第10-2021-0151769号に対する優先権及び利益を主張し、この出願はその全文が本願に参照として含まれる。
【背景技術】
【0003】
二次電池は普通リチウム二次電池を指し、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットPC、ビデオカメラなどの携帯用端末装置、ハイブリッド自動車を含む電気自動車、エネルギー貯蔵用スマートグリッドなどに使用される電池であって、小型化、軽量化、薄型化すると共に、厳しい熱的環境と機械的衝撃などの多様な環境的要因を克服するための研究が進められている。
【0004】
このようなリチウム電池に使用される包装材として、従来の缶型包装材とは異なって、電池の形状を自由に変形し得るという利点から、多層構造(例えば、内部樹脂層、アルミニウム層、及び外部樹脂層)からなる外装材として二次電池用パウチが使用される。通常的に使用される二次電池用パウチフィルムは、順次に、熱接着性を有してシーリング剤の役割をするポリエチレン(poly ethylene、PE)、無延伸ポリプロピレン(casted polypropylene、cPP)、ポリプロピレン(poly propylene、PP)などのポリオレフィンまたはこれらの共重合体による接着層で構成される内部樹脂層、機械的強度を維持する基材及び水分と酸素のバリア層としての役割をする金属箔であるアルミニウム層、電池セルを外部の衝撃から保護するためにポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(Poly ethylene naphthalate、PEN)、ナイロン(Nylon)、または液晶高分子樹脂(Liquid Crystal Polymer、LCP)などの機能性高分子フィルムが外部樹脂層を形成する多層膜構造で構成されている。
【0005】
従来は金属、特にアルミニウムをプレス加工して円筒や平行六面体状などに成形した包装材が主に使用されていた。しかし、このような金属製缶包装材の場合、容器の外壁が堅くて電池自体の形状が金属製缶包装材の形状によって決定されるという制約がある。
【0006】
このような制約を克服しようと、多層プラスチックフィルムからなる包装材の技術が開発されてきた。例えば、特許文献1は、基材層、接着層、バリア層、ドライラミネーション層、及びシーラント層からなり、シーラント層を低流動性ポリプロピレン層と高流動性ポリプロピレン層で構成したセルパウチを開示しており、特許文献2は、基材フィルムと表面保護層に2軸延伸ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリオレフィン樹脂を利用して積層したセルパウチと、2次加工として基材フィルムにフッ素系、シリコン系、またはアクリル系樹脂をコーティングする技術が開示されている。
【0007】
パウチ型二次電池は形態に融通性を有し得、より小さい体積及び質量で同じ容量の二次電池を具現し得るという長所がある。しかし、缶型とは異なってパウチ型は軟質のパウチを容器として使用するため、多様な工程で様々な理由で損傷を受け得る。例えば、電極組立体をパウチの内部に収納する過程で電極タブや電極リードなどの突出部位がパウチ内部のPP、cPP層のクラック(crack)などの損傷を与えるようになり、そのような損傷によってアルミニウム層が露出されれば電解液との反応性によって副反応が発生してしまう。このように電解液に露出されたアルミニウム層は、電池の内部に浸透または拡散された電解液と酸素または水分と化学反応を起こすようになって腐食し得るが、それによって腐食性ガスが発生して電池の内部を膨張させるスウェリング(swelling)現象が発生するという問題点がある。詳しくは、六フッ化リン酸リチウム(LIPF6)が水及び酸素と反応して腐食性ガスでフッ化水素酸(HF)が生成される。このようなフッ化水素酸はアルミニウムと反応して急激な発熱反応を起し得、2次反応でアルミニウム表面に吸着されて組織内部に浸透するようになると組織の脆性が増加し、微細な衝撃にもパウチフィルムのクラックが発生して、電解液の漏液のためリチウムと大気が反応して発火が発生する恐れがある。
【0008】
特許文献3は、低密度ポリエチレン(LDPE)1乃至30重量%、ポリプロピレン(PP)50乃至98重量%、及び架橋樹脂1乃至20重量%を含むセル包装材用高分子フィルムであって、電解液の浸透速度を下げるためLDPEを使用、及び耐熱性を補完するためにPPを使用し、LDPEとPPの相溶性を上げるために架橋樹脂を使用すると記載しているが、分子量、密度、融点、結晶化度、コモノマーの含量などによる物性変化については詳しく言及していない。
【0009】
特許文献4は、基材層、金属層、及びシーラント層が順次に積層される積層体からなり、シーラント層に複数の種類の脂肪酸アミド系潤滑剤が存在しており、脂肪酸アミド系潤滑剤が少なくとも1種が飽和脂肪酸アミドである電池用包装材料を開示しているが、押出ラミネーション工程を利用する場合は脂肪酸アミドが揮発してスリープ特性を失う可能性がある。
【0010】
特許文献5は、第1シーラント層が酸変性ポリオレフィンによって形成され、第2シーラント層がイソタクチック分率(mm)が99%以下のポリオレフィン樹脂を含む電池用包装材料のシーラント層用樹脂組成物を開示しているが、商用化または合成可能なポリオレフィン樹脂のイソタクチック分率が99%を超過できないため、イソタクチック分率(mm)が99%以下のポリオレフィン樹脂の範疇を具体的に確認することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許 第2003-0029141号
【特許文献2】韓国公開特許 第2002-0030737号
【特許文献3】韓国登録特許 第1499740号
【特許文献4】日本登録特許 第6808966号
