(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ジメチルプロピレン尿素を含むジクロフェナク含有TTS
(51)【国際特許分類】
A61K 31/196 20060101AFI20241003BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241003BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241003BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241003BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K47/18
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/04
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526568
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022080881
(87)【国際公開番号】W WO2023079118
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021128911.4
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト・デツィーカン
(72)【発明者】
【氏名】ルイザ・ヴィトリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・ロイム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC04
4C076DD22
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD54
4C076FF31
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA11
4C206NA13
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、支持層およびマトリックス層を含み、ジクロフェナクを投与するための経皮治療システムであって、マトリックス層は、ジクロフェナク、少なくとも1つの密封性接着成分および少なくとも1つの溶媒を含み、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルプロピレン尿素を含むことを特徴とする、経皮治療システムに関する。本発明はまた、医薬品としてのその使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層およびマトリックス層を含み、ジクロフェナクを投与するための経皮治療システムであって、マトリックス層は、ジクロフェナク、少なくとも1つの密封性接着成分および少なくとも1つの溶媒を含み、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルプロピレン尿素を含むことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項2】
支持層は、伸縮性の織布、編布、または不織布を含むことを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
さらに少なくとも1つの透過増強剤、好ましくは多価アルコールは、マトリックス層に含有されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マトリックス層は、クエン酸および/または塩酸を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
ジメチルプロピレン尿素は、マトリックス層の総重量に対して、0.5~20重量%の量でマトリックス層中に含まれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
クエン酸および/または塩酸は、ジクロフェナク1molあたり0.1~10mol、好ましくは0.3~5mol、特に好ましくは0.3~2molの量でマトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
密封性接着成分は、ポリイソブチレン接着剤、好ましくは低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンに基づくポリイソブチレン接着剤、および/またはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
マトリックス層は、マトリックス層の重量に対して30~80重量%、好ましくは45~60重量%の量で、密封性接着成分として低分子量ポリイソブチレンを含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
マトリックス層は、マトリックス層の重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%の量で、密封性接着成分として高分子量ポリイソブチレンを含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
密封性接着成分は、低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを50対50~95対5の比で含む混合物に基づくポリイソブチレン接着剤を含有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
ジクロフェナクは、マトリックス層の重量に対して0.5~10重量%の量でマトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
ジクロフェナクは、ジクロフェナクナトリウム塩として存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
