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特表2024-537544エネルギー変換装置を有するパッシブセーフティシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エネルギー変換装置を有するパッシブセーフティシステム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20241003BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20241003BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/68
B60N2/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545070
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2022000635
(87)【国際公開番号】W WO2023062431
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】17/498,709
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524135923
【氏名又は名称】サンパス,ナヴィーン,ゴパル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンパス,ナヴィーン,ゴパル
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD04
3B087CD05
3B087DB03
3B087DE02
3B087DE03
3B087DE06
3B087DE10
(57)【要約】
パッシブセーフティシステムが車両用に提供される。パッシブセーフティシステムは、車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレームと、車両によって運ばれるペイロードを支持するように構成された支持面とを含む。支持面は、支持フレームに対して浮くように構成される。パッシブセーフティシステムは、支持フレームと支持面との間にエネルギー変換装置と、支持面が支持フレームに対して所定の方向に移動しようとするときに支持面の一部と係合し、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換し、停止/制動距離を増加させるように構成された摩擦面とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用パッシブセーフティシステムであって、前記パッシブセーフティシステムは、
前記車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレームと、
前記車両によって運ばれるペイロードを支持するように構成され、前記支持フレームに対して浮くように構成された支持面と、
前記支持フレームと前記支持面との間のエネルギー変換装置であって、前記エネルギー変換装置は、前記支持面が前記支持フレームに対して所定の方向に移動しようとするときに前記支持面の一部と係合し、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成された摩擦面を含む、エネルギー変換装置とを含む、パッシブセーフティシステム。
【請求項2】
衝突中、前記車両、または前記ペイロードが取り付けられる前記車両上の構造物に対する前記ペイロードの位置を変えることなく、前記ペイロードが支持される前記エネルギー変換装置の前記摩擦面を移動させることによって前記ペイロードの停止距離が増加し、それによって前記ペイロードの減速が減少し、前記ペイロードの損傷のリスクが低下する、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項3】
前記エネルギー変換装置が前記支持フレームに結合される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項4】
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、前記所定の方向と反対する方向に移動する、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項5】
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、ベルトを含み、前記ベルトは、前記ベルトの表面が前記支持面の前記一部と摩擦係合するように、前記所定の方向と反対する方向に移動するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項6】
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、ローラを含み、前記ローラは、前記支持面が前記所定の方向に移動しようとするとき、前記ローラの表面が前記支持面の前記一部と摩擦係合するように、前記所定の方向と反対する方向に回転するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項7】
前記支持面の前記一部は、前記ローラの前記表面に対応する形状を有する表面を含む、請求項6に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項8】
前記支持面及び前記支持フレームのうちの少なくとも1つは、前記固定支持フレームに対する前記支持面の移動を少なくとも前記所定の方向に案内するための少なくとも1つのガイドを含む、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項9】
前記支持面は、前記支持フレームに対して少なくとも前記所定の方向及び前記所定の方向と反対する方向に移動可能であり、また
前記エネルギー変換装置は、前記支持面が前記所定の方向と反対する方向に移動しようとするときに前記支持面と係合し、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成された第2の摩擦面を含む、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項10】
前記支持面は、前記支持フレームに対して少なくとも前記所定の方向及び前記所定の方向と反対する方向に移動可能であり、
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、少なくとも前記所定の方向及び前記所定の方向と反対する方向に移動可能であり、また
