(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】超臨界流体反応による火葬方法
(51)【国際特許分類】
B01J 3/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B01J3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515560
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2022058347
(87)【国際公開番号】W WO2023037229
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524090161
【氏名又は名称】エスシーダブリュー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCW Technologies Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ダブリュー ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー スコット ドーソン
(57)【要約】
本発明は、遺体の組織や骨を分解できる溶媒として作用させるために、体液を超臨界状態にするステップを備える遺体の火葬方法に関する。この方法は、体液で超臨界反応を起こし、身体の全ての組織と骨を分解して灰化骨に変えることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体を火葬する方法であって、以下のステップ、すなわち、
i)火葬室(1)を少なくとも300℃の温度で予熱するステップと、
ii)前記遺体を前記火葬室(1)に挿入するステップと、
iii)前記火葬室(1)を密閉するステップと、
iv)前記遺体の体液を超臨界状態にするために、前記火葬室(1)の圧力を2900psi以上の圧力に上昇させるステップと、
v)前記遺体の骨及び組織が超臨界状態の体液によって分解されたら、前記火葬室(1)をパージするステップと
を順次に備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記火葬室(1)を予熱するステップは、少なくとも320℃の温度、より好ましくは少なくとも340℃の温度、さらに好ましくは少なくとも370℃の温度で行われることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、前記火葬室(1)を予熱するステップは、加熱要素(4)、特にヒーター棒(4)を用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)の圧力を上昇させるステップは、3400psi以上、より好ましくは3800psi以上の圧力で行われることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前記圧力を上昇させるステップは、5分未満、好ましくは4分未満、さらに好ましくは2分未満の時間で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)の前記圧力を上昇させるステップは、圧縮空気、窒素、又は前記気体の総体積に対して95体積%以上の窒素を含む気体のいずれかを用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)を空気でパージすることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記遺体の骨及び組織の分解により、骨片と、並びに体液及び組織が混ざった超臨界流体混合物とを形成することを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記火葬室(1)をパージした後、前記超臨界流体混合物を排出することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の方法において、前記超臨界流体混合物を熱交換器に強制的に通過させることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記超臨界流体混合物を前記熱交換器内で冷却して液体状態に戻すことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)をパージした後、前記火葬室(1)内の圧力を放出し、人間の火葬された遺骨を回収することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体の組織、臓器及び骨を分解することができる溶媒として作用するために、遺体の体液を超臨界状態にすることからなる遺体の火葬方法に関する。
【0002】
この方法は、遺体自身の体液内で超臨界反応を起こすことで、遺体の全ての臓器、骨、組織を分解して灰化骨に変えることができる。
【背景技術】
【0003】
