(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ナノ粒子製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20241003BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241003BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241003BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241003BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20241003BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241003BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20241003BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241003BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K31/4745
A61K9/51
A61K47/10
A61K47/40
A61K9/06
A61K39/215
A61P31/14
A61K9/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545068
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 GB2022052569
(87)【国際公開番号】W WO2023062353
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524137307
【氏名又は名称】ニューイミューン ザ セカンド,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ホースバーグ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ムーディー,マーク デービッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA65
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC06
4C076DD22Z
4C076DD23D
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076DD63
4C076DD67D
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE39
4C085AA03
4C085BA71
4C085BB11
4C085CC08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本開示は、ナノ粒子ワクチンアジュバント、およびナノ粒子ワクチンアジュバントを含有するワクチン組成物;そのようなアジュバントおよび組成物を調製する方法;ならびに、そのような組成物およびアジュバントをワクチン接種のために使用する方法に関する。本明細書で開示されているワクチンアジュバントは、ワクチン接種に対して免疫応答を向上させるのに有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部脂質シェル、および前記外部脂質シェル内にカプセル化された内部水性コアを含む複数のナノ粒子を含み、前記内部水性コアが、イミキモド、およびイミキモドとの錯体を可逆的に形成することが可能であるホスト分子を含む、ワクチンアジュバント。
【請求項2】
イミキモドが、イミキモド(R-837)またはイミキモド(R-837)の活性構造類似体、例えばレシキモド、ガルジキモド、S28690、852-A、854A、CL075またはCL097である、請求項1に記載のワクチンアジュバント。
【請求項3】
前記ホスト分子と錯化したイミキモドを含む、請求項1または2に記載のワクチンアジュバント。
【請求項4】
前記ナノ粒子の前記内部水性コアが、ヒドロゲルを含み、ヒドロゲルが、任意選択で、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ3-ヒドロキシブチレートまたはポリ4-ヒドロキシブチレート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリカーボネート;ポリアミド、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;他の生体適合性があるポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド);セルロース、ポリアクリル酸、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、プロラミン、それらの多糖、誘導体、コポリマーおよびブレンドから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項5】
前記ホスト分子が、シクロデキストリン、好ましくはα-シクロデキストリン;β-シクロデキストリン;γ-シクロデキストリン;メチルα-シクロデキストリン;メチルβ-シクロデキストリン;メチルγ-シクロデキストリン;エチルβ-シクロデキストリン;ブチルα-シクロデキストリン;ブチルβ-シクロデキストリン;ブチルγ-シクロデキストリン;ペンチルγ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルα-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシブチルβ-シクロデキストリン;アセチルα-シクロデキストリン;アセチルβ-シクロデキストリン;アセチルγ-シクロデキストリン;プロピオニルβ-シクロデキストリン;ブチリルβ-シクロデキストリン;スクシニルα-シクロデキストリン;スクシニルβ-シクロデキストリン;スクシニルγ-シクロデキストリン;ベンゾイルβ-シクロデキストリン;パルミチルβ-シクロデキストリン;トルエンスルホニルβ-シクロデキストリン;アセチルメチルβ-シクロデキストリン;アセチルブチルβ-シクロデキストリン;グルコシルα-シクロデキストリン;グルコシルβ-シクロデキストリン;グルコシルγ-シクロデキストリン;マルトシルα-シクロデキストリン;マルトシルβ-シクロデキストリン;マルトシルγ-シクロデキストリン;α-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;β-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;γ-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;カルボキシメチルエチルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルα-シクロデキストリン;リン酸エステルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルγ-シクロデキストリン;3-トリメチルアンモニウム-2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルα-シクロデキストリン;カルボキシメチルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルγ-シクロデキストリン、およびそれらの組合せから選択されるシクロデキストリンであり、またはそれを含み、有利には、前記シクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、またはそれを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項6】
前記イミキモドが、前記ホスト分子との包接錯体の形態で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項7】
ナノ粒子の水溶液、水分散液または水性懸濁液を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項8】
前記溶液、懸濁液または分散液が、少なくとも約6.5のpH、好ましくは少なくともpH7、好適には約pH6.5~9、または約pH6.5~8.5、または約pH6.5~8、または約pH7~9、または約pH7~8.5、または約pH7~8、または約pH7.5~9に緩衝される、請求項7に記載のワクチンアジュバント。
【請求項9】
前記溶液、懸濁液または分散液が、カプセル化されていないイミキモドを実質的に含まない、かつ/または、カプセル化されていない非可溶化イミキモドを実質的に含まない、請求項7または8に記載のワクチンアジュバント。
【請求項10】
1種または複数の追加のアジュバント成分をさらに含み、前記1種または複数の追加のアジュバント成分が、任意選択で、リポソームを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項11】
(a)免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチド、ならびに
(b)ナノ粒子を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチンアジュバントを含む、ワクチン組成物。
【請求項12】
承認されたワクチン製剤の前記成分の一部またはすべてを含む、請求項11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべてが、前記ナノ粒子の前記外部脂質シェル内に放出可能に付着、結合、かつ/またはカプセル化される、請求項11または12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドが、DNA分子またはRNA分子、例えばmRNA分子である、請求項11から13のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記抗原が、ウイルス、細菌、真菌または疾患もしくは癌関連抗原であり、かつ/または前記ポリヌクレオチドが、ウイルス、細菌、真菌もしくは疾患もしくは癌関連抗原をコードする、請求項11から14のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記抗原が、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸および/もしくは脂質分子または構造であり、かつ/または前記ポリヌクレオチドが、ペプチド抗原もしくはタンパク質抗原をコードする、請求項11から15のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記抗原が、SARS-CoV、MERS-CoVもしくはSARS-CoV-2抗原のようなコロナウイルスもしくはコロナウイルス関連抗原;またはインフルエンザもしくはインフルエンザ関連抗原、例えばインフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザCもしくはインフルエンザD抗原;または単純ヘルペス(HSV-1またはHSV-2)もしくはHSV関連抗原;またはサイトメガロウイルス(CMV)もしくはCMV関連抗原;またはライム病(ボレリア)もしくはライム病関連抗原;または呼吸器多核体ウイルス(RSV)もしくはRSV関連抗原;またはエプスタインバーウイルス(EBV)もしくはEBV関連抗原;またはジカウイルスもしくはジカウイルス関連抗原;または髄膜炎もしくは髄膜炎関連抗原;または麻疹もしくは麻疹関連抗原;または流行性耳下腺炎もしくは流行性耳下腺炎関連抗原;または風疹もしくは風疹関連抗原;または水痘(水疱瘡)もしくは水疱瘡関連抗原;または帯状ヘルペス(帯状疱疹)もしくは帯状疱疹関連抗原;またはジフテリアもしくはジフテリア関連抗原;または破傷風もしくは破傷風関連抗原;または急性灰白髄炎もしくは急性灰白髄炎関連抗原;またはデングウイルスもしくはデングウイルス関連抗原;またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)もしくはHib関連抗原;またはロタウイルスもしくはロタウイルス関連抗原;または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(レンサ球菌(Streptococcus))もしくはレンサ球菌(Streptococcus)関連抗原;またはヒトパピローマウイルス(HPV)もしくはHPV関連抗原;または百日咳もしくは百日咳関連抗原;または肝炎もしくは肝炎関連抗原;または結核もしくは結核関連抗原;またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくはHIV関連抗原;またはアデノウイルスもしくはアデノウイルス関連抗原;または炭疽もしくは炭疽関連抗原;またはコレラもしくはコレラ関連抗原;または日本脳炎(JE)もしくはJE関連抗原;または狂犬病もしくは狂犬病関連抗原;または天然痘もしくは天然痘関連抗原;またはチフス熱(腸チフス)もしくは腸チフス関連抗原;または黄熱もしくは黄熱関連抗原;またはエボラもしくはエボラ関連抗原;または癌もしくは癌関連抗原であり、かつ/あるいは、前記ポリヌクレオチドが、SARS-CoV、MERS-CoVもしくはSARS-CoV-2抗原のようなコロナウイルスもしくはコロナウイルス関連抗原;またはインフルエンザもしくはインフルエンザ関連抗原、例えばインフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザCもしくはインフルエンザD抗原;または単純ヘルペス(HSV-1またはHSV-2)もしくはHSV関連抗原;またはサイトメガロウイルス(CMV)もしくはCMV関連抗原;またはライム病(ボレリア)もしくはライム病関連抗原;または呼吸器多核体ウイルス(RSV)もしくはRSV関連抗原;またはエプスタインバーウイルス(EBV)もしくはEBV関連抗原;またはジカウイルスもしくはジカウイルス関連抗原;または髄膜炎もしくは髄膜炎関連抗原;または麻疹もしくは麻疹関連抗原;または流行性耳下腺炎もしくは流行性耳下腺炎関連抗原;または風疹もしくは風疹関連抗原;または水痘(水疱瘡)もしくは水疱瘡関連抗原;または帯状ヘルペス(帯状疱疹)もしくは帯状疱疹関連抗原;またはジフテリアもしくはジフテリア関連抗原;または破傷風もしくは破傷風関連抗原;または急性灰白髄炎もしくは急性灰白髄炎関連抗原;またはデングウイルスもしくはデングウイルス関連抗原;またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)もしくはHib関連抗原;またはロタウイルスもしくはロタウイルス関連抗原;または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(レンサ球菌(Streptococcus))もしくはレンサ球菌(Streptococcus)関連抗原;またはヒトパピローマウイルス(HPV)もしくはHPV関連抗原;または百日咳もしくは百日咳関連抗原;または肝炎もしくは肝炎関連抗原;または結核もしくは結核関連抗原;またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくはHIV関連抗原;またはアデノウイルスもしくはアデノウイルス関連抗原;または炭疽もしくは炭疽関連抗原;またはコレラもしくはコレラ関連抗原;または日本脳炎(JE)もしくはJE関連抗原;または狂犬病もしくは狂犬病関連抗原;または天然痘もしくは天然痘関連抗原;またはチフス熱(腸チフス)もしくは腸チフス関連抗原;または黄熱もしくは黄熱関連抗原;またはエボラもしくはエボラ関連抗原;または癌もしくは癌関連抗原である抗原をコードする、請求項11から16のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
