(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】半導体処理チャンバで使用するためのYAGを含むUV活性化赤色セラミック体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/44 20060101AFI20241008BHJP
C04B 41/80 20060101ALI20241008BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241008BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241008BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B41/80 A
C04B41/80 Z
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
H01L21/68 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509000
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022075897
(87)【国際公開番号】W WO2023039357
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン,マシュー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,スティーブン ロジャー
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB29
5F045AA08
5F045EF05
5F045EF11
5F045EM05
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA37
5F131CA04
5F131CA12
5F131CA68
5F131EA03
5F131EA05
5F131EB11
5F131EB25
5F131EB56
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【解決手段】 本明細書では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体であって、少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面が、5pmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5pmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12の「a」値を示し、少なくとも1つの層が500pm~2cmの厚さを有し、L*及び「a」の値が少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体が開示される。また、それを作製する方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体であって、前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、前記少なくとも1つの表面が5μmを超えない細孔径を有する細孔を含み、前記少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、前記少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、前記L*及びa*の値が前記少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの層が、3~6のb*値を有する、請求項1に記載の焼結セラミック体。
【請求項3】
前記b*値が、前記少なくとも1つの表面にわたって15%以下で変動する、請求項2に記載の焼結セラミック体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの層が、15~100ppmのジルコニウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの層の厚さが500μm~1cmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの層の厚さが500μm~5mmである、請求項4に記載の焼結セラミック体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの表面にわたって、前記L*の値が3%以下で変動し、前記a*の値が9%以下で変動する、請求項1~6のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項8】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、全ての細孔の少なくとも97%以上について1.75μmを超えない細孔径を有する細孔を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、全ての細孔の少なくとも99%以上について2μmを超えない最大細孔径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項10】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、0.1~3%の体積空隙率を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項11】
前記体積空隙率が0.1~2%である、請求項11に記載の焼結セラミック体。
【請求項12】
前記体積空隙率が0.1~0.5%である、請求項11に記載の焼結セラミック体。
【請求項13】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、存在する任意のAl
2O
3又はジルコニウムを除いて93~99.8体積%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項14】
多結晶セラミック体が、ICPMSによって決定して50ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項15】
前記細孔が表面積の0.2%未満を占める、請求項1~14のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項16】
前記細孔が表面積の0.10%未満を占める、請求項1~15のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項17】
100mm~625mmの最大寸法を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項18】
200mm~625mmの最大寸法を有する、請求項17に記載の焼結セラミック体。
【請求項19】
前記最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項17又は18に記載の焼結セラミック体。
【請求項20】
前記最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、請求項19に記載の焼結セラミック体。
【請求項21】
前記少なくとも1つの層が、Al
2O
3を最大0.5%含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項22】
焼結セラミック体を調製するための方法であって、
a.イットリア粉末、アルミナ粉末、及び15~500ppmのジルコニウムを供給するジルコニウム含有粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、
b.熱を加えて前記第1の粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持して焼成を行うことにより、前記第1の粉末混合物を焼成して、第1の焼成粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記第1の焼成粉末混合物を配置して、前記第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.焼結温度に加熱している間、前記第1の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層に圧力を加え、焼結を行って、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む前記少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体を形成する工程と、
e.前記焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
f.前記焼結セラミック体を1~400分の時間にわたってUV放射線に曝露する工程と、
を含み、
前記第1の焼成粉末混合物が150ppm以下の総不純物含有量を有し、工程a)の前記イットリア粉末及び前記アルミナ粉末がそれぞれ、ASTM C1274に従って測定して約18m
2/g以下の比表面積を有し、焼結セラミック層が、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、前記少なくとも1つの表面が、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、前記細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、前記少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、前記少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、前記L*及びa*の値が前記少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、
焼結セラミック体を調製するための方法。
【請求項23】
以下の工程:
g.熱を加えて前記焼結セラミック体の温度を上昇させて、アニーリング温度に到達させ、アニーリングを行うことによって、前記焼結セラミック体をアニーリングする工程と、
h.アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
i.任意選択で、前記焼結セラミック体又は前記アニーリングされた焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバ内の誘電体窓、RF窓、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、静電ウエハチャック(ESC)、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングの形状の焼結セラミック構成要素を作製する工程と、
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを備え、前記第1及び第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1及び第2のパンチの少なくとも一方が前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1及び第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1及び第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記焼結温度が1000~1500℃である、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記焼結温度が1000~1300℃である、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記焼結温度に加熱している間、5~59MPaの圧力を前記焼成粉末混合物に加える、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記圧力が5~40MPaである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記圧力が5~20MPaである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記焼結温度に加熱している間、50MPa未満の圧力を前記焼成粉末混合物に加える、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記焼結セラミック体が、100mm~625mmの最大寸法を有する、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記焼結セラミック体が、200mm~625mmの最大寸法を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記焼結セラミック体が、前記最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記焼結セラミック体が、前記最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの表面が3~6のb*値を示す、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記b*値が、前記少なくとも1つの表面にわたって15%以下で変動する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記多結晶セラミック体が、ICPMSによって決定して5ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する、請求項14に記載の焼結セラミック体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐食性焼結セラミック体及びそれから形成された構成要素、当該セラミックの製造方法、並びに半導体プラズマ処理チャンバ内での使用に関する。焼結セラミック体は、50~77のL*値によって部分的に定義される色を示す。
【背景技術】
【0002】
半導体処理は、プラズマエッチング環境を作り出すために、高電界及び高磁界と組み合わせてハロゲン系ガス並びに酸素及び他のガスの使用を必要とする。このプラズマエッチング環境は、半導体基板上の材料をエッチングするための真空チャンバ内に作られる。過酷なプラズマエッチング環境は、チャンバ構成要素に高耐食性材料の使用を必要とする。これらのチャンバは、処理されるウエハ上にプラズマを閉じ込める、ディスク又は窓、ライナ、ガスインジェクタ、リング、及びシリンダなどの構成要素部品を備える。これらの構成要素は、プラズマ環境における腐食及び浸食に対する耐性を提供する材料から形成されており、例えば、米国特許第5,798,016号、米国特許第5,911,852号、米国特許第6,123,791号、及び米国特許第6,352,611号に記載されている。しかしながら、プラズマ処理チャンバ内で使用されるこれらの部品は、プラズマによって連続的に攻撃され、その結果、プラズマに曝露されるチャンバ部品の表面上で腐食し、浸食し、粗くなる。この腐食及び浸食は、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を通じてウエハレベルの汚染の一因となり、半導体デバイスの歩留まり損失をもたらす。
【0003】
希土類酸化物、それらの中でも特にイットリアアルミナガーネットYAG(yttria alumina garnet)(Y3Al5O12、立方晶相)並びにYAP(AlYO3)及びYAM(Y4Al2O9)などの関連する酸化イットリウムアルミニウムのファミリーは、広範囲の技術的及び工業的用途を有することが知られている。立方晶の結晶性相(crystallographic phase)を有するYAGは、固体レーザ用のホスト材料、透明な外装、弾道赤外線窓材料、並びにその機械的、熱的及び光学的特徴の組合せ体などの用途のために多くの注目を集めている。特にレーザ用途では、単結晶YAGは、希土類ドーパントをホストするその能力のために理想的な基板であり、したがって、単結晶YAGを製作するために多くの努力が費やされてきた。光学用途に加えて、YAGはまた、化学的に非常に不活性であり、高いハロゲン系プラズマ耐食性及び耐浸食性を示すことが知られている。
【0004】
