(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-11
(54)【発明の名称】エアバッグユニットを備えた自動車
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20241004BHJP
【FI】
B60R21/36 350
B60R21/36 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501258
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2022068105
(87)【国際公開番号】W WO2023285160
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118305.7
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ブレイス,ダン
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,ミカエル
(57)【要約】
【解決手段】 サイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)とルーフ(3)とを有する自動車(1)であって、サイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)は、それらの間の角縁部(11)に沿ってルーフ(3)に対して外側に鈍角を形成し、自動車(1)には、膨張式エアバッグ(20)を備えるエアバッグユニットが設けられる自動車(1)を提案する。エアバッグ(20)は、一定容量の膨張ガスを受け取ると、膨張したエアバッグ(20)の第1の領域(35)がサイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)の少なくとも一部にわたって延在し、膨張したエアバッグ(20)の第2の領域(36)が角縁部(11)から離れて延在する展開位置に膨張するように構成されている。エアバッグ(20)は、その膨張状態において、車両(1)の外部の道路使用者(14)との衝突前又は衝突時のいずれかに、上記角縁部(11)の周りに巻き付くか又は折り畳まれるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)とルーフ(3)とを有する自動車(1)であって、前記サイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)は、それらの間の角縁部(11)に沿って前記ルーフ(3)に対して外側に鈍角を形成し、前記自動車(1)には、膨張式エアバッグ(20)を備えるエアバッグユニットが設けられ、前記エアバッグ(20)は、一定容量の膨張ガスを受け取ると、膨張した前記エアバッグ(20)の第1の領域(35)が前記サイドウィンドウ又はサイドパネル(6、7)の少なくとも一部にわたって延在し、膨張した前記エアバッグ(20)の第2の領域(36)が前記角縁部(11)から離れて延在する展開位置に膨張するように構成され、前記エアバッグ(20)は、それにより、その膨張状態において、前記車両(1)の外部の道路使用者(14)との衝突前又は衝突時のいずれかに、前記角縁部(11)の周りに巻き付くか又は折り畳まれるように構成されていることを特徴とする、自動車(1)。
【請求項2】
前記エアバッグ(20)が、パッケージ(40)内に設けられ、前記パッケージ(40)が、前記角縁部(11)に近接した取付位置において前記自動車(1)に取り付けられている、請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
前記取付位置が、前記自動車(1)のBピラー(13)上に設けられている、請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項4】
前記取付位置が、前記車両のルーフレール(11)上に設けられ、前記ルーフレール(11)が前記角縁部に沿って延在している、請求項2に記載の自動車。
【請求項5】
前記取付位置が、装飾トリム要素(10a、11a、12a、13a)の背後に位置し、前記装飾トリム要素(10a、11a、12a、13a)は、前記エアバッグ(20)が前記取付位置から膨張することを可能にするために、前記エアバッグ(20)の展開時に破裂又は分離するように構成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項6】
前記自動車(1)が、前記エアバッグ(20)と流体連通して設けられ、前記エアバッグ(20)を膨張させるための膨張ガスの流れを提供するように作動可能であるインフレータ(100)を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項7】
前記エアバッグユニットが、前記インフレータ(100)を備え、前記インフレータ(100)が、前記パッケージ(40)に近接して前記自動車(1)に取り付けられている、請求項2に従属する請求項6に記載の自動車(1)。
【請求項8】
前記インフレータ(100)が、前記パッケージ(40)から離れた位置で前記車両(1)に取り付けられ、1つ以上のホースを介して前記エアバッグ(1)に流体接続されている、請求項2に従属する請求項6に記載の自動車(1)。
【請求項9】
前記インフレータ(100)が、前記自動車(1)の内部客室内に設けられている、請求項6~8のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項10】
前記パッケージ(40)が、前記エアバッグ(20)内に形成されたロール(37、38)を備える、請求項2~9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項11】
前記パッケージ(40)が、2つの前記ロール(37、38)を備え、前記エアバッグ(20)の前記第1の領域(35)が、巻かれて前記ロールのうちの第1のロール(37を画定し、前記エアバッグ(20)の前記第2の領域(36)が、巻かれて前記ロールのうちの第2のロール(38)を画定する、請求項10に記載の自動車(1)。