ジメチルプロピレン尿素のみが溶媒として存在し、より詳細にはクエン酸と組み合わせて、マトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
医薬品として使用するための請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
疼痛および炎症状態の治療に医薬品として使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジクロフェナク(2-[2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]フェニル]酢酸)を投与するための経皮治療システム、または有効成分を含有する経皮貼付剤に関する。本発明はさらに、医薬品として使用するこのようなシステム、より詳細には疼痛または炎症状態に使用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮治療システムは、貼付剤の形で薬物を投与する剤形である。これらのシステムには、従来の剤形よりも特定の利点がある。有効成分を含有する貼付剤を皮膚に貼付すると、当該有効成分は、身体の対応する部位の皮膚を介して、この部位に正確に、正確な用量で、消化管や肝臓で早期に分解されることなく吸収される。加えて、この剤形は、有効成分を長期間にわたって一定に放出することができる。
【0003】
多くの場合、有効成分の経皮投与は、皮膚の透過性の低さによって妨げられる。したがって、有効成分を効率よく吸収するためには、皮膚の透過性を高めることが重要であった。この可能性の1つは、皮膚部位を可能な限り覆うか、または密閉し、皮膚の上層に水蒸気を蓄積させ、その結果、有効成分に関して皮膚の透過性が高くなることを意味すると理解される、密封の効果である。
【0004】
しかしながら、これらのよく知られた貼付剤には、一般にその材料特性が非弾性的で硬いため、装着感が悪く、そのため装着者の運動性が制限され、貼付剤が頻繁に意図せず外れてしまうという欠点がある。
【0005】
特許文献1によると、貼付剤の密封は、薄いプラスチックフィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような、水蒸気に対して不透過性の支持層を使用することによって達成される。
【0006】
有効成分の吸収のために皮膚の透過性を高めるもう1つの可能性は、透過増強剤の使用である。
【0007】
特許文献2には、ジクロフェナクを局所放出する鎮痛、抗炎症貼付剤(「Dojin Patch」)が開示されている。このシステムには、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンが含まれているため、皮膚からの有効成分の透過が確実に増加する。このシステムの欠点は、この溶媒がヒトの健康への影響が懸念される物質であることで、ICHガイドラインQ3C(2011年2月4日付)によれば、1日あたり5.3mgのN-メチル-2-ピロリドンの摂取量を超えてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE10103860A1
【特許文献2】EP1312360A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を取り除くことである。より詳細には、本発明の目的は、皮膚を介した有効成分の最適な吸収を生じさせると同時に、健康に有害な溶媒N-メチル-2-ピロリドンを必要としない経皮治療システムを提供することである。さらに、本システムは密封性でありながら、関節のような身体の曲げやすい部分であっても、高いレベルの快適性と接着性を提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、支持層およびマトリックス層を含む請求項1に記載の経皮治療システムであって、マトリックス層は、ジクロフェナク、少なくとも1つの密封性接着成分および少なくとも1つの溶媒を含み、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルプロピレン尿素を含むことを特徴とする経皮治療システムによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による経皮治療システムを説明する場合、「含む」という用語は、「からなる」を意味することができる。
【0012】
本発明による経皮治療システムは、さらに好ましくは、マトリックス層全体が密封性であることを特徴とする。
【0013】
一般に、マトリックス層は単層として形成することが可能であり、すなわち、密封性接着成分はこの単層のマトリックス層に含まれ、システム全体としての密封性を確保する。
【0014】
密封とは、皮膚部位を少なくとも可能な限り覆うかまたは密閉し、材料が水蒸気に対して不透過性であることを指す。その結果、不感蒸散(perspiratio insensibilis、安静時のヒトの皮膚からの水または水蒸気の放出)が損なわれ、水分が蓄積され、したがって角質層(表皮の最外層)が水分補給される。遮蔽条件下では、角質層の水分量は最大25%(m/m)、好ましくは最大50%(m/m)増加する。皮膚の表面温度は37℃まで上昇することもできる。好ましくは、放出される水蒸気の量は、温度37℃、相対湿度30%で、DIN EN 13726-2:2002に従って測定して、24時間以内に500cm2未満、特に好ましくは200cm2未満である。
【0015】
接着成分とは、それ自体が接着剤、好ましくは感圧接着剤、すなわちそれ自体が粘着性であるか、または他の物質と混合したときに接着剤を生成する物質として理解される。接着剤とは、DIN EN 923(2008年6月)に定義されているように、表面結合(接着力)と適切な内部強度(密着力)によって部品を接合できる非金属物質の物質である。物質または物質の混合物は、それ自体が接着剤として、より詳細には感圧接着剤として使用できる場合、粘着性があると表現される。感圧接着剤は、担体材料に塗布された後、高い粘性と永久的な粘着性を維持し、次いで、軽い圧力を加えることによって基材に適用され、粘着性を維持することができる接着剤である。DIN EN 923(2008年6月)に定義される感圧接着剤はまた、DIN EN 923(2008年6月)に定義されるように、セットされた乾燥フィルムが室温で永久的に粘着性があり、粘着性を維持するという特徴がある。感圧接着剤で作製された接着剤は通常、接着された基材を破壊することなく剥がすことができる。