1種または複数の追加の賦形剤、アジュバントおよび/または活性成分をさらに含む、請求項11から17のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
対象における免疫応答を誘導するための方法であって、前記対象に、請求項11から18のいずれか一項に記載のワクチン組成物を投与するステップを含む、または、前記対象に、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチンアジュバントを、ワクチンと共に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記ワクチン組成物またはワクチンアジュバントが、前記対象に静脈内、筋肉内もしくは皮下注入により投与される、または、前記ワクチン組成物もしくはワクチンアジュバントが、経口、鼻腔内、皮内もしくは経皮投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ウイルス、細菌もしくは真菌感染症、コロニー形成もしくは疾患に対して、または、増殖性障害、例えば癌に対して前記対象を免疫化するための、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
以下の連続ステップ:
(a)イミキモドを前記ホスト分子と、約pH6以下に;好ましくは約pH4~6に、または約pH4.5~6に、または約pH4~5.5に、または約pH5~6に緩衝したpHの水溶液中で可溶化するステップ、
(b)生じた水溶液を脂質と組み合わせて、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成するステップ、および
(c)前記製剤の前記緩衝したpHを、約pH6.5以上に、またはpH7以上に、または約pH6.5~9に、または約pH6.5~8.5に、または約pH6.5~8に、または約pH7~9に、または約pH7~8.5に、または約pH7~8に、または約pH7.5~9に上昇させるステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチンアジュバントを製造するための方法。
【請求項23】
ステップ(b)が、(a)の前記溶液を、任意選択でアルコール溶液中で可溶化される脂質と混合して、多重ラメラ構造の溶液または懸濁液を形成すること、およびこれらの構造を加工して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記構造を加工する前記ステップが、多重ラメラ構造の前記溶液もしくは懸濁液を、膜を通して押し出して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含み;または多重ラメラ構造の前記溶液もしくは懸濁液を乾燥させて、フィルムを形成し、前記フィルムを可溶化し、生じた溶液を振とうもしくは超音波処理して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することによる;または微小流体混合技術を使用して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することによる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)が、(a)の前記溶液を空のリポソームと混合して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤の前記緩衝したpHを、透析濾過または緩衝液交換によりステップ(c)で上昇させる、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(a)が、イミキモドを、ヒドロキシ酸、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸またはリンゴ酸の存在下で、任意選択で、ホスト分子、例えばシクロデキストリンの存在下で、水溶液中で可溶化することを含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(a)が、イミキモドを、約4~5.5のpHの、好ましくは約5のpHの溶液中で、ホスト分子、例えばシクロデキストリンと組み合わせることを含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ヒドロゲルポリマー、例えばPEGポリマーを、ステップ(a)中に、またはその後で添加するステップをさらに含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(b)の後およびステップ(c)の前に、任意選択で超遠心分離により、または前記ナノ粒子を保つ大きさにしたが、遊離イミキモドの通過を可能にした膜を用いた透析濾過により、(b)の前記ナノ粒子製剤から、カプセル化されていないイミキモドを減少させることをさらに含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
タンパク質サイトカイン、例えばIL-2を、(c)の前記製剤へと添加して、前記ナノ粒子に前記タンパク質サイトカインを装填するステップを含まない、請求項22から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチンアジュバントを用意すること、ならびに、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/もしくは、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを添加することを含む、請求項11から18のいずれか一項に記載のワクチン組成物を生成するための方法。
【請求項33】
抗原またはポリヌクレオチドを添加する前記ステップが、承認されたワクチンの1種もしくは複数の、またはすべての成分を添加することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項22から31のいずれか一項に記載の方法に従ってアジュバントを製造すること、ならびに、ステップ(a)中に、またはステップ(a)の後で、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/もしくは、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを添加することを含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から10のいずれか一項に記載のアジュバントを用意すること、ならびに前記アジュバントを、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドと組み合わせることを含む、請求項32または33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノ粒子ワクチンアジュバント、およびナノ粒子ワクチンアジュバントを含有するワクチン組成物;そのようなアジュバントおよび組成物を調製する方法;ならびに、そのような組成物およびアジュバントをワクチン接種のために使用する方法に関する。本明細書で開示されているワクチンアジュバントは、ワクチン接種に対する免疫応答を向上させるのに有効である。
【背景技術】
【0002】
ワクチン接種は、最近のSARS-CoV-2パンデミックにより強調されたように、重要な公衆衛生手段である。感染性疾患に対して有効なワクチンは、集団全体に幅広く投与された場合、疾患の伝達を遅くすること、およびワクチンを接種した集団が経験した症状の重症度を低下させることの両方ができる。ワクチンは、増殖性障害、例えば癌を含むあるタイプの疾患の処置にも有効になり得る。
【0003】
ワクチンは、ワクチンを接種した個体を保護するように作動する免疫応答を誘導することにより作用する。免疫系は、好適な免疫原、例えば病原体抗原または癌関連抗原への曝露により刺激され、これにより、保護適応免疫応答が直接的または間接的に励起される。適応免疫応答は、B細胞および/またはT細胞により媒介され得る。抗原および/もしくは病原体、細胞または抗原を保有する実体に対する長期間の免疫を提供することが目的であり得る。
【0004】
いくつかの異なるタイプのワクチンが開発されている。感染性疾患に対する保護のために開発されたワクチンは、不活化および弱毒化生ワクチン;トキソイドワクチン;ウイルスベクターワクチン;サブユニット、組換え、多糖および結合型ワクチン;ならびにmRNAワクチンを含む。癌に対する保護のために開発されたワクチンは、患者に由来する自己免疫細胞ワクチン、腫瘍抗原発現組換えウイルスワクチン、ペプチドワクチン、DNAワクチン、および確立されたヒト腫瘍細胞株に由来する異種全細胞ワクチンを含む。各ケースにおいて、ワクチンは、免疫応答を誘導することが可能である抗原、または免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0005】
多くのワクチンは、アジュバント成分も含有する。これらは、ワクチンにより誘導される免疫応答を向上させることが可能である物質である。これは、特にワクチン抗原が低い免疫原性を有する場合、または、ワクチンが、免疫学的に抑制された、免疫学的に枯渇した、または免疫学的に成熟していない患者、例えば乳児または高齢者に投与される場合に重要になり得る。アジュバントの増強効果は、患者当たりのワクチンの用量を減少させることも可能にし得、これは、ワクチンが不十分な状況において、ワクチン節約のために重要である。ヒト使用に承認されたワクチンアジュバントは、アルミニウム系無機塩(Alum)、MF59、モノホスホリル脂質A(MPL)およびCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG 1018)を含む。
【0006】
認知されている別のワクチンアジュバントは、イミキモド(R-837)である。イミキモド(R-837)は、1-(2-メチルプロピル)イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(CAS番号:99011-02-6)、R-837およびS-26308としても公知であり、構造式:
【0007】
【化1】
を有する小分子イミダゾキノリン薬剤である。
【0008】
イミキモド(R-837)の様々な活性構造類似体は、合成され、特徴付けられている。これらは、イミダゾキノリンであるレシキモド(R-848)、ガルジキモド、CL097、S28690、852-Aおよび854A;チアゾロキノロンCL075などを含み、以下の表1に示されているものが含まれる:
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
イミキモド(R-837)の別の例示的な構造類似体は、Hicks et al, Blood (2004) 104 (11) : 3481に記載されている小分子TLR7アゴニストS28690である。
【0013】
イミキモド(R-837)のこれらの構造類似体は、任意選択でpH依存性溶解度を含む、イミキモド(R-837)と同様の性質および活性を有する活性TLR7/8リガンドである。本開示では、「イミキモド」という用語は、以後、イミキモド(R-837)を表すが、TLR7/8アゴニストまたはTLR7/8リガンドであるイミキモド(R-837)の構造類似体も包含し、また、それを指し、構造類似体は上に列挙されているものを含むが、それらに限定されない。好適には、イミキモド(R-837)の構造類似体は、より低いpHで溶解度が上昇するpH依存性溶解度を呈示し得る。本明細書で使用されている「イミキモド」という用語は、したがって、活性TLR7/8リガンドであり、塩基性分子構造:
【0014】
【化2】
(式中、R
1は、典型的にはNであり、R
2は、典型的にはHまたはCであり、イミダゾキノリンは、任意選択で、指し示されている付加点の1つまたは複数において1個または複数の置換基で置換されており、この置換基は、分岐状、直鎖状または環状アルキル、アルケニル、アルコール、アルキルアミン、アルコキシまたはアルコキシアルキル基、詳細には、C
1~10アルキル、アルケニル、アルコール、アルキルアミン、アルコキシまたはアルコキシアルキル基、またはヒドロキシル基、またはアミン基、またはN-(C
1~10アルキル)メタンスルホンアミド基から独立して選択され得る)を有するイミダゾキノリンを含む。本明細書で使用されている「イミキモド」という用語は、これらのイミダゾキノリンの類似した構造誘導体も含み、これには、活性TLR7/8リガンドであるチアゾロキノリン誘導体が含まれる。
【0015】
