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特表2024-537629燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法
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  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図1
  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図2
  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図3
  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図4
  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図5
  • 特表-燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】燃料電池スタックの流体流路内に取り付けられるように構成された密封デバイスおよび密封方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2483 20160101AFI20241008BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/0276
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514656
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022077486
(87)【国際公開番号】W WO2023061793
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2110718
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516284345
【氏名又は名称】サフラン・パワー・ユニッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイントン,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】アブー,ソフヤネ
(72)【発明者】
【氏名】ブソ,パトリス・ダニエル・クロード
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126AA27
5H126BB06
(57)【要約】
本発明は、スタック軸Xに沿って整列された複数のセルを含むスタックと、スタック内の複数の流体流路とを備える燃料電池の流体流路内に取り付けられるように構成された絶縁デバイス(9)であって、絶縁デバイス(9)は、流路とスタック内で絶縁されるべきセルの少なくとも1つの流れ開口部との間の流体連通を阻止するように構成された周囲ベルト(90)を備え、ベルト(90)は、アイドル構成と称される第1の構成と収縮構成と称される第2の構成との間で変形可能であり、ベルト(90)の横断面は、第1の構成での横断面よりも小さい、絶縁デバイス(9)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック軸(X)に沿って整列された複数のセルを備えるスタック(2)と、スタック(2)内の複数の流体流路(20)とを備える燃料電池(1)の流体流路(20)内に取り付けられるように構成された絶縁デバイス(9)であって、絶縁デバイス(9)は、周囲にあり、流路(20)とスタック(2)から絶縁されるべきセルの少なくとも1つの流れ開口部との間の流体連通を遮断するように構成されたベルト(90)を備え、ベルト(90)は、ベルト(90)の周囲により境界を定められる表面として画定される横断面を有し、ベルト(90)は、
アイドル構成と称される第1の構成であって、ベルト(90)の横断面が、流路(20)の横断面と実質的に類似しており、絶縁デバイス(9)が取り付けられるように構成される、第1の構成と、
収縮構成と称される第2の構成であって、ベルト(90)の横断面が、第1の構成での横断面より小さい、第2の構成と
の間で変形可能である、絶縁デバイス(9)。
【請求項2】
絶縁デバイス(9)が、ベルト(90)を第1の構成で束縛するように構成されたばね部材(91)を備える、請求項1に記載の絶縁デバイス(9)。
【請求項3】
