IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカルの特許一覧 ▶ サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィクの特許一覧 ▶ ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエの特許一覧 ▶ サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・モンペリエの特許一覧 ▶ イーブイ-テクノロジーズの特許一覧

特表2024-537542磁場を測定するための装置及びシステム
<>
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図1
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図2
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図3
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図4
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図5
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図6
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図7
  • 特表-磁場を測定するための装置及びシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】磁場を測定するための装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20241003BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61B 5/242 20210101ALI20241003BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 R
A61B5/242
A61B5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545066
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022078126
(87)【国際公開番号】W WO2023061952
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21306423.1
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】513096967
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE MONTPELLIER
(71)【出願人】
【識別番号】524136148
【氏名又は名称】イーブイ-テクノロジーズ
【氏名又は名称原語表記】EV-TECHNOLOGIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】トラン,クアン・フン
(72)【発明者】
【氏名】テルキ,フェリアル
(72)【発明者】
【氏名】グエン,トゥルング・キン
(72)【発明者】
【氏名】ボゲ,グドルン
(72)【発明者】
【氏名】ワネ,シディナ
(72)【発明者】
【氏名】ブーセックソウ,アッゼジン
【テーマコード(参考)】
2G017
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA08
2G017AC01
2G017AD55
2G017BA05
2G017BA15
4C017AA02
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017FF05
4C127AA10
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
本発明は、サブピコテスラ範囲(例えば数ナノテスラより低い)の磁場などの弱い磁場を測定するための測定装置に関する。測定装置は、低ノイズ処理回路に結合された超高感度磁気センサ(又は超高感度磁気センサのアレイ)を含む。処理回路は、低ノイズ増幅器及びアナログフィルタを含む2ステージ設計を含む。本発明は、非常に小さな磁場を良好な精度及び非常に小さなノイズで測定する能力のおかげで、磁気心臓血管(MCV)の用途に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気信号を測定するための測定装置(4)であって、
前記測定装置(4)が、
磁気センサ(10)と、
前記磁気センサの出力に接続された電子処理回路(12)と、
を含み、
前記電子処理回路(12)が、
前記磁気センサ(10)の出力と直列に接続された第一の増幅器及びフィルタステージ(20、22、24)と、
前記第一の増幅器及びフィルタステージ(26、28、30)と直列に接続された第二の増幅器及びフィルタステージ(20、22、24)と、
前記第二の増幅器及びフィルタステージ(26、28、30)の出力に接続されたアナログ-デジタル変換器(32)と、
を含み、
前記磁気センサ(10)が、高い熱安定性を有する高感度磁気抵抗センサであり、
前記第一の増幅器及びフィルタステージ(20、22、24)が、第一の低ノイズ増幅器(20)と、少なくとも第一の線形アナログ(22)及び/又は第一の非線形アナログ(24)フィルタとを含み、
前記第二の増幅器及びフィルタステージ(26、28、30)が、第二の低ノイズ増幅器(26)と、第二の線形アナログフィルタ(28)と、第二の非線形アナログフィルタ(30)とを含み、
前記アナログ-デジタル変換器(32)が、前記処理回路の出力インタフェースにさらに接続される、測定装置(4)。
【請求項2】
前記第一の増幅器及びフィルタステージが、第一の低ノイズ増幅器(20)と、第一の線形アナログフィルタ(22)とを含み、前記第二の増幅器及びフィルタステージが、第二の低ノイズ増幅器(26)と、第二の非線形アナログフィルタ(30)とを含む、請求項1に記載の測定装置(4)。
【請求項3】
前記第一及び第二の線形フィルタ(28)の各々が、バターワースバンドパスフィルタを含み、前記バンドパスフィルタが、好ましくは0.01Hzから1000Hzの周波数範囲を有する、請求項1又は2に記載の測定装置(4)。
【請求項4】