イミキモドは、Toll様受容体7および/または8(TLR7/8)を活性化することにより、自然免疫系および適応免疫系を刺激する。これは、2種の局所クリーム製剤、Aldara(登録商標)およびZyclara(登録商標)における活性成分としてFDAの承認を受けている。
【0016】
様々な研究により、局所イミキモドは、ワクチンにより誘導される免疫応答を向上させることが可能であることが示されている。詳細には、局所イミキモドは、オボアルブミンを使用したところ、皮下免疫に対する抗体応答および細胞応答の両方を向上させ、免疫応答はTh1表現型にシフトし、IgG2a、IgG2bおよびCD8+T細胞応答が顕著に向上した(Johnston et al, Vaccine 2006 Mar 10;24(11):1958-65)。局所イミキモドを用いた前処理は、インフルエンザワクチン接種の免疫原性も、若齢および高齢個体の両方で著しく改善する(Hung et al, Lancet Infect Dis. 2016 Feb;16(2):209-18)。同様の結果は、Adams et al, J. Clin. Oncol. 25(18) suppl. 8545により報告されており、これにより、NY-ESO-1タンパク質ワクチンと投与された場合に、イミキモドの安全性およびアジュバント活性が評価された。
【0017】
これらの研究により、イミキモドがワクチンアジュバントとして有効なことが実証されている。しかしクリームの形態でのイミキモドの局所塗布は、これらの研究で報告されているように不便であり、日常的なワクチン接種の使用が実現不可能である。局所塗布では、効果を得るためにはクリームが皮膚に数時間留まらなければならないので、コンプライアンスの問題がある。これは、皮膚刺激を生じることがあり、または、他の理由で患者の示す耐容性が乏しいことがある。イミキモド送達の一貫性も問題である。実用的な目的に関して、アジュバントを、単一のワクチン製剤として投与するために、他のワクチン原料と共に製剤化することが好ましい。アジュバントを、注入可能な組成物として製剤化することが好ましい。
【0018】
しかし、注入用のイミキモドの製剤化は、単純な事業ではない。イミキモドは、生理学的pHの水溶液中できわめて低い溶解度を示す。
図1は、Britton-Robinson緩衝液を使用して、pHの関数としてのイミキモドの水溶解度を示しており、イミキモドが、pH2以下の水溶液中で最大溶解度を有することが示される(Chollett et al Pharm. Dev. Technol. 1999 Jan; 4(1):35-43)。イミキモドの水溶解度は、pH2を超えるpHの上昇に応じて急激に低下し、pH6超でのみ難溶性である。この理由で、イミキモドの水性または水系製剤を開発する試みは、典型的には、注入用に許容できないpH4未満の酸性溶媒の使用を伴っている。Hayashiら(Int. J. Urol. 2010 May; 17(5):483-90)は、弱酸性pHで0.1M乳酸、ポロキサマーおよびHP-β-CDを使用するイミキモドの製剤について記載している。Guedesら(J. Braz. Chem. Soc., Vol. 31, No. 8, 1732-1745, 2020)も同様に、pH3のクエン酸存在下におけるβ-シクロデキストリン中のイミキモドの可溶化について記載している。Ramineniら(J. Pharm. Sci. 2013 Feb;102(2):593-603)は、pH4で酢酸緩衝液およびメタノールの混合物を使用して、イミキモドおよびHP-β-CDを含有する粘膜付着性フィルムを開発した。一方でFoxら(Journal of Nanobiotechnology 2014, 12:17)は、pH2.5~3.5の乳酸コア中に可溶化したイミキモドを含むアニオン性リポソーム製剤を開示する。
【0019】
イミキモドは、これらに、また同様の参考文献に記載されているように低pHの水系製剤に製剤化され得るが、このアプローチでは、イミキモドと低pHで変性する、またはその形態を変化させるワクチン抗原およびポリヌクレオチドとの共製剤化することは容易ではない。また、低pH製剤は、非経口投与に好適ではない。
【0020】
代替アプローチでは、ポリラクチド(PLA)ベースミセルは、抗原を送達する目的のため、イミキモドがコアに装填され、抗原タンパク質(HIV-1 Gag p24)で表面が官能基化されている(Jimenez-Sanchez, et al Pharm. Res. (2015) 32:311-320)。イミキモドは、疎水性PLAコア中にカプセル化されるが、p24抗原は、リジンおよびN-末端アミン基を介して、ミセルコロナのN-スクシンイミジルペンダント基に共有結合で付着しているが、粒子からのイミキモドの放出は、きわめて迅速であることが見出された(1hで50%、4から5時間で約75%)。アジュバントの放出を遅くするナノメディシンフォーマットは、より強力な免疫応答を補助しやすいと考えられている。
【0021】
この背景に対して、本発明者らは、イミキモドを含み、注入に好適であり、延長された時間にわたりイミキモドの徐放性を得ることが可能であるナノ粒子ワクチンアジュバントを成功裏に開発し、本明細書に記載しており、これによりワクチンアジュバントとしてのイミキモドの性能を改善できる。開示されているナノ粒子ワクチンアジュバントは、既存のワクチンと製剤化され得、またはワクチン抗原および/もしくはポリヌクレオチドと、必要とされる場合は追加のワクチン成分と共製剤化され得、それにより、注入によるものを含めて非経口投与され得る、イミキモドワクチンアジュバントを含むワクチン組成物も提供する。
【発明の概要】
【0022】
一態様によれば、本開示は、外部脂質シェル、および外部脂質シェル内にカプセル化された内部水性コアを含む複数のナノ粒子を含むワクチンアジュバントを提供し、内部水性コアは、イミキモド、およびイミキモドとの錯体を可逆的に形成することが可能であるホスト分子を含む。ワクチンアジュバントは、開示されているナノ粒子の水溶液、水分散液もしくは水性懸濁液であり得る、もしくはそれを含み得る、または、開示されているナノ粒子の水溶液、水分散液または水性懸濁液を生成するために水和され得る乾燥または凍結乾燥調製物であり得る、もしくはそれを含み得る。内部水性コアは、約6.5またはそれ超のpHを有し得、かつ/またはヒドロゲルを含み得る。イミキモドおよびホスト分子は、ヒドロゲル内に分散し得る。
【0023】
さらなる態様では、本開示は、(a)免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチド;ならびに(b)本開示によるナノ粒子を含むワクチンアジュバントを含む、ワクチン組成物を提供する。ワクチン組成物は、開示されている成分(a)および(b)の水溶液、水分散液または水性懸濁液であり得る、もしくはそれを含み得、または、水和されて、開示されている成分(a)および(b)の水溶液、分散液または懸濁液を生成できる乾燥もしくは凍結乾燥調製物であり得る、もしくはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、成分(a)の抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべては、成分(b)のナノ粒子の外部脂質シェル内に放出可能に付着、結合、かつ/またはカプセル化される。成分(a)は、さらにまたはあるいは、送達ビヒクル、例えば、外部脂質シェル、および外部脂質シェル内にカプセル化された内部水性コアを含む複数のナノ粒子のようなナノ粒子の送達ビヒクルを含み得、この場合、抗原および/またはポリヌクレオチドは、送達ビヒクル中または上に装填される。
【0024】
ワクチン組成物は、追加の原料、およびさらなるアジュバントを含む賦形剤を含み得る。ワクチン組成物は、いくつかの実施形態では、予防または治療用途のために開発されたワクチン製剤、例えば承認されたワクチン製剤の有効成分および/または賦形剤成分の一部またはすべてを含み得る。都合のよいことに、承認されたワクチン製剤は、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。本開示のワクチン組成物は、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、本開示によるナノ粒子を含むワクチンアジュバントを補充した免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを含む、承認されたワクチン製剤を含み得る。
【0025】
さらなる態様では、本開示は、対象、例えばヒト対象において、ワクチンに対する免疫応答を向上させる方法に使用するために開示されているワクチンアジュバントを提供する。本開示はさらに、対象、例えばヒト対象において、ワクチンに対する免疫応答を向上させる方法であって、本明細書で開示されているワクチンアジュバントを対象に投与するステップを含み、ワクチンアジュバントは、ワクチンを投与する前に、それと同時に、および/またはその後で対象に投与される、方法を提供する。ワクチンは、対象において免疫応答を誘導することが可能である任意のワクチンであり得る。免疫応答は、例えば、感染性もしくは増殖性疾患もしくは障害、またはウイルス、細菌もしくは真菌病原体を含む疾患、障害または病原体から、対象を保護することが可能である保護免疫応答であり得る。免疫応答は、感染性疾患または障害を含む疾患または障害の症状または発現を軽減する、または低下させることが可能である治療薬免疫応答であり得る。
【0026】
さらなる態様では、本開示は、対象、例えばヒト対象において免疫応答を誘導する方法に使用するための、開示されているワクチン組成物を提供する。本開示はさらに、対象、例えばヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、本明細書で開示されているワクチン組成物を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。免疫応答は、例えば、感染性もしくは増殖性疾患もしくは障害、またはウイルス、細菌もしくは真菌病原体を含む疾患、障害または病原体から、対象を保護することが可能である防御免疫応答であり得る。免疫応答は、感染性疾患または障害を含む疾患または障害の症状または発現を軽減する、または低下させることが可能である治療薬免疫応答であり得る。
【0027】
本開示はさらに、開示されているワクチンアジュバントを製造するための方法であって、以下の連続ステップ:
(a)イミキモドをホスト分子と、約pH6以下に;好ましくは約pH4~6に、または約pH4.5~6に、または約pH4~5.5に、または約pH5~6に緩衝したpHの水溶液中で可溶化するステップ、
(b)生じた水溶液を脂質と組み合わせて、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成するステップ、次いで
(c)製剤の緩衝したpHを、約pH6.5以上に、またはpH7以上に、または約pH6.5~9に、または約pH6.5~8.5に、または約pH6.5~8に、または約pH7~9に、または約pH7~8.5に、または約pH7~8に、または約pH7.5~9に上昇させるステップを含む、方法を提供する。
【0028】
本開示は、開示されているワクチン組成物を製造するための方法であって、開示されているワクチンアジュバントを、免疫応答を誘導することが可能である抗原と、および/または免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドと組み合わせるステップを含む、方法を提供する。この方法は、開示されているワクチンアジュバントを、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを含む承認されたワクチン製剤と組み合わせることを含み得る。本開示は、開示されているワクチン組成物を製造するための方法であって、本明細書で開示されている方法に従ってワクチンアジュバントを製造するステップ、ならびに、ステップ(a)の間または後に、本明細書で開示されている方法に従って、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/もしくは、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを添加するステップを含む、方法を提供する。
【0029】
生理学的pHに緩衝した、開示されているワクチンアジュバントおよびワクチン組成物は、対象に非経口で、任意選択で注入により投与され得、感染性疾患および病原体および癌を含む幅広い疾患、障害および病原体に、またはそれに対する免疫の経過中に使用され得る。
【0030】
本開示の組成物は、ワクチンに対する免疫応答を向上させる目的のために、イミキモドの制御、持続および任意選択で局所化送達および/または放出を促進するように設計されている。開示されているアジュバントは、免疫応答の向上を改善できる時間にわたり、イミキモドの持続送達および/または放出を生じさせることが可能である。
【0031】
開示されているワクチンアジュバントは、ホスト分子と錯化し、リポソーム中にカプセル化された小分子イミキモドを含む。イミキモド(R-837)は、承認されている、および市販されている医薬品(Aldara(登録商標)およびZyclara(登録商標))に含有され、腫瘍医により十分に特徴付けられ、十分に理解される。本明細書で開示されているように、都合のよい非経口投与に関して、ならびに制御送達および放出に関してこれまでに製剤化されていないが、研究および臨床トライアルでは、ワクチンアジュバントとしてのイミキモドの効能が示された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】水溶液中におけるイミキモドの溶解度に対するpHの影響を例証するグラフを示す図である。
【
図2】本開示による例示的なワクチンアジュバントナノ粒子の構造を示す図である。
【
図3】本開示によるワクチンアジュバントナノ粒子のCryo TEM画像を示す図である。
【
図4】本開示によるワクチンアジュバントの生成の例示的な方法のステップを示すフローチャートを示す図である。
【