火葬は、伝統的な遺体埋葬に代わる興味深い選択肢となっている。その理由は、基本的に、利用可能な土地が限られていること及び埋葬地の価格上昇に対する差し迫った懸念があるからである。また、火葬は、防腐処理、許可、棺の輸送、墓の準備や墓石の購入を含む葬儀の準備など、いくつかの面倒なハードルに遭遇する可能性がある従来の埋葬に比べて、葬儀のプロセスが容易になる利点もある。
【0004】
火葬は、遺体を骨片にするプロセスに相当し、現在、様々な技術、特に火炎火葬とアルカリ加水分解によって実現することができる。
【0005】
従来の火炎火葬は、遺体を骨片又は火葬された遺骨にするために炎と熱を使用する。特に、火炎火葬は、遺体を火葬に適した棺や硬質段ボール容器のような可燃性の容器に入れるステップと、容器を火葬室又は火葬炉(レトルトとも呼ばれる)と呼ばれ、遺体と容器が一般に2000℃までの高温に晒され、火葬された遺骨に縮減されるよう設計された工業炉に移動させるステップとからなる。したがって、火葬された遺骨は、基本的に骨片、容器の残骸、焼却処理中に最終的に発生した可能性のあるその他の副生成物から構成される。冷却期間後、火葬室から火葬された遺骨を取り出し、不注意で外されなかった宝石類、使用された容器から生じた金属の残骸、歯の詰め物及び/又は故人が生きている間に股関節置換術のような外科的に埋め込まれた人工関節を回収するために検査される。火葬された遺骨は、特定の処理業者によって粉砕され、最終的に灰となり、故人の親族に返還されるように設計された骨壷に移され、納められる。
【0006】
火炎火葬は埋葬よりも環境に優しいとはいえ、遺体を火葬するために化石燃料を使用する必要があり、大気中に大量の二酸化炭素を放出することになるため、それ自体が環境に与える影響は大きい。また、アマルガムの詰め物があるため、水銀が排出される場合もある。
【0007】
さらに、火炎火葬プロセスを実施する前、特に火葬炉に移動する前に、遺体を個別に準備する必要がある。実際、ペースメーカーや医療機器、特に電池で作動するような埋め込み機器は、火葬炉での焼却中に起こるかもしれない爆発を避けるため、安全上の理由から取り外さなければならない。
【0008】
さらに、火炎火葬には、人間の火葬された遺骨が容器の残骸や焼却中に発生する最終的副生成物と混ざり合ってしまうという欠点もある。これは、火葬の最後に有効に回収される遺骨が少量になることを意味する。その結果、故人の親族が骨壷を受け取るとき、結果として得られる遺骨のうちどれだけが故人の火葬された遺骨からのものであるかわからない。
【0009】
アルカリ加水分解は、液体火葬とも呼ばれ、水と水酸化カリウムなどのアルカリを主成分とし、遺体の自然分解を効率化するために熱と圧力を組み合わせたプロセスにより、遺骨を骨片又は火葬された遺骨に縮減する。このプロセスにより、骨片と無菌液体が生成され、廃水処理システムを通じてリサイクルすることができる。
【0010】
特に、液体火葬は、遺体を容器に入れるステップと、及びその容器を、高温高圧で水と水酸化カリウムなどのアルカリ化合物の混合物で満たされた設計された火葬室に移動させ、そこで遺体を分解するステップとからなる。液体火葬の最後には、火葬された遺骨に相当する骨片と、水、塩、糖、アミノ酸の混合物からなる無菌液体が得られる。火葬された遺骨は通常、粉砕するために乾燥され、一方、無菌液体は排出される。その後、火葬された遺骨は、故人の親族に返還されるように設計された骨壷に移され、納められる。
【0011】
このように、液体火葬は従来の火炎火葬よりも消費エネルギーが少なく、生成された無菌液体は廃水処理システムを通じて簡単にリサイクルできるという利点がある。また、液体火葬は火炎火葬よりも二酸化炭素の排出を大幅に抑えることができる。これは、液体火葬が従来の火炎火葬よりも環境に優しく、そのプロセスは遺体を埋葬した場合に近いという利点があることを物語っている。
【0012】
さらに、液体火葬では、従来の火炎火葬よりも多くの遺骨を得ることができる。言い換えれば、従来の火炎火葬よりも液体火葬の方が、より多くの遺骨を回収・収集することができる。
【0013】
従来の火炎火葬とは異なり、遺体から埋め込み機器を切り取る必要がないため、遺体を個別に準備する必要がない。つまり、液体火葬は火炎火葬よりも低温であるため、ペースメーカーや人工関節のような埋め込み機器を、遺体の分解中に体内に残すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、液体火葬は、まだ全ての国で受け入れられているわけではなく、又利用できるわけでもない。実際、液体火葬は、標準的な火炎火葬や伝統的な埋葬に比べ、全体的に尊厳に欠けるとして意見が割れるプロセスとして認識される可能性がある。
【0015】
さらに、アルカリ加水分解が認められている国では、利用できる業者が限られている場合もある。
【0016】
その結果、現在利用可能な火葬方法で発生するいくつかの欠点を軽減できる火葬方法を提供することが依然として切実に求められている。
【0017】
