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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】吸引式血栓除去システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20241008BHJP
   A61F 2/01 20060101ALI20241008BHJP
   A61M 1/38 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61B17/22
A61F2/01
A61M1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518267
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 US2022076861
(87)【国際公開番号】W WO2023049802
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,146
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シイアン シモン
(72)【発明者】
【氏名】アルサナ,サリ
(72)【発明者】
【氏名】ランワラ,フセイン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラマン,ハリ ナラヤナン
【テーマコード(参考)】
4C077
4C160
【Fターム(参考)】
4C077CC03
4C160EE21
4C160MM36
(57)【要約】
吸引サイクルが、血餅除去を促進する容積式セグメント、チューブ管理を容易にするポンプカートリッジ、および真空サージを提供する吸引デバイスを含む、吸引式血栓除去デバイスおよび方法。本明細書では、液体ではなく空気または不活性ガスに依存して、静的および動的な吸引レベル特性の両方を提供し、血栓を安全かつ効率的に体内から回収して除去する吸引血栓除去システムを開示する。一態様では、2つ以上の圧力源が、吸引カテーテルに2つ以上の吸引レベルを印加するように構成されてもよい。弁は圧力源と吸引カテーテルの間の導管を接続し、弁を選択的に開閉することでカテーテルに印加される圧力レベルを制御する。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、
第1の圧力源と、
第2の圧力源と、
前記カテーテルと前記第1の圧力源との間に接続された第1の導管と、
前記カテーテルと前記第2の圧力源との間に接続された第2の導管と、
封止機構とを備え、
第1の状態において、前記第1の圧力源が前記カテーテルに第1の圧力を印加するように、前記封止機構が前記第2の導管を封止し、
第2の状態において、前記第2の圧力源が前記カテーテルに第2の圧力を印加するように、前記封止機構が前記第1の導管を封止し、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高い、
吸引式血栓除去システム。
【請求項2】
前記第1の圧力は、雰囲気圧力より508~762mmHg低い、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項3】
前記第2の圧力は、雰囲気圧力より0~508mmHg低い、請求項2に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項4】
前記封止機構は、前記第1の状態と前記第2の状態との間でスライド可能なスライド部材から構成される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項5】
前記第1の状態において、前記スライド部材が前記第1の導管を挟み、前記第2の状態は、前記スライド部材が前記第2の導管を挟む、請求項4に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項6】
前記封止機構は、前記第1の状態に向けて付勢される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項7】
前記封止機構を前記第1の状態に向けて付勢するばねを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項8】
前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記封止機構を調整するアクチュエータを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、ソレノイドから構成される、請求項8に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項10】
前記第1の圧力源および前記第2の圧力源は、単一のポンプから構成される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項11】
前記第1の導管および前記第2の導管は、Yジョイントによって前記カテーテルに接続される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項12】
第1の動作状態において、静的圧力が前記カテーテルに印加され、第2の動作状態において、動的圧力が前記カテーテルに印加される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項13】
前記第1の動作状態と前記第2の動作状態との間で選択するためのスイッチを更に備える、請求項12に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項14】
前記封止機構が患者の心臓律動と同期して前記第1の状態と前記第2の状態との間で調整するように、前記封止機構とやりとりする心拍数モニタを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項15】
カテーテルと、
ポンプと、
前記カテーテルと前記ポンプとの間に接続された第1の導管と、
前記カテーテルと前記ポンプとの間に接続された第2の導管と、
封止機構とを備え、
第1の状態では、前記第1の導管が前記カテーテルに第1の圧力を印加し、前記第2の導管が前記封止機構によって封止され、
第2の状態では、前記第2の導管が前記カテーテルに第2の圧力を印加し、前記第1の導管が前記封止機構によって封止される、
吸引式血栓除去システム。
【請求項16】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力より高い、請求項15に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項17】
前記第1の圧力は、雰囲気圧力より508~762mmHg低く、前記第2の圧力は雰囲気圧力より0~508mmHg低い、請求項16に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項18】
前記封止機構は、前記第1の状態と前記第2の状態との間でスライド可能なスライド部材から構成される、請求項15に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項19】
前記封止機構が前記第2の導管を封止する前記第1の状態と、前記封止機構が前記第1の導管を封止する前記第2の状態との間で前記封止機構を調整するソレノイドを更に備える、請求項15に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項20】
カテーテルと、
前記カテーテルに第1の圧力または第2の圧力を加えるポンプ手段と、
前記カテーテルと前記ポンプ手段との間に接続された第1の導管と、
前記カテーテルと前記ポンプ手段との間に接続された第2の導管と、
前記第1の導管または前記第2の導管を選択的に封止する封止手段とを備え、
前記封止手段は、前記第1の導管を封止する方向に付勢されている、
吸引式血栓除去システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、「吸引式血栓除去装置および方法」の名称で、2021年9月22日に出願された、米国仮出願第63/247146号による優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、吸引カテーテルに印加される吸引圧力を利用することによって血栓吸引を行うために使用するシステム、デバイス、および方法について説明する。血栓吸引を行う場合、血栓がカテーテル内に固着することがよくある。より具体的には、特に、血栓がカテーテルの入口開口部よりも大きいサイズである場合、当該血栓がカテーテルの入口で詰まる可能性がある。
【0003】
様々な吸引カテーテルと共に使用可能な標準的な液体プライム吸引ポンプには欠点がある。そのような液体プライムポンプは、リリーフチューブおよび/または生理食塩水バッグなどの液体源をセットアップする必要など、貴重な時間を費やす可能性があるセットアップのための追加の手順を必要とする場合がある。
【0004】
