(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】内燃機関用燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 61/18 20060101AFI20241003BHJP
F02M 67/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02M61/18 320D
F02M61/18 330
F02M67/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525496
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080144
(87)【国際公開番号】W WO2023073140
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517094194
【氏名又は名称】ガンサー シーアールエス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンサー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヘフェリ,リヒャルト
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB03
3G066AB05
3G066AB06
3G066BA61
3G066BA67
3G066CC26
3G066CC28
(57)【要約】
燃料噴射装置(10.1)は、噴射弁座(18)およびノズル本体(16)を有するハウジング(12)と、高圧燃料入口(24)から噴射弁座(18)まで延びる高圧室(26)と、ハウジング(12)内に調整可能に配置され、弁シール面(57)を有する噴射弁部材(56)とを含み、噴射弁部材(56)は、弁シール面(57)の下流に配置され、ノズル室(17)内に突出するニードル(58)を有し、弁シール面(58)は、弁シール面(57)の下流に配置され、ノズル室(17)内に突出するニードル(58)を有し、噴射弁部材(56)は、弁シール面(57)の下流に配置され、ノズル室(17)内に突出するニードル(58)を有し、弁シール面(57)は、ノズル室(17)を高圧室(26)に接続し、高圧室(26)からノズル室(17)を分離するために、噴射弁座(18)とシールを形成するように相互作用するノズル本体(16)が、ノズル室(17)から延びる少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)と、ノズル室(17)から延びる少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)とを有し、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)と少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)とは、異なる高さに配置され、ニードル(58)が、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を閉じたり開いたりするために、ノズル室(17)の側壁(164)と協働するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に燃料を断続的に噴射するための燃料噴射弁(10.1、10.2、10.3、10.4)であって、
高圧燃料入口(24)、噴射弁座(18)、およびノズル本体(16)を有し、長手軸(L)を定めるハウジング(12)と、
ハウジング(12)内に配置され、高圧燃料入口(24)から噴射弁座(18)まで延びる高圧室(26)と、
ハウジング(12)内に、長手軸(L)方向に調整可能に配置され、弁シール面(57)を有する噴射弁部材(56)と、
噴射弁座(18)に向かう閉鎖力を噴射弁部材(56)に作用する圧縮ばね(63)と、
長手軸(L)に沿った噴射弁部材の移動を制御するための液圧制御装置(72)と、
を含み、
噴射弁部材(56)は、ニードル(58)を有し、該ニードル(58)は、弁シール面(57)の下流に配置されて、噴射弁座(18)の下流に配置されたノズル室(17)内に突出しており、弁シール面(57)は、ノズル室(17)を高圧室(26)に接続するため、およびノズル室(17)を高圧室(26)から分離するために、噴射弁座(18)とシールを形成するように相互作用するように設計され、
ノズル本体(16)は、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射するために、ノズル室(17)から延びる少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)と、ノズル室(17)から延びる少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)とを有し、
少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)は、長手軸(L)に対して異なる高さに配置され、
ニードル(58)は、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を開閉するために、ノズル室(17)の側壁(164)と協働するように設計されており、
燃料噴射弁(10.1)は、さらに、
噴射弁部材(56)の制御ピストン(68)が摺動嵌合により案内される案内部(64)と、
案内部(64)および制御ピストン(68)とともに制御室(70)の範囲を定める中間部(66)と、
を含み、
液圧制御装置(72)は、制御室(70)内の圧力を変化させることによって、長手軸(L)に沿った噴射弁部材(56)の移動を制御するように設計され、
液圧制御装置(72)は、中間弁(83)を含み、該中間弁は、キノコ形の中間弁部材(78)であって、中間部(66)の案内凹部内で案内される軸部(76)と頭部(80)とを有する中間弁部材と、中間部(66)の頭部(80)に面する側に形成され、頭部(80)と協働する中間弁座と、を有し、
中間弁部材(78)は、開位置では、高圧室(26)に接続された高圧燃料供給ポートと制御室(70)との間の接続を開き、閉位置では、高圧燃料供給ポートと制御室(70)との間の接続を遮断して、制御室(70)を弁室(44)から、スロットル通路を除いて、分離し、
燃料噴射弁(10.1)は、さらに、
弁室(44)を低圧燃料リターン部(46)に接続し、また弁室(44)を低圧燃料リターン部(46)から切り離すための電気的に作動可能なアクチュエータ構成(38)、を含んでいる、燃料噴射弁(10.1、10.2、10.3、10.4)。
【請求項2】
少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)と少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)とは、異なる最小直径を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項3】
少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)は、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)の下流に配置され、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)の最小直径よりも小さい最小直径を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項4】
ニードル(58)は、
噴射弁部材(56)の閉位置で、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を閉じ、
噴射弁部材(56)の第1の開位置において、少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を開き、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)を閉じ、
噴射弁部材(56)の第2の開位置において、少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)および少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)を開く、
ように構成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項5】
ニードル(58)は、実質的に長手軸(L)に沿って配向された内側ボア(582)を有し、該ボアは、ニードル(58)の下端(583)から延び、噴射弁部材(56)の第1の開位置において、少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を高圧室(26)に接続し、噴射弁部材(56)の第2の開位置において、少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)および少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)を高圧室(26)に接続するように構成される、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項6】
