(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイスのための回転体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241003BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/32 510P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526687
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022079361
(87)【国際公開番号】W WO2023078698
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカル・アレクサンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ザンデル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カールソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE14
4C066HH22
4C066QQ32
(57)【要約】
本発明は、薬剤送達デバイスのための回転体に関し、回転体は、軸に対して軸方向に近位端から遠位端へと、かつ軸に対して円周方向に延びる管状の本体と、管状の本体の表面から延びる1つまたは複数の隆起部と、を備える。1つまたは複数の隆起部は、管状の本体の表面にトラックを画定し、トラックは、トラックの遠位端からトラックの近位端へと軸方向に延びる。トラックは、第1の経路、および第1の経路に接続される第2の経路を備え、第1の経路は、トラックの近位端にあり、また第2の経路は、トラックの遠位端にある。第1の経路は、円周方向に互いに隣接する2つのセクションを備える。2つのセクションのうちの第1のセクションは、1つまたは複数の隆起部の一部によって遠位方向に範囲が定められており、2つのセクションのうちの第2のセクションは、第2のセクションの遠位端で、第2の経路に接続される。対応する薬剤送達デバイスおよび方法もまた述べられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスのための回転体(10)であって、
軸(22)に対して軸方向(20)に近位端から遠位端へと、かつ前記軸(22)に対して円周方向(24)に延びる管状の本体(12)と、
前記管状の本体(12)の表面から延びる1つまたは複数の隆起部(30)と、
を備え、
前記1つまたは複数の隆起部(30)は、前記管状の本体(12)の前記表面にトラック(32)を画定し、前記トラック(32)は、前記トラック(32)の遠位端から前記トラック(32)の近位端へと前記軸方向(20)に延び、
前記トラック(32)は、第1の経路、および前記第1の経路に接続される第2の経路(36)を備え、前記第1の経路は、前記トラック(32)の前記近位端にあり、前記第2の経路(36)は、前記トラック(32)の前記遠位端にあり、
前記第1の経路は、前記円周方向に互いに隣接する2つのセクションを備え、また
前記2つのセクションのうちの第1のセクション(33)は、前記1つまたは複数の隆起部(30)の部分(70)によって遠位方向に範囲が定められ、また前記2つのセクションのうちの第2のセクション(34)は、前記第2のセクション(34)の遠位端で、前記第2の経路(36)に接続される、回転体(10)。
【請求項2】
前記1つまたは複数の隆起部(30)は、近位方向に延びる突起部(71)を備え、前記突起部(71)は、前記第1の経路の前記第1のセクション(33)と、前記第1の経路の前記第2のセクション(34)と、の間で延びる、請求項1に記載の回転体(10)。
【請求項3】
前記1つまたは複数の隆起部(30)の前記部分(70)は、前記円周方向(24)に延びる、請求項1または2に記載の回転体(10)。
【請求項4】
前記1つまたは複数の隆起部の前記部分(70)は、前記軸に対して垂直に延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項5】
前記1つまたは複数の隆起部(30)の前記部分(70)の近位面は、湾曲している、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項6】
前記1つまたは複数の隆起部(30)の前記部分(70)は、第1の部分であり、前記1つまたは複数の隆起部(30)は、前記第1の部分に対して近位に配置された第2の部分(73)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項7】
