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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】大うつ病性障害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/495
A61P25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525395
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022078922
(87)【国際公開番号】W WO2023077094
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,213
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/362,446
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520330593
【氏名又は名称】アラガン ファーマスーティカルズ インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レキダ,ルドミーラ
(72)【発明者】
【氏名】ブドゥール,クマル
(72)【発明者】
【氏名】アーリー,ウィリー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA12
(57)【要約】
本開示は、大うつ病性障害対象の治療において抗うつ薬の補助として、カリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することにより、大うつ病性障害(MDD)を治療する方法を提供する。カリプラジンの投与がMontgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの、ベースラインから6週目までの統計学的に有意な変化を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大うつ病性障害を治療する方法であって、大うつ病性障害(MDD)の補助的治療を必要とする患者に1.5mg/日又は3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、カリプラジンの投与が、Montgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの、ベースラインから6週目までの統計学的に有意な変化を達成する方法。
【請求項2】
MDDの補助的治療を必要とする患者が、DSM-5のための構造化面接(SCID-5)に基づく、精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版(DSM-5)のMDD用基準を満足し、治療前にハミルトンうつ病評価尺度-17(HAMD-17)の総スコアが22以上である、請求項1に記載に方法。
【請求項3】
患者が、少なくとも8週~24カ月未満にわたり大うつ病性エピソードを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抗うつ治療反応に関する質問票(ATRQ)により測定すると、患者が適切な用量及び適切な期間の、1~3種の抗うつ薬に不十分な反応を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
大うつ病性障害を治療する方法が、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カリプラジン又は薬学的に許容される塩の投与の結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される場合、うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
統計学的に有意な寛解が、治療の中断に至る有害事象が2%未満から有害事象がない状態までで達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
カリプラジン又は薬学的に許容される塩が、カリプラジン塩酸塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
大うつ病性障害を治療する方法が、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として3.0mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カリプラジン又は薬学的に許容される塩の投与の結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される場合、うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
統計学的に有意な寛解が、治療の中断に至る有害事象が2%未満から有害事象がない状態までで達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カリプラジン又は薬学的に許容される塩が、カリプラジン塩酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1種以上の抗うつ薬に十分に反応しなかった患者において、大うつ病性障害の統計学的に有意な処置の方法であって、1種以上の抗うつ薬の補助的治療として、各患者に1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、治療により、患者においてプラセボと比較してベースラインから治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化を達成する方法。