特に、本発明の目的の1つは、標準的な火炎火葬よりも、より少ないエネルギー消費で、より多量の火葬された遺骨、より詳細には人間の火葬された遺骨を得ることができ、アルカリ加水分解よりも一般に受け入れられやすい火葬方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、つまり、遺体の火葬方法に関し、この方法は、以下のステップ、すなわち、
i)少なくとも300℃の温度で火葬室を予熱するステップと、
ii)遺体を火葬室に挿入するステップと、
iii)火葬室を密閉するステップと、
iv)遺体の体液を超臨界状態にするために、火葬室の圧力を2900psi以上の圧力に上昇させるステップと、
v)遺体の骨及び組織が超臨界状態の体液によって分解された後、火葬室をパージするステップと、
を順次に備える。
【0019】
本発明の方法は、火葬室内の温度と圧力により、遺体の体液を超臨界状態にし、前記遺体の組織と骨を分解できる溶媒として作用させることを可能にする。
【0020】
その結果、本発明による方法では、体液を、臨界点を超える温度及び圧力にし、これにより前記流体が液体にも気体にも分類されない状態にすることができる。
【0021】
特に組織や骨の分解は、超臨界状態にされた死体の体液によって行われる。
【0022】
この方法は、水や酸化触媒の添加や注入を必要としないことを意味する。
【0023】
特に、本発明による方法は、超臨界状態にした亡骸自体の体液を利用するため、超臨界水プロセスとは異なる。
【0024】
この方法は、火葬室内に置かれた死体の組織と骨を確実に分解するために、死体の全ての体液に超臨界反応を起こさせることに依存する。
【0025】
本発明の方法は、標準的な火炎火葬よりも、より少ないエネルギー消費で、より火葬された人間の多量の遺骨を得ることを可能にする。
【0026】
その結果、本発明の方法は、燃料の使用を抑制し、炭素排出や水銀排出を削減できるため、環境に優しい。
【0027】
また、本発明の方法は、ペースメーカーや人工関節のような埋め込み機器を切り取って火葬室に移す前に遺体を準備する必要がないという利点も有している。実際、遺体はそのまま火葬室に入れることができる。
【0028】
さらに、前記方法は、2分未満、好ましくは1分未満の時間で、亡骸を骨片及び超臨界流体混合物に縮減させることを可能にする。
【0029】
したがって、本発明の方法により、安全な条件下で効率的に人間の火葬された遺骨を収集することができる。
【0030】
このプロセスは、遺体を簡単に火葬された遺骨にするための迅速な反応を可能にする。
【0031】
この後、本方法から得られた人間の火葬された遺骨は、破砕され、転送され、また骨壺又は任意の適当な容器内に収集される。
【0032】
このプロセスは、人間の火葬された遺骨を従来の火炎火葬よりも多量に回収することを可能にする。
【0033】
特に、本方法から得られた人間の火葬された遺骨は、遺体が入れられた容器から生じた物質及び/又は他の副生成物と混合されない。
【0034】
本発明の方法は、火を使わない方法であるという特性を示す。
【0035】
本発明の他の内容や特徴、態様及び利点は、以下の説明、図及び実施例を読むことによってさらに明確に明らかになるであろう。
【0036】
本明細書では、特に断りのない限り、「~の間」及び「~の範囲」という表現において、値の範囲の限界はその範囲に含まれる。
【0037】
また、本明細書において使用される「少なくとも1つの」という表現は、「1つ以上」という表現に相当する。
【0038】
さらに、本発明によれば、用語「遺体(human remains)」は、用語「亡骸(dead body)」、「死体(corpse)」、「死骸(cadaver)」、「遺骸(deceased body)」、及び/又は「死体(carcass)」に無差別に対応することができる。言い換えれば、用語「遺体」は、本発明の文脈において、用語「亡骸」、「死体」、「死骸」、「死体」、「遺骸」及び「遺体」を区別なく指定することができる。
【0039】
これは、前述の方法が、死体、亡骸、死骸、遺骸又は死体を火葬する方法であることを意味する。
【0040】
「遺体(human remains)」という用語は、遺骸(deceased body)の一部を指す場合と、遺骸全体を指す場合がある。
【0041】
[方法]
好ましくは、火葬室を予熱するステップは、少なくとも320℃の温度で、より好ましくは少なくとも340℃の温度で、さらにより一層好ましくは少なくとも370℃の温度で、また特に好ましくは少なくとも374℃の温度で実施される。
【0042】
好ましくは、火葬室を予熱するステップは、300℃~420℃の範囲にわたる、より好ましくは340℃~4000℃の範囲にわたる、さらにより一層好ましくは370℃~380℃の範囲にわたる温度で実施される。
【0043】
好ましくは、予熱するステップは、火葬室内に備えられた加熱要素、特にヒーター棒、又はニッケルクロム抵抗線の特注品、より好ましくはヒーター棒の特注品、を用いて実施される。
【0044】
好ましい実施形態において、本方法は、火葬室を前述の温度で予熱するステップを有し、前記火葬室は、好ましくは加熱要素、特にヒーター棒を収納している内部断熱室を備える。
【0045】
