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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】組織切開拡張器及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3209 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B17/3209
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526871
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022049134
(87)【国際公開番号】W WO2023081465
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/277,002
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】ドクター、リアム
(72)【発明者】
【氏名】シャーウッド、ジョシュア ディ.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF01
4C160FF05
4C160MM22
(57)【要約】
組織切開拡張器は、細長い拡張器本体(102)と、拡張器先端部(104)と、格納式の複数の刃(122,124)と、キャップ(108)とを含む。拡張器本体は、拡張器本体の遠位部分に沿って複数の長手方向ガイドスロットを含む。拡張器先端部は、拡張器本体の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体の遠位端に連結されている。拡張器先端部は、複数の刃スロットを含む。刃は、拡張器本体内に配置される。刃は、挿入部位への挿入時に挿入部位の周囲の組織を切開するために、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において刃スロットを通って延びるように構成されている。キャップは、拡張器本体の上に摺動可能に配置される。キャップは、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において拡張器先端部を覆う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織切開拡張器であって、
細長い拡張器本体であって、拡張器本体の遠位部分に沿って複数の長手方向ガイドスロットを含む、拡張器本体と、
拡張器本体の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体の遠位端に連結され、複数の刃スロットを含む、拡張器先端部と、
拡張器本体内に配置され、挿入部位への挿入時に挿入部位の周囲の組織を切開するために、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において刃スロットを通って延びるように構成されている、格納式の複数の刃と、
拡張器本体の上に摺動可能に配置され、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において拡張器先端部を覆う、キャップと
を備える、組織切開拡張器。
【請求項2】
請求項1に記載の組織切開拡張器において、
ガイドスロットは、拡張器先端部内の溝として終端し、
溝は、拡張器先端部による組織拡張のためのガイドスロットによって提供される以上の補強構造を拡張器先端部に提供する、組織切開拡張器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃の遠位端は、拡張器の遠位端又はその拡張器先端部の遠位端の手前にあり、それにより、少なくとも拡張器先端部の遠位端が、挿入部位の周囲の組織を切開する前に挿入部位に係合することが可能になる、組織切開拡張器。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の織切開拡張器において、
前記複数の刃は、拡張器先端部の近位にある拡張器本体内に摺動可能に配置された捕捉プレートに連結された2つの交差刃を含む、組織切開拡張器。
【請求項5】
請求項4に記載の織切開拡張器において、
交差する2つの刃は、直交する4つの刃のエッジを提供し、
前記4つの刃のエッジのそれぞれは、そのすぐ隣の刃のエッジに直交する、組織切開拡張器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の織切開拡張器において、
捕捉プレートは、拡張器の拡張準備完了状態において遠位先端部の近位にある、組織切開拡張器。
【請求項7】
請求項4~6のうちいずれか一項に記載の織切開拡張器において、
キャップは、拡張器の中心軸線に向かって突出する複数のキャップ突出部を含み、
前記キャップ突出部は、キャップを拡張器本体の上で拡張器先端部を通り過ぎて近位方向に摺動させるときに、キャップ突出部がガイドスロット内で摺動して捕捉プレートに係合するように、キャップの少なくとも遠位部分に配置され、それにより、挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく拡張器を用いて拡張を行うために、前記複数の刃を拡張器本体内に後退させる、組織切開拡張器。
【請求項8】
請求項7に記載の織切開拡張器において、
キャップは、拡張器先端部が挿入部位に挿入されるときに、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって拡張器本体の上を近位方向に摺動するように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の織切開拡張器において、
捕捉プレートは、キャップの遠位部分のキャップ突出部に係合するように構成された複数のノッチを含み、
捕捉プレート内のノッチは、前記複数の刃と直角をなす、組織切開拡張器。
【請求項10】
請求項7~9のうちいずれか一項に記載の織切開拡張器において、
キャップ突出部は、更に、キャップの近位部分に配置され、
キャップの近位部分のキャップ突出部は、ガイドスロット内で摺動し、キャップの近位部分とその下の拡張器本体との間のいかなる遊びもなくすように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項11】
請求項4~10のうちいずれか一項に記載の織切開拡張器において、
捕捉プレートは、捕捉プレートと統合された、又は捕捉プレートの近位端に連結されたスタビライザを含み、
スタビライザは、拡張器本体の内壁に摺動可能に係合しかつ拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和するように構成された分割脚部を含み、
それにより、前記複数の刃が拡張器本体内で適切に位置合わせされた状態に保たれて、刃の詰まりが回避される、組織切開拡張器。
【請求項12】
請求項4~10のうちいずれか一項に記載の織切開拡張器は、更に、
捕捉プレートの近位端と、拡張器本体内の捕捉プレート用のシートとの間に配置される圧縮ばねを備え、
圧縮ばねは、拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和するように構成され、それにより、前記複数の刃が拡張器本体内で適切に位置合わせされた状態に保たれて、刃の詰まりが回避される、組織切開拡張器。
【請求項13】
請求項12に記載の織切開拡張器において、
前記圧縮ばねは、更に、拡張器が部分的に重力ベクトルに沿って向けられているか否かにかかわらず、刃スロットを通って延びる前記複数の刃を拡張器の拡張準備完了状態に保つように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項14】