ノズル室(17)は、高圧室(26)の下流に配置された上部ノズル室(165)と、上部ノズル室(165)の下流に配置された下部ノズル室(163)とを有し、下部ノズル室(163)は、ニードル(58)の内側ボア(582)を介して上部ノズル室(165)に接続され、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)が、下部ノズル室(163)から延在している、ことを特徴とする請求項5に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項7】
ニードル(58)の内側ボア(582)は、ニードルの側壁(581)に設けられた少なくとも1つの横ボア(584)を介して上部ノズル室(165)に接続されている、ことを特徴とする請求項6に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項8】
ニードル(58)は、下部ノズル室(163)内で摺動嵌合により案内される、ことを特徴とする請求項6または7に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項9】
ノズル室(17)の直径は、上部ノズル室(165)から下部ノズル室(163)への移行部において、好ましくは円錐状の段差を介して減少する、ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項10】
下部ノズル室(163)は、第1の部分(163.1)と、第1の部分(163.1)の下流に配置され、第1の部分(163.1)に比べて縮径された第2の部分(163.2)とを有する、ことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.2、10.3)。
【請求項11】
少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)は、下部ノズル室(163)の第2の部分(163.2)から延びている、ことを特徴とする請求項10に記載の燃料噴射弁(10.2)。
【請求項12】
少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)は、下部ノズル室(163)の第1の部分(163.1)から延びている、ことを特徴とする請求項10または11に記載の燃料噴射弁(10.2、10.3)。
【請求項13】
ニードル(58)は、下部ノズル室(163)の第1の部分(163.1)内で摺動嵌合により案内される第1のニードル部(58.1)を有し、第1のニードル部(58.1)に隣接して、下部ノズル室(163)の第2の部分(163.2)内で摺動嵌合により案内可能な第2のニードル部(58.2)を有する、ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.2、10.3)。
【請求項14】
第2ニードル部(58.2)は、下部ノズル室(163)の第2の部分(163.2)内において、噴射弁部材(56)の閉位置と第1の開位置との間で摺動嵌合により案内される、ことを特徴とする請求項13に記載の燃料噴射弁(10.2、10.3)。
【請求項15】
第1および第2のニードル部(58.1、58.2)は、円錐状の段差を介して互いに接続する、ことを特徴とする請求項13または14に記載の燃料噴射弁(10.2、10.3)。
【請求項16】
ノズル室(17)は、基部(171)を備えた止まり孔状に形成されており、ノズル室(17)は、噴射弁部材(56)の閉位置において、ニードル(58)の下端部(583)と止まり孔状のノズル室(17)の基部(171)とによって境界が定められた自由空間(166、166.1)を有している、ことを特徴とする請求項4から15のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項17】
ノズル室(17)は、下流端にアンダーカットを有する、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1、10.3、10.4)。
【請求項18】
噴射弁座(18)は、噴射弁部(15)に形成されており、ノズル本体(16)は、好ましくはユニオンナット(23)を介して噴射弁部(15)に着脱可能に固定されている、ことを特徴とする、請求項1から17のずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1~10.4)。
【請求項19】
ニードル(58)は、少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)を閉鎖および開放するために、ノズル室(17)の側壁(164)と協働するように設計されたスリーブ(585)を含む、ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.3)。
【請求項20】
スリーブ(585)は、ノズル室(17)の側壁(164)に対して半径方向に向けられたクランプ力を受ける、ことを特徴とする請求項19に記載の燃料噴射弁(10.3)。
【請求項21】
少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)は、ノズル室(17)から始まる第1の開口部(162.1)と、第1の開口部(162.1)に隣接する第2の開口部(162.2)とを有し、第2の開口部(162.2)の直径は第1の開口部(162.1)の直径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.2)。
【請求項22】
少なくとも1つの第1の噴射開口部(161)および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部(162)は、トラフ形の凹部(1611、1621)を介してノズル室(17)から延びている、ことを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.4)。
【請求項23】
中間弁部材(78)は、開位置において高圧燃料供給ポートと弁室(44)との間の第2の接続を開き、閉位置において高圧燃料供給ポートと弁室(44)との間の第2の接続を遮断する、ことを特徴とする請求項1から22のいずれか1項に記載の燃料噴射弁(10.1)。1
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を断続的に噴射する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射弁は、内燃機関、特にディーゼルエンジンの燃焼室に燃料を直接噴射するために使用される。近年、従来のディーゼルエンジンに加え、船舶、発電エンジン、場合によっては商用車の効率的かつ低排出ガスな代替手段として、いわゆるデュアル燃料システムが提案されている。デュアル燃料システムにおける課題の1つは、ガスを主燃料として作動する際に、ディーゼルまたは船舶用のディーゼルオイルなどの燃料を点火用ジェットとして個別に噴射することである。特に、燃料の点火噴射には、従来の燃料噴射とは異なる噴射量、噴射圧力、噴射形態などの噴射パラメータが望まれるため、従来の噴射システムを拡張する必要がある。
【0003】
デュアル燃料噴射システムは、例えば米国特許出願公開第2007/0246561号に記載されており、独立に制御される隣接するニードル弁要素を介して2つの異なる噴射パターンを生成するように構成された燃料噴射システムを備えている。燃料噴射システムは、加圧燃料を受け取るように構成された中空内部を定める噴射装置本体を有する燃料噴射装置と、その噴射構成が第1の燃料噴射パターンを提供するように構成された第1のノズルと、その噴射構成が第1の燃料噴射パターンとは異なる第2の燃料噴射パターンを提供するように構成された第2のノズルとを含む。第1および第2のノズルは、共通の供給源から供給される燃料を燃焼室に噴射するように適合されている。燃料噴射装置は、噴射装置本体の中空内部に配置された第1のニードル弁部材をさらに備え、第1のニードル弁部材は、第1のノズルに対応し、第2のニードル弁部材は、噴射装置本体の中空内部に配置され、第2のノズルに対応する。第2のニードル弁部材は、第1のニードル弁部材から間隔をあけて配置され、第1のニードル弁部材に隣接して配置される。第1および第2のノズルは、共通の供給源から供給される燃料を燃焼室に噴射するように設計されている。
【発明の概要】
【0004】
デュアルフューエルシステムの拡張要件、例えば液体と気体の異なる燃料や、ガス作動中の点火源の導入などを背景に、一般的に、噴射プロセスの信頼性の高い制御性を提供しながら、デュアルフューエルシステムの設計を簡素化することが望ましい。
【0005】
したがって、本発明の目的は、特にデュアルフューエルシステム用の燃料噴射弁を提供することである。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴を有する燃料噴射弁によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項並びに本明細書および図面に示されている。
