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特表2024-537652オキソスズ酸塩リッチ膜を生成する方法及び前駆体
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  • 特表-オキソスズ酸塩リッチ膜を生成する方法及び前駆体 図1
  • 特表-オキソスズ酸塩リッチ膜を生成する方法及び前駆体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】オキソスズ酸塩リッチ膜を生成する方法及び前駆体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/30 20060101AFI20241008BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20241008BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/683 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C23C16/30
C07F7/22 F
C07F7/22 M
H01L21/285 C
C23C16/40
H01L21/68 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515872
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021056936
(87)【国際公開番号】W WO2023038651
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/243,266
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508129090
【氏名又は名称】ジェレスト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】バリー シー アークルズ
(72)【発明者】
【氏名】ユーリン パン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ディー ゴフ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヤン
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
4M104
5F131
【Fターム(参考)】
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ10
4H049VQ39
4H049VR21
4H049VR33
4H049VR53
4H049VU24
4K030AA11
4K030BA16
4K030BA42
4K030DA08
4K030HA03
4M104BB36
4M104DD43
4M104DD45
5F131AA02
5F131BA01
5F131CA01
5F131EC21
(57)【要約】
フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法は、少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、基板を提供するステップと、フッ素化アルキルスズ化合物を基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、物理吸着又は化学吸着されたフッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解、照射及び/又は酸化のステップに曝露して基板において薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップとを伴う。式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物も記載され、Rは約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基であり、nは1又は2である。
【化1】
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
前記フッ素化アルキルスズ化合物を前記基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着された前記フッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って前記基板において薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記フッ素化アルキルスズ化合物は、式(I)を有し、
【化1】
は約1~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基であり、nは1又は2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、フッ素化又は部分フッ素化エチル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各Xは、独立して、約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基及びハロゲン基から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Xは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基又はメチルエチルアミノ基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Xは、Cl、Br又はHである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化アルキルスズ化合物は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリフェニルスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズ、2,2,2-トリフルオロエチルトリクロロスズ又は6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロブチルトリクロロスズである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