織切開拡張器であって、
細長い拡張器本体と、
拡張器本体の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体の遠位端に連結されている、拡張器先端部と、
回転可能な一対の刃であって、前記一対の刃のそれぞれは、その弧に沿って刃のエッジを有する幾何学的ディスクセクター
【化1】

の近似形状を有し、拡張器が挿入部位に挿入されると、前記複数の刃が挿入部位の両側の組織を切開するように拡張器の反対側に配置される、一対の刃と
を備える、組織切開拡張器。
【請求項15】
請求項14に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃は、拡張器の遠位端又はその拡張器先端部の遠位端の手前にあり、それにより、挿入部位の周囲の組織を切開する前に、拡張器先端部の少なくとも遠位端が挿入部位に係合することを可能にする、組織切開拡張器。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃のそれぞれは、リーディングエッジが刃のエッジと交わる刃のリーディング角部から延びる一次組織捕捉部を含み、
一次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、刃を拡張器本体から回転させて出し、拡張器が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を切開するように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項17】
請求項16に記載の組織切開拡張器において、
一次組織捕捉部のみが、拡張器の拡張準備完了状態において拡張器のそれぞれの側面から延びる、組織切開拡張器。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃のそれぞれは、刃のエッジの中央部に二次組織捕捉部を含み、
二次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を更に捕捉し、刃を拡張器本体から更に回転させて出し、拡張器が挿入部位に更に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開するように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項19】
請求項16~18のうちいずれか一項に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃のそれぞれは、トレーリングエッジが刃のエッジと交わる刃のトレーリング角部から延びている三次組織捕捉部を含み、
三次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、拡張器が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく刃を拡張器本体内に回転させて入れるように構成されている、組織切開拡張器。
【請求項20】
請求項16~19のうちいずれか一項に記載の組織切開拡張器において、
前記複数の刃のそれぞれは、支持フレームの一対のピンホールのうちの1つのピンホールに配置された一対のピンのうちの1つのピン上に回転可能に取り付けられ、
フレームは、任意選択で、前記複数の刃を含む拡張器の側面間で分割される、組織切開拡張器。
【請求項21】
請求項20に記載の組織切開拡張器において、
前記一対のピンのそれぞれは、拡張器本体と拡張器先端部との間の接合部に配置される、組織切開拡張器。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の組織切開拡張器において、
フレームは、長手方向の対称面に沿って拡張器の中央に配置される、組織切開拡張器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織切開拡張器及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを患者の血管内に留置する前に、拡張器を用いてその周囲の組織を拡張するために、挿入部位においてニードル路の周囲の患者の皮膚に切れ目を入れることが一般的である。典型的には、患者の皮膚に切れ目を入れることと、ニードル路の周囲の組織を拡張することとは別々に行われる。実際、切れ目を入れることは、通常、専用の皮膚ニッカー又はNo.11の刃を有するメスを用いて行われる。拡張することは、通常、留置されるカテーテルよりも2フレンチサイズ大きい拡張器を用いて行われる。患者の皮膚に切れ目を入れることと、ニードル路の周囲の組織を拡張することとを統合しようとする試みが、臨床医が刃を制御できないことに起因して一般的に安全でないとみなされるばね仕掛けの刃をもたらした。必要とされているのは、挿入部位において患者の皮膚に切れ目を入れることと、挿入部位においてニードル路の周囲の組織を拡張することとを安全に統合する組織切開拡張器である。このような拡張器は、例えば、挿入部位にカテーテルを留置するときに、処置時間及びエラーを減少させる。
【0003】
本明細書で開示されるのは、前述に対処する組織切開拡張器及びその方法である。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、細長い拡張器本体と、拡張器先端部と、格納式の複数の刃と、キャップとを含む組織切開拡張器が本明細書で開示される。拡張器本体は、拡張器本体の遠位部分に沿って複数の長手方向ガイドスロットを含む。拡張器先端部は、拡張器本体の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体の遠位端に連結されている。拡張器先端部は、複数の刃スロットを含む。刃は、拡張器本体内に配置される。刃は、挿入部位への挿入時に挿入部位の周囲の組織を切開するために、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において刃スロットを通って延びるように構成されている。キャップは、拡張器本体の上に摺動可能に配置される。キャップは、拡張器の少なくとも拡張準備完了状態において拡張器先端部を覆う。
【0005】
いくつかの実施形態では、ガイドスロットは、拡張器先端部内の溝として終端する。溝は、拡張器先端部による組織拡張のためのガイドスロットによって提供される以上の補強構造を拡張器先端部に提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、刃の遠位端は、拡張器の遠位端又はその拡張器先端部の遠位端の手前にある。刃の遠位端を拡張器の遠位端の手前又はその拡張器先端部の遠位端の手前に有することにより、少なくとも拡張器先端部の遠位端が、挿入部位の周囲の組織を切開する前に挿入部位に係合することが可能になる。
【0007】
いくつかの実施形態では、刃は、拡張器先端部の近位にある拡張器本体内に摺動可能に配置された捕捉プレートに連結された2つの交差刃を含む。
いくつかの実施形態では、2つの交差刃は、4つの直交する刃のエッジを提供する。前述の刃のエッジの各刃のエッジは、そのすぐ隣の刃のエッジに直交する。
【0008】
いくつかの実施形態では、捕捉プレートは、拡張器の拡張準備完了状態において遠位先端部の近位にある。
いくつかの実施形態では、キャップは、拡張器の中心軸線に向かって突出する複数のキャップ突出部を含む。キャップ突出部は、キャップを拡張器本体の上で拡張器先端部を通り過ぎて近位方向に摺動させるときに、キャップ突出部がガイドスロット内で摺動して捕捉プレートに係合するように、キャップの少なくとも遠位部分に配置される。キャップを拡張器本体の上で拡張器先端部を通り過ぎて近位方向に摺動させるときに捕捉プレートを係合させることにより、挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく拡張器を用いてその後の拡張を行うために、刃を拡張器本体内に後退させる。