前記摩擦面は、前記支持面が前記所定の方向に移動しようとするとき、及び前記支持面が前記所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、前記支持面の前記一部と係合するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項11】
前記支持面は、前記支持フレームに対して少なくとも前記所定の方向及び前記所定の方向と反対する方向に移動可能であり、また
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、複数のローラを備え、前記ローラは、
少なくとも第1のローラであって、前記支持面が前記所定の方向に移動しようとするとき、前記第1のローラの表面が前記支持面の前記一部と摩擦係合するように、前記所定の方向と反対する方向に回転するように構成された少なくとも第1のローラと、
少なくとも第2のローラであって、前記支持面が前記所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、前記第2のローラの表面が前記支持面の第2の部分と摩擦係合するように、前記所定の方向に回転するように構成された少なくとも第2のローラとを含む、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項12】
前記支持面は、前記支持フレームに対して少なくとも前記所定の方向及び前記所定の方向と反対する方向に移動可能であり、
前記支持面の前記一部は、複数の第1の部分と複数の第2の部分とを含み、また
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、
複数の第1のローラであって、前記支持面が前記所定の方向に移動しようとするとき、前記複数の第1のローラのそれぞれの表面が前記支持面の前記複数の第1の部分のうちの1つと摩擦係合するように、前記所定の方向と反対する方向に回転するように構成された複数の第1のローラと、
複数の第2のローラであって、前記支持面が前記所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、前記複数の第2のローラのそれぞれの表面が前記支持面の前記複数の第2の部分のうちの1つと摩擦係合するように、前記所定の方向に回転するように構成された複数の第2のローラとを含む、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項13】
前記支持面は、前記所定の方向を含む複数の方向に前記支持フレームに対して移動可能であり、また
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、前記支持面が前記複数の方向のいずれかに移動しようとするときに前記支持面の前記一部と係合し、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項14】
前記支持面は、前記支持フレームに対して、前記所定の方向と異なる方向、かつ前記所定の方向と同一面内で移動可能であり、また
前記エネルギー変換装置の前記摩擦面は、前記支持面が前記異なる方向に移動しようとするときに前記支持面の前記一部と係合し、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項15】
前記エネルギー変換装置は、前記車両のセンサから前記車両の加速度の所定の変化を表す信号を受信するように構成され、また
前記信号に応答して、前記エネルギー変換装置は、前記摩擦面を前記支持面の前記一部と係合させ、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項16】
第1の状態では前記支持フレームに対する前記支持面の移動を阻止し、前記車両からの前記信号に応答して、第2の状態では前記支持フレームに対する前記支持面の移動を可能にするように構成された接触防止機構をさらに備える、請求項15に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項17】
前記支持フレームに対する前記支持面の移動に抵抗するように構成された接触防止機構をさらに備え、前記接触防止機構は、前記支持面と前記支持フレームとの間に配置された少なくとも1つのバネを備える、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項18】
前記支持フレームは、前記車両に固定して取り付けられるシートフレームを含み、また
前記支持面は、前記車両のシートの一部である、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項19】
前記支持フレームは、前記車両の一部と一体的に形成される、請求項1に記載のパッシブセーフティシステム。
【請求項20】
車両用パッシブセーフティシステムであって、前記パッシブセーフティシステムは、
前記車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレームと、
前記車両によって運ばれるペイロードを支持するように構成され、前記支持フレームに対して浮くように構成された支持面と、
前記支持フレームと前記支持面との間のエネルギー変換装置とを備え、
前記車両の減速中に前記支持面に作用する慣性力の結果として、前記支持面が前記支持フレームに対して所定の方向に移動しようとするとき、前記エネルギー変換装置は、前記支持面の一部に前記所定の方向と反対する方向に相対運動を与え、それによって前記支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される、車両用パッシブセーフティシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パッシブセーフティシステムに関し、より具体的には、エネルギー変換装置を含むパッシブセーフティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパッシブセーフティシステムは、衝突時の乗員保護のために、エアバッグ、シートベルト、折り畳み式ステアリングコラム、むち打ち防止装置などのうちの1つ以上を含み得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一部の従来の搭乗者拘束システムは、衝突後に搭乗者を減速させるための持続時間と距離が非常に短く、従来のパッシブセーフティシステムによって搭乗者が停止する前に搭乗者に大きな力が加わる可能性があることを認識している。本発明はさらに、場合によっては、無人車両などの車両によって運ばれたり輸送されたりする他の物体にかかる力を軽減することが望ましい場合があることを認識している。
【0004】
