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特表2024-537531拡大培養したイヌ前駆細胞および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】拡大培養したイヌ前駆細胞および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241003BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241003BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20241003BHJP
   C40B 50/06 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/28
C12N5/077
C40B50/06
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526847
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 US2022049049
(87)【国際公開番号】W WO2023081420
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,552
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513229509
【氏名又は名称】株式会社ヘリオス
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ディーンズ, ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボガーツ, アヌリース
(72)【発明者】
【氏名】クライェ, ダフィト
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA20
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZC61
(57)【要約】
本発明の一実施形態は、未分化状態で培養中に維持され得るか、または複数の組織型の細胞を形成するように分化され得る、非胚性起源の拡大培養したイヌ前駆細胞を提供する。拡大培養した細胞は、以下の1つまたはそれを超えるものによって特徴付けられ得る出生後の体細胞である:約24時間未満の集団倍加速度;正常な核型;中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化できること;培養における拡張した複製およびテロメラーゼなどの拡張した複製のマーカーを発現すること;ならびに多能性のマーカーを発現すること。単離および培養の方法、ならびに筋骨格系および炎症性の疾患および障害の処置などの細胞の治療的使用も提供される。さらに、対象に投与するための細胞、創薬方法、および医薬組成物などの細胞の組成物を提供するために使用することができる細胞バンクが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができ、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項2】
約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼを発現し、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項3】
約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、oct-4を発現し、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項4】
約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けており、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項5】
前記細胞が、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けている、請求項1~3のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項6】
前記細胞が、培養において少なくとも50回の集団倍加を受けている、請求項5に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項7】
培養において約15~24時間の集団倍加速度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項8】
培養において約16時間の集団倍加速度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項9】
骨髄、脂肪組織、臍帯血、または胎盤組織に由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項10】
CD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である、請求項1~9のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項11】
CD29の発現について陽性である、請求項1~10のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項12】
MHCクラスIIの発現について陰性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項13】
PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD105、およびIL1R2のうちの1つまたはそれを超える発現について陽性である、請求項1~12のいずれか一項記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項14】
IL1R2の発現について陽性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項15】
rex-1およびNOVの発現について陰性である、請求項1~14のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項16】
nanog、sox-2およびoct-4の発現について陽性である、請求項1~2および4~15のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項17】
培養において約55回の集団倍加までテロメラーゼを発現する、請求項1~16のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項18】
培養において約55回の集団倍加までoct-4を発現する、請求項1~17のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項19】
培養において約55回の集団倍加まで、前記した中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化する、請求項1~16のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項20】
インビトロおよび/またはインビボでT細胞増殖を低減または阻害する、請求項1~19のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項21】
インビトロおよび/またはインビボで血管新生を提供することができる、請求項1~20のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項22】
前記中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる、請求項2~21のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項23】
骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞のうちの少なくとも2つに分化することができる、請求項22に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項24】
前記細胞が腫瘍形成性でなく、奇形腫を形成せず、形質転換されておらず、不死化されていない、請求項1~23のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【請求項25】
イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性に発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;ならびに前記選択された細胞を培養培地中で拡大させること、を含む方法によって調製された、請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞と、第2の成分と、を含む組成物。
【請求項27】
請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞と、薬学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物。
【請求項28】
別々に包装された以下の成分:請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞;培養培地;および前記細胞を培養するための説明書を含むキット。
【請求項29】
イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;前記選択された細胞を培養培地中で拡大させること;ならびに前記細胞を前記第2の成分に添加すること、を含む、請求項26に記載の組成物を調製する方法。
【請求項30】
前記拡大培養した前駆細胞を前記薬学的に許容され得る担体と混合することを含む、請求項27に記載の医薬組成物を調製するための方法。
【請求項31】
請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞を調製する方法であって、前記方法が、イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性に発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;ならびに前記選択された細胞を培養培地中で拡大させること、を含む、方法。
【請求項32】
細胞バンクを構築する方法であって、前記方法が、対象への将来の投与のために、請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞を拡大させ、貯蔵することを含む、方法。
【請求項33】
創薬のための方法であって、前記方法が、請求項1~24のいずれか一項に記載の拡大培養した前駆細胞を作用物質に曝露して、前記作用物質の前記細胞に対する1つまたはそれを超える効果を評価することを含む、方法。
【請求項34】
イヌにおける炎症症状を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載のイヌ前駆細胞を前記イヌに投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記炎症症状が、慢性炎症症状または急性炎症症状である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記急性炎症症状または前記慢性炎症症状が、皮膚炎、炎症性眼疾患、炎症性脳疾患、炎症性気道疾患、および炎症性腸疾患のうちの1つである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記皮膚炎がアトピー性皮膚炎である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記炎症性眼疾患が角結膜炎である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記炎症性脳疾患が髄膜脳脊髄炎である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記炎症症状が自己免疫疾患である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
イヌの筋骨格系障害を処置する方法であって、治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載のイヌ前駆細胞を前記イヌに投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記筋骨格系障害が、変形性関節症および十字靭帯断裂のうちの1つである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記十字靭帯断裂が部分的な十字靭帯断裂である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記筋骨格系障害が脊髄症状である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記脊髄症状が、脊髄損傷および椎間板疾患のうちの1つである、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、未分化状態で培養中に維持され得るか、または複数の組織型の細胞を形成するように分化され得る、出生後を起源とする拡大培養したイヌ前駆細胞を提供する。単離および培養の方法、ならびに拡大培養した当該イヌ前駆細胞の治療的使用も提供される。拡大培養したイヌ前駆細胞は出生後の体細胞であり、そしてそれは培養における拡張した複製が可能であり、約55回の集団倍加を通じて以下の1つまたはそれを超えるものによって特徴付けられ得る:約24時間未満の集団倍加速度;正常な核型;中胚葉(mesodermal germ layer)の少なくとも2つの細胞型に分化する能力;および拡張した複製マーカー(例えば、テロメラーゼ)および多能性マーカー(例えば、oct4)の発現。本発明はまた、拡大培養したイヌ前駆細胞を使用して筋骨格系障害および炎症症状を処置する方法に関する。本発明はまた、イヌ対象に投与するための拡大培養したイヌ前駆細胞を提供するために使用され得る、細胞バンクに関する。本発明はまた、創薬方法に関する。本発明はまた、拡大培養したイヌ前駆細胞の組成物、例えば医薬組成物中の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
今日まで、幹細胞は、主に実験的に、異なる動物種における様々な疾患の処置に使用されてきた。当初再生獣医学は整形外科疾患にフォーカスしていたが、現在そのフォーカスは、口腔および消化管疾患、肝臓、腎臓、心臓、呼吸器、神経筋、皮膚、嗅覚、および生殖器系疾患などの他の領域に急速に拡大している。幹細胞による処置は、イヌおよびウマでは様々な臓器システムにおける様々な疾患のために、ならびにネコでは腎臓、呼吸器および炎症性疾患のために、最も頻繁に使用された。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、未分化状態で培養中に維持され得るか、または複数の組織型の細胞を形成するように分化され得る、出生後起源のイヌ前駆細胞を見出した。イヌ前駆細胞は、培養における拡張した複製が可能であり、約55回の集団倍加を通じて以下の1つまたはそれを超えるものによって特徴付けられ得る:約24時間未満の集団倍加速度;正常な核型;中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化する能力;および拡張した複製のマーカー(例えば、テロメラーゼ)および多能性のマーカー(例えば、oct4)の発現。