絶縁デバイス(9)が、流路(20)内での絶縁デバイス(9)の精密な位置決めをもたらすように構成されたインデキシング部材(92)を備える、請求項1または2に記載の絶縁デバイス(9)。
【請求項4】
絶縁デバイス(9)が、流路(20)の内側表面と協働するように構成された複数の案内部材(93)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁デバイス(9)。
【請求項5】
流路(20)が、複数のコーナーを画定する断面を有しており、案内部材(93)が、流路(20)のコーナーと協働するように構成される、請求項4に記載の絶縁デバイス(9)。
【請求項6】
燃料電池アセンブリ(1)であって、スタック軸(X)に沿って整列された複数のセル、およびスタック(2)内の複数の流体流路(20)を備えるスタック(2)と、流路(20)とスタック(2)から絶縁されるべき少なくとも1つのセルとの間の流体連通を密封するように流路(20)内に位置付けられた、請求項1から5のいずれか一項に記載の絶縁デバイス(9)とを備える、アセンブリ。
【請求項7】
スタック(2)が、スタック(2)のセルを画定する、バイポーラプレート(21)と膜電極接合体(22)とを交互にしたものを備え、絶縁デバイス(9)が、流路(20)と絶縁されるべきバイポーラプレート(21a)との間の流体連通を遮断するように流路(20)内に位置付けられる、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
バイポーラプレート(21)の間にシール(23)が挿入され、シール(23)が、流路(20)内に突出して延びる、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
絶縁デバイス(9)が、流路(20)内での絶縁デバイス(9)の精密な位置決めを確実にするように構成されたインデキシング部材(92)を備え、インデキシング部材(92)が、シール(23)と協働してしっかりとした絶縁をもたらす、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
スタック軸(X)に沿って整列された複数のセルを備えるスタック(2)と、スタック(2)内の複数の流体流路(20)とを備える燃料電池(1)からセルを絶縁する方法であって、
絶縁デバイス(9)の横断面が流路(20)の横断面より小さいように絶縁デバイス(9)の横断面を低減させるように、請求項1から5のいずれか一項に記載の絶縁デバイス(9)を第1の構成から第2の構成に変形させるステップと、
絶縁デバイス(9)を絶縁されるべきセルの少なくとも1つの流れ開口部に整列させるように、前記絶縁デバイス(9)を流路(20)内で第2の構成に従って移動させるステップと、
流路(20)と欠陥のあるセルの流れ開口部との間の流体連通を遮断するために、ベルト(90)を流路(20)の内側表面に押し付けるように、束縛を解放して絶縁デバイス(9)を第2の構成から第1の構成に変形させるステップと
からなるステップを含む、絶縁する方法。
【請求項11】
絶縁されるべきセルをスタック(2)の別のセルに、好ましくは隣接するセルに、電気的に接続するステップを含む、請求項10に記載の絶縁する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、推進エネルギーおよび非推進エネルギーを提供するために航空機に搭載されている燃料電池を修理する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、異なる流体の間の電気化学反応から電気エネルギーを作り出すことを可能にする。従来、燃料電池には水素および酸素が供給され、水素および酸素は、燃料電池内で反応して電気エネルギーを生成する。燃料電池は、スタック軸に沿って整列された複数のセルを備えるスタックを備える。セルのスタックは、流体からの電気化学反応を可能にする。
【0003】
各セルは、2つの電極によって取り囲まれたイオン伝導性電解質からなり、2つの電極は相互接続プレートによって取り囲まれる。例として、「プロトン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)」に対するその略語PEMFCで知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池の場合、電解質は、プロトン伝導性ポリマー膜の形態をとり、電極は、プラチナなどの触媒を担持する多孔質媒体の形態をとる。電解質と電極のアセンブリは、その略語MEAで知られている膜電極接合体と呼ばれる。各MEAは、セルを形成するために、相互接続プレートを通ってそのMEAの2つの反対側上で反応ガス(例えば、水素および空気中に存在し得る酸素)と接触した状態にされる。