YAG系セラミックは、最終部品において最小限の残留気孔率を必要とする高度な用途に必要とされる高密度に焼結することが困難である。プラズマ腐食を伴う半導体用途では、空隙率は、チャンバ構成要素の表面上への化学的攻撃を加速し、表面が長期使用に伴って劣化するにつれて粒子を発生させ得る。耐薬品性の低下に加えて、過度の空隙率は、当業者に知られているように、セラミックの機械的及び熱的特性に有害であり得る。YAGセラミックの高密度化は、典型的には、理論密度>98%を達成するために、約1600℃以上の高温で、8時間以上などの長時間にわたる真空焼結を必要とする。理論値に近いより高い密度を達成するために、熱間等静圧圧縮成形(hot isostatic pressing、HIP)などの圧力支援高密度化技術が、最初に約98%の密度まで真空焼結した後、又は粉末から直接一軸熱間圧縮成形(uniaxial hot pressing、HP)した後に使用される。多くの場合、高温及び長い焼結時間は、過剰な結晶粒成長をもたらし、固体酸化イットリウムアルミニウム体の機械的強度に悪影響を及ぼす。YAGセラミックの高密度化を促進するために、シリカ(SiO2)などの焼結助剤がしばしば使用される。しかしながら、焼結助剤の添加は、酸化イットリウムアルミニウム材料の耐食性及び耐浸食性を事実上劣化させ、チャンバ内での使用中の半導体デバイスレベルでの不純物汚染の可能性を高める。したがって、酸化イットリウムアルミニウムの高純度で高密度の物体、特に立方晶の結晶性相(YAG、Y3Al5O12)を有する物体が望ましい。
【0005】
酸化イットリウムアルミニウムの膜又はコーティングは、より容易に入手可能であり、より良好な機械的及び熱的特性を有する異なる材料から形成されたベース又は基板の上に堆積されることが知られている。そのような酸化イットリウムアルミニウム膜は、いくつかの方法によって作製されてきた。しかしながら、これらの方法は、生成され得る膜厚が制限され、膜と基板との間の不十分な接着、及び高レベルの体積空隙率を示し、プロセスチャンバ内への粒子の脱落をもたらす。
【0006】
酸化イットリウムアルミニウムのYAG相から製造された高密度構成要素については、均一な微細構造が、広い面積にわたって均一な腐食特性を達成するために好ましい。したがって、本体の大部分(>90体積%)がYAGからなり、アルミナ、イットリア、YAP又はYAMの残留相の量が最小である、高い相純度を得ることが望ましい。しかしながら、100%多結晶YAG酸化イットリウムアルミニウムセラミック体の製作は非常に困難であり、したがって、微量(<1体積%)の二次酸化物相が存在し得る。確立されたイットリア/アルミナ相図に従うYAGは、化学量論的組成に従う線化合物としてのみ存在し、したがって、YAGは非常に狭い組成範囲のみにわたって相純粋な焼結体を形成する。公称相組成からの任意の逸脱又は材料の出発相間の不完全な反応は、最終生成物中に望ましくない二次相をもたらす可能性がある。
【0007】
YAGから作製された大きな寸法の耐食性構成要素用のセラミック体を製作する試みは、これまで失敗してきた。破損も亀裂もないチャンバの一部として取り扱われ使用され得る100mm程度以上の直径を有する、固体の、相純粋及び高化学純度構成要素は、実験室規模を超えて製造することが困難である。主に、前述の課題は、焼結の困難さ、並びに高い熱膨張及び低い熱伝導率を含むYAGの物理的特性に起因し得る。現在のところ、半導体エッチング及び堆積用途に使用するための、100mm~約625mm程度以上の直径の、高純度の結晶相純粋なYAG焼結体又は構成要素を作製する経済的に実現可能な方法はない。
【0008】
更に、YAGの層を含むプラズマチャンバ構成要素は、UV曝露に伴って経時的に色を変化させることが知られている。色の変化は、典型的には不均一であり、エンドユーザによる拒否をもたらす可能性がある。考えられる着色の原因は、処理中の基板層からYAG層への金属又は金属含有化合物の移動である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結果として、均一かつ高い密度、低空隙率及び高純度を有し、YAGを含み、プラズマエッチング及び堆積条件下での腐食及び浸食に対する向上したプラズマ耐性、UV曝露で変化しない色の均一性、並びに寸法の大きな構成要素の製作に特に適した商業的に好適な製造方法を提供する焼結セラミック体が必要とされている。
【0010】
これら及び他の必要性を満たすために、その目的を考慮して、本開示は、多層焼結セラミック体、並びに改善された機械的、電気的及び熱的特性と取り扱い性能とを有する大きな多層焼結セラミック体を調製するための方法の実施形態を提供する。
【0011】
実施形態1。90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体であって、少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面が5μmを超えない細孔径を有する細孔を含み、少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値が少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体。
【0012】
実施形態2。少なくとも1つの層が、3~6のb*値を有する、実施形態1に記載の焼結セラミック体。
【0013】
実施形態3。b*値が、少なくとも1つの表面にわたって15%以下で変動する、実施形態2に記載の焼結セラミック体。
【0014】
実施形態4。少なくとも1つの層が、15~100ppmのジルコニウムを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0015】
実施形態5。少なくとも1つの層の厚さが500μm~1cmである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0016】
実施形態6。少なくとも1つの層の厚さが500μm~5mmである、実施形態4に記載の焼結セラミック体。
【0017】
実施形態7。少なくとも1つの表面にわたって、L*の値が3%以下で変動し、a*の値が9%以下で変動する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0018】
実施形態8。多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、全ての細孔の少なくとも97%以上について1.75μmを超えない細孔径を有する細孔を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0019】
実施形態9。少なくとも1つの多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、全ての細孔の少なくとも99%以上について2μmを超えない最大細孔径を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0020】
実施形態10。多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、0.1~3%の体積空隙率を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0021】
実施形態11。体積空隙率が0.1~2%である、実施形態11に記載の焼結セラミック体。
【0022】
実施形態12。体積空隙率が0.1~0.5%である、実施形態11に記載の焼結セラミック体。
【0023】
実施形態13。多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、存在する任意のAl2O3又はジルコニウムを除いて93~99.8体積%の量で存在する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0024】
実施形態14。多結晶セラミック体が、ICPMSによって決定して50ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0025】
実施形態15。細孔が表面積の0.2%未満を占める、実施形態1~14のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0026】
実施形態16。細孔が表面積の0.10%未満を占める、実施形態1~15のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0027】
実施形態17。100mm~625mmの最大寸法を有する、実施形態1~16のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0028】
実施形態18。200mm~625mmの最大寸法を有する、実施形態17に記載の焼結セラミック体。
【0029】
実施形態19。最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、実施形態17又は18に記載の焼結セラミック体。
【0030】
実施形態20。最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、実施形態19に記載の焼結セラミック体。
【0031】
実施形態21。少なくとも1つの層が、Al2O3を最大0.5%含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0032】
実施形態22。焼結セラミック体を調製するための方法であって、a)イットリア粉末、アルミナ粉末、及び15~500ppmのジルコニウムを供給するジルコニウム含有粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、b)熱を加えて第1の粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行うことにより、第1の粉末混合物を焼成して、第1の焼成粉末混合物を形成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に第1の焼成粉末混合物を配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱している間、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層に圧力を加え、焼結を行って、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体を形成する工程と、e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、f)焼結セラミック体を1~400分の時間にわたってUV放射線に曝露する工程と、を含み、第1の焼成粉末混合物が150ppm以下の総不純物含有量を有し、工程a)のイットリア粉末及びアルミナ粉末がそれぞれ、ASTM C1274に従って測定して約18m2/g以下の比表面積を有し、焼結セラミック層が、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面が、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値が少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体を調製するための方法。
【0033】
実施形態23。以下の工程:g)熱を加えて焼結セラミック体の温度を上昇させて、アニーリング温度に到達させ、アニーリングを行うことによって、焼結セラミック体をアニーリングする工程と、h)アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、i)任意選択で、焼結セラミック体又はアニーリングされた焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバ内の誘電体窓、RF窓、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、静電ウエハチャック(electrostatic wafer chuck、ESC)、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングの形状の焼結セラミック構成要素を作製する工程と、を更に含む、実施形態22に記載の方法。
【0034】
実施形態24。ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを備え、第1及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも一方がダイの容積内で移動するとき、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成する、実施形態22又は23に記載の方法。
【0035】
実施形態25。ギャップが、ダイの内壁と第1及び第2のパンチの各々の外壁との間の10~100μmの距離である、実施形態24に記載の方法。
【0036】
実施形態26。焼結温度が1000~1500℃である、実施形態22~25のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態27。焼結温度が1000~1300℃である、実施形態22~26のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態28。焼結温度に加熱している間、5~59MPaの圧力を焼成粉末混合物に加える、実施形態22~27のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態29。圧力が5~40MPaである、実施形態28に記載の方法。
【0040】
実施形態30。圧力が5~20MPaである、実施形態29に記載の方法。
【0041】
実施形態31。焼結温度に加熱している間、50MPa未満の圧力を焼成粉末混合物に加える、実施形態22~30のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態32。焼結セラミック体が、100mm~625mmの最大寸法を有する、実施形態22~31のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
実施形態33。焼結セラミック体が、200mm~625mmの最大寸法を有する、実施形態32に記載の方法。
【0044】
実施形態34。焼結セラミック体が、最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、実施形態22~33のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態35。焼結セラミック体が、最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、実施形態34に記載の方法。
【0046】
実施形態36。少なくとも1つの表面が3~6のb*値を示す、実施形態22~35のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態37。b*値が、少なくとも1つの表面にわたって15%以下で変動する、実施形態36に記載の方法。
【0048】
実施形態38。多結晶セラミック体が、ICPMSによって決定して5ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する、実施形態14に記載の焼結セラミック体。
【0049】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、YAG(Y
3Al
5O
12)、YAP(YAlO
3)及びYAM(Y
4Al
2O
9)の酸化イットリウムアルミニウム相、並びにそれらを形成するのに必要なモル比及び温度を示す、2成分酸化イットリウム/酸化アルミニウム相図を示す。
【
図2A】
図2Aは、実施例2に従って作製された焼結セラミック体の研磨表面の10,000倍のSEM顕微鏡写真である。
【
図2B】
図2Bは、実施例2に従って作製された焼結セラミック体の研磨表面の10,000倍のSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで特定の実施形態について詳細に言及する。本開示をこれらの特定の実装形態と併せて説明するが、本開示はそのような特定の実施形態に限定されるものではないことが理解されるだろう。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替、改変、及び等価物を包含することを意図している。以下の記述では、開示する実施形態を完全に理解できるように、多くの具体的な詳細を記載する。本開示はこれらの具体的な詳細のうちの一部又は全てを使用せずに実施してもよい。
【0052】