【0016】
少なくとも1つの密封性接着成分は、好ましくは感圧接着剤を含むか、または他の物質と混合することによって感圧接着剤を生成する。
【0017】
したがって、少なくとも1つの密封性接着成分は、不感蒸散、すなわち、皮膚からの水蒸気の損失を大いに防止し、したがって角質層への水分の蓄積をもたらす成分であると理解される。好ましくは、少なくとも1つの密封性接着成分は、すでに本質的に粘着性のある密封性接着成分である。
【0018】
透過性とは、固体(多孔性固体を含む)、特に薄い仕切りが、特定の物質(気体、液体、溶解分子、イオン、または原子)を通過させる能力のことである。この場合、ヒトまたは動物の皮膚が小分子、より詳細には原薬を通過させる能力である。専門用語では、透過とは、ある物質が別の物質を通過する、または貫通する方法であると理解されている。この用語は、化粧品または原薬の皮膚への透過または皮膚を介した透過という文脈で使われることが多い。
【0019】
したがって、透過増強剤とは、ある物質の別の物質への透過を促進する、すなわち透過速度を増加させる、または一般に透過の効率を増加させる化合物であると理解される。
【0020】
加えて、少なくとも1つの透過増強剤は、好ましくは、有効成分の形態を安定化し、長期間にわたって皮膚を介した有効成分の比較的高い、また安定した吸収を保証する化合物であることが好ましい。
【0021】
原薬の融点の低下および/または、例えば皮膚のタイトジャンクションを開くことによる皮膚バリアの低下のような透過性を高めるための様々なメカニズムが知られている。
【0022】
透過増強剤は、好ましくは、以下の特性の少なくとも1つを特徴とする。
【0023】
理想的には、透過増強剤の効果は早く、その効果の活性および持続時間はいずれも予測可能で再現可能であるべきである。
【0024】
透過増強剤は、体内でいかなる薬理学的活性も有してはならない、すなわち、例えば、いかなる受容体部位にも結合してはならない。
【0025】
透過増強剤は、好ましくは一方向に作用すべきである、すなわち、治療有効成分を体内に透過させると同時に、体内からの内因性物質の損失を防ぐべきである。
【0026】
透過増強剤が皮膚から取り除かれると、バリア特性は迅速かつ完全に戻るはずである。
【0027】
透過増強剤は、異なる製剤への製剤化に適していなければならない、すなわち、賦形剤および薬物の両方に適合するものでなければならない。
【0028】
透過増強剤は、美容的に許容され、肌触りがよく、毒性がなく、刺激がなく、アレルギー性がないものでなければならない。
【0029】
透過増強剤の機能および特性は、例えば、Williamsらによる刊行物「Penetration Enhancers」、Advanced Drug Delivery reviews、56(2004)、603~618頁、またはAmjadiらによる刊行物「Recent advances in skin penetration enhancers for transdermal gene and drug delivery」、Current Gene Therapy 17(2)、2017、またはGuptaらによる刊行物「Effect of chemical penetration enhancers on skin permeability:In silico screening using molecular dynamics simulations」、Scientific Reports、9_1456(2019)に記載されており、その内容を本明細書に完全に組み入れる。
【0030】
溶媒は、有効成分を溶解する薬剤である。溶媒としての適性の重要な要件は、溶解する物質も溶解される物質も、溶解の過程で化学的に変化しないことである。透過増強剤とは対照的に、溶媒そのものは、患者の皮膚バリアを低下させることによって、患者の皮膚を通る有効成分の透過を必ずしも増加させる必要はない。
【0031】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、支持層が伸縮性の織布、編布、または不織布を含むことを特徴とする。当該布地は、好ましくは、少なくとも一方向、より好ましくは二方向に伸縮可能である。これは、織布、編布、または不織布の厚さ方向ではなく、縦方向および/または横方向の伸縮性または弾性を指す。
【0032】
支持層として、非密封性の、縦方向および/または横方向に伸縮可能な織布、編布、または不織布を使用することが特に好ましい。
【0033】
弾性または少なくとも一方向、好ましくは二方向(縦方向および/または横方向)に伸縮可能であるとは、本明細書では、経皮治療システムが、材料の初期状態に対して、元の形状を失うことなく、厚さ方向ではなく、少なくとも一方向、好ましくは異なる二方向、好ましくは縦方向および横方向に伸縮する能力を意味すると理解される。伸縮素材の永久的な変形は起こらない。弾性は伸びによって評価され、無次元数として、または100倍したときのパーセント値として指定される。本明細書による経皮治療システムでは、伸びは、経皮治療システムの元の寸法に対して、好ましくは1~100%、特に好ましくは10~50%、最も好ましくは15~30%である。弾性は、2013年4月10日のISO 13934-1に従って決定される。
【0034】
このような伸縮性の織布、編布、または不織布の使用は、本発明による経皮治療システムまたは有効成分含有貼付剤が、大きな具体例であっても、また四肢の関節のような身体の曲げやすい部位に適用される場合であっても、装着が非常に快適であり、可動性が制限されず、皮膚に対する高い接着性を有し、したがって意図しない剥離を防止するという利点を有する。
【0035】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が単層として形成されることを特徴とする。この場合、ジクロフェナク、密封性接着成分および少なくとも1つの溶媒であるジメチルプロピレン尿素は、1つの同じ層に混合物として存在する。
