(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コアシェル型水酸化カルシウム-炭酸カルシウム粒子を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C01F 11/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C01F11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527100
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CA2022051620
(87)【国際公開番号】W WO2023077223
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169249
【氏名又は名称】バイオセンタ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOSENTA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フセイン、マエン
(72)【発明者】
【氏名】ダルウィッシュ、ノーラ ナイフ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA10
4G076AA16
4G076AB06
4G076AB09
4G076BA24
4G076BD02
4G076BD04
4G076BF05
4G076CA02
4G076DA02
(57)【要約】
本開示は、炭酸カルシウム(CaCO
3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)粒子を調製するための方法を記載する。本方法は、液体二酸化炭素を反応容器中に導入することと、水酸化カルシウム粒子を反応容器中に導入することと、水酸化カルシウム粒子を液体二酸化炭素中に効果的に混合することとを含む。本方法は、液体二酸化炭素に相変化を誘導することで、水酸化カルシウムをドライアイスで被覆することをさらに含む。異なる実施形態では、液体二酸化炭素をスロットルバルブ中に導入し、気体二酸化炭素と固体ドライアイスとの混合物への相変化を誘導してもよく、水酸化カルシウム粒子を前記混合物と共に出口流中に導入し、ドライアイスの不均一核生成を誘導することができる。また、両実施形態は、所定の滞留時間後にドライアイスを昇華させて、水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム(CaCO
3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)粒子を調製する方法であって、
液体二酸化炭素を反応容器中に導入することと、
水酸化カルシウム粒子を該反応容器中に導入することと、
該水酸化カルシウム粒子を該液体二酸化炭素中に効果的に混合することと、
該液体二酸化炭素に相変化を誘導することで、該水酸化カルシウム粒子をドライアイスで被覆することと、
所定の滞留時間後に該ドライアイスを昇華させて、該水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記反応容器中に導入された前記液体二酸化炭素が、8MPaの圧力および-25℃の温度にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体二酸化炭素が、0.518MPa~16MPaの圧力範囲および-56.56℃~30.98℃の温度範囲において前記反応容器中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水酸化カルシウム粒子を前記反応容器中に導入することが、前記水酸化カルシウム粒子を補助チャンバー中に供給することと、該補助チャンバー中の前記水酸化カルシウム粒子を前記液体二酸化炭素と共に流し出すことと、混合物を前記反応容器中に導入して既に存在している前記液体二酸化炭素とさらに混合することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体二酸化炭素が前記反応容器中に導入される前に、前記水酸化カルシウム粒子が前記反応容器中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応容器が、混合用の撹拌装置をさらに備える高圧反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応容器がインラインミキサーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体二酸化炭素に前記相変化を誘導することが、スロットルバルブを使用して前記液体二酸化炭素を急速放出してドライアイスにすることにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スロットルバルブが0.1MPaの出口圧力で急速放出を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スロットルバルブが、0.01MPa~0.518MPaの出口圧力範囲および-56.56℃より低い温度において急速放出を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記水酸化カルシウム粒子上の前記炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することが、分離容器中で0.518MPa以下の圧力において前記所定の滞留時間にわたってなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ドライアイスの昇華物から気体二酸化炭素を回収することと、
該気体二酸化炭素に相変化を誘導して、前記反応容器に導入される液体二酸化炭素を得ることと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
炭酸カルシウム(CaCO
3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)粒子を製造するためシステムであって、
液体二酸化炭素および水酸化カルシウム粒子を収容するための反応容器と、
該液体二酸化炭素および水酸化カルシウム粒子を効果的に混合する撹拌装置と、
液体二酸化炭素に相変化を誘導して該水酸化カルシウム粒子をドライアイスで被覆するためのスロットルバルブと、
所定の滞留時間後に該ドライアイスを昇華させて、該水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御するための分離容器と
を備える、システム。
【請求項14】
前記反応容器に収容された前記液体二酸化炭素が、8MPaの圧力および-25℃の温度にある、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記液体二酸化炭素が、0.518MPa~16MPaの圧力範囲および-56.56℃~30.98℃の温度範囲において前記反応容器中に収容される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
補助チャンバー中の前記水酸化カルシウム粒子を前記液体二酸化炭素と共に流し出すことと、混合物を前記反応容器中に導入して既に存在している前記液体二酸化炭素と混合することとを通じて、前記水酸化カルシウム粒子が前記反応容器に収容される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記液体二酸化炭素が前記反応容器に収容される前に、前記水酸化カルシウム粒子が前記反応容器に収容される、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記水酸化カルシウム粒子が前記反応容器に収容される前に、前記液体二酸化炭素が前記反応容器に収容される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記反応容器が、混合用の撹拌装置をさらに備える高圧反応器である、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記容器がインラインミキサーである、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記スロットルバルブが、前記液体二酸化炭素を0.1MPaで急速放出することにより相変化を誘導する、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記スロットルバルブが、0.1MPa~0.518MPaの圧力範囲および-56.56℃より低い温度において前記液体二酸化炭素を急速放出することにより相変化を誘導する、請求項13に記載のシステム。