前記第一及び第二の非線形アナログフィルタ(24、30)が、50Hz又は60Hz及び/又はそれらの高調波の周波数成分を除去するために使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置(4)。
【請求項5】
前記磁気センサ(10)及び前記電子処理回路(12)が、チップ上の埋め込み特定用途集積回路システム又はパッケージ内の埋め込みシステムのように同一の基板上に集積される、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置(4)。
【請求項6】
前記測定装置(4)が、集積低ノイズ電源をさらに含み、
前記低ノイズ電源が、少なくとも、
前記低ノイズ増幅器、前記線形アナログフィルタ、及び前記非線形アナログフィルタに電力を供給するための電気バッテリと、
少なくとも前記磁気センサに電力を供給するための低ノイズ電流リミッタを含む電力変換モジュールであって、外部電源から電力を供給されるように構成された前記電力変換モジュールと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定装置(4)。
【請求項7】
前記測定装置(4)が、前記磁気センサ(10)及び前記電子処理回路(12)を収容する、例えばミューメタル製及び/又はファラデーケージを含む電磁遮蔽構造(60、62)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定装置(4)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の磁気信号を測定するための測定装置(4)を含む測定システム(2)であって、前記電子処理回路(12)の出力に接続されたプログラマブルマイクロコントローラのようなプロセッサ(34)が、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、及びカルマンフィルタを含むデジタルフィルタを実行するように構成されている、測定システム(2)。
【請求項9】
コンピュータシステム(6)と、請求項1~7のいずれか一項に記載の磁気信号を測定するための測定装置(4)を含む測定システム(2)であって、前記コンピュータシステム(6)が、前記測定装置(4)の出力に接続されており、前記コンピュータシステム(6)が、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、及びカルマンフィルタ(50)を含むデジタルフィルタを実行するように構成されている、測定システム(2)。
【請求項10】
前記コンピュータシステム(6)が、高速データリンク(40)によって前記測定装置(4)に接続されている、請求項9に記載の測定システム(2)。
【請求項11】
前記高速データリンク(40)が、イーサネット接続などの有線高速データリンク、又は5G電話ネットワーク接続などの無線高速データリンクである、請求項10に記載の測定システム(2)。
【請求項12】
前記測定システム(2)が、前記磁気センサの機能性を監視し、前記磁気センサの感度の較正を可能にするように構成された内蔵セルフテスト機能(306)を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項13】
前記測定システム(2)が、生体被験者の心臓血管システムによって生成された、及び/又は生体被験者の電気活動及び/又は生体物の血管ネットワークによって生成された磁場を測定するように構成される、請求項8~12のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項14】
前記磁気センサ(10)が、0.1μmから10mmの間に含まれる空間分解能で、生体被験者の血管ネットワークの一部から生成された磁場を直列又は並列のいずれかで測定するように構成されたセンサマトリクス(100、110、120、130)である、請求項8~13のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項15】
前記測定システム(2)が、被験者の血管システムの状態を検査するために、
-血管又は複数の血管のような、血管システムの少なくとも一部の流れの方向、
-脈動率、
-血管システムの少なくとも一部の拍動指数及び抵抗指数、
-血管システムの少なくとも一部の壁コンプライアンスのキャパシタンス、
-血管システムの少なくとも一部の血流のインダクタンス、
-血管システムの少なくとも一部の圧力、
-血管システムの少なくとも一部の血流の速度、
-血管システムの少なくとも一部の脈波伝播の速度、
-血管壁の少なくとも一部の硬さ、
のデータのうちの少なくとも1つを抽出するように構成される、請求項8~14のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項16】
前記測定システム(2)が、磁性材料に起因する磁場の存在を測定するか、又は少量の磁性材料の磁気特性を測定するように構成される、請求項8~14のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【請求項17】
前記測定システム(2)が、石油又はガスパイプライン、石油及びガスタンカー、又は石油若しくはガスコンテナの任意の構造体のような、鉄化合物及び/又は磁気不純物を含む壁における亀裂又は厚さ減少を非破壊的な検出をするように構成される、請求項8~14のいずれか一項に記載の測定システム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場及び信号の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
心磁図は、最近、生体被験者の心臓血管システムを分析及び監視するための有望な技術として登場した。
【0003】
この非侵襲的な技術は、心臓の電気的活動、例えば心臓活動中に心筋線維の中を流れる電流によって生成される磁場及び信号の測定に基づいている。
【0004】
しかし、そのような磁場は通常弱い(例えば、数ナノテスラよりも低い)ため、正確に測定することは困難である。
【0005】
SQUID(Superconducting QUantum Interference Devices)磁力計のような超伝導センサに基づく測定装置が提案されており、そのようなセンサは非常に感度が高く、十分な精度で弱い磁場を測定することができる。
【0006】
しかし、これらのSQUIDに基づくシステムは、他の理由の中でも特に、持続的な冷却を必要とするため、しばしば使うことが面倒である。
【0007】