【特許文献5】日本登録特許 第5761278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、金属箔気体遮断層、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、低い熱縫合温度条件で熱縫合が可能であると共に、高温環境で向上された耐熱性と形態安定性を示す二次電池用包装材料を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、前記内層をなす組成物は示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を利用した熱的分画分析法(Successive Self-nucleation and Annealing、SSA)を測定する際、温度-熱量曲線に少なくとも3つの吸熱ピークを有するが、前記吸熱ピークは90乃至180℃の範囲で現れることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0014】
また、前記内層をなす組成物は、前記熱的分画分析法の分析の際、全体ピークの面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が10%を超過せず、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満であることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0015】
また、前記内層をなす組成物は、少なくとも1種の酸変性ポリプロピレンを含むことを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0016】
また、前記酸変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸が1乃至10重量%の含量でグラフトされた変性ポリプロピレンであることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0017】
また、前記耐熱性樹脂は、ポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂であることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0018】
また、前記金属箔は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、及びタングステン(W)からなる群より選択される1種以上の金属を含むことを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【0019】
また、前記外層の厚さは15乃至30μmであり、前記金属箔気体遮断層の厚さは25乃至45μmであり、前記内層の厚さは25乃至120μmであることを特徴とする二次電池用包装材料を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、内層をなす組成物の示差走査熱量計を利用した熱的分画分析法を測定する際に特異的な熱的特性を提示することで、低い熱縫合温度条件で熱縫合が可能であると共に、高温環境で向上された耐熱性と形態安定性を示す二次電池用包装材料を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果、3重以上の溶融挙動を示さない事例を例示的に示すグラフである。
【
図2】示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)における熱処理過程を例示的に示すグラフである。
【
図3】示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果、3重以上の溶融挙動を示す事例を例示的に示すグラフである。
【
図4】実施例1における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例2における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例3における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【
図7】実施例4における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【
図8】比較例1における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【
図9】比較例2における内層に対する示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、好ましい実施例を介して本発明を詳細に説明する。その前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的であるか辞書的な意味に限って解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。よって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願の時点において、これらを代替し得る多様な均等物と変形例が存在し得るということを理解すべきである。
【0023】
本発明は、リチウム二次電池用包装材料であって、耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層が積層される構造であって、前記内層をなす組成物に対して示差走査熱量計(DSC)で核生成/アニーリング(nucleation/annealing)利用した熱的分画分析法(SSA)によって測定した温度-熱量曲線に少なくとも3つの吸熱ピークを有するが、吸熱ピークが90乃至180℃の範囲で現れることを特徴とする二次電池用包装材料を開示する。
【0024】
前記内層は、二次電池用包装材料で最内側に当たる電池の電解液と接触する熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる層であって、リチウム二次電池を密閉するための目的で熱接合が行われる。
【0025】
