(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-11
(54)【発明の名称】進行プロファイル予測
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241004BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G06T7/00 350C
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565187
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022058001
(87)【国際公開番号】W WO2022228794
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年11月12日にTranslational Vision Science & Technologyにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】523398765
【氏名又は名称】イケリアン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ザネット,サンドロ イヴォ セバスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】アポストロポロス,ステファノス
(72)【発明者】
【氏名】チルレル ルイス,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】モシンスカ-ドマンスカ,アガタ ユスチナ
【テーマコード(参考)】
4C316
5L096
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316FB21
4C316FB26
4C316FZ01
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096GA30
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
状態の進行を予測する方法が、特定の時点までの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを取得することを包含し、このデータは、対象についての少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される。パラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータが、訓練されるモデルを使用し、かつ測定データに基づいて生成され、パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、またパラメータ化された時間依存関数は、特定の時点の後の経時的な対象の予測される状態の進行を示す。パラメータ化された時間依存関数は、特定の時点の後の少なくとも1つの時点について、少なくとも1つのパラメータを使用して評価される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態の進行を予測する方法であって、
特定の時点までの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを取得することであって、前記データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される、測定データを取得することと、
訓練されるモデルを使用し、前記測定データに基づいてパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを生成することであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、かつ前記パラメータ化された時間依存関数は、前記特定の時点の後の経時的な前記対象の予測される状態の進行を示すものとする、パラメータを生成することと、
を包含する方法。
【請求項2】
前記特定の時点の後の少なくとも1つの時点について、前記少なくとも1つのパラメータを使用して前記パラメータ化された時間依存関数を評価すること、をさらに包含する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
状態の進行を予測するべくモデルを訓練する方法であって、
少なくとも1つの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを包含する訓練データを取得することであって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づくものとし、前記訓練データは、対象毎に前記対象と関連付けられた少なくとも1つの時点、および前記少なくとも1つの時点における前記対象の状態を示す情報をさらに包含するものとする、訓練データを取得することと、
パラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを、モデルを使用し、かつ前記少なくとも1つの対象のうちの特定の対象の前記測定データに基づいて生成することであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、かつ経時的な前記特定の対象の予測される前記状態の進行を示す、パラメータを生成することと、
前記パラメータ化された時間依存関数を、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点について前記少なくとも1つのパラメータを使用して評価し、前記少なくとも1つの時点において予測される前記対象の状態を取得することと、
前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記予測される状態と、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記状態を示す前記訓練データの前記情報とを比較し、比較結果を得ることと、
前記比較結果に基づいて前記モデルを更新することと、
を包含する方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの対象のうちの少なくとも1つの第1の対象が、それと関連付けられた第1のセットの少なくとも1つの時点を有し、
前記少なくとも1つの対象のうちの少なくとも1つの第2の対象が、それと関連付けられた第2のセットの少なくとも1つの時点を有し、かつ、
前記第1のセット内の少なくとも1つの時点は、前記第2のセット内の各時点と異なる、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記状態が変化する時点、または前記状態が変化する速度を示す、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータ化された時間依存関数を評価することは、前記モデルを使用して生成された前記パラメータに対して閾値を適用することを包含し、前記閾値は、前記パラメータ化された時間依存関数が評価される前記時点に依存する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記パラメータ化された時間依存関数の項の少なくとも1つの係数を包含する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータ化された時間依存関数は、フーリエ級数またはテイラー級数を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定データは、データ取り込みデバイスによって生成された、前記対象と関連付けられた少なくとも1つのN次元入力データセットを包含し、Nは、正の整数値とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記N次元入力データセットは、前記対象と関連付けられた少なくとも2次元の画像データセットであり、前記データ取り込みデバイスは、撮像デバイスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータを生成することは、前記N次元入力データセット内の場所に対応する複数の場所のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータを生成し、前記複数の場所のそれぞれについて別々に前記パラメータ化された時間依存関数を定義することを包含する、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モデルは、畳み込みニューラル・ネットワークを包含する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
状態の進行を予測するための装置であって、
特定の時点までの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを受け取るように構成された入力であって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される、入力と、
モデルを包含する非一過性のストレージ媒体と、
前記装置にパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを、前記モデルを使用し、かつ前記測定データに基づいて生成させるように構成されたプロセッサシステムであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、前記特定の時点の後の経時的な前記対象の予測される状態の進行を示す、プロセッサシステムと、