したがって、SQUIDに基づく測定システムのような既存の測定システムに関連する欠点を克服することができる、微小磁場を測定するための磁気測定システム、特に心磁図のような医療応用のための磁気測定システムが必要である。また、このようなシステムは、磁性ナノ粒子のような少量の磁性材料の測定、又は鉄金属材料中の微小亀裂の非破壊検出にも有望である。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、磁気信号を測定するための測定装置を提供することであって、
前記測定装置が、
磁気センサと、
前記磁気センサの出力に接続された電子処理回路と、
を含み、
前記電子処理回路は、
前記磁気センサの出力と直列に接続された第一の増幅器及びフィルタステージと、
前記第一の増幅器及びフィルタステージと直列に接続された第二の増幅器及びフィルタステージと、
前記第二の増幅器及びフィルタステージの出力に接続されたアナログ-デジタル変換器と、
を含み、
前記磁気センサが、高い熱安定性を有する高感度磁気抵抗センサであり、
前記第一の増幅器及びフィルタステージが、第一の低ノイズ増幅器と、少なくとも第一の線形アナログ及び/又は第一の非線形アナログフィルタとを含み、前記第二のフィルタステージが、第二の低ノイズ増幅器と、第二の線形アナログフィルタと、第二の非線形アナログフィルタとを含み、前記アナログ-デジタル変換器が、前記処理回路の出力インタフェースにさらに接続される。
【0009】
有利な任意の態様によれば、本発明の代替の実施形態は、単独で、又はすべての可能な技術的組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。
【0010】
前記第一の増幅器及びフィルタステージが、第一の低ノイズ増幅器及び第一の線形アナログフィルタを含む。前記第二の増幅器及びフィルタステージが、第二の低ノイズ増幅器及び第二の非線形アナログフィルタを含む。
【0011】
前記第二の線形フィルタが、バターワースバンドパスフィルタ(Butterworth band pass filter)を含み、前記フィルタが、好ましくは、0.01Hz~1000Hzの周波数範囲を有する。
【0012】
前記第一及び第二の非線形アナログフィルタが、50Hz又は60Hzの周波数成分及び/又はそれらの高調波を除去するために使用される。
【0013】
前記磁気センサ及び前記電子処理回路が、チップ上の埋め込み特定用途集積回路システム又はパッケージ内の埋め込みシステムのように同一の基板上に集積される。
【0014】
測定装置が、集積低ノイズ電源をさらに含み、前記低ノイズ電源が、少なくとも、
前記低ノイズ増幅器、前記線形アナログフィルタ及び前記非線形アナログフィルタに電力を供給するための電気バッテリと、
少なくとも前記磁気センサに電力を供給するための低ノイズ電流リミッタを含む電力変換モジュールであって、前記電力変換モジュールが、外部電源から電力を供給されるように構成される、前記電力変換モジュールと、
を含む。
【0015】
前記測定装置が、前記磁気センサ及び前記電子処理回路を収容する、例えばミューメタル(mu-metal)製の、及び/又はファラデーケージ(Faraday cage)を含む電磁遮蔽構造をさらに含む。
【0016】
上記で簡単に説明した測定装置と、前記電子処理回路の出力に接続されたプログラマブルマイクロコントローラのようなプロセッサとを含む測定システムであって、プロセッサが、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、及びカルマンフィルタを含むデジタルフィルタを実施するように構成されている。
【0017】
コンピュータシステムと、磁気信号を測定するための装置とを含む測定システムであって、前記コンピュータシステムが、前記測定装置の出力に接続され、前記コンピュータシステムが、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、及びカルマンフィルタを含むデジタルフィルタを実施するように構成されている。
【0018】
前記コンピュータシステムが、高速データリンクによって前記測定装置に接続されている。
【0019】
前記高速データリンクが、イーサネット接続などの有線高速データリンク、又は5G電話ネットワーク接続などの無線高速データリンクである。
【0020】
前記測定システムが、前記磁気センサの機能性を監視し、前記磁気センサの感度の較正を可能にするように構成された内蔵セルフテスト機能を備えている。
【0021】
前記測定システムが、生体被験者の心臓血管システムによって生成された、及び/又は生体被験者の電気活動及び/又は生体物の血管ネットワークによって生成された磁場を測定するように構成されている。
【0022】
前記磁気センサが、0.1μmから10mmの間に含まれる空間分解能で、生体被験者の血管ネットワークの一部から生成された磁場を、直列又は並列のいずれかで測定するように構成されたセンサマトリクスである。
【0023】
前記測定システムが、被験者の血管システムの状態を調べるために、以下のデータの少なくとも一つを抽出するように構成されている。
-血管又は複数の血管のような、血管システムの少なくとも一部の流れの方向、
-脈動率、
-血管システムの少なくとも一部の拍動指数と抵抗指数、
-血管システムの少なくとも一部の壁コンプライアンスのキャパシタンス、
-血管システムの少なくとも一部の血流のインダクタンス、
-血管システムの少なくとも一部の圧力、
-血管システムの少なくとも一部の血流の速度、
-血管システムの少なくとも一部の脈波伝播の速度、
-血管壁の少なくとも一部の硬さ。
【0024】
前記測定システムが、磁性材料に起因する磁場の存在を測定するか、又は、鉄金属、磁性ナノ粒子、若しくはスピンクロスオーバー材料などの少量の磁性材料の磁気特性を測定するように構成されている。
【0025】
前記測定システムが、石油又はガスパイプライン、石油及びガスタンカー、又は石油若しくはガスコンテナの任意の構造体のような、鉄化合物及び/又は磁性不純物を含む壁における亀裂又は厚さの減少を非破壊的な検出をするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、例としてのみ提供され、添付図面を参照してなされる以下の説明を読むことにより理解されるであろう。
【0027】
図1図1は、磁場を測定するための測定システムの模式図であり、測定システムは、本発明の実施形態による磁気信号を測定するための装置を含む。
図2図2は、図1の測定システムの模式図であり、電磁遮蔽要素が可視化されている。
図3図3は、図1の測定システムの例示的な性能を示すいくつかのグラフである。
図4図4は、図1の測定システムで使用することができる磁気センサアレイの第一及び第二の実施形態を示す。
図5図5は、図1の測定システムで使用することができる磁気センサアレイの第三及び第四の実施形態を示す。