前記第2の部分(73)は、前記軸(22)に対して傾斜している、請求項6に記載の回転体(10)。
【請求項8】
前記第2の部分(73)は、近位端から遠位端へと延び、前記第2の部分(73)の前記近位端は、前記第1の経路の前記第2のセクション(34)に隣接している、請求項6または7に記載の回転体(10)。
【請求項9】
前記第2の部分(73)は直線である、請求項6から8のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項10】
前記回転体(10)は、前記第2の経路(36)に接続された第3の経路(38)を備え、前記第3の経路(38)は、前記トラック(32)の前記近位端にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項11】
前記第1の経路および前記第3の経路(38)は、前記1つまたは複数の隆起部(30)の少なくとも1つによって分離される、請求項10に記載の回転体(10)。
【請求項12】
前記1つまたは複数の隆起部(30)は、前記回転体(10)の外側面から延びる、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転体(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の回転体(10)を備える薬剤送達デバイス。
【請求項14】
前記薬剤送達デバイスは、薬剤送達部材ガード(60)を備え、前記薬剤送達部材ガードは、突起部(61)を備え、前記突起部(61)は、前記回転体(10)の前記トラック(32)内にある、請求項13に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
前記突起部(61)は、デバイスの作動前は、前記第1の経路の前記第1のセクション(33)にあり、デバイスの作動後は、前記第1の経路の前記第2のセクション(34)にあり、薬剤送達中には、前記第2の経路(36)にあるように構成される、請求項14に記載の薬剤送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達デバイスに関し、詳細には、薬剤送達デバイスのための回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で述べられたものなどの薬剤送達デバイスは、ロバスト性、簡単さ、および有用性などの特性の組合せに起因して、すでに市場で非常に成功している。そうではあるが、本出願人は、特許文献1で述べられたものなどの薬剤送達デバイスにおける回転体の改良に関して、さらなる余地があると理解している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、添付の特許請求の範囲により定義されるが、それに対して、次に参照を行うものとする。
【0005】
本開示において、用語「遠位方向」が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に、用量送達部位から離れた方向を示すことを指す。用語「遠位部分/端」が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に用量送達部位から最も遠くに離れて位置する、送達デバイスの部分/端を、またはその部材の部分/端を指す。それに対応して、用語「近位方向」が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に、用量送達部位に向いた方向を示すことを指す。用語「近位部分/端」が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に用量送達部位に対して最も近くに位置する、送達デバイスの部分/端を、またはその部材の部分/端を指す。
【0006】
さらに「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、および「軸方向の」という用語は、近位端から遠位端へと、デバイスもしくはその構成要素に沿って、通常、デバイスおよび/または構成要素の最も長い延長方向に延びる方向を指す。
【0007】
同様に、「横」、「横方向の」、および「横方向に」という用語は、概して、長手方向に対して垂直な方向を指す。
【0008】