パターン化された膜を形成する方法であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、電子ビーム若しくはレーザーによるラスタリング又はリソグラフィのマスキングによって、前記膜を非連続的な放射線に曝露するステップと、を備える方法。
【請求項9】
連続する膜を形成する方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、適切なリソグラフィのマスクを利用して前記膜をブランケット露光に曝露して光学的に透明なフッ素ドープ酸化スズ伝導膜を提供するステップと、を備える方法。
【請求項10】
式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物であって、
【化2】
は約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基であり、nは1又は2である、フッ素化アルキルスズ化合物。
【請求項11】
3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ又は3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズである請求項10に記載のフッ素化アルキルスズ化合物。
【請求項12】
2成分堆積混合物であって、(a)少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化されたモノアルキルスズ化合物と、(b)フッ素化されたジアルキルスズ化合物であって、前記モノアルキルスズ化合物における前記フッ素化されたアルキル基が前記ジアルキルスズ化合物における前記フッ素化されたアルキル基と同一である、フッ素化されたジアルキルスズ化合物と、を含む混合物。
【請求項13】
前記フッ素化されたモノアルキルスズ化合物は、式(II)を有し、前記フッ素化されたジアルキルスズ化合物は、式(III)を有し、
【化3】
【化4】
は約2~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基である、請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
請求項12又は13に記載の混合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
気化された前記混合物を前記基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着された前記混合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って前記基板において薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月13日に出願された米国仮特許出願第63/243266号の優先権を主張し、その開示は、その全体において参照によってここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)薄膜は、技術的な応用のための高い電子伝導性及び可視領域での光透過性、並びにそれらの広いエネルギーギャップ、低い生成コスト、熱安定性、化学的不活性及び高い透明性などの特性のために魅力的である。SnO及びFTO膜を調製する公知の方法は、大気圧化学気相堆積(APCVD)、スパッタリング、ゾルゲル法及びスプレー熱分解堆積(SPD)を含む。FTO膜には、厚さ、均一性及び構成に関するナノメートルの領域での寸法制御並びに他元素の低いレベルの不純物が一層望まれている。凝縮相堆積法(ゾルゲル法、スプレー熱分解法)は、薄膜堆積の間のレオロジー、粘性、応力発生及び収縮並びに高元素純度を提供できないことにより、超薄膜又は高純度膜が容易には可能とならない。APCVD及びスパッタリングは、原理的には望ましい元素純度を達成し得るが、これらの方法には、特有の制限がある。スパッタリングについては、この技術に関連する「視線(line of sight)」のため、ナノ機能基板との適合性は難しい。APCVDについての制限事項は、主に適切な前駆体の安定性又は揮発性の欠如である。CVDでの真空技術の使用はAPCVDよりも低い揮発性の前駆体の使用を可能とするが、FTOの堆積のためのCVD及びAPCVDについての適切な前駆体は達成されていない。
【0003】
BrSn(CF、HSn(CF、HSn(CF及びHSnCFを含む単純なトリフルオロメチルスズ化合物は、当技術分野で公知であるが、-30℃までしか安定ではない(非特許文献1参照)。酸化トリフルオロエチルスズ化合物も公知であり、特許文献1に記載されている。モノアルキルトリアミドスズ化合物は、特許文献2に記載されているが、これらの化合物はスズ及びフッ素のための単一供給源を提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0356000号明細書
【特許文献2】米国特許第10787466号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R.Eujen,J.Orgometal.Chem.434、159-168(1992年)
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様では、少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、基板を提供するステップと、フッ素化アルキルスズ化合物を基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、物理吸着又は化学吸着されたフッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って基板において薄いフッ素化オキソスズ酸塩(oxostannate)膜を形成するステップと、を備えるフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法が提供される。
【0007】
本開示の他の態様では、式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物が提供され、
【化1】