半導体エッチング及び堆積反応器は、処理に必要なハロゲン含有プラズマによる腐食及び浸食に対して高い耐性を有する表面を有する反応器構成要素を必要とする。表面は、好ましくは、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を最小限に抑える。更に、チャンバ構成要素は、特に大きな(直径100mm超、例えば100~625mm)構成要素寸法での取り扱い可能性及び使用のために十分な機械的強度を有しなければならない。焼結セラミック体は、焼結構成要素に機械加工されてもよく、したがって、耐食性、低粒子発生及び高い機械的強度を提供しながら、大きな寸法で取り扱い及び機械加工することができなければならない。本明細書に開示される焼結セラミック体は、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層は少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面は、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面は50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層は500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値は少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する。これらの材料は、優れた耐食性及び耐浸食性を有する。これらの材料の使用は、ハロゲン系プラズマエッチング及び堆積条件に供されたときに、他の材料よりも改善されたプラズマ耐性を提供する表面を有する半導体プラズマ処理チャンバ構成要素をもたらす。
【0053】
定義
【0054】
本明細書で使用される場合、「酸化イットリウムアルミニウム」という用語は、Y3Al5O12(YAG;イットリウムアルミニウムガーネット/立方晶相)、YAlO3(YAP(yttrium aluminum perovskite);イットリウムアルミニウムペロブスカイト相)、及びY4Al2O9(YAM(yttrium aluminum monoclinic);イットリウムアルミニウム単斜晶相)並びにこれらの組合せを含む酸化イットリウムアルミニウムの結晶相の形態のうちの少なくとも1つを意味すると理解される。「YAG」及び「YAG相」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体」という用語は、単層又は多層体を指す。多層化体の場合、この用語は、圧力及び熱を加えることによって1種又は複数種の粉末混合物を共圧縮することから形成された単一の一体型焼結セラミック物品を指し、これは単一の高密度な多層焼結セラミック体を形成する。単一の多層焼結セラミック体は、プラズマ処理用途におけるチャンバ構成要素として有用な単一の多層焼結セラミック構成要素に機械加工することができる。本明細書で使用される場合、「共圧縮する(co-compacting)」又は「共圧縮(co-compaction)」という用語は、少なくとも2種のばらの粉末材料がダイ内に配置され、圧力を受けて粉末圧縮体を形成するプロセスを指す。粉末圧縮体は、当技術分野で一般的であるグリーン体若しくは成形体、又はテープの形成に必要とされる結合剤、分散剤、及び他の同様の有機物質を含まない。
【0056】
「単一の」又は「一体型」は、追加のピースなしで、それ自体で完全な単独のピース又は単独の単一の部品を意味し、すなわち、部品は、別の部品と共に1つのユニットとして形成された1つのモノリシックピースである。
【0057】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、近似を示す記述用語であり、「かなりの程度」又は「指定されたものの全体ではなく大部分」を意味し、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界を回避することを意図している。
【0058】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック構成要素」又は「多層焼結セラミック構成要素」という用語は、セラミックを本明細書に開示される半導体処理チャンバで使用するための所望の構成要素の特定の形状に形成する機械加工工程後の単層焼結セラミック体、多層焼結セラミック体、又は耐食性セラミックを指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「粉末混合物」という用語は、焼結プロセスの前に一緒に混合された2種以上の出発粉末を意味し、焼結工程の後にそれによって多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層に形成される。
【0060】
セラミックの熱処理に適用される場合の「アニーリング」という用語は、本明細書では、開示される多層焼結セラミック体に対して、応力を緩和、及び/又は化学量論を正規化するために空気中で行われる熱処理を意味すると理解される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、少なくとも1つのダイ及び少なくとも2つのパンチを備え得るものである。完全に組み立てられると、ツールセットは、開示されるように、粉末混合物を配置するための容積を画定する。
【0062】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶構造を有する焼結セラミック体の別個の結晶領域、部分又は層を意味すると理解される。
【0063】
本明細書で使用される「固溶体」は、同じ結晶格子構造を共有する異なる元素の混合物として定義される。格子内の混合物は、一方の出発結晶の原子が他方の出発結晶の原子と置き換わる置換型であってもよいし、原子が格子内の通常空いている位置を占める侵入型であってもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ナノ粉末」という用語は、20m2/g超の比表面積を有する粉末を包含することが意図される。
【0065】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶構造を有する焼結セラミック体の別個の結晶領域、部分又は層を意味すると理解される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「層」という用語は、材料の厚さ、典型的にはいくつかのうちの1つを意味すると理解される。材料は、例えば、セラミック粉末、粉末混合物、焼成粉末混合物、又は焼結領域若しくは焼結部分とすることができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「周囲温度」は、約22℃~25℃の温度範囲を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)処理後の粉末混合物(又は焼成粉末混合物)、及びc)本明細書に開示される多層焼結セラミック体又は構成要素中に様々な汚染物質が存在しないことを指す。より高い純度(100%に近い)は、汚染物質又は不純物を本質的に有しないか、又は非常に少量しか有しない材料であって、開示される出発粉末中に存在する材料組成物を実質的に含む、材料を表す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、意図された化合物自体以外の、粉末又は焼結セラミック中に存在する化合物/汚染物質を指す。不純物は、出発粉末、粉末混合物、処理後の粉末混合物、及び焼結セラミック体中に存在し得る。ICPMS法を用いて、本明細書に開示される粉末、粉末混合物、並びに焼結体の第1及び第2の層の不純物含有量を決定した。
【0070】
本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、セラミック材料に所望の特性をもたらすために(例えば、電気的特性を変えるために)バルク材料に添加される物質である。典型的には、ドーパントは、使用される場合、低濃度、すなわち、0.002重量%超~0.05重量%未満で存在する。
【0071】
不純物は、本明細書で定義されるドーパントが、例えば、多層焼結セラミック体中の結晶粒径の修正などの特定の電気的、機械的、光学的、又は他の特性を得るために出発粉末又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、ドーパントとは異なる。
【0072】
本明細書で使用される「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中の高密度化を高め、それによって空隙率を減少させる、シリカ(SiO2)、リシア(Li2O)、フッ化リチウム(LiF)、マグネシア(MgO)、及び/又はカルシア(CaO)などの化合物を指す。出発粉末中に存在し、焼結セラミック中に残る程度のHf及びYは、本明細書で定義される焼結助剤、不純物又はドーパントのいずれも構成しない。
【0073】
本明細書で使用される場合、本明細書に開示される数又は特徴と関連して使用される「およそ」及び「約」という用語は、プラス又はマイナス10%の分散を許容する。
【0074】
以下の詳細な説明は、本開示が、半導体ウエハ基板上へのデバイスの作製の一部として必要なエッチングチャンバ又は堆積チャンバなどの装置内で実施されると仮定する。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であり得る。半導体ウエハ処理に加えて、本発明を利用することができる他のワークピースには、微細な特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなどの様々な物品が含まれる。
【0075】
半導体デバイスの処理中に、耐食性部品又はチャンバ構成要素がエッチングチャンバ内で使用され、エッチングチャンバ内への粒子の放出を引き起こす過酷な腐食環境に曝露され、その結果、ウエハレベルの汚染による歩留まり損失が生じる。本明細書に開示される焼結セラミック体及び関連する構成要素は、以下に記載される特定の材料特性及び特徴によって、改善されたプラズマエッチング耐性及び半導体処理チャンバ内で洗浄される能力の強化を提供する。
【0076】
YAG
【0077】
ある実施形態では、本明細書では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体であって、少なくとも1つの層は少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面は、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面は50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層は500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値は少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体が開示される。複数の実施形態では、焼結セラミック体は、ASTM B962-17に従って行われた密度測定から計算して、0.1~4%の体積空隙率を有する。
【0078】
焼結セラミック体は、少なくとも1つの層を含み、したがって、いくつかの実施形態では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含み、本明細書に開示される特性を有する単層焼結セラミック体である。他の実施形態では、焼結セラミック体は、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含み、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つの層を含む多層焼結セラミック体である。多層の実施形態では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含み、本明細書に開示される特性を有する少なくとも1つの層は、好ましくは外層であり、したがって最終的に使用時に、プラズマ処理チャンバ内のプラズマに曝露される表面であり得る。第2の層は、例えば、ジルコニア強化アルミナ又は酸化イットリウムなどの任意の適切な材料であってもよい。
【0079】
複数の実施形態では、焼結セラミック体は、本明細書に開示される材料及び方法の使用を通じて、立方晶結晶構造が90~99.6体積%、好ましくは90~99.4体積%、好ましくは95~99.6体積%、好ましくは95~99.4体積%の量の多結晶YAGを含む少なくとも1つの層を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される焼結セラミック体は、95~99.6体積%の立方晶の結晶相のYAG及び0.01~5%の酸化アルミニウム相を含み得る。本明細書に開示されるYAGの立方晶の結晶相の体積値は、任意のAl2O3及びジルコニウム含有化合物を除外する。本明細書に開示される焼結セラミック体の実施形態は多結晶性であり、したがって、焼結セラミック体は、2種以上の結晶を含むことができるが、これに限定されない。焼結セラミック体は、0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%の量の体積空隙率を含むことができ、体積空隙率は、ASTM B962-17又は空隙率が2%未満である場合はASTM B311-17に従って行われる密度測定から計算される。
【0080】
別の実施形態では、本明細書では、90~99.8体積%の立方晶結晶構造を含む組成Y3Al5O12のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び0.2~10体積%の量の酸化アルミニウム、好ましくは0.2~8体積%、好ましくは0.2~5体積%、好ましくは0.2~3体積%、好ましくは0.2~2体積%、好ましくは0.2~1体積%の酸化アルミニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体が開示される。
【0081】
複数の実施形態では、焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、X線回折によって決定して70~100体積%の量、ASTM B962-17に従って行われた密度測定から計算して0.1~5%未満の体積空隙率、ICPMS法によって測定して99.99%超の純度、及びASTM規格C1327に従って測定して少なくとも1200HVの硬度の、少なくとも1つの形態の多結晶酸化イットリウムアルミニウムを含む。複数の実施形態では、焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、少なくとも1つの多結晶酸化イットリウムアルミニウム相又は酸化イットリウムアルミニウムの相の組合せを含み、特定の実施形態では、イットリウムアルミニウムガーネットY3Al5O12(YAG)相、イットリウムアルミニウムペロブスカイトYAlO3(YAP)、及びイットリウムアルミニウム単斜晶Y4Al2O9(YAM)並びにそれらの組合せを含む。好ましい実施形態では、焼結セラミック体は、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を含む。
【0082】
ある実施形態では、本明細書に開示される焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、YAG、YAP又はYAMの酸化イットリウムアルミニウムのいずれか1つの約100%の単結晶相を含み得る。他の実施形態では、焼結セラミック体は、本明細書に開示される酸化イットリウムアルミニウムの2つ以上の不連続又は連続相のマトリックス又は複合構造を含み得る。更なる実施形態では、焼結セラミック体は、酸化イットリウムアルミニウムYAG、YAP及びYAMのいずれか1つ又は組合せの大部分と共に、酸化アルミニウム及び/又は酸化イットリウムの少数相を含んでもよい。
【0083】
参考として、
図1は、酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分相図を示す。横軸はイットリアとアルミナの混合割合(モル%)に対応し、縦軸は温度(摂氏)である。横軸の左側は100%アルミナに対応し、右側は100%イットリアに対応する。
図1の相図は、YAG、YAP、及びYAMの酸化イットリウムアルミニウム相が形成される領域、並びにこれらの形態を生成するのに必要なモル組成及び温度の条件を示す。YAGの形成は、化学量論を維持し、したがって37.5mol%の酸化イットリウム及び62.5mol%の酸化アルミニウムの相純粋なYAGを含む焼結セラミック体を形成するために、粉末の正確なバッチ処理及び慎重な処理を必要とし得る。
【0084】
色
【0085】
本明細書に開示される焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、ドーパントとして15ppm~500ppmのジルコニウムを含み、UV放射線への曝露時に50~77のL*値、6~12のa*値、及び3~6のb*値を示す少なくとも1つの表面を有する。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、YAG相は、ジルコニウム原子が固溶体として浸透するホストマトリックスを提供すると考えられる。したがって、ジルコニウムの上限は、ジルコニウムがもはや固溶せず、別々の相を形成する量である。範囲の下端のジルコニウムは、好ましくは、少なくとも1つの表面がUV放射線に曝露されたときにYAGマトリックスに均一な赤色を付与するのに十分である。添加される(すなわち、ドープされる)ジルコニウムの目的は、焼結セラミック体を以下に詳述するようにUV放射線に曝露する場合の赤色への均一な色変化に影響を及ぼすことである。複数の実施形態では、ジルコニウムは、15ppm~500ppm、15ppm~100ppm、15ppm~250ppm、50ppm~250ppm、50ppm~225ppm、50ppm~200ppm、50ppm~175ppm、50ppm~150ppm、50ppm~150ppm、50ppm~125ppm、50ppm~100ppm、及び50ppm~75ppmの量で存在し得る。