を包含する装置。
【請求項14】
状態の進行を予測するべくモデルを訓練するための装置であって、
少なくとも1つの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを包含する訓練データを受信するように構成された入力であって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づき、前記訓練データは、対象毎に前記対象と関連付けられた少なくとも1つの時点、および前記少なくとも1つの時点における前記対象の状態を示す情報をさらに包含するものとする入力と、
モデルを記憶するためのストレージ媒体と、
プロセッサシステムであって、前記装置に、
パラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを、前記モデルを使用し、かつ前記少なくとも1つの対象のうちの特定の対象の前記測定データに基づいて生成ことであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、かつ前記パラメータ化された時間依存関数は、経時的な前記特定の対象の予測される前記状態の進行を示すことと、
前記パラメータ化された時間依存関数を、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点について前記少なくとも1つのパラメータを使用して評価し、前記少なくとも1つの時点において予測される前記対象の状態を取得することと、
前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記予測される前記特定の対象の状態と、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記状態を示す前記訓練データ内の前記情報を比較し、比較結果を得ることと、
前記比較結果に基づいて前記モデルを更新することと、
を行わせるように構成されたプロセッサシステムと、
を包含する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行プロファイルの予測に関する。さらに本発明は、進行プロファイルを予測するべくモデルを訓練することにも関係する。
【背景技術】
【0002】
たとえば医用画像において、たとえば医用画像および/またはそのほかの、体温および心拍数等の測定値に基づいて対象の状態を評価することができる。また、医用画像に基づいて患者の将来の状態を予測することも試みられている。
【0003】
非特許文献1は、モデルを訓練してGAを連帯的にセグメント化し、かつディープ・ニューラル・ネットワークを使用して将来の時点におけるセグメント化を予測することを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zhang(ツァン)ほか著「A multi-scale deep convolutional neural network for joint segmentation and prediction of geographic atrophy in SD-OCT images(ア・マルチスケール・ディープ・コンボリューショナル・ニューラル・ネットワーク・フォア・ジョイント・セグメンテーション・アンド・プレディクション・オブ・ジェオグラフィック・アトロフィ・イン・SD-OCT・イメージズ)」2019年、IEEE第16回International Symposium on Biomedical Imaging(インターナショナル・シンポジウム・オン・バイオメディカル・イメージング)、(ISBI 2019)pp.565-568
【非特許文献2】Apostolopoulos,S.(アポストロポウロス,S.)、De Zanet,S.(デ・ザネット,S.)、Ciller,C.(チラー,C.)、Wolf,S.(ウルフ,S.)、Sznitman,R.(シュニットマン,R.)著「Pathological oct retinal layer segmentation using branch residual u-shape networks(パソロジカル・OCT・レチナル・レイヤー・セグメンテーション・ユージング・ブランチ・レジュディアル・u-シェイプ・ネットワークス)」Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention(メディカル・イメージ・コンピューティング・アンド・コンピュータ・アシステッド・インターベンション)、pp.294-301、(2017年)
【非特許文献3】Arcadu,F.(アーケイドゥ,F.)、Benmansour,F.(ベンマンソール,F.)、Maunz,A(モウンツ,A.)、Willis,J.(ウィルス,J.)、Haskova,Z.(ハスコバ,Z.)、Prunotto,M.(プルノット,M.)著「Deep learning algorithm predicts diabetic retinopathy progression in individual patients(ディープ・ラーニング・アルゴリズム・プレディクツ・ダイアビーティック・レチノパシー・プログレッション・イン・インディビジュアル・ペイシェンツ)」npj Digital Medicine(デジタル・メディスン)、92(2)(2019年)
【非特許文献4】Boyer,D.S.(ボイヤー,D.S.)、Schmidt-Erfurth,U.(シュミット・エルフルス,U.)、van Lookeren Campagne,M.(バン・ルッカーレン・キャンペーン,M.)、Henry,E.C.(ヘンリー,E.C.)、Brittain,C.(ブリッテイン,C.)著「The pathopysiology of geographic atrophy secondary to Age-related Macular Degeneration and the complement pathway as a therapeutic target(ザ・パソピシオロジー・オブ・ジェオグラフィック・アトロフィー・セカンダリ・トゥ・エージ・リレーテッド・マキュラー・デジェネレーション・アンド・ザ・コンプリメント・パスウェイ・アズ・ア・セラピューティック・ターゲット)」Retina(レティナ)37(5)(2017)
【非特許文献5】Engwer,C.(エングワー,C.)、Hillen,T.(ハイレン,T.)、Knappitsch,M.(ナッピッチ,M.)、Surulescu,C.(スルレスキュ,C.)著「Glioma follow white matter tracts: a multiscale dti-based model(グリオマ・フォロウ・ホワイト・マター・トラクツ:ア・マルチスケール・dtiベースド・モデル)」Journal of mathematical biology(ジャーナル・オブ・マセマティカル・バイオロジー)71(2014年9月)
【非特許文献6】Fleckenstein,M.(フレッケンシュタイン,M.)、Mitchell,P.(ミッチェル,P.)、Freund,K.B.(フレウンド,K.B.)、Sadda,S.(サッダ,S.)、Holz,F.G.(ホルツ,F.G.)、Brittain,C.(ブリッテイン,C.)、Henry,E.C.(ヘンリー,E.C.)、Ferrara,D.(フェラーラ,D.)著「The progression of geographic atrophy secondary to age-related macular degeneration(ザ・プログレッション・オブ・ジェオグラフィック・アトロフィー・セカンダリ・トゥ・エージ・リレーテッド・マキュラー・デジェネレーション)」Ophthalmology(オフタルモロジー)125(3)、369-390(2018年)
【非特許文献7】Kingma,D.P.(キングマ,D.P.)、Ba,J.Adam(バ,J.・アダム)著「A method for stochastic optimization(ア・メソッド・フォア・ストカスティック・オプティマイゼーション)」International Conference on Learning Representations(インターナショナル・カンファレンス・オン・ラーニング・レプレゼンテーションズ)、(2015年)
【非特許文献8】Mosayebi,P.(モサイェビ,P.)、Cobzas,D.(コブザス,D.)、Murtha,A.(マルタ,A.)、Jagersand,M.(ジャガーサンド,M.)著Tumor invasion margin on the riemannian space of brain fibers(トゥーモア・インベイジョン・マージン・オン・ザ・リーマニアン・スペース・オブ・ブレイン・ファイバーズ)、Medical Image Analysis(メディカル・イメージ・アナリシス)16(2)、361-373(2012年)
【非特許文献9】Niu, S.(ニウ,S.)、de Sisternes, L.(デ・シスターンズ,L.)、Chen, Q.(チェン,Q.)、Leng, T.(レング,T.)、Rubin, D.L.(ルービン,D.L.)著「Automated geographic atrophy segmentation for SD-OCT images using region-based C-V model via local similarity factor(オートメイテッド・ジェオグラフィック・アトロフィー・セグメンテーション・フォア・SD-OCT・イメージズ・ユージング・リージョン・ベースド・C-V・モデル・ビア・ローカル・シミラリティ・ファクター)」Biomedical Optics Express(バイオメディカル・オプティクス・エクスプレス)7(2)、581、(2016年)