本発明によるリチウム二次電池用包装材料の内層である熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物は、示差走査熱量計(DSC)を利用して熱的分画分析法(SSA)によって測定した際、温度-熱量曲線で少なくとも3つの吸熱ピークを含む有することが特徴である。つまり、本発明によるリチウム二次電池用包装材料において、内層の熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物は3つ以上で溶融挙動を示すが、これはDSC機器で観察し得る。
【0026】
この際、前記内層をなす組成物は、全体ピークの面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が10%を超過せず、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満であることが好ましい。
【0027】
例えば、
図1のようなSSAの測定結果では3種以上の溶融挙動を示さず、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が全体ピーク面積に対して90%以上の温度-熱量曲線を示しているが、このようなSSAの測定結果を示す組成物からなる内層を利用しては本発明で解決しようとする熱縫合性、耐熱性、及び形態安定性が向上された二次電池用包装材料を具現することが難しい。
【0028】
ここで、示差走査熱量計を利用した熱的分画分析法による温度-熱量曲線は、分析する熱可塑性樹脂をDSCを利用して常温から十分に高い温度、例えば、約200℃まで分当たり10℃の速度で昇温と冷却を繰り返し、特定温度、例えば、180、170,及び160℃の10℃間隔で一定時間維持(holding)して自己核生成及びアニーリングを付与し、より精密な決定情報を得た結果を示したものである(
図2及び
図3を参照)。つまり、熱可塑性樹脂を加熱して完全に溶融(melting)させた後、特定温度(T)に冷却して徐々にアニーリング(annealing)すると、該当温度(T)で安定的ではないラメラは依然として溶融されていて安定的なラメラのみ結晶化するが、この際、該当温度(T)に対する安定性はラメラの厚さに依存し、ラメラの厚さは鎖構造に依存する。よって、このような熱処理を段階的に行うことで、高分子鎖構造によるラメラの厚さ及びその分布図を定量的に測定し得、それによって各溶融ピーク面積の分布を測定し得る。
【0029】
本発明では耐熱性樹脂フィルムからなる外層と、金属箔気体遮断層と、熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層の積層構造を含む二次電池用包装材料において、内層を別途に分離してDSCを利用し熱的分画分析法を実施するが、前記内層は熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物自体の化学的組成による結晶構造だけでなく、樹脂を成形及び熱処理した現象に対する結晶構造を含ませる結果であるため、樹脂を成形及び熱処理した履歴を除去するために常温で融点以上の十分に高い温度で熱アニーリング熱処理を行う。前記熱可塑性樹脂を融点以下の高い温度で十分な時間、例えば、3分乃至60分程度維持する。このような熱アニーリングの後、前記熱可塑性樹脂を常温まで昇温と同じ速度で冷却して熱処理を行うようになるが、維持区間の温度が常温になるまで特定の温度間隔で下げて自己核形成及びアニーリングを付与する。
【0030】
このような熱処理を経て、前記内層をなす組成物は融点でのみ吸熱性ピークを示していた融点挙動から、融点より低い相転移温度での吸熱性相転移を示す多重溶融挙動の熱可塑性樹脂を示すようになる(
図3を参照)。
【0031】
これは、本発明における内層をなす組成物の場合、固有の樹脂融点より低い温度で生じる吸熱性相転移ピークを確認することで、融点以下で熱接合が可能になるという点を示している。また、90乃至180℃範囲で多重の吸熱性相転移を保有し、広い範囲の接着温度条件で接着し得るという点も示している。また、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満であって、機械的剛性及び耐熱性が付与されて内層を熱接合した後に優れた熱接合強度が示されるようになる。
【0032】
一方、本発明で内層を構成する熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物は多層で構成されるが、好ましくは2層または3層で構成される。
【0033】
本発明において、前記内層をなす組成物は少なくとも1種の酸変性ポリプロピレンを含むが、酸変性基の作用基として無水マレイン酸(maleic anhydride)が1乃至10重量%含量、好ましくは3乃至5重量%含量でグラフトされた変性ポリプロピレンを含み得る。前記無水マレイン酸の含量が1重量%未満であれば金属箔気体遮断層との接着が低下し得、10重量%を超過すれば多量の極性作用基のためフィッシュアイ(F/E)及び低分子が発生し、コロナ表面処理後の表面張力が低くなって金属箔気体遮断層との接着力が低下し得る。好ましくは、2層または3層の層構成で金属箔気体遮断層と突き当たる層に構成され得る。
【0034】
前記内層は十分な熱接合特性のために約25乃至120μmの厚さを有し得るがこれに限らず、具現しようとするセルパウチの用途、例えば、約88μmの総厚さで具現される薄膜型のセルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型のセルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型のセルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0035】
