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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】強化水
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20241003BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525823
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 GB2022052724
(87)【国際公開番号】W WO2023073367
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2115456.2
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524160039
【氏名又は名称】ロヴァネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ルーリー―ルーク、 エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ベッソノフ、 ウラジミール
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD28
4B018MD29
4B018MD32
4B018ME06
4B018ME14
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4B018MF14
4B117LC04
4B117LE10
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4B117LK08
4B117LK12
4B117LK16
4B117LP13
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
本発明は、フラボノイド化合物を含む強化飲料水組成物、そのような強化飲料水組成物を含む、包装された製品、及びそのような製品を調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4~9.5のpHを有する飲料水組成物であって、前記組成物は、少なくとも0.025mg/mlの総量の一つ以上のフラボノイド化合物で強化され、前記組成物は、追加の天然若しくは人工着色剤、香料、又は防腐剤を含まない、飲料水組成物。
【請求項2】
前記一つ以上のフラボノイド化合物が、フラバン-3-オール(フラバノールとしても知られる)、アントシアニジン、フラバノン、フラボン、フラボノール、フラバノノール、及び/又はそれらの配糖体からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一つ以上のフラボノイド化合物が、フラバン-3-オール(フラバノールとしても知られる)、フラボノール、フラバノノール、及び/又はそれらの配糖体からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フラボノイド化合物が、タキシホリン、カテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンから選択される、請求項1~3に記載の組成物。
【請求項5】
前記フラボノイド化合物が、タキシホリンから選択される、請求項1~4に記載の組成物。
【請求項6】
前記フラボノイド化合物が、カテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンから選択される、請求項1~5に記載の組成物。
【請求項7】
前記一つ以上のフラボノイド化合物を0.025mg/ml~0.5mg/mlの量で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記フラボノイド化合物を、約0.05mg/ml以上の総量で含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記一つ以上のフラボノイド化合物が、安定化された水溶性フラボノイド溶液として提供される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記安定化された水溶性フラボノイド溶液が、安定化された水溶性タキシホリン溶液である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記水溶性タキシホリン溶液が、タキシホリン;2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;プロピレングリコール、グリセロール及びPEG400のうちの一つ以上;一つ以上の有機酸又はその水溶性塩;及び、単糖類、二糖類及びマルトデキストリンから選択される一つ以上の炭水化物を、以下の量で含み、残部は蒸留水である、請求項10に記載の組成物。
タキシホリン:0.1~30重量%
