(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】新規な鎮痛療法を特定するためのプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
G16C 20/30 20190101AFI20241003BHJP
【FI】
G16C20/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545073
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2022059656
(87)【国際公開番号】W WO2023058000
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524134269
【氏名又は名称】エプティバ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】フィールド,マーク・ジェイ
(57)【要約】
本開示は、治療化合物を疼痛表現型/状態にリンクし、これによって、見込みのある新規の鎮痛療法を特定するプラットフォームを対象とする。このプラットフォームは、患者選択判断基準を生成すること、および/または選択された治療化合物および1つ以上の特定された疼痛表現型/状態に関する臨床試験に適した患者の部分集合を特定することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療化合物を1つ以上の疼痛表現型または状態にリンクするように構成されたシステムであって、
1つ以上のプロセッサと、
コンピュータ実行可能命令が格納されている1つ以上のハードウェア記憶デバイスと、
を備え、
前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムに、少なくとも、
選択された治療化合物を受信させ、
前記選択された治療化合物についての1つ以上のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成させ、
パラメータ設定毎に、
前記対応するタンパク質-タンパク質相互作用マップに基づいて、1組の予測遺伝子パスウェイを生成させ、
前記タンパク質-タンパク質相互作用マップおよび前記1組の予測遺伝子パスウェイに基づいて、1組の疼痛表現型関連を生成させ、
各パラメータ設定からの前記1組ずつの疼痛表現型関連を統合させ、
前記統合した組の疼痛表現型関連を跨いで十分な重複を有する1つ以上の疼痛表現型を、可能な治療目標として特定させ、
前記選択された治療化合物を、前記1つ以上の可能な治療目標に対して可能な鎮痛剤として特定させる、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記1つ以上のプロセッサによって実行される前記コンピュータ実行可能命令が、更に、前記システムに、前記選択された治療化合物および前記1つ以上の特定された疼痛表現型に関する臨床試験に対して、患者選択判断基準を生成させる、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記1つ以上のプロセッサによって実行される前記コンピュータ実行可能命令が、更に、前記システムに、前記選択された治療化合物および前記1つ以上の特定された疼痛表現型に関する臨床試験に適した患者の部分集合を特定させる、システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記1つ以上の特定された疼痛表現型を、患者情報と突き合わせて比較して、前記患者の部分集合を特定する、システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、前記患者情報が、患者情報データベースに格納される、システム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記1つ以上のプロセッサによって実行される前記コンピュータ実行可能命令が、前記システムに、前記選択された治療化合物に対する複数のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成させる、システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記複数のパラメータ設定が、少なくとも4つの異なるパラメータ設定を含む、システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、既定の重複閾値にしたがって、十分な重複を判定する、システム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記重複閾値が、前記特定された疼痛表現型が入っていなければならない前記複数の組の疼痛表現型関連の最少百分率を表す、システム。
【請求項10】
治療化合物を1つ以上の疼痛表現型または状態にリンクするコンピュータ実装方法であって、
選択された治療化合物を受信するステップと、
前記選択された治療化合物についての1つ以上のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成するステップと、
パラメータ設定毎に、
前記対応するタンパク質-タンパク質相互作用マップに基づいて、1組の予測遺伝子パスウェイを生成するステップと、
前記タンパク質-タンパク質相互作用マップおよび前記1組の予測遺伝子パスウェイに基づいて、1組の疼痛表現型関連を生成するステップと、
各パラメータ設定からの前記1組ずつの疼痛表現型関連を統合するステップと、
前記統合した組の疼痛表現型関連を跨いで十分な重複を有する1つ以上の疼痛表現型を、可能な治療目標として特定するステップと、
前記選択された治療化合物を、前記1つ以上の可能な治療目標に対して可能な鎮痛剤として特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、更に、前記選択された治療化合物および前記1つ以上の特定された疼痛表現型に関する臨床試験に対して、患者選択判断基準を生成するステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法であって、更に、前記選択された治療化合物および前記1つ以上の特定された疼痛表現型に関する臨床試験に適した患者の部分集合を特定するステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記1つ以上の特定された疼痛表現型を、患者情報と突き合わせて比較して、前記患者の部分集合を特定する、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記患者情報が、患者情報データベースに格納される、方法。
【請求項15】