液体ではなく、空気または不活性ガスに依存し、血栓を回収するための静的吸引レベルと、血栓が吸引カテーテルに固着した場合に、この血栓を破砕するための動的吸引レベルまたはサージ吸引レベルとの両方が可能な吸引式血栓除去システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、液体ではなく、空気または不活性ガスに依存し、体内から血栓を安全かつ効率的に回収して除去するための静的および動的の両方の吸引レベル特性を提供する吸引式血栓除去システムを開示する。
【0006】
例示的な一態様では、吸引カテーテルに2つ以上の吸引レベルを印加するように、2つ以上の圧力源を構成してもよい。圧力源と吸引カテーテルとの間の導管を、弁により接続するようにして、この弁を選択的に開閉し、どの圧力レベルをカテーテルに印加するかを制御するようにしてもよい。
【0007】
血栓を回収するために、安定した圧力レベルをカテーテルに印加するようにしてもよいし、血栓がカテーテル内に固着した場合に、この血栓を破砕するために、カテーテルに動的な圧力レベルを印加するようにしてもよい。
【0008】
例示的な一態様において、吸引ポンプと吸引カテーテルとの間には、吸引モジュールを流体的に接続するようにしてもよい。
【0009】
例示的な一態様では、使い捨ての交換可能なカートリッジを、関連するハウジング内に取り外し可能に配置するようにしてもよい。それぞれが異なる圧力を印加する異なる圧力源と連通する1対の導管が、カートリッジ内を通って配設されるようにしてもよい。ソレノイドなどのアクチュエータによってハンマーを作動させ、導管のそれぞれを選択的に封止および封止解除して、カテーテルに印加する吸引レベルを制御するようにしてもよい。
【0010】
例示的な一態様では、カテーテル内に固着した血栓を破砕する必要があるときに、サージ圧力レベルを選択的に印加するように構成された内部プランジャを、シリンダが備えるようにしてもよい。プランジャは、当該プランジャを第1の位置から第2の位置に調整すると開く弁(例えば、ヒンジ式、軸方向移動式、または回転式)を備えていてもよい。プランジャは、コイルの励磁によりプランジャを第2の位置に向けて調整できるように、常磁性材料で構成してもよい。ばねなどの付勢部材により、プランジャを第1の位置に向けて付勢するようにしてもよい。
【0011】
例示的な一態様では、エンクロージャが第1の位置と第2の位置との間で調整可能なスライド機構を収容するようにしてもよい。第1の位置では、スライド機構が、第1の圧力源とカテーテルとの間に接続された第1の導管を封止するようにしてもよい。第2の位置では、スライド機構が、第2の圧力源と当該カテーテルとの間に接続された第2の導管を封止するようにしてもよい。ソレノイドなどのアクチュエータは、その複数位置の間でスライド機構を調整するように動作可能であってもよい。ばねなどの付勢部材が、スライド機構をその第1の位置に向けて付勢するようにしてもよい。
【0012】
例示的な一態様において、スライド機構は、両方の導管が同時に開いたり閉じたりするのを防止するために、ばねによって分離された2つの別個の部材に分割してもよい。
【0013】
血栓吸引を行う方法は、血餅を回収するときに吸引カテーテルに第1の圧力レベルを印加することと、血餅がカテーテル内に固着した場合に、血餅を破砕するために、第2の圧力レベルを印加することとを含んでいてもよい。
【0014】
血栓吸引を行うもう1つの方法は、安定真空特性および動的真空特性の両方を適用することと、必要に応じ、血餅を回収し、血餅が固着した場合に当該血餅を破砕するために、これら2つの間で切り替えることとを含んでいてもよい。
【0015】
血栓吸引を行うもう1つの方法は、血餅がカテーテル内に固着した場合に、サージ真空圧をカテーテルに印加することを含んでいてもよい。
【0016】
血栓吸引を行うもう1つの方法は、異なる圧力レベルを患者の心臓律動と同期させ、心臓律動の収縮期圧力によって血餅がカテーテルから運び去られないようにすることを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の具現化によって可能となる、これら、およびその他の態様、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照してなされる本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになり、理解されるはずである。
【0018】
図1図1は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムのブロック図である。
【0019】
図2A図2Aは、例示的な実施形態に係る、第1の動作状態の吸引式血栓除去システムのブロック図である。
【0020】
図2B図2Bは、例示的な実施形態に係る、第2の動作状態の吸引式血栓除去システムのブロック図である。
【0021】
図3図3は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムのカートリッジの分解図である。
【0022】
図4A図4Aは、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムのカートリッジの第1の斜視図である。
【0023】
図4B図4Bは、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムのカートリッジの第2の斜視図である。
【0024】
図5図5は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムのハウジングおよびカートリッジの上方斜視図である。
【0025】
図5は、ソレノイドが取り付けられた容器に関するカートリッジ組立体の図である。
【0026】
図6図6は、例示的な実施形態に係る、第1の動作状態の吸引式血栓除去システムの断面図である。
【0027】
図7図7は、例示的な実施形態に係る、第2の動作状態の吸引式血栓除去システムの断面図である。
【0028】
図8図8は、例示的な実施形態に係る、第3の動作状態の吸引式血栓除去システムの断面図である。
【0029】
図9図9は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの第1の斜視図である。
【0030】
図10図10は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの第2の斜視図である。
【0031】
図11図11は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの1対の導管へのカテーテルの接続を示す斜視図である。
【0032】
図12図12は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの断面図である。
【0033】
図13A図13Aは、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの斜視図である。
【0034】
図13B図13Bは、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの斜視図である。
【0035】
図14図14は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの第1の真空圧力特性を示すグラフである。
【0036】
図15図15は、例示的な実施形態に係る、吸引式血栓除去システムの第2の真空圧力特性を示すグラフである。
【0037】
図16図16は、例示的な実施形態に係る、患者の心臓律動に整合する真空圧力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、多くの様々な形態で具現化し得るものであり、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分で完璧なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるようにするために提供されるものである。添付の図面に示す実施形態についての詳細な説明において使用する用語は、本発明の限定を意図するものではない。図面において、同様の番号は、同様の要素を指すものである。
【0039】
以下に記載する用語で、血餅、血栓、塞栓、および閉塞という用語は、同義的に使用し得るものである。
【0040】
本明細書では、値に言及するときの「約」、「およそ」、または「ほぼ」という用語の使用は、包括的に、記載された値から5%(大きい、または小さい)の範囲内を意味すると理解することができる。
【0041】
本発明は、患者から血餅を回収し、キャニスタのような容器内など、患者の体外に血餅を堆積させる目的で、カテーテルに対して異なるレベルの圧力を選択的に印加することが可能な吸引式血栓除去システムからなるものとすることができる。
【0042】
吸引式血栓除去システムは、カテーテルに適用されると、安定した一定の吸引レベルとなる静的圧力特性か、または異なる吸引レベルをカテーテルに適用して、「ジャックハンマー」効果を生じさせることによって、カテーテル内に詰まる可能性がある血餅の破砕を促進する動的圧力特性を適用することができる。システムは、必要に応じ、そのような静的圧力特性と動的圧力特性とを交互に切り替えてもよい。
【0043】
吸引式血栓除去システムは、カテーテルに対して異なるレベルの圧力を印加するように構成された1つまたは複数の圧力源を備えていてもよい。カテーテルは、適用する圧力レベルの数に合致する数の、1つまたは複数の弁によって圧力源に接続することができる。例えば、2つの異なる圧力レベルが適用され得るシステムでは、カテーテルと2つの異なる圧力源との間に、2つの弁を接続することができる。