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン:0.01~25重量%
プロピレングリコール、グリセリン及び/又はPEG-400:1~70重量%
有機酸/塩:0.1~3重量%
炭水化物:0.01~30重量%
【請求項12】
a.前記有機酸が、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、及び/又は、
b.前記炭水化物が、グルコース、フルクトース、ソルビトール、キシリトール、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、ラクツロース、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ビタミンC及びビタミンEから選択される一つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記水がミネラルウォーターである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ミネラルウォーターが湧水又は井戸水である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
酸素不透過性容器内に配置される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含む、包装された飲料水製品。
【請求項17】
前記容器が缶又はビンの形態である、請求項16に記載の包装された飲料水製品。
【請求項18】
a.飲料水に、一つ以上のフラボノイド化合物、及び、任意選択的にさらなる添加剤を添加し、フラボノイド強化飲料水組成物を調製する工程;
b.一つ以上の酸素不透過性容器に、前記フラボノイド強化飲料水組成物を充填する工程;及び、
c.前記一つ以上の酸素不透過性容器を封止する工程
を含む、請求項16又は請求項17に記載の包装された飲料水製品の製造方法。
【請求項19】
工程cを開始する前に、前記フラボノイド強化飲料水組成物を精製及び/又は滅菌する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記精製及び/又は滅菌が、消毒、濾過、デカンティング、CO除去、及び活性アルミナ処理から選択される一つ以上のプロセスを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フラボノイド化合物を添加した飲料水組成物に関する。本発明はまた、そのような強化飲料水組成物を含む包装された製品(packaged product)及びそのような製品を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ジヒドロケルセチンとしても知られるタキシホリンは、強力な天然フラボノイド抗酸化剤の広範なファミリーの一例である。それは、桜の木で熟成された酢に存在し、一般的なフラボノイドのように、果物、野菜及びココアのような一連の植物ベースの食品に見つけることができる。
【0003】
タキシホリンを含む多くのフラボノイドは、特に抗酸化剤及び抗炎症剤としての健康上の利点のために、食品の添加物として使用されている。例えば、一般に、フラボノイド、特にタキシホリンは、肝臓及び/又は腎臓損傷1,2,3,4,5、高血圧症6、血管損傷7,8、心肥大、及び血圧及び/又はコレステロールレベルの上昇10,11を含む広範な状態から保護することが示されている。
【0004】
このような健康上の利点を考慮して、ロシア国立食品研究所(the Russian State Food Research Institute)は、タキシホリンのようなフラボノイドの推奨栄養所要量(recommended dietary allowance)(RDA)、すなわち、一般ポピュレーション(general population)の栄養所要量を満たすのに十分な平均的な毎日の食事摂取量を25mg/日と計算した。しかし、現在のところ、ポピュレーション(population)全体としては、食事のみからのフラボノイド摂取がこのレベルに十分に達していないことが多い。さらに、この不足は、ミネラルサプリメントの使用によって対処することができるが、これは、特に、サプリメント摂取計画の遵守には、消費者の行動及び習慣の修正が必要であるため、最適とは程遠い。例えば、RU2277833C1は、香料及びビタミンCのような他の添加物の中で、ジヒドロケルセルチンを含むミネラル飲料水を開示している。同様に、RU2699548C1は、他の添加物(例えば、着色、香料)の中でタキシホリンを含む水性健康飲料を開示している。RU2498801C1は、水溶性タキシホリンを含む貯蔵安定性組成物を開示しているが、タキシホリン強化飲料水自体は開示していない。他の先行技術は、アルコール飲料及びノンアルコール飲料に添加されたタキシホリンのような食事性フラボノイドを含む強化飲料16、又はココアベースの飲料の形態で提供される食事性フラバノールの利点17を開示している。