(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】配電制御
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241008BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516927
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022043895
(87)【国際公開番号】W WO2023044069
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521241133
【氏名又は名称】ヘイラ テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】Heila Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】444 Somerville Avenue, Somerville, MA 02143, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,ジョージ,エリゾンド
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE09
(57)【要約】
分散型エネルギーリソース(DER)コントローラを使用してマイクログリッドを動作させる方法は、DERの出力電力値を決定する。そして、前記方法は、第2DERコントローラからリモート電力補正値を取得する。さらに、前記方法は、出力電力値とリモート電力補正値との関数としてのローカル出力電力基準値を決定する。さらに、前記方法は、ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての周波数設定点を決定する。さらに、前記方法は、周波数設定点の関数としてのDERの出力周波数を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドを動作させる方法であって、
第1分散型エネルギーリソース(DER)コントローラを用いて、DERの出力電力値を決定することと、
前記第1DERコントローラを用いて、第2DERコントローラからリモート電力補正値を取得することと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記出力電力値と前記リモート電力補正値との関数としてのローカル出力電力基準値を決定することと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての周波数設定点を決定することと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記周波数設定点の関数としての前記DERの出力周波数を調整することと、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記ローカル出力電力基準値を決定することは、
ローカル電力補正値と前記リモート電力補正値との関数としてのグローバル電力補正値を決定することと、
前記グローバル電力補正値と前記出力電力値との関数としての前記ローカル出力電力基準値を決定することと、
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力電力値と以前のローカル出力電力基準値との関数としてのローカル電力補正値を決定することと、
前記第2DERコントローラに前記ローカル電力補正値を送信することと、
前記第2DERコントローラを用いて、第2DERの出力電力と、前記第1DERコントローラから取得した前記ローカル電力補正値と、の関数としての、第2ローカル出力電力基準値を決定することと、
前記第2DERコントローラを用いて、前記第2ローカル出力電力基準値と第2ドループ係数との関数としての、第2周波数設定点を決定することと、
前記第2DERコントローラを用いて、前記第2周波数設定点の関数としての、前記第2DERの第2出力周波数を調整することと、
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2DERコントローラを用いて、前記第2出力周波数を用いて前記マイクログリッドの前記第2DERを動作させつつ、
前記第1DERコントローラを用いて、前記第1出力周波数を用いて前記マイクログリッドの前記第1DERを動作させることを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1出力周波数を調整すること、および、前記第2出力周波数を調整することは、
前記第1周波数設定点に従って前記第1DERを動作させること、および、前記第2周波数設定点に従って前記第2DERを動作させることを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
共通接続電力変換器の点を用いて、前記マイクログリッドと電力システムとの間において電力を伝送することを含んでおり、
前記マイクログリッドとユーティリティグリッドとの間において電力を伝送する期間において、前記第1出力周波数の調整および前記第2出力周波数の調整がなされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記周波数設定点を決定することは、
下記の式、
【数1】
を使用することを含んでおり、
P
i
*は、前記ローカル出力電力基準値であり、
m
piは、前記ドループ係数であり、
fは、前記DERの出力周波数であり、
f
0iは、前記周波数設定点である、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分散型エネルギーリソースコントローラを含んでいるシステムであって、
前記分散型エネルギーリソースコントローラは、
複数のマイクログリッドコントローラと通信する入出力デバイスと、
少なくとも1つの処理デバイスと、
命令を格納するメモリデバイスと、を備えており、
前記命令は、少なくとも1つの前記処理デバイスによって実行された場合に、
DERの出力電力値を決定し、
第2DERコントローラからリモート電力補正値を取得し、
前記出力電力値と前記リモート電力補正値との関数としてのローカル出力電力基準値を決定し、
前記ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての周波数設定点を決定し、
前記周波数設定点の関数としての前記DERの出力周波数を調整するように、
設定されている、システム。
【請求項9】
前記ローカル出力電力基準値を決定することは、
ローカル電力補正値と前記リモート電力補正値との関数としてのグローバル電力補正値を決定することと、
前記グローバル電力補正値と前記出力電力値との関数としての前記ローカル出力電力基準値を決定することと、
を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、
前記第1DERコントローラに対応する前記第1DERと、
前記第2DERコントローラと、
前記第2DERコントローラに対応する第2DERと、を備えており、
前記第1DERコントローラは、
前記出力電力値と以前のローカル出力電力基準値との関数としてのローカル電力補正値を決定し、
前記ローカル電力補正値を前記第2DERコントローラに送信し、
前記第2のDERコントローラは、
前記第2DERの出力電力と、前記第1DERコントローラから取得した前記ローカル電力補正値と、の関数としての、第2ローカル出力電力基準値を決定し、
前記第2ローカル出力電力基準値と第2ドループ係数との関数としての、第2周波数設定点を決定し、
前記第2周波数設定点の関数としての、前記第2DERの第2出力周波数を調整する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1出力周波数を調整すること、および、前記第2出力周波数を調整することは、
前記第1周波数設定点に従って前記第1DERを動作させること、および、前記第2周波数設定点に従って前記第2DERを動作させることを含んでいる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、前記マイクログリッドと電力システムとの間において電力を伝送する共通接続電力変換器の点を含んでおり、
前記共通接続電力変換器が前記マイクログリッドと前記電力システムとの間において電力を伝送している期間において、前記第1出力周波数の調整および前記第2出力周波数の調整がなされる、請求項10の記載のシステム。
【請求項13】
前記リモート電力補正値は、前記第2DERコントローラを含む複数のDERコントローラによって決定された複数の電力補正値の集合を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記周波数設定点を決定することは、
下記の式、
【数2】
を使用することを含んでおり、
P
i
*は、前記ローカル出力電力基準値であり、
m
piは、前記ドループ係数であり、
fは、前記DERの出力周波数であり、
f
0iは、前記周波数設定点である、
請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
マイクログリッドを動作させるコンピュータシステムにおいて使用されるコンピュータプログラムプロダクトであって、
前記コンピュータプログラムプロダクトは、コンピュータ可読プログラムコードを有する有形の非一時的なコンピュータ使用可能媒体を含んでおり、