これら及びその他の問題を解決するために、本発明は、車両用パッシブセーフティシステムを提供し、パッシブセーフティシステムは、車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレームと、車両によって運ばれるペイロードを支持するように構成された支持面であって、支持面はさらに、支持フレームに対して同じ、または実質的に同じ位置で支持フレームに対して浮くように構成された支持面と、支持フレームと支持面との間のエネルギー変換装置であって、エネルギー変換装置は、支持面が支持フレームに対して所定の方向に移動しようとするときに支持面の一部と係合し、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成された摩擦面を含む、エネルギー変換装置とを備える。一具体例では、支持面は、支持フレームに対して所定の方向にスライドしてエネルギー変換装置と係合し、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。他の例では、支持面は、車両が慣性力を受け、エネルギー変換装置と係合し、それによって運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するとき、支持フレームまたは車両に対して支持面が移動しないか、または実質的に移動しないように、支持フレームに対して浮くように構成され得る。
【0005】
このようにして、本発明は、単独で、または1つ以上の従来のパッシブセーフティシステムと連携して動作することができ、車両の衝突または他の物体との衝突などで搭乗者または他の物体にかかる力をさらに軽減する。その結果として、本発明は、例えば、車両の衝突または衝撃、制動、緊急制動、着陸などの際に搭乗者が受ける可能性のある傷害の重篤度、または車両によって輸送される物品の損傷を防止、軽減、または制限することができる。
【0006】
一例では、エネルギー変換装置が支持フレームに結合され得、その結果、エネルギー変換装置が支持フレームに対してしっかりと固定される。エネルギー変換装置の摩擦面は、支持面の一部に所定の方向と反対する方向に移動または相対運動を与え、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。あるいは、別の例では、エネルギー変換装置が支持面に結合され得、エネルギー変換装置が支持面に対してしっかりと固定される。これらの例では、エネルギー変換装置の摩擦面は、支持フレームの一部に所定の方向と反対する方向に移動または相対運動を与え、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。
【0007】
いくつかの例では、エネルギー変換装置の摩擦面は、ベルトを含み得、ベルトは、ベルトの表面が支持面の一部と摩擦係合するように、所定の方向と反対する方向に移動するように構成される。いくつかの他の例では、エネルギー変換装置の摩擦面は、ローラを含み得、ローラは、支持面が所定の方向に移動しようとするとき、ローラの表面が前記支持面の一部と摩擦係合するように、所定の方向と反対する方向に回転するように構成される。支持面の一部は、ローラの表面に対応する形状を有する表面を含み得る。
【0008】
いくつかの例では、支持面及び支持フレームのうちの少なくとも1つは、固定支持フレームに対する支持面の移動を少なくとも所定の方向に案内するための少なくとも1つのガイドを含み得る。
【0009】
いくつかの例では、支持面は、例えば、前面衝突シナリオまたは後面衝突シナリオなど、衝撃、制動、着陸などの際の車両の慣性方向に応じて、支持フレームに対して少なくとも所定の方向及び所定の方向と反対する方向に移動可能であり得る。これらの例では、エネルギー変換装置は、支持面が所定の方向と反対する方向に移動しようとするときに支持面と係合し、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成された第2の摩擦面を含み得る。いくつかの例では、エネルギー変換装置の摩擦面は、少なくとも所定の方向及び所定の方向と反対する方向に移動可能であり得る。例えば、摩擦面は、支持面が所定の方向に移動しようとするとき、及び支持面が所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、支持面の一部と係合するように構成され得る。
【0010】
いくつかの他の例では、エネルギー変換装置の摩擦面は、複数のローラを備え、複数のローラは、少なくとも第1のローラであって、支持面が所定の方向に移動しようとするとき、第1のローラの表面が支持面の一部と摩擦係合するように、所定の方向と反対する方向に回転するように構成された少なくとも第1のローラと、少なくとも第2のローラであって、支持面が所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、第2のローラの表面が支持面の第2の部分と摩擦係合するように、所定の方向に回転するように構成された少なくとも第2のローラとを含む。
【0011】
さらに、他の例では、支持面の一部は、複数の第1の部分と複数の第2の部分とを含み得る。エネルギー変換装置の摩擦面は、複数の第1のローラであって、支持面が所定の方向に移動しようとするとき、複数の第1のローラのそれぞれの表面が支持面の複数の第1の部分のうちの1つと摩擦係合するように、所定の方向と反対する方向に回転するように構成された複数の第1のローラと、複数の第2のローラであって、支持面が所定の方向と反対する方向に移動しようとするとき、複数の第2のローラのそれぞれの表面が支持面の複数の第2の部分のうちの1つと摩擦係合するように、所定の方向に回転するように構成された第2のローラとを備え得る。
【0012】
他の例では、支持面は、所定の方向を含む複数の方向に支持フレームに対して移動可能であり得る。エネルギー変換装置は、支持面が複数の方向のいずれかに移動しようとするときに摩擦面を支持面の一部と係合させ、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。
【0013】
別の例では、支持面は、支持フレームに対して、所定の方向と異なる方向及び所定の方向と同一面内で移動可能であり得る。エネルギー変換装置は、支持面が異なる方向に移動しようとするときに摩擦面を支持面の一部と係合させ、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される。
【0014】
本発明はさらに、車両と他の車両または他の物体との衝突または衝撃、あるいは差し迫った衝突または衝撃を検出するために、様々なセンサが提供され得ることを認識している。いくつかの例では、エネルギー変換装置は、車両の1つ以上のセンサから、衝突もしくは衝撃、または差し迫った衝突もしくは衝撃を表す所定または閾値の減速度など、車両の加速度の所定の変化を表す信号を受信するように構成され得る。信号に応答して、エネルギー変換装置は、摩擦面を支持面の一部と係合させ、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。