【0004】
知られている方法では、2つの隣接するセルに属する2つの相互接続プレートのアセンブリは、バイポーラプレートと呼ばれる。したがって、バイポーラプレートは、MEAのカソードと隣接するMEAのアノードとの間に挿入される。バイポーラプレートは、一方では、アノード側の第1のMEAに燃料(水素)を供給し、他方では、カソード側の第2のMEAに酸化剤(酸素)を供給する。一般に、各バイポーラプレートは内部冷却回路を備えており、そこで伝熱流体が循環して熱を提供するか、または発熱反応によって作り出された熱を取り出す。
【0005】
セルによって生成された電流は、スタックの両端で、いわゆるコレクタ導体プレートによって回収される。燃料電池によって送達される電力は、セルの数(送達される電圧キャパシティ)、セルの活性表面積(送達される電流キャパシティ)、および反応流体の流量(電流を作り出す電気化学反応の重要性)に応じている。
【0006】
セルのスタック全体は、アセンブリを保持しスタックの密封を保証するタイロッドによって接続された2つのいわゆるエンドプレートの間に圧縮されて保たれる。この密封は、バイポーラプレートとセルのMEAとの間に挿入されたシールによって提供される。エンドプレートは従来、固体である、というのは、エンドプレートは、セルの表面上に均一な圧力を適用するとともに、スタックの内圧および温度変動の影響下で寸法的に安定していなければならないからである。
【0007】
反応流体および伝熱流体はエンドプレートで導入および放出され、エンドプレートは、スタックを通過する流路内で反応流体および伝熱流体を分散させる。これらの流路は、セル内に形成された開口部のスタックからもたらされる。例として、3つのチャネルが、スタックの一方の側から流体(必要に応じて2つの反応流体および1つの伝熱流体)を導入してセル内へ移動させ、他の3つのチャネルが流体をスタックの他方の側から放出する。
【0008】
知られている方法では、燃料電池は、スタック軸に沿って整列された複数のセルを備えるスタックを備える。タイロッドは、スタックに一定の圧縮力を適用するように、エンドプレートの外側部分を周囲で接続する。エンドプレートは、スタックの流路内に通じる流線を備える。
【0009】
燃料電池内での電気化学反応中、反応流体は、MEAの組成物の一部である微量の酸で充電された状態になる。これらの微量のリン酸は、2つの燃料流体回路の出口に対応する流路内に、特に高温燃料電池の場合は水蒸気の形で存在する。この酸は、特に、その間に温度が通常運転温度未満である燃料電池の始動/停止ステップ中に結晶化することがあり、この結晶化は流路を遮断し得る。このような遮断は、MEAの穿孔のリスクを伴うホットスポットを引き起こし得る損傷を引き起こし得る。燃料電池の効率損失に加えて、火災および漏れリスクの可能性が増大する。
【0010】
1つ以上セルが損傷を受けると、これらのセルがもはや電気を作り出さないか、または反応物間の流体連通を可能にしないように、これらのセルを反応流体の流れから絶縁する必要がある。電気的観点から、これらのセルは、スタック内での発電を中断しないように分路されなければならない。
【0011】
欠陥のあるセルに到達するには、チャネルのそれぞれに沿って下って、欠陥のあるセルの流れ開口部のそれぞれ上で個々に介入する必要がある。この介入は、チャネルの高さ(最大で300mm)および流路の横断面(300から1000mm)を考えると複雑である。
【0012】
欠陥のあるセルを修理するための方法は、修理の間、膜に穴をあけるために、欠陥のあるセルに電気ショックが適用されることが先行技術で知られている。流れ開口部は、樹脂を堆積させることにより個々に密封される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この解決法は、理論上は魅力的であるが、実施するのが複雑である。本発明の一目的は、欠陥のあるセルがスタックから実践的におよび迅速に絶縁されることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、スタック軸に沿って整列された複数のセルを備えるスタックと、スタック内の複数の流体流路とを備える燃料電池の流体流路内に取り付けられるように構成された絶縁デバイスに関する。
【0015】
絶縁デバイスは、絶縁デバイスが、流路とスタックから絶縁されるべきセルの少なくとも1つの流れ開口部との間の流体連通を遮断するように構成された周囲ベルトを備え、ベルトは、アイドル構成と称される第1の構成と、収縮構成と称される第2の構成との間で変形可能であり、ベルトの横断面が第1の構成での横断面よりも小さい、という点で注目に値する。
【0016】
