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特表2024-537533貯蔵された水素冷凍源を使った水素液化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】貯蔵された水素冷凍源を使った水素液化
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20241003BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20241003BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25J3/08
F25J3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526928
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 US2022049084
(87)【国際公開番号】W WO2023081439
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,888
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518414306
【氏名又は名称】チャート・エナジー・アンド・ケミカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】シュウォーツ,ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA02
4D047AB07
4D047BB03
4D047BB07
4D047CA03
4D047CA06
4D047CA11
4D047CA16
4D047CA17
4D047DA01
4D047EA00
(57)【要約】
水素ガス供給流を液化するシステムおよび方法は、貯蔵源からの高圧水素流を使用して、システムでの冷凍を実現する。システムでの冷凍を実現した後、高圧貯蔵源からの水素は、システムのコールドボックス供給流の圧力以上の圧力であり、コールドボックス供給流は、水素ガス供給流および少なくとも1つの再循環流を含み、システムを通って再循環されるのではなくシステムから出る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス供給流を液化するシステムであって、前記システムが、
a.コールドボックス供給流の圧力を有するコールドボックス供給流を受け取るように構成されたコールドボックス供給ラインであって、前記コールドボックス供給流が、少なくとも前記水素ガス供給流を含む、コールドボックス供給ラインと、
b.前記コールドボックス供給ラインと流体連通する液化機冷却流路を備え、液化機の流れを受け取って冷却するように構成され、これにより生成物流が形成される、熱交換器システムと、
c.前記液化機冷却流路の出口と流体連通し、前記生成物流を受け取るように構成され、これにより膨張された生成物流が形成される、生成物膨張デバイスと、
d.第1の冷媒冷却流路であって、冷媒供給流を受け取るように構成され、これにより冷却された冷媒供給流が形成される、第1の冷媒冷却流路を備える、前記熱交換器システムと、
e.前記熱交換器システムの前記第1の冷媒冷却流路と流体連通し、これにより第1の膨張された冷媒流が形成される、第1の冷媒膨張デバイスと、
f.第1の冷媒加温流路であって、前記第1の冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、これにより前記熱交換器システムで冷却が行われる、第1の冷媒加温流路を備える、前記熱交換器システムと、
g.第1の水素高圧冷媒冷却流路であって、高圧水素補助冷媒供給流を受け取って冷却するように構成され、これにより冷却された水素補助冷媒流が形成される、第1の水素高圧冷媒冷却流路を備え、前記熱交換器システムと、
h.前記第1の水素高圧冷凍冷却流路と流体連通する入口を有し、これにより前記コールドボックス供給流の圧力以上の圧力を有する、膨張された水素補助冷媒流が生成される、補助冷媒膨張デバイスと、
i.高圧水素冷媒加温流路であって、前記補助冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、前記膨張された水素補助冷媒流を受け取るように構成され、これにより前記熱交換器システムで冷却が行われ、前記コールドボックス供給流の圧力よりも高い圧力の高圧水素生成物流が形成される、高圧水素冷媒加温流路を備える、前記熱交換器システムと、
を備える、
システム。
【請求項2】
前記熱交換器システムが、供給流冷却流路であって、前記コールドボックス供給ラインと流体連通し、前記コールドボックス供給流を受け取って冷却するように構成され、これにより第1の吸着器供給流が形成される、供給流冷却流路をさらに備え、前記システムが、第1の吸着器であって、前記第1の吸着器供給流を受け取るように構成され、これにより液化機供給流が形成される、第1の吸着器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱交換器システムが、前記供給流冷却流路を備える第1の熱交換器と、前記液化機冷却流路を備える第2の熱交換器とを具備し、前記第1の熱交換器および前記第2の熱交換器がそれぞれ、個別の独立した熱交換器デバイスである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コールドボックス供給ラインと流体連通し、前記流体流を液化機供給流と冷媒流とに分配するように構成された、分割部をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記生成物膨張デバイスが、混相である膨張された生成物流を形成するように構成され、
前記システムが、