【請求項12】
前記エアバッグ(20)が、略矩形形状である、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項13】
前記エアバッグ(20)が、膨張ガスを受け入れるための内部チャンバ(24)を間に画定する可撓性材料の2つの層(21、22)を備え、前記エアバッグ(20)は、前記エアバッグ(20)が膨張したときに前記内部チャンバ(24)を横切って延在するように、前記内部チャンバ(24)内に設けられた内部バッフル(26、26’)を更に備え、各前記バッフル(26、26’)が、第1の端部(27)と、前記第1の端部(27)よりも幅が広い第2の端部(28)とを有する細長いテーパ状の構成を有し、前記第1の端部(27)と前記第2の端部(28)との間に延在する一対の末広がりの側縁(29)を備え、各前記バッフル(26、26’)の前記側縁(29)が、前記エアバッグ(20)のそれぞれの前記層(21、22)と相互接続され、前記内部バッフル(26、26’)が、2対で配設され、各対の前記バッフル(26、26’)は、それらの第1の端部(27、27’)が互いに向かって方向付けられ、それらの第2の端部(28、28’)が互いから離れるように方向付けられるように配設されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項14】
各対の前記バッフル(26、26’)は、それらの第1の端部(27、27’)が前記内部チャンバ(24)の中央領域(31)に向かって方向付けられ、それらの第2の端部(28、28’)が前記内部チャンバ(24)の前記中央領域(31)から離れるように方向付けられるように配設される、請求項13に記載の自動車(1)。
【請求項15】
前記エアバッグ(20)が、膨張ガスを受け入れるための入口(34)を有し、前記入口(34)が、前記層(21、22)の1つに形成され、前記内部チャンバ(24)の前記中央領域(31)内に配置される、請求項14に記載の自動車(1)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の自動車(1)で使用するのに好適な膨張式エアバッグ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグユニットを備えた自動車に関する。より詳細には、本発明は、サイドウィンドウ又はサイドパネル及びルーフと、サイドウィンドウ又はパネルとルーフとの間で車両の角縁部の周りに展開するように構成された膨張式エアバッグと、を有する自動車に関する。本発明は、自動車の上部領域と衝突した場合に、いわゆる交通弱者(Vulnerable Road User、VRU)を保護することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
乗用車などの自動車と衝突した場合に、歩行者、自転車通行者、オートバイ通行者、及び原付の乗り手などのいわゆる交通弱者(VRU)を保護するように設計された外部エアバッグ装置を自動車に設けることが以前から提案されている。例えば、歩行者との衝突が検出された場合に車両のフード及び/又はフロントガラスの上で膨張するいわゆる歩行者保護エアバッグを設けることが知られており、このエアバッグは、歩行者と自動車のフード又はフロントガラスとの間の直接的な衝突を防止するように設計されている。自動車及び歩行者を巻き込む事故の最も一般的なタイプとしては、歩行者が自動車の前を歩いているか又は立っているときに自動車が歩行者にぶつかる正面衝突である。上述したタイプの歩行者保護エアバッグは、このような状況において効果的な保護を提供することができる。
【0003】
しかしながら、自転車通行者、オートバイ通行者、及び原付の乗り手などのVRUは、歩行者よりも、その自転車、オートバイ、又は原付が乗用車又はバンなどの自動車の側面に衝突する事故を起こす可能性が高い。更に、二輪車の乗り手が車又はバンなどの自動車に衝突するこのタイプの側面衝突は、通常の乗車姿勢における乗り手の地面からの高さが故に、乗り手が車両の上部領域、例えば、サイドウィンドウ又はサイドパネルの上部領域、及び/又は、車両のルーフにぶつかることが多い。サイドウィンドウ又はサイドパネルと車両のルーフとの間の自動車のルーフレール領域は、一般的に、車両構造のかなり強い領域であり、衝撃時に容易に変形しないため、このタイプの事故の場合に特に衝撃の危険を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、一態様において、改良されたエアバッグ装置を有する自動車を提供しようとするものである。別の態様において、本発明は、自動車安全装置用の改良された膨張式エアバッグを提供しようとするものである。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、サイドウィンドウ又はサイドパネルとルーフとを有する自動車であって、サイドウィンドウ又はサイドパネルは、それらの間の角縁部に沿ってルーフに対して外側に鈍角を形成し、自動車には、膨張式エアバッグを備えるエアバッグユニットが設けられ、エアバッグは、一定容量の膨張ガスを受け取ると、膨張したエアバッグの第1の領域がサイドウィンドウ又はサイドパネルの少なくとも一部にわたって延在し、膨張したエアバッグの第2の領域が角縁部から離れて延在する展開位置に膨張するように構成され、エアバッグは、それにより、その膨張状態において、車両の外部の道路使用者との衝突前又は衝突時のいずれかに、上記角縁部の周りに巻き付くか又は折り畳まれるように構成されていることを特徴とする、自動車を提供する。
【0006】
好ましくは、エアバッグが、パッケージ内に設けられ、パッケージが、上記角縁部に近接した取付位置において自動車に取り付けられている。
【0007】
任意選択的に、上記取付位置が、自動車のBピラー上に設けられている。
【0008】
代替として、上記取付位置が、車両のルーフレール上に設けられ、ルーフレールが上記角縁部に沿って延在している。