図6図6は、ドップラー超音波検査と、図1の測定システムを使用する方法との実験的測定結果の比較を示す。
図7図7は、ドップラー超音波検査と、図1の測定システムを使用する方法との実験的測定結果の別の比較を示す。
図8図8は、図1の測定システムを実装する電子回路の一実施形態のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
いくつかの実施形態の説明
図1及び図2は、磁場を測定するための測定システム2を示す。
【0029】
好ましくは、測定システム2は、多くの他の用途が可能であるが、ヒト患者のような生体被験者の心臓血管システムによって生成される磁場を測定するように構成される。
【0030】
測定システム2は、磁気信号を測定するための装置4と、測定装置4に接続されたコンピュータシステム6とを含む。
【0031】
測定装置4は、磁気センサ10と、磁気センサ10の出力に接続された電子処理回路12とを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、磁気センサ10は、高感度磁気抵抗センサを含む。例えば、磁気センサ10は、平面ホール効果磁気センサである。
【0033】
いくつかの実施形態では、磁気センサ10は、一つ以上の感知素子を含むことができる。各感知素子は、特定の形状を有する微細構造を形成するように構成された磁性薄膜の多層構造を含む。
【0034】
図示の例では、微細構造は、中心円形の周りに規則的に間隔を置いて配置され、中心円形の外側に延びる4つの同一又は類似の放射状アームを含む中心円形の形状を有する。
【0035】
感知素子は、電子処理回路12との有線接続を可能にするために、電気接触パッドに接続することができる。
【0036】
例えば、磁気センサ10は、第一の出力端子及び第二の出力端子を含む。磁気センサは、第一の出力端子と第二の出力端子との間に電圧等の出力信号を送出するように構成される。
【0037】
例示目的で与えられる非限定的な例では、磁気材料スタックは、Ta/Py/Cu/IrMn/Ta層(パーマロイ、銅、イリジウム-マンガン合金及びタンタル緩衝層)の交換バイアス多層構造を含むことができ、各層は、10ナノメートル未満の厚さを有する。
【0038】
この多層構造の磁気特性の温度安定性を向上させるために、均一な磁場下での高温での製造中に、この多層構造をアニールすることができる。
【0039】
この形状及び材料は、磁場を検出するためにセンサによって使用される磁気抵抗特性及び/又は平面ホール効果特性を生成することができる。
【0040】
この磁気センサの例は、国際出願WO2017/207640A1に記載されており、その内容は、本出願に参考として組み込まれる。
【0041】
図2において、矢印V及びHは、センサに印加されるバイアス電圧の方向及びいくつかの測定中の磁場感度方向をそれぞれ示す。バイアス電圧Vは、バイアス電圧入力と接地入力との間に印加することができる(それぞれ、図1及び2において磁気センサ10の左端の電極及び右端の電極として見える)。
【0042】
例えば、磁気センサ10は、10V/Tより高い高感度を有する。
【0043】
多くの実施形態において、磁気センサ10は、10ppm/℃未満の変動を有する高い熱安定性を有する高感度磁気抵抗センサである。
【0044】
好ましくは、磁気センサ10は小さいサイズを有する。
【0045】
例えば、感知素子の最小サイズは50μmより小さく、好ましくは10μm以下である。図示の例では、磁気センサ10は、2×2mmのダイシング領域に適合する。それにもかかわらず、他の実施形態も可能である。
【0046】
電子処理回路12は、良好な信号対雑音比を維持しながら、磁気センサ10(例えば、信号のフィルタリング及び増幅)によって測定された信号を迅速かつ効率的に処理するように、より特に設計される。これは、磁気センサ10によって測定された非常に弱い磁場を表す信号は非常に弱く、ノイズによって容易にかき消され得るため、重要である。
【0047】
例えば、血管ネットワークにおいて、磁場は、ピコテスラからナノテスラの範囲にある。
【0048】
例えば、電子処理回路12は、低ノイズ処理回路である。
【0049】
多くの実施形態では、電子処理回路12は、第一の増幅器及びフィルタステージ(すなわち、要素20、22及び24を含む「第一ステージ」)、第二の増幅器及びフィルタステージ(要素26、28及び30を含む「第二ステージ」)を含む。
【0050】
第一ステージ及び第二ステージは、磁気センサ10の出力と直列に接続される。より正確には、第一ステージは、磁気センサ10の出力に接続される。第二ステージは、第一ステージの出力に接続される。
【0051】
電子処理回路12は、第二のフィルタステージの出力に接続されるアナログ-デジタル変換器32も含む。
【0052】
第一ステージは、第一の低ノイズ増幅器(LNA)20と、少なくとも線形アナログフィルタ22及び/又は非線形アナログフィルタ24を含む。第一の線形アナログフィルタ22は、地磁気の特徴のような信号の連続した寄生成分を除去するように構成される。
【0053】
この例では、第一ステージは、第一の低ノイズ増幅器20の出力に直列に一緒に接続された第一の線形アナログフィルタ22及び第一の非線形アナログフィルタ24を含む。
【0054】
例示的な例では、第一の低ノイズ増幅器20は、0.25nVHz-1/2の公称ノイズ及び2000の固定利得を有する。
【0055】
例示的な目的で与えられる非限定的な例では、第一の線形アナログフィルタ22は、DCオフセット成分を除去するように構成された0.01Hzの高域フィルタである。
【0056】
一実施形態によれば、第一の線形アナログフィルタ22は、0.01Hzから1000Hzの周波数範囲を好ましく有するバターワースフィルタである。
【0057】
第一の非線形アナログフィルタ24は、電気ネットワークからノイズを除去するように構成された50Hz又は60Hzの非線形フィルタであることができ(測定システム2は、50Hz又は60Hzの主周波数を有する電気ネットワークグリッドによって少なくとも部分的に電力を供給され得るため)、より一般的には、50Hz又は60Hzのピーク減衰及び/又はそれらの高調波をさらに除去するように構成されてもよい。
【0058】
第二ステージは、第二の低ノイズ増幅器26と、少なくとも第二の線形アナログフィルタ28及び/又は第二の非線形アナログフィルタ30とを含む。好ましくは、第二ステージは、少なくとも第二の低ノイズ増幅器26と線形アナログフィルタ28との両方を含む。
【0059】
この例では、第二ステージは、第二の低ノイズ増幅器26の出力に一緒に直列に接続された第二の線形アナログフィルタ28及び第二の非線形アナログフィルタ30を含む。
