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特表2024-537667ナノサイズを有する多面体α-アルミナ粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ナノサイズを有する多面体α-アルミナ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/442 20220101AFI20241008BHJP
   C01F 7/34 20060101ALI20241008BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
C01F7/442
C01F7/34
C09D1/00
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/403 D
H01M50/489
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516655
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 KR2022016644
(87)【国際公開番号】W WO2023075484
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145651
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524068436
【氏名又は名称】デホン テクニュー株式会社
【氏名又は名称原語表記】DAEHONG TECHNEW CO., LTD
【住所又は居所原語表記】3F., 6, BONGEUNSA‐RO 21‐GIL, GANGNAM‐GU, SEOUL 06122, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジン・ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン・キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュンソク
【テーマコード(参考)】
4G076
4J038
5H021
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB08
4G076BA10
4G076BA15
4G076BA38
4G076BB06
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA40
4G076DA14
4G076FA02
4J038CG142
4J038HA211
4J038KA20
4J038MA10
4J038MA14
4J038PB09
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE20
5H021EE22
5H021EE23
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH04
(57)【要約】
本発明は、多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子を含むコーティング剤を提供する。α-アルミナ粒子は、シュードベーマイトをフッ化物系鉱化剤及び超純水と混合して粉砕した後、得た粉末を焼成して多面体状に成長させて製造されたものであって、多面体アルミナ粒子は、多孔性高分子基材の表面に面接触を形成しながらコーティングされ、粒子間のインタースティシャル・ボリュームによって誘導される空き空間が球状粒子に比べて大きく形成されることにより、多孔性高分子基材の熱收縮を効果的に抑制しながら優れた通気性を具現することができる。また、ナノレベルの粒子サイズを有することにより、分散性に優れて薄いコーティング層の形成を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子を含む、コーティング剤。
【請求項2】
前記α-アルミナ粒子の平均粒径(D50)が、200~600nmである、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記α-アルミナ粒子の多面体結晶構造は、14面体結晶構造を含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記α-アルミナ粒子の多面体結晶構造で[0001]面の比率が、全体結晶面面積の10~20%である、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項5】
請求項1に記載のコーティング剤に含まれるα-アルミナ粒子を製造する方法であって、
(ステップS1)1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させ、生成物を濾過及び洗浄して、下記構造式1のシュードベーマイトを収得する段階と、
