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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドの合成
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241008BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20241008BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20241008BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241008BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12P19/34 Z ZNA
C12N9/12
C12Q1/6876 Z
C12N15/115 Z
C12N9/22
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C40B40/06
C12N15/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516874
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2022052358
(87)【国際公開番号】W WO2023041931
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】2113340.0
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
2.PYTHON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505395858
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ラブロック,サラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B064AF27
4B064CA21
4B064CC24
4B064CD12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、反応終了時に生成されたオリゴヌクレオチドの量が、反応に提供される鋳型の量よりも多くなるように、同じ反応で複数回のオリゴヌクレオチド合成と鋳型からの解離を行ううえで、例えばヘアピンプライマーのような触媒プライマー鋳型を使用するオリゴヌクレオチド合成の新規な方法に関する。プライマーは切断可能部位を含み、反応は切断剤との単一の混合物中で行われる。切断可能部位はイノシンであってよく、切断剤はエンドヌクレアーゼVとすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、
i.a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を提供することと、
ii.前記プライマー鋳型を、核酸ポリメラーゼ、1つ以上のdNTP、及び切断剤とともにインキュベートして反応混合物を形成することと、
iii.前記反応混合物を、前記ポリメラーゼによる前記プライマーの伸長による伸長プライマー鋳型の形成と、前記切断剤による前記切断可能部位での前記伸長プライマー鋳型の切断と、を可能とする条件下で維持することと、
iv)場合により、前記反応混合物から前記オリゴヌクレオチド生成物を分離することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリメラーゼが、表3に示されるThermococcus kodakaraensis(KOD)、Stoffel、ファミリーBポリメラーゼ9°N、Thermus filiformis(TfPol)及びMarinithermus hydrothermalis(MhPol)由来のポリメラーゼ;大腸菌由来のクレノウ断片、T4及びT7ポリメラーゼ、SFP1、StoffelバリアントSFM4-6、Thermus filiformis及びMarinithermus hydrothermalis(Mhpol)由来のStoffelホモログ、及び記載される変異を有する表3に示される上記のポリメラーゼのいずれかのバリアントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一本鎖オリゴヌクレオチドの集団を生成する方法であって、
i.a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を提供することと、
ii)プライマー鋳型を、核酸ポリメラーゼ、1つ以上のdNTP、及び切断剤とともにインキュベートして反応混合物を形成することと、
iii)前記反応混合物を、ポリメラーゼによるプライマーの伸長による伸長プライマー鋳型の形成と、切断剤による切断可能部位での伸長プライマー鋳型の切断と、を可能とする条件下で維持することと、
iv)場合により、前記反応混合物からオリゴヌクレオチド生成物を分離することと、を含み、
前記ヌクレオチドが修飾チオ三リン酸(NTPαS)を含み、前記オリゴヌクレオチド集団が実質的に同じ立体異性体を含み、
前記ポリメラーゼが、表3に示されるThermococcus kodakaraensis(KOD)、Stoffel、ファミリーBポリメラーゼ9°N、Thermus filiformis(TfPol)及びMarinithermus hydrothermalis(MhPol)由来のポリメラーゼ;大腸菌由来のクレノウ断片、T4及びT7ポリメラーゼ、SFP1、StoffelバリアントSF4-6、Thermus filiformis及びMarinithermus hydrothermalis(Mhpol)由来のStoffelホモログ、及び表3に示される上記のポリメラーゼのいずれかのバリアントからなる群から選択される、前記方法。
【請求項4】
前記試薬が、アセトニトリルを実質的に含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記切断が、エンドヌクレアーゼV、好ましくは、Thermotoga maritima由来のTmEndoV(TmEndoV)、Thermotoga neapolitana由来のTmEndoV、Pseudothermotoga thermarum由来のPtEndov、Thermosipho melanesiensis由来のTmeEndoV、及びThermosipho atlanticus由来のTaEndoV、またはそれらのバリアントによって媒介される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程iii)において前記反応混合物を維持する工程が、前記反応混合物を所定の反応時間にわたって維持することを含み、反応時間は、同じ反応混合物中で伸長及び切断の2回以上のサイクルの時間を与える長さである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程iii)の反応条件が、前記鋳型及び伸長生成物の融解温度以上の反応温度を含み、好ましくは、前記工程iii)の反応条件が等温である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記鋳型からオリゴヌクレオチド生成物を解離させる工程と、反応混合物から前記オリゴヌクレオチド生成物を単離する工程と、前記オリゴヌクレオチド生成物を生成する工程と、のうちの1つ以上の工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するためのキットであって、
i.a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型と、場合により、
ii)核酸ポリメラーゼ、及び場合によりヌクレオチドと、
iii)切断剤と、のうちの1つ以上と、を含む、前記キット。
【請求項10】
プライマー鋳型を収容した第1の容器と、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、及び/またはバッファーを収容した第2の、またはさらなる容器と、を含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための反応混合物であって、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型と、
i.核酸ポリメラーゼ、及び場合によりヌクレオチドと、
ii.切断剤と、
iii.前記鋳型配列に相補的なオリゴヌクレオチド生成物と、を含む、前記反応混合物。
【請求項12】
前記切断部位が脱アミノ化塩基、好ましくはイオノシンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項13】
前記鋳型配列が治療用RNAの相補体である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチド生成物が、治療用RNA、好ましくはmiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、またはアプタマーである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチド生成物が、1つ以上の修飾オリゴヌクレオチドを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項16】
前記ポリメラーゼが表3に定義される通り、またはそのバリアントであり、前記切断システムがエンドヌクレアーゼVを含み、前記切断可能部位がイオノシン残基である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項17】
前記ヌクレオチドが天然及び/または修飾ヌクレオチドを含み、修飾が、修飾塩基、糖、またはヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエートヌクレオシド間結合、5’-N-ホスホロアミダイト結合、フルオロフォアまたはハプテンなどの標識の結合を可能とする連結基を有する塩基を含むヌクレオチドを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項18】
前記核酸分子が固定化部分を含み、好ましくは、前記固定化部分がビオチンである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法、キット、反応、または支持体。
【請求項19】
一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための支持体であって、前記支持体に固定化されたプライマー鋳型の集団を含み、各核酸分子が、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマー、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型、及びc)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能にする切断可能部位を含む、前記支持体。
【請求項20】
前記支持体がアレイであり、好ましくは前記アレイがアレイ上に固定化された100個、1000個、10,000個、100,000個、1,000,000個、10,000,000個、100,000,000個、1,000,000,000個、またはそれ以上の核酸分子を含む、請求項19に記載の支持体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法により生成されたオリゴヌクレオチドの集団。
【請求項22】
(原文に記載なし)
【請求項23】
前記集団が少なくとも70%純粋である、請求項21に記載のオリゴヌクレオチドの集団。
【請求項24】
一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための細胞であって、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)前記鋳型からの前記オリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を含む、前記細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド、詳細には一本鎖オリゴヌクレオチドを合成する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって生成されるオリゴヌクレオチドにも関する。本発明は、オリゴヌクレオチドを合成するための部品のキット及びオリゴヌクレオチドを合成するための支持体に関する。本発明はまた、プライマー/鋳型、ポリメラーゼ及び切断剤を含む反応にも関する。本発明はまた、本発明のプライマー/鋳型をコードする核酸配列またはベクターを含む細胞にも関する。
【背景技術】
【0002】
mRNAに結合して疾患関連タンパク質の産生を調節する治療用オリゴヌクレオチドが、広範な疾患領域の治療を行うための新たな創薬モダリティとして登場した(Khvorova et al. Nat. Biotechnol. 2017, 35, 238)。RNA干渉技術の発見に対するノーベル賞授与と、希少疾患の治療に対するいくつかのRNAベースの治療法のFDAによる承認を受けて、近年、治療用オリゴヌクレオチドへの多大な投資がなされている。現在、集団ベースの適応症に対するものを含む160種類を超えるオリゴヌクレオチド製品が臨床試験中である(Hugget et al.Nat.Biotechnol.2017,35,708)。一般的な疾患に対するものを含む潜在的な治療薬の数の増加は、既存の化学的合成法が10kgのバッチに制限されており、大規模用途(>100kg)には適していないことから製造上の重大な課題をもたらしている(Tedebark et al. Methods Mol. Biol. 2011, 683, 505)。
【0003】
治療用オリゴヌクレオチドは、ワトソン・クリック塩基対合によって標的mRNAに選択的に結合して疾患関連タンパク質の産生を調節する短いDNAアナログである。治療用オリゴヌクレオチドには、低分子干渉RNA(siRNA)として知られる二本鎖RNA分子と、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)として知られる一本鎖分子がある。オリゴヌクレオチドは潜在的な薬物分子として40年超にわたって研究されてきたが、オリゴヌクレオチドを有効な治療薬に変換するうえでの進歩は、不十分な生物学的有効性、バイオアベイラビリティ、及び経路外の毒性効果(off-pathway toxic effect)によって制限されてきた。近年、DNA骨格、ピリミジン塩基及びリボース糖に対する置換を含む、オリゴヌクレオチドの送達、代謝安定性及び効力を大幅に改善する多くの化学修飾が報告されている(図1)(Khvorova et al supra;Rinaldi et al. Nat. Rev. Neurol. 2018, 1, 9;.,及びSmith et al. Annu. Rev. Pharmacol.Toxicol. 2019, 59, 605;Dowdy, Nat. Biotechnol. 2017, 35, 222)。
【0004】
治療用オリゴヌクレオチドは、改善された有効性、選択性、代謝安定性、及び毒性プロファイルを与えるために化学修飾を必要とする場合がある(Rinaldi et al. Nat. Rev. Neurol. 2018, 1, 9;Smith et al.Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol. 2019, 59, 605)。天然のポリメラーゼは一部のヌクレオチド修飾に対して耐性を有するが(Nakamaye et al Nucleic Acids Res. 1988, 21, 9947;Yang et al. Nucleic Acids Res. 2007, 35, 3118;Romaniuk et al. J. Biol. Chem. 1982, 257, 7684)、それらの活性は低下する場合がある。
【0005】
新たな薬物モダリティとしてのsiRNA及びASOの台頭によって製造上の重大な課題がもたらされている(Tedebark et al. Methods mol.Biol.2011, 683, 505;Kosuri,nat.Methods 2014, 11, 499)。現在の合成法は一般的に、1980年代に開発された4段階の固相ホスホルアミダイト法を用いている(Beaucage et al.Tetrahedron left.1981,22,1859)。この手法は簡単に自動化することができ、修飾DNA構造の合成に適応されている。残念ながら、この手法は大規模合成(>100kg)には適しておらず、現在のところ、10kg未満のオリゴマー生成物のバッチに限定されている(Kim et al. Org. Process res. Dev. 2016, 20, 1439)。現在、キロ単位の合成は、浅いベッド(10~15cm)を備えた直径1m以下のカラムを使用して実行されている。カラム径を大きくすると流量が非線形となり、生成物の純度が低下するが、これは、合成を強化することができず、代わりに複数の並列反応器が必要となることを意味する。かかる方法で使用される試薬は環境に有害であり、取り扱い及び廃棄上の問題がある。
【0006】
現時点で、過剰な量の高価なホスホルアミダイトの使用を必要とするインライン反応モニタリングの妥当なコストの方法は存在していない。これらのモノマーには複数の保護基(4’4-ジメトキシトリチル保護された5’-OH、ベンゾイル及びイソプロピル保護された塩基、及び2-シアノエチル保護された亜リン酸を含む)が含まれており、これにより原子効率がさらに損なわれ、副生成物が生成し、これを合成時に分離しなければならない。このプロセスでは極めて大量のアセトニトリル(オリゴヌクレオチド1kg当たり1000kg)を使用するため、最終生成物のクロマトグラフィー精製を行って脱プリン化、塩基修飾(シアノエチル付加物の生成により生じる)、及び短縮化された配列から生じる不純物を除去する必要がある。既存の合成法の限界により、現在市販されているRNAベースの治療薬は通常、純度約90%で、ジアステレオ異性体の複雑な混合物(ホスホロチオエート修飾から生じるもの)として供給されており、実際、個々の立体異性体の生物活性についての理解は依然、大きく限定されている。P(V)試薬の使用(Knouse et al. Science 2018, 361, 1234)、及びデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼへのヌクレオチド構成単位の共有結合(Palluk et al. Nat. Biotechnol. 2018, 36, 645)をはじめとする多くの代替法が近年開発されているにもかかわらず、既存の手法は、固体支持体上での連続的なカップリング反応と脱保護反応を用いる同じ基本的なアプローチを共有している。
【0007】
したがって、オリゴヌクレオチド、詳細にはASO及びmiRNAなどの治療用オリゴヌクレオチドを製造するための改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、オリゴヌクレオチド、例えば治療用オリゴヌクレオチドを合成する方法に関する。本発明は、低コストで高純度のオリゴヌクレオチドを製造するための、拡張可能な手法を提供することを目的とする。これにより、本発明は、疾患の実現可能な治療薬としてのオリゴヌクレオチドを確立する。本発明は、プライマーの伸長と、伸長されたプライマーの切断によるオリゴヌクレオチドの放出とが同時に行われる方法を提供する。プライマー鋳型は反応時間またはインキュベーション時間中に複数回使用されることによってオリゴヌクレオチド合成反応を触媒することができる。
【0009】