前記外層は金属箔気体遮断層の上に備えられて外部に露出され得るリチウム二次電池用包装材料の最外層であって、金属箔気体遮断層を保護し得るように耐摩耗性と共に耐熱性、耐寒性、耐ピンホール性、絶縁性、耐化学性、成形性などを有する素材を利用して形成されることが好ましい。このような耐熱性樹脂フィルムからなる外層は、ポリアミド系(polyamide-based)樹脂またはポリプロピレン系(polyester-based)樹脂を含み得る。前記ポリアミド系樹脂は延伸率が高くて成形に有利なナイロンであり得、前記ポリエステル系樹脂は高い耐化学性、耐ピンホール性、絶縁性、機械的強度などを具現し得るポリブチレンテレフタレート(polybuthylene terephthalate、PBT)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。
【0036】
前記外層は十分な程度の耐摩耗性、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、絶縁性などをいずれも考慮して、約15乃至30μmの厚さを有し得る。外層の厚さが薄すぎれば外層の強度不測のため二次電池包装材料の成形性が低下し得る。反面、厚すぎれば外層の下部に備えられる内層及び金属箔気体遮断層が相対的に薄い厚さで具現されなければならないため、二次電池包装材料で熱接着強度の低下、各層間剥離強度の低下などの問題が発生し得る。しかし、外層の厚さは前記範囲に限らず、具現しようとするセルパウチの用途、例えば、約88μmの総厚さで具現される薄膜型のセルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型のセルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型のセルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0037】
本発明では前記外層と金属箔気体遮断層を接着するために第1接着樹脂層が更に形成され得る。
【0038】
第1接着樹脂層は外層と金属箔気体遮断層を接着し得る接着剤によって形成されるが、第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤の接着器具についても特に限らず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などからいずれも選択され得る。
【0039】
第1接着樹脂層の形成に使用し得る接着剤の樹脂成分として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂と、ポリエーテル系接着剤と、ポリウレタン系接着剤と、エポキシ系樹脂と、フェノール系樹脂と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂と、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂と、セルロース系接着剤と、(メタ)アクリレート系樹脂と、ポリイミド系樹脂と、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂と、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどのゴムと、シリコン系樹脂と、フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の変性模様については特に限らないが、例えば、その接着剤成分としてアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステルとの混合樹脂、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。そのうちでも延伸性、高湿度条件下での耐久性や応変抑制作用、熱縫合時の熱劣化抑制作用などに優れ、外層と金属箔気体遮断層との間のラミネーション強度の低下を抑制してデラミネーション(Delamination)の発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤、ポリアミド、ポリエステル、またはこれらと変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。
【0040】
一方、第1接着樹脂層の厚さは、例えば、2乃至10μmであり得る。
【0041】
前記金属箔気体遮断層は外部からの湿気や空気、そして内部から発生したガスの出入を遮断するためのものであって、内層と接触し得る。金属箔気体遮断層はガスバリア性及び水分バリア性を有する金属を含むが、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)などからなる群より選択される一つ以上(単一金属または単一金属の混合)、またはこれらから選択される2種以上の合金(alloy)などを含み得る。好ましい具現例として、金属箔気体遮断層は水分バリア性、ガスバリア性、及び成形性をいずれも考慮して、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金(Al alloy)を含み得る。金属箔気体遮断層は十分な程度のガスバリア性及び水分バリア性のために、約25乃至45μmの厚さを有し得る。しかし、金属箔気体遮断層の厚さはこれに限らず、具現しようとするセルパウチの用途、つまり、一般的には、約88μmの総厚さで具現される薄膜型セルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型セルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型セルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0042】
金属箔気体遮断層層は接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために少なくとも一つの面、好ましくは少なくとも内層側の面、より好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは金属箔気体遮断層の表面に耐酸性被膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、シュウ酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチル酢酸、塩化クロム、硫酸カルシウムクロムなどのクロム酸化合物を利用したクロム酸クロメート処理と、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸可能物を利用したリン酸クロメート処理と、アミノ化フェノール重合体を利用したクロメート処理などが挙げられる。