は約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは約1~約4個の炭素原子、塩素若しくは臭素などのハロゲン又は水素を有するジアルキルアミノ基であり、nは1又は2である。
【0008】
本開示のさらなる態様では、(a)少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化されたモノアルキルスズ化合物と、(b)フッ素化されたジアルキルスズ化合物であって、ジアルキルスズ化合物におけるフッ素化されたアルキル基がモノアルキルスズ化合物と同一である、フッ素化されたジアルキルスズ化合物と、を含む2成分堆積混合物が提供される。
【0009】
単独で又は組み合わせて実施され得る本発明の有利な改良点は、従属請求項に明記される。
【0010】
まとめると、以下の実施形態は、本発明の範囲において特に好適であるものとして提案される。
【0011】
実施形態1:フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
フッ素化アルキルスズ化合物を基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着されたフッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って基板において薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【0012】
実施形態2:実施形態1に記載の方法であって、フッ素化アルキルスズ化合物は、式(I)を有し、
【化2】
は約1~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基であり、nは1又は2である。
【0013】
実施形態3:実施形態1又は2に記載の方法であって、Rは、フッ素化又は部分フッ素化エチル基である。
【0014】
実施形態4:先行する実施形態のいずれかに記載の方法であって、各Xは、独立して、約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基及びハロゲン基から選択される。
【0015】
実施形態5:先行する実施形態のいずれかに記載の方法であって、Xは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基又はメチルエチルアミノ基である。
【0016】
実施形態6:先行する実施形態のいずれかに記載の方法であって、Xは、Cl、Br又はHである。
【0017】
実施形態7:先行する実施形態のいずれかに記載の方法であって、フッ素化アルキルスズ化合物は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリフェニルスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズ、2,2,2-トリフルオロエチルトリクロロスズ又は6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロブチルトリクロロスズである。
【0018】
実施形態8:パターン化された膜を形成する方法であって、先行する実施形態のいずれかに記載の薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、電子ビーム若しくはレーザーによるラスタリング又はリソグラフィのマスキングによって、膜を非連続的な放射線に曝露するステップと、を備える方法。
【0019】
実施形態9:連続する膜を形成する方法であって、先行する実施形態のいずれかに記載の薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、適切なリソグラフィのマスクを利用して膜をブランケット露光に曝露して光学的に透明なフッ素ドープ酸化スズ伝導膜を提供するステップと、を備える方法。
【0020】
実施形態10:式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物であって、
【化3】
は約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基であり、nは1又は2である。
【0021】
実施形態11:実施形態10に記載のフッ素化アルキルスズ化合物であって、化合物は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ又は3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズである。
【0022】
実施形態12:2成分堆積混合物であって、(a)少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化されたモノアルキルスズ化合物と、(b)フッ素化されたジアルキルスズ化合物であって、モノアルキルスズ化合物におけるフッ素化されたアルキル基がジアルキルスズ化合物におけるフッ素化されたアルキル基と同一である、フッ素化されたジアルキルスズ化合物と、を含む混合物。
【0023】
実施形態13:実施形態12に記載の混合物であって、フッ素化されたモノアルキルスズ化合物は式(II)を有し、フッ素化されたジアルキルスズ化合物は式(III)を有し、
【化4】
【化5】
は約2~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基である。
【0024】
実施形態14:フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
実施形態12又は13に記載の混合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
気化された混合物を基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着された混合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って基板において薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【0025】
以下の本発明の好適な実施形態の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読まれる場合により深く理解される。本発明を説明する目的で、現在好ましい実施形態が図面に示されている。一方で、本発明は、図示した正確な配置構成及び手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態に係る処置されたシリコンウェハのXPSスペクトルである。