第1の態様において、本発明は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、
i)a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を提供することと、
ii)プライマー鋳型を、核酸ポリメラーゼ、1つ以上のdNTP、及び切断剤とともにインキュベートして反応混合物を形成することと、
iii)反応混合物を、a)ポリメラーゼによるプライマーの伸長による伸長プライマー鋳型の形成と、b)切断剤による切断可能部位での伸長プライマー鋳型の切断と、を可能とする条件下で維持することと、
iv)場合により、反応混合物からオリゴヌクレオチド生成物を分離することと、を含む、方法を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の方法によって製造されるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、一本鎖オリゴヌクレオチドを製造するためのキットであって、
i.a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型と、
ii.核酸ポリメラーゼ、及び場合により1つ以上のヌクレオチドと、
iii.切断剤と、を含むキットを提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための支持体であって、支持体に固定化されたプライマー鋳型の集団を含み、各プライマー鋳型が、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマー、b)合成を誘導する鋳型、及びc)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能にする切断可能部位を含む、支持体を提供する。
【0013】
第5の態様において、一本鎖オリゴヌクレオチドの集団を生成する方法であって、
i)a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を提供することと、
ii)プライマー鋳型を、核酸ポリメラーゼ、1つ以上のdNTP、及び切断剤とともにインキュベートして反応混合物を形成することと、
iii)反応混合物を、a)ポリメラーゼによるプライマーの伸長による伸長プライマー鋳型の形成と、b)切断剤による切断可能部位での伸長プライマー鋳型の切断と、を可能とする条件下で維持することと、
iv)場合により、反応混合物からオリゴヌクレオチド生成物を分離することと、
v)反応混合物を工程iii)において適当な反応時間にわたって維持してオリゴヌクレオチドの集団を生成することと、を含み、
ヌクレオチドが修飾チオ三リン酸(NTPαS)を含み、オリゴヌクレオチド集団が実質的に同じ立体異性体を含み、
ポリメラーゼが、表3に示されるThermococcus kodakaraensis(KOD)、Stoffel、ファミリーBポリメラーゼ9°N、Thermus filiformis(TfPol)及びMarinithermus hydrothermalis(MhPol)由来のポリメラーゼ;大腸菌由来のクレノウ断片、T4及びT7ポリメラーゼ、SFP1、StoffelバリアントSF4-6、Thermus filiformis及びMarinithermus hydrothermalis(Mhpol)由来のStoffelホモログ、または表3に示される上記のポリメラーゼのいずれかのバリアントからなる群から選択される、方法が提供される。
【0014】
また、本発明の一態様では、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための反応混合物であって、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型と、
i)核酸ポリメラーゼ、及び場合により1つ以上のヌクレオチドと、
ii)切断剤と、
iii)鋳型配列に相補的なオリゴヌクレオチド生成物と、を含む、反応混合物が提供される。
【0015】
また、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための細胞であって、a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を含む、細胞も提供される。
【0016】
本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら以下にさらに記載する。
【0017】
図面及び実施例において、Tは鋳型配列を指し、Eは伸長鋳型を指し、Pは生成物を指す。本明細書で言及するT、E及びP配列の配列は表1に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】オリゴヌクレオチドの化学修飾を示す。
図2】スピンラザのヌクレオチド及び配列を示す(*=PS m=2’MOE)。
図3】本発明による拡張可能なオリゴヌクレオチド製造を示す概略図である。
図4A】dNTP(1mM)を使用したKOD(Merck、2.5単位)触媒によるT1(表1、20μM)の伸長は、99%以上の収率で伸長生成物E1(表1、7.0分、予想質量18170.8)を与える。
図4B】TmEndoV(ThermoFisher、5単位)触媒による伸長鋳型E1(20μM)の切断により、生成物P1(表1、4.85分、予想質量5544.6)及び鋳型T1(6.54分、予想質量12644.2)が99%超の収率で得られる。UVトレースを左側に示し、質量スペクトルを右側に示す。
図4C】T1(20μM)及びdNTP(それぞれ0.25mM)を使用したワンポットKOD及びTmEndoVカスケード反応により、生成物P1(5.45分、予想質量5544.6)が得られる。
図5】異なるdNTP濃度におけるポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼの活性。A)KOD(0.2μM)が、最大30mMのdNTP濃度でT1(20μM)の伸長を触媒したことを示すPAGE分析。B)TmEndoV(2μM)が、最大2mMのdNTP濃度でE1(20μM)の切断を触媒したことを示すPAGE分析。C)TnEndoV(2μM)が、最大20mMのdNTP濃度でE1(20μM)の切断を触媒したことを示すPAGE分析。
図6】温度最適化実験を示す。A)TnEndoV(最も高いピーク)、TmEndoV(中間のピーク)及びPfEndoV(最も低いピーク)の融解温度を示すサーマルシフトアッセイ。B)さまざまな温度でKOD及びTnEndoVによって触媒されるワンポット反応のポリアクリルアミドゲル分析。レーン1:ラダー、レーン2:E1標準(最も上のバンド)、T1標準(中間バンド)及びP1(最も下のバンド)、レーン3~8:60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃(左から右へ)で行ったワンポット反応。C)KOD活性が70℃で24時間のプレインキュベーションによって影響されないことを示すHPLCトレースの重ね合わせ。生体内変換を、T1(20μM)、dNTP(4mM)、及び新鮮なKOD(0.2μM、緑色)または70℃で24時間プレインキュベートしたKOD(0.2μM、青色)のいずれかを使用して行った。各HPLCトレースは、30分間の反応時間後のE1への変換を示している。D)70℃で24時間のプレインキュベーション後にTnEndoVが85%の活性を保持していることを示すHPLCトレースの重ね合わせ。生体内変換を、E1(20μM)、及び新鮮なTnEndoV(2μM、緑色)または70℃で24時間プレインキュベートしたTnEndoV(0.2μM、青色)のいずれかを使用して行った。各HPLCトレースは、30分間の反応時間後のT1及びP1への変換を示す。
図7】さまざまな配列を有する自己プライミング鋳型に対するポリメラーゼ/エンドヌクレアーゼ活性を調べた結果を示す。PAGE分析は、ポリメラーゼが触媒する鋳型伸長とエンドヌクレアーゼが触媒する生成物切断のサイクル後のP1の生成を示している。ワンポット反応を、KOD(0.2μM)、TnEndoV(2μM)、鋳型(10μM)、及びdNTP(それぞれ1mM)を使用して行った。DNAラダーがレーン1に示され、T1及びE1標準はレーン2に示されている。生成物P1の収量は、5’-ビオチン化(レーン4)、代替ヘアピン配列(レーン7)、核酸塩基対のイノシンへの変更(レーン8&9)、または鋳型と別のプライマーの使用(レーン6)による影響をほとんど受けなかった。ヘアピンにビオチンを配置する(レーン5)、またはヘアピンの長さを変えた(レーン10及び11)場合、生成物の収量がわずかに減少した。
図8】最適化された条件下でのポリメラーゼ/エンドヌクレアーゼにより触媒されるP1生成のHPLC分析。70℃で12時間インキュベートした後、20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM アルギニン-HCl(pH8)、100mM グルタミン酸-KOH(pH8)、DTT(10mM)、ホルムアミド(10%)、トレハロース(0.2M)、1,2-プロパンジオール(1M)、及びアセチル化BSA(0.01mg/ml)中でT1(1μM)、dNTP(各4mM)を使用したKOD(2μM)及びTnEndoV(2μM)で触媒される反応中に生成した生成物P1を示すHPLCトレース。330サイクルの鋳型伸長及び生成物切断後に生成物が生成され、0.33mM(1.9g/Lに相当)のP1が得られた。
図9】修飾dNTPに対するポリメラーゼ活性を示す。修飾ヌクレオチド三リン酸に対するポリメラーゼ活性を、時間分解FRETベースアッセイを使用して評価した。反応は3つの天然のdNTPと1つの修飾NTPを用いて行った。各ポリメラーゼの値は、天然dNTPに対する活性と比較して報告されており、3連で行った測定の平均を表している。
図10】単一のホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドの立体選択的合成。ワンポットのポリメラーゼ-エンドヌクレアーゼ反応中に生成した生成物を示すHPLCトレース。反応は、T0~T13(10μM)及び3つの非修飾NTP(それぞれ1.4mM)と、A)S-dATPαS、B)S-dCTPαS、C)S-dTTPαS、D)S-dGTPαS、E)R/S-dATPαS、F)R/S-dCTPαS、G)R/S-dTTPαS、H)R/S-dGTPαS、(0.7mM)との混合物を使用して行った。酵素的に合成された生成物と化学合成により生成されたジアステレオマー混合物との比較は、この生体触媒反応により、各生成物がジアステレオマー過剰率99%超で得られることを示している
図11】修飾オリゴヌクレオチドに対するTnEndoV活性のLC-MS分析。TnEndoV(2μM)により触媒される伸長鋳型(20μM)A)E6、B)E2、C)E3、D)E4、E)E5の切断反応中に生成した生成物を示すUVトレース。各18量体生成物と鋳型のデコンボリューションした質量を各表に示す。ホスホロチオエート修飾オリゴヌクレオチドE6のEndoVによる切断により、予想された生成物(P)と5’-脱リン酸化アナログ(P)が得られた。P標準(20μM)を反応バッファー中で70℃でインキュベートすると5’-脱リン酸化が起こり、副反応が酵素により触媒されないことが確認された。
図12】EndoVパネルの基質範囲。修飾なし(E1)、18個の連続したホスホロチオエート(E6)、2’-フルオロ(E2)、2’-メトキシ(E3)または2’-メトキシエトキシ(E4)修飾、または切断部位の3’側の1個のLNA修飾(E8)を有する伸長鋳型(20μM)のEndoV(2μM)により触媒される切断を示すPAGE分析。70℃で2時間及び4時間インキュベートした後、各試料を分析した。各標準は、伸長鋳型E1、鋳型T1、及び18量体オリゴヌクレオチド(P)で構成される。
図13】P1の分取スケールの合成。T2(4μM)及びdNTP(それぞれ4mM)を使用した、KOD(2μM)及びTnEndoV(2μM)により触媒されるP1の合成を示すHPLCトレース。A)12時間インキュベートした後の反応混合物のHPLCB)単離された生成物。表は、観測された質量と、粗反応混合物及び単離された生成物中に存在する不純物を示す。太字で印刷された配列は目標生成物に対応する。
図14】ポリメラーゼパネルの基質範囲。修飾されたNTPに対するポリメラーゼ(0.2μM)活性を示すPAGE分析。各反応は、T22(20μM)、及び3つの非修飾NTP(それぞれ0.25mM)と1つの修飾NTP(0.25mM)との混合物を使用して行い、70℃で1時間インキュベートした。各ポリメラーゼは鋳型を転写して修飾NTPの2コピーを組み込むことができ、完全長の伸長をもたらす。非相補的塩基のバックグラウンドの誤取り込み率を決定するために、修飾NTPの非存在下でコントロール反応を行った。A)dNTP(PO)、S-dNTPαS(S)、S-2’-フルオロ-NTPαS(S-2’F)R-dNTPαS(R)、2’フルオロ-NTP(2’F)及びLNA-NTP(LNA)に対するポリメラーゼ活性。B)2’-メトキシ修飾NTPに対するポリメラーゼ活性。+は2’MeO-NTPの付加を示し、-は2’-MeO-NTPの非存在下でのコントロール反応を示す。T22=5’-CTGACTGACACGTGCACCATTGGTGCACGIG-3’
図15】2’MeO-NTP及びLNA-NTPの連続的取り込みに対するポリメラーゼ活性。単一核酸塩基の8コピーをコードする鋳型(T18~T21、20μM)を、相補的な2’MeO-NTP(1mM)またはLNA-NTP(1mM)と最適なポリメラーゼSF4-6(0.2μM)またはKOD DGLNK(0.2μM)をそれぞれ使用して伸長した。LC-MS分析により、12時間のインキュベーション後に各反応で部分的に伸長された生成物の混合物が生じたことが示された。UVスペクトルにおける標識されたピークは、MS分析により、短縮化された生成物に指定され、さらなるピークは指定されなかった。nt付加=ポリメラーゼによって組み込まれたヌクレオチド塩基の数。
図16】修飾NTPミックスを使用したポリメラーゼ触媒反応。鋳型T2(20μM)を、S-dNTPαS(それぞれ2、0.25mM)と2’F-NTP(それぞれ3、0.25mM)の混合物を使用し、KOD(0.2μM)及びTfPol*(0.2μM)をそれぞれ使用して伸長した。鋳型T7(20μM)を、S-2’F-A/GTPαS(それぞれ4、0.25mM)とKOD(0.2μM)の混合物を使用して伸長した。PAGE分析により、各反応が伸長生成物への完全な変換率に達していることが示された。B)LC-MS分析を使用して生成物の種類を確認した。付加数=ポリメラーゼによって取り込まれたヌクレオチド塩基の数。
図17】加水分解を受けるホスホロチオエート中心におけるTnEndoVの立体選択性。立体定義された伸長鋳型を、KOD(0.2μM)及びS-dNTPαS(それぞれ0.5mM)を使用して生成した。TnEndoV(2μM)による酵素合成生成物(20μM)の切断を、対応する立体不規則なオリゴヌクレオチド(20μM)の切断と比較した。PAGE分析は、A)鋳型T1及びT15~T17(20μM)のポリメラーゼにより触媒される伸長が完了まで進行することを示している。各鋳型は、最初の位置に異なる核酸塩基を有する18量体のオリゴヌクレオチド生成物をコードしている。B)TnEndoV(2μM)によるR結合を有する立体定義されたオリゴヌクレオチドの切断(レーン9~12)は完了まで進行しているが、対応する立体不規則なオリゴヌクレオチドの切断は50%の変換率で停止している(レーン13~16)。活性は切断部位の3’側の塩基の影響を受けない。
図18】ワンポットのポリメラーゼ/EndoV触媒によるP19~P32の生成。UPLCクロマトグラム(260nmで記録)は、ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ触媒反応後の生成物の生成を示している。各生体内変換の具体的な反応条件を表S1に示す。生成物及び副生成物の質量は質量分析法によって確認した。T:鋳型、E:伸長鋳型。太字で印刷されたヌクレオチド配列は、正しい8量体生成物に対応する(+:LNA、*:ホスホロチオエート結合、f:2’-フルオロ、P:5’リン酸基、HO/OH:5’/3’ヒドロキシル基)。太字で印刷された配列は正しい生成物に対応する。赤で強調された塩基は、鋳型のない過剰な伸長に対応する。
図19】ビトラベンの分取スケールの合成。A)70℃で12時間インキュベートした後の粗反応混合物、B)反応ワークアップ後の単離された生成物を示すUPLCクロマトグラム(260nmで記録)。反応中、生成物は5’-脱チオリン酸化される(ピークa)。反応バッファー中で生成物の標準をインキュベートすると5’-脱チオリン酸化が起こり、副反応が酵素により触媒されないことが確認される。標的生成物には5’ヒドロキシルが含まれているため、アルカリホスファターゼを使用した反応ワークアップ時に、残っている5’トリホスフェート基はすべて除去された。
図20】コバルト及びマンガン補因子の存在下でのRp-dNTPαSに対するポリメラーゼ活性。A)相補的Rp-dNTPαS(1mM)を使用し、0.5mMのCOClまたはMgClの存在下で、単一核酸塩基の8コピーをコードする鋳型のKODにより触媒される伸長を示すPAGE分析。B)1mMのCoClと0.4mMのMnClの混合物の存在下でKODにより触媒される自己プライミング鋳型への8個のRp-dATPαSヌクレオチドの付加を示すLC-MS分析。5.2分のピークは伸長生成物(観測質量12141)に対応し、0.5分のピークは未反応のNTPに対応する。
図21】代替求核試薬の存在下でのエンドヌクレアーゼ活性。高濃度の異なる求核試薬の存在下で行ったEndoV反応のLC-MS分析後のUVトレース。伸長鋳型E1の求核攻撃により、グリセロール(検出質量5618.8)、エチレングリコール(検出質量5587.4)、1,2-プロパンジオール(5601.9)または1,3-ジアミノプロパノール(検出質量5616.6)で官能化された5’リン酸基を含む「修飾18量体生成物」が得られた。主な生成物は、非修飾の5’-リン酸基を持つカノニカルな18量体であった。
図22】オリゴヌクレオチド配列の生体触媒合成。さまざまな配列と化学修飾を有するオリゴヌクレオチドが、最適なポリメラーゼとTnEndoVを使用したワンポット生体内変換で生成された。変換率(%)は、NTP出発物質の生成物への変換率を表す。具体的な反応条件については、表3を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、多用途かつ拡張可能な形で一本鎖オリゴヌクレオチド、例えば治療用オリゴヌクレオチドを合成するための方法を提供する。
【0020】
本発明は、本明細書において伸長プライマー鋳型と呼ばれる、ポリメラーゼによって伸長されて二本鎖核酸分子を形成する、再利用可能な、または触媒性のプライマー鋳型を提供するという新規な概念に基づいたものである。適当な切断システムを使用して二本鎖の鎖を切断して、目的の一本鎖オリゴヌクレオチド生成物である伸長部分の放出を可能にする。好ましい点として、二本鎖は核酸分子に組み込まれた切断可能部位で切断されることによって一本鎖オリゴヌクレオチド生成物が放出され、プライマー鋳型が再生される。プライマー鋳型を再生するための切断により、伸長と切断の繰り返しサイクルが可能になり、その結果、反応混合物中にオリゴヌクレオチド生成物が蓄積することになる。したがって、本発明の方法は、1回の操作で標的オリゴヌクレオチドを提供することができ、当該技術分野では周知のオリゴヌクレオチドの化学合成に伴う鎖伸長、酸化及び脱保護の反復ラウンドとは対照的である。化学合成では、短いオリゴマーを生成するには多くの反復反応が必要である。本発明においては、1回の反応でオリゴヌクレオチドを製造することができる。本発明の方法は、大量のアセトニトリルを必要とせずに、水性条件下で行うことができるという利点を有する。さらに、本発明の方法は、保護基が必要とされないことから、標準的なホスホルアミダイト化学よりも原子効率が高い。本発明の方法はまた、化学合成により生成されるものと比較して大幅に高純度のオリゴヌクレオチド生成物の提供が可能であり、したがって高価なクロマトグラフィー精製の必要性が軽減されるという利点も有する。さらに、本発明の方法は等温であってもよい。これには、各サイクルの異なる部分で温度を変更するために必要なエネルギーが低減されるという利点がある。