【請求項23】
前記水酸化カルシウム粒子上の前記炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することが、前記分離容器中で0.518MPa以下の圧力において前記所定の滞留時間にわたってなされる、請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
前記分離容器中の前記ドライアイスの昇華物から気体二酸化炭素を回収する、前記分離容器に接続された気体二酸化炭素流出口と、
前記気体二酸化炭素流出口と前記反応容器とを接続し、前記気体二酸化炭素に相変化を誘導して前記反応容器中に導入される液体二酸化炭素を得るように構成されたインライン加圧システムを有する、戻りラインと
をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項25】
炭酸カルシウム(CaCO
3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)粒子を調製する方法であって、
出口流中への液体二酸化炭素を減圧することで、該液体二酸化炭素に気体二酸化炭素と固体ドライアイスとの混合物への相変化を誘導することと、
水酸化カルシウム粒子を該出口流に導入することで、該水酸化カルシウム粒子の不均一核生成を誘導し、該水酸化カルシウム粒子の周囲におけるドライアイス粒子の形成を促進することと、
該水酸化カルシウム粒子の周囲に形成された該ドライアイス粒子を昇華させることと
を含む、方法。
【請求項26】
炭酸カルシウム(CaCO
3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)粒子を製造するためのシステムであって、
液体二酸化炭素から気体二酸化炭素と固体ドライアイスとの混合物への相変化を誘導するためのスロットルバルブであって、該混合物を、出口流を含む断熱ホース中に排出するように動作可能である、スロットルバルブと、
不均一核生成を誘導し水酸化カルシウム粒子の周囲におけるドライアイス形成を促進するための不均一核生成剤である水酸化カルシウム粒子を、該出口流に導入するためのスクリューフィーダーと、
該出口流からの該混合物およびドライアイスで覆われた水酸化カルシウム粒子を収容し、該ドライアイスをさらに昇華させるサイクロンと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充填剤の製造、より詳細には、コアシェル型水酸化カルシウム-炭酸カルシウム粒子の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー組成物、塗料、および被覆における充填剤の使用は周知であり、文献において確立されている。通常、充填剤は、最終製品の機械特性、光学特性、物性、および難燃特性をはじめとする特性を向上させる。米国特許第9,493,658号および米国特許第6,310,129号は、充填剤の使用に適した技法を提供している。現在、炭酸カルシウム、タルク、粘土、石膏、重晶石、長石、およびケイ酸塩などの様々な市販の無機粉末充填剤が広く使用されている。それにもかかわらず、米国特許第6,310,129号に示されているように、粉砕鉱物充填剤の利用はその比較的大きいサイズにより限定されている。このため、通常はマイクロサイズの充填剤が化学的に合成されているが、これによりこれらの充填剤はより一層高コストとなる。
【0003】
ポリ塩化ビニル(PVC)中の合成Ca(OH)2充填剤は、PVCの燃焼時に生成する毒性の塩素ガスを中和する。一方、Ca(OH)2は、米国特許第6,310,129号に示されているように、空気の存在下で加熱時にその酸化物へ吸熱的に分解するというよりはむしろ、空気の存在下で比較的低温でCO2と発熱反応をしてCaCO3を生じるという理由で、Ca(OH)2の難燃性は疑わしい。もっとも、Ca(OH)2添加剤は大気中のCO2とゆっくりと反応してCaCO3を生ずるため、これがCa(OH)2の機能性を限定する可能性がある。それにもかかわらず、米国特許第9,493,658号、米国特許第6,310,129号、および米国特許第7,883,681号に示されているように、電気・光学機器の耐トラッキング性を改善するために、市販のCa(OH)2は様々な熱硬化性樹脂に添加剤としてなお使用されている。
【0004】
アセチレンの製造中に共生成するカーバイドライムは、米国特許第7,883,681号に示されているように、70~85%wt/wtのCa(OH)2と、Ca(OH)2粒上の殻の形態にある5~25%wt/wtのCaCO3とからなる。カーバイドライムは、その多種多様な特性により、多くの製品において有効な充填剤となることが見出されている。カーバイドライムは、廃酸の中和、ガス洗浄および脱硫、下水および水処理施設におけるpH制御、建築用ブロックおよび舗装用材料の製造、脱ハロゲン化、ならびに酢酸カルシウムマグネシウムおよび次亜塩素酸カルシウムの製造に使用されている。カーバイドライムに関するこれらの使用は、米国特許第6,310,129号および米国特許第5,997,883号、ならびにF.A. Cardosoら「Carbide lime and industrial hydrated lime characterization」、Powder Technol.、2009、doi: 10.1016/j.powtec.2009.05.017で述べられている。米国特許第6,310,129号および米国特許第7,883,681号に記載されているように、カーバイドライムは効果的な抗細菌剤、抗ウイルス剤、および抗真菌剤でもある。カーバイドライムは粉砕され、所定の用途にとって望ましいサイズの粒子を回収するためにスクリーニングされる。
【0005】
しかし、カーバイドライムは、アセチレンガス製造中に使用されるコークスに起因するその灰色っぽい色により、使用が限定されている。よって、米国特許第7,883,681号に教示されるように、加工された未処理のカーバイドライムを利用したすべての樹脂成形品は暗色を有する。このため、合成コアシェル型Ca(OH)2-CaCO3粒子(本明細書では炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子とも称する)が調製されている。
【0006】
炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を調製する1つの方法は、Meadeにより米国特許第7,883,681号で記載されているように、CO2含有ガス、例えば、燃焼排気をCa(OH)2粒子を含有する床に吹き付けることによる。また、曝露時間によりCaCO3被覆の厚さを制御できるが、この過程は主に粒子の衝突に起因して再現性に乏しい。米国特許第7,883,681号に示されるように、衝突は被覆の一部を劣化させ、粒子が反応するのを阻止し、大型粒子の凝集の一因となる。この限界を克服するため、米国特許第9,493,658号は、微粉砕された市販のCa(OH)2粒子をドライアイスと反応させて炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を調製することを教示している。1つの設計では、Ca(OH)2粒子およびドライアイスを2つの別々の投入口からサイロに添加する。昇華するドライアイス中で粒子が重力沈降することにより、反応物を混合することができる。別の設計によれば、反応物を1つの投入口からサイロに導入する前にホバートミキサー中で反応物を非常に短時間で混合することが可能となる。米国特許第9,493,658号に示されているように、この手法でこれまで報告されている限界に対処し、70~95wt%のCa(OH)2と5~30wt%のCaCO3表面被覆とを有する、より同質で一様な粒子を製造することに成功した。
【0007】