【0009】
好都合には、上記取付位置が、装飾トリム要素の背後に位置し、装飾トリム要素は、エアバッグが上記取付位置から膨張することを可能にするために、エアバッグの展開時に破裂又は分離するように構成されている。
【0010】
自動車が、エアバッグと流体連通して設けられ、上記エアバッグを膨張させるための膨張ガスの流れを提供するように作動可能であるインフレータを更に備え得る。
【0011】
任意選択的に、上記エアバッグユニットが、上記インフレータを備え、インフレータが、上記パッケージに近接して自動車に取り付けられている。
【0012】
代替として、上記インフレータが、上記パッケージから離れた位置で車両に取り付けられ、1つ以上のホースを介してエアバッグに流体接続されている。
【0013】
任意選択的に、上記インフレータが、自動車の内部客室内に設けられている。
【0014】
好都合には、上記パッケージが、エアバッグ内に形成されたロールを備える。
【0015】
好ましくは、上記パッケージが、2つの上記ロールを備え、エアバッグの上記第1の領域が、巻かれて上記ロールのうちの第1のロールを画定し、エアバッグの上記第2の領域が、巻かれて上記ロールのうちの第2のロールを画定する。
【0016】
エアバッグが、略矩形形状であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、エアバッグが、膨張ガスを受け入れるための内部チャンバを間に画定する可撓性材料の2つの層を備え、エアバッグは、エアバッグが膨張したときに内部チャンバを横切って延在するように、内部チャンバ内に設けられた内部バッフルを更に備え、各上記バッフルが、第1の端部と、第1の端部よりも幅が広い第2の端部とを有する細長いテーパ状の構成を有し、上記第1の端部と第2の端部との間に延在する一対の末広がりの側縁を備え、各バッフルの側縁が、エアバッグのそれぞれの上記層と相互接続され、上記内部バッフルが、2対で配設され、各対のバッフルは、それらの第1の端部が互いに向かって方向付けられ、それらの第2の端部が互いから離れるように方向付けられるように配設されている。
【0018】
好都合には、各対のバッフルは、それらの第1の端部が内部チャンバの中央領域に向かって方向付けられ、それらの第2の端部が内部チャンバの上記中央領域から離れるように方向付けられるように配設される。
【0019】
好都合には、エアバッグが、膨張ガスを受け入れるための入口を有し、上記入口が、上記層の1つに形成され、内部チャンバの上記中央領域内に配置される。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、自動車安全装置用の膨張式エアバッグであって、膨張ガスを受け入れるための内部チャンバを間に画定する可撓性材料の2つの層を備え、エアバッグは、エアバッグが膨張したときに内部チャンバを横切って延在するように、内部チャンバ内に設けられた内部バッフルを更に備え、各上記バッフルが、第1の端部と、第1の端部よりも幅が広い第2の端部とを有する細長いテーパ状の構成を有し、上記第1の端部と第2の端部との間に延在する一対の末広がりの側縁を備え、各バッフルの側縁が、エアバッグのそれぞれの上記層と相互接続され、上記内部バッフルが、2対で配設され、各対のバッフルは、それらの第1の端部が互いに向かって方向付けられ、それらの第2の端部が互いから離れるように方向付けられるように配設されている。
【0021】
好ましくは、バッフル又は各対は、それらの第1の端部が内部チャンバの上記中央領域に向かって方向付けられ、それらの第2の端部が内部チャンバの上記中央領域から離れるように方向付けられるように配設される。
【0022】
好都合には、エアバッグが、膨張ガスを受け入れるための入口を有し、上記入口が、上記層の1つに形成され、内部チャンバの上記中央領域内に配置される。
【0023】
各バッフルは、展開時、エアバッグの膨張深さを局所的に制限するように構成され得る。
【0024】
任意選択的に、上記2対のバッフルは、各対の各バッフルが他方の対のそれぞれのバッフルに対して間隔を空けて対向する関係にあるように配設される。
【0025】
任意選択的に、上記バッフルの第1の端部は、第1の概念上の矩形の角に配設され、上記バッフルの第2の端部は、第2の概念上の矩形の角に配置され、第1の概念上の矩形は、第2の概念上の矩形よりも小さく、第2の概念上の矩形内に位置決めされる。
【0026】
好都合には、上記第1及び第2の概念上の矩形の中心は一致し、第1の概念上の矩形の各辺は、第2の概念上の矩形のそれぞれの辺に略平行である。
【0027】
任意選択的に、上記第1の概念上の矩形は細長く、上記第2の概念上の矩形は正方形である。
【0028】
好都合には、上記内部バッフルのうちの少なくとも1つは、バッフルの第1の端部が尖るような三角形状を有する。
【0029】
任意選択的に、上記内部バッフルのうちの少なくとも1つは、バッフルの第1の端部が尖るような二等辺三角形状を有する。
【0030】
好都合には、上記内部バッフルの少なくとも1つは、四角形状を有する。
【0031】
任意選択的に、上記内部バッフルのうちの少なくとも1つは、台形形状を有し、上記第1の端部及び上記第2の端部は平行な縁部によって画定される。
【0032】
有利には、上記内部バッフルの少なくとも1つは、二等辺台形形状を有し、上記第1の端部及び上記第2の端部は、平行な縁部によって画定される。
【0033】
上記各対のバッフルは、略同一の形状であり得る。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様によるエアバッグを備えた自動車が提供される。
【0035】