【0004】
少なくともこれらの知見に基づいて、本発明は、拡大培養したイヌ前駆細胞、拡大培養したイヌ前駆細胞を含む組成物、拡大培養したイヌ前駆細胞を使用して筋骨格系障害および炎症症状を処置する方法、拡大培養したイヌ前駆細胞を使用して細胞バンクを構築する方法、ならびに創薬方法を含むがこれらに限定されない、イヌ前駆細胞および方法を提供する。
【0005】
したがって、本発明の一実施形態は、約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である拡大培養したイヌ前駆細胞を含む。
【0006】
一実施形態では、本発明は、イヌの炎症症状を処置する方法であって、治療有効量の拡大培養したイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含み、該細胞は、約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である、方法を含む。
【0007】
一実施形態では、本発明は、イヌの炎症症状を処置する方法であって、治療有効量の拡大培養したイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含み、該細胞は、約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性であり、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる、方法を含む。
【0008】
一実施形態では、本発明は、イヌの筋骨格系障害を処置する方法であって、治療有効量の拡大培養したイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含み、該細胞は、約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である、方法を含む。
【0009】
一実施形態では、本発明は、イヌの筋骨格系障害を処置する方法であって、治療有効量の拡大培養したイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含み、該細胞は、約24時間未満の集団倍加速度を有し、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性であり、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる、方法を含む。
【0010】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けている。
【0011】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、培養において少なくとも50回の集団倍加を受けている。
【0012】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、培養において約15~24時間の集団倍加速度を有する。
【0013】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、培養において約16時間の集団倍加速度を有する。
【0014】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、骨髄、脂肪組織、臍帯血、または胎盤組織に由来する。
【0015】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、CD29の発現について陽性である。
【0016】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、MHCクラスIIの発現について陰性である。
【0017】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、CD105、およびIL1R2のうちの1つまたはそれを超えるものの発現について陽性である。
【0018】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、IL1R2の発現について陽性である。
【0019】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、rex-1、CD34、CD45、およびNOVの発現について陰性である。
【0020】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、nanog、sox-2、およびoct-4の発現について陽性である。
【0021】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、培養において約55回の集団倍加までテロメラーゼを発現する。
【0022】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、インビボおよび/またはインビトロでT細胞増殖を低減または阻害することができる。
【0023】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、インビボおよび/またはインビトロで血管新生を提供することができる。
【0024】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる。
【0025】
別の実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞は、約16時間の集団倍加速度、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、MHCクラスII、CD45およびCD34の発現について陰性である。拡大培養した前駆細胞は、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けており、PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD105およびIL1R2のうちの1つまたはそれを超えるものの発現についても陽性であり、骨髄に由来する。
【0026】
一例では、炎症症状は、慢性炎症症状または急性炎症症状である。
【0027】
一例では、急性または慢性炎症症状は、皮膚炎、炎症性眼疾患、炎症性脳疾患、炎症性気道疾患、および炎症性腸疾患のうちの1つである。
【0028】
別の例では、皮膚炎はアトピー性皮膚炎である。
【0029】
別の例では、炎症性眼疾患は角結膜炎である。
【0030】
別の例では、炎症性脳疾患は髄膜脳脊髄炎である。
【0031】
一例では、炎症症状は自己免疫疾患である。
【0032】
一例では、筋骨格系障害は、変形性関節症および十字靭帯断裂のうちの1つである。
【0033】
別の例では、十字靭帯断裂は、部分的な十字靭帯断裂である。
【0034】
一例では、筋骨格系障害は脊髄症状である。
【0035】
別の例では、脊髄症状は、脊髄損傷および椎間板疾患のうちの1つである。
【0036】
一実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞には、胚性幹細胞のいくつかの特徴を有するが、出生後の組織に由来し、かつ本出願において記載される効果を提供する、出生後の体細胞が含まれるが、これらに限定されない。拡大培養したイヌ前駆細胞は、これらの効果を自然に達成し得る(すなわち、遺伝子的または薬学的に改変されていない)。しかしながら、天然の発現体は、効能を増加させるように遺伝的または薬学的に改変され得る。
【0037】
拡大培養したイヌ前駆細胞は、oct4などの多能性マーカーを発現し得る。それらはまた、テロメラーゼなどの拡張した複製能力に関連するマーカーを発現し得る。多能性の他の特徴には、中胚葉の異なる細胞型に分化する能力が含まれ得る。そのようなイヌ前駆細胞は、腫瘍形成性ではなく、奇形腫を形成せず、培養において不死化または形質転換されていない。イヌ前駆細胞は、正常な核型を維持しながら高度に拡大され得る。例えば、一実施形態では、イヌ前駆細胞は、培養において少なくとも10~60回の細胞倍加、例えば、10~15回、15~20回、20~25回、25~30回、30~35回、35~40回、40~45回、45~50回、50~55回、55~60回、またはそれを超える細胞倍加を受けており、ここで、該細胞は、正常な核型を有し、テロメラーゼを発現し、oct-4を発現し、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化する。さらに、拡大培養したイヌ前駆細胞は、約24時間未満の集団倍加速度を有する。
【0038】
拡大培養したイヌ前駆細胞は、本明細書に記載される単離および培養条件によって調製され得る。
【0039】
イヌ前駆細胞には、以下の番号付けされた実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
1.約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型を有し、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができ、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0041】
2.約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型を有し、テロメラーゼを発現し、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0042】
3.約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型を有し、oct-4を発現し、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0043】
4.約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型を有し、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けており、出生後の体細胞である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0044】
5.細胞が、培養において少なくとも40回の集団倍加を受けている、上記1~3のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0045】
6.細胞が、培養において少なくとも50回の集団倍加を受けている、上記5に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0046】
7.培養において約15~24時間の集団倍加速度を有する、上記1~6のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0047】
8.培養において約16時間の集団倍加速度を有する、上記1~7のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0048】
9.骨髄、脂肪組織、臍帯血、または胎盤組織に由来する、上記1~8のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0049】
10.CD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である、上記1~9のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0050】
11.CD29の発現について陽性である、上記1~10のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0051】
12.MHCクラスIIの発現について陰性である、上記1~11のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0052】
13.PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD105、およびIL1R2のうちの1つまたはそれを超える発現について陽性である、上記1~12のいずれか1つ記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0053】
14.IL1R2の発現について陽性である、上記1~13のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0054】
15.rex-1およびNOVの発現について陰性である、上記1~14のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0055】
16.nanog、sox-2およびoct-4の発現について陽性である、上記1~2および4~15のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0056】
17.培養において約55回の集団倍加までテロメラーゼを発現する、上記1~16のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0057】
18.培養において約55回の集団倍加までoct-4を発現する、上記1~17のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0058】
19.培養において約55回の集団倍加まで、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化させる、1~18のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0059】
20.インビトロおよび/またはインビボでT細胞増殖を低減または阻害する、上記1~19のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0060】
21.インビトロおよび/またはインビボで血管新生を提供することができる、上記1~20のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0061】
22.中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる、上記2~21のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0062】
23.骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞のうちの少なくとも2つに分化することができる、上記22に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0063】
24.細胞が腫瘍形成性でなく、奇形腫を形成せず、形質転換されておらず、不死化されていない、上記1~23のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0064】
25.イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性に発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;ならびに選択された細胞を培養培地中で拡大させること、を含む方法によって調製された、上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞。
【0065】
26.上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞と、第2の成分と、を含む組成物。
【0066】
27.上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞と、薬学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物。
【0067】