前記コンピュータ可読プログラムコードは、
第1分散型エネルギーリソース(DER)コントローラを用いて、DERの出力電力値を決定するためのプログラムコードと、
前記第1DERコントローラを用いて、第2DERコントローラからリモート電力補正値を取得するためのプログラムコードと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記出力電力値と前記リモート電力補正値との関数としてのローカル出力電力基準値を決定するためのプログラムコードと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての周波数設定点を決定するためのプログラムコードと、
前記第1DERコントローラを用いて、前記周波数設定点の関数としての前記DERの出力周波数を調整するためのプログラムコードと、
を含んでいる、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項16】
前記ローカル出力電力基準値を決定するためのプログラムコードは、
ローカル電力補正値と前記リモート電力補正値との関数としてのグローバル電力補正値を決定することと、
前記グローバル電力補正値と前記出力電力値との関数としての前記ローカル出力電力基準値を決定することと、
を含んでいる、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項17】
前記マイクログリッドの第2DERコントローラが、前記第2出力周波数を用いて第2DERを動作させる期間において、前記第1DERコントローラを用いて、前記第1出力周波数を用いて前記マイクログリッドの前記第1DERを動作させるためのプログラムコードを含んでいる、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項18】
前記第1出力周波数を調整するためのプログラムコードは、前記第1周波数設定点に従って前記第1DERを動作させることを含んでいる、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項19】
前記マイクログリッドがユーティリティグリッドに電気的に接続されている期間において前記出力周波数を調整するためのプログラムコードを含んでいる、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項20】
前記周波数設定点を決定するプログラムコードは、
下記の式、
【数3】
を含んでおり、
P
i
*は、前記ローカル出力電力基準値であり、
m
piは、前記ドループ係数であり、
fは、前記DERの出力周波数であり、
f
0iは、前記周波数設定点である、
請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[優先権]
本特許出願は、2021年9月16日に出願された、「DECENTRALIZED ALGORITHMS FOR RESILIENT AND AUTOMATED DER SYSTEMS」というタイトルが付されており、かつ、Jorge Elizondo Martinezが発明者として記名されている米国特許仮出願番号63/244,792の優先権を主張している。当該仮出願の開示の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[分野]
本発明の例示的な実施形態は、電力システムに全般的に関する。より詳細には、本発明の様々な実施形態は、分散型エネルギーリソース制御に関する。
【0003】
[背景]
電気的なユーティリティグリッドは、家庭、企業、および他の建築物を電源に接続する。グリッドの脆弱性(grid vulnerability)がネットワーク全体に迅速に波及するおそれがあるので、この相互接続性には制御および計画を要する。集約された分散型エネルギーリソース(distributed energy resource,DER)のシステム、すなわちDERシステムは、マイクログリッドとして知られているグリッドサブシステムを形成するために使用される場合がある。マイクログリッドは、制御されている発電設備および蓄電設備のクラスタに加えて、負荷を含んでいる。マイクログリッドは、ユーティリティグリッドに電力を供給でき、メイングリッドから切り離された状態で動作することもできる。これにより、マイクログリッドと同じく、ユーティリティグリッドの効率および信頼性も向上する。
【0004】
米国エネルギー省は、マイクログリッドの正式な定義を、「グリッドに対する単一の制御可能なエンティティとして機能する、明確に定められた電気的境界を伴う、負荷および分散型エネルギーリソースを含んでいる相互接続されたアセットのグループ」として示している。多くの場合、マイクログリッドは、分散型発電機(例:ディーゼル発電機、ガスタービンなど)およびバッテリ(電池)とともに、ソーラーパネルまたは風力タービンなどの再生可能リソースを有している。
【0005】
[様々な実施形態の概要]
本発明の一実施形態によれば、マイクログリッドを動作させる方法は、第1分散型エネルギーリソース(DER)コントローラを用いて、DERの出力電力値を決定する。前記方法は、前記第1DERコントローラを用いて、第2DERコントローラからリモート電力補正値(remote power correction value)を取得(受信)する。前記方法は、前記第1DERコントローラを用いて、前記出力電力値と前記リモート電力補正値との関数としてのローカル出力電力基準値(local output power reference value)を決定する。前記方法は、前記第1DERコントローラを用いて、前記ローカル出力電力基準値と前記ドループ係数の関数としての周波数設定点(frequency set point)を決定する。前記方法は、前記第1DERコントローラを用いて、前記周波数設定点の関数としての前記DERの出力周波数を調整する。
【0006】
一部の実施形態では、前記ローカル出力電力基準値を決定することは、(i)前記ローカル電力補正値と前記リモート電力補正値の関数としてのグローバル電力補正値(global power correction value)を決定することと、(ii)前記グローバル電力補正値と前記出力電力値との関数としての前記ローカル出力電力基準値を決定することと、を含んでいる。
【0007】
前記方法は、前記出力電力値と以前の(previous)ローカル出力電力基準値との関数としてのローカル電力補正値を決定してよい。前記方法は、前記第2DERコントローラに前記ローカル電力補正値を送信してよい。前記方法は、前記第2DERコントローラを用いて、第2DERの出力電力と、前記第1DERコントローラから取得した前記ローカル電力補正値と、の関数としての、第2ローカル出力電力基準値を決定してもよい。前記方法は、前記第2DERコントローラを用いて、前記第2ローカル出力電力基準値と第2ドループ係数との関数としての、第2周波数設定点を決定してもよい。そして、前記方法は、前記第2DERコントローラを用いて、前記第2周波数設定点の関数としての、前記第2DERの第2出力周波数を調整してよい。
【0008】
リモート電力補正値は、複数の電力補正値の集合(aggregation)を含みうる。当該電力補正値は、1つ以上のPCCコントローラまたはDERコントローラによって決定されるのみならず、除去電力補正値を送信するDERコントローラによっても決定される。
【0009】
前記方法は、(i)前記第2DERコントローラを用いて、前記第2出力周波数を用いて前記マイクログリッドの前記第2DERを動作させつつ、(ii)前記第1DERコントローラを用いて、前記第1出力周波数を用いて前記マイクログリッドの前記第1DERを動作させうる。一部の実施形態では、前記第1出力周波数を調整すること、および、前記第2出力周波数を調整することは、前記第1周波数設定点に従って前記第1DERを動作させること、および、前記第2周波数設定点に従って前記第2DERを動作させることを含んでいる。
【0010】
一部の実施形態では、前記方法は、共通接続電力変換器(common coupling power converter)の点を用いて、前記マイクログリッドと電力システムとの間において電力を伝送する。そして、前記マイクログリッドとユーティリティグリッドとの間において電力を伝送する期間において、前記第1出力周波数の調整および前記第2出力周波数の調整がなされる。
【0011】
一部の実施形態では、前記周波数設定点を決定することは、(i)前記ローカル出力電力基準値であるPi
*と、(ii)前記ドループ係数であるmpiと、(iii)前記DERの出力周波数であるfと、(iv)前記周波数設定点であるf0iと、を含む式を使用することを含んでいる。
【0012】
例示的な実施形態は、DERコントローラを含んでいるマイクログリッドシステムとして実現される。前記DERコントローラは、(i)複数のマイクログリッドコントローラと通信するように構成されている入出力デバイス(input/output device)と、(ii)少なくとも1つの処理デバイスと、(iii)命令を格納(記憶)するように構成されているメモリデバイスと、を有している。前記命令は、少なくとも1つの前記処理デバイスによって実行された場合に、(i)DERの出力電力値を決定し、(ii)第2DERコントローラからリモート電力補正値を取得するように設定されている。そして、前記命令は、前記出力電力値と前記リモート電力補正値の関数としてのローカル出力電力基準値を決定するように設定されている。そして、前記命令は、(i)前記ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての周波数設定点を決定し、(ii)前記周波数設定点の関数としての前記DERの出力周波数を調整するように設定されている。一部の実施形態では、前記システムは、(i)前記第1DERコントローラに対応する前記第1DERと、(ii)前記第2DERコントローラと、(iii)前記第2DERコントローラに対応する第2DERと、を含んでいる。一部の実施形態では、前記システムは、前記マイクログリッドと電力システムとの間において電力を伝送するように設定されている共通接続電力変換器の点を含んでいる。