好都合には、第3の態様の自動車は、サイドウィンドウ又はサイドパネルとルーフとを有してもよく、サイドウィンドウ又はサイドパネルは、それらの間の角縁部に沿ってルーフに対して外側に鈍角を形成し、エアバッグは、一定容量の膨張ガスを受け取ると、膨張したエアバッグの第1の領域がサイドウィンドウ又はサイドパネルの少なくとも一部にわたって延在し、膨張したエアバッグの第2の領域が角縁部から離れて延在する展開位置に膨張するように構成され、エアバッグは、それにより、その膨張状態において、車両の外部の道路使用者との衝突前又は衝突時のいずれかに、上記角縁部の周りに巻き付くか又は折り畳まれるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明がより容易に理解され得、その更なる特徴が理解され得るように、本発明の実施形態を例示の目的で添付の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、ルーフと複数のサイドウィンドウとを有し、それらの間にルーフレールが延在する自動車の前方右側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、サイクリストと
図1と同様の自動車の側部との間の衝撃を示す、後方右側からの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の態様による膨張式エアバッグの概略平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のエアバッグ内に設けられ得るタイプの内部バッフルの概略図である。
【
図5】
図5は、エアバッグの内部チャンバを形成する可撓性材料の層と相互連結されたバッフルを示す、
図4のバッフルの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3のエアバッグ内に設けられ得る代替の内部バッフルの概略図である。
【
図7】
図7は、
図3のエアバッグの膨張した構成を示す片側からの斜視図である。
【
図8】
図8は、自動車の前方右側から見た斜視図であり、自動車のサイドウィンドウとルーフの上に跨るように位置決めされた
図3及び
図7に示されたタイプの膨張していないエアバッグを示す。
【
図9】
図9は、エアバッグに関連するインフレータの可能な設置位置を示す。
【
図10】
図10は、
図3に示されたタイプのエアバッグの概略図であり、自動車に設置するためにパッキングされる前の膨張していない状態のエアバッグを描写している。
【
図11】
図11は、
図10と同様の概略図であるが、パッキングプロセスの最初のステップ中のエアバッグを描写している。
【
図12】
図12は、
図11と同様の概略図であるが、パッキングプロセスの後続ステップ中のエアバッグを描写している。
【
図13】
図13は、本発明の態様によるエアバッグを装備した自動車の後部右側から見た斜視図であり、作動前のエアバッグを描写している。
【
図14】
図14は、
図13の図に概ね対応する図であるが、模擬事故における自動車の側面との最初の衝突点におけるサイクリストを示す。
【
図15】
図15は、
図14の図に概ね対応する図であり、事故の後続段階を描写し、作動時の膨張の初期段階におけるエアバッグを示す。
【
図16】
図16は、
図15の図に概ね対応する図であり、事故の更に後続段階を描写し、膨張の後期段階におけるエアバッグを示す、
【
図17】
図17は、
図16の図に概ね対応する図であり、事故の更に後続段階を描写し、膨張の後期段階におけるエアバッグを示す。
【
図18】
図18は、
図17の図に概ね対応する図であり、事故の別の更なる後続段階を描写し、サイクリストに衝撃保護を提供するために、サイドウィンドウとルーフとの間の自動車の角縁部の周りに巻き付けられるか又は折り畳まれるように示される膨張の後期段階におけるエアバッグを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、添付の図面を参照して本発明の態様及び実施形態を説明する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0038】
最初に
図1を参照すると、従来の自動車1の側部が示されており、車両は乗用車の形態をとり、前方斜視図で示されている。自動車1は、フロントガラス2と、ルーフ3と、それぞれサイドウィンドウ6、7を組み込んだフロントサイドドア4及びリアサイドドア5と、リアクォーターライトウィンドウ8とを有する。車両1は、フロントガラス2とそれぞれのフロントサイドウィンドウ6との間で、車両のフロントフェンダ領域から上方に延在する一対のAピラー10(
図1には1つのみが示されている)を更に有する。ルーフレール11は、各Aピラーから後方に延在し、車両の後部に設けられ、後部フェンダ領域から上方に延在するそれぞれのCピラー12の上方で終端する。Bピラー13は、フロントサイドウィンドウ6とリアサイドウィンドウ7との間を上方に延在し、ルーフレール11の中央領域を支持している。
図1から理解されるように、車両1のサイドウィンドウ6、7は、それらの間のルーフレール11に沿って画定された角縁部に沿ってルーフ3に対して外側に鈍角をなす。当業者に理解されるように、Aピラー10、Bピラー13、Cピラー12、及びルーフレール11は全て、車両1の構造部材であり、当技術分野で一般的なように、他の点では見苦しい構造を覆うそれぞれの装飾トリム要素10a、13a、12a、及び11aを備え得る。
【0039】
次に
図2を参照すると、
図1を参照して上述した従来の構造を有する車両の後部からの斜視図が示されている。車両1は、サイクリスト14の形態のVRUによって右側から衝突される様子が示されており、これは、上述したように、自動車とサイクリストとの間のかなり一般的なタイプの道路事故である。
図2は、サイクリストの自転車15の前輪が車両1のフロントサイドドア4に当たった直後の瞬間における事故を示している。理解されるように、自動車1の側面と衝突すると、自転車は急速に減速され、サイクリスト14は慣性により自動車に向かって前方に移動し続ける。自転車15上のサイクリストの従来の乗車位置の高さが故に、サイクリストの頭部16及び胴体17は、自動車の上部領域と強く接触する。このタイプの事故では、
図2に示すように、サイクリストの胴体は、典型的には、車両のサイドウィンドウ6、7、及び/又は、Aピラー10、Bピラー13(