【請求項14】
患者においてプラセボと比較してベースラインから治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化が、-2ポイントであるか、又は2ポイントを超える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月28日出願の米国仮出願第63/263,213号及び2022年4月4日出願の米国仮出願第63/362,446号の利益を主張するものであり、各々の仮出願内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、大うつ病性障害を治療する医薬及び方法に関し、より詳細には大うつ病性障害の抗うつ薬治療の補助的治療としての医薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大うつ病性障害(MDD)の治療法は複雑であり、心理療法、教育及び様々な薬物療法の薬剤の使用が関わることが多い。抗うつ薬(ADT)は、MDDに罹患している患者の治療に使用される基本的な薬物療法の薬剤である。現在、アリピプラゾール、クエチアピンフマル酸塩及びブレクスピプラゾールなどのADTが、MDDに罹患している患者の治療に認可されている。利用できる治療の選択肢数にもかかわらず、多くの患者は、ADTだけの単独療法を用いて十分な反応又は不安症状の寛解に達成することができない。半分以上の患者は、満足する結果を得ていない。大うつ病性障害を適切に治療する、最適な、目標となる方法論及び投与レジメンが求められる状態である。
【0004】
MDD治療法に対する患者の反応が治療によるものか、又はプラセボ効果によるものか、はっきりしないことが多い。治療とプラセボの間のMontgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの2点以上の変化は、臨床的に意義のある処置効果を示唆するのに一般に利用されてきた。しかしながら、ヒト臨床試験を実施しなければ、特定の治療レジメンがそのような臨床的な関連性に達するかどうか予測することはほぼ不可能であった。全体が参照により本明細書に組み込まれているDurgamら、J Clin.Psychiatry 77:371-378(2016)には、カリプラジンが補助的治療として使用されて、継続する抗うつ薬治療に十分に反応しなかったMDD患者を治療することができるかどうかを試験する、無作為化二重盲検プラセボ対照可変用量試験が記載されている。試験から、カリプラジン1日1~2mgの可変投与により、プラセボと比較してMADRS総スコアの統計学的に有意な差を達成しなかった(最小二乗平均差(LSMD)=-0.9、調整p値=0.2404)が、1日2~4.5mg可変投与では達成した(LSMD=-2.2、調整p値=0.0114)ことが示された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Durgamら、J Clin.Psychiatry 77:371-378(2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、カリプラジン1.5mg/日が、MDD患者の補助的治療としてプラセボと比較してMADRS総スコアの統計学的に有意な変化を達成したこと(LSMD=-2.5、調整p値=0.005)、それゆえにMDDの臨床的に意義のある処置になることを予想外に発見した。
【0007】
本開示は、大うつ病性障害(MDD)対象の治療において抗うつ薬の補助として、カリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、大うつ病性障害を治療する方法を提供する。
【0008】
実施形態において、本開示は、その治療を必要とする患者に、ADT治療に加えて1.5mg/日の量で、又はADT治療に加えて3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、大うつ病性障害を治療する方法を提供する。
【0009】
実施形態において、本開示は、その治療を必要とする患者に、ADT治療に加えて1.5mg/日の量で、又はADT治療に加えて3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含む、大うつ病性障害を治療する方法を提供する。
【0010】
実施形態において、本開示は、大うつ病性障害を治療する方法であって、大うつ病性障害(MDD)の補助的治療を必要とする患者に1.5mg/日又は3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、カリプラジンの投与が、Montgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの、ベースラインから6週目までの統計学的に有意な変化を達成する方法を提供する。
【0011】
実施形態において、方法は、DSM-5のための構造化面接(SCID-5)に基づく、精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版(DSM-5)のMDD用基準を満足させ、治療前にハミルトンうつ病評価尺度-17(HAMD-17)の総スコアが22以上である、MDDの補助的治療を必要とする患者に1.5mg/日又は3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。実施形態において、患者は、少なくとも8週~24カ月未満にわたり大うつ病性エピソードを有する。実施形態において、抗うつ治療反応に関する質問票(ATRQ)により測定すると、患者は適切な用量及び適切な期間の、1~3種の抗うつ薬に不十分な反応を示す。