図2】本開示の第2の実施形態に係る処置されたシリコンウェハのXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、気相から堆積されてオキソスズ酸塩リッチ薄膜を形成し得る、前駆体化合物及び少なくとも2個の前駆体化合物を含有する組成物に関する。これらの前駆体組成物は、UV光、EUV光及び/又は電子ビーム放射線に感受性を有し、高い光学密度を有し、パターン化された構造への変換中の収縮又は連続する膜のための低減された応力割れに対して耐性を有する修飾スズオキソスズ酸塩(tin oxostannate)組成物を形成する。それらは、電極を形成するのに十分な電気伝導性を有する、可視波長領域において80%超の光透過率を有する膜も形成し得る。これらの組成物は、フッ素修飾オキソスズ酸塩といわれることもある。
【0028】
より具体的には、本開示の実施形態は、室温では安定であるが、蒸気として固体基板と反応可能であり、その後のUV放射線への(特に極UV放射線への)曝露において、それらの有機置換基を失い、安定なフッ化スズ結合の形成を介したオキソ架橋の阻害によって収縮に耐えるオキソスズ酸塩膜を形成する揮発性スズ有機金属化合物に関する。
【0029】
ここで説明するフッ素化オキソスズ酸塩膜は、SnO:H,F膜又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜としてそれぞれ説明され得る。この膜は、電子ビーム若しくはレーザーを用いたラスタリングによる制御露光によってパターニングされてもよいし、又は適切なリソグラフィのマスクを利用したブランケット変換において変換されて、光学的に透明なフッ素ドープ酸化スズ伝導膜が提供されてもよい。
【0030】
スズ化合物
揮発性スズ有機金属化合物は、好ましくは式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物である。
【化6】
式(I)において、Rは約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基、好ましくはフッ素化又は部分フッ素化エチル基、最も好ましくはトリフルオロエチルであり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基であり、nは1又は2である。各Xは、独立して、例えば、限定されることなく、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ若しくはメチルエチルアミノなどの各アルキル基が約1~約4個の炭素を有するジアルキルアミノ基、(塩素又は臭素などの)ハロゲン基又は水素であり得る。Rにおいて、フッ素原子は、その結果得られる化合物が安定であれば、任意の炭素原子上にあってもよいが、スズに対してベータ又はガンマ位にあることが最も好ましい。
【0031】
式(I)を有する好適な化合物は、上記で定義したように、式RCHSn(NMeを有する。
【化7】
【0032】
3個以上のフッ素化炭素を有する化合物は本開示の範囲となるが、現時点での環境及び安全上の懸念から、フッ素原子が炭素原子からスズ原子に移動し得る構造位置において最小数のフッ素化炭素原子を有する化合物が好適となる。
【0033】
本開示の態様に係る例示的なフッ素化アルキルスズ化合物は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズ(下図:化8)、2,2,2-トリフルオロエチルトリクロロスズ及び6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロブチルトリクロロスズを含む。これらの化合物は、安定であり、液体であり、かつ揮発性を有する。
【化8】
【0034】
-30℃までしか安定ではない単純なトリフルオロメチルスズ化合物(R.Eujen,J.Orgometal.Chem.434、159-168(1992年)参照)と比較して、本開示の態様に係るアルキルスズ化合物は、35℃の保存条件で長期間にわたって安定である。酸化トリフルオロエチルスズは、Minegishiの米国特許出願公開第2020/0356000号明細書において、凝縮相樹脂性スピンオン膜の潜在的な成分として教示されているが、特別な属性は、考慮も例示もされていない。
【0035】
2個以上の炭素原子及びフッ素原子を含むモノアルキルスズ化合物及びそれらのオキサン誘導体は、それら又はそれらのオキソスズ酸塩誘導体から有機的特徴を除去する脱離反応を容易に受け、同時にスズ-フッ素結合を形成することが見出されている。フッ化スズ結合は熱的及び加水分解的に安定である。0.1~5原子%のフッ素原子を含んで形成された膜は、フッ素を含まずに形成された同等の膜より収縮されない。フッ素は酸素と同等又はより大きい光学断面積を有し、これらの膜に所望の特性を与える。
【0036】
組成物
代替的な実施形態では、上記のようなフッ素化アルキルスズ化合物及び2つの類似のフルオロアルキル置換基を有する1~10%のフッ素化アルキルスズ化合物を含む組成物が提供される。それらがオキソスズ酸塩膜内に取り込まれる場合、第2の化合物を含むことは、膜の完全性及び凝集性を向上させ、したがって、欠陥を低減し得る。このような化合物の例は、ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジクロロスズである。したがって、主に1~10%のビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジクロロスズとともに3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズからなる組成物は、FTO膜のフッ素含有量を増加させるのに適している。
【0037】
したがって、本開示はさらに、(a)少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化されたモノアルキルスズ化合物と、(b)フッ素化されたジアルキルスズ化合物であって、ジアルキルスズ化合物におけるフッ素化されたアルキル基がモノアルキルスズ化合物と同一である、フッ素化されたジアルキルスズ化合物と、を含む2成分堆積混合物に関する。
【0038】
好適な実施形態では、フッ素化されたモノアルキルスズ化合物は式(II)を有し、フッ素化されたジアルキルスズ化合物は式(III)を有する。
【化9】
【化10】