しかし、サイロ内での重力沈降はCaCO3被覆の厚さを制御する上で理想的ではない可能性がある点が留意される。H. Scott Fogler、「Elements of chemical reaction engineering」 Chem. Eng. Sci.、1987、doi: 10.1016/0009-2509(87)80130-.6に示されているように、滞留時間はサイロの高さおよびCa(OH)2の粒度に依存するが、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウムの粒度分布はサイロ内であまり制御できない。さらに、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウムの粒度は主に、Ca(OH)2反応物粒子のサイズを選択することによって制御される。例えば、約44μmのCa(OH)2粒子とメッシュサイズが-12~+18であるフレーク状のドライアイスとの反応により、0.1~75μmの炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を生成する。米国特許第9,493,658号に示されているように、あるサイロに対し、反応物の質量比を使用して炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物の仕様を制御する。最後に、M. Husein、「Preparation of nanoscale organosols and hydrosols via the phase transfer route」、Journal of Nanoparticle Research. 2017、doi: 10.1007/s11051-017-4095-0において教示されているように、特に小さい粒度と対応する表面エネルギーを考慮すれば、反応物をサイロに導入する前に固体反応物を混合することは、Ca(OH)2粒子の凝集につながる可能性がある。
【0008】
米国特許第9,493,658号に示されているように、カーバイドライムを手本とし、Ca(OH)2をドライアイスと反応させることにより製造された炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子もまた、抗細菌性、抗真菌性、および抗ウイルス性、ならびに顕著なpH調整特性を有することが判明している。こうした性質により、これらの合成炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子が様々な市販品にとって理想的な充填剤となっている。Southwest Research Institute、「Final Report of Southwest Research Institute(SwRI) Project 20637(Proposal No.01-72445)「Mold Resistance Efficacy Testing of Paint with ZeroMold Additive」」、2015およびSouthwest Research Institute、「Laboratory Testing Results」、2014における予備試験により、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を混合した樹脂成形品および塗料は、殺細菌性、殺真菌性、および殺ウイルス性をはじめとした顕著な滅菌特性を付与することが示された。これらの抗微生物性は高いCa(OH)2含有量によって誘起され、米国特許第9,493,658号で述べられるように、加速劣化試験によりこれが最長で100年持続すると推測されている。
【0009】
また、Vanceら(2015)「Direct Carbonation of Ca(OH)(2) Using Liquid and Supercritical CO2: Implications for Carbon-Neutral Cementation」、Industrial & engineering chemistry research、54(36)、pp.8908~8918. doi:10.1021/acs.iecr.5b02356において、液体CO2中に置いたときのCa(OH)2の炭化が調べられた。液体CO2を排出する等温過程が使用された。反応動力学の解析により、液体CO2中におけるCa(OH)2の反応が高速(2hで約80%の変換)であることが示された。これは、生成物であるCaCO3層が不動態化していないことを示唆する。圧力および温度は炭化速度にほとんど影響しなかった。さらにまた、炭化したCa(OH)2の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、Ca(OH)2粒の表面上にカルサイト層が形成されていることを示している。不規則な成長、不均一な形態構造、および最初に形成されたCaCO3表面層の剥離(階段化効果)が、Ca(OH)2の頂部に非不動態化カルサイト層が形成されたことの主な理由である。Vanceらの手順を使用して製造された材料を殺生物活性について試験したところ、有効殺生物活性は低いという結果であった。これは、粒子の凝集の程度が高いこと、およびCaCO3膜が不完全であることに起因していた。こうした形態上の短所が、より低い有効性の殺生物性粒子となる一因であった。
【0010】
さらにまた、Dheilly, R.M,J Tudo、Y Sebaibi、およびM Queneudec. 「Influence of Storage Conditions on the Carbonation of Powdered Ca(OH)2」、Construction & building materials 16、第3号(2002):155~161によれば、Ca(OH)2と気体CO2との反応の欠点は、減圧過程と関連する温度において、特に水分の非存在下ではこの反応がゆっくりと生じる点である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の様々な態様によれば、炭酸カルシウム(CaCO3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)2)粒子を調製するための方法が提供される。本方法は、液体二酸化炭素を反応容器中に導入することと、水酸化カルシウム粒子を反応容器中に導入することと、水酸化カルシウム粒子を液体二酸化炭素中に効果的に混合することとを含む。本方法は、液体二酸化炭素に相変化を誘導することで、水酸化カルシウムをドライアイスで被覆することをさらに含む。また、本方法は、所定の滞留時間後にドライアイスを昇華させて、水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することを含む。
【0012】
本方法は、8MPaの圧力および-25℃の温度で反応容器中に導入される液体二酸化炭素を含んでいてもよい。
【0013】
あるいは、本方法は、0.518MPa~16MPaの圧力範囲および-56.56℃~30.98℃の温度範囲において反応容器中に導入される液体二酸化炭素を含んでいてもよい。
【0014】
反応容器中への水酸化カルシウム粒子の導入は、水酸化カルシウム粒子を補助チャンバー中に供給することと、補助チャンバー中の水酸化カルシウム粒子を液体二酸化炭素と共に流し出すことと、混合物を反応容器中に導入して既に存在している液体二酸化炭素とさらに混合することとを含んでいてもよい。
【0015】
あるいは、液体二酸化炭素が反応容器中に導入される前に、水酸化カルシウム粒子が反応容器中に導入されてもよい。
【0016】
本方法は、混合用の撹拌装置を備える高圧反応器を反応容器として含んでいてもよい。
【0017】
あるいは、本方法は、インラインミキサーを反応容器として含んでいてもよい。
【0018】
液体二酸化炭素に相変化を誘導することは、スロットルバルブを使用して液体二酸化炭素を急速放出してドライアイスにすることにより行われてもよい。
【0019】
スロットルバルブは、0.1MPaの圧力で急速放出を行ってドライアイスを作り出してもよい。
【0020】
あるいは、スロットルバルブは、0.01MPa~0.518MPaの圧力範囲および-56.56℃より低い温度において急速放出を行ってもよい。
【0021】
水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することは、分離容器中で0.518MPa以下の圧力において所定の滞留時間にわたってなされる。
【0022】
本方法は、ドライアイスの昇華物から気体二酸化炭素を回収することと、気体二酸化炭素に相変化を誘導して、反応容器に導入される液体二酸化炭素を得ることとをさらに含んでいてもよい。