【0086】
上述の量のジルコニウムは、酸化物、塩化物、ニトレート、又は任意の他の対イオンとして添加することができる。好ましくは、ジルコニウムは酸化物として添加される。
【0087】
「色」は、1976 CIELAB色空間(国際照明委員会によって定義された規格ISO11664-4)を使用して記述され、これは、色を、絶対的な黒が0であり完全な白が100である明度/暗度変数L*、並びに物体の色相を記述する他のパラメータa*及びb*に換算する。典型的には、L*が65より大きく82未満であり、a*及びb*の絶対値が5未満である物体は、白色であると考えられる。均一性及び明度は、目で視覚的に評価されてもよく、又は好ましくは、1つの非限定的な例として、CIELAB L*a*b*スケールを使用するFRU WR-18比色計などの市販の機器を使用して測定されてもよい。CIELAB L*a*b*値は、本明細書において互換的にCIE Lab値又はL*、a*、b*値とも呼ばれる。「a*」の値は、特定の変換された色空間における赤-緑座標を指し、一般に供試体と標準参照色との間の「a*」の差として使用される。「a*」が正である場合、緑色よりも赤色が強い。「a*」が負である場合、赤色よりも緑色が強い。a*の値は、通常、色度又は色度色差の一部としてb*と共に使用される。「b*」の値は、特定の色空間における黄-青座標を指し、一般に供試体と標準参照色との間の「b*」の差として使用され、通常、「a*」と共に、又は色度差の一部として使用される。一般に、「b*」が正である場合、青色よりも黄色が強い。「b*」が負である場合、黄色よりも青色が強い。
【0088】
本明細書に開示される焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、UV放射線への曝露時に50~77、いくつかの実施形態では50~60のL*値、6~12のa*値、及び3~6のb*値を示す少なくとも1つの表面を有する。UV放射線への曝露時に生成される「色」は、少なくとも1つの表面にわたって、L*及びa*値が10%以下、いくつかの実施形態では3.0%以下、他の実施形態では1.5%以下で変動し、b*値が15%以下、いくつかの実施形態では7%以下、好ましくは3%以下で変動するという点で均一である。一実施形態では、少なくとも1つの表面にわたって、L*の値は3%以下で変動し、a*の値は9%以下で変動する。表1及び表2は、本明細書に開示されるプロセスに従って作製されたジルコニア強化アルミニウムの下層からのジルコニウムの移動の結果としてジルコニウムのppmの不均一な分布を有する22インチ(558.8mm)(2,452cm
2)YAG片に対する、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された50ppmのドープされたジルコニウムを有する着色された22インチYAG片(表1)の色均一性の差を示す。言い換えれば、表1及び表2の両方の試料は、それぞれジルコニア強化アルミニウムの基板層とYAGを含む最上層とを有する二層焼結セラミック体であったが、表1の試料は、50ppmのジルコニウムを意図的にドープしたYAG層を含み、表2の試料のYAG層は、ジルコニウムをドープしなかったが、製造プロセス中の移動によってジルコニウムをいくらか有していた。
色の均一性は、化学的及び物理的な均一性の知覚だけでなく、放射率の均一性にとっても重要である。これは、より暗い領域がより明るい領域よりも熱を吸収し、使用中に亀裂を形成する可能性があるホットスポットを引き起こすためである。
【表1】
【表2】
【0089】
表1の試料のYAG層の相対密度は99.9%であり、表2の試料のYAG層の相対密度は99.8%であったため、表2の試料のYAG層は、表1の試料のYAG層よりも高い空隙率であった。
【0090】
空隙率及び密度
【0091】
本明細書に開示される焼結セラミック体の少なくとも1つの層は非常に高密度であり、それに対応して、少なくとも1つの表面が5μmを超えない細孔径を有する細孔を含むように非常に小さい細孔プロファイルを有する。複数の実施形態では、細孔は、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する。
【0092】
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層の結晶粒径を評価するために、ASTM規格E1 12-2010”Standard Test Method for Determining Average Grain Size”に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って、線形切片結晶粒径測定を行った。(表3に記載されるように)結晶粒径測定を行い、25回の繰り返しにわたって1.1~6.3μmの平均結晶粒径が測定された。2~7.7μmの最大及び最小結晶粒径も、YAGを含む少なくとも1つの第1の層の表面上で測定された。単一の多層焼結セラミック体は、例えば、最大結晶粒径が約8μm以下、好ましくは最大結晶粒径が6μm以下の結晶粒径を有する表面を有し得る。複数の実施形態では、単一の多層焼結セラミック体は、0.4~6.5μm、好ましくは0.4~5μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.8~6.5μm、好ましくは0.8~5μm、好ましくは0.8~3μm、好ましくは1~7μm、好ましくは1~6.5μmの平均結晶粒径を有する表面を有し得る。
【表3】
【0093】
密度測定は、ASTM B962-17及びASTM B311-17(空隙率レベルが2%以下である場合)に従ってアルキメデス浮力法を使用して行った。報告された密度値及び標準偏差は、5回以上の測定にわたる平均値である。YAGの市販の単結晶試料を、本明細書に開示される方法を用いて密度について測定した。バルクYAGの市販の単結晶試料を、本明細書に開示される方法を用いて密度について測定した。5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度が得られ、この値を、本明細書で使用されるYAGの理論密度とする。本明細書の実施形態に開示される相純粋なYAG及び最大1%重量過剰のアルミナを含む更なる相純粋なYAGの少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体は、例えば、4.374~4.556g/cc、4.419~4.556g/cc、4.465~4.556g/cc、4.510~4.556g/cc、及び4.533~4.556g/cc、又はパーセンテージで96~99.999%、97~99.999%、98~99.999%、99~99.999%、及び99.5~99.999%のYAGの理論密度を有し得る。対応する体積空隙率(Vp)は、本明細書に開示されるように行われる密度測定から計算して、0.010~5%未満、0.010~4%、0.010~3%、0.010~3%、0.010~2%、0.010~1%、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であり得る。セラミック焼結体が、約16体積%の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアの少なくとも一方(及び残りのアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層を含む実施形態では、同様の条件下で密度を測定し、約4.32g/ccの密度を計算した。体積混合則を使用して、約16体積%のジルコニアを含むZTAの理論密度を計算し、4.32の密度を測定し、約16体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層の理論密度として採用した。したがって、約16体積%のジルコニアを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第2の層は、99~100%の理論密度パーセント、好ましくは99.5~100%、好ましくは約100%の理論密度パーセントを有する。この実施形態に従う、開示される多層焼結セラミック体は、少なくとも1つの第1及び第2の層を含む単一の多層焼結セラミック体の理論密度の99%超、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは約100%である理論密度(相対密度(relative density、RD)とも表される)%を有する。
【0094】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示されるように、試料の測定された密度の、同じ材料の報告された理論密度に対する比として定義される。体積空隙率(Vp)は密度測定値から以下のように計算される:
【数1】
式中、ρ sampleはASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ theoreticalは報告された理論密度であり、RDは相対分率密度である。この計算を使用して、0.1~5%以下のパーセントによる空隙率レベルが、本明細書に開示される焼結セラミック体の測定された密度値から計算された。したがって、複数の実施形態では、本明細書に開示される少なくとも1つの酸化イットリウムアルミニウムガーネット相を含む焼結セラミック体は、対応する密度から計算して、焼結セラミック体中に0.1~5%、好ましくは0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%の量の体積空隙率を含む。
【0095】
これらの密度、純度及び空隙率レベルは、プラズマエッチング及び堆積処理から生じる浸食及び腐食の影響に対する向上した耐性を提供することができる。開示される方法及び材料は、大きな寸法、例えば200~約625mmの最大寸法のセラミック焼結体の調製に特に有用である。セラミック焼結体の高い密度及びそれによる高い機械的強度はまた、特に大きな寸法において、向上した取り扱い可能性を提供する。焼結酸化イットリウムアルミニウム体、特に、最長寸法(約200~約625mm)にわたる、本明細書に開示される範囲の相純粋なYAGから形成された物体の製作の成功は、少なくとも1つの最長寸法にわたる密度の変動を制御することによって可能になり得る。96%以上の平均密度が望ましく、密度の変動は、最大寸法にわたって測定して0.2~5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下であり、最大寸法は、例えば100~625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~625mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~625mm、好ましくは500~625mmであり得る。YAGの理論密度の95%未満の低密度は、より低い強度、及びそれにより5%を超えるより高い空隙率を有し得、これは、破損及び劣った取り扱い可能性をもたらす。
【0096】
高密度に加えて、開示されるセラミック焼結体の最大寸法にわたる密度の変動は、特に大きな(>100mm)寸法で取り扱い、機械加工し、セラミック焼結構成要素として使用できるかどうかに影響を及ぼし得る。密度は、本明細書に開示されるセラミック焼結体のいくつかの例の最大寸法にわたって測定された。
【0097】
高い密度に加えて、高い硬度値は、プラズマチャンバ構成要素として使用中の浸食に対する向上した耐性を更に提供することができる。したがって、ビッカース硬度測定を、ASTM規格C1327”Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics”に従って行った。全ての硬度測定に使用した試験装置は、Wilson Micro Hardness Tester Model VH1202であった。本明細書に開示されるセラミック焼結体について、少なくとも1200HV、好ましくは少なくとも1400HV、好ましくは少なくとも1800HV、好ましくは少なくとも2000HV、1300~1600HV、1300~1500HV、1300~1450HV、1300~1400HV、1400~1600HV、1450~1600HV、1450~1550HVの硬度値を得ることができる。当技術分野で公知のビッカース硬度法を使用して測定値を得ることができ、これをGPaのSI単位に変換した。本明細書に開示されるセラミック焼結体について、12.75~15.69GPa、12.75~14.71GPa、12.75~14.22GPa、12.75~13.73GPa、13.73~15.69GPa、14.22~15.69GPa、好ましくは14.22~15.20GPaの硬度値を得ることができる。これらの高い硬度値は、半導体エッチングプロセス中のイオン衝撃に対する耐性の向上及び使用中の浸食の低減に寄与し得、セラミック焼結体が微細スケール特徴を有するセラミック焼結構成要素に機械加工される場合、寿命の延長を提供する。
【0098】
一実施形態では、本明細書に開示される焼結セラミック体は、0.2kgfの適用荷重を用いた8つの試料について、ASTM規格C1327に従って測定して13.0~15.0GPaの平均硬度を有する。別の実施形態では、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、0.2kgfの適用荷重を用いた8つの試料について、ASTM規格C1327に従って測定して約13.5~14.5GPaの平均硬度を有する。
【0099】
機械的強度特性は、結晶粒径の減少と共に改善することが知られている。結晶粒径を評価するために、ASTM規格E1 12-2010”Standard Test Method for Determining Average Grain Size”に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って、線形切片結晶粒径測定を行った。結晶粒径は、SEMによって測定することもできる。200~625mmの大きな構成要素として反応チャンバで使用するための高い曲げ強度及び剛性の要件を満たすために、セラミック焼結体は、例えば、約10μm以下の最大結晶粒径、好ましくは8μm以下の最大結晶粒径、好ましくは5μm以下の平均結晶粒径、好ましくは3μm以下の平均結晶粒径、好ましくは2μm以下、好ましくは1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下、好ましくは0.5~8μm、好ましくは1~5μmの結晶粒径の微細結晶粒径を有し得る。
【0100】
90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層は、ICPMS法を使用して測定して、多結晶YAG及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの第1の層の総質量に対して、100ppm未満、好ましくは75ppm未満、50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~30ppm、好ましくは5~20ppmの総不純物含有量を有し得る。本明細書に開示される総不純物含有量は、シリカの形態のSiを含まない。
【0101】
より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含む粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上に決定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上に決定することができる。本明細書に開示されるICPMS法を用いると、シリカは約14ppm程度の低い量で検出され得るが、K(カリウム)及びCa(カルシウム)は1.4ppm以上の量で同定され得る。鉄は、0.14ppmという低い量の精度で検出することができる。
【0102】
本明細書に開示される、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体であって、少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面が、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値が少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体は、単層焼結セラミック体であることができるか、又は多層焼結セラミック体の層であることができる。
【0103】