【0043】
金属箔気体遮断層に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化錫などの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼き付け処理をすることで、金属箔気体遮断層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には正イオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成し得る。ここで、正イオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボキシル酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリルの主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらの正イオン性ポリマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記化成処理は1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。また、前記化成処理は1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも好ましくはクロム酸クロメート処理、より好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
【0045】
化成処理は耐酸性被膜の形成に使用する化合物を含む溶液をバーコート法、ロールコート法、ブラビアコート法、浸漬法などによって金属箔気体遮断層の表面に塗布した後、金属箔の温度が70乃至200℃程度になるように加熱することで行われる。
【0046】
本発明では前記金属箔気体遮断層と内層を接着するために第2接着樹脂層が更に形成され得る。
【0047】
第2接着樹脂層は内層と金属箔気体遮断層を接着し得る接着剤によって形成され得る。第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤の接着器具についても特に限らず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのうちいずれも選択され得る。
【0048】
第2接着樹脂層の形成に使用し得る接着剤の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂と、ポリエーテル系接着剤と、ポリウレタン系接着剤と、エポキシ系樹脂と、フェノール系樹脂と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂と、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂と、セルロース系接着剤と、(メタ)アクリル系樹脂と、ポリイミド系樹脂と、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂と、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンなどのゴムと、シリコン系樹脂と、フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の変形模様については特に限らないが、例えば、その接着剤成分としてポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステルとの混合樹脂、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。そのうちでも延伸性、高湿度条件下での耐久性や応変抑制作用、熱縫合時の熱劣化抑制作用などに優れ、内層と金属箔気体遮断層との間のラミネーション強度の低下を抑制してデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤、ポリオレフィン系樹脂、またはこれらと変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。
【0049】
一方、第2接着樹脂層の厚さは、例えば、2乃至60μmであり得る。
【0050】
本発明による二次電池用包装材料の製造方法は所定組成の各層を積層した積層体が得られる限り特に制限されないが、以下の方法が例示される。
【0051】
まず、外層、第1接着樹脂層、及び金属箔気体遮断層が順次に積層された積層体(積層体A)を形成する。積層体Aの形成は、詳しくは、表面が化成処理されたバリア層に金属箔気体遮断層に第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤を押出法、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布乾燥した後、その外層を積層して第1接着樹脂層を硬化するドライラミネーション法によって行い得る。
【0052】
次に、積層体Aの金属箔気体遮断層の上に内層を積層させる。金属箔気体遮断層と内層との間に第2接着樹脂層を設ける場合は、例えば、(1)積層体Aの金属箔の上に第2接着樹脂層を形成するための接着剤を溶液コーティングした後高温で乾燥方法などによって積層し、この第2接着樹脂層に予め2層または3層のシート状に製膜した内層を熱ラミネーション法によって積層する方法(ドライラミネーション法)、(2)積層体Aの金属箔気体遮断層の上に2層または3層からなる内層を共押出することで積層する方法(共押出ラミネーション法)、(3)積層体Aの金属箔と予め2層または3層のシート状に製膜したシーラント層との間に、溶融した第2接着樹脂層を流し込みながら、第2接着樹脂層を介して積層体Aと内層を接合する方法(サンドイッチラミネーション法)などが使用され得る。