【0021】
本発明は、1つ以上の修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドを高純度かつ拡張可能な形で含むことができるオリゴヌクレオチドの製造方法を提供することにより、治療用オリゴヌクレオチドを拡張可能な形で製造する方法を提供することで、治療用オリゴヌクレオチドの大量生産を可能とするものである。本発明の方法では、1つ以上の修飾ヌクレオチドをヌクレオチド鎖に組み込むのに適した修飾ポリメラーゼ酵素を利用することができる。
【0022】
本発明は、オリゴヌクレオチドを生成するためにプライマー鋳型、ポリメラーゼ及び切断剤を同時に使用することに基づいたものであり、新たに合成されたオリゴヌクレオチドが鋳型から放出された後、プライマー鋳型は同じ反応において1回以上のさらなるオリゴヌクレオチド合成のラウンドで利用可能となる。鋳型がコピーされると、合成されたオリゴヌクレオチドは切断システムによって切断され、鋳型から放出され、プライマー鋳型はオリゴヌクレオチド合成の次のラウンドに利用可能となる。したがって、同じ反応でプライマー鋳型、ポリメラーゼ、及び切断剤を組み合わせて使用することは、反応が化学量論的ではないことを意味し、反応中に存在する鋳型の量を上回る量の生成物の生成を可能とする。
【0023】
定義
本明細書において、「核酸分子」とは、特定の配列を有するヌクレオチド鎖を指す。核酸分子は、4つのヌクレオチド(G、A、T/U及びC)すべて、またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、G、A、T/UもしくはC、またはそれらの任意の組み合わせ)を含み得る。
【0024】
「オリゴヌクレオチド」は短い核酸配列であり、通常は5~100ヌクレオチドの長さを有する。
【0025】
本明細書において、「一本鎖核酸」とは、第1のヌクレオチド多量体と二本鎖を形成することができる第2の別のヌクレオチド多量体に結合していない(すなわち、塩基対合していない)第1のヌクレオチド多量体を指す。「二本鎖核酸」とは、第2の別のヌクレオチド多量体と塩基対合している第1のヌクレオチド多量体である。
【0026】
本明細書において「オリゴヌクレオチド合成反応」とは、成長する鎖にモノマーを1個ずつ付加してオリゴヌクレオチドを合成する反応を指す。ヌクレオチドは、成長する鎖の3’末端に付加することができる。反応は適当なポリメラーゼによって行うことができる。
【0027】
本明細書で「ヌクレオシド三リン酸」と言う場合、3個のリン酸基に結合したヌクレオシド(すなわち、デオキシリボースまたはリボース糖分子に結合した塩基)を含む分子を指す。「ヌクレオチド」または「核酸残基」とは、1個のリン酸に結合したヌクレオシドを含む分子を指す。ヌクレオチドとは、一般的に、ホスホジエステル結合を介して、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれた、または組み込まれ得る任意の化合物及び/または物質を指す。デオキシリボースを含むヌクレオシド三リン酸の例は、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)またはデオキシチミジン三リン酸(dTTP)である。リボースを含むヌクレオシド三リン酸の例は、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)またはウリジン三リン酸(UTP)である。天然に存在する修飾ヌクレオシド及び人工ヌクレオシドなど、他の種類のヌクレオシドは3個のリン酸と結合してヌクレオシド三リン酸(ヌクレオチド)を形成することができる。
【0028】
「修飾された」核酸とは、ホスホジエステル結合、糖、及び/または塩基が改変された核酸である。
【0029】
「RNA」とは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、及びウラシル(U)のリボヌクレオチド塩基と呼ばれる4種類の小さな分子から構成される直鎖状分子である。「DNA」とは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、及びチミン(T)のデオキシリボヌクレオチド塩基と呼ばれる4種類の小さな分子から構成される直鎖状分子である。RNA及びDNAはそれぞれ一本鎖であっても二本鎖であってもよい。RNA及びDNAはそれぞれ二次構造を形成してもよい。
【0030】
「マイクロRNA」とは、約17~25ヌクレオチドの一本鎖RNAであり、細胞の増殖、アポトーシス、または分化において所定の役割を有し得る。miRNAは修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。miRNAは治療用オリゴヌクレオチドであってもよい。
【0031】
「ASO」(アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、mRNA標的に相補的であり得る短い合成DNAまたはRNAである。ASOは下流の標的を下方制御することができる。ASOは通常、ホスホロチオエートなどで修飾される。
【0032】
「アプタマー」とは、タンパク質、核酸、オリゴ糖、小分子、ホルモン、サイトカイン、シグナル伝達分子、金属イオンまたは有機分子などの標的に高い親和性かつ特異性で結合する核酸分子である。アプタマーは一本鎖でも二本鎖でもよく、あるいは部分的に一本鎖でも部分的に二本鎖でもよい。アプタマーは、修飾されたヌクレオチドを含み得る。
【0033】
「ポリメラーゼ」は、ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸から誘導される連続的なヌクレオチドの付加によるオリゴヌクレオチド鎖の形成を触媒する。ポリメラーゼ反応は、適切な核酸鋳型の存在下でのみ起こる。反応に入ってくるそれぞれのヌクレオシド三リン酸は、まずこの鋳型内の塩基と適切な塩基対を形成する。次に、ポリメラーゼは、反応に入ってくる塩基を鎖内の前の塩基と結合する。したがって、ポリメラーゼは鋳型誘導性の酵素である。
【0034】
本明細書で使用する場合、「プライマー」とは、核酸合成の開始点として作用し、伸長された二本鎖が形成されるようにその3’末端から鋳型に沿って伸長され得る、天然または合成のオリゴヌクレオチドを指す。プライマーの伸長は通常、DNAまたはRNAポリメラーゼなどの核酸ポリメラーゼを使用して行われる。伸長プロセスで付加されるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常、プライマーはDNAポリメラーゼによって伸長される。
【0035】
本明細書において、「鋳型」とは、ポリメラーゼによってコピーされる核酸配列である。鋳型は、合成しようとする目的のオリゴヌクレオチドの相補的配列を提供する。
【0036】
「伸長プライマー鋳型」とは、オリゴヌクレオチド合成時に形成される生成物であり、プライマーが、鋳型鎖と塩基対合する核酸鎖の合成を開始するようなものである。
【0037】
「プライマー鋳型」とは、プライマーを含む鋳型であり、したがって、オリゴヌクレオチド合成を開始するうえで別のプライマーを必要としない。
【0038】
「自己プライミング鋳型」とは、自己結合することで二本鎖プライマー配列と一本鎖鋳型配列を形成する配列を含む核酸分子である。
【0039】
「ヘアピンループ」または「ステムループ」構造とは、一本鎖DNAまたはRNAで生じ得る分子内塩基対合パターンである。ヘアピンループは、同じ鎖の2つの領域(通常は反対方向に読まれた場合に配列が相補的となる)が塩基対合して、不対合ループで終わる二重螺旋を形成する歳に生じる。
【0040】
「切断」とは、ポリヌクレオチド鎖中の2個の核酸残基間のホスホジエステル結合の切断を指す。
【0041】
本明細書で言うところの「切断可能部位」とは、切断されることで核酸分子を切断するか、または核酸分子の一方の鎖を放出することができる、核酸分子内のヌクレオチド間の結合または結合の対である。切断可能部位は、酵素によって認識される特定のヌクレオチド配列によって規定することができる。切断可能部位は、特定のヌクレアーゼによって認識される修飾ヌクレオチドの位置によって規定することもできる。
【0042】
本明細書で言うところの「切断」酵素またはシステムは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断することができる。
【0043】
「伸長」とは、好ましくはポリメラーゼの作用による新たなオリゴヌクレオチド鎖の合成を指す。
【0044】
本明細書において「固定化」とは、核酸分子または結合パートナーの支持体への可逆的または不可逆的な結合を指す。
【0045】
別の配列と「相補的」な配列は、他方の配列のヌクレオチドと塩基対合して安定な二重鎖または二本鎖配列を形成する核酸配列を有する。「実質的に相補的」とは、2つの配列間の塩基対のすべてが一致するわけではないが、安定した二重鎖を形成するのに十分な塩基対合が存在することを意味する。
【0046】
本明細書において「放出」とは、合成されたオリゴヌクレオチド鎖の鋳型からの解離を指す。
【0047】
「キット」とは、本発明の方法を実施するための材料または試薬を提供するための任意の提供システムを指す。
【0048】
試薬
本発明では、同じ反応で目的のオリゴヌクレオチドを合成するための試薬を使用する。同じ反応に存在する試薬には、プライマー、鋳型、ポリメラーゼ、切断システム、ヌクレオチド残基、補因子、及び反応最適化のための試薬が含まれ得る。
【0049】
I)プライマー鋳型
プライマー鋳型はRNAであってもDNAであってもよく、修飾されたRNAまたはDNAを含んでもよい。
【0050】
プライマー鋳型は、ポリメラーゼにより媒介される伸長を開始するプライマーとして、新たなオリゴヌクレオチド鎖を合成するための鋳型として、及び、核酸分子から新たなオリゴヌクレオチドを切断することの3つの機能を行えるようにする機能を備えている。したがって、プライマー鋳型は、オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマー、オリゴヌクレオチドの合成を誘導する鋳型、及び鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能にする切断可能部位を含むことができる。
【0051】
プライマー鋳型は、プライマーの3’末端にヌクレオチドを連続的に付加することによって伸長を誘導して、伸長されたプライマー鋳型を形成する。プライマーは、鋳型配列が、好ましくは完全に、プライマーの伸長部分としてコピーされるように、鋳型配列に対して配置される。プライマー配列は、鋳型配列の上流に配置することができる。プライマー配列は、鋳型配列の上流の配列に結合して一本鎖の鋳型配列の上流に二本鎖(二重鎖)配列を形成し、そこからポリメラーゼ活性が開始されるような配列とすることができる。したがって、プライマー鋳型は、一本鎖の核酸鋳型配列と、プライマー配列を含む二本鎖(または二重鎖)部分とを含む。したがって、一本鎖の鋳型配列は、プライマーを含む二本鎖部分を越えて伸びて、プライマー配列の3’末端の伸長によってコピーされるのに利用可能な5’テールまたは粘着末端を形成する。鋳型配列は、二本鎖部分から伸びる5’~3’方向の配列であってよい。
【0052】
プライマーを含むプライマー鋳型の二本鎖部分は、相補的な核酸配列のペアから形成される。プライマーを含む二本鎖部分は、一本鎖の核酸分子が折り畳まれて二次構造を形成するように結合する相補的配列のペアを含む一本鎖核酸分子から形成され得る。相補的配列のペアを含む一本鎖核酸分子から形成されたプライマー鋳型は、本明細書では自己プライミング鋳型と呼ぶ場合がある。相補的配列のペアは、結合して二重鎖を形成する際に、核酸分子がそれ自体に対して非対称に折り畳まれて、一端に折り目またはループを有し、他端に鋳型を形成する一本鎖配列のオーバーハングを有する二本鎖部分を形成するように一本鎖核酸分子内に配置することができる。一本鎖分子は、オーバーハングした一本鎖鋳型配列の末端が5’末端となり、二本鎖部分を形成する配列の末端が3’末端となるように非対称に折り畳むことができることが適当である。この構造は、鋳型配列との塩基対合によって新しいオリゴヌクレオチド配列を形成するために伸長するための遊離3’OH末端を提供する。一本鎖配列は、3’末端ヌクレオチドが鋳型配列の最初のヌクレオチドのすぐ隣(上流)のヌクレオチドと塩基対合するように折り畳まれることが適当である。このようにして、一本鎖のオーバーハングはコピーされる鋳型配列で始まる。
【0053】
核酸分子の相補的配列同士の対合によって形成される二次構造はヘアピンループであることが適当である。ヘアピンループは、配列がそれ自身に対して折り返されて二本鎖のステム部分と一端にループを形成する二次構造をとる一本鎖核酸分子によって形成される。ヘアピンループ一本鎖核酸分子は、第3の配列によって分離された相補的配列のペアの存在によってヘアピン構造をとり、その結果、相補的配列同士が塩基対合して二本鎖のステム部分を形成し、第3の介在配列は二本鎖のステム部分の一端にループを形成する。相補的配列のペアの一方の3’末端は、核酸配列の転写のためのプライマーとして機能する。ステム部分の長さ及び/またはループ部分のサイズは、ポリメラーゼがヘアピンループに結合して、ステム部分の一端の遊離3’ヒドロキシル基から転写を開始できるような適当な長さのサイズであることが適当である。
【0054】
ステム部分の長さは、塩基対合してヘアピンループを形成する、一本鎖配列内の相補的配列の長さによって決まる。ループのサイズは、一般的には、塩基対合してステム部分を形成する相補的配列の2つの部分間の非相補的配列の長さによって決まる。ヘアピンループは、通常は二本鎖ステム部分の末端に5’末端と3’末端を含む。3’末端は、ポリメラーゼがプライマー伸長を開始できる遊離OH基を有する。ヘアピンループは、転写のためのプライマーとして機能できるような任意の適切なサイズであり得る。ヘアピンのループ部分は、ループ構造が形成されるように、3個よりも多いヌクレオチドを含むことが適当である。ヘアピンループのループ部分は、4個よりも多いヌクレオチド、適当には4~30ヌクレオチド、より適当には4~25、4~20もしくは10~20ヌクレオチド、あるいはその間の任意の範囲または整数を含むことが適当である。二本鎖ステム部分は、任意の適当な長さ、例えば、1~200ヌクレオチドの長さ、または1~190、1~180、1~170、1~150、1~120、1~100、もしくは10~90であってもよく、20~80ヌクレオチド、または30~50ヌクレオチドの長さ、または上記の開始点及び終了点のいずれかを用いた任意の範囲、またはそれらの間の任意の長さを有することができる。ヘアピンループのステム部分の最も適当な長さは、10~30ヌクレオチドの長さであり、最も適当には10~20ヌクレオチドの長さである。
【0055】
ヘアピンループのステム部分は一般的には二本鎖であり、本明細書に記載されるようにそれ自身に対して折り返された核酸の一本鎖から形成される。ヘアピンループのステム部分は、遊離5’末端と遊離3’末端を有している。ステム部分の2本の鎖は平滑末端を形成するように同じ長さであってもよく、一方の鎖に粘着末端が形成されるように異なる長さであってもよい。平滑末端または粘着末端の存在は、ヘアピンループを形成する一本鎖核酸配列内の相補的配列の位置によって決まる。ステム部分は平滑末端を含むことが適当である。(ポリメラーゼがコピーするための)二本鎖ステム部分を超えて伸びる鋳型配列を含む核酸分子は、粘着末端を有する、またはそれと結合する相補的塩基がない配列と呼ぶことができる。
【0056】
ヘアピンループの形成を可能とするために一本鎖核酸分子内に配置される相補的配列の例を表1に示す。ループ構造を形成する非相補的配列の例を表1に示す。本発明で使用されるヘアピンループを形成する一本鎖核酸配列は、表1に示されるような相補的(ステム)配列とループ配列の任意の組み合わせを含むことができる。
【0057】
あるいは、プライマー鋳型は、単一の自己相補的核酸配列から形成されない、別個のプライマーと鋳型を含んでもよい。代わりに、プライマー鋳型は、i)一本鎖核酸分子の鋳型、ii)鋳型に塩基対合する別のプライマー配列、及びiii)切断可能部位を含むことができる。プライマー配列は一本鎖分子鋳型よりも短いことが適当である。好適には、プライマーは一本鎖核酸分子鋳型の3’末端に塩基対合し、それによってプライマーと一本鎖核酸分子鋳型によって形成される二本鎖の下流に伸びる一本鎖鋳型が提供される。好適には、プライマーは、ポリメラーゼによる伸長のための遊離3’ヒドロキシル基を含む。したがって、そのようなプライマー鋳型は、ヘアピンループのような二次構造を持たない点を除いて、本明細書に記載の自己プライミング鋳型と同等であり得る。
【0058】
プライマーと鋳型とは、塩基対合以外の他の手段によって結合されてもよい。例えば、プライマーは鋳型上に固定化されていてもよく、またはプライマーと鋳型とが化学的に結合されていてもよい。任意の適当な手段を用いてプライマーを鋳型に結合させることができる。反応中にプライマーと鋳型が分離すると、プライマーが鋳型とは別に、または鋳型と同様に合成を行うために使用される可能性がある(つまり、プライマーがコピーされる可能性がある)ことから、目的のオリゴヌクレオチドではなく副産物が生成される可能性がある。反応中に分離するようにプライマーと鋳型を結合する手段を使用すると、副生成物が生成する可能性が小さくなり、下流の生成物の単離が容易になる。
【0059】
プライマー鋳型のプライマー部分が別個の核酸分子として提供される場合、プライマー部分はRNA分子またはDNA分子とすることができる。プライマー部分は、1つ以上の天然及び/または修飾ヌクレオチド残基を含み得る。プライマーは、3’末端にリボヌクレオチド残基を有するDNA配列を含む3’リボヌクレオチドプライマーとすることができる。かかるプライマーは、鋳型配列からオリゴヌクレオチドが切断された後もその機能を保持し、再使用され得る。3’リボヌクレオチドプライマーを調製するための適当な方法は当業者には周知であろう。
【0060】
プライマーは、オリゴヌクレオチドの合成に先立って鋳型に適当にハイブリダイズされる。自己プライミング鋳型が使用される場合、オリゴヌクレオチド合成に先立って二次構造が形成される。プライマー鋳型を形成するために必要なハイブリダイゼーション条件は、相補的なプライマー配列のペアの特異性、またはプライマーと鋳型配列との特異性を含む要因に依存する。
【0061】
プライマーと鋳型とのハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチド合成反応中、またはその前に起こり得る。ハイブリダイゼーションが、ポリメラーゼ酵素、切断システム、及びその他の試薬の存在下で合成反応中に起こる場合、ハイブリダイゼーション条件は、他の試薬の機能に影響しないようなものでなければならない。
【0062】
プライマー鋳型の鋳型部分は、目的のオリゴヌクレオチド配列の合成のためにコピーされる配列を与える一本鎖配列を含む。鋳型の配列は、プライマー鋳型のどの部分ともアニールまたは塩基対合しないようなものであることが適当であり、その結果、鋳型は一本鎖のままであり、ポリメラーゼにより媒介される伸長の鋳型として使用され得る。したがって、プライマー鋳型の鋳型部分の配列は、鋳型の二重鎖の形成を可能とするだけ、プライマー鋳型の配列の残りのどの部分とも十分に相補的ではないことが適当である。したがって、鋳型配列は、プライマー鋳型核酸分子の残りの部分に対して1、3、5、10、15または20%以下の配列相補性を有する。「配列相補性」とは、配列同士が塩基対合して二本鎖配列を形成できることを意味する。
【0063】
鋳型は、合成しようとする目的のオリゴヌクレオチドの配列に相補的な配列を含むことになる。したがって、鋳型は、アプタマー、mRNA、またはsiRNAなどの治療用オリゴヌクレオチドに相補的な配列を含み得る。鋳型配列は、合成されるオリゴヌクレオチド配列に対して100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、95%または99%相補的であることが適当である。