(ステップS2)前記シュードベーマイトをフッ素系鉱化剤及び超純水と混合して粉砕した後、濾過及び乾燥する段階と、
(ステップS3)前記ステップS2の生成物を濾過及び乾燥した後、焼成して、多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子の粉末を収得する段階と、を含む、製造方法。
【化1】
(構造式1)
【請求項6】
前記ステップS1で使われたアルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・4~18HO)、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)OH)またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS1で使われたpH調節剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO)またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS2で超純水は、シュードベーマイト重量基準に1~10倍の比率で使われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS2で粉砕は、1~20mmの直径を有する複数のボールを使用したミリング方式で1~100時間行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップS2でシュードベーマイト及びフッ化物系鉱化剤は、100:0.1~100:2の重量比で使われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記フッ化物系鉱化剤は、LiF、AlF、NaF、NaPF、KTiF、MnFまたはこれらの混合物を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS3で焼成は、3~15℃/minに昇温させた後、800~1000℃の温度で2~5時間保持して行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項13】
多孔性高分子基材及び前記基材の一面または両面に形成されたコーティング層を含む部材であって、
前記コーティング層は、請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載のコーティング剤を含む、部材。
【請求項14】
前記部材は、二次電池用分離膜を含む、請求項13に記載の部材。
【請求項15】
前記部材は、円状試片を利用した熱安定性試験で下記数式1と定義された寸法保持率が50%以上である、請求項13に記載の部材。
(数1)
寸法保持率(%)=(d/d
前記式において、dは、円状試片の熱処理前の直径であり、dは、円状試片を150℃で30分間熱処理した後の直径である。
【請求項16】
前記部材は、直径1インチの円状試片に対して100ccの空気が透過するのにかかる時間を測定する試験で200~211sec/100ccの通気度を示す、請求項13に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多面体結晶構造及びナノサイズを有して二次電池分離膜のような部材のコーティング剤として有用に使われるα-アルミナ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ(Al)は、耐磨耗性などの機械的強度、化学的安定性、熱伝導性、耐熱性などに優れて、研磨材、電子材料、放熱フィラー、光学材料、生体材料などの幅広い領域で用いられている。このようなアルミナは、α、γまたはη結晶性アルミナ、非晶質アルミナなどがあるが、一般的には、α-アルミナを称し、粒子サイズ、形状、表面特性、凝集程度によって、その用途が変わりうる。
【0003】
最近、モバイル機器、電気自動車を含めた多様な電気/電子機器に使われる二次電池の分離膜に熱的安定性を付与するための表面コーティング用としてアルミナが使われている。
【0004】
二次電池で分離膜は、正極と負極とを分離して電気的短絡を防止し、電池反応に必要な電解液を吸収して高いイオン伝導度を保持する機能を行い、このために、多孔性高分子基材(例えば、ポリオレフィン)からなることが一般的である。前記多孔性高分子基材は、熱を受ければ、収縮する性質によって正極と負極とが接触して火災及び爆発のような安全性の問題が招かれる。それを克服するために、前記多孔性高分子基材の一面または両面にアルミナのような無機物粒子をバインダーと共にコーティングすることにより、分離膜を破断の危険から保護し、熱収縮を防止している。
【0005】
このような分離膜コーティングのためのアルミナは、ほとんど球状または無定形粒子が使われている。前記球状アルミナは、分離膜の表面にコーティングされながら粒子間のインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)によって空き空間が形成されることによって、分離膜の通気性を保持して電池内部でイオンの円滑な移動を可能にする。しかし、球状アルミナは、分離膜の表面で点接触を形成してコーティングされるので、分離膜が熱によって変形される時、収縮を抑制する力が弱い短所がある(図1参照)。また、無定形粒子は、その形態が一定ではなくて分離膜の表面にコーティング欠点(defect)を誘発する可能性が大きくなる。