j.生成物分離機蒸気出口および生成物分離機液体出口を有する生成物分離機であって、前記生成物分離機が、前記生成物膨張デバイスから前記混相の生成物流を受け取り、前記生成物分離機液体出口を通って前記生成物分離機から出る、液体水素生成物流と、前記生成物分離機蒸気出口を通って前記生成物分離機から出る、水素蒸気流とを生成するように構成される、生成物分離機と、
k.第1の生成物分離機蒸気再循環流路であって、前記生成物分離機蒸気出口と流体連通し、これにより前記熱交換器システムで冷却が行われ、第1の再循環流が形成される、第1の生成物分離機蒸気再循環流路を備える、前記熱交換器システムと、
l.前記第1の再循環流を受け取るように構成された入口を有し、これにより圧縮された第1の再循環流が形成される、第1の再循環圧縮機と、
をさらに備え、
前記コールドボックス供給流が、少なくとも前記圧縮された第1の再循環流と前記水素ガス供給流とを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記熱交換器システムが、
i)前記液化機冷却流路および前記生成物膨張デバイスと流体連通する、第2の液化機冷却流路と、
ii)前記第1の冷媒冷却流路および前記第1の冷媒膨張デバイスと流体連通する、第2の冷媒冷却流路と、
iii)第2の冷媒加温流路と、
をさらに備え、
前記システムが、
m.前記第1の冷媒冷却流路から出る前記冷却された冷媒流の第1の部分を受け取るように構成され、これにより第2の膨張された冷媒流が形成される、第2の冷媒膨張デバイスと、
n.前記冷却された冷媒流の第2の部分を受け取って冷却するように構成される、前記第2の冷媒冷却流路と、
o.前記第2の冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、これにより前記熱交換器システムで冷却が行われる、前記第2の冷媒加温流路と、
p.前記第2の冷媒加温流路、および前記第1の再循環圧縮機の出口と流体連通する入口を有し、これにより圧縮された第2の再循環流が形成される、第2の再循環圧縮機であって、前記第2の再循環圧縮機が、前記コールドボックス供給ラインと流体連通する出口を有し、前記第2の再循環圧縮機の前記入口または前記出口が、前記水素ガス供給流を受け取るように構成され、これにより前記第2の再循環圧縮機が、前記水素ガス供給流を受け取るか、または前記コールドボックス供給流が、前記水素ガス供給流を含む、第2の再循環圧縮機と、
をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の冷媒膨張デバイスがタービンである。請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
より高温の水素膨張機であって、前記第1の冷媒冷却流路を出る、冷却された冷媒流の一部を受け取るように構成され、これにより、水素膨張機冷媒の膨張された流れが形成され、前記熱交換器システムの前記第1の生成物分離機蒸気再循環流路、前記第2の冷媒加温流路、または前記第1の生成物分離機蒸気再循環流路と前記第2の冷媒加温流路との両方へ送られる、より高温の水素膨張機をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の冷媒膨張デバイスは、前記膨張された冷媒流が混相となるように構成され、前記システムが、前記膨張された冷媒流を受け取って、蒸気冷媒流と液体冷媒流とに分離するように構成された、冷媒分離機をさらに備え、前記冷媒分離機が、冷媒分離機蒸気出口と冷媒分離機液体出口とを有し、前記冷媒分離機蒸気出口が、前記第1の圧縮機入口と流体連通している、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱交換器システムが、
i)前記液化機冷却流路および前記生成物膨張デバイスと流体連通する、生成物液化機冷却流路と、
ii)前記生成物分離機の前記生成物分離機蒸気出口から前記水素蒸気流を受け取って加温するように構成された、生成物蒸気加温流路と、
をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
前記熱交換器システムが、前記冷媒分離機から液体流を受け取って加温し、これにより混相の水素冷媒流が形成され、前記混相の水素冷媒流を前記冷媒分離機に戻すように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の液化機冷却流路および前記生成物液化機冷却流路がそれぞれ、オルト-パラ転換触媒を収容するか、または1つもしくは複数の触媒反応器と流体連通している、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記熱交換器システムが、前記生成物液化機冷却流路および前記生成物蒸気加温流路を備える、生成物熱交換器を具備する、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記熱交換器システムが、前記コールドボックス供給流を受け取って冷却するように構成された、第1の熱交換器と、前記液化機冷却流路および前記冷媒冷却流路を備える、第2の熱交換器とを具備し、前記第1の熱交換器、前記第2の熱交換器、および前記生成物熱交換器がそれぞれ、個別の独立した熱交換器デバイスである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記冷却された水素補助冷凍流を受け取るように構成された、第2の吸着器をさらに備え、前記熱交換器システムが、前記第2の吸着器の出口および前記補助冷媒膨張デバイスの前記入口と流体連通している、第2の水素高圧冷凍冷却流路を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記補助冷媒膨張デバイスがタービンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記生成物膨張デバイスおよび前記冷媒膨張デバイスのそれぞれが、ジュールトムソン弁である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