【0044】
複数の圧力源を、単一のポンプコンソールに統合するようにしてもよい。必要に応じて圧力レベルを交互に切り替え、血餅の回収のためなどの安定した一定の吸引レベルと、カテーテル内に固着した血餅の破砕除去のためなどの動的に変化する吸引レベルとのいずれかを適用することができる。キャニスタなどの容器をカテーテルに流体的に接続し、血餅を患者の身体から取り出した後、この血餅を最終的に収集するようにしてもよい。
【0045】
吸引式血栓除去システムは、対応するハウジング内に取り外し可能に挿入できるカートリッジを使用してもよい。カートリッジは、使い捨てとして、使用後に廃棄し、新しいカートリッジと交換できるようにしてもよい。カートリッジ内を通るように複数の導管を配設し、それぞれの導管を、異なる圧力レベルを印加する異なる圧力源に流体的に接続し、両方の導管を合流させてカテーテルに接続するようにしてもよい。
【0046】
カートリッジは、それぞれの導管を通すことができるスロットなどの開口部を備えていてもよい。それぞれの開口部は、拡大された間隙を備えることにより、ハンマーまたはその他の機構が各導管の露出部分と選択的に係合して、例えば、導管を挟むかまたは押すことで、導管を封止できるようにしてもよい。ソレノイドのようなアクチュエータを各ハンマーに取り付け、ハンマーの前進または後退を制御することによって、それぞれの導管を封止または封止解除できるようにしてもよい。
【0047】
吸引式血栓除去システムは、少なくとも2つの位置の間で調整可能な内部プランジャを備えたシリンダを使用してもよい。プランジャは、当該プランジャを通って延びる通路を選択的に封止するためにヒンジ形式で取り付けられる弁を備えていてもよい。弁を開く第1の方向にプランジャを調整するように、コイルなどのアクチュエータを動作させることができるようにしてもよい。アクチュエータからの力がないときに、プランジャを第2の方向に調整して、その当初の開始位置に戻すように、ばねなどの付勢部材を動作せさることができるようにしてもよい。プランジャを調整して弁を開くことにより、接続されたカテーテルにサージ圧力レベルを印加して、カテーテル内に固着した血餅の破砕を促進するように動作させてもよい。
【0048】
吸引式血栓除去システムは、吸引チューブキットの一部として最終的に滅菌された状態で提供される使い捨てモジュールにより、線形真空圧力特性および様々な非線形特性のいずれかを使用して血餅を吸引する機能が提供されるという、新規なアプローチを使用し、非線形の動的な血栓除去を容易にするように構成することができる。
【0049】
このようなモジュールは、協働して線形真空圧力特性および様々な非線形圧力特性の両方を実現可能な内部構成要素を収容するエンクロージャを備えていてもよい。スライド機構が第1の導管を封止する第1の位置と、スライド機構が第2の導管を封止する第2の位置との間で、当該スライド機構を調整可能として、第1の導管は、カテーテルと第1の圧力源との間に接続され、第2の導管は、カテーテルと第2の圧力源との間に接続されるようにしてもよい。
【0050】
ソレノイドなどのアクチュエータを使用し、スライド機構を第2の位置に向けて調整するようにして、アクチュエータからなにも力が加えられていない状態で、ばねなどの付勢部材が、スライド機構をその第1の位置である開始位置に戻すべく機能するようにしてもよい。スライド機構は、両方の導管が同時に開かれたり封止されたりしないようにするため、スライドばねによって分離された2つの別個の部材に分割してもよい。
【0051】
吸引式血栓除去システムは、カテーテルに印加する静的真空レベルと動的真空レベルとを、必要に応じて交互に切り替えるように構成してもよい。静的真空レベルは、血餅を回収するのに最適なものとすることができる一方、動的真空レベルは、血餅が、カテーテルの遠位開口部内などのカテーテル内に固着した場合に、血餅を破砕するのに最適なものとすることができる。真空レベルは、心臓律動の収縮期圧によって血餅がカテーテルから運び去られないようにするべく、第1の真空レベルが拍動と拍動との間に印加され、第2の真空レベルが拍動と同期して印加されるように、患者の心臓律動と同期させてもよい。
【0052】
吸引式血栓除去システムは、リリーフ媒体として液体ではなく空気を使用してもよい。このような構成により、リリーフチューブおよび/または生理食塩水バッグなどの液体源の必要性が排除されることなどによって、液体媒体を使用するシステムよりも容易なセットアップを可能とすることができる。空気は、カテーテル自体の中に移動することなく利用することができ、その代わりに、真空ポンプの中に戻っていくことが見出された。液体の代わりに空気をサージすることによって、液体を使用せずに、同様の「ジャックハンマー」効果を生成することができる。
【0053】
吸引式血栓除去システムは、フェイルセーフとして機能するように、ある圧力レベルに向けてバイアスがかけられるようにしてもよい。一般に、システムは、電力が失われた場合、またはアクチュエータが故障した場合に、システムがカテーテルへの吸引力の適用を継続できるように、より高い圧力レベルに向けてバイアスをかけるようにすることができる。
【0054】
具体的な実施形態の例について、更に以下に説明する。但し、いずれかの実施形態からのなんらかの特徴を、任意の組み合わせで混合し、互いに適合させ得ると理解すべきである。従って、本発明は、これらの実施形態のみに限定されるべきものではなく、それらの任意のより広範な組み合わせに限定されるべきである。
【0055】
図1図2Bは、2つの異なる圧力レベルを、吸引カテーテル100に選択的に印加可能な第1の例示的な実施形態を示す。図1に示すように、1対の圧力源110A,110Bは、1対の弁115A,115Bによって吸引カテーテル100に流体的に接続可能となっている。いくつかの実施形態において、1対の圧力源110A,110Bは、単一のポンプPで構成することができる。一方、別の実施形態において、圧力源110A,110Bのそれぞれは、それ自体のポンプを備えることができる。
【0056】
例示的な実施形態では、プロセスを使用し、既知の圧力レベルを有した2つの容積の非プライムシステムを動作させることができる。第1の圧力源110Aは、第1の圧力を印加することが可能であり、第2の圧力源110Bは、第2の圧力を印加することが可能である。いくつかの例示的な実施形態において、第2の圧力源110Bによって印加される第2の圧力は、第1の圧力源110Aによって印加される第1の圧力よりも大きくすることができる。
【0057】
限定ではなく一例として、第1の圧力は、雰囲気圧力より約508~762mmHg低くすることができ、第2の圧力は、雰囲気圧力より約0~508mmHg低くすることができる。第1の圧力は、例えば、流体および/または血餅を収集するために使用することができる。従って、第1の圧力源110Aは、血餅を収集するための収集キャニスタ、またはその他の容器を備えていてもよい。
【0058】
第2の圧力は、例えば、吸引カテーテル100内の圧力を増加させるために使用することができ、これは、例えば、吸引カテーテル100の遠位端に固着した血餅の破砕などの様々な機能に有用なものとなり得る。圧力源110A,110Bの両方の媒体は、空気または不活性ガスであってもよい。
【0059】
引き続き図1を参照すると、第1の圧力源110Aは、第1の弁115Aを備えた第1の導管111Aにより、カテーテル100に接続することができ、第2の圧力源110Bは、第2の弁115Bを備えた第2の導管111Bにより、カテーテル100に接続することができることが分かる。弁115A,115Bの様式は、様々な実施形態において広範に異なり得る。従って、本明細書に記載するシステムおよび方法は、本明細書に記載する様々な弁115A,115Bを含め、カテーテル100から圧力源110A,110Bを選択的に封止するために、当業者に公知の広範な弁115A,115Bを使用可能であるので、なんらかの特定の様式の弁115A,115Bに限定されると解釈されるべきではない。
【0060】
図2Aおよび図2Bは、カテーテル100に印加される圧力を交互に切り替えるために使用することができる2つの状態を示している。図2Aに示す状態では、第1の圧力がカテーテル100に印加されるように、第1の弁115Aが開き、第2の弁115Bが閉じていることが分かる。このような状態は、血餅の収集に使用することが可能であり、血餅は、第1の弁115Aを通って引き込まれ、第1の圧力源110Aと一体の、または第1の圧力源110Aに接続されたキャニスタまたはその他の容器内に収集される。
【0061】
図2Bに示す状態では、第2の圧力がカテーテル100に印加されるように、第1の弁115Aが閉じ、第2の弁115Bが開いていることが分かる。このような状態は、例えば、既知の圧力の空気または不活性ガスをシステムに流入させてカテーテル100内の流体の圧力を上昇させるなど、カテーテル100内の流体の圧力を上昇させるために使用することができる。第2の弁115Bが開いている期間は、空気またはその他のガスがカテーテル100から出て行かないように制御することができる。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態において、2つの弁115A,115Bは、同時に開かれることがない。従って、このような実施形態では、第1の弁115Aが開かれて、第2の弁115Bが閉じられる状態、および第1の弁115Bが閉じられて、第2の弁115Bが開かれる状態のいずれかであり、両方の弁115A,115Bが同時に開かれる状態とはならない。但し、いくつかの実施形態では、本明細書で説明するように、弁115A,115Bの両方が開く短い時間が存在していてもよい。