しかしながら、飲料水の健康上の利点を最大化するために、着色剤及び/又は香料のような人工添加物なしでRDAを満たす一つ以上のフラボノイドで強化された飲料水組成物を消費者に提供することは有利である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、例えば、タキシホリンのようなフラボノイドの新しい便利な形態を設計することであり、それによって、ミネラル補給及び関連する消費者行動の変化に依存する必要なく、RDAレベルまで消費を促進し、したがって、ポピュレーションに健康上の利点を提供する。さらに、タキシホリンのようなフラボノイドを、必要に応じて追加のビタミン及びミネラルと一緒に、飲料水の日常的なルーチンに組み込むことによって、便利な形態で投与することができれば有利である。さらに、十分に受け入れられるためには、飲料水へのフラボノイド化合物の組み込みは、外観及び/又は風味に悪影響を与えないべきである。
【0006】
発明の説明
本発明は、その様々な態様において、添付の請求項に記載されるとおりである。
【0007】
本発明の第一の態様によれば、4~9.5のpHを有する飲料水組成物であって、該組成物は、少なくとも0.025mg/mlの総量の一つ以上のフラボノイド化合物で強化され、該組成物は、追加の天然若しくは人工着色剤、香料、又は防腐剤を含まない、飲料水組成物が提供される。疑義を避けるために、本開示の飲料水組成物は、一つのフラボノイド化合物を含んでもよく、又は、本明細書に提供される異なる種類のフラボノイド化合物の組み合わせを含んでもよい。
【0008】
好ましい実施形態において、上記一つ以上のフラボノイド化合物は、フラバン-3-オール(フラバノールとしても知られる)、アントシアニジン、フラバノン、フラボン、フラボノール、フラバノノール、及び/又はそれらの配糖体(glycosides)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、上記一つ以上のフラボノイド化合物は、フラバン-3-オール(フラバノールとしても知られる)、フラバノン、フラボン、フラボノール、フラバノノール、及び/又はそれらの配糖体からなる群から選択される。他の好ましい実施形態において、上記一つ以上のフラボノイド化合物は、フラバン-3-オール、フラボノール、フラバノノール、及び/又はそれらの配糖体からなる群から選択される。より好ましくは、上記一つ以上のフラボノイド化合物は、フラボノール、フラバノノール、及び/又はフラバン-3-オールである。特に好ましい実施形態において、フラバノノール化合物はタキシホリンである。別の好ましい実施形態において、上記フラボノイド化合物は、フラバン-3-オール及び/又はそれらの配糖体である。いくつかの実施形態において、フラバン-3-オール化合物は、カテキン、エピカテキン、及び/又はガロカテキンである。いくつかの実施形態において、フラバン-3-オール化合物はカテキンである。いくつかの実施形態において、フラバン-3-オール化合物はエピカテキンである。いくつかの実施形態において、フラバン-3-オール化合物はガロカテキンである。
【0009】
容易に理解されるように、用語「フラボノイド」は、二つのフェニル環(環A及び環B)及び複素環(環C)からなる15炭素骨格の一般構造を有する化合物を指し、これは飽和(以下に示すように)又は不飽和であってもよく、埋め込まれた酸素を含む。C6-C3-C6と略記することができるそのような構造を以下に示す。
【0010】
【化1】
【0011】
容易に理解されるように、用語「フラバン-3-オール」及び「フラバノール」は、以下に示す2-フェニル-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-3-オール骨格を有する化合物を指す。
【0012】
【化2】
【0013】
容易に理解されるように、用語「アントシアニジン」は、R及びR’が両方ともOHである、以下に示す一般構造を有する化合物を指す。グリコシル化アントシアニジン、すなわちアントシアニンは、このような化合物の範囲内に含まれる。
【0014】
【化3】
【0015】
容易に理解されるように、用語「フラバノン」は、以下に示す一般骨格構造を有する化合物を指す。
【0016】
【化4】
【0017】
容易に理解されるように、用語「フラボン」は、以下に示す2-フェニル-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-3-オール骨格を含む化合物を指す。
【0018】
【化5】
【0019】
容易に理解されるように、用語「フラボノール」は、以下に示す3-ヒドロキシフラボン(IUPAC名:3-ヒドロキシ-2-フェニルクロメン-4-オン)骨格を含む化合物を指す。
【0020】
【化6】
【0021】
本明細書において、用語「カテキン」は、以下に構造を示す(2R,3S)-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-3,5,7-トリオールをいう。
【0022】
【化7】
【0023】
本明細書において、用語「タキシホリン」は、以下に構造を示す(2R,3R)-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(別名5,7,3’,4’-フラバン-オン-オール、及びジヒドロケルセチンとしても知られる)をいう。