【実施例】
【0053】
以下、具体的な実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明する。
【0054】
[実施例1]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層はT-die casting方式で成形する。前記外層、金属箔気体遮断層接合フィルムと熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層(厚さ40μm)をドライラミネーションで接合し、リチウム二次電池用包装材料を得た。
【0055】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸(4重量%)、変性ポリプロピレン1重量%、ホモポリプロピレン54重量%、エチレン含有プロピレン共重合体25重量%、及び無定形プロピレンゴム20重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線に90乃至180℃の範囲で12個の吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が0.12%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が77.5%と測定された(
図4を参照)。
【0056】
[実施例2]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層(厚さ40μm)は3層で構成し、前記フィルムにT-die casting方式で接合してリチウム二次電池用包装材料を得た。
【0057】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸(4重量%)、変性ポリプロピレン5重量%、ホモポリプロピレン5重量%、エチレン含有プロピレン共重合体35重量%、及びエチレン及びブテン含有プロピレン三元共重合体25重量%、低密度ポリエチレン12重量%、及び無定形プロピレンゴム18重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線に90乃至180℃の範囲で13個の吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が0.59%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が33%と測定された(
図5を参照)。
【0058】
[実施例3]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層は3層に構成し、T-die casting方式で成形する。前記外層、金属箔気体遮断層接合フィルムと熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層(厚さ40μm)をドライラミネーションで接合し、リチウム二次電池用包装材料を得た。
【0059】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸(4重量%)、変性ポリプロピレン1重量%、ホモポリプロピレン44重量%、線形低密度ポリエチレン20重量%、及び無定形プロピレンゴム35重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線に90乃至180℃の範囲で18個の吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が1.21%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が87%と測定された(
図6を参照)。
【0060】
[実施例4]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層は3層に構成し、T-die casting方式で成形する。前記外層、金属箔気体遮断層接合フィルムと熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層(厚さ40μm)をドライラミネーションで接合し、リチウム二次電池用包装材料を得た。
【0061】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸(4重量%)、変性ポリプロピレン1重量%、ホモポリプロピレン29重量%、エチレン含有プロピレン共重合体35重量%、低密度ポリエチレン20重量%、及び無定形プロピレンゴム15重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線に90乃至180℃の範囲で12個の吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が0.83%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が22.3%と測定された(
図7を参照)。
【0062】
[比較例1]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層(厚さ40μm)は3層で構成し、前記フィルムにT-die casting方式で接合してリチウム二次電池用包装材料を得た。
【0063】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが含まれておらず、ホモポリプロピレン85重量%及び無定形プロピレンゴム15重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線で一つの吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が0%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が91.2%と測定された(