記熱交換器システムの前記液化機冷却流路が、オルト-パラ転換触媒を収容するか、または1つもしくは複数の触媒反応器と流体連通している、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記熱交換器システムが、非水素補助冷媒を受け取るように構成された、第1の補助冷媒流路を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記コールドボックス供給流の圧力が、約1.38~4.14MPa(200~600psig)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記コールドボックス供給流の圧力が、約1.72~2.76MPa(250~400psig)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記冷媒加温流路と流体連通する入口、および前記冷媒冷却流路と流体連通する出口を有する、第1の閉ループ圧縮機と、前記冷媒冷却流路と流体連通する入口、および前記冷媒加温流路と流体連通する出口を有する、閉ループ膨張デバイスとをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記冷媒が、ヘリウムまたはネオンを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記熱交換器システムが、
i)前記液化機冷却流路および前記生成物膨張デバイスと流体連通する、第2の液化機冷却流路と、
ii)前記冷媒冷却流路および前記第1の冷媒膨張デバイスと流体連通する、第2の冷媒冷却流路と、
iii)第2の冷媒加温流路と、
をさらに備え、
前記システムが、
j.前記冷媒冷却流路から出る前記冷却された冷媒流の第1の部分を受け取るように構成され、これにより第2の膨張された冷媒流が形成される、第2の冷媒膨張デバイスと、
k.前記冷却された冷媒流の第2の部分を受け取って冷却するように構成される、前記第2の冷媒冷却流路と、
l.前記第1の冷媒膨張デバイスの出口および前記第2の冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、これにより前記熱交換器システムで冷却が行われる、前記第1の冷媒加温流路および前記第2の冷媒加温流路と、
m.前記第1の冷媒加温流路および前記第2の冷媒加温流路と流体連通する、前記閉ループ圧縮機の入口と、
をさらに備える、
請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
水素ガス供給流を液化する方法であって、
a.少なくとも前記水素ガス供給流を含む、コールドボックス供給流を、熱交換器システム内に受け取るステップであって、前記コールドボックス供給流が、コールドボックス供給流の圧力を有する、コールドボックス供給流を受け取るステップと、
b.前記コールドボックス供給流を含む液化機供給流を熱交換器システムで冷却して、生成物流を形成するステップと、
c.前記生成物流を膨張させて、膨張された生成物流を形成するステップと、
d.前記熱交換器システムで冷媒流を冷却して、冷却された冷媒流を形成するステップと、
e.前記冷却された冷媒流を膨張させて、第1の膨張された冷媒流を形成するステップと、
f.前記熱交換器システムで冷却が行われるように、前記第1の膨張された冷媒流を加温するステップと、
g.冷却された水素補助冷媒流が形成されるように、高圧水素補助冷媒供給流を前記熱交換器システムで冷却するステップと、
h.前記冷却された水素補助冷媒流を膨張させて、前記コールドボックス供給流の圧力以上の圧力を有する、膨張された水素補助冷媒流を形成するステップと、
i.前記熱交換器システムで冷却が行われ、前記コールドボックス供給流の圧力よりも高い圧力の高圧水素生成物流が形成されるように、前記膨張された補助水素冷媒流を加温するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
ステップc.が、混相の生成物流を形成するステップを含み、
前記方法が、
j.前記混相の生成物流を、液体水素生成物流および水素蒸気流に分離するステップと、
k.前記水素蒸気流を加温して、前記熱交換器システムで冷却を行い、第1の再循環流を形成するステップと、
l.前記第1の再循環流を圧縮して、圧縮された第1の再循環流を形成し、前記圧縮された第1の再循環流を前記水素ガス供給流と組み合わせて、前記コールドボックス供給流を形成するステップと、
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
m.前記冷却された冷媒流を、前記液化機供給流および前記冷媒流に分割するステップと、
o.前記冷媒流を第1の部分および第2の部分に分配するステップであって、前記第1の部分が膨張されて前記第1の膨張された冷媒流を形成する、分配するステップと、
p.前記冷媒流の前記第2の部分を膨張させて、第2の膨張された冷媒流を形成するステップと、
q.前記第2の膨張された冷媒流を加温して、前記熱交換システムで冷却を行い、第2の再循環流を形成するステップと、
r.前記第2の再循環流を、前記圧縮された第1の再循環流および前記供給ガス流と組み合わせて、前記コールドボックス供給流を形成するステップと、
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記液化機供給流が、前記精製され、冷却されたコールドボックス供給流のうちの約20~25%を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記コールドボックス供給流の圧力が、約1.38~4.14MPa(200~600psig)である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記コールドボックス供給流の圧力が、約1.72~2.76MPa(250~400psig)である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記液化機供給流の一部を、オルト水素からパラ水素に転換するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記コールドボックス供給流を冷却および精製して、前記液化機供給流を形成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記冷媒流が水素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