【0023】
本発明の様々な態様によれば、炭酸カルシウム(CaCO3)被覆水酸化カルシウム(Ca(OH)2)粒子を製造するためのシステムが提供される。本システムは、液体二酸化炭素および水酸化カルシウム粒子を収容するための反応容器を備える。本システムは、液体二酸化炭素および水酸化カルシウム粒子を効果的に混合する撹拌装置と、液体二酸化炭素に相変化を誘導して水酸化カルシウム粒子をドライアイスで被覆するためのスロットルバルブとをさらに備える。また、本システムは、所定の滞留時間後にドライアイスを昇華させて、水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御するための分離容器を備える。
【0024】
本システムは、8MPaの圧力および-25℃の温度で反応容器に収容された液体二酸化炭素を備えていてもよい。
【0025】
あるいは、本システムは、0.518MPa~16MPaの圧力範囲および-56.56℃~30.98℃の温度範囲において反応容器に収容されている液体二酸化炭素を備えていてもよい。
【0026】
水酸化カルシウム粒子は、補助チャンバー中の水酸化カルシウム粒子を液体二酸化炭素と共に流し出すことと、混合物を反応容器中に導入して既に存在している液体二酸化炭素と混合することとを通じて、反応容器に収容されてもよい。
【0027】
あるいは、液体二酸化炭素が反応容器に収容される前に、水酸化カルシウム粒子が反応容器に収容されてもよい。
【0028】
あるいは、水酸化カルシウム粒子が反応容器に収容される前に、液体二酸化炭素が反応容器に収容されてもよい。
【0029】
本システムは、混合用の撹拌装置を備える高圧反応器を反応容器として備えていてもよい。
【0030】
あるいは、本システムは、インラインミキサーを反応容器として備えていてもよい。
【0031】
本システムのスロットルバルブは、0.01MPa~0.518MPaの圧力範囲および-56.56℃より低い温度において液体二酸化炭素を急速放出することにより相変化を誘導してもよい。
【0032】
あるいは、本システムのスロットルバルブは、液体二酸化炭素を0.1MPaの圧力へと急速放出することにより相変化を誘導してもよい。
【0033】
水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さを制御することは、分離容器中で0.518MPa以下の圧力において所定の滞留時間にわたってなされる。
【0034】
本システムは、分離容器中のドライアイスの昇華物から気体二酸化炭素を回収する、分離容器に接続された気体二酸化炭素流出口をさらに備えていてもよい。本システムはまた、気体二酸化炭素流出口と反応容器とを接続し、気体二酸化炭素に相変化を誘導して反応容器中に導入される液体二酸化炭素を得るように構成されていてもよいインライン加圧システムを有する、戻りラインを備えていてもよい。
【0035】
以下の本発明の実施形態の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することにより、本発明の実施形態がより明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、ドライアイス中に閉じ込められた炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウムを製造するためのシステムを図示した図である。
【0037】
【
図2】
図1中の例示的なシステムの第1の製造ラインによる、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造する方法を図示した図である。
【0038】
【
図3】
図1中の例示的なシステムの第2の製造ラインによる、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造する方法を図示した図である。
【0039】
【
図4】本発明の別の実施形態に係る炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウムを製造するためのシステムを図示した図であり、最終生成物である気体CO
2は、液体CO
2としてさらに使用するためにシステム中に再循環される。
【0040】
【
図5】
図4中に示されるシステムの第1の製造ラインによる、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造する方法を図示した図である。
【0041】
【
図6】二酸化炭素(CO
2)の相図を図示した図であり、CO
2の固体状態、液体状態、および蒸気状態の安定領域を示す。
【0042】
【
図7】二酸化炭素(CO
2)の相図を図示した図であり、様々なエンタルピーにおける、固体状態と液体状態と蒸気状態の間でCO
2の状態を変化させるための領域を示す。
【0043】
【
図8】本発明のさらに別の実施形態に係る炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造するためのシステムを図示した図であり、水酸化カルシウム粒子は、減圧バルブの出口流中でドライアイスの不均一核生成を誘導する。
【0044】
【
図9】
図8中の例示的なシステムによる、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造する方法を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の記述およびそこで記載される実施形態は、本発明の原理および態様の特定の実施形態の、1つまたは複数の例を説明する意図で提供される。これらの例は、本発明のそうした原理の限定ではなく、説明を目的として提供される。以下の記述において、類似の部分には、明細書および図面の全体にわたってそれぞれ同一の参照番号が付される。
【0046】
総括すると、本発明の好ましい実施形態によれば、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を調製するための方法が提供される。本方法は、一般に、液体二酸化炭素(CO2)中に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)粒子を分散することと、次いで粒子を急速放出/減圧して液体二酸化炭素に相変化を誘導することとを伴い、そのため、液体二酸化炭素はドライアイスとなる。生じたドライアイスはその固体構造中にCa(OH)2粒子を閉じ込め、ドライアイスによる粒子の被覆の増強が達成される。
【0047】
既存の方法とは異なり、方法200は、炭酸化を改善できる点、および粒子の炭酸化の程度をより制御できる点で有利である。これは固体-液体混合によって達成され、この混合は固体-固体混合よりも十分な混合を実現する傾向がある。とはいえ、主要な炭酸化反応はドライアイスと閉じ込められたCa(OH)2粒子の間で進行し、これにより、粒子のより均一な被覆が可能となる。この方法では、半径方向を含むあらゆる方向において同一の速度で炭酸化が進行する。以下で解説するように、ドライアイスを昇華させる前に二酸化炭素が水酸化カルシウム核上でドライアイス被覆として留まる滞留時間を選択的に減少または増加させることにより、CaCO3殻の厚さを制御することができる。そしてこれにより、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子をより広範囲の製品に使用したり、より広範囲の用途、例えば、プラスチック、紙、セメント、および乾式壁用の充填剤における使用などに供したりできるように、得られる炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子の構造特性をより良好にカスタマイズすることが可能となる。また、得られる炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子はより高い殺生物活性をも有し、とりわけ殺生物効果が有利な環境において用途が増えることにつながる。方法200は、二酸化炭素に液相から固相および気相への相変化が誘導される点で既存の製造方法とさらに異なり、二酸化炭素が固相から気相へ変化する既存の方法とは対照的である。加えて、方法200は、製造時間が著しく短い点で既存の製造方法よりも有利である。
【0048】
