(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-15
(54)【発明の名称】SPR720のヒト有効用量及び投与スケジュール
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20241007BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241007BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20241007BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241007BHJP
A61K 31/133 20060101ALI20241007BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241007BHJP
A61K 31/438 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61K31/661
A61P31/04
A61P31/06
A61K31/7048
A61K31/133
A61K31/496
A61K31/438
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525030
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 US2022047865
(87)【国際公開番号】W WO2023076369
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519213931
【氏名又は名称】スペロ セラピューティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タリー アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】メルニック デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB25
4C086DA34
4C086EA13
4C086MA01
4C086MA02
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4C086NA05
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4C086ZB35
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(57)【要約】
本開示は、肺結核性及び非結核性マイコバクテリア感染症を含む、NTM-PD及び他の細菌感染症を治療する方法を提供する。臨床試験は、2000mgの1日経口投与量までのSPR720の安全性を確立し、1日1回の経口投与が活性剤SPR719の有効な血漿レベルを提供するのに十分であることを示した。臨床試験はまた、SPR720に有意な食物効果がなく、薬物が摂食状態又は絶食状態にある患者に与えられ得ることを示している。臨床試験はまた、SPR720が高齢患者に安全に投与され得ることを確立している。本開示は、患者における細菌感染症を治療する方法であって、SPR720、又はその薬学的に許容される塩の1日の経口用量を投与することを含み、経口用量が、100mgのSPR720~1500mgのSPR720を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における細菌感染症を治療する方法であって、前記患者に、1日1回又は1日2回、100mgのSPR720~1500mgのSPR720を含む経口投与量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が、成人ヒト患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌感染症が、マイコバクテリア感染症であり、SPR720又は薬学的に許容される賦形剤を含む経口投与量が、前記患者に1日1回、投与され、前記経口投与量が、500mgのSPR720又は1000mgのSPR720を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌感染症が、結核性感染症である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌感染症が、非結核性マイコバクテリア感染症である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非結核性マイコバクテリア感染症が、末期の非結核性マイコバクテリア肺疾患(NTM-PD)又は治療難治性NTM-PDである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非結核性マイコバクテリア感染症が、マイコバクテリウムアビウム複合体(MAC)感染症である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