【0015】
いくつかの例では、パッシブセーフティシステムは、第1の状態では支持フレームに対する支持面の移動を阻止し、車両からの信号に応答して、第2の状態では支持フレームに対する支持面の移動を可能にするように構成された接触防止機構をさらに備え得る。他の例では、パッシブセーフティシステムは、支持フレームに対する支持面の移動に抵抗するように構成された接触防止機構をさらに備え得る。例えば、接触防止機構は、支持面と支持フレームとの間に配置された1つ以上のバネを含み得る。このようにして、1つ以上のバネは、支持プレートに作用する力がバネ力を超えるか、または克服するようなときまで、支持フレームに対する支持面の移動を阻止することができ、このようなときには、支持面は、支持フレームに対して移動可能であり得る。
【0016】
接触防止機構は、例えば、支持フレームの端部と支持面の端部との間、またはそれらの上に形成されたフランジの間に配置されて、支持面の移動を阻止することができる。接触防止機構は、車両センサによる衝突または衝撃の検出中に自動的に解除されるように構成され得、これは、エネルギー変換装置の摩擦面と支持面の一部との間の物理的接触または係合を確立するのに役立ち、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換することができる。
【0017】
別の例では、車両用パッシブセーフティシステムは、車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレームと、車両によって運ばれるペイロードを支持するように構成され、支持フレームに対して移動可能である支持面と、支持フレームと支持面との間のエネルギー変換装置とを含み得る。車両の減速中に支持面に作用する慣性力の結果として、支持面が支持フレームに対して所定の方向に移動しようとするとき、エネルギー変換装置は、支持面の一部に所定の方向と反対する方向に相対運動を与え、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換し、その結果、車両上または車両内で輸送される搭乗者または他の物体の減速度を低下させ得るように構成され得る。
【0018】
いくつかの例では、支持フレームは、車両に固定して取り付けられるシートフレームを含み得、支持面は、車両のシートの一部である。
【0019】
本発明の目的上、「車両」は、ペイロードを運ぶまたは輸送するための手段として定義される。例えば、車両は、自動車、トラック、オフロード車、全地形対応車、自転車、オートバイ、電車、航空機、船舶、宇宙船、ローバー、機械などを含み得る。いくつかの例では、車両は、乗用車などの1人以上の人によって操作されるかまたは1人以上の人を運ぶ車両などの有人車両、あるいはドローン、ローバー、宇宙船などの無人車両を含み得る。車両は、人間の制御によって操作(例えば、ナビゲーション及び/または操縦)、及び/または、自律車両もしくは自動運転/自己運転車両など、人間の誘導もしくは入力なしで操作され得る。
【0020】
本発明の目的上、「ペイロード」は、車両の動作に必要なものを除いて、車両によって運ばれる荷重として定義される。例えば、ペイロードは、とりわけ、運転手/パイロット、搭乗者、計器、貨物、物体、材料などが1つ以上含み得る。
【0021】
本発明の目的上、「車両の固定位置上に固定されるように構成された支持フレーム」は、運転中に支持フレームが車両に対してロックまたは固定位置に固定されるように、車両の一部(例えば、車両の一部内または一部上)に結合される(例えば、ボルトなどの締結具または他の固定もしくはロック要素を使用)支持フレームとして定義される。これは、支持フレームが、例えば、スライド可能または移動可能なシートフレーム、折り畳み可能なシートフレーム、イージーエントリーシートフレームなどのように、車両に対して1つ以上の固定位置に調整、位置決め、または再位置決めできないということではない。支持フレームが1つ以上の固定位置に調整可能、位置決め可能、または再位置決め可能であるような場合、支持フレームは通常、動作中に単一の利用可能な固定位置に固定またはロックされる。
【0022】
本発明の実施形態の例は、乗員の減速率を大幅に低減することで、車両と別の物体または車両との衝突または衝突中に乗員が受ける傷害の可能性を最小限に抑えるために使用できるパッシブセーフティシステムを提供することができる。同様に、機器、貨物、物体、材料など、または車両によって輸送される他の物品の場合、パッシブセーフティシステムの例を使用して、車両が他の物体または車両と衝突または衝撃する際に、車両が輸送する機器、貨物、物体、材料など、または他の物品に損傷を与える可能性を最小限に抑えることにより、機器、貨物、物体、材料など、または車両が輸送する物品の減速率を大幅に低減することができる。
【0023】
本発明の実施形態の例は、ペイロードと別の車両安全装置または車両構造物との衝突前及び衝突中の両方(例えば、搭乗者とエアバッグまたは他の車両構造物(ステアリングホイール、ダッシュボードなど)との衝突前と衝突中の両方)で、ペイロードの運動エネルギーを摩擦エネルギーに実質的に変換できるエネルギー変換装置を有するパッシブセーフティシステムを提供することができる。本発明の実施形態の例は、例えば、エアバッグの使用が許可されない、または安全でない可能性があるペイロードに幼児または子供の乗員が含まれる場合に非常に有用であり得る。本発明の例示的な実施形態は、現在のパッシブセーフティシステムと連携して使用される1つ以上の他の搭乗者拘束システムの力要件(複数可)を大幅に低減することができ、これにより、車両と別の物体または車両との衝突または衝突中にペイロードにかかる力がさらに軽減または制限され得る。
【0024】
いくつかの例では、本発明によるパッシブセーフティシステムは、乗員などのペイロードの減速が、車両構造物に対するペイロード(例えば、シートクッション)を支持する表面の位置をあまり変えることなく達成できるという利点を提供することができる。すなわち、いくつかの例では、シートクッションの位置は、車両の運転中、車両に対してほとんど変化しない(すなわち、実質的に変化しない、または実質的に静止する)。その結果として、ペイロード(ベルトを締めた乗員など)は通常、車両に対して静止したままであるが、衝突中にシートクッションと係合して支持するシステムの一部(例えば、エネルギー吸収装置のスライド摩擦面)は、シートに対して移動し、その結果、ペイロード/搭乗者の停止距離が増加し、ペイロード/搭乗者の減速度が減少する。
【0025】