請求項10記載の方法であって、更に、前記選択された治療化合物に対する複数のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成するステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記複数のパラメータ設定が、少なくとも4つの異なるパラメータ設定を含む、方法。
【請求項17】
請求項10記載の方法において、既定の重複閾値にしたがって、十分な重複を判定する、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記重複閾値が、前記特定された疼痛表現型が入っていなければならない前記複数の組の疼痛表現型関連の最少百分率を表す、方法。
【請求項19】
コンピュータ実行可能命令が格納されているハードウェア記憶製品であって、前記コンピュータ実行可能命令が、コンピュータ・システムによって実行されると、前記コンピュータ・システムに、請求項10~18のいずれか1項記載の方法を実行させる、ハードウェア記憶製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[0001] 本願は、2021年10月8日に出願された米国仮特許出願第63/253,619号の優先権および権利を主張する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
技術分野
[0002] 本開示は、治療化合物を疼痛性障害にリンクし、この関連を使用して新規の鎮痛療法を特定するためのプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 慢性疼痛は、多くの患者にとって苦しみになる。4人の内1人までが慢性疼痛状態に苛まれており、米国のみでも毎年6000億ドルと推定される関連経済的費用が生じることが示唆されている。新たな鎮痛療法に対して強い要望があるにも拘わらず、疼痛治療のための研究および開発は、従前から成功率が低いために、比較的少額の財政支援しか受けられない。新たな鎮痛療法の臨床的成功は2%の可能性しかなく、あらゆる種類の治療に対して最も低い率となっている。比較すると、他の治療分野では、臨床試験の成功率が約10%となったこともある。
【0003】
[0004] 鎮痛療法の開発に対する従来の戦略は、(1)新規の作用機序がある新たな薬剤の開発、および(2)新たな指示および/または患者母集団に対処するための既知の薬剤のリパーパシング(repurposing)を含む。後者の戦略は、新規の化合物を開発する必要がないものの、臨床開発の費用が非常に高いことに変わりはない。これらの開発の取り組みにかかる膨大な費用は、特定の疼痛状態に対して臨床的成功を収める可能性が高い方の化合物はどれであるのか特定することができないために、専ら生じるのである。多くの場合、失敗した治療は、大量の臨床試験が既に行われた後でなければ、そのように判定されない。疼痛の分野では、損耗率が高く、臨床開発におけるプロジェクトの失敗は98%となっている。
【0004】
[0005] したがって、臨床成功の確率(likelihood)を高めるように、可能な治療目標を特定の疼痛性障害にリンクする方法が、引き続き求められている。
【発明の概要】
【0005】
[0006] 本開示は、治療化合物を疼痛表現型/状態にリンクし、これによって、見込みのある新規の鎮痛療法を特定するためのプラットフォームを対象とする。
[0007] 一実施形態では、コンピュータ・システムは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のハードウェア記憶デバイスとを備え、ハードウェア記憶デバイス上には、コンピュータ実行可能命令が格納されている。1つ以上のプロセッサによってコンピュータ実行可能命令を実行すると、このシステムに、少なくとも、選択された治療化合物を受信させ、選択された治療化合物についての1つ以上のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成させ、パラメータ設定毎に、対応するタンパク質-タンパク質相互作用マップに基づいて、1組の予測遺伝子パスウェイ(gene pathway)を生成させ、タンパク質-タンパク質相互作用マップおよび1組の予測遺伝子パスウェイに基づいて、1組の疼痛表現型関連(pain phenotype association)を生成させ、各パラメータ設定からの1組ずつの疼痛表現型関連を統合させ(combine)、統合した組の疼痛表現型関連を跨ぐ十分な重複を有する1つ以上の疼痛表現型を、可能な治療目標として特定させ、選択された治療化合物を、1つ以上の治療目標に対して可能な鎮痛剤として特定させる。
【0006】
[0008] 随意に、このプラットフォームは、更に、患者選択判断基準を生成することができ、および/または選択された治療化合物および1つ以上の特定された疼痛表現型(または1つ以上の疼痛表現型と関連付けられた疼痛状態)に関する臨床試験に適した患者を特定することができる。このプラットフォームによって特定された疼痛表現型および/または疼痛状態は、選択された治療化合物に特定してリンクされているので、特定された疼痛表現型および/または疼痛状態も有する患者に合うように、患者の集合体(pool)を改良する(better tailor)に連れて、選択された治療化合物と患者集合体との整合が一層高まり、これによって臨床試験が成功する確率も高くなる。
【0007】
[0009] 鎮痛剤の臨床開発は、疼痛表現型/状態の内特定の部分集合に患者が過剰に含まれるため、そして選択された研究化合物(research compound)に対して適切な患者群を特定することが一般的に難しいために、知っての通り低い成功率に苦しんでいる。本明細書において説明するプラットフォームは、選択された治療化合物が鎮痛剤として成功であるか否かについての判定を改善することができる臨床試験を可能にすることによって、これらの問題を低減するという利点がある。
【0008】
[0010] 更に、このプラットフォームは、表現型および状態の初期フィルタリングも事前選択も必要とせずに、疼痛表現型および/または疼痛状態出力を特定して提供するように機能する。言い方を変えると、このプラットフォームは、疾病に依存せずに、したがって、疾病が前もって明白になっていなくても、可能な治療目標を特定することができる。加えて、このプラットフォームは最小限の入力に基づいて機能することができるので、ユーザが偏る潜在的可能性が低くなる。例えば、少なくともある実施形態では、最小限必要な入力は、選択された治療化合物である。この入力を受信した後、プラットフォームは、補足入力を必要とせずに、可能な表現型および/または状態を出力するように動作することができる。
【0009】