【0006】
一方、大韓民国公開特許公報10-2018-0010477号(出願人:シーアイエス)は、二次電池分離膜のコーティング用アルミナを提供するために、水酸化アルミニウム、塩化アンモニウム及びポリリン酸ナトリウムを溶媒中で混合し、高温熱処理、濾過及び洗浄、そして、乾式粉砕を行うことにより、マイクロサイズの板状アルミナを製造した。このような板状アルミナは、分離膜の表面と面接触して熱による収縮を防止する効果に優れているが、分離膜の表面に面接触によって板状に積層されてコーティングされるので、分離膜の気孔を塞ぐことができ、これにより、イオン移動が減少して電池性能の低下をもたらしうる(図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報10-2018-0010477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の短所を克服するためのものであって、二次電池分離膜のような多孔性基材の表面で面接触を形成して熱収縮抵抗性を向上させながらも、優れた通気性を具現することができるα-アルミナ粒子を含むコーティング剤及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子を含むコーティング剤を提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、前記コーティング剤に含まれたα-アルミナ粒子を製造する方法であって、(ステップS1)1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させ、生成物を濾過及び洗浄して、下記構造式1のシュードベーマイトを収得する段階;(ステップS2)前記シュードベーマイトをフッ素系鉱化剤及び超純水と混合して粉砕した後、濾過及び乾燥する段階;及び(ステップS3)前記ステップS2の生成物を濾過及び乾燥した後、焼成して、多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子の粉末を収得する段階;を含む製造方法を提供する。
【0011】
【化1】
(構造式1)
【0012】
本発明のさらに他の側面は、多孔性高分子基材及び前記基材の一面または両面に形成されたコーティング層を含む部材を提供し、前記コーティング層は、前記ナノサイズの多面体α-アルミナ粒子を含むコーティング剤を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーティング剤に含まれたα-アルミナ粒子は、シュードベーマイトをフッ化物系鉱化剤及び超純水と混合して粉砕した後、得た粉末を焼成して多面体状に成長させて製造されたものであって、前記多面体アルミナ粒子は、多孔性高分子基材の表面に面接触を形成しながらコーティングされ、粒子間のインタースティシャル・ボリュームによって誘導される空き空間が球状粒子に比べて大きく形成されることにより、多孔性高分子基材の熱收縮を効果的に抑制しながら優れた通気性を具現することができる。また、ナノレベルの粒子サイズを有することにより、分散性に優れて薄いコーティング層の形成を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】それぞれα-アルミナ粒子の形状による基材コーティング時に、表面接触形態を概略的に例示したものである。
図2】それぞれα-アルミナ粒子の形状による基材コーティング時に、表面接触形態を概略的に例示したものである。
図3】それぞれα-アルミナ粒子の形状による基材コーティング時に、表面接触形態を概略的に例示したものである。
図4】実施例1ないし実施例2及び比較例1で製造した多面体型α-アルミナ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真及び透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図5】比較例2で製造した板状型α-アルミナ粒子のSEM写真である。
図6】実験例2で円状試片のコーティングされたアルミナ粒子サイズ及び種類別に熱収縮による寸法変化を観察して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で具体的に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態にのみ限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0017】
本発明の一実施形態は、多面体結晶構造及びナノサイズを有するα-アルミナ粒子を含むコーティング剤に関するものである。
【0018】
前記多面体結晶構造は、結晶学的にC面である[0001]面に垂直である直径(D)と、これに平行な高さ(H)の比(D/H)が1に近いことを意味する。