【0064】
鋳型は、各部分が個別のまたは異なる目的のオリゴヌクレオチドの合成を誘導する2つ以上の部分を含んでもよい。したがって、単一の鋳型を使用して、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを生成することができる。したがって、鋳型配列は、1つのオリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導し、その後、オリゴヌクレオチド生成物を個々の目的のオリゴヌクレオチドに切断することができる。鋳型配列は、生成物を個々の目的のオリゴヌクレオチドに切断できるよう、1つ以上の制限酵素部位を生成物に組み込むのに適した配列とすることができる。
【0065】
鋳型は、これらに限定されるものではないが、例えば、終結配列、スペーサー配列、ポリアデニル化配列、タグ、及び/または切断可能部位などの機能的要素またはモチーフの合成を誘導する配列を含むことができる。スペーサーまたは転写終結配列が鋳型に含まれる場合、合成されたオリゴヌクレオチドの切断を可能とする切断可能部位(またはその相補配列)を含めることで余分な配列のない目的の生成物を生成することができる。
【0066】
鋳型配列は、好適には、目的のオリゴヌクレオチドの長さと同じ長さであってよく、または例えば、上記のような2つ以上のオリゴヌクレオチドの鋳型配列、または1つ以上の機能的要素またはモチーフの鋳型を含む場合には、より長くてもよい。
【0067】
鋳型は、任意の適当な長さとすることができる。鋳型は、3~200ヌクレオチドの長さであってよく、好適には、5~200、5~150、5~100、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、20~50、20~40、または20~30ヌクレオチドの長さ、または上記の開始点及び終了点のいずれかを用いた任意の範囲、またはそれらの間の任意の長さであってよい。鋳型配列の最も適当な長さは、10~30ヌクレオチドの長さであり、最も適当には10~20ヌクレオチドの長さである。
【0068】
伸長されたプライマー鋳型は、RNA、DNAであってもよいし、RNAとDNAとのハイブリッドであってもよい。例えば、プライマー鋳型がDNAであり、伸長部分がRNAである場合、伸長されるプライマー鋳型はRNAとDNAのハイブリッドである。伸長されたプライマー鋳型は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。
【0069】
プライマー鋳型は、合成されたオリゴヌクレオチドを鋳型から放出させて、1回以上のオリゴヌクレオチド合成の追加のラウンドでプライマー鋳型を再利用できるようにするための切断可能部位を含む。
【0070】
任意の適当な切断可能部位を使用することができる。
【0071】
切断可能部位は、プライマー開始部位の上流の、核酸分子のステム部分に適当に配置される。切断可能部位は、プライマー開始部位のすぐ隣のステム部分に配置されてもよく、またはプライマー開始部位の1~5ヌクレオチド以内、好適にはプライマー開始部位の1~2ヌクレオチド以内にあってよく、より好適には切断部位とプライマー開始部位との間に1個の残基があってもよい。切断可能部位は、切断によってオリゴヌクレオチド生成物またはプライマー鋳型のいずれも変化しないように、適当に選択することができる。言い換えれば、プライマー鋳型からのオリゴヌクレオチドの切断は別として、切断は痕跡がなく、オリゴヌクレオチド生成物、またはオリゴヌクレオチドが放出されるプライマー鋳型において検出できない。
【0072】
切断可能部位には、切断可能な結合、切断可能なヌクレオチド、または特定の配列モチーフが含まれ得る。
【0073】
切断可能な結合としては、例えば、ジアルコキシシラン、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、メシルホスホルアミダイト及びホスホルアミデートヌクレオチド間結合などの、ホスホジエステル基のうちの1つに代わる修飾された3’-5’ヌクレオチド間結合が挙げられる。
【0074】
切断可能なヌクレオチドは、これらに限定されるものではないが、脱アミノ塩基、塩基アナログ、脱塩基部位もしくは尿素部位、またはミスマッチヌクレオシドを含み得る。切断可能なオリゴヌクレオチドアナログには、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、イノシン、ウリジンなどの、塩基または糖の1つにおける置換基またはその置換も含まれ得る。切断可能なヌクレオチドは、エンドヌクレアーゼ、好適にはさらなる伸長ラウンドを可能にするための遊離3’ヒドロキシル基を残すエンドヌクレアーゼによって切断可能な塩基アナログを含む。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、ホルムアミドピリミジンDNAグリコシラーゼによって切断可能な塩基アナログを含むヌクレオチドが含まれ、これらに限定されるものではないが、7,8-ジヒドロ-8-オキソグアニン、7,8-ジヒドロ-8-オキソイノシン、7,8-ジヒドロ-8-オキソアデニン、7,8-ジヒドロ-8-オキソンブラリン(oxonebularine)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、5-ヒドロキシシトシン、5-ヒドロキシウラシルが挙げられる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、これらに限定されるものではないが、5-ホルミルシトシン及び5-カルボキシシトシンを含む、チミンDNAグリコシラーゼによって切断可能な塩基アナログを含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼによって切断可能な塩基アナログを含むヌクレオチドが含まれ、これらに限定されるものではないが、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルグアニン、7-(2-クロロエチル)-グアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)-グアニン、7-(2-エトキシエチル)-グアニン、1,2-ビス-(7-グアニル)エタン、1,N6-エテノアデニン、1,N2-エテノグアニン、N2,3-エテノグアニン、N2,3-エタノグアニン、5-ホルミルウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、5-メチルシトシンDNAグリコシラーゼによって切断可能な5-メチルシトシンが含まれる。特定のグリコシラーゼ(例えば、それぞれウラシルデオキシグリコシラーゼに続いてエンドヌクレアーゼVIII、及び8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ)によって認識されるデオキシウリジンまたは8-オキソ-デオキシグアノシンなどのヌクレオチドアナログである。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、エンドヌクレアーゼVによって認識可能な塩基アナログ、例えば、イノシン、ウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、脱塩基部位、尿素部位、塩基対ミスマッチ挿入及び欠失を含むヌクレオチドが含まれる。適当な切断可能なヌクレオチドとしては、エンドヌクレアーゼVにより切断されるイノシンがある。
【0075】
切断可能な配列モチーフは、配列特異的な形で配列を切断する酵素によって認識される任意の配列であってよい。例えば、切断可能な配列は、酵素、例えばエンドヌクレアーゼによって認識される特定の配列であってよい。切断は、配列モチーフの上流、下流、またはその内部にあってよい。例として、配列モチーフは、NtBstNBIにより認識されるGAGTCNNNN*N(ただし、Nは任意の塩基であり、*は切断部位である)、NtAlwlにより認識されるGGATCNNNN*N、またはNtBspQIにより認識されるGCTCTTCN*Nとすることができる。他の例も当業者には周知であろう。好適には、切断部位(例えば、ヌクレオチド)はプライマー開始部位の上流、好適には1~5ヌクレオチド以内、好適にはポリメラーゼ開始部位の1~2ヌクレオチド以内、またはポリメラーゼ開始部位のすぐ隣に配置される。
【0076】
好適には、オリゴヌクレオチド生成物の放出後にプライマー/鋳型を再利用できるよう、単一の切断可能部位が核酸分子内に配置される。好適には、反応で生成されるオリゴヌクレオチド生成物は、その反応で使用される切断システムによって認識される切断可能部位を含まない。
【0077】
切断可能部位は、エンドヌクレアーゼVにより切断される脱アミノ化塩基、またはニッキングエンドヌクレアーゼ用の関連配列であり得る。
【0078】
脱アミノ化塩基は、複数の塩基とワトソン・クリック塩基対を形成する可能性があり、したがって特異的でないため、治療用オリゴヌクレオチド製品には使用しないことが適当である。
【0079】
切断可能な配列は、制限酵素、例えばエンドヌクレアーゼ酵素によって認識されるコンセンサス配列であってよい。切断可能部位が酵素結合部位である場合、切断可能部位の相補体を鋳型部分に配置することでオリゴヌクレオチド分子の合成時に切断可能部位を生成し、その結果、新たに生成された配列内に切断可能部位が配置されるようにしてもよい。
【0080】
プライマー鋳型は、例えば、これらに限定されるものではないが、結合部位、標識、固定化部位、及び切断可能部位を含む、1つ以上のモチーフまたは配列を含み得る。1つ以上の任意のそのようなモチーフまたは配列を、ヘアピンループまたは一本鎖核酸鋳型またはその両方を含むプライマー配列中に存在させるか、またはプライマー配列と機能的に連結することができる。
【0081】
固定化部位または部分が、例えばアレイを形成する際に核酸分子を支持体、例えば固体支持体に結合させるために提供されてもよい。固定化部位または結合部位は、支持体との直接の結合または支持体上に配置される結合パートナーとの結合を媒介する任意の適当な配列または結合剤/部分であってよい。結合パートナーの例としては、核酸分子、分析物/抗体、オリゴヌクレオチドのペア、核酸分子及び相補配列、アプタマー、親和性結合タンパク質及び受容体または結合タンパク質、脂質、炭水化物などにそれらの結合パートナーとともに結合するように構成されたオリゴヌクレオチドアダプターが挙げられる。適当な例としては、ビオチン化核酸分子に結合し得るストレプトアビジンがある。
【0082】
固定化部位は、核酸分子のループ、ステム、または鋳型配列の下流(5’側)のいずれかに配置することができる。好適には、固定化部位は、核酸分子の固定化がポリメラーゼまたは切断システムの核酸分子への結合及び/または活性を立体的に妨げないような位置に配置される。適当な実施形態では、固定化部位は、ヘアピンループのループ内、好適にはループの中間点に配置することができる。適当な実施形態では、固定化部位の存在がポリメラーゼの活性に影響しないという条件で、固定化部位を鋳型配列内に配置することができる。適当な実施形態では、固定化部位は、鋳型配列の5’末端またはその下流に配置することができる。
【0083】
プライマー及び鋳型は、例えばPrimer-BLASTなどの当該技術分野で利用可能な適当な技術を使用して設計し、Primer 3、BLASTN、Melting、pandas及びPython標準ライブラリを使用して実施することができる。
【0084】
プライマー及び鋳型の設計パラメータには、アニーリング配列の長さと融解温度が含まれる。特定の配列では、長さが増加すると特異的結合相互作用の強度が増加するが、一方でオフターゲット配列への非特異的結合による不適切なライゲーションが増加し、及び/または反応時のプローブの有効濃度が低下する可能性もある。
【0085】
自己プライミング鋳型は、例えば酵素合成または化学合成などの任意の適当な方法を使用して調製することができる。自己プライミング鋳型は、当業者には周知の利用可能な組換え法またはクローニング法を使用して調製することができる。適当な方法には、プライマー鋳型の複数のコピーを提供するための核酸の酵素的増幅が含まれる。
【0086】
II)ヌクレオチド
ヌクレオチドは、鋳型を使用して配列を得るために、ポリメラーゼがステム部分の3’末端を伸長して目的のオリゴヌクレオチドを生成できるように与えられる。ヌクレオチドとしては、アデニン、シトシン、チミン、グアニン、及びウラシルを挙げることができる。ヌクレオチドは、天然(非修飾)ヌクレオチドであってもよく、または修飾もしくは非天然ヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログ、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。天然に存在しないアナログ(または修飾ヌクレオチド)としては、修飾塩基、糖、またはヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエートヌクレオシド間結合、5’-N-ホスホロアミダイト結合、フルオロフォアまたはハプテンなどの標識の結合を可能とする連結基を有する塩基を含むヌクレオチドを挙げることができる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用が、ポリメラーゼによる伸長、リガーゼによるライゲーションなどの酵素による処理を必要とする場合、そのような場合のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合、糖部分、または塩基の特定のアナログをいずれの、または特定の位置に含まない点は当業者には理解されよう。
【0087】
いくつかの実施形態では、核酸アナログは、1つ以上のヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロムウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、2’-デオキシヌクレオシド5’-三リン酸(dNTP)アナログ(Sp-dNTPαS、Rp-dNTPαS、Sp-2’F-dNTP、及びdNTP-αSを含む)、メチル化塩基、挿入塩基、及びそれらの組み合わせであるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸アナログは、普通に存在する天然の核酸にみられるものと比較して、1つ以上の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、2’-メトキシリボース、2’-メトキシエトキシリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、ヘキソースまたはロック核酸)を含む。
【0088】
好適には、複数(または集団)のヌクレオチドが提供される。複数のヌクレオチドは、同じ種類の塩基(例えば、A、T、G、C、Uなど)であってもなくてもよい。例えば、溶液は、1種類のみの塩基を含んでも含まなくてもよい。溶液は、少なくとも1種類の塩基、または少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、または少なくとも10種類の塩基を含んでもよい。例えば、溶液は、A、T、C、U及びGのあらゆる可能な混合物を含むことができる。A、T、C及びGのあらゆる可能な混合物を与えることができる。複数の天然ヌクレオチド及び非天然ヌクレオチドは、同じ種類の塩基(例えば、A、T、G、C)であってもなくてもよい。場合によっては、溶液は複数の天然ヌクレオチド及び非天然ヌクレオチドを含み得る。複数の天然ヌクレオチド及び非天然ヌクレオチドは、同じ種類の塩基(例えば、A、T、G、C)であってもでなくてもよい。本明細書に記載されるように、または当業者には周知のように、複数のヌクレオチドは、実質的にすべて天然ヌクレオチドであってもよく、または実質的にすべて修飾ヌクレオチドであってもよい。複数のヌクレオチドは、天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの混合物であってもよい。かかる混合物では、修飾ヌクレオチド:天然ヌクレオチドの比は、生成されるオリゴヌクレオチドの性質、及びその中の修飾ヌクレオチドの割合によって決まり得る。修飾ヌクレオチド:天然ヌクレオチドの適当な比は、1:99、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50。60:40、70:30、80:20、90:10、95:5または99:1、または上記の上限と下限の範囲のいずれかの間の任意の範囲、またはその間の任意の整数であってよい。
【0089】
複数のヌクレオチドのうちの1つ以上のヌクレオチドが、色素、フルオロフォア、または量子ドットで標識されてもよい。例えば、溶液は標識されたヌクレオチドを含んでもよい。別の例では、溶液は標識されていないヌクレオチドを含んでもよい。別の例では、溶液は標識されたヌクレオチドと標識されていないヌクレオチドとの混合物を含んでもよい。
【0090】
ヌクレオチドは、任意の適当な濃度または量で与えることができ、これらの濃度または量は、鋳型の長さ及び単一反応における予想されるオリゴヌクレオチド合成のラウンド数に基づいて計算することができる。ヌクレオチドは、与えられるヌクレオチドの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%、または実質的にすべてが反応に使用されるような適当な量で与えることができる。したがって、ヌクレオチドの量は、当業者の知識に基づいて、それぞれの反応について計算することができる。あるいは、例えば伸長のラウンド数が事前に決められていない場合には、ヌクレオチドを過剰に与えてもよい。ヌクレオチドは、反応で生成される所望の数のオリゴヌクレオチドに必要なヌクレオチドの計算量と比較して、1.5倍、2倍、3倍、4倍または5倍の過剰量で与えることができる。例として、図8に示される「最適化」反応は4μMの鋳型を使用し、53サイクルを完了して212μMの生成物を生成する。このオリゴヌクレオチド生成物は18個のヌクレオチドを含み、反応では3.78mMのdNTPを使用した。この反応条件により、16mMのヌクレオチド、すなわち4倍の過剰量が得られた。
【0091】
III)ポリメラーゼ
本発明で使用されるポリメラーゼは、ヌクレオチドの鎖を合成することができる任意の適当な酵素であってよい。ポリメラーゼは、RNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼであってよい。好適には、本発明で使用されるポリメラーゼは、修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドを核酸鎖に組み込むことができるものであってよい。ポリメラーゼは天然に存在するものであっても、操作されたものであってもよい。適当なポリメラーゼは、真核生物由来であっても原核生物由来であってもよい。
【0092】
適当なポリメラーゼは、その活性または性能に実質的に影響を与えることなく、高濃度のdNTPに耐えることができるものであり得る。かかるポリメラーゼの例は本明細書に記載されている。高濃度のdNTPに耐えることができるポリメラーゼの例としては、KODまたはそのバリアントがある。
【0093】
適当なポリメラーゼは、熱安定性ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus由来のpfu、またはThermococcus kodakaraensis由来のKOD(Tkod-pol)、またはそのバリアントもしくは改変された形態であり得る。本発明での使用に適していると考えられる他の適当なポリメラーゼとしては、大腸菌由来のクレノウ断片、T4及びT7ポリメラーゼ、SFP1、StoffelバリアントSF4-6、Thermus filiformis及びMarinithermus hydrothermalis由来のStoffelホモログ(Mhpol)、及びファミリーBポリメラーゼ 9°N、Q5 DNAポリメラーゼ、及びそのバリアントまたは改変された形態が挙げられる。本発明での使用に適していると考えられる改変ポリメラーゼのリストは、Trends in Biotechnology, October 2019, Vol. 37, No. 10 https://doi.org/10.1016/j.tibtech.2019.03.011に示されており、または当業者には周知のものである。バリアントは、本発明に適した1つ以上の改善された特性、例えば改善された忠実度、安定性、または実質的に単一の立体異性体を提供する能力を有し得る。適当なバリアントとしては、例えば、本明細書で提供されるSF4-6、TfPol*及びMhPol*が挙げられる。最も好適には、SF4-6、TfPol*及びMhPol*は、実質的に同じ立体異性体のオリゴヌクレオチドの集団を生成するのに有用であり得る。