図5】本開示によるワクチンアジュバントからのイミキモドの放出プロファイルを例証する放出アッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本開示に使用される用語は、特に指示がない限り、当業界で通常の意味を有すると理解されるべきである。詳細には、「抗原」は、ヒトおよび/または動物において、in vivoで免疫応答を誘導することが可能である任意の分子または実体を含むものとする。「ポリヌクレオチド」は、1種超のヌクレオチドを含有する任意の核酸を含むものとする。「免疫応答」は、免疫系の抗原に対する任意の保護または防御反応を含むものとし、これには、自然免疫応答、適応免疫応答および反応性免疫応答、1型および2型応答、細胞媒介性および体液性および炎症性免疫応答が含まれる。本発明の文脈内において、「免疫応答」は通常、保護的もしくは療法的免疫応答、および/あるいは疾患、障害もしくは医学的状態から保護するのに、またはそれらを処置するのに有効な免疫応答を意味すると理解され得る。「免疫化」は、対象において、抗原に対する免疫応答、特に保護免疫応答を誘導するプロセスを含むものとし、対象は、有効な免疫後に「免疫」となる。「ワクチン」は、対象を免疫化するために使用できる物質または組成物である。「ワクチンアジュバント」は、ワクチンにより誘導される免疫応答を拡張、向上、増幅、調節、増大または何らかの方途で改善するのに有効になり得る物質である。「ヒドロゲル」は、任意選択で架橋した水膨張性親水性ポリマーのマトリックスであり、「ヒドロゲルポリマー」は、それに応じて解釈される。「イミキモド」という用語は、イミキモド(R-837)を表すが、本明細書において上で定義される通りの、TLR7/8アゴニストまたはTLR7/8リガンドであり、pH依存性溶解度を呈示するイミキモド(R-837)の構造類似体も包含し、また、それを指し、構造類似体は、表1に示されているように、イミダゾキノリンおよびチアゾロキノロンを含むが、それらに限定されない。
【0034】
詳細な説明
本開示は、複数のナノ粒子を含むワクチンアジュバントを提供し、各ナノ粒子は、外部脂質シェル、および外部脂質シェル内にカプセル化された内部水性コアを含み、内部水性コアは、イミキモド、およびイミキモドとの錯体を可逆的に形成することが可能であるホスト分子を含む。水性コアは、ホスト分子と錯化したイミキモドを含み得る。ナノ粒子の水性コアは、錯化していないイミキモドおよび/またはホスト分子を含み得る。
【0035】
内部水性コアは、任意選択で、ヒドロゲルを含み得る。イミキモドおよびホスト分子は、任意選択で、ヒドロゲルに分散、溶解または懸濁され得る。
【0036】
内部水性コアは、約6.5またはそれ超のpHを有し得る。好適には、内部水性コアは、少なくとも7のpH、または少なくとも7.5のpHを有し得る。内部水性コアは、約pH9以下、または約pH8.5以下のpHを有し得、または好適には、pH約pH6.5~9もしくは約6.5~8.5もしくは約6.5~8、または約pH7~9もしくは約pH7~8.5もしくは約pH7~8もしくは約pH7.5~9を有し得る。
【0037】
ナノ粒子の外部脂質シェルは、1つまたは複数の脂質層または二分子膜を含み、これが中心コアを包囲する。シェルを形成する脂質は、生理学的pHで中性、両性イオン性、アニオン性またはカチオン性脂質であり得る。各脂質層または二分子膜内および/またはその間における脂質は、任意選択で架橋されていてよい。外部脂質シェルは、したがって、任意選択で架橋されている1つまたは複数の同心脂質層(concentric lipid layer)で構成されていることがあり、脂質は、生理学的pHで中性、アニオン性またはカチオン性脂質であり得る。脂質シェルの組成および脂質層内またはその間における架橋の規模は、ナノ粒子からのイミキモドの放出プロファイルを改変および最適化するために変動させてよい。
【0038】
一部の好ましい実施形態では、1つまたは複数の脂質層または二分子膜は、コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質およびスフィンゴ脂質、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される脂質を含み得る。好適な脂質は、1,2-ジアシル-グリセロ-3-ホスホコリンを含むホスファチジルコリン(PC)(例えば卵PC、ダイズPC);ホスファチジルセリン(PS);ホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質、例えばスフィンゴミエリン;スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとしても公知)、例えばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシドおよびセレブロシド;脂肪酸;カルボン酸基を含有するステロール、例えばコレステロールまたはその誘導体;ならびに1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたは1,2-ジオレオリルグリセリルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)を含む1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含むが、それらに限定されない。好適な脂質は、天然の脂質、例えば組織由来L-α-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)および/またはこれらの脂質の合成(例えば、飽和および不飽和1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)誘導体も含む。
【0039】
外部脂質シェルは、例えば硫酸メチル塩のような、TAP脂質ともいわれるN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-Ν,Ν,Ν-トリメチルアンモニウム塩を含むが、それらに限定されないカチオン性脂質でもあり得る、あるいは含み得る。好適なTAP脂質は、DOTAP(ジオレオイル-)、DMTAP(ジミリストイル-)、DPTAP(ジパルミトイル-)およびDSTAP(ジステアロイル-)を含むが、それらに限定されない。他の好適なカチオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジアシルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン、N”[1-(2,3-ジオロイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチルアミン(DODAP)、1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-[N-(N’ 5N’-ジメチルアミノ-エタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);2,3-ジオレオイルオキシ-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)-エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロ-アセテート(DOSPA)、β-アラニルコレステロール、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ジC14-アミジン、N-tert-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン、N-(アルファ-トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル-D-グルタメートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル-N-(トリメチルアンモニオ-アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシ-スペルミル)-プロピルアミド(DOSPER)、ならびにN,N,N’N’-テトラメチル-,N’-ビス(2-ヒドロキシルエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタンジアンモニウムヨージド、1-[2-(アシルオキシ)エチル]-2-アルキル(アルケニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリニウムクロリド誘導体、例えば1-[2-(9(Z)-オクタデセノイルオキシ)エチル]-2-(8(Z)-ヘプタデセニル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)および1-[2-(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]-2-ペンタデシル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)と、四級化アミン上にヒドロキシアルキル部分を含有する2,3-ジアルキルオキシプロピル四級アンモニウム誘導体、例えば1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE-HP)、1,2-ジオレイル-オキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE-HB)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE-Hpe)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2-ジパルミチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、および1,2-ジステリルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE)を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、外部脂質シェルは、DSPE PEG(2000MW)およびDSPE PEG(5000MW)を含む中性、両性イオン性、カチオン性またはアニオン性脂質、例えばmPEG-DSPEのPEG化誘導体を含み得る。PEGまたは他の好適な親水性ポリアルキレンオキシドの、ナノ粒子の外部シェル上における表面での呈示は、ナノ粒子がin vivoに存在する場合、細網内皮細胞系(「RES」)により、ナノ粒子の吸収量を減少させる機能を有し得、それによりin vivo滞留時間および全身循環時間が延長し、かつ/またはナノ粒子が、持続および延長した免疫刺激効果を生じさせることが可能になる。好適なPEG化脂質のさらなる例は、ジパルミトイル-グリセロ-スクシネートポリエチレングリコール(DPGS-PEG)、ステアリル-ポリエチレングリコールおよびコレステリル-ポリエチレングリコールを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、外部脂質シェルは、リン脂質およびコレステロールの混合物、例えばN-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(mPEG-DSPE)、ホスファチジルコリン、例えば完全に水素化されたダイズホスファチジルコリン(HSPC)、およびコレステロールの混合物を含み得る。これらの脂質は周知であり、十分に特徴付けられており、承認された商品、例えばDoxil(登録商標)に使用されている。当業者に公知の代替の好適なリン脂質は、DSPE-PEGおよび/またはHSPCの代わりに使用され得る。脂質は、任意の望ましいモル比で混合および使用され得る。例えば、リン脂質対コレステロールのモル比は、約1:1から約6:1、より好ましくは約1:1から約3:1の範囲、最も好ましくは約2:1であり得る。リン脂質がDSPE-PEGおよびHSPCを含む場合、これらの成分は、DSPE-PEG:HSPCのモル比約1:1~1:200または1:10~1:200、好適には1:1~1:100または1:1~1:50または1:1~1:30または1:10~1:30、有利には1:15~1:25で存在し得る。いくつかの実施形態では、HSPC:DSPE-PEG:コレステロールのモル比は、約2:0.1:1または約2:0.01:1または約2:0.2:1であり得る。
【0042】
ナノ粒子の外部脂質シェルは、1種または複数のヒドロゲルポリマーを含み得る内部水性コアを包囲し、ヒドロゲルポリマーは、ナノ粒子からのイミキモド、およびナノ粒子の内部コア内に含有され得る任意の他の活性剤、例えば以下により詳細に記載されている抗原またはポリヌクレオチドの放出をさらに安定化させる、かつ/または制御する機能を有し得る。ヒドロゲルポリマーは、共有結合で、および/または共有結合によらず架橋し得、または共有結合で、および/または共有結合によらず架橋することが可能になり得、または架橋を有さないことがある。ヒドロゲルポリマーは、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ3-ヒドロキシブチレートまたはポリ4-ヒドロキシブチレート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリカーボネート;ポリアミド、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;他の生体適合性があるポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド);セルロース、ポリアクリル酸、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、プロラミンならびに/または多糖であり得る、またはそれを含み得る。詳細には、ヒドロゲルポリマーは、ブロックコポリマー、または前述のヒドロゲルポリマーのいずれかのブレンドを含むコポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の内部水性コアは、ポリエチレングリコールポリマー、例えばポリエチレングリコール4000を含み得る。PEG4000は、非経口製剤、例えばINVEGA SUSTENNA(登録商標)を含む医薬製剤に幅広く使用される。内部水性コアは、さらにまたはあるいは、1種または複数のポリ(アルキレンオキシド)セグメント、例えばポリエチレングリコール、および1種または複数の脂肪族ポリエステルセグメント、例えばポリ乳酸を含有するブロックコポリマーを含み得る。
【0043】
