IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンドー バイオテクノロジー カンパニー,リミテッドの特許一覧

特表2024-537627糖尿病における創傷治癒促進のための医薬品調製におけるマンゴスチン(mangosteen)果実殻(fruit shell)抽出物の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】糖尿病における創傷治癒促進のための医薬品調製におけるマンゴスチン(mangosteen)果実殻(fruit shell)抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/38 20060101AFI20241008BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K36/38
A61P17/02
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514615
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2022076906
(87)【国際公開番号】W WO2023155158
(87)【国際公開日】2023-08-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524084300
【氏名又は名称】サンドー バイオテクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ク-チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,エン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,スーイン
(72)【発明者】
【氏名】チュァン,イ-ピン
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC35
(57)【要約】
糖尿病において創傷治癒を促進するための医薬組品調製における組成物の使用であって、前記組成物がマンゴスチン果実殻抽出物の有効量を含む、前記使用を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む、糖尿病における創傷治癒促進のための医薬品調製における組成物の使用。
【請求項2】
前記マンゴスチン果実殻抽出物がマンゴスチン果実殻の水抽出物および/またはマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物である、請求項1の使用。
【請求項3】
前記マンゴスチン果実殻が前記マンゴスチン果実殻の外殻および/または前記マンゴスチン果実殻の内殻である、請求項1の使用。
【請求項4】
前記マンゴスチン果実殻が前記マンゴスチン果実殻の内殻である、請求項1の使用。
【請求項5】
前記マンゴスチン果実殻抽出物がα-マンゴスチンおよびγ-マンゴスチンを含む、請求項1の使用。
【請求項6】
前記組成物が非経口調製物である、請求項1の使用。
【請求項7】
前記非経口調製物が外用剤である、請求項6の使用。
【請求項8】
前記マンゴスチン果実殻抽出物の有効量が0.5%(w/w)~20%(w/w)である、請求項1の使用。
【請求項9】
前記マンゴスチン果実殻抽出物の有効量が1%(w/w)~15%(w/w)である、請求項1の使用。
【請求項10】
前記マンゴスチン果実殻抽出物の有効量が1.25%(w/w)~10%(w/w)である、請求項1の使用。
【請求項11】
前記創傷が、糖尿病性足潰瘍(DFU)を含む、請求項1の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病における創傷治癒促進のための医薬品調製におけるマンゴスチン果実殻抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体最大の臓器である。多くのタイプの皮膚疾患が存在する。皮膚疾患は、急性(数分から数時間しか続かない)であることも、または数日、数ヶ月、数年、さらには一生に渡り個体に影響を及ぼしうる慢性状態であることもありうる。皮膚疾患は、真菌、細菌、またはウイルス源によって引き起こされることも、あるいは非感染性免疫応答、例えばアレルゲンを伴うまたは伴わない炎症反応であることも、あるいは特発性であることもありうる。したがって、皮膚疾患の症状は多様であることもあり、軽度の掻痒、発赤および腫脹から、重度の膿および侵害受容性疼痛、例えば損傷性潰瘍に渡る。皮膚疾患は、個体の生活の質に重大な影響を及ぼしうる。
【0003】
糖尿病(DM)は、インスリン産生および/または機能の障害による代謝性疾患であり、高血糖を導く。DM患者には通常、多くの合併症が起こり、このうちの1つが自己修復能障害である。
【0004】
DMにおける創傷治癒障害は、血管、神経障害、免疫および生化学的構成要素を含む、いくつかの要因に関連し、これらはすべて高血糖によって引き起こされる。高血糖は、血管硬化症を導き、血管硬化症は循環遅延および微小血管機能不全を引き起こして、組織酸素供給減少を引き起こす。高血糖はまた、創傷内への白血球遊走も減少させ、創傷はより感染しやすくなり、DMにおける末梢神経障害は、その領域を無感覚にし、疼痛を感じる能力を減少させ、これにより、創傷は直ちには気付かれず、適切に治療されず、慢性化につながりうる(Spampinato SF, Caruso GI, De Pasquale R, Sortino MA, Merlo S. The Treatment of Impaired Wound Healing in Diabetes: Looking among Old Drugs. Pharmaceuticals (Basel). 2020;13(4):60.)