[0011] この摘要は、詳細の説明において以下で更に説明する概念から選択したものを、簡略化した形態で紹介するために設けられている。この摘要は、特許請求する主題の主要な特徴や必須の特徴を特定することを意図しているのではなく、特許請求する主題の範囲の指示として使用されることを意図するのでもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0012] 本発明の種々の目的、特徴、特性、および利点は、以下の実施形態の説明を、添付図面および添付した特許請求の範囲と併せて検討することによって、明白となり、一層容易に認められよう。添付図面および添付した特許請求の範囲は、本明細書の一部をなす。図面において、種々の図における対応する要素(part)または同様の要素を示すために、同様の参照番号を利用する場合もあり、図示される種々のエレメント(element)は、必ずしも同じ拡縮率で描画されるとは限らない。
【
図1】鎮痛療法を特定するプラットフォームを実装することができるコンピュータ環境の一例を示す。
【
図2】
図1におけるようなコンピュータ・システムによって実装することができる、治療化合物を疼痛状態にリンクする方法の一例を示す。
【
図3】
図2の方法を使用するデータ・フローの一例を示す。
【
図4A】治療化合物の例であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:calcitonin gene-related peptide)について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、タンパク質-タンパク質マッピング処理(mapping operation)(
図4A)、遺伝子オントロジー処理(gene ontology operation)(
図4B)、および疼痛表現型関連付け処理(
図4C)を示し、更に、パラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛表現型を統合した後における出力例(
図4D)を示す。
【
図4B】治療化合物の例であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:calcitonin gene-related peptide)について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、タンパク質-タンパク質マッピング処理(mapping operation)(
図4A)、遺伝子オントロジー処理(gene ontology operation)(
図4B)、および疼痛表現型関連付け処理(
図4C)を示し、更に、パラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛表現型を統合した後における出力例(
図4D)を示す。
【
図4C】治療化合物の例であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:calcitonin gene-related peptide)について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、タンパク質-タンパク質マッピング処理(mapping operation)(
図4A)、遺伝子オントロジー処理(gene ontology operation)(
図4B)、および疼痛表現型関連付け処理(
図4C)を示し、更に、パラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛表現型を統合した後における出力例(
図4D)を示す。
【
図4D】治療化合物の例であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:calcitonin gene-related peptide)について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、タンパク質-タンパク質マッピング処理(mapping operation)(
図4A)、遺伝子オントロジー処理(gene ontology operation)(
図4B)、および疼痛表現型関連付け処理(
図4C)を示し、更に、パラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛表現型を統合した後における出力例(
図4D)を示す。
【
図5A】化合物例であるGPR18について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、遺伝子オントロジー処理(
図5A)および疼痛状態関連付け処理(
図5B)を示し、更にパラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛状態を統合した後における出力例(
図5C)を示す。
【
図5B】化合物例であるGPR18について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、遺伝子オントロジー処理(
図5A)および疼痛状態関連付け処理(
図5B)を示し、更にパラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛状態を統合した後における出力例(
図5C)を示す。
【
図5C】化合物例であるGPR18について、
図2の方法を使用した出力例を示し、特定のパラメータ設定について、遺伝子オントロジー処理(
図5A)および疼痛状態関連付け処理(
図5B)を示し、更にパラメータ設定毎に複数の組/リストの疼痛状態を統合した後における出力例(
図5C)を示す。
【
図6A】先天性爪甲硬厚症に関与する分子パスウェイのモデルであり、カルシトリオールが相互作用することができる可能性がある相互作用点を示すように見直されている(Cao et al., Gene Expression Profiling in Pachyonychia Congenita Skin(先天性爪甲硬厚症の皮膚における遺伝子発現プロファイリング)、J Dermatol Sci. 2015 March; 77(3): 156-165を参照のこと)。
【
図6B】ビタミンD、コレカルシフェロール、および/またはカルシトリオールを特定の疾病状態にリンクする研究(PubMed)の結果を要約したチャートである。
【
図6C】ビタミンD、コレカルシフェロール、および/またはカルシトリオールを特定の疾病状態にリンクする研究(ClinicalTrials.gov)の結果を要約したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
全体像
[0020] 本開示は、治療化合物を頭痛状態にリンクし、これによって、見込みのある新規の鎮痛療法を特定するためのプラットフォームを対象とする。
【0012】
[0021] 鎮痛療法に関して現在改革を阻害する2つの主要な問題は、(1)研究化合物が鎮痛剤として有用になる可能性がある疼痛障害に、その研究化合物をリンクできないこと、そして(2)臨床開発および試験において限られた患者群しか使用できないことである。従来の疼痛研究および開発は、ほんの一握りの疼痛状態を適用範囲にするに過ぎない。一般に、規制当局の認証に対する既存の過程(pathway)に基づいて、限られた患者群を使用して、疼痛臨床試験を実施することを優先する傾向がある。つまり、殆どの疼痛臨床試験は、認証に至る既存の規制過程(regulatory path)を有する、限られた数の臨床条件を使用して、行われる。