例えば、車両の前面衝突中、搭乗者は動き続け、シートクッションに沿って前方にスライドすることができる(すなわち、搭乗者は車両の初期状態と同じ速度と方向で動き続ける)。衝突中に搭乗者がシートベルトを使用して拘束されている場合(エアバッグがない場合)、搭乗者は、シートベルトによって運動状態から静止状態にされる。伸縮可能なシートベルトによってある程度の作業が行われ(すなわち、シートベルトハーネスが適度に伸びると停止距離が延びる)搭乗者を動きから休ませる。当業者であれば、シートベルトによって行われる作業は、シートベルトによって搭乗者に加えられる力に搭乗者の制動/停止距離を乗じたものに等しいことを認識している[力×停止距離=搭乗者の運動エネルギー]。搭乗者の運動エネルギーが特定の車両速度と搭乗者の質量に対して一定であることから、制動/停止距離を長くできる場合、シートベルトによって搭乗者にかかる力が軽減され、ひいては衝突中の搭乗者の損傷または損傷のリスクが軽減され得る。
【0026】
本明細書で説明されるパッシブセーフティシステムの例は、特定の方向または種類の衝突または衝撃に限定されず、他のシナリオの中でも特に、前面、後面、側面、オフセンターなど、車両の衝突もしくは衝撃、横転の衝突もしくは衝撃(例えば、自動車などの様々な種類の車両による)、垂直発進、着陸、制動、緊急制動、衝突または衝撃(例えば、宇宙船または航空機による)など、様々な衝突または衝撃のシナリオに使用され得る。例えば、受パッシブセーフティシステムの一例は、対応する打ち上げまたは着陸段階中に対象の加速率または減速率を低減するために、宇宙船または航空機に適切に取り付けられ得る。
【0027】
例示的な実施形態は、説明された態様の特定の組み合わせに限定されず、様々な例で説明された態様の一部または全部の様々な組み合わせを含み得る。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面を検討すれば当業者には明らかとなるであろう。
【0029】
本発明の実施形態のこれら及び他の態様及び特徴は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の例示的な実施形態によるパッシブセーフティシステムの側面概略図である。
図2】本発明の例示的な実施形態によるパッシブセーフティシステムの概略側面図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、初期位置にあるパッシブセーフティシステムの側面図である。
図4】本発明の例示的な実施形態による、初期位置にあるパッシブセーフティシステムの等角図である。
図5】本発明の例示的な実施形態による、シートが初期位置で拡大されたパッシブセーフティシステムの側面図である。
図6】衝突中に伸長位置にある衝突ダミーの側面図である。
図7】本発明の例示的な実施形態による、衝突中のパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの下部の側面図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による、パッシブセーフティシステムを有するシートアセンブリの斜視図である。
図9】シートクッションが取り外された、図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの別の斜視図である。
図10図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面及びシートクッションを示す部分的下方斜視図である。
図11図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面及びエネルギー変換装置を示す別の部分的下方斜視図である。
図12図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面、シートクッション及びエネルギー変換装置を示す別の部分的下方斜視図である。
図13図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面、シートクッション、エネルギー変換装置及びバネアセンブリを示す別の部分的下方斜視図である。
図14図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの別の部分的斜視図である。
図15】支持面及びシートクッションが取り外された、図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの別の部分的斜視図である。
図16図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面及びシートフレームを示す別の部分的下方斜視図である。
図17図8におけるパッシブセーフティシステムのシートアセンブリの支持面及びシートフレームを示す別の部分的下方斜視図である。
図18】本発明の例示的な実施形態によるパッシブセーフティシステムのエネルギー変換装置の斜視図である。
図19】本発明の例示的な実施形態によるパッシブセーフティシステムのエネルギー変換装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。
【0032】
図1図19を参照して、パッシブセーフティシステムの例示的な実施形態について説明する。
【0033】
図1及び2は、本発明の例示的な実施形態によるパッシブセーフティシステムの例を概略的に示す。
【0034】
図1に示すように、車両10用パッシブセーフティシステム100の一例は、車両10の固定位置上に固定されるように構成された支持フレーム102を含み得る。支持フレーム102は、車両10の一部に直接結合され得、あるいは、例えば、支持脚110などによって車両10の固定位置上に支持され得る。パッシブセーフティシステム100は、車両によって運ばれるペイロードPを支持するように構成された支持面104を含み得る。ペイロードは、支持面によって直接支持され得、あるいは他の構成要素または構造は、とりわけ、シート底部、シートバック、シートベルトなどを含むシートアセンブリ、貨物プラットフォームなど、ペイロードPを支持及び/または固定するために支持面上に取り付ける、または結合することができる。パッシブセーフティシステム100は、単一の種類または量のペイロードを支持することに限定されず、単一のペイロードまたは複数のペイロード、1つ以上の様々な種類のペイロードなどを支持するように構成され得る。
【0035】
図1に示すように、支持面104は、支持フレーム102に対して移動可能であり得る。エネルギー変換装置106が、支持フレーム102と支持面104との間に配置され得る。エネルギー変換装置106は、例えば、支持フレーム102に対する前面衝突または後面(例えば、方向D1、D2)衝突中に、支持面104が車両の慣性方向に基づいて所定の方向に移動するとき、支持面104の一部(例えば、表面114)と係合するように構成された摩擦面116を含み得る。