【0019】
特に、本発明によるα-アルミナ粒子は、多面体結晶構造で[0001]面が全体結晶面面積を基準に10~20%、詳細には、15~20%を占める14面体結晶構造を有しうる。もし、[0001]面の面積が10%未満である場合には、ロッド(rod)状になり、20%を超過する場合には、板状に近い形態になる。一方、「無定形」は、外形が一定ではない不規則な状態を示すものであって、本発明の結晶面が明確な多面体結晶構造であるものと区別される。
【0020】
本発明の多面体結晶構造を有するアルミナ粒子は、多孔性基材の表面にコーティングされる時、粒子が分散及び接触しながら多面体の結晶面が合ってなされる一定の角度によって空き空間が形成される。前記空き空間を粒子間のインタースティシャル・ボリュームによって形成される気孔であると言及され、図1及び図3を比較して参照する時、多面体粒子によって形成された空き空間が球状粒子に比べて大きい。
【0021】
再び図3を参照する時、前記多面体結晶構造の粒子は、基材の表面にコーティングされる時、面接触を形成するので、基材の表面で点接触(point contact)を形成する球状粒子(図1)に比べて基材の熱収縮を防止する効果に優れてある。
【0022】
一方、図2を参照する時、板状型粒子は、基材の表面と面接触を形成するので、基材の熱収縮を防止する効果に優れているが、粒子の板状に積層されることによって、空き空間の形成が少なくって通気性面で不利である。
【0023】
したがって、本発明の多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子は、二次電池分離膜のような多孔性高分子基材にコーティング時に、熱收縮を効果的に抑制して熱的安定性を図るだけではなく、多孔性基材に対するリチウムイオンの円滑な移動を可能にして電池性能を阻害しないコーティング剤として有用に使われる。
【0024】
また、本発明の多面体結晶構造のα-アルミナ粒子は、平均粒径(D50)が100~900nm、詳細には、200~600nmの範囲であることを特徴とする。
【0025】
前記D50は、当該分野に通常の方法、例えば、レーザ粒度分析器を用いて測定した粒子サイズの分布度で中央値を示すものであり、本発明において、前記α-アルミナ粒子のD50は、ナノレベルを有することによって、コーティング液中に分散性を向上させ、マイクロサイズの粒子に比べて薄いコーティング層を形成して分離膜が適用される二次電池の重量及び体積を減少させる点で有利である。
【0026】
一方、前記多面体α-アルミナ粒子が分離膜のような多孔性基材の表面にコーティングされる場合、前記多孔性基材の気孔に粒子が充填されることを避けるために、アルミナ粒子の平均粒径は、多孔性基材の気孔サイズよりも大きく選択されることが望ましい。
【0027】
本発明の他の一実施形態は、前記多面体結晶構造のα-アルミナ粒子を含む研磨材の製造方法に関するものである。以下、前記方法を段階別に説明する。
【0028】
まず、1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させる(ステップS1)。
【0029】
前記アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・4~18HO)、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)OH)またはこれらの混合物を含むことができ、その完全な溶解のために加温された水(例えば、約60℃)に5~30%の濃度で溶解させて水溶液を準備する。
【0030】
前記pH調節剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO)またはこれらの混合物を含むことができ、その完全な溶解のために加温された水(例えば、約40℃)に5~30%の濃度で溶解させて水溶液を準備する。
【0031】
前記アルミニウム塩水溶液及びpH調節剤水溶液は、常温ないし95℃の範囲で一定の速度(例えば、25ml/min)の速度で混合してゾルゲル反応を行うことができる。前記反応物のpHは、6~10の範囲である。
【0032】
前記反応を通じて下記構造式1でのように化学組成がAlO(OH)と表現されるシュードベーマイト(pseudo-boehmite)が固形物として生成される。
【0033】
【化2】
(構造式1)
【0034】
前記構造式1のシュードベーマイトは、8面体の単位セルに水(HO)が結合されており、水含量が高く、これにより、結晶サイズ(crystallite size)が小さい。したがって、既存のアルミナ製造時に、出発物質として主に使われた水酸化アルミニウム(Al(OH))に比べて低いpH条件で形成され、以後段階で高温の焼成過程を経てα-Alに変形される時、相対的に低い温度でシード(seed)による粒子凝集と相転移とが起こって多面体結晶構造を得るのに有利である。
【0035】
前記シュードベーマイト固形物を濾過及び洗浄した後、フッ素系鉱化剤及び超純水と混合して粉砕する(ステップS2)。
【0036】