【0012】
実施形態において、大うつ病性障害を治療する方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含む。実施形態において、カリプラジン又は薬学的に許容される塩の投与の結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される、うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす。実施形態において、統計学的に有意な寛解は、治療の中断に至る有害事象が2%未満から有害事象がない状態までで達成される。実施形態において、カリプラジン又は薬学的に許容される塩は、カリプラジン塩酸塩として投与される。
【0013】
実施形態において、大うつ病性障害を治療する方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として3.0mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含む。実施形態において、カリプラジン又は薬学的に許容される塩の投与の結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される、うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす。実施形態において、統計学的に有意な寛解は、治療の中断に至る有害事象が2%未満から有害事象がない状態までで達成される。実施形態において、カリプラジン又は薬学的に許容される塩は、カリプラジン塩酸塩として投与される。
【0014】
実施形態において、本開示は、1種以上の抗うつ薬に不十分に反応した患者において、大うつ病性障害の統計学的に有意な処置の方法であって、1種以上の前記抗うつ薬の補助的治療として、各前記患者に1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記治療により、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化を達成する方法を提供する。
【0015】
実施形態において、1種以上の抗うつ薬に不十分に反応した患者において、大うつ病性障害の統計学的に有意な処置の方法は、1種以上の前記抗うつ薬の補助的治療として、各前記患者に1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記治療により、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化を達成し、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの前記統計学的に有意な最小二乗平均の変化が、-2ポイントであるか、又は前記2ポイントを超える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】抗うつ薬の補助として1日1回カプセルとして投与されるカリプラジンの安全性及び有効性を評価するために実施される臨床試験の概要を示す。
図2】経時的に週毎に結果が出る、ベースラインからのMADRS総スコア変化の最小二乗平均変化(+/-SE)を示す。
図3】経時的に週毎に結果が出る、ベースラインからのCGI-Sスコア変化の最小二乗平均変化(+/-SE)を示す。
図4】6週目終了時の全域のMADRSスコアの改善(LOCF)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、それを必要とする患者の大うつ病性障害を治療する方法を提供する。実施形態において、本開示は、大うつ病性障害に罹患している患者を治療する方法を提供する。実施形態において、本開示は、抗うつ薬(ADT)の補助として治療有効量のカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、大うつ病性障害を治療する方法を提供する。カリプラジンの構造は以下に示される:
【0018】
【化1】
【0019】
及びカリプラジン、又は4-[[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]カルバモイル]シクロヘキサン-1イル]-N,N-ジメチルアミン、若しくはトランス-4-[[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]カルバモイル]シクロヘキサン-1イル]-N,N-ジメチルアミン、若しくはトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレアの化学名を有する。カリプラジンは、カリプラジンの塩酸塩、すなわち4-[[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]カルバモイル]シクロヘキサン-1イル]-N,N-ジメチルアミン塩酸塩、又はトランス-4-[[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]カルバモイル]シクロヘキサン-1イル]-N,N-ジメチルアミン塩酸塩、又はトランス-N-{4-[2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル]シクロヘキシル}-N’,N’-ジメチルウレア塩酸塩として投与することができる。カリプラジンの調製は、例えば2006年1月20日出願の米国特許第7,737,142号、及びそれに当たる関連外国特許に記載されている。