ステップf.が加温された冷媒流を生成し、前記方法が、前記加温された冷媒流を圧縮して、ステップdで冷却される前記冷媒流を生成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記冷媒がヘリウムを含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]この出願は、2021年11月8日に出願された米国仮特許出願第63/276,888号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、概ね、水素を液化するシステムおよび方法に関し、より詳細には、水素を液化し、貯蔵した水素ガスを冷媒源として使用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]天然ガスまたは水素などの工業用ガスは、液体状態では占有体積がはるかに小さい(たとえば、天然ガスは気体状態の1/600である)ため、液体状態で有利に貯蔵または輸送される。液化ガスは、次いで、現場またはシステムで使用するために気化され、気体状態に戻る。
【0004】
[0004]気体水素は、少なくとも約-253℃まで冷却することにより、液化水素に転換される。一般的な冷却工程は、大量のエネルギーを利用し、設備コストの点で非常に高価になる可能性がある。この工程は、複数の冷凍サイクルを含み、複数のガス圧縮段階を含む場合がある。
【0005】
[0005]水素液化システムにおいて、冷凍を行い、運転コストを削減する、高圧ガスからの減圧(letdown)エネルギーの使用が、Guillard等の米国特許第10,634,425号で説明されている。米国特許第10,634,425号は、システムの暖端で、水素以外の高圧ガスからの減圧エネルギーを使用して冷却を行い、システムの冷端で、減圧冷凍エネルギーのための、高圧水素を多く含有するパージガスの供給源である、メタノール生成ユニットを使用して冷却を行う。水素を多く含有する流れは、冷却を行うために使用された後、低圧燃料としてメタノールプラントに送り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]少なくともいくつかの用途において、運転コストおよび設備コストを削減する、水素液化システムおよび方法を実現することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本主題には、下記で説明され、特許請求の範囲に記載される方法、デバイス、およびシステムにおいて、個別にまたは一緒に具現化され得る、いくつかの態様がある。これらの態様は、単独で使用されてもよく、または本明細書で説明される主題の他の態様と組み合わせて使用されてもよく、これらの態様を一緒に説明していることは、これらの態様を個別に使用すること、またはここに添付された特許請求の範囲に記載されている、個別または別の組合せでかかる態様を特許請求することを、排除することが意図されるものではない。
【0008】
[0008]一態様では、水素ガス供給流を液化するシステムは、コールドボックス供給流の圧力を有するコールドボックス供給流を受け取るように構成された、コールドボックス供給ラインを備え、コールドボックス供給流は、少なくとも水素ガス供給流を含む。熱交換器システムは、コールドボックス供給ラインと流体連通する液化機冷却流路を備え、液化機の流れを受け取って冷却するように構成され、これにより生成物流が形成される。生成物膨張デバイスは、液化機冷却流路の出口と流体連通し、生成物流を受け取るように構成され、これにより膨張された生成物流が形成される。
【0009】
[0009]熱交換器システムは、冷媒供給流を受け取るように構成され、これにより冷却された冷媒供給流が形成される、冷媒冷却流路を備える。冷媒膨張デバイスは、熱交換器システムの冷媒冷却流路と流体連通し、これにより膨張された冷媒流が形成される。熱交換器システムは、冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、これにより熱交換器システムで冷却が行われる、冷媒加温流路を備える。
【0010】
[0010]熱交換器システムは、高圧水素補助冷媒供給流を受け取って冷却するように構成され、これにより冷却された水素補助冷媒流が形成される、第1の水素高圧冷媒冷却流路を備える。補助冷媒膨張デバイスは、第1の水素高圧冷凍冷却流路と流体連通する入口を有し、これによりコールドボックス供給流の圧力以上の圧力を有する、膨張された水素補助冷媒流が生成される。熱交換器システムは、補助冷媒膨張デバイスの出口と流体連通し、膨張された水素補助冷媒流を受け取るように構成され、これにより熱交換器システムで冷却が行われ、コールドボックス供給流の圧力よりも高い圧力の高圧水素生成物流が形成される、高圧水素冷媒加温流路を備える。
【0011】