【0013】
[0022] このように臨床患者母集団が制約される結果、見込みがある鎮痛療法として治療化合物を研究する場合、最も当てはまる疼痛状態に関連付けて研究するよりはむしろ、定着した疼痛状態について研究する傾向がある。研究治療化合物と疼痛状態との間におけるリンクが改良されていけば、臨床試験における成功の蓋然性が高まるであろう。使用される臨床患者母集団が制約されると、鎮痛薬(analgesic drug)の臨床開発において、損耗率が過度に高くなり、技術革新が欠如する主要な要因となるおそれがある。
【0014】
[0023] 本明細書において使用する場合、「治療化合物」(therapeutic compound)という用語は、1つ以上の疼痛状態において鎮痛療法に使用できる潜在的可能性を有する任意の候補化合物を表す。「目標化合物」(target compound) 、「研究化合物」(research compound)、「研究目標」(research target)、および同様の用語は、「治療化合物」(therapeutic compound)という用語と同義に使用されるものとする。
鎮痛療法プラットフォーム
[0024]
図1は、鎮痛療法を特定するプラットフォームを実装することができるコンピュータ環境100の一例を示す。図示するコンピュータ環境100は、プロセッサ102とメモリ104とを含むコンピュータ・システム101を含む。メモリ104は、物理システム・メモリを含むことができ、これらは揮発性、不揮発性、またはこれらの何らかの組み合わせでもよい。メモリ104は、物理記憶媒体のような、不揮発性大容量ストレージを含むこともできる(ここでは、ハードウェア記憶媒体、コンピュータ記憶媒体、コンピュータ読み取り媒体、またはハードウェア記憶デバイス(1つまたは複数)とも呼ぶ)。
【0015】
[0025] また、コンピュータ・システム101は、当技術分野では知られているような、1つ以上の入力/出力コンポーネント106も含むことができる。その例には、キーボード、モニタ、タッチ・スクリーン、マウス・コントローラ、スピーカ等が含まれる。ある実施形態では、コンピュータ・システム101は、本明細書において説明する種々のデータ出力(例えば、
図3に関して論ずるようなデータ出力)を、ユーザが可視化し対話処理することを可能にするためのインターフェースを提供するように構成される。
【0016】
[0026] また、コンピュータ・システム101は、本明細書において更に詳しく説明するように、コンピュータ・システム101に、治療化合物を疼痛状態にリンクする方法を実装させるように構成されたアプリケーション108も含むことができる。
【0017】
[0027] コンピュータ・システム101は、ネットワーク110に接続することができる。ネットワーク110は、例えば、セルラ・ネットワーク、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)、ワイド・エリア・ネットワーク(「WAN」)、および/またはインターネットを含むことができる。
【0018】
[0028] コンピュータ・システム101は、1つ以上のデータベース112(112a、112b等。ここで、楕円は、追加のデータベースを接続できること、および/またはアクセスできることを示す)にアクセスできることを示す。データベース112は、IntAct、分子間相互作用データベース(MINT:Molecular INTeraction Database)、MatrixDB、InnateDB、BioGRID、およびヒト・タンパク質参考データベース(HPRD:Human Protein Reference Database)のような、分子間相互作用データベース;相互作用遺伝子/タンパク質検索用サーチ・ツール(STRING:Search Tool for the Retrieval of Interacting Genes/Proteins)、京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)およびPathway Commonsのような、シグナル伝達経路データベース;JASPARおよびMetascapeのような遺伝子オントロジー/転写因子データベース、ならびにヒト表現型オントロジー(HPO:Human Phenotype Ontology)、MalaCards、およびOpen Targetsのような、ヒト疾病/表現型/状態データベースを含むことができる。
【0019】
[0029] また、データベース112は、100以上(例えば、約300~400)の異なる疼痛状態を含む疼痛状況データベース(Pain Landscape databese)も含むことができる。異なる疼痛状態には、鎮痛研究および開発によって対処できる、希少な状態または遺伝的状態も含まれる。これは、鎮痛研究および開発によって対処する条件が約10通りに制限されている従来の「疼痛状況」とは対照的である。先に論じたように、これは、鎮痛療法の研究開発成功率の低さに寄与してきた。以下で説明するように、拡張疼痛状況データベースは、治療化合物と特定の疼痛状態との組み合わせ(matching)を改善することによって、臨床開発および実施が成功する確率を高めることができるという利点がある。
【0020】
[0030]
図1は、コンピューティング環境の一例を表すに過ぎない。他の実施形態では、処理、メモリ、および/またはその他の機能を、随意で追加されるコンピュータ・システム間で別々に分割することもできる。ある実施形態では、メモリ・コンポーネントおよび/またはプログラム・モジュールを、分散型環境における複数の構成コンピュータ・システムにまたがって分散させる。したがって、本明細書において説明するシステムおよび方法は、コンポーネントが位置する特定の場所、および/または機能が実行される特定の場所を基準とすることに限定されるのではない。コンピュータ環境100および/またはコンピュータ・システム101に関する補足詳細については、以下で示す。
【0021】
[0031]
図2は、治療化合物を疼痛状態にリンクする方法200の一例を示す。方法200は、
図1におけるようなコンピュータ環境/システムによって実装することができる。図示のように、コンピュータ・システムは、選択された治療化合物を受信することができる(202)。次いで、コンピュータ・システムは、選択された治療化合物についての1つ以上のパラメータ設定毎に、タンパク質-タンパク質相互作用マップを生成するように動作することができる(204)。パラメータ設定には、分析する接続(connection)の数、および分析する接続性(connectivity)の深さが含まれる。
【0022】