好ましくは、そのような絶縁デバイスは、スタックからセルを絶縁するために流路内の所望の位置に簡便に位置付けられ得る。周囲ベルトは、流体がベルトを通って循環して他のセルに供給することを可能にしながら、局所的な密封を提供する。ベルトの変形可能な性質は、流路の内側表面を損傷させるリスクなしに簡便で迅速な位置決めを可能にする。ベルトは、セルの複数の流れ開口部を簡便におよび同時に密封することを可能にする。
【0017】
好ましくは、第1の構成では、ベルトの断面は、流路の断面に実質的に類似しており、絶縁デバイスが取り付けられるように構成される。したがって、ベルトは当然ながら、過度の応力および変形なしに、流路の内側表面に適合するので、これにより、セルを簡便におよび近くで損傷するリスクなしに密封することが可能になる。
【0018】
一態様によれば、絶縁デバイスは、ベルトを第1の構成で束縛するように構成されたばね部材を備える。したがって、ベルトは、オペレータがベルトを束縛していないときに自動的に展開される。これは、絶縁されるべきセルが流路のアクセス開口部から離れているときに、および絶縁デバイスの容易な取り扱いが所望されるときに、特に有利である。
【0019】
好ましくは、ばね部材は、その設計が単純であるスプリングリーフの形態をとる。スプリングリーフは、チャネルの内側表面と接触するのを回避するようにベルトの内側表面上に位置付けられ得る。
【0020】
好ましくは、絶縁デバイスは、特に、絶縁されるべきセルの1つ以上流れ開口部に対向する、流路内での絶縁デバイスの精密な位置決めを確実にするように構成されたインデキシング部材を備える。好ましくは、セルは開口部の両側に2つのシールを備えており、インデキシング部材はシールと協働するように構成される。
【0021】
これは、絶縁されるべきセルが流路のアクセス開口部から離れているときに精密な位置決めをもたらすために特に有利である。好ましくは、インデキシング部材は、ベルトの外側表面から突出して延びる周囲舌の形態をとる。したがって、インデキシング部材は、シールとぴったり合うことにより協働を可能にする。
【0022】
好ましくは、絶縁デバイスは、流路の内側表面と協働するように構成された複数の案内部材を備える。好ましくは、流路は複数のコーナーを画定する断面を有しており、案内部材は流路のコーナーと協働するように構成される。その結果、ベルトはチャネル内に角度的に精密に配置されて、最適な密封を確実にする。
【0023】
本発明は、スタック軸に沿って整列された複数のセル、およびスタック内の複数の流体流路を備えるスタックと、流路とスタックから絶縁されるべき少なくとも1つのセルとの間の流体連通を遮断するように流路(20)内に位置付けられた、先に提示したような絶縁デバイスとを備える燃料電池アセンブリにも関する。
【0024】
好ましくは、スタックは、スタックのセルを画定する、バイポーラプレートと膜電極接合体とを交互にしたものを備える。絶縁デバイスは、流路と絶縁されるべきバイポーラプレートとの間の流体連通を遮断するように流路内に位置付けられる。したがって、バイポーラプレートへの流体の供給は止められる。
【0025】
好ましくは、絶縁デバイスは、取付け位置においてスタック軸に従って画定された厚さを有し、この厚さは、取付け位置での流体のいかなる流れも妨げるように、バイポーラプレートの厚さよりも大きい。
【0026】
好ましい態様によれば、バイポーラプレートの間にシールが挿入され、シールは、バイポーラプレートのしっかりとした密封に関与するように流路内に突出して延びる。
【0027】
好ましくは、インデキシング部材はシールと協働してしっかりとした絶縁をもたらす。したがって、絶縁デバイスの位置決めは、バイポーラプレートをしっかりと絶縁するように精密である。
【0028】
本発明は、スタック軸に沿って整列された複数のセルを備えるスタックと、スタック内の複数の流体流路とを備える燃料電池からセルを絶縁する方法にも関し:
- 絶縁デバイスの横断面が流路の横断面より小さいように絶縁デバイスの横断面を低減させるように、先に提示したような絶縁デバイスを第1の構成から第2の構成に変形させるステップと、
- 絶縁デバイスを絶縁されるべきセルの少なくとも1つの流れ開口部に整列させるように、前記絶縁デバイスを流路内で第2の構成に従って移動させるステップと、
- 流路と欠陥のあるセルの流れ開口部との間の流体連通を遮断するために、ベルトを流路の内側表面に押し付けるように、束縛を解放して絶縁デバイスを第2の構成から第1の構成に変形させるステップと
からなるステップを含む。
【0029】
好ましくは、絶縁方法は、絶縁されるべきセルをスタックの別のセルに、好ましくは隣接するセルに電気的に接続するステップを含む。したがって、欠陥のあるセルは、スタックが電圧を供給することを可能にするために電気的に絶縁される。