28.別々に包装された以下の成分:上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞;培養培地;および細胞を培養するための説明書を含むキット。
【0068】
29.イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性に発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;選択された細胞を培養培地中で拡大させること;ならびに細胞を第2の成分に添加すること、を含む、上記26に記載の組成物を調製する方法。
【0069】
30.拡大培養した前駆細胞を薬学的に許容され得る担体と混合することを含む、上記27に記載の医薬組成物を調製するための方法。
【0070】
31.上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞を調製する方法であって、方法が、イヌから組織を得ること;接着性細胞の集団を確立すること;CD90を陽性に発現し、かつ/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない細胞を選択すること;ならびに選択された細胞を培養培地中で拡大させること、を含む、方法。
【0071】
32.細胞バンクを構築する方法であって、方法が、対象への将来の投与のために、上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞を拡大させ、貯蔵することを含む、方法。
【0072】
33.創薬のための方法であって、方法が、上記1~24のいずれか1つに記載の拡大培養した前駆細胞を作用物質に曝露して、作用物質の細胞に対する1つまたはそれを超える効果を評価することを含む、方法。
【0073】
34.イヌにおける炎症症状を処置するための方法であって、治療有効量の上記1~24のいずれか1つに記載のイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含む、方法。
【0074】
35.炎症症状が、慢性炎症症状または急性炎症症状である、上記34に記載の方法。
【0075】
36.急性炎症症状または慢性炎症症状が、皮膚炎、炎症性眼疾患、炎症性脳疾患、炎症性気道疾患、および炎症性腸疾患のうちの1つである、上記35に記載の方法。
【0076】
37.皮膚炎がアトピー性皮膚炎である、上記36に記載の方法。
【0077】
38.炎症性眼疾患が角結膜炎である、上記36に記載の方法。
【0078】
39.炎症性脳疾患が髄膜脳脊髄炎である、上記36に記載の方法。
【0079】
40.炎症症状が自己免疫疾患である、上記34に記載の方法。
【0080】
41.イヌの筋骨格系障害を処置する方法であって、治療有効量の上記1~24のいずれか1つに記載のイヌ前駆細胞をイヌに投与することを含む、方法。
【0081】
42.筋骨格系障害が、変形性関節症および十字靭帯断裂のうちの1つである、上記41に記載の方法。
【0082】
43.十字靭帯断裂が部分的な十字靭帯断裂である、上記42に記載の方法。
【0083】
44.筋骨格系障害が脊髄症状である、上記42に記載の方法。
【0084】
45.脊髄症状が、脊髄損傷および椎間板疾患のうちの1つである、上記44に記載の方法。
【0085】
イヌ前駆細胞には、以下の特定の番号付けされた実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
1.約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型を有し、テロメラーゼおよびCD90の発現について陽性であり、CD45およびCD34の発現について陰性である、拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0087】
2.培養において少なくとも40回の集団倍加を受けている、上記1に記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0088】
3.培養において少なくとも50回の集団倍加を受けている、上記1~2のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0089】
4.培養において約15~24時間の集団倍加速度を有する、上記1~3のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0090】
5.培養において約16時間の集団倍加速度を有する、上記1~4のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0091】
6.骨髄、脂肪組織、臍帯血、または胎盤組織に由来する、上記1~5のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0092】
7.CD29の発現について陽性である、上記1~6のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0093】
8.MHCクラスIIの発現について陰性である、上記1~7のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0094】
9.PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD105、およびIL1R2のうちの1つまたはそれを超えるものの発現について陽性である、上記1~8のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0095】
10.IL1R2の発現について陽性である、上記1~9のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0096】
11.rex-1およびNOVの発現について陰性である、上記1~10のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0097】
12.nanog、sox-2、およびoct-4の発現について陽性である、上記1~11のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0098】
13.培養において約55回の集団倍加までテロメラーゼを発現する、上記1~12のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0099】
14.インビボおよび/またはインビトロでT細胞増殖を低減または阻害することができる、上記1~13のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0100】
15.インビボおよび/またはインビトロで血管新生を提供することができる、上記1~14のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0101】
16.中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化することができる、上記1~15のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0102】
17.骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞のうちの少なくとも2つに分化することができる、上記1~16のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【0103】
18.腫瘍形成性でなく、奇形腫を形成せず、形質転換されておらず、不死化されていない、上記1~17のいずれか1つに記載の拡大培養したイヌ前駆細胞。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1図1 - イヌ多能性成体前駆細胞(canine multipotent adult progenitor cells:cMAPC)の増殖曲線を示すグラフ。継代ごとに細胞を計数し、最初に播種した細胞の数(C)から採取した細胞の数(C)に従って、集団倍加(PD)を以下の式を使用して計算した:PD=PD+Log(C/C)。
【0105】
図2A-B】図2A-D - cMAPCがCD29について陽性であること(図2A)、cMAPCがCD90について陽性であること(図2B)、cMAPCがCD45について陰性であり(図2C)、cMAPCがMHCクラスIIについて陰性である(図2D)ことを示すフローサイトメトリー結果。
図2C-D】図2A-D - cMAPCがCD29について陽性であること(図2A)、cMAPCがCD90について陽性であること(図2B)、cMAPCがCD45について陰性であり(図2C)、cMAPCがMHCクラスIIについて陰性である(図2D)ことを示すフローサイトメトリー結果。
【0106】
図3図3 - qPCR分析によって測定した、CD34、CD45、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90およびCD105のcMAPC発現レベルを示すグラフ。点線は検出下限を表す。CD34およびCD45は検出不能である。CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90およびCD105は陽性発現を示す。
【0107】
図4A-C】図4A-C - cMAPCおよびイヌ間葉系幹細胞(MSC)における多能性遺伝子の発現を示すアガロースゲル。RNAを、3つの異なるドナー由来のイヌMAPC(M)およびMSC(S)から抽出した。RNAをcDNAに変換した。cDNAを使用して、nanog(図4A)、oct4(図4B)およびsox2(図4C)についてPCRを行った。次いで、PCR産物を2%アガロースゲルにロードして、遺伝子の発現を可視化した。cMAPCおよびイヌMSCは、nanog、oct4およびsox2の発現を示す。
【0108】
図5図5 - cMAPCおよびイヌMSCにおけるテロメラーゼ活性。すべてのサンプルについて、同じ数の細胞を使用した。アッセイは、細胞サンプル中の内因性テロメラーゼによるテロメア鋳型の伸長に基づく。次いで、鋳型の量を定量的PCRによって決定する。同じドナーからのイヌMSCサンプルと比較して、cMAPCサンプルではテロメラーゼによって有意に多くの鋳型が伸長した。括弧内の数字は、集団倍加を表す。テロメラーゼ活性は、ドナー2について見られるように、細胞がより高い集団倍加に達し、その結果年齢が高くなると低下した。
【0109】
図6A-C】図6 - cMAPCの多系統能を決定するための染色の結果。cMAPCは、骨芽細胞、脂肪細胞および軟骨細胞に分化することができる。
【0110】
図7図7 - cMAPCがT細胞増殖を阻害したことを示す免疫応答性アッセイの結果。免疫応答性アッセイを96ウェル丸底プレートで行った。各ウェルにおいて、100,000個のイヌPBMC(末梢単核球血球)を、1:2~1:16の範囲の段階希釈で播種したcMAPCに添加した。cPBMCを0.5μg/ml ConA(コンカナバリンA;Sigma社)で刺激し、アッセイを4日後に分析した。
【0111】
図8図8 - インビトロ血管形成アッセイの結果。cMAPCからの馴化培地は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)間の管形成を誘導する。
【0112】
図9図9 - cMAPCが正常な核型を有することを示す細胞発生分析。
【0113】
図10A図10A-B - cMAPCおよびイヌMSCについてのマイクロアレイデータの結果。樹状図(図10A)およびPCA(主成分分析)プロット(図10B)は、cMAPCおよびcMSCが、全遺伝子発現に基づいて2つの異なる細胞集団とみなすことができる2つの別個のクラスターを形成することを示した。
図10B図10A-B - cMAPCおよびイヌMSCについてのマイクロアレイデータの結果。樹状図(図10A)およびPCA(主成分分析)プロット(図10B)は、cMAPCおよびcMSCが、全遺伝子発現に基づいて2つの異なる細胞集団とみなすことができる2つの別個のクラスターを形成することを示した。
【0114】
図11A-C】図11A-C - マーカー発現cMAPCおよびイヌMSC。3つの異なるドナーから、cMAPC(M)およびcMSC(S)のRNAを抽出した。RNAをcDNAに変換した。cDNAを使用して、IL1R2(図11A)およびNOV(図11B)についてPCRを行った。次いでPCR産物を2%アガロースゲルにロードして、遺伝子の発現を可視化した。リボソームタンパク質L8(RPL8)(図11C)を参照遺伝子として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0115】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される開示された発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0116】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載される主題をいかなる形でも限定するものと解釈されるべきではない。
【0117】
本出願の方法および技術は、一般に、特に指示がない限り、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書全体を通して引用および議論される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているように行われる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。
【0118】
定義
「a」または「an」は、本明細書では1つまたは1つよりも多いこと、すなわち少なくとも1つを意味する。本明細書で複数形が使用される場合、それは一般に単数形を含む。
【0119】
「自己免疫疾患」とは、対象の免疫系が自己と非自己とを区別できないこと、または外来抗原に応答できないことを指す。この用語はまた、アレルギー性障害の場合のように、外来抗原に対する過剰免疫応答を包含する。したがって、この応答は、自己免疫障害およびアレルギー性障害の両方に存在する。自己免疫疾患には、生物自身の組織に対する抗体の産生によって引き起こされる組織損傷および炎症、サイトカインの産生障害、ならびに細胞傷害性または非細胞傷害性の作用機序によって引き起こされる組織損傷が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、患者の症候をもたらす不適切に調節された免疫応答である。典型的には、自己免疫応答は、対象の免疫系が自己抗原を外来抗原として認識すると起こり、自己反応性エフェクター免疫細胞の産生をもたらす。自己反応性エフェクター免疫細胞には、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、およびB細胞が含まれるがこれらに限定されない様々な系統からの細胞が含まれる。正確な機序は異なるが、自己免疫障害に罹患している患者における自己反応性エフェクター免疫細胞の存在は、患者の組織および細胞の破壊をもたらし、病理学的症候をもたらし得る。自己免疫疾患の非限定的な例としては、免疫媒介性多関節炎;免疫介在性血小板減少症;乾性角結膜炎;炎症性脳疾患;および落葉状天疱瘡が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、正常個体がより抑制的に応答する外来抗原に対する過敏反応を受ける細胞の存在は、過敏症(アレルギー)を示す。例としては、ノミアレルギー皮膚炎、季節性アレルギー、ヒト食物アレルギー、イヌ食物アレルギー、空気中アレルゲン、環境アレルギー、家庭アレルギー、および処方薬が挙げられるが、これらに限定されない。対象におけるそのような細胞の存在、したがって、抗原特異的自己免疫障害またはアレルギー性障害などの自己免疫障害の存在を決定するための多数のアッセイが当業者に公知であり、対象方法において容易に採用することができる。
【0120】