SPR720又はその薬学的に許容される塩が、7~28日間、1日1回、経口投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SPR720又はその薬学的に許容される塩が、第1の抗菌剤であり、クラリスロマイシン、エタンブトール塩酸塩、アジスロマイシン、リファンピン、及びリファブチンから選択される1つ以上の追加の抗菌剤と組み合わせて投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
追加の薬剤の1日用量が、500mg~1000mgのクラリスロマイシン、10mg/kg~20mg/kgのエタンブトール塩酸塩、250mg~500mg、100mg~1000mのリファンピン、又は100mg~500mgのリファブチンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
非結核性マイコバクテリア感染症によって引き起こされるか又は悪化する患者における状態を治療する方法であって、前記患者に、SPR720又は薬学的に許容される塩を含む1日1回の経口投与量を投与することを含み、前記患者が、成人ヒト患者であり、前記経口投与量が、500mgのSPR720又は1000mgのSPR720を含有し、前記1日1回の経口投与量が、7日間~28日間投与される、方法。
【請求項12】
患者におけるNTM感染症を治療する方法であって、
(i)SPR720又はその薬学的に許容される塩の1日1回の経口投与量であって、500mg~1000mgのSPR720を含むSPR720の前記経口投与量、
(ii)クラリスロマイシン又はその薬学的に許容される塩の1日1回の経口投与量であって、500mg~1000gのクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンの前記経口投与量、及び
(iii)約15mg/kgのエタンブトールを含むエタンブトールHClの1日1回の経口投与量を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、SPR720のヒト有効用量及び投与スケジュールに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月26日に出願された米国仮出願第63/272,052号に対して優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
非結核性マイコバクテリア肺疾患(NTM-PD)は、環境源からのマイコバクテリアの吸入によって生じる慢性進行性疾患である。世界中の多数のNTM種の中で、NTM-PDは、主に、M.avium、M.intracellulare、M.chimaera及びいくつかの亜種;M.abscessus及びM.kansasiiを含むマイコバクテリウムアビウム複合体(MAC)によって引き起こされる。全身性経口抗菌剤は、肺非結核性マイコバクテリア感染症の治療には承認されていない。現在の標準治療薬に対する耐性率の増加、忍容性の問題、及び臨床再発率の高さは、NTM-PD及び肺結核を治療するための新しい抗菌薬の緊急の必要性を浮き彫りにする。SPR719のリン酸プロドラッグであるSPR720は、新規のアミノベンズイミダゾール細菌DNAジャイレース(GyrB)阻害剤である。SPR719は、中空繊維(HF)感染モデルにおいて、インビトロ及びインビボでの臨床的に関連するマイコバクテリアに対する広範囲の活性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1日単回投与で安全かつ有効な投与に修正可能な抗菌剤が特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、肺結核を含む、NTM-PD及び他の細菌感染症を治療する方法を提供する。臨床試験は、2000mgの1日経口投与量までのSPR720の安全性を確立し、1日1回の経口投与が活性剤SPR719の有効な血漿レベルを提供するのに十分であることを確立している。臨床試験はまた、SPR720に有意な食物効果がなく、薬物が摂食状態又は絶食状態にある患者に与えられ得ることを示している。臨床試験はまた、SPR720が高齢患者に安全に投与され得ることを確立している。本開示は、患者における細菌感染症を治療する方法であって、SPR720、又はその薬学的に許容される塩の1日の経口用量を投与することを含み、経口用量が、100mgのSPR720~1500mgのSPR720を含む、方法を提供する。一実施形態では、患者は、成人ヒト患者である。一実施形態では、1日の経口SPR720は、500mgのSPR720~1000mgのSPR720、又は500mgのSPR720、又は1000mgのSPR720を含む。SPR720は、摂食状態又は絶食状態にある患者に投与することができる。本開示は、結核性感染症及び非結核性マイコバクテリア感染症を治療する方法を提供する。非結核性マイコバクテリア感染症は、非結核性マイコバクテリア肺疾患(NTM-PD)又は治療難治性NTM-PDであり得る。非結核性マイコバクテリア感染症は、マイコバクテリウムアビウム複合体(MAC)感染症によるものであり得る。SPR720又はその薬学的に許容される塩は、7日間~28日間患者に投与することができる。一実施形態では、500mg又は1000mgのSPR720の1日用量を、この期間、1日単回経口用量として患者に投与する。SPR720又はその薬学的に許容される塩は、単独で、又は追加の抗菌剤と組み合わせて投与することができる。追加の抗菌剤は、例えば、クラリスロマイシン、エタンブトール塩酸塩、アジスロマイシン、リファンピン、及びリファブチンであり得る。