図1は、2つの製造ライン160および160Aを有する、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造するためのシステム100を図示する。第1の製造ライン160はシステム100中の点線の上部に図示され、第2の製造ライン160Aはシステム100中の点線の下部に図示されている。第1の製造ライン160および第2の製造ライン160Aは並行して動作してもよく、以下でさらに解説するいくつかの構成要素を共有していてもよい。
【0049】
第1の製造ライン160は、CO2供給ライン108を介して断熱された高圧反応器124に接続された、断熱された加圧液体CO2貯蔵タンク104(以下、貯蔵タンク104と称する)を備え、貯蔵タンク104から高圧反応器124へと液体CO2を送ることが可能である。ゲートバルブ112およびインライン加圧システム116がCO2供給ライン108沿いに設置されていてもよい。高圧反応器124は、CO2供給ラインからの液体CO2を収容することに加え、Ca(OH)2供給ラインからのCa(OH)2粒子も収容する。高圧反応器124は、液体CO2とCa(OH)2粒子とを混合するための撹拌装置128を備える。高圧反応器124は、スロットルバルブ132を介して分離容器136に接続され、スロットルバルブ132はCa(OH)2粒子を取り囲む液体CO2を急速流出し、分離容器136は生じたドライアイスを収容する。次いで、分離容器136中でドライアイスが昇華し、生成した気体CO2は接続された気体CO2流出口140を通じて排出され、生成した炭酸カルシウム被覆水酸化物粒子は、接続された炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子流出口144を介して排出される。
【0050】
断熱された加圧液体CO2貯蔵タンク104は液体CO2を貯蔵し、市販の手段により容易に入手可能である。貯蔵タンク104はいかなる大きさであってもよく、本実施形態では、これはタンクローリーに典型的に供給される規格化された50トン貯蔵タンクであってもよい。通常、貯蔵タンク104の設置ならびに関連する配管および制御手段は、販売者の供給および役務契約の一部である。
【0051】
液体CO2供給ライン108は貯蔵タンク104から高圧反応器124へと至り、液体CO2を貯蔵タンク104から高圧反応器124(反応容器としても知られる)へと送ることができ、液体CO2は漏れ防止投入口を通じて高圧反応器124により収容される。本実施形態では、CO2供給ライン108はゲートバルブ112およびインライン加圧システム116の通過を含む。ゲートバルブ112は、貯蔵タンク104から高圧反応器124への液体CO2の流れを制御することができ、さらに液体CO2の流れを安全に遮断することもできる。本実施形態ではゲートバルブ112が使用されているが、代替的な実施形態では、同じ機能を求めてボールバルブを使用してもよい。液体CO2の流れの制御および液体CO2の流れの安全な遮断のために異なる種類のバルブを使用してもよいと、当業者は認識するはずである。インライン加圧システム116はCO2供給ライン108内の圧力を維持することで、CO2が確実に液体状態に留まるようにする。本実施形態では必ずしも必要ではないが、液体CO2が既に液体状態となって高圧反応器124に導入されるので、インライン加圧システム116は臨界温度より低い温度を維持しながら圧力を変化させてもよく、貯蔵タンク104が気体CO2などの異なる状態のCO2を保持している場合、気体CO2から液体CO2への相変化を誘導しながら圧力を変化させてもよい。ゲートバルブ112およびインライン加圧システム116は任意選択であり、貯蔵タンク104はゲートバルブ112またはインライン加圧システム116を必要とすることなく液体CO2を高圧反応器124に送ってもよいと、当業者にはわかるはずである。他の実施形態では、第1の製造ライン160はゲートバルブ112を備えるがインライン加圧システム116を欠いていてもよく、あるいは、製造ライン160はインライン加圧システム116を備えるがゲートバルブ112を欠いていてもよい。
【0052】
Ca(OH)2供給ライン120は、Ca(OH)2粒子を高圧反応器124中に分散させる。高圧反応器124は撹拌装置128を備え、Ca(OH)2粒子を液体CO2とさらに混合することで、Ca(OH)2粒子が十分に分配され液体CO2で被覆されることを確実とすることができる。
【0053】
次いで、得られた混合物をスロットルバルブ132を通じて分離容器136へ送ることができる。得られた混合物はスロットルバルブ132を通過しながら相変化し、水酸化カルシウム粒子を含有するドライアイス粒子を生じる。
【0054】
第2の製造ライン160Aは第1の製造ライン160と配置が類似しているが、高圧反応器124の代わりにインラインミキサー148を使用する。第2の製造ライン160Aは、CO2供給ライン108Aを介してインラインミキサー148に接続された貯蔵タンク104を備える。ゲートバルブ112Aおよびインライン加圧システム116AがCO2供給ライン108A沿いに設置される。インラインミキサー148はCO2供給ライン108Aからの液体CO2を収容し、Ca(OH)2供給ライン120AからのCa(OH)2をさらに収容する。液体CO2およびCa(OH)2はインラインミキサー148中で混合され、スロットルバルブ132Aを通じて送られる。スロットルバルブ132AはCa(OH)2粒子を取り囲む液体CO2を急速流出させてドライアイスにし、これが分離容器136により収容される。ドライアイスは昇華し、生じた気体CO2および炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子の生成物は、それぞれの流出口である気体CO2流出口140および炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子流出口144通じて排出される。
【0055】
CO2供給ライン108Aは貯蔵タンク104からインラインミキサー148へと至り、液体CO2を貯蔵タンク104からインラインミキサー148へと送ることができる。CO2供給ライン108Aは、ゲートバルブ112Aおよびインライン加圧システム116Aの通過を含む。第1の製造ライン160のゲートバルブ112と同様に、第2の製造ライン160Aのゲートバルブ112Aは貯蔵タンク104からの液体CO2の流れを制御することができ、さらに液体CO2の流れを安全に遮断することもできる。第1の製造ライン160のインライン加圧システム116と同様に、第2の製造ライン160Aのインライン加圧システム116AはCO2供給ライン108A内の圧力を維持することで、CO2が確実に液体状態に留まるようにする。第1の製造ライン160と同様に、ゲートバルブ112Aおよびインライン加圧システム116Aは任意選択である。液体CO2は、漏れ防止投入口を通じてインラインミキサー148中に収容される。
【0056】
Ca(OH)2粒子をCa(OH)2供給ライン120Aを通じてインラインミキサー148中に分散してもよく、そこでCa(OH)2粒子が液体CO2とさらに混合されることで、Ca(OH)2粒子が液体CO2中に十分に分散されることを確実としてもよい。インラインミキサー148はまた、Ca(OH)2粒子の分散をさらに促進するための撹拌装置を有していてもよい。次いで、得られた混合物をスロットルバルブ132Aを通じて送ることができ、そこでドライアイスが形成される。次いで、ドライアイスが分離容器136中に供給される。
【0057】
分離容器136はドライアイスを沈降させ、気体CO2をドライアイスを有する粒子を担持しない状態にする。第1の製造ライン160と第2の製造ライン160Aの何れにおいても、分離容器136は、気体CO2と炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子とを分離する際の補助となるフィルターを備えていてもよい。フィルター(ミストエリミネーターとしても知られる)は、CO2蒸気と共に出ていく塵または粒子を捕捉する。ミストエリミネーターは一般にエバポレーターにおいても使用され、当業者に公知である。さらにまた、分離容器136は、分離容器136内の圧力の変更および維持を行う圧力制御モジュールと、必要であれば、ドライアイスの昇華を加速する加熱用電熱線とを備えていてもよい。
【0058】
ドライアイスが昇華したら、生じた生成物である気体CO2および炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物は、それぞれ気体CO2流出口140および炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子流出口144を通じて回収されてもよい。