ナノ粒子は、当技術分野で認知されている標準的な動的光散乱(DLS)の技術により測定して、約300nm以下の直径を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の直径(DLSにより測定した)は、約200nm以下、または約150nm以下、または約130nm以下、または約120nm以下のことがある。ナノ粒子の直径(DLSにより測定した)は、少なくとも15nm、または少なくとも20nm、または少なくとも30nm、または少なくとも50nmであり得る。好適に、ナノ粒子の直径(DLSにより測定した)は、約20~300nm、または約20~150nm、または約20~100nm、または約20~50nm、または約30~300nm、または約50~150nm、または約80~125nm、または約90~110nmであり得る。DLSは、ISO 22412:2017または同様の技術に従って行われ得る。
【0044】
有利には、ナノ粒子は、球体または回転楕円体であり得、かつ/または単一ラメラであり得る。Cryo透過電子顕微鏡法(cryo TEM)下でみた本開示による例示的なナノ粒子は、
図3でみることができる。ここでは、ナノ粒子の大多数は球体かつ単一ラメラであること、およびナノ粒子の内部は、周囲の緩衝液より緻密であることが分かり、ナノ粒子内部におけるイミキモド、HP-β-CDおよびPEG4000ポリマーの装填と一致する。
【0045】
ナノ粒子の内部水性コアは、イミキモドを含む。イミキモドの一部またはすべては、ホスト分子と錯化する。上で言及されているように、本明細書で使用されている「イミキモド」という用語は、1-(2-メチルプロピル)イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(CAS番号:99011-02-6)、R-837およびS-26308、ならびに以下に示されている:
【0046】
【化3】
として公知のイミダゾキノリンを包含する。
【0047】
この用語は、本明細書で定義されているイミキモド(R-837)の構造類似体をさらに包含し、これは、当業界で公知かつ上で定義されているレシキモド、ガルジキモド、CL097、S28690、852-A、854A、CL075などを含むが、それらに限定されない活性なTLR7/8リガンドである。本明細書で定義されているイミキモドは、免疫刺激能力が認知されている小さい合成グアノシン類似体であり、詳細には、TLR7および/またはTLR8の活性化に有効なことが公知である。いくつかの好ましい実施形態および本開示の態様では、イミキモドが、イミキモド(R-837)である。
【0048】
イミキモド(R-837)は、皮膚クリーム剤として治療薬投与が承認されており、有効な医薬品マスターファイルの下で現行医薬品適正製造基準(cGMP)に従って製造およびテストされた原薬として市販されている。あるいは、イミキモドは、利用できる原料に基づく小分子として、また、当業界で周知の方法を使用して、容易に合成され得る。
【0049】
ナノ粒子の内部水性コアは、イミキモドとの錯体、例えば包接錯体を可逆的に形成することが可能であるホスト分子をさらに含む。包接錯体は、イミキモド分子、またはイミキモド分子の一部が、ホスト分子またはホスト分子の群の空洞中に挿入する場合に形成され得る。ホスト分子は、ナノ粒子の水性コアにおけるイミキモドの可溶化を、および/または、ナノ粒子からのイミキモド放出制御を補助し得る。イミキモドは、したがって、ホスト分子との包接錯体の形態で存在し得る。
【0050】
ホスト分子は、例えば、シクロデキストリン;好ましくはα-シクロデキストリン;β-シクロデキストリン;γ-シクロデキストリン;メチルα-シクロデキストリン;メチルβ-シクロデキストリン;メチルγ-シクロデキストリン;エチルβ-シクロデキストリン;ブチルα-シクロデキストリン;ブチルβ-シクロデキストリン;ブチルγ-シクロデキストリン;ペンチルγ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルα-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシブチルβ-シクロデキストリン;アセチルα-シクロデキストリン;アセチルβ-シクロデキストリン;アセチルγ-シクロデキストリン;プロピオニルβ-シクロデキストリン;ブチリルβ-シクロデキストリン;スクシニルα-シクロデキストリン;スクシニルβ-シクロデキストリン;スクシニルγ-シクロデキストリン;ベンゾイルβ-シクロデキストリン;パルミチルβ-シクロデキストリン;トルエンスルホニルβ-シクロデキストリン;アセチルメチルβ-シクロデキストリン;アセチルブチルβ-シクロデキストリン;グルコシルα-シクロデキストリン;グルコシルβ-シクロデキストリン;グルコシルγ-シクロデキストリン;マルトシルα-シクロデキストリン;マルトシルβ-シクロデキストリン;マルトシルγ-シクロデキストリン;α-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;β-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;γ-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;カルボキシメチルエチルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルα-シクロデキストリン;リン酸エステルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルγ-シクロデキストリン;3-トリメチルアンモニウム-2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルα-シクロデキストリン;カルボキシメチルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルγ-シクロデキストリンおよびそれらの組合せから選択されるシクロデキストリンを含み得る。しかし、多くの他のホスト分子は、当業界で公知であり、本開示に従って使用でき、例えば当業者によく知られている多糖、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、イオン交換樹脂、カリックスアレーン、バリノマイシン、ニゲリシン、カテナン、ポリカテナン、カルセランド、ククルビットウリルおよびスフェランドなどである。
【0051】
ある好ましい実施形態では、ホスト分子は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、またはそれを含む。2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)(CAS番号128446-35-5)は、ベータシクロデキストリンの部分的に置換されているポリ(ヒドロキシプロピル)エーテルである(無水グルコース単位当たりモル置換0.59~0.73)。イミキモドと可逆的に錯化して、例えばナノ粒子の水性内部コアにおけるイミキモドの可溶化を改善する一方、ナノ粒子からイミキモドを制御放出させることが可能である。HP-β-CDは、胃または膵臓の腺癌を処置するために米国で承認されたHP-β-CDおよびマイトマイシンの製剤であるMitozytrex(商標)を含む、いくつかの市場に出されている製品で現在使用されている。
【0052】
本開示の好ましい実施形態は、イミキモドと錯化したホスト分子を含む。一部の実施形態は、ナノ粒子の内部水性コア内の錯化していないイミキモドおよび/またはホスト分子も含み得る。詳細には、ナノ粒子の内部水性コアは、水性コア中に分散、溶解もしくは懸濁したイミキモド、および/または沈殿物の形態で存在するイミキモドも含み得る。任意選択で、ナノ粒子は、外部脂質シェル内に放出可能に付着、結合、かつ/またはカプセル化されるIL-2を含まなくてよく、かつ/またはタンパク質サイトカインを含まなくてよい。
【0053】
本開示のワクチンアジュバントは、開示されているナノ粒子の水溶液、水分散液もしくは水性懸濁液であり得る、もしくはそれを含み得る、または、水和されて、開示されているナノ粒子の水溶液、分散液または懸濁液を生成できる乾燥または凍結乾燥調製物を含み得る。アジュバントは、典型的には水和物形態で使用されるが、任意選択で使用前に保存するために、凍結乾燥形態で都合よく調製できる。
【0054】
本開示のワクチンアジュバントは、1種または複数の追加のアジュバント成分、例えば承認されたワクチンアジュバントの原料の一部またはすべてをさらに含み得る。これは、免疫応答を向上させるために、ワクチンアジュバントの効能をさらに改善し得る。本開示のワクチンアジュバントは、例えば、TLR4アゴニスト、例としてモノホスホリル脂質A(MPL)、および/またはTLR9アゴニスト、例としてCpG 1018を含むTLRアゴニストである1種または複数の追加のアジュバント成分を含み得る。ワクチンアジュバントは、例えば、MPLおよび市販のサポニンQS-21をさらに含み得る。追加のアジュバント成分は、遊離形態でワクチンアジュバントに存在し得、かつ/または送達ビヒクル、例えばリポソームと組み合わせて存在し得る。さらにまたはあるいは、追加のアジュバント成分は、ワクチンアジュバントナノ粒子中に、またはその上に装填され得る。
【0055】
(a)免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチド;ならびに(b)本開示による複数のナノ粒子を含むワクチンアジュバントを含むワクチン組成物も、本開示に従って提供される。
【0056】
いくつかの実施形態では、成分(a)の抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべては、成分(b)のナノ粒子の外部脂質シェル内に放出可能に付着、結合、かつ/またはカプセル化される。抗原および/またはポリヌクレオチドは、成分(b)のナノ粒子の脂質シェル内にカプセル化され得、かつ/または、成分(b)のナノ粒子の水性コア内に分散し得、かつ/または、成分(b)のナノ粒子の脂質シェルに放出可能に付着し得る、もしくはそれに結合し得る。抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべては、任意選択で、成分(b)のナノ粒子の水性コア内のホスト分子に可逆的に結び付き得る。いくつかの実施形態では、抗原および/またはポリヌクレオチドは、成分(b)のナノ粒子の脂質シェルに共有結合によらずに、例えばイオン的相互作用によって、水素結合によって、またはファンデルワールス相互作用によって付着していてもよい。一部の他の実施形態では、抗原および/またはポリヌクレオチドは、成分(b)のナノ粒子の脂質シェルに、切断可能な連結基によって共有結合で付着し得、連結基は、好適な条件下で、例えば抗原および/またはポリヌクレオチドを放出するために、例えばある周囲pHで、またはある切断薬剤(複数可)の存在下で、切断できる。
【0057】
成分(a)は、さらにまたはあるいは、抗原および/またはポリヌクレオチドが装填されている、ならびに、抗原および/またはポリヌクレオチドをin vivoで放出することが可能である送達ビヒクルを含み得る。送達ビヒクルは、例えば、本明細書に記載されている外部脂質シェル、および外部脂質シェル内にカプセル化された内部水性コアを含むナノ粒子ビヒクル、例えばポリマー性ナノ粒子、リポソームまたはナノ粒子であり得る。送達ビヒクルは、例えば、Look et al, Biomaterials 35(2014) 1089-1095に記載されているナノゲルまたはPLGAナノ粒子であり得る。抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべては、ナノ粒子送達ビヒクル内に放出可能に付着し得、結合し得、かつ/またはカプセル化され得る。ナノ粒子送達ビヒクルが、本明細書に記載されているタイプのコア/シェルナノ粒子を含む場合、抗原および/またはポリヌクレオチドの一部またはすべては、ナノ粒子の外部脂質シェル内に放出可能に付着し得、結合し得、かつ/またはカプセル化され得る。このナノ粒子の外部脂質シェルは、本明細書に記載されている中心コアを包囲する1つまたは複数の脂質層または二分子膜を含み得る。ナノ粒子の内部水性コアは、本明細書に記載されているヒドロゲルを含み得る。ナノ粒子の内部水性コアは、本明細書に記載されているホスト分子をさらに含み得る。
【0058】
ワクチン組成物のいくつかの実施形態では、成分(a)は、DNA分子またはRNA分子、例えばmRNA分子、またはsiRNA分子であるポリヌクレオチドを含み得る。DNAおよびRNAワクチンは、当業界で公知である。これらの公知のワクチンは、in vivoで発現して、保護または治療免疫応答を刺激できる抗原を得ることが可能であるDNAまたはRNAポリヌクレオチドを含有する。最近の例は、SARS-CoV-2感染症およびCOVID-19疾患から保護するために開発されたmRNAワクチンを含む。癌から保護するため、また、それを処置するためのDNAワクチンも、当技術分野で記載される。ワクチン組成物の成分(a)は、したがって、in vivoで保護または治療免疫応答を刺激できる抗原を発現することが可能であるDNAまたはRNA分子、例えばmRNA分子を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物の成分(a)は、ウイルス抗原、および/もしくは細菌抗原、および/もしくは真菌抗原、および/もしくは疾患関連および/もしくは癌関連抗原を含み得;かつ/または、ウイルス抗原、および/もしくは細菌抗原、および/もしくは真菌抗原、および/もしくは疾患関連および/もしくは癌関連抗原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。成分(a)は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸および/または脂質分子または構造である抗原を含み得る。