【0020】
治療により大うつ病性障害に伴う症状の頻度及び強さを低減させることができる。実施形態において、方法の結果、大うつ病性障害に伴う症状がなくなる可能性がある。実施形態において、カリプラジンを投与すると、より少ない症状又は強さが減弱した症状をもたらし得る。実施形態において、大うつ病性障害の症状は、減少又は消失し得る。
【0021】
大うつ病性エピソード/障害の症状評価基準は、「精神疾患の診断・統計マニュアル」、第5版(DSM-5としても知られる)に概説されている。因子には:うつ気分;ほぼすべての活動に対する興味の喪失;意図していない体重減少/増加、又は食欲の減退/増進;睡眠障害;他人が観察できるほど重症である精神運動の変化(例えば、激越又は精神遅滞);倦怠、疲労若しくは低エネルギー、又は日常業務を完了する効率の低下;無価値感、又は過度の罪悪感、不適切な罪悪感若しくは罪業妄想;考える、集中する又は決定する能力の障害;並びに反復して死を考えること、自殺念慮又は自殺未遂が含まれる。それらの症状は、社会的な、職業上の又は他の重要な領域の機能に臨床的に重大な苦痛又は障害を引き起こす。それらの症状は、物質の直接的な生理的作用(例えば、薬物乱用、処方される薬剤の副作用)又は薬物療法適用の状態(例えば、甲状腺機能低下症)の原因によるものではない。MDDに罹患している患者には、躁病性エピソード又は軽躁病性エピソードがなかった。それらの状態は、統合失調症スペクトル又は他の精神病の障害により良好に説明されない。治療を必要とする患者は、大うつ病性障害のDSM-5評価基準に言及されるような症状に苦しむ場合がある。
【0022】
実施形態において、本開示は、大うつ病性障害を治療する方法を提供する。方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として1.5mg/日又は3mg/日の治療有効量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、それにより前記大うつ病性障害を治療する。
【0023】
実施形態において、本開示は、大うつ病性障害を治療する方法であって、大うつ病性障害(MDD)の補助的治療を必要とする患者に1.5mg/日又は3mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、カリプラジンの投与がMontgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの、ベースラインから6週目までの統計学的に有意な変化を達成する方法を提供する。
【0024】
実施形態において、MDDの補助的治療を必要とする患者は、DSM-5のための構造化面接(SCID-5)に基づく、精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版(DSM-5)のMDD用基準を満足し、治療前にハミルトンうつ病評価尺度-17(HAMD-17)の総スコアが22以上である。
【0025】
実施形態において、患者は、少なくとも8週~24カ月未満にわたり大うつ病性エピソードを有する。
【0026】
実施形態において、抗うつ治療反応に関する質問票(ATRQ)により測定すると、患者は適切な用量及び適切な期間の、1~3種の抗うつ薬に不十分な反応を示す。
【0027】
実施形態において、大うつ病性障害を処置する方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として1.5mg/日の治療有効量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含み、それにより前記大うつ病性障害を治療する。
【0028】
実施形態において、抗うつ薬治療に加えて1.5mg/日の量でカリプラジン又は薬学的に許容される塩を投与する結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される、うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす。
【0029】
実施形態において、統計学的に有意な寛解は、有害事象が2%未満から有害事象がない状態までで達成される。
【0030】
実施形態において、カリプラジン又は薬学的に許容される塩は、カリプラジン塩酸塩として投与される。
【0031】
実施形態において、方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、抗うつ薬の補助として3.0mg/日の治療有効量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を6週間投与することを含み、それにより前記大うつ病性障害を治療する。
【0032】
実施形態において、抗うつ薬治療に加えて3.0mg/日の量でカリプラジン又は薬学的に許容される塩を投与する結果、MADRS総スコアで10未満の総スコアにより規定される、大うつ病性エピソードの統計学的に有意な寛解をもたらす。
【0033】
実施形態において、本開示は、1種以上の抗うつ薬に十分に反応しなかった患者において、大うつ病性障害の統計学的に有意な処置の方法であって、1種以上の前記抗うつ薬の補助的治療として、各前記患者に1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記治療により、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化を達成する方法を提供する。