[0032] 例えば、第1パラメータ設定は、10個の第1度接続と、10個の第2度接続とを含むように設定することができる。このパラメータ設定の下では、タンパク質-タンパク質相互作用マップは、選択された治療化合物と直接相互作用する(即ち、第1度接続である)10個のタンパク質を分析し、第1度接続と相互作用する(即ち、選択された治療化合物に対して第2度接続である)10個のタンパク質を分析する。第2パラメータ設定は、10個の第1度接続と、20個の第2度接続とを含むように設定することができる。第3パラメータ設定は、30個の第1度接続と、0個の第2度接続とを含むように設定することができる、等となる。第3度接続および更に深度が大きい接続も、この処理に含ませることができる。約4~10通りの異なるパラメータ設定を使用すると、有効な結果が得られることが判明しているが、もっと少ないまたは多いパラメータ設定を利用してもよい。
【0023】
[0033] タンパク質-タンパク質マップは、本明細書において説明するように、適したタンパク質-タンパク質データベースおよび関連するデータ・ツールを使用すれば、生成することができる。以下であげる具体的な例では、STRINGデータベースを使用する。しかしながら、他のタンパク質-タンパク質相互作用データベースも、追加してまたは代わりに、利用することができる。
【0024】
[0034] 次いで、コンピュータ・システムは、各パラメータ設定に対応する補足データ出力を(例えば、順次および/または並列に)生成することができる。図示のように、コンピュータ・システムは、パラメータ設定毎(206)に、対応するタンパク質-タンパク質相互作用マップに基づいて、1組の予測遺伝子パスウェイを生成し(205a)、更にタンパク質-タンパク質相互作用マップおよび1組の予測遺伝子パスウェイに基づいて、1組の疼痛表現型関連を生成する(205b)ことができる。
【0025】
[0035] 1組の疼痛表現型関連は、予測された遺伝子パスウェイおよび/またはタンパク質-タンパク質相互作用と関連付けられた兆候および/または特性(characteristics)を含むことができる。疼痛表現型の例には、異痛症、慢性腰痛、偏頭痛、神経痛、炎症痛、皮膚腫瘍等が含まれる。勿論、1組の疼痛表現型関連は、特定のタンパク質-タンパク質相互作用、および疼痛状態マッピング処理の入力として使用される遺伝子オントロジー・データに基づいて、変化する。「疼痛状態」(pain condition)という用語は、本明細書において使用する場合、1つの疼痛表現型自体とは対照的に、1つ以上の(しかし、通例では複数の)疼痛表現型と関連付けられた状態または疾病を指す。とは言え、疼痛表現型の中には(例えば、慢性背痛)、疼痛表現型と見なすことができ、更に疼痛状態自体と見なすことができるものもある。
【0026】
[0036] これらの動作は、本明細書において説明するような、適したデータベースおよび関連するデータ・ツールを使用すれば、実行することができる。以下であげる具体的な例では、Metascapeデータベースを使用する。しかしながら、他の遺伝子オントロジーおよび/または疾病表現型データベースも、追加してまたは代わり、利用することができる。
【0027】
[0037] 次いで、コンピュータ・システムは、各パラメータ設定からの1組ずつの疼痛表現型関連を統合する/重ね合わせる(overlay)ことができる(208)。即ち、各パラメータ設定から、幾らか異なる1組の疼痛表現型関連が得られる可能性が高い。これらの異なる組を統合し、コンピュータ・システムは、次いで、統合した複数の組の疼痛表現型関連に跨がって十分な重複がある1つ以上の疼痛表現型を、可能な治療目標として特定する(210)。十分な重複は、予め定めた判断基準に基づいて、判定することができる。例えば、予め定めた重複閾値は、疼痛表現型が、複数の組の疼痛表現型関連の少なくともX%(例えば、少なくとも50%、75%、または90%)に存在することを必要とするのでもよい。ある実施形態では、各組の疼痛表現型関連に存在する疼痛表現型のみを、治療が可能な表現型として特定する。
【0028】
[0038] 次いで、コンピュータ・システムは、選択された治療化合物を、可能な治療目標(1つまたは複数)に対して見込みがある鎮痛療法として特定することができる(212)。随意に、この方法は、疼痛状況データベースおよび/または他の適したデータベースからの特定の疼痛状態を、選択された治療化合物にリンクするステップも含むことができる。例えば、ステップ210の結果、複数の疼痛表現型の一覧が得られ、これらを一緒にして特定の疼痛状態と関連付けることができる。疼痛状況データベースは、複数の疼痛状態についてのデータ、およびこれらの関係する疼痛表現型の分類(grouping)を含むことができ、コンピュータ・システムは、ステップ210において特定した疼痛表現型と関連付けられた疼痛状態を、疼痛状況において特定するように動作することができる。
【0029】
[0039] 以下で更に詳しく説明する具体的な例として、GPR18を分析した結果、慢性腰痛、接触性異痛症、神経痛、鋭い痛みの発症(acute onset pain)、および炎症痛という疼痛表現型の特定が得られた。これらの疼痛表現型を一緒にして、神経根症という疼痛状態と関連付ける。このように、可能な治療目標として、神経根症をGPR18にリンクすることができ、GPR18を鎮痛療法として利用するとよい。
【0030】
[0040] 随意に、方法200は、更に、患者選択判断基準を生成するステップ、および/または選択された治療化合物および1つ以上の特定された疼痛表現型(または1つ以上の疼痛表現型と関連付けられた疼痛状態)に関する臨床試験に適した患者を特定するステップも含むことができる。例えば、患者情報を格納し(例えば、患者情報データベースに)、本方法によって特定された疼痛表現型および/または疼痛状態を、患者情報と突き合わせて比較し、患者を絞り込むために使用して、1組の特定された疼痛表現型および/または疼痛状態に最も近い(best matching)患者を選択することができる。別の言い方をすると、本方法によって特定された疼痛表現型および/または疼痛状態は、選択された治療化合物に特定してリンクされているので、特定された疼痛表現型および/または疼痛状態も有する患者に合わせて、患者の集合体を改良するに連れて、選択された治療化合物と患者集合体との整合が一層高まり、これによって臨床試験が成功する確率も高くなる。
【0031】
[0041] 先に論じたように、鎮痛剤の臨床開発は、疼痛表現型/状態の内特定の部分集合に患者が過剰に含まれるため、そして選択された研究化合物(research compound)に対して適切な患者群を特定することが一般的に難しいために、知っての通り低い成功率に苦しんでいる。本明細書において説明する方法は、選択された治療化合物が鎮痛剤として成功であるか否か判定する精度を高める(better determine)ことができる臨床試験を可能にすることによって、これらの問題を低減するという利点がある。勿論、これは、従来の手法では達成し得なかった、様々な実世界の利点を提供する。