【0063】
図1図2Bに示す例示的な実施形態は、少なくとも2つの動作モード間で切り替え可能であってもよい。第1の動作モードは、第1の弁115Aを開いたままとして、静的吸引を適用することができる。第1の動作モードは、一定の真空レベル(例えば、雰囲気圧力より約508~762mmHg低い)の印加を、カテーテル100に適用することができる。このような動作モードにおいて、カテーテル100が血餅によって閉塞されると、システムは、この血餅に一定の力を及ぼすことができる。
【0064】
第2の動作モードは、2つの圧力源110A,110Bの間での循環によって、動的吸引を適用することができる。第2の動作モードは、血餅がカテーテル100を閉塞したときに望ましいものとなり得る。第2の動作モードでは、弁115A,115Bを交互に開閉することにより、第1の圧力または第2の圧力をカテーテル100に順次印加することができる。サイクルの前半では、図2Aに示すように、第1の圧力源110Aをカテーテルに接続して、第1の圧力を印加するすることにより、血餅に対する大きな力を生成することができる。サイクルの後半では、図2Bに示すように、第2の圧力源110Bをカテーテル100に接続することにより、更に高い圧力を加え、血餅に対する力を低減することができる。
【0065】
このようなサイクルを繰り返すことにより、カテーテル100の先端における圧力変化が血餅に対する「ジャックハンマー」として作用し、血餅を「疲労」させ、その結果、血餅を破砕することができる。カテーテル100の先端は前後に動くことができないので、粘弾性の血餅をデバイスの近位部分に対して移動させ、当該血餅を伸張させて、カテーテル100の内径内に嵌合させることにより、「疲労」が達成される。これにより、第1の圧力源110Aと一体の、または第1の圧力源110Aに接続されている容器などのキャニスタまたはその他の容器内に血餅を捕捉する確率を高めることができる。
【0066】
図示はしていないが、いくつかの例示的な実施形態では、更なる動作モードを使用できることを理解されたい。例えば、空気または不活性ガスを第3の導管内で圧縮することができるので、得られる「ジャックハンマー」効果を調節するために、ある量の空気をシステム内に導入するべく、追加の弁を使用することができる。
【0067】
図3図5は、ピンチ弁の代わりに、効率的にピンチチューブを作動させるのに適したハンマーを有したソレノイドを備える例示的な実施形態を示している。図3に最もよく示すように、このような例示的な実施形態は、1対の導管121,122を通すことができるカートリッジ120を備えるようにすることが可能であり、導管121,122のそれぞれは、圧力源110A,110Bとカテーテル100との間に接続される。ソレノイド作動式のハンマー126A,126Bは、カテーテル100に印加される圧力レベルを制御するために、導管121,122を選択的かつ交互に挟むように動作可能とすることができる。
【0068】
図3に示す例示的な実施形態において、導管121,122のそれぞれは、U字状の形状で配置することができるが、いくつかの実施形態では、別の配置を用いてもよいことが分かる。一般に、第1の導管121は、カートリッジ120の第1の側を通り、U字状に配置されて延在し、第2の導管122は、カートリッジ120の第2の側を通り、第1の導管121に平行なU字状に配置されて延在するようにしてもよい。
【0069】
導管121,122のそれぞれは、カテーテル100と、圧力源110A,110Bの少なくとも1つとの双方に、流体的な接続などによって連通することができる。より具体的には、第1の導管121が、第1の端部121Aにおいて第1の圧力源110Aに接続され、第2の端部121Bにおいてカテーテル100に接続されるようにすることができる。同様に、第2の導管122は、第1の端部122Aにおいて第2の圧力源110Bに接続され、第2の端部122Bにおいてカテーテル100に接続されるようにすることができる。従って、第1の導管121は、第1の圧力源110Aとカテーテル100との間に接続することができ、第2の導管122は、第2の圧力源110Bとカテーテル100との間に接続することができる。
【0070】
図3図4Bを参照すると、カートリッジ120の例示的な実施形態は、湾曲した下端部および平坦な上端部を有した、実質的にU字状の形状を備え得ることが分かる。このような構成は、より詳細に以下で述べるように、ハウジング130の関連するキャビティ130A内へのカートリッジ120の挿入、およびキャビティ130A内からのカートリッジ120の取り外しを容易にする上で役立つものとなり得る。但し、カートリッジ120の形状、サイズ、および構成は、例えば、異なる様式の導管121,122、異なる数の導管121,122、異なる様式のハウジング130などに適合させるために、様々な実施形態において異なり得ることを理解されたい。
【0071】
図4Aおよび図4Bに最もよく示すように、カートリッジ120は、導管121,122を通すことができるカートリッジ開口部120A,120Bを備えていてもよい。より具体的には、図4Bに示すカートリッジ120の第1の端部が、湾曲した略U字状のスロットからなる第1の開口部120Aを備えることができることが分かる。同様に、図4Aに示すカートリッジ120の第2の端部は、湾曲した略U字状のスロットからなる第2の開口部120Bを備えることができることが分かる。従って、第1の導管121の中間部分は、第1の開口部120Aを通って配設することが可能であり、第2の導管122の中間部分は、第2の開口部120Bを通って配設することができる。
【0072】
引き続き図4Aおよび図4Bを参照すると、開口部120A,120Bのそれぞれは、対応するハンマー126A,126Bを受け入れて、その中に配置されたそれぞれの導管121,122を選択的かつ解除可能に封止するように、サイズを定め、配向し、配置することが可能な、拡大間隙を備えていてもよいことが分かる。開口部120A,120Bのそれぞれの拡大間隙は、カートリッジ120の底部付近に配置されるものとして示されているが、様々な実施形態において、様々な別の位置を使用できることを理解されたい。
【0073】
当業者に公知の広範な導管121,122を使用できることを理解されたい。一般に、導管121,122のそれぞれは、導管121,122の第1の端部121A,122Aと第2の端部121B,122Bとの間に延在する管腔を有した、細長い、弾性的な、可撓性または半可撓性の管状部材を備えていてもよい。例示的な実施形態において、導管121,122のそれぞれは、ピンチチューブを備えていてもよい。
【0074】
図4Aおよび図4Bに最もよく示すように、カートリッジ120は、関連するハウジング130内にカートリッジ120を適切に挿入するのに役立つ特徴を備えていてもよい。図示する例示的な実施形態では、カートリッジ120の第1の側部が、戻り止め受容部123(開口部など)を備えていてもよく、カートリッジ120の第2の側部が、キースロット124を備えていてもよいことが分かる。
【0075】
戻り止め受容部123は、ハウジング130の対応する戻り止め130Bと係合して、カートリッジ120をハウジング130に取り外し可能に固定するように構成することができる。キースロット124は、ハウジング130にある対応するキー130Cと係合して、カートリッジ120をハウジング130のキャビティ130A内に案内するように構成することができる。但し、様々な実施形態において、代替の構成を使用してもよいことを理解されたい。
【0076】
例えば、カートリッジ120における戻り止め受容部123およびキースロット124の位置を逆にして、戻り止め受容部123が、カートリッジ120の第2の側にあり、キースロット124が、カートリッジ120の第1の側にあるようにしてもよい。別の例として、案内/ロック機構の構成も、例えば、カートリッジ120ではなくハウジング130に戻り止め受容部123を有すること、ハウジング130ではなくカートリッジ120に戻り止め130Bを有すること、カートリッジ120ではなくハウジング130にキースロット124を有すること、および/またはハウジング130ではなくカートリッジ120にキー130Cを有することによって、逆にすることができる。
【0077】
図は、カテーテル100を、1対の圧力源110A,110Bのうちの一方と選択的に接続するようにカートリッジ120内に配置された1対の導管121,122を示しているが、様々な実施形態において、追加の導管121,122および/または圧力源110A,110Bを使用するようにしてもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、3つ以上の導管121,122が、3つ以上の圧力源110A,110Bと関連して使用されるようにしてもよい。このような構成により、必要に応じ、追加の圧力レベルをカテーテル100に印加できるようにすることが可能となる。
【0078】