【0034】
実施形態において、1種以上の抗うつ薬に十分に反応しなかった患者において、大うつ病性障害の統計学的に有意な処置の方法は、1種以上の前記抗うつ薬の補助的治療として、各前記患者に1.5mg/日の量でカリプラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記治療により、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化を達成し、前記患者においてプラセボと比較してベースラインから前記治療の6週目までのMADRS総スコアの前記統計学的に有意な最小二乗平均の変化が、-2ポイントであるか、又は前記2ポイントを超える。
【0035】
実施形態において、本開示は、大うつ病性障害に伴う患者の症状を改善又は緩和することを提供する。そのような患者の症状は、さらに本明細書に記載されるように、患者報告アウトカム又は医療者が評価したアウトカムの改善として評価又は定義することができる。改善すれば、例えばDSM-5に概説されているように、不穏、疲労、過度の不安及び心配、筋肉痛の増加又は痛みの増加、集中力の低下、易刺激性並びに睡眠困難の患者の症状に影響を及ぼす可能性がある。
【0036】
本開示の発明は、例示の目的のみに含まれ、限定することを意図していない、以下の実施例の参照により、より明確に理解される。
【実施例
【0037】
[実施例1]
試験により、抗うつ薬単独に十分に反応しなかった大うつ病性障害(MDD)患者において、継続する抗うつ薬治療(ADT)の補助的治療としてカリプラジン1.5mg/日及び3mg/日の有効性、安全性及び忍容性をプラセボと比較して評価した。
【0038】
グローバル、多施設、無作為化、二重盲検(DB)、プラセボ対照、並行群間、固定用量試験により、MDDと診断され(精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版[DSM-5]を介する)、改訂版抗うつ治療反応に関する質問票(ATRQ)により測定すると、当時のエピソードの段階で適切な用量及び適切な期間で投与された1~3種の抗うつ薬に対して十分に反応しない外来患者において、継続するADTの補助的治療としてカリプラジン1.5mg/日及びカリプラジン3mg/日をプラセボと比較した。適切な用量は、最小表示用量(添付文書により)を超える用量として定義された。適切な期間は、ADT処置が少なくとも6週間継続し、最小用量を超えるのが6週のうち最低3週であるとして定義された。試験概要は図1に示される。
【0039】
試験対象集団には、存続期間が少なくとも8週~24カ月未満である当時の大うつ病性エピソードを有し、当時のエピソードの、継続する抗うつ薬治療に十分に反応しない、MDD基準に一致する患者が含まれた。18~65歳の男性及び女性患者が、試験に適格とされた。患者は、SCID-5に基づくMDD用DSM-5の基準を満足させ、患者スクリーニングの時点で存続期間が少なくとも8週~24カ月未満である当時の大うつ病性エピソードを有していた。精神病の特徴を有するMDDの診断は、許容できると考えられた。
【0040】
当時のうつ病性エピソードにおいて患者は、改訂版ATRQにより測定すると、適切な用量及び適切な期間の1~3種の抗うつ薬に十分に反応しない状態でなければならなかった(50%未満の改善)。適切な用量は、最小表示用量(添付文書により)を超える用量として定義された。適切な期間は、抗うつ薬治療処置が少なくとも6週間継続し、最小用量を超えるのが6週のうち最低3週であるとして定義された。患者は、スクリーニング(通院1)通院及びベースライン(通院2)通院で、評価者が管理するハミルトンうつ病評価尺度-17項目(HAMD-17)の最低スコアが22でなければならなかった。また患者は、HAMD-17の項目1のスコアが2以上であった。
【0041】
特定の病的恐怖を除いて、MDD以外の、当時いずれかの精神科の診断を受けた患者は除外された。また、最初の通院前の6カ月以内に物質関連障害(すなわち、カフェイン関連及びタバコ関連を除く障害を用いる)及び嗜癖性障害について、DSM-5に一致する履歴を有する患者も除外された。
【0042】
試験は、最大14日までのスクリーニング(必要ならば最高7日までの追加により)及び禁止薬剤のウオッシュアウトに続いて、6週の二重盲検(DB)処置、それに続いて4週の安全性追跡調査から構成された。スクリーニング期間の終了時、試験の組み入れ基準に一致する患者は、3群の二重盲検処置群のうち1群に無作為化された(1:1:1)。試験処置群は、カリプラジン1.5mg/日+抗うつ薬治療、及びカリプラジン3mg/日+抗うつ薬治療であった。対照群は、マッチングプラセボ+抗うつ薬治療を受けた。
【0043】
投与量/投与レジメン:カプセルの形状の治験薬(カリプラジン又はプラセボ)はブリスター包装されて提供される。治験薬は、スクリーニング/ウオッシュアウト期間の段階で投与されず、患者はスクリーニング時に所持したのと同じ抗うつ薬及び用量を続けた。患者は、適応症にかかわらずスクリーニング時に2種以上の抗うつ薬を服用しており、ベースライン(通院2)の前に他の抗うつ薬のすべてを中断した。二重盲検処置期間の段階で(6週)、患者は継続するADTに加えて1日当たり1カプセルを経口投与された。1.5mg/日+ADT処置群の患者は、通院2(0週目)から1.5mg+ADTを投与された。3mg/日+ADT処置群の患者は、通院2(0週目)から2週間1.5mg+ADTを投与され、それから通院4(2週目)から3mg/日+ADTに調整された。患者は、カリプラジン1.5mg、カリプラジン3mg又はプラセボのどちらかの、同一に見えるカプセルを与えられた。