図2に示す)、又はCピラー12などの車両のサイドピラーに衝突し、サイクリストの頭部は、車両のルーフレール11又はルーフ3に衝突する危険性がある。サイドピラー10、12、13及びルーフレール11は、典型的な自動車の重要な構造部品であり、したがって、自動車の他の部品よりも変形しにくく、衝撃エネルギーをほとんど吸収しないことを意味するので、自動車のうちの頭部衝撃に対する危険性の特に高い部品であると考えられる。
【0040】
乗用車の形態の自動車1について特に言及してきたが、同じ考察が他のタイプの自動車に適用されることを理解されたい。例えば、バンの形態の車両は、一般に、乗用車に関して上述したものと同様の特性を有する。しかしながら、バンの場合、少なくともいくつかのサイドウィンドウがサイドパネルに置き換えられることが多い。それにもかかわらず、バンは、サイクリストの頭部16又は胴体17がバンのルーフレール11、サイドピラー、又はサイドパネル/ウィンドウにぶつかる可能性があるため、上述したタイプの事故の場合にサイクリストなどのVRUに重大な傷害を引き起こす可能性が依然として高い。
【0041】
次に
図3を参照すると、本発明の一態様によるエアバッグ20が示されている。エアバッグ20は、最初の膨張していない構成において上から見た平面図で示されている。
図3に示される特定のエアバッグ20は、略正方形の構成を有するが、これは必須であるとは考えられず、エアバッグ20が、例えば、より細長い矩形の構成などの異なる形状を有することができる他の実施形態が想定されることを理解されたい。
【0042】
エアバッグ20は、エアバッグ分野の当業者によって理解されるように、例えば、織布などの好適な可撓性材料の2つの主要層21、22を備える。
図3に示されるように、2つの主要層21、22は、重ね合わされ、周縁シーム23によってそれらの縁部の周りで相互接続され、それによって、2つの層の間に膨張式内部チャンバ24を画定する。当業者によって理解されるように、周縁シーム23は、その周りの位置に取付タブ25を画定してもよく、取付タブ25は、エアバッグ20を自動車1の構造に取り付けるために使用され得る。図示の特定の実施形態では、2つの主要層21、22、ひいてはエアバッグが全体として、略正方形の形状である。これは本質的なことではなく、本発明は、例えば、より細長い矩形のエアバッグなど、異なる形状のエアバッグにおいても実装可能であることを理解されたい。
【0043】
エアバッグの内部チャンバ24内には、複数の内部バッフル26、26’が設けられている。バッフル26、26’は各々、主要層21、22と同じタイプの可撓性材料から形成されてもよく、したがって、織布から形成されてもよいことが想定される。バッフルは2対で配設され、
図3において、第1の対は26で示され、第2の対は26’で示されている。各バッフル26、26’は細長く、それぞれの第1の端部27、27’及び第2の端部28、28’を有する。本発明は、本明細書中、2対のバッフルを備える実施形態を具体的に参照して説明されるが、本発明は、厳密に2対のバッフルの提供に限定されず、バッフルが2対より多く提供され得る他の実施形態が企図されることを理解されたい。明らかになるように、バッフルは、エアバッグに所望の膨張特性を与え、エアバッグが膨張したときにエアバッグにバランス及び安定性を与えるように設けられる。異なる形状のエアバッグでは、これを達成するために、図示されるよりも多くの対のバッフルを必要とし得る。例えば、細長い矩形のエアバッグは、2対を超える数のバッフルを装備し得る。
【0044】
バッフル26、26’は、様々な形状をとることができる。一例が
図4に示されており、
図4は、三角形、より具体的には、二等辺三角形の形状を有するバッフル26を示している。このタイプのバッフルは、バッフルの第1の端部27が尖るように構成され得る。理解されるように、バッフル26は、したがって、その第2の端部28がその第1の端部27よりも幅広くなるようにテーパ状となる。バッフルは、先の尖った第1の端部27とより幅の広い第2の端部28との間に延在する一対の末広がりの側縁29を有する。
【0045】
再び
図1を参照するが、
図5も参照すると、バッフル26の各側縁29は、それぞれのバッフルシーム30を介してエアバッグ20のそれぞれの主要層21、22と相互接続されている。
図5は、このようにして各主要層21、22に接続されたバッフル26を示すが、便宜上、互いに接続されていない主要層21、22を示す。しかしながら、主要層21、22が、
図3に示されるように、周縁シーム23によってそれらの周縁の周りで相互接続されるとき、各バッフル26、26’は、エアバッグの内部チャンバ24を横切って延在し、膨張時に、バッフルの領域におけるエアバッグの局所的深さを制限するテザーとして効果的に作用することを理解されたい。
【0046】
図4に示されるタイプの1つ以上の三角形バッフルを備える実施形態では、そのようなバッフル又は各バッフルは、約250mmの長さLと、そのより幅広い第2の端部28において約100mmの有効幅Wと、を有し得ることが想定される。有効幅とは、
図5に示されるように、バッフル26が2つの主要層21、22の間に相互接続されるときの、バッフルのより幅広い第2の端部28における2つのバッフルシーム30の間の距離を示す。バッフル26を形成するために使用される可撓性材料は、実際にバッフルシーム30の形成を容易にするために、有効幅Wよりも幾分幅広くされ得ることを理解されたい。
【0047】
図6は、本発明の範囲内に入る別の任意選択的なバッフル形状を示す。バッフル26は、四角形状を有してもよく、より具体的には、
図6に示すように等脚台形の形状を有してもよい。この構成では、バッフルの第1の端部27及び第2の端部28は、それぞれの平行な縁部によって画定される。理解されるように、台形バッフルは、その第2の端部28がその第1の端部よりも広くなるようにテーパ状となり、また第1のより狭い端部27と第2のより幅広い端部28との間に延在する一対の末広がりの側縁を有する。以上で検討した三角形バッフルと同様に、台形バッフル26の各側縁29も、それぞれのバッフルシーム30を介してエアバッグ20のそれぞれの主要層21、22と相互接続されることで、バッフル26が、エアバッグの内部チャンバ24を横切って延在し、膨張時にバッフルの領域におけるエアバッグの局所的深さを制限するテザーとして効果的に作用するようにすることを理解されたい。