【0094】
本明細書では、表3に定義される配列、またはその配列と少なくとも80%、85%、90%もしくは95%以上の配列同一性を有する配列を有するポリメラーゼも提供される。適当な修飾ポリメラーゼは、RNAまたはDNA配列を伸長することができ、1つ以上の修飾ヌクレオチドをヌクレオチド鎖に受け入れることができ、表3に記載されるヌクレオチド変異のうちの1つ以上を有する。かかるポリメラーゼは、本発明の方法で使用するか、または本発明のキットで提供することができる。本発明のポリメラーゼは、3、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50mMよりも高いヌクレオチドの濃度がポリメラーゼ活性を大きく阻害しない、または影響しないように、高濃度のヌクレオチドに耐えられるものとすることができる。
【0095】
任意の適当な量のポリメラーゼを反応に使用することができる。ポリメラーゼの量は、生成される生成物の量、ヌクレオチドの濃度、ポリメラーゼの性質及び効率、ならびに切断剤の性質などの反応の特性に基づいて選択することができる。当業者であれば、本明細書で提供される情報及び当業者の一般的な知識を使用してプライマーの適当な量を決定することが可能である。好適には、10mol%、9mol%、8mol%、7mol%、6mol%、5mol%、4mol%、3mol%、2mol%または1mol%以下のポリメラーゼを、本発明の方法で使用することができる。適当な範囲は0.1~5μMとすることができる。
【0096】
本発明で使用されるポリメラーゼは、任意の適当な方法によって生成することができ、例えば、ポリメラーゼは宿主細胞内で組換えによって産生させることができる。適当な宿主細胞は当該技術分野では周知のものであり、微生物細胞、哺乳動物細胞、または細胞株であってよい。適当な宿主細胞は細菌細胞、例えば大腸菌であり得る。
【0097】
V 切断剤
本発明の試薬は、合成されたオリゴヌクレオチドの核酸分子鋳型からの解離を可能にするために、伸長核酸分子の切断可能部位における切断を媒介することができる適当な切断剤を含む。切断剤は、伸長されたプライマー鋳型を特定の部位で切断するように部位特異的であることが適当である。
【0098】
本明細書で「切断剤」と言う場合、新たに形成されたオリゴヌクレオチドとプライマーとの間の結合を切断することができる物質を指す。本発明で使用するのに適した切断剤は、プライマー鋳型からオリゴヌクレオチドを適当に切断し、遊離3’OH基を末端に残すことで、プライマー鋳型を再利用してオリゴヌクレオチド合成の鋳型として再び使用できるようにする。切断剤は、化学的切断剤、酵素的切断剤、または光切断剤、または任意の他の適当な試薬もしくは系であってよい。好適には、切断剤は酵素的切断剤である。
【0099】
適切な切断材は、その活性または性能に実質的に影響を与えることなく、高濃度のdNTPに耐えることができるものであり得る。かかる切断剤の例は本明細書に記載されており、例えば酵素的切断剤、例えばエンドヌクレアーゼV、好適にはTnEndoVである。
【0100】
適切な酵素切断システムの例としては、核酸の一本鎖を切断することができる任意の酵素、例えば制限酵素またはエンドヌクレアーゼが挙げられる。本発明で使用するのに適したエンドヌクレアーゼの例としてはThermotoga maritima由来のTmEndoV(TmEndoV)、Thermotoga neapolitana由来のTmEndoV、Pseudothermotoga thermarum由来のPtEndov、Thermosipho melanesiensis由来のTmeEndoV、及びThermosipho atlanticus由来のTaEndoV、またはニッキングエンドヌクレアーゼNt BstNBI、NtAlwl及びNt BspQIが挙げられる。タンパク質配列は表2にみられる。また、表2のエンドヌクレアーゼと実質的に同一であるエンドヌクレアーゼも含まれる。
【0101】
酵素的切断剤は、3、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50mMよりも高いヌクレオチドの濃度が酵素活性を大きく阻害しない、または影響しないように、高濃度のヌクレオチドに耐えられるものとすることができる。
【0102】
好ましいエンドヌクレアーゼは、イノシンなどの脱アミノ化塩基に特異的である。エンドヌクレアーゼVは、イノシンの3’側に2番目のホスホジエステル結合を切断/加水分解する。
【0103】
切断は単一工程で行うことも、複数工程のプロセスで行うこともできる。
【0104】
切断剤が核酸分子への酵素または試薬の結合を必要とする場合、ポリメラーゼのサイズによる立体的制約を避けるため、エンドヌクレアーゼはポリメラーゼが放出されるまで鋳型に結合しないことが期待される。
【0105】
エンドヌクレアーゼによる切断の場合、生成物は結合及び切断されるために二本鎖である必要がある。さらなる実施形態では、切断溶液は1つ以上のバッファーを含む。バッファーの選択は、必要とされる正確な切断の化学機序及び切断剤によって決まることが当業者には理解されよう。
【0106】
切断は通常、水性システムで行うことができる。あるいは、切断は、代替求核試薬の存在下で起こるようにしてもよく、それにより、代替求核試薬がオリゴヌクレオチド生成物の5’リン酸基に組み込まれる。この求核試薬の取り込みにより、特定の臓器への標的化送達を行うための抗体、ペプチド、タンパク質、または糖などの送達担体との結合に適した修飾オリゴヌクレオチドが得られる。例えば、これらに限定されるものではないが、グリセロール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、または1,3-ジアミノプロパノールなどの任意の適当な求核試薬を使用することができる。適当な濃度は、所望の組み込みを実現するように決めることができる。例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、または80w/v%、または上記の整数間の任意の適当な範囲を使用することができる。
【0107】
VI)その他の試薬
例えば、これらに限定されるものではないが、洗浄液、バッファー、プライマー、酵素、触媒、クエンチャー、色素、プローブ、タグ、標識、補因子、流体成分(例えば、界面活性剤、バッファー、triton X-100、nonidet P-40、DMSOなど)、及び/または光学的成分(例えば、参照ビーズ、色素など)、及びマグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2)のいずれか1つ以上、グルタミン、アルギニン、塩化テトラメチルアンモニウム、ベタイン、ホルムアミド、ウシ血清アルブミン、またはそれらの任意の組み合わせを含むさらなる試薬が提供されてもよい。
【0108】
広く用いられているdNTP骨格のバリアントとしてホスホロチオエート(Sオリゴとも呼ばれる)があり、ホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたものである。硫化プロセスにより、R及びSジアステレオマーが生成される。反応混合物にさまざまな補因子を適用すると、RまたはS立体異性体の合成を誘導することができる。例えば、ポリメラーゼが自然にS異性体を受け入れる場合、補因子を適用してポリメラーゼをR異性体の方向に誘導することが適当な場合があり、それにより両方の形態が使用されることになる。例えば、KODが使用される場合、コバルト補因子を組み合わせて使用することが適当な場合がある。反応に使用するのに適した試薬は、コバルト塩、例えば塩化コバルトであり得る。ポリメラーゼ及び補因子の他の適当な組み合わせは、本明細書の教示を用いて決定することができ、また当該技術分野で利用可能である。
【0109】
本発明で使用するのに適したバッファーは、水性条件を与えるバッファーである。したがって、バッファーは水性バッファーが適当である。適当なバッファーは、Tris-HCl、Hepes、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、グルタミン、アルギニン、ホルムアミド、nonidet及びTriton X-100から選択される1つ以上の試薬を含み得る。適当なバッファーは、Tris-HCl、(NHSO、KCl、トリトンX-100、及びMgSOを含むことができる。例えば、適当なバッファーは、20mM Tris-HCl、10mM(NHSC、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%Triton X-100、pH8.8を含むことができる。別の適当なバッファーは、Tris-HCl、MgCl、グルタミン酸カリウム、アルギニン-HCl、アセチル化BSA、DTT、トレハロース及び1,2-プロパンジオールを含むことができる。例えば、適当なバッファーは、20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニン-HCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、10mM DTT、0.2M トレハロース及び1M 1,2-プロパンジオールを含むことができる。別の適当なバッファーは、Tris-AcOH、MgSO、KOAc、グルタミン酸カリウム、アルギニン-HCl、アセチル化BSA、Triton X-100及びDTTを含むことができる。例えば、適当なバッファーは、50mM Tris-AcOH(pH8)、20mM MgSO、50mM KOAc、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニンHCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、0.1% Triton X-100(登録商標)及び30mM DTTを含むことができる。別の適当なバッファーは、Tris-HCl(pH 8.8)、(NHSO、KCl、MgSO、Triton X-100及びNiCl20を含むことができる。例えば、適当なバッファーは、20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM (NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1% Triton X-100及び2mM NiClを含むことができる。別の適当なバッファーは、Tris-HCl(pH8)、MgCl、グルタミン酸カリウム、アルギニン-HCl、アセチル化BSA、DTTを含むことができる。例えば、適当なバッファーは、20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニンHCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、10mM DTTを含むことができる。代替バッファーは、本明細書の教示を用いて当業者によって特定することができ、当該技術分野で入手可能である。
【0110】
バッファーと酵素の適当な組み合わせは、本明細書の教示を使用して決定することができ、当該技術分野で入手可能である。例えば、上記のバッファーのいずれか1つを、KODもしくはKOD DGLNKなどのそのバリアント、またはTfPolもしくはそのバリアントから選択されるポリメラーゼと組み合わせて使用することができる。
【0111】
好適には、本発明の方法で使用される試薬は水性である。
【0112】
好適には、本発明の方法で使用される試薬は、アセトニトリルを実質的に含まない。
【0113】
組み合わせ
本発明において、適当な試薬には、目的のオリゴヌクレオチドの生成に適切に最適である、本明細書に定義される1つ以上の試薬などの任意の試薬と適当に組み合わされた酵素の組み合わせ(すなわち、ポリメラーゼとエンドヌクレアーゼ)が含まれる。好適には、反応は、プライマー鋳型、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、dNTP及びバッファーを含むことができる。好適には、反応は、自己プライミング鋳型、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、dNTP及びバッファーを含むことができる。ポリメラーゼは、KOD、TfPol * 、KOD DGLNK、またはSFM4-6であってよい。エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼV、好適にはTnEndoVであってよい。
【0114】
一実施形態では、本発明は、表3の群から選択されるポリメラーゼと、表2の群から選択されるエンドヌクレアーゼとを含み得る。かかる組み合わせはすべて、プライマー鋳型、または具体的には自己プライミング鋳型とともに本発明の範囲内に含まれる。好適には、エンドヌクレアーゼはTnEndoVである。好適には、ヌクレオチドは、1つ以上の種類の修飾ヌクレオチドを含み得る。好適には、切断可能部位は、切断可能ヌクレオチド、例えばイノシンである。
【0115】
一実施形態では、ポリメラーゼは、表3に示される修飾ポリメラーゼであってよく、エンドヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼVであってよい。好適には、エンドヌクレアーゼはTnEndoVである。1つ以上のヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであってもよい。好適には、切断可能部位はイノシン残基とすることができる。好適には、バッファーは本明細書で提供されるものであってよい。
【0116】
方法
本発明は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、
i)a)オリゴヌクレオチド合成を開始するためのプライマーと、b)オリゴヌクレオチド生成物の合成を誘導する鋳型と、c)鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の放出を可能とする切断可能部位と、を含むプライマー鋳型を提供することと、
ii)プライマー鋳型を、核酸ポリメラーゼ、1つ以上のdNTP、及び切断剤とともにインキュベートして反応混合物を形成することと、
iii)反応混合物を、ポリメラーゼによるプライマーの伸長による伸長プライマー鋳型の形成と、切断剤による切断可能部位での伸長プライマー鋳型の切断と、を可能とする条件下で維持することと、
iv)場合により、反応混合物からオリゴヌクレオチド生成物を分離することと、を含む、方法を提供する。
【0117】
プライマー鋳型、ポリメラーゼ、dNTP、及び/または切断剤は、それぞれ個別に本明細書に記載の通りのものであってよい。本明細書に記載のプライマー鋳型、ポリメラーゼ、dNTP、及び/または切断剤の任意の適当な組み合わせを本発明の方法で使用することができる。
【0118】
ヌクレオチドは、天然ヌクレオチドであってもよく、または例えば本明細書に記載されるような1つ以上の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは、例えば本明細書に記載されるように、必要な量よりも過剰な量で提供されてもよい。
【0119】
適当な実施形態では、この方法は、治療用オリゴヌクレオチドを製造するためのものである。好適には、切断剤はTnEndoVであり、ヌクレオチドは1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。
【0120】
本発明の方法は、単一工程の方法であってもよく、または2つ以上の連続した工程を含んでもよい。単一工程の方法では、伸長及び切断反応の進行に適した条件下で、すべての試薬を単一工程で加え合わせることができる。本発明の方法は、伸長及び切断が単一の反応容器内で起こるワンポット法とすることができる。
【0121】
反応混合物を工程iii)で定義されたように維持することは、反応時間、好適には定義された反応時間にわたって行うことができる。規定の反応時間中、伸長と切断の両方が反応混合物中で、好適には同じ反応時間内に起こり得る。したがって、反応は、反応時間中に同じ反応混合物内で、伸長と切断の繰り返しサイクルを含むことができる。このようにして、プライマー鋳型は継続的に再使用される。
【0122】
好適には、伸長及び切断は同じ一群の反応条件下で起こり得る。反応条件は、適当な温度で、所定の反応時間にわたって、適当なバッファー及び本明細書で定義される1つ以上のさらなる試薬の存在を含むことができる。
【0123】
好適には、伸長及び切断は、上記iii)の任意の先行するまたは後続の工程で起こってもよく、別個の工程及び/または容器で行われてもよく、または工程i)~iv)と同じ工程及び/または容器で行われてもよい。先行するまたは後続の工程の条件、または条件の一部は、同じであっても異なっていてもよい。
【0124】
本発明の方法は、例えば1つのアレイまたは複数のアレイで並行して実施される2つ以上の方法を含んでもよい。各反応は、同じまたは異なる鋳型を含むことができる。
【0125】
本発明の方法は、プライマー配列を伸長し、プライマー鋳型二重鎖を適当に保持して新しいオリゴヌクレオチド配列を生成するための任意の適当な条件下で実施することができる。自己プライミング鋳型が使用される場合、条件は、反応時間の間、例えばヘアピンループのような二次構造の維持を適切に可能にする。適当な条件には、適当な温度、pH、バッファー、インキュベーション時間及び塩濃度が含まれる。この方法の任意の工程の条件は、1つ以上の他の工程の条件と同じであっても異なっていてもよい。
【0126】
工程iii)は、鋳型及び切断生成物の融解温度以上の温度で実施することができる。このような温度では、伸長生成物(オリゴヌクレオチド生成物)は切断後にプライマー鋳型から放出され、プライマー鋳型は別の伸長サイクルに利用できる状態となる。しかしながら、プライマーは結合したままで、反応条件中に解離しない。適当な温度は、鋳型及び伸長生成物の長さ、及びそれらの配列、ならびにポリメラーゼ及び切断剤の最適温度などの要因に基づいて、当業者によって計算され得る。長いオリゴヌクレオチド生成物は、短い生成物よりも高い融解温度を有する。より長いオリゴヌクレオチド生成物、例えば18量体の合成に自己プライミング鋳型を使用する場合の適当な温度は、60~85℃、またはその間の任意の整数または範囲とすることができる。より適当な温度範囲は、65~80℃、またはその間の任意の整数、例えば約70℃であり得る。標的治療用オリゴヌクレオチドがより短かい場合、より低い温度、例えば45~60℃、またはそれらの間の任意の整数もしくは範囲を使用することができる。あるいは、温度は、プライマー伸長に適した第1の温度と切断に適した第2の温度との間でサイクルしてもよい。
【0127】
プライマー鋳型からのオリゴヌクレオチド生成物の解離を可能にする条件下で、同じ反応でポリメラーゼと切断剤を与えることを組み合わせることで、プライマー鋳型を反応で繰り返し使用することが可能になる。プライマー鋳型は、従来の伸長反応における鋳型:生成物の通常の1:1の比を上回る生成物の増加を媒介し、伸長または切断工程によって変化しないままであるため、触媒的であると呼ぶことができる。
【0128】
したがって、本発明の方法は、反応開始時のプライマー鋳型の量と比較して、1倍を超える、または少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍もしくは200倍、300倍、500倍、または1000倍の量のオリゴヌクレオチド生成物の生成を可能にする。量はmol%として表すことができる。