1つ以上の追加の層を含む多層焼結セラミック体の場合、1つ以上の追加の層は、例えば、(i)安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアの少なくとも一方を含むアルミナ;(ii)追加のYAG層;(iii)イットリア、並びに(iv)アルミナのうちの1つ以上であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、YAGを含む少なくとも1つの第1の層は、本明細書に開示されるICPMS法を使用して測定して、100%の純度を有する材料に対してそれぞれ99.99%以上、好ましくは99.995%以上の純度(Al2O3及びジルコニウム含有化合物を除く)を有し得る。
【0105】
セラミック焼結体から形成される耐食性構成要素の上述の特性は、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの粉末の純度、粉末の配合、粉末の焼成、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの粉末に対する圧力、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの粉末の温度、粉末の焼結の持続時間、任意選択のアニーリング工程中のセラミック焼結体/セラミック焼結構成要素の温度、並びに任意選択のアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。本明細書に開示される方法は、スケーラブルな製造プロセスを使用して、セラミック焼結体、特に大きな寸法のセラミック焼結体を製造するのに好適である。
【0106】
調製方法
本明細書に開示される焼結セラミック体の調製は、例えば、電場支援焼結技術(Field Assisted Sintering Technology、FAST)又は直流焼結(Direct Current Sintering、DCS)としても知られる放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、SPS)などの圧力支援焼結の使用によって達成され得る。これらの直流焼結技術及び関連技術は、導電性ダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって焼結される材料を加熱するために直流を使用する。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径の焼結セラミック体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。本明細書に開示される直流圧力支援方法は、開示されるツールセットを加熱するために、好ましくはパルス化されていない連続直流電流を利用する。
【0107】
本明細書では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、上に開示した焼結セラミック体を調製するための方法であって、少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面が、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値が少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体を調製するための方法が開示される。方法は、a)イットリア粉末、アルミナ粉末、及び15~500ppmのジルコニウムを供給するジルコニウム含有粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、b)熱を加えて第1の粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行うことにより、第1の粉末混合物を焼成して、第1の焼成粉末混合物を形成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に第1の焼成粉末混合物を配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱している間、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層に圧力を加え、焼結を行って、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体を形成する工程と、e)焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、f)焼結セラミック体を1~200分の時間にわたってUV放射線に曝露する工程と、を含み、第1の焼成粉末混合物は150ppm以下の総不純物含有量を有し、工程a)のイットリア粉末及びアルミナ粉末がそれぞれ、ASTM C1274に従って測定して約18m2/g以下の比表面積を有し、少なくとも1つの層は90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含み、少なくとも1つの層は少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面は、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面は50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、少なくとも1つの層は500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値は少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する。以下の追加工程は任意選択である:熱を加えてセラミック焼結体の温度を上昇させて、アニーリング温度に到達させることによって、セラミック焼結体をアニーリングして、アニーリングされたセラミック焼結体を形成する工程;アニーリングされたセラミック焼結体の温度を低下させる工程;並びにセラミック焼結体又はアニーリングされたセラミック焼結体を機械加工して、エッチングチャンバ内の誘電体窓若しくはRF窓、フォーカスリング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、電子ウエハチャック、チャック、パック、混合マニホールド、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングなどのセラミック焼結構成要素を作製する工程。
【0108】
本明細書に開示される方法は、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、組成Y3Al5O12のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、組成YAlO3のイットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、及び組成Y4Al2O9のイットリウムアルミニウム単斜晶(YAM)、並びにそれらの組合せを含むセラミック焼結体及び構成要素の調製を提供する。
【0109】
複数の実施形態では、本明細書に開示される方法は、90~99.5体積%の立方晶結晶構造、好ましくは90~99体積%の立方晶結晶構造、好ましくは95~99.5体積%の立方晶結晶構造、好ましくは95~99体積%の立方晶結晶構造の量のガーネット立方晶結晶構造のYAGを含むセラミック焼結体の調製を提供する。代替的な実施形態では、0.1~5体積%、0.1~3体積%、0.1~2体積%、0.1~1体積%、好ましくは1体積%未満の量のAl2O3の相が、YAGを含むセラミック焼結体中に存在してもよい。
【0110】
本明細書に開示されるような材料及び方法を使用して、焼結助剤を使用することなく、開示されるようなセラミック焼結体について、高密度、例えば、相純粋なYAGについての理論密度の96%、98%、及び99.5%以上が達成され得る。したがって、複数の実施形態では、YAGを含むセラミック焼結体は、焼結助剤(本明細書に記載されるようなドーパントとして使用されるジルコニウム化合物を除く)を実質的に含まないか又は含まない。
【0111】
複数の実施形態では、90体積%~99.8体積%の多結晶YAGを含むセラミック焼結体は、化学量論的YAGの量を超える過剰なイットリア及び/又はアルミナを含んでもよく、これはプロセスから残っていてもよく、又は粉末バッチ処理及び調製中に意図的に添加されてもよい。したがって、過剰なイットリア及び/又はアルミナは、セラミック焼結体中に残留し得る程度では、ドーパントとも焼結助剤ともみなされない。
【0112】
複数の実施形態では、開示されるプロセスは、高(>98%)密度、高純度、及び低空隙率を有する99体積%超の立方晶結晶構造の高度に相純粋なYAGの調製を提供する。代替的な実施形態では、開示されるプロセスは、5体積%以下のアルミナの第2の結晶性相を有する、95体積%以上の立方晶結晶構造の高度に相純粋なYAGの調製を提供し、焼結体もまた、高密度、高純度、及び低空隙率を有する。更なる実施形態では、開示されるプロセスは、高純度、高密度及び低空隙率を有する、イットリウムアルミニウムガーネット、Y3Al5O12(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイトYAlO3(YAP)及び/又はイットリウムアルミニウム単斜晶Y4Al2O9(YAM)並びにそれらの組合せの混合相及び/又は相純粋なセラミック焼結体の調製を提供する。開示されるセラミック焼結体は、半導体製造装置などのプラズマ処理装置での使用に特に好適である。そのような部品又は部材には、他の構成要素の中でも、窓、ノズル、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、(エッチング)チャンバライナ、混合マニホールド、ウエハ支持体、電子ウエハチャック、並びにフォーカスリング及び保護リングなどの様々なリングが含まれ得る。
【0113】
本明細書に開示される方法の工程a)は、イットリア粉末、アルミナ粉末、及び15~500ppmのジルコニウムを供給するジルコニウム含有粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製することを含む。耐食性セラミック焼結体及びその後の構成要素を形成するための酸化アルミニウム及び酸化イットリウムの出発粉末材料は、好ましくは高純度の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。d50は中央値として定義され、集団の半分がこの点より上に存在し、半分がこの点より下に存在する値を表す。同様に、分布の90%はd90を下回り、集団の10%はd10を下回る。
【0114】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd10粒子径は、好ましくは1~7μm、好ましくは1~6μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~7μm、好ましくは3~7μm、好ましくは4~7μm、好ましくは5~7μmである。
【0115】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd50粒子径は、好ましくは3~11μm、好ましくは3~9.5μm、好ましくは3~8.5μm、好ましくは3~7.5μm、好ましくは4~11μm、好ましくは5~11μm、好ましくは6~11μm、好ましくは7~11μmである。
【0116】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd90粒子径は、好ましくは6~20μm、好ましくは6~18μm、好ましくは6~16μm、好ましくは8~20μm、好ましくは10~20μm、好ましくは15~20μm、好ましくは8~18μm、好ましくは10~18μmである。
【0117】
酸化イットリウム粉末は、好ましくは、0.75~12m2/g、好ましくは0.75~10m2/g、好ましくは0.75~8m2/g、好ましくは0.75~6m2/g、好ましくは0.75~4m2/g、好ましくは0.75~2m2/g、好ましくは1~6m2/g、好ましくは1~4m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは6~10m2/g、好ましくは1~4m2/gの比表面積(specific surface area、SSA)を有する。
【0118】
酸化イットリウム出発材料の純度は、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、より好ましくは99.9995%超、より好ましくは99.9999%超である。これは、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは約1ppm、好ましくは1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは1~25ppm、好ましくは1~10ppm、好ましくは1~5ppmの不純物レベルに相当する。
【0119】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd10粒子径は、好ましくは0.05~4μm、好ましくは0.05~3μm、好ましくは0.05~2μm、好ましくは0.05~1μm、好ましくは0.05~0.75μm、好ましくは0.05~0.5μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.2~3μm、好ましくは0.2~2μm、好ましくは0.2~1μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.4~2μm、好ましくは0.4~1μm、好ましくは0.75~2μm、好ましくは0.75~3μm、好ましくは1~3μm、好ましくは2~3μmである。
【0120】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd50粒子径は、通常0.15~8μm、好ましくは0.15~5μm、好ましくは0.15~3μm、好ましくは0.15~1μm、好ましくは0.15~0.5μm、好ましくは1~8μm、好ましくは1~6μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~8μm、好ましくは4~8μm、好ましくは5~8μm、好ましくは3.5~6.5μmである。
【0121】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd90粒子径は、0.50~75μm、好ましくは0.35~10μm、好ましくは0.35~5μm、好ましくは0.35~3μm、好ましくは0.35~1μm、好ましくは0.35~0.75μm、好ましくは3~80μm、好ましくは3~60μm、好ましくは3~40μm、好ましくは3~20μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~30μm、好ましくは10~20μm、好ましくは30~60μm、好ましくは15~60μm、好ましくは40~60μm、好ましくは6~15μmである。
【0122】
酸化アルミニウム粉末は、通常3~18m2/g、好ましくは3~16m2/g、好ましくは3~14m2/g、好ましくは3~12m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは3~6m2/g、好ましくは6~18m2/g、好ましくは6~14m2/g、好ましくは8~18m2/g、好ましくは10~18m2/g、好ましくは8~10m2/g、好ましくは4~9m2/g、好ましくは5~10m2/g、好ましくは6~8m2/gの比表面積を有する。
【0123】
酸化アルミニウム出発材料の純度は、典型的には、ICPMS法を用いて測定して、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超である。これに対応して、アルミナ粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であり得る。
【0124】
複数の実施形態では、酸化アルミニウム粉末は、80~100体積%のアルファアルミナ結晶性相、好ましくは90~100体積%のアルファアルミナ結晶性相、好ましくは95~100体積%のアルファアルミナ結晶性相を含み得る。
【0125】
表4は、YAGを含む焼結体を形成するための開示される出発材料の特性を記載する。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒子径は、10nm~5mmの粒子径を測定することができるHoribaモデルLA-960 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを用いて測定した。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積は、ほとんどの試料について0.01~2000m
2/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定した。
【表4】
【0126】