安全性追跡調査:二重盲検処置期間完了後、患者は安全性追跡調査(FU)期間の段階で外来患者として継続して、治験責任医師又は被指名者の判断により通常通り治療を受けた。治験薬は、処置期間が過ぎて投与されなかった。
【0044】
臨床試験A
759名の参加者による無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設試験は、米国、ブルガリア、エストニア、ドイツ、ハンガリー、ウクライナ及びイギリスで実施された。継続するADTを除いた禁止向精神薬のウオッシュアウトを含めた、最大14日までのスクリーニング期間(必要ならば最大7日まで追加する)の後、抗うつ薬単独治療に部分的に反応した患者は、3処置群(1:1:1)に無作為化された。1群はカリプラジン1.5mg/日+ADTを受け、1群はカリプラジン3.0mg/日+ADTを受け、そして1群はプラセボ+ADTを受けた。カリプラジンに無作為化された参加者のすべては1.5mg/日で開始され、カリプラジン1.5mg/日の患者はその投与量のままであり、一方カリプラジン3.0mg/日の患者は、1.5mg/日を2週間受け、15日目で3.0mg/日に増量された。
【0045】
患者の臨床反応が不十分であった、ADT処置の継続に加えて、6週間、その薬剤が1日1回投与された。試験301においてカリプラジンにより、大うつ病性障害の患者を評価する試験において、主要評価項目を達成し、Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアにおけるベースラインから6週目までの統計学的に有意な変化を実証した。カリプラジン1.5mg/日で処置された患者は、プラセボと比較して6週目にMADRS総スコアの改善を達成した(p値=0.0050)。カリプラジン3.0mg/日で処置された患者は、6週目にプラセボより高いMADRS総スコアの改善を実証したが、統計学的な有意性を満たさなかった(p値=0.0727)。
【0046】
試験参加者の特性、中止、並びに人口統計(安全性対象集団)及び人口統計(mITT対象集団)は、それぞれ以下の表1、2、3及び4に示されている。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
主要及び副次的有効性パラメータは、それぞれMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコア及びClinical Global Impressions-Severity(CGI-S)スコアにおいてベースラインから6週目までの変化であった(スクリーニング、ベースライン、並びに1、2、4及び6週目)。追加の有効性パラメータ(スクリーニング、ベースライン及び1回以上の二重盲検の通院)には:MADRS反応(50%以上のMADRS総スコア低下)及び寛解(MADRS総スコア10以下)、HAMD-17総スコア及びハミルトン不安評価尺度(HAM-A)総スコア(32)のベースラインからの変化、並びにClinical Global Impressions-Improvement(CGI-I)スコア及び反応(CGI-Iスコア2以下)が含まれた。
【0052】
適格性についてスクリーニングされた1575例の患者のうち、759例が二重盲検処置に無作為化され、757例が安全性対象集団に含まれ、751例がmITT対象集団に含まれた。
【0053】
6週目の平均(SD)MADRSスコアは、プラセボで19.5(10.3)、カリプラジン1.5mg/日で17.4(9.1)及びカリプラジン3mg/日で18.6(8.9)であった。補助的なカリプラジン1.5mg/日により、プラセボに対してMADRS総スコアのベースラインから6週目まで有意に大きな平均の低下をもたらした(-14.1対-11.5、p=0.0025、調整p=0.0050)。MADRSスコアの低下は、カリプラジン1.5mg/日について2週目(名目のp=0.0453)及び4週目(名目のp<0.0001)にプラセボに対して有意であった。カリプラジン3.0mg/日により、プラセボと比較してベースラインから6週目まで数の上でMADRS総スコアのより大きな低下をもたらした(-11.5対-13.1)が、ただしこれらの差は統計学的な有意性に達しなかった(名目のp=0.0691、調整p=0.0727)。感度分析の結果は、主要の結果と一致した。
【0054】
経時的なCGI-Sスコアにおけるベースライン(+/-SE)からの変化は、図3に示されている。CGI-Sスコア(副次的有効性)においてベースラインから6週目までの変化の差は、プラセボに対してカリプラジン1.5mg/日について有意であり(名目のp=0.0091)、多重性を調整すると、有意性は得られなかった(調整p=0.0727)。プラセボに対してカリプラジン1.5mg/日についてCGI-Sスコアのより大きい減少は、4週目から見られ(名目のp=0.0033)、6週目まで続いた。また数の上でより大きなCGI-S低下は、4週目から6週目までプラセボに対してカリプラジン3.0mg/日についても(これらの差が統計学的な有意性を達成しなかったが)見られた。
【0055】