【0013】
例示的な実施形態は、コンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能媒体を含んだコンピュータプログラムプロダクトとして実現される。コンピュータ可読プログラムコードは、従来のプロセスに従って、コンピュータシステムによって読み取られ、かつ、利用されてよい。
【0014】
[図面の簡単な説明]
当業者であれば、下記の通り概要が示されている図面を参照して説明されている、以降の「例示的な実施形態の説明」から、本発明の様々な実施形態の利点をより十分に理解できるであろう。
【0015】
図1~
図2は、様々な実施形態に係るマイクログリッドの例を概略的に示す。
【0016】
図3A~
図3Cは、様々な実施形態に係るマイクログリッド制御アーキテクチャの例を概略的に示す。
【0017】
図4は、様々な実施形態に係るアセットマネージャの例を概略的に示す。
【0018】
図5は、様々な実施形態に係るマイクログリッドの例を概略的に示す。
【0019】
図6は、様々な実施形態に係る電力システムを制御するためのプロセスの例を示す。
【0020】
図7は、様々な実施形態に係るネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャの例を概略的に示す。
【0021】
図8は、様々な実施形態に係るコンピューティングデバイスの例を概略的に示す。
【0022】
図9は、様々な実施形態に係る電力システムを制御するためのプロセスの例を示す。
【0023】
[例示的な実施形態の説明]
例示的な実施形態では、マイクログリッドが、脱集中型プロセスを用いてマイクログリッドの複数の分散型エネルギーリソース(DER)をグリッド形成ノードとして動作させることにより、配電(電力分配)を調整する。DERコントローラは、他のDERコントローラとデータを交換することにより、対応するDERの電力基準値を決定する。各DERコントローラは、対応するDERを動作させるための周波数設定点を、電力基準値を用いて決定する。まとめると、マイクログリッドのDERコントローラは、セントラルコントローラおよび単独のグリッド形成ノードを要することなく、マイクログリッドの電圧および周波数を調整できる。以下、例示的な実施形態の詳細について説明する。
【0024】
ユーティリティグリッドなどの電力システムに対し、当該電力システム全体に、分散型エネルギーリソース(DER)としても知られている分散型電源が組み込まれることが増加している。電力システムにDERを組み込むことにより、当該電力システムを、マイクログリッドとしても知られている、独立した制御可能なサブシステムへと分割することが可能となる。一般的には、マイクログリッドは、共通接続点(point of common coupling,PCC)において、電力システムの残りの部分と接続されている。そして、マイクログリッドは、(i)電力を供給する少なくとも1つのDERと、(ii)電力を消費する少なくとも1つの負荷と、を含んでいる。また、マイクログリッドは、各DERの設定点を決定し、かつ、マイクログリッド内の電力特性を調整するために、少なくとも1つのコントローラを含んでいる。例えば、一部のマイクログリッドシステムは、セントラルコントローラを用いて、データを収集し、各DERの設定点を決定しうる。
【0025】
マイクログリッドの電圧および周波数を調整するために、1つのノード(例:PCCまたはDER)がグリッド形成ノードとして動作し、電圧設定点および周波数設定点に基づいて電力を出力する。残りのDERはグリッド追従ノードとなり、有効電力/無効電力の設定点に基づいて電力を出力する。セントラルコントローラまたはグリッド形成ノードが誤動作すると、マイクログリッドは、シャットダウンされ、電力システムの残りの部分から切り離される場合がある。この場合、マイクログリッド内での配電が停止され、電力システムの残りの部分が不安定になる。
【0026】
図1は、マイクログリッドとしても知られているDERシステム100Aを概略的に示す。当該DERシステム100は、本発明の例示的な実施形態に係るシステム全体の目的を達成すべく、アセットマネージャ16を含んでいる。アセットマネージャ16は、複数の分散型エネルギーリソース(DER)14および負荷15の動作を制御するために使用される。当業者にとって既知である通り、DER14は、有効電力および無効電力を、電力ネットワークと交換する。対照的に、負荷15は、有効電力および無効電力を、消費または使用することが一般的である。例えば、DER14は、ソーラ、マイクロタービン、バッテリ、燃料セル、電解槽などであってよい。負荷15とDER14との間には区別があるが、負荷とDERとの両方がアセットと称されてよい。
【0027】
一部の実施形態では、DER14および負荷15のそれぞれが、所与のアセットマネージャ16によって制御可能である(付加的または代替的には、複数のDER14は、単一のアセットマネージャ16によって制御されてもよい)。ただし、一部の実施形態では、1つ以上のDER14および/または負荷15は、アセットマネージャ16と接続されていなくてもよい。特にアセットのタイプを参照する場合、アセットマネージャ16はDERコントローラであってもよいし、あるいは、アセットマネージャ16は負荷コントローラであってもよい。DERコントローラは、少なくとも1つのDER14の動作を制御する。一部の実施形態では、DERコントローラは、1つ以上の負荷15の動作を制御してもよい。
【0028】
図2は、2つのDERネットワーク100Aおよび100Bを概略的に示す。ネットワーク100Aおよび100Bのそれぞれは、共通接続部のブランチ(分岐部)12Aおよび12Bを有している。共通接続部のバーチャルブランチ(仮想ブランチ)は、本発明の例示的な実施形態に従って、2つの独立したDERシステム100Aおよび100Bについて計算されうる。共通接続部のバーチャルブランチは、独立的に集約された2つ以上のDERシステム100Aおよび100Bの共通接続部のブランチ12(例:12Aおよび12B)からのメータ情報を組み合わせることによって形成される。例えば、共通接続部のバーチャルブランチにおける有効電力は、共通接続部のブランチ12Aにおいてメータ1によって測定された有効電力と、共通接続部のブランチ12Bにおいてメータ2によって測定された有効電力と、の和である。したがって、文脈が別段の定めを要しない限り、共通接続部のブランチ12に関するいかなる説明も、共通接続部のバーチャルブランチに当てはまる。
【0029】
以下に説明する通り、様々な実施形態では、DERシステム100Aおよび100Bのうちの1つ以上が、脱集中型アプローチを用いて制御されうる。例えば、各DER120は、それぞれのアセットコントローラ16(すなわち、DERコントローラ130)を有していてよい。DERシステム100は、電力システムを近代化し、サステナブルにし、レジリエンスをもたらし、かつ、効率的にするために、世界中に展開されている。様々な実施形態は、全ての需要者が生産者となることができ、かつ、電力の調達、利用、およびディスパッチ(配送)に積極的に参加できる分散型アーキテクチャをもたらす。エネルギーインフラストラクチャにおけるステークホルダの数の増加に伴い、ユーティリティの役割、および、個人とグリッドの集団的目的との間のトレードオフ、をどのように扱うべきかを決定する場合に問題が生じる。
【0030】
例示的な実施形態は、DERを複数のインテリジェントエージェントへと変換するエンド・トゥ・エンドのソリューションを提供している。インテリジェントエージェントは、相互作用し、DERシステム100の集団的なニーズを満たす緊急の行動特性を有するシステムを生じさせる。例示的な実施形態は、ローカル制御および脱集中型最適化技術を使用することによって、エンド・トゥ・エンドのソリューションの提供を実現している。ローカル制御および脱集中型最適化技術は、ゲーム理論、分散最適化方法、および機械学習に由来するコンセプトを活用している。
【0031】
例示的な実施形態は、DER14がグリッドの基本的な構成要素(building block)であることを可能にし、DER14を相互作用および協調させることによって、何もないところからDERシステム100を構築する。DERシステム100は、有機的に構築されており、当該DERシステム100のニーズの変化に伴ってスケーリングする。これにより、間欠的な再生可能発電の追加、EVによる輸送の電化、および新規なストレージ技術の導入などの不可避の変更に対応するための、レジリエンスおよび柔軟性を提供できる。
【0032】
DERシステムの管理について、一般的には下記の2つのアプローチが存在している。
【0033】
・集中型トップダウンアプローチ:典型的には、DERから離れて位置している単一のコントローラが、システム内の全てのアセットから情報およびデータを収集する。集中コントローラは、共通の目標を達成するために、当該情報および当該データを処理し、各DERに対する最適なディスパッチ戦略を計算する。
【0034】