【非特許文献10】Niu, S.(ニウ,S.)、de Sisternes, L.(デ・シスターンズ,L.)、Chen, Q.(チェン,Q.)、Rubin, D.L.(ルービン,D.L.)、Leng, T.(レング,T.)著「Fully automated prediction of geographic atrophy growth using quantitative Spectral-Domain Optical Coherence Tomography biomarkers(フーリー・オートメイテッド・プレディクション・オブ・ジェオグラフィック・アトロフィ・グロース・ユージング・クァンティテイティブ・スペクトラル・ドメイン・オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー・バイオマーカーズ)」Ophthalmology(オフタルモロジー)、123(8)、1737-1750、(2016年)
【非特許文献11】Petersen,J.(ピーターセン,J.)、Jager,P.F.(ジャガー,P.F.)、Isensee,F.(アイセンシー,F.)、Kohl,S.A.A.(コール,S.A.A.)、Neuberger,U.(ヌーバーガー,U.)、Wick,W.(ウィック,W.)、Debus,J.(ドビュス,J.)、Heiland,S.(ハイランド,S.)、Bendszus,M.(ベンザス,M.)、Kickingereder,P.(キッキンガーレダー,P.)、Maier-Hein,K.H.(マイヤー・ハイン,K.H.)著「Deep Probabilistic Modeling of Glioma Growth(ディープ・プロバビリスティック・モデリング・オブ・グリオマ・グロース)」(2019年)
【非特許文献12】Ronneberger,O.(ローネンバーガー,O.)、Fischer,P.(フィッシャー,P.)、Brox,T.(ブロックス,T.)著「U-net: Convolutional networks for biomedical image segmentation(Uネット:コンボリューショナル・ネットワークス・フォア・バイオメディカル・イメージ・セグメンテーション)」Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention(メディカル・イメージ・コンピューティング・アンド・コンピュータ・アシステッド・インターベンション)、vol.9351、pp.234-241(2015年)
【非特許文献13】Sadda,S.R.(サッダ,S.R.)、Guymer,R.(グイマー,R.)、Holz,F.G.(ホルツ,F.G.)、Schmitz-Valckenberg,S.(シュミツ・バルケンバーグ,S.)、Curcio,C.A.(カーシオ,C.A.)、Bird,A.C.(バード,A.C.)、Blodi,B.A.(ブロディ,B.A.)、Bottoni,F.(ボットーニ,F.)、Chakravarthy,U.(チャクラバーシー,U.)、Chew,E.Y.(チュウ,E.Y.)、Csaky,K.(サキイ,K.)、Danis,R.P.(ダニス,R.P.)、Fleckenstein,M.(フレッケンシュタイン,M.)、Freund,K.B.(フレウンド,K.B.)、Grunwald,J.(グランウォルド,J.)、Hoyng,C.B.(ホイング,C.B.)、Jaffe,G.J.(ジャッフェ,G.J.)、Liakopoulos,S.(リアコポウロス,S.)、Mones,J.M.(モネ,J.M.)、Pauleikhoff,D.(パウレイコッフ,D.)、Rosenfeld,P.J.(ローゼンフェルド,P.J.)、Sarraf,D.(サラフ,D.)、Spaide,R.F.(スパイド,R.F.)、Tadayoni,R.(タダヨニ,R.)、Tufail,A.(ツフェイル,A.)、Wolf,S.(ウルフ,S.)、Staurenghi,G.(ストウレンギ,G.)著「Consensus definition for atrophy associated with Age-Related Macular Degeneration on OCT: classification of atrophy report 3(コンセンサス・デフィニション・フォア・アトロフィー・アソシエイテッド・ウィズ・エージ・リレーテッド・マキュラー・デジェネレーション・オン・OCT:クラシフィケーション・オブ・アトロフィー・レポート3)」Ophthalmology(オフタルモロジー)、125(4)、537-548、(2018年)
【非特許文献14】Zhang,Y.(ツァン,Y.)、Ji,Z.(ジ,Z.)、Niu,S.(ニウ,S.)、Leng,T.(レング,T.)、Rubin,D.L.(ルービン,D.L.)、Chen(チェン,Q.)著「A multi-scale deep convolutional neural network for joint segmentation and prediction of geographic atrophy in SD-OCT images(ア・マルチスケール・ディープ・コンボリューショナル・ニューラル・ネットワーク・フォア・ジョイント・セグメンテーション・アンド・プレディクション・オブ・ジェオグラフィック・アトロフィ・イン・SD-OCT・イメージズ)」2019年、IEEE第16回International Symposium on Biomedical Imaging(インターナショナル・シンポジウム・オン・バイオメディカル・イメージング)、(ISBI 2019)(Isbi)pp.565-568、(2019年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、向上した進行プロファイルの予測の提供を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、状態の進行を予測する方法が提供される。前記方法は、
特定の時点までの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを取得することであって、前記データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される、測定データを取得することと、
訓練されるモデルを使用し、前記測定データに基づいてパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを生成することであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、特定の時点の後の経時的な前記対象の予測される状態の進行を示すものとする、パラメータを生成することと、
を包含する。
【0007】
前記方法は、前記特定の時点の後の少なくとも1つの時点について、前記少なくとも1つのパラメータを使用して前記パラメータ化された時間依存関数を評価することをさらに包含することができる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、状態の進行を予測するべくモデルを訓練する方法が提供される。前記方法は、
少なくとも1つの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを包含する訓練データを取得することであって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づくものとし、前記訓練データは、対象毎に前記対象と関連付けられた少なくとも1つの時点、および前記少なくとも1つの時点における前記対象の状態を示す情報をさらに包含するものとする、訓練データを取得することと、
パラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを、モデルを使用し、かつ前記少なくとも1つの対象のうちの特定の対象の前記測定データに基づいて生成することであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、連続する時間値に依存し、かつ経時的な前記特定の対象の予測される前記状態の進行を示す、パラメータを生成することと、
前記パラメータ化された時間依存関数を、前記特定の対象と関連付けられた少なくとも1つの時点について前記少なくとも1つのパラメータを使用して評価し、前記少なくとも1つの時点において予測される前記対象の状態を取得することと、
前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記予測される状態と、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記状態を示す前記訓練データの前記情報とを比較し、比較結果を得ることと、
前記比較結果に基づいて前記モデルを更新することと、
を包含する。
【0009】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの対象のうちの少なくとも1つの第1の対象が、それと関連付けられた第1のセットの少なくとも1つの時点を有し、前記少なくとも1つの対象のうちの少なくとも1つの第2の対象が、それと関連付けられた第2のセットの少なくとも1つの時点を有し、かつ、前記第1のセット内の少なくとも1つの時点は、前記第2のセット内の各時点と異なる。
【0010】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記状態が変化する時点、または前記状態が変化する速度を示すことができる。
【0011】
前記パラメータ化された時間依存関数を評価するステップは、前記モデルを使用して生成された前記パラメータに対して閾値を適用することを包含することができ、前記閾値は、前記パラメータ化された時間依存関数が評価される前記時点に依存する。