【0024】
【化8】
【0025】
好ましい実施形態において、フラボノイド化合物、例えばカテキン及び/又はタキシホリンは、安定化された水溶性フラボノイド溶液の形態で飲料水組成物中に提供される。このような安定化された溶液の多くの例は公知であり、容易に入手可能である。このような他の安定化された溶液は、当業者が一般的な知識を用いて容易に設計することができる。
【0026】
ロシア特許第RU2498801C1号に開示されている安定化された水溶性タキシホリン溶液の例は、タキシホリン;2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;プロピレングリコール、グリセロール及びPEG400のうちの一つ以上;一つ以上の有機酸又はその水溶性塩;及び、単糖類、二糖類及びマルトデキストリンから選択される一つ以上の炭水化物を、以下の量で含み、残部は蒸留水である。
【0027】
タキシホリン:0.1~30重量%
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン:0.01~25重量%
プロピレングリコール、グリセリン及び/又はPEG-400:1~70重量%
有機酸/塩:0.1~3重量%
炭水化物:0.01~30重量%
【0028】
このような安定化されたタキシホリン組成物において、上記の有機酸は、好ましくは、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
同様に、上記の炭水化物は、好ましくはグルコース、フルクトース、ソルビトール、キシリトール、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、ラクツロース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
好ましい実施形態において、組成物はフラボノイド化合物を0.025mg/ml~0.5mg/mlの総量で含む。より好ましくは、フラボノイド化合物は、少なくとも0.05mg/ml、さらにより好ましくは少なくとも0.075mg/ml、さらにより好ましくは0.125mg/ml、さらにより好ましくは少なくとも0.25mg/mlの量で存在する。同様に、フラボノイド化合物は、より好ましくは0.5mg/ml以下、0.25mg/ml以下、より好ましくは0.125mg/ml以下、さらにより好ましくは0.075mg/ml以下の量で存在する。一実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは2mg/ml以下の量で存在する。一実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは1.5mg/ml以下の量で存在する。一実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは1mg/ml以下の量で存在する。一実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは0.75mg/ml以下の量で存在する。好ましい実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは0.5mg/ml以下の量で存在する。好ましい実施形態において、フラボノイド化合物は、より好ましくは0.25mg/ml以下の量で存在する。
【0031】
例示的な実施形態において、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはタキシホリン、カテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。一実施形態において、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはタキシホリンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。他の例示的な実施形態では、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはカテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。他の例示的な実施形態では、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはカテキンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。他の例示的な実施形態では、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはエピカテキンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。