【0048】
図4に示されるタイプの1つ以上の台形バッフルを備える実施形態では、そのようなバッフル又は各バッフルは、約250mmの長さLと、その第1のより狭い端部27における約40mmの有効幅wと、その第2のより幅広い端部28における約100mmの有効幅Wと、を有し得ることが想定される。しかしながら、幾分幅広くてもよく、例えば、第1のより狭い端部27における有効幅wが約70mmであってもよく、より幅広い第2の端部28における有効幅Wが約130mmであってもよい変形形態が提案される。
【0049】
エアバッグ20は、バッフルの全てが略同一の形状であるように構成されてもよく、したがって、
図4に示されるタイプの2対の三角形バッフルを備えてもよく、又は
図6に示されるタイプの2対の台形バッフルを備えてもよい。代替として、エアバッグは、三角形バッフルと台形バッフルとの混合体を備え得る。バッフル形状の混合を含む好適な実施形態では、各対26、26’のバッフルが互いに略同一であることが好ましいと考えられるが、これは必須であるとは考えられない。
【0050】
再び
図3を参照すると、各対26、26’のバッフルは、それらの第1の端部27、27’が互いに向かって、かつ、内部チャンバ24の中央領域31に向かって方向付けられるように、またそれらの第2の端部28が互いから離れて、かつ、膨張式チャンバ24のそれぞれの角に向かって方向付けられるように、配設される。
図3にも示されているように、2対のバッフルは、各対26、26’の各バッフルが、エアバッグ20の幅方向にわたって、他方の対26’、26のそれぞれのバッフルに対して間隔を空けて対向する関係になるように配設される。
【0051】
より詳細には、
図3は、バッフル26、26’の第1のより狭い端部27、27’が第1の概念的な矩形32の角に配置され、バッフル26、26’の第2のより幅広い端部28、28’が第2の概念的な矩形33の角に配置される様子を示す。2つの概念上の矩形32、33の幾何学的中心は互いに一致し、好ましくは、エアバッグ20の幾何学的中心も全体として一致する。更に、第1の概念上の矩形32は、第2の概念上の矩形33よりも小さく、第2の概念上の矩形33内に位置決めされることに留意されたい。エアバッグ20が正方形構成である場合、
図3に示されるように、第2の概念上の矩形33が正方形であり得ることが提案される。
【0052】
エアバッグ20は、ガス生成器などのインフレータに流体接続するための膨張ガス入口開口34を更に備える。図示の実施形態では、入口開口は、主要層21、22のうちの1つに設けられ、膨張式チャンバ24の中央領域31内に配置され、バッフル26、26’の第1の狭い端部がこの中央領域31に向かって方向付けられる。
【0053】
2つの主要層21、22を相互接続する周縁シーム23、及び各バッフル26、26’を層21、22に接続するバッフルシーム30は、様々に形成され得る。例えば、シーム23、30は、従来の縫合によって形成されることで形成され得ることが想定される。代替として、他の実施形態では、シーム23、30を糊付けするか、又は熱融着技術によって形成できることが提案される。主要層21、22及びバッフルの布が同時に織られて、シームが主要層21、22及びバッフル26、26’の織られた構造の一体部分を形成する織り込まれたテザーを有するいわゆる「ワンピース織り」エアバッグを提供する変形形態も想定される。
【0054】
図7は、
図3の右側から見た(すなわち、
図3の矢印F7によって示される方向から見た)膨張状態のエアバッグ20を示す。したがって、
図7は、エアバッグの後部主要層21の中央に配置された入口開口34を介して内部チャンバ内に受け入れられた大量の膨張ガスを有するエアバッグを示す。上述したように、バッフル26、26’は各々、それらの側縁29がそれぞれの主要層21、22に接続されることによって、膨張時のエアバッグの局所的な深さを制限するように構成される。バッフル26、26’は各々テーパ状であり、第1のより狭い端部27、27’がエアバッグの中央領域31に向かって方向付けられ、第2のより幅広い端部28、28’がエアバッグの角部に向かって方向付けられているので、膨張時のこの局所的な深さ制限の効果は、膨張したエアバッグが角部領域よりも中央領域31において著しく浅いエアバッグ20の形状をもたらすということである。エアバッグの幅方向を横切って対向する対のバッフルが配設されているので、浅い中央領域は、上述した第1の概念的な矩形32の長さに略わたって延在している。この膨張特性により、
図7に示されるように、エアバッグが浅い中央領域付近で曲がるか又は折り畳まれるように、膨張したエアバッグにある程度の曲がりを生じさせるか、又は少なくともある程度の曲がりを許容することができる。以下により詳細に説明されるように、これは、VRUを自動車との側面衝突から保護するために自動車にエアバッグを設置しようとするときに著しい利点を提供し、特に、エアバッグが車両のルーフレール11によって画定される角縁部の周りに都合よく巻き付くか又は折り畳まれることを可能にすることが見出されている。
【0055】
次に
図8を検討すると、エアバッグ20を備えるエアバッグユニットを装備した自動車1の側部領域が示されている。エアバッグ20は、膨張していない状態で示されているが、エアバッグが膨張時に展開することが意図されているところを表す位置で示されている。エアバッグ20は、図示のように、取付タブ25を介して自動車1のルーフレール11に取り付けられ得ることが提案される。理解されるように、この位置では、エアバッグの第1の下部領域35は、フロントサイドウィンドウ6、リアサイドウィンドウ7、及び2つのサイドウィンドウ6、7の間に配置されたBピラーを横切って延在するように配設される。エアバッグの第2の上側領域36は、ルーフ25の少なくとも一部を横切って延在するように配設される。
【0056】
図9は、