図8を参照)。
【0064】
[比較例2]
外層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)と金属箔気体遮断層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ30μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。内層(厚さ40μm)は3層で構成し、前記フィルムにT-die casting方式で接合してリチウム二次電池用包装材料を得た。
【0065】
熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが含まれておらず、エチレン及びブテン含有プロピレン三元共重合体90重量%、及び無定形プロピレンゴム10重量%で構成しており、示差走査熱量計(DSC)を利用した熱的分画分析法(SSA)を測定した際、温度-熱量曲線で6つの吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が0%で、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が0%と測定された(
図9を参照)。
【0066】
[試験例]
前記製造された包装材料を利用して試片を製作し、及び下記方法によって物性を測定乃至評価して、その結果を下記表1に示した。
【0067】
[物性の測定乃至評価方法]
(1)アルミニウムの剥離強度
前記製造された材料を50℃で14日間硬化した後、幅15mmに裁断して、23℃で50mm/minの剥離速度で180°の剥離角での剥離強度を測定した。
(2)熱接着強度
前記製造された材料を内層フィルムが接するようにし、200℃の条件で2kgf及び1sの条件で熱接着した後、15mmに裁断して、23℃で100mm/minの剥離速度で180°及び160°の剥離角での剥離強度を測定した。
(3)耐電解液特性
前記熱接着強度の測定に使用された試片を85℃電解液に75時間浸漬した後、前記熱接着強度の測定方法と同じ方法で剥離強度を測定し、電解液浸漬前の剥離強度に対して電解液浸漬後の剥離強度が90%以上に維持されれば「◎」、70%以上90%未満であれば「△」、70%未満であれば「×」で表示した。前記電解液組成は[EC/DEC/DMC=1/1/1(v/v%)+LiPF6(1 mol/L)+H2O300ppm]にしており、ここで、ECは炭酸エチレン、DECは炭酸ジエチル、DMCは炭酸ジメチルである。
(4)Forming性能
額縁型金属モールド(10cm×10cm)の上に製造された前記包装材料を外層が型の縁に当たるように載せ、内層フィルム面の上を四角錐で加圧して、最小6mmの深さまで絞り(drawing)を5回実施し、包装材料の角部分に裂ける現象が0であれば「◎」、一つ乃至3つであれば「△」、4つ以上であれば「×」で表示した。
【0068】
【0069】
表1を参照すると、本発明によってリチウム二次電池用包装材料の熱可塑性ポリオレフィンを含む組成物からなる内層が少なくとも1種の酸変性ポリプロピレンを含み、熱的分画分析法によって測定した際、温度-熱量曲線で90乃至180℃範囲で少なくとも3つの吸熱ピークを有し、全体ピーク面積の合計を基準に100℃未満の吸熱ピークを含む領域が10%を超過せず、150℃を超過する吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満であることを満足すれば、優れた熱接着性能及び各層の材質間の剥離強度(アルミニウムの剥離強度、耐電解液特性)に優れた性能を示すことを確認し得る。また、90乃至180℃範囲で多重の吸熱性相転移を保有し、広い範囲の接着温度条件で接着し得る。また、150℃超過の吸熱ピークを含む領域が20%超過90%未満で、機械的剛性及び耐熱性が付与されて内層を熱接合した後で熱接合強度に優れることを確認し得る。
【0070】
それに対し、比較例1は実施例より相対的に高温で高い吸熱性相転移を保有している。これは相対的に低い熱縫合温度で内層を構成する熱可塑性ポリオレフィンの熱アニーリング領域が減少し、熱接着が十分に起こっていないことを確認し得、また、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが含まれておらず、金属との接着が十分ではないためアルミニウムの剥離強度及び耐電解液特性が減少したことを確認し得る。また、高温での吸熱性相転移を示す領域は熱可塑性ポリオレフィンの結晶化度が高く、高い結晶化度のため機械的剛性はよいが、Forming性能は低下したことを確認し得る。
【0071】
比較例2の場合は100乃至140℃の領域が100%の吸熱性相転移を示すものであって、相対的に低い温度範囲で接着し得る。但し、吸熱性相転移を示す領域が実施例に対して低い温度区間であり、相対的にこれをなす熱可塑性ポリオレフィンの結晶化度が低いことが分かり、150℃超過区間における吸熱ピークがないという点で機械的剛性が足りず、熱接着後の低い剥離強度にも影響を及ぼす。また、比較例1と同じく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが含まれておらず、金属との接着が十分ではないため、アルミニウムの剥離強度及び耐電解液特性が減少したことを確認し得る。但し、相対的に低い結晶化度のため、比較例1に比べ非結晶性領域によるForming性能は改善されたことを確認し得る。
【0072】
これまで本発明の好ましい実施例を詳細に説明した。本発明の説明は例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずとも他の具体的な形態に容易に変更し得ることを理解できるはずである。
【0073】
よって、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲及びその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【国際調査報告】