他の例示的な実施形態では、飲料水組成物は、フラボノイド化合物、好ましくはガロカテキンを、約0.05mg/ml以上の総量で含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されたフラボノイドのいずれかを、0.025mg/ml、0.075mg/ml、0.01mg/ml、0.02mg/ml、0.03mg/ml、0.04mg/ml、0.06mg/ml、0.07mg/ml、0.08mg/ml、0.09mg/ml、0.1mg/ml又はそれ以上の濃度で提供することができる。本発明者らは、驚くべきことに、例示的なフラボノイド、特にタキシホリン、カテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンで、水をこのレベルまで強化すると、外観(appearance)、臭気(odor)及び/又は味(taste)に影響を与えることなく、一回(例えば、0.5L)の提供でフラボノイドRDAの100%を提供することが可能であることを見出した。一実施形態において、フラボノイド化合物の濃度は、外観、臭気及び/又は味に影響を与えることなく、例えば、250ml、330ml、500ml及び/又は700mlの飲料水を含む一回の提供で、RDAの100%を満足させることができるようなものである。飲料水が異なるタイプのフラボノイドを含む場合、各フラボノイドを異なる濃度で構成することができることは、当業者に理解されよう。一実施形態において、フラバン-3-オールを含む飲料水は、フラバノノールよりも4倍、3倍又は2倍高い濃度で提供することができる。
【0032】
本発明の飲料水組成物は、前記フラボノイド化合物のみで強化することができ、又は任意選択に(optionally)、追加の添加物でさらに強化することができ、ただし、そのような追加の成分を含むことが飲料水組成物の外観及び/又は味に影響を与えないことを条件とする。好ましい実施形態では、本開示の飲料水組成物は、水の官能特性に悪影響を及ぼすことなく、一つ以上のフラボノイド化合物で強化されてもよく、又は任意選択的にさらなる添加剤でさらに強化されてもよい。官能特性には、例えば、味(taste)、視覚(sight)及び/又はにおい(smell)の知覚(perception)が含まれ得る。好ましい実施形態では、本開示の飲料水組成物は、未強化の水又は純水と比較した場合に、色及び/又は不透明度に顕著な差がないように、肉眼に対して無色のままである。加えて、又は、代替的に、本開示の飲料水組成物は、水の味及び/又は臭気に悪影響を及ぼすことなく、一つ以上のフラボノイド化合物で強化されてもよく、又は任意選択的にさらなる添加剤でさらに強化されてもよい。例えば、飲料水組成物は、許容可能なレベルの味、苦味及び/又は酸味を有するように、未強化の水又は純水と比較して許容可能な味及び/又は臭気を有してもよい。一実施形態では、飲料水組成物は、未強化の水又は純水と比較して識別可能な味及び/又は臭気を有していない。
【0033】
特に好ましい実施形態では、飲料水組成物は、ビタミンC及びビタミンEから選択される一つ以上の添加剤をさらに含む。このような追加の添加剤を含むことが、組成物の外観及び/又は味に悪影響を及ぼすべきではない。さらに、これらの化合物は両方とも、相乗的にフラボノイドと相互作用することが示されており12、13、14、それによって抗酸化作用を増強する。
【0034】
いくつかの実施形態では、飲料水組成物は、ミネラルウォーター、好ましくは湧水又は井戸水を含む。
【0035】
上述のように、タキシホリン、カテキン、エピカテキン及び/又はガロカテキンなどのフラボノイド化合物を本発明の飲料水組成物に含有させても、水の味及び/又は外観に悪影響を及ぼさない。したがって、好ましい実施形態では、飲料水組成物は、水の変色及び/又は風味付け(flavoring)を隠すために必要とされる追加の天然若しくは人工着色剤、香料又は防腐剤を含まない。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、酸素不透過性容器内に配置された本発明の第1の態様による組成物を含む、包装された(packaged)飲料水製品が提供される。本発明のこれらの態様において、フラボノイド強化水組成物は、安定性及び貯蔵寿命を向上させる。
【0037】
酸素不透過性容器は、缶又はビンの形態で提供されることができるが、他の容器、例えばソフトパウチが使用されることもできる。
【0038】
本発明の第2の態様の包装された飲料水製品は、以下に記載される方法によって調製することができる。
【0039】
特に、フラボノイド強化飲料水組成物は、飲料水に一つ以上のフラボノイド化合物及び任意選択的にさらなる添加剤を添加することによって調製することができる。次に、一つ以上の酸素不透過性容器に、これら一つ以上の容器を封止する前に、上記のフラボノイド強化飲料水組成物を充填する。この方法自体が本発明の第3の態様を表す。
【0040】
容易に理解されるように、上記方法には追加の工程を含めることができる。例えば、貯蔵寿命を増加させるために、上記方法は、フラボノイド強化飲料水組成物を精製及び/又は滅菌する工程を、好ましくは容器を封止する前に、さらに含むことができる。このような精製及び/又は滅菌工程の例は、限定されるものではないが、消毒(UV消毒又は好ましくはパスチャライゼーション(pasteurisation)を含む)、濾過、デカンティング、CO除去、及び活性アルミナ処理を含む。