態様は、薬剤送達デバイスのための回転体に関し、回転体は、軸に対して軸方向に近位端から遠位端へと延び、かつ軸に対して円周方向に延びる管状の本体と、管状の本体の表面から延びる1つまたは複数の隆起部と、を備え、1つまたは複数の隆起部は、管状の本体の表面上にトラックを画定し、トラックは、トラックの遠位端からトラックの近位端へと軸方向に延び、トラックは、第1の経路、および第1の経路に接続される第2の経路を備え、第1の経路は、トラックの近位端にあり、第2の経路は、トラックの遠位端にあり、第1の経路は、円周方向に互いに隣接する2つのセクションを備え、また2つのセクションのうちの第1のセクションは、1つまたは複数の隆起部の一部によって遠位方向に範囲が定められ、2つのセクションのうちの第2のセクションは、第2のセクションの遠位端で、第2の経路に接続される。1つまたは複数の隆起部の一部により、2つのセクションのうちの第1のセクションの遠位方向の範囲を定めることは、回転体を含む薬剤送達デバイスの薬剤送達部材ガードの突起部が、第1の経路の第1のセクションから遠位方向に移動しないようにすることができる。
【0009】
任意選択で、1つまたは複数の隆起部は、近位方向に延びる突起部を備え、突起部は、第1の経路の第1のセクションと、第1の経路の第2のセクションと、の間で延びる。これは、薬剤送達部材ガードの突起部が、第1の経路の第1のセクションから偶発的に離れないようにすることに役立つ。
【0010】
任意選択で、1つまたは複数の隆起部の一部は、円周方向に延びる。任意選択で、1つまたは複数の隆起部の一部は、軸に対して垂直に延びる。
【0011】
任意選択で、1つまたは複数の隆起部の一部の近位面は、湾曲している。これは、突起部が、第1の経路の第1の部分から、第1の経路の第2の部分へと移動しているとき(例えば、キャップが、回転体を含むデバイスから外されたとき)、薬剤送達部材ガードの突起部をガイドするのに役立つことができる。
【0012】
任意選択で、1つまたは複数の隆起部(30)の一部は、第1の部分である。この部分は、薬剤送達部材ガードの突起部が、この部分から遠位方向に移動しないように止めることができる。任意選択で、1つまたは複数の隆起部は、第1の部分に対して近位に配置された第2の部分を備える。
【0013】
任意選択で、第2の部分は、軸に対して傾斜している。任意選択で、第2の部分(73)は、近位端から遠位端へと延び、第2の部分の近位端は、第1の経路の第2のセクションに隣接している。任意選択で、第2の部分は直線である。
【0014】
任意選択で、第1の経路は、第3のセクションを備え、また第3のセクションは、第2の経路に隣接しており、また第3のセクションは、第2のセクションを第2の経路に接続する。任意選択で、第3のセクションは、近位端から遠位端へと延び、第3のセクションの遠位端に向かって幅が低減される。
【0015】
任意選択で、回転体は、第2の経路に接続された第3の経路を備え、第3の経路は、トラックの近位端にある。任意選択で、第1の経路および第3の経路は、1つまたは複数の隆起部の少なくとも1つによって分離される。
【0016】
任意選択で、1つまたは複数の隆起部は、回転体の外側面から延びる。
【0017】
別の態様は、上記で述べた回転体を備える薬剤送達デバイスに関する。任意選択で、薬剤送達デバイスは自己注射器である。任意選択で、薬剤送達デバイスは、薬剤送達部材ガードを備え、薬剤送達部材ガードは突起部を備え、その突起部は、回転体のトラック内にある。任意選択で、突起部は、デバイスの作動前には第1の経路の第1の部分にあり、デバイスの作動後には第1の経路の第2の部分にあり、また薬剤送達中は第2の経路にあるように構成される。任意選択で、突起部は、薬剤送達後には、第3の経路にあるように構成される。
【0018】
別の態様は、薬剤送達デバイスのための回転体に関し、回転体は、薬剤送達部材ガードの突起部をガイドするためのトラックを備え、トラックは、薬剤送達デバイスを作動させる前に、遠位方向への薬剤送達部材ガードの動きを制限するように遠位方向に範囲が定められたセクションを備える。
【0019】
別の態様は、薬剤送達デバイスを作動させる方法に関し、方法は、薬剤送達デバイスからキャップを外して、薬剤送達デバイスの薬剤送達部材ガードが、薬剤送達デバイスのハウジングに対して近位方向に移動するようにし、それにより、薬剤送達デバイスの回転体をロックされた位置から作動位置へと回転させるステップを含む。
【0020】
概して、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、その他の形で本明細書において明示的に定義されない限り、その技術分野でその通常の意味に従って解釈されるべきである。1つの(a/an)/その要素、装置、部材、構成要素、手段などに対するすべての参照は、特段の指示がない限り、要素、装置、部材の構成要素、手段などの少なくとも1つのインスタンスを参照してオープンに解釈されるべきである。
【0021】