【0009】
いくつかの実施形態では、キャップは、拡張器先端部が挿入部位に挿入されるときに、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって拡張器本体の上を近位方向に摺動するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、捕捉プレートは、キャップの遠位部分のキャップ突出部に係合するように構成された複数のノッチを含む。捕捉プレート内のノッチは、刃と直角をなす。
【0011】
いくつかの実施形態では、キャップ突出部は、更に、キャップの近位部分に配置される。キャップの近位部分のキャップ突出部は、ガイドスロット内で摺動し、キャップの近位部分とその下の拡張器本体との間のいかなる遊びもなくすように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、捕捉プレートは、捕捉プレートと統合された、又は捕捉プレートの近位端に連結されたスタビライザを含む。スタビライザは、拡張器本体の内壁に摺動可能に係合し、拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和するように構成された分割脚部を含む。拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和することにより、刃が拡張器本体内で適切に位置合わせされた状態に保たれ、それによって刃の詰まりが回避される。
【0013】
いくつかの実施形態では、拡張器は、圧縮ばねを更に含む。圧縮ばねは、捕捉プレートの近位端と、拡張器本体内の捕捉プレート用のシートとの間にある。圧縮ばねは、拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和するように構成されている。拡張器本体内での捕捉プレートの傾斜を緩和することにより、刃が拡張器本体内で適切に位置合わせされた状態に保たれ、それによって刃の詰まりが回避される。
【0014】
いくつかの実施形態では、圧縮ばねは、拡張器が部分的に重力ベクトルに沿って向けられているか否かにかかわらず、刃スロットを通って延びる刃を拡張器の拡張準備完了状態に保つように更に構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、細長い拡張器本体と、拡張器先端部と、一対の回転可能な刃とを含む別の組織切開拡張器も本明細書に開示される。拡張器先端部は、拡張器本体の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体の遠位端に連結されている。一対の刃のそれぞれは、その弧に沿って刃のエッジを有する幾何学的ディスクセクター
【0016】
【化1】
【0017】
の近似形状を有する。一対の刃のそれぞれは、拡張器が挿入部位に挿入されると、刃が挿入部位の両側の組織を切開するように、拡張器の反対側に配置される。
いくつかの実施形態では、刃は、拡張器の遠位端又はその拡張器先端部の遠位端の手前にある。拡張器の遠位端の手前又はその拡張器先端部の遠位端の手前に刃を有することは、挿入部位の周囲の組織を切開する前に、拡張器先端部の少なくとも遠位端が挿入部位に係合することを可能にする。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の刃のそれぞれは、リーディングエッジが刃のエッジと交わる刃のリーディング角部から延びる一次組織捕捉部を含む。一次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、刃を拡張器本体から回転させて出し、拡張器が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を切開するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、一次組織捕捉部のみが、拡張器の拡張準備完了状態において拡張器のそれぞれの側面から延びる。
いくつかの実施形態では、複数の刃のそれぞれは、刃のエッジの中央部に二次組織捕捉部を含む。二次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を更に捕捉し、刃を拡張器本体から更に回転させ、拡張器が挿入部位に更に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の刃のそれぞれは、トレーリングエッジが刃のエッジと交わる刃のトレーリング角部から延びている三次組織捕捉部を含む。三次組織捕捉部は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、拡張器が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく刃を拡張器本体内に回転させて入れるように構成されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の刃のそれぞれは、支持フレームの一対のピンホールのうちの1つのピンホールに配置された一対のピンのうちの1つのピン上に回転可能に取り付けられる。フレームは、任意選択で、刃を含む拡張器の側面間で分割される。
【0022】
いくつかの実施形態では、一対のピンのそれぞれ又はピンは、拡張器本体と拡張器先端部との間の接合部に配置される。
いくつかの実施形態では、フレームは、長手方向対称面に沿って拡張器の中央に配置される。
【0023】
いくつかの実施形態では、拡張器挿入ステップと、組織切開ステップと、動作停止ステップとを含む、組織切開拡張器の方法も、本明細書に開示される。拡張器挿入ステップは、拡張器の拡張器先端部を挿入部位に挿入することを含む。拡張器挿入ステップは、挿入部位の周囲の組織の拡張を開始する。組織切開ステップは、拡張器先端部を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を複数の刃で切開することを含む。刃は、拡張器の遠位端の手前又はその拡張器先端部の遠位端の手前で拡張器内に配置される。動作停止ステップは、拡張器先端部を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を刃で切開することを停止することを含む。刃は、拡張器先端部を挿入部位に更に一層挿入する間に、拡張器内に後退するか、又は回転して入る。
【0024】
いくつかの実施形態では、拡張器のキャップは、拡張器挿入ステップ中に拡張器先端部を挿入部位に挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって、拡張器の上を近位方向に摺動するように作られている。拡張器の上でキャップを近位方向に摺動させることにより、挿入部位の周囲の組織を切開するための刃が露出される。
【0025】
いくつかの実施形態では、刃は、拡張器の拡張器本体内に摺動可能に配置された捕捉プレートに連結された2つの交差刃を含む。捕捉プレートは、拡張器先端部の近位にある拡張器本体内に配置される。
【0026】
いくつかの実施形態では、2つの交差刃は、4つの直交する刃のエッジを提供する。前述の刃のエッジの各刃のエッジは、そのすぐ隣の刃のエッジに直交する。
いくつかの実施形態では、キャップは、組織切開ステップ中に拡張器先端部を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって、拡張器の上を近位に摺動するように更に作られている。拡張器の上でキャップを更に近位方向に摺動させることにより、挿入部位の周囲の組織を切開するための刃が露出されたままになる。