【0041】
本開示のフラボノイド強化飲料水を消毒する例示的な方法は、パスチャライゼーションを含む。水は、パスチャライゼーションを介して、沸騰させずに熱処理によって精製することができる。パスチャライゼーションは水を滅菌(sterilize)しないが、温度、接触時間、及び病原体の耐熱性に応じて、病原体負荷を何桁も減らすことができる。パスチャライゼーション法には、長、短、及びフラッシュの3つの主要なタイプがある。パスチャライゼーション法の選択は、化合物構造に依存する。63~65℃の温度で30~40分間の低温長時間殺菌(Low Temperature Long Pasteurisation)(LTL)。82~85℃の温度で0.5~1分間の高温短時間殺菌(High Temperature Short Pasteurisation)(HTS)。92~98℃の温度で数秒間のフラッシュ殺菌(Flash Pasteurisation)。当業者には理解されるように、本開示のフラボノイド強化飲料水組成物を精製及び/又は殺菌するために、上記の条件又は当業者に公知の他の条件のいずれかを使用することができる。一実施形態において、本明細書に開示されたフラボノイドのいずれかを含む本開示の強化水は、パスチャライゼーションを用いて消毒することができる。
【0042】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」及び「含む(contain)」という語、ならびにこれらの語の変形、例えば「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「限定されないが含む」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数(integer)又は工程を排除するものではない。本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、文脈上他の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈上他の必要がない限り、本明細書は、単数形だけでなく複数形も包含するものと理解されるべきである。
【0043】
本明細書に引用されたすべての参考文献(特許又は特許出願を含む)は、本明細書において参照によって援用される。いずれかの参考文献が先行技術を構成することを認めるものではない。さらに、いずれかの先行技術が当該技術分野における技術常識の一部を構成することを認めるものではない。
【0044】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかに関連して記載されるようにすることができる。
【0045】
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかになる。一般に、本発明は、本明細書(添付の請求項及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な一つ又は任意の新規な組み合わせに及ぶ。したがって、本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載された特徴、整数、特徴、化合物又は化学的部分は、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載されたいかなるの他の態様、実施形態又は例にも適用可能であると理解されるべきである。
【0046】
さらに、特にそうではないと明記されない限り、本明細書に開示された特徴は、同じ又は類似の目的を果たす他の特徴によって置き換えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
次に、本発明を、以下の実施例及び以下の図を参照して、例示的にのみ説明する。
【0048】
図1】ベースラインのタキシホリン溶液(溶液1:3000mg/1000ml)の透過スペクトル(transmission spectrum)
図2】空気に対するベースラインのタキシホリン溶液(溶液1:タキシホリン3000mg/1000mL)の吸収スペクトル。
図3】タキシホリン溶液の光吸収曲線(溶液1:タキシホリン3000mg/1000mL;溶液2:タキシホリン1500mg/1000ml;溶液3:タキシホリン750mg/1000ml;溶液4:タキシホリン250mg/1000ml;溶液5:タキシホリン100mg/1000ml)。
図4】タキシホリン試験溶液の光吸収曲線:ベース溶液(タキシホリン濃度3000mg/1000ml);SDベース溶液(単回希釈ベース溶液(Single Dilution Base Solution)-タキシホリン濃度1500mg/1000ml);DDB(二回希釈ベース溶液(Double Dilution Base Solution)-タキシホリン濃度750mg/1000ml);溶液9(タキシホリン濃度0.1mg/ml)及び溶液15(タキシホリン濃度0.25mg/ml)。
図5】異なる溶液の吸収の線形相関(linear correlation)。
【0049】