【0007】
本発明は、内燃機関の燃焼室内に燃料を断続的に噴射する燃料噴射弁に関し、長手軸を定めるハウジングを含み、このハウジングは、高圧燃料入口、噴射弁座、およびノズル本体を有する。ハウジング内には、高圧燃料入口から噴射弁座まで延びる高圧室が配置されている。さらに、弁シール面を有する噴射弁部材が、長手軸方向に調整可能なようにハウジング内に配置されている。燃料噴射弁は、噴射弁座に向かう閉弁力を噴射弁部材に作用させる圧縮ばねをさらに備える。圧縮ばねは、好ましくは、一方では噴射弁部材に支持され、他方ではハウジングに対して固定位置に支持される。
【0008】
燃料噴射弁は、長手軸に沿った噴射弁部材の移動を制御するための液圧制御装置をさらに備え、噴射弁部材は、弁シール面の下流に配置されたニードルを有し、このニードルは、噴射弁座の下流に配置されたノズル室内に突出している。弁シール面は、ノズル室を高圧室に接続し、ノズル室を高圧室から分離するために、噴射弁座とシール状に相互作用するように設計されている。
【0009】
ノズル本体は、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射するために、ノズル室から延びる少なくとも1つの第1の噴射開口部と、ノズル室から延びる少なくとも1つの第2の噴射開口部とを有し、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部とは、長手軸に対して異なる高さに配置されている。ニードルは、ノズル室の側壁と協働して、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じる(閉鎖する)、また開く(開放する)ように(または、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部の少なくとも一方を閉じる、また開くように協働するように)構成されている。
【0010】
燃料噴射弁は、好ましくは、噴射弁部材の制御ピストンが摺動嵌合により案内される案内部と、案内部および制御ピストンと共に制御室を定める中間部と、をさらに含む。液圧制御装置は、制御室内の圧力を変化させることにより噴射弁部材の長手軸に沿った移動を制御するようになっている。液圧制御装置は、中間弁部材を含み、この中間弁部材は、中間弁部材の案内凹部内に案内される軸部と、頭部とを有し、中間弁部材が、頭部に面する中間弁部材の側面に形成され、頭部と協働する中間弁座を含んでおり、中間弁部材は、開位置において、高圧室に接続された高圧燃料供給ポートと制御室との間の接続を開き、閉位置において、高圧燃料供給ポートと制御室との間の接続を遮断し、制御室を弁室から、スロットル通路を除いて、分離する。液圧制御装置は、さらに、中間弁部材と弁室を低圧燃料リターンポートに接続し、弁室を低圧燃料リターンポートから切り離すための電気的に作動可能なアクチュエータを含む。
【0011】
中間弁要素は、開位置において高圧燃料供給ポートと弁室との間の第2のまたはそれぞれさらなる接続を開き、閉位置において高圧燃料供給ポートと弁室との間の第2のまたはそれぞれさらなる接続を遮断することができる。
【0012】
キノコ形の中間弁要素により、噴射弁要素の開弁動作の正確な制御性と、噴射弁要素の迅速な閉弁プロセスの両方を達成することができる。さらに、非常に短い時間間隔で複数回の噴射を実現することができる。
【0013】
ノズル室内に突出するニードルがノズル室の側壁と協働して少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じたり開いたりすることにより、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を介して燃料の標的噴射を行うことができる。少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部は、さらに、ハウジングの長手軸に対して異なる高さに配置されているので、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部は、それぞれ、ハウジングの長手軸に沿って、噴射弁部材またはニードルを制御および調整することによって、選択的に閉じるまたは開くことができる。噴射弁部材の作動および調節は、液圧制御装置によって正確かつ信頼性の高い方法で達成することができる。したがって、燃料噴射弁は、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部を用いて、噴射量、噴射圧力、噴射時間、噴射パターンなどの噴射パラメータが異なる2つの異なる噴射プロセスを同一の噴射弁部材で提供することを可能にする。
【0014】
本発明に関連して、当業者は、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を「閉じる(閉鎖する)」ことは、必ずしも「シールする(密封する)」ことを意味する必要はなく、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部をまたはそれらの上をそれぞれ覆うことで十分であり得ることを理解するであろう。少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部が閉じられていても、そのため、ニードルとノズル室の内側側壁との間の隙間を介して、(開いた(開放された)噴射開口部からの噴射量と比較して)わずかな(許容可能な)漏れが生じることがあり得る。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部が閉じられているとき、ノズル室は、噴射弁部材の弁シール面と噴射弁座との封止接触によって高圧室から分離される。ノズル室は、噴射弁部材が噴射弁座から持ち上げられると高圧室に流体接続するが、それは適当な配置(すなわちノズル室の側壁における少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部の適切な配置(すなわち、ハウジングの長手軸に沿った適切な高さ)により、噴射弁部材またはニードルがそれぞれ、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部が開いて高圧室に接続する高さまで持ち上げられるまで、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部は閉じたままである。したがって、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を通る噴射タイミングは、噴射開口部が配置されている側壁の高さ、および/またはニードルの長さもしくはそれぞれのストロークによって調整することができる。
【0016】
好ましくは、ニードルは、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部の領域において、ノズル室内で摺動嵌合により案内され得る。ノズル室内での摺動嵌合により、ニードルはノズル室の側壁から延びる噴射開口部を実用上十分に閉じることができる。
【0017】
好ましくは、燃料噴射弁は、第1の高さに放射状に対称に配置された複数の、例えば2つ、4つ、6つまたはそれ以上の第1の噴射開口部と、第2の高さに放射状に対称に配置された複数の、例えば2つ、4つ、または6つの第2の噴射開口部とを有する。
【0018】
有利な実施形態では、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部は、異なる最小直径を有する。
【0019】
少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部に対して異なる最小直径を選択することにより、異なる噴射目的に対して異なる噴射断面を提供することができる。例えば、点火ジェット噴射またはパイロット噴射には、それぞれ小さい最小径を選択することができる。一方、より大きな最小直径は、例えばディーゼルまたは重油のメインインジェクタとして使用するために選択することができる。
【0020】
複数の第1の噴射開口部の場合、第1の噴射開口部は好ましくは同じ最小直径を有し、特に好ましくは同じ形状を有する。ただし、複数の第1の噴射開口部が異なる形状および/または最小直径を有する実施形態も考えられる。同様に、複数の第2の噴射開口部の最小直径は、好ましくは同じであり、それらの幾何学的形状は、特に好ましくは同じである。ただし、複数の第2の噴射開口部について、異なる形状および/または最小直径を有する実施形態も考えられる。
【0021】
有利な実施形態では、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、少なくとも1つの第1の噴射開口部の下流に配置され、少なくとも1つの第1の噴射開口部の最小直径よりも小さい最小直径を有する。
【0022】
したがって、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、リーン(天然)ガス/空気混合気を点火するためのディーゼルの点火噴射に使用することができる。少なくとも1つの第2の噴射開口部は、少なくとも1つの第1の噴射開口部の下流に配置されているので、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、ニードルが少なくとも1つの第1の噴射開口部を閉じた状態を維持したまま、噴射弁部材のニードルを持ち上げることによって開くことができる。したがって、噴射開口部のこの構成により、点火ジェット噴射のために少なくとも1つの第2の噴射開口部を選択的に開くことが可能になる。