【0027】
いくつかの実施形態では、キャップは、動作停止ステップ中に拡張器先端部を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚の相互作用によって、拡張器の上を近位方向に摺動するように更に一層作られている。キャップを拡張器の上で更に一層近位方向に摺動させることにより、拡張器のガイドスロットを通って延びているキャップのキャップ突出部を捕捉プレートに係合させ、挿入部位の周囲の組織を刃で切開することを停止するために刃を拡張器内に後退させる。
【0028】
いくつかの実施形態では、刃の対応するリーディング角部における刃の一次組織捕捉部は、拡張器挿入ステップ中に、拡張器先端部を挿入部位に挿入する間に、拡張器の側面から延び、挿入部位の周囲の皮膚を捕捉する。拡張器先端部を挿入部位に挿入する間に挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、挿入部位の周囲の組織を切開するために、刃を拡張器から回転させて出す。
【0029】
いくつかの実施形態では、刃の中央部における刃の二次組織捕捉部は、組織切開ステップ中に拡張器先端部を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を捕捉する。拡張器先端部を挿入部位に更に挿入する間に挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、挿入部位の周囲の組織を切開するために、刃を拡張器から回転させ続ける。
【0030】
いくつかの実施形態では、刃の対応するトレーリング角部における刃の三次組織捕捉部は、動作停止ステップ中に拡張器先端部を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を捕捉する。拡張器先端部を挿入部位に更に一層挿入する間に挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、挿入部位の周囲の組織を刃で切開することを停止するために、刃を拡張器内に回転させて入れる。
【0031】
本明細書で提供される構想の、これらの特徴及び他の特徴は、そのような構想の特定の実施形態をより詳細に説明する、添付図面及び以下の説明を考慮することで、当業者にとってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】いくつかの実施形態による、拡張器先端部の上にキャップを伴い、それによって、キャップが拡張器先端部の刃スロットを通って延びる後退可能な刃を覆う、拡張準備完了状態にある第1の組織切開拡張器を示す。
図2】いくつかの実施形態による、拡張器本体の近位部分の上にキャップを伴い、それによって、キャップが拡張器先端部の刃スロットを通って延びる刃を露出させる、比較的初期の拡張状態にある第1の拡張器を示す。
図3】いくつかの実施形態による、拡張器本体の中間部分の上にキャップを伴い、刃が拡張器本体内に後退している、比較的後期の拡張状態にある第1の拡張器を示す。
図4】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の拡張準備完了状態にある第1の拡張器の遠位端の端面図を示す。
図5】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の拡張準備完了状態にある第1の拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図6】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の比較的初期の拡張状態にある第1の拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図7】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の比較的後期の拡張状態にある第1の拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図8】いくつかの実施形態による、第1の拡張器のキャップの詳細図を示す。
図9】いくつかの実施形態による、第1の拡張器のキャップの長手方向断面を示す。
図10】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の比較的後期の拡張状態にある、キャップを伴わない第1の拡張器の少なくとも遠位部分の詳細図を示す。
図11】いくつかの実施形態による、第1の刃キャリッジを含み、第1の拡張器の比較的後期の拡張状態にあり、キャップを伴わない第1の拡張器の少なくとも遠位部分の長手方向断面を示す。
図12】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の第1の刃キャリッジを示す。
図13】いくつかの実施形態による、第1の刃キャリッジの分解図を示す。
図14】いくつかの実施形態による、第2の刃キャリッジを含み、第1の拡張器の比較的後期の拡張状態にあり、キャップを伴わない第1の拡張器の少なくとも遠位部分の長手方向断面を示す。
図15】いくつかの実施形態による、第1の拡張器の第2の刃キャリッジを示す。
図16】いくつかの実施形態による、第2の刃キャリッジの分解図を示す。
図17】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、一対の回転可能な刃の近位方向を向いている一次組織捕捉部を伴う、拡張準備完了状態にある第2の組織切開拡張器を示す。
図18】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、刃の近位方向を向いている一次組織捕捉部を伴う、拡張準備完了状態にある第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図19】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、刃の近位方向を向いている二次組織捕捉部を伴う、比較的初期から中期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器を示す。
図20】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、刃の近位方向を向いている二次組織捕捉部を伴う、比較的初期から中期の拡張状態における第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図21】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、刃の近位方向を向いている三次組織捕捉部を伴う、中期の張状態にある第2の組織切開拡張器を示す。
図22】いくつかの実施形態による、拡張器の側面から延びている、刃の近位方向を向いている三次組織捕捉部を伴う、中期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図23】いくつかの実施形態による、刃の三次組織捕捉部が拡張器の側面の中に回転して戻る、比較的中期から後期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器を示す。
図24】いくつかの実施形態による、刃の三次組織捕捉部が拡張器の側面の中に回転して戻る、比較的中期から後期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図25】いくつかの実施形態による、刃が拡張器の側面の中に回転して戻った、比較的後期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器を示す。