【0036】
密封性接着成分は好ましくは疎水性接着成分であるため、好ましくは外側の非極性相および内側の極性相を含む二相マトリックス層が形成され、外側の非極性相は少なくとも1つの密封性接着成分を含み、内側の極性相はジクロフェナクおよび少なくとも1つの溶媒であるジメチルプロピレン尿素を含む。
【0037】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層がさらに、好ましくはpkが5以下の弱酸を含むことを特徴とする。
【0038】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、クエン酸および/もしくは希塩酸、または酢酸、尿酸および/もしくは乳酸のような別の有機酸をさらに含むことを特徴とする。
【0039】
クエン酸は、ここではプロトン供与体として機能し、ジクロフェナクが遊離塩基として本発明による経皮治療システム中に存在するという効果を有する。
【0040】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、溶媒であるジメチルプロピレン尿素が、マトリックス層の総重量に対して0.5~20重量%の量、特に好ましくは2~15重量%の量、最も好ましくは5~10重量%の量でマトリックス層中に存在することを特徴とする。
【0041】
ジメチルプロピレン尿素は、単独で、または透過増強剤と組み合わせて利用することができる。
【0042】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、さらに少なくとも1つの透過増強剤がマトリックス層に含有されることを特徴とする。
【0043】
適した透過増強剤は、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、イソ吉草酸、ネオヘプトン酸、ネオノナン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、酢酸エチル、プロピル酸メチル、酢酸ブチル、吉草酸メチル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル(ミリスチン酸イソプロピルエステル)、パルミチン酸イソプロピルおよび/またはオレイン酸イソプロピルのような脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含む。
【0044】
他の適した透過増強剤は、プロピレングリコールのようなまたはジプロピレングリコールのような多価アルコールを含む。
【0045】
好ましくは、本発明による経皮治療システムは、溶媒としてジメチルプロピレン尿素を含有し、透過増強剤としてプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールのような多価アルコールを含有する。
【0046】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、マトリックス層の総重量に対してマトリックス層中に、0.5~20重量%の量、特に好ましくは2~15重量%の量、最も好ましくは5~10重量%の量で少なくとも1つの透過増強剤を含有することを特徴とする。
【0047】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、マトリックス層の総重量に基づいてマトリックス層中に、0.5~20重量%の量、特に好ましくは2~15重量%の量、最も好ましくは5~10重量%の量でプロピレン尿素を含有することを特徴とする。プロピレン尿素は、本明細書では好ましい溶媒として機能する。
【0048】
さらに、本発明による経皮治療システムは、ピロリドン、より詳細にはN-メチル-2-ピロリドン、スルホキシド、より詳細にはジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、より詳細にはジメチルホルムアミド(DMF)、および/または1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンもしくはラウロカプラム(アゾン)および/または誘導体のクラスからの透過増強剤が、本発明による経皮治療システム中に存在しないことを特徴とする。
【0049】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、クエン酸が、ジクロフェナク1molあたり0.1~10mol、好ましくは0.3~5mol、特に好ましくは0.3~2molの量でマトリックス層中に存在することを特徴とする。
【0050】
特に好ましくは、密封性接着成分は、非極性ポリマーである。
【0051】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、密封性接着成分が、ポリイソブチレン接着剤、好ましくは低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンに基づくポリイソブチレン接着剤、および/またはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする。
【0052】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、マトリックス層の重量に対して30~80重量%、好ましくは45~60重量%の量で、密封性接着成分として低分子量ポリイソブチレンを含有することを特徴とする。
【0053】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、マトリックス層の重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%の量で、密封性接着成分として高分子量ポリイソブチレンを含有することを特徴とする。
【0054】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、マトリックス層の重量に対して45~95重量%、好ましくは55~85重量%、特に好ましくは65~75重量%、より詳細には68~72重量%の量で、密封性接着成分としてポリイソブチレンの総量を含有することを特徴とする。