・脱集中型ボトムアップアプローチ:各DER14に意思決定能力を与えるために、制御が各DERに結び付けられている。これにより、異なるDER14と負荷15との協働によってDERシステム100の目標が達成される。分散型/脱集中型システムは、より少量の全体的な情報を交換し、目的および制約の範囲を制限することによって、アセットがデータおよびリソースをより効率的に共有することを可能にする。
【0035】
集中型アプローチは、システム階層を上流化および下流化するための複雑なデータを要し、かつ、データ処理および意思決定についての単一の点を有している。変数およびノードの数が増加するにつれて、問題は過度に複雑になる。さらに、通信ネットワークによって引き起こされる、関連するレイテンシおよび遅延は、例示的な実施形態におけるDER14の性能に影響を及ぼすおそれがある。これらの制限は、ニッチな用途を超えてスケーリングできず、典型的には高コストを伴う「パイロットプロジェクト」の多さを招いている。
【0036】
対照的に、発明者らは、アセットに対する脱集中型制御は、本質的により容易にスケーリング可能であり、かつ、DERシステム100を構築するためのより自然な方法を表現していることを特定した。脱集中型アプローチの利点は、下記の通りである。
【0037】
1)システムの成長に伴って成長する知能。エージェント(DERまたは制御可能なデバイス)がグリッドにインストールされるたびに、データ処理および意思決定についての新たな点が追加される。その結果、システム性能が経時的に向上する。
【0038】
2)単純なメッセージ交換。意思決定はエージェントごとにローカル(局所的)であるため、通信を要するメッセージは、はるかに単純であり、ピア・トゥ・ピアによって通信されうる。例えば、いかなる単一のアセットマネージャ16も、システム100内の全てのバッテリにおいて利用可能なエネルギーに関する情報を有することを要しない。
【0039】
3)システムアーキテクチャに対する非依存性。より多くのDERおよびステークホルダは、対応を要する設定についてのさらなる多様性をもたらす。しかし、ローカルな決定は他のエージェントまたはその位置によって間接的にのみ影響を受けるので、脱集中型アルゴリズムは容易に適合しうる。
【0040】
4)迅速な応答。自律的なDERは、より大型のグリッドに影響を与えるローカルな状況に対して迅速かつ効率的に対応できる。これにより、問題が拡大して、システムオペレータ(例:ISO)による対応を要するより大型のシステム全体におけるイベントが生じる前に、システムのバランスを取ることができる。
【0041】
5)技術に対する非依存性。エージェントは、その根底にあるDERの複雑性を隠蔽できる。このため、任意のタイプのエネルギーストレージ、発電、または負荷制御についての平等な競争条件を生じさせる。
【0042】
図3A~
図3Cは、3つの例を概略的に示す。
図3Aおよび
図3Bの両方において、セントラルコントローラ25は、DERの価格(補正値とも呼ばれる)および/または設定値を計算する。DERの信号および/または設定点の計算は、当業者に既知である。当該計算は、米国特許10,903,650に記載されており、当該米国特許の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
図3Aは、単一の集中型アプローチを概略的に示す。
図3Aの例では、設定点の計算などの全ての計算は、セントラルコントローラ21(セントラルエージェント25とも称される)によって実行される。
図3Bは、分散型アプローチを概略的に示す。
図3Bの例では、デュアル分解法または他の分散型最適化アプローチの実行を通じて、最適化が実現される。DERシステム100の場合、分散型アプローチは、
図3Aに示す完全な集中型アプローチに比べて、よりスケーラブルであり、モジュール性があり、安全であり、信頼性が高い。ただし、
図3Bの分散型アプローチは、セントラルエージェントに依存している。セントラルエージェントは、コーディネータとして動作し、補正値としても知られているデュアル変数を計算するなどの複数のタスクを実行する。したがって、分散型システムでは、1つ以上のノードは、作業をサブノードに分散させている。
【0044】
発明者らは、
図3Bに示すデュアル分解は、下記に示す複数の欠点を有していると認識している。
【0045】
・セントラルエージェント25を要する。
【0046】
・
図3Bの例は、セントラルエージェント25が機能している場合にのみ機能するので、単一の故障点を有している。例えば、セントラルコントローラ25がダウンしている場合、システム100の最適化は機能しない。さらに、セントラルコントローラ25に欠陥が生じた場合、各アセットに送信される補正値に欠陥が生じる。
【0047】
・全てのアセットがセントラルエージェント25を信頼することを要する。例えば、DERシステム100が、全てのアセット14が異なる住宅所有者を含んでいる近隣に及ぶ場合、どの住宅所有者をオーソリティとすべきかを決定することは困難である。
【0048】
図3Cは、本発明の例示的な実施形態に係るシステム100を概略的に示す。システム100では、複数のDER14のうちの1つ以上によって、補正値および周波数設定点が計算される。DER14が価格(電力補正値とも呼ばれる)を算出するので、専用のセントラルエージェント25を要しない。このように、本イノベーションの様々な実施形態では、専用のセントラルエージェントが不要となる。一部の実施形態では、脱集中型システムは、(例えば、ノード/サブノード分散型の構成を介する代わりに)他のピアと直接的に通信するノード(例:アセットおよび/またはアセットマネージャ16)を有している。有益であることに、様々な実施形態は、集中型のDERシステム100に関連する下記の脆弱性のうちの1つ以上を解決する。
【0049】
特に、セントラルエージェント25が補正値を計算する場合、複数のDERコントローラのうちのいずれも、セントラルエージェント25がダウンしているときには、(例えば、DERコントローラのローカル機能を用いて)設定点を計算できない。その一方、様々な実施形態は、セントラルエージェント25を使用することなく設定点を計算できる。例えば、この計算は、補正値を決定するための回転スキーム、補正値を決定するための補正値コンセンサススキーム、および補正値を決定するためのトランザクションコンセンサススキームを含んでいる。セントラルエージェント25を要することなく補正値を決定するこれらの方法は、米国特許16/702,505に記載されている。当該米国特許出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
付加的または代替的に、例示的な実施形態は、従来のDERシステム100に関連する別の脆弱性を解決する。マイクログリッドが動作する場合、送電線(line)内に電圧および周波数が存在している。電圧および周波数が設定されるネットワーク内の点は、「グリッド形成ノード」(grid-forming node)として知られている。グリッド形成ノードは、マスタノードまたはスラックボスと呼ばれることもある。ほとんどのシステムは、電圧および周波数を発生させる1つのノードを有している一方で、他のノードのDERは既存の電圧に対して電力を供給するだけである。グリッド形成ノードは、グリッド相互接続点またはDERでありうる。単一のグリッド形成ノードは、グリッドに脆弱性を生じさせる。グリッド形成ノードがダウンすると、電源および周波数のソース(供給源)が無くなり、全てのDERが切り離され、場合によっては危険な過電圧を招く。
【0051】
グリッド形成ノードとしてグリッド相互接続点を使用することは、マイクログリッドに対するトップダウンアプローチを表している。当該アプローチは、依然としてグリッド形成ルートソースとしての大型発電プラントに依存している。当該アプローチでは、基本的には、通常動作時には、全てのマイクログリッドのDERを共に接続する。ユーティリティは全てのマイクログリッド内において接続されている全てのDERの特性を考慮する必要があるため、このアーキテクチャにおける決定は、マイクログリッドに応じた適切な規制(レギュレーション)および規則(ルール)の作成を困難化せしめる。
【0052】
図4は、様々な実施形態に従って構成されたDERコントローラまたはPCCコントローラを概略的に示す。図示されている通り、
図4のDERコントローラは、その機能の一部を共に実行する複数のコンポーネントを有している。これらの複数のコンポーネントは、それぞれ任意かつ従来の相互接続機構によって動作可能に接続されている。
図4は、各コンポーネントと通信するバスを単純に示している。当業者であれば、この一般化された表現が、他の従来の直接的または間接的な接続を含むように修正可能であることを理解できるであろう。したがって、バスについての説明は、様々な実施形態を限定することを意図しているわけでない。本開示のDERコントローラは、米国特許10,903,650および10,971,931に記載されているアセットマネージャ内のコンポーネントの一部または全部を含んでいてよい。これらの米国特許のそれぞれの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
実際のところ、
図4は、これらのコンポーネントのそれぞれを概略的に示しているにすぎないことに留意されたい。当業者であれば、1つ以上の他の機能的なコンポーネントについて、これらのコンポーネントのそれぞれが、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用することなどによって、様々な従来の方式によって実現されうることを理解できるであろう。例えば、コントローラは、ファームウェアを実行する複数のマイクロプロセッサを用いて実現されてよい。別の例として、コントローラは、1つ以上の特定用途向け集積回路(すなわち、「ASIC」)および関連するソフトウェア、またはASIC、ディスクリート電子部品(例:トランジスタ)、およびマイクロプロセッサの組み合わせを用いて実現されてもよい。したがって、