式(II)及び(III)では、Rは上記のようにフッ素化又は部分フッ素化されたアルキル基であり、Xは上記のように加水分解的又は酸化的に不安定な基である。
【0039】
方法
本開示の態様に係るフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法は、少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、基板を提供するステップと、フッ素化アルキルスズ化合物を基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップ並びに物理吸着又は化学吸着されたフッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って基板において薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、を備える。加水分解は、X基が置換される反応の第1のステップを推進する。この中間ステップは、有機スタンナセスキオキサン(organostannasesquioxanes)ともいわれる組成物を形成する。フッ素化された有機基がSn原子から除去される照射ステップと同時に、又はそれに続いて、Sn原子(フッ素原子によって置換されていない場合)は、水又は酸素との相互作用によって酸化物へと変換され得る。理論に拘束されることを望まないが、照射後、Sn+4は、オレフィンの脱離及び水素原子若しくはフッ素原子のスズ原子への移動又は均一結合開裂を含み得るアルキル置換基を失う。置換基がフッ素ではない場合、スズ化合物は水素化スズとして残ってもよいし、Sn+2化合物に還元されてもよい。他のハロゲンに対比して、Sn-F結合は、加水分解的及び熱的の双方に安定であり、それはその相対的な電気陰性度及び原子半径並びに5個以上の配位結合を形成するスズの能力に起因し得る。これらのステップの各々を、以下により詳細に説明する。
【0040】
第1の方法ステップでは、前駆体は、窒素若しくはアルゴンなどの担体ガス中へのエントレインメントによって、又は適切な温度での真空での揮発によって気化され、そして基板に輸送される。例えば、限定されることなく、酸化物、窒化物及びポリシリコン材料を含む、1以上の金属層、誘電体材料、半導体材料又はそれらの組合せを含む基板などの、膜を形成するのに望ましい当技術分野で公知の任意のタイプの基板が適切となる。
【0041】
次いで、気化された前駆体は、CVD、ALD又は同様の堆積処理に関連する標準的な技術を用いて、基板上に物理吸着又は化学吸着される。
【0042】
次に、物理吸着又は化学吸着されたフッ素化アルキルスズ化合物を(好ましくは蒸気として)水でパルスして加水分解的に不安定なX置換基を除去し、それらをヒドロキシ基で置換し(加水分解)、有機スタンナセスキオキサン(有機酸化スズ水酸化物)コーティングを形成する。続くステップ(照射)では、吸着されたコーティングを、Sn-C結合を断裂させる波長で放射線(好ましくはEUV)に曝露する。基板への損傷を回避するように約50mJ/cmの最大エネルギーレベル、より好ましくは10mJ/cm未満の照射が利用される。照射処理の間に、Sn-C結合の一部は、Sn-F結合に置換される。最終的に、すべてのSn-C結合は、Sn-O又はSn-F結合に置換される。Sn-O結合は、酸素又は水への曝露によって、照射と同時に、又はそれに続いて形成される。本発明の重要な態様は、Sn-F結合がオキソスズ酸塩構造において終端又はエンドキャッピングである一方で、2価の酸素が応力又は収縮を引き起こすSn-O-Snオキサン結合又は架橋をもたらすことである。Fでの置換によってオキサン結合を低減することによって、膜における応力が低減する。
【0043】
特に、スズに関連した極端紫外線の強い吸収が、13.5nmで観察される。スズに結合した有機部分の多くは、193nmの波長での紫外線の強い吸収及び230nmまでの比較的強い吸収を有する。したがって、照射に適した波長は、EUV及び深UVを含む13.5~280nmの範囲となる。これらの波長での十分なエネルギー吸収で、金属-有機結合が開裂する。開裂反応と同時に、又はその後に、酸化反応、加水分解反応又はヒドロキシ置換反応のいずれかによって、付加的なスズ原子間のオキソ架橋が形成される。
【0044】
理論に拘束されることを望まないが、この処理は、スタノキサン結合を形成するスズ-ヒドロキシ基の凝縮処理と同様に、あるレベルでは望ましい、より高密度な膜をもたらすと考えられるが、リソグラフィの処理の忠実性に影響を与え、又は連続する膜に応力割れを誘発する収縮及び歪みももたらし得る。したがって、ここに記載の方法によって調製された膜は、放射線曝露後の膜の収縮を低減する目的を達成する。一方で、十分な光学断面積、基板における膜形成、線量感受性(感光性)、保存安定性(熱安定性)、(曝露中のガス排出又は化合物に内在する)揮発性成分を含む、他の重要な性能要件が満たされなければならない。これらの要件の各々を、以下により詳細に説明する。
【0045】
高い光学断面積
スズ-オキソクラスター/ポリマー材料は、有望なEUVレジストであることが証明されている。特に、基板材料の表面におけるヒドロキシ基終端SnOx下層は、結像層の照射に際して放射線の吸収を増強し、基板から二次電子を発生させて付加的なEUV光子をさらに収集し、EUVパターニング処理の感受性がより高くなり、結像層の曝露に必要な要件とされるEUV線量を低減し得る。周期律表の元素の中で、スズは特に高い光学断面積を有する。
【0046】
膜形成-基板反応性
金属-有機(RMX)化合物は、Xが加水分解可能なM-X結合を有する配位子であるものとして、加水分解可能な配位子-金属結合を含まなければならない。特に、適切な有機スズ化合物は、CVD、ALD又はスピンオンによってウェハ表面に膜/ポリマー/クラスターを形成可能でなければならない。塗布又は堆積が凝縮相スピンオンにおける場合、クラスターは堆積前に液体前駆体中に形成され得るが、これは一般に、より大きい収縮を起こす。
【0047】
線量感受性(感光性)
アルキル基を含み、又はアルキル基で終端されたSnOx薄膜の膜結像層は、EUV光による照射の際のベータ水素化物脱離などのスズ-炭素結合開裂を受けるように選択されるため、前駆体のR基はEUVレジスト材料のUV感受性として重要な役割を果たすと考えられている。EUVパターニングのステップでは、アルキル基が開裂され、曝露されていない表面はアルキル終端のままでSn-H結合の領域が残ることになる。EUVへの曝露後の膜は、低密度のM-OHリッチ材料中の金属原子に結合した有機ペンダント置換基の消失に限定されることなく変化を受け、より高密度のM-O-M結合金属酸化物材料へのそれらの架橋を可能とする。スズ水素化物として説明され得るSn-H結合は、酸化的及び加水分解的に感受性を有し、酸化物を形成する。スズ水素化物の加水分解反応は、水素を発生するが、揮発性の副生成物は汚染物質として挙動しない。