[0011]別の態様では、水素ガス供給流を液化する方法は、少なくとも水素ガス供給流を含む、コールドボックス供給流を、熱交換器システム内に受け取るステップであって、コールドボックス供給流が、コールドボックス供給流の圧力を有する、コールドボックス供給流を受け取るステップと、コールドボックス供給流を含む液化機供給流を熱交換器システムで冷却して、生成物流を形成するステップと、生成物流を膨張させて、膨張された生成物流を形成するステップと、熱交換器システムで冷媒流を冷却して、冷却された冷媒流を形成するステップと、冷却された冷媒流を膨張させて、第1の膨張された冷媒流を形成するステップと、熱交換器システムで冷却が行われるように、第1の膨張された冷媒流を加温するステップと、冷却された水素補助冷媒流が形成されるように、高圧水素補助冷媒供給流を熱交換器システムで冷却するステップと、冷却された水素補助冷媒流を膨張させて、コールドボックス供給流の圧力以上の圧力を有する、膨張された水素補助冷媒流を形成するステップと、熱交換器システムで冷却が行われ、コールドボックス供給流の圧力よりも高い圧力の高圧水素生成物流が形成されるように、膨張された補助水素冷媒流を加温するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[0012]本開示の水素液化システムの一実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
図2】[0013]本開示の水素液化システムの一代替実施形態を示す、工程流れ図および概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0014]本開示によれば、水素貯蔵用貯槽(cavern)、高圧シリンダ、水素パイプライン、および/または他の高圧貯蔵庫もしくは構成要素などの、高圧貯蔵庫からの水素ガスは、水素液化システムでの冷凍を実現するために使用される。高圧水素は次いで、様々なシステムおよび/または工程で利用され得る水素流として、システムから出る。貯蔵された高圧水素ガス源を、かかる供給源から供給される減圧エネルギーを含めて、使用することは、他の供給源による冷凍の必要性をなくすかまたは大幅に低減し、必要な電力および運転コストを削減する。
【0014】
[0015]本開示の水素液化システムの一実施形態を示す、工程流れ図および概略図が、図1に提示されている。
【0015】
[0016]本明細書では、ライン、導管、配管、流路、および同様の構造体、ならびに対応する流れは、両方とも、図に示された同じ要素番号で呼ばれる場合があることに留意されたい。さらに、本明細書で使用され、本発明の属する技術分野で知られている熱交換器とは、相異なる温度の2つ以上の流れ間で、または流れと周囲との間で、間接的な熱交換が行われるデバイスまたはデバイス内の領域である。加えて、本明細書で参照されるすべての熱交換器は、1つまたは複数の熱交換器デバイスに組み込まれてもよく、またはそれぞれが、個別の熱交換器デバイスであってもよい。本明細書で使用される、「連通」、「連通している」などの用語は、別段の指定がない限り、全般的に流体連通を指す。また、連通する2つの流体が、混合時に熱交換する場合があり、かかる交換は熱交換器内で起こる可能性があるが、かかる交換は、熱交換器内での熱交換と同じであるとはみなさないものとする。熱交換システムまたは熱交換器システムは、具体的には記載されていないが、本発明の属する技術分野で一般に知られている膨張デバイス、フラッシュ弁など、熱交換器の一部である、熱交換器の部品を備えることができる。本明細書で使用される、「高い」、「中間の」、「温間の」、「低温の」などの用語は、本発明の属する技術分野で通例である、同等の流れに関する用語である。
【0016】
[0017]図1の実施形態を参照すると、水素ガス供給流3は、第1の水素再循環流と組み合わされ、次いで、第2の中圧水素再循環流2と組み合わされる。第1の水素再循環流は、低圧水素再循環流1を第1の水素圧縮機101で圧縮することにより形成される。その結果得られた混合物は、ほぼ周囲温度で、第2の水素圧縮機102に供給される。流体は、水素コールドボックス供給流4として、第2の水素圧縮機から出る。
【0017】
[0018]水素コールドボックス供給流4は、約1.38~4.14MPa(200~600psig)、好ましくは約1.72~2.76MPa(250~400psig)の圧力を有することができる。第1および第2の水素圧縮機101および102は、それぞれ、単一の圧縮機もしくは圧縮機段、または複数の圧縮機もしくは圧縮機段で構成することができる。圧縮機101および102は、別法として、少なくとも1つの段間供給を有する、同じ圧縮機の段を表すこともできる。水素供給物3の圧力が、コールドボックスに供給するのに十分な高さである場合、その流れを圧縮する必要はなく、その流れは、図1の架空の線130で示されているように、第2の圧縮機102の下流で再循環流と組み合わされ得る。
【0018】
[0019]水素コールドボックス供給物4は、第1の熱交換器103で約80°Kまで冷却され、不純物の凍結およびその後の熱交換器の流路の詰まりを防ぐために、微量の不純物を除去する第1の吸着器システム104に供給される、第1の吸着器供給蒸気5を形成する。図1に示される第1の吸着器システム104は、概ね、連続運転における飽和状態の吸着容器の再生を可能にする、並列容器および切替え弁からなる。好適な吸着器システムは、本発明の属する技術分野でよく知られている。
【0019】
[0020]第1の吸着器を出る流れは、液化機供給流6と水素冷媒流7とに分割または分配される。流れの約20%が液化機供給物6となり、残りが水素冷媒7となることが好ましい。
【0020】
[0021]液化機供給物6は、オルト-パラ転換触媒を収容する、第2の熱交換器の触媒流路107を内蔵する、第2の熱交換器106で、より一層冷却される。オルト-パラ転換触媒は、液化工程においてオルト水素の一部をパラ水素に転換し、液体生成物の揮発を最小限に抑える。別法として、熱交換器の外部にある、1つまたは複数の触媒反応器が使用され得る。本発明の属する技術分野で、酸化鉄、酸化クロム、または酸化バナジウムなどの好適な触媒が、よく知られている。
【0021】
[0022]液化機供給物6は、冷却された液化機供給流8として、第2の熱交換器106を出る。冷却された液化機供給物8は、第3の熱交換器の触媒流路110、第4の熱交換器の触媒流路113、および第5の熱交換器の触媒流路117をそれぞれ内蔵する、第3の熱交換器109、第4の熱交換器112、および第5の熱交換器116内でより一層冷却され、低温高圧水素流11を生成する。別法として、熱交換器流路110、113および/または117内の触媒の代わりに、熱交換器の外部にある、1つまたは複数の触媒反応器が使用され得る。