【0030】
本発明は、例として与えられる下記の説明を読んだときに、および、同じ参照符号が類似の対象物に与えられている、非限定的な例として与えられる下記の図を参照することにより、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による燃料電池の概略図である。
図2】絶縁デバイスを有する流体流路の第1の概略横断面図である。
図3】絶縁デバイスを有する流体流路の第2の概略横断面図である。
図4】絶縁デバイスを有する流体流路の第3の概略横断面図である。
図5】絶縁デバイスの第1の概略図である。
図6】絶縁デバイスの第2の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図は、本発明を実施するために本発明を詳細に提示しており、前記図はもちろん、必要に応じて本発明をより良く定義するために使用され得ることが留意されるべきである。
【0033】
本発明は、「プロトン交換膜燃料電池」に対するその略語PEMFCで知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池の分野に関する。好ましくは、燃料電池は、推進機器に電力を供給するために航空機に搭載されている。
【0034】
図1を参照すると、スタック軸Xに沿って整列された複数のセルを備えるスタック2を備える燃料電池1が示されている。各セルは複数の流体流れ開口部を備え、前記流体流れ開口部は、スタック2内に複数の流体流路20を形成するためにスタック軸Xと平行に整列される。
【0035】
セルのスタック2は、流体、特に水素および酸素からの電気化学反応を可能にする。この例では、各セルは、その略語のMEAで知られている膜電極接合体を備える。各MEAは、セルを形成するために、相互接続プレートを通ってそのMEAの2つの反対側上で反応ガス(例えば、水素および空気中に存在し得る酸素)と接触した状態にされる。知られている方法では、2つの隣接するセルに属する、2つの相互接続プレートのアセンブリは、バイポーラプレートと呼ばれる。したがって、バイポーラプレートは、MEAのカソードと隣接するMEAのアノードとの間に挿入される。したがって、バイポーラプレートは、一方ではアノード側の第1のMEAに燃料(水素)を供給し、他方ではカソード側の第2のMEAに酸化剤(酸素)を供給する。一般に、各バイポーラプレートは内部冷却回路を備えており、内部冷却回路内で伝熱流体が循環して熱を提供するか、または発熱反応によって作り出された熱を取り出す。MEAとバイポーラプレートとを交互にしたもので形成されるそのようなスタック2は先行技術で知られており、さらに詳細には提示されない。
【0036】
この例では、図1を参照すると、燃料電池1は、セルによって生成された電流を集めるように、スタック2の端に位置付けられたコレクタプレート4をさらに備える。知られている方法では、燃料電池1によって送達される電力は、セルの数(送達される電圧キャパシティ)および反応流体の流量(電流を作り出す電気化学反応の重要性)に応じている。
【0037】
図1を参照すると、燃料電池1は、スタック軸Xに沿ってスタック2の端に配置された2つのエンドプレート3と、スタック2を圧縮するためにエンドプレート3を互いに接続する複数の牽引部材とをさらに備える。
【0038】
図2から図6を参照すると、本発明による絶縁デバイス9は、スタック2から欠陥のあるセルを絶縁するために提示される。
【0039】
リマインダとして、先に述べたように、セルは、膜電極接合体MEAおよび2つの相互接続プレートを備える。2つの隣接する相互接続プレートがバイポーラプレートを形成する。
【0040】
図2から図4を参照すると、スタック2は、電気エネルギーを生成するためにバイポーラプレート21と膜電極接合体MEA22とを交互にしたものを備える。スタック2は、スタック軸Xに沿って延びていて、流体連通するバイポーラプレート21のそれぞれを配置しているいくつかの流路20を備え、したがって流路20はMEA22に供給する。バイポーラプレート21の間にシールを設けるために、シール23がバイポーラプレート21の間に設けられる。シール23は弾性であり、下記で提示されるように絶縁デバイス9のインデックス付けに寄与する。好ましくは、シール23は流路20内に突出して延びており、これは、絶縁デバイス9とのシールの形成を容易にする。各バイポーラプレート21は、流路20内で循環する流体をバイポーラプレート21に供給するのを可能にするために、流路20内に通じる流れ開口部210を備える。
【0041】