本開示の実施形態は、例としてだけであるが、次に、添付図面を参照して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図6】回転体のトラックの別の例の簡略化した線図である。
【
図7】薬剤送達部材ガードの突起部が注射前の位置にある、
図1の回転体の側面図である。
【
図8】薬剤送達部材ガードの突起部が別の注射前の位置にある、
図1の回転体の側面図である。
【
図9】薬剤送達部材ガードの突起部が別の注射前の位置にある、
図1の回転体の側面図である。
【
図10】薬剤送達部材ガードの突起部が別の注射前の位置にある、
図1の回転体の側面図である。
【
図11】キャップ取外し前の薬剤送達デバイスの前部の横断面図である。
【
図12】キャップ取外し中の薬剤送達デバイスの前部の横断面図である。
【
図13】キャップ取外し後の薬剤送達デバイスの前部の横断面図である。
【
図14】
図1から
図10で示された回転体と共に使用され得る例示的なハウジング、キャップ、および薬剤送達部材ガードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図3、および
図5は、薬剤送達デバイスのための回転体10の例の図を示す。回転体10は、軸方向20に、近位端14から遠位端16へと延びる管状の本体12を備える。隆起部30は、管状の本体12の表面から延びており、隆起部30は、管状の本体12の表面上にトラック(ラビリンス)32を画定し、そのトラック32は、軸方向20に、トラック32の遠位端から、トラック32の近位端へと延びる。トラック32は、トラック32の遠位端に1つの経路36を、またトラック32の近位端に2つの経路34、38を備える。経路の典型的な形状は、
図6に示された別の同様の例を参照して、より詳細に述べるものとする。トラック32の近位端における2つの経路34、38は、隆起部30の一部により分離される。
【0024】
図1および
図2でさらに、トラック32の表面の開口部49に、任意選択の突片50が示されている。突片50の構造および目的は、以下でさらに詳細に述べられる。
【0025】
図6を参照して以下でより詳細に述べられるように、トラック32は、第1のセクション、第2のセクション、および第3のセクションを含む第1の経路を備える。第1のセクションは、円周方向において、一方の側で第2のセクションに隣接している(これは、他の薬剤送達構成要素に対して、回転体がどの方向に回転するように設計されるかに応じて、いずれの側もあり得る)。第1のセクションの遠位端において、隆起部分70は、第1のセクションの範囲を定める。
【0026】
図4は、上記で述べられた回転体に関して、
図3で示された斜視図と同様の斜視図からの代替的な回転体を示す。
図3の回転体は、湾曲した隆起部分70(より具体的には、隆起部分70の近位面が湾曲している)を備え、その隆起部はまた、第1の経路の第1のセクションと、第1の経路の第2のセクションと、の間で、回転体の近位端に向けてトラックの中へと延びる突起部71を備え、この突起部は、隆起部分70と隆起部分80に隣接している。この突起部は、偶発的な作動を困難にすることができる。
図4の代替的な回転体は、直線である隆起部分70を備える。隆起部分70は、特に、突起部71が、偶発的な作動を回避するのに役立つように設けられる場合、他の方向に延びることもできる。隆起部分70は、円周方向に延び、また軸22に対して垂直とすることができる(隆起部分70が直線である場合)。
【0027】
第1の経路の第1のセクションは、一方の側で第1の経路の第2のセクションにより、また他方の側で隆起部分72により範囲が定められ、隆起部分72は、突起部71と隆起部分73との間で軸方向20に延びる。任意選択である隆起部分73は直線であり、軸方向と円周方向との両方に対してある角度で延び、隆起部分73の近位端は、隆起部分73の遠位端よりも、第1の経路の第2のセクションに近い(この場合隣接している)。例えば、軸に対する隆起部分73の角度は、10度と80度の間、好ましくは、30度と60度の間である。隆起部分73は、薬剤送達部材ガード(針ガード)を、第1の経路の第1のセクションから第1の経路の第2のセクションへとガイドするのを助けることができる。隆起部分72はまた、間隙を隆起部に残した状態の任意選択のものである、または隆起部分70および隆起部分73は、例えば、共に直接的に接続することもできる。
【0028】
図7から
図10では、
図1および
図2の回転体10のさらなる図を見ることができる。薬剤送達部材ガード60の一部がまた示されている、すなわち、薬剤送達部材ガード60の突起部61がトラック32に示されている。
図7は、デバイスの組立が完了した後の相対的な位置を示す。
図8は、デバイスの作動(例えば、キャップを外すことによる作動)中における相対的な位置を示す。