「細胞バンク」は、将来の使用のために成長され貯蔵されている細胞の業界用語体系である。細胞はアリコートで貯蔵され得る。それらは、貯蔵から直接使用することができ、または貯蔵後に拡大することができる。これは、投与に利用可能な「既製の」細胞があるため便利である。細胞は、薬学的に許容され得る賦形剤に既に貯蔵されていてもよく、そのため、細胞は直接投与されてもよく、または細胞が貯蔵から放出されるときに適切な賦形剤と混合されてもよい。細胞は、凍結され得るか、または別の方法で生存率を保つための形態で貯蔵され得る。本発明の一実施形態では、細胞バンクは、本出願に記載される方法によって産生された細胞を使用して作製される。
【0121】
「共投与する」とは、2つまたはそれを超える作用物質の同時投与または逐次投与を含む、互いに一緒に、協調的に投与することを意味する。
【0122】
「含む(Comprising)」とは、他の限定なしに、言及物を含むことを意味し、必然的に、他に何が含まれ得るかに関するいかなる制限または除外もない。例えば、「xおよびyを含む組成物」は、他の成分が組成物中に存在し得るにもかかわらず、xおよびyを含有する任意の組成物を包含する。同様に、「xのステップを含む方法」は、xが方法の唯一のステップであるか、またはそれが各ステップのうちの1つにすぎないものであるかにかかわらず、他のステップがいくつあってもよく、それらと比較してxがどれほど単純または複雑であっても、xが実行される任意の方法を包含する。「から構成される(comprised of)」および語根「含む(comprise)」の単語を使用する類似の語句は、本明細書では「含む(comprising)」の同義語として使用され、同じ意味を有する。
【0123】
「から構成される(comprised of)」は、「含む(comprising)」の同義語である(上記参照)。
【0124】
「有効経路」とは、一般に、所望の区画、システム、または位置への作用物質(例えば、イヌ前駆細胞)の送達を提供する経路を意味する。例えば、有効経路は、有益なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量の作用物質を所望の作用部位に提供するために作用物質を投与することができる経路である。
【0125】
本発明に言及する場合、「有効時間」とは、炎症症状または筋骨格系障害の処置などの特定の効果をもたらすのに十分な期間を指す。
【0126】
「免疫応答」とは、外来抗原または自己抗原に対する患者の応答を指す。この用語は、細胞媒介性、体液性および炎症性応答を含む。
【0127】
「含む(includes)」という用語の使用は、限定を意図するものではない。
【0128】
「増加させる(increase)」または「増加させる(increasing)」とは、生物学的イベントを完全に誘発すること、またはイベントの程度を増加させることを意味する。
【0129】
「炎症症状」という用語は、急性または慢性炎症によって特徴付けられる疾患または障害を指す。この用語は、自己炎症性疾患(例えば、自己免疫疾患)または他の炎症性疾患などの炎症性疾患を指すことができる。炎症症状の非限定的な例としては、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)炎症性眼疾患、炎症性脳疾患(例えば、髄膜脳脊髄炎)、炎症性気道疾患、および炎症性腸疾患が挙げられる。炎症症状の他の非限定的な例は、Maziarzらの米国特許出願公開第2006/0263337号A1に開示されており、例えば、有害な免疫反応(例えば、他の治療から生じるもの)、移植療法を複雑にする炎症症状(例えば、GvHD)、および先天性免疫障害である。
【0130】
「虚血症状」という用語は、閉塞した血流による傷害および閉塞の除去によって引き起こされる再灌流傷害を指す。虚血症状の非限定的な例としては、急性心筋梗塞、慢性心不全、末梢血管疾患、脳卒中、慢性完全閉塞、腎虚血、および急性腎障害が挙げられる。
【0131】
「単離された」という用語は、インビボで1つもしくはそれを超える細胞、または細胞(例えば、イヌ前駆細胞)に関連する1つもしくはそれを超える細胞成分と関連してない細胞(例えば、イヌ前駆細胞)を指す。「濃縮された集団」とは、インビボまたは初代培養における1つまたはそれを超える他の細胞型に比べて、所望の細胞(例えば、イヌ前駆細胞)の数が相対的に増加していることを意味する。
【0132】
しかしながら、本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、特定の細胞(例えば、イヌ前駆細胞)のみの存在を示すものではない。むしろ、「単離された」という用語は、細胞(例えば、イヌ前駆細胞)がそれらの天然の組織環境から取り出され、正常な組織環境と比較してより高い濃度で存在することを示す。したがって、「単離された」細胞集団は、特定の細胞(例えば、イヌ前駆細胞)に加えて細胞型をさらに含み得、追加の組織成分を含み得る。これは、例えば、細胞倍加に関しても表現することができる。細胞(例えば、イヌ前駆細胞)は、インビボまたはその元の組織環境(例えば、骨髄、末梢血、胎盤、臍帯、臍帯血、脂肪組織など)においてその元の数と比較して濃縮されるように、インビトロまたはエクスビボで少なくとも約10、20、30、40回またはそれを超える倍加を受けることができ得る。
【0133】
「cMAPC」は、「イヌ多能性成体前駆細胞」の頭字語であり、それと互換的に使用することができる。さらに、「cMAPC」は、「イヌ前駆細胞」と互換的に使用することができる。cMAPCとは、胚性幹細胞または生殖細胞ではないが、これらの多数の特徴を有する細胞を指す。cMAPCは、培養において約24時間未満の集団倍加速度を有すること、培養において拡張された複製能力および正常な核型を有すること、分化時に中胚葉由来の2つよりも多い細胞型の細胞子孫(例えば、骨芽細胞、脂肪細胞または軟骨細胞)を生じさせること、ならびに/または出生後の体細胞であるが、それらはnanog、sox-2およびoct-4などのこれらの原始細胞型のマーカーを発現し得ることを含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる特徴で特徴付けられ得る。拡大培養したcMAPCはまた、副甲状腺ホルモン様ホルモン(PTHLH)、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、CD105、およびインターロイキン1受容体2型(IL1R2)の1つまたはそれを超えるものを発現し、rex-1、CD34、CD45、および過剰発現した腎芽腫(NOV)の発現について陰性であり得る。さらに、拡大培養したcMAPCは、CD90およびCD29について陽性の表面抗原であり得、CD45およびMHCクラスIIについて陰性の表面抗原であり得る。第5に、幹細胞と同様に、cMAPCは自己再生し得る;すなわち、形質転換されずに培養において拡張した複製能力を有する。これは、これらの細胞が培養においてテロメラーゼを発現する(すなわち、テロメラーゼ活性を有する)ことを意味する。第6に、拡大培養したMAPCは腫瘍形成性ではなく、奇形腫を形成せず、形質転換されず、不死化されない。したがって、「cMAPC」と命名された細胞型は、その新規特性のいくつかを介して細胞を記述する代替の基本的特性によって特徴付けられ得る。
【0134】
cMAPCにおける「成体」という用語は非限定的である。それは、出生後の体細胞などの非胚性細胞を指す。
【0135】
「筋骨格系障害」という用語は、骨、筋肉、靭帯、腱、軟骨および関節に関連するすべての障害を含む。筋骨格系疾患または障害の処置は再生医療の範囲内である。例えば、脊髄固定、脊髄安定化、身体(長骨および扁平骨など)の分節欠損の修復を必要とする障害、環状裂傷などの椎間板輪の破壊、椎間板の慢性炎症、閉じ込められたまたは逸脱した突出部を伴う限局性椎間板ヘルニア、および椎間板を取り囲む椎骨の相対的不安定性を含むがこれらに限定されない椎骨および椎間板の障害が、筋骨格系障害である。筋骨格系障害には、靭帯(例えば、完全または部分的な十字靭帯断裂)、腱、筋肉(例えば、骨格筋および心筋)および軟骨の捻挫、ひずみおよび断裂、腱炎、腱滑膜炎、線維筋痛症、変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、滑液包炎、ならびに骨粗鬆症も含まれる。さらに、筋骨格系障害には、筋骨格系の遺伝病ならびにリソソーム蓄積症の筋骨格の側面が含まれる。
【0136】
タンパク質または核酸(例えば、mRNA)に言及する場合、「陰性発現」とは、タンパク質または核酸がサンプル中に存在しない、かつ/または対照サンプルと比較して既知のアッセイによって検出可能なレベルでサンプル中に存在しないことを意味する。
【0137】
「薬学的に許容され得る担体」は、本開示において使用されるイヌ前駆細胞のための任意の薬学的に許容され得る培地である。そのような培地は、等張性、細胞代謝、pHなどを保持し得る。それは、インビボでの対象への投与に適合し、したがって、細胞送達および処置のために使用することができる。
【0138】
「集団倍加速度」とは、単位時間当たりの細胞集団倍加の量を指す。細胞集団倍加(PD)は、以下の式に従って計算することができるPD=PD+Log(C/C)、式中、Cは、最初に播種した細胞を表し、Cは、採取した細胞の数を表す。拡大培養したイヌ前駆細胞の場合、集団倍加速度は、拡大プロセス全体にわたる、例えば約10回の集団倍加から約55回の集団倍加までの培養において、約24時間未満、例えば、約15~24時間、約15時間、約16時間(例えば、16時間)、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間である。
【0139】
タンパク質または核酸(例えば、mRNA)に言及する場合、「陽性発現」とは、タンパク質または核酸が、対照サンプルと比較して既知のアッセイによって検出可能なレベルでサンプル中に存在することを意味する。
【0140】
本明細書で使用される「低減させる」という用語は、減少だけでなく予防することを意味する。処置との関連において、「低減させる」ことは、1つまたはそれを超える臨床症候を予防または改善することのいずれかである。臨床症候は、処置せずに放置した場合に対象の生活の質(健康)に悪影響を及ぼすかまたは及ぼすであろう1つ(またはそれを超えるもの)である。インビトロの文脈では、「低減させる」ことは、1つもしくはそれを超える分析物またはバイオマーカーを減少させることであり、これをアッセイし、次いで特定の結果またはエンドポイントに相関させることができる。
【0141】
幹細胞の「自己再生」とは、それらが生じたものと同一の分化能を有する複製娘幹細胞を産生する能力を指す。
【0142】
「対象」とは、イヌ科のメンバーである動物を意味し、これには、オオカミ、ジャッカル、キツネ、コヨーテ、およびイヌ(Canis lupus familiaris)が含まれる。したがって、「イヌ(dog)」、「イヌ(canine)」、または「イヌ科動物(canid)」という用語の任意の1つを、本出願の主題を指すときに互換的に使用することができる。イヌ科動物は、イヌ科の2つ以上の種からの何らかの遺伝的寄与を有する家畜、オオカミ、または動物であり得る。したがって、本出願のイヌは、任意の純血犬または混血犬を含み得る。
【0143】
「実質的に純粋」とは、他の細胞型を含まないまたは実質的に含まないイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の集団を指す。細胞精製は、当業者に公知の任意の手段によって達成することができる。例えば、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の実質的に純粋な集団は、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の成長によって、またはあまり純粋でない集団からの選択によって達成することができる。イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の培養物は、培養物中の増殖細胞の少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%がイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)である場合、実質的に純粋である。イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の培養物中のごくわずかなパーセンテージまたは0パーセンテージの他の成長細胞型の存在は、その培養物がイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の実質的に純粋な培養物であることを意味する。
【0144】
「抑制」、「阻害」および「予防」は、免疫応答の文脈で使用される場合、許容される定義に従って本明細書で使用される。例えば、進行中の免疫応答(例えば、増殖などの異常なT細胞活性)が、例えば本明細書に開示される細胞による処置がない場合に生じる免疫応答のレベルと比較して遮断または有意に低減した場合、「抑制」が生じる。「阻害」とは、例えば本明細書に開示される細胞による処置がない場合に生じる免疫応答のレベルと比較して、免疫応答の発生を遮断すること、またはそのような応答を有意に低減させることを指す。予防的に投与される場合、そのような遮断は、標的とされた免疫応答が起こらないように完全であり得、典型的には、発症前に免疫応答を完全に遮断することに関して「予防」と呼ばれ、または本開示では、処置は、通常の未処置状態と比較して効果を低減させることができ、典型的には抑制または阻害と呼ばれる。
【0145】
「治療有効量」という用語は、対象において任意の治療応答を生じるように決定された作用物質(例えば、拡大培養したイヌ前駆細胞)の量を指す。例えば、有効な抗炎症治療薬は、対象の生存性を延長し、かつ/または明白な臨床症候を阻害し得る。本明細書で使用される用語の意味の範囲内で治療上有効な処置は、それ自体疾患転帰を改善しない場合であっても、対象の生活の質を改善する処置を含む。そのような治療有効量は、当業者によって容易に確認される。したがって、「処置する」とは、そのような量を送達することを意味する。場合によっては、処置は、炎症症状(例えば、自己免疫疾患)または筋骨格系障害の任意の病理学的症候を予防または改善することができる。
【0146】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」は、本発明に関して広く使用され、そのような各用語は、とりわけ、欠損、機能不全、疾患、または他の有害なプロセス(治療を妨げるおよび/または治療から生じるものを含む)を予防、改善、阻害、または治癒することを包含する。
【0147】
拡大培養したイヌ前駆細胞の選択および表現型
本発明は、中胚葉の少なくとも2つの細胞型、例えば骨芽細胞、脂肪細胞および軟骨細胞を形成するように分化し得る、成体イヌから単離される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を提供する。これらの細胞はまた、培養における拡張した複製が可能であり、約55回の集団倍加を通じて以下の1つまたはそれを超えるものを示す:約24時間未満の集団倍加速度、正常な核型;および拡張した複製(例えば、テロメラーゼ)および多能性(例えば、oct4)のマーカーを発現する。
【0148】
本明細書に記載されるイヌ前駆細胞は、本発明者らによって単離および拡大され、本発明者らは、細胞を特徴付ける多数の特定の細胞表面マーカーおよび他の表現型マーカーを同定した。以下に記載される方法は、任意の成体イヌ組織、例えば、骨髄、脂肪組織、臍帯血、または胎盤組織からイヌ前駆細胞を単離し、成長させるために使用され得る。したがって、当業者は、イヌから組織を得て、過度の実験を行うことなく、本発明者らによって同定されたように、これらの細胞上に発現される(または発現されない)特定の表面マーカーおよび/または遺伝子マーカーに依拠して、公知の陽性または陰性選択技術を使用して拡大培養したイヌ前駆細胞を選択することが可能である。
【0149】
1.拡大培養したイヌ前駆細胞の表現型
【0150】