【0036】
エネルギー変換装置106は、エネルギー変換装置106が支持フレーム102に対してしっかりと固定されるように、支持フレーム102に結合され得る。エネルギー変換装置106の摩擦面116は、支持面104の一部(例えば、114)上で、所定の方向(例えば、D1)と反対する方向(例えば、D2)に移動または相対運動を与えるように構成され得る。あるいは、他の例では、エネルギー変換装置106は、エネルギー変換装置106が支持面104に対してしっかりと固定されるように、支持面104に結合され得、代わりに、エネルギー変換装置106が、支持フレーム102の一部(例えば、112)に所定の方向(例えば、D1)と反対する方向(例えば、D2)に移動する、または相対運動を与え、それによって支持面の運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成される。
【0037】
エネルギー変換装置106の摩擦面116は、所定の方向(例えば、D1)と反対する方向(例えば、D2)に、支持面104の一部(例えば、114)に移動、または相対運動を与えることができる任意の適切な装置、例えば、支持面104の一部と摩擦係合する表面を有する1つ以上のベルト、1つ以上のローラ、ホイール、タンブラーなどであって、支持面104が所定の方向に移動するとき、1つ以上のローラ、ホイール、タンブラーなどの表面が支持面104の一部と摩擦係合するように、所定の方向と反対する方向に回転するように構成されたものなどを含み得る。エネルギー変換装置106は、1つ以上のベルト、ローラ、ホイール、タンブラーなどの1つ以上の摩擦面116を含み得る。1つ以上の摩擦面116は、支持面104の1つ以上の部分114上で同じ方向または異なる方向に移動または相対運動を与えるように構成され得る。
【0038】
図1に示す例では、エネルギー変換装置106の摩擦面116及び支持面104の一部は、車両10の取り付け部分と平行であるように示される。しかし、他の例では、エネルギー変換装置106の摩擦面116は、支持面104の一部に対して、及び/または車両10(例えば、車両の床)、支持フレームなどの他の構成要素に対して別の角度で配置され得る。
【0039】
図1に示す例では、パッシブセーフティシステム100は、必要に応じて、支持フレーム104に対する支持面104の動きを阻止するように構成された接触防止機構108をさらに含み得る。例えば、接触防止機構108は、第1の状態では支持フレーム104に対する支持面104の移動を固定、ロック、または阻止し、車両からの信号に応答して、第2の状態では支持フレーム102に対する支持面104の移動を可能にする装置を含み得る。別の例では、接触防止機構108は、支持面104と支持フレーム102との間に配置される1つ以上のバネを含み得る。1つ以上の接触防止機構108が、支持面104と支持フレーム102との間の1つ以上の位置に配置され得る。1つ以上の接触防止機構108が、例えば、支持フレーム102の端部と支持面104の端部の1つ以上のとの間、またはそれらの上に形成されたフランジの間に配置されて、支持面104の動きを阻止することができる。接触防止機構108は、車両センサによる衝突または衝撃の検出中に自動的に解除されるように構成され得、また、エネルギー変換装置106の摩擦面116と支持面104の一部114との間の物理的接触または係合の確立を支援するように構成され得る。
【0040】
あるいは、他の例では、エネルギー変換装置は、支持フレーム102または支持脚110(例えば、別個の支持フレーム102または支持脚110)を必要とせずに、車両10に直接(例えば、車両表面に直接)結合することも、車両に組み込む(例えば、車両表面と一体的に形成する)こともできる。このような例では、接触防止機構108は、車両10(または車両10の一部)と支持面104との間に位置し、車両10(または車両10の一部)に対する支持面104の動きを固定、ロック、または阻止するように構成され得る。
【0041】
支持面104は、任意の方向(例えば、D1、D2、D3、または別の方向)及びそのような方向のうちの1つ以上に移動するように構成され得る。同様に、エネルギー変換装置106の摩擦面116は、任意の方向(例えば、D1、D2、D3、または別の方向)及びそのような方向のうちの1つ以上に移動または相対運動を与えるように構成され得る。
【0042】
他の例では、支持面104は、車両10が慣性力を受けたときに支持フレーム102に対して(または車両10もしくは車両の一部に対して)支持面104が移動しないか、または実質的に移動しないように、支持フレーム102に対して浮くように構成され得る。
【0043】
図2を参照すると、車両10用パッシブセーフティシステム100の別の例は、車両10の固定位置上に固定されるように構成された支持フレーム102と、車両によって運ばれるペイロードPを支持するように構成された支持面104とを含み得る。この例では、支持面104は、支持フレーム102に対して垂直に移動可能に構成され得る。1つ以上のエネルギー変換装置106が、支持フレーム102と支持面104との間、例えば、支持フレーム102と支持面104の各側面との間に配置され得、1つ以上のエネルギー変換装置106は、支持面104が支持フレーム102に対して所定の方向(例えば、D1、D2方向)に移動するとき、支持面104の1つ以上の部分(例えば、表面114)と係合するように構成された摩擦面116を含み得る。図1に示す例と同様に、図2の例に示されるパッシブセーフティシステム100は、必要に応じて、接触防止機構108を備え得る。支持面104は、任意の方向(例えば、D1、D2、D3、または別の方向)及びそのような方向のうちの1つ以上に移動するように構成され得る。同様に、エネルギー変換装置106の摩擦面116は、任意の方向(例えば、D1、D2、D3、または別の方向)及びそのような方向のうちの1つ以上に移動または相対運動を与えるように構成され得る。
【0044】
図3~7は、自動車シートなどの車両シートに具体化されたパッシブセーフティシステムの一例を示す。
【0045】
例えば、図3~5は、初期位置にあるパッシブセーフティシステム100を備えた乗用車内の運転席の設定を示す。この例では、パッシブセーフティシステムは、シート支持脚110によって車両10(例えば、車両の床)にしっかりと固定されるシート支持フレーム102を含む。運転席の設定は、シートクッション202、シートバック204、ヘッドレスト206及び車両の一部(例えば、車両フレームのピラー)に固定されるシートベルト210を含む。車両のステアリングホイール212も概念的に示される。シートクッション202は、搭乗者(例えばペイロードP)を支持し、シート支持フレーム102の上部に取り付けられる。シートフレームやデザインの配置は特に限定されない。シートフレームのデザインと構成は、シートの種類(1人乗り、2人乗り、複数人乗りなど)に応じて異なる。例えば、車両の後端にある複数人乗りのシートは、複数の乗員を乗せるより長いシートに対応するために、より多くの脚で支持された異なる設計または構造のより長いシートフレームを有することができる。