【0060】
例えば、第二の線形アナログフィルタ28は、例えば1次から3次までの選択可能なフィルタリングオーダー(filtering order)を有する150Hzローパス バターワースフィルタである。他の実施形態では、第二の線形アナログフィルタ28は、好ましくは0.01Hzから1000Hzまでの周波数範囲を有するバターワースフィルタである。
【0061】
第二の非線形アナログフィルタ30は、DCオフセット成分及びノイズを電気ネットワークから除去するように構成され、より一般的には、50Hz/又は60Hzのピーク減衰及び/又はそれらの高調波をさらに除去するように構成された、ノッチフィルタなどの50/60Hzフィルタであってもよい。
【0062】
例示の目的で与えられた非限定的な例では、第二の低ノイズ増幅器26は、3nVHz-1/2の公称ノイズ及び90の利得を有する。
【0063】
例示の目的で与えられた非限定的な別の例では、第二の低ノイズ増幅器26は、3nVHz-1/2の公称ノイズ及び180の利得を有する。
【0064】
アナログ-デジタル変換器32は、さらに、処理回路12の出力インタフェースに接続される。この例では、アナログ-デジタル変換器32は、4チャネル、16ビットのアナログ-デジタル変換器であるが、他の実施形態も可能である。
【0065】
例えば、処理回路12は、プログラマブルマイクロコントローラ(MC)などのプロセッサ34を含む。
【0066】
ここで使用される用語「プロセッサ」は、プロセッサ又はマイクロプロセッサを含む電子コントローラデバイスだけでなく、特定用途向け集積(ASIC)回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FGPA)回路、論理回路、アナログ回路、それらの等価物、及びここに記載される機能を実行することができる任意の他の回路又はプロセッサなどの、他の同等の要素も指す。
【0067】
プロセッサ34は、以下で説明するように、コンピュータシステム6に結合されるように構成された通信インタフェースに結合されてもよい。プロセッサ34は、通信インタフェースの一部であってもよい。
【0068】
好ましくは、測定装置4は、高速データリンク40によってコンピュータシステム6に接続される。通信インタフェースは、結果として適応される。
【0069】
いくつかの実施形態では、高速データリンク40は、イーサネット接続などの有線高速データリンクである。例えば、プロセッサ34は、高速イーサネットデータ伝送プロトコルを実装する32ビットマイクロコントローラである。
【0070】
いくつかの実施形態では、高速データリンク40は、5G電話ネットワーク接続などの無線高速データリンクである。
【0071】
任意であるがそれにもかかわらず有利な実施形態では、測定装置4は、集積低ノイズ電源と電力変換モジュールとをさらに備える。
【0072】
低ノイズ電源は、低ノイズ増幅器20及び26、線形アナログフィルタ22、及び線形アナログフィルタ28に電力を供給するための少なくとも電気バッテリを含む。
【0073】
電力変換モジュールは、少なくとも磁気センサ10に電力を供給するための低ノイズ電流リミッタを含む。電力変換モジュールは、電気メイングリッドなどの外部電源から電力を供給されるように構成することができる。
【0074】
好ましい実施形態では、磁気センサ10及び電子処理回路12は、同じ基板上に集積される。例えば、基板は、プリント回路基板である。それにもかかわらず、代替実施形態では、他の構成も可能である。
【0075】
例えば、磁気センサ10は、システムオンチップ(SoC)システムに埋め込まれた特定用途向け集積回路(ASIC)、又はパッケージ(SiP)に埋め込まれた特定用途向け集積回路(ASIC)に集積されてもよい。
【0076】
磁気センサ素子は、最新のパッケージングソリューション(ファンイン/ファンアウトウェハレベルチップスケールパッケージ(WLCSP)及び基板に埋め込まれた半導体(SESUB)又は任意の適切な技術)の利点を利用して、高度なCMOSシリコンベースの技術で実装することができる。
【0077】
図2に示すように、好ましい実施形態では、測定装置4は、磁気センサ及び電子処理回路を収容する電磁遮蔽構造をさらに備える。
【0078】
電磁遮蔽構造は、周囲環境からの高周波及び低周波ノイズから測定装置4を保護するように構成される。
【0079】
例えば、電磁遮蔽構造の第一の部分60は、磁気センサ10を含む測定装置4の第一の部分を囲む。
【0080】
電磁遮蔽構造の第二の部分62は、電子処理回路12を含む測定装置4の第二の部分を囲む。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、電磁遮蔽構造は、ミューメタル(mu-metal)で作られる。
【0082】
いくつかの他の実施形態では、電磁遮蔽構造は、ファラデーケージ(Faraday cage)を含む。
【0083】
磁気センサ10を電子処理回路12に接続するために使用される有線コネクタを保護し、電子処理回路12をプロセッサ34に接続するために、シールドされたコネクタ64及び66をそれぞれ使用することができる。シールドされたコネクタ64及び/又は66は、測定装置4の接地GNDに接続することができる。好ましくは、シールドされたコネクタ64及び/又は66は、低損失ケーブルである。
【0084】
さらに、プロセッサ34による高速データ処理からアナログ信号への干渉ノイズを最小限に抑えるために、電子処理回路12は、すべての信号線をシールドするか、又は電子処理回路12のアナログ及びデジタル部分に対して異なる接地面を有するなど、特定の設計上の考慮事項に従って構築することができる。図2において、接地は記号GNDで表される。
【0085】
コンピュータシステム6は、ノイズを除去するために、取得された信号をさらに分析及びフィルタリングするように構成される。制御システムとも呼ばれるコンピュータシステム6は、アルゴリズム及びソフトウェアコードを実行することができる電子回路を含む。
【0086】
例えば、コンピュータシステム6は、プロセッサ及び1つ以上のコンピュータメモリ要素を含むことができる。
【0087】
コンピュータメモリは、コンピュータコード及び/又は実行可能命令がプロセッサによって実行されるときに、受信した測定信号を処理する方法をプロセッサ及び電子制御ユニットに実行させるためのコンピュータコード及び/又は実行可能命令を格納する。
【0088】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム6は、超音波放射システムの動作を制御するように構成することもできる。
【0089】