図26】いくつかの実施形態による、刃が拡張器の側面の中に回転して戻った、比較的後期の拡張状態にある第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細図を示す。
図27】いくつかの実施形態による、第2の組織切開拡張器の分解図を示す。
図28】いくつかの実施形態による、第2の組織切開拡張器の遠位部分の詳細分解図を示す。
図29】いくつかの実施形態による、一対の刃のうちの一つの刃の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択で、本明細書に開示される他の多数の実施形態のいずれかの特徴と組み合わせるか、又は置換することができる特徴を有することが可能であることも理解されたい。
【0034】
本明細書で使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、用語は、本明細書で提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3、等)は、一般に、複数の特徴又は複数のステップの群内の異なる特徴又はステップを区別又は識別するために使用され、連続的な限定又は数値限定を提供するものではない。例えば、「第1」、「第2」、及び「第3」の特徴又はステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴又はステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴又はステップに限定される必要はない。加えて、前述のいずれの特徴又はステップも、別段に示さない限り、1つ以上の特徴又はステップを更に含むことができる。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等の表示は、便宜上使用されており、例えば、特定の固定位置、向き、又は方向を意味するものではない。代わりに、そのような表示は、例えば、相対的な位置、向き、又は方向を反映するために使用される。単数形の「一」、「1つ」、及び「その」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の参照も含む。
【0035】
「近位」に関して、例えば拡張器の、「近位部分」又は「近位セクション」は、拡張器が患者に使用されるときに臨床医の近くにあることが意図される拡張器の一部分又はセクションを含む。同様に、例えば拡張器の、「近位長さ」は、拡張器が患者に使用されるときに臨床医の近くにあることが意図される拡張器の長さを含む。例えば拡張器の、「近位端」は、拡張器が患者に使用されるときに臨床医の近くにあることが意図される拡張器の端を含む。拡張器の近位部分、近位セクション、又は近位長さは、拡張器の近位端を含むことができる。しかし、拡張器の近位部分、近位セクション、又は近位長さは、拡張器の近位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別様に示唆しない限り、拡張器の近位部分、近位セクション、又は近位長さは、拡張器の末端部分又は末端長さではない。
【0036】
「遠位」に関して、例えば拡張器の、「遠位部分」又は「遠位セクション」は、拡張器が患者に使用されるときに患者の近く又は患者内にあることが意図される拡張器の一部分又はセクションを含む。同様に、例えば拡張器の、「遠位長さ」は、拡張器が患者に使用されるときに患者の近く又は患者内にあることが意図される拡張器の長さを含む。例えば拡張器の、「遠位端」は、拡張器が患者に使用されるときに患者の近く又は患者内にあることが意図される拡張器の端を含む。拡張器の遠位部分、遠位セクション、又は遠位長さは、拡張器の遠位端を含むことができる。しかし、拡張器の遠位部分、遠位セクション、又は遠位長さは、拡張器の遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別様に示唆しない限り、拡張器の遠位部分、遠位セクション、又は遠位長さは、拡張器の末端部分又は末端長さではない。
【0037】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
上述したように、カテーテルを患者の血管内に留置する前に、拡張器を用いてその周囲の組織を拡張するために、挿入部位においてニードル路の周囲の患者の皮膚に切れ目を入れることが一般的である。典型的には、患者の皮膚に切れ目を入れることと、ニードル路の周囲の組織を拡張することとは別々に行われる。実際、切れ目を入れることは、通常、専用の皮膚ニッカー又はNo.11の刃を有するメスを用いて行われる。拡張することは、通常、留置されるカテーテルよりも2フレンチサイズ大きい拡張器を用いて行われる。患者の皮膚に切れ目を入れることと、ニードル路の周囲の組織を拡張することとを統合しようとした結果、臨床医が刃を制御できないことに起因して、安全でないと一般的にみなされるばね仕掛けの刃をもたらした。必要とされているのは、挿入部位において患者の皮膚に切れ目を入れることと、挿入部位においてニードル路の周囲の組織を拡張することとを安全に統合する組織切開拡張器である。このような拡張器は、例えば、挿入部位にカテーテルを留置するときに、処置時間及びエラーを減少させる。
【0038】
本明細書で開示されるのは、前述に対処する組織切開拡張器及びその方法である。
拡張器
図1図17は、いくつかの実施形態による第1の組織切開拡張器100を示す。
【0039】
示されるように、拡張器100は、細長い拡張器本体102と、拡張器先端部104と、刃キャリッジ106と、キャップ108とを含む。
拡張器本体102は、拡張器本体102の遠位部分に沿って複数の長手方向のガイドスロット110を含む。ガイドスロット110は、拡張器先端部104の開放端溝112で遠位方向に終端し、溝112は、拡張器先端部104による組織拡張のためのガイドスロット110によって提供される以上の補強構造(例えば、接続又は架橋部分)を拡張器先端部104に提供する。ガイドスロット110及び溝112は、拡張器本体102の上でキャップ108を近位方向に摺動させるために、キャップ突出部134をその中に受け容れるように構成されている。特に、ガイドスロット110のうちの1つ以上は、ガイドスロット毎に少なくとも1対までのガイドスロット捕捉部114を含むことができる。このような捕捉部は、そのキャップ突出部が拡張器100の拡張準備完了状態においてはガイドスロット捕捉部114の近位にある、キャップ108の近位部分のキャップ突出部134が通過するのを捕捉部によって阻止することによって、拡張器100の拡張準備完了状態において、キャップ108が拡張器先端部104の上を遠位方向に摺動するのを制限するように構成されている。このような捕捉部はまた、拡張器100の後期の拡張状態においてはガイドスロット捕捉部114の近位にある、キャップ108の遠位部分のキャップ突出部134が、捕捉部によって通過することを阻止することによって、拡張器100の後期の拡張状態において、キャップ108が拡張器本体102の上を遠位方向に摺動して戻ることを制限するように構成されている。加えて、ガイドスロット110は、例えば、拡張器本体102の中間部分の、末端部116で近位方向に終端する。このような末端部は、キャップ108の近位部分又は遠位部分のいずれかのキャップ突出部134が末端部によって通過することを阻止することによって、キャップ108が拡張器本体102の上を近位に過度に摺動することを制限するように構成されている。
【0040】