【0059】
代替的な実施形態では、分離容器136を、遠心力およびサイクロン分離により炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子と気体CO2との分離が可能な、サイクロン832と置き換えてもよい。サイクロン832は以下でさらに解説する。
【0060】
別の実施形態では、システム100Cは2つの同じ生産ライン160および160Aを図示しているが、気体CO2流出口140からの気体CO2は、インライン加圧システム152を通過した後、戻りライン156を介して貯蔵タンク104に戻される。インライン加圧システム152は戻りライン156内の圧力を上昇させてCO2に相変化を誘導し、気体CO2を液体CO2に変換する。インライン加圧システム152はCO2に相変化を誘導する任意の構成要素であってもよいと、当業者にはわかるはずである。
【0061】
図1に戻るが、システム100は炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウムを製造するための2つの生産ライン160および160Aを図示しているものの、2つの生産ライン160および160Aは並行して動作することに限定されず、実際には独立に動作してもよいと、当業者にはわかるはずである。
【0062】
図2は、第1の製造ライン160を使用した炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造するための方法200を図示する。
【0063】
第1の製造ライン160において、ブロック205は、液体CO2を貯蔵タンク104からCO2供給ライン108を介して高圧反応器124中に導入することを示す。ブロック210は、Ca(OH)2粒子を、Ca(OH)2供給ライン120を介して高圧反応器124中に供給することを示す。
【0064】
方法200という本実施形態では、液体CO2はまず高圧反応器124により収容され、次いで、Ca(OH)2粒子が高圧反応器124中に分散される。他の実施形態では、液体CO2の前にCa(OH)2粒子を高圧反応器中に供給することができるであろうと考えられる。別の実施形態では、Ca(OH)2粒子が小型チャンバーまたは補助チャンバー中に入れられ、次いで、少量の液体CO2で流し出された後で高圧反応器124中に移動させられて、さらなる液体CO2とさらに混合されることが考えられる。Ca(OH)2粒子を少量の液体CO2と共にノズル中へ流し出すことができ、このノズルは、液体CO2を吐出する対向するノズルへと混合物を導く。各々のノズルからの噴霧は、互いに重なり合って分散をさらに促進するように設計される。
【0065】
液体CO2とCa(OH)2粒子の両方が収容されたら、撹拌装置128を使用してこれらを高圧反応器124中で混合/分散してもよい。これはブロック215に示されている。ブロック205~215の工程全体にわたって、液体CO2(1)を0.518MPa~16MPaおよび-56.56℃~30.98℃の範囲に保ってもよい。好ましい実施形態では、容易に達成され産業において利用しやすいことから、液体CO2は8MPaおよび-25℃に保たれる。液体CO2中へのCa(OH)2粒子の分散は、Ca(OH)2粒子を取り囲む液体CO2の十分かつ一様な被覆を確保することにつながる。
【0066】
次いで、ブロック220において、液体CO2とCa(OH)2粒子との混合物は、スロットルバルブ132を通じて送られる。液体CO2は液体から固体への相変化をし、Ca(OH)2粒子を取り囲むドライアイス殻を作り上げる。
【0067】
本実施形態では、液体CO
2とCa(OH)
2との混合物はスロットルバルブ132を通じて送られ、液体CO
2は0.1MPaという好ましい通常大気圧で急速流出されてドライアイスとなり、Ca(OH)
2粒子を取り囲むドライアイス殻を作り上げる。あるいは、ドライアイス殻は、異なる温度および圧力でスロットルバルブ132を通過して相変化することにより形成されてもよい。
図6は、液体CO
2およびドライアイスを得ることができる他の条件を示す、圧力-温度相図である。
図7は、等エンタルピー過程により液体CO
2からドライアイスを形成することができる条件を示す、圧力-エンタルピー相図である。
図6および
図7は、以下のURLに位置する、2015年5月14日に公開されたAndre Patenaude著「CO
2 as a Refrigerant - Properties of R744」に見出すことができる:「https://emersonclimateconversations.com/2015/05/14/co2-as-a-refrigerant-properties-of-r744/」。状態変化を圧力または温度の変化によって行ってもよく、したがって、液体CO
2とCa(OH)
2との混合物はスロットルバルブ132を通じて送られることに限定されないと、当業者にはわかるはずである。他の装置または機器が、液体CO
2とCa(OH)
2との混合物からドライアイスへの状態変化において一助になると考えられ得る。
【0068】
次いで、Ca(OH)2粒子を取り囲むドライアイス殻が分離容器136中に供給される。分離容器136内では圧力が維持され、Ca(OH)2粒子をドライアイス殻と反応させ、CaCO3殻の厚さに影響を与える。圧力が長く維持されるほどCaCO3殻は厚くなる。圧力および温度が維持されている間の分離容器136内におけるCa(OH)2粒子およびドライアイスの滞留時間は、Ca(OH)2粒子を取り囲むCaCO3殻の厚さと直接的に相関する。好ましい実施形態では、分離容器136は0.1MPaで動作するものの、CaCO3殻を厚くするために分離容器136は0.01MPa~0.518MPaの圧力範囲に維持されてもよい。好ましい実施形態では、分離容器136は-78.5℃より高く維持されてもよい。CaCO3殻の所望の厚さが達成されたら、ドライアイスを昇華させ、気体CO2を生成してもよい。また、加熱用電熱線を使用してドライアイスを加熱して、昇華過程をさらに加速してもよい。これをブロック225に示す。
【0069】
ブロック230において、生じた炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物を回収する。Ca(OH)2供給ライン120を通じて高圧反応器124中に供給されるCa(OH)2の粒度の選択によって炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物のサイズを制御してもよいと、当業者にはわかるはずである。
【0070】
図3は、第2の製造ライン160Aを使用した炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造するための方法200Aを図示する。先に述べたように、第2の製造ライン160Aでは高圧反応器124の代わりにインラインミキサー148を使用する。ブロック205Aにおいて液体CO
2がインラインミキサー148中に導入され、ブロック210AにおいてCa(OH)
2粒子がインラインミキサー148中に導入される。次いで、ブロック215Aにおいて、液体CO
2およびCa(OH)
2はインラインミキサー148中で混合/分散された後、方法200へと続く。炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物を製造するために使用される、異なる実施形態のシステムによって方法200を用いてもよいと、当業者にはわかるはずである。
【0071】
図5は、第1の製造ライン160を使用して炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造し、気体CO
2生成物をさらに取り出し、循環させて戻すことで第1の製造ライン160において再使用するための、方法200Cを図示する。方法200Cは方法200と類似の工程を有し、ブロック205~230は同一の過程に従う。ブロック235は気体CO
2投入口140からの気体CO
2の回収を示す。ブロック240は、インライン加圧システム152が気体CO
2に相変化を誘導し、これを液体CO
2に変化させることを表す。ブロック220と同様に、相変化は圧力の変化によって誘導されることに限定されなくてもよく、温度の変化または温度と圧力の両方の変化であってもよいと、当業者にはわかるはずである。