一実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を提供する。
【0151】
本発明者らは、本出願のイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)が、培養において約24時間未満の倍加速度を有し、これは、驚くべきことに、他のイヌ前駆細胞、例えば、イヌ間葉系幹細胞(cMSC)よりも遅いことを発見した。したがって、場合によっては、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間、例えば、24時間未満の集団倍加速度を有する。場合によっては、集団倍加速度は、培養において約10~15回の集団倍加、培養において約15~20回の集団倍加、培養において約20~25回の集団倍加、培養において約25~30回の集団倍加、培養において約30~35回の集団倍加、培養において約35~40回の集団倍加、培養において約40~45回の集団倍加、培養において約45~50回の集団倍加、または培養において約50~55回の集団倍加を通じて約24時間未満である。
【0152】
本出願の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、正常な核型を有する。「核型」とは、真核細胞の核内の染色体の数および出現を指す。この用語はまた、種または生物における染色体の完全なセットを示すために使用される。核型は、染色体の数および光学顕微鏡によるそれらの外観を記述する。核型は、長さ、セントロメアの位置、バンディングパターンおよび他の物理的特徴に関して確立される。したがって、染色体に明らかな異数性がない場合、核型は正常であると考えられる。
【0153】
染色体異常は、当該技術分野における標準的な手順、すなわちギムザ(「Gバンディング」)などの適切な色素による染色によって確立される。そのようなバンディングは、染色体をトリプシンで限定消化した後に得られる。これにより、一連の薄く暗い染色バンドが得られ、暗い領域はヘテロクロマチックで、明るい領域はユークロマチックの傾向がある。各染色体は、それを同定するのに役立つ特徴的なバンディングパターンを有する。また、2倍体核内の両方の染色体は、同じバンディングパターンを有するであろう。
【0154】
染色体異常は日常的に検出可能である。それらは、余分なもしくは欠損した染色体などの数的なものと、または転座、逆位、大規模欠失、および重複などの構造的なものであり得る。これらは、Gバンディングなどの様々な日常的なバンディング技術によって検出することができる。時折、染色体のプロセシングに関連する技術的アーチファクトは、(同じ染色体の)2つのホモログ間に明らかな差異を生じ得る。しかしながら、これらのアーチファクトは、例えば、およそ15~20個など、個体から受け入れられた数の中期スプレッドを分析することによって日常的に同定される。分析のレベルを考えると、所与の供試体で同じ技術的アーチファクトが繰り返し発生する可能性は非常に低い。染色体異常についての核型分析の議論については、O’Connor,C.(2008)Karyotyping for chromosomal abnormalities.Nature Education 1(1):27を参照されたい。
【0155】
本出願のイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において約10~15回の集団倍加、培養において約15~20回の集団倍加、培養において約20~25回の集団倍加、培養において約25~30回の集団倍加、培養において約30~35回の集団倍加、培養において約35~40回の集団倍加、培養において約40~45回の集団倍加、培養において約45~50回の集団倍加、または培養において約50~55回の集団倍加を通じて正常な核型を有する。
【0156】
イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において約10~15回の集団倍加、培養において約15~20回の集団倍加、培養において約20~25回の集団倍加、培養において約25~30回の集団倍加、培養において約30~35回の集団倍加、培養において約35~40回の集団倍加、培養において約40~45回の集団倍加、培養において約45~50回の集団倍加、または培養において約50~55回の集団倍加を通じて中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化し得る。本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)が分化し得る中胚葉の胚葉細胞型には、脂肪細胞、骨芽細胞および軟骨細胞が含まれる。別の例では、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において約10~15回の集団倍加、培養において約15~20回の集団倍加、培養において約20~25回の集団倍加、培養において約25~30回の集団倍加、培養において約30~35回の集団倍加、培養において約35~40回の集団倍加、培養において約40~45回の集団倍加、培養において約45~50回の集団倍加、または培養において約50~55回の集団倍加を通じて中胚葉の3つまたはそれを超える細胞型に分化し得る。
【0157】
イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養における拡張した複製によって特徴付けられる。したがって、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、または少なくとも50回もしくはそれを超える集団倍加を受けているか、または受けることができる。一例では、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において50回の集団倍加を受けているか、または受けることができる。
【0158】
拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、細胞表面マーカー、遺伝マーカーおよび機能マーカーなどのある特定の分子マーカーの陽性または陰性発現によって特徴付けられる。これらのマーカーの非限定的な例を以下に開示する。場合によっては、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約50回の集団倍加、例えば、約30~50回の集団倍加、約30~35回の集団倍加、約35~40回の集団倍加、約40~45回の集団倍加または約45~50回の集団倍加を通じてある特定の分子マーカーの陽性または陰性発現によって特徴付けられる。一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約40回または44回の集団倍加を通じてある特定の分子マーカーの陽性または陰性発現によって特徴付けられる。
【0159】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、CD90およびCD29の少なくとも1つについて陽性の表面抗原であり、かつ/またはCD34、CD45およびMHCクラスIIの少なくとも1つについて陰性の表面抗原である。
【0160】
一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、CD90について陽性の表面抗原であり、CD34およびCD45について陰性の表面抗原である。
【0161】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、CD105、IL1R2、nanog、oct4およびsox-2のうちの1つもしくはそれを超えるものの発現について陽性であり、かつ/またはrex-1、CD34、CD45、およびNOVの発現について陰性である。
【0162】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、IL1R2の発現について陽性である。
【0163】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、テロメラーゼ活性について陽性である。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約50回の集団倍加、例えば、約20~50回の集団倍加、約20~25回の集団倍加、約25~30回の集団倍加、約30~35回の集団倍加、約35~40回の集団倍加、約40~45回の集団倍加または約45~50回の集団倍加を通じてテロメラーゼ活性について陽性である。一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約40回または44回の集団倍加を通じてテロメラーゼ活性について陽性である。
【0164】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、oct-4発現について陽性である。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約50回の集団倍加、例えば、約20~50回の集団倍加、約20~25回の集団倍加、約25~30回の集団倍加、約30~35回の集団倍加、約35~40回の集団倍加、約40~45回の集団倍加または約45~50回の集団倍加を通じてoct-4発現について陽性である。一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約40回または44回の集団倍加を通じてoct-4発現について陽性である。
【0165】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化し得る。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約50回の集団倍加、例えば、約20~50回の集団倍加、約20~25回の集団倍加、約25~30回の集団倍加、約30~35回の集団倍加、約35~40回の集団倍加、約40~45回の集団倍加、または約45~50回の集団倍加を通じて中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化する。一例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、約40回または44回の集団倍加を通じて中胚葉の少なくとも2つの細胞型に分化する。
【0166】
別の例では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、インビボおよび/またはインビトロでT細胞拡大を低減または阻害する能力を有する。
【0167】
別の例では、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、インビボおよび/またはインビトロで血管新生を誘導または促進する能力を有する。
【0168】
したがって、当業者は、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の性質、ならびに上で論じたマーカーおよび/または機能マーカーの1つもしくは組み合わせの存在または非存在に基づく細胞の純度を確認できることを理解するであろう。
【0169】
2.イヌ前駆細胞の単離および拡大
【0170】
一実施形態では、本発明のイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、骨髄、胎盤、臍帯および臍帯血、筋肉、脳、肝臓、脊髄、血液、または皮膚を含むがこれらに限定されない複数の組織源から単離することができる。一例では、骨髄穿刺液が、シリンジ(例えば、ジャムシディ針)を使用して成体イヌ対象の大腿骨または脛骨から得られる。例示的な材料では、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は骨髄に由来する。
【0171】
場合によっては、組織源から得られた細胞は、例えば、Histopaque密度遠心分離を使用して分画することができる。単核画分を回収し、総細胞数を決定することができる。次いで、単核画分の細胞を、所望の密度で静的(例えば、タンパク質被覆フラスコ)または非静的培養容器(例えば、撹拌槽バイオリアクター)上または中に接種し、細胞を拡大させるのに十分な条件下で培養培地中で培養することができる。一実施形態では、単核画分の細胞を、CPPTでコーティングしたフラスコにプレーティングする。単核画分の細胞は、約500細胞/cm~約300,000細胞/cmまたはそれを超え、例えば、約100,000細胞/cm~約250,000細胞/cm、約40,000細胞/cm~約100,000細胞/cm、または約2,000細胞/cm~約5,000細胞/cmの密度でプレーティング(例えば、タンパク質被覆フラスコ上で)することができる。別の実施形態では、単核画分の細胞を、所望の密度で中空糸バイオリアクターなどの非静的培養容器に接種し、細胞を拡大させるのに十分な条件下で培養培地中で培養することができる。中空糸バイオリアクターの一例は、Pinxterenらの米国特許出願公開第2012/0308531号A1に記載されており、Quantum(登録商標)細胞拡大システム(Terumo,BCT社、コロラド州レイクウッド)としても市販されている。
【0172】
単核画分の細胞は、血清ならびに細胞増殖および生存に必要な他のサプリメント(例えば、成長因子、アミノ酸、糖、ホルモン、緩衝剤、ビタミンなど)を含有する培養培地中で培養することができる。一例では、単核画分の細胞は、以下の成分を含む培養培地を使用して静的培養容器(例えば、タンパク質被覆フラスコ)内で培養することができる:約20~60%MCDB-201培地(例えば、約40%);約20~60%αMEM培地(例えば、約35~50%);約1~5mMウルトラグルタミン(例えば、約2mM);約5~20%FBS(例えば、約10~18%);約0.5~2×ITS(インスリン-トランスフェリン-セレン)(例えば、約1倍);約0.1~2×LA-BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン(例えば、約0.5倍);約5~150μM L-アスコルビン酸-2-リン酸(例えば、約100μM);約5~20ng/mlヒト/イヌPDGF-BB(例えば、約10ng/ml);約10~75mMデキサメタゾン(例えば、約50nM);約5~20ng/mlイヌEGF(例えば、約10ng/ml);および約0.5~20ng/ml hFGF2(例えば、約1~10ng/ml)。
【0173】
別の実施形態では、単核画分の細胞は、以下の成分を含む培養培地を使用して非静的培養容器(例えば、中空糸バイオリアクター)内で培養することができる:約20~60%MCDB-201培地(例えば、約40%);約20~60%αMEM培地(例えば、約35~50%);約1~5mMウルトラグルタミン(例えば、約2mM);約5~20%FBS(例えば、約10~18%);約0.5~2×ITS(インスリン-トランスフェリン-セレン)(例えば、約1倍);約0.1~2×LA-BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン(例えば、約0.5倍);約5~150μM L-アスコルビン酸-2-リン酸(例えば、約100μM);約5~20ng/mlヒト/イヌPDGF-BB(例えば、約10ng/ml);約10~75mMデキサメタゾン(例えば、約50nM);約5~20ng/mlイヌEGF(例えば、約10ng/ml);約0.5~20ng/ml hFGF2(例えば、約1~10ng/ml);および約0.5~20ng/ml TGFβ1(例えば、約1~10ng/ml)。
【0174】
単核画分の細胞は、細胞を所望のコンフルエントまで拡大させるのに十分な条件下で加湿インキュベータ内でインキュベートすることができる。場合によっては、細胞を約38℃で1~2日間、2~3日間、3~4日間、4~5日間、または5日間またはそれを超える期間インキュベートする。細胞はまた、所望のCO濃度(例えば、約1~2%、約2~3%、約3~4%、約4~5%、または約5%もしくはそれを超える濃度)および所望のO濃度(例えば、約1~10%、例えば、約3~5%)でインキュベートされる。所望のコンフルエントに達したら、細胞を引き上げ継代することができる。場合によっては、100%未満のコンフルエント、例えば、約10~20%、約20~30%、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、または約90~99%のコンフルエントで細胞を引き上げ継代することができる。一例では、50~80%のコンフルエントで細胞を引き上げ継代する。