図4における単一のボックス内のコントローラおよび他のコンポーネントの表現は、単純化のみを目的としている。実際のところ、一部の実施形態では、
図4のコントローラは、複数の異なるマシンに分散されている。すなわち、一部の実施形態では、当該コントローラは、必ずしも同一のハウジング内または同一のシャーシ内に位置していない。
【0054】
アセットマネージャ16は、モデル予測制御(model predictive control,MPC)コントローラ21を含んでいる。MPCコントローラ21は、ローカルコスト関数を用いて(1つ以上の)アセット14の動作を管理し、動作点を決定するように構成されている。例えば、DER14の動作点は、DER14がマイクログリッド100に供給している出力周波数を含みうる。DER14の動作点は、DER14の全ての内部状態(例:温度、蓄積エネルギー、電圧など)を含んでいてもよい。
【0055】
アセットマネージャ16は、周波数設定点を決定するための周波数設定点計算エンジン20を含んでいてもよい。周波数設定点は、アセットによるマイクログリッド100への電力供給のための設定点である。周波数設定点計算エンジン20は、所与の周波数において電力を供給するように、所与のアセットを制御する。この目的のために、周波数設定点計算エンジン20は、
図6において例示および説明されているプロセス600を実行してよい。
【0056】
そして、アセットマネージャ16は、他のアセットおよび/または他のデバイスと通信するためのインターフェース18をも含んでいる。例えば、インターフェース18は、(例えば、電力補正値を送信および/または受信するために)他のアセットマネージャ16と通信するように構成されている。
【0057】
また、アセットマネージャ16は、(i)DER14のデータを格納するためのメモリ22と、(ii)任意のアセット(例:ディーゼル発電機、ガスタービン、バッテリ、ソーラーパネル、風力タービン、負荷など)の挙動をエミュレートするために使用されるアセットモデル18と、を含んでいてもよい。これらのコンポーネントおよび他のコンポーネントのそれぞれは、説明されている様々な機能を実行するために協働する。
【0058】
繰り返し述べるが、
図4における表現は、実際のアセットマネージャ16を著しく単純化した表現である。当業者であれば、このようなデバイスは、セントラル処理デバイス、通信モジュール、プロトコルトランスレータ、センサ、メータなどの多くの他の物理的コンポーネントおよび機能的コンポーネントを有しうることを理解できるであろう。したがって、本明細書における説明は、
図4がアセットマネージャ16の全ての要素を表していることを示唆することを決して意図しているわけでない。
【0059】
図5は、例示的な実施形態に係るマイクログリッド100の一例の詳細図を概略的に示す。マイクログリッド100は、電力を発生させ、電力を消費し、かつ、電力を調整しうる。マイクログリッド100は、より大型のユーティリティグリッド101のサブシステムであってもよい。様々な実施形態では、マイクログリッド100とより大型のユーティリティグリッド101とが、両者の間において電力を供給する。例えば、マイクログリッド100は、ユーティリティ電力システム、フリート電力システム、車両電力システム、船舶電力システム、航空電力システム、またはビル電力システムを含む様々な用途において具現化されてよい。マイクログリッド100のトポロジー(接続形態)は、説明を目的として例示されているに過ぎず、様々な実施形態を限定することを意図しているわけではない。例えば、マイクログリッド100は、より多数またはより少数の負荷、より多数またはより少数のDER、および/または故障保護デバイスを含んでいてもよい。マイクログリッド100は単線図によって例示されているが、マイクログリッド100は、単相交流電流、多相交流電流、または直流電流を伝送しうる。
【0060】
マイクログリッド100がより大型のユーティリティグリッド101に接続される点は、共通接続点と呼ばれる。マイクログリッド100は、共通接続点(PCC) AC/AC電力変換器110を含んでいる。PCC AC/AC電力変換器110は、マイクログリッド100とより大型のユーティリティグリッド101との間において伝送される電力を変換するように構成されている。マイクログリッド100は、PCCコントローラ111を含んでいる。PCCコントローラ111は、マイクログリッド100の他のコントローラと通信し、周波数設定点および電圧設定点に従ってPCC AC/AC電力変換器110を動作させるように構成されている。一部の実施形態では、PCC AC/AC電力変換器110は、バック・トゥ・バック変換器またはソリッドステート(半導体の)変圧器である。
【0061】
マイクログリッド100は、DER120AとDER120BとDER120Cとを含んでいる。DER120AとDER120BとDER120Cとのそれぞれは、設定点(例:周波数設定点または電圧設定点)によって定められる電力特性を、マイクログリッド100に生じさせるように構成されている。DER120Aは、電源123を含んでいる。このことは、DER120BおよびDER120Cについても同様である。電源123は、電力を発生させるように構成されている、または電力を蓄積するように構成されている。例えば、電源123は、ソーラーパネル、ソーラーアレイ、バッテリ、バッテリバンク、キャパシタバンク、風力タービン、水力発電機、ディーゼル発電機、または天然ガス発電機を含みうる。
【0062】
そして、DER120Aは、電力変換器121をも含んでいる。電力変換器121は、電源123から電力の供給を受け、電力を変換し、マイクログリッド100に電力を出力するように構成されている。例えば、一部の実施形態において、電源123がマイクログリッド100に後に供給されうる電力を蓄積するように構成されている場合には、電力変換器121は双方向型であってもよい。電力変換器121によってDER120Aから出力される電力は、出力電力の大きさ(magnitude)P120Aおよび出力周波数f120Aなどの電力特性を有している。電力変換器121は、設定点に従って電力を出力するように構成されている。例えば、電力変換器121は、周波数設定点に対応する所与の周波数において電力を出力するように構成されていてよい。電力変換器121は、出力電圧設定点に対応する所与の電圧において電力を出力するように構成されていてもよい。電力変換器121は、電源123から取得した電力を、マイクログリッド100によって分配される電力へと変換するように構成されている、任意のタイプの電力変換器であってよい。DER120Aの当該構成は、マイクログリッド100の他のDERにも存在しうることを理解されたい。
【0063】
マイクログリッド100は、複数のDERコントローラ130を含んでいる。複数のDERコントローラ130のそれぞれは、マイクログリッド100における複数のDERのうちの1つを動作させるように構成されている。説明を目的として、
図5では、3つのDERコントローラ130を概略的に示す。
図5の例では、DERコントローラ130AはDER120Aを動作させ、DERコントローラ130BはDER120Bを動作させ、DERコントローラ130CはDER120Cを動作させる。一部の実施形態では、マイクログリッド100のDERコントローラ130は、2つ以上のDERを制御するように構成されていてもよい。
【0064】
マイクログリッド100の各DERコントローラは、対応するDERの電力特性を決定し、マイクログリッド100の他のコントローラとローカル情報を交換するように構成されていてよい。そして、マイクログリッド100の各DERコントローラは、対応するDERを動作させて、出力周波数を有する電力を出力するように構成されていてよい。この場合、出力周波数は、交換されたローカル情報を使用するDERコントローラによって決定された周波数設定点に基づいている。
【0065】
例えば、DERコントローラ130Aは、DER120Aの電力特性を測定するための測定デバイス(例:電圧センサまたは電流センサ)を含んでいてよい。これにより、DERコントローラ130Aは、出力有効電力の大きさおよび出力周波数などを決定できる。次いで、DERコントローラ130Aは、DERコントローラ130BおよびDERコントローラ130Cから取得したローカル測定値および電力補正情報を用いて、ローカル電力基準値を決定してよい。次いで、DERコントローラ130Aは、ローカル電力基準値を用いて、DER120Aに応じた周波数設定点を決定してよい。DERコントローラ130BおよびDERコントローラ130C、ならびにPCCコントローラ111は、同様の処理を実行する。このように、全てのコントローラが、対応する電力変換器に応じた周波数設定点を決定する。次いで、マイクログリッドコントローラ(すなわち、DERコントローラ130AおよびPCCコントローラ111)は、対応する周波数設定点に従ってマイクログリッド100に電力を供給するために、対応する電力変換器を動作させる。このように、マイクログリッド100のDERおよびPCCコントローラは、脱集中型アーキテクチャを用いてマイクログリッド100の電力を調整し、DERおよびPCCのそれぞれをグリッド形成ノードとして制御する。これにより、制御エージェントおよびグリッド形成ノードについての単一の故障点を生じさせないことができる。
【0066】