【0023】
有利な実施形態では、噴射ニードルは、噴射弁部材の閉位置で、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じ、噴射弁部材の第1の開位置で、少なくとも1つの第2の噴射開口部を開き、少なくとも1つの第1の噴射開口部を閉じ、噴射弁部材の第2の開位置で、少なくとも1つの第2の噴射開口部および少なくとも1つの第1の噴射開口部を開くように設計されている。
【0024】
したがって、燃料噴射弁およびニードルは、少なくとも3つの(閉じる/開く)構成を提供するために使用することができ、それぞれ異なる動作モードまたは動作フェーズに使用することができる。例えば、第1の開位置は、少なくとも1つの第2の噴射開口部が少なくとも1つの第1の噴射開口部よりも小さい最小直径を有する場合、点火ジェット噴射のために使用することができる。一方、第2の開位置は、例えば、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部の両方が開かれ、燃料噴射弁を、それぞれディーゼルまたは重油を主燃料とする主噴射装置として使用することができるディーゼルまたは重油作動に使用することができる。
【0025】
したがって、燃料噴射弁は、例えば、少なくとも1つの第2の噴射ポートを介してガスモードで点火ジェット噴射を提供することができる。
【0026】
しかし、本発明は、燃料噴射弁をディーゼルまたは重油作動にも使用できるという利点を提供する。予備噴射またはパイロット噴射は、例えば、少なくとも1つの第2の噴射開口部を介して行うことができ、主噴射は、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部を介して行うことができる。
【0027】
ディーゼルまたは重油作動において、予備噴射のための1つの変形例では、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、例えば、予備噴射の後に再び開閉することができる。ある時間間隔の後、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部は、次に本噴射のために開くことができる。
【0028】
さらなる変形例では、ディーゼルまたは重油作動において段階的噴射を実施することができる。例えば、少なくとも1つの第2の噴射開口部を予備噴射のために開き、少なくとも1つの第1の噴射開口部をさらに本噴射のために開くことができる。段階的噴射のタイミング、特に予備噴射の持続時間は、長手軸に沿って少なくとも1つの第2の噴射開口部と少なくとも1つの第1の噴射開口部との間の距離を変化させることによって調整することができる。短い予備噴射は、例えば、長手軸に沿って少なくとも1つの第2の噴射開口部と少なくとも1つの第1の噴射開口部との間の距離を小さくすることによって達成することができる。
【0029】
特に短い予備噴射のために、少なくとも1つの第2の噴射開口部と少なくとも1つの第1の噴射開口部は、例えば、少なくとも1つの第2の噴射開口部の開口プロセス中に、より大きな最小直径を有する少なくとも1つの第1の噴射開口部が開口されるように配置することができる。これは、例えば、少なくとも1つの第2の噴射開口部の高さが、長手軸に沿って少なくとも1つの第1の噴射開口部の高さと「重なる」ことによって達成され得る。重なり合う」配置では、ノズル本体の側壁の不利な弱体化を回避または低減できるように、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部は、ノズル本体の水平回転方向に交互に配置またはオフセットすることができる。
【0030】
したがって、この燃料噴射弁は、同じ燃料噴射弁で異なるタイプの使用、特に一方では点火噴射インジェクタとして、他方では可変調整可能な予備噴射を備えたメインインジェクタとしての使用が可能であるという利点を提供する。
【0031】
閉位置はまた、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部の両方がニードルの側壁によって十分に閉じられるという利点を提供し、したがって、有利には、ノズル室から内燃機関の燃焼室への燃料の漏れを最小化するか、または実質的になくすことができる。
【0032】
一実施形態では、ニードルは、実質的に長手軸に沿って配向された内径を有し、この内径は、ニードルの下端から延び、噴射弁部材の第1の開位置では、少なくとも1つの第2の噴射開口部を高圧室に接続し、噴射弁部材の第2の開位置では、少なくとも1つの第2の噴射開口部および少なくとも1つの第1の噴射開口部を高圧室に接続するように設計されている。
【0033】
それぞれの開位置において、燃料は高圧室から内側ボアを通って少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部に入ることができ、それによって内燃機関の燃焼室に噴射される。内側ボアは、ニードルの下側すなわち下流側の端部から延びており、したがって、ニードルの側壁によって横方向に囲まれているので、ニードルは、噴射開口部を閉じたり開いたりするために長手軸に沿って移動することによって、ノズル室の側壁と容易に相互作用することができる。好ましくは、ニードルの内径はノズル室に接続され、内径はノズル室を介して高圧室をそれぞれの開位置にある噴射開口部に接続することができる。
【0034】
一実施形態では、ノズル室は、高圧室の下流に配置された上部ノズル室と、上部ノズル室の下流に配置された下部ノズル室とを有し、下部ノズル室は、ニードルの内側ボアを介して上部ノズル室に接続され、少なくとも1つの第1の噴射開口部および少なくとも1つの第2の噴射開口部は、下部ノズル室から延びる。
【0035】
好ましくは、噴射弁座は上部ノズル室の上方または上流に接続する。好ましくは、高圧室は、それぞれの開位置で上部ノズル室に接続され、高圧燃料が上部ノズル室を経由してニードルの内側ボアへ、そこから下部ノズル室を経由して少なくとも1つの第1および/または第2の噴射開口部へ通過できるようにする。
【0036】
一実施形態では、ニードルの内側ボアは、ニードルの側壁の少なくとも1つの横ボアを介して上部ノズル室に接続される。
【0037】
複数の横ボアがある場合、横ボアをニードル上の異なる高さに配置することができる。複数の横孔がある場合、内孔への全入口断面を大きくすることができる。これにより、ニードルを通る流れの二重偏向によって生じる圧力損失を有利に補うことができる。ニードルの異なる高さに複数の横ボアを配置することで、ニードルの側壁の弱体化を低減または防止することができる。一実施形態では、ニードルの複数の横ボアは、半径方向に対称に配置される。一実施形態では、ニードルの複数の横ボアは、鏡面対称性を有する。
【0038】
特定の実施形態では、少なくとも1つの横ボアの1つ以上は、少なくとも部分的に、噴射弁座の下方に配置され、上部ノズル室に接続する上部ノズル室の上方に配置された噴射弁部のボア部に開口することができる。
【0039】
特定の実施形態では、少なくとも1つの横ボアの1つ以上は、部分的に上部ノズル室に開口し、部分的に噴射弁部のボア部に開口することができる。
【0040】
特定の実施形態において、少なくとも1つの横ボアの1つ以上は、上部ノズル室に開口することができる。
【0041】
上部ノズル室への少なくとも1つの横ボアおよび/または噴射弁部の穴部の1つ以上の開口は、ニードルの瞬間的なストロークに応じて変化し得る。
【0042】
一実施形態では、ニードルは、下部ノズル室内で摺動嵌合により案内される。
【0043】
下部ノズル室から延びる噴射開口部では、噴射ニードルは、噴射開口部を閉じたり開いたりするための摺動嵌合により、下部ノズル室の側壁と擬似密封的に相互作用することができる。
【0044】
一実施形態では、ノズル室の直径は、上部ノズル室から下部ノズル室への移行部において、好ましくは円錐形の勾配を介して減少する。
【0045】
特に、ニードルの下側部分は、好ましくは摺動嵌合により、噴射開口部を閉じたり開いたりするために下部ノズル室内で案内されることができ、ニードルの上側部分は、上部ノズル室内で公差をもって継続することができる。
【0046】
ニードルの少なくとも1つの横ボアを有する実施形態では、少なくとも1つの横ボアは、少なくとも1つの横ボアが上部ノズル室および/または上部ノズル室に接続された噴射弁部のボア部に配置され、したがって上部ノズル室を内側ボアに接続するように、ニードルの上側部分に配置することができる。
【0047】
したがって、下部ノズル室は、主に、噴射開口部を閉じるまたはそれぞれ開くために、ニードルの側壁と下部ノズル室の側壁との間に準シール面を提供する役割を果たすことができ、上部ノズル室は、主に、好ましくは高圧室をニードルの内径と接続することによって、開位置にある高圧室との接続を提供する役割を果たすことができる。
【0048】
一実施形態では、下部ノズル室は、第1の部分と、第1の部分の下流に配置され、第1の部分と比較して直径が縮小された第2の部分とを有する。
【0049】