【0006】
本開示は、非結核性マイコバクテリア感染症によって引き起こされるか又は悪化する患者における状態を治療する方法であって、患者に、SPR720又はその薬学的に許容される塩を含む1日1回の経口投与量を投与することを含み、患者が、成人ヒト患者であり、経口投与量が、500mgのSPR720又は1000mgのSPR720を含有し、1日1回の経口投与量が、7日間~28日間投与される、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】単回漸増用量(SAD)及び複数回漸増用量(MAD)試験の試験デザインを示す図である。
【
図2A】SPR720投与後の幾何平均血漿SPR719濃度-時間曲線を示す図である。
図2Aは、摂食及び絶食状態で投与されるSPR720の単回漸増用量(SAD)である。
【
図2B】SPR720投与後の幾何平均血漿SPR719濃度-時間曲線を示す図である。
図2Bは、摂食状態及び絶食状態で投与されるSPR720の1000mg用量である。
【
図3A】7及び14日間にわたるSPR720の複数回漸増用量投与後の幾何平均血漿SPR719濃度-時間曲線を示す図である。
図3Aは、1日目である。
【
図3B】7及び14日間にわたるSPR720の複数回漸増用量投与後の幾何平均血漿SPR719濃度-時間曲線を示す図である。
図3Bは、7日目である。
【
図3C】7及び14日間にわたるSPR720の複数回漸増用量投与後の幾何平均血漿SPR719濃度-時間曲線を示す図である。
図3Cは、14日目である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[用語]
本開示を詳細に説明する前に、以下の用語が有用であり得る。別段の指定がない限り、全ての用語は、患者における細菌感染症を治療する薬学的製剤又は方法の分野で受け入れられる、それらの通常の意味を考慮している。
【0009】
値の範囲の言及は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。全ての範囲の端点は、範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、好適な順序で実施され得る。任意の及び全ての例の使用、又は例を示す用語(例えば、「など」)は、例示のみを意図しており、別段の特許請求されない限り、本発明の範囲の限定を提示するものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠なものとして、特許請求されない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0010】
「a」及び「an」という用語は、数量の制限を示すのではなく、むしろ、参照される項目のうちの少なくとも1つの存在を示す。
【0011】
「約」という用語は、「おおよそ」という用語と同義に使用される。当業者が理解するように、「約」の正確な境界は、組成物の成分に依存する。例示的に、「約」という用語の使用は、引用される値のわずかに外側の値、すなわち、プラス又はマイナス0.1%~10%であり、有効で安全でもある値が、その値に含まれることを示す。したがって、引用範囲のわずかに外れた組成物も、本請求項の範囲に包含される。
【0012】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、非限定的である。他の非列挙要素は、これらの移行フレーズによって特許請求される実施形態に存在し得る。「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」が移行句として使用される場合、他の要素が含まれてもよく、依然として特許請求の範囲内の実施形態を形成する。オープンエンド型移行句「含む(comprising)」は、中間の移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」及びクローズドエンド型移行句「からなる(consisting of)」を包含する。
【0013】
塩形態であり得るSPR720の重量が与えられる場合、値は、SPR720塩の重量ではなく、SPR720の量を指す。文脈によって明確に禁忌とされていない限り、「SPR720」は、遊離リン酸塩形態、又は薬学的に許容される塩若しくは水和物としてのSPR720を含み、非晶質固体又は結晶形態であり得る。
【0014】
SPR719(別名VXc-486、CAS登録番号1384984-18-2)は、以下の構造を有する、ジャイレースB/ParE阻害活性を有する強力な抗菌剤である。
【化1】
(SPR719)
【0015】
SPR720(CAS登録番号1384984-31-9)、一般名フォブレポダシンは、以下の構造を有するSPR719の経口活性リン酸塩プロドラッグである。
【化2】
(SPR720)
【0016】
[薬学的組成物]
「薬学的組成物」は、SPR720などの少なくとも1つの活性剤、及び担体などの少なくとも1つの他の物質を含む組成物である。薬学的組成物は、ヒト又は非ヒト薬物のための米国食品医薬品局のGMP(適正製造規範)基準を満たす。本開示の薬学的組成物/組み合わせに適用される「担体」という用語は、活性化合物が提供される希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。