拡張器先端部104は、拡張器本体102の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体102の遠位端に連結されている。拡張器先端部104は、ガイドスロットを通って刃122を伸ばすように構成された、ガイドスロット110と直角をなす複数の刃スロット118を含む。特に、刃スロット118の遠位端は、拡張器100の遠位端又はその拡張器先端部104の遠位端の手前にある。刃スロット118の遠位端を拡張器100の遠位端の手前又はその拡張器先端部104の遠位端の手前に有することにより、刃122で挿入部位の周囲の組織を切開する前に、少なくとも拡張器先端部104の遠位端が挿入部位に係合することが可能になる。
【0041】
刃キャリッジ106は、その捕捉プレート120が拡張器100の拡張準備完了状態において拡張器先端部104の近位にあるように、拡張器本体102に摺動可能に配置される。刃キャリッジ106は、捕捉プレート120に連結された複数の後退可能な刃122を含み、刃122は、キャップ108が拡張器本体102の上を近位方向に摺動されるときに、キャップ108によって刃キャリッジ106を近位方向に摺動させることに応じて後退可能である。
【0042】
刃122は、挿入部位への挿入時に挿入部位の周囲の組織を切開するために、拡張器100の少なくとも拡張準備完了状態において刃スロット118を通って延びるように構成されている。しかしながら、刃122の遠位端は、拡張器100の遠位端又はその拡張器先端部104の遠位端の手前にある。刃122の遠位端を拡張器100の遠位端の手前又はその拡張器先端部104の遠位端の手前に有することにより、刃122で挿入部位の周囲の組織を切開する前に、少なくとも拡張器先端部104の遠位端が挿入部位に係合することが可能になる。
【0043】
刃122は、捕捉プレート120に連結された2つの交差刃を含むことができる。しかしながら、より少ない又はより多い刃122が、同じか又は異なる作用に対して、交差して又は交差せずに使用され得るので、刃122は、2つの交差する刃に限定されない。とは言うものの、2つの交差する刃は、4つの直交する刃のエッジ124を提供し、刃のエッジ124の各刃のエッジは、そのすぐ隣の刃のエッジ124に直交する。有利なことに、刃122は、2つの直交する平面に沿って「X」型切開で組織を切開し、2つの直交する平面に沿った個々の切開は、上述したような既存の方法において必要とされる切開よりも比較的短い。組織のそのような「X」型切開は、組織のいわゆる開口応答性を最大化し、組織内のより少ない張力、したがって、より低い挿入力をもたらし、それによって、組織への損傷を低減させる。
【0044】
捕捉プレート120は、1つ以上のスロット又は凹部126を含むことができ、その中に、刃122の近位端が中間嵌め型又は締まり嵌め型はめ合いで配置される。前述のはめ合いに加えて、又はそれらの代替として、刃122の近位端は、捕捉プレート120の1つ以上のスロット又は凹部126に接合され得る。
【0045】
捕捉プレート120は、キャップ108の遠位部分のキャップ突出部134に係合するように構成された複数の遠位方向に開いたノッチ128を含むことができる。実際、キャップ108を拡張器本体102の上で拡張器先端部104を通り過ぎて近位方向に摺動させるとき、キャップ突出部134に係合するノッチ128は、拡張器本体102内で刃キャリッジ106を近位方向に摺動させ、それによって、挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく、拡張器100を用いて挿入部位をその後拡張するために、刃122を拡張器本体102内に後退させる。ノッチ128は、キャップ突出部134に応じて数を変えることができるが、図12は、4つの直角をなすノッチを示しており、ノッチ128の各ノッチは、そのすぐ隣のノッチ128と直角をなしている。しかしながら、捕捉プレート120のノッチ128は、刃のエッジ124、刃122の近位端、又は捕捉プレート120における1つ以上のスロット若しくは凹部126と45°で等角に交互に配置され、刃のエッジ124とキャップ突出部134との間に最大の円周方向クリアランスを提供する。
【0046】
捕捉プレート120は、捕捉プレート120と統合された、又は捕捉プレート120の近位端に連結されたスタビライザ130を含むことができる。スタビライザ130は、拡張器本体102の内壁に摺動可能に係合するように構成された分割脚部132を含む。ガイドスロット110の終端部116があるにもかかわらず、スタビライザ130の分割脚部132は、例えば、拡張器本体102の内壁から突出する1つ以上の内壁突出部と組み合わせて、刃キャリッジ106が拡張器本体102内で近位方向に過度に摺動することを停止させるために、拡張器本体102の近位部分に停止機構を形成するように構成されている。有利には、スタビライザ130、1つ以上の内壁突出部、及びガイドスロット捕捉部114が拡張器100内に存在するとき、刃キャリッジ106は、拡張器100を使用して拡張する間に刃キャリッジ106がその位置に近位方向に摺動されるとき、ガイドスロット110内のガイドスロット捕捉部114の近位にあるキャップ突出部134、捕捉プレート120のノッチ128に配置されたキャップ突出部134、及び1つ以上の内壁突出部の遠位にあるスタビライザ130の分割脚部132の組合せによって、拡張器本体102の近位位置内にロックされ得る。このようにして、前述の特徴は、拡張器100のような各拡張器の単回使用を実施する統合された単回使用実施機構を提供する。特に、スタビライザ130は、拡張器本体102内での捕捉プレート120の傾斜を緩和することができる。拡張器本体102内での捕捉プレート120の傾斜を緩和することは、刃122を拡張器本体102内で適切に位置合わせされた状態に保ち、それによって、刃キャリッジ106が拡張器本体102内で近位方向に摺動されるときに、例えば、拡張器本体102の内壁又は刃スロット118に隣接する拡張器先端部104の内壁に対する刃の詰まりを回避する。
【0047】
キャップ108は、拡張器本体102の上に摺動可能に配置される。キャップ108は、拡張器先端部104を覆い、拡張器100の少なくとも拡張準備完了状態において、拡張器先端部104の刃スロット118を通って延びる刃122に対する安全装置を提供する。注目すべきことに、キャップ108は、拡張器先端部104が挿入部位においてニードル路に挿入される際に、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって拡張器本体102の上を近位方向に摺動するように構成されている。実際に、拡張器先端部104がニードル路に前進させられる際に、挿入部位の周囲の皮膚は、拡張器本体102の上を近位方向に摺動するように、キャップ108を押す。
【0048】
キャップ108は、拡張器100の中心軸線に向かって突出する複数のキャップ突出部134を含む。キャップ突出部134は、キャップ108を拡張器本体102の上で拡張器先端部104を通り過ぎて近位方向に摺動させるとき、キャップ突出部134がガイドスロット110内で摺動し、捕捉プレート120のノッチ128に係合するように、キャップ108の少なくとも遠位部分に配置される。キャップ108を拡張器本体102の上で拡張器先端部104を通り過ぎて近位方向に摺動させるとき、捕捉プレート120のノッチ128に係合しているキャップ突出部134は、拡張器本体102内で刃キャリッジ106を近位方向に摺動させ、それによって、挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく、拡張器100を用いて挿入部位をその後拡張するために、刃122を拡張器本体102内に後退させる。特に、キャップ突出部134又は突出環は、キャップ108の近位部分に更に配置することができる。キャップ108の近位部分のキャップ突出部134は、ガイドスロット110内で摺動し、キャップ108の近位部分とその下の拡張器本体102との間のいかなる遊びもなくすように構成され得る。とは言うものの、キャップ突出部134又はキャップ108の近位部分の突出環は、ガイドスロット110の外側で拡張器本体102の上を摺動し、同様に、キャップ108の近位部分とその下の拡張器本体102との間のいかなる遊びもなくすように構成され得る。