下部ノズル室を直径の異なる複数の部分に分割することにより、特に噴射開口部の適切な配置により、噴射開口部を選択的に閉じたり開いたりするためのさらなるオプションが可能になる。
【0050】
例えば、有利な実施形態では、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、下部ノズル室の第2の部分から延びている。
【0051】
さらに、少なくとも1つの第1の噴射開口部は、好ましくは、下部ノズル室の第1の部分から延びる。
【0052】
第2の部分における少なくとも1つの第2の噴射開口部と第1の部分における少なくとも1つの第1の噴射開口部との別個の配置により、少なくとも1つの第2の噴射開口部と少なくとも1つの第1の噴射開口部とは、ニードルの最大ストロークを増大させることなく、より良好に、特に、より柔軟に離間させることができる。第2の部分の少なくとも1つの第2の噴射開口部と第1の部分の少なくとも1つの第1の噴射開口部との適切な配置により、ニードルの必要な最大ストロークも減少させることができる。
【0053】
一実施形態では、ニードルは、下部ノズル室の第1の部分で摺動嵌合により案内される第1のニードル部と、第1のニードル部に隣接し、下部ノズル室の第2の部分で摺動嵌合により案内される第2のニードル部とを有する。
【0054】
したがって、ニードルは、第2のニードル部を通して少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じ、第1のニードル部を通して少なくとも1つの第1の噴射開口部を閉じることができる。ニードルを複数のニードル部に分割することによって、ニードルは、有利には、下部ノズル室のそれぞれの部分において、閉じられるべきそれぞれの噴射開口部に適合させることができる。
【0055】
好ましくは、第2のニードル部は、噴射弁部材の閉位置と第1の開位置との間で、下部ノズル室の第2の部分内で摺動嵌合により案内される。
【0056】
下部ノズル室をいくつかの部分、特に第1の部分と第2の部分、に分割し、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じるために、ニードルをいくつかのニードル部、特に第1のニードル部と第2のニードル部、にそれぞれの場合に分割することは、既に述べたように、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部をより良好に、特により柔軟に離間させることができるという利点を提供する。特に、少なくとも1つの第1の噴射開口部と少なくとも1つの第2の噴射開口部は、ニードルの最大ストロークを増加させることなく、ハウジングの長手軸に沿って互いにさらに離間して配置することができる。有利には、ニードルの最大ストロークは増加させなくてもよい、なぜなら、(第1および第2の部分による)下部ノズル室および(第1および第2のニードル部による)ニードルの段付き形状は、第2の開位置に到達するために、ニードルがその下端を少なくとも1つの第1の噴射開口部の高さより上に上昇させる必要がないことを意味するからである。むしろ、ニードルが、少なくとも1つの第1の噴射開口部の高さより上に、第1のニードル部と第2のニードル部との間のグラデーションで持ち上げられれば、有利なことに十分である。
【0057】
一実施形態では、第1のニードル部と第2のニードル部は、円錐形の段差を介して互いに接している。
【0058】
下部ノズル室の第1の部分と第2の部分は、円錐形の段差を介して互いに接することもできる。
【0059】
一実施形態では、第1のニードル部および/または第2のニードル部、および/または下部ノズル室の第1の部分および/または第2の部分は、ニードルが持ち上げられたときに、少なくとも1つの第1の噴射開口部が、少なくとも1つの第2の噴射開口部が開かれる前に開かれるように設計され得る。これは、特に、第2のニードル部の長さ、または第2のニードル部と円錐勾配の長さの和が、長手軸に沿って、少なくとも1つの第2の噴射開口部と少なくとも1つの第1の噴射開口部との間の距離よりも大きい場合に達成され得る。このような実施形態により、例えば、少なくとも1つの第1の噴射開口部を通じて、予備噴射または主燃料としてガスを用いて作動する場合には点火ジェット噴射が行われる燃料噴射弁を提供することができる。
【0060】
したがって、少なくとも1つの第2の噴射開口部および少なくとも1つの第1の噴射開口部の機能性は、それぞれ下部ノズル室またはその第1および第2の部分、ならびに/またはそれぞれニードルまたはその第1および第2のニードル部の適切な形状によって、さらに、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部の最小直径の適切な適合によって、交換することができる。
【0061】
一実施形態では、ノズル室は、基部を有する止まり孔状に設計されており、それにより、噴射弁部材の閉位置にあるノズル室は、ニードルの下端と止まり孔状のノズル室の基部とによって囲まれた自由空間を有する。
【0062】
ニードルの下端から延びるニードルの内側ボアにより、自由空間はしたがって内側ボアに接続している。噴射弁部材の開位置では、自由空間は、サイズが大きくなり、ニードルの下端と止まり孔状のノズル室の基部とによって少なくとも部分的に境界を定められることができ、それによって、燃料は、高圧室からニードルの内側ボアを経由し、拡大された自由空間を経由して、少なくとも1つの第2の噴射開口部または少なくとも1つの第1の噴射開口部に通過することができる。噴射弁部材の閉位置において、自由空間は、好ましくは、内燃機関の燃焼室から閉じられ、有利には、燃焼室への燃料の著しい漏れが生じないようにされる。
【0063】
一実施形態では、ノズル室は下流端にアンダーカットを有する。特に、自由空間はアンダーカットを有することができる。
【0064】
一実施形態では、噴射弁座は噴射弁部に形成され、それによってノズル本体は、好ましくはユニオンナットを介して、噴射弁部に取り外し可能に取り付けられる。
【0065】
ノズル本体の噴射弁部分への着脱可能な取り付けは、ノズル本体が一般に、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部の摩耗による摩耗部品であるため、ノズル本体を容易に交換できるという利点を提供する。
【0066】
一実施形態では、ニードルは、好ましくは鋼製のスリーブを有し、このスリーブは、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部を閉じたり開いたりするために、ノズル室の側壁と相互作用するように設計されている。
【0067】
スリーブは、噴射開口部の閉鎖を向上させるために有利に使用できる。さらに、スリーブは有利には噴射ニードルの側壁を保護し、必要に応じて容易に交換することができる。
【0068】
好ましくは、スリーブは、ノズル室の側壁に対して半径方向に向けられたクランプ力を受ける。
【0069】
ノズル室の側壁に対して半径方向に向けられたクランプ力は、噴射開口部の閉鎖をさらに改善することができる。
【0070】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、ノズル室から延びる第1の開口部と、第1の開口部に隣接する第2の開口部とを有し、第2の開口部の直径は、第1の開口部の直径よりも大きい。
【0071】
好ましくは、第2の開口部は、内燃機関の燃焼室に開口する。少なくとも1つの第2の噴射開口部の段付き形状のために、パイロット噴射のための燃料の改良された霧化が達成され得る、なぜなら、少なくとも1つの第2の噴射開口部は、減少した長さにわたって、すなわち第1の開口部に沿って狭い直径を有し、第2の開口部のおかげで広がったプロフィールを有するからである。このプロファイルにより、燃焼室内への点火ジェットの最適な霧化を達成するために、少なくとも1つの第2の噴射開口部の第1の開口部の孔径と孔の長さの最も有利な比率をそれぞれの場合に実現することができる。
【0072】
一実施形態では、少なくとも1つの第1の噴射開口部および/または少なくとも1つの第2の噴射開口部は、トラフ形状の凹部を介してノズル室から延びる。
【0073】
好ましくは、噴射開口部とノズル室の側壁との間の移行部は丸みを帯びている。特に好ましくは、噴射開口部とトラフ形状の凹部との間の移行部は丸みを帯びている。トラフ形状の凹部は、噴射開口部とノズル室の側壁との間の遷移を丸くすることを容易にする。噴射開口部とノズル室の側壁またはトラフ形状の凹部との間の遷移を丸くすることは、噴射開口部を通る燃料の流れをより時間的に安定させるという利点を提供する。
【0074】
スロットル通路は、好ましくは中間弁部材に形成され、特に好ましくは中間弁部材の頭部に形成される。しかし、スロットル通路は中間部材上に形成することもできる。さらなる変形例では、スロットル通路は、中間弁部材と他の部品との間、例えば中間部または案内部品との間の隙間を通して形成することができる。中間弁部材に形成されたスロットル通路は、制御室に背を向ける側において、中間弁部材に形成され弁室に属する止まり孔に開口することができる。好ましくは、スロットル通路は、制御室に隣接して中間弁部材に形成される。スロットル通路と止まり孔は、好ましくは、長手軸に対して同心である。これにより、一方ではスロットル通路が所望の長さで形成され、他方では止まり孔が弁室の一部を形成する。