【0175】
一実施形態では、イヌ前駆細胞を以下のように単離し拡大させる。骨髄穿刺液は、イヌの大腿骨または脛骨から得ることができる。骨髄穿刺液は、ジャムシディ針を使用してシリンジに引き込むことができる。単核画分は、Histopaque密度遠心分離によって単離することができる。総細胞数を決定することができ、次いで、細胞を、培養培地を含むCPPT被覆フラスコに約100,000~250,000細胞/cmの密度でプレーティングする。培養培地は、以下の成分を含むことができる:約40%MCDB-201培地;約35~50%αMEM培地;約2mMウルトラグルタミン;約10~18%FBS;約1×ITS(インスリン-トランスフェリン-セレン);約0.5×LA-BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン);約100μM L-アスコルビン酸-2-リン酸;約10ng/mlヒト/イヌPDGF-BB;約50nMデキサメタゾン;約10ng/mlイヌEGF;約1~10ng/ml hFGF2;および約1~10ng/ml TGFβ1。フラスコは、加湿インキュベータ内で38℃、5%CO、5%Oでインキュベートすることができる。約3~5日後、細胞のクローン拡大が目に見える。クローンが約50~80%のコンフルエントに達したら、細胞を引き上げ継代することができる。
【0176】
次に、細胞をPBSで洗浄し、その後トリプシンを使用してプレートから剥離することができる。トリプシン処理反応は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)をフラスコに加えることによって停止させることができる。次いで、細胞溶液をコニカルチューブに移し、約500×gで約5分間遠心分離することができる。次に、上清を除去し、細胞ペレットをDPBSに再懸濁することができる。細胞数を決定することができ、次いで、細胞を、上記のように培養培地中のCPPT被覆フラスコに約2,000細胞/cmの密度で播種した。細胞を38℃、5%CO、5%Oでインキュベートし、2~3日ごとに継代することができる。
【0177】
一実施形態では、拡大した細胞は、これらの細胞において発現される(もしくは発現されない)または示される分子マーカーおよび/または効能(上で論じた)に依拠する公知の陽性または陰性選択技術の1つまたは組み合わせに供される。したがって、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、1つもしくはそれを超えるマーカー(本明細書に開示されるような)の存在および/または非存在ならびに/または下で論じられる選択技術を使用する効能に基づいて選択され得る。
【0178】
陽性選択技術および陰性選択技術の両方が当業者に利用可能であり、陰性選択目的に適した多数のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体も当該技術分野で利用可能であり(例えば、Leukocyte Typing V,Schlossmanら、Eds.(1995)Oxford University Press)、多数の供給元から市販されている。
【0179】
細胞集団の混合物から哺乳動物細胞を分離するための技術はまた、Schwartzら、米国特許第5,759,793号(磁気分離)、Baschら、1983(イムノアフィニティークロマトグラフィー)およびWysocki and Sato,1978(蛍光活性化細胞選別、FACS)に記載されている。
【0180】
一実施形態では、CD90の少なくとも1つを発現する(陽性である)および/またはCD45およびCD34の少なくとも1つを発現しない(陰性である)拡大培養したイヌ前駆細胞が選択される。場合によっては、FACSを使用して細胞表面抗原の存在または非存在を検出する。以下の実施例に記載されるように、例えば、FACSを使用して、CD90、CD45およびCD34ならびにMHCクラスIIおよびCD29の存在または非存在を検出することができる。
【0181】
別の実施形態では、PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、CD105、IL1R2、nanog、oct4、およびsox-2のうちの1つもしくはそれを超えるものを発現する(陽性である)および/またはrex-1、CD34、CD45、およびNOVの発現を発現しない(陰性である)拡大培養したイヌ前駆細胞が選択される。場合によっては、PCR(例えば、半定量PCR、sqPCR)を使用して遺伝子マーカーの存在または非存在を検出する。以下の実施例に記載されるように、例えば、sqPCRを使用して、PTHLH、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、CD105、IL1R2、nanog、oct4、sox-2、rex-1、CD34、CD45およびNOVの存在または非存在を検出することができる。
【0182】
別の実施形態では、テロメラーゼ活性について陽性である拡大培養したイヌ前駆細胞が選択される。テロメラーゼ活性の検出のためのアッセイは、当該技術分野で公知である。テロメラーゼ活性の任意のアッセイのために、陽性対照および陰性対照が含まれなければならないことが重要である。一例では、以下の実施例に記載されるように、テロメラーゼ活性は、TRAPEze RTテロメラーゼ検出キット(Merck社)などの市販のキットを使用して決定することができる。
【0183】
別の実施形態では、インビボおよび/またはインビトロでT細胞増殖を低減または阻害する能力を有する拡大培養したイヌ前駆細胞が選択される。T細胞増殖を阻害または低減する細胞の能力は、免疫能アッセイを使用して決定することができ、その例は当該技術分野で公知である。細胞がT細胞増殖を低減または阻害する能力を決定するために使用される免疫能アッセイの一例を以下の実施例に提供する。混合リンパ球反応(MLR)などの免疫能アッセイの他の例は、Maziarzらの米国特許出願公開第2006/0263337号A1に開示されている。
【0184】
別の実施形態では、インビボおよび/またはインビトロで血管新生を誘導または促進する能力を有する拡大培養したイヌ前駆細胞が選択される。血管新生を誘導または促進する細胞の能力を決定するためのアッセイは、当該技術分野で公知である。一例では、Wodaらの米国特許出願公開第2014/0242629号A1および以下の実施例に記載されているように、HUVECチューブ形成アッセイを使用して、血管新生を誘導または促進する細胞の能力を決定することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、選択され、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の純度は、約100%(実質的に純粋)である。他の実施形態では、それは95%~100%である。いくつかの実施形態では、それは85%~95%である。更なる実施形態では、パーセンテージは、約10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~95%であり得る。別の実施形態では、純度は、イヌ細胞(すなわち、cMAPC)が、例えば、培養において1~5、5~10、10~20、20~30、30~40、40~50回またはそれを超える細胞倍加を受けた細胞倍加に関して表すことができる。一例では、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、培養において少なくとも40回、好ましくは少なくとも50回の集団倍加を受けている。
【0186】
選択されたイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、上記のように、静的または非静的培養容器中でさらに培養され得る。
【0187】
組成物
一実施形態では、組成物は、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)と第2の成分(例えば、添加剤、ビヒクルまたは担体、例えば培養培地または複数の培養培地)とを含み得る。
【0188】
別の実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を医薬組成物として製剤化することができる。
【0189】
米国特許第7,015,037号は、医薬製剤を教示するために参照により組み込まれる。特定の実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、送達に適合し、適した、すなわち生理学的に適合性の組成物内に存在する。
【0190】
いくつかの実施形態では、対象への投与のための拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の純度は、約100%(実質的に純粋)である。他の実施形態では、それは95%~100%である。いくつかの実施形態では、それは85%~95%である。特に、他の細胞との混和物の場合、パーセンテージは、約10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~95%であり得る。または単離/純度は、イヌ細胞が、例えば、培養において1~5、5~10、10~20回またはそれを超える細胞倍加を受けた細胞倍加に関して表すことができる。
【0191】
所与の用途のための本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を投与するための製剤の選択は、様々な因子に依存するであろう。これらの中で顕著なのは、対象の種、処置される炎症症状または筋骨格系障害の性質、対象におけるその状態および分布、投与される他の療法および作用物質の性質、投与のための最適経路、経路を介した生存性、投与レジメン、ならびに当業者には明らかであろう他の要因であろう。例えば、適切な担体および他の添加剤の選択は、正確な投与経路および特定の剤形の性質に依存するであろう。
【0192】
拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)/培地の水性懸濁液の最終製剤は、典型的には、懸濁液のイオン強度を等張性(すなわち、約0.1~0.2)および生理学的pH(すなわち、pH約6.8~7.5)に調整することを含む。最終製剤はまた、典型的には流体潤滑剤を含有する。
【0193】
いくつかの実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、注射可能な単位投薬形態、例えば溶液、懸濁液またはエマルジョンで製剤化される。細胞の注射に適した医薬製剤は、典型的には滅菌水溶液および分散液である。注射可能な製剤のための担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0194】
当業者は、本発明の方法で投与される組成物中の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)ならびに任意選択の添加剤、ビヒクルおよび/または担体の量を容易に決定することができる。典型的には、任意の添加剤(細胞に加えて)が、リン酸緩衝生理食塩水などの溶液中に0.001~50重量%の量で存在する。有効成分は、マイクログラム~ミリグラムのオーダー、例えば約0.0001~約5重量%、好ましくは約0.0001~約1重量%、最も好ましくは約0.0001~約0.05重量%または約0.001~約20重量%、好ましくは約0.01~約10重量%、最も好ましくは約0.05~約5重量%で存在する。
【0195】
いくつかの実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、特にカプセル化が治療の有効性を高めるか、または取り扱いおよび/もしくは貯蔵寿命に利点を提供する場合、投与のためにカプセル化される。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、移植前に膜およびカプセルによってカプセル化することができる。利用可能な多くの細胞カプセル化の方法のいずれかが使用され得ることが企図される。
【0196】
多種多様な材料が、イヌ細胞のマイクロカプセル化のために様々な実施形態では使用され得る。そのような材料には、例えば、ポリマーカプセル、アルギン酸塩-ポリ-L-リジン-アルギン酸塩マイクロカプセル、ポリ-L-リジンアルギン酸塩バリウムカプセル、アルギン酸バリウムカプセル、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)中空繊維、およびポリエーテルスルホン(PES)中空繊維が含まれる。
【0197】
細胞の投与に使用され得る細胞のマイクロカプセル化のための技術は当業者に公知であり、例えば、Chang,Pら、1999;Matthew,H.W.ら、1991;Yanagi,K.ら、1989;Cai Z.Hら、1988;Chang,T.M.,1992および米国特許第5,639,275号(例えば、生物学的に活性な分子を安定的に発現する細胞の長期維持のための生体適合性カプセルを記載する)に記載されている。カプセル化の更なる方法は、欧州特許出願公開第301,777号および米国特許第4,353,888号;同第4,744,933号;同第4,749,620号;同第4,814,274号;同第5,084,350号;同第5,089,272号;同第5,578,442号;同第5,639,275号;および同第5,676,943号に記載されている。上記のすべては、細胞のカプセル化に関連する部分が参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
ある特定の実施形態は、拡大培養したイヌ細胞(すなわち、cMAPC)をバイオポリマーまたは合成ポリマーなどのポリマーに組み込む。バイオポリマーの例としては、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、トロンビン、コラーゲン、およびプロテオグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。上で論じたサイトカインなどの他の因子もポリマーに組み込むことができる。本発明の他の実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、三次元ゲルの隙間に組み込んでもよい。典型的には、大きなポリマーまたはゲルが外科的に埋め込まれる。十分に小さい粒子または繊維に製剤化することができるポリマーまたはゲルは、他の一般的な、より好都合な、非外科的経路によって投与することができる。
【0199】
拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の投与量は、広い範囲内で変動し、各特定の場合における個々の要件に適合されるであろう。細胞の数は、レシピエントの体重および症状、投与の数または頻度、ならびに当業者に公知の他の変数に応じて変化するであろう。拡大培養したイヌ細胞(すなわち、cMAPC)は、組織または器官に適した経路によって投与することができる。例えば、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、全身投与、すなわち静脈内投与によって投与することができ、または髄腔内投与によって脳もしくは脊髄などの特定の組織もしくは器官を標的とすることができる。
【0200】
本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、約0.01~約5×10細胞/mlまたはそれを超える濃度で適切な賦形剤に懸濁することができる。注射溶液に適した賦形剤は、細胞およびレシピエントと生物学的および生理学的に適合するもの、例えば緩衝生理食塩水または他の適した賦形剤である。投与のための組成物は、適切な無菌性および安定性を満たす標準的な方法に従って製剤化、製造、および貯蔵することができる。