【0005】
特に、糖尿病性足潰瘍(DFU)はDMの主要な合併症であり、糖尿病患者の15%で起こる。DFUに関与するリスク要因は、神経障害、血管疾患、および感染であると見なされる。研究によって、下肢切断リスクは、DMではないヒトにおけるより、DMにおいて15~46倍高いことが示されてきている。
【0006】
DFUの臨床治療には、血糖コントロール、足底圧の緩和、抗生物質、末梢血循環の改善、創傷被覆、および手術が含まれるべきである。
【0007】
マンゴスチンは、乳癌予防および筋肉関連疾患の分野で用いられてきており、また、日常生活において栄養補助剤および化粧品として開発されるとともに、急性肝炎、肝線維症および肝硬変防止にも用いられてきている。
【0008】
Matsumoto et al.は、マンゴスチン果実殻から精製されたα-マンゴスチン、β-マンゴスチン、γ-マンゴスチン、およびメチル-β-マンゴスチンを研究し、細胞周期の多様な段階でのこの化合物の阻害性効果を調べ、この化合物が、抗細胞増殖効果および抗腫瘍効果を有することを示した(Bioorg. Med. Chem. 2005, 13, 6064-6069)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Spampinato SF, Caruso GI, De Pasquale R, Sortino MA, Merlo S. The Treatment of Impaired Wound Healing in Diabetes: Looking among Old Drugs. Pharmaceuticals (Basel). 2020;13(4):60.
【非特許文献2】Matsumoto et al. Bioorg. Med. Chem. 2005, 13, 6064-6069
【発明の概要】
【0010】
本発明は、皮膚障害を治療するための医薬組成物の調製における組成物の使用を提供する。
【0011】
特に、本発明は、糖尿病における創傷治癒を促進するための医薬品調製における組成物の使用であって、組成物が有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む、前記使用を提供する。医薬品はまた、局所治療使用、医学的デバイスまたは精密治療使用のために用いられてもよい。
【0012】
本発明は、被験体において糖尿病における創傷治癒を促進するための方法であって、有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む医薬組成物を、治療の必要がある被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0013】
マンゴスチン果実殻は、より柔らかい内殻およびより硬い外殻を含む。
【0014】
好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻を、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、酢酸エチルおよび水からなる群より選択される溶媒で抽出する。
【0015】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物は、マンゴスチン果実殻の水抽出物および/またはマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物である。
【0016】
好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物は、マンゴスチン果実殻の水抽出物である。
【0017】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物は、マンゴスチン果実殻のアルコール抽出物である。
【0018】
好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻は、マンゴスチン果実殻の内殻/外殻および/またはマンゴスチン果実殻の全殻である。
【0019】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻は、マンゴスチン果実殻の外殻である。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、経口または非経口調製物であってもよく、非経口調製物は、クリーム、ペースト、軟膏、ジェル、洗浄ローションまたはパッチであってもよい、外用剤であってもよい。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明のマンゴスチン果実殻抽出物はα-マンゴスチンおよびγ-マンゴスチンを含む。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本発明のマンゴスチン果実殻の水抽出物は、α-マンゴスチンおよびγ-マンゴスチンを含む。