【0129】
伸長反応は、ポリメラーゼの活性に適したpHを表す適当なpH、例えば8.0~9.5で起こり得る。Tris-HClなどの適当なバッファー、または本明細書に記載の1つ以上の緩衝試薬を有する適当なバッファー、または当業者には周知の均等物を、pHを安定化するために与えることができる。
【0130】
反応時間は、必要な生成物の量と伸長サイクルの数によって決められる。一般的な伸張時間は、1サイクル当たり1~2分とすることができる。反応は、適当な収量を得るために、数分~数時間、または最大1日以上インキュベートすることができる。伸長に最適なインキュベーション時間は、反応ごとに計算することができる。最適な反応時間は12時間以上である場合がある。反応時間は、2回以上、10回以上、50回以上、100回以上、200回以上、300回以上、500回以上、または1000回以上とすることができる、伸長サイクルの数に基づいたものとすることができ、この方法は、反応混合物中のオリゴヌクレオチド生成物の蓄積を可能とし得る。
【0131】
伸長反応が行われる条件は水性とすることができる。一実施形態では、条件はアセトニトリルを実質的に含まない。
【0132】
方法は、伸長反応の性能のために試薬が組み合わされた適当なバッファーを提供することを含み得る。適当なバッファーは、緩衝塩(例えば、Tris-HCl、Tris-AcOH、HEPES-KOH、ビシン-HCl)、金属イオン(例えば、MgSO、MgCl、MgOAc、CaCl)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、グリシン、セリン、アスパラギン酸)及び添加剤(例えば、クエン酸ナトリウム、(NHSO、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、KCl、KOAc、グリセロール、1、2-プロパノール、スクロース、トレハロース、アセチル化BSA、Tween-20、Triton X-100、DTT、ホルムアミド、DMSO及び/またはPEG-3000)から選択される1つ以上の成分を含むことができる。適当なバッファーは、マグネシウム、塩化カリウム、Tris-HCl、硫酸アンモニウム、例えばDMSO、グリセロール、ホルムアミド、BSA、PEG、ゼラチン、非イオン性洗剤(TWEEN20またはTriton-X-100)及びN,N,Nトリメチルグリシンを含む1つ以上の共溶媒を含むことができる。最も適当なバッファーは、20mM Tris-HCl、10mM (NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8を含むことができる。別の適当なバッファーは、50mM Tris AcOH、20mM MgSO4、50mM KOAc、100mM KGIu、100mM ArgHCL、0.01mg/ml AcBSA、0.1% Triton X-100、30mM DTT、5% ホルムアミドを含むことができる。他の適当なバッファーは本明細書に記載されているか、または当業者に周知の入手可能のものであってよい。
【0133】
ポリメラーゼがKODである場合、切断剤はエンドヌクレアーゼV、例えばTnEndoV(2μM)とすることができる。触媒される増幅は、20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM アルギニン-HCl(pH8)、100mM グルタミン酸-KOH(pH8)、DTT(10mM)、ホルムアミド(10%)、トレハロース(0.2M)、1,2-プロパンジオール(1M)及びアセチル化BSA(0.01mg/ml)である。大規模反応に最適化された条件の例としては、50mM Tris AcOH、20mM MgSO4、50mM KOAc、100mM KGIu、100mM ArgHCL、0.01mg/ml AcBSA、0.1%Triton X-100、30mM DTT、5%ホルムアミド、pH8.0、S-dGTPαS(2.5mM)、S-dCTPαS(2.5mM)、S-dTTPαS(5mM)、鋳型(4μM)、KOD(2μM)、TnEndoV(6μM)及び0.012U/μl TIPP(無機ピロホスファターゼ)を含むバッファー、70℃で12時間以上のインキュベーション、98℃で2時間加熱することによる反応停止である。
【0134】
酵素及びヌクレオチドの量は、例えば、ポリメラーゼの性質、ならびにヌクレオチドの濃度、キレート剤及びタンパク質の存在に基づいて経験的に決定することができる。いずれの試薬も過剰に与えることができる。
【0135】
切断は、酵素的に、または光に基づく切断、または他の任意の適当な機構によって行うことができる。切断に必要な条件は、使用される切断システムの性質によって異なり、当業者には周知のものである。最も適当な条件は、反応中の酵素などの試薬の機能に影響しない、または実質的に影響しないものであり、それにより複数のサイクルが可能となる。
【0136】
本発明の方法は、例えば、本発明の方法を行って一本鎖核酸の2つの相補鎖を生成し、アニーリング工程を実行して二本鎖オリゴヌクレオチドを生成することによって二本鎖DNAを生成するために使用することができる。
【0137】
本発明の方法はまた、1つ以上のさらなる工程、例えば、反応を停止、終了またはクエンチする工程、タンパク質を抽出する工程、生成物を抽出する工程、生成物を洗浄する工程、生成物の精製工程、例えば、別の分子へのライゲーションまたは異なるオリゴヌクレオチドへの切断によりオリゴヌクレオチド生成物を修飾または適合する工程を含むこともできる。この方法は、例えば、生成物を凍結乾燥し、パッケージングし、及び/または保管することによって生成物を保存することを含むことができる。
【0138】
精製に適した方法及び条件は、当業者には周知であろう。任意の適当な方法を使用して、好適にはプライマー/鋳型核酸分子を使用せずにオリゴヌクレオチド生成物を抽出することができる。適当な方法の例は本明細書に記載されており、選択的結晶化、エタノール/クロロホルム沈殿、または確立された濾過システムの使用が含まれる。
【0139】
固体支持体/アレイ
本発明は、支持体、例えば固体基材上に与えられた本発明の1つ以上のプライマー鋳型を提供する。表面上への核酸分子の固定化は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。表面に結合する核酸配列による、または表面への結合を媒介する適当な部分の組み込みによる、任意の適当な固定化方法を使用することができる。例えば、適当な結合モチーフには、ポリA配列などの、固体支持体上の相補的配列に結合する配列が含まれ得る。
【0140】
結合は、核酸分子内の固定化部位と、固体支持体上に与えられた相補的部位または結合部分を介して媒介され得る。あるいは、核酸配列は、例えば物理吸着によって非共有結合によって支持体に結合されてもよい。
【0141】
基材は固体基材であってよい。基材は、全体的または部分的に、ゴム、ガラス、シリコン;アルミニウム、銅、チタン、クロム、または鋼などの金属、酸化チタンまたは窒化ケイ素などのセラミック、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアセチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フェノールホルムアルデヒド(PF)、メラミンホルムアルデヒド(MF)、尿素ホルムアルデヒド(UF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、ポリ乳酸(PLA)、フラン、シリコーン、ポリスルホンなどのプラスチック、上記の材料のいずれかの任意の混合物、または他の任意の適当な材料のうちの1つ以上のものを含むことができる。基材は、アルミニウム、銅、銀、金などの金属、酸化ケイ素(SixOy、ただし、x、yは任意の可能な値をとることができる)などの酸化物、SU8などのフォトレジスト、アミノシランまたはヒドロゲルなどの表面コーティング、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドデキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、または上記の材料のいずれかの任意の組み合わせ、または任意の他の適当なコーティングの1つ以上の層で全体的または部分的にコーティングすることができる。
【0142】
基材の表面は、本明細書に記載される固定化試薬または結合パートナーのいずれかを含むように修飾されてもよい。基材の表面は、アミン、エステル、ヒドロキシル、エポキシドなど、またはそれらの組み合わせなどの活性化学基を含むように修飾されてもよい。場合によっては、そのような結合パートナー、化学物質、タンパク質、核酸配列または表面修飾は、さらなる層またはコーティングとして支持体に付与されてもよい。
【0143】
基材は、円筒形、円筒状シェルまたはディスク、直方体、または他の任意の幾何学的形状の一般的な形状を有し得る。基材の表面は平面であってもよい。基材の表面は被覆されずともよく、大気に曝露されていてもよい。あるいは、またはさらに、基材の表面をテクスチャー加工またはパターン加工することもできる。例えば、基材は、溝、谷、山、及び/または柱を含んでもよい。基材は、1つ以上のキャビティ(例えば、マイクロスケールのキャビティまたはナノスケールのキャビティ)を画定してもよい。基材は、1つ以上の溝を画定してもよい。基材は、基材の表面全体にわたって規則的なテクスチャー及び/またはパターンを有することができる。例えば、基材は、表面の基準レベルの上または下に規則的な幾何学的構造(例えば、楔、直方体、円柱、回転楕円体、半球など)を有してもよい。あるいは、基材は、基材の表面全体にわたって不規則的なテクスチャー及び/またはパターンを有してもよい。例えば、基材は、基材の基準レベルの上または下に任意の構造を有してもよい。
【0144】
基材はアレイを含んでもよい。例えば、アレイは基材の側面に配置されてもよい。アレイは平面状のアレイであってもよい。アレイは、円、環、長方形、または他の任意の形状の一般的な形状を有し得る。アレイは、線形及び/または非線形の横列を含んでもよい。アレイは等しい間隔で配されるかまたは分布されていてもよい。アレイは任意の間隔で配されるかまたは分布されていてもよい。アレイは規則的な間隔を有してもよい。アレイは不規則的な間隔を有してもよい。アレイはテクスチャー化されたアレイであってもよい。アレイはパターン化されたアレイであってもよい。アレイは、複数の個別にアドレス指定可能な位置を含むことができる。
【0145】
プライマー鋳型はアレイに固定化することができる。したがって、アレイは、本明細書に記載されるように、1つ以上の結合パートナー、またはプライマー鋳型の固定化を媒介する手段を含み得る。かかる手段は、1つ以上の物理的または化学的リンカーまたはアダプターを含み得る。あるいは、またはさらに、プライマー鋳型をビーズに結合させてもよく、そのビーズをアレイに固定化してもよい。
【0146】
任意の数のプライマー鋳型を支持体に固定化することができる。例えば、支持体は少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10の試料を固定化することができ、数千、数万、数十万、数百万、数億、数千、あるいはそれ以上のプライマー鋳型を固定化することができる。
【0147】
プライマー鋳型は、親水性相互作用、疎水性相互作用、静電相互作用、物理的相互作用(例えば、接着)などのうちの1つ以上などの非特異的相互作用を介して固定化することができる。核酸分子は、例えば結合パートナーを介した特異的な相互作用によって固定化することができる。例えば、結合パートナーは、核酸分子、または、抗体、オリゴヌクレオチド、核酸分子、アプタマー、親和性結合タンパク質、脂質、炭水化物などのうちの1つ以上に結合するように構成されたオリゴヌクレオチドアダプターを含むことができる。適当な例としては、ビオチン化核酸分子に結合し得るストレプトアビジンがある。結合パートナーは、相互作用の任意の可能な組み合わせにより、例えば、物理的相互作用と化学的相互作用の組み合わせにより、タンパク質と核酸の相互作用の組み合わせなどにより、生物学的分析物を固定化することができる。
【0148】
支持体は、1つ以上の形成要素を含むことができ、多数の結合パートナーが支持体上の同じ形成要素に、例えば、数千、数万、数十万、数百万、数億、数千、またはそれ以上存在することができる。アレイは、上記の値の任意の2つによって定義される範囲内の数の結合剤を有することができる。場合によっては、単一の結合パートナーが単一のプライマー鋳型に結合してもよい。場合によっては、単一の結合パートナーが複数のプライマー鋳型に結合してもよい。場合によっては、複数の結合パートナーが単一のプライマー鋳型に結合してもよい。
【0149】
キット
本発明の一態様はキットを提供する。キットは、本明細書に記載の反応試薬の1つ以上を、基材、支持体、及び/または本方法を実施するための、及び/またはある場所から別の場所に材料を支持するための説明書などの任意の追加の要素とともに、好適には適当な容器内で保管、輸送、または提供することを可能にし得る。例えば、キットは、関連する反応試薬及び/または支持材料を収容する1つ以上の密封部材(例えば、箱)を含むことができる。かかる内容物は、意図される受け取り手に一緒にまたは別々に提供され得る。例えば、第1の容器は本発明で使用される核酸分子を収容することができ、第2、またはそれ以上の容器が本明細書に記載のヌクレオチド、ポリメラーゼ、及び/またはバッファーを収容することができる。
【0150】
キットはさらに、好適には本明細書に記載のプライマー鋳型が結合された支持体を含んでもよい。支持体は、例えば本明細書に記載されるように、支持体に結合された核酸分子の集団を含んでもよい。キットで提供される支持体は、上記のような支持体であってよい。キットは、本明細書に記載されるような1つ以上の支持体を含んでもよい。各支持体または各キットにおいて、核酸分子は、異なるオリゴヌクレオチド生成物を合成するための異なる鋳型を含むことができる。
【0151】
オリゴヌクレオチド生成物
本発明の方法は、第一に、鋳型配列から切断されて解離される一本鎖オリゴヌクレオチドの生成を目的とする。下流処理により、一本鎖オリゴヌクレオチドを使用して二本鎖のオリゴヌクレオチド生成物を生成することができる。
【0152】
第1の態様の方法によって生成されるオリゴヌクレオチドは、鋳型配列と実質的に同じ長さである。したがって、第1の態様の方法の工程i)~iv)により生成されるオリゴヌクレオチドの長さは、2~500ヌクレオチドの長さ、より好適には2~200ヌクレオチドの長さである。オリゴヌクレオチドは、例えば、5~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150または150~250ヌクレオチドの長さであってよい。
【0153】
オリゴヌクレオチドの長さは、切断、スプライシング、または組換えなどの下流処理の結果として大きくすることも小さくすることもできる。
【0154】
オリゴヌクレオチドを含む本発明の第1の態様の方法の生成物は、好適には、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の純度であり得る。したがって、本発明の第1の態様の方法によって生成される生成物に含まれる夾雑物は、好適には20、15、10または5%未満であり得る。夾雑物には、塩基置換、短縮化された配列、及び/または過度に伸長した配列(追加の塩基を含む)を含むオリゴヌクレオチドを含む生成物、または塩を含む生成物が含まれ得る。
【0155】
本明細書においてオリゴヌクレオチドと言う場合には、1つ以上のオリゴヌクレオチドが含まれる。したがって、本発明の方法は、1つ以上の目的のオリゴヌクレオチドを生成することができるが、伸長及び切断の複数のサイクルを必要とする。したがって、本発明の方法の生成物は、オリゴヌクレオチドの集団であり得る。好適には、集団は一本鎖オリゴヌクレオチドを含む。
【0156】
核酸配列の最もありふれた修飾の1つは、ホスホロチオエート(PS)結合の導入であり、リン酸基内の非架橋酸素原子の1つが硫黄に置き換えられるものである。このPS修飾により、オリゴヌクレオチドが核酸分解に対してより安定となり、タンパク質結合の増加により大きな薬物動態上の利点が得られる。リン酸をホスホロチオエートに置換すると、リン原子にキラル中心が形成される(SpまたはRp)。したがって、オリゴヌクレオチドにすべてのPS結合を導入すると、2セットのジアステレオ異性体が生成され、立体制御された合成がない場合、N量体のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが、そのいずれもが、異なる、潜在的に相反する物理的及び生化学的特性を有する2N-1種のジアステレオ異性体の分離不可能な混合物として得られる。2つの立体異性体はSとRで示される。ヌクレオチドのSp/Rp混合物が与えられる場合、本明細書で定義されるポリメラーゼはSp-dNTPのみを使用して、生成物を単一のジアステレオ異性体として与えることができる。
【0157】
オリゴヌクレオチドの集団は、混合されたジアステレオ異性体(SとR)の集団であってもよく、または実質的に単一の立体異性体であってもよい。集団は、実質的にS立体異性体またはR立体異性体であってもよい。実質的に単一の異性体とは、その集団が少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の単一の立体異性体を含むことを意味する。
【0158】
本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは、任意のオリゴヌクレオチド、例えば、工業的または治療的用途を有するもの、あるいは研究における用途または役割を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは酵素活性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは、例えばリボ核タンパク質複合体またはトランスファーRNAにおいて機械的機能を果たす。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは、アプタマーとして機能することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは、データ保存に使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって合成されるオリゴヌクレオチドは、治療用オリゴヌクレオチド、例えば、核酸(RNAまたはDNAのいずれか)を標的とするRNA、タンパク質を標的とするRNA、または治療用タンパク質をコードするRNAであってもよい。治療用RNAオリゴヌクレオチドには、i)その配列ではなくアプタマーの三次構造によって、タンパク質、ペプチド、炭水化物、その他の分子などのさまざまな標的に結合できる短い一本鎖核酸であるアプタマー、例えば、ペガプタニブ(Macugen、Bausch+Lomb Pharmaceutical Retina Portfolio)、Emapticap pegol(NOXXON Pharma)、olaptesed pegol(NOXXON Pharma)、及びREG1、ii)mRNA、例えば、欠損遺伝子/タンパク質を補うために患者にmRNAが投与される補充療法としてのmRNA(例えば、これらに限定されるものではないが、AZD8601(Moderna)、mRNA-3704(Moderna)、MRT5005(Translate Bio)、mRNA-2416、mRNA-2752、及びMEDI1191(moderna)、mRNA-2752、BNT131(SAR441000)、CV8102(CureVac)またはMEDI1191、(または治療用タンパク質を供給するためにmRNAが投与される);予防免疫を誘発するために特定の抗原をコードするmRNAを投与するワクチン接種(例えば、これらに限定されるものではないが、COVID-19ワクチンまたはがんワクチン;または、エクスビボで細胞にmRNAをトランスフェクトして細胞表現型または機能を変化させ、次いでこれらの細胞を患者に投与する細胞療法(例えば、これらに限定されるものではないが、TriMixベースの免疫療法(ECI-006)、MCY-M11(MaxCyte)、またはiii)RNase H依存性ASOまたはRNase H非依存性(立体ブロック)ASOのいずれかを含む一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、例えば、これらに限定されるものではないが、ヌシネルセン(スピンラザとしても知られている。lonis Pharmaceuticals)、エテプリルセン(Sarepta Therapeutics)及びイノテルセン(lonis Pharmaceuticals及びAkcea Therapeutics);及びRNAi(miRNAまたはsiRNA)(短い一本鎖DNA、ホスホロチオエートDNA、RNAアナログ、コンフォメーション的に制限されたヌクレオシド (ロック核酸、LNA)、または標的とするRNAの特定の領域に相補的なオリゴヌクレオチドであり、タンパク質の分解を促進したり、翻訳を阻害したりする)が含まれる。マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNAの翻訳を阻害するかまたはその分解を促進することによって複数のmRNAの発現を制御する小さなノンコーディングRNA分子である。siRNAは、前駆体siRNAに由来する小さなノンコーディングRNA二重鎖である。本発明の方法は、二本鎖オリゴヌクレオチドを生成するために使用することができ、例えば、それらを別々に合成し、適当な条件下でアニーリングすることができる。