イットリア及びアルミナ粉末に、ジルコニウム化合物を含むドーパントが、好ましくは粉末形態で添加される。ジルコニウム化合物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、又はジルコニウムに対する任意の他の対イオンが挙げられる。好ましい実施形態では、ジルコニウムは酸化物ジルコニアとして添加され、ジルコニアは例えばイットリアで安定化されてもよい。ドーパントジルコニウム化合物の量は、15~500ppm、15ppm~350ppm、15ppm~250ppm、15ppm~200ppm、15ppm~100ppm、15ppm~50ppm、50ppm~225ppm、50ppm~200ppm、50ppm~175ppm、50ppm~150ppm、50ppm~150ppm、50ppm~125ppm、50ppm~100ppm、及び50ppm~75ppmの量のジルコニウムを供給するのに十分でなければならない。目安として、表5は、ジルコニウムの特定の目標濃度を達成するために必要なジルコニアドーパントの量を提供する。
【表5】
【0127】
ジルコニウムドーパント化合物が酸化ジルコニウムである実施形態の場合、ジルコニア粉末は、0.08~0.20μmのd10、0.3~0.7μmのd50及び0.9~5μmのd90を有する粒子径分布を有し得る。本発明の一実施形態による混合物の出発材料として使用される酸化ジルコニウム粉末の平均粒子径は0.3~1μmであり得る。
【0128】
ジルコニア粉末は、典型的には、ASTM C1274に従って測定して1~16m2/g、好ましくは2~14m2/g、好ましくは4~12m2/g、より好ましくは5~9m2/gの比表面積(SSA)を有する。
【0129】
ジルコニア粉末出発材料の純度は、好ましくは99.8%超、好ましくは99.9%超、好ましくは99.95%超、好ましくは99.975%超、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超である。これは、本明細書に開示されるICPMS(誘導結合プラズマ質量分析)法を用いて測定して、2000μm以下、好ましくは1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25~150ppmの総不純物含有量に相当する。本明細書に開示される実施形態で使用されるジルコニアは、典型的には、多くの市販のジルコニア粉末において一般的であるように、約2~5重量%の少量のHfを含む。
【0130】
他の実施形態では、粉末混合物は、本明細書に開示されるin situ反応相焼結プロセスによってYAGを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層を形成するために、約2m2/g以上の比表面積を有するYAG相を含まないことが好ましい場合がある。本明細書に開示される全ての純度測定は、特定の元素の報告限界を超えて測定されたものであり、Agilent製のICPMS、7900 ICP-MSモデルG8403、四重極質量分析システムを使用して完了した。より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。
【0131】
複数の実施形態では、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニアを含む焼結セラミック体は、37.5mol%の酸化イットリウム及び62.5mol%の酸化アルミニウムの化学量論的粉末混合物から形成され得る。”Mechanisms of nonstoichiometry in Y3Al5O12”Patel et al,2008,Appl.Phys.Lett.93,191902(2008)に報告されている研究は、位相領域の幅が0.1mol%以下の分散を有し得ることを示した。したがって、化学量論的YAG(37.5%アルミナ/62.5%イットリア)のものからの0.1mol%以下の偏差は、相純粋な酸化イットリウムアルミニウムガーネットの形成をもたらし得る。したがって、複数の実施形態では、99体積%超の量のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)ガーネット立方晶相(Y3Al5O12)を含むセラミック焼結体は、37.4~37.6mol%の酸化イットリウム並びに62.6及び62.4%molの酸化アルミニウムの比の粉末混合物に組み合わされた出発粉末から形成され得る。重量で、粉末混合物は、約42.9~43.4%のアルミナ及び57.1~56.6%のイットリアから形成され得る。
【0132】
酸化イットリウム、酸化アルミニウム、及びジルコニウム化合物ドーパントを含む上述の出発粉末を組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、湿式又は乾式ボール(軸方向回転)ミル粉砕、湿式又は乾式転動(エンドオーバーエンド又は垂直)混合、及びこれらの組合せの粉末調製技術を使用して実施することができる。
【0133】
混合中に出発粉末の純度を維持するために、高純度(>99.99%)アルミナ媒体を使用して、乾燥条件下でのボールミル粉砕又はエンドオーバーエンド転動混合を達成することができる。本明細書で使用される高純度アルミナ媒体は、ICPMS法を使用して試験され、99.997%の純度を有することが見出された。乾式ボール又は転動混合のための媒体充填量は、大きな寸法(約30mm)の媒体要素から粉末重量で約50%の媒体充填量までの間で変動し得る。乾式ミル粉砕又は混合は、50~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125のRPMのRPMを使用して、12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは24~48時間にわたって行われ得る。
【0134】
湿式ボールミル粉砕又は転動混合は、出発粉末を、エタノール、メタノール、及び他のアルコール、並びに/又は水などの様々な溶媒中に懸濁してスラリーを形成することによって行うことができる。スラリーは、ミル粉砕又は混合中の粉末充填量が粉末重量で5~50%、好ましくは粉末重量で10~40%、好ましくは粉末重量で20~40%となるように形成されてもよい。湿式混合又はミル粉砕は、移動度の増大を通じて粉末の分散の改善を実現し、加熱処理又は焼成の前に微細スケールの均一な混合をもたらす。特定の実施形態では、分散剤は、任意の数の市販の分散剤、例えば、ポリメチルメタクリレート(poly methyl methacrylate、PMMA)及びポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone、PVP)などを使用して、スラリーに任意選択で添加され得る。分散剤は、場合により、粉末重量で0(分散剤なし)~0.2%、好ましくは粉末重量で0~0.1%の量で添加され得る。媒体充填量は、ミル粉砕中に媒体を使用しないものから、粉末重量で50%以上、好ましくは粉末重量で40~100%、好ましくは粉末重量で60~100%、好ましくは粉末重量で50~80%の充填量の媒体まで変動し得る。湿式ボールミル粉砕又は転動混合は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは8~12時間にわたって行われ得る。ボールミル粉砕は、最大約200mmの直径を有する容器に対して、50~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPMを使用することができる。エンドオーバーエンド転動混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行われ得る。
【0135】
当業者に公知のジェットミル粉砕プロセスもまた、粉末を完全に混合して、狭い粒子径分布を有する粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物を形成するために使用することができる。ジェットミル粉砕は、不活性ガス又は空気のいずれかの高速ジェットを使用して、ミリングも混合媒体も使用せずに出発粉末及び/又は粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物の粒子を衝突させ、したがってミル粉砕される粉末の初期純度を維持する。本明細書に開示される出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、単独か、又は本明細書に開示される、開示される粉末ミル粉砕/混合プロセスのいずれか若しくは全てとの組合せであるかにかかわらず、約100psiの圧力でジェットミル粉砕に供されてもよい。ジェットミル粉砕の後、粉末又は粉末混合物を任意選択で、繰り返し回数や順序の制限なく、例えば45~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0136】
湿式ボールミル粉砕、転動混合及び/又はジェットミル粉砕の使用は、微粒子及び凝集体を分解し、粒子移動度の増大を通じて分散を改善し、微細スケール混合を提供し、焼成前に均質な粉末混合物を提供することができる高エネルギープロセスである。摩砕式ミル粉砕(attrition milling)、高剪断混合、遊星ミル粉砕、及び当業者に知られている他の手順の追加の粉末調製手順も適用され得る。スラリーは、回転蒸発法によって乾燥されてもよい。他の実施形態では、スラリーは、当技術分野で公知の噴霧乾燥技術を使用して乾燥されてもよい。乾燥の前又は後に、粉末混合物を、例えば35~75μmの開口部を有するメッシュを用いて篩い分けすることができる。前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組合せで使用され得る。
【0137】
乾燥後、工程a)の粉末混合物の表面積は、2~17m2/g、2~14m2/g、2~12m2/g、2~10m2/g、4~17m2/g、6~17m2/g、8~17m2/g、10~17m2/g、4~12m2/g、4~10m2/g、及び5~8m2/gであり得る。
【0138】
プロセスのこの時点で、多層焼結セラミック体が形成される場合、第2の粉末混合物が形成され得る。第2の粉末混合物は、例えば、アルミナ粉末と、ジルコニア粉末であって、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末の少なくとも一方を含む、ジルコニア粉末とを組み合わせて、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2021年6月29日に出願された米国特許仮出願第63/216,356号に記載の第2の粉末混合物を作製することを含み得る。
【0139】
本明細書に開示される方法の工程b)は、第1の粉末混合物(及び任意の追加の粉末混合物)を焼成温度に加熱することと、第1の焼成粉末混合物(本明細書では「焼成粉末混合物」とも呼ばれる)を形成するための持続時間にわたって焼成温度を維持することとを含む。本明細書に開示される焼成は、酸素含有環境において周囲圧力下で行われてもよいが、他の圧力及び焼成環境が使用されてもよい。
【0140】
焼成は、水分を除去し、粉末混合物の表面状態が焼結前に均一となることを確実にするために行われてもよい。特定の実施形態では、焼成は、表面積を減少させるために行われ得る。他の実施形態では、焼成は出発粉末の表面積の減少を引き起こさない。
【0141】
熱処理工程による焼成は、600℃~1100℃、好ましくは600~1000℃、好ましくは600~900℃、好ましくは700~1100℃、好ましくは800~1100℃、好ましくは800~1000℃、好ましくは850~950℃の温度で行われ得る。焼成は、酸素含有環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは4~6時間にわたって行われ得る。焼成後、焼成粉末混合物を、例えば45~400μmの開口部を有するメッシュスクリーンを通して篩い分けして、並びに/又は公知の方法に従って転動及び/若しくはブレンドして、焼成粉末混合物を形成することができる。
【0142】
YAG相を形成するための焼成粉末混合物は、好ましくは0.06~4μm、好ましくは0.08~4μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.08~3μm、好ましくは0.08~2μm、好ましくは0.08~1μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは1~2μm、好ましくは1~3μmのd10粒子径を有し得る。
【0143】
焼成粉末混合物のd50粒子径は、0.7~50μm、好ましくは1~40μm、好ましくは1~30μm、好ましくは1~20μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μm、好ましくは5~50μm、好ましくは10~50μm、好ましくは20~50μm、好ましくは30~50μm、好ましくは3~8μm、好ましくは5~10μm、好ましくは6~15μmで変動し得る。
【0144】
焼成粉末混合物のd90粒子径は、好ましくは10~350μm、好ましくは10~300μm、好ましくは10~250μm、好ましくは10~200μm、好ましくは10~175μm、好ましくは10~150μm、好ましくは10~100μm、好ましくは10~75μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~30μm、好ましくは15~45μm、好ましくは20~40μm、好ましくは20~350μm、好ましくは40~350μm、好ましくは60~350μm、好ましくは100~350μm、好ましくは150~350μm、好ましくは200~350μm、好ましくは12~330μm、好ましくは100~330μm、好ましくは100~250μmであり得る。
【0145】
特定の実施形態では、本明細書に開示される焼成条件は、YAP、YAM及びYAG並びにそれらの組合せの結晶相の1つ以上の形成、並びに/又は粉末混合物の凝集をもたらし、したがって広範囲の粒子径又は凝集体サイズをもたらし得る。したがって、複数の実施形態では、本明細書で言及される粒子径は、単粒子を含むことができ、他の実施形態では、本明細書で言及される粒子径は、本明細書で開示されるレーザ粒子径検出方法を使用して、大きな単粒子として測定することができる、2つ以上の粒子を含む凝集体又は複数の粒子の凝集体を含むことができる。単粒子又は複数の粒子の凝集体のいずれか又は両方を含む粒子は、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、イットリウムアルミニウム単斜晶(YAM)、及びYAG(ガーネット)相、並びにそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含み得る。他の実施形態では、本明細書に開示されるより低い温度の焼成条件は、出発材料に対する粒子径分布に影響を与えない可能性があり、粒子径分布は、出発粉末材料と同じ範囲又は類似している。焼成中のロット間の変動及び熱伝達の維持もまた、粒子径分布の拡大に寄与し得る。本明細書に開示される出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、本明細書に開示される混合/ミル粉砕プロセスのいずれか1つ又は組合せに供され得る。したがって、広範囲の粒子径分布は、本明細書に開示されるような焼成条件及びプロセスから生じ得る。
【0146】
焼成粉末混合物は、ASTM C1274に従って測定して、約1m2/g~約18m2/g、好ましくは1m2/g~約14m2/g、好ましくは約1m2/g~約10m2/g、好ましくは約1m2/g~約8m2/g、好ましくは約2m2/g~約18m2/g、好ましくは約2m2/g~約14m2/g、好ましくは約2m2/g~約10m2/g、好ましくは約3m2/g~約9m2/g、好ましくは約3m2/g~約6m2/gの比表面積(SSA)を有し得る。
【0147】
焼成粉末混合物は、焼成粉末混合物の質量に対して、5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0148】
表6は、本開示による多結晶YAG層に形成される前の典型的な焼成粉末混合物のICPMS純度結果を示す。
【表6】
【0149】
一実施形態では、焼結セラミック体は、ICPMSによって決定して50ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する多結晶イットリウムアルミニウムガーネットを含む。別の実施形態では、焼結セラミック体は、ICPMSによって決定して5ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する多結晶イットリウムアルミニウムガーネットを含む。更に別の実施形態では、焼結セラミック体は、ICPMSによって決定して50ppm以下の微量元素Li、Na、Mg、K、Ca、B、P、Fe、Cu、Cr、Zn、In、Sn、及びSb(合計)の純度を有する多結晶イットリウムアルミニウムガーネットを含む。
【0150】