【0022】
[0023]システムの代替実施形態では、単一の熱交換器または4台以上の熱交換器が、第3から第5の熱交換器(109、112、および116)の代わりに使用されてもよい。単一の熱交換器または熱交換器システムが、実際に、第1から第5の熱交換器(103、106、109、112、および/または116)の代わりに使用されてもよく、または第1から第5の熱交換器のうちのいずれか、もしくはすべてを組み込んでもよい。
【0023】
[0024]低温高圧水素流11は、生成物膨張デバイス118を介して膨張され、低温高圧水素流をより一層冷却し、水素生成物分離機119に供給される、混相の生成物流または2相水素流12を生成する。生成物膨張デバイス118は、図1に開示された膨張デバイスまたは膨張弁のうちのいずれかの場合と同様に、ジュールトムソン弁、またはタービンもしくはオリフィスを含むが、これらに限定されるものではない、本発明の属する技術分野で知られている他の種類の膨張弁または膨張デバイスであってもよい。生成物分離機119は、図1に開示された分離機のいずれかの場合と同様に、貯留ドラムまたは他の分離容器、あるいはサイクロン分離機、蒸留ユニット、結合分離機、またはメッシュもしくはベーン式ミスト除去器を含むがこれらに限定されるものではない、本発明の属する技術分野で知られている他の種類の分離デバイスであってもよい。
【0024】
[0025]液体水素生成物流13が、水素生成物分離機119の底部から出る一方、飽和水素蒸気流14が、上部から出る。飽和水素蒸気流14は、第5の熱交換器116で加温され、そこで低温高圧水素流11を生成する助けとなるよう、冷凍を行い、加温された水素蒸気流15として出る。
【0025】
[0026]水素冷媒7は、第2の熱交換器106および第3の熱交換器109で冷却され、それぞれ、冷却された水素冷媒流16および17を生成する。冷却された水素冷媒流17の第1の部分18は、第4の熱交換器112でより一層冷却され、低温高圧水素冷媒流20を生成する一方、冷却された水素冷媒17の残り、すなわち第2の部分19は、低温膨張タービン111などの低温膨張デバイスに供給され、そこでより低い圧力まで膨張されて、より低い温度の、低温タービン生成物29として出る。
【0026】
[0027]低温高圧水素冷媒流20は、冷媒膨張デバイス114を介して膨張され、低温高圧水素冷媒流をより一層冷却し、水素冷媒分離機115に供給される、混相の水素冷媒流または2相水素冷媒流21を生成する。液体水素冷媒流22は、水素冷媒分離機115の底部から出て第5の熱交換器116に供給され、そこで液体水素冷媒流の多くが気化されて、第5の熱交換器116で冷凍を実現し、混相の水素冷媒流23として出て、水素冷媒分離機115に供給される。
【0027】
[0028]水素冷媒分離機115を出る水素冷媒蒸気流24は、加温された水素蒸気15と組み合わせて、低温低圧水素冷媒流25を形成する。低温低圧水素冷媒流25および低温タービン生成物流29は、第4の熱交換器112および第3の熱交換器109で加熱されて、温間低圧水素冷媒流27および温間タービン生成物31を形成する。温間低圧水素冷媒流27は、第2の熱交換器106および第1の熱交換器103でより一層加熱され、低圧水素再循環流1を形成する。温間タービン生成物流31は、第1の熱交換器103でより一層加熱され、中圧水素再循環流2を形成する。
【0028】
[0029]約4.14MPa(600psig)より高い圧力、典型的には約6.90~13.79MPa(1000~2000psig)の高圧水素補助冷凍供給流41は、第1の熱交換器103で冷却され、流れ42として、より高圧で、かつ第1の吸着器システム104と同様の温度で作動する、第2の吸着器システム105に供給され、精製された高圧水素流43を形成し、第2の熱交換器106でより一層冷却され、温間膨張タービンなどの温間膨張デバイス108に供給される温間膨張タービン供給物44を形成する。温間膨張タービン108は、低温膨張タービン111より高い温度、より高い入口圧力、およびより高い出口圧力で作動し、水素コールドボックス供給物4の圧力よりも高い圧力の温間膨張タービン生成物45を形成する。温間膨張タービン生成物45は、第3の熱交換器109および第1の熱交換器103で加熱され、高圧で貯蔵された水素供給物41より低いが、水素コールドボックス供給物4の圧力より高い圧力の高圧水素生成物47を形成する。高圧水素生成物47は、ガスタービン、化学工程、パイプライン、エネルギー生成工程、水素貯蔵、または他の用途に供給され得る。高圧水素生成物47は、別法として、圧縮機段または圧縮機101および/もしくは102に動力を供給するために使用される、ガスタービンに供給されてもよい。
【0029】
[0030]液体窒素または気体窒素などの外部冷媒を使用して、工程でのさらなる冷凍が実現されてもよい。液体窒素または別の冷凍源などの、第2の熱交換器冷媒流51は、さらなる冷却を行うために、第2の熱交換器106および/または第1の熱交換器103で加熱される。低温気体窒素または別の冷凍源などの、第1の熱交換器冷媒流54は、さらなる冷却を行うために、第1の熱交換器103で加熱される。
【0030】
[0031]熱交換器103、106、109、112、および116は、前述されたように、熱交換器システムに組み込まれ得る。かかる熱交換器システムは、単なる例として、単一の熱交換器、別個の熱交換器(図1に示されているような)、または複数の熱交換器が組み合わされたもの(たとえば、103および106が組み合わされて第1の熱交換器に、109、112、および116が組み合わされて第2の熱交換器になる)を含むことができる。加えて、本開示のシステムの代替実施形態では、熱交換器の数は、図1に示されている数と異なっていてもよい。さらに、熱交換器のいずれも、複数の熱交換器に分割され得る。
【0031】