【0012】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記パラメータ化された時間依存関数の項の少なくとも1つの係数を包含することができる。
【0013】
前記パラメータ化された時間依存関数は、フーリエ級数またはテイラー級数を包含することができる。
【0014】
前記測定データは、データ取り込みデバイスによって生成された、前記対象と関連付けられた少なくとも1つのN次元入力データセットを包含することができる。これにおいてNは、1以上の整数値である。好ましくは、Nを2以上の整数値とする。
【0015】
特定の例において、前記N次元入力データセットは、少なくとも2次元の画像データセットであり、前記データ取り込みデバイスは、撮像デバイスである。
【0016】
前記少なくとも1つのパラメータを生成するステップは、前記N次元入力データセット内の場所に対応する複数の場所のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータを生成し、前記複数の場所のそれぞれについて別々に前記パラメータ化された時間依存関数を定義することを包含することができる。
【0017】
前記測定データは、撮像デバイスによって生成された、前記対象と関連付けられた少なくとも2次元の画像データセットを少なくとも1つ包含することができる。
【0018】
前記少なくとも1つのパラメータを生成するステップは、前記少なくとも2次元の画像データセット内の場所に対応する複数の場所のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータを生成し、前記複数の場所のそれぞれについて別々に前記パラメータ化された時間依存関数を定義することを包含することができる。
【0019】
前記モデルは、畳み込みニューラル・ネットワークを包含することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、状態の進行を予測するための装置が提供される。前記装置は、
特定の時点までの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを受け取るように構成された入力であって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される、入力と、
モデルを包含する非一過性のストレージ媒体と、
前記装置にパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを前記モデルを使用し、かつ前記測定データに基づいて生成させるように構成されたプロセッサシステムであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、特定の時点の後の経時的な前記対象の予測される状態の進行を示す、プロセッサシステムと、
を包含する。
【0021】
本発明の別の態様によれば、状態の進行を予測するべくモデルを訓練するための装置が提供される。前記装置は、
少なくとも1つの対象についての少なくとも1つの測定に関係する測定データを包含する訓練データを受信するように構成された入力であって、前記測定データは、前記対象についての前記少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づき、前記訓練データは、対象毎に前記対象と関連付けられた少なくとも1つの時点、および前記少なくとも1つの時点における前記対象の状態を示す情報をさらに包含するものとする入力と、
モデルを記憶するためのストレージ媒体と、
プロセッサシステムであって、前記装置に、
パラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを、前記モデルを使用し、かつ前記少なくとも1つの対象のうちの特定の対象の前記測定データに基づいて生成ことであって、前記パラメータ化された時間依存関数は、経時的な前記特定の対象の予測される前記状態の進行を示すものとすることと、
前記パラメータ化された時間依存関数を、前記特定の対象と関連付けられた少なくとも1つの時点について前記少なくとも1つのパラメータを使用して評価し、前記少なくとも1つの時点において予測される前記対象の状態を取得することと、
前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記予測される前記特定の対象の状態と、前記特定の対象と関連付けられた前記少なくとも1つの時点における前記特定の対象の前記状態を示す前記訓練データ内の前記情報を比較し、比較結果を得ることと、
前記比較結果に基づいて前記モデルを更新することと、
を行わせるように構成されたプロセッサシステムと、
を包含する。
【0022】
状態の進行プロファイルを予測するための基礎としてパラメータ化された時間依存関数を使用することによって、予測が特定の時点に拘束されることがなく、それに代わり、任意の時点において、特に将来または最後の利用可能な測定の後の任意の時点において評価することが可能である。このことは、随時、新しい診断データが利用可能になったときに現実との予測の比較を可能にする。これは、計画の柔軟性を提供する。たとえば、これに限定されないが、アドヒアランス(固執)の監視および治療に対する応答の監視を含む治療計画における柔軟性を提供することができる。
【0023】
モデルを訓練するとき、パラメータ化された時間依存関数は、異なる対象のための非周期的な、または不規則な時間間隔において利用可能となり得るグラウンド・トゥルース・データの取り扱いを可能にする。
【0024】
時間依存関数についての単純な例は、ステップ関数とすることができる。閾値技術は、特に単調に進行する疾患について好都合となることがあり、その場合、モデルを使用して生成されたパラメータが状態の変化速度を示すことができる。このことは、モデルによって見積もられるべき特に少ない数のパラメータ(たとえば、1つのパラメータだけ)に供する。
【0025】
より複雑な、有限フーリエまたはテイラー級数等のパラメータ化された関数は、比較的複雑な時間依存の振る舞いを効率的な方法でエンコードすることを可能にし、進行プロファイルのより詳細な予測に有用となり得る。これにより、モデルをより効率的に訓練することが可能となり得る。
【0026】
上述の特徴は、有用と認められる任意の方法において組み合わせることができることは、当業者であれば理解するであろう。それに加えて、システムに関して述べられている修正および変形は、同様に方法およびコンピュータ・プログラム・プロダクトにも適用することができ、また、方法に関して述べられている修正および変形は、同様にシステムおよびコンピュータ・プログラム・プロダクトにも適用することができる。
【0027】
以下、本発明の態様を、例を用い、図面を参照して説明する。それらの図面は、図式的なものであり、縮尺に忠実に描かれていないことがある。図面全体を通じ、同一の参照番号を用いて類似のアイテムがマークされることがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】状態の進行を予測する方法を説明したフローチャートである。
【
図2】状態の進行を予測するべくモデルを訓練する方法を説明したフローチャートである。
【
図3】状態を予測するため、またはモデルを訓練するための装置を説明したブロック図である。
【
図4A】GA注釈の例を伴うBスキャンの例を示す。
【
図4B】セグメント化された層を伴う
図4AのBスキャンを示す。
【
図5】
図5の(a)から(i)は投影されたボリューム・セグメントのネットワークについての入力厚さマップの例を示す。
図5の(j)はマニュアルによる萎縮のセグメント化を示す。
【
図6】この開示の実施態様に従った一例の訓練ワークフローの概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して特定の例示的な実施態様をここでより詳細に説明する。
【0030】
詳細な構成および要素といったこの説明の中に開示されている事項は、例示的な実施態様の包括的な理解を補助するべく提供されている。したがって、これらの例示的な実施態様がそれらの具体的に定義された事項を伴うことなく実行可能であることは明らかである。また、周知の動作または構造については、不必要な詳細によって説明が不明瞭になることから、その詳細もここでは述べない。
【0031】
以下において、光干渉断層撮影法による網膜構造の3次元描写を基礎として診断することができる視覚系の地図状萎縮の例に関する特定の態様を開示する。しかしながら、概してこの技術は任意の疾患または状態に適用することが可能であり、かつそのほかの任意の、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴撮影法、超音波エコー画像診断法等の画像診断法、およびそのほかの任意の撮像機器を、むしろ評価されるべき疾患または状態に主として応じて使用することができることは理解されるべきである。また、この技術は、写真およびX線画像等の2次元画像、および血圧または体温等の1次元データに適用することもできる。それに加えて、同一タイプまたは異なるタイプの複数の測定を組み合わせて一緒に評価することができる。それに加えて、生データではなく、むしろ前処理後のデータを用いてモデルが訓練されるように、測定を前処理することができる。たとえば、地図状萎縮の場合は、光干渉断層撮影のデータセットを多数の層厚に変換することができる。
【0032】
本明細書に開示されている技術は、N次元画像等のN次元の入力データセットに適用することができ、Nは、1、2、3、または任意の正の整数値とすることができることが理解されよう。適切な3次元画像データセットの例は、MRIボリューム・スキャンである。
【0033】