【0046】
図5に示す部分的拡大図に示すように、この例示的な例では、シート支持フレーム102とシートクッション202との間のシートクッション202の下にある支持面104の下面(例えば、下部の金属性の研磨部分)は、車両10の減速方向に応じて、シートに作用する慣性力の作用方向に応じて、下面114が水平面内の任意の方向(縦方向、横方向、または任意の角度で斜め方向)に移動可能(例えば、スライドまたは並進)に構成され得る。本来、シートフレームに沿ったシートクッションのスライド運動は、バネ力108によって阻止される。
【0047】
この例では、シートクッション202は、シート支持フレーム102に対する支持面104の移動が、例えば1つ以上の接触防止機構108(例えば、バネ力によって)によって、1つ以上(例えば、全て)の方向に最初に拘束または阻止されるように、支持面104に取り付けられる。拘束(例えば、108)が解除されると、支持面104は、水平面上でシート支持フレーム102に沿って任意の方向にスライドまたは並進することができるようになる。機械的手段とは別に、停止力は、電気的、磁気的など、または他の手段によっても生成され得る。
【0048】
この例では、エネルギー吸収装置106は、シート支持フレーム102と支持面104との間に挟まれており、最初は支持面104と接触しない。エネルギー変換装置106は、シートの長さ方向及び幅方向に沿って延びる摩擦面116を含み得る。エネルギー変換装置106は、シート支持フレーム102とシートクッション202の下部を形成する支持面104との間に挟まれる。シートクッション202の支持面104は、その移動が最初は全方向に制限され、支持面104の一部114(例えば、下部の金属部分)がエネルギー変換装置106の摩擦面116と接触しないように取り付けられる。
【0049】
図6及び7は、車両10の衝突または衝撃中にダミー/乗員Pが伸長位置にある例示的な運転席の設定を示す。図6及び7に示すように、当業者であれば、この例に示されるように、乗員Pは、フロントクラッシュに起因する慣性力によって前方に移動しようとすることを認識するであろう。
【0050】
1つ以上の車両センサによって差し迫った衝突が予測されると、エネルギー吸収装置106の可動摩擦面116は、車両の慣性方向と反対する方向にスライドする。図6及び7に示すように、車両10が衝突中に一旦減速し始めると、シートクッション202、ひいては支持面104上の慣性力は、拘束108に打ち勝つのに役立ち、これにより、シートクッション202及び支持面104が支持フレーム102上(例えば、シートフレーム102の上部に設けられた1つ以上のガイド上)でわずか(例えば、数ミリメートル)にスライドまたは平行移動し、すぐ近くに配置されたエネルギー吸収装置106を摩擦することができる。シートクッション202の支持面104の下面114(例えば、下部の金属性の研磨部分)がエネルギー吸収装置106の「移動摩擦面」116と接触すると、搭乗者の運動エネルギーが摩擦エネルギーに変換され、熱が周囲環境に放散される。
【0051】
図3~7に示す例では、摩擦面116は、トレッドミルの表面と同様に構成することができ、電気モータによって動力を供給し、車両センサによって差し迫った前面衝突が検出されると、例えば時計回りの動き(図6~7による)を開始することができる。この例では、前面衝突中、シートクッション202と乗員Pとの組み合わせによって生成される慣性力は、シートクッション202及び支持面104がシート支持フレーム102上をスライドすることができ、支持面104の下に位置するエネルギー変換装置106の摩擦面116上で摩擦及び/または静止するように、バネ力108に打ち勝つように設計される。衝突中、移動するトレッドミル状摩擦面116が支持面104の下面114(例えば、下部の金属部分)と接触すると、トレッドミル状摩擦面116は、制動や衝突などの最中及び後の両方で、シートクッション202及び支持面104(前面衝突、後面衝突または側面衝突に基づく)の慣性方向に逆らって摩擦し、常に移動するように作られ、それによって搭乗者Pが停止するまで(例えば、慣性力がなくなるまで)、搭乗者Pの運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換する。従って、搭乗者Pの運動エネルギーは、搭乗者Pが着座するシートクッション202及び支持面104(例えば、浮いた搭乗者シート)に摩擦抵抗を与えることによって軽減される。
【0052】
従来の設計とは対照的に、本発明による例示的なパッシブセーフティシステム100は、車両構造物10に対するシート(例えば、シートクッション202)の位置をあまり変えることなく乗員Pの減速が実現されるという利点を提供する。すなわち、この例では、シートクッション202の位置は、車両の動作中、車両10に対してほとんど変化しない(すなわち、実質的に変化しない、または実質的に静止する)。その結果として、乗員(例えば、ペイロードP)は、一般に車両10に対して静止したままであるが、衝突中にシートクッション202を保持するシステムの一部(例えば、エネルギー吸収装置106のスライド摩擦面116)はシートに対して移動し、その結果、停止距離が増加し、搭乗者の減速率が減少する。
【0053】
エネルギー変換装置106の例では、乗員を減速させるために使用される制動力は、機械的(例えば、図示された例のような摩擦エネルギー)、磁気浮上、電気的などであり得る。他の例では、エネルギー変換装置106は、空気圧システム、油圧システム、エアバッグと同様の制御された爆発などによって動力を供給され得る。場合によっては、車両または車両の一部の運動エネルギーをエネルギー変換装置に電力を供給するために使用するようになっている。衝突完了後、反発時に、シートクッション202(及び関連する支持面104)は、その元の/初期位置に跳ね返るように構成され得る。
【0054】
この例では、エネルギー変換装置106を含むパッシブセーフティシステム100を乗員シートクッション202の下に配置することにより、衝突中または衝撃中、パッシブセーフティシステム100は、乗員Pがエアバッグなどの別の安全装置、またはステアリングホイール212などの任意の他の車両構造物に接触する前に、運動エネルギーを散逸させて乗員Pを減速させることができる。例示的なパッシブセーフティシステム100の利点は、車両構造物10に対するシート(例えば、シートクッション202、シートバック204など)の位置をあまり変えることなく、乗員Pの減速が実現されることである。これらの特徴は、場合によっては、車両10が別の物体または車両と衝突または衝撃した際、乗員Pの周囲にスムーズな減速のために利用できる十分なスペースがないため、非常に有用であり得る。図3~7は、単一の運転席を示すが、他の例は、一人または複数人のシートからなる前面、後面、または列間に効果的に使用することができる。