【0048】
保存安定性(熱安定性)
スズ化合物は、コチェシュコフの同素均化反応ともいわれる不均化反応を受ける強い傾向を有する。材料の性能に暗に含まれるものは、湿気感受性を意味する湿気反応性に対する要件である。したがって、製品として材料及び長期保存を供給しつつ、保存安定性が考慮されなければならない。
【0049】
揮発性成分
前駆体は、気相堆積法によって基板に輸送されるのに十分な揮発性を有しなければならないが、揮発性を有し、かつ基板との反応性を有しない成分は、それらが非標的領域に拡散するため、最小限でなくてはならない。これらの揮発性成分の一般的な供給源は、製造又は保存中の同素均化及び放射線曝露中に形成される非同素均化副生成物からもたらされる。
【0050】
本開示のさらなる態様
本開示は、ここに説明する薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップ及び電子ビーム若しくはレーザーによるラスタリング又はリソグラフィのマスキングによって、膜を非連続的な放射線に曝露するステップを伴う、パターン化された膜を形成する方法にも関する。
【0051】
本開示は、ここに説明する薄いフッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップ及び適切なリソグラフィのマスクを利用して膜をブランケット露光に曝露して光学的に透明なフッ素ドープオキソスズ酸塩伝導膜を提供するステップを備える連続する膜を形成する方法にも関する。
【0052】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例と併せて説明する。
【0053】
実施例1:3,3,3-トリフルオロプロピルトリフェニルスズの合成
【化11】
ポット温度計、添加漏斗及びメカニカルスターラーを装備した3Lの丸底フラスコに、69.4g(2.85mol)のマグネシウムチップを充填した。1300mLのジエチルエーテル及び1gのヨウ素をフラスコに添加した。170mLのジエチルエーテル中の500gのヨウ化トリフルオロプロピル(2.23mol)の溶液を調製し、約10%をフラスコに充填した。反応物を、エーテルの視認可能な還流によって観察されるように、開始が達成されるまで撹拌した。ヨウ化トリフルオロプロピルの残りの溶液を、反応混合物の還流を維持する速度で滴下添加した。添加が完了した後、反応物を加熱して2時間還流した。グリニャール反応物を、1.20Mとなるように滴定した。
【0054】
ポット温度計、添加漏斗及びメカニカルスターラーを装備した他の5L丸底フラスコに、674g(1.75mol)のクロロトリフェニルスズ及び2400mLのトルエンを充填した。ジエチルエーテル中の1.2Mの3,3,3-トリフルオロプロピルマグネシウムヨウ化物の、1545mL(1.86mol)のグリニャール溶液を、ポット温度を50℃未満に維持しつつ2時間にわたって滴下添加した。すべてのグリニャール溶液を添加した後、反応物を40℃で4時間維持し、そして室温まで冷却させた。撹拌しながら、1400gの水を反応混合物に添加した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムにおいて乾燥させた。有機層を5Lの丸底フラスコに充填し、Dean-Starkトラップで還流して微量の水を除去した。そして、トルエンを蒸留によって除去してさらなる精製無しに用いられる桃色の粘性の油を得た。分析を以下の表に示す。
【表1】
【0055】
実施例2:3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズの合成
【化12】
ポット温度計、添加漏斗及びメカニカルスターラーを装備した5Lの丸底フラスコに、447.09g(1.0mol)の3,3,3-トリフルオロプロピルトリフェニルスズ及び600mLのトルエンを充填した。反応物を乾燥塩化水素ガスでスパージングし、発熱反応をもたらした。反応を添加速度の調節によって40℃未満に保ち、119SnNMRによってモニタリングした。16時間の添加後、12gの塩化アルミニウムを添加し、続いて約6時間の塩酸のスパージングをさらに行った。NMRによって示されるように反応が完了すると、生成物を分留(3.5torrで60℃)によって単離して、生成物として同定された178g(55%)の無色液体を与えた。周囲光への曝露後、生成物は褐色になった。色の変化は、暗所コントロールにおいては観察されなかった。
【0056】
生成物を35℃で1週間加熱した後、わずかな黄色の変色が観察されたが、目立った固形物の生成は見られなかった。119Snは変化せず、H NMRスペクトルにおいて、1.2ppm付近の小さな幅広の一重線の出現が観察された。8時間のUV照明は、黄色の混濁した溶液への若干の変色を明らかにした。NMR試料管の壁に形成された視認可能な膜が存在した。スズのNMRは無変化に見えたが、H NMRスペクトルにおいていくつかの新規の幅広のピークが存在した。本化合物の特性を下表に示す。
【表2】
【0057】
実施例3:3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズの合成
【化13】
ポット温度計、添加漏斗及びメカニカルスターラーを装備した3Lのフラスコに、テトラヒドロフラン中の2.0Mのジメチルアミンの385.7mL(0.91mol)の溶液を充填した。ヘキサン中の2.5Mのn-ブチリチウムの333.3mL(0.83mol)の溶液を、温度を20℃未満に制御して(氷浴で冷却した状態で)滴下添加した。その結果得られるスラリーを室温でさらに30分間撹拌した。リチウムジメチルアミドのスラリーに、温度を-5~-10℃に制御しつつ、420mLのテトラヒドロフラン中の88.6g(0.28mol)の3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズの溶液を添加した。反応物を室温で6時間撹拌させた。その結果得られる懸濁液を2回濾過した。そして濾液を濃縮した。生成物を粘性の液体として単離し、構造をH及び119Sn NMRで確認し、特性を以下の表にまとめた。
【表3】
【0058】