【0023】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明のマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物は、α-マンゴスチンおよびγ-マンゴスチンを含む。
【0024】
本明細書で用いられる際、用語「有効量」は、個体に投与された際、有効な結果を達成しうる量、あるいはin vivoまたはin vitroで所望の活性を有する量である。DMにおいて創傷治癒が遅延している場合、非治療に比較した際、有効な臨床転帰には、疾患または状態と関連する症状の度合いまたは重症度の軽減、および/または個体生涯の延長および/または個体の生活の質の改善が含まれる。個体に投与される化合物の正確な量は、疾患または症状のタイプおよび重症度に、そして個体の特性、例えば個体の全身健康状態、年齢、性別、体重、および個体の薬剤許容性に応じるであろう。これはまた、炎症性障害、自己免疫障害およびアレルギー性障害の状態、重症度およびタイプ、あるいは所望の免疫抑制効果によっても決定される。当業者は、これらおよび他の要因に応じて、適切な用量を決定可能であろう。
【0025】
一実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物の有効量は、0.5%(w/w)~20%(w/w)である。好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物の有効量は、1%(w/w)~15%(w/w)である。最も好ましい実施形態において、マンゴスチン果実殻抽出物の有効量は、1.25%(w/w)~10%(w/w)である。
【0026】
本発明の医薬組成物は、経口または非経口調製物の多様な型に配合されうる。経口調製物は、固形調製物、例えば粉末、顆粒、トローチ、カプセル等として配合されてもよいし、または液体調製物、例えば懸濁物、エマルジョン、シロップ等として配合されてもよい。非経口調製物は、外用剤、例えばクリーム、軟膏、ジェル、洗浄ローション、パッチ等として、または吸入剤、エアロゾル、懸濁物等として配合されてもよい。
【0027】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容されうる賦形剤を含んでもよく、特に、あらかじめ決定された溶媒または油、pH調節剤をさらに含んでもよく、望ましい場合、分散剤をさらに含んでもよい。
【0028】
本発明で用いられる溶媒の例には、限定されるわけではないが、水、エタノール、イソプロパノール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン等が含まれる。
【0029】
本発明で用いられる油の例は、限定されるわけではないが、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、綿実油、大豆油、ピーナツ油、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ミネラルオイル、スクアレン、ホホバ油、オリーブ油、月見草油、ボリジオイル、ブドウ種子油、ココナツ油、ヒマワリ油、シアバター、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0030】
溶媒および油は、単独でまたはその任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0031】
有用な分散剤の例には、限定されるわけではないが、レシチン、有機モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン等が含まれる。これらの原材料もまた、単独でまたはその任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0032】
望ましい場合、組成物は、さらなる材料、例えば抗微生物剤または保存剤をさらに含む。
【0033】
一方、本発明の組成物の医薬的活性にいかなる不都合な影響もない限り、組成物と同時に、活性成分を用いてもよいことが知られる。例えば、アトピー性皮膚炎の慣用的な剤として、セラミド保湿剤が一般的に用いられ、または液体成分、例えばヒドロコルチゾンステロイド、ビタミンA誘導体、例えばパルミチン酸ビタミンAおよび/またはトコフェロール等を組成物とともに用いてもよい。