[0032]一代替実施形態では、図1の架空の線132で示されているように、高圧水素生成物47の一部が、コールドボックス供給物4として使用され得る。これは、典型的な水素液化工程と比較すると、やはり水素の圧縮力およびコストを節約でき得るが、ガスタービン供給物として使用され得る、高圧ガス生成物を供給することができないかもしれない。
【0032】
[0033]別の代替実施形態では、温間膨張タービン生成物流45の一部は、流れ45が既に低温であり、高圧で使用可能であるため、より一層冷却され、弁または膨張機のいずれかで膨張されて、熱交換器109、106、および/または103でさらなる冷凍を行うことができる。
【0033】
[0034]上記で提示された本開示のシステムおよび工程の実施形態は、したがって、水素貯槽、パイプライン、定置式貯蔵システム、または他の高圧水素貯蔵庫などの、高圧貯蔵システムに貯蔵されたエネルギーを利用して、液化システムに向けた冷凍を行い、システム効率を向上させ、設備および/または運転コストを節約する。再循環されない水素生成物(図1の47)は、さらなるシステムまたは工程用に、水素源を提供することができる。
【0034】
[0035]図1の第1の吸着器104に入る水素流5は、前述されたように、液化機供給流6および水素冷媒流7に分割され、流れ5の約20%が液化機供給物6となり、残りが水素冷媒7となることが好ましい。これは、高圧貯蔵と統合されていない標準的な水素液化工程の典型的なものよりも、液化されることになる水素の割合がはるかに高くなる。
【0035】
[0036]図1の実施形態は、加えて、水素貯槽、パイプライン、定置式水素貯蔵システム、または他の高圧貯蔵システムなどの、高圧貯蔵システムに貯蔵されたエネルギーを利用して、液化機用に冷凍を行いながらも、依然として、コールドボックス供給物の圧力よりも高い圧力の水素を回収する。これは、貯槽、パイプライン、または他の高圧貯蔵システムおよび液化機が、同じ場所に設置されている場合には、大きな利点となる。
【0036】
[0037]回収された水素(流れ47)がコールドボックス供給物4よりも高圧でない場合でさえも、出口の水素を、液化機へ再循環して戻す以外の場所で使用することは、やはり有用であり得る。
【0037】

[0038]以下の例は、本発明の1つの構成に関して、さらなる情報を提供する。これは、開示された発明または開示の範囲を限定することが意図されたものではない。図1の実施形態では、通常の水素からなる2216kmol(4886lbmol)/時の水素コールドボックス供給流4が、供給ガス4の圧力を2.48MPa(360psig)に上昇させる、第2の水素圧縮機102を出た後、この実施形態の工程に供給される。高圧での作動が、極低温液化工程を可能にする。
【0038】
[0039]この実施形態における第1の熱交換器103は、流れの温度を81Kまで下げる。微量の不純物が、第1の吸着器システム104で除去され、流れは、液化機供給物6(454kmol(1000lbmol)/時)と水素冷媒流7(1763kmol(3886lbmol)/時)とに分割される。液化機に送られる供給流のうちの20~21%に分割されるという結果になるが、これは、本発明の属する技術分野で知られている、従来の水素液化機よりも多い。液化機供給物6は、81Kから冷却され、熱交換器106、109、112、および116で、22Kの低温高圧水素流11を生成する。この流れは、液体水素生成物流13を形成するために、生成物膨張デバイス118で0.31MPa(45psia)まで膨張される。
【0039】
[0040]水素冷媒流7は、熱交換器106および109で冷却され、51Kに冷却された水素冷媒流17を生成し、これが、熱交換器112で27Kまで冷却される第1の部分18(159kmol(351lbmol)/時)と、低温膨張タービン111に供給される、第2の部分19(1612kmol(3553lbmol)/時)とに分割される。第2の部分19は、タービンで2.45MPa(356psia)から0.24MPa(35psia)まで膨張され、51Kから24Kまで冷却される。この低温タービン生成物29は、熱交換器で冷凍を行うために使用される。第1の部分18は、熱交換器112で冷却され、27Kの低温高圧水素冷媒流20を生成し、低温高圧水素冷媒流20は、冷媒膨張弁デバイス114で2.45MPa(356psia)から0.12MPa(18psia)まで膨張され、27Kから21Kまで冷却され、部分的に凝縮される。部分的に凝縮された流れは、混相の水素冷媒流23と混合され、水素冷媒分離機115で分離され、液体水素冷媒流22(531kmol(1170lbmol)/時)および水素冷媒蒸気流24(159kmol(351lbmol)/時)を形成する。液体水素冷媒流は、最も低温の熱交換器116で、部分的に気化されて冷却を行い、水素冷媒分離機に戻る。冷媒蒸気流は、他の熱交換器112、109、106、および103で冷却を行う。さらなる冷凍が、液体窒素51(48kmol(106lbmol)/時)および低温窒素蒸気54(436kmol(961lbmol)/時)を使って行われる。
【0040】
[0041]高圧で貯蔵された水素供給物41は、この例では、300Kおよび13.79MPa(2000psia)の通常の水素を、1261kmol(2780lbmol)/時で熱交換器システムに供給し、水素供給物41は79Kまで冷却され、温間膨張タービン108に供給され、ここで、3.45MPa(500psia)まで膨張され、55Kまで冷却される。これは、システムで冷凍を実現し、従来技術の標準的な温間膨張機を実際に置き換えるのに十分な低温である。流れは、さらに、高圧水素生成物47として、コールドボックスから3.43MPa(498psia)で回収される。コールドボックス供給物以上の圧力でこの流れを回収することは、液化機の外部で使用するために水素流を高圧で回収し、かつ従来の水素液化工程と比較して冷凍の必要性を低減するという、複合的な利点を実現することができる。
【0041】
[0042]上記の例について、選択された流れの条件および組成が、表1に示されている。
【表1】
【0042】