【0049】
図示されていないが、拡張器100は、圧縮ばねを更に含むことができる。存在する場合、圧縮ばねは、捕捉プレート120の近位端と、上述した1つ以上の内壁のシートのような拡張器本体102内の圧縮ばね用のシートとの間にあってもよく、任意選択的にそれらに連結されていてもよい。存在する場合、圧縮ばねは、拡張器100が部分的に重力ベクトルに沿って向けられているか否かにかかわらず、拡張器先端部104の刃スロット118を通って延びる刃キャリッジ106の刃122を拡張器100の拡張準備完了状態に保つ。スタビライザ130と同様に、圧縮ばねはまた、拡張器本体102内での捕捉プレート120の傾斜を緩和することができる。上述したように、拡張器本体102内での捕捉プレート120の傾きを軽減することにより、刃122が拡張器本体102内で適切に位置合わせされた状態に保たれ、それによって刃の詰まりが回避される。
【0050】
図8図29は、いくつかの実施形態による第2の組織切開拡張器200を示す。
示されるように、拡張器200は、細長い拡張器本体202と、拡張器先端部204と、支持フレーム236と、一対の回転可能な刃238とを含む。
【0051】
拡張器先端部204は、拡張器本体202の遠位部分に形成されているか、又は拡張器本体202の遠位端に連結されている。いずれにしても、拡張器200は、拡張器200の拡張準備完了状態において刃238を拡張器200から回転させて出し、拡張器200の中期の拡張状態から拡張器200の比較的後期の拡張状態へと拡張器200内に回転させて戻すように構成された、拡張器先端部204と拡張器本体202との間の拡張器200の側面に一対の刃スロット240を含む。特に、刃スロット240の遠位端は、拡張器200の遠位端の手前又はその拡張器先端部204の遠位端の手前にある。刃スロット240の遠位端を拡張器200の遠位端の手前又はその拡張器先端部204の遠位端の手前に有することにより、刃238で挿入部位の周囲の組織を切開する前に、少なくとも拡張器先端部204の遠位端が挿入部位に係合することが可能になる。
【0052】
フレーム236は、拡張器先端部204と拡張器本体202との間の拡張器200の中央に配置されており、刃238を支持して、拡張器200の拡張準備完了状態において刃238が拡張器200から回転させて出し、拡張器200の中期の拡張状態から拡張器200の比較的後期の拡張状態へと拡張器200の中に回転させて戻す。フレーム236は、任意選択的に、単一部品、フレーム236及び刃238を含む拡張器200の第1の長手方向の対称面の両側にあるように画定された拡張器200の上半分と下半分との間で分割された2つの部品、又は拡張器200の上半分と下半分との間で分割され、かつ第1の長手方向の対称面に直交する拡張器200の第2の長手方向の対称面の両側にあるように画定された拡張器200の左側及び右側との間で分割された4つの部品である。いずれにしても、フレーム236は、拡張器先端部204と拡張器本体202との間の移行部又は接合部にあるが、拡張器200の左側と右側との間に対称的に配置されている、一対のピンホール242を含む。一対のピン244のうちの1つのピンがピンホール242の各ピンホールに配置されており、刃238の各刃が前述のピン244のうちの1つ上に回転可能に取り付けられている。
【0053】
刃238が回転可能に取り付けられるピン244があるにもかかわらず、フレーム236は、拡張器先端部204と拡張器本体202との間の移行部又は接合部にピンホール242の近位にある一対の刃ロックピン246を含む。刃ロックピン246は、拡張器200の比較的後期の拡張状態において、刃238が刃ロックピン246の上にそれぞれの刃ロック穴260を回転させるときに、刃238の刃ロック穴260に挿入するように構成されている。有利には、刃ロックピン246と刃ロック穴260との両方は、拡張器200の比較的後期の拡張状態において、刃238を拡張器本体202内にロックするように協働して機能し、それによって、拡張器200を挿入部位の中に挿入し続ける場合であっても、挿入部位の周囲の組織を切開することを停止する。このようにして、前述の特徴は、拡張器200のような各拡張器の単回使用を実施する統合された単回使用実施機構を提供する。
【0054】
刃238の各刃は、刃238が挿入部位への拡張器200の挿入時に挿入部位の両側の組織を切開するように、拡張器200の反対側(例えば、左側面又は右側面)に配置される。しかしながら、刃238は、拡張器200の遠位端の手前又はその拡張器先端部204の遠位端の手前にある。刃238を拡張器200の遠位端の手前又はその拡張器先端部204の遠位端の手前に有することにより、少なくとも拡張器先端部204の遠位端が、挿入部位の周囲の組織を切開する前に挿入部位に係合することが可能になる。
【0055】
刃238の各刃は、リーディングエッジ248のリーディング半径又はトレーリングエッジ250のトレーリング半径などの半径、並びに前述の半径又はエッジ248と250との間の弧に沿った刃のエッジ252を有する幾何学的ディスクセクター
【0056】
【化2】
【0057】
の近似形状を有する。刃238の各刃は、リーディングエッジ248が刃のエッジ252と交わる刃のリーディング角部から延びる一次組織捕捉部254(例えば、フック)を含む。一次組織捕捉部254は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、その対応する刃を拡張器本体202から回転させて出し、拡張器200が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を切開するように構成されている。注目すべきことに、拡張器200の拡張準備完了状態では、一次組織捕捉部254のみが拡張器200のそれぞれの側面から延びている。刃238の各刃はまた、刃のエッジ252の中央部に二次組織捕捉部256(例えば、フックであるが、一次組織捕捉部254のフックよりも目立たない)を含む。二次組織捕捉部256は、挿入部位の周囲の組織を更に捕捉し、拡張器本体202からその対応する刃を更に回転させて出し、拡張器200が挿入部位に更に挿入されるときに挿入部位の周囲の組織を更に切開するように構成されている。刃238の各刃はまた、トレーリングエッジ250が刃のエッジ252と交わる刃のトレーリング角部を含む三次組織捕捉部258を含む。三次組織捕捉部258は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、拡張器200が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく、対応する刃を拡張器本体202内に回転させて入れるように構成されている。
【0058】
刃238はまた、刃ロック穴260を有し、刃238の各刃は、そのトレーリングエッジ250に沿って刃ロック穴を有する。そのような刃ロック穴は、拡張器200の比較的後期の拡張状態において対応する刃が刃ロックピン上で回転されるときに、刃ロックピン246の刃ロックピンの挿入を受け容れるように構成されている。有利には、刃ロック穴260と刃ロックピン246との両方は、拡張器200の比較的後期の拡張状態において、拡張器本体202内のそれらの対応する刃238をロックするように協働して機能し、それによって、たとえ拡張器200を挿入部位に挿入し続ける場合であっても、挿入部位の周囲の組織を切開することを停止する。このようにして、前述の特徴は、拡張器100のような各拡張器の単回使用を実施する統合された単回使用実施機構を提供する。
【0059】