【0201】
投与
イヌ対象の用量は、本開示、本明細書に引用される文献、および当該技術分野の知識から、当業者による過度の実験なしに決定することができる。本発明の様々な実施形態に従って使用するのに適した拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の用量は、多数の因子に依存するであろう。一次療法および補助療法のために投与される最適な用量を決定するパラメーターは、一般に、以下のうちのいくつかまたはすべてを含む:処置される炎症症状または筋骨格系症状およびその段階;対象の健康、性別、年齢、体重、および代謝率;対象の免疫能力;投与される他の療法;および対象の病歴または遺伝子型から予想される潜在的な合併症。パラメーターはまた、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)が同系、自家、同種、または異種のいずれであるかを含み得る;細胞/培地が有効であるために標的とされなければならない部位および/または分布;ならびに細胞/培地へのアクセス性および/または細胞の生着などの部位のそのような特徴。更なるパラメーターには、他の因子(成長因子およびサイトカインなど)との共投与が含まれる。所与の状況における最適な用量はまた、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を製剤化する方法、それらを投与する方法、および拡大培養したイヌ前駆細胞が投与後に標的部位に局在する程度を考慮に入れるであろう。
【0202】
様々な実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を初期用量で投与し、その後、更なる投与によって維持することができる。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、最初に1つの方法によって投与し、その後、同じ方法または1つもしくはそれを超える異なる方法によって投与することができる。レベルは、拡大培養したイヌ細胞(すなわち、cMAPC)の継続的な投与によって維持することができる。様々な実施形態は、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、最初に投与するか、対象におけるそれらのレベルを維持するか、またはその両方を静脈内注射によって投与する。様々な実施形態では、本明細書の他の箇所で論じられる、対象の症状および他の要因に応じて、他の形態の投与が使用される。
【0203】
拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、広範囲の時間にわたって多くの頻度で投与することができる。一般に、処置の長さは、疾患プロセスの長さ、適用される治療の有効性、ならびに処置される対象の症状および応答に比例する。
【0204】
使用
本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を投与することは、本出願に記載される炎症症状または筋骨格系障害の明白な症候のいずれかを低減するのに有用である。これは、異常なT細胞増殖を低減または阻害することによって炎症症状(例えば、自己免疫疾患)を処置すること;血管新生を促進することによって虚血症状(例えば、心筋梗塞)を処置すること;靭帯、腱、骨、筋肉および軟骨などの結合組織に分化させることによって筋骨格系障害(例えば、十字靭帯断裂)を処置することなどの細胞の根底にある効果に基づいてもよい。
【0205】
一例では、本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を投与することによって対象における炎症症状を処置することに関する。いくつかの実施形態では、対象は自己免疫疾患に罹患しており、細胞組成物を使用して自己免疫疾患を処置する。
【0206】
別の例では、本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を投与することによって、対象における筋骨格系障害を処置することに関する。一実施形態では、対象は変形性関節症に罹患しており、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して変形性関節症を処置する。別の実施形態では、対象は十字靭帯断裂に罹患しており、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して十字靭帯断裂を処置する。さらに別の実施形態では、対象は脊髄症状に罹患しており、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して脊髄症状を処置する。
【0207】
別の例では、本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を投与することによって対象における虚血症状を処置することに関する。一実施形態では、対象は、急性心筋梗塞、慢性心不全、末梢血管疾患、脳卒中、慢性完全閉塞、腎虚血および/または急性腎障害に罹患しており、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して、急性心筋梗塞、慢性心不全、末梢血管疾患、脳卒中、慢性完全閉塞、腎虚血および/または急性腎障害を処置する。
【0208】
本明細書に開示される組成物を使用して、上記のような多種多様な炎症症状、虚血症状、および筋骨格系障害を処置、症候を緩和もしくは改善、または抑制する。
【0209】
いくつかの実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を使用して、疾患または損傷の部位(例えば、炎症または虚血の部位)に抑制因子または他の生物学的因子、例えば、サイトカイン、幹細胞成長因子、および血管新生調節因子を含むがこれらに限定されない因子を送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)に、所望の生物学的因子をコードする遺伝子を形質導入することができ、次いで、細胞は、いったん対象内に入ると、例えば炎症または虚血の部位で産生する。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して、例えば、感染の病原性が病原体の細胞変性効果の結果ではなく、むしろ感染因子に対する免疫炎症反応によって引き起こされる組織損傷の結果である感染性疾患を処置することができる。B型もしくはC型肝炎またはHSV誘発角膜炎症などの疾患では、本明細書に開示される拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)による治療は、ウイルス誘発免疫炎症性疾患を制御するための固有の機会を提供する。コクサッキーなどのウイルスは、膵炎を引き起こすことが知られており、1型糖尿病の発症に関連している。したがって、本明細書に開示されるような拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)組成物を使用して、感染によって引き起こされる局所組織損傷を抑制し、自己免疫障害の発症を誘発する炎症を低減することができる。
【0211】
主題の方法は、様々な異なる症状および移植状況の処置に使用される。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を外科的手技の完了までその部位に維持するために、いくつかの実施形態では、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を薬学的に許容され得る担体、例えば人工ゲル中、もしくは凝固血漿中に、または当該技術分野で公知の他の制御放出機序を利用することによって投与することが好都合である。
【0212】
さらに、本発明によって提供される他の使用には、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の能力または効能に影響を及ぼす能力について、1つもしくはそれを超える作用物質または化合物をスクリーニングして、上で論じた効果の1つもしくはそれを超えるもの、例えば、血管新生を提供し、インビトロおよび/またはインビボでT細胞拡大を低減または阻害することが含まれる。そのようなスクリーニング方法は、(i)拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を作用物質または化合物と接触させることと、(ii)細胞が効果を有する能力または効能を評価することとを含む。そのような作用物質には、有機小分子、アンチセンス核酸、siRNA、DNAアプタマー、ペプチド、抗体、非抗体タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、および化学誘引物質が含まれるが、これらに限定されない。次いで、作用物質を使用して、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の能力または効能を増加させて、評価した効果を達成することができる。評価はインビボまたはインビトロであり得る。一例では、HUVEC管形成アッセイを使用して、拡大培養したイヌ前駆細胞(例えば、cMAPC)がインビボおよび/またはインビトロで血管新生を提供する能力を調節する作用物質をスクリーニングする。別の例では、インビトロ増殖アッセイ(例えば、MLR)を使用して、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)がインビトロおよび/またはインビボでT細胞増殖を阻害または低減する能力を調節する作用物質をスクリーニングする。
【0213】
本発明の更なる用途は、臨床投与のための拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を提供するための細胞バンクの確立である。細胞バンクの構築は、本明細書に記載されるようにイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を調製および拡大させ、次いで、対象への将来の投与のために、その集団から拡大させた細胞を貯蔵することによって行われ得る。拡大培養したイヌ細胞(すなわち、cMAPC)をバンクから直接使用するか、または使用前に拡大させることができる。
【0214】
したがって、本発明はまた、これらの細胞を対象に投与する前に行われる診断手順であって、上で論じた効果の1つもしくはそれを超えるものを達成し、かつ/または上で論じた遺伝子型マーカーもしくは表現型マーカーの1つもしくはそれを超えるものを示す細胞の効能または能力を評価することを含む診断手順に関する。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を細胞バンクから取り出し、直接使用するか、または投与前に拡大させてもよい。いずれの場合も、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、1つもしくはそれを超える効果を達成し、かつ/または1つもしくはそれを超える遺伝子型マーカーもしくは表現型マーカーを示す細胞の効能または能力について評価する。
【0215】
有効性について選択された拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)は、選択手順中に必ずアッセイされるが、細胞が依然として所望のレベルで有効であることを確実にするために、処置のために対象に投与する前に細胞を再度アッセイすることが好ましく、賢明であり得る。これは、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、細胞が貯蔵中に凍結される可能性が最も高い細胞バンクなどにおいて、任意の期間にわたって貯蔵した場合に特に好ましい。
【0216】
拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)での処置方法に関して、細胞の最初の単離と対象への投与との間に、この時間枠内に行われる操作後に、細胞が所望のレベルで依然として効果を達成し、かつ/または1つもしくはそれを超える遺伝子型マーカーもしくは表現型マーカーを示し得ることを確実にするための複数の(すなわち、シーケンシャル)アッセイが存在し得る。例えば、アッセイは、イヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)の各拡大後に行われ得る。拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を細胞バンクに貯蔵している場合、貯蔵から解放した後にアッセイすることができる。凍結されている場合、解凍後にアッセイすることができる。細胞バンクから拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)をその後1回またはそれを超える回、拡大させる場合、それらを(各)拡大後にアッセイすることができる。好ましくは、(対象に物理的に投与される)最終細胞産物の一部をアッセイすることができる。
【0217】
別の実施形態では、本発明の拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、適切な包装材料と共にキットで提供することができる。例えば、キットは、以下の別々に包装された成分を含むことができる:拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC);培地または複数の培地培地;および拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を培養するための説明書。場合によっては、拡大培養したイヌ前駆細胞(すなわち、cMAPC)を、本明細書に記載されるように、培養のために別々に包装した適切な因子および培地を伴う凍結ストックとして提供することができる。
【0218】
イヌ前駆細胞の単離および培養のための有効量の適切な因子を含有するキットも本発明によって提供される。例えば、イヌから骨髄穿刺液を得る場合、技術者は、本明細書に記載される方法を使用して、キットに提供される適切な試薬を用いてイヌ前駆細胞を選択し、次いで、キット成分として供給される培養培地を使用して、本発明の方法によって記載されるように細胞を培養するだけでよい。培養培地の組成は本明細書に記載されている。
【0219】
本明細書に引用されるすべての特許および科学文献は、それらの教示について参照により組み込まれる。
【0220】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、本明細書に添付される特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0221】
以下で「イヌ多能性成体前駆細胞(Canine multi-potent adult progenitor cells)」または「cMAPC」と呼ばれる本出願の新規のイヌ前駆細胞を特徴付けるために実験を行った。
【0222】
cMAPC単離
【0223】
骨髄穿刺液を、インフォームドコンセントの下で若齢ドナーイヌの大腿骨または脛骨から得た。骨髄穿刺液をジャムシディ針を使用してシリンジに引き込んだ。単核画分をHistopaque密度遠心分離によって単離した。総細胞数を決定し(NC-200、Chemometec社)、細胞をタンパク質被覆フラスコに100,000~250,000細胞/cmの密度で播種した。培養培地の組成は以下のとおり:40%MCDB-201培地(Sigma社)、35~50%αMEM培地(Lonza社)、2mMウルトラグルタミン(Lonza社)、10~18%FBS(Gibco社)、1×ITS(インスリン-トランスフェリン-セレン、Lonza社)、0.5×LA-BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン、Sigma社)、100μM L-アスコルビン酸-2-リン酸(Sigma社)、10ng/mlヒト/イヌPDGF-BB(Biotechne/KingfisherBiotech社)、50nMデキサメタゾン(Sigma社)、10ng/mlイヌEGF(Sino Biological社)、1~10ng/ml hFGF2(Biotechne社)および1~10ng/ml TGFβ1(Biotechne社)。フラスコを加湿インキュベータ内で38℃、5%CO、5%Oでインキュベートし、3~5日後、cMAPCのクローン拡大が目に見えた。クローンが50~80%のコンフルエントに達したら、細胞を回収し継代した。