【0032】
[0042]
図3は、
図2の方法を使用するデータ・フローの一例を示す。
図3に示す参照番号は、
図2に関して説明した方法のステップに対応する。ステップ204に関して、複数のタンパク質-タンパク質相互作用マップを生成し、各マップに異なるパラメータ設定を割り当てる。これらのマップは、ここでは、例示の目的に限って、ノードおよびエッジを含む相互作用マップとして示されるが、他のデータ出力形態も、加えてまたは代わりに、使用してもよい。楕円は、このようなタンパク質-タンパク質相互作用マップを、2つよりも多く生成できることを示す。
【0033】
[0043] ステップ205aに関して、異なるタンパク質-タンパク質相互作用マップ毎(したがって、異なるパラメータ設定毎)に、1組の予測遺伝子パスウェイを予測する。ここでは、例示の目的に限って、予測遺伝子パスウェイを採点付きリストとして示すが、他のデータ出力形態(例えば、ヒストグラム)も、加えてまたは代わりに、使用してもよい。ステップ205bに関して、異なるタンパク質-タンパク質相互作用マップ毎(したがって、異なるパラメータ設定毎)に、1組の疼痛表現型関連を生成する。ここでは、例示の目的に限って、疼痛表現型関連をレーダ・プロットとして示すが、他のデータ出力形態(例えば、ヒストグラム)も、加えてまたは代わりに、使用してもよい。
【0034】
[0044] ステップ208に関して、異なるパラメータ設定各々からの1組ずつの疼痛表現型関連を統合し/重ね合わせ、ステップ210に関して、統合した組を跨いで十分な重複を有する表現型を、選択された治療化合物を目標にすることができる、可能な表現型として特定する。ここでは、例示の目的に限って、統合した複数の組の疼痛表現型関連をオーバーレイ・チャート/ベン図として示すが、他のデータ出力形態も、加えてまたは代わりに、使用してもよい。
【0035】
[0045] 複数の異なるパラメータ設定を使用して複数の組の疼痛表現型関連を生成し、続いてこれらを統合し/重ね合わせて、最も重複が多いものを選択することを組み合わせることにより、本方法には利点が得られる。例えば、複数の異なるパラメータ設定を使用することによって、可能な疼痛表現型のマッピングを広げて差別化する利点があり、一方、その後に統合および重ね合わせを行うことによって、結果を選別し、ロバストなクロス-パラメータ(cross-parameter)を発生するものに絞り込むことが可能になる。言い換えると、複数の異なるパラメータ設定を使用することによって、選択された治療化合物によって影響を受ける可能性があるパスウェイのマッピングにおいて広い網を張り、一方、統合/重ね合わせ処理によって、同じ分子パスウェイと関連付けられる可能性が最も高い表現型/状態に、最終出力を収斂することを確保する。
例
[0046]
図4A~
図4Dは、治療化合物の例であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)について、
図2の方法を使用した出力例を示す。CGRPが検査事例として選択されたのは、これが疼痛パスウェイに関与することが知られており、偏頭痛を軽減するという臨床的効果が知られているからである。したがって、本方法は、手作業の介入を必要とせずに、同様の関係を示す出力を生成することができるはずである。
【0036】
[0047]
図4Aは、本方法のタンパク質-タンパク質マッピング処理からの出力を示し、
図4Bは、本方法の遺伝子オントロジー処理からの出力を示し、
図4Cは、特定のパラメータ設定について、本方法の疼痛表現型関連付け処理を示す。
図4Dは、複数のパラメータ設定からの疼痛表現型関連の統合/重ね合わせ結果を示す(各「リスト」表記(list show)は、異なるパラメータ設定からの結果に対応する)。
【0037】
[0048] これらの結果が示すのは、最も重複が多い疼痛表現型が、偏頭痛障害、異痛症、痛覚過敏を含み、既に知られているCGRPの臨床的特性に非常に強く対応するということである。つまり、この検査事例は、本明細書において説明する鎮痛プラットフォームが、選択された治療化合物を使用して可能な治療に対して、疼痛表現型/状態を効果的に特定することができ、既に知られている結果に向けてアルゴリズムを誘導するために手作業の介入を全く必要としないことを実証する。したがって、これは、プラットフォームが、未だ発見されていない新たな鎮痛療法を特定する潜在的可能性を示す。
【0038】
[0049]
図5A~
図5Cは、化合物例GPR18について、
図2の方法を使用した出力例を示す。この検査は、先に説明したCGRP検査と同様であった。しかしながら、CGRPとは異なり、GPR18は、いずれの指定された状態に対しても、臨床的な鎮痛効果を実証していない。
図5Aは、遺伝子オントロジー処理からの出力を示し、
図5Bは、特定のパラメータ設定に対する、疼痛状態関連付け処理からの出力を示す。
図5Cは、複数のパラメータ設定からの疼痛表現型関連を統合した/重ね合わせた結果を示す(各「リスト」表記は、異なるパラメータ設定からの結果に対応する)。
【0039】
[0050] これらの結果が示すのは、重複が最も多い1組の疼痛表現型は、慢性腰痛、 接触性異痛症、神経痛、鋭い痛みの発症(acute onset pain)、および炎症痛を含むということである。これらの表現型と関連付けられた疼痛状態の一例は、神経根症である。つまり、このプラットフォームは、GPR18が神経根症を治療するために可能な鎮痛剤となることを実証する。
【0040】
[0051] 選択された治療化合物としてカルシトリオール(ビタミンDの活性型)を使用して、同様のプロセスを実行した。その結果が示したのは、カルシトリオールが、先天性爪甲硬厚症(痛みを伴う角皮症の原因となる希な、常染色体優性ケラチン障害)、掌蹠角化症症候群(痛みおよびかゆみを伴う掌蹠角化症によって特徴付けられる他の先天性ケラチン障害)、および複合性局所疼痛症候群のような、ケラチン障害を治療する際に使用することが可能な鎮痛剤となるということである。
【0041】
[0052] カルシトリオールは、mTOR、サイトカイン(例えば、TGF-b、IL1、IL8、IL10)と関連付けられた先天性爪甲硬厚症パスウェイと相互作用することができるだけでなく、神経学的要因を減少させ、皮膚保護剤の修復を促進することができる。
図6Aは、先天性爪甲硬厚症に関与する分子パスウェイのモデルであり、カルシトリオールが相互作用することができる可能性がある相互作用点を示すように見直されている(Cao et al., Gene Expression Profiling in Pachyonychia Congenita Skin(先天性爪甲硬厚症の皮膚における遺伝子発現プロファイリング)、J Dermatol Sci. 2015 March; 77(3): 156-165を参照のこと)。
【0042】
[0053]
図6Bおよび