【0055】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、密封性接着成分が、低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを50対50~95対5の比で含む混合物に基づくポリイソブチレン接着剤を含有することを特徴とする。
【0056】
上記のような低分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、20,000~60,000g/mol(粘度測定から決定される)、より詳細には40,000g/mol(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)の平均分子量を有するポリイソブチレンである。
【0057】
上記のような低分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、27.5~31.2cm3/gの極限粘度を有するポリイソブチレンである。
【0058】
市販されている適切な低分子量ポリイソブチレンの一例は、BASFからOppanol B10の商品名で入手可能である。
【0059】
上記のような高分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、1,000,000~1,200,000g/mol(粘度測定から決定される)、より詳細には1,110,000g/mol(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)の平均分子量を有するポリイソブチレンである。
【0060】
上記のような高分子量は、好ましくは、約416~479cm3/gの極限粘度を有するポリイソブチレンである。
【0061】
市販されている適切な高分子量ポリイソブチレンの一例は、BASFからOppanol N100の商品名でも知られているOppanol B100という商品名で入手可能である。
【0062】
好ましくは、密封性接着成分は、低分子量および/または高分子量ポリイソブチレンに加えて、0~15重量%(値0は単に除外される)、好ましくは3~8重量%の少なくとも1つのスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含有する。
【0063】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、ジクロフェナクがマトリックス層の重量に対して0.5~10重量%、好ましくは2~5重量%の量でマトリックス層に含まれていることを特徴とする。
【0064】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、ジメチルプロピレン尿素のみが溶媒として存在することを特徴とする。
【0065】
最も好ましくは、ジメチルプロピル尿素は、クエン酸および/または塩酸と組み合わせて、唯一の溶媒としてマトリックス層中に存在する。
【0066】
クエン酸および/または塩酸の存在下または非存在下での、溶媒としてのジメチレンプロピル尿素と透過増強剤としてのプロピレングリコールのような多価アルコールとの組合せも非常に適している。
【0067】
別の実施形態では、ジクロフェナクを投与するための経皮治療システムは、好ましくは、支持層およびマトリックス層を含み、マトリックス層が、ジクロフェナク、少なくとも1つの密封性接着成分および少なくとも1つの透過増強剤を含み、少なくとも1つの透過増強剤が、プロピレングリコールのような多価アルコールを含むことを特徴とする。この場合、ジメチレンプロピル尿素のような溶媒を含有しない。そうでなければ、上述および後述のすべての定義が、この代替実施形態に適用される。
【0068】
原則として、ジクロフェナクの薬学的に許容されるすべての塩および溶媒和物を使用することができる。
【0069】
しかしながら、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、ジクロフェナクがジクロフェナクナトリウム塩として存在することを特徴とする。
【0070】
別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくはマトリックス層中に少なくとも1つの抗酸化剤を含有する。少なくとも1つの抗酸化剤は、好ましくは、α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびブチルヒドロキシトルエンから選択される。少なくとも1つの抗酸化剤は、好ましくは、マトリックス層の総重量に対して0.05~1.5重量%、好ましくは0.2~1重量%の量でマトリックス層中に存在する。
【0071】
抗酸化剤の使用は、本発明による経皮治療システムが、長期間にわたって、様々な外部条件下で安定したままであるという利点を有する。
【0072】
本発明による経皮治療システムは、さらに好ましくは、マトリックス層が50~400cm2、好ましくは70~150cm2、特に好ましくは90~120cm2の坪量を有することを特徴とする。
【0073】
別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、約20~250cm2、好ましくは約50~約150cm2の表面積を含むことを特徴とする。
【0074】
さらに、別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、マトリックス層の支持層でない側に接着される、好ましくはシリコーン化ポリエチレンテレフタレートフィルムの除去可能な保護層を含むことを特徴とする。この除去可能な保護層(保護層がマトリックスと接触する側のシリコーン化による)は、本発明による経皮治療システムの包装および輸送を容易にする。
【0075】
本発明はさらに、医薬品として使用するための上記のような経皮治療システムに関する。
【0076】
さらに、本発明は、慢性多発性関節炎、線維筋痛症、または変形性関節炎のような炎症性リウマチ性疾患;痛風の急性発作;スポーツ中の関節損傷;手術後の疼痛および腫脹;椎間板ヘルニア;および静脈障害のような疼痛および炎症状態の治療に医薬品として使用するための、上記のような経皮治療システムに関する。