多くの疾患において、その疾患は身体の特定の領域の状態に影響を及ぼす。これにより、多くの利用可能な撮像技術のうちの1つを使用して検出することができる。疾患の成長のエリアは、一様でないことがある。疾患が進行するとき、疾患の成長のエリアが増加することがある。しかしながら、罹患部の形状もまた経時的に変化する可能性があり、疾患によっていずれの解剖学的領域がいつ影響されることになるかを予測することが困難になり得る。本明細書に開示されている技術は、これらの懸念への取り組みを補助することができる。
【0034】
周知の訓練技術は、キュレートされたデータに基づいており、特定の時点において、たとえばそれぞれの患者毎にまったく等しい規則的な間隔において連続的な獲得が行われる。しかしながら、それぞれの患者が異なる獲得の頻度を有し得ること、および可能性として来院の中断があり得ることから、殆どの臨床応用にとってこれは現実的ではない。それに加えて、モデルの訓練が行われた時点を超えた異なる時間間隔の予測に関心がある場合には、その推論の結果を信頼することができない。本明細書に開示されている技術は、一様な時点において獲得が行われることを前提としないため、遙かにより柔軟性のある訓練および予測を可能にする。その方法は、むしろ経時的な疾患の経過をエンコードするパラメトリック関数を使用する一般的成長パターンを予測する。これにより、患者の視覚系の最終的な状態がどのようになり得るかを外挿により推定し、たとえば治療計画を設計することを可能にする。
【0035】
我々の方法において、特定の間隔における将来の時点の予測の制約が緩和され、それに代えて、予測される状態の進行の単一連続モデルが構築される。詳細な説明は、地図状萎縮の例を開示しているが、本明細書に開示されている技術は、それに限定されない。この単一連続モデルは、たとえばレベル・セットの形式で提供することができる。より一般的には、単一連続モデルは、パラメトリック時間依存関数のパラメータの形式で提供することができる。この方法で潜在的に比較的複雑な進行プロファイルを表すためには、いくつかのパラメータだけが必要になる。
【0036】
たとえば、利用可能な入力データを、単一入力タプルI内に組み入れることができ、たとえばそれをマトリクスまたはテンソルとすることができる。見積もるべき少なくとも1つのパラメータのセットは、出力予測Gによって表すことができ、たとえばそれをベクトルまたはマトリクスとすることができる。訓練されるモデルは、入力タプルIを出力予測Gにマップするマッピングfθを表す。マッピングfθは、たとえば、ニューラル・ネットワークとして具体化することができる。一例のニューラル・ネットワークは、畳み込みニューラル・ネットワークである。ニューラル・ネットワークに代えて、線形回帰モデルまたは非線形回帰モデル等の統計学的モデルを使用することが可能である。記号θは、モデル・パラメータ、たとえばニューラル・ネットワークのニューロンの構成を表し、訓練手順の間に更新することが可能である。
【0037】
特定の実施態様において、たとえば単調に進行する疾患または状態の場合には、単一数値によって出力予測Gを表すことができる。結果は、患部、たとえばGAエリアのすべての将来的な成長をGが予測できるということである。対応する時点tiのための閾値Tiを見つけることによって、Gの値が閾値Tiより大きいか否かのテストを通じて患部の範囲を見つけることが可能である。このことは、指定時間間隔(たとえば、最後の測定の6または12箇月後)においてのみ萎縮を予測するべく訓練される既存の技術と比較したときに、我々のアプローチを遙かにより柔軟なものとする。進行プロファイルを予測するため、任意の所与の将来的な時点における患部の進行を定義することが可能である。
【0038】
GA等の領域の状態の場合、出力予測Gが、予測を希望する各ピクセル(または、ボクセル)のために単一数値を含むことができる。各時点tiおよび対応する各閾値Tiの値について、G>Tiとなるピクセル/ボクセルをG≦Tiとなるピクセル/ボクセルとは異なる値または色に設定することによって別々の画像を生成することができる。
【0039】
特定の実施態様において、出力予測Gは、パラメトリック関数の少なくとも1つのパラメータを包含することができる。適切なパラメトリック関数の一例は、N個の項を伴うテイラー・シーケンスである。
【数1】
【0040】
これにおいて、パラメータは、an(nは、N-1を含む0からN-1までのすべての整数)およびbである。結果は、N+1個のパラメータの和になる。したがって、モデルは、入力タプルIがモデルに適用されたときにパラメータan(nは、N-1を含む0からN-1までのすべての整数)およびbを出力するべく訓練することができる。特定の実施態様において、値bを、前もって事前定義することができる。たとえば、bを、特にデータが正規化されるときは、たとえば時点0がデータ獲得と一致するべく設定されるようにゼロ等の特定の値に固定することができる。そのような場合、モデルは、N個のパラメータan(nは、N-1を含む0からN-1までのすべての整数)を予測することだけを必要とする。したがって、たとえばモデルは、タプル(a0,a1,a2,・・・,aN-1)を出力することになる。たとえば、Nを1から20までの範囲内、好ましくは2から20までの範囲内、より好ましくは2から10までの範囲内、さらに好ましくは2から5までの範囲内の整数とすることができる。
【0041】
パラメトリック関数のもう1つの例は、期間Pにわたって決定される2N+1個の項を伴うフーリエ級数である:
【数2】
【0042】
これにおいて、パラメータは、an(nは、Nを含む0からnまでのすべての整数)およびbn(nは、Nを含む1からnまでのすべての整数)である。したがって、この場合、たとえば、モデルがタプル(a0,a1,a2,・・・,aN;b1,b2,・・・,bN)を出力することになる。ここでも再び、たとえば、Nを1から20までの範囲内、好ましくは2から20までの範囲内、より好ましくは2から10までの範囲内、さらに好ましくは2から5までの範囲内の整数とすることができる。
【0043】
パラメトリック関数のさらに別の例は、2N+1個の項を伴う振幅-位相形式で表されるフーリエ級数である:
【数3】
【0044】
これにおいて、パラメータは、An(nは、Nを含む0からnまでのすべての整数)およびφn(nは、Nを含む1からnまでのすべての整数)である。したがって、この場合、たとえば、モデルがタプル(A0,A1,A2,・・・,AN;φ1,φ2,・・・,φN)を出力することになる。ここでも再び、たとえば、Nを1から20までの範囲内、好ましくは2から20までの範囲内、より好ましくは2から10までの範囲内、さらに好ましくは2から5までの範囲内の整数とすることができる。
【0045】
パラメトリック時間依存関数の選択肢は、より大きな母集団において予測されるべき状態の典型的な進行の観点から選択することができる。
【0046】
特定の実施態様において、モデル(ニューラル・ネットワーク、統計モデル)を、処理済みデータに基づいて訓練することができる。言い換えると、モデルの入力を生センサ・データとせずに、たとえばセグメント化したデータまたは正規化したデータ等の前処理済みデータとすることができる。それに加えて、出力がパラメータ化された関数の実際のパラメータとならないことがあるが、たとえば異なる時間間隔または異なる振幅を計算に入れるべく正規化等の後処理操作を行うことができる。
【0047】
この開示の例は、医療応用領域を強調しているが、この技術がそのほかの、機械構成要素の故障、非破壊試験、非医用画像処理、または天気予報等の時間的に進展する応用にも適用できることは理解されるであろう。X線、写真、レーダ、またはそのほかのセンサ・技術を使用して、たとえば測定データを取得することができる。予測されるべき状態は、たとえば、構成要素の予測される故障の時間、または時間の関数として表される機械または構成要素の予測される効率を包含することができる。用語「対象」は、本明細書で使用される場合に、たとえば物体または患者を参照することができる。
【0048】
図1は、状態の進行を予測する方法を示している。特定の実施態様において、その方法をコンピュータによって具体化される方法とすることができる。ステップ101において、対象に対する少なくとも1つの測定に関係する測定データが取得される。測定データは、たとえば画像診断法から取得することができる。測定データは、1つの時における測定、または複数の異なる時に行われた測定と関係付けることができる。もっとも最近の測定は、特定の時点において行われている。データは、対象についての少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づいて生成される。たとえば、センサの出力信号がサンプリングされ、処理されて体感測定データが取得される。たとえば、光学センサのデータが組み合わされ、光干渉断層撮影法が使用されて3次元ボリュームが形成される。さらにデータを、状態の予測を補助する方法で処理することができる。地図状萎縮の場合、これに、いくつかの層厚の識別を含ませることができる。そのほかの応用の場合、これに限定されないが、セグメント化、ノイズ・リダクション、エッジ強調、正規化、およびこれらの類といった適切な前処理を含むことができる。
【0049】
ステップ102において、測定データを使用してパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを生成する。そのためにも測定データをさらに前処理してモデルの適切な入力にすることができ、特定の実施態様において、それをニューラル・ネットワークとすることができる。この任意の前処理は、応用固有とすることができるため、この開示において、さらなるそれの詳細を省略する。モデルの入力が測定データに基づいて決定され、モデルに入力される。モデルは、その入力に応答して出力を生成するように構成される。モデルの出力は、パラメトリック時間依存関数の少なくとも1つのパラメータを包含することができる。任意に、その少なくとも1つのパラメータを取得するべくモデルの出力が処理される。たとえば、モデルの出力の正規化を行うことができる。そのほかのその種の任意の後処理操作には、限定ではないが、スケーリング操作および、モデルの複数の出力を1つのパラメータに組み合わせる組み合わせ操作を含めることができる。