マイクログリッド100は、複数の負荷180を含んでいる。負荷180は、マイクログリッド100から供給される電力を消費するように構成されている。複数の負荷180は、マイクログリッド100から受けた電力を消費するように構成されている任意のデバイスを含みうる。マイクログリッド100の当該構成は、本明細書において開示されている他のマイクログリッドにも存在しうることを理解されたい。
【0067】
図6は、電力システム、例えば様々な実施形態に係る
図5のマイクログリッド100またはネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ(ネットワーク化されたマイクログリッドアーキテクチャ)300、を制御するためのプロセス600を示す。以下の説明では、プロセス600がDERコントローラ130Aにより実行されるものとする。ただし、プロセス600は、マイクログリッド100のDERコントローラ130A、130B、130Cおよび/またはPCCコントローラ111によって同時に実行されてもよい。さらに、プロセス600に対する多数の変形および修正が考慮されていることを理解されたい。これらの変形および修正は、例えば、プロセス600の1つ以上の態様の省略、さらなる条件および動作の追加、もしくは動作および条件の別々のプロセスへの再編成または分離を含んでいる。例えば、オペレーション(動作)603、605、607、および609は、マイクログリッドコントローラから取得した集約された情報を用いてローカル出力電力基準値を決定するための、代替的なプロセスに置き換えられてよい。
【0068】
プロセス600は、オペレーション601から開始する。オペレーション601において、DERコントローラ130Aは、DER120Aによって出力された電力に対応する出力電力値を決定する。出力電力値を決定することは、(i)出力電力特性(例:電圧および電流)を測定することと、(ii)次いで、測定値を用いて値を計算することと、を含みうる。例えば、出力電力値は、出力有効電力値または出力周波数を含みうる。
【0069】
DERコントローラ130Aは、出力電力値を用いて、DER120Aから実際に出力された電力とDER120Aの所望の出力電力との偏差(deviation)に基づいて、DER120Aの出力電力に対する補正を決定する。当該補正は、ローカル電力補正値としても知られている。一部の実施形態では、当該ローカル電力補正値は、下記の式(1)、
【数1】
を用いて決定されてよい。式(1)において、iは、単一のDER(この場合、DER120A)のインデックス番号である。tは、当該式における反復の数である。すなわち、tは以前の(前回の,previous)反復を表しており、t+1は現在の(今回の,present)反復を表している。p
i
t+1は、DER120Aの現在のローカル電力補正値である。p
tは、最新の(もっとも最近の)グローバル電力補正値である。αは、ゲイン(利得)である。P
iは、DER120Aのローカル出力電力値(例:有効電力)である。P
i
*は、ローカル出力電力基準値である。
【0070】
オペレーション605における最初の反復では、後掲の式(2)を用いてptが計算されることに替えて、ptに初期値が割り当てられてよい。例えば、割り当てられる初期値は、ゼロであってもよいし、過去のローカル電力補正値であってもよい。αは、電力振動を低減するために、補正の大きさを制限するように設定されている。一部の実施形態では、αは、オーバーシュートを回避するために十分に低く、かつ、長期の収束を回避するために十分に高く設定された値でありうる。例えば、システムを線形化し、臨界減衰応答を生じさせるであろうαの値を見出すことによって、αが決定されてよい。ptと同様に、オペレーション605における最初の実行において、後掲の式(3)を用いてPi
*が計算されることに替えて、Pi
*に初期値が割り当てられてよい。割り当てられる初期値は、ゼロであってもよいし、過去のローカル出力電力基準値であってもよい。
【0071】
DERコントローラ130AがDER120Aのローカル電力補正値を決定した後、プロセス600はオペレーション605に進む。オペレーション605では、DERコントローラ130Aは、マイクログリッド100の他のコントローラとローカル電力補正値を交換する。オペレーション605は、(i)DER120Aのローカル電力補正値を共有することと、(ii)DERコントローラ130B、DERコントローラ130C、およびPCCコントローラ111のそれぞれによって決定された、DER120B、DER120C、およびPCC AC/AC電力変換器110のリモート電力補正値を取得(受信)することと、を含みうる。DERコントローラ130Aは、リモート電力補正値を、当該値を決定したコントローラから直接的に取得してよい。あるいは、DERコントローラ130Aは、別のDERコントローラまたはPCCコントローラ111を介して、リモート電力補正値を取得してもよい。一部の実施形態では、DERコントローラは、別のマイクログリッドコントローラからリモート電力補正値を取得し、当該DERコントローラのローカル電力補正値を当該リモート電力補正値と組み合わせてよい。次いで、当該DERコントローラは、集約した値を、リモート電力補正値として第3マイクログリッドコントローラに送信してよい。
【0072】
プロセス600は、オペレーション607に進む。オペレーション607では、DERコントローラ130Aは、(i)当該DERコントローラ130Aが取得したリモート電力補正値と、(ii)DER120Aのローカル電力補正値と、の関数として、グローバル電力補正値を決定する。当該グローバル電力補正値は、下記の式(2)、
【数2】
を用いて算出されてよい。式(2)において、p
t+1は、グローバル電力補正値である。Σp
i
t+1は、(i)ローカル電力補正値を含む、利用可能な現在の電力補正値と、(ii)DERコントローラ130Aによって取得されたリモート電力補正値と、の和である。エラーまたは誤動作に起因して、DERコントローラ130Aが、反復に応じてDERコントローラ130BまたはDERコントローラ130Cからリモート電力補正値を取得しない場合があることを理解されたい。この場合、DERコントローラ130Aは、依然としてプロセス600を完了し、DER120Aの周波数設定点を決定してよい。
【0073】
DERコントローラ130Aがグローバル電力補正値を決定した後、DERコントローラ130Aは、DER120Aのローカル出力電力基準値を決定する。例えば、DERコントローラ130Aは、下記の式(3)、
【数3】
によって表されるデュアル(二重)可変コスト関数を使用してよい。式(3)において、P
i
*は、DER120Aのローカル出力電力基準値である。x
iは、DER120Aにおける少なくとも1つの状態変数である。pは、グローバル電力補正値である。
【0074】
一部の例を挙げると、DER120Aの状態変数は、電圧、電流、有効電力潮流、または無効電力潮流であってよい。あるいは、当該状態変数は、遮断器(circuit breaker)の状態などの別のタイプの情報であってもよい。各状態変数は、大きさ、位相角、またはその両方を含みうる。一部の実施形態におけるコスト関数は、複雑なコスト関数となる。
【0075】
DERコントローラ130AがDER120Aのローカル出力電力基準値を決定した後、プロセス600はオペレーション611に進む。オペレーション611では、DERコントローラ130Aは、(i)DER120Aのローカル出力電力基準値、(ii)DER120Aのドループ係数、および、(iii)オペレーション601において決定されたDER120Aの出力周波数を用いて、周波数設定点を決定する。当該周波数設定点は、下記の式(4)、
【数4】
を用いて決定されてよい。式(4)において、P
i
*は、DER120Aのローカル出力電力基準値である。m
piは、DER120Aのドループ係数である。fは、DER120Aの出力周波数である。f
0iは、DER120Aの周波数設定点である。
【0076】
例えば、ドループ係数は、公称電力(すなわち、平均電力)をある周波数範囲によって除算した値であってよい。ドループ係数は、固定値であってもよい。
【0077】
オペレーション611においてDERコントローラ130AがDER120Aの周波数設定点を決定した後、オペレーション613において、DERコントローラ130Aは、DER120Aの出力周波数を周波数設定点へと調整する。DERのグループまたはPCC AC/AC電力変換器が、それぞれのコントローラによるプロセス600の実行によって決定された周波数設定点に従って動作する場合、デバイスのグループは、マイクログリッド100のグリッド形成ノードとして機能する。一部の実施形態では、マイクログリッド100がより大型のユーティリティグリッド101に接続されており、かつ、マイクログリッド100とより大型のユーティリティグリッド101との間において電力が伝送されている場合であっても、デバイスのグループはグリッド形成ノードとして振る舞う。
【0078】
プロセス600は、連続的に繰り返されうる。一部の実施形態では、(i)オペレーション601~609が、第1フィードバックループにおいて繰り返し実行されるとともに、(ii)オペレーション609~613が、当該第1フィードバックループと並行して、第2フィードバックループにおいて実行される。一部の実施形態では、第1フィードバックループおよび/または第2フィードバックループが周期的に実行される。オペレーション601~609は、あるフィードバックループにおいて繰り返し実行されうる。したがって、プロセス600は、最初の反復に関して、任意の欠損値に初期値が割り当てられる限り、当該フィードバックループにおける任意のオペレーションから開始されうることを理解されたい。