コンピュータシステム6は、電子処理回路12の通信インタフェースに結合され、データを交換することができる通信インタフェースを含む。
【0090】
コンピュータシステム6は、ユーザインタフェースをさらに含むことができる。ユーザインタフェースは、グラフィカルディスプレイ、移動端末との遠隔制御及び/又はデータの交換を可能にする無線インタフェース、キーボード、マウス、ポインタ装置、タッチセンシティブスクリーンなどのデータ入力手段、又は任意の同等のインタフェース要素、又はそのようなインタフェース要素の任意の組み合わせなど、一つ以上のインタフェース要素を含むことができる。
【0091】
好ましい実施形態では、コンピュータシステム6は、デジタルフィルタモジュール50及びデジタルアルゴリズムモジュール52を含む。
【0092】
例えば、コンピュータシステム6のデジタルフィルタモジュール50は、ノイズ低減を改善するために、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、例えばノッチフィルタを含むデジタルフィルタを実装するように構成される。
【0093】
デジタルフィルタは、ハイパス、ローパス及びノッチフィルタを含むフィルタリングアルゴリズムによって実装される。アルゴリズムは、バターワースフィルタであってもよい。
【0094】
例えば、ローパスデジタルフィルタは、カットオフ周波数値ωよりも高い周波数を有する入力電圧Vin(jω)を遮断するための次のローパス バターワースフィルタであってもよい。
【数1】
【0095】
ハイパスデジタルフィルタは、期待された値よりも低い周波数を有する電圧信号を遮断するための次のハイパスバターワースフィルタであってもよい。
【数2】
【0096】
ノッチフィルタは、次のノッチバターワースフィルタであってもよく、定められた周波数値で不要なノイズ、例えば電力50/60Hzからのノイズ及びその高調波を除去するために使用される。
【数3】
【0097】
これらの方程式において、ωは角周波数(ω=2πf;f:測定時間における周波数)であり、ωはカットオフ値(f=f)での角周波数であり、Wはカットオフ帯域幅での角周波数であり、nはフィルタ次数の数であり、jは虚数である。
【0098】
フィルタ次数の数を増加させることにより、フィルタ品質が向上する。
【0099】
モジュール52は、フィルタリングされたデジタル信号から有用な情報をさらに抽出することを目的として、一つ以上の高度なデジタルフィルタを実装するように構成される。
【0100】
これは、自動分類器が、収集された信号に基づいて臨床的結論及び/又は自動診断を提供するために使用され得る磁気心臓血管システム(magnetocardiovascular system)などの医療用途において特に有用である。
【0101】
例えば、モジュール52は、不要なノイズ信号を除去し、自動診断システムで使用できるクリーンな信号を生成するために、カルマンフィルタを実装するように構成されてもよい。
【0102】
しかし、いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、例えばコンピュータシステム6が測定装置4に接続されていない場合に、少なくとも線形フィルタ、非線形フィルタ、及びカルマンフィルタを含むデジタルフィルタを実装するように構成されてもよい。
【0103】
一実施形態によれば、モジュール50によって実装されるフィルタは適応型であり、言い換えれば、それらのパラメータは、アプリケーションに適応するように自動的に更新される。更新されたパラメータは、例えば、ノッチフィルタのカットオフ周波数及びカットオフ帯域幅、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタのカットオフ周波数、帯域幅及び次数である。
【0104】
同様に、一実施形態によれば、モジュール52は、適応型アドバンストフィルタを実装するように構成され、例えば、カルマンフィルタの推定ノイズ及び測定ノイズなどのパラメータを学習及び更新する。
【0105】
結論として、測定システム2は、広い周波数範囲(例えば、10mHzから10GHz)において、高感度(10~15emuまで)で低磁場(例えば、数ナノテスラ以下の磁場)を測定することができるという利点がある。
【0106】
これは、主として、磁気センサ10に適合し、測定された信号が電子処理回路12によって可能な限り少ない付加ノイズで処理(例えば、増幅、フィルタリング、デジタル信号への変換)されることを保証するように設計された、磁気センサ10と電子処理回路12との関連付けによるものである。
【0107】
さらに、コンピュータ6又はプロセッサ34によって実装されるデジタルフィルタは、ノイズのさらなるフィルタリングを達成し、-105dBよりも高い品質のフィルタリングを可能にする。第一ステージ及び第二ステージのアナログフィルタ、及びデジタルフィルタは、所望の品質のノイズフィルタリングを達成するために協働するという利点がある。
【0108】
したがって、本発明は、測定システムが良好な精度及び非常に少ないノイズで非常に小さな磁場を測定する能力を有するため、磁気心臓血管(MCV)用途などの医療用途での使用に特に適している。
【0109】
例えば、測定システム2は、サブピコテスラ範囲の磁場(数ナノテスラ未満)などの弱い磁場を測定することができる。
【0110】
より具体的には、測定システム2は、超伝導磁力計に基づく既存の測定システムと同等の精度で弱い磁場を確実に測定することができるが、SQUID磁力計などの超伝導磁力計に一般的に関連する実用上の欠点がない。
【0111】
本発明によれば、測定は周囲温度で行うことができ、複雑でエネルギー集約的な冷却システムを必要としない。
【0112】
さらに、他の方法とは対照的に、本発明によれば、磁気測定は、患者の皮膚に直接接触することなく、患者の体内で造影剤を使用することなく、非侵襲的に行うことができる。
【0113】
磁気センサ10のサイズが小さいため、測定システム2は、より容易に小型化することができる。
【0114】
図3は、測定システムの例示的な性能を示す。
【0115】
図3の左端の部分(部分a)において、第一の曲線80は、0nTから150nTの範囲で磁場(x軸)を増減させるときの測定装置(PHMR電圧、y軸、単位ボルト)の出力電圧応答を示す。この例では、測定は13Hzの周波数に対して行われる。
【0116】
挿入グラフは、測定装置の推定感度(曲線82)に対応しており、磁気励起場Hに対するバイアス電圧Vの導関数に等しいと定義され、この例では約771.5kV/Tに等しいと推定される。
【0117】