【0224】
cMAPC細胞培養
【0225】
細胞をPBSにより洗浄し、その後、1×TrypLE Select(Gibco社)を使用してプレートから剥離した。DPBSをフラスコに添加することによってトリプシン処理反応を停止させた。細胞溶液をコニカルチューブに移し、500×gで5分間遠心分離した。次に、上清を除去し、細胞ペレットをDPBSに再懸濁した。細胞数を測定し、細胞を2,000細胞/cmの密度でタンパク質被覆フラスコに播種した。培養培地の組成は上記のとおりであった。細胞を38℃、5%CO、5%Oでインキュベートし、2~3日ごとに継代した。
【0226】
細胞は継代ごとに計数されるので、集団倍加を示す増殖曲線は、以下の式を使用して生成することができる:PD=PD+Log(C/C)、式中、PDは回収時の集団倍加であり、PDは播種時の初期集団倍加であり、Cは回収時の細胞数であり、Cは播種された初期細胞数である。細胞を老化するまで拡大培養させると、cMAPCは40回の集団倍加を超えることができたが、イヌ間葉系幹細胞(cMSC)は20回の集団倍加で既に老化を開始した(図1)。表1Aおよび1Bは、それぞれcMAPCおよびcMSCについて1回の集団倍加に必要な時間数である倍加速度/時間を継代毎に示している。
【表1A】

【表1B】
【0227】
イヌ間葉系幹細胞(cMSC)単離
【0228】
新鮮な骨髄穿刺液からの単核画分を、Ficoll密度遠心分離を使用して単離した。単離された単核細胞を、組織培養処置プラスチック上に200,000~350,000細胞/cmの密度で播種した。3~5日後、cMSCのクローン性増殖が視認された。クローンが50~80%のコンフルエントに達したら、細胞を回収し継代した。
【0229】
cMSC培養
【0230】
T75組織培養処置フラスコをcMSC増殖のために使用した。フラスコから培地を除去した後、各フラスコを5mlのPBSで洗浄した。次いで、4mlの1×Tryple Selectを各フラスコに添加した。フラスコを室温で2~5分間インキュベートした。細胞がすべて剥離しなかった場合、フラスコを穏やかにタップした。次いで、5mlのDPBSを各フラスコに添加し、その内容物をコニカルチューブに移した。チューブを500×gで5分間遠心分離した。各チューブからの上清を除去後再懸濁し、細胞を計数した。次いで、細胞を、10mlの市販のMSC培地(例えば、Lonza社)中のT75培養フラスコに5,000細胞/cmの密度で播種した。フラスコを38℃、5.5%COおよび20%Oでインキュベートした。
【0231】
フローサイトメトリー
【0232】
cMAPCの免疫表現型解析は、細胞がCD29(Biolegend社)およびCD90(eBioscience社)を発現し、CD45(Serotec社)およびHLAクラスII(eBioscience社)について陰性であることを示す(図2A~D)。アイソタイプコントロールとして、非特異的IgG(Becton Dickinson社またはBio-Rad社)を一次抗体の代わりに使用した。cMAPCをFACS緩衝液(PBS+2% BSA)中で1E+06細胞/mlの濃度に希釈した。各染色に100μlの細胞サンプルを使用した。抗体を添加した後、細胞を氷上および暗所で30分間インキュベートした。次いで、2mlのFACS緩衝液を添加することによって細胞を洗浄し、1000×gで5分間遠心分離した。上清をデカントし、細胞を再懸濁した。細胞をFACS Celesta(Becton Dickinson社)で測定した。
【0233】
PCRによるマーカー解析
【0234】
Total RNAを、HighPure RNA単離キット(Roche社)を説明書に従って使用して100,000~500,000個の細胞から単離する。RNA濃度を、Nanodropを使用して測定し、250ng~500ngのRNAを、Transcriptor First Strand cDNA Synthesisキット(Roche社)を説明書に従って使用してcDNAを合成するための鋳型として使用する。得られたcDNAを5~10倍に希釈する。
【0235】
選択された遺伝子セットの転写に使用したプライマーを以下の表2に示す。
【表2】
【0236】
リボソームタンパク質L8(RPL8)をリファレンス遺伝子として使用した。GeNorm解析により、この遺伝子がすべてのcMAPCおよびcMSCの条件で安定発現をしていることが確認された。RPL8はcDNAの品質を確認するために使用した。
【0237】
CDマーカー遺伝子発現解析のために、5μlの希釈cDNAを採取し、LightCycler 480 SYBRGreen 1キット(Roche社)を説明書に従って使用してqPCR反応を行った。選択した表面マーカーのプライマー配列を表3に示す。
【表3】
【0238】
温度プログラムは、95℃で10秒、60℃で10秒、および72℃で10秒の45サイクルとした。mRNA発現レベルは、Cq(定量サイクル)値に基づく。35未満のCq値を有するマーカーは陽性と判断し、35を超えるマーカーは陰性と判断した。融解曲線分析を行って、プライマー-二量体形成およびアンプリコン特異性を試験した。結果を図3に示すが、赤色点線は検出下限であり、CD34およびCD45は検出不能であり、CD13、CD44、CD49c、CD73、CD90、およびCD105は良好な発現を示した。
【0239】
cMAPCおよびcMSCに特異的なマーカーを半定量的PCRによって解析した。5μlの希釈cDNAを使用して、iTaq DNAポリメラーゼキット(BioRad社)を説明書に従って使用してPCR反応を行った。以下のプログラムを使用した:95℃で2分間の初期変性、続いて28~32サイクルの増幅(95℃で15秒、60℃で15秒、72℃で30秒);および72℃で5分間の最終伸長ステップ。
【0240】
多能性遺伝子の転写は、5μlの希釈cDNAを使用し、以下のプログラムを使用したPCR反応(iTaq DNAポリメラーゼキット(BioRad)社)で解析した:95℃で2分間の初期変性、続いて40~45サイクルの増幅(95℃で15秒、60℃で15秒、72℃で30秒);および72℃で5分間の最終伸長ステップ。cMAPCマーカー、cMSCマーカー、および多能性マーカーの得られたPCR産物を2%アガロースゲル(Invitrogen社)上で分離して、産物の存在および特異性を評価した(NANOG(図4A)、Oct4(図4B)、SOX2(図4C))。ゲルをGelRed Nuclear Acid Gel Stain(Biotium社)を含有する水に浸すことによってバンドを染色した。BioRad Chemidoc XRSを用いてゲルの写真を撮影した。
【0241】
テロメラーゼ活性
【0242】
cMAPCのテロメラーゼ活性を、TRAPeze RTテロメラーゼ検出キット(Merck社)を使用して測定した。簡単に説明すると、1,000,000個の細胞を100μlのCHAPS緩衝液で溶解し、氷上で30分間インキュベートした。サンプルを12,000×gで遠心分離して、細胞断片を除去した。2μlのサンプルを反応溶液に添加した。反応溶液を37℃で90分間インキュベートした。このステップの間に、サンプル中の活性テロメラーゼは、テロメア鋳型の伸長を開始した。その後、サンプルを95℃で5分間インキュベートすることによってテロメラーゼを不活性化した。生成されたテロメアを、リアルタイムqPCRによって最終的に定量した(図5)。cMAPCは、25回を超える集団倍加においても有意なテロメラーゼ活性を示した;一方、cMSCは、23回を超える集団倍加においてテロメラーゼ活性を示さなかった。
【0243】
脂肪生成系列細胞分化
【0244】
細胞を対照培地中に40,000細胞/cmの密度で播種し24時間培養した。脂肪生成対照培地の組成は、DMEM高グルコース(4.5 g/l;Lonza社)、1%L-グルタミン(Lonza社)および3%FBSであった。その後、培地を脂質生成分化培地(1μMデキサメタゾン、0.5μM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX;Sigma社)、2μMウシ膵臓由来インスリン(Sigma社)、33μMビオチン(Sigma社)、17μMパントテネート(Sigma社)、5μMロシグリタゾン(Sigma社)および5%ウサギ血清(Thermo Scientific社)を添加した脂肪生成対照培地)に交換した。培地を週に2回交換し、9日後に細胞を回収した。オイルレッドO(ORO)染色を行って、脂肪滴を可視化した。細胞をクエン酸緩衝アセトン溶液(Sigma社)で30秒間固定し、ORO(Sigma社)で37℃にて10分間染色した。(図6A)。
【0245】
骨形成分化
【0246】
細胞を、対照培地(DMEM高グルコース、1%L-グルタミンおよび5%FBS)に40,000細胞/cmの密度で播種し24時間培養した。その後、培地を、50μM L-アスコルビン酸-2P、50nMデキサメタゾンおよび10mM β-グリセロリン酸(Sigma社)を添加した骨形成対照培地からなる骨形成分化培地に交換した。培地を週に2回交換し、アルカリホスファターゼ(ALP)染色のために7日後に細胞を回収した。染色のために、クエン酸緩衝アセトン溶液(Sigma社)を使用して細胞を固定し、遮光し、37℃で10分間、アルカリ性色素混合物(Sigma社)で染色した(図6B)。
【0247】
軟骨形成分化
【0248】
総容量1mlの軟骨形成対照または分化培地の入った15mlコニカルチューブに細胞を300,000個の細胞の密度で播種し、350×gで5分間遠心分離した。軟骨形成対照培地の組成は、10%FBSを含むDMEM高グルコースであった。軟骨形成基礎培地の組成は、DMEM高グルコース、0.625×ITS、100nMデキサメタゾン、125μM L-アスコルビン酸-2P、2mM L-グルタミン、1.25×LA-BSA、400μg/mlプロリン(Sigma社)および1mg/mlピルビン酸ナトリウム(Sigma社)であった。以下の軟骨形成誘導物質をこの培地に添加した:10ng/ml トランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)および骨形成タンパク質2(BMP2;Biotechne社)。培地を3~4日ごとに交換し、24日後にアルシアンブルー染色のためにペレットを採取した。凍結組織ブロックをペレットから調製した。5μmの凍結切片を作製し、ガラススライドに貼り付けた。スライドを最初に0.5%アルシアンブルー溶液(Sigma社)で30分間染色し、続いてNuclear Fast Red(Vector Labs社)染色を5分間行った(図6C)。
【0249】
免疫能アッセイ
【0250】
免疫能アッセイを96ウェル丸底プレートで行った。おいて、cMAPCを1:2~1:16の範囲の段階希釈で播種した各ウェルに100,000個のイヌPBMC(末梢単核球血球)を添加した。cPBMCを0.5μg/ml ConA(コンカバリンA;Sigma社)で刺激し、アッセイを4日後に解析した。簡単に説明すると、プレートを室温で5分間、1000×gで遠心分離した。上清を吸引し、細胞をDPBS-FACS緩衝液に再懸濁し、その後プレートを再び遠心分離した(1000×g、5分、室温)。DPBS-FACS緩衝液を除去し、CD3/IgG2b抗体(Abcam社)の混合物を添加した。混合物を暗所で4℃にて30分間インキュベートした。次に、プレートを遠心分離し(1000×g、5分、室温)、抗体混合物を除去し、細胞をDPBS-FACS緩衝液で洗浄した。プレートを遠心分離し、上清を除去し、GAM(ヤギ抗マウス)-APC抗体と7-ADD(7-アミノアクチノマイシンD;Becton Dickinson社)との混合物を添加した。混合物を暗所で4℃にて15分間インキュベートした。細胞をDBPS-FACS緩衝液で洗浄し、遠心分離し(1000×g、5分、室温)、DBPS-FACS緩衝液に再懸濁し、FACS Celesta(Becton Dickinson社)を使用してプレートを測定した。図7に示すように、cMAPCは、T細胞増殖を実質的に阻害または低減することができた。
【0251】
管腔形成(血管新生能)
【0252】
簡単に記載すると、55,000個のヒト臍静脈内皮細胞(hUVEC)を、マトリゲル(Corning社)で被覆した24ウェルプレートに播種した。cMAPCの馴化培地を添加し、約18時間後に各ウェルの写真を撮影した。形成されたチューブの数を各ウェルについて計数した。条件間の統計解析を、一元配置ANOVAを用いて行った。cMAPCからの馴化培地は、管腔形成を誘導することができた(図8)。
【0253】
細胞遺伝学的解析
【0254】
G-Bandingによる細胞遺伝学的解析のために細胞を調製した。簡単に記載すると、cMAPCにコルセミド処置を行うため、デメコルシン(0.1μg/ml;Sigma社)およびエチジウムブロミド(10μg/ml;Sigma社)を培地に添加し、続いて37℃で1時間のインキュベーションステップを行った。。その後、低張処置のため培地に低張液(Rainbow Scientific社)を添加し、37℃で40分間インキュベートした。次に、細胞を回収し、15mlコニカルチューブに移した。上清10ml当たり固定液(メタノール:酢酸;3:1)500μlを添加することによって細胞を固定した。溶液を500×gで10分間遠心分離し、その後に上清を除去し、細胞ペレットをほぐし、氷冷メタノール:酢酸固定液を15mlまで添加した。細胞を固定液中で穏やかに良く混合した。この固定ステップを3回繰り返した。1mlの細胞懸濁液(上清の除去後)を微小遠心管に移し、次いで、固定液で満たし、外部実験室でGバンディング法による核型解析を行った(図9)。
【0255】
マイクロアレイ
【0256】
RNAを凍結細胞ペレットから抽出し、各サンプルの品質管理および対応するRNAの定量をAgilent BioAnalyzerで行った。RNAをAffymetrix Canine Genome 2.0アレイ(Affymetrix社)で行った、RMA正規化および異なる条件間の発現差異解析には、OligoおよびLimmaパッケージ(Bioconductor社)を用いたR言語を使用した。発現差異は、ベイズ調整分母によるmoderated t統計量を用いて計算した。樹状図(図10A)およびPCA(主成分分析)プロット(図10B)を使用して、cMAPCおよびcMSCが2つの別個のクラスターを形成し、全遺伝子発現に基づいて2つの異なる細胞集団とみなすことができることを示した。
【0257】
マイクロアレイから同定されたcMAPCおよびcMSC特異的マーカーを確認するための別のマイクロアレイ実験では、3つの異なるドナー由来のcMAPC(M)およびcMSC(S)からRNAを抽出した。RNAをcDNAに変換した。cDNAを使用して、遺伝子IL1R2(図11A)およびNOV(図11B)についてPCRを行った。マーカー遺伝子のプライマー配列を表4に示す。
【表4】
【0258】
次いで、PCR産物を2%アガロースゲルにロードして、遺伝子の発現を可視化した。cMAPCは遺伝子IL1R2の発現を示すが、この発現はcMSCには認められないと確認できた。NOVの発現は、cMAPCでは確認されず、cMSCで確認された。リボソームタンパク質L8(RPL8)(図11C)をリファレンス遺伝子として使用した。GeNorm解析では、この遺伝子がMAPCおよびMSCのすべての条件で安定発現していることが確認された。RPL8のゲル染色では、すべての条件について等量のcDNAがゲルにロードされたことが確認された。
図1
図2A-B】
図2C-D】
図3
図4A-C】
図5
図6A-C】
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A-C】
【国際調査報告】