【0017】
本開示の薬学的組成物は、全身性SPR719を患者に送達することができる任意の薬学的に許容される製剤を含む。例としては、経口、経鼻、経皮、舌下、直腸、静脈内(ボーラス及び注入の両方)、吸入可能、及び注射(腹腔内、皮下、筋肉内、又は非経口)製剤が挙げられる。経口製剤が特に想定される。経口製剤は、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、液体、シロップ、乳濁液、又は液滴などの投与単位であってもよい。
【0018】
SPR720を含有する剤形は、選択された投与経路によって治療効果を提供するのに十分な量を含有する。組成物は、約2,000mg~約50mg(好ましくは、約1,000mg~約100mg)のSPR720又はその塩形態(重量は遊離塩基形態について与えられる)を含有し得、選択された投与様式に好適な任意の形態に構成され得る。剤形は、遅延放出又は徐放を含む、即時放出又は制御放出のために製剤化され得る。SPR720剤形は、唯一の活性剤としてSPR719を含むことができ、又は別の抗菌剤などの1つ以上の追加の活性剤と組み合わせて製剤化することができる。好適な追加の活性剤としては、マイコバクテリア感染症を治療するための標準治療薬、例えば、クラリスロマイシン(例えば、1日用量500mg~1000mg)、エタンブトール塩酸塩(例えば、1日用量約15mg/kg)、アジスロマイシン(例えば、1日用量250mg~500mg)、ストレプトマイシン(1日経口又はIM2g以下)、リファンピン(例えば、1日用量100mg~1000mg又は1日用量600mg)、リファブチン(例えば、1日用量100mg~500mg又は1日用量300mg)、イソニアジド(1日用量100mg~1000mg、又は1日用量200mg、300mg、400mg、500mg)、又はピラジンアミド(1日用量100mg~1000mg、又は1日用量200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、又は700mg)、エチオンアミド(1日用量100mg~500mg、又は1日用量200mg、250mg、300mg、又は350mg)、クロファジミン、吸入アミカシン、又はベダキリンが挙げられる。
【0019】
[治療の方法]
本開示は、結核及び非結核性マイコバクテリア感染症などの細菌感染症を治療する方法を含む。SPR720/SPR719で治療され得る非結核性マイコバクテリウム感染症としては、M.avium、M.intracellulare、M.chimaera及びいくつかの亜種を含む、マイコバクテリウムアビウム複合体(MAC)感染症が挙げられる。SPR720/SPR719で治療され得る他の非結核性マイコバクテリア感染症には、M.kansasii、M.simiae、及びM.marinumなどのフォトクロモゲン、M.scrofulaceum、M.parascrofulaceum、及びM.szulgaiなどのスコトクロモゲン、MAC、並びにM.ulceran、M.xenopi、M.malmoense、M.terrae、M.haeomphilium、及びM.genavenseを含む非クロモゲン群、並びにM.chelonae、M.chelonae-abscessus、M.fortuitum、及びM.peregrinumなどの急速成長している非クロモゲン種、並びにM.smegmatis、M.paratuberculosis、M.marinum、M.simiae、及びM.flavescensなどの他の非結核性マイコバクテリア生物が含まれる。
【0020】
NTMは、いくつかの状態の原因となる。本開示は、NTM感染症によって引き起こされる状態を治療する方法を含み、SPR720又はその塩(SPR720は唯一の活性剤であるか、又は別の活性剤と組み合わせて投与される)を、そのような状態を有する患者に投与することを含む。本開示はまた、NTM感染症によって悪化する状態を治療する方法を含む。NTM感染に起因する、又はNTM感染によって悪化する可能性のある状態としては、呼吸器感染症、肺感染症、ヨーネ病(反芻動物)、クローン病、骨髄炎、腹膜炎、腎盂腎炎、頸部リンパ節炎、免疫不全患者における播種性感染症、肺疾患、播種性NTM感染症、肺外NTM、及び難治性NTM感染症が挙げられる。
【0021】
「治療有効量の薬学的組成物」は、対象に投与された場合、細菌感染症に関連する罹患率及び死亡率を低下させる、及び/又は治癒をもたらすなどの治療的利益を提供するために有効な量である。ある特定の状況では、細菌感染症に罹患している対象は、感染症の症状を示さない場合がある。したがって、化合物の治療有効量はまた、対象の血液、血清、痰、若しくは他の体液、又は組織中の検出可能なレベルの微生物を有意に減少させるのに十分な量である。SPR720の治療有効量はまた、細菌感染症又はマイコバクテリア感染症の臨床症状を軽減するのに十分な量であり得る。
【0022】
NTM感染症を有する個体は、それらの臨床的提示においてかなりのばらつきを有する。診断は、臨床症状から、又は呼吸液、痰、若しくは粘液の培養を介して行うことができる。マイコバクテリア感染症の症状には、慢性咳、疲労、頻繁な喉の清浄、息切れ(呼吸困難)、過剰な粘液(痰)産生、発熱、寝汗、食欲不振、意図しない体重減少、喘鳴、及び胸痛が含まれる。本開示は、ある特定の実施形態では、予防的処置及び治療的処置において本開示の化合物を使用することも含む。SPR720の治療有効量は、NTM感染症の1つ以上の臨床症状を緩和又は軽減するのに十分な経口投与量を含む。