【0034】
医薬組成物を外用剤として用いる場合、基剤として、適切な皮膚外用剤を用いてもよく、既知の方法にしたがって、水溶液、非水性溶媒、懸濁物、エマルジョンまたは凍結乾燥調製物等を用い、滅菌してもよい。
【0035】
提供されるかまたは投与される本発明の組成物の実際の使用において、投薬量は、投与経路、患者の年齢、性別、および体重、疾患の重症度、ならびに活性成分としての医薬品のタイプなどの多様な要因に応じて決定されうる。
【0036】
本発明の組成物が、食品または美容組成物であってもよい場合、少なくとも1つの食品補助剤または美容的に許容されうるキャリアーの適切な添加によって、組成物を調製してもよい。
【0037】
食品組成物は、例えば健康食品において用いられてもよいし、または健康食品に添加されてもよい。本明細書で用いられる際、用語「健康食品」は、一般的な食品製品に比較した際、増進された機能を有する本発明の組成物を含有する食品製品を指す。健康食品は、組成物に一般食品を添加することによって、あるいは封入、粉末化または懸濁物液状化によって調製されてもよい。
【0038】
美容組成物を単独で、または他の美容成分と共に添加してもよいし、あるいは他の既知の方法にしたがって用いてもよい。化粧品には、限定されるわけではないが、アフターシェーブ、ローション、クリーム、フェイシャルマスク、およびカラーメイクアップが含まれる。
【0039】
美容組成物を、多様な型の組成物、例えばジェル、クリーム、軟膏等に配合してもよい。ジェル、クリームおよび軟膏の型の組成物は、既知の方法を用いることによって、既知の柔軟剤、乳化剤および増粘剤または当該技術分野に知られる他の材料の添加によって、組成物の型にしたがって、適切に調製されてもよい。
【0040】
例えば柔軟剤、例えばトリメチロールプロパン、ポリエチレングリコールおよびグリセロール、例えばポリエチレングリコール、エタノールおよびイソエチルアルコールの溶媒、ならびに純水の添加によって、ジェル型組成物を調製してもよい。
【0041】
例えば、脂肪アルコール、例えばステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、レスベラトロール、イソステアリルアルコールおよびイソセチルアルコール;乳化剤、例えば脂質、例えばレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチドおよびその誘導体、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ソルビトール、ステアリン酸ソルビトール等;天然脂肪および油、例えばアボカド油、アーモンド油、ババス(babassu)油、ボリジオイル、ツバキ油等;脂質組成物、例えばセラミド、コレステロール、脂肪酸、フィトスフィンゴシン、レシチン等;溶媒、例えばプロピレングリコール等;ならびに純水の添加によって、クリーム型組成物の調製を実行してもよい。
【0042】
皮膚軟化剤、乳化剤およびワックス、例えば微結晶性ワックス、パラフィン、セレシン、蜜蝋、鯨蝋、ワセリン等の添加によって、軟膏型組成物の調製を行ってもよい。
【0043】
別の態様において、本発明は、組成物を用いて、DMにおける創傷治癒遅延を治療するかまたは軽減するための薬剤を調製する方法を提供する。本明細書で使用された際、用語「治療するかまたは軽減する」は、患者が医薬品を用いる際、その医薬品が疾患の経過または症状を停止するかまたは遅延させることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A図1Aは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1A;1.25%TA1。
図1B図1Bは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1B;2.5%TA1。
図1C図1Cは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1C;5%TA1。
図1D図1Dは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1D;2.5%TA2。
図1E図1Eは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1E;5%TA2。
図1F図1Fは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1F;2.5%TA3。