好ましくは、遺体は火葬室に移される前に、火葬に適した棺又は硬質カーボード容器、より好ましくは棺に入れられる。
【0046】
好ましくは、遺体は火葬室に移される前にバスケットに入れられる。特に、バスケットは、死亡した遺骸を収容できる大きさである。
【0047】
その後、遺体は火葬室に入れられる。
【0048】
次いで、火葬室は密閉される。
【0049】
この方法は、遺体の体液を超臨界状態にするために、火葬室の圧力を2900psi(約20MPaに相当)以上の圧力まで上昇させるステップを備える。
【0050】
特に、火葬室は体液を液体や気体とは異なる状態にするために加圧される。
【0051】
つまり、火葬室は遺体の体液を超臨界流体に変えるのに十分な圧力まで加圧される。
【0052】
好ましい実施形態では、火葬室の圧力は、3400psi(約24.44MPa)以上、より好ましくは3800psi(約26.2MPa)以上の圧力まで上昇される。
【0053】
特に、火葬室の圧力は、2900psi(約20MPa)~4500psi(31.03MPa)、好ましくは3400psi(約24.44MPa)~4500psi(31.03MPa)、より好ましくは3800psi(約26.2MPa)~4500psi(31.03MPa)の範囲にわたる。
【0054】
好ましい実施形態では、遺体の体液を超臨界状態にするために、火葬室の圧力を2900psi(約20MPa)以上の圧力まで上昇させることが、5分未満、特に好ましくは4分未満、さらにより好ましくは2分未満の時間で行われる。
【0055】
言い換えれば、火葬室は5分未満の時間、特に4分未満の時間で加圧されることが好ましい。
【0056】
特に、この段階では、体液の温度と圧力は臨界点よりも高く、超臨界流体に変化させることができる。
【0057】
特に、予熱された火葬室の温度は、火葬室の圧力を2900psi以上の圧力に上昇させるステップ中、維持される。
【0058】
言い換えれば、火葬室は、火葬室が予熱された温度で2900psi以上の圧力に加圧される。
【0059】
その結果、遺体は火葬室が予熱された温度で処理される。
【0060】
好ましい実施形態において、本方法は、火葬室の圧力を、2900psi(約20MPa)以上、好ましくは3400psi(約24.44MPa)以上、より好ましくは3800psi(約26.2MPa)以上に上昇させ、火葬室の温度を、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも320℃、より好ましくは少なくとも340℃、さらに好ましくは少なくとも370℃、特に好ましくは少なくとも374℃に上昇させるステップを備える。
【0061】
特に、本方法は、火葬室の圧力を、3400psi(約24.44MPa)以上、より好ましくは3800psi(約26.2MPa)以上に上昇させ、また火葬室の温度を、少なくとも320℃、より好ましくは少なくとも340℃、さらに好ましくは少なくとも370℃、特に好ましくは少なくとも374℃に上昇させるステップを備える。
【0062】
より好ましくは、本方法は、火葬室の圧力を3400psi(約24.44MPa)以上の圧力まで上昇させるステップを備え、火葬室の温度は少なくとも374℃に等しい。
【0063】
本発明によれば、「体液」という特徴には、水、自由流動性の血液、血液成分及び死体又は亡骸に含まれるあらゆる体液が含まれる。
【0064】
好ましくは、火葬室の圧力を2900psi(約20MPa)以上の圧力に上昇させるステップは、圧縮空気又は窒素のいずれか、より好ましくは窒素を用いて行われる。
【0065】
特に、圧縮空気中の酸素の含有量は、圧縮空気の総体積に対して最大6%である。
【0066】
好ましくは、火葬室の圧力を2900psi(約20MPa)以上の圧力に上昇させるステップは、遺体の体液の内容物が沸騰したり燃焼したりしないようにするために、窒素又は当該気体の総体積に対して95体積%以上の窒素を含む気体を用いて行われる。
【0067】
好ましくは、火葬室の圧力を3400psi(約24.44MPa)以上の圧力に上昇させるステップは、窒素又は当該気体の総体積に対して95体積%以上の窒素を含む気体を用いて行われる。
【0068】
先に詳述したように、一旦体液が超臨界状態になると、超臨界状態の体液は火葬室内で死体の組織や骨を分解する溶媒として作用する。
【0069】
特に、超臨界状態の体液は溶媒として作用するため、遺骸の組織や骨の分子鎖を分解することができる。
【0070】
この反応により、人間の火葬された遺骨に相当する骨片(灰化骨とも呼ばれる)と、体液と組織が混ざり合った超臨界流体混合物が形成される。
【0071】
当該反応は、有利には2分未満、好ましくは1分未満で終了する。
【0072】
当該反応が完了すると、つまり亡骸の組織と骨が完全に分解されると、火葬室を特に空気でパージする。
【0073】
反応が完了後に火葬室をパージするステップは、数回繰り返すことができる。
【0074】
好ましくは、火葬室を特に空気でパージすると、超臨界状態の体液と組織との反応から生じる超臨界流体混合物が排出され、特に熱交換器内に強制的に通過させられる。
【0075】