図6Cは、サーチ(それぞれ、PubMedおよびClinicalTrials.gov)の結果を纏めたチャートであり、ビタミンD、コレカルシフェロール、および/またはカルシトリオールを特定の疾病状態にリンクする。これらの結果が示すのは、これらの化合物と疼痛、特に、神経障害性疼痛との間における関係を調査する研究が殆ど行われていないということである。つまり、本明細書において説明しているプラットフォームは、新規の鎮痛療法を調査するための道筋(path)を提供するように機能することができる。
【0043】
[0054] 掌蹠角化症症候群に関して、カルシトリオールは、EGFR、TGF、およびNFkB(PGE2、IL1、NO、TGF-b)においてTRPV3関連パスウェイと相互作用するように機能することができる。複合性局所疼痛症候群に関して、カルシトリオールは、TNFaおよびIL6サイトカインを調節するように機能することができ(may)、肥満細胞機能を正常化し、ケラチン生成細胞の増殖を減少させ、TRPV1およびEGFRにより感覚神経細胞を正常化することができる。
更に他のコンピュータ・システムの詳細
[0055] この説明および特許請求の範囲では、「コンピュータ・システム」という用語および同様の用語は、少なくとも1つの物理および有形プロセッサと、プロセッサによって実行することができるコンピュータ実行可能命令を格納することができる物理および有形メモリとを含む、任意のデバイスまたはシステム、もしくはその組み合わせを含むように、広く定められる。一例として、限定ではなく、「コンピュータ・システム」または「コンピューティング・システム」という用語は、本明細書において使用する場合、パーソナル・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、タブレット、ハンドヘルド・デバイス(例えば、移動体電話機、PDA、ページャ)、マイクロプロセッサ・ベースの消費者用電子機器またはプログラマブルな消費者用電子機器、ミニコンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、マルチプロセッサ・システム、ネットワークPC、分散型コンピューティング・システム、データセンタ、メッセージ・プロセッサ、ルータ、および交換機を含むことが意図されている。
【0044】
[0056] メモリは、任意の形態をなすことができ、コンピューティング・システムの本質および形態に依存するのはもっともである。メモリは、物理システム・メモリとなることができ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはこれら2つの何らかの組み合わせを含む。また、「メモリ」という用語は、本明細書では、物理記憶媒体のような、不揮発性大容量ストレージを指すために使用することもでき、物理記憶媒体をハードウェア記憶デバイスと呼ぶこともできる。
【0045】
[0057] また、コンピューティング・システムは、「実行可能コンポーネント」と呼ばれることが多い、複数の構造も搭載する。実例をあげると、コンピューティング・システムのメモリは、本明細書において開示した昇降システムおよび/または円往復運動システムのコントローラおよび/または機能を実行するための実行可能コンポーネントを含むことができる。「実行可能コンポーネント」という用語は、ソフトウェア、ハードウェア、またはこれらの組み合わせにすることができる構造であるとして、コンピューティングの分野における当業者には周知の構造に対する名称である。
【0046】
[0058] 実例をあげると、ソフトウェアで実装するとき、実行可能コンポーネントの構造は、ソフトウェア・オブジェクト、ルーチン、メソッド等を含むことができ、コンピューティング・システム上で1つ以上のプロセッサによって実行することができ、このような実行可能コンポーネントがコンピューティング・システムのヒープに存在するか否か、または実行可能コンポーネントがコンピュータ読み取り可能記憶媒体上に存在するか否かには関係ないことは、当業者には理解されよう。実行可能コンポーネントの構造は、コンピュータ読み取り可能媒体上に存在し、コンピューティング・システムの1つ以上のプロセッサによって実行されると、本明細書において説明した機能および方法のような1つ以上の機能を、コンピューティング・システムに実行させるように動作可能な形態となっている。このような構造は、実行可能コンポーネントがバイナリである場合のように、プロセッサによって直接コンピュータ読み取り可能であってもよい。あるいは、この構造は、プロセッサによって直接解釈可能なバイナリを生成するように、1段階でもまたは複数段階でも、解釈可能におよび/またはコンパイルされるように構造化することもできる。
【0047】
[0059] また、「実行可能コンポーネント」という用語は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、特定プログラム標準製品(ASSP)、システム・オン・チップ・システム(SOC)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)、または任意の他の特殊回路の内部というように、ハードウェア論理コンポーネント内に排他的に、またはほぼ排他的に、実装される構造を含むことが、当業者によって熟知されている。したがって、「実行可能コンポーネント」という用語は、ソフトウェア、ハードウェア、またはその組み合わせのいずれで実装されるかには関係なく、コンピューティングの当業者によって熟知されている構造についての用語である。
【0048】
[0060] 「コンポーネント」、「サービス」、「エンジン」、「モジュール」、「コントロール」、「発生器」(generator)等の用語も、この説明において使用することができる。本明細書において使用する場合、そしてこの場合には、これらの用語は、修飾節を用いて表現されてもまたは用いずに表現されても、それには関係なく、「実行可能コンポーネント」という用語と同義であることを意図しており、したがって、これらもコンピューティングの当業者によって熟知されている構造を有する。
【0049】
[0061] 全てのコンピューティング・システムがユーザ・インターフェースを必要とするのではないが、ある実施形態では、コンピューティング・システムは、ユーザから/に情報を伝達するときに使用するユーザ・インターフェースを含む。例えば、ユーザ・インターフェースは、ユーザが所望する動作を、修正磁石アセンブリ(modified magnet assembly)に指令するために使用することができる。ユーザ・インターフェースは、入力メカニズム(例えば、I/Oデバイス)だけでなく、出力メカニズムも含むことができる。本明細書において説明した原理は、正確な出力メカニズムまたは入力メカニズムそのものに限定されるのではない。何故なら、これらはデバイスの本質に応じて変化するからである。しかしながら、出力メカニズムは、実例をあげると、スピーカ、ディスプレイ、接触出力、投影、ホログラム等を含むことができる。入力メカニズムの例には、実例をあげると、マイクロフォン、タッチ・スクリーン、投影、ホログラム、カメラ、キーボード、スタイラス、マウス、または他のポインタ入力、あらゆる種類のセンサ等を含むことができる。