【0159】
細胞
本発明の核酸分子、または本発明の核酸分子をコードする核酸配列を含む細胞または細胞集団が提供され得る。適当な哺乳動物細胞及び細菌細胞は当業者には周知のものである。
【0160】
本明細書の記載及び特許請求の範囲全体を通じて、「comprise(含む)」及び「contain(含有する)」なる語、及びそれらの変化形は、「限定されるものではないが、~を含む」を意味し、例えば、他の部分、添加剤、成分、整数または工程を除外することを意図してない(かつ除外しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通じて、文脈上、別途求められない限り、単数形は複数形を包含する。詳細には、不定冠詞が使用される場合、文脈上、別途求められない限り、明細書は単数だけでなく複数も考慮しているものとして理解されるべきである。
【0161】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載される要素、整数、特性、化合物、化学部分、または基は、特に不適合でない限り、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例に適用可能であるものとして理解されるべきである。本明細書(すべての付属の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示される要素のすべて、及び/または本明細書に開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程のすべては、これらの要素及び/または工程の少なくとも一部のものが互いに相容れない組み合わせを除き、あらゆる組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、いずれの上記の実施形態の詳細にも制限されない。本発明の範囲は、本明細書(すべての付属の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示される要素のあらゆる新規な1つ、またはあらゆる新規な組み合わせにまで、または本明細書に開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程のあらゆる新規な1つ、またはあらゆる新規な組み合わせにまで及ぶ。
【0162】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書より以前に出願され、本明細書とともに公衆の閲覧に公開されているすべての論文及び文書に差し向けられているが、すべてのかかる論文及び文書の内容を参照により本明細書に援用する。
【0163】
本明細書に記載される任意の1つの態様の特徴は、必要な変更を加えて他の態様にも適用される。
【実施例
【0164】
実施例
最初に市販の酵素を使用して伸長反応及び切断反応を単独で評価し、LC-MS分析によって生成物の特性評価を行った。超好熱始原菌(Thermococcus kodakaraensis)由来のポリメラーゼ(KOD)は、非修飾dNTP(1mM)によるヘアピン鋳型(表1aのT1、20μM)の伸長を効果的に触媒し、定量的変換率で二本鎖伸長生成物(E1、表1a)を生成した(図4A)。化学合成したE1の標準物質(表1a、20μM)と超好熱性細菌(Thermotoga maritima)由来のEndoV(TmEndoV)を使用して行った切断反応を完了させ、18マー生成物(P1、表1)と鋳型(T1、表1a)を得た(図4B)。次に、KOD、TmEndoV、T1(表1a、20μM)及びdNTP(1mM)を使用したワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応を行って、29μMのP1を得たが、これは、1.4サイクルの鋳型の伸長と切断に相当する(図4C)。
【0165】
基質(dNTP)添加量の増加がポリメラーゼ伸長及びエンドヌクレアーゼ切断反応に及ぼす影響を調べた。KODは、30mMのdNTPの存在下でT1を効率的に伸長することができた(図5)。NCBIデータベースのBLAST検索から同定されたTmEndoVホモログのパネル(表2)を、高濃度のdNTPの存在下での活性の向上についてスクリーニングした。Thermotoga neapolitana由来のTnEndoVは、高いdNTP濃度で最もよく機能し、30mMのdNTPの存在下でE1(表1、20μM)を効果的に加水分解した(図5B)。切断された生成物を鋳型から効果的に解離させ、鋳型の伸長と切断の複数回のサイクルを可能とするには、反応は生成物の融解温度より高い温度で行われることが好ましい。KOD及びTnEndoVは、それぞれ100℃超及び80.5℃の最適温度を有し(図6A)、最適反応温度70℃での24時間のプレインキュベーション後に伸長及び切断活性の100%及び62%を保持した(図6C~6D)。異なるヘアピン配列を有する鋳型のパネル(T1~9)もワンポットのポリメラーゼ-エンドヌクレアーゼ反応で評価した(図7)。生成物P1(表1a)の収量は、イノシンへの核酸塩基対合の変更(T1、T6及びT7、表1a)、ヘアピン配列(T5、表1a)、または5’-ビオチン化(T2、表1a)による影響をほとんど受けなかった。しかしながら、ヘアピンにビオチンを配置する(T3)か、またはヘアピンの長さを変えた(T8及びT9)場合、生成物の収量がわずかに減少した。最後に、ワンポット反応の効率に対するバッファー組成の影響を調べ、20mM Tris pH8、50mM KCl、12mM MgSO、10mM DTT、0.1%BSA、100mMアルギニン、100mMグルタミン酸を最適な反応バッファーとして選択した。最適化された反応条件を使用してワンポット反応を行い、P1の生成をHPLCで監視した。18時間後、システムは330サイクルの鋳型(1μM、0.3mol%)伸長と生成物の切断を完了し、0.33mMのP1(1.9g/Lに相当)を得た(図8)。
【0166】
治療用オリゴヌクレオチドの製造においてこのアプローチをさらに活用するには、薬学的に関連する修飾を有するヌクレオチド三リン酸構成単位に対する活性を有するポリメラーゼが必要である。Stoffel、KOD、9oNを含むポリメラーゼのパネルを評価を行うために選択した。2’-メトキシ及び2’-フルオロ修飾オリゴヌクレオチドを部分的に増幅するように事前に操作されたStoffelバリアント(SF4-6)も含めた(Chen et al.Nat.Chem.2016,8,556)。NCBIデータベースのBLAST検索により、Thermus filiformis(TfPol)及びMarinithermus hydrothermalis(MhPol)のStoffelホモログを同定し、SF4-6の基質乱交性を高めることが示されている点突然変異をTfPol及びMfPolに導入して、それぞれTfPol*及びMhPol*を得た。修飾ヌクレオチド三リン酸に対するポリメラーゼ活性を、FRETドナー(フルオレセイン)とFRETアクセプター(ローダミン)で修飾した鋳型を利用した時間分解FRETベースのアッセイを使用して評価した。反応は3つの天然のdNTPと1つの修飾NTPを用いて行った。鋳型を転写して修飾NTPの4つのコピーを組み込むことができる酵素は、鋳型の二次構造を破壊し、ドナーとアクセプターとの空間的な分離をもたらして蛍光シグナルを発生する。修飾ヌクレオチドの非存在下で行ったコントロール反応は蛍光を発生せず、高いレベルの酵素忠実度を示している。すべてのポリメラーゼは2’-フルオロ修飾NTPを受け入れた(図9)。2’-MeO-NTPはSF4-6の基質として知られており(Chen et al. Nat. Chem. 2016, 8, 556)、LNA-NTPはKOD及び9oNによって受け入れられることが知られている(Veedu et al. Mol. BioSyst., 2009, 5, 787)。天然のdNTPと比較した活性は、このアッセイの検出限界を下回っている。
【0167】
ポリメラーゼのパネルを、ヌクレオチドチオリン酸の単一のジアステレオ異性体(dNTPαS)に対する活性についてスクリーニングした。スクリーニングしたすべてのポリメラーゼは、Sジアステレオ異性体(S-dNTPαS)に対する活性を示したが、Rp-dCTPαS及びRp-dTTPαSのどちらも受け入れられなかった(図9)。バリアントSF4-6、TfPol*及びMhPol*は、2’-F-ATP及び2’-F-GTPのSジアステレオ異性体に対しても活性を示した。立体化学的に純粋な治療用オリゴヌクレオチドの合成における本発明者らによるアプローチの可能性を実証するため、3つの天然dNTPとSp-dNTPaSを使用してワンポットのポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応を行って単一のホスホロチエート結合(P2-P5)を含む生成物を生成した。酵素的に合成された生成物(P2-P5)と化学合成により生成されたジアステレオマー混合物との比較により、この生体触媒反応により、各生成物がジアステレオマー過剰率99%超で得られることを示した(図10a~d)。ポリメラーゼは立体化学の反転を伴って反応を進めることが知られているため、S-dNTPから生成される生成物にはR結合が含まれる。本発明者らは、ポリメラーゼの立体特異性を利用して速度論的分割を行い、dCTPαSまたはdATPαSのジアステレオマー混合物からオリゴヌクレオチド生成物を単一の立体異性体として生成することができた(図10e~h)。
【0168】
次に、EndoVのパネルを、2’-フルオロ(E2、表1a)、2’-メトキシ(E3、表1a)、及び2’-メトキシエトキシ(E4、表1)リボース修飾、ロック核酸(E5、表1a)及びホスホロチオエート結合(E6、表1)を含む化学合成した伸長鋳型(20μM)に対する活性についてスクリーニングした。評価したEndoVはいずれも、切断部位の3’末端に2’-リボース修飾を有するDNAの切断を触媒して予想された生成物P6~P10(表1a)を生成し、これらの生成物をLC-MSまたはPAGE分析によって確認した(図11及び12)。TmEndoV、TnEndoV、及びPfEndoVは、18時間以内に99%超の変換率でP1、P6~P9を生成したが、TnEndoVによって触媒された反応は最も速く、1時間以内にほぼ完全な変換率(>96%)が得られた(図12)。長いLNA配列は二次構造を歪めることが知られており、したがって、治療用オリゴヌクレオチドが3個を超える連続したLNAを含むことは稀であり、LNA修飾された伸長鋳型(E5)は、切断部位の3’末端に1個のみのLNAを含む。
【0169】
立体化学は、ホスホロチオエート結合で修飾された伸長鋳型(E6)の化学合成時には制御されず、立体異性体の複雑な混合物が生成された。ホスホロチオエート修飾DNAのEndoV触媒による切断により、予想された生成物P6(表1a)が収率約50%で得られた(図12及び図17)。TnEndoVの立体特異性を試験するため、KODとS-dNTPαSを酵素的に使用してR結合を含む伸長DNA鋳型(E11~E14)を生成した。オリゴヌクレオチドクリーンアップキット(Monarch)を使用して伸長鋳型を単離し、その後、TnEndoVとインキュベートした。PAGE分析は、切断反応が完了まで進行したことを示し、エンドヌクレアーゼがRホスホロチオエート結合を切断できることを示唆した(図17)。
【0170】
材料及び方法
材料
すべての化学物質と生物材料は商業供給業者から入手した。カナマイシン、過硫酸アンモニウム、IPTG、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン及びホウ酸は、Sigma-Aldrichより購入し、LB寒天、2xYT培地、アラビノース及びTris塩基は、Formediumより購入し、大腸菌5α、Q5DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、各制限酵素及びThermoPol反応バッファーは、New England BioLabsより購入し、大腸菌BL21(AI)及びDH10Bは、ThermoFisherより購入し、S-及びR-dNTPαS、及びSp-2’F dNTPは、Biolog Life Science Instituteより購入し、LNA-NTP、2’F-NTP、及びdNTPαS(S/R)1:1)は、Jena Bioscienceより購入し、2’MeO-NTPは、Trilink Biotechnologiesより購入し、各オリゴヌクレオチドはIntegrated DNA Technologies(IDT)により合成されたものであり、アクリルアミド/ビスアクリルアミドの19:1溶液は、Severn Biotech Ltd.より購入し、EDTAはNational Diagnosticsより購入し、尿素、ホルムアミド、ドデシル硫酸ナトリウムは、Fisher Scientificより購入し、ブロモフェノールブルーはAlpha Aesarより購入した。
【0171】
タンパク質の産生及び精製:
ポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼV(endoV)をコードする遺伝子は、大腸菌での発現用にコドン最適化されたものを、IDTよりg-blockとして注文した。TfPol*及びMhPol*遺伝子を、NdeI及びXhoI制限部位を使用してpET28にクローニングした。他のすべての遺伝子は、NdeI及びXhoI制限部位を使用してpET29にクローニングした。ポリメラーゼ及びEndoVを発現させるために、適切なプラスミドDNAで形質転換した化学的にコンピテントな大腸菌BL21AI細胞を使用して、50μg/ml-1のカナマイシンを含む5mlの2×YT培地に接種した。37℃で18時間インキュベートした後、スターター培養物(4mL)を使用して、50μgml-1カナマイシンを添加した400mlの2×YT培地に接種した。培養物を、600nmの光学密度(OD600)が0.6になるまで、37℃、200rpmでインキュベートした。IPTG(1mM)及びL-アラビノース(3.33mM)を添加してタンパク質発現を誘導し、培養物を37℃で4時間インキュベートした。細胞を遠心分離(8000rpm、20分間)によりペレット化し、上清を捨てた。細胞を溶解バッファー(20mMイミダゾールを含む50mM Hepes、300mM NaCl、pH7.5)に再懸濁し、超音波処理により溶解した。細胞溶解物を70℃で30分間加熱して内因性タンパク質を変性させた後、遠心分離(18,000rpmで20分間)によって清澄化した。Hisタグ付きタンパク質を、Ni-NTAアガロース(Qiagen)を使用したアフィニティークロマトグラフィーにかけ、250mMイミダゾールを含む50mM HEPES、300mM NaCl、pH7.5を使用して溶出した。精製タンパク質を10DG脱塩カラム(Bio-Rad)を使用して脱塩し、2×保存バッファー(20mM Tris-HCL、200mM KCl、0.2mM EDTA、2mM DTT、pH8.0)で溶出した。タンパク質濃度を、吸光係数を使用して280nmで測定した(補足表1及び2)。等分したタンパク質に1倍量のグリセロールを添加した後、-20℃で保存した。
【0172】
ポリメラーゼにより触媒される伸長反応の一般的な手順(図4A):
異なる修飾NTPに対するポリメラーゼの活性を比較するために、ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で鋳型(20μM)、dNTP(0.25mM)及びポリメラーゼ(0.2μM)を使用して分析的スケール生体内変換を行った。特に明記しない限り、反応物を70℃で12時間インキュベートし、各試料をHPLC、LC-MSまたはPAGEで分析した。修飾NTPの連続的な組み込みを調べるため、1mMの修飾NTPを使用した以外は記載に従って鋳型T18~T21を伸長させた。最初のアッセイは、市販のKOD(Merck、2.5単位)を使用した以外は記載に従って行った。エンドヌクレアーゼにより触媒される切断反応の一般的な手順(図4B):
異なる修飾オリゴヌクレオチドに対する各EndoVの活性を比較するために、ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で伸長鋳型(20μM)及びEndoV(2μM)を使用して分析的スケール生体内変換を行った。特に明記しない限り、反応物を70℃で12時間インキュベートし、各試料をHPLC、LC-MSまたはPAGEで分析した。EndoV活性に対する基質(dNTP)量の増加の影響を調べるため、dNTP(合計0~60mM)を加えて、記載されるようにして生体内変換を行った。最初のアッセイは、市販のTmEndoV(ThermoFisher、5単位)を使用したこと以外は記載に従って行った。
【0173】
ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応の一般手順:
鋳型配列の影響を比較するため、ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCL、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で鋳型(20μM)、dNTP(1mM)、KODポリメラーゼ(0.2μM)及びTnEndoV(2μM)を使用して分析スケールの生体内変換を行った。特に明記しない限り、反応物を70℃で12時間インキュベートし、各試料をHPLC、LC-MSまたはPAGEで分析した。最初のアッセイは、市販のKOD(Merck、2.5単位)、TmEndoV(ThermoFisher、5単位)、及びdNTP(それぞれ0.25mM)を使用したこと以外は記載に従って行った。P19~P32の合成の反応条件を表4に示す。
【0174】
単一の立体異性体としてのPS修飾オリゴヌクレオチドの合成
ワンポットのKOD(0.1μM)及びTnEndoV(2μM)の反応を、鋳型T10~T13(10μM)、3つのdNTP(それぞれ1.4mM)、及び1つのS-dNTPαS(0.7mM)またはRp/Sp dNTPαSミックス(0.7mM)を使用して行った。反応物を70℃で12時間インキュベートし、HPLCで分析して化学合成した標準と比較した。
【0175】
P1合成の最適化条件