【0075】
キノコ形の中間弁部材の頭部は、軸部の周りに半径方向距離で延びるシール面を有することができ、このシール面により、頭部は、中間弁部材の閉位置において、中間部上に形成された中間弁座とシール接触することができ、環状シール面を形成する。キノコ形の中間弁部材の軸部は、中間部の案内凹部内で密接に摺動嵌合により案内され得る。軸部に面する側、したがって中間部に面する側には、頭部のこの側の残りの部分から突出する環状シールビードを頭部に形成することができ、その自由端面は中間弁部材のシール面を形成することができる。
【0076】
中間部分、軸部、および頭部は、高圧室に接続された高圧燃料供給ポートが開口することができる環状空間を形成することができる。環状空間は、軸部の周囲を通り、軸部と中間部によって半径方向に制限された内側環状空間を有することができ、この内側環状空間は、軸部自体に凹部を形成することができ、それによって高圧燃料供給ポートが内側環状空間に開口することができる。弁室は、スロットル入口を介して高圧室、ひいては高圧入口と接続することができる。環状空間は、内側環状空間に隣接するギャップリング空間を有することができる。中間弁部材の閉位置において、この隙間環状空間は、中間部分と中間弁部材の頭部との間の周方向隙間によって形成され得る。
【0077】
内側環状空間は、中間弁部材の軸部上に、半径方向において外側に開口し、長手軸方向から見て、高圧供給ポートの口が常に少なくともほぼ完全に環状溝の領域内にあるような寸法を有する円周環状溝によって形成することができる。さらに、環状溝は頭部に直接隣接することができる。
【0078】
開位置において、高圧燃料供給ポートと弁室との間の第2の接続を開く中間弁部材の場合、弁室は、第2の接続を介して燃料で充填されることができ、これにより、中間弁部材のより速い開動作が可能になる。特に、第2の接続は、弁室が例えばスロットル通路を介して制御室からのみ充填される燃料噴射弁と比較して、弁室の充填を改善することができる。したがって、有利には、中間弁部材のわずかな開口動作によっても、弁室を第2の接続を介して充填することができる。スロットル通路に関する限り、制御室からスロットル通路を介して弁室への燃料の流れが、中間弁部材の最初の小さな開口運動を引き起こすならば、有利に十分であり、その場合、弁室は、第2の接続を介して多量の燃料で充填され得るからである。
【0079】
中間弁部材が閉位置において高圧燃料供給ポートと弁室との間の第2の接続を遮断することにより、中間弁部材の閉位置において燃料が第2の接続を介して高圧室から低圧燃料戻り口に流入するのを有利に防止することができる。中間弁部材が閉位置にあるときに高圧燃料供給ポートと弁室との間の第2の接続を遮断することによって、噴射行程中の高圧室から弁室への燃料の膨張による燃料損失および摩耗をそれぞれ低減または最小化することができ、同時に、中間弁部材の開動のための弁室の迅速な充填を達成することができる。
【0080】
一実施形態では、第2の接続は、高圧燃料供給ポートと、弁室の一部である中間弁部材の軸部を通って延びるボアとの間を通る。好ましくは、ボアは、止まりボアとして設計される。
【0081】
一実施形態では、中間弁部材の閉位置において、頭部は、軸部または案内凹部の周囲に第1の半径方向距離で延在する第1のシール面を介して、中間弁座に面する側を中間弁座に対して静止し、回転方向に閉じられる第1の環状シール面を形成し、軸部または案内凹部の周囲に第2の半径方向距離で延在する第2のシール面を介して、回転方向に閉じられる第2の環状シール面を形成し、第1の半径方向距離は第2の半径方向距離よりも大きい。
【0082】
一実施形態では、第1のシール面を形成する第1の端面を有する第1の環状シールビードが、頭部の中間部に面する側または中間部の頭部に面する側に形成される。
【0083】
一実施形態では、第2のシール面を形成する第2の端面を有する第2の環状シールビードが、頭部の中間部に面する側または中間部の頭部に面する側に形成される。
【0084】
一実施形態において、中間部は、頭部に面する側に少なくとも1つの段差を有し、頭部は、中間部に面する側に少なくとも1つの段差を有し、中間弁部材の閉位置において、中間部および頭部の段差の相互にオフセットされたエッジはそれぞれ、第1および/または第2の環状シール面を半径方向に定める。
【0085】
一実施形態では、中間部分の勾配は、中間弁部材が閉位置にあるときに中間部分、ステムおよび頭部によって囲まれる内側環状空間を定める。
【0086】
一実施形態では、高圧燃料供給ポートは、中間弁部材の閉位置において、中間弁部材と頭部との間に形成され、第1および第2の環状シール面によって半径方向に囲まれるギャップリング空間に開口するように、中間弁部材内を通る。
【0087】
一実施形態では、第2の接続は、中間弁部材の入口からなり、その第1の端部は弁室内に開口し、第2の端部は、中間弁部材の外側に開口している。有利なことに、既に上記で説明したように、中間弁部材の開放動作を支持するために、弁室は流入口を介して充填され得る。好ましくは、入口の第1の端部は、軸部を貫通し弁室の一部である止まりボアに開口している。
【0088】
一実施形態では、噴射開口部の第2の端部は、中間弁部材の閉位置において、第2の端部が第2の環状シール面よりも軸部から半径方向に小さい距離に配置されるように、中間弁部材の外側に開口する。
【0089】
一実施形態では、第2の接続は、軸部と案内凹部との間に、半径方向に少なくとも10μm、好ましくは20μmから50μmの公差で形成された通路を含む。
【0090】
一実施形態では、軸部は、軸部の長手方向に間隔をあけて配置された2つの環状突起を有する。
【0091】
一実施形態では、環状突起は、それぞれ、周方向に少なくとも1つの面取り部を有し、第2の接続は、少なくとも1つの面取り部と案内凹部との間の中間空間によって形成される通路からなる。少なくとも1つの面取り部により、軸部と案内凹部との間の公差を十分に小さく保つことができ、これにより、軸部の心出しを良くすることができ、すなわち、軸部の偏心位置または傾斜位置を回避またはそれぞれ低減することができる。同時に、軸部の外側と案内凹部との間の少なくとも1つの面取り部による公差が小さいにもかかわらず、少なくとも1つの面取り部と案内凹部との間の空間によって形成される十分な通路を設けることができ、この通路は第2の接続の通路として機能する。
【0092】
一実施形態では、環状突起は、それぞれ円周方向に2つまたは3つの面取り部を有する。
【0093】
一実施形態(環状突起なし)において、軸部は、円周方向に少なくとも1つの面取り部を有し、第2の接続は、少なくとも1つの面取り部と案内凹部との間の空間によって形成された通路からなる。既に説明したように、少なくとも1つの面取り部により、軸部と案内凹部との間の公差を十分に小さく保つことができ、これにより、軸部のセンタリングが良好になり、すなわち、軸部の偏心位置または傾斜位置を回避またはそれぞれ低減することができる。同時に、軸部の外側と案内凹部との間の少なくとも1つの面取り部による公差が小さいにもかかわらず、少なくとも1つの面取り部と案内凹部との間の空間によって形成される十分な通路を設けることができ、この通路は第2の接続の通路として機能する。
【0094】
一実施形態では、軸部は、円周方向に2つまたは3つの面取り部を有する。
【0095】
一実施形態では、第2の接続は、中間弁部材の頭部を貫通して延びるボアからなり、このボアは、少なくとも部分的に弁室と接続する弁室通路を形成し、頭部の中間部に面する側に一端を開口している。
【0096】
一実施形態では、弁室通路は、中間弁部材の閉位置において、中間弁部材の閉位置において、中間部分と頭部との間に形成され、第1および第2の環状シール面によって半径方向に境界を定められる隙間リング空間に開口するように、中間弁部材内を走行する。
【0097】
一実施形態では、燃料噴射弁は、中間弁部材の閉位置において、中間部、軸部および頭部によって囲まれ、高圧燃料供給ポートが開口する環状空間を有する。
【0098】
以下の図面および関連する説明を参照して、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。各図面には、次の事項が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】
図1は、燃料噴射弁の一実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、燃料噴射弁の下流域であるIIと表示された四角形で囲まれた部分を、
図1に比べて拡大した図である。
【
図3】
図3は、燃料噴射弁のさらなる実施形態の縦断面図である。
【
図4】
図4の(a)~(c)は、
図3に示す燃料噴射弁の実施形態の噴射弁部材の3つの構成図である。
【
図5】
図5は、燃料噴射弁のさらなる実施形態の縦断面図である。
【
図6】
図6は、燃料噴射弁のさらなる実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図の説明において、実施形態の対応する部分には同じ参照符号を使用する。
【0101】