前記フッ化物系鉱化剤は、α-アルミナ粒子の結晶を成長させるための添加剤であって、LiF、AlF、NaF、NaPF、KTiF、MnFまたはこれらの混合物が使われる。
【0037】
このようなフッ化物系鉱化剤は、過量で使用時に、最終α-アルミナに残留するか、焼成過程で凝集体を形成することができ、そのような短所を最小化するために、前駆体粉末及びフッ化物系鉱化剤を100:0.1~100:2、詳細には、100:0.5~100:1.5の重量比で使用することが有利である。
【0038】
前記超純水は、シュードベーマイト固形物及びフッ化物系鉱化剤の湿式分散を図りながら粉砕の効率を高めるためのものであり、シュードベーマイト重量基準に1~10倍の比率で使われる。前記湿式分散は、フッ化物系鉱化剤の均一な分散を図り、前駆体(シュードベーマイト)粒子の凝集を最小化することによって、最終生成されるα-アルミナ粒子の多面体結晶構造に影響を及ぼす。
【0039】
前記粉砕は、1~20mmの直径を有する複数のボール(ball)を使用したミリング(milling)方式で1~100時間行われる。
【0040】
前記粉砕された生成物を濾過及び乾燥した後、得た粉末を焼成してナノサイズの多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子の粉末を収得する(ステップS3)。
【0041】
前記焼成は、乾燥粉末を高温で熱処理して溶融合成する過程であって、高純度アルミナまたはジルコニア材の坩堝で行われる。
【0042】
具体的に、前記焼成は、3~15℃/minに昇温させた後、800~1000℃の温度で2~5時間保持して行われる。一方、焼成条件は、混合物の各材料と融点の差による反応と揮発性、合成に必要な熱量を考慮して適切に変更可能である。
【0043】
前記のように製造されたナノサイズの多面体α-アルミナ粒子は、前述したように、多孔性基材の表面に面接触を形成しながらコーティングされ、粒子間のインタースティシャル・ボリュームによって誘導される空き空間が球状粒子に比べて大きく形成されることにより、多孔性基材の熱収縮を効果的に抑制しながら優れた通気性を具現することができる。
【0044】
したがって、本発明は、さらに多孔性高分子基材及び前記基材の一面または両面に形成されたコーティング層を含む部材であって、前記コーティング層が本発明によって製造されて多面体結晶構造を有し、平均粒径(D50)が100~900nmであるα-アルミナ粒子を含む部材を提供する。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記部材は、二次電池用分離膜を含みうる。前記分離膜に含まれた多孔性高分子基材の厚さは、1~100μmの範囲であり、前記多孔性基材に存在する気孔直径は、10~100nm、または10~70nm、または10~50nmであり、前記多面体アルミナ粒子の平均粒径は、多孔性基材の気孔サイズよりも大きく選択されうる。
【0046】
また、前記コーティング層は、基材の表面に対するナノサイズの多面体α-アルミナの結着力を提供するためにバインダーを含むことができ、前記バインダーは、粘着性を有するポリエチレン、ポリプロピレン、フッ化ポリビニリデン、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル及びこれらの混合物から選択されうる。前記コーティング層の厚さは、特に制限はないが、多孔性基材の意図する性能を考慮して0.5~50μmまたは1~10μmの範囲である。
【0047】
前記ナノサイズの多面体α-アルミナ粒子が含まれたコーティング層を有する部材は、円状試片を利用した熱安定性試験で下記数式1と定義された寸法保持率が50%以上である。
【0048】
(数1)
寸法保持率(%)=(d/d
【0049】
前記式において、dは、円状試片の熱処理前の直径であり、dは、円状試片を150℃で30分間熱処理した後の直径である。
【0050】
また、前記部材は、直径1インチの円状試片に対して100ccの空気が透過するのにかかる時間を測定する通気度試験で215sec/100cc以下、例えば、200~211sec/100ccの通気度を満足することができる。
【0051】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明を具体的な実施例で詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0052】
実施例1:
【0053】
(段階1)
Al(SO・14~18HO 199.8gを60℃で加熱された純水982.8gに完全に溶解させた水溶液(a)と、NaCO 95.4gを40℃で加熱された純水528gに完全に溶解させた水溶液(b)と、を準備した。水溶液(a)に水溶液(b)を25mL/minの速度で投入し、10分間撹拌して反応させた。反応生成物(pH7.3~7.8)を濾過及び洗浄してシュードベーマイト固形物を収得した。
【0054】
(段階2)
前記シュードベーマイト固形物40g及びAlF 0.2gを超純水120gに混合し、5mmの直径を有するボールを用いて48時間ミリングして粉砕した。以後、濾過及び乾燥を行った。