成分(a)は、ペプチド抗原またはタンパク質抗原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物の成分(a)は、SARS-CoV、MERS-CoVもしくはSARS-CoV-2抗原のようなコロナウイルスもしくはコロナウイルス関連抗原;またはインフルエンザもしくはインフルエンザ関連抗原、例えばインフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザCもしくはインフルエンザD抗原;または単純ヘルペス(HSV-1またはHSV-2)もしくはHSV関連抗原;またはサイトメガロウイルス(CMV)もしくはCMV関連抗原;またはライム病(ボレリア)もしくはライム病関連抗原;または呼吸器多核体ウイルス(RSV)もしくはRSV関連抗原;またはエプスタインバーウイルス(EBV)もしくはEBV関連抗原;またはジカウイルスもしくはジカウイルス関連抗原;または髄膜炎もしくは髄膜炎関連抗原;または麻疹もしくは麻疹関連抗原;または流行性耳下腺炎もしくは流行性耳下腺炎関連抗原;または風疹もしくは風疹関連抗原;または水痘(水疱瘡)もしくは水疱瘡関連抗原;または帯状ヘルペス(帯状疱疹)もしくは帯状疱疹関連抗原;またはジフテリアもしくはジフテリア関連抗原;または破傷風もしくは破傷風関連抗原;または急性灰白髄炎もしくは急性灰白髄炎関連抗原;またはデングウイルスもしくはデングウイルス関連抗原;またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)もしくはHib関連抗原;またはロタウイルスもしくはロタウイルス関連抗原;または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(レンサ球菌(Streptococcus))もしくはレンサ球菌(Streptococcus)関連抗原;またはヒトパピローマウイルス(HPV)もしくはHPV関連抗原;または百日咳もしくは百日咳関連抗原;または肝炎もしくは肝炎関連抗原;または結核もしくは結核関連抗原;またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくはHIV関連抗原;またはアデノウイルスもしくはアデノウイルス関連抗原;または炭疽もしくは炭疽関連抗原;またはコレラもしくはコレラ関連抗原;または日本脳炎(JE)もしくはJE関連抗原;または狂犬病もしくは狂犬病関連抗原;または天然痘もしくは天然痘関連抗原;またはチフス熱(腸チフス)もしくは腸チフス関連抗原;または黄熱もしくは黄熱関連抗原;またはエボラもしくはエボラ関連抗原;または癌もしくは癌関連抗原を含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物の成分(a)は、SARS-CoV、MERS-CoVもしくはSARS-CoV-2抗原のようなコロナウイルスもしくはコロナウイルス関連抗原;またはインフルエンザもしくはインフルエンザ関連抗原、例えばインフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザCもしくはインフルエンザD抗原;または単純ヘルペス(HSV-1またはHSV-2)もしくはHSV関連抗原;またはサイトメガロウイルス(CMV)もしくはCMV関連抗原;またはライム病(ボレリア)もしくはライム病関連抗原;または呼吸器多核体ウイルス(RSV)もしくはRSV関連抗原;またはエプスタインバーウイルス(EBV)もしくはEBV関連抗原;またはジカウイルスもしくはジカウイルス関連抗原;または髄膜炎もしくは髄膜炎関連抗原;または麻疹もしくは麻疹関連抗原;または流行性耳下腺炎もしくは流行性耳下腺炎関連抗原;または風疹もしくは風疹関連抗原;または水痘(水疱瘡)もしくは水疱瘡関連抗原;または帯状ヘルペス(帯状疱疹)もしくは帯状疱疹関連抗原;またはジフテリアもしくはジフテリア関連抗原;または破傷風もしくは破傷風関連抗原;または急性灰白髄炎もしくは急性灰白髄炎関連抗原;またはデングウイルスもしくはデングウイルス関連抗原;またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)もしくはHib関連抗原;またはロタウイルスもしくはロタウイルス関連抗原;または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(レンサ球菌(Streptococcus))もしくはレンサ球菌(Streptococcus)関連抗原;またはヒトパピローマウイルス(HPV)もしくはHPV関連抗原;または百日咳もしくは百日咳関連抗原;または肝炎もしくは肝炎関連抗原;または結核もしくは結核関連抗原;またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくはHIV関連抗原;またはアデノウイルスもしくはアデノウイルス関連抗原;または炭疽もしくは炭疽関連抗原;またはコレラもしくはコレラ関連抗原;または日本脳炎(JE)もしくはJE関連抗原;または狂犬病もしくは狂犬病関連抗原;または天然痘もしくは天然痘関連抗原;またはチフス熱(腸チフス)もしくは腸チフス関連抗原;または黄熱もしくは黄熱関連抗原;またはエボラもしくはエボラ関連抗原;または癌もしくは癌関連抗原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0062】
ワクチン組成物は、水溶液、水分散液または水性懸濁液であり得る、またはそれらを含み得る。あるいは、ワクチン組成物は、乾燥または凍結乾燥形態で提供され得る。ワクチン組成物は、アルミニウムまたはアルミニウム塩、MF59(スクアレン油)、チオメルサール、ゼラチン、ソルビトール、脂質(((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよびコレステロールを含む)、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、スクロース、トロメタミンおよびトロメタミンヒドロクロリドを含むが、それらに限定されない、1種または複数の追加の賦形剤および/または活性成分;例えば安定化剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤および/または追加のアジュバントを任意選択で含み得る。抗原、および/またはポリヌクレオチド、および/またはワクチンアジュバント、および/または追加の原料の一部またはすべては、ワクチン組成物中で混合、溶解、分散または懸濁され得る。
【0063】
ワクチン組成物は、いくつかの実施形態では、予防または治療用途のために開発されたワクチン製剤、例えば承認されたワクチン製剤の有効成分および/または賦形剤成分の一部またはすべてを含み得る。都合のよいことに、承認されたワクチン製剤は、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態では、本開示のワクチン組成物は、本開示によるナノ粒子を含むワクチンアジュバントと混合または別途製剤化した、承認されたワクチン製剤の原料を含み得る。承認されたワクチン製剤は、例えば、コロナウイルス、例えばSARS-CoV、MERS-CoVもしくはSARS-CoV-2に対して承認されたワクチン、および/またはインフルエンザに対して承認されたワクチン、および/または単純ヘルペス(HSV-1またはHSV-2)に対して承認されたワクチン、および/またはサイトメガロウイルス(CMV)に対して承認されたワクチン、および/またはライム病(ボレリア)に対して承認されたワクチン、および/または呼吸器多核体ウイルス(RSV)に対して承認されたワクチン、および/またはエプスタインバーウイルス(EBV)に対して承認されたワクチン、および/またはジカウイルスに対して承認されたワクチン、および/または髄膜炎に対して承認されたワクチン、および/または麻疹に対して承認されたワクチン、および/または流行性耳下腺炎に対して承認されたワクチン、および/または風疹に対して承認されたワクチン、および/または水痘(水疱瘡)に対して承認されたワクチン、および/または帯状ヘルペス(帯状疱疹)に対して承認されたワクチン、および/またはジフテリアに対して承認されたワクチン、および/または破傷風に対して承認されたワクチン、および/または急性灰白髄炎に対して承認されたワクチン、および/またはデングウイルスに対して承認されたワクチン、および/またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(Hib)に対して承認されたワクチン、および/またはロタウイルスに対して承認されたワクチン、および/または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumonia)に対して承認されたワクチン、および/またはヒトパピローマウイルス(HPV)に対して承認されたワクチン、および/または百日咳に対して承認されたワクチン、および/または肝炎に対して承認されたワクチン、および/または結核に対して承認されたワクチン、および/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して承認されたワクチン、および/またはアデノウイルスに対して承認されたワクチン、および/または炭疽に対して承認されたワクチン、および/またはコレラに対して承認されたワクチン、および/または日本脳炎(JE)に対して承認されたワクチン、および/または狂犬病に対して承認されたワクチン、および/または天然痘に対して承認されたワクチン、および/またはチフス熱に対して承認されたワクチン、および/または黄熱に対して承認されたワクチン、および/またはエボラに対して承認されたワクチン、および/または癌に対して承認されたワクチンであり得る。
【0064】
本開示による例示的なナノ粒子は、
図2で例証されている。この図に示されているように、例示的なナノ粒子は、mPEG-DSPEを含む脂質二分子膜から形成された外部リポソームシェルを有し、ここでmPEG鎖は、リポソームシェルの外面および内面上に呈示される。ナノ粒子の内部水性コアは、PEG 4000ヒドロゲルおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンホスト分子を含む。ホスト分子は、ナノ粒子の内部水性コア中のイミキモド分子に可逆的に関連する(示されていない)。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているように、本開示による抗原またはポリヌクレオチドは、ナノ粒子中に装填され得、ナノ粒子の外部リポソームシェルに、もしくはその内に可逆的に付着し得、かつ/または、ナノ粒子の内部コア内の全体に、もしくは部分的に配置され得る(示されていない)。
【0065】
本開示のワクチンアジュバントおよび/またはワクチン組成物は、好ましくは、予防または治療目的のためのヒトまたは動物への投与に好適である。アジュバントおよび/または組成物は、非経口投与に、特に注入、注射または沈着により好適であり得る。アジュバントおよび/または組成物は、好ましくは無菌である。ワクチンアジュバントおよびワクチン組成物に含有されるナノ粒子は、好ましくは生分解性である。
【0066】
アジュバントおよび/または組成物は、少なくとも約6.5、または少なくとも約7の、また、好ましくはpH9以下、またはpH8.5以下のpHに緩衝され得る。好適には、アジュバントおよび/または組成物は、好適には約pH6.5~9、または約pH6.5~8.5、または約pH6.5~8、または約pH7~9、または約pH7~8.5、または約pH7~8または約pH7.5~9であるpHに緩衝され得る。これは、治療用途に関していえば有益であり、望ましく、アジュバントまたは組成物は、理想的にはほぼ生理学的pH(pH7.4)であるpHに緩衝されるべきである。アジュバントまたは組成物の緩衝は、任意の好適かつ許容できる緩衝剤、例えばクエン酸/クエン酸ナトリウムを使用して遂行され得る。
【0067】
本開示のワクチンアジュバントおよび/またはワクチン組成物は、好適には、カプセル化されていないイミキモドを実質的に含まなくてよい。これが、アジュバントまたは組成物中のまたはそこからのイミキモドの望ましくない沈殿を避ける助けとなる。
【0068】
ワクチンアジュバントおよび/またはワクチン組成物は、好適には約0.01~50μg/mlのイミキモドを含み得る。いくつかの実施形態では、アジュバントまたは組成物は、約1~30μg/mlのイミキモド、または約5~25μg/mlのイミキモド、または約5~15μg/mlのイミキモドを含み得る。アジュバントまたは組成物は、少なくとも約1μg/mlのイミキモド、または少なくとも約2μg/mlのイミキモド、または少なくとも約3μg/mlのイミキモド、または少なくとも約5μg/mlのイミキモドを含み得る。アジュバントまたは組成物は、約20μg/ml以下のイミキモド、または約15μg/ml以下のイミキモド、または約12μg/ml以下のイミキモドを含み得る。アジュバントまたは組成物は、約5μg/ml、または約10μg/ml、または約15μg/mlのイミキモドを含み得る。
【0069】
ワクチン組成物中の抗原またはポリヌクレオチドの量または濃度は、必要とされる応答の強度、抗原の免疫原性、毒性の問題および当業者によく知られている他の基準を含む通常の留意事項を考慮に入れて、当業者により判定され得る。
【0070】
ワクチンアジュバントおよび/またはワクチン組成物は、好適には、約1~100mg/mlの脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、アジュバントまたは組成物は、約5~50mg/mlの脂質、または約10~40mg/mlの脂質、または約20~30mg/mlの脂質を含み得る。アジュバントまたは組成物は、少なくとも約5mg/mlの脂質、または少なくとも約10mg/mlの脂質、または少なくとも約15mg/mlの脂質、または少なくとも約20mg/mlの脂質を含み得る。アジュバントまたは組成物は、約50mg/ml以下の脂質、または約40mg/ml以下の脂質、または約30mg/ml以下の脂質、または約25mg/ml以下の脂質を含み得る。
【0071】
当技術分野で認知されている標準的な動的光散乱(DLS)の技術により、好ましくはISO 22412:2017に従って測定したアジュバントまたは組成物中におけるナノ粒子の平均直径は、好適には、約300nm以下、または約200nm以下、または約150nm以下、または約130nm以下、または約120nm以下であってよい。ここでは、アジュバントまたは組成物中におけるナノ粒子の平均の大きさは、アジュバントまたは組成物中におけるナノ粒子の平均直径を指し得る、またはアジュバントまたは組成物中における中央粒径D50のナノ粒子を指し得る。いくつかの実施形態では、アジュバントまたは組成物中におけるナノ粒子の平均直径は、少なくとも約15nm、または少なくとも約20nm、または少なくとも約30nm、または少なくとも約50nmであり得る。いくつかの実施形態では、アジュバントもしくは組成物中におけるナノ粒子の平均直径、ならびに/または、アジュバントまたは組成物中におけるナノ粒子の大きさの範囲は、約20~300nmまたは約20~150nmまたは約20~100nmまたは約20~50nmまたは約30~300nmまたは約50~150nmまたは約80~125nmまたは約90~110nmであり得る。