本明細書に開示される方法の工程c)は、焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出すことを含む。本明細書に開示されるプロセスで使用される放電プラズマ焼結(SPS)装置は、通常は円筒形グラファイトダイである少なくとも1つのグラファイトダイを備える。グラファイトダイにおいて、第1の焼成粉末混合物は、2つのグラファイトパンチの間に配置される。多層焼結セラミック体が形成される実施形態では、焼成粉末混合物は、焼結材料の所望の層に対応するように順次添加される。
【0151】
好ましい実施形態では、SPSツールは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁が、少なくとも1種のセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する、ダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチ及び下部パンチとを備え、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動するとき、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間にギャップを画定し、ギャップは10μm~100μmの幅である。いくつかの実施形態では、ギャップは10μm~70μmの幅である。好ましくは、ダイ及びパンチはグラファイト製である。そのようなSPSツールは、2020年10月3日に出願された米国特許仮出願第63/087,204号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
複数の実施形態では、1種以上(多層の実施形態の場合)の焼成粉末混合物をグラファイトダイ内に配置することができる(多層の実施形態の場合には順次)。当業者に公知の真空条件は、ダイによって取り囲まれたパンチ間の粉末内に確立される。典型的な真空条件としては10-2~10-3トルの圧力が挙げられる。主に、空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するため、及び粉末混合物から空気の大部分を除去するために、真空が適用される。多層の実施形態では、粉末混合物の配置の順序は、多層焼結セラミック体及びそれから形成される構成要素の所望の構造を達成するために、必要に応じて逆にしても繰り返してもよい。そのような実施形態では、第1及び第2の焼成粉末混合物の層は、焼結中にグラファイトダイ内に配置されたときに隣接しており、その後、焼結して第1及び第2の隣接層を形成する。
【0153】
本明細書に開示される方法の工程d)は、焼結温度に加熱している間、焼成粉末混合物の少なくとも1つの層に圧力を加え、焼結を行って、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体を形成することを含み、工程e)は、例えば、焼結装置の熱源を除去してセラミック焼結体を冷却することによって、焼結セラミック体の温度を低下させることを含む。
【0154】
グラファイトパンチ間に配置された焼成粉末混合物に圧力を加え、5MPa~100MPa、好ましくは5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~40MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは5MPa~15MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、好ましくは10MPa~30MPa、好ましくは10MPa~20MPa、好ましくは13MPa~18MPa、好ましくは15MPa~60MPa、好ましくは15MPa~40MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは20~40MPaの圧力に増加させることができる。圧力は、ダイ内の粉末混合物に軸方向に加えられる。
【0155】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチとダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗/ジュール加熱を促進するグラファイトなどの導電性材料から構成され得る。本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。したがって、示された温度が焼結される焼成粉末混合物中で実際に実現されるように、温度は処理されている焼成粉末混合物の可能な限り近くで測定されることが好ましい。
【0156】
ダイに提供された焼成粉末混合物及び/又は層状粉末混合物に熱を加えることにより、1000~1700℃、好ましくは1200~1700℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1500~1700℃、より好ましくは1600~1700℃、好ましくは1200~1600℃、好ましくは1200~1400℃、好ましくは1400~1600℃、好ましくは1500~1600℃の焼結温度が容易になる。焼結は、典型的には、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは80~100分、好ましくは100~120分、好ましくは30~60分、好ましくは15~45分の等温保持時間で達成され得る。特定の実施形態では、焼結は等温保持時間なしで達成され得、焼結温度に達したら、本明細書に開示される冷却速度が開始される。焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、セラミック焼結体は、焼結装置のツールセットに配置したときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。多結晶YAGは、好ましくは、本明細書に開示される粉末混合物の粒子径分布、純度及び/又は表面積の特性の組合せによる、焼結工程中の反応焼結によってin situで形成される。
【0157】
一実施形態では、圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変更してもよく、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態では、最初に所望の温度に達するように示された熱を加え、その後に、示された圧力を加えることも可能である。本開示による第3の実施形態では、温度と圧力は、焼結される焼成粉末混合物に同時に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0158】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の焼成粉末混合物を間接的に加熱するために使用することができる。
【0159】
他の焼結技術とは対照的に、焼結助剤は必要とされない(ただし、必要に応じて使用されてもよい)。更に、最適なエッチング性能のために高純度の出発粉末が望ましい。焼結助剤がなく、本明細書に開示される純度99.99%~約99.9999%の高純度出発材料を使用することは、半導体エッチングチャンバ内のセラミック焼結構成要素として使用するための改善されたエッチング耐性を提供する高純度、高密度/低空隙率セラミック焼結体の製作を可能にする。
【0160】
本発明の一実施形態では、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.1℃/分~100℃/分、0.1℃/分~50℃/分、0.1℃/分~25℃/分、好ましくは0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5~25℃/分、好ましくは0.5~10℃/分、好ましくは0.5℃/分~5℃/分、好ましくは0.75~25℃/分、好ましくは1~10℃/分、好ましくは1~5℃/分の特定の加熱勾配を有する予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0161】
本発明の更なる実施形態では、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.50MPa/分~30MPa/分、好ましくは0.75MPa/分~20MPa/分、より好ましくは1~10MPa/分の特定の加圧勾配を有する予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0162】
プロセス工程d)の終わりに、方法は、当業者に知られているように、真空条件下でのプロセスチャンバの自然冷却(非強制冷却)に従って焼結セラミック体の温度を低下させる工程e)を更に含む。プロセス工程e)による更なる実施形態では、セラミック焼結体は、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン又は窒素の対流下で冷却され得る。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。更なる実施形態では、セラミック焼結体は、酸素環境中、強制対流条件下で冷却される。冷却工程を開始するために、焼結工程dの終わりに、焼結装置に加えられた電力を除き、セラミック焼結体に加えられた圧力を除き、その後に、工程e)に従って冷却を行う。本明細書に開示されるセラミック焼結体の冷却速度は、0.5~20℃/分、1~10℃/分、好ましくは1~8℃/分、好ましくは1~5℃/分、好ましくは2~10℃/分、好ましくは2~8℃/分、好ましくは2~5℃/分であり得る。プロセス工程d)の終わりに、焼結セラミック体は、典型的には色が非常に暗い、すなわち、L*値<30を有する。
【0163】
任意選択で、しかし好ましくは、本明細書に開示される方法は、熱を加えて焼結セラミック体(又はそれから形成された構成要素)の温度を上昇させて、アニーリング温度に到達させ、アニーリングを行うことによって、焼結セラミック体をアニーリングする工程と、アニーリングされた焼結セラミック体(又はそれから形成された構成要素)の温度を低下させる工程と、を含む。本明細書に開示される実施形態による任意選択のアニーリング工程では、多層焼結セラミック体は、約900~約1800℃、好ましくは約1250~約1700℃、好ましくは約1300~約1650℃、及び好ましくは約1400~約1600℃の温度に供されてもよい。
【0164】
複数の実施形態では、焼結セラミック体の任意選択のアニーリングは、0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の加熱及び/又は冷却速度で行われ得る。
【0165】
任意選択のアニーリング工程の持続時間は、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間であり得る。
【0166】
ある実施形態では、本開示による任意選択のアニーリングは、焼結プロセスの後、焼結装置内で行われ得る。任意選択のアニーリングプロセスは、好ましくは、強制対流などの酸化条件下で、又は空気中で行うことができる。アニーリングは、化学量論的補正のための酸素空孔の低減及び焼結体又は構成要素における応力の低減を通じて、焼結セラミック体又はそれから製作される構成要素の化学的及び物理的特性の向上をもたらす。焼結耐食性構成要素をアニーリングする任意選択のプロセス工程は、酸化雰囲気中で行われ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドの増加、機械的取り扱い性の改善及び空隙率の減少を提供し得る。多層焼結セラミック体をアニーリングする任意選択のプロセス工程が実行された後、焼結された、場合によってはアニーリングされた多層焼結セラミック体の温度は、熱源の除去によって周囲温度まで低下する。プロセス工程e)の終わりに、アニーリングされた焼結セラミック体は、典型的には、酸化のために色がより明るく、すなわち、70~85のL*値を有する。本明細書に開示される方法に従って作製された22インチ円形部品(2,452cm
2)のアニーリングされたYAG層上で色測定を行った例を表7に示す。部品全体で5回の測定を行い、各色変数の平均及び標準偏差を表7に示す。
【表7】
【0167】
本明細書に開示される方法の工程f)は、焼結セラミック体を1~400分の時間にわたってUV放射線に曝露することである。UV曝露工程の目的は、ドープされたジルコニウムを活性化して焼結セラミック体に赤色を付与することである。UV放射線曝露の時間の長さは、焼結セラミック体に付与される赤色の均一性及び強度によって決定されるべきである。総曝露時間は、焼結セラミック体に照射するために使用されるUVランプの強度に依存する。
【0168】
好ましい実施形態では、UV放射線は、焼結セラミック体から3インチの距離で約6時間の曝露時間にわたって、例えばH+バルブ及びR500リフレクタを使用するHeraeus Noblelight Hammer Mark II LH10 Lamp SystemなどのUVランプによって送達される。
【0169】
プロセス工程f)の終わりに、焼結セラミック体は、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層は少なくとも1つの表面を含み、少なくとも1つの表面は、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、少なくとも1つの表面は50~77、好ましくは50~60のL*値、6~12のa*値及び3~6のb*値を示し、少なくとも1つの層は500μm~2cmの厚さを有し、L*及びa*の値は少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する。
【0170】
上述のプロセスは、例えば、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmの最大寸法を有する、本明細書に開示される焼結セラミック体を製造するのに好適である。サイズが大きいにもかかわらず、本明細書に開示される方法に従って製造された焼結セラミック体は、YAGの理論値の99.5%程度の均一な密度を有する。焼結セラミック体は、例えば、直径が最大寸法となるディスク形状に形成される。開示されるプロセスは、迅速な粉末圧密化及び高密度化を提供し、焼結セラミック体において約10μm以下の最大結晶粒径を保持し、最大寸法にわたって少なくとも1つの第1の層内で高密度及び低空隙率を達成する。微細な結晶粒径、高密度及びCTE一致のこの組合せは、機械加工、取り扱い性及び半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての使用に好適な大きな寸法の高強度焼結セラミック体を提供する。
【0171】
本明細書に開示される方法の工程j)は、焼結セラミック体(又はアニーリングされた焼結セラミック体)を機械加工して、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサ要素、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の焼結セラミック構成要素を作製することを含む。当業者に知られている機械加工、ドリル加工、穿孔、研削、ラッピング、研磨などを必要に応じて実施して、焼結セラミック体をプラズマ処理チャンバで使用するための構成要素の所定の形状に形成することができる。本明細書に開示される組成範囲の粉末混合物の使用は、CTEが一致した層の使用により改善された機械加工性を有する焼結セラミック体を提供することができ、それによって、開示される方法の機械加工工程中の応力を低減する。
【0172】
本明細書に開示される方法及び組成物は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、それらに限定されるとみなされないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0173】
本開示の全体的な性質をより明確に示すために以下の実施例を含める。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0174】
全ての実施例についての測定は、開示された装置及び方法を用いて行われた。純度測定は、Agilent 7900 ICP-MSモデルG8403のICP-MSを使用して行った。粉末及び粉末混合物の比表面積(SSA)は、Horiba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を使用して測定した。比表面積測定は、ASTM C1274に従って行った。粒子径は、10nm~5mmの粒子径を測定することができるHoribaモデルLA-960 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを用いて測定した。全ての例について、汚染を最小限に抑える必要性を考慮すると、使用される原料中の望ましくない元素の総濃度は最大で1原子%である。
【0175】
以下の実施例で作製された焼結セラミック体は円形であり、620mmの直径を有していた。
【0176】
実施例1 YAG-ドーパントなし