表1:ブラインド感覚的知覚(sensorial perception)試験-タキシホリンのにおい、味及び外観。
表2:試験試料の分光測定(Spectroscopic measurements)。
表3:ブラインド感覚的知覚試験-タキシホリンのにおい、味及び外観(追加の濃度)。
表4:ブラインド感覚的知覚試験-カテキンのにおい、味、外観。
表5:ブラインド感覚的知覚試験-エピカテキンのにおい、味、外観。
表6:ブラインド感覚的知覚試験-ガロカテキンのにおい、味、外観。
【発明を実施するための形態】
【0050】
実施例1:水の外観(視覚的知覚(visual perception))
フラボノイドの例としてタキシホリンを使用し、透明性(transparency)と無色(colourlessness)の2つのパラメータに基づいて視覚的知覚を評価した。特に、水の外観は、異なる濃度のタキシホリンを含む様々な水溶液の透過スペクトルを測定することによって評価した。
溶液1(ベースライン):3000mg/1000ml;
溶液2:1500mg/1000ml;
溶液3:750mg/1000ml;
溶液4:250mg/1000ml;
溶液5:100mg/1000ml。
【0051】
特に、ベースライン溶液(溶液1)は、市販の栄養補助食品「Taxifolin Aqua」(ロシア)であり、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いてタキシホリンの濃度が3000mg/1000mlであることを確認した。
【0052】
次いで、溶液2~5を、MilliQ Academic(メルクミリポア、ドイツ)を用いて精製した少なくとも15KΩの抵抗を有する水を用いて溶液1を希釈して調製した。
溶液2:10mlのMilliQ水に10mlの溶液1;
溶液3:10mlのMilliQ水に10mlの溶液2;
溶液4:10mlのMilliQ水に10mlの溶液3;
溶液5:6mlの水に4mlの溶液4を加えた。
【0053】
次いで、溶液1~5の各々について、LOMO SF46分光光度計(ロシア)を用いて分光測定を行った。その結果を図1図2及び図3に示す。
【0054】
これらの結果は、試験したタキシホリン溶液が、検出不能な黄色の色合いを有する(with an undetectable yellow shade)無色の液体であることを示している。したがって、本発明のタキシホリン強化飲料水組成物の外観は、タキシホリンを含まない水試料と同一である。
【0055】
実施例2-味、におい、外観(感覚的知覚(sensorial perception))
フラボノイドの例としてタキシホリンを用い、味と臭気の2つのパラメータに基づいて感覚的知覚を評価した。特に、28歳~39歳の男性3名と女性8名を含む訓練された感覚パネルを、(i)味(5段階評価(1は非常に強い味を表し、5は予想と全く同じ味を表す)を用いる)、(ii)臭気(10段階評価(1は臭気なしを表し、10は非常に強い臭気を表す)を用いる)、及び(iii)外観(10段階評価(1は色なしを表し、10は強い着色を表す)を用いる)に基づいて試験用液を評価するブラインド試験の対象とした。
【0056】
2種類の脱イオン水溶液を試験した。
溶液A(対照(control)):脱イオン水100ml;
溶液B(試験(test)):100ml溶液(タキシホリン5.0mg/1000ml)。
【0057】
表1に示すブラインド試験の結果は、溶液Aと溶液Bの間に味、臭気及び/又は外観の差がないことを示している。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例3-追加の濃度での水の外観(視覚的知覚(visual perception))
タキシホリンの添加が水の美的(視覚的知覚)及び感覚的(sensorial)(味)性能に影響しないことを確認するために、2セットの実験が行われた。最初の実験セットは水の外観(透明性/無色)を扱い、2番目の実験セットは水の味を扱った。実験には、0.025mg/ml~0.5mg/mlの範囲の濃度のタキシホリン溶液が含まれた。視覚的知覚は、透明性と無色の二つのパラメータに基づいて評価された。
【0060】
方法:
水の外観は、25mg/1000ml(溶液6)~500mg/1000ml(溶液25)の範囲の異なる濃度のタキシホリン(ジヒドロクエルセチン)水溶液の透過スペクトルによって評価された。異なる試料の濃度を表2に示す。25mg/1000mlより低いの溶液の波長はタキシホリンの典型的な黄色スペクトル吸収範囲外である。したがって、25mg/1000mlを最低試験濃度として選択した。分光測定はLOMO SF46(ロシア)を用いて行った。
【0061】
溶液調製:
1)ベース溶液は市販の栄養補助食品「Taxifolin Aqua」(ロシア)であり、タキシホリンの濃度はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて確認した。タキシホリン濃度3000mg/1000ml(ベース)
【0062】
2)2つの追加のベース溶液を調製した:単回希釈(single dilution)1500mg/1000ml(SDB)及び二回希釈(double dilution)750mg/1000ml(DDB)。