図1G図1Gは、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、各試験物品の創傷治癒有効性を示す。1G;5%TA3。
図2図2は、本発明においてビヒクル対照(疾患対照)および正常対照と比較した、10%TA1の創傷治癒有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の例は非限定的であり、本発明の多様な態様および特徴の単なる代表である。
【実施例
【0046】
材料
試験物品(TA)
マンゴスチン果実殻を収集し、50%~95%まで乾燥させ、溶媒(例えば水または10%~95%アルコール)で抽出し、濃縮して、マンゴスチン果実殻抽出物を得た。
【0047】
マンゴスチン果実殻の外殻および内殻を分離し、マンゴスチン果実殻の外殻およびマンゴスチン果実殻の内殻をそれぞれ、50%~95%まで乾燥させ、溶媒(例えば水または10%~95%アルコール)で抽出し、次いで濃縮して、マンゴスチン外殻抽出物およびマンゴスチン内殻抽出物を得た。
【0048】
マンゴスチン果実全殻アルコールおよび水抽出物(試験物品1;TA1とラベル)、マンゴスチン果実外殻アルコールおよび水抽出物(試験物品2;TA2とラベル)、ならびにマンゴスチン果実内殻アルコールおよび水抽出物(試験物品3;TA3とラベル)から、異なる濃度のペーストまたは軟膏を調製した。
【0049】
動物
平均体重200~250gを有する成体(7~8週齢)雄Crl:CD(登録商標)(SD)ラットを用いた。動物同定のため、耳ノッチおよびケージタグを用いた。以下の条件で、ポリカーボネートケージ中で動物を個々に飼育した:温度が22±3℃で維持されるように設定し;湿度が50±20%で維持されるように設定し;12時間/12時間の明/暗サイクルであった。食物および水は、研究期間全体で、不断給餌で供給された。
【0050】
方法
ストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病モデル
本発明のため、総数84匹のラットを用いた。12匹のラットを正常群として用い、残りの72匹のラットを、ストレプトゾトシン(STZ;Sigma Aldrich S0130)の単回用量(50mg/kg)腹腔内(IP)注射によるI型糖尿病誘導に用いた。5mg/mLの濃度のSTZを、0.1Mクエン酸緩衝剤(pH=4~4.5)中で新鮮に調製した。
【0051】
STZ投与2週後、4週後、6週後および7週後に、血糖計を用いて、各STZ治療ラットに関して、絶食時血糖レベルを測定した。このモデルの糖尿病診断基準には:血糖レベル>250mg/dL、体重減少、ポリ尿素、および多飲症が含まれた。
【0052】
糖尿病が確認された1週後、すべての糖尿病ラットの体重を測定し、絶食時血糖濃度を測定した。血糖濃度<250mg/dLまたは体重増加を示すラットはいずれも、研究から排除した。
【0053】
54匹のラットをこの研究のため9群(群あたり6匹のラット)に割り当てた。群番号、治療、試験物品、および各群の動物数を以下の表に提示する:
【0054】
より高い投薬量の試験物品の創傷治癒有効性をさらに評価した。10%の試験物品1、試験物品2および試験物品3をラットに投与し、総数30匹の雄ラット(群あたり6匹のラット)を評価に用いた。この研究のため、同じ操作を行った。群番号、治療、試験物品、および各群の動物数を以下の表に提示する:
【0055】
創傷モデルの確立
STZ誘導性糖尿病動物または健康な動物に麻酔をし、すべてのラットの背部を剃毛し、皮筋のレベルまで、全層切開創傷(20mm×20mm)を作製した。創傷を縫合も被覆もせず、二次治癒による治癒を可能にした。すべての研究ラットに関して同じ方式で、創傷を課した。
【0056】
局所適用
各試験物品(全殻抽出物、内殻抽出物、および外殻抽出物)またはビヒクル対照配合物を、1日1回、0.25mm厚のフィルム(総量0.1g/創傷)中、局所適用して、創傷全体を覆った。各適用前に創傷を生理食塩水で穏やかに清浄にし;各ラットに関して、総数21回の適用を行った。
【0057】
すべての研究動物に関して、少なくとも1日1回、動物観察を行い、すべての生存動物に関して、体重を第0日(投薬前)、少なくとも毎週、および剖検日に記録した。
【0058】
創傷測定
局所適用期間中、各創傷に対して、毎日、全身観察を行った。創傷面積を2つの異なる方法で測定した:(i)3日ごとに1回、透明プラスチックシート上にトレース、および(ii)3日ごとに1回、デジタルカメラを用いてデジタル画像を記録。
【0059】
Image Jを用いて、創傷面積を計算した。創傷生成後、最初の(第0日)創傷面積を用いて、任意の所定の日の各創傷に関する%創傷閉鎖を計算した。新規肉芽形成組織によって覆われた創傷面積のパーセンテージ={[(面積(A)-面積(A))]/面積(A)}×100、式中、Aは初期面積であり、Aは、第n日目の面積である。