図9に示される位置にあるエアバッグ20を示し、可能な取付位置に配置されたガス生成器100の形態のインフレータも示す。この配置において、インフレータ100は、Aピラー10の上部領域に取り付けられ得る位置で示されている。
図9には明確に示されていないが、インフレータ100は、Aピラー10の内部構造に取り付けられ、通常は、見えないようにAピラーの装飾トリム要素10aによって覆われることを理解されたい。更に、いくつかの設置において、インフレータ100を自動車のAピラー10に取り付けることが有利であり得るが、これは必須ではなく、他の設置において、インフレータは、他の場所、例えば、ルーフレール11、Bピラー13、Cピラー12、又は実際に自動車上の任意の他の好都合な位置に取り付けられることに留意されたい。更に、可能であれば、インフレータ100をエアバッグ取付位置に近接した位置で車両1に取り付けることが好ましいと考えられるが、これもまた必須ではなく、実際、全ての車両設置において可能であるわけではない。したがって、いくつかの設置において、インフレータ100は、エアバッグ20から幾分離れた位置で車両1に取り付けられてもよく、その場合、1つ以上の膨張ホースを介してエアバッグ20に流体接続されてもよいことが提案される。
【0057】
当業者によって理解されるように、エアバッグ20は、車両1へのその便利な取付を容易にするために、緊密にパッキングされたパッケージで最初は提供され、膨張時にそこから展開する。
図10、
図11、及び
図12は、初期パッケージを形成するために使用される1つの可能なパッキング方法における連続段階を示す。
図10は、膨張していないエアバッグ20を上から見た図であり、平らに展開され得る。
図11に概略的に示されるように、下部領域35及び上部領域36は、エアバッグ20の中央領域31に向かってそれらのそれぞれの側縁付近に巻かれてもよく、それによってそれぞれのロール37、38を画定し得る。この巻き付けプロセスは、
図12に概略的に示されるように、2つのロール37、28が互いに実質的に当接するまで継続され、その後、ロールは多数の紙テープループ39によって互いに解放可能に固定されることで、
図12に示すような完成した細長いエアバッグパッケージ40を形成し得る。当業者に理解されるように、紙テープループ39は、膨張していないエアバッグをそのパッケージ40内に保持するように構成されているが、エアバッグ20の膨張時に容易に破断してその展開を可能にする。当然ながら、
図12に示される単純な巻き付けプロセスは、単に例として提供されものであり、エアバッグ20は、異なる設置のために異なる方法でパッキングされてもよく、実際に、いくつかの設置においては、巻き付けの代わりに、又はそれに加えて、折り畳みを含んでもよい。
【0058】
次に
図13を検討すると、自動車1の上側領域が示されており、エアバッグパッケージ40が取付位置で自動車1に取り付けられている。便宜上、
図13は、試験シナリオにおいて緩くパッケージ化され、自動車の外部に取り付けられただけのパッケージ40を示すことを理解されたい。最終的な設置において、エアバッグパッケージ40は、より緊密にパッキングされ、装飾トリム要素10a、11a、12a、又は13aの背後で自動車の構造に取り付けられ、装飾トリム要素10a、11a、12a、又は13aは、エアバッグがその取付位置から膨張することを可能にするように、エアバッグの展開の際に車両の構造から破裂又は分離するように構成されることが想定される。当然のことながら、このような最終的な設置において、エアバッグパッケージ40が装飾トリム要素の背後に完全に隠されることが意図される。それにもかかわらず、エアバッグ取付位置の場所は、
図13から明確に理解することができる。
【0059】
後述のとおり、
図13に示されるエアバッグパッケージ40の取付位置は、サイドウィンドウ6、7がルーフ3に対して外側に鈍角をなす角縁部に近接している。実際、
図13に示される取付位置は、車両1のルーフレール11上に設けられ、エアバッグパッケージ40が、(前述の取付タブ25を介して)ルーフレールに直接取り付けられるようにする。この構成では、細長いエアバッグパッケージ40が、自動車のフロントサイドウィンドウ6及びリアサイドウィンドウ7、並びにBピラー13の上方に延在することが見て取れる。他の設置では、エアバッグパッケージ40は、問題の特定のタイプの車両の特性に応じて、僅かに異なる取付位置を有し得る。例えば、いくつかの車両において、取付位置は、例えば、車両1のAピラー6、Bピラー13、又はCピラー12上の空洞又は空間内に配置され得ることが想定される。
【0060】
自動車1には、少なくとも1つの側面衝撃センサ(図示せず)が設けられることが提案され、センサは、側面衝撃の発生又は予想される発生を検出し、上記検出に応じてエアバッグユニットの一部を形成するコントローラに信号を送信するように構成される。センサからの信号を受信すると、コントローラは、例えば、信号が所定の閾値を超えていることを確認するために、又はおそらくは1つのセンサからの信号を別のセンサからの信号と比較するために、検証チェックを実行し、作動コマンドを発行してインフレータを作動させ、それによってエアバッグ20を膨張及び展開させるように構成され得る。
【0061】
図14は、
図2を参照して以上に図示及び検討したものと同様のシナリオで、サイクリスト15が側面から衝突した
図13に示す車両1を示す。
図14は、事故の初期段階を示しており、サイクリストの自転車の前輪が車両1の後部ドア5に最初に接触している。見て取れるとおり、事故の初期段階であっても、サイクリストの身体は既に自転車に対して前方に、かつ、自動車1の上側領域に向かって移動しており、サイクリストの頭部16は、ルーフレール11に向かって移動し、パッキングされたエアバッグ20はルーフレール11に跨って延在している。
【0062】
図15は、側面衝突事故の後続段階を示しており、インフレータから大量の膨張ガスを受けて膨張する展開初期段階におけるエアバッグ20を示している。エアバッグ20が最初に膨張すると、図示のように、紙テープ39と、エアバッグパッケージ40上に最初に設けられた任意の装飾トリム要素とが破断し、その結果、エアバッグ20が保護クッション内に膨張し始める。図示のように、展開のこの初期段階において、エアバッグ20は、エアバッグパッケージ40が取り付けられているルーフレール11にわたって膨張したクッションを迅速に形成し始め、それによって、