図1は、内燃機関の燃焼室に燃料を断続的に噴射するための燃料噴射弁10・1の実施形態を示す。燃料噴射弁10.1は、ハウジング本体14、ノズル本体16、噴射弁座18が形成された噴射弁部15、およびハウジング本体14と噴射弁部15との間に配置されたアクチュエータ受け本体20を備えた長手軸Lを定めるハウジング12を有する。噴射弁部15に支持されたユニオンナット22は、アクチュエータ受け本体20を受け、ハウジング本体14にねじ込まれている。ノズル本体16に支持されたユニオンナット23は、噴射弁部15にねじ込まれている。ハウジング本体14とアクチュエータ受け本体20、および後者と噴射弁部15は、端面において互いに静止し、ユニオンナット22によって互いにシール状に押し付けられ、長手軸Lの方向において互いに整列される。
【0102】
高圧燃料入口24は、ノズル本体16から遠ざかる向きのハウジング本体14の端面に配置され、そこから高圧室26がハウジング12の内部、ハウジング本体14、アクチュエータ取付体20および噴射弁部15を通って、噴射弁座18まで延びている。高圧燃料入口24は、弁キャリア28によって形成されており、この弁キャリア28は、燃料中の異物を保持するためのバスケット状の有孔フィルタ32を担持している。
【0103】
弁キャリア28と有孔フィルタ32を備えたカートリッジとして設計された構造ユニットの構造と動作モードは、国際公開第2014/131497号に開示されている。高圧燃料入口24と有孔フィルタ32を備えた弁キャリア28は、国際公開第2013/117311号に開示されているように設計することもできる。弁キャリア28は、弁キャリア28に形成された弁座と協働するディスク形の弁部材を備えた、
図1には示されていない逆止弁を備えることもできる。逆止弁のディスク形の弁部材は、バイパスボアを有することができる。逆止弁は、高圧供給ラインを介して供給される燃料が、実質的に妨害されることなく高圧室26に流入することを可能にし得るが、バイパスを通ることを除いて、燃料が高圧室26から高圧供給ラインに流出することを防止する。高圧燃料入口24および逆止弁、ならびに有孔フィルタ32の代わりにロッドフィルタの可能な実施形態は、国際公開第2009/033304号から知られている。上記文書の対応する開示は、参照により本開示に組み込まれるものとみなされる。
【0104】
弁キャリア28に隣接して、高圧室26は、ハウジング本体14に形成された離散的な貯蔵室34を有し、この貯蔵室34は、他方では、高圧室26の流路36を介して噴射弁座18に接続している。
【0105】
バイパス付き逆止弁を備えた離散貯留室34の寸法および作動方式は、国際公開第2007/009279号に開示されており、対応する開示は参照により本開示に組み込まれるものとみなされる。
【0106】
逆止弁の代わりに、ある実施形態では、静止した不動の絞りを設けることもできる。
【0107】
電気的に作動するアクチュエータ構成38が、アクチュエータ受け本体20の凹部に受け入れられており、このアクチュエータ構成38は、そのプランジャー40が一方向にばね付勢され、アクチュエータ構成38の電磁石によって他方向に移動可能であり、弁室44を低圧燃料戻り口46(
図2参照)から分離するために低圧出口42を閉じ、弁室44と低圧燃料戻り口46とを互いに接続するために低圧出口42を開くことを目的としている。プランジャー40の長手軸、したがってアクチュエータ構成38の長手軸は、長手軸Lに対して平行かつ偏心している。
【0108】
アクチュエータ構成38を制御するための電気制御ラインが収容されるチャンネル52は、電気接続部50からハウジング本体14を通ってアクチュエータ構成38まで、ハウジング12の長手軸Lに対して、したがって燃料噴射弁10.1の長手軸Lに対して少なくとも部分的に偏心して配置される離散貯蔵室34と平行に延びる。
【0109】
プランジャー40は、カップ状のアクチュエータ受け本体20の底部を通過し、このアクチュエータ受け本体20はプランジャー40の案内要素を形成する。プランジャー40は半径方向に突出した案内翼を有し、この案内翼によって案内要素上を長手方向Lと平行に摺動するように案内される。案内翼は長手方向Lに延びる通路を形成し、この通路を通って燃料は低圧出口42から低圧燃料戻り口46へと流れることができる。
【0110】
図2は、
図1の燃料噴射弁のIIと記された四角形の部分の拡大断面図である。
【0111】
円錐状の噴射弁座18は、噴射弁部15に形成されており、この噴射弁部15は、流路36を介して貯蔵室34ひいては高圧燃料入口24に直接接続されている。このため、噴射弁座18は、噴射弁部15の内部にテーパ部を形成し、このテーパ部の上方またはそれぞれ上流に第1のボア部61が配置され、このテーパ部の下方またはそれぞれ下流に第1のボア部61よりも横径の小さい第2のボア部62が配置されている。
【0112】
円錐形の弁シール面57を有する噴射弁部材56が、長手軸Lの方向に調整可能なようにハウジング12内に配置されている。噴射弁部材56は、弁シール面57の下流にニードル58を有し、このニードル58は、噴射弁座15および第2ボア部62の下流に配置されたノズル本体16のノズル室17内に突出している。弁シール面57は、ノズル室17を高圧室26に接続し、ノズル室17を高圧室26から分離するために、噴射弁座18とシール状に相互作用するように設計されている。
【0113】
噴射弁部材56は、円錐弁シール面57から離れる向きの肩部59を有し、この肩部59に圧縮ばね63の一端が支持されている。圧縮ばね63の他端は、案内部を形成する案内スリーブ64の端面に支持されている。圧縮ばね63は、噴射弁部材56に対して、噴射弁座18の方向に作用する閉弁力を作用させる。一方、圧縮ばね63は、その端面が圧縮ばね63から離れる方向を向いた案内部64を、中間部66にシール接触した状態で保持する。
【0114】
案内部64では、噴射弁部材56に形成された複動式の制御ピストン68が、長手軸Lに沿って、約3μm~5μmの密接な摺動嵌合により案内される。制御ピストン68、案内部64および中間部66は、高圧室26に対して制御室70を定める。中間部66は、液圧制御装置72の一部である。液圧制御装置72は、例えば、国際公開第2021/165275号または国際公開第2020/260285号に記載されているように設計することができ、これらの対応する開示内容は、参照により本開示に組み込まれるものとみなされる。
【0115】
ノズル本体16は、ノズル室17から延びる複数の第1の噴射開口部161と、ノズル室17から延びる複数の第2の噴射開口部162とを有する。第1の噴射開口部161は、それぞれ、第2の噴射開口部162よりも長手軸Lに対して高い位置または第2の噴射開口部162よりも上流に配置されている。第2の噴射開口部162は、第1の噴射開口部161よりも小さい(最小の)直径を有し、パイロット噴射のために、または、ガスを主燃料として作動する場合、点火ジェット噴射のために使用することができる。ニードル58は、下部ノズル室163内で摺動嵌合により案内され、ニードル58の側壁581が、第1の噴射開口部161および/または第2の噴射開口部162を閉じたり開いたりするために、下部ノズル室163の側壁164と準シール状に協働するようになっている。
図2に示す実施形態では、ニードル58は、長手軸Lに沿って噴射弁部材56を調整することによって、第1の噴射開口部161または第1および第2の噴射開口部161,162を任意に閉じることができる。したがって、長手軸Lに沿って噴射弁部材56を移動させることによって、ニードル58は、パイロット噴射または点火噴射のための第2の噴射開口部162、または高圧室26から内燃機関の燃焼室への液体燃料の主噴射のための第1および第2の噴射開口部161,162を選択的に開くことができる。特に、噴射弁部材56は、
図1に示すように、第1および第2の噴射開口部161,162の両方が閉じられ、弁シール面57と噴射弁座18とのシール接触によってノズル室17が高圧室26から分離される閉位置にもたらすことができる。
【0116】
ノズル室17は、下部ノズル室163の上流に配置された直径の大きい上部ノズル室165を有し、この上部ノズル室165は、円錐状の段差を介して下部ノズル室163に接続している。上部ノズル室165の直径は、噴射弁部15の第2のボア部62の直径に対応しており、上部ノズル室165は第2のボア部62と位置合わせされている。
【0117】
ニードル58は、ニードル58の下端583から延びる、長手軸Lに沿って配向された内側ボア582を有する。側壁において、ニードル58は、上部ノズル室165に開口し、したがって内側ボア582と上部ノズル室165とを接続する横ボア584を有する。第2の噴射開口部162が開いている噴射弁部材56の第1の開位置では、内側ボア582は、第2の噴射開口部162を、下部ノズル室163および上部ノズル室165を介して高圧室26に接続する。第1および第2の噴射開口部161,162が開口している噴射弁部材56の第2の開位置では、内径ボア582は、第1および第2の噴射開口部161,162を、下部ノズル室163および上部ノズル室165を介して高圧室26に接続させる。
【0118】
ノズル室17は、基部171を有する止まり孔の形状に形成されており、ノズル室17は、図示の噴射弁部材56の閉位置において、ニードル58の下端583と基部171とによって囲まれた自由空間166を有し、この自由空間166は、内孔582に接続している。ノズル室17は、下流端にアンダーカットを有し、このアンダーカットは、噴射弁部材56の閉位置において自由空間166を形成する。
【0119】