【0023】
予防的又は予防的治療の文脈では、「治療有効量」は、細菌感染症の発生率又は細菌感染症に関連する罹患率及び死亡率を有意に減少させるのに十分な量である。例えば、予防的治療は、対象が嚢胞性線維症又は人工呼吸器患者などの細菌感染症のリスクが高いことが知られているときに投与されてもよい。有意な減少は、p<0.05のStudent T-testなどの統計的有意性の標準的なパラメトリック検定において統計的に有意な任意の検出可能な陰性変化である。
【0024】
感染性治療の更なる指標は、SPR720治療前の患者由来の痰におけるCFU/mLの数と比較して、治療後の痰におけるより少ないコロニー形成単位(CFU)/mLを含む。
【0025】
「患者」は、SPR720による治療から利益を得ることができる任意の個人である。患者には、成人ヒト患者、小児及び乳児の患者が含まれる。患者は、ヒト及び非ヒト患者を含む。例えば、患者は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギなどの家畜動物、又はイヌ若しくはネコなどの伴侶動物であり得る。SPR720の投与量は、別途示されない限り、成人ヒト患者に与えられる。
【0026】
SPR720は、治療有効量のSPR720を患者に提供する任意の投与スケジュールで投与されてもよい。例えば、SPR720は、1日1回、2回、3回、又は4回投与することができる。1つの実施形態は、1日以上の期間にわたって1日1回の経口投与を含む。例えば、SPR720は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間、1日1回若しくは1日2回、又は1回投与することができる。SPR720は、1日1回又は1日2回、又は1ヶ月、2ヶ月、又は3ヶ月の期間にわたって1日1回経口投与され得る。一実施形態では、SPR720は、7日間、14日間、若しくは28日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、又は最長12ヶ月間、1日1回投与される。
【0027】
SPR720は、患者に治療有効なSPR719の血漿レベルを提供することができる任意の許容される経路を介して投与することができる。例としては、経口、経鼻、経皮、舌下、直腸、静脈内(ボーラス及び注入の両方)、吸入可能、並びに注射(腹腔内、皮下、筋肉内、又は非経口)投与が挙げられる。経口投与が特に想定される。SPR720の経口投与は、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、液体、シロップ、乳濁液、又は液滴などの任意の薬学的に許容される経口剤形によって行うことができる。
【0028】
SPR720は、安全かつ治療有効量のSPR719を患者に提供することができる任意の量で投与することができる。例えば、約2,000mg~約50mg(好ましくは、約1,000mg~約100mg)のSPR720又はその塩形態(遊離塩基形態には重量が与えられる)の1日用量を、成人ヒト患者に投与することができる。例えば、100mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、750mg、800mg、900mg、1000、1100mg、1200mg、又は1250mgのSPR720を毎日投与することができる。
【0029】
SPR720又はその薬学的に許容される塩は、唯一の活性剤としてSPR719を提供するために単独で投与することができるか、又はSPR720は、追加の抗菌剤などの1つ以上の追加の活性剤と組み合わせて投与することができる。成人ヒト患者について、500mg又は1000mgのSPR720の経口用量を7~28日間投与する治療方法は、本開示の一実施形態として含まれる。小児患者もSPR720で治療することができる。小児用量は、小児患者のより低い体重を考慮するために、成人用量と比較して減少させることができる。
【0030】
NTM感染症を治療するための唯一の承認された方法、アミカシンリポソーム吸入懸濁液がある。SPR720は、アミカシンリポソーム吸入懸濁液と組み合わせて投与され得る。アミカシンリポソーム吸入懸濁液で1ヶ月以上、例えば6週間、6ヶ月、又は12ヶ月、改善なしに治療された患者、又は症状が適切に対処されていない患者に、SPR720を投与することができる。治療方法は、SPR720を、1つ又は2つの追加の活性剤と組み合わせて、最長18ヶ月の期間投与することを含む。好適な追加の活性剤としては、マイコバクテリア感染症を治療するための標準治療薬、例えば、クラリスロマイシン(例えば、1日用量500mg~1000mg)、エタンブトール塩酸塩(例えば、1日用量約15mg/kg)、アジスロマイシン(例えば、1日用量250mg~500mg)、ストレプトマイシン(1日経口又はIM2g以下)、リファンピン(例えば、1日用量100mg~1000mg又は1日用量600mg)、リファブチン(例えば、1日用量100mg~500mg又は1日用量300mg)、イソニアジド(1日用量100mg~1000mg、又は1日用量200mg、300mg、400mg、500mg)、又はピラジンアミド(1日用量100mg~1000mg、又は1日用量200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、又は700mg)、エチオンアミド(1日用量100mg~500mg、又は1日用量200mg、250mg、300mg、又は350mg)、クロファジミン、吸入アミカシン、又はベダキリンが挙げられる。