図9は、作動が完了した後の相対的な位置を示しているが、薬剤送達(注射)に対してデバイスの使用が開始される前である。
図10は、デバイスが落とされた場合の作動前の相対的な位置を示す(例えば、落とされて、デバイスの遠位端が床に衝突し、それにより、薬剤送達部材ガードを、回転体に対して遠位方向に押した状態)。
【0029】
図7では、組み立てられた薬剤送達デバイスの回転体10における突起部61の位置が見られる、すなわち、デバイスを使用する前の状態である。突起部は、第1の経路の第1の部分にある(これは、
図6で示された突起部の初期位置に等しい)。この特定の例では、突起部61は、軸方向に、隆起部分70から離隔されており、隆起部分73と接触している(これは任意選択であり、突起部61は、隆起部分70および隆起部分73のいずれとも接触しない、または一方もしくは両方と接触することもあり得る)。デバイスの作動中(この場合、キャップを外すことによる)、薬剤送達部材ガードは、回転体に対して近位方向に移動する。
図8は、作動中の中間的な位置を示しており、また
図9は、作動後の位置を示す(これは、
図6で示された突起部の中間位置62に等しい)。
図10は、薬剤送達部材ガードが、デバイスが落とされた衝撃により、遠位方向に押された後に、隆起部分70に衝突することを示しており、それにより、隆起部分70はデバイスの早過ぎる作動を阻止する。
【0030】
完成した薬剤送達デバイスにおいて、隆起部分70と突起部分61との間の間隙が存在することは、任意選択である。しかし、この間隙は、例えば、厳密な許容差マージンを下げることができるので、有益であり得る。
【0031】
図11から
図13は、薬剤送達部材ガードが、ロータに対して近位方向に移動して、突起部分61を、第1の経路の第1のセクションから、第1の経路の第2のセクションへと移動することのできる一方法の例を示す。任意選択のキャップ90、ハウジング100、および薬剤送達部材ガード60が示されているが、キャップの薬剤送達部材シールド除去器(針シールド除去器)など、いくつかの他の可能な構成要素は、簡単化のために示されていない。ハウジングは、通常、回転体に対して軸方向に固定されており、したがって、ハウジングに対する薬剤送達部材ガードの軸方向の動きは、回転体に対する薬剤送達部材ガードの動きに等しい。
図11では、デバイスを使用する前の、組み立てられた薬剤送達デバイスにおける互いに対するキャップ90、ハウジング100、および薬剤送達部材ガード60の位置が示されている。キャップのリブ92は、キャップの内側面から軸に向かって延びている。リブ92は、薬剤送達部材ガードの外側面上の対応する溝66の中へと延びる。その結果、キャップがハウジング100に対して近位方向に引かれたとき、キャップは、薬剤送達部材ガードを、
図12で示された位置へと近位方向に引っ張り、それにより、薬剤送達部材ガードの突起部61を、
図7で示される位置から
図9で示される位置へと移動させる。薬剤送達部材ガードが、デバイス内で許容された限度に達すると(例えば、ハウジングの機構、および/または回転体の機構により、ハウジング/回転体に対するさらなる近位の移動が阻止されることに起因して)、近位方向のキャップの連続する引張りは、リブ92と溝66との間の相互作用により生ずる抵抗を克服して、キャップをデバイスから引き抜く(
図13で示される)。
【0032】
薬剤送達部材ガードを回転体に対して近位方向に移動するために様々な異なる手法を使用することもできる。例えば、リブ92および溝66に代えて、突起および凹部を設けることができる。リブ/突起は、キャップ上ではなく、薬剤送達部材ガード上に置くことができ、また溝/凹部を、薬剤送達部材ガード上に代えて、キャップ上に置くこともできる。複数のリブ/突起、および/または溝/凹部を設けることができる。代替的に、摩擦嵌めなどの他の手法を用いることもできる。
【0033】
上記で述べた回転体は、自己注射器などの薬剤送達デバイスにおける、通常、独立した構成要素である。回転体を使用できる薬剤送達デバイスのタイプの例は、特に、
図1および
図2、ならびに対応する記述を参照する、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献1で述べられる。簡単には、回転体を組み込む薬剤送達デバイスは、ハウジング(外側のハウジングなど)、薬剤送達部材ガード、および回転体を備えることになる。回転体は、薬剤送達デバイスの使用中に、ハウジング内で回転して(円周方向に)動くことができる。薬剤送達部材ガードは、薬剤送達デバイスの使用中に、ハウジング内で軸方向に移動することができる。通常、ハウジングに対する回転体の軸方向の動きは、制限されることになる。通常、ハウジングに対する薬剤送達部材ガードの回転する動きは、制限される。薬剤送達デバイスはまた、通常、ハウジングの内側にパワーパックを備え、パワーパックは、外側ハウジングおよびキャップの内側に、回転体およびプランジャロッド、薬剤バレルを備える。薬剤バレルは、通常、薬剤容器と、針などの薬剤送達部材と、を備える。代替的に、ジェット式注射器など、異なる薬剤送達部材を使用することもできる。