【0079】
プロセス600を用いてマイクログリッドDER/PCCを動作させる利点は、電力のバランス化および動作の最適化を含んでいる。1つの周波数設定点が変化すると、この変化に応じて、第1フィードバックループの次の反復における全てのマイクログリッドDERについて出力電力の変化が生じる。その後、出力電力の変化の結果として、各DER/PCCについての電力補正値が変化する。この電力補正値の変化は、各DER/PCCについての周波数設定点および出力電力基準値の変化を招く。
【0080】
図7は、
図5のマイクログリッド100と同様の方法でグリッド形成するように構成されている、ネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ700を概略的に示す。ネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ700は、当該マイクログリッド100のみならず、複数の他のマイクログリッド100を含んでいる。複数のマイクログリッド100のそれぞれは、マイクログリッドコントローラを含んでいる。マイクログリッドコントローラは、
図6のプロセス600に従ってグリッド形成するように構成されている。
【0081】
ネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ700は、PCC AC/AC電力変換器703を有している。PCC AC/AC電力変換器703は、
図6のプロセス600に従って、より大型のユーティリティグリッド101とネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ700との間において伝送される電力を制御するように構成されている。このようにして、PCC AC/AC電力変換器703および複数のマイクログリッド100の全てが、グリッド形成ノードとして振る舞う。これにより、ネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ700内における単一のグリッド形成ノードが不要となる。
図5および
図6は、マイクログリッドDERおよびPCC A/C電力変換器を使用するグリッド形成技術を示している。一方、ネットワーク化マイクログリッドは全て、
図6のグリッド形成プロセス600を用いて、PCC AC/AC電力変換器703と共に動作して、より大型のサブシステムを形成しうることを理解されたい。当該サブシステムは、集中制御または単一のグリッド形成ノードを要することなくグリッド形成が可能である。本明細書において説明されている技術は、DERコントローラおよびPCCコントローラによって実行されるプロセス600を用いて、ユーティリティグリッド全体がグリッド形成される程度までスケーリングされうることを理解されたい。
【0082】
図8は、コンピューティングデバイス800の概略的なブロック図を示す。コンピューティングデバイス800は、PCCコントローラまたはDERコントローラの一例である。様々な実施形態では、ユーティリティグリッド101およびマイクログリッド100に関連して、コンピューティングデバイス800が使用される。コンピューティングデバイス800は、少なくとも1つの処理デバイス802と、少なくとも1つの入出力デバイス804と、少なくとも1つのメモリデバイス806とを含んでいる。コンピューティングデバイス800は、スタンドアロンデバイスであってもよいし、組み込みシステムであってもよいし、あるいは、マイクログリッド100のPCCコントローラおよびDERコントローラに関して説明されている各機能を実行するように構成されている複数のデバイスであってもよい。さらに、コンピューティングデバイス800は、1つ以上の外部デバイス810と通信可能である。
【0083】
入出力デバイス804は、コンピューティングデバイス800が外部デバイス810と通信することを可能にする。例えば、入出力デバイス804は、ネットワークアダプタ、ネットワーク資格情報(network credential)、インターフェース、またはポートを含みうる。一部の例を挙げると、当該ポートは、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVI、HDMI、FireWire、CAT5、イーサネット、ファイバ、または任意の他のタイプのポートまたはインターフェースである。入出力デバイス804は、ハードウェアによって構成されていてもよいし、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、あるいはファームウェアによって構成されていてもよい。入出力デバイス804は、上述のアダプタ、資格情報、またはポートのうちの2つ以上、例えば、データを受信(取得)するための第1ポートと、データを送信するための第2ポートと、を含んでいると考慮されている。
【0084】
外部デバイス810は、コンピューティングデバイス800へのデータの入力、または当該コンピューティングデバイス800から取得したデータの出力を可能にする任意のタイプのデバイスであってよい。例えば、外部デバイス810は、PCCコントローラ、DERコントローラ、モバイルデバイス、リーダデバイス(読取デバイス)、機器、ハンドヘルドコンピュータ、診断ツール、コントローラ、コンピュータ、サーバ、プリンタ、ディスプレイ、アラーム、視覚インジケータ、キーボード、マウス、ユーザデバイス、クラウドデバイス、回路、またはタッチスクリーンディスプレイであってよい。さらに、外部デバイス810が、コンピューティングデバイス800に統合されることも考慮されている。さらに、2つ以上の外部デバイスがコンピューティングデバイス800と通信することも考慮されている。
【0085】
様々な実施形態における処理デバイス802は、プログラマブルタイプ、専用のハードワイヤードステートマシン、またはそれらの組合せである。一部の例を挙げると、処理デバイス802は、複数のプロセッサ、算術論理ユニット(Arithmetic Logic Unit,ALU)、中央処理ユニット(Central Processing Unit,CPU)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor,DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-programmable Gate Array,FPGA)を含みうる。複数の処理ユニットを有する処理デバイス802の形態の場合、分散処理、パイプライン処理、または並列処理が、必要に応じて用いられてもよい。処理デバイス802は、本明細書において説明されている処理の実行に専用のものであってもよいし、1つ以上の追加のアプリケーションにおいて利用可能なものであってもよい。図示されている形態では、処理デバイス802は、メモリデバイス806に格納されているプログラム命令(例:ソフトウェアまたはファームウェア)に従ってプロセスを実行し、データを処理するプログラマブルタイプのものである。代替的または追加的に、プログラム命令は、ハードワイヤード論理または他のハードウェアによって少なくとも部分的に定義されうる。処理デバイス802は、入出力デバイス804あるいは他から受信した信号を処理し、かつ、所望の出力信号を送信することに適した任意のタイプの1つ以上のコンポーネントから構成されてよい。当該コンポーネントは、デジタル回路、アナログ回路、または両方の組み合わせを含みうる。
【0086】
異なる実施形態におけるメモリデバイス806は、例えば、ソリッドステートメモリ型、電磁気メモリ型、光学メモリ型、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上のタイプのメモリデバイスである。また、メモリデバイス806は、揮発性型、不揮発性型、一時的型、非一時的型、またはこれらのタイプの組み合わせであってもよい。例えば、メモリデバイス806の一部または全部は、ディスク、テープ、メモリスティック、カートリッジなどのポータブル型であってもよい。例えば、メモリデバイス806は、プログラム命令を格納することに加えて、または、プログラム命令を格納することに替えて、処理デバイス802によって扱われるデータを格納してもよい。処理デバイス802によって扱われるデータは、入出力デバイス804から送信される信号を表すデータ、または入出力デバイス804に送信される信号を表すデータなどを含みうる。
図8に示す通り、メモリデバイス806は、処理デバイス802に含まれていてもよいし、処理デバイス802に接続されていてもよい。ただし、これらの例に限定されなくともよい。
【0087】
図9は、電力システム、例えば様々な実施形態における
図5のマイクログリッド100またはネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャ300、を制御するためのプロセス900を示す。以下の説明では、プロセス900はDERコントローラ130によって実行されるものとする。ただし、プロセス900は、マイクログリッド100のDERコントローラ130A、130B、および130Cと、PCCコントローラ111とによって同時に実行されてもよい。例えば、プロセス900に対する多数の変形および修正が考慮されていることを理解されたい。これらの変形および修正は、プロセス900の1つ以上の態様の省略、さらなる条件および動作の追加、もしくは動作および条件の別々のプロセスへの再編成または分離を含んでいる。プロセス600の事項に類似する事項が、プロセス900に追加されてもよいことも理解されたい。
【0088】