【0031】
SPR720は、CYP3Aの強力な阻害剤又は誘導剤と併用して投与しないことが推奨される。治療の方法は、SPR720を強力なCYP3A阻害剤又は誘導剤と併用して投与すべきではないことを助言すること、及び患者が現在強力なCYP3A誘導剤又は阻害剤を服用している場合、SPR720を投与する前に、患者を異なる薬物に切り替えること、強力なCYP3A阻害剤又は誘導剤を一時的に中止すること、又はSPR720と併用して強力なCYP3A阻害剤又は誘導剤薬を投与すること及び患者のSPR719血漿レベルを毎週モニタリングすること、並びに患者のSPR719の血漿レベルが100ng/nl~10000ng/nlに留まるように、SPR720の用量を減少又は増加させることを含む。
【実施例】
【0032】
<実施例1.単回漸増用量試験における摂食及び絶食状態で投与されるSPR720/SPR719の薬物動態>
以下の試験を、健康なボランティアにおいて実施し、SPR720/SPR719の安全性、忍容性、及び薬物動態を評価した。この試験は、7つのSADコホートを含み、そのうちの1つは食物効果コホートであった。SPR720又はプラセボ(n=8/コホート、3:1無作為化)を、絶食又は摂食状態で100~2000mgの用量で対象に投与した。摂食状態でSPR720を投与したコホートに、1000mg又は500mg(健康な高齢者コホート)SPR720を投与した。試験デザインの概略図を
図1に示す。
【0033】
SADコホートにわたって、血漿SPR719C
max及びAUC
0-24の用量比例及び用量比例を上回る増加が観察された。高脂肪食の投与後、絶食状態での血漿曝露と比較して、血漿曝露がわずかに減少する。この減少は、非臨床的に有意であった。SPR719のT
maxの中央値は、コホート全体で2.75時間~8時間の範囲であり、平均除去半減期(t
1/2)は、2.92~4.5時間の範囲であった。SPR719(0~24時間)の尿中排泄は低かった(0.5%)。絶食及び高齢者摂食コホートの平均血漿濃度/時間曲線を
図1Aに提供し、各々1000mgのSPR720を投与した摂食及び絶食コホートの平均血漿濃度/時間曲線を
図1Bに提供する。全てのSADコホートの治療有害事象を表1に列挙する。
【0034】
【0035】
42名の対象のうち、18名(42.9%)が合計35名のTEAEを報告し、全てが軽度又は中等度であった。1500mg及び2000mgコホートでより多くの対象がTEAEを報告した(それぞれ66.7%及び100%)
【0036】
<実施例2.複数回漸増用量試験における摂食及び絶食状態で投与されるSPR720/SPR719の薬物動態>
複数回漸増用量試験は、8人の対象の5つのコホートを利用した。3つのコホートに、7日間、絶食状態で500mg~1500mgの合計1日用量を投与した。2つのコホートに、摂食状態で14日間、500mg又は1000mgの合計1日用量を投与した。安全性も、本試験を通してモニタリングした。MADコホートにわたって、SPR719の両方の血漿C
max及びAUCは、SPR720の経口用量の増加に伴って、用量比例を超える態様で増加した。健康なヒト対象におけるSPR720の反復経口投与は、1日目と比較して、7日目のSPR719の血漿曝露の減少(約40%)をもたらし、APR719の除去経路の誘導を示唆する。血漿AUC0
0-24は、7日目及び14日目で類似しており、除去の誘導が7日目~14日目までに安定していたことを示した。この結論は、7日目までに安定したSPR719トラフ濃度によって更に支持された(データ図示せず)。平均血漿濃度/時間曲線を、1日目(
図3A)、7日目(
図3B)、及び14日目(
図3C)のMADコホートについて示す。全てのSADコホートの治療有害事象を表2に列挙する。
【0037】
【0038】
SAD又はMAD試験のいずれにおいても、重篤有害事象は報告されなかった。SPR720を投与された30名の対象のうち、18名(60.0%)が合計101のTEAEを報告した。全てが軽度又は中程度の重症度であった。より多くの対象が、1000mg又は1500mg(750mg q12h)コホート(それぞれ50.0%及び66.7%)でTEAEを報告した。MADコホート3(750mg q12h)の1人の対象は、膵臓酵素の増加のために試験薬を中止した。これは無症候性であり、介入治療なしで解決した。これは、投与期間を通してSPR719のトラフ血漿濃度が1000ng/mLを超えて持続的に高いことに起因し得る。ALTのわずかな上昇(<3×ULN)は、無症状で可逆的であった投与の14日間にわたって観察された。Hyの法則の症例はなかった。SPR720は、最長14日間にわたって最大1000mgの反復1日の経口用量で十分に忍容性があった。SADコホートにおいて、Cmax及びAUCは、それぞれ、用量比例的に、及び用量比例を超える態様で増加した。MADコホートでは、曝露は1日目と7日目との間で減少したが、7日目及び14日目では類似し、SPR719の尿中排泄は最小であった。HFの薬力学的データとともに、SPR720のヒトの安全性及びPKデータは、予測される治療的曝露が、1日1回の良好な忍容性の用量で達成され得ることを示唆する。
【国際調査報告】