図15に示されているように、事故のこの段階において部分的に膨張したエアバッグと既に最初に接触している乗員の頭部16に対して非常に早期の保護を提供する。
【0063】
図16は、側面衝突事故の更なる後期段階を示しており、エアバッグ20が略完全に膨張した後期展開段階におけるエアバッグ20を示している。この展開構成では、エアバッグ20の第1の下部領域35は、車両1のサイドウィンドウ6、7及びBピラー13を概ね横切って延在し、第2の上部領域36は、ルーフレール11によって画定されるルーフ3の角縁部から離れて延在することが見て取れる。エアバッグの中央領域31は、ルーフレール11上に延在する。車両の側部との衝突による慣性下でのサイクリストの身体の連続的な前方への移動は、サイクリストの頭部16がルーフレール11に向かって移動し続けることを意味し、ここで、サイクリストの頭部16は、エアバッグ20の中央領域31によって捕捉されて緩衝され、サイクリストの胴体は、エアバッグ20の下部領域35によって捕捉されてサイドウィンドウ6、7及びBピラー13との衝突から緩衝される。
【0064】
図17及び
図18は、側面衝突事故における連続的な、更に後続の段階を示す。特にこれらの図から明らかであるとおり、エアバッグ20の中央領域31は、サイクリストの頭部16をルーフレール11との衝突から効果的に保護し、エアバッグ20の下部領域35は、サイクリストの胴体17をサイドウィンドウ6、7との衝突から効果的に保護する。しかしながら、サイクリストの頭部16及び胴体17がエアバッグとの接触により減速されると、サイクリストの身体が車両の側部に僅かに乗り上げる傾向があることがあり、これは、サイクリストの頭部16が特にルーフレール11上を移動し得ることを意味する。エアバッグ20の上述したバッフル構成と、エアバッグ20が膨張時に中央領域31付近で曲がるか又は折り畳まれることを可能にする態様とにより、エアバッグ20の上部領域36は、直立位置から離れるように偏向することが可能になり、車両のルーフ3を幾分横切って延在し、それに連れてサイクリストの頭部16及び胴体17からより多くの衝撃エネルギーを吸収し、特に車両のルーフ3との起こり得る接触から乗員の頭部16を更に保護する。このようにして、エアバッグは、サイクリストによる衝撃時にルーフ3とサイドウィンドウ6、7との間の角縁部の周りに巻き付くか又は折り畳まれるように効果的に構成され、それによって、少なくともサイドウィンドウ6、7の上部領域、Bピラー13の上部領域、並びにルーフレール11及びルーフ3の隣接領域にわたって効果的な保護を保証する。
【0065】
特定の形態であるいは開示された機能を行うための手段又は開示された結果を適宜得るための方法若しくは工程に関して表された、上記説明又は以下の特許請求の範囲又は添付の図面に開示された特徴は、別個に又はかかる特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用されてよい。
【0066】
本発明は、上述の例示的な実施形態と関連して説明されてきたが、本開示が与えられた場合、当業者には多くの同等な変更及び変形が明らかであろう。したがって、上に示された本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと見なされる。記載された実施形態に対する様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得る。
【0067】
疑義を回避するために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも束縛されることを望まない。
【0068】
本明細書で使用される任意のセクション見出しは、構成上の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0069】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「有する(have)」、「備える(comprise)」及び「含む(include)」という語、並びに「有する(having)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」及び「含む(including)」などの変形例は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外することを意味しないと理解される。
【0070】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」が、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数のものを含むことに留意しなければならない。範囲は、本明細書において、「約(about)」1つの特定の値から、かつ/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、かつ/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。数値に関する「約」という用語は任意選択的であり、例えば、+/-10%を意味する。
【0071】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という用語は、本明細書において、いくつかの状況下で特定の利益を提供し得る本発明の実施形態を指すために使用される。しかしながら、他の実施形態も、同じ又は異なる状況下で好ましい場合があることを理解されたい。したがって、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味又は暗示するものではなく、本開示の範囲から、又は特許請求の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【国際調査報告】