言い換えれば、反応終了時、超臨界流体は体液と組織の混合物からなる。
【0076】
好ましくは、この方法は、火葬室をパージした後、前記超臨界流体を排出して熱交換器に強制的に通過させるステップを備える。
【0077】
好ましくは、パージするステップは、火葬室の予め設定された圧力開放弁を開くことによって実行され、超臨界状態の体液と組織との反応から生じる超臨界流体混合物は、排出され、特に熱交換器に強制的に通過させられて、保持タンクに入れられる。
【0078】
好ましくは、この方法は、当該超臨界流体混合物を熱交換器内で液体状態に冷却するステップを備える。
【0079】
特に、熱交換器から排出される液体は、DNAシグネチャー(痕跡)がなく、pH値が7より低い。
【0080】
火葬室がパージされると、圧力、特に残留圧力が低下し、前記火葬室を安全に開けることができる。
【0081】
好ましくは、この方法は、骨片又は人間の火葬された遺骨を回収するステップを備える。
【0082】
火葬した遺骨は、骨片を小さくするために粉砕することができる。
【0083】
その後、火葬した遺骨を集め、骨壷や適切な容器に移すことができる。
【0084】
つまり、火葬室をパージした後、当該火葬室内の圧力を開放し、人間の火葬された遺骨を回収する。
【0085】
[火葬室]
【0086】
好ましくは、本発明の方法は、以下に定義する火葬室で実施される。
【0087】
本発明で使用される火葬室は、横長形状、好ましくは円筒形であり、より好ましくは中空管である。
【0088】
火葬室は、ステンレス鋼、ニッケル基合金、特にInconel(登録商標)の商標名で販売されているニッケル基合金、又は高温用途に使用されるその他の高性能合金などの金属製とすることができる。
【0089】
火葬室は、少なくとも300℃の温度、好ましくは少なくとも320℃の温度、より好ましくは少なくとも340℃の温度、さらにより好ましくは少なくとも370℃の温度、特に好ましくは少なくとも374℃の温度で火葬室を予熱するための加熱要素、特にヒーター棒を備える。
【0090】
好ましくは、火葬室は、火葬室と同じ形状を有する内部断熱室を備える。特に、内部断熱室は、横長形状、好ましくは円筒形を有し、より好ましくは中空管である。
【0091】
好ましくは、内部断熱室は、火葬室の内部の少なくとも一部を形成する。
【0092】
好ましくは、火葬室は内部断熱室の幅よりも広い幅を有する。
【0093】
内部断熱室は、セラミック製又はセラミック、特に高密度セラミック断熱材などの高温耐性セラミックでコーティングすることができる。
【0094】
内部断熱室は、遺体、特に火葬に適した棺、硬質段ボール容器及び/又は遺体、特に死体を収容したバスケットを受け入れるのに適している。
【0095】
好ましい実施形態では、内部断熱室は、バスケット、特にステンレス製メッシュバスケットを受け入れるのに適している。バスケットは、再利用可能であることが好ましい。
【0096】
故人の遺骨のみを回収するには、バスケット、特にステンレス製メッシュバスケットが好ましい。
【0097】
内部断熱室は、好ましくは、火葬室を前述の温度で予熱するために、加熱要素、特にヒーター棒から構成される。
【0098】
火葬室の内部断熱室内に加熱要素、好ましくはヒーター棒が存在するにより、前記内部断熱室内の加熱及び保温におけるエネルギーコストを削減し、より低温のドアシールの使用を可能にするという利点を有する。
【0099】
火葬室は、好ましくは、室内が加圧状態にある間は開くことができない内向きのスイングドアを組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1、
図2、
図3及び
図4は、本発明の火葬室の一実施形態を示す。
【
図1】
図1は、横長の形状を有する本発明による火葬室1の上面図である。
【
図2】
図2は、横長の形状を有する本発明による火葬室1の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明による火葬室1のIII-III軸に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の火葬室1のIV-IV軸に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、本発明による火葬室1の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1によれば、火葬室1は、外側ケーシング2を備え、好ましくは420℃などの高温に耐えるセラミック製の内部断熱室3を含む中空管である。
【0102】
外側ケーシング2の長さは、内部断熱室3の長さよりも長い。
【0103】
火葬室1及び内部断熱室3は、死骸がバスケット、棺又は硬質ボール紙容器、好ましくはバスケットに収容されているかどうかに関係なく、死骸を受け入れることができる大きさに作られている。
【0104】
図2によれば、外部エンベロープ2は、内部断熱室3の直径よりも大きい直径を有する。
【0105】
次に