有効性パラメータは表5に要約されている。6週目にMADRS反応率は、プラセボに対してカリプラジン1.5mg/日で有意に高かった(44.0%対34.9%、名目のp=0.0446)。どちらのカリプラジン用量(1.5mg/日:25.2%[名目のp=0.3691]、3mg/日:16.7%[p=0.1155])でもプラセボ(23.3%)に対してMADRS寛解率の有意差はなかった。6週目にHAMD-17総スコアの低下は、プラセボに対してカリプラジン1.5mg/日で有意に大きかった(-12.7対-10.6、名目のp=0.0014)が、カリプラジン3.0mg/日でそうでなかった(-11.9、名目のp=0.0597)。6週目にHAM-Aスコアの差は、プラセボに対してカリプラジン1.5mg/日に有利に有意であった(-9.1対-7.8、名目のp=0.0370)。プラセボと比較すると、6週目にCGI-Iスコアにより測定される、より大きな改善は、カリプラジン1.5mg/日(名目のp=0.0026)及びカリプラジン3.0mg/日(名目のp=0.0076)で見られ、数の上でより高いCGI-I反応者率が、プラセボ(43.0%)に対してカリプラジン1.5mg/日(51.2%)及び3.0mg/日(50.4%)で見られたが、その差は名目の有意性を達成しなかった。
【0056】
【表5】
【0057】
MADRS総スコア及び経時的なMADRSにおける試験参加者の反応の結果は、それぞれ表6及び7に示されている。分析は反復測定混合効果モデル(MMRM)法を用いて行われた。プラセボと比較すると、ベースラインから処置6週目までの患者のMADRS総スコアの統計学的に有意な最小二乗平均の変化は、プラセボに対する最小二乗平均差(LSMD)として報告された。プラセボに対して処置のMADRS総スコアにおける2ポイント以上のLSMDの変化は、臨床的に意義のある処置効果を示唆するために一般に用いられてきた。表8は、MADRS反応者であった、又はMADRS寛解(MADRS総スコア10以下)を達成した試験参加者の数を要約している。経時的なMADRS総スコアにおけるベースラインからの変化(+/-標準誤差(SE))の結果は、図2に示されている。
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
事後解析において、プラセボ+ADTに対してカリプラジン+ADTを受ける、より大きな割合の患者は、5ポイント以上(1.5mg/日及び3.0mg/日=84%、プラセボ=74%)、10ポイント以上(1.5mg/日=64%、3.0mg/日=66%、プラセボ=54%)並びに15ポイント以上(1.5mg/日=46%、3.0mg/日=43%、プラセボ=35%)改善した。プラセボ患者に対してより多くのカリプラジン1.5mg/日患者は、20ポイント以上(1.5mg/日=33%、3.0mg/日=24%、プラセボ=23%)及び25ポイント以上(1.5mg/日=19%、3.0mg/日=11%、プラセボ=12%)改善した。図4は、患者の割合(%)による、6週目終了時の全域のMADRSスコアの改善(LOCF)を示している。
【0062】
ベースラインから6週目までのMADRS個別用語スコア変化のLSMD(95%CI)は、「外見に表出される悲しみ」(-0.2[-0.44、-0.03]、p=0.0247)、「言葉で表現された悲しみ」(-0.4[-0.58、-0.16]、p=0.0006)、「食欲減退」(-0.3[-0.50、-0.10]、p=0.0036)、「制止」(-0.3[0.56、-0.12]、p=0.0025)、「感情を持てないこと」(-0.3[-0.51、-0.06]、p=0.0126)、「悲観的思考」(-0.3[-0.45、-0.07]、p=0.0088)及び「自殺思考」(-0.1[-0.20、-0.02]、p=0.0127)について、プラセボに対してカリプラジンに有利に統計学的に有意であった。
【0063】
6週目のClinical Global Impressions-Severity(CGI-S)スコア及び経時的なCGI-Sスコアにおいて試験参加者の反応の結果は、それぞれ表9及び10に示されている。Clinical Global Impressions-Improvement(CGI-I)スケールの反応者(スコア2以下)の数は、表11に示されている(A及びB)。経時的なCGI-Sスコアの結果は、図3に示される。
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)及びハミルトンうつ病評価尺度-17(HAMD-17)において試験参加者の反応の結果は、それぞれ表12及び13に示されている。
【0069】
【表13】
【0070】
【表14】
【0071】
有害事象を発現する参加者の数(n)及び参加者のパーセンテージ((%))は、以下の表14に示されている。表15は、いずれかの処置群の、5%以上で発生する、最も頻発するTEAEを要約し、表16は体重変化を要約している。AEが二重盲検治験薬の最初の投与以後に発現又は悪化する(重症度が増す、又は重症になる)ならば、AEは試験治療下で発現した有害事象(TEAE)と考えられた。
【0072】
【表15】
【0073】
【表16】
【0074】
【表17】
【0075】
カリプラジンの安全性結果は、新たな安全性の徴候が確認されず、各適応症で確立された安全性のプロファイルと一致した。6週の試験期間の段階でカリプラジン群において5%以上発現する、最も知られた有害事象は、アカシジア、嘔気、不眠症、頭痛及び傾眠であった。処置終了時の体重変化は、すべての処置群で比較的小さかった(1kg未満)。
【0076】
反応の尺度
DSM-5のための構造化面接(SCID-5)
SCID-5は、主要なDSM-5診断をする(かつては第1軸で診断された)ための半構造化インタビューガイドである。この医療者が判定する診断評価は、治験責任医師、治験分担医師、又は精神疾患の診断において包括的な専門職のトレーニング及び経験を有する評価者により管理される。SCID-5は、試験の原資料と考えられた。
【0077】
改訂版抗うつ治療反応に関する質問票