図6は、液体CO
2が得られる可能性のある温度および圧力を図示する。
【0072】
図5に戻り、液体CO
2を得たら、次いでこれを貯蔵タンク104の第1の製造ライン160中に再導入するが、これはブロック240とブロック205の間の線で表される。CO
2の再循環は第2の製造ライン160Aにおいて方法200Aにも適用してもよいと、当業者にはわかるはずである。
【0073】
回収された、生じた炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子のサイズを、高圧反応器124かインラインミキサー148の何れかの中に供給されたCa(OH)2粒子に基づいて決定してもよい。システム中に供給されたCa(OH)2粒子が大きいほど、生じる炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子は大きくなる。同様に、ナノサイズのCa(OH)2反応物粒子を系中に供給することにより、ナノ粒子炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子が実現され得る。
【0074】
方法200および方法200AをCa(OH)2粒子以外の粒子を用いて行ってもよいと、当業者は認識するはずである。方法200において、供給ラインを通じて高圧反応器124中に粒子を供給してもよく、そこで粒子は液体CO2と混合される。あるいは、方法200Aにおいて、供給ラインを通じてインラインミキサー148中に粒子を供給してもよく、そこで粒子は液体CO2と混合される。
【0075】
他の実施形態では、異なる方法を使用して水酸化カルシウム粒子を炭酸カルシウムで被覆してもよい。例えば、代替的な実施形態では、反応器内の圧力を突然0.518MPaを下回って低下させることにより、液体CO2を反応器中に急速流出させてもよい。先に反応器中に供給されたCa(OH)2粒子上にドライアイスを形成し、その際、Ca(OH)2粒子は前記ドライアイスの形成における不均一核生成部位として作用する。Ca(OH)2粒子の周囲のドライアイスはCa(OH)2粒子の外殻と反応し、CaCO3の殻を生成する。
【0076】
好ましい実施形態では、液体CO2を減圧して相変化を誘導して出口流中に送ってもよく、その際、液体CO2はCa(OH)2粒子と混合され、不均一核生成によってドライアイスで覆われたCa(OH)2粒子が作り上げられる。次いで、これらの粒子をサイクロン中で回収し、残ったドライアイスおよび炭酸カルシウム(CaCO3)被覆水酸化カルシウムCa(OH)2粒子は分離され、回収される。この実施形態の利点は、減圧して液体CO2に相変化を誘導することは実装が簡単であり、メンテナンスに手が掛からず故障点の少ないシステムにつながるという点である。この実施形態のもう1つの利点は、方法200と同様に、この実施形態の製造時間が既存の製造方法のそれより著しく短い点である。また、方法200と同様に、この実施形態から得られる炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子はまた、先に引用したVanceら(2015) 「Direct Carbonation of Ca(OH)(2) Using Liquid and Supercritical CO2: Implications for Carbon-Neutral Cementation」におけるものと比較してより高い殺生物活性を有し、とりわけ殺生物効果が有利な環境において用途が増えることにつながる。
【0077】
この好ましい方法を実装するための例示的なシステムが
図8に図示されており、ここで液体CO
2貯蔵タンク104は、ゲートバルブ112を通じて断熱ホース804中へと液体CO
2を供給してもよい。断熱ホース804中への液体CO
2の流量をゲートバルブ112と流量計808の両方を制御してもよい。断熱ホース804は膨張ノズル816(本明細書において、スロットル816またはスロットルバルブ816とも称される)に接続され、ここで液体CO
2は、液体から固体状態と気体状態とのミックスへと相変化を誘導するように減圧されてもよい。生じた固体と気体CO
2との混合物は出口流828によって移動させられ、そこでスクリューフィーダー824を介してCa(OH)
2粒子が添加される。不均一核生成によってドライアイスで覆われたCa(OH)
2粒子が作り出され、次いでこれがサイクロン832中に導入され、そこで昇華が起こる。残りの/過剰なCO
2および昇華物からのCO
2は、気体CO
2流出口140を通じて回収され、インライン加圧システム152を通じて気体状態から液体状態への相変化をした後、液体CO
2貯蔵タンク104に戻されてもよい。生成した炭酸カルシウム被覆水酸化物粒子は、接続した炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子流出口144を介して回収される。
【0078】
先に示したように、流量計808およびゲートバルブ112は、液体CO2が断熱ホース804中へ導入される速度を制御する。液体CO2流入スロットル816の流量は出口流828の運動エネルギーに比例し、出口流828の高い運動エネルギーは、液体CO2の初期流量およびスロットル816の入口と出口流828が始まるスロットル816の出口との間の圧力差によって達成されてもよい。出口流828の高い運動エネルギーは固体ドライアイスを浮遊させ、Ca(OH)2粒子も浮遊させる。好ましい実施形態では、断熱ホース804中およびスロットル816への流入時における液体CO2の流量は、約173.5kg/dである。スロットル816の出口付近で測定した、出口流828によって移動する固体CO2と液体CO2との混合物の速さは、6m/s~600m/sの範囲にわたっていてもよい。好ましい実施形態では、スロットル816の出口付近で測定した、出口流828における固体CO2と液体CO2との混合物の速さは、60m/sであってもよい。
【0079】
本実施形態では、断熱ホース804は、液体CO2貯蔵タンク104からスロットルバルブ816へと液体CO2を流す。断熱ホース804はまた、液体CO2がスロットルバルブ816に流入する前の位置812において、中を流れる液体CO2が0.518MPa~16MPaの圧力範囲および-56.56℃~30.98℃の温度範囲に確実に保たれるようにする。さらにまた、断熱ホース804は、液体CO2が特定の流量に達するようにさらに延伸していてもよい。しかし、液体CO2が液体CO2貯蔵タンク104内で前記圧力範囲および温度範囲に保たれ、液体CO2が特定の流量で排出され得る場合、断熱ホース804は任意選択であり得る。代替的な実施形態では、液体CO2貯蔵タンク104からの液体CO2をスロットル816中に直接導入してもよく、この場合、液体CO2がスロットル816中に導入される速度を流量計808およびゲートバルブ112が制御する。
【0080】
位置812と位置820の間で液体CO
2はスロットルバルブ816を通じて減圧され、液体から気体と固体との混合物へ相変化する。より具体的には、液体CO
2は気体CO
2と固体ドライアイスとの混合物へと変化する。スロットル816を使用して相変化することは、その簡単さ故に有利である。減圧は、スロットルバルブ816でのエネルギーバランスによりほぼ一定のエンタルピーで生じ、これは等エンタルピー過程としても知られる。相変化は圧力の変化または温度の変化によって誘導され、これは
図7より決定することができる。本実施形態では、位置820での圧力は0.518MPaを下回る。当業者は、液体CO
2から気体CO
2と固体ドライアイスとの混合物への相変化を誘導する、異なる構成ならびに温度および圧力などの変数を認識するはずである。
【0081】
気体CO2と固体ドライアイスとの混合物がスロットルバルブ816を出ると、混合物は出口流828に入る。出口流828はスロットルバルブ816に起因して高い運動エネルギーを有し、液体CO2による初期運動エネルギーも液体CO2貯蔵部104から断熱ホース804に流入する。高い運動エネルギーは、スクリューフィーダー824から導入されたCa(OH)2の粒子が出口流828に沿って流れるときにこれらを浮遊させる。出口流828は、断熱ホース、パイプ、または出口流828において必要とされる温度および圧力を維持し、出口流828の流れをサイクロン832に向けることが可能でありながら出口流828の高い運動エネルギーを妨害しない、任意の形態の物理構造によって囲まれていてもよい。スクリューフィーダー824は、Ca(OH)2粒子の出口流828への定常的かつ規則的な流れを確保するようにCa(OH)2粒子を導入するために使用される。好ましい実施形態では、スクリューフィーダー824は、スロットルバルブ816の出口かつ出口流828の始まりの近傍にあるが、この場合、スロットルバルブ816を出た後で運動エネルギーが最大となり、また、出口流828内において、後でさらに解説する不均一核生成のための時間がある。Ca(OH)2粒子の導入が規則的かつ制御された形でなされる限り、他の形態のフィーダーまたはCa(OH)2粒子の導入を考えてもよい。