【0063】
3)溶液6~25(表2)は、MilliQ Academic(メルクミリポア、ドイツ)を用いて精製した少なくとも15KΩの抵抗を有する脱イオン水で、該当する溶液を希釈することによって調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
*-試料当たり3回反復
**-水中のジヒドロケルセチンの最大吸収波長
【0066】
溶液6~20は、溶液25の近くに現れ始めた検出不可能な黄色の色合いを有する(with an undetectable yellow shade)無色の液体を呈する。本発明の0.25mg/mlの濃度の外観は、元の水試料(タキシホリンを含まない)と同一である。
【0067】
線形相関は、タキシホリン濃度が試料の吸光度に直接影響することを示している(図5)。濃度が高くなると、より多くの放射線が吸収され、吸光度が高くなると予想される。したがって、線形相関の場合、吸光度は濃度に正比例する。
【0068】
カテキン、エピカテキン、ガロカテキンの分光分析に関しては、いずれの関連化合物も可視波長域に吸収を持たないため、分光測定は適用できない。したがって、強化水の外観は、上記のフラボノイドのいずれの添加によっても影響を受けない。
【0069】
実施例4-追加の濃度での味、におい、外観(感覚的知覚)
タキシホリンを含む水溶液と含まない水溶液の間に感覚的な違いがあるかどうかを確認するために、水溶液の味と臭気を評価する研究が行われた。
【0070】
方法:
パネリスト:26~58歳の男性5人と女性8人を含む訓練された感覚パネル。
試験方法:ブラインド試験で、パネリストは、試験溶液を、(i)味(5段階評価(1が非常に異なる味であり、5が完全に同じ味である)を用いる)、(ii)臭気(10段階評価(1が臭気なしであり、10が非常に強い臭気である)を用いる)、(iii)外観(10段階評価(1が色なし(無色)であり、10が強い色である)を用いる)に基づいて評価するよう求められた。
【0071】
試験溶液:
対照-100mlの脱イオン水、及び、試験溶液-溶液6、11、16、21及び25):
溶液25は、50mlのベース溶液を250mlの脱イオン水に加えて調製した。
溶液21は、40mlのベース溶液を260mlの脱イオン水に加えて調製した。
溶液16は、27.5mlのベース溶液を272.5mlの脱イオン水に加えて調製した。
溶液11は、15mlのベース溶液を285mlの脱イオン水に加えて調製した。
溶液6は、2.5mlのベース溶液を297.5mlの脱イオン水に加えて調製した。
【0072】
【表3】
【0073】
すべての13人のパネリストは、溶液間の味、臭気、及び外観/色の違いに関連するネガティブは見なかった(表3)。唯一のコメントは、わずかな苦味と黄色の色合いを有する溶液25に対するものであったが、これらは製品全体の評価に大きな影響を与えなかった。したがって、データは、本開示の飲料水がタキシホリンを含まない水と同じ味を有することを支持する。
【0074】
実験データは、タキシホリンの添加が水の美的/感覚的特性、すなわち(1)水の外観(透明性、色/無色)及び(2)感覚的特性(味、におい、外観に影響なし)に影響しないことを示す。本発明は、水が無味、無臭及び無色の液体であるのと同じ特性を有する。
【0075】
実施例5-味、におい及び外観(感覚的知覚)
さらなる例示的なフラボノイドとしてカテキン、エピカテキン及びガロカテキンを用い、各化合物の感覚的知覚を、味及び臭気の2つのパラメータに基づいて評価した。
【0076】
試験溶液は、室温(18~21℃)でフラボノイドを精製及び脱イオン水(抵抗15kΩ以上、MilliQ Academic purification system)に溶解して調製した。
【0077】
カテキン、エピカテキン及びガロカテキンを含む強化水の感覚的知覚を、以下の濃度で評価した。
濃度1-0.05mg/ml
濃度2-0.1mg/ml
濃度3-0.5mg/ml
濃度4-1.0mg/ml
濃度5-2.0mg/ml
【0078】
特に、訓練された感覚パネルがブラインド試験の対象となり、感覚的知覚が10段階評価で評価された。10は純水との差がない(色、味、臭気)ことを示し、0は許容できない変化であることを示す。8ポイント-製品の評価に影響を与える顕著な変化;6ポイント-新しい記述子(descriptor)の出現を示す境界線の変化;4ポイント-溶液の相違を可能にする許容可能な変化;2ポイント-食品への帰属(attribution)の境界状態のパラメータの変化。
【0079】
表4~6に示すブラインド試験の結果は、強化水と対照(純)水との間に臭気及び/又は外観の差が認められないことを示している。カテキン及びガロカテキンの高濃度でのみ味の差が認められる。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
参考文献
【0084】
【表7-1】
【0085】
【表7-2】
【0086】
【表7-3】
【0087】
【表7-4】

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】