ATRQ(Fava 2003)は、患者が以前のADT処置及び反応の要件について、組み入れ基準に一致するかどうかを判定するのに使用された、医療者が管理する質問票である。改訂版ATRQは、ATRQの管理を保証された試験施設の医療者により完成され、当時のうつ病性エピソードの中で以前の抗うつ薬の曝露及び反応を評価するのに使用された。医療者は、患者が当時のエピソードの中で以前服用していた抗うつ薬を確認し、用量の範囲及び存続期間を示唆した。それから医療者は、最大の反応を導いた抗うつ薬に対して患者が示した反応レベルを選択した。
【0078】
Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale
MADRS(Montgomery及びÅsberg、1979)は、過去の週の間の患者の総合的なうつ病性症状を評価する、10項目の、医療者が判定する尺度である。患者は、悲しみの感情、制止、悲観、内的緊張、自殺思考、睡眠減少又は食欲減退、集中困難、及び興味の減退を評価する項目について判定される。各項目は、症状なしを反映するスコア0及び最大重症度の症状を反映するスコア6による7ポイント尺度で評点をつけられる。
【0079】
ハミルトン不安評価尺度
ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)(Hamilton 1959)は、14項目から構成され、各項目が0(存在しない)~4(非常に重症の)に及ぶ5ポイント尺度で判定される、医療者が判定する尺度である。可能な最高スコアは、最も重症な種類の不安を表示する56であり、可能な最低スコアは、不安が存在しないことを表示する0である。その書類は、治験依頼者が設定したトレーニング要件及び適格性に該当する、経験ある評価者により管理された。
【0080】
HAM-Aは、過去の週にわたる被験者の不安を定量し分類するのに使用される、14項目の、医療者が報告する尺度である。項目は、「存在しない」(0、症状が存在しない、わずかである、又は明らかに不安以外の原因によるものである場合)、「軽度」(1、症状が多くなく、障害がなく軽度より大きい苦痛がない場合)、「中等度」(2、症状がより頻発し、中等度の苦痛又は通常の活動に限定的な障害がある場合)、「重度」(3、症状が重度で持続し、又は重度の苦痛若しくは著しい機能性障害につながる場合)、及び「非常に重度」(4、症状により能力が奪われる場合)からなる5ポイントのリッカート評価尺度で判定される。HAM-A総スコアは0~56に及び、より高いスコアはより強い不安の重度を示唆する。HAM-A総スコアは、さらに7項目の心理的な不安クラスタースコア及び身体の不安クラスタースコアに分けることができ、それぞれ0~28に及び、より高いスコアはより強い不安の重度を示唆する。HAM-A総スコアは、不安の重度により被験者を階層化するのに用いられ、0~7は疾患がない/最小の疾患を示唆し、8~14は軽度の疾患を示唆し、15~23は中等度の疾患を示唆し、そして24以上は重度の疾患を示唆する。
【0081】
Clinical Global Impressions-Severity
CGI-S(Guy 1976)は、医師が観察した他の患者の重症度と比較すると、患者の疾患の全体の重症度を測定する、医療者が判定する尺度である。患者は、1~7の尺度で判定されて、1は「正常な状態」を示唆し、7は「最も極めて病んでいる患者に入る」を示唆する。CGI-Sは、精神疾患の評価において包括的な専門職のトレーニング及び経験を有する治験責任医師、治験分担医師又は評価者により管理される。
【0082】
Clinical Global Impressions-Improvement
Clinical Global Impressions-Improvement(CGI-I)尺度(Guy 1976)は、通院2からの精神疾患の総合的な改善又は悪化を判定するのに本試験で用いられ、治験責任医師がそれを治験薬処置の結果と考えたかそうでなかったかにかかわらない、医療者が判定する尺度である。患者は、1~7の尺度で判定され、1は患者が非常に改善したことを示唆し、7は患者が非常に悪化したことを示唆した。CGI-Iは、精神疾患の評価において包括的な専門職のトレーニング及び経験を有する治験責任医師、治験分担医師又は評価者により管理された。
【0083】
ハミルトンうつ病評価尺度-17項目
HAMD-17(Hamilton 1960、Hamilton 1967、Millerら、1985)は、抑うつ気分、罪業感、自殺、不安、激越、病識レベル、不眠症パターン、仕事及び他の活動の興味減弱、体重減少、心気症並びに精神運動抑制度に基づき、患者の抑うつ状態を判定するのに用いられる、医療者が判定する17項目の尺度である。またそれは、生殖器症状及び身体症状を確認するために用いることもできる。この書類は、治験依頼者が設定したトレーニング要件及び適格性に該当する、経験ある評価者により管理された。
【0084】
HAMD-17は、過去の週にわたる被験者のうつ病を定量し分類するのに用いられる、17項目の医療者が報告する尺度である。項目は、0~2又は0~4に及ぶ様々な数の評価尺度で判定される。各々の数の判定は、特有の言語アンカーに関連する。HAMD-17総スコアは、0~52に及び、より高いスコアはうつ病の重症度がより高いことを示唆する。HAMD-17総スコアは、うつ病の重症度により被験者を階層化するのに用いられ、うつ0~7は疾患がない/最小の疾患を示唆し、8~13は軽度の疾患を示唆し、14~18は中等度の疾患を示唆し、19~22は重症の疾患を示唆し、そして23以上は非常に重症な疾患を示唆する。
【0085】
【表18】
【0086】
様々な詳細な実施形態が例示及び説明をされたが、一部は以下に表示されている。当然のことながら、様々な変更は発明の概念の趣旨及び範囲から外れることなく行うことができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】