円柱状の案内凹部が、制御室70に面する平坦な端部から制御室70から離れる方向に面する同様に平坦な端部まで中間部66を貫通している。この凹部には、キノコ形の中間弁部材78の軸部76が案内されている。軸部76と一体の中間弁部材78の頭部80は、制御室70内に位置し、その側面を中間部66に向けた状態で、中間部66と相互作用し、その平坦な端面は環状の中間弁座を形成する。
【0120】
中間弁部材78は、中間部66上に形成された中間弁座と共に、中間弁83を形成する。中間弁83の形成については、例えば、国際公開第2021/165275号または国際公開第2020/260285号が参照され、これらの対応する開示は、参照により本開示に組み込まれるものとみなされる。
【0121】
本明細書に記載の(電気)液圧制御装置は、国際公開第2106号/041739号などの先行技術から公知の他の電気液圧制御装置に従って設計することもできる。
【0122】
図3は、燃料噴射弁10.2のさらなる実施形態の断面を示し、燃料噴射弁10.2の下部が噴射弁座18から示されている。
図2に示す燃料噴射弁10.1とは対照的に、下部ノズル室163は、第1の部分163.1と、第1の部分163.1の下流に配置され、第1の部分163.1に比べて直径が縮小された第2の部分163.2とを有する。第2の部分163.2は、円錐形の段差を介して第1の部分163.1に接続する。第2の噴射開口部162は下部ノズル室163の第2の部分163.2から延び、第1の噴射開口部161は下部ノズル室163の第1の部分163.1から延びている。したがって、ニードル58は、下部ノズル室163の第1の部分163.1内で摺動嵌合により案内される第1のニードル部58.1を有する。第2のニードル部58.2は、第1のニードル部58.1に下流側で隣接し、下部ノズル室163の第2の部分163.2で摺動嵌合により案内され得る。
図3において、噴射弁部材56は閉位置に示されており、この位置では、第1の噴射開口部161は第1のニードル部58.1によって閉じられ、第2の噴射開口部162は第2のニードル部58.2によって閉じられている。
【0123】
第1および第2のニードル部58.1、58.2は、円錐状の段差を介して互いに接続する。特定の実施形態では、第1および第2のニードル部58.1、58.2が互いに接続する円錐形の勾配は、ノズル室163の第1の部分163.1および第2の部分163.2が互いに接続する円錐形の勾配に対応し得る。円錐形のグラデーションの代替として、ニードル部58.1、58.2間および/またはノズル室163の第1および第2の部分163.1、163.2間に垂直なグラデーションも可能である。
【0124】
図3に見られるように、第2の噴射開口部162はそれぞれ、ノズル室17から、または下部ノズル室163の第2の部分163.2から延びる第1の開口部162.1と、第1の開口部162.1に隣接し、ノズル本体16の外壁に、したがって内燃機関の燃焼室に開口する第2の開口部162.2とを有する。第2の開口部162.2の直径は、第1の開口部162.1の直径よりも大きく、そのため、第2の噴射開口部162は、内燃機関の燃焼室の方向に段階的に広がるプロフィールを有する。第1の開口部162.1と第2の開口部162.1は、円錐形の段差を介して互いに接続する。しかし、開口部162.1、162.2が垂直な段差を介して互いに接続することも考えられる。また、開口角度を変えることができる外側に広がる円錐状の段差が、第2の開口部全体を形成することも考えられる。第1の開口部162.1により、第2の噴射開口部162は、第1の噴射開口部161よりも小さな最小直径を有する。したがって、第2の噴射開口部162は、予備噴射または点火噴射に使用することができ、一方、第1の噴射開口部161(同様に開口した第2の噴射開口部162とともに)は、液体燃料による主噴射に使用することができる。
【0125】
ノズル室17は、基部171を有する止まり孔のように形成されている。
図3に示す噴射弁部材56の閉位置では、ニードル583の下端と基部171とに囲まれた自由空間166がノズル室17に形成される。
図2に示す燃料噴射弁10・1とは対照的に、基部171は湾曲しているので、自由空間166は半球状のプロフィールを有する。しかしながら、自由空間166が
図2のように形成されることも可能である。
【0126】
図2の燃料噴射弁10.1と同様に、ニードル58は内側ボア582と横ボア584を有する。
【0127】
図4(a)~(c)は、
図3に示した燃料噴射弁10.2の実施形態の噴射弁部材56の3つの位置を示している。
【0128】
図4(a)は、
図3に示した閉位置にある燃料噴射弁10.2の断面を示しており、この場合、第1の噴射開口部161(第1のニードル部58.1を通る)と第2の噴射開口部162(第2のニードル部58.2を通る)の両方が閉じられている。
【0129】
図4(b)は、噴射弁部材56が第1の開位置にある燃料噴射弁10.2を示し、この位置では、噴射弁部材56は、第2の噴射開口部162が開口するように長手軸Lに沿って持ち上げられ、一方、第1の噴射開口部161は、第1のニードル部58.2によって閉じられ続ける。弁シール面57は、噴射弁座18から持ち上げられる。図示された第1の開位置では、燃料は、高圧室26から第2のボア部62または上部ノズル室165、内側ボア582および下部ノズル室163または下部ノズル室163の第2の部分163.2を介して第2の噴射開口部162に通過し、そこから内燃機関の燃焼室に噴射されることができる。
【0130】
図4(c)は、噴射弁部材56が第2の開位置にある燃料噴射弁10.2を示しており、この場合、噴射弁部材56は長手軸Lに沿ってより高く持ち上げられているため、第2の噴射開口部162に加えて第1の噴射開口部161も開いている。ニードル58はさらに、下部ノズル室163の第1のニードル部58.1、または下部ノズル室163の第1の部分163.1を介して摺動嵌合により案内される。他方、第2のニードル部58.2は、もはや下部ノズル室163の第2の部分163.2には配置されず、下部ノズル室163の第1の部分163.1と、噴射弁部材56の持ち上げによる下部ノズル室163の第1および第2の部分163.1,163.2の間の円錐形の段差に配置される。
図4(c)に見られるように、図示された第2の開位置において、燃料は、高圧室26から、第2のボア部62または上部ノズル室165、横ボア584、内側ボア582および下部ノズル室163を経由して、第1の噴射開口部161および第2の噴射開口部162の両方に通過し、そこから内燃機関の燃焼室に噴射され得る。
【0131】
ニードル58の適切な設計によって、例えば、より長い第2のニードル部58.2、特に、第2のニードル部58.2と第1のニードル部と第2のニードル部との間の円錐勾配の軸方向長さの合計が、第1および第2の噴射開口部161、162の間の軸方向距離よりも長くなるような、ニードル58の適切な設計によって、さらなる実施形態において、第2の噴射開口部162がまだ閉じられている間に、第1の噴射開口部161が最初に開かれることが達成され得る。そのような実施形態では、第1の噴射開口部161は、それに応じて、第2の噴射開口部162よりも小さい最小直径を有することができる。
【0132】
図5は、燃料噴射弁10.3のさらなる実施形態の断面を示し、燃料噴射弁10.3の下部は、噴射弁座18から出発して示されている。燃料噴射弁10.3のニードル58はスリーブ585を有し、このスリーブ585は鋼または他の適切な材料で作られ、第1のニードル部58.1の下部の周りに少なくとも部分的に円周方向に配置されている。スリーブ585は、第1の噴射開口部161および第2の噴射開口部162を閉鎖および開放するために、ノズル室17または下部ノズル室163の側壁164と協働するように設計されており、スリーブ585は、ノズル室17または下部ノズル室163の側壁164に対して半径方向に向けられたクランプ力を受けることができる。
【0133】
下部ノズル室163はまた、2つのアンダーカットを有し、それを介して2つの自由空間166.1および166.2が形成される。第1の自由空間166.1は、ノズル室17の基部171において
図2に示す燃料噴射弁10.1の自由空間166と同様に形成される。第2の自由空間166.2は、副ノズル室163の第1の部分163.1と第2の部分163.2との間に形成される。燃料噴射弁10.3では、第2の噴射開口部162は、サブノズル室163の第1の部分163.1に配置されている。しかし、第2の噴射開口部を第2の部分163.2に配置し、スリーブ585を第1の噴射開口部161を閉じるためだけに使用することも考えられる。また、第2の噴射ニードル部58.2の一部の外周の少なくとも一部に第2のスリーブを装着し、第2の噴射開口部を閉じるために使用することも考えられる。
【0134】
図6は、燃料噴射弁10.4のさらなる実施形態の断面を示し、燃料噴射弁10.4の下部は、噴射弁座18から出発して示されている。燃料噴射弁10.4において、第1の噴射開口部161および第2の噴射開口部162はそれぞれ、好ましくは容積が小さいトラフ形状の凹部1611、1621を介してノズル室17から延びている。噴射開口部161、162とノズル室17の側壁164との間の移行部は丸みを帯びている。特に、トラフ形の凹部1611、1621と噴射開口部161、162との間の移行部は丸みを帯びている。
【国際調査報告】