【0050】
たとえば、パラメータ化された時間依存関数は、連続時間値に依存する。
【0051】
ステップ103において、パラメータ化された時間依存関数が有効となる任意の望ましい時点においてパラメータ化された時間依存関数を評価することができる。この方法により将来の状態を予測することができる。評価は、特定の実施態様において、パラメータと時間依存閾値の比較を包含することができる。各時間依存閾値を使用して、パラメータのセグメントを作成することが可能である。したがって、任意の望ましい時点のためのセグメントを生成することが可能である。
【0052】
特定の実施態様において、所定の時点tにおけるパラメータ化された時間依存関数の評価が、式(たとえば、テイラーまたはフーリエ級数に基づくものとすることができる)への少なくとも1つのパラメータおよび時点tの挿入を伴って結果を計算することができる。
【0053】
特定の実施態様において、パラメータが、画像データセットの複数の画素(たとえば、ピクセルまたはボクセル)のそれぞれのためのモデルを使用して生成される。各画素の値は、任意の時間値tについてパラメータ化された時間依存関数を使用して評価することができる。したがって、各時間tについて、各画素の値を使用して画像を生成することが可能である。
【0054】
特定の実施態様において、パラメータ化された時間依存関数が複数の引数を有することができる。そのような場合、関数gを、たとえばg(t,x)として記述することができる。これにおいて、gはパラメータ化された時間依存関数を示し、時間tおよび少なくとも1つのほかの引数xに依存する。したがって、パラメータ化された時間依存関数は、時間および少なくとも1つのさらなる引数に依存することができる。一例として述べれば、パラメータ化された時間依存関数は、さらに、月数で表した次の治療までの時間の量に依存することができる。治療の時間を変化させると、その後、パラメータ化された時間依存関数の出力が変化する。疾患が早期に治療されれば、疾患の成長がより小さくて済むか、またはよりゆっくりとなる可能性があるが、疾患の治療が遅くなると、治療があまり効果的でなくなり、結果として疾患の成長がより大きくなるか、またはより速くなる可能性がある。このことは、時間依存関数が、予測が行われる時間のほかに、少なくとも1つのさらなる引数にも依存し得ることを意味する。その種のさらなる引数の一例は、治療等の特定のイベントが行われることになる時間である。
【0055】
図2は、状態の進行を予測するべくモデルを訓練する方法を説明している。たとえば、この方法は、初期モデルを伴って開始することができる。初期モデルは、たとえば無作為のモデル・パラメータを使用して、または以前の知識に基づいて設定することができる。モデルは、たとえばニューラル・ネットワークまたは統計モデルを包含することができる。
【0056】
ステップ201において、訓練データが取得される。訓練データは、少なくとも1つの対象に対する少なくとも1つの測定データに関係する測定値を包含することができる。たとえば、複数の対象のそれぞれのために1つの測定を提供することができる。それに代えて、経時的に行われる測定のセットを、複数の対象のそれぞれに関して提供することができる。特定の実施態様において、測定の数がそれぞれの対象ごとに異なるとすることができる。測定値は、
図1の方法において使用された測定データに類似とすることができる。
【0057】
測定データは、対象についての少なくとも1つの測定を行うように構成されたセンサの出力に基づく。たとえば、データは、患者の部分の撮像に使用される撮像デバイスによって生成することができる。
【0058】
訓練データは、それぞれの対象ごとに、その対象と関連付けられた少なくとも1つの時点、およびその少なくとも1つの時点における対象の状態を示す情報を包含することができる。この情報は、グラウンド・トゥルース・データとして使用することができる。モデルは、この方法で訓練されて対象の測定データに応答する類似の情報を出力する。それに基づいて、モデルの望ましい振る舞いを示す入力および出力の形式で訓練データを生成することができる。
【0059】
特定の実施態様において、少なくとも1つの時点における対象の状態を示す情報が、その時点における対象に関して実施されるさらなる測定に基づいて決定される。たとえば、第1の時点と、それより後の第2の時点について測定データが利用可能である場合に、(モデルによって予測されるべき)第2の時点における対象の状態を示す情報の決定に第2の時点についての測定データを使用することができる。
【0060】
特定の実施態様において、第2の時点における対象の状態を示す情報が、第2の時点における測定データから、たとえばコンピュータ化されたアルゴリズムを使用して自動的に抽出される。そのほかの実施態様において、第2の時点における対象の状態を示す情報が、第2の時点における測定データに基づいて人間の専門家によってマニュアルで作成される。さらにほかの実施態様において、測定データ自体を、予測されるべき状態とすることができる。
【0061】
特定の実施態様において、訓練のペアが生成され、各訓練のペアが、第1の時点についての対象に関係する測定データおよび第2の時点における対象の状態についての情報を包含し、第2の時点は第1の時点より時間的に後である。第1の時点についての測定データをモデルの入力の生成に使用することができ、第2の時点における状態についての情報を、モデルのパフォーマンスの評価に使用してモデルが向上するようにすることができる。
【0062】
ステップ202において、モデルを使用し、少なくとも1つの対象のうちの特定の対象の測定データに基づいてパラメータ化された時間依存関数の少なくとも1つのパラメータが生成される。上に述べられているとおり、測定データは、モデルの対応する入力を取得するべく前処理することができる。パラメータ化された時間依存関数は、特定の対象の経時的な進行の予測される状態を示す。
【0063】
ステップ203において、特定の対象と関連付けられた少なくとも1つの時点について、その少なくとも1つの時点において予測されるその対象の状態を取得するべく、パラメータ化された時間依存関数が少なくとも1つのパラメータを使用して評価される。このステップは、訓練データ内に記憶されたその対象のグラウンド・トゥルース状態との比較に適切なデータを提供する。
【0064】
ステップ204において、特定の対象と関連付けられた少なくとも1つの時点において予測されるその特定の対象の状態と、その特定の対象と関連付けられた少なくとも1つの時点におけるその特定の対象の状態を示す訓練データ内の情報が比較される。この比較ステップは、誤差測度または適合度等の比較結果をもたらすことができる。
【0065】
本明細書に開示されている技術の利点のうちの1つは、状態についてのグラウンド・トゥルース情報を利用可能にする時間の間の間隔がすべての対象について同一である必要はないという意味において、キュレートされていないデータを使用することの可能性である。たとえば、第1の対象は、それと関連付けられた第1のセットの時点、およびその第1のセットの時点の各時点におけるその対象の状態を示す情報を有することが可能である。第2の対象は、それと関連付けられた第2のセットの時点、およびその第2のセットの時点の各時点におけるその対象の状態を示す情報を有することが可能である。キュレートされていないデータにおいて、第1のセット内の少なくとも1つの時点が第2のセット内に存在しないことが可能である。それに加えて、第1の対象と関連付けられた時点がほかの対象のいずれとも関連付けられないことさえ可能である。任意の時点についてのグラウンド・トゥルース情報を、パラメトリック時間依存関数をその時点において評価することによるモデル出力と比較することが可能である。
【0066】
ステップ205において、比較結果に基づいてモデルが更新される。特定の実施態様において、複数の対象の比較結果が組み合わされて複合比較結果となり、その複合比較結果に基づいてモデルが更新される。
【0067】
モデルが更新された後、ステップ206において、訓練が完了したか否かが決定される。まだ訓練が完了していない場合には、更新後のモデルを現在のモデルとして使用してプロセスがステップ201から再び開始される。ステップ206において、モデルが完了したと決定されると、ステップ207においてプロセスが終了する。その後、
図2の方法の最終モデルを使用して
図1のプロセスを行うことができる。
【0068】
図3は、状態の進行を予測するための装置300を示している。特定の実施態様において、装置300を、状態の進行を予測するべくモデルを訓練するために構成することもできる。装置300は、入力301を包含する。入力301は、ネットワークインターフェースまたはデータバス等のデータを受信するための通信ポートを包含することができる。装置300は、さらにストレージ媒体302を包含することができる。ストレージ媒体302は、コンピュータメモリを包含することができる。またストレージ媒体302は、コンピュータ命令が記憶された非一過性のコンピュータ可読媒体も包含することができる。プロセッサ303による実行時に、本明細書に示されている方法のいずれかのステップを実行するべく装置を構成することができる。ストレージ媒体302は、ニューラル・ネットワーク・モデル等のモデルも記憶することができる。ストレージ媒体302は、また、測定データおよび/または訓練データも記憶することができる。プロセッサシステム303は、ストレージ302内のインストラクションを実行することによって装置300をコントロールすることができる。訓練手順の詳細は、異なる形で具体化することができるが、少なくとも1つのパラメータがモデルの出力に基づいて生成され、グラウンド・トゥルース・データが利用可能な特定の時点におけるパラメータ化された時間依存関数の評価の結果に基づいてモデルが更新されることは理解されよう。