【0055】
図3~7は、衝突中に支持面104の取り付けられる乗員シートクッション202がシート支持フレーム102上をスライドし、エネルギー変換装置106の摩擦面116上で摩擦及び/または静止するように作られる例示的なパッシブセーフティシステム100を示し、エネルギー変換装置106は、支持面104の下に配置され、それによってペイロードPの運動エネルギーを散逸する。他の例では、エネルギー変換装置106またはその摩擦面116は、衝突中にシート支持フレーム102の外側に突出するか、またはシート支持フレーム102上をスライドするように作られ、また、乗員シートクッション202に取り付けられた現在静止している支持面104との接触を確立することができ、それによってシートクッション202及び支持面104が車両10に対して完全に静止する。換言すれば、シートクッション202に取り付けられる、またはシートクッション202によって支持されるペイロードPは、エネルギー変換装置106上に浮くように構成され得る(すなわち、車両10に対して静止または実質的に静止するように構成される)が、衝突中や制動中などにシートクッション202を保持するシステムの一部(例えば、エネルギー吸収装置106のスライド摩擦面116)は、シートに対して反対方向(つまり、車両の慣性方向と反対する)に移動し、その結果、停止距離が増加し、搭乗者の減速度が低下する。
【0056】
図8~17は、車両10用パッシブセーフティシステム100の別の例を示し、パッシブセーフティシステム100は、自動車シートなどの車両シートに具体化される。この例では、車両10用パッシブセーフティシステム100は、車両10の固定位置上に固定されるように構成された支持フレーム102を含み得る。支持フレーム102は、車両10の一部に直接結合され得、あるいは、例えば、支持脚110などによって車両10の固定位置上に支持され得る。パッシブセーフティシステム100は、車両によって運ばれるペイロードPを支持するように構成された支持面104を含み得る。この例では、ペイロードは、シート底部202を含む、その上に取り付けられるシートアセンブリによって、支持面104の上面302上で支持され得る。シートアセンブリは、例えば、支持フレーム102とは別に取り付けられるシートバック204をさらに含み得る。
【0057】
支持面104は、支持フレーム102に対して移動可能であり得る。図8~17に示すように、支持面104は、例えば、固定支持フレーム102に対する支持面の移動を制限するためのフランジ304、306、308、310を含み得る。支持面104は、固定支持フレーム102に対する支持面104の移動を少なくとも所定の方向に案内するためのガイド312、314を含み得る。ガイド312、314は、支持フレーム102の一部と連携して、そのような案内を容易にすることができる。
【0058】
この例では、パッシブセーフティシステム100は、支持フレーム102に対する支持面104の移動を阻止するように構成された接触防止機構108を含む。例えば、接触防止機構108は、支持フレーム102の端部と支持面104の端部の1つ以上との間、またはそれらの上に形成されるフランジの間に配置され、支持面104の移動を阻止する複数のバネを含み得る。
【0059】
エネルギー変換装置(例えば、図1及び2の106に類似)は、支持フレーム102の上面112と支持面104の下面114との間に配置され得る。エネルギー変換装置は、支持面104が支持フレーム102に対して1つ以上の方向に移動しようとするとき、支持面104の下面114上の対応する部分318と係合するように構成された複数の摩擦面を含み得る。この例では、エネルギー変換装置の複数の摩擦面は、複数のローラ320を含む。支持面104の下面114は、各ローラ320の接触面に対応する形状を有する複数の突出面318を含む。
【0060】
ローラ320及び突出面318は、支持面104の下面114の前端及び後端に沿って間隔を置いて配置される。しかし、他の配置も可能である。ローラ320のそれぞれは、電気モータ322によって動力を供給され得る。電気モータ322は、差し迫った衝突を検出するように構成されたセンサなど、1つ以上の車両センサからの1つ以上の信号に応答して(例えば、車両のコントローラまたはパッシブセーフティシステム100のコントローラによって)制御されるように構成され得る。図18は、突出面318、ローラ320及び電気モータ322の配置例を示す。ローラ320と電気モータ322の組み合わせは、エネルギー変換装置(例えば、図1及び2の106)を形成することができ、支持面104に取り付けられる突出面318は、衝突中、制動中などにローラ面320と物理的に係合し、ペイロードPの運動エネルギーを摩擦エネルギーに変換するように構成され得る。
【0061】
例えば、図10~13を参照すると、突出面318は、異なる方向を向くように配置され得る。例えば、外側の4つの突出面318は一方向を向いており、内側の4つの突出面318は反対方向を向いている。ローラ320は、異なる方向に回転するように構成することもできる。例えば、外側の4つのローラ320は、一方向に回転するように構成され、内側の4つのローラ320は、反対方向に回転するように構成される。
【0062】
図19は、突出面318a、318b及びローラ320a、320bの例示的な配置を示す。図示のように、外側の突出面318aは、一方向を向いており、内側の突出面318bは、反対方向を向いている。ローラ320aもまた、異なる方向に回転するように構成される。例えば、外側のローラ320aは、一方向に回転し、内側の4つのローラ320bは、反対方向に回転する。
【0063】
支持面104が一方向に移動すると、第1の組のローラ320aが回転し、支持面104の対応する第1の組の突出面318aと摩擦係合し、支持面104が反対方向に移動すると、第2の組のローラ320bが回転し、支持面104の対応する第2の組の突出面318bと摩擦係合する。いずれの場合も、ローラ320は、支持面104の移動方向と反対する方向に回転する。
【0064】
本発明を、いくつかの好ましい実施形態に関して説明してきた。しかし、これらの実施形態に対する修正及び追加は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。このような修正及び追加は全て、本明細書に添付されるいくつかの特許請求の範囲内に入る限り、本発明の一部を構成することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】