【0055】
(段階3)
前記収得された生成物を濾過及び乾燥した後、10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0056】
実施例2:
段階2でボールミリングによる粉砕を24時間行うことを除いては、実施例1のような工程を行った。
【0057】
比較例1:
段階2でボールミリングを行わないことを除いては、実施例1のような工程を行った。
【0058】
比較例2:
Al(SO・14~18HO 199.8gを60℃で加熱された純水982.8gに完全に溶解させた水溶液(a)と、NaOH 72gを40℃で加熱された純水528gに完全に溶解させた水溶液(b)と、を準備した。水溶液(a)に水溶液(b)を25mL/minの速度で投入し、10分間撹拌して反応させた。反応生成物(pH7.3~7.8)を濾過、洗浄及び乾燥した後、粉砕してシュードベーマイト粉末を収得した。
【0059】
前記シュードベーマイト粉末40g及びAlF 0.8gを乾式混合した。混合した粉末を10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0060】
前記実施例及び比較例から製造されたα-アルミナ粒子の物性を測定して、下記表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
前記表1から分かるように、実施例によってシュードベーマイトを粉砕した後、フッ化物系鉱化剤と湿式混合した後、焼成を経て製造されたα-アルミナ粒子は、ナノサイズの平均直径(D50)を有しながら、D50及び厚さの比が1に近い多面体結晶構造を示した。
【0063】
一方、実施例1ないし実施例2及び比較例1から製造されたα-アルミナ粒子に対するSEM及びTEM観察写真を図4に示した。
【0064】
図4から、実施例1及び実施例2のα-アルミナ粒子は、ナノサイズの14面体結晶構造を有し、比較例1のα-アルミナ粒子は、マイクロサイズの14面体結晶構造を有するということを確認することができる。
【0065】
図5は、比較例2で製造したα-アルミナ粒子のSEM写真であって、板状型の構造を確認することができる。
【0066】
実験例1:二次電池分離膜コーティング時の通気度試験
実施例及び比較例から製造されたα-アルミナ粒子のそれぞれを使用して二次電池分離膜の一面にコーティング層を形成した。具体的に、α-アルミナ粒子及びアクリル系高分子バインダーを95:5の比率で水に分散させて得たスラリーをポリエチレン(PE)多孔性基材(厚さ11μm)の一面にコーティングした後、乾燥して2μm厚さのコーティング層を形成した。
【0067】
前記α-アルミナ粒子のコーティング層が形成された多孔性基材を直径1インチの円状試片で製造した後、通気度測定装置(ASAHI SEIKO社)を使用して、各試片で空気100ccが透過するのにかかる時間を測定した(測定条件:25℃)。その結果を下記表2に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
前記表2から、実施例1ないし実施例2から製造されたナノサイズの多面体α-アルミナ粒子がコーティングされたPE基材は、比較例2の板状型アルミナ粒子がコーティングされた基材に比べて空気が透過するのにかかる時間が短くて通気度に優れていることを確認することができる。一方、比較例1のアルミナ粒子は、マイクロサイズを有することによって、通気度面で最も優れているが、下記の実験例2を参照する時、熱安定性面で不利である。
【0070】
実験例2:二次電池分離膜コーティング時の熱安定性試験
実験例1で通気度に優れていると確認された多面体結晶構造のα-アルミナ粒子に対してサイズによる熱安定性試験を行った。
【0071】
まず、粒子サイズが異なる4種の多面体型α-アルミナ粒子(100nm、250nm、500nm及び2μm)及び一般的な球状α-アルミナ粒子(平均粒径:500~700nm)を準備し、それぞれの粒子を使用して実験例1のような工程でPE多孔性基材に2μm厚さのコーティング層を形成した後、直径18mmの円状試片を製造した。前記円状試片は、コーティングされたアルミナ粒子別に3個ずつ製造した。
【0072】
前記円状試片のそれぞれに対して150℃で30分間熱処理を行った後、寸法変化を観察し、その結果を図6に示した。
【0073】
また、各試片に対する熱処理後、下記数式1と定義された寸法保持率を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0074】
(数1)
寸法保持率(%)=(d/d
【0075】
前記式において、dは、円状試片の熱処理前の直径であり、dは、円状試片を150℃で30分間熱処理した後の直径である。
【0076】
【表3】
【0077】
前記表3及び図6を参照する時、多面体粒子は、球状粒子に比べてPE多孔性基材にコーティングされた後、熱安定性に優れていることを確認することができる。
【0078】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】