プロセス900は、オペレーション901から開始する。オペレーション901では、DERコントローラ130Aは、DERの出力電力値を決定する。出力電力値は、DER120によって出力される電力の大きさおよび/または位相角を有する有効電力値を含みうる。出力電力値は、DER120によって出力される電力の出力周波数を含んでいてもよい。
【0089】
プロセス900は、オペレーション903に進む。オペレーション903では、DERコントローラ130Aは、DERコントローラ130Bからリモート電力補正値を取得(受信)する。
【0090】
プロセス900は、オペレーション905に進む。オペレーション905では、DERコントローラ130Aは、(i)有効電力値と、(ii)DERコントローラ130Bから取得したリモート電力補正値と、の関数としての、ローカル出力電力基準値を決定する。ローカル出力電力基準値は、DER120によって出力されるべき所望の有効電力に対応している。一部の実施形態では、DERコントローラ130Aは、上述の式(1)~式(3)を用いてローカル出力電力基準値を決定する。
【0091】
プロセス900は、オペレーション907に進む。オペレーション907では、DERコントローラ130Aは、ローカル出力電力基準値とドループ係数との関数としての、DER120の周波数設定点を決定する。一部の実施形態では、DERコントローラ130Aは、上述の式(4)を用いて周波数設定点を決定する。
【0092】
プロセス900は、オペレーション909に進む。オペレーション909では、DERコントローラ130Aは、DER120の出力周波数を周波数設定点へと調整する。
【0093】
プロセス900における上述の事項の一部または全部が、本明細書において開示されている他のプロセスに存在していてもよいことを理解されたい。
【0094】
様々な実施形態における様々な態様、構成(事項)、プロセス、および動作は、別段の明示的な記載がない限り、他の実施形態のいずれにおいても使用されてよい。図示されている所定の動作は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上においてコンピュータプログラムプロダクトを実行するコンピュータにより実現されてよい。コンピュータプログラムプロダクトは、コンピュータに1つ以上の動作を実行させる命令、または1つ以上の動作を実行するコマンドを他のデバイスに対する発する命令を含んでいる。
【0095】
本開示は、図面および上述の記載において詳細に図示および説明されているが、これらは例示的なものであり、各構成を限定するものではないと考慮されるべきである。本開示では、特定の例示的な実施形態のみが図示および説明されているが、本開示の精神に属する全ての変更および修正についての保護が望まれていることを理解されたい。また、本開示の趣旨の範囲内にある全ての変更および修正が保護されることが望ましい。前述の説明における「好ましい(preferable)」、「好ましくは(preferably)」、「好適な(preferred)」、または「より好適な(more preferred)」などの用語の使用は、そのように説明された構成がより望ましい場合があることを示しているが、それにもかかわらず必要ではない場合もあることを理解されたい。上述の構成を欠く実施形態も本開示の範囲内であると考慮されており、当該範囲は後掲の特許請求の範囲によって定められている。
【0096】
特許請求の範囲を読む場合において、ある請求項において、「ある(a, an)」、「少なくとも1つの(at least one)」、または「少なくとも一部分(at least one portion)」などの用語が使用されている場合、当該請求項において別段の具体的な記載がない限り、当該請求項を1つの項目(one item)のみに限定する趣旨ではないことが意図されている。用語「~の、~についての、~における(of)」は、他の項目との関連またはつながりを意味するだけでなく、他の項目が使用される文脈によって通知されるような他の項目への帰属または他の項目との関連を意味する場合がある。「~に接続される(coupled to, coupled with)」などの用語は、間接的な接続および結合を含む。また、これらの用語は、別段の明示的な記載がない限り、直接的な接続または結合をさらに含んでいるが、直接的な接続または結合は必須ではない。「少なくとも一部分(at least one portion)」または「一部(a portion)」という用語が使用されている場合、別段の具体的な記載がない限り、ある項目には当該項目の一部または全部が含まれうる。別段の明示的な記載がない限り、2つ以上のリスト項目のリストにおける「または(or)」および「および/または(and/or)」という用語は、個々のリスト項目、またはリスト項目の組み合わせを意味しうる。別段の明示的な記載がない限り、転換語(transitional terms)「有している(having)」およびその派生語(its derivatives)は、転換語「含んでいる、備えている(comprising)」と同一の意味を有するオープンエンドの用語である。
【0097】
本発明の様々な実施形態は、任意の従来のコンピュータプログラミング言語によって、少なくとも部分的に実現されうる。例えば、一部の実施形態は、手続型プログラミング言語(例:C)によって実現されてもよいし、あるいは、オブジェクト指向プログラミング言語(例:C++)によって実現されてもよい。本発明の他の実施形態は、事前に設定されたスタンドアロンのハードウェア要素として実現されてもよいし、および/または、事前にプログラミングされたハードウェア要素(例:特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、およびデジタル信号プロセッサ)として実現されてもよいし、あるいは、または他の関連するコンポーネントとして実現されてもよい。
【0098】
代替的な実施形態では、開示されているデバイスおよび方法(例えば、上述の様々なフローチャートを参照)は、コンピュータシステムと共に使用されるコンピュータプログラムプロダクトとして具現化されうる。当該実施形態は、コンピュータ可読媒体(例:ディスケット、CD-ROM、ROM、または固定ディスク)などの有形の非一時的ないずれかの媒体に固定された一連のコンピュータ命令を含みうる。一連のコンピュータ命令は、システムに関して本明細書で上述されている機能の全部または一部を具現化しうる。
【0099】
当業者であれば、多くのコンピュータアーキテクチャまたはオペレーティングシステムと共に使用するために、上述のコンピュータ命令が多数のプログラミング言語によって記述されうることを理解できるであろう。さらに、当該命令は、半導体メモリデバイス、磁気メモリデバイス、光学メモリデバイス、または他のメモリデバイスなどの任意のメモリデバイスに格納されうる。当該命令は、光、赤外線、マイクロ波、または他の送信技術などの任意の通信技術を用いて送信されうる。
【0100】
例えば、上述のコンピュータプログラムプロダクトは、印刷文章または電子文書を伴うリムーバブルメディア(例:シュリンクラップされたソフトウェア)として配布されてもよいし、コンピュータシステムによって(例:システムROMまたは固定ディスク上に)事前にロードされてもよいし、あるいは、ネットワーク(例:インターネットまたはワールドワイドウェブ)を介して、サーバまたは電子掲示板から配布されてもよい。実際のところ、一部の実施形態は、サービスとしてのソフトウェア(software-as-a-service,SAAS)モデルまたはクラウドコンピューティングモデルとして実現されうる。当然ながら、本発明の一部の実施形態は、ソフトウェア(例:コンピュータプログラムプロダクト)とハードウェアの両方の組み合わせとして実現されてもよい。本発明のさらなる他の実施形態は、完全にハードウェアとして実現されてもよいし、あるいは、完全にソフトウェアとして実現されてもよい。
【0101】
上述の本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図している。当業者であれば、上述の本発明の実施形態における多数の変形および修正が明らかであろう。これらの変形および修正は、添付の特許請求の範囲のいずれかによって定められる本発明の範囲内であることを意図している。ただし、本明細書の記載からは、本開示の範囲に対するいかなる限定も生じるわけではないことが理解されるべきである。本開示は、当該本開示の利益を有する当業者に想起される例示的な実施形態の変更、修正、およびさらなる応用を含んでおり、かつ、これらを保護することを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】様々な実施形態に係るマイクログリッドの例を概略的に示す。
【
図2】様々な実施形態に係るマイクログリッドの例を概略的に示す。
【
図3A】様々な実施形態に係るマイクログリッド制御アーキテクチャの例を概略的に示す。
【
図3B】様々な実施形態に係るマイクログリッド制御アーキテクチャの例を概略的に示す。
【
図3C】様々な実施形態に係るマイクログリッド制御アーキテクチャの例を概略的に示す。
【
図4】様々な実施形態に係るアセットマネージャの例を概略的に示す。
【
図5】様々な実施形態に係るマイクログリッドの例を概略的に示す。
【
図6】様々な実施形態に係る電力システムを制御するためのプロセスの例を示す。
【
図7】様々な実施形態に係るネットワーク化マイクログリッドアーキテクチャの例を概略的に示す。
【
図8】様々な実施形態に係るコンピューティングデバイスの例を概略的に示す。
【
図9】様々な実施形態に係る電力システムを制御するためのプロセスの例を示す。
【国際調査報告】