図5を参照すると、カートリッジ120は、ハウジング130内に取り外し可能に挿入できることが分かる。より具体的には、ハウジング130が、使用のためにカートリッジ120を取り外し可能に挿入できるキャビティ130Aを備えていてもよい。キャビティ130Aの形状、サイズ、および位置は、様々な実施形態において異なり得るものであって、図示する例示的な実施形態によって範囲が限定されると解釈するべきではない。例えば、図5は、キャビティ130Aがハウジング130の上端にあってもよいことを示しているが、キャビティ130Aは、様々な実施形態において、ハウジング130の側部などの様々な別の位置に配置されてもよい。
【0079】
引き続き図5を参照すると、1対のソレノイド125A,125Bがハウジング130に取り付けられていてもよいことが分かる。より具体的には、第1のソレノイド125Aが、ハウジング130の第1の側に取り付けられ、第2のソレノイド125Bが、ハウジング130の第2の側に取り付けられてもよいことが分かる。ソレノイド125A,125Bは、様々な実施形態において、ハウジング130に固定して取り付けられるようにしてもよいし、取り外し可能に取り付けられるようにしてもよいし、また一体的に形成されてもよい。図3に示す実施形態では、ソレノイド125A,125Bのそれぞれがねじ山を備え、ハウジング130と螺合するようにしてもよいことが分かる。このようにして、ソレノイド125A,125Bは、保守または交換のために、必要に応じて取り外すことができる。
【0080】
図および説明では「ソレノイド」を示しているが、様々な別の様式の機械的、磁気的、電気的、および/または電磁的なアクチュエータを、図示のソレノイド125A,125Bと同じ機能を実行するために使用することが可能であって、ハンマー126A,126Bの作動のためのソレノイド125A,125Bに範囲が限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。様々な実施形態において、ソレノイド125A,125Bの代わりに、またはソレノイド125A,125Bに加えて、当業者に公知の広範なアクチュエータを使用することができる。
【0081】
図3および図5に最もよく示すように、ソレノイド125A,125Bのそれぞれは、導管121,122のうちの一方と選択的かつ解除可能に係合するための少なくとも1つのハンマー126A,126Bを備えていてもよい。より具体的には、第1のソレノイド125Aが、第1のハンマー126Aに接続され、第2のソレノイド125Bが、第2のハンマー126Bに接続されるようにしてもよいことが分かる。ハンマー126A,126Bのそれぞれは、導管121、122を挟むなどして、それぞれの導管121,122を封止するように適合された突起を備えていてもよい。従って、ハンマー126A,126Bのそれぞれを、カートリッジ120の開口部120A,120Bの拡大間隙と位置を合わせるように配置し、この拡大間隙を介して、導管121,122のそれぞれの一部分が露出されるようにすることができる。
【0082】
図3図5を参照すると、ソレノイド125A,125Bのそれぞれのストロークは、ソレノイド125A,125Bが、流体経路を開くために後退するとき、対応するハンマー126A,126Bが、それぞれの導管121,122の封止を完全に解除するのに十分な位置まで後退するように設定することができる。ハンマー126A,126Bが邪魔にならない状態では、カートリッジ120を容易に取り外すことが可能となり、新しいもの(新しい導管121,122が取り付けられたもの)を、同様に容易に取り付けることができる。カートリッジ120は、導管121,122が予め組み付けられた状態で使用者に提供されるようにすることが可能であり、それにより、導管121,122を弁に取り付けるために使用者が行わなければならない導管121,122のなんらかの伸張が不要となる。このような全体的な構成は、スペース要件に適合させたり、重力などの他の力に対抗したりするために、異なる向きにすることができる。また、このような構成は、使用者がポンプコンソール内のピンチ弁に対してチューブキットを着脱するための、操作が簡単で反復可能な方法を提供することができる。
【0083】
一般に、それぞれのソレノイド125A,125Bは、それぞれのハンマー126A,126Bが、対応する導管121,122を封止したり封止解除したりできるよう、関連するハンマー126A,126Bを前進または後退させるように動作可能とすることができる。一般に、ソレノイド125A,125Bは、圧力源110A,110Bのどちらがカテーテル100に適用されるかを切り替えるように、交互に前進および後退させることができる。いくつかの例では、短時間などの期間、圧力源110A,110Bの両方がカテーテル100に適用されるようにしてもよい。但し、いくつかの実施形態において、システムは、圧力源110A、110Bの両方が同時にカテーテル100と連通するのを防止するように構成してもよい。
【0084】
図は、1対のソレノイド125A,125Bおよび1対のハンマー126A,126Bが、1対の導管121,122と共に使用される例示的な実施形態を示しているが、別の実施形態では、特に追加の導管121,122および/または圧力源110A,110Bを使用する場合に、追加のソレノイド125A,125Bおよび/またはハンマー126A,126Bを使用してもよいことを理解されたい。従って、2つのハンマー126A,126Bを有した2つのソレノイド125A,125Bが、2つの圧力源110A,110Bと連通する2つの導管121,122を選択的に封止するために使用されるような、図示する例示的な実施形態に範囲が限定されると解釈されるべきではない。例えば、3つ以上の導管が、3つ以上の圧力源と連通している場合、3つ以上のハンマーを備えた3つ以上のソレノイドを使用することができる。
【0085】
使用時に、図3図5に示す例示的な実施形態は、少なくとも2つの圧力レベルを吸引カテーテル100に交互に印加するために使用することができる。第1の圧力レベルは、カテーテル100に向けて、当該カテーテル100内に血餅を引き込むために使用することができる。第2の圧力レベルは、カテーテル100内のいずれかの点に血餅が固着した場合に、この血餅の破砕を促進するために選択的に印加することができる。
【0086】
カートリッジ120は、ハウジング130のキャビティ130A内に挿入されるようにしてもよい。カートリッジ120のキースロット124は、ハウジング130内の対応するキー130Cと位置を合わせすることが可能であり、その後、カートリッジ120をキャビティ130A内に下降させることができる。完全に挿入されると、ハウジング130の戻り止め130Bが、カートリッジ120の戻り止め受容部123と係合し、多くの場合、可聴クリックを生成して、カートリッジ120が適切に取り付けられたことを使用者に示す。
【0087】
カートリッジ120がハウジング130内に挿入される前または後に、導管121,122を、圧力源110A,110Bおよびカテーテル100に流体的に接続することができる。一般に、第1の導管121の第1の端部121Aを、第1の圧力源110Aに流体的に接続し、第2の導管122の第1の端部122Aを、第2の圧力源110Aに流体的に接続することができる。導管121,122の第2の端部121B,122Bは、Y字状コネクタなどによって、単一のカテーテル100に接続するようにしてもよい。
【0088】
カートリッジ120がハウジング130内に挿入され、導管121,122が圧力源110A,110Bとカテーテル100との間に接続されると、システムは、使用準備が完了する。カテーテル100は、当業者に公知の方法を使用し、患者の体内の対象位置まで経路に沿って送ることができる。対象位置に到達すると、圧力源110A,110Bは、必要に応じて、選択的に作動または停止され、キャニスタ内などに血餅を回収できるように、血餅を吸引することができる。ソレノイド125A,125Bは、それぞれのハンマー126A,126Bが導管121,122を封止または封止解除することによってカテーテル100に印加される圧力のレベルを制御するように、選択的に作動させることができる。処理が完了すると、カートリッジ120をハウジング130から取り外して廃棄することが可能であり、更なる使用が必要となった場合に、最終的に別のカートリッジ120と交換することができる。
【0089】
図6図8は、ほぼ一定の安定状態の真空圧を、チューブキットおよびカテーテルシステムに印加して、血栓を収集キャニスタ内に吸引することができる吸引システムの例示的な実施形態を示しており、以下に更に説明するデバイスが、収集キャニスタとカテーテルとの間のチューブキットの一部として接続されている。このような例示的な実施形態は、サージ圧力レベルを選択的に印加して、カテーテル内に固着した血餅の破砕を促進するために使用することができる。
【0090】
図6図8は、静的吸引システムの例示的な実施形態の全サイクルを示す。図6は、プランジャが開始位置にあって弁が閉じた第1の動作状態を示している。図7は、プランジャが後退して弁を開いた第2の動作状態を示している。図8は、プランジャが元の位置に戻って弁を閉じた状態、即ち、第1の動作状態に戻っていることを示している。
【0091】
図6図8に示すように、シリンダ140は、協働してほぼ一定の安定状態の真空圧を印加するように動作可能な様々な内部構成要素のためのハウジングとして機能することができる。図は、シリンダ140を示しているが、ハウジングの形状は、様々な実施形態において異なり得ることを理解されたい。一般に、シリンダ140は、以下に説明するように、様々な構成要素が格納される内部キャビティを備えている。
【0092】