【0050】
[0062] したがって、本明細書において説明した実施形態は、特殊目的または汎用コンピューティング・システムを備えるまたは利用することができる。また、本明細書において説明した実施形態は、コンピュータ実行可能命令および/またはデータ構造を搬送もしくは格納するために、物理およびその他のコンピュータ読み取り可能媒体も含む。このようなコンピュータ読み取り可能媒体は、汎用または特殊目的コンピューティング・システムによってアクセスすることができる任意の入手可能な媒体とすることができる。コンピュータ実行可能命令を格納するコンピュータ読み取り可能媒体は、物理記憶媒体である。コンピュータ実行可能命令を搬送するコンピュータ読み取り可能媒体は、送信媒体である。つまり、一例をあげると、限定ではなく、本明細書において開示または想定される(envisioned)実施形態は、少なくとも2種類の明らかに異なるコンピュータ読み取り可能媒体、即ち、記憶媒体および送信媒体を備えることができる。
【0051】
[0063] コンピュータ読み取り可能記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、ソリッド・ステート・ドライブ(「SSD」)、フラッシュ・メモリ、相変化メモリ(「PCM」)、CD-ROMまたは他の光ディスク・ストレージ、磁気ディスク・ストレージまたは他の磁気記憶デバイス、あるいは所望のプログラム・コードをコンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態で記憶するために使用することができ、更に開示した本発明の機能を実装するために汎用または特殊目的コンピューティング・システムによってアクセスし実行することができる、任意の他の物理および有形記憶媒体が含まれる。例えば、コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ読み取り可能記憶媒体上に具体化し、コンピュータ・プログラム製品を形成することができる。疑いを避けるために、このようなコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、「ハードウェア記憶デバイス」と呼ぶこともできる。これは、物理記憶媒体であり、送信媒体ではない。
【0052】
[0064] 送信媒体は、所望のプログラム・コードをコンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態で搬送するために使用することができ、汎用または特殊目的コンピューティング・システムによってアクセスし実行することができる、ネットワーク・リンクおよび/またはデータ・リンクを含むことができる。以上のものの組み合わせも、コンピュータ読み取り可能媒体の範囲に含まれてしかるべきである。
【0053】
[0065] 更に、種々のコンピューティング・システム・コンポーネントに到達すると、コンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態であるプログラム・コードは、自動的に、送信媒体から記憶媒体に(またはその逆に)転移することができる。 例えば、ネットワークまたはデータ・リンクを通じて受信されたコンピュータ実行可能命令またはデータ構造は、ネットワーク・インターフェース・モジュール(例えば、「NIC」)内部にあるRAMにバッファすることができ、次いで最終的にコンピューティング・システムのRAMおよび/またはコンピューティング・システムにおいて揮発性が低い記憶媒体に転送することができる。このように、送信媒体も利用するコンピューティング・システム・コンポーネント、また送信媒体を主に利用するコンピューティング・システム・コンポーネントにでさえも、記憶媒体を含ませ得ることは、理解されてしかるべきである。
【0054】
[0066] 尚、コンピューティング・システムは、例えば、ネットワークを通じて、このコンピューティング・システムが他のコンピューティング・システムと通信することを可能にする通信チャネルも内蔵できることも、当業者には更に認められよう。したがって、本明細書において説明した方法は、多くの種類のコンピューティング・システムおよびコンピューティング・システム構成を含むネットワーク・コンピューティング環境において実施することもできる。また、開示した方法は、分散型システム環境において実施することもでき、ネットワークを通じてリンクされた(ハードワイヤ接続されたデータ・リンク、ワイヤレス・データ・リンクのいずれかによって、またはハードワイヤ接続およびワイヤ・データ・リンクの組み合わせによって)ローカル・コンピューティング・システムおよび/またはリモート・コンピューティング・システムの双方がタスクを実行する。分散型システム環境では、処理、メモリ、および/または記憶機能(capability)も分散することができる。
更に他の用語および定義
[0067] 本明細書では、治療用組成物(composition)および治療方法の特定的な例について説明したが、これらの例は本開示の範囲を限定するのではない。例えば、特定の局所投与形態について一例として説明する場合、カルシトリオールを真皮組織に送注するのに適した他の組成物および方法も、加えてまたは代わりに、使用できることは理解されよう。
【0055】
[0068] 別段指示がない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される量、割合、百分率、またはその他の測定値を表す数値は、「約」(about)という用語またはその同義語によって、この用語が明示的に現れていなくても、随意に修正される(modify)ことは、了承されているはずである。本明細書において記載される(recite)数値範囲はいずれも、その中に包含される(subsume)全ての部分範囲含む(include)ことを意図している。範囲が示されるとき、これらの範囲の任意の終点および/またはこれらの範囲内にある数値は、本開示の範囲内で組み合わせることができる。用語の複数形の使用は、それらの用語の単数形の使用も包含し(encompass)、その逆も成り立つものとする。
【0056】
[0069] 「約」(about)、「近似的に」(approximately)、「実質的に」(substantially)、「本質的に」(essentially)等の用語が、述べられる量、値、または状態と合わせて使用されるとき、述べられる量、値、または状態から10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、または0.01%以下だけ逸脱する量、値、または状態を意味するように解釈されてもよい。
【0057】
[0070] 本明細書において使用する見出しおよび副見出しはいずれも、編成を目的とするに過ぎず、説明または請求項の範囲を限定するために使用する意図はない。
【国際調査報告】