【0072】
以下により詳細に記載されているように、本開示のワクチンアジュバントおよび組成物は、イミキモドの徐放性および/または送達を、延長された時間にわたり対象に提供でき、これにより、ワクチンに誘導される免疫応答の有効な向上が可能となる。イミキモドは、感染性疾患または病原体抗原および癌関連抗原を含む、ワクチン抗原により誘導される免疫応答を向上させることが可能であるワクチンアジュバントとして当業界で公知である。本開示は、組み合わせたアジュバントおよび/または免疫原性作用のため、既存の承認されたアジュバントおよび/またはワクチン原料と共に注入することにより、イミキモドが同時投与されることを可能にするアプローチおよびプラットフォームを提供し、投与および送達の様式および手法は、イミキモドの承認された治療用量よりかなり少ない用量で、ワクチンの効能を向上させ、全身曝露および関連する毒性を減少させ、薬物動態を改善し、かつ/または予防および治療利益を得ることができる。
【0073】
本開示のワクチンアジュバントは、ウイルス性、細菌性または真菌性疾患、コロニー形成または感染症、および癌を含む増殖性障害を含む多彩な異なる疾患および医学的状態に対する、ワクチンにより誘導される保護または治療免疫応答の向上に好適であり得る。本開示の別の態様は、したがって、対象、例えばヒト対象において、ワクチンに対する免疫応答を向上させる方法であって、本明細書で開示されているワクチンアジュバントを対象に投与するステップを含み、ワクチンアジュバントは、ワクチンを投与する前に、それと同時に、および/またはその後で対象に投与される、方法を提供する。
【0074】
本開示のワクチン組成物は、対象において、ウイルス性、細菌性または真菌性疾患、コロニー形成または感染症および癌を含む増殖性障害を含む、多彩な異なる疾患または医学的状態を防止または処置するのに有効な免疫応答を誘導するのに好適であり得る。本開示の別の態様は、したがって、対象、例えばヒト対象において保護または治療免疫応答を誘導するための、および/または、ウイルス性、細菌性もしくは真菌性疾患、もしくはコロニー形成もしくは感染症に対して、または増殖性障害、例えば癌に対して対象、例えばヒト対象を免疫化するための方法であって、対象に投与するステップ本明細書で開示されているワクチン組成物を含む、方法を提供する。
【0075】
ワクチンアジュバントおよび/またはワクチン組成物は、対象に非経口で、例えば静脈内、筋肉内または皮下注入または注射または沈着により投与され得る。ワクチンアジュバントまたはワクチン組成物は、経口、鼻腔内、筋肉内、皮内、経皮、静脈内、腹膜内、髄腔内、膀胱内、皮膚、皮下、または結膜下、眼球後、眼房内および硝子体内を含めて眼投与され得る。ワクチンアジュバントまたはワクチン組成物は、全身に、例えば静脈内注入もしくは注射により投与され得、または局所的に、例えば腫瘍のような病変部または病変の直近(immediate locality of a lesion, such as a tumor)に注入により投与され得る。局所投与は、癌に対する免疫またはその処置に特に関連性があり得る。そのようなケースでは、ワクチン組成物またはワクチンアジュバントの局所化投与は、全身投与に勝るある利点を有し得る。とりわけ、局所化投与は、ワクチンまたはアジュバントへの全身曝露が最小化されることを意味し、RESおよび腫瘍血管系バリアがバイパスされ、癌の局所的/限局性伝播は、より効率的に対処され得る。
【0076】
ワクチンアジュバントまたはワクチン組成物は、単回投与として、または複数回投与として投与され得る。各投与は、好適には、投与毎に約1ng~100μgのイミキモド;好適には少なくとも約1ng、または少なくとも約5ng、または少なくとも約10ng、または少なくとも約50ng、または少なくとも約100ng、または少なくとも約500ng、または少なくとも約1μg、または少なくとも約5μg、または少なくとも約10μgのイミキモドを含み得る。さらにまたはあるいは、各投与は、好適には、約100μg以下、または約75μg以下、または約50μg以下、または約25μg以下、または約20μg以下、または約10μg以下、または約5μg以下、または約1μg以下のイミキモドを含み得る。各用量は、好適には、約1~100ngまたは約100ng~1μgまたは約1~10μgまたは約10~100μgのイミキモドを含み得る。
【0077】
対象においてワクチンへの免疫応答の向上における使用に好適であり、かつ/またはそのために提供されるワクチンアジュバント、および対象において免疫応答の誘導における使用に好適であり、かつ/またはそのために提供されるワクチン組成物は、本開示の範囲内にさらに包含される。対象においてワクチンへの免疫応答の向上に使用する組成物の製造における使用のための、本開示によるワクチンアジュバントも提供される。対象において免疫応答の誘導に使用する組成物の製造における使用のための、本開示によるワクチン組成物も提供される。
【0078】
本開示はさらに、本明細書で開示されているワクチンアジュバントを製造するための方法であって、以下の連続ステップ:
(a)イミキモドをホスト分子と、約pH6以下に、好ましくは約pH4~6に、または約pH4.5~6に、または約pH4~5.5に、または約pH5~6に緩衝したpHの水溶液中で可溶化するステップ
(b)生じた水溶液を脂質と組み合わせて、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成するステップ、および
(c)製剤の緩衝したpHを、約pH6.5もしくはそれ超に、またはpH7もしくはそれ超に、または約pH6.5~9に、または約pH6.5~8.5に、または約pH6.5~8に、または約pH7~9に、または約pH7~8.5に、または約pH7~8に、または約pH7.5~9に上昇させるステップを含む、方法を提供する。
【0079】
この方法により、中性(生理学的)pHの製剤を得るように、プロセス中のpHの調整が可能となる一方、カプセル化されていないイミキモドが製剤から沈殿することは最小限になる、または避けられる。方法は、本明細書に記載されている抗原またはポリヌクレオチドの添加と適合する。
【0080】
好適には、プロセスのステップ(a)は、約pH4~6に、または約pH4.5~6に、または約pH4~5.5に、または約pH5~6に緩衝したpHのイミキモドを可溶化することを伴い得る。ステップ(a)は、例えば、イミキモドを、ヒドロキシ酸、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸またはリンゴ酸の存在下で、水溶液中で可溶化することを伴い得る。ステップ(a)は、イミキモドを、本明細書で開示されているホスト分子、例えばシクロデキストリン、詳細にはHP-β-CDの存在下で、水溶液中で可溶化することを伴い得る。詳細には、ステップ(a)は、約pH6以下に、好ましくは約pH4~6に、または約pH4.5~6に、または約pH4~5.5に、または約pH3~5.5に、または約pH5~6に、または約pH5に緩衝したpHの溶液中で、イミキモドをホスト分子、例えばシクロデキストリンと組み合わせることを伴い得る。
【0081】
ステップ(b)は、本明細書で開示されているように、(a)の溶液を脂質と混合して、多重ラメラ構造の溶液または懸濁液を形成すること、ならびに、これらの多重ラメラ構造を加工して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを伴い得る。脂質は、任意選択で、アルコール溶液中で可溶化され得る。構造を加工するステップは、多重ラメラ構造の溶液または懸濁液を、膜を通して押し出して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含み得、または多重ラメラ構造の溶液または懸濁液を乾燥させて、フィルムを形成し、フィルムを可溶化し、生じた溶液を振とうもしくは超音波処理して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含み得;または微小流体混合技術を使用して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを含み得る。
【0082】
他の実施形態では、ステップ(b)は、(a)の溶液を空のリポソームと混合して、イミキモドをカプセル化する脂質シェルナノ粒子を形成することを伴い得る。このケースでは、空のリポソームは、本明細書で開示されているように脂質から形成され得る。
【0083】
プロセスのステップ(c)は、製剤の緩衝したpHを約pH6.5もしくはそれ超に、またはpH7もしくはそれ超に、または約pH6.5~9に、または約pH6.5~8.5に、または約pH6.5~8に、または約pH7~9に、または約pH7~8.5に、または約pH7~8に、または約pH7.5~9に上昇させるステップを伴い得る。いくつかの実施形態では、製剤の緩衝したpHは、公知の技術、例えば透析濾過または緩衝液交換により、ステップ(c)で上昇させてよい。
【0084】
方法は、任意選択で、本明細書で開示されているように、ヒドロゲルポリマー、例えばPEG 4000ポリマーをステップ(a)の後で添加するステップをさらに含み得る。こうしてヒドロゲルポリマーを添加すると、ヒドロゲルポリマーをナノ粒子の水性コア中へと組み込むことが可能となる。任意選択で、方法は、IL-2またはタンパク質サイトカイン、例えばIL-2を(c)の製剤へと添加して、ナノ粒子にタンパク質サイトカインを装填するステップを含まなくてよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、ステップ(b)の後およびステップ(c)の前に、(b)のナノ粒子製剤から、カプセル化されていないイミキモドを減少させることをさらに含み得る。これは、任意選択で、超遠心分離により、またはナノ粒子を保つ大きさにしたが、遊離イミキモドの通過を可能にした膜を用いた透析濾過により、または、当業界で公知の他の技術により行われ得る。
【0086】
方法は、濃度調整、好適な賦形剤の添加および無菌化を含む、標準的な加工ステップをさらに含み得る。詳細には、方法は、本明細書で開示されている1種または複数の追加のアジュバント成分を添加するステップを含み得る。1種または複数の追加のアジュバント成分は、ステップ(a)中に、またはその後で添加され得る。いくつかの実施形態では、1種もしくは複数の、またはすべての追加の原料は、ステップ(c)の後で、製剤の緩衝したpHが上昇した後で添加され得る。
【0087】
生成されたら、ワクチンアジュバントは、任意選択で、乾燥または凍結乾燥させてよく、かつ/または保存または投与のためのコンテナ中に小分けしてよい。あるいは、ワクチンアジュバントは、さらに加工して、以下にさらに記載されているように、本開示によるワクチン組成物を得ることができる。
【0088】
本開示はさらに、本明細書で開示されているワクチン組成物を生成するための方法であって、本明細書で開示されているワクチンアジュバントを得ること、ならびに、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/もしくは、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを添加することを含む、方法を提供する。抗原またはポリヌクレオチドを添加するステップは、例えば、承認されたワクチンの1種または複数の原料を添加するステップを含み得、詳細には、承認されたワクチン製剤を添加するステップを含み得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、ワクチンアジュバントを、本明細書で開示されている方法に従って製造すること、ならびに、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/もしくは、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドを添加することを含み得る。抗原および/またはポリヌクレオチドは、ステップ(a)中に、またはその後で添加され得る。詳細には、抗原および/またはポリヌクレオチドは、ステップ(a)中に、またはステップ(a)とステップ(b)との間に、またはステップ(b)中に、またはステップ(b)とステップ(c)との間に、またはステップ(c)中に、またはステップ(c)の後で添加され得る。いくつかの実施形態では、方法は、ステップ(a)中に、ステップ(a)とステップ(b)との間に、またはステップ(b)中にポリヌクレオチドを添加することを含み得る。抗原が小分子である、または酸性pHにより損なわれない物質もしくは材料である場合、方法は、抗原を、ステップ(a)中に、ステップ(a)とステップ(b)との間に、またはステップ(b)中に添加することを含み得る。抗原が、大きい分子であり、もしくはそれを含み、かつ/または、酸性pHにより損なわれる物質または材料である場合、方法は、ステップ(c)の後で抗原を添加することを含み得る。本文脈において「損なわれる」ことは、抗原の免疫原性に著しく影響を与える任意の変化を含む。
【0090】
他の実施形態では、方法は、本明細書で開示されているワクチンアジュバントを得ること、ならびに、ワクチンアジュバントを、免疫応答を誘導することが可能である抗原、および/または、免疫応答を誘導することが可能である抗原をコードするポリヌクレオチドと組み合わせることを含み得る。ワクチンアジュバントを得るステップは、任意選択で、本明細書で開示されている方法に従ってワクチンアジュバントを製造することを含み得る。あるいは、ワクチンアジュバントを得るステップは、以前に製造されたワクチンアジュバントを得ることを含み得る。ワクチンアジュバントを、抗原および/またはポリヌクレオチドと組み合わせるステップは、ワクチンアジュバントを、抗原および/またはポリヌクレオチドと混合することを含み得る。これは、ワクチンアジュバントを、抗原および/もしくはポリヌクレオチドへと添加すること、または、抗原および/またはポリヌクレオチドを、ワクチンアジュバントへと添加することを伴い得ることが認識される。
【0091】
製造プロセスの例は、