また、シリンダ140は、キャニスタを含む圧力源と連通可能な第1のポート140Aと、カテーテル100と連通可能な第2のポート140Bとを備えることができる。図6に示す例示的な実施形態において、シリンダ140の第1のポート140Aは、対応する第1の導管141Aに流体的に接続可能であり、第1の導管141Aは、血餅を収集するためのポンプおよび/またはキャニスタに接続される。シリンダ140の第2のポート140Bは、対応する第2の導管141Bに流体的に接続可能であり、第2の導管141Bは、カテーテル100に接続される。
【0093】
シリンダ140の内部キャビティは、図に示すように、プランジャ145を備えることができる。プランジャ145は、図6図8に示すように、シリンダ140内で前後にスライド可能な常磁性材料によって構成されていてもよい。プランジャ145の形状、サイズ、および構成は、様々な実施形態において異なり得るものであり、図示する例示的な実施形態によって限定されると解釈されるべきではない。プランジャ145とシリンダ140との間を密閉するため、1つまたは複数のOリング143を、プランジャ145の外縁とシリンダ140の内壁との間に配置してもよい。
【0094】
図6図8に示すように、プランジャ145を通って延びる通路を選択的に封止するように、弁144をプランジャ145に取り付けることができる。弁144は、例示的な実施形態において、図示するようなポリマ製のフラップ弁を備えることができる。弁144は、プランジャ145を通る通路を封止する第1の位置と、プランジャ145を通る通路を少なくとも部分的に開く第2の位置との間で、弁144をヒンジ式に調整することができるように、プランジャ145にヒンジ式に取り付けることができる。
【0095】
弁144は、プランジャを2つ以上の位置の間で調整することによって開閉することができる。一般に、プランジャ145は、図6に示すように、弁144がプランジャ145を通る通路を封止する第1の位置と、図7に示すように、弁144が開いて、プランジャ145を通る通路の封止を解除する第2の位置との間で調整可能とすることができる。
【0096】
プランジャ145を複数の位置の間で調整する方法は、様々な実施形態において異なり得る。例えば、磁気式、電気式、機械式、および/または電磁式のアクチュエータを含めて、当業者に公知の様々なアクチュエータを使用し、プランジャ145の位置を調整することができる。図示する例示的な実施形態において、プランジャ145は、常磁性材料で構成されていてもよく、アクチュエータは、コイル142を備えていてもよい。
【0097】
図6図8に示すように、コイル142は、シリンダ140の内壁に沿って巻かれた導電性材料からなるリード線またはその他の細長い部材で構成してもよい。図7に示すように、コイル142が適切な電圧および電流によって励磁されると、コイル142に向けてプランジャ145を引き付けることができる。コイル142を流れる電流が停止、または特定のレベルまで低下されると、コイル142は励磁されなくなるため、プランジャ145を解放することができる。1つまたは複数のばね141は、図8に示すような当初の開始位置にプランジャ145を戻すように動作可能とすることができる。
【0098】
換言すれば、コイル142が励磁されると、プランジャ145は、図7に示すように、ばね141の力に抗して、その駆動位置に移動することができる。移動可能(例えば、ヒンジ式、軸方向式移動、回転式など)にプランジャ145に接続され得る弁144は、図7に示すように、このとき開き、関連する圧力源によって印加される全体的な圧力に影響を及ぼさないように、流体が通過できるようにする。
【0099】
コイル142が非励磁になると、プランジャ145は、ばね141によって加えられる力に起因して、元の位置に戻ることができる。このとき、弁144の外側に作用する流体の背圧により、図8に示すように、弁144が再び閉じられる。弁144が閉じると、プランジャ145の戻りストロークにより、関連するポンプによって印加される静的圧力を超える追加の吸引圧力を生成することができ、それによって、血餅の破砕のためなどのサージ真空圧を印加することができる。
【0100】
従って、コイル142を継続的に励磁および非励磁にすることにより、ポンプによって生成されるベースラインの静的真空圧と、プランジャの移動によって生成されるサージ圧力との間で圧力サイクルが生じ、それによって動的吸引を達成することができる。
【0101】
図9図11は、吸引式血栓除去システムの更に別の例示的な実施形態を示している。図9図11の例示的な実施形態は、本明細書に開示および/または説明する別の例示的な実施形態と同様に、新規なアプローチを使用して非線形の動的な血栓除去を容易にするように構成することができ、このアプローチでは、吸引チューブキットの一部として最終的に滅菌された状態で提供される使い捨てモジュールにより、線形真空圧力特性および様々な非線形特性のいずれかを使用して血餅を吸引する機能が提供される。
【0102】
引き続き図9図11を参照すると、例示的な実施形態は、吸引ポンプに接続された場合に、血栓を吸引するために非線形真空圧力特性を使用する機能を操作者に提供可能なチューブキットを備えることができる。このような例示的な実施形態は、操作者が静的吸引と非線形真空圧力特性の選択とを切り替えることを可能にする電子モジュールを有した使い捨てチューブキットの形態をとることができる。
【0103】
モジュールは、弁本体サブアセンブリと、ソレノイドと、回路基板と、冷却ファンと、ブラケットと、全てを一緒に固定可能なボルスタプレートとを備えた上部および下部エンクロージャを備えることができる。セレクタスイッチにより、操作者が、静的吸引と動的吸引との切り替え、または特定の動的真空圧力特性の選択を行うことを可能とすることができる。
【0104】
モジュールは、吸引ポンプによって電力が供給されるようにすることができる。通信ポートは、ポンプからの電力の伝送と、モジュールの回路基板(有する場合)とポンプ内の回路との間の信号の双方向通信との両方を可能にすることができる。但し、以下に記載するようないくつかの例示的な実施形態では、回路基板が、代わりにポンプ自体に存在していてもよい。
【0105】
弁本体は、2つの異なる真空源(例えば、高真空の圧力の第1の真空源、および第1の真空源よりも高く、「リリーフ圧力」と呼称することがある圧力の第2の真空源)からの配管を可能とするものであってもよい。管は、ポンプ側からモジュールに入り、患者側を通って出るようにして、吸引カテーテルに接続する前に、Y字状コネクタなどを介して合流させるようにしてもよい。
【0106】
図9図11に示す例示的な実施形態において、エンクロージャ150は、システムの様々な内部構成要素を収容するためのハウジングとして機能し得ることが分かる。エンクロージャ150の形状、サイズ、および構成は、様々な実施形態において異なり得るものであり、従って、図示する例示的な実施形態によって範囲が限定されると解釈されるべきではない。
【0107】
エンクロージャ150の内部には、吸引システムの様々な構成要素を備えることができる。図9および図10に示すように、ボルスタプレート156は、様々な様式の締結具などによって、エンクロージャ150内に固定することができる。ベッド155は、ボルスタプレートに固定可能であって、ベッド155は、スライド152のためのストッパとして機能し得る垂直部分と、弁本体151を配置可能な水平部分との両方を備えることができる。従って、ベッド155は、図9に最もよく示すような、実質的にL字状の形状を備えていてもよい。
【0108】
図11に最もよく示すように、弁本体151は、スライド152を受容するような形状およびサイズとすることができることが分かる。1対の導管160A,160Bは、弁本体151およびスライド152の両方を貫通して延在することができる。第1の導管160Aが、第1の圧力源110A(例えば、真空圧力)とカテーテル100との間に接続され、第2の導管160Bが、第2の圧力源110B(例えば、リリーフ圧力)とカテーテル100との間に接続されるようにすることが可能であり、第1の導管160Aおよび第2の導管160Bの両方は、弁本体151を通過しており、本明細書で説明するように、スライド152によって選択的にかつ交互に封止されるようになっている。
【0109】
様々な様式の導管160A,160Bを使用可能であり、限定するものではないが、これには当業者に公知の様々な様式のピンチチューブが含まれる。更に、様々な様式の圧力源110A,110Bを使用することができる。一般に、圧力源110A,110Bは、任意の流体ではなく、空気または不活性ガスに依存するものであってもよい。両方の圧力源110A,110Bは、単一の吸引ポンプから構成されるようにしてもよい。例示的な実施形態において、圧力源110A,110Bのうちの1つは周囲の大気を含んでいてもよい。
【0110】
引き続き図11を参照すると、スライド152が第1の導管160Aを封止する第1の位置と、スライド152が第2の導管160Bを封止する第2の位置との間で、スライド152を調整できるように、スライド152を、移動可能に弁本体151に接続できることが分かる。このようにして、カテーテル100に印加される圧力のレベルは、第1の圧力(高真空の圧力)と、第1の圧力よりも高い第2の圧力(リリーフ圧力)との間で交互に切り替えることができる。
【0111】