図3の右端の部分(部分b)において、第三の曲線84は、周波数(y軸)の関数としてのノイズ(THz-1/2で表されるy軸)の変化を示す。装置の等価磁気ノイズフロアは、0.1Hzで100pTHz-1/2に等しく、100Hzを超えると2pTHz-1/2になると推定される。設計された周波数帯域幅150Hzに対する周波数の関数としてのシステムの磁場検出性は、ノイズレベルに150の平方根を乗算することによって推定することができる。
【0118】
図8は、測定装置4で使用される電子回路の例示的な実施形態のブロック図であり、説明の目的で与えられる。
【0119】
この例では、測定装置4は、前述の磁気センサと同様の磁気センサを含む特定用途向け集積回路300によって実装される。
【0120】
この例では、磁気センサは、センサアレイ304を形成するように配置された複数の磁気センサ素子302を含む。
【0121】
センサアレイ304は、前述のフィルタ及び増幅器ステージを含むアナログフロントエンドモジュール(ブロック306)に接続される。
【0122】
アナログフロントエンドモジュール306は、送信モード(TX-信号生成)又は受信機モード(RX)で動作可能なスイッチド(switched)フロントエンドモジュール308を含む。
【0123】
例えば、磁気センサ素子302は、送信モード(TX)又は受信機モード(RX)のいずれかで双方向に動作可能である。送信モードでは、オンチップ発振器を用いて磁気センサ素子302によってパルス信号を生成することができる。
【0124】
アナログフロントエンドモジュール306は、広帯域インピーダンスマッチングのためのセンサ負荷調整モジュール310を含む。
【0125】
アナログフロントエンドモジュール306は、磁気センサの機能性を監視し(すなわち、この場合のアレイ304)、磁気センサの感度の較正を可能にするように構成された内蔵セルフテスト機能を含む。
【0126】
信号コンディショニングモジュール(ブロック312)は、アナログフロントエンドモジュール306の出力に接続される。
【0127】
信号コンディショニングモジュール312は、例えば信号をフィルタリングすることによって、測定された信号を調整するように構成される。例えば、信号コンディショニングモジュール312は、フィルタバンク及び/又はデジタルフィルタ50を実施することができる。
【0128】
信号コンディショニングモジュール312は、センサの較正を伴うベースバンド処理のための潜在的なダウンコンバージョンのために構成することができる。このモジュール312は、バイアス調整及び感度調整も制御することができる。
【0129】
高度な信号処理ステージ314は、信号コンディショニングモジュール312の出力に接続される。
【0130】
例えば、信号処理ステージ314は、ベースバンド周波数で動作し、最終アプリケーションに必要な信号を抽出するために必要なすべてのアルゴリズム計算を処理するように構成される。信号処理ステージ314は、例えば、モジュール316、318及び320を使用して、センサの制御及び規制を調整し連係する。
【0131】
信号処理ステージ314は、高速データ伝送のための変調方式及び通信プロトコルを実装するための機能(モジュール324)を含む。
【0132】
この実装は、別個のアナログ及びデジタル信号処理ブロックを有する個別のソリューションに基づく既存のソリューションよりも好ましい。測定システムは、ASICベースの実装としてゼロから設計されるため、ノイズ源間の相関を適切に考慮しながら、アナログ検出とリアルタイム信号処理を組み合わせることが容易である。
【0133】
他の多くの実施形態が可能である。
【0134】
図4及び図5は、磁気センサ10の別の実施形態を示す。図1の実施形態を参照して説明した単一の磁気センサ10は、空間内の複数の位置で測定を行うために、センサアレイ又はセンサマトリクスによって置き換えられる。
【0135】
本明細書において、「磁気センサ10」という表現は、上述した単一の磁気センサ素子、又はセンサアレイ又はセンサマトリクスなどの複数の磁気センサ素子の組み合わせを指すために使用することができる。
【0136】
次に、磁気センサのアレイ又はマトリクスの例を説明する。
【0137】
図4(a)は、長手方向に沿って整列した複数の個々の磁気センサ10を含むセンサアレイ100を示す。
【0138】
センサアレイ100は、定義された幾何学的方向に沿って正確な測定を可能にする。例えば、センサアレイ100のセンサ10は、長手方向に沿って周期的に間隔を置いて配置される。個々のセンサ10は、特性が同一であるか、又は少なくとも類似していることが好ましい。
【0139】
図示の例では、5つのセンサ10がアレイ内で互いに接続されており、この数は、非限定的な例としてのみ与えられている。
【0140】
例えば、各センサ10のそれぞれの第一出力端子は、主第一出力(main first output)V1に接続される。各センサ10のそれぞれの第二出力端子は、主第二出力(main second output)V2に接続される。センサ10は、それらの電圧バイアス入力及び接地入力によって、主電圧バイアス入力Vbiasと主電気接地(main electrical ground)GNDとの間の直列に接続される。
【0141】
図4(b)は、複数の個々のセンサ10を含むセンサマトリクス110を示す。センサマトリクス110は、センサ10が、単一方向の代わりに正方形などの二次元に沿ってパターンを形成するように接続されることを除いて、センサアレイ100と同様の方法で組み立てられる。
【0142】
センサマトリクス110は、二方向に沿った正確な測定を可能にする。
【0143】
例えば、センサマトリクス110のセンサ10は、2つの長手方向に沿って周期的に間隔を置いて配置される。個々のセンサ10は、特性が同一であるか、又は少なくとも類似していることが好ましい。
【0144】
センサ10は、それぞれの第一出力端子及び第二出力端子によって、主第一出力V1と主第二出力V2との間に直列に接続される。センサ10は、それらの電圧バイアス入力及び接地入力によって、主電圧バイアス入力Vbiasと主電気接地GNDとの間に直列に接続される。
【0145】
図5(a)は、主第一出力V1と、主第二出力V2と、主電圧バイアス入力Vbiasと、主電気接地GNDとの間にブリッジ状パターンで接続された4つの個々のセンサ10を含むセンサマトリクス120を示す。センサ10は、それぞれの第一出力及び第二出力によって、主出力V1、V2、Vbias及びGNDに接続されてもよい。
【0146】
図5(b)は、主第一出力V1と、主第二出力V2と、主電圧バイアス入力Vbiasと、主電気接地GNDとの間のブリッジ状パターンにある4つのセンサモジュール132を含むセンサマトリクス130を示す。各センサモジュール132は、センサマトリクス120と類似又は同一である。センサモジュール132は、それぞれの第一及び第二主出力(例えば、図5(a)に見える主出力V1及びV2)によって、主出力V1、V2、Vbias及びGNDに接続することができる。