[0043]水素冷媒は、別の実施形態では、相異なる圧力および/もしくは温度で作動する、一連の膨張機を通過するか、またはやはり相異なる温度で作動する、並列の複数組の膨張機に供給される。この場合、水素補助冷凍流のための膨張機が、標準の水素液化工程に追加されることになる。これは、追加の資本コストを意味するが、本発明の属する技術分野で知られている標準的な工程と比較して、運転コストおよび電力コストが削減され得る。水素の液化がより一般的になるにつれて、こうした工程はより大規模になる可能性があり、運転コストの削減は、追加の資本コストを正当化することができる。追加の高温水素冷媒膨張機は、高圧水素貯蔵源内で変動する圧力を調整するため、運転上の柔軟性を高めることもできる。これは、貯槽またはパイプラインでの圧力などの水素貯蔵圧力が、供給と需要との変化に応じて変動するので、有益であり得る。
【0043】
[0044]一代替実施形態では、図1を参照すると、図1の架空の線134で示される高温水素膨張機が、冷却された水素冷媒流16の一部を受け取り、膨張された/冷却された流れ136を冷凍流30に戻し、かつ/または膨張された/冷却された流れ138を冷凍流26に戻す。高温水素膨張機134は、タービン、または本発明の属する技術分野で知られている他の膨張デバイスであってもよい。その結果、高圧膨張機108は、より高温の水素膨張機134と並列になり、冷凍負荷の全部ではないが一部を引き受ける。これは、より高温の膨張機134の電力コストの一部を節約するために、第3の膨張機システムの追加資本コストが必要となることを意味する。プラントの規模が大きくなるにつれて、運転コストと比較した資本コストの相対的な重要性が低下するため、この手法は、プラントの規模が大きくなるにつれてより経済的になる。
【0044】
[0045]図2の実施形態では、供給物と混合する水素冷凍システムではなく、閉冷凍ループが示されている。閉冷凍ループでは、ヘリウム、水素、ヘリウムとネオンとの混合物、またはループ内において最低温度で凝固しない、他の適切な冷媒を使用することができる。図2で繰り返されるすべての参照番号は、図1に示されているものと同じ流れまたは設備を表す。
【0045】
[0046]図1の実施形態とは異なり、図2の実施形態では、加温された水素蒸気15は、熱交換器システムで加熱される前に、別の流れと混合しない。加温された水素蒸気15は、図2に示される熱交換器の構成では、水素再循環流64として出る前に、熱交換器システムで第1の水素蒸気再循環流61、第2の水素蒸気再循環流62、および第3の水素蒸気再循環流63へ加熱され、水素再循環流64は、図1の低圧水素再循環流1に相当するが、流量はより少なくなる。
【0046】
[0047]図1および図2の2つの工程の構成間の主な違いは、図2の実施形態における閉ループ冷凍サイクルである。図2の閉ループ冷凍サイクルでは、温間低圧冷媒71が冷媒圧縮機201で圧縮され、温間高圧冷媒72を形成し、温間高圧冷媒72は熱交換器システムで約80Kまで部分的に冷却され、冷媒吸着器供給流73を形成する。冷媒吸着器供給流73は、低温冷媒吸着システム202に供給され、閉ループに取り込まれ得た冷媒から不純物を除去し、冷媒吸着器生成物流74を生成する。低温冷媒吸着システム202は、不純物が流れに連続的に取り込まれることがないので、他の吸着システムよりも小型であり、再生される頻度がはるかに低くなる可能性がある。
【0047】
[0048]冷媒吸着器生成物蒸気74は、熱交換器システムでより一層冷却され、第1の冷却された冷媒流75および第2の冷却された冷媒流76を生成する。一実施形態では、第1の冷却された冷媒流の一部141が、第1の冷媒膨張機140で膨張されて、第1の低圧冷媒流142を生成し、第1の低圧冷媒流142は、熱交換器システムでの冷却を実現する。この膨張機は、温間膨張タービン108が十分な冷凍を行わない場合に、さらなる冷凍を行う。
【0048】
[0049]第2の冷却された冷媒流の一部77が、第2の冷媒膨張機203で膨張され、第2の低圧冷媒流78を形成し、第2の低圧冷媒流78が、熱交換器システムでの冷却を実現する。第2の冷却された冷媒流の残り82は、熱交換器システムでより一層冷却され、低温高圧冷媒流83を生成し、低温高圧冷媒流83は、第3の冷媒膨張機204で膨張され、第3の低圧冷媒流84を形成し、第3の低圧冷媒流84は、熱交換器システムでの冷却を実現する。第3の低圧冷媒流84は、熱交換器システムで部分的に加温され、温間の第3の低圧冷媒85を生成し、温間の第3の低圧冷媒85は、第2の低圧冷媒流78と混合し、組み合わされた低圧冷媒86を生成し、組み合わされた低圧冷媒86は、温間低圧冷媒71として出る前に、熱交換器システムで、第1の加温された冷媒流79、第2の加温された冷媒流80、および第3の加温された冷媒流81へ加熱される。
【0049】
[0050]図2に示されている構成の一代替形態では、第2の冷媒膨張機203および第3の冷媒膨張機204は、並列ではなく直列で作動することができる。この場合、第2の低圧冷媒流78は、直列膨張機供給物87として、第3の冷媒膨張機204に供給される。この場合、第2の冷却された冷媒流82は存在しない。別の代替形態では、膨張機の代わりに、弁または他の減圧デバイスが使用され得る。
【0050】
[0050]閉ループ冷凍システムの1つの利点は、コールドボックス供給物4のオルト-パラ転換が、より高温で開始できることである。この場合、流れ全体が液化されているので、コールドボックス供給物流路の低温部分にオルト-パラ転換触媒120を充填することにより、第1の熱交換器103でオルト-パラ転換を開始することは、有利である。これは、第1の吸着器システム104に入る前に、75%のオルト水素供給物を約50%のオルト水素に転換することを可能にする。
【0051】
[0051]本開示の好ましい実施形態が図示され説明されてきたが、本発明の属する分野の技術者には、本開示の精神、以下の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、その中で変更および修正が行われ得ることが明らかであろう。
図1
図2
【国際調査報告】