【0069】
以下において、特定の実施態様をより詳細に開示する。これらの詳細な実施態様の説明は、保護範囲の限定ではなく、むしろその説明に役立つことは理解されよう。
【0070】
地図状萎縮(GA)は、視覚系に影響を及ぼす疾患であり、網膜内の光受容体細胞の喪失によって特徴付けられる。GAは、部位に応じて異なる機能的結果を有することがある:網膜の中心(中心窩)部が影響を受けているときには、周辺領域が損傷しているときより視力が損なわれる程度が高い。その理由のため、疾患が伝播すると見られる方向の予測およびそれの拡散速度の予測が可能であることが非常に重要となる。GAの進行を予測する現在のアプローチは、次の(恣意的に選択されるか、または来院を課した)時点にだけ取り組み、時間的な固定点において高度にキュレートされたデータを必要とする。患者の来院ということの性質に起因して、実世界の臨床セットアップにおけるこの種のデータの取得は、しばしば、患者が治療プロトコルに従うときでさえ困難となる。これらのシナリオは、新しい疾患進行ストラテジの開発を妨げる。ここでは、単一スキャンの層厚に基づいて連続的なGA成長を予測する新しいアプローチを紹介する。その方法は、患者のGAの完全な進行パターンをモデリングする、一様な獲得間隔を必要としないレベル・セットの問題として枠組みされる。
【0071】
1. 導入
GAは、網膜の変性疾患であり、光受容体(PR)に不可逆的損傷を生じさせる加齢性黄斑変性症(AMD)の進行した形態である。続いてこれが視覚の喪失を生じさせ、患者の視野内の暗斑として顕在化する。網膜内の部位に応じて、GAは、視覚に対して異なる影響を有し得る。これは、治癒が見込めない慢性疾患であり、したがって医師は、疾患の進行を遅らせることに焦点を当てる。進行のメカニズムは、明瞭には理解されてなく、現在進行中の研究もその方向を向いている(非特許文献6)。自動化された検出および進行予測アルゴリズムは、画像の解析に伴う作業負荷を軽減し、寄与ファクタへの洞察を与えることが可能である。GA進行に対する既存のアプローチは、主として、網膜構造の高分解能の3次元描写を可能にする光干渉断層撮影法(OCT)に基づく。非特許文献10は、多様な網膜の層厚および、ランダム・フォレスト(RF)を使用した投影像に基づいてGA成長確率を予測する方法を紹介している。これは、時間重み付けした閾値を使用し、将来の時点におけるGA領域を予測する。非特許文献14は、モデルを訓練してGAを連帯的にセグメント化し、かつディープ・ニューラル・ネットワークを使用して将来の時点におけるセグメント化を予測する。非特許文献3は、糖尿病性網膜症の進行を、眼底のカラー写真に適用するディープ・ラーニング(DL)によって予測する。
【0072】
また、疾患の進行の予測は、眼科学以外の多様な分野においても異なる粒状度のレベルで行われている。脳腫瘍の成長は、生物学的モデルを使用して確率的に(非特許文献5,8)、あるいはより最近では確率的ディープ・モデリングを使用して(非特許文献11)モデル化された。それにおいてPetersen(ピーターセン)ほかは、腫瘍の成長の振る舞いが患者毎に異なるとの前提の下に妥当と思われる成長軌跡の学習済み分布を提案している。上記の方法すべては、特定の時点において連続的に獲得されるキュレートされたデータを使用して訓練される。しかしながら、それぞれの患者が異なる取得の頻度を有し得ること、および可能性として来院の中断があり得ることから、殆どの臨床応用にとってこれは現実的ではない。それに加えて、モデルの訓練が行われたオリジナルの時点を超えた異なる時間間隔の予測に関心がある場合には、その推論の結果を信頼することができない。それとは対照的に、ここで紹介する方法は、一様な時点において獲得が行われることを要求しないために、遙かにより柔軟性のある訓練および予測を可能にする。その方法は、むしろもっとも進行しがちな網膜の領域を示す一般的成長パターンを予測する。予測される疾患プロファイルの閾値を設定することによって、将来の時点におけるGA予測が取得される。このことは、臨床医が、患者の視覚系の最終的な状態がどのようになり得るかを外挿により推定し、かつ治療計画を設計することを可能にする。
【0073】
2. 方法
時間t
0において取得されるサイズD×H×Wの3次元OCTボリューム
【数4】
を考えた場合、われわれの目標は、たとえば、現在のGAおよび将来の時間ステップ、時間t>t
0におけるその予測である。これらの予測は、眼底画像を用いて見られるエリアに対応するボリュメトリック・データの(深度軸Dに沿った)アンファス投影上に作成される。我々の方法において、特定の間隔における将来の時点の予測の制約が緩和され、それに代えて、レベル・セットの形式で萎縮の成長の単一連続モデルが構築される。
【0074】
以前の文献は、萎縮検出にとって網膜層の情報が特に重要であることを示した(非特許文献9,14)。したがって、最初に我々は、非特許文献2のアルゴリズムを使用して層および流体のセグメント化を行う。出力の一例を
図4Bに示す。GAは、PR細胞の喪失であるが、隣接する網膜層もまた、この細胞死による影響を受ける。したがって、それぞれのセグメント化した層に対応する2次元アンファスの厚さ測度を計算する(
図5に例証されているとおり):
- 網膜神経繊維層(RNFL)
- 神経節細胞層(GCL)および内網状層(IPL)
- 内顆粒層(INL)および外網状層(OPL)
- 外顆粒層(ONL)
- 光受容体(PR)および網膜色素上皮(RPE)
- 脈絡毛細管(CC)および脈絡膜ストローマ(CS)
また、3つの流体タイプの厚さも同様にする:
- 網膜内滲出液(IRF)
- 網膜下液(SRF)
- 網膜色素上皮剥離(PED)。
【0075】
図5は、ネットワークのための入力厚さマップの一例を示している。これに関して言えば、
図5の(a)はRNFLを示し、
図5の(b)はGCL+IPLを示し、
図5の(c)はINL+OPLを示し、
図5の(d)はONLを示し、
図5の(e)はPR+RPEを示し、
図5の(f)はCC+CSを示し、
図5の(g)はIRFを示し、
図5の(h)はSRFを示し、
図5の(i)はPEDを示し、
図5の(j)は、萎縮のマニュアルのセグメント化を示す。これらの図は、OCTボリュームのアンファス投影に対応する。
【0076】
これらすべての厚さマップは、単一の入力テンソル
【数5】
に結合される。目標は、マッピングf
θを見つけ出すことである:
【数6】
これにおいて
【数7】
は、厚さマップと同じサイズの単一チャンネル出力予測である。
【0077】
マップ内の所定ピクセルの値が高いほど、対応するエリアがGAであるか、それに発展する確率がより高くなる。
【数8】
のレベル・セットを注目することによって、将来の疾患の完全な進行が見つけられる。注意する必要があるが、この式は、すでにGAによる影響を受けている領域が元どおりに治る(または、再生する)ことはないという前提の下にのみ働き、すなわちGAの成長が単調であると仮定することが可能である。我々の知る範囲では、PR細胞を再生する治療が存在しないことから、この場合、この仮定は当を得ている。
【0078】
結果は、
【数9】
がGAエリアのすべての将来的な成長を予測するということである。対応する時点t
iのための閾値T
iを見つけ出すことによって、
【数10】
の計算を通じてGAの範囲を知ることが可能である。このことは、我々のアプローチを、指定時間(たとえば、6または12箇月)の後においてのみ萎縮を予測するべく訓練される既存の技術と比較したときに遙かにより柔軟なものとする。進行プロファイルを予測するため、任意の所与の将来的な時点におけるGAの進行を定義することが可能である。
【0079】
2.1. 訓練
データは、経験を積んだ臨床医によって注釈付けされて各OCTボリューム・スライス(Bスキャン)内の萎縮領域周りに境界ボックスが描かれる;
図4Aに例を示す。行うのは投影画像上においての訓練のみではあるが、それでさえもBスキャン内の注釈が、より正確なものとなる。その後、萎縮の2次元アンファス投影としてグラウンド・トゥルースを計算する。我々のデータセットは、経時的な複数のOCT獲得を伴った10人の患者からなる。しかしながら、この獲得は、時間的に均等に離隔される必要はない。
【0080】
図4Aは、一例のGA注釈を伴うBスキャンの一例を示している。
図4Bは、セグメント化された層およびPED流体401を伴うBスキャンを示している。
【0081】
図6は、この開示の実施態様に従った方法の一例の訓練ワークフローの概要を示している。この図は、左から右へ、次に示すステップを説明している:時間t
1のための入力画像
【数11】
;マッピングf
θの適用;結果の画像
【数12】
次に、上側の経路に従う場合:関数
【数13】
の適用、および結果の画像601;バイナリ・クロスエントロピー(BCE)計算、および結果の画像
【数14】
。画像
【数15】
から下側の経路に従うと、
図6に示されている図は、関数
【数16】
の適用、および結果の画像602、およびバイナリ・クロスエントロピー(BCE)計算、および結果の画像
【数17】
を示す。
【0082】
上記に定義されている畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN)f
θのパラメータθを見つけ出すことを可能にするために、ここで
図6に図示されている新しい訓練手順を紹介する。それぞれの患者毎に、時点t
a≠t
bかつt
a<t
bについて、可能性のあるすべての獲得のペアP
a,bを抽出する。各ペアP