図4で例証され、実施例1~3に記載されている。例証および記載されているプロセスは、酸性pH緩衝液、および、押出プロセス中におけるイミキモド:シクロデキストリンのナノ粒子中への組込みに最適化されたHP-β-CD濃度を利用する。本発明者らは、酸性pH条件は、脂質および抗原/ポリヌクレオチド安定性と適合せず、非経口投与される薬剤に好適ではないので、生成物の原料は、製造プロセス中にpH4を下回るpHに曝露させるべきではなく、pHは、最終製品ではほぼ中性のpHまで上昇させなければならないことを把握している。これは、任意の抗原またはポリヌクレオチドの添加の前でも、または前でなくてよい。イミキモド溶解度は、ほぼ中性のpHで大幅に低下するため、プロセス中の溶液における、カプセル化されていない「遊離」イミキモドの濃度は、pHの任意の上昇前に低下させて、カプセル化されていない「遊離」イミキモドの沈殿を防止しなければならず、沈殿により、透析濾過および無菌濾過に使用されるフィルターがブロックされ、バルク生成物からの除去が防止され、正しい無菌濾過が防止される。カプセル化されていない「遊離」イミキモドの濃度の低下は、方法、例えば、ナノ粒子を保つが、遊離イミキモドおよびシクロデキストリンの透過物中への通過を可能にする、適切な大きさの膜を用いた超遠心分離または透析濾過により達成され得る。透析濾過は、臨床および商用スケールの薬剤製造に十分合わせたプロセスであり、この理由で好ましいことがある。プロセス中の溶液における、カプセル化されていない「遊離」イミキモドの濃度は、ほぼ中性のpHで、沈殿しないように十分に低下させた後、pHを上昇させてよく、透析濾過を続けて、外側のシクロデキストリンおよびイミキモドを除去し、生成物を製剤の最終緩衝液に製剤化できる。
【0092】
ワクチンアジュバントは、ワクチン組成物の製品のために、抗原またはポリヌクレオチドと混合され得る。このステップは、ワクチンアジュバントの生成中、またはその後で実行され得る。ポリヌクレオチドが添加されることになる場合、アジュバント生成の早期のうちに、ポリヌクレオチドを添加することが有効と考えられる。大きいタンパク質抗原または細胞抗原が添加されることになる場合、本明細書で開示されているようにpHがほぼ中性に調整されたら、アジュバントの生成の後期段階のうち、またはその後で、大きいタンパク質抗原または細胞抗原を添加することが有効と考えられる。これは、実施例2に記載されているように、必須の透析濾過および精製ステップすべてが完了する前、または完了した後であり得る。
【0093】
cGMP標準に従って行われるバッチプロセスにより、およそ10リットルのワクチンアジュバントが、イミキモドをおよそ10μg/mlの濃度で含有するリポソームの無菌懸濁液の形態で生成され得る。この組成物は、抗原または抗原をコードするポリヌクレオチドを含む他のワクチン原料との組合せにより、ワクチン中のアジュバントとして使用され得る。
【0094】
以下は、本開示による具体的な例である。
【0095】
[実施例1]
ナノ粒子成分
製剤の構造および品質に重要ないくつかの原料および賦形剤を使用して、ナノ粒子を生成した。コレステロール(以下を参照されたい)を除いて、原料および賦形剤のすべては、合成であった、または植物に由来していた。
【0096】
リポソームシェルは、3種の成分で構成されていた。
●N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE)
●完全に水素化されたダイズホスファチジルコリン(HSPC)、および
●コレステロール
水性コアは、2種の成分で構成されていた。
●2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
●ポリエチレングリコール4000ヒドロゲル
これらの成分は、すべて市販され、公知であり、十分に特徴付けられている賦形剤である。
【0097】
[実施例2]
イミキモドを含むナノ粒子ワクチンアジュバントの調製
イミキモドを装填したナノ粒子を生成するプロセスのステップは、
図4で例証されている。イミキモドは、HP-β-CDの存在下で、pH5の水溶液中で可溶化した。脂質の溶液は、完全に水素化されたダイズホスファチジルコリン(HSPC)、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE)およびコレステロールを、約1.9:0.1:1のモル比でエタノール中に溶解することにより生成した。この溶液をイミキモド溶液と混合して、多重ラメラ構造を形成した。これらの構造を次いで、適切な細孔サイズ(80から100nm)の膜を通して押し出して、ナノ粒子または「ナノリポゲル」を生成し、これは、イミキモドおよびHP-β-CDをカプセル化する脂質シェルを有するコアシェル構造であった。
【0098】
ナノリポゲルを、pH5の緩衝液中におけるPEG-4000の溶液とインキュベーションし、PEG-4000をナノ粒子の内部に装填した。
【0099】
透析濾過を実行して、外側のイミキモドおよびシクロデキストリンを除去した。さらなる透析濾過ステップを次いで行って、製剤のpHをpH7.4に上昇させた。生じた溶液は、ワクチンアジュバントとしての使用に好適である。
【0100】
[実施例3]
ワクチン組成物の調製
ワクチン組成物を調製するために、実施例2のナノ粒子は、pH7.4の溶液中の、好適なワクチン抗原、例えばSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むワクチン原料と混合される。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、NUVAXOVID(登録商標)SARS-CoV-2ワクチンを含む、様々な承認されたワクチン製剤に抗原として利用され、市販されている。
【0101】
ナノ粒子に、中空糸膜(500Kd)と1%トレハロースPBS pH7.4緩衝液を25℃にて使用して、4透析濾過容量の透析濾過をさらに施して、外側のシクロデキストリン濃度をさらに低下させ、外側イミキモドを除去し、1%トレハロースを添加した。このステップは、あるいは、実施例2に従ってナノ粒子の生成中に実行してよい。
【0102】
製剤の濃度を次いで調整し、製剤を、治療用途に必要とされる標準まで無菌化した。無菌化は、0.2μmフィルターを使用して濾過により実行する。
【0103】
製剤は、10μg/mLのイミキモドを含有する単回投与濃度で供給される。これは、無菌白色不透明液である。コンテナクロージャーシステムは、5mL透明ボロシリケートガラスバイアル、13mm合成クロロブチルゴムストッパー、およびフリップオフクリンプシールからなる。5mlバイアル中のIMPの組成は、以下の表2で列挙されている。
【0104】
【0105】
[実施例4]
製剤の性質
図3で示されているイミキモドを装填したナノ粒子のCryo-TEM画像。Cryo透過電子顕微鏡法(cryo TEM)により、これらのナノ粒子の大多数が、単一ラメラの外側シェルを有する球体であることが実証される。cryo TEM画像により、カプセル化された薬物およびナノ粒子の内部環境の状態に関連した情報も得られる。ナノ粒子は、周囲の緩衝液より緻密な内部を有し、これは、リポソームの内部におけるイミキモド、HP-β-CDおよびPEG 4000ポリマーをリポソームに装填することと一致する。
【0106】
[実施例5]
非臨床毒性およびアジュバントの効能の研究
現在開示されているナノ粒子に利用されているイミキモドが、本明細書で開示されている臨床用量を超える用量で、動物において忍容性が良好であることを指し示すこの実施例の基準の研究、およびここに開示されているナノ粒子により送達されるイミキモドの量と同様の用量で、イミキモドのアジュバント活性を実証する研究。
【0107】
様々な研究により、局所イミキモドは、ワクチンにより誘導される免疫応答を向上させることが可能であると示されている。局所イミキモドを用いた前処理は、インフルエンザワクチン接種の免疫原性も、若齢および高齢個体の両方で著しく改善する(Hung et al, Lancet Infect. Dis. 2016 Feb; 16(2):209-18)。同様の結果は、Adams et al, J. Clin. Oncol. 25(18) suppl 8545によっても報告されており、これは、NY-ESO-1タンパク質ワクチンと投与された場合のイミキモドの安全性およびアジュバント活性を評価した。これらの研究におけるイミキモドの局所投与により、標的免疫細胞に送達されるイミキモド用量の正確な評価が可能となる。
【0108】
ミセルにカプセル化されたイミキモドを用いたマクロファージのIn vitro処理により、0.2μg/mlの濃度でNF-κBおよびMAPK経路の著しい活性化が生じ(Jimenez-Sanchez, et al 2014)、数百ng/mlの局所イミキモド濃度が免疫系を活性化すると指し示された。Zhangら(Clinical and Vaccine Immunology 2014. 21:4 pp570 -579)によるIn vivo研究により、インフルエンザワクチンと組み合わせて、マウスに腹腔内注入された50μgイミキモドは、ウイルスに対する体液性免疫応答を有意に迅速化および増強し、早期の致死的なウイルス負荷に対してマウスを有意に保護したことが見出された。
【0109】
Zyclara(イミキモド)クリーム3.75%(登録番号201153)のFDA Pharmacology/Toxicology reviewは、イミキモドの毒性学、薬物動態および代謝の異なる種におけるいくつかの動物研究について記載しており、これらの研究からの所見は、以下を含む:
●ラットにおける単回皮下用量の皮下致死量は、20mg/kgであった。
●0.5から5.0mg/kgイミキモドの静脈内用量により、イヌにおいて、心臓刺激、中枢神経系刺激および自律神経系阻害のいくつかの証拠が生じた。
●0.5、1および2mg/kg/日のイミキモド静脈内用量を、妊娠した雌ウサギに、器官形成期中(妊娠6~18日目)に投与した。胚胎児毒性または催奇形性に対する処置に関連した効果は、2mg/kg/日で認められなかった。
【0110】
Aldara(イミキモド)5%クリームのEMA’s toxicology review(https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-discussion/aldara-epar-scientific-discussion_en.pdf)は、イミキモドの毒性学、薬物動態および代謝のいくつかの動物研究について記載している。全体として、「毒性学プログラムは、過度の薬理学的活性に起因すること以外に標的器官の毒性がない、高度な安全性を指し示す。イミキモドは、受精率に影響を与えず、催奇形性でも遺伝毒性でもなかった。マウスにおける癌原性試験では、イミキモドに対する皮膚曝露の結果として、腫瘍または非新生物病変の発生率における上昇はみられなかった」と報告されている。これらの研究からの具体的な所見は、以下を含む:
●マウス、ラットおよびサルで研究されたイミキモドの単回投与毒性により、高度な安全性が指し示された。中枢神経系に限定された有害作用は、死亡前にいくつかの徴候を生じ、通常は痙攣であった。
●2000および5000mg/kgの用量を用いたウサギにおける2件の皮膚毒性研究では、閉塞下で、死亡はみられず、適用部位において軽度の一過性紅斑以外に毒性の兆候はみられなかった。
●6カ月までのラットおよびサルでの経口投与後におけるイミキモドの反復投与毒性は、過度な薬理学的活性の結果と考えられる体重および摂食量に対する少しの影響とは別に、わずかな有害作用のみ、すなわち、BおよびT細胞リンパ系組織の過形成、形質細胞数の増加、脾臓およびリンパ節の肥大、Kupffer細胞過形成、単核性/マクロファージ細胞蓄積または増殖を示した。両方の種で、他の標的器官はなく、3mg/kgの有害作用が観察されないレベル(NOAEL)が確立された。
【0111】
本明細書で開示されているナノ粒子の最大イミキモド用量は、多数の動物研究に基づく、承認された薬物の現在の用量段階またはMRHDの数千分の一である、または、健常ヒトボランティアにおいて、忍容性が十分に良好な30mg皮下用量である(Soria, Myhre, et al., 2000)。開示されているナノ粒子(NP)の提案された100μl用量のイミキモドの量を、承認された安全な用量のAldara(登録商標)(イミキモド)と比較する表3も参照されたい。
【0112】
【表3】
本開示の実施形態で利用されているヒドロゲルコアを有する脂質ナノ粒子は、抗原提示細胞(APC)により優先的に取り込まれることが示されており、これにより、免疫学的調節における利点が得られる。Look et al, Biomaterials 35(2014) 1089-1095は、ヒドロゲルコアを有する脂質ナノ粒子に、PLGAナノ粒子と比較してより効率的な、樹状細胞による取込みを施し、フローサイトメトリー分析および共焦点画像化により、取込みが>100×倍増加したことが実証されたと示した。
【0113】
[実施例6]
In vitro放出アッセイ
in vitro放出アッセイ(IVRA)は、イミキモドに対して開発された。IVRAの結果は、
図5で例証されている。ここでは、実施例1~3に従って生成されたナノ粒子は、等体積のPBS緩衝液で希釈し、37℃にて穏やかに振とうしながらインキュベーションした。試料を0、4、6および24時間で除去し、300kdフィルターを使用して直ちに加工して、濾液中の、放出された遊離(カプセル化されていない)イミキモドを得た。逆相HPLCアッセイを使用して、濾液中のイミキモドの濃度を判定した。
【0114】
結果から、イミキモドはナノリポゲルから、直線的速度で経時的に放出されたことが示され、24時間後に薬物のおよそ25%が放出され、数日かけて完全に放出されると予想される。このin vitro結果により、ナノリポゲルが意外にも徐放性をもたらす能力、および、数日の長期間にわたる有効量のイミキモドの送達が実証され、これを、イミキモドがより一層急速に放出されると見出された従来技術のイミキモド製剤と、きわめて好都合に比較する。研究から、TLR7/8アゴニスト、例えばイミキモドの免疫刺激効果は、送達を持続させることにより向上したと示された(Auderset et al Front Immunol. 2020 Nov 11;11:580974)。ここで開示されている製剤により達成される遅延放出は、したがって、ワクチンの一部として投与された場合、製剤のアジュバント効果を向上させる。
【0115】
[実施例7]
地域のワクチン接種セッティングにおける使用
一定用量の実施例3のワクチン組成物を、COVID-19疾患に罹る危険性がある患者の上腕への非経口筋肉内注入により投与する。アジュバント成分は、ワクチンにより誘導される保護免疫応答を向上させる機能を有する。
【国際調査報告】