実施例4:3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズによるシリコンウェハの表面修飾
シリコンウェハを洗浄し、120℃(又は周囲温度)に設定したホットプレートを用いてドライボックス内で乾燥させた。0.2gの3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズを16.3gのTHFに溶解した。2種類の異なる処置(A)5分間の浸漬及び120℃で5分間の乾燥及び(B)5分間の浸漬及び室温で一晩の乾燥を適用した(試料A及びB)。処理された表面のXPSスペクトルをそれぞれ図1及び図2に示す。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化アルキルスズ化合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
前記フッ素化アルキルスズ化合物を前記基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着された前記フッ素化アルキルスズ化合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って前記基板において薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記フッ素化アルキルスズ化合物は、式(I)を有し、
【化1】
は約1~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基であり、nは1又は2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、フッ素化又は部分フッ素化エチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各Xは、独立して、約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基及びハロゲン基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Xは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基又はメチルエチルアミノ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Xは、Cl、Br又はHである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化アルキルスズ化合物は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリフェニルスズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズ、2,2,2-トリフルオロエチルトリクロロスズ又は6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロブチルトリクロロスズである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
パターン化された膜を形成する方法であって、請求項1に記載の薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、電子ビーム若しくはレーザーによるラスタリング又はリソグラフィのマスキングによって、前記膜を非連続的な放射線に曝露するステップと、を備える方法。
【請求項9】
連続する膜を形成する方法であって、請求項1に記載の薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を調製するステップと、適切なリソグラフィのマスクを利用して前記膜をブランケット露光に曝露して光学的に透明なフッ素ドープ酸化スズ伝導膜を提供するステップと、を備える方法。
【請求項10】
式(I)を有するフッ素化アルキルスズ化合物であって、
【化2】
は約1~約5個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは約1~約4個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基であり、nは1又は2である、フッ素化アルキルスズ化合物。
【請求項11】
3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジメチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジエチルアミノ)スズ、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(ジイソプロピルアミノ)スズ又は3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルアミノ)スズである請求項10に記載のフッ素化アルキルスズ化合物。
【請求項12】
2成分堆積混合物であって、(a)少なくとも2個の加水分解感受性官能基又は少なくとも2個の200℃を超える温度で酸化に感受性を有する反応性官能基を有する揮発性のフッ素化されたモノアルキルスズ化合物と、(b)フッ素化されたジアルキルスズ化合物であって、前記モノアルキルスズ化合物における前記フッ素化されたアルキル基が前記ジアルキルスズ化合物における前記フッ素化されたアルキル基と同一である、フッ素化されたジアルキルスズ化合物と、を含む混合物。
【請求項13】
前記フッ素化されたモノアルキルスズ化合物は、式(II)を有し、前記フッ素化されたジアルキルスズ化合物は、式(III)を有し、
【化3】
【化4】
は約2~約6個の炭素原子を有するフッ素化又は部分フッ素化された直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xは加水分解的又は酸化的に不安定な基である、請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成する方法であって、
請求項12又は13に記載の混合物を気化させるステップと、
基板を提供するステップと、
気化された前記混合物を前記基板上に物理吸着又は化学吸着させるステップと、
物理吸着又は化学吸着された前記混合物を一連の加水分解及び照射のステップに曝露し、続けて酸化又は第2の加水分解性の曝露を行って前記基板において薄い前記フッ素化オキソスズ酸塩膜を形成するステップと、
を備える方法。
【国際調査報告】