【0060】
分析
Windows(商標)、リリース12.0用のSigmaPlot(商標)統計ソフトウェア(Jandal Scientific Inc.、USA)を用いて統計分析を行った。すべての統計検定に0.05の有意性レベルを用いる。
【0061】
結果
糖尿病モデル
本研究で用いられるラットはすべて、ストレプトゾトシン(STZ)投与後、2日目から、高血糖の特徴的な徴候を示した。血糖レベルは、STZ投与48時間後、すべての群で有意に増加し、実験全体で上昇したままであった(表1)。動物屠殺時(第21日)、すべての動物は、群1を除き、糖尿病状態下にあった。
【0062】
【表1】
【0063】
創傷治癒
対照および糖尿病実験ラットにおける創傷治癒研究中、以下の結果を得た(表2)。
【0064】
【表2】
【0065】
異なる日、すなわち創傷生成後、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目、18日目および21日目に測定された創傷面積は、局所適用された試験物品(TA1、TA2およびTA3)が糖尿病創傷の治癒に正の効果を有したことを示す。糖尿病対照ラット(群2)における創傷閉鎖速度は、正常対照動物(群1)と比較して減少していることが観察され;このことは、この研究で用いられた慢性創傷治癒モデルが検証されたことを示した。この効果は、3日目以降、明らかであった。
【0066】
図1に示されるように、TA1局所投与を受けた実験ラット(群3:1A、群4:1B、および群5:1C)の創収縮(wound contracting)能は、第15日以降、疾患対照ラット(群2)と比較した際、有意な創傷治癒を示した。創傷閉鎖の最大パーセンテージ(率)は、第21日、疾患対照ラット(群2)に比較して、5%TA1治療動物(群5)で観察され:創傷閉鎖パーセントは、5%TA1に関して88.35±2.68(P<0.05)および群2に関して63.18±10.65であった。
【0067】
TA2局所投与を受けた実験ラット(群6:1D、および群7:1E)の創収縮能は、第15日以降、疾患対照ラット(群2)と比較した際、有意な創傷治癒を示した。
【0068】
TA3局所投与を受けた実験ラット(群8:1F、および群9:1G)の創収縮能は、第15日以降、疾患対照ラット(群2)と比較した際、有意な創傷治癒を示した。
【0069】
要約すると、本研究の顕微鏡知見に基づき、マンゴスチン果実全殻(TA1)、マンゴスチン果実外殻(TA2)およびマンゴスチン果実内殻(TA3)は、よりよい上皮および真皮再生のため、ならびに肉芽形成組織形成および上皮遊走のため、創傷治癒を増進させる潜在能力を有した。
【0070】
結論として、TA1、TA2およびTA3は、高血糖ラットにおいて、創傷治癒遅延を有意に改善させた。5%マンゴスチン果実全殻、ならびに2.5%および5%のマンゴスチン果実内殻は、炎症促進性サイトカイン濃度減少を伴い、最善の創傷治癒有効性を有し、これらが最適化合物と見なされた。同じ濃度(5%)の3つの試験物品を比較すると、創傷治癒反応のランキング順序は、最適がマンゴスチン果実内殻、2番目がマンゴスチン果実全殻、3番目がマンゴスチン果実外殻であった。
【0071】
10%TA1、TA2およびTA3の創傷治癒有効性結果に関しては、10%TA1が、疾患対照ラットに比較して、12日目以降、有意な創傷治癒を示し(図2)、10%TA1は5%TA1よりもより優れた創傷治癒有効性を示した。TA2およびTA3もまた同じ傾向を示し、創傷治癒反応のランキング順はやはり、マンゴスチン果実内殻が最適であり、2番目がマンゴスチン果実全殻、3番目がマンゴスチン果実外殻であった。
【0072】
本発明は、当業者がこれを作製し、用いるために十分に詳細に記載され、例示されてきているが、本発明の精神および範囲から逸脱しない、多様な代替法、修飾および改善が明らかであるはずである。
【0073】
当業者は、本発明が、生得的なものとともに、目的を実行し、言及される目標および利点を得るためによく適応されることを容易に認識する。これらを産生するための細胞、動物、ならびにプロセスおよび方法は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲に対する制限としては意図されない。本発明の修飾および他の使用が、当業者には思い浮かぶであろう。これらの修飾は、本発明の精神内に含まれ、請求の範囲によって定義される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
【国際調査報告】