実際には、流路20は、反応流体を、バイポーラプレート21の単一の側と、これに接触するMEA22とに供給し、他方の側は、別の反応流体により、別の流路20を経由して供給される。
【0042】
この例では、図2から図4を参照すると、バイポーラプレート21は、この流路20に関してバイポーラプレート21の上方に位置するMEA22に供給するように構成される。もちろん、これは、別の流路20に関して異なることができる。
【0043】
MEA22dに欠陥があるとき、この欠陥は、ホットスポットを作り、燃料電池1にリスクをもたらし得る。したがって、欠陥のあるMEA22dが属するセル、特にそれに供給するバイポーラプレート21aを絶縁する必要がある。この例では、欠陥のあるMEA22dに供給するバイポーラプレート21aは、欠陥のあるMEA22dの下に位置している。
【0044】
この例では、欠陥のあるMEA22dからの単一の反応流体の供給を止めることは、欠陥のあるMEAを絶縁するのに十分である。それにもかかわらず、欠陥のあるMEA22dの、すべての反応流体の供給は、別の流路20内の絶縁デバイス9を使用することによって止められことができることは言うまでもない。好ましくは、絶縁は、水素を導く流路20内で実行される。
【0045】
本発明によれば、図2から図4を参照すると、本発明の一実施形態による絶縁デバイス9は、欠陥のあるMEA22dに隣接する少なくとも1つのバイポーラプレート21のすべての流体流れ開口部210を密封するために使用される。この例では、欠陥のあるMEA22dの下に位置するバイポーラプレート21は、欠陥のあるMEA22dに供給するのは後者であるので、絶縁されることになる。以下、絶縁されるべきバイポーラプレートは21aとして参照される。
【0046】
図5および図6を参照すると、絶縁デバイス9は周囲ベルト90を備える。ベルト90は、取付け位置においてスタック軸Xに従って画定された厚さを有し、この厚さは、取付け位置での流体のいかなる流れも妨げるように、バイポーラプレート21の厚さよりも大きい。特に、ベルト90は、図4に示されているように、絶縁されるべきバイポーラプレート21に隣接するシール23と協働することを可能にする。したがって、流路20は、絶縁されるべきバイポーラプレート21aの流れ開口部210ともはや流体連通しない。バイポーラプレート21は、もはや流体を供給されず、もはや欠陥のあるMEA22dに供給することができない。ベルト90は、その周囲形状により、絶縁デバイス9の上および下に位置するバイポーラプレート21の流体の供給を常に可能にするので、流体はベルト90の中央で循環することができる。
【0047】
好ましくは、ベルト90は、アイドル構成と称される第1の構成と収縮構成と称される第2の構成との間で変形可能であるように構成され、第2の構成の横断面は第1の構成の横断面より小さい。好ましくは、第1の構成の断面は流路20の断面と実質的に類似しており、絶縁デバイス9は、その輪郭に密接に適合するように取り付けられるように構成される。好ましくは、ベルト90は、変形可能な弾性材料で形成され、例えば、優れた密封性能をさらに有するエラストマーまたはゴムから形成される。
【0048】
好ましくは、絶縁デバイス9は、ベルト9を第1の構成で束縛するように構成されたばね部材91を備える。この例では、図5および図6に示されているように、ばね部材91はスプリングリーフの形態をとる。好ましくは、ばね部材91は、ベルト90内に、特に、流路20の内側表面と接触しないように内面内に形成された溝94の中に取り付けられる。ばね部材91は、好ましくは、ベルト90を第2の構成で変形させるためにオペレータがばね部材91を簡便に束縛することを可能にする突出端部91aを備える。
【0049】
そのようなばね部材91は必須ではなく、ベルト90は、絶縁デバイス9を装着するときに、シール23を弾性的に変形させることができる。
【0050】
好ましくは、絶縁デバイス9は、流路20内での絶縁デバイス9の精密な位置決めをもたらすように2つのシール23の間に収容されるように、すなわち、絶縁されるべきバイポーラプレート21aの流れ開口部210に整列されるように構成されたインデキシング部材92を備える。この例では、インデキシング部材92は、ベルト90の外側表面から突出して延びる周囲タブの形態をとる。好ましくは、インデキシング部材92はベルト90の材料から引き出され、これにより、ベルト90の製造コストを低減し、ベルト90の密封特性を維持することが可能になる。このようなインデキシング部材92は、シール23に対してインデックス付けされ、それらを変形させることを有利に可能にする。舌形状は、シール23との接触を最適化して密封を改善することを可能にする。
【0051】