さまざまな組成と濃度の一連のバッファーを、生成物の収量に関して評価した。反応では以下の成分を変えた:緩衝塩(Tris-HCl、Tris-AcOH、HEPES-KOH、Bicine-HCL、pH8.0)、金属イオン(MgSO、MgCl、MgOAc、CaCl)、アミノ酸(グルタミン酸、アルギニン、プロリン、グリシン、セリン、アスパラギン酸、pH8)及び添加剤(クエン酸ナトリウム、(NHSO、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、KCl、KOAc、グリセロール、1,2-プロパノール、スクロース、トレハロース、アセチル化BSA、Tween-20、TritonX-100、DTT、ホルムアミド、DMSO及びPEG-3000)。T1(1μM)及びdNTP(それぞれ4mM)を使用したKOD(2pM)及びTnEndoV(2pM)により触媒されるP1増幅の最適化された反応条件は、20mM Tris-HCL(pH8)、20mM MgCl、100mM アルギニン-HCL(pH8)、100mM グルタミン酸-KOH(pH8)、DTT(10mM)、ホルムアミド(10%)、トレハロース(0.2M)、1,2-プロパンジオール(1M)及びアセチル化BSA(0.01mg/ml)である。これらの条件下で、330サイクルの鋳型伸長と生成物の切断が実現された(図8)。
【0176】
P1の分取スケールの合成
5mlスケールの生体内変換を、最適化された反応バッファー(20mM TrisHCl、20mM MgSO、100mM KGIu、100mM ArgHCl、0.01mg/ml AcBSA、10mM DTT、10%ホルムアミド、0.2M トレハロース、1M 1,2-プロパンジオール、pH8.0)中で、dNTP(それぞれ4mM)、T2(4μM)、KOD(2μM)及びTnEndoV(2μM)を使用して行った。70℃で12時間インキュベートした後、0.5M EDTA pH8(最終濃度40mM)を加えて反応を停止させた。タンパク質を98℃で2時間加熱して変性させ、遠心分離(13,300rpmで15分間)によってペレット化した。オリゴヌクレオチドを含む上清を回収し、タンパク質ペレットを水(1000μl)で洗浄した。合わせた水性画分を6mlのTris飽和フェノール:クロロホルム:イソアミル溶液(Sigma Aldrich)で抽出し、クロロホルムで洗浄した。残留タンパク質を、10K MWCO限外濾過装置(Sartorius)を使用して除去した。フロースルーを回収し、濃縮し、3K MWCO限外濾過装置(Merck Millipore)を使用して脱塩した。最終生成物を凍結乾燥した。図13)。
【0177】
結果:最終生成物P1は、クロマトグラフィー精製を行わずに88%の純度(11.5mg)で得られた。
【0178】
加水分解を受けるホスホロチオエート中心におけるTnEndoVの立体選択性
立体定義された伸長鋳型を、ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM (NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で、鋳型T14~T17(20μM)、S-dNTPαS(それぞれ0.25mM)及びKOD(0.2μM)を使用して合成した。反応物を70℃で12時間インキュベートし、試料をPAGEで分析した。伸長されたオリゴヌクレオチド生成物を、Monarch 5μg DNACleanupキット(NewEnglandBiolabs)を製造業者のプロトコールに従って使用して精製した。酵素的に合成されたオリゴヌクレオチド(20μM)を、ThermoPolバッファー中でTnEndoV(2μM)と70℃で12時間インキュベートした。比較のために、化学的に合成した立体不規則なオリゴヌクレオチドも記載に従ってTnEndoVとインキュベートした。試料をPAGEで分析した。
【0179】
クロマトグラフィー分析:
クロマトグラフィー分析では、20mM EDTAを加えて反応を停止し、1倍量の水を加え、各試料を98℃で2時間加熱してタンパク質を変性させた。沈殿したタンパク質を遠心分離(14,000g、5分間)により除去し、上清を試料バイアルに移した。
【0180】
AdvanceBioオリゴヌクレオチド2.7μmカラム、50×2.1mm(Agilent)を用いて1290 Infinity II Agilent LCシステムを使用してイオンペアリング逆相クロマトグラフィーを60℃で行った。5%バッファーBで2分間保持した後、0.6mL分-1で5~50%バッファーBの勾配を使用して10分間かけてオリゴヌクレオチドを溶出し、その後、開始条件に5分間再平衡化した後、次の試料を注入した。各ピークは化学合成された標準との比較によって指定され、AgilentOpenLabソフトウェアを使用してピーク面積を積分した。相対モル吸光係数を、完了まで進行した反応から計算し(補足表3)、これらの値を用いて不完全な反応の変換率(%)を計算した。ホスホロチオエート修飾を伴う反応については、対応するリン酸化生成物の相対モル吸光係数を使用した。
【0181】
バッファーB:25%アセトニトリルを含む100mM酢酸トリエチルアンモニウム
バッファーA:100mM酢酸トリエチルアンモニウム
2.2kVキャピラリーでネガティブESIモードで動作するWatersVionIMSQTOFを使用してLC-MS分析を行い、最大2000m/zまで取得した。これを、DNAPac(商標)RP4μmカラム、50×2.1mm(ThermoFisher)を備えたWaters Acquity I Class UPLCに65℃で接続した。30%バッファーBで2分間保持した後、0.3mL分-1で30~80%バッファーBの勾配を使用して8分間かけてオリゴヌクレオチドを溶出し、その後、開始条件に5分間再平衡化した後、次の試料を注入した。得られた多重荷電スペクトルをWaters Unifiソフトウェアを使用して分析し、MaxEnt1アルゴリズムを使用して4000~20000Daの間でデコンボリューションした。
【0182】
バッファーB:50%メタノールを含む、400mMヘキサフルオロイソプロパノール、15mMトリエチルアミンの水溶液
バッファーA:400mMヘキサフルオロイソプロパノール、15mMトリエチルアミンの水溶液
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)による分析:
18ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドの分析用には、1×TBEバッファー(0.1M Tris塩基、0.1Mホウ酸、2mM EDTA)中に15%アクリルアミド/ビス-アクリルアミド及び8M尿素を含むTBE-尿素アクリルアミドゲルを調製した。18ヌクレオチドよりも短いオリゴヌクレオチドの分析用には、1×TBEバッファー(0.1M Tris塩基、0.1Mホウ酸、2mM EDTA)中に20%アクリルアミド/ビス-アクリルアミド、8M尿素を含むTBE-尿素アクリルアミドゲルを調製した。過硫酸アンモニウム(最終濃度0.1%w/v)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(最終濃度4.7μM)を加えることによって重合を開始した。2μlの量の試料を2×変性RNAローディング色素(95v/v%のホルムアミド、0.02w/v%のドデシル硫酸ナトリウム、1mM EDTA、0.02w/v%のブロモフェノールブルー)及び水と混合して、最終量を10μlとした。ロードする前に、試料を95℃で1分間変性させた。ゲルを室温、1×TBE中、200Vで50分間泳動し、200mg/Lのメチレンブルー水溶液で可視化した。
【0183】
酵素活性に対する基質(dNTP)量の増加の影響(図5A~C):
KOD活性に対するdNTP濃度の影響を調べるため、dNTP濃度を変化させた(10~40mM)以外は「ポリメラーゼにより触媒される伸長反応の一般的な手順」の記載に従って生体内変換を行った。TnEndoV及びTmEndoVに対するdNTP濃度の影響を調べるため、さまざまな濃度のdNTP(TnEndoV及びTmEndoVについてそれぞれ0~50mM及び0~3mM)を加えた以外は「エンドヌクレアーゼにより触媒される切断反応の一般的な手順」の記載に従って反応を行った。試料をPAGEで分析した。
【0184】
タンパク質サーマルシフトアッセイ(図6A
SYPRO OrangeをThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中のタンパク質(5μM)に50倍の最終濃度となるまで加えた。試料を25℃で45分間インキュベートした後、CFX96TouchリアルタイムPCR(BioRad)を使用して0.5℃刻みで95℃まで加熱した。蛍光の導関数を、CFX Maestroソフトウェアを使用して計算した。
【0185】
ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応に対する反応温度の影響(図6B
製品収量に対する温度の影響を調べるため、反応をさまざまな温度(60~85℃)でインキュベートした以外は「ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応の一般手順」の記載に従って生体内変換を行った。
【0186】
KOD及びTnEndoVの温度プロファイル(図6C~D)
反応におけるKOD及びTnEndoVの熱安定性を評価するため、サーモサイクラー(BioRad)で70℃にて0時間または24時間プレインキュベートした酵素溶液を使用して、分析スケールの生体内変換を行った。KOD(0.2μM)により触媒される伸長反応を、ThermoPolバッファー中のT1(20μM)及びdNTP(4mM)を使用して行った。TnEndoV(2μM)により触媒される切断反応を、ThermoPolバッファー中でE1(20μM)を使用して行った。反応物を70℃でインキュベートし、15分、30分、45分及び1時間の時点で試料を採取し、20μM EDTAを加えて反応を停止し、HPLCで分析した。
【0187】
ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応に対する温度ヘアピン配列の影響(図7
生成物収量に対するヘアピン配列の影響を評価するため、鋳型T1~T9(20μM)を使用した以外は「ワンポットポリメラーゼ-エンドヌクレアーゼ反応の一般手順」の記載に従って生体内変換を行った。
【0188】
ワンポットポリメラーゼエンドヌクレアーゼ反応の最適化手順(図8
鋳型(4μM)、dNTP(16mM)、ポリメラーゼ(0.2μM)及びEndoV(2μM)を、バッファー(20mM Tris pH8、50mM KCl、12mM MgSO、10mM DTT、0.1%BSA、100mM アルギニン、100mM グルタミン酸)中で70℃で12時間インキュベートした。試料を採取し、HPLCで分析した。
【0189】
時間分解FRETベースのポリメラーゼアッセイ(図9
Thermopolバッファー(15μL)中にFRET鋳型(400nM)、FRETプライマー(500nM)及びdNTP(それぞれ2.5mM)を含む黒色の384ウェルプレート(Greiner)でアッセイを行った。
【0190】
4000rpmで2分間遠心分離して気泡を除去した。試料を37℃で20分間インキュベートした後、ポリメラーゼ(5μl、最終濃度0.25μM)を加えて反応を開始した。Clariostarプレートリーダー(BMG)で485nmで励起、518nmで発光を行い、60分間蛍光を測定した。初期反応速度を3連で測定し、修飾基質に対する反応速度を天然dNTPに対する活性と比較して報告した。
【0191】
単一のホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドの立体選択的合成(図10)。
【0192】
KOD(0.1μM)、TnEndoV(2μM)、10μM鋳型、及び3つの天然dNTPと1つのdNTPaSを含む5mMのdNTPミックス(S-dNTPまたはR/S-dNTPミックス)を使用してワンポット反応を行った。反応物を70℃で12時間インキュベートし、HPLCで分析した。
【0193】
エンドヌクレアーゼVパネルの基質プロファイリング(図11及び12)
ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で伸長鋳型(20μM)及びEndoV(5μM)を使用して分析スケールの生体内変換を行い、反応物を70℃でインキュベートした。試料を1時間と18時間に採取し、20mM EDTAを加えて反応を停止した。PAGE、HPLC、LC-MS分析によって試料を分析した。
【0194】
ポリメラーゼの基質プロファイリング(図14及び15)
異なる修飾NTPに対するポリメラーゼの活性を比較するために、ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で鋳型T18~T21(20μM)、NTP(それぞれ0.25mM)及びポリメラーゼ(0.2μM)を使用して分析的スケール生体内変換を行った。反応物を70℃でインキュベートし、試料をLC-MS及び変性尿素PAGEによって分析した。
【0195】
結果:ホスホロチオエート、2’-フルオロ、2’-メトキシ、及びロックされた核酸で修飾されたNTPに対して活性を有するポリメラーゼが同定された。
【0196】
コバルト及びマンガン補因子を使用したRp-dNTPαSに対するポリメラーゼ活性(図20
分析スケールの伸長反応を、CoClまたはMgCl塩を添加した20mM Tris-HClpH8、10mM KCl、10mM (NHSO、対応するR-dNTPαS中で鋳型T18~T21(10μM)及びKOD(6μM)を使用して行った。反応物を70℃で12時間インキュベートし、試料を変性尿素PAGE及びLC-MS分析で分析した。
【0197】
結果:CoClの存在下で、KODはR-dNTPαS構成単位を受け入れることができる。
【0198】
水に対する代替求核試薬を使用したエンドヌクレアーゼにより触媒される切断(図21
60%w/vグリセロール、40%w/vエチレングリコール、60%w/v1,2-プロパンジオールまたは60%w/v1,3-ジアミノプロパノールを添加したThermoPolバッファー(20mM Tris-HCl、10mM (NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中でTnEndoV(2μM)及び伸長鋳型E1(20μM)を使用して分析スケールの生体内変換を行った。反応物を70℃で2時間インキュベートし、LC-MSで分析した。
【0199】
結果:MS分析により、高濃度の求核試薬の存在下で、EndoVが18量体生成物の5’-リン酸基への代替求核試薬の付加を触媒することが示された。これにより、特定の臓器への標的化送達を行うための抗体、ペプチド、タンパク質、または糖などの送達担体との結合に適した修飾オリゴヌクレオチドが得られた。修飾された18量体はマイナーな生成物であるものの、指向性進化を利用してEndoVを操作することにより収率を向上させることができる。
【0200】
ワンポットのポリメラーゼ/EndoV触媒によるオリゴヌクレオチド合成の一般的なプロトコール(図18及び22)
ThermoPolバッファー(20mM Tris-HCL、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%TritonX-100、pH8.8)中で鋳型(20μM)、dNTP(それぞれ1mM)、KOD(0.2μM)及びTnEndoV(2μM)を使用して分析スケールの生体内変換を行った。反応物を70℃で12時間インキュベートし、試料をLC-MS及び変性尿素PAGEによって分析した。P19~P32の合成の反応条件を補足表3に示す。
【0201】
結果:異なる塩基配列とさまざまな2’F、R-PS、R-2’F-PS、及びLNA修飾を有する一連の8量体オリゴヌクレオチド生成物が支障なく増幅された。良好な場合では、最大238サイクルの鋳型伸長と生成物の切断が実現され、NTP出発物質の76%が消費された。
【0202】
ビトラベンの分取スケールの合成(図19
0.75mlスケールの生体内変換を、50mM TrisAcOH、20mM MgSO、50mM KOAc、100mM KGIu、100mM ArgHCl、0.01mg/ml AcBSA、0.1%TritonX-100、30mM DTT、5%ホルムアミド、pH8.0を含むバッファー中で、S-dGTPαS(1.4mM)、S-dCTPαS(1.7mM)、S-dTTPαS(2.9mM)、鋳型T25(4μM)、KOD(4μM)及びTnEndoV(4μM)を使用して行った。70℃で12時間インキュベートした後、98℃で2時間加熱することにより反応を停止させた。反応混合物を1K MWCO MicrosepAdvance(Pall)で脱塩した。DNAse I(最終濃度60U/ml)(New England Biolabs)及びDNAse I 10×バッファー(最終濃度1×)を加えることによって鋳型を除去し、37℃で1時間インキュベートした。DNAseIを75℃で10分間加熱により不活化し、反応混合物を1K MWCO MicrosepAdvanceで再び脱塩した。続いて、quickCIP(最終濃度250U/ml)(New England Biolabs)及び10×QuickCIPバッファー(最終濃度1×)を加えて5’末端リン酸基を除去した後、37℃で3時間インキュベートした。試料を95℃で20分間インキュベートすることによってタンパク質を熱変性させ、沈殿したタンパク質を遠心分離(13,300rpmで15分間)によってペレット化した。オリゴヌクレオチドを含む上清を回収し、タンパク質ペレットを水(200pl)で洗浄した。合わせた水性画分をTris飽和フェノール-クロロホルム-イソアミル溶液(SigmaAldrich)で抽出し、クロロホルムで洗浄して残留タンパク質を除去した。有機不純物及び塩の微量残留物を、1K MWCO MicrosepAdvanceで生成物を洗浄することによって除去した。最終生成物を凍結乾燥した。
【0203】
結果:65サイクルの鋳型伸長と生成物の切断後に最終生成物(0.26mM)が生成され、これは、利用可能なS-dNTPαS出発物質の90%が消費されたことと相関する。最終生成物は、クロマトグラフィー精製を行わずに87%の純度で単離された。
【0204】
配列
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】

【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】

【表4】

【表5】
【0205】
バッファーA:20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニンHCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、10mM DTT、0.2M トレハロース及び1M 1,2-プロパンジオール
バッファーB:50mM Tris-AcOH(pH8)、20mM MgSO、50mM KOAc、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニンHCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、0.1% Triton X-100(登録商標)及び30mM DTT
バッファーCは、20mM Tris-HCl(25℃でpH 8.8)、10mM (NH4)2SO4、10mM KCI、2mM MgSO4、0.1%Triton(登録商標)X-100及び2mM NiCI
バッファーD:20mM Tris-HCl(pH8)、20mM MgCl、100mM グルタミン酸カリウム、100mM アルギニンHCl、0.01mg/ml アセチル化BSA、10mM DTT
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13A
図13B-1】
図13B-2】
図14A-1】
図14A-2】
図14A-3】
図14B-1】
図14B-2】
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図18-4】
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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【国際調査報告】