【0082】
Ca(OH)2がスクリューフィーダー824を介して出口流828中に導入されると、Ca(OH)2粒子はドライアイスの不均一核生成部位として作用する。Ca(OH)2粒子の周囲にドライアイスを形成し、Ca(OH)2粒子の外殻と反応し、CaCO3の殻を生成する。高い運動エネルギーにより、Ca(OH)2粒子は出口流828において気体中を浮遊し、Ca(OH)2粒子を核として作用させ、Ca(OH)2粒子の全表面を露出させ、ドライアイスの一様な被覆を可能にする。Ca(OH)2粒子および気体CO2と固体ドライアイスとの混合物が出口流828中を進むにつれ、また、Ca(OH)2粒子の周囲で不均一核生成が生じるにつれ、昇華もまた生じてもよく、出口流828中の、Ca(OH)2粒子の周囲で不均一核生成をしない過剰なドライアイス、およびCa(OH)2粒子の周囲における不均一核生成の結果として成長した過剰なドライアイスは、気体CO2に相変化してもよい。同様に、スクリューフィーダー824から出口流828に入った後で早くも不均一核生成を受けるCa(OH)2粒子は、反応しドライアイスで覆われたコアシェル型水酸化カルシウム-炭酸カルシウム(CSCC)粒子になり始めてもよい。また、出口流828内における温度および圧力の変化により、気体CO2が出口流828中を進む際にこれをドライアイスにしてもよい。さらにまた、高い運動エネルギーがCa(OH)2の不均一核生成を促進する一方で、被覆されないままの少数のCa(OH)2粒子がなお存在していてもよい。したがって、サイクロン832中に導入された、得られた混合物は、気体CO2、固体ドライアイス、Ca(OH)2粒子、ドライアイスで覆われたCa(OH)2粒子、およびドライアイスで覆われたCSCC粒子を含んでいてもよい。
【0083】
前記混合物がサイクロン832に入りその中で渦巻かれると、昇華が生じ続け、出口流828からサイクロン832中に導入された過剰なドライアイスは、Ca(OH)2粒子を被覆するものであろうとスロットルバルブ816による相変化に起因するものであろうと、気体CO2に相変化してもよい。また、出口流828内で不均一核生成が生じなかった場合、被覆されていないCa(OH)2粒子はサイクロン832内で不均一核生成を受けてもよい。さらにまた、ドライアイスで被覆されたCa(OH)2粒子は反応し続けて、ドライアイスで覆われたCSCC粒子を作り出す。サイクロン832中の混合物はまた、サイクロン832中で温度の上昇および圧力の低下を受けてもよい。温度の上昇はサイクロン832を取り囲む断熱の欠如によるものであってもよく、昇華の速さを増加させるための加熱用電熱線の追加によるものであってもよい。圧力の低下はサイクロン832の形状および設計に起因して発生する。方法200と同様に、昇華が生じている最中のドライアイスで覆われたCSCC粒子の滞留時間は、水酸化カルシウム粒子上の炭酸カルシウム被覆の厚さに影響することになる。サイクロン832中におけるドライアイスで覆われたCSCC粒子の滞留時間は、サイクロン832の形状および設計を含む様々な因子によって影響を受け得る。
【0084】
サイクロン832は、サイクロン分離および/または遠心力によってCaCO3被覆Ca(OH)2粒子から気体CO2をさらに分離し、粒子の重量により、またはCaCO3粒子がサイクロン832の壁に衝突したときに運動量を失う結果、CaCO3被覆Ca(OH)2粒子は重力によってサイクロン832の底部に沈降し、サイクロン832の底部の炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム生成物粒子流出口144にて回収される。本実施形態では、回収装置836がCaCO3被覆Ca(OH)2粒子生成物を回収するが、明らかであろうが回収装置836は任意選択であり、存在する場合、CaCO3被覆Ca(OH)2粒子生成物の回収に際して何れの形態または大きさであってもよい。
【0085】
気体CO2は、サイクロン832のスピン効果により、サイクロン832の頂部の気体CO2流出口140で回収される。システム100Cの実施形態と同様に、気体CO2流出口140で回収される気体CO2は、インライン加圧システム152を通過した後、戻りライン156を介して貯蔵タンク104に戻されてもよい。先に解説したように、インライン加圧システム152は戻りライン156内の圧力を上昇させてCO2に相変化を誘導し、気体CO2を液体CO2に変換する。
【0086】
代替的な実施形態では、サイクロン832を電気集塵装置または分離容器136に置き換えて、ドライアイスの昇華および残った混合物からのドライアイスで覆われたCSCC粒子の分離を可能としてもよい。異なる設備を使用して、ドライアイスの昇華ならびに気体CO2および他の混合物成分からのドライアイスで覆われたCSCC粒子の分離を可能にしてもよいと、当業者は認識するはずである。
【0087】
図9を参照すると、システム800を使用して炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子を製造するための方法900が図示されている。ブロック905において、液体CO
2は、液体CO
2貯蔵タンク104からゲートバルブ112、断熱ホース804、およびスロットルバルブ816を通じて出口流828中へと排出され、そこで液体CO
2がスロットルバルブ816を通じて減圧されると、液体CO
2から気体CO
2と固体ドライアイスとの混合物へと相変化する。
【0088】
気体CO2と固体ドライアイスとの混合物が出口流828中を進むと、スクリューフィーダー824が規則的かつ制御された速度でCa(OH)2粒子を出口流828中に導入し、これが気体CO2と固体ドライアイスとの混合物に合流する。これをブロック910に示す。
【0089】
ブロック915において、Ca(OH)2粒子が出口流828中を進むと、Ca(OH)2粒子がドライアイスの不均一核生成部位として作用する。先に解説したように、出口流828の高い運動エネルギーに起因して、Ca(OH)2粒子は大気中に浮遊し、これにより、Ca(OH)2粒子の周囲におけるドライアイスの構築および形成に向けてCa(OH)2粒子の表面が曝露される。ドライアイスで覆われると、ドライアイスで覆われたCa(OH)2粒子の粒子凝集は制限される。
【0090】
ブロック920において、ドライアイスで覆われたCa(OH)2粒子はサイクロン分離のためにサイクロン832中に導入される。サイクロン832内の回転効果に曝露されながら、ドライアイスで覆われたCa(OH)2粒子、および出口流828からの、Ca(OH)2粒子の周囲に形成しなかった過剰な固体ドライアイスが昇華され、ドライアイスの相を気体CO2へと変化させる。これをブロック925に示す。
【0091】
サイクロン分離により、気体CO2と炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子とが分離され、気体CO2はサイクロン832の頂部の気体CO2流出口140(ブロック935で示される)を通じて排出され、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子はサイクロン832の底部に落下し、炭酸カルシウム被覆水酸化カルシウム粒子流出口144を通じて回収される(ブロック930に示される)。
【0092】
ある特定の実施形態では、ブロック940で示されるように、回収された気体CO2は、気体CO2から液体CO2への相変化を誘導することにより場合によりリサイクルされてもよく、その際、液体CO2は、液体CO2貯蔵タンク104に戻されて再びブロック905で排出されてもよい。
【0093】
上記の記述および添付の図面は、本発明者がこの度企図した本発明の特定の好ましい実施形態に関するが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変化、改変、および適合を行ってもよいことが理解されるはずである。
【国際調査報告】