【0034】
図14は、上記で示された例で使用できる薬剤送達部材ガード60、キャップ90、およびハウジング100の例を示す。ハウジングは、管状であるが(この場合、円筒形)、別の形状にすることもできる。薬剤送達部材ガード60の突起部61および溝66を見ることができる。薬剤送達部材ガードは、各アームの遠位端に突起部61を備えた(突起部の1つだけを見ることができる)、管状の本体69(この場合、円筒形である)から遠位方向に延びる2つの遠位に延びるアーム68を備えるが、薬剤送達部材ガード60は、2つのアームに代えて、例えば、1つ、3つ、またはそれ以上のアームを備えた異なる形状または構造とすることもできる。キャップ上にリブを付けた外側面、およびハウジングに窓を含む様々な他の任意選択の機構をさらに見ることができる。
【0035】
回転体10および薬剤送達部材ガード60を備える薬剤送達デバイスにおいて、回転体10および薬剤送達部材ガード60は互いに対して動くことができる。薬剤送達部材ガードに対する回転体の典型的な動きを、
図6を参照して次に述べるものとする。
図6は、別の例示的なトラック32の簡略化した図を示す。前述のように、トラック32は、3つの別の経路を、すなわち、第1の経路34、第2の経路36、および第3の経路38の組合せと考えることができ、それは、
図6において、点線により別々に示される。移行部分35は、第1の経路34の一部と考えられる。ロック部分33はまた、第1の経路34の一部であると考えられる。したがって、第1の経路は、3つの部分を含む、すなわち、第1のセクション(ロック部分33)(上記でより詳細に述べられる)、第2のセクション、すなわち主部分、および第3のセクション(移行部分35)である。
【0036】
第1の経路34および第3の経路38は、通常、上記で述べたトラックの近位端における2つの経路に対応し、第2の経路は、上記で述べたように、通常、トラックの遠位端における経路に相当する。突起部61は、トラック/経路に「追従する」ものとして述べられ、それは、実際には、突起部が、隆起部30によるトラック/経路に沿った動きに制限されることを意味し、結果として、トラックにおける管状の本体の表面に接触する、またはその付近にある。
【0037】
移行部分35は、第1の経路の幅が、円周方向に狭くなる部分であり、移行部分は、回転体の遠位端に向かって幅が先細りする(低減される)。この移行部分は、突起部61をガイドするように設計され、薬剤送達部材ガードが、回転体に対して遠位方向に移動すると、回転体の回転を生ずるのは、通常、この部分であり、それを、以下でより詳細に述べる。
【0038】
薬剤送達部材ガード60の突起部61は、組み立てられた未使用の薬剤送達デバイスにおいて、初期には、
図6で示された位置にあることになる。突起部は、次いで、キャップ除去中に、位置62へと移動する。その後に続いて、薬剤送達デバイスを用いて注射が行われたとき、薬剤送達部材ガードは、デバイスの他の部分に対して遠位方向に移動する(例えば、回転体に対して、また外側ハウジングに対して)。言い換えると、薬剤を受ける人に対して、薬剤送達部材ガードは、用量送達部位に対して薬剤送達部材ガードの近位端で静止状態にあるが、デバイスの他の部分は、用量送達部位に向けて近位方向に移動する。薬剤送達部材ガードが、回転体に対して移動すると、突起部61もまた回転体に対して移動し、トラック内に配置されてトラックに追従し、まず、第1の経路に沿い(特に、第2の部分および第3の部分)、次いで、第2の経路に沿う。薬剤送達部材ガードは、通常、薬剤送達デバイスの他の部分(例えば、外側ハウジング、ここで、例として使用される)に対して回転が固定される。
【0039】