図5および図6を参照すると、絶縁デバイス9は、流路20の内側表面と協働するように、しかしながら絶縁されるべきバイポーラプレート21aに隣接するバイポーラプレートの流れ開口部210を完全には遮断しないように構成された複数の案内部材93を備える。この例では、案内部材93は、それらの間の流体流れを可能にするように単純で非連続である。案内部材93は、好ましくは、流路20の断面によって画定された形状の各コーナーに位置付けられる。この例では、流路20は、4つのコーナーを画定する平行四辺形断面を有する。また、図5および図6に示されているように、絶縁デバイス9は、剛性を提供し、絶縁デバイス9の、流路20の凹ゾーン(コーナー)との協働を改善するために、4つの案内部材93を備える。精密な案内および位置決めは、密封を実質的に改善する。図5および図6に示されているように、案内部材93は、案内部材93がオペレータによって簡便に操作され得るように、ベルト90の上壁から垂直方向に突出する部分の形態をとる。好ましくは、案内部材93はベルト90の材料から引き出され、これによその製造コストを低減することが可能になる。
【0052】
次に、スタック2のセルを絶縁するため方法の実施の例が提示される。この例では、図4を参照すると、流路20が、絶縁されなければならない欠陥のある膜電極接合体(MEA)22dを含む。流路20は垂直方向に延び、流路の上方開口部からアクセス可能である。好ましくは、絶縁は、水素を導く流路20内で行われる。
【0053】
本方法は、絶縁デバイス9の横断面が流路20の横断面より小さいように絶縁デバイス9の横断面を低減させるように、絶縁デバイス9を第1の構成から第2の構成に変形させるステップを含む。変形は、オペレータにより、ばね部材91に、特にばね部材91の端部91aに作用することによって簡単に行われる。
【0054】
本方法は、インデキシング部材92が、欠陥のあるMEA22dの下に位置する絶縁されるべきバイポーラプレート21aに整列されるように、絶縁デバイス9を流路20内で第2の構成に従って移動させるステップを含む。
【0055】
本方法は、絶縁デバイス9に適用された束縛を解放するステップを含み、アイドル位置で、流路20のアイドル断面と実質的に同等のそれを有する第1の構成を取り戻す。束縛が解放されると、ベルト90は、流路20と欠陥のあるMEA22dの下に位置する絶縁されるべきバイポーラプレート21aとの間の流体のいかなる流れも妨害するように、シール23を押圧する。インデキシング部材92の存在は、シール23間の精密な位置決めおよび最適な密封の協働を可能にする。案内部材93は、流路20の凹ゾーン内に、特にその4つのコーナー内にベルト自体を位置付けることにより、ベルト90の膨張が第1の構成内で案内されることを可能にする。これは、特に、流路20が大きい高さを有しており、欠陥のあるMEA22dが流路20へのアクセスから離れているときに、絶縁デバイス9の位置決め欠陥のリスクを限定する。
【0056】
絶縁デバイス9が適切な位置にあると、流路20と欠陥のあるMEA22dの下に位置するバイポーラプレート21aとの間のいかなる流体循環も止められ、これにより、バイポーラプレート21aに隣接して位置付けられたMEA22への供給を妨害することが可能になる。したがって、欠陥のあるMEA22dはもはや供給されず、これはホットスポットの形成を妨害する。
【0057】
好ましくは、本方法は、燃料電池1内に電気的導通をもたらすように、隣接バイポーラプレート21aを欠陥のあるMEA22dに電気的に接続するステップを含む。好ましくは、図4に示されているように、バイポーラプレート21を電気的に接続するために電気ケーブル10が使用される。言い換えると、バイポーラプレート21aは、もはや流体的に供給されず、電気的に分路され、これは、燃料電池1が1つ少ないセルで動作することを可能にする、欠陥のあるセルの絶縁をもたらす。
【0058】
燃料電池1を使用しているときに、流体は、流路20に流れ込んで、電気エネルギーを作り出すために、絶縁されていないセルに供給する。流圧は、ベルト90を半径方向外方に束縛してベルトを流れ開口部210に押し付けることを可能にし、これは最適な密封をもたらす。
【0059】
そのMEA22dに欠陥があるセルの絶縁が提示されているが、本発明は、それのバイポーラプレート21に欠陥がある1つ以上セルにも適用されることは言うまでもない。絶縁デバイス9は、前記バイポーラプレート21および関連するセルの流体供給を止めることを有利に可能にする。
【0060】
いくつかの隣接するMEA22に欠陥があるとき、絶縁デバイス9は、各バイポーラプレートが絶縁されるために、より大きい高さおよびインデキシング部材92を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】