スライド152を、複数の位置の間で調整する方法は、様々な実施形態において異なり得る。一般に、アクチュエータを使用して、スライド152を少なくとも1つの方向に(例えば、第1の位置から第2の位置に)調整することができる。非限定的な例として、アクチュエータは、スライド152を押すことおよび/または引くことができるように動作可能であってもよい。電気式、機械式、磁気式、および/または電磁式のアクチュエータを含む、当業者に公知の様々な様式のアクチュエータを使用することができる。
【0112】
図9図10に示す例示的な実施形態において、アクチュエータは、ソレノイド153を備えていてもよいことが分かる。ソレノイド153が励磁されると、スライド152は、前方に駆動されることにより、2つの導管160A,160Bのうちの一方を、例えば挟んで、封止することができる。より具体的には、例示的な実施形態において、ソレノイド153に通電することにより、スライド152を移動させて第2の導管160Bと係合させ、当該第2の導管160Bを封止する一方、第1の導管160Aは開いたままとすることができる。
【0113】
引き続き図9図10を参照すると、ソレノイド153は、エンクロージャ150内のベッド155に固定可能なブラケット153Aに取り付けることができることが分かる。ブラケット153Aは、図10に示すように、ソレノイド153のシャフトが貫通可能な開口部またはスロットを備えることができる。冷却を目的として、冷却ファン159などの冷却装置をソレノイド153に隣接して配置してもよい。エンクロージャ150は、ファン159からの空気流を受け入れるための対応する通気開口部を備えていてもよい。
【0114】
一般に、スライド152は、高真空の圧力を印加する第1の位置に向けて付勢されるようにしてもよい。従って、ソレノイド222などのアクチュエータから力が加わらない場合、スライド152は、第1の導管160Aが封止され、第2の導管160Bが開かれる位置に静止することができる。様々なタイプの付勢部材を使用し、スライド152を第1の位置に向けて付勢するようにしてもよい。図9図10に示す例示的な実施形態では、ばね152Cが、第1の位置に向けてスライド152を付勢し、ソレノイド153などのアクチュエータからの力がないときには、スライド152が自然に元の位置に戻ることができることが分かる。限定はしないが、コイルばね、圧縮ばね、ねじりばねなど、様々な様式のばね152Cを使用することができる。
【0115】
図10に最もよく示すように、スライド152は、弁本体151に形成された対応するスロット内にあって当該スロット内をスライドするスライドピン152A,152Bを備えることができる。スライドピン152A,152Bは、スライド152の移動をガイドするように機能し、スライド152がいずれかの方向に過度に移動するのを防止するストッパとして機能することができる。図10に示す例示的な実施形態では、第1のスライドピン152Aが、弁本体151の第1のスロット内にスライド可能に配置され、第2のスライドピン152Bが、弁本体151の第2のスロット内にスライド可能に配置される。但し、別の実施形態では、より多くの(例えば、3つ以上の)、またはより少ない(例えば、1つの)スライドピン152A,152Bを使用してもよいと理解すべきである。
【0116】
図9図10を参照すると、回路基板154を、ベッド155の下に配置してもよいことが分かる。回路基板154は、ソレノイド153の動作を制御し、ひいては、スライド152の動作を制御することができる。回路基板154は、より詳細に以下で説明し、図16に示すように、心臓律動に従うなどのようにして、特定の時点でスライド152の移動を指示するように構成することができる。いくつかの例示的な実施形態において、回路基板154は、以下に説明し、図13Aに示すように、吸引モジュール220ではなく、ポンプコンソール200と一体化されていてもよい。
【0117】
図9に最もよく示すように、セレクタスイッチ157は、エンクロージャ150の側部に配置してもよい。エンクロージャ150におけるセレクタスイッチ157の配置は、様々な実施形態において異なり得るものであって、図示する例示的な実施形態によって範囲が限定されると解釈すべきではないことを理解されたい。セレクタスイッチ157は、カテーテル100に印加される異なる圧力レベルを、手動で選択するために使用することができる。
【0118】
図10に最もよく示すように、通信ポート158は、エンクロージャ150の側部に配置してもよい。エンクロージャ150における通信ポート158の配置は、様々な実施形態において異なり得るものであって、図示する例示的な実施形態によって範囲が限定されると解釈すべきではないことを理解されたい。通信ポート158は、回路基板154および/またはソレノイド153と通信することができる。
【0119】
使用時において、図9図11に示す例示的な実施形態は、最初に、1つ以上の圧力源110A,110Bとカテーテル100との間に接続することができる。導管160A,160Bのそれぞれの第1の端部は、ポンプコンソール200など、それぞれの圧力源110A,110Bに流体的に接続することができる。導管160A,160Bのそれぞれの第2の端部は、図11に示すようなYジョイントなどのYコネクタ160Cの使用などによって、カテーテル100に流体的に接続されようにしてもよい。次に、カテーテル100を血栓の部位まで進めることが可能であり、ポンプコンソール200を作動させ、カテーテル100に真空圧力を印加することができる。圧力レベルは、必要に応じ、セレクタスイッチ157を使用することにより手動で、または回路基板154のプログラミングにより自動的に調整され、血栓をカテーテル100内に吸引して、最終的にキャニスタ内などに収集することができる。
【0120】
図9図11に示す例示的な実施形態は、スライド152が導管160A,160Bの間に位置して、どちらも封止しない場合のように、導管160A,160Bの両方が開いている瞬間があり得る。図12は、所定のどの時点においても、導管160A,160Bの一方のみが開いているようにする例示的な実施形態を示している。
【0121】
図12に示す例示的な実施形態では、スライド152が第1のスライド部材152Dと第2のスライド部材152Eとに分割されていることが分かる。スライド部152D,152Eの間には、スライドばね152Fなどの付勢部材を配置してもよい。このようにして、2つの導管160A,160Bの間のなんらかの「不感域」を排除することにより、導管160A,160Bの一方が常に封止され、導管160A、160Bの他方が常に開かれるようにして、導管160A,160Bの両方が同時に開いたり閉じたりする期間をなくすことができる。
【0122】
図13Aおよび図13Bは、ポンプコンソール200および動的吸引モジュール220を含む全体的な吸引システムを示している。当業者に公知の様々な様式のポンプおよびポンプコンソールを使用することができる。動的吸引モジュール220は、本明細書に記載および/または図示する吸引システムの例示的な実施形態のいずれかを備えることができる。
【0123】
図13Aは、ポンプコンソール200と動的吸引モジュール220の例示的な実施形態との間の相互接続を示している。このような例示的な実施形態では、ポンプコンソール200によって制御が実行されるように、回路基板154を、吸引モジュール220ではなくポンプコンソール200と一体化するようにしてもよい。ポンプコンソール200と吸引モジュール220との間に通信ケーブル230を電気的に接続することにより、吸引モジュール220の動作を制御することができる。
【0124】
ポンプコンソール200は、カテーテル100を介して血餅が回収された後に、この血餅を受け取って保管するための真空キャニスタ210を備えることができる。適切な導管を、最終的にカテーテル100内に合流する前に、ポンプコンソール200と吸引モジュール220との間に流体的に接続することができる。
【0125】
図13Bは、図13Aに示す動的吸引モジュール220の例示的な実施形態の更に詳細な図である。但し、前述のように、動的吸引および/または安定吸引のために本明細書に開示および/または説明するシステムおよび/または方法のいずれも、図13Aのポンプコンソール200と共に使用することができる。
【0126】
図13Bに示す例示的な実施形態において、エンクロージャ150は、完成したエンクロージャ150を形成するために一体に結合し得る上部ハウジング221Aおよび下部ハウジング221Bを備えていてもよいことが分かる。ソレノイド222およびスライド機構223は、ボルスタプレート224の上方で上部ハウジング221Aと下部ハウジング221Bとの間のエンクロージャ150内に配置することができる。カテーテルポート225は、カテーテル100を流体的に接続可能な導管160A,160Bを合流させた後に設けることができる。通信ケーブル230は、ポンプコンソール200に接続するために、エンクロージャ150から延在させることができる。
【0127】
図14図16は、本明細書に開示および/または説明される様々なシステムおよび/または方法を使用して達成され得る例示的な圧力特性を示している。図14は、一定の真空レベルがカテーテル100に印加される静的圧力と、カテーテル100内に固着した血餅を破砕する必要があるときなどに、「ジャックハンマー」効果を生成するために、高真空レベルおよび低真空レベルが交互にカテーテル100に印加される動的圧力との間で交互に切り替える圧力特性を示している。図15は、動的圧力をより詳細に示し、「ジャックハンマー」効果を生成するために、より高い圧力とより低い圧力との間で圧力がどのように交互に切り替わるかを示している。