大まかに言って、突起部は、注射前は第1の経路に、注射中は第2の経路に、注射後には第3の経路にあるが、正確な移行点における突起部の位置は(注射前から注射中、注射後)、デバイスの設計および使用に応じて幾分変わる可能性があり、したがって、これらの移行は、突起部が、第1の経路から第2の経路へ、また第2の経路から第3の経路へと移動するとき、必ずしも正確に生ずることはなく、実際に、注射が完了するのは、通常、突起部がまだ第2の経路にある状態である。より詳細には、注射する直前に、突起部は、第1の経路の第2のセクションにあり、第1の経路内におけるその後の突起部の動き中に、薬剤送達部材ガードは、外側ハウジングに対して軸方向に移動し、また回転体は、外側ハウジングに対して静止状態にある。突起部が、移行部分35に入り、第2の経路36へと移行すると、薬剤送達部材ガードは、外側ハウジングに対して、軸方向に移動し続け、また回転体は、外側ハウジングおよび薬剤送達部材ガードに対しても回転する(円周方向に)。注射が開始する点は、通常、突起部が、移行部分35に、かつ/または第2の経路36にある状態である。突起部は、任意選択で、薬剤送達デバイスの様々な部分の正確な相対位置に応じて、注射が開始すること、例えば、開始しようとしている、開始している、またはいま開始したという指示を提供するために使用され得る。これは、例えば、突起部と相互作用する、突片50と同様の第2の突片により提供され得る。
【0040】
実際の注射中には、薬剤送達部材ガード、回転体、および外側ハウジングは、通常、互いに対して静止状態にある。注射が終了した後(通常、薬剤送達デバイス内のいずれかで生成される終了クリックにより示される)、薬剤送達デバイスは、注射部位から取り外され、その結果、薬剤送達部材ガードは、回転体および外側ハウジングに対して軸方向に、初期の相対的な動きとは反対方向に移動することになる。その結果、突起部は、第2の経路に沿って第3の経路38へと移動して戻ることになる。注射後の突起部の最終位置は、通常、
図6の破線で示され、参照数字63で示された位置である、またはその近くになる。第3の経路は任意選択であるが、それは、例えば、第3の経路は、薬剤送達部材ガードが、薬剤送達後に再度延びて薬剤送達部材を覆うことを可能にし得るために、またそれはさらに、使用後に、薬剤送達部材ガードを作動しないように(lock out)することができるために有益であり得る。
【0041】
回転体10は、軸22に対して軸方向20に、また軸の周囲で円周方向24に延びる。図では、回転体は、円周方向に軸の周囲で完全に、したがって、軸の周囲で360度延びるように示されているが、回転体はまた、軸の周囲の一部に限って延びることもできる。例において、回転体の様々な他の構造的な特徴を見ることができるが、これらの特徴は、本明細書で述べられる本発明に対して本質的なものではない。回転体は、単一の一体部品として、または共に連結された2つ以上の部品として作ることもできる。回転体は、軸22に対して互いに反対側にある2つのトラック(2つのラビリンス)を備える(例えば、
図5を参照のこと)ものとして示されているが、1つ、3つ、またはそれ以上のトラックを回転体に設けることもできる。
【0042】
隆起部30は、単一の隆起部とすることができるが、あるいは代替的に、互いに隣接する、または互いに離隔された2つ以上の分離された部分とすることができる。1つまたは複数の隆起部のいくつか、またはすべては、回転体に対して構造的なサポートを提供するなど、さらなる機能を有することができる。
図1の隆起部は、2つの分離した部分であると考えることができる(2つの経路の間の1つの真っ直ぐなセクション、および2つの経路を囲んで延びる別の大きなセクション)。
図1の隆起部は、一連の真っ直ぐなセクションとして示されるが、
図1で示される隆起部の特有の形状は本質的なものではなく、例えば、それに代えて、湾曲した部分を使用することもできる。回転体の遠位端から回転体の近位端へと延びるトラック32が示されているが、トラックはまた、回転体の遠位端から、かつ/または回転体の近位端から間隔を空けることもできる。概して、本明細書で述べられるトラックは、突起部が、隆起部により制限されて動くことのできる空間の容積と見なすことができる。トラックの表面(それは、トラックに隣接する回転体の表面である)はまた、通常、実際に突起部の動きを制限するものであるが、これは、本発明において、必ずしもそのように機能する必要はない。完全な薬剤送達デバイス内に組み立てられたとき、トラックはまた、例えば、外側ハウジングにより、トラックの表面の反対側の境界を物理的に制限されることになるが、これはまた、突起部をトラック内に保持するために、必ずしも必要ではない。トラックの遠位端における経路は、通常、軸方向に位置合わせされ、2つの経路の一方だけがトラックの近位端にある。いずれの特定の隆起部分も、通常、任意選択のものであり、回転体および薬剤送達部材ガードの動きに対する制限はまた、薬剤送達デバイスのハウジングの機構など、薬剤送達デバイスの他の機構によっても提供され得る。
【0043】
トラックの表面における開口部49は、突片50を、回転体の残りに対して移動できるようにする。トラックの表面は、トラックの形状を形成する隆起部の間の回転体の表面である。