図17図26は、拡張器200の拡張準備完了状態から拡張器200の比較的後期の拡張状態までの様々な状態にある拡張器200を示しており、これは、様々な組織捕捉部(すなわち、一次組織捕捉部254、二次組織捕捉部256、及び三次組織捕捉部258)を含む刃238の特徴が、拡張器200を用いて挿入部位のニードル路を拡張するときにどのように機能するかを示している。実際、図17及び図18は、刃238の各刃の一次組織捕捉部254が近位方向を向いており、拡張器200の側面(例えば、左側面及び右側面)から延びている、拡張器200の拡張準備完了状態にある拡張器200を示す。また、一次組織捕捉部254は、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、刃238を拡張器本体202から回転させて出し、拡張器200が挿入部位に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を切開するように構成されている。
【0060】
図19及び図20は、いくつかの実施形態による、刃238の各刃の二次組織捕捉部256が近位方向を向いており、拡張器200の側面から延びている、拡張器200の比較的初期から中期の拡張状態にある拡張器200を示す。また、二次組織捕捉部256は、挿入部位の周囲の組織を更に捕捉し、刃238を拡張器本体202から更に回転させて出し、拡張器200が挿入部位に更に挿入される際に挿入部位の周囲の組織を更に切開するように構成されている。図21及び図22は、いくつかの実施形態による、刃238の各刃の三次組織捕捉部258が拡張器200の側面に近位方向を向いてそこから延びている、拡張器200の中期の拡張状態にある拡張器200を示す。また、三次組織捕捉部258は、拡張器200が挿入部位に挿入される際に、挿入部位の周囲の組織を捕捉し、挿入部位の周囲の組織を更に切開することなく刃238を拡張器本体202内に回転させて入れるように構成されている。
【0061】
図23及び図24は、いくつかの実施形態による、刃238の各刃の三次組織捕捉部258が拡張器200の側面の中に回転して戻る、拡張器200の比較的中期から後期の拡張状態にある拡張器200を示す。最後に、図25及び図26は、いくつかの実施形態による、刃238が拡張器200の側面の中に回転して戻った、拡張器200の比較的後期の拡張状態にある拡張器200を示す。特に、刃238の各刃は、拡張器200の拡張準備完了状態から拡張器200の比較的後期の拡張状態まで約330°回転する。
【0062】
方法
方法は、拡張器100又は200を使用する方法を含む。例えば、拡張器100又は200を使用する方法は、拡張器挿入ステップ、組織切開ステップ、及び動作停止ステップから選択される1つ以上のステップを含む。
【0063】
拡張器挿入ステップは、ニードル路が導入針で確立された後に、拡張器先端部104又は204の少なくとも遠位端を挿入部位のニードル路(例えば、皮膚の領域から血管内腔までのニードル路)に挿入することを含む。拡張器挿入ステップは、挿入部位の周囲の組織の拡張を開始する。
【0064】
組織切開ステップは、拡張器先端部104又は204を挿入部位に更に挿入する間に、刃122又は238を用いて挿入部位の周囲の組織を切開することを含む。上述したように、刃122又は238は、組織切開ステップにおいて刃122又は238で挿入部位の周囲の組織を切開する前に、拡張器挿入ステップにおいて拡張器チップ104又は204の少なくとも遠位端が挿入部位に係合することができるように、拡張器先端部104又は204の遠位端の手前で拡張器100又は200に配置される。
【0065】
動作停止ステップは、拡張器先端部104又は204を挿入部位に更に一層挿入する間に、刃122又は238を用いて挿入部位の周囲の組織を切開することを停止することを含む。拡張器100が使用されるとき、刃122は、拡張器先端部104を挿入部位に更に一層挿入する間に、拡張器100内に後退する。しかし、拡張器200が使用される場合、刃238は、拡張器先端部204を挿入部位に更に一層挿入する間に、拡張器200内に回転して入る。
【0066】
前述のステップにおけるその説明のために拡張器100を参照すると、拡張器100のキャップ108は、拡張器挿入ステップ中に拡張器先端部104を挿入部位に挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって拡張器100の上を近位方向に摺動するように作られている。拡張器100の上でキャップ108を近位方向に摺動させることにより、挿入部位の周囲の組織を切開するための刃122が露出される。キャップ108は、組織切開ステップ中に拡張器先端部104を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚との相互作用によって、拡張器100の上を近位方向に摺動するように更に作られている。キャップ108を拡張器100の上で更に近位方向に摺動させることにより、挿入部位の周囲の組織の切開のために、刃122を露出された状態に保つ。キャップ108は、動作停止ステップ中に拡張器先端部104を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚の相互作用によって、拡張器100の上を近位方向に摺動するように更に一層作られている。キャップ108を拡張器100の上で更に一層近位方向に摺動させることにより、拡張器100のガイドスロット110を通って延びているキャップ突出部134を捕捉プレート120に係合させ、挿入部位の周囲の組織を刃122で切開することを停止するために刃122を拡張器100内に後退させる。
【0067】
前述のステップにおけるその説明のために拡張器200を参照すると、刃238の対応するリーディング角部における刃238の各刃の一次組織捕捉部254は、拡張器挿入ステップ中に拡張器先端部204を挿入部位に挿入する間に、拡張器200の側面から延び、挿入部位の周囲の皮膚を捕捉する。挿入部位の周囲の組織を切開するために、拡張器先端部204を挿入部位に挿入する間に挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、刃238を拡張器200から回転させる。刃238の中央部における刃238の各刃の二次組織捕捉部256は、組織切開ステップ中に拡張器先端部204を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を捕捉する。拡張器先端部204を挿入部位に更に挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、挿入部位の周囲の組織を切開するために、刃238を拡張器200から回転させ続ける。刃238の対応するトレーリング角部における刃238の各刃の三次組織捕捉部258は、動作停止ステップ中に拡張器先端部204を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の組織を捕捉する。拡張器先端部204を挿入部位に更に一層挿入する間に、挿入部位の周囲の皮膚を捕捉することにより、刃238を用いて挿入部位の周囲の組織を切開することを停止するために、刃238を拡張器200内に回転させて入れる。
【0068】
いくつかの特定の実施形態が本明細書で開示されており、それら特定の実施形態が、ある程度詳細に開示されているが、それら特定の実施形態が、本明細書で提供される概念の範囲を限定することは意図されていない。さらなる適合又は修正が、当業者には明らかとなる可能性があり、より広範な態様においては、これらの適合又は修正も同様に包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態からの展開を実施することができる。
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【国際調査報告】