【0077】
以下、本発明を非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0078】
以下の経皮治療システムを標準的な手順に従って製造した。試験したシステムは、以下の表1に従った組成であった。量は、マトリックス層の総重量に対する重量%として理解されたい。
【0079】
【0080】
ジクロフェナクNaを1.00重量%含む、EP1312360A1に開示されている経皮治療システム(Dojin patch)を比較とした。
【0081】
Dojin001、Dojin002、Dojin003という名称は、異なるロットの3つのDojin patchを指している。
【0082】
さらなる比較として、以下のシステム(G)を使用した。量は、マトリックス層の総重量に対する重量%として理解されたい。
【0083】
【0084】
表1および表2に列挙したシステムならびにDojin patch1および2のインビトロヒト皮膚透過性は、フランツセルを使用して測定した。ドナーコンパートメントには、物質または製剤(例えば、ゲル、軟膏、溶液、貼付剤)が入っている。アクセプターコンパートメントには緩衝液またはその他の溶液が満たされている。アクセプターコンパートメントから頻繁に試料を採取することで、選択した期間にわたって皮膚からの物質の透過を監視することができる。物質の透過に対する透過増強剤の影響も、このシステムを使用して試験することができる。拡散モデルとしてフランツセルを使用することは、全身的な利用可能性に相当する、ヒト皮膚を介した薬物の輸送(=透過)を予測するのに特に適している。しかしながら、インビトロとインビボの相関関係がないことに注意することが重要である。本明細書では、フランツセルには、手術で得られたヒト腹部皮膚を装填した。ここでは、拡散面積1.172cm
2の採皮した皮膚500μmを局所治療システムとインキュベートした。リン酸緩衝液+0.1%NaN
3(pH=5.5)を充填量10mLでアクセプター媒質として使用した。透過測定を32℃の温度で行った。測定結果を
図1および
図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層およびマトリックス層を含み、ジクロフェナクを投与するための経皮治療システムであって、マトリックス層は、ジクロフェナク、少なくとも1つの密封性接着成分および少なくとも1つの溶媒を含み、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルプロピレン尿素を含むことを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項2】
支持層は、伸縮性の織布、編布、または不織布を含むことを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
さらに少なくとも1つの透過増強剤、好ましくは多価アルコールは、マトリックス層に含有されることを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
マトリックス層は、クエン酸および/または塩酸を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
ジメチルプロピレン尿素は、マトリックス層の総重量に対して、0.5~20重量%の量でマトリックス層中に含まれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
クエン酸および/または塩酸は、ジクロフェナク1molあたり0.1~10mol、好ましくは0.3~5mol、特に好ましくは0.3~2molの量でマトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
密封性接着成分は、ポリイソブチレン接着剤、好ましくは低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンに基づくポリイソブチレン接着剤、および/またはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
マトリックス層は、マトリックス層の重量に対して30~80重量%、好ましくは45~60重量%の量で、密封性接着成分として低分子量ポリイソブチレンを含有することを
特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
マトリックス層は、マトリックス層の重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%の量で、密封性接着成分として高分子量ポリイソブチレンを含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
密封性接着成分は、低分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを50対50~95対5の比で含む混合物に基づくポリイソブチレン接着剤を含有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
ジクロフェナクは、マトリックス層の重量に対して0.5~10重量%の量でマトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
ジクロフェナクは、ジクロフェナクナトリウム塩として存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
ジメチルプロピレン尿素のみが溶媒として存在し、より詳細にはクエン酸と組み合わせて、マトリックス層中に存在することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
医薬品として使用するための請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
疼痛および炎症状態の治療に医薬品として使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【国際調査報告】