a,bについて、以前の来院の第1の厚さマップI
aに基づき、予測f
θ(I
a)を計算する。続いて、I
aに対応するグラウンド・トゥルースY
a、およびI
bに対応する将来の萎縮状態Y
bに対し、予測のマッチングを二重に行う。マッチングは、ダイス類似性係数を最適化するY
aおよびY
bそれぞれのための
【数18】
上の2つの最適閾値を見つけ出すことによって行われ、結果として閾値T
aおよびT
bを得る。ネットワーク出力は、その後、見つかった閾値T
a、T
bに従ってシフトされ、平均0.0、および標準偏差1.0に対して正規化され、スケーリングされ、最終的にシグモイド関数に通される。その後、ペアP
a,bに対応するバイナリ・クロスエントロピー損が次式(式1)に従って計算される:
【数19】
これにおいて、Y
kは時点kにおけるGAのグラウンド・トゥルース・セグメントであり、γバーはスケーリング前の正規化であり、T
kは、ダイス類似性係数を用いて測定されるY
kに関する最良セグメントをもたらすf
θ(I
a)のための閾値である。出力の正規化が訓練を安定させ、シグモイドの適用前にそれを100によってスケーリングすることがより良好に区別される時点に対して値の範囲を増加させることが明らかになった。上記の式は、各時点についての損失項を追加することによって複数の同時に訓練される時点に拡張することが可能である。
【0083】
閾値T
bおよびT
aは、現在のGAを最良に近似する閾値が都度計算されるという意味において、非有界のままとした。それぞれの一意的な閾値は、レベル・セットを表し、最適な1つを選択することによって、グラウンド・トゥルースGAにもっとも良好に当て嵌まる領域を定義する。絶対GA進行速度が、遺伝的素因およびライフスタイルという意味において患者依存度が高いことから、閾値を非有界にすることを選択した(特許文献4,6)。それに加えて、
【数20】
の出力が、進行の相対速度についての追加の洞察を与える:大きい値は、ごく近い将来の成長を示し、小さい値は、さらに先の将来において影響を受ける領域を示す。
【0084】
2.2. 推論
推論時の間は、時間t
0において獲得したものだけを使用して予測
【数21】
を求め、その後それを、減少閾値において閾値を適用して成長プロファイルを得る。GAの進行は患者固有性が高いことから、絶対速度を予測することなく、むしろ網膜の残りと比較される相対速度を予測する。
【0085】
2.3. 具体化の詳細
以下は、非限定的な例として具体化の詳細を提供する。ここでは、4つのダウンサンプリング・ステップおよび16、32、64、128、および256のフィルタをレベル毎に伴う標準的なエンコーダ/デコーダ・スタイルのネットワークを具体化する(非特許文献12)。上述の損失を使用し、0.0001の学習レートを伴うアダム・オプティマイザ(非特許文献7)を用いて最適化する。オリジナルの厚さマップを150×150のサイズにスケーリングする。訓練データが限定的であるため、自然な画像変化との一貫性のある動的データ拡張を行う。これは、画像の回転(-14.3,+14.3度)および平行移動(xおよびy軸において画像サイズの-1%,+1%)を含む。左右の目が水平鏡像であることから、左/右の入れ替えも使用する。
【0086】
3. 結果
3.1. データおよびベースライン
多様な時間間隔においてそれぞれ3つから5つの獲得データを有する10人の患者のデータセットを使用し、結果として合計で51のOCTボリュームを得て、ハイデルベルグ・スペクトラリスOCTマシンを用いて撮像した。間隔は、5から22箇月までの間で変化する。しかしながら、後に示すとおり、我々の柔軟な訓練手順により、固定の時間間隔を必要としない。データセットは、時点毎のスライス毎に専門家によってマニュアルで注釈付けされた。萎縮は、水平範囲(不完全RPEと外側網膜萎縮(iRORA)および完全RPEと外側網膜萎縮(cRORA)領域を囲い込む境界ボックスを用いて選択された(非特許文献13)(
図4A参照)。グラウンド・トゥルースは、これらの境界ボックスを2次元に投影することによって得られた(
図5の(j))。限定された数の患者を十分に活用するために、それぞれの折り目で試験のために1人の患者を除外した患者レベルで1個抜き交差検証を行う。我々の方法と2つのベースラインを比較する:
【0087】
1. 我々の方法:提案の方法(セクション2参照)
【0088】
2. 現在のみ:訓練の間は将来のグラウンド・トゥルースへのアクセスを伴うことなく、現在の厚さ画像およびグラウンド・トゥルースのみを使用してネットワークが訓練される。これは、現在の萎縮形状が将来の進行をどの程度良好に示しているかを示す。
【0089】
3. 非特許文献14(Zhang(ツァン)ほか):この方法は、現在および将来の萎縮を連帯的に予測する。我々の方法とは対照的に、その方法は、特定の時間間隔(次の獲得)のためにのみ訓練を行う。進行性の萎縮は、現在の萎縮の予測およびローレベル画像の特徴を使用して計算される。現在および将来の萎縮が、2つの別々のチャンネル上に返される。
【0090】
3.2. 考察
図7Aは、月数で表した時間間隔(水平軸『t』上)に対する進行予測についての評価された方法のダイス・スコア(垂直軸『D』上)(「我々」701、「現在のみ」702、「Zhang(ツァン)ほか」703)を示している。
図7Bは、月数で表した時間間隔に対する進行予測についての評価された方法のピクセル単位で表した面積差スコア(垂直軸『AD』上)を示している。ダイス・スコアが高いほど、また面積差が低いほど良好である。
【0091】
図7Aからわかるとおり、我々の方法は、全時間間隔においてベースラインを上回り、長期予測(>15箇月)においてもっとも有意な差を伴う。『現在のみ』および『Zhang(ツァン)ほか』は、短い時間間隔のパフォーマンスにおいて類似であったが、時間とともにパフォーマンスが低下している。このことは、GAにつながる小さな変化が時間t
0においてすでに検出可能であるので、現在の萎縮予測(現在のみ)が、将来的なデータを用いて訓練されないときであってさえ、短期的には進行の良好なインジケータであることを示す。『Zhang(ツァン)ほか』は、より長い間隔において『現在のみ』を上回るが、『我々』と同じパフォーマンスを達成してはいない。
【0092】
図8は、例として、単一の患者についての結果の概要を示している。第1列I
iは、すべての撮像された時点に対応する(整列されていない)眼底画像を図示する。列Y
i内のそれとの対応は、OCTから導出されたグラウンド・トゥルース・セグメントである。第3列f(I
i)は、入力I
iに基づく予測されたレベル・セットを示す。この図の右側部分内は、特定の時点についての最適レベル・セットを示す。
【0093】
図8は、単一の患者の例における完全な進行プロファイルを図示している。第1行は、我々の方法が、長期の間隔についてさえ将来的なGAが予測可能であることを示している。我々のレベル・セットの式は、離散的な萎縮の進行に当て嵌めるべくネットワークを最適化させる『Zhang(ツァン)ほか』の方法とは異なり、進行パターンが滑らかかつ連続的であることを確保する。より短い期間において我々の方法が達成した精度は、2つのベースラインより低く、それは、もっとも短い時間間隔についてのより大きい面積差誤りの中に反映されている(
図7B)。これは、短期および長期の両方において進行を整合させるべく訓練されたことによる。結局、より長い来院時間については、ほかの方法と比較してより良好であると概括される。
【0094】
4. 結論
この開示において、とりわけ、連続的なGAの進行プロファイルの予測を学習するための新しい方法が提案されている。以前のアプローチとは対照的に、我々の方法は、時間において等しく離隔される必要のない時点に基づく。次に続いて生じる時点を超えた将来の萎縮領域のための正確な見積を提供することが可能である。我々の方法は、キュレートされていない来院間隔を伴う患者を含むデータセットに対して評価され、正確な15箇月の閾値を超える進行プロファイルを予測し、実世界のまばらな獲得スキームに向かう有望な結果を示している。
【0095】
本発明の一部またはすべての態様は、ソフトウエア、特にコンピュータ・プログラム・プロダクトの形式での具体化に適切であるとし得る。コンピュータ・プログラム・プロダクトは、非一過性のコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ・プログラムを包含することができる。また、コンピュータ・プログラムは、光ファイバ・ケーブルまたは空気等の伝送媒体によって運ばれる光信号または電磁信号等の信号によって表すこともできる。コンピュータ・プログラムは、部分的にまたは完全に、コンピュータ・システムによる実行に適したソース・コード、オブジェクト・コード、または擬似コードの形式を有することができる。たとえば、コードは、1つ以上のプロセッサにより実行可能であるとすることができる。
【0096】
本明細書に述べられている例および実施態様は、本発明を限定するのではなくむしろ例証を提供する。この分野の当業者は、付随する特許請求の範囲およびそれらの均等概念によって定義されるとおりのこの開示の精神ならびに範囲からの逸脱を伴うことなしに代替実施態様の設計が可能となるであろう。請求項内の括弧で囲まれた参照記号は、請求項の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。請求項または説明の中の別々の実体として記述されたアイテムは、記述されたアイテムの特徴を結合する単一のハードウエアまたはソフトウエア・アイテムとして具体化されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
300 装置
301 入力
302 ストレージ媒体、ストレージ
303 プロセッサ、プロセッサシステム
401 PED流体
601 結果の画像
602 結果の画像
【国際調査報告】