図1で示される例の場合では、トラックは、回転体の外側面上にある、すなわち、軸22から離れて面する回転体の表面であり、突起部61は、薬剤送達部材ガードから、半径方向に軸に向けて延びる。代替的に、トラックは、回転体の内側面上にあることもでき、突起部は、薬剤送達部材ガードから、半径方向に軸から離れて延びる。
【0044】
突片50は、半径方向に変形する。しかし、いくつかの例では、突片は、さらに、または代替的に、例えば、突片の形状、トラック内における突片の位置、および突起部の形状に応じて、円周方向に、かつ/または軸方向に変形することができる。
【0045】
突片50は、例えば、
図1および
図2で示されるように、トラック内の開口部49に設けることができる。突片は、通常、第3の経路に部分的に、または完全に存在することになる。突片50は、突起部61を、一方向だけに移動できるが、他方向には移動できないように設計される。突起部が、突片50を通過した後(突起部が、突片の位置よりも回転体の近位端14に近い位置の第3の経路38にあるように)、突起部は、突片が妨げるので、遠位方向に通過して戻ることができない。これは、薬剤送達部材ガードのロックを提供することができ、それは、使用後に、薬剤送達部材のシールドを提供し、針刺し損傷などの問題を回避することができる。
【0046】
突片は、通常、例えば、突片の近位端から突片の遠位端へと延びるなど、
図1で示されるように、主として軸方向に延びるが、他の方向に延びることもできる。
図1の例では、突片の遠位端は、回転体の残りの部分に取り付けられ、その近位端は、回転体の残りの部分に対して自由に動く。この特定の解決策に代えて、様々な代替形態が利用可能である。例えば、近位端は回転体に固定され、遠位端は自由に動くことができる、または突片は、遠位方向ではなく、円周方向に延びることもできる。
【0047】
突片50の位置は、薬剤送達デバイスの形状、および他の部分の相対的な位置に応じて変化することができ、異なるデバイスは、注射中に適正な時間にクリック(注射の終了時に、またはその近くに最終的なクリック)を提供するために、幾分異なる位置が必要になり得る。突片の近位端および遠位端は、したがって、図で示されたものとは異なる位置にあり得る。
【0048】
薬剤送達部材ガードは、突起部61を備え、それは、図における例で示された形状以外の様々な形状を取ることができる。任意選択で、突起部の遠位面は、湾曲しており(例えば、
図8で示されるように半円)、突起部の近位面は尖っており、(
図8で示されるように)先端の側面に2つの直線面を備える。こうすることは、突起部の遠位面が、隆起部分70の湾曲面と相互作用できるように、また突起部の近位面の直線面の一方が、隆起部分73の直線面と相互作用できるようにする。1つの代替形態は、
図6で示される円形の突起部である。
【0049】
概して、薬剤送達部材ガードは、何らかのブロックが除去されるまで、完成した薬剤送達デバイスにおいて、回転体に対して近位方向への移動が阻止される(または少なくとも制限される)。例えば、このブロックは、キャップの機構(上記で述べられたリブ92および溝66、またはキャップの別の部分など)により行うことができる、または作動ボタンなど、別の薬剤送達デバイスの構成要素の一部により行うことができる。ブロックが除かれた後、薬剤送達部材ガードは、回転体に対して近位方向に移動することができる。
【0050】
代替的に、キャップの除去を用いて、薬剤送達部材ガードを近位方向に移動し、突起部61を第1の経路の第1のセクションから第1の経路の第2のセクションに移動するのではなく、これは、別の構成要素を用いて相互作用することにより、またはユーザが、キャップを除去した後に、薬剤送達部材ガードを引っ張ることにより行うこともできる。別の代替形態は、例えば、薬剤送達部材ガードとハウジングの間に配置された薬剤送達部材ガードばね(図示せず)が、キャップが除去された後に、薬剤送達部材ガードを、ハウジングに対して近位方向に押すことである(この同じばねが、薬剤送達の完了後に、薬剤送達部材ガードを近位方向に押すことを担当することもできる)。
【0051】
述べられた実施形態に対する様々な変更が可能であり、それを、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明から逸脱することなく想到するはずである。
【符号の説明】
【0052】
10 回転体
12 管状の本体
14 近位端
20 軸方向
22 軸
24 円周方向
30 隆起部
32 トラック
33 ロック部分
34 第1の経路
35 移行部分
36 第2の経路
38 第3の経路
49 開口部
50 突片
60 薬剤送達部材ガード
61 突起部
62 中間位置
66 溝
68 アーム
69 管状の本体
70 隆起部分
71 突起部
72 隆起部分
73 隆起部分
80 隆起部分
90 キャップ
92 リブ
100 ハウジング
【国際調査報告】