図3を参照すると、内部断熱室3は、当該内部断熱室3を前述の温度、好ましくは少なくとも320℃の温度、より好ましくは少なくとも374℃の温度で予熱するためのヒーター棒4で構成されている。
【0106】
ヒーター棒4は、内部断熱室3の天井付近に配置され、好ましくは等距離に配置される。
【0107】
内部断熱室3は、死骸(図示せず)を収容できる大きさのバスケット5を備える。
【0108】
バスケット5は、内部断熱室3の床に置かれる。
【0109】
温度プローブ(図示せず)は、外側ケーシング2の表面に存在することができ、火葬室1が必要な温度に達したときに操作者に警告し、火葬室1のドアが開いてバスケット4が取り出されたときに温度降下を可能にするのに適している。
【0110】
図4によれば、外部エンベロープ2の幅は内部断熱室3の幅よりも大きい。
【0111】
図5によれば、火葬室1は、脚6及び随意的なスキッド(図示せず)を備える支持体上に取り付けることができる。脚6には、随意的に、昇降ブラケット(図示せず)を設けることができる。
【0112】
特に、本発明の方法を実施する場合、内部断熱室3内の熱を保持及び隔離するよう空のバスケット5が所定位置にある状態で、内部断熱室3の天井近くに配置されたヒーター棒4をオンにする。
【0113】
少なくとも300℃の必要温度に達すると、ドア2aが開かれ、空のバスケット5を取り出し、死体を収納しているバスケット5と入れ替える。次に、ドア2aを閉じて密閉し、火葬室1を2900psiまで加圧する。
【0114】
体液が超臨界状態に入ると、火葬室1の圧力は上昇し、熱交換器の出口に設置された圧力逃し弁を介して過剰圧力を抜き取る制御をして、圧力は例えば4000psiにすることができる。
【0115】
超臨界流体プロセス中、圧力は徐々に低下させるのが好ましいが、これは超臨界流体が分子鎖を切断するにつれて、チャンバー内における全固体体積(遺骸)のサイズが小さくなるためである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体、特に人間の遺体を火葬する方法であって、以下のステップ、すなわち、
i)火葬室(1)を少なくとも300℃の温度で予熱するステップと、
ii)前記
遺体、特に人間の遺体を前記火葬室(1)に挿入するステップと、
iii)前記火葬室(1)を密閉するステップと、
iv)前記
遺体、特に人間の遺体の体液を超臨界状態にするために、前記火葬室(1)の圧力を2900psi以上の圧力に上昇させるステップと、
v)前記
遺体、特に人間の遺体の骨及び組織が超臨界状態の体液によって分解されたら、前記火葬室(1)をパージするステップと
を順次に備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記火葬室(1)を予熱するステップは、少なくとも320℃の温度、より好ましくは少なくとも340℃の温度、さらに好ましくは少なくとも370℃の温度で行われることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、前記火葬室(1)を予熱するステップは、加熱要素(4)、特にヒーター棒(4)を用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)の圧力を上昇させるステップは、3400psi以上、より好ましくは3800psi以上の圧力で行われることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前記圧力を上昇させるステップは、5分未満、好ましくは4分未満、さらに好ましくは2分未満の時間で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)の前記圧力を上昇させるステップは、圧縮空気、窒素、又は前記気体の総体積に対して95体積%以上の窒素を含む気体のいずれかを用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)を空気でパージすることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記
遺体、特に人間の遺体の骨及び組織の分解により、骨片と、並びに体液及び組織が混ざった超臨界流体混合物とを形成することを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記火葬室(1)をパージした後、前記超臨界流体混合物を排出することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の方法において、前記超臨界流体混合物を熱交換器に強制的に通過させることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記超臨界流体混合物を前記熱交換器内で冷却して液体状態に戻すことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、前記火葬室(1)をパージした後、前記火葬室(1)内の圧力を放出し、
火葬された遺骨、特に人間の火葬された遺骨を回収することを特徴とする、方法。
【国際調査報告】