4.5~6m2/gの比表面積、2.0~3.5μmのd10粒子径、4.0~6.5μmのd50粒子径及び6.5~10μmのd90粒子径を有するイットリア(純度99.9984%、質量に対して約16ppmの不純物)の粉末と、6~8m2/gの比表面積、0.075~0.2μmのd10粒子径、2.5~5.5μmのd50粒子径及び15~22μmのd90粒子径を有するアルミナ(純度約99.9995%、質量に対して約5ppmの不純物)の粉末とをモル比で組み合わせて粉末混合物を形成し、これが焼結時に反応して立方晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含むセラミック焼結体を形成する。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノール及び粉末を合わせた重量で約35%の量で添加して、スラリーを形成した。当業者に公知の転動混合又はエンドオーバーエンド混合を20時間にわたって行い、その後、公知の方法に従って回転蒸発を使用してエタノールを粉末混合物から抽出した。空気中1050℃で6時間焼成したとき、焼成粉末混合物は、4~6m2/gの比表面積を有すると測定された。粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、例えば45~400μmの開口径を使用して篩い分けされ得、当業者に公知の方法に従って様々なプロセス工程で焼成、ブレンド及び/又はミル粉砕され得る。純度を、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定し、全構成成分から計算される酸化物の総質量に対して約5ppmの焼成粉末混合物の総不純物含有量が測定され、これは約99.9995%の純度に相当した。イットリア及びアルミナの出発粉末、並びに本明細書に開示される焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量には、Siは含まれない。Siについて、本明細書に開示される純度を測定するICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末並びに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルでシリカの形態のSiを含み得る。焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定された容積内に配置し、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。5MPaの圧力を加え、容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から約10℃/分で800℃に加熱し、その後、約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度勾配を先のように60分間にわたって1600℃及び15MPaの焼結条件に達するまで続けて、150mmの最大寸法を有するディスク形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。密度測定は、ASTM B962-17に従って、焼結されたままの試料及びアニーリングされた試料に対して行った。5回の測定にわたって平均して、4.549g/ccの密度を得た。これは、密度測定から計算された、YAGの理論密度(本明細書では4.556g/ccとして報告される)の99.854%及び対応する体積空隙率0.146%にそれぞれ対応する。処理された試料は、光透過のために薄く研削された場合、わずかに透明な暗灰色のセラミックの外観を有する。次いで、試料を、1400℃まで1~5℃/分の加熱速度を用いて1400℃で8時間酸化し、半透明の白色材料を得る。
【0177】
実施例2 Zrドープ
4.5~6m2/gの比表面積、2.0~3.5μmのd10粒子径、4.0~6.5μmのd50粒子径及び6.5~10μmのd90粒子径を有するイットリア(純度99.9984%、質量に対して約16ppmの不純物)の粉末と、6~8m2/gの比表面積、0.075~0.2μmのd10粒子径、2.5~5.5μmのd50粒子径及び15~22μmのd90粒子径を有するアルミナ(純度約99.9995%、質量に対して約5ppmの不純物)の粉末とをモル比で組み合わせて粉末混合物を形成し、これが焼結時に反応して立方晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含むセラミック焼結体を形成する。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノール及び粉末を合わせた重量で約35%の量で添加して、スラリーを形成した。更に、6.0~8.0μm2/gの比表面積、0.075~0.2μmのd10粒子径、0.25μm~0.45μmのd50粒子径及び1.0~2.0μmのd90粒子径を有するイットリア安定化ジルコニア粉末を、適切なドーパントレベル(純度約99.9954%、質量に対して約46ppmの不純物、安定化ジルコニアで典型的であるような典型的なイットリウム及びハフニウム不純物を除く)で混合物に入れた。当業者に公知の転動混合又はエンドオーバーエンド混合を20時間にわたって行い、その後、公知の方法に従って回転蒸発を使用してエタノールを粉末混合物から抽出した。空気中1050℃で6時間焼成したとき、焼成粉末混合物は、4~6m2/gの比表面積を有すると測定された。粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、例えば45~400μmの開口径を使用して篩い分けされ得、当業者に公知の方法に従って様々なプロセス工程で焼成、ブレンド及び/又はミル粉砕され得る。純度を、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定し、全構成成分から計算される酸化物の総質量に対して約5ppmの焼成粉末混合物の総不純物含有量が測定され、これは約99.9995%の純度に相当した。イットリア及びアルミナの出発粉末、並びに本明細書に開示される焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量には、Siは含まれない。Siについて、本明細書に開示される純度を測定するICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末並びに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルでシリカの形態のSiを含み得る。焼成粉末混合物を、本明細書に開示されるSPS焼結装置のツールセットによって画定された容積内に配置し、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。5MPaの圧力を加え、容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から約10℃/分で800℃に加熱し、その後、約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度勾配を先のように60分間にわたって1600℃及び15MPaの焼結条件に達するまで続けて、150mmの最大寸法を有するディスク形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。密度測定は、ASTM B962-17に従って、焼結されたままの試料及びアニーリングされた試料に対して行った。5回の測定にわたって平均して、4.549g/ccの密度を得た。これは、密度測定から計算された、YAGの理論密度(本明細書では4.556g/ccとして報告される)の99.854%及び対応する体積空隙率0.146%にそれぞれ対応する。処理された試料は、光透過のために薄く研削された場合、わずかに透明な暗赤色/黒色のセラミックの外観を有する。次いで、試料を、1400℃まで1~5℃/分の加熱速度を用いて1400℃で8時間酸化し、半透明の白色材料を得る。
【0178】
ドープされたジルコニウムを含む試料及び含まない試料について、UV照射工程を、焼結セラミック体から3インチの距離で約6時間の曝露時間にわたって、UVランプ(H
+バルブ及びR500リフレクタを使用するHeraeus Noblelight Hammer Mark II LH10 Lamp System)を用いて行った。結果を表8に示す。試料144は上記の実施例1に従って調製し、試料135、149及び142は実施例2に従って調製したが、ドープされたジルコニウムの量は様々であった。試料144(0ppmのZr)は、わずかな色変化応答を有し、135試料の強い赤色着色と比較してわずかなピンク色を呈した。
【表8】
【0179】
実施例3:空隙率測定
実施例2の方法(50ppmのジルコニウムをドープした)に従って、2つの焼結セラミック体(符号210及び219)を作製した。表面を研磨し、空隙率のレベルを、Phenom XL走査型電子顕微鏡から得られた倍率10,000倍のSEM画像(
図2A及び
図2B)を用いて、試料表面にわたって測定した。画像を解析のためにImageJソフトウェアにインポートした。ImageJは、米国の国立衛生研究所(National Institute of Health、NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。
【0180】
細孔径は、本明細書に開示されるImageJソフトウェア方法を使用して7つのSEM画像にわたって測定した。試料210は1.01μmの最大細孔径を示し、試料219は0.94μmの最大細孔径を示した。
【0181】
多くの実施形態を本明細書に開示されるとおり記載した。しかしながら、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含む、焼結セラミック体であって、前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、前記少なくとも1つの表面が5μmを超えない細孔径を有する細孔を含み、前記少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa*値を示し、前記少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、前記L*及び21*の値が前記少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、焼結セラミック体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの層が、3~6のb*値を有する、請求項1に記載の焼結セラミック体。
【請求項3】
前記b*値が、前記少なくとも1つの表面にわたって15%以下で変動する、請求項2に記載の焼結セラミック体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの表面にわたって、前記L*の値が3%以下で変動し、前記a*の値が9%以下で変動する、請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項5】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、全ての細孔の少なくとも97%以上について1.75μmを超えない細孔径を有する細孔を含み、前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、0.1~3%の体積空隙率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項6】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが、存在する任意のAl
2O
3又はジルコニウムを除いて93~99.8体積%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項7】
多結晶セラミック体が、ICPMSによって決定して50ppm以下の微量金属Na、Fe、及びMgの不純物を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項8】
前記細孔が表面積の0.2%未満を占める、請求項1~7のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項9】
100mm~625mmの最大寸法を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の焼結セラミック体。
【請求項10】
前記最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項17又は18に記載の焼結セラミック体。
【請求項11】
焼結セラミック体を調製するための方法であって、
a.イットリア粉末、アルミナ粉末、及び15~500ppmのジルコニウムを供給するジルコニウム含有粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、
b.熱を加えて前記第1の粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持して焼成を行うことにより、前記第1の粉末混合物を焼成して、第1の焼成粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記第1の焼成粉末混合物を配置して、前記第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.焼結温度に加熱している間、前記第1の焼成粉末混合物の前記少なくとも1つの層に圧力を加え、焼結を行って、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む前記少なくとも1つの層を含む焼結セラミック体を形成する工程と、
e.前記焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
f.前記焼結セラミック体を1~400分の時間にわたってUV放射線に曝露する工程と、
を含み、
前記第1の焼成粉末混合物が150ppm以下の総不純物含有量を有し、
工程a)の前記イットリア粉末及び前記アルミナ粉末がそれぞれ、ASTM C1274に従って測定して約18m
2/g以下の比表面積を有し、
焼結セラミック層が、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)及び15ppm~500ppmのジルコニウムを含む少なくとも1つの層を含み、
前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの表面を含み、
前記少なくとも1つの表面が、5μmを超えない細孔径を有する細孔であって、前記細孔の少なくとも95%について1.5μmの最大細孔径を有する、細孔を含み、
前記少なくとも1つの表面が50~77のL*値及び6~12のa
*値を示し、
前記少なくとも1つの層が500μm~2cmの厚さを有し、
前記L
*及びa
*の値が前記少なくとも1つの表面にわたって10%以下で変動する、
焼結セラミック体を調製するための方法。
【請求項12】
以下の工程:
g.熱を加えて前記焼結セラミック体の温度を上昇させて、アニーリング温度に到達させ、アニーリングを行うことによって、前記焼結セラミック体をアニーリングする工程と、
h.アニーリングされた多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、
i.任意選択で、前記焼結セラミック体又は前記アニーリングされた焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバ内の誘電体窓、RF窓、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル若しくはガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバライナ、プラズマ源アダプタ、ガス入口アダプタ、ディフューザ、静電ウエハチャック(ESC)、チャック、パック、イオンサプレッサ要素、フェースプレート、アイソレータ、スペーサ、及び/又は保護リングの形状の焼結セラミック構成要素を作製する工程と、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを備え、前記第1及び第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1及び第2のパンチの少なくとも一方が前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1及び第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1及び第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結温度が1000~1500℃である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】