【0147】
これらの構成は、2つの方向に沿ったより正確な測定を可能にする。磁気センサ10のサイズが小さいため、センサマトリクス100、110、120及び130は、より容易に低空間分解能測定のために小型化することができる。
【0148】
好ましい実施形態では、磁気センサ10は、10mmからマイクロメートル(μm)範囲又はサブマイクロメートルまでの範囲、例えば、1mm、又は100μm、又は10μm、又は1μm、又は0.1μmまでの範囲の空間分解能で、生体被験者の血管ネットワークの一部から生成された磁場を、直列又は並列に測定するように構成される。
【0149】
例えば、空間分解能は、0.1μmと10mmとの間に含まれる。
【0150】
多くの実施形態では、磁気センサ10は、センシングプローブの一部である。
【0151】
例として、測定装置4及び測定システム2のいくつかの可能な適用を説明する。
【0152】
例えば、測定システム2は、被験者の血管システムのコンディショニング状態を調べるために、以下の情報データの少なくとも1つを抽出するように構成される。
-血管又は複数の血管のような、血管システムの少なくとも一部の流れの方向、
-脈動率、
-血管システムの少なくとも一部の拍動指数及び抵抗指数、
-血管システムの少なくとも一部の壁コンプライアンスのキャパシタンス、
-血管システムの少なくとも一部の血流のインダクタンス、
-血管システムの少なくとも一部の圧力、
-血管システムの少なくとも一部の血流の速度、
-血管システムの少なくとも一部の脈波伝播の速度、
-血管壁の少なくとも一部の硬さ。
【0153】
図6において、符号200は、循環インピーダンス/抵抗を決定するために、被検者(ヒト被検者など)の橈骨動脈(グラフ202)及び大腿動脈(グラフ204)の上で測定システム2を用いて実施された磁気心臓血管システムの結果を示す。
【0154】
いずれの場合も、測定された信号は、時間(任意の単位で表されるx軸)の関数として与えられ、電圧(磁気センサ10によって出力として与えられる)で表される。
【0155】
本測定システム2で得られた結果(実線で示される)は、ドップラー超音波検査(破線領域で示され、cm/s単位の速度で表される)などの公知の技術で得られた測定結果とともに、グラフ202及び204の両方に示されている。
【0156】
測定システム2で得られたデータは、ドップラー超音波検査から得られた参照データと実験的に良好に一致していることがわかる。これは、測定システム2が、使用及び実装がはるかに簡単であるにもかかわらず、ドップラー超音波検査などの公知の技術と同様に信頼性の高い心磁気心臓血管データを提供できることを意味する。
【0157】
図7において、符号250は、大腿動脈における脈波伝播の速度を決定するために、ヒト被験者の下肢において測定システム2で実施された磁気心臓血管測定の結果を示している。
【0158】
例えば、被験者の心臓の収縮期駆出によって生成された動脈波は、動脈壁の弾性に依存する速度で、大動脈に沿って、次いで血管システムの動脈を通って伝播する。したがって、この速度を測定することにより、被験者の血管システムの少なくとも一部における動脈壁の弾性に関する信頼できる情報が得られる。
【0159】
符号252、254及び256の3つのグラフは、間隔を置いて下肢に沿って縦方向に配置された2つの別々の点の3つの反復測定の出力に対応する。
【0160】
代替磁気信号の検出における感度及び位相が類似している2つの測定プローブから測定システム2によって測定された磁気心臓血管データは、時間(x軸(秒))の関数としての電圧(y軸上の「測定された信号」)として表され、実線及び点線で表される。実線及び点線は、凡例「PTA」を有する後脛骨動脈及び下肢に沿った大腿動脈での2つの測定値に対応する。例えば、データは、互いに間隔を置いて配置された複数のセンサ10を使用して、又は低い空間分解能を有するセンサアレイ100に類似したセンサアレイを使用して収集されてもよい。
【0161】
磁気心臓血管データは、2つの測定点の距離を、収縮期ピークにおける2つの測定値の異なる時間の差で除算することによって脈波伝播の速度を分析することを可能にする。健常ボランティアの測定例では、下肢の脈波伝播速度は約10m/sであり、ドップラー超音波及び光電式容積脈波記録法(photoplethysmography、PPG)の測定の組み合わせのような既知の測定方法を用いて得られた参照データとよく一致する。参照データは、別々のドップラー/PPGプローブの2つの測定セットの相関によって得ることができる。
【0162】
実験結果は、測定システム2によって得られた磁気心臓血管データが参照データと実験的によく一致することを、再度、示している。
【0163】
これは、測定システム2が、使用及び実施がはるかに簡単であるにもかかわらず、ドップラー超音波に基づく方法のような既知の技術と同様に信頼できることを意味する。
【0164】
他の多くの実施形態が可能である。上記の実施形態及び代替手段は、特許請求の範囲の範囲内で、本発明の新しい実施形態を作成するために、互いに組み合わせることができる。
【0165】
有利には、測定装置は、例えば患者の血管ネットワークの中の小さな磁場を正確に測定するために、高い熱安定性を有する高感度磁気抵抗センサを含む。
【0166】
有利には、第一の増幅器及びフィルタステージと第二の増幅器及びフィルタステージとをカスケード接続することにより、増幅器の利得-帯域幅のトレードオフを克服することができる。
【0167】
有利には、磁気センサ10及び電子処理回路12を囲む電磁遮蔽構造は、周囲環境からの高周波及び低周波ノイズを回避することに役立つ。
【0168】
本発明は、心磁図の分野における磁場及び信号の測定のためのその適用において説明されている。
【0169】
本発明の用途はこの分野に限定されない。
【0170】
例えば、有利には、測定システム2は、磁性材料に起因する磁場の存在を測定するか、又は、鉄金属、若しくは磁性ナノ粒子、若しくはスピンクロスオーバー材料などの少量の磁性材料の磁気特性を測定するように構成される。
【0171】
例えば、有利には、測定システム2は、石油若しくはガスパイプライン、石油及びガスタンカー、又は石油若しくはガスコンテナの任意の構造体のような、鉄化合物及び/又は磁性不純物を含む壁における亀裂又は厚さの減少を非破壊的に検出するように構成される。したがって、有利には、本発明は、石油及びガス産業におけるパイプラインシステムを監視するための用途を見出すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】