【0128】
いくつかの例示的な実施形態において、吸引システムは、患者の心臓律動と密接に相関する動的圧力レベルを適用するように構成することができる。図16は、圧力レベルが患者の心臓律動と同期する例示的な圧力特性を示している。
【0129】
圧力レベルの繰り返しの頻度は、リリーフ圧力が拍動と拍動との間(拡張期)に印加され、真空圧力が拍動(収縮期)と同期して印加されるように、位相調整/同期させることができる。このような構成は、血餅に対する圧力がほんのわずか緩和されるリリーフサイクル中に、心臓律動の収縮期圧力によって血餅がカテーテル100から運び去られるのを確実になくすことができるようにするものである。
【0130】
例示的な実施形態において、心拍数モニタなどの心臓モニタからのデータは、上述のように、ポンプコンソール200および吸引モジュール220のいずれかと一体化された回路基板154など、吸引システムの制御回路に伝達することができる。但し、セレクタスイッチ157を使用した手動切り替えを含むがこれに限定されない様々な別の方法を、患者の心臓律動と圧力特性を同期させるために使用することができる。別の例として、局所圧力センサなどの圧力センサを、患者の心臓律動と同期するために使用してもよい。
【0131】
条項
【0132】
例示的な実施形態を、以下の番号付き条項に記載する。
【0133】
第1項 患者から血栓を除去する方法は、血餅を回収するときに吸引カテーテルに第1の圧力レベルを印加することと、血餅がカテーテル内に固着した場合に、血餅を破砕するために、第2の圧力レベルを印加することとを含んでいてもよい。
【0134】
第2項 患者から血栓を除去する方法は、血餅を回収するために吸引カテーテルに安定圧力特性を適用することを含んでいてもよい。
【0135】
第3項 患者から血栓を除去する方法は、血餅を破砕するために吸引カテーテルに動的圧力特性を適用することを含んでいてもよく、動的圧力特性は、より高い圧力レベルとより低い圧力レベルとの間での交互の切り替えを含む。
【0136】
第4項 患者から血栓を除去する方法は、血餅を吸引するときに、安定圧力特性と動的圧力特性とを交互に切り替えることを含んでいてもよい。
【0137】
第5項 患者から血栓を除去する方法は、動力または力の印加がない場合でも、安定した吸引レベルが依然として吸引カテーテルに印加されるように、弁またはその他の機構を付勢することを含んでいてもよい。
【0138】
第6項 患者から血栓を除去する方法は、患者の心臓律動を監視することと、動的圧力特性を心臓律動と同期させることとを含んでいてもよい。
【0139】
第7項 患者から血栓を除去する方法は、心拍と心拍との間に第1の真空レベルを印加することと、心拍に同期して第2の真空レベルを印加することとを含んでいてもよい。
【0140】
第8項 患者から血栓を除去する方法は、吸引ポンプと吸引カテーテルとの間にカートリッジを接続し、カートリッジを通り、第1の導管が第1の圧力源に接続され、第2の導管が第2の圧力源に接続されるようにしてもよい。
【0141】
第9項 第8項に記載の方法は、第1のハンマーを作動させて第1の導管を封止することと、第2のハンマーを作動させて第2の導管を封止することとを含んでいてもよい。
【0142】
第10項 患者から血栓を除去する方法は、吸引ポンプと吸引カテーテルとの間にシリンダを接続することを含んでいてもよく、シリンダは、安定真空レベルがカテーテルに印加される第1の位置と、より高真空のサージ真空レベルがカテーテルに印加される第2の位置との間で調整されるように構成された常磁性プランジャを備える。
【0143】
第11項 第10項に記載の方法は、プランジャを通って延びる通路を選択的に封止するように、ヒンジ式に弁を取り付け、プランジャが第2の位置に調整されたときに、弁が開いて通路に露出するようにすることを含んでいてもよい。
【0144】
第12項 患者から血栓を除去する方法は、第1の圧力レベルを印加する第1の圧力源に接続された第1の導管をスライド機構が封止する第1の位置と、第2の圧力レベルを印加する第2の圧力源に接続された第2の導管をスライド機構が封止する第2の位置との間でスライド機構を調整することを含んでいてもよい。
【0145】
第13項 第12項に記載の方法は、ソレノイドを用いてスライド機構を作動させることを含んでいてもよい。
【0146】
第14項 第12項および/または第13項に記載の方法は、スライド機構を第1の位置に向けて付勢することを含んでいてもよい。
【0147】
本明細書の実施形態、特徴、または詳細は、いずれも、互いに関連して使用することができることに留意されたい。言い換えれば、特定の特徴について個別に説明してきたが、これらの特徴の任意の組み合わせを互いに組み合わせることができることが考えられる。従って、本明細書は、本明細書に記載の特徴の任意の組み合わせを有した実施形態を含むものである。
【0148】
特定の実施形態および用途に関して本発明を説明したが、当業者であれば、本開示に照らして、請求された発明の意図から逸脱したり、範囲を超えたりすることなく、更なる実施形態および変形を生成することが可能である。従って、本明細書の図面および説明は、本発明の理解を促進するために一例として提供されるものであって、本発明の範囲を限定すると解釈するべきでないことを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、
第1の圧力源と、
第2の圧力源と、
前記カテーテルと前記第1の圧力源との間に接続された第1の導管と、
前記カテーテルと前記第2の圧力源との間に接続された第2の導管と、
封止機構とを備え、
第1の状態において、前記第1の圧力源が前記カテーテルに第1の圧力を印加するように、前記封止機構が前記第2の導管を封止し、
第2の状態において、前記第2の圧力源が前記カテーテルに第2の圧力を印加するように、前記封止機構が前記第1の導管を封止し、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高い、
吸引式血栓除去システム。
【請求項2】
前記第1の圧力は、雰囲気圧力より508~762mmHg低い、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項3】
前記第2の圧力は、雰囲気圧力より0~508mmHg低い、請求項2に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項4】
前記封止機構は、前記第1の状態と前記第2の状態との間でスライド可能なスライド部材から構成される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項5】
前記第1の状態において、前記スライド部材が前記第1の導管を挟み、前記第2の状態において、前記スライド部材が前記第2の導管を挟む、請求項4に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項6】
前記封止機構は、前記第1の状態に向けて付勢される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項7】
前記封止機構を前記第1の状態に向けて付勢するばねを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項8】
前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記封止機構を調整するアクチュエータを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、ソレノイドから構成される、請求項8に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項10】
前記第1の圧力源および前記第2の圧力源は、単一のポンプから構成される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項11】
前記第1の導管および前記第2の導管は、Yジョイントによって前記カテーテルに接続される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項12】
第1の動作状態において、静的圧力が前記カテーテルに印加され、第2の動作状態において、動的圧力が前記カテーテルに印加される、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項13】
前記第1の動作状態と前記第2の動作状態との間で選択するためのスイッチを更に備える、請求項12に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項14】
前記封止機構が患者の心臓律動と同期して前記第1の状態と前記第2の状態との間で調整するように、前記封止機構とやりとりする心拍数モニタを更に備える、請求項1に記載の吸引式血栓除去システム。
【請求項15】
カテーテルと、
ポンプと、
前記カテーテルと前記ポンプとの間に接続された第1の導管と、
前記カテーテルと前記ポンプとの間に接続された第2の導管と、
封止機構とを備え、
第1の状態では、前記第1の導管が前記カテーテルに第1の圧力を印加し、前記第2の導管が前記封止機構によって封止され、
第2の状態では、前記第2の導管が前記カテーテルに第2の圧力を印加し、前記第1の導管が前記封止機構によって封止される、
吸引式血栓除去システム。
【国際調査報告】