(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】デジタルロードマップについての局所的な妥当性の検査
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518447
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022075330
(87)【国際公開番号】W WO2023046521
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021210568.8
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シェハベルディン アブデルガワド
(72)【発明者】
【氏名】ウラディスラフ タナネフ
(72)【発明者】
【氏名】ダニー ヒエンドリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル シュテュブラー
(72)【発明者】
【氏名】ボリスラフ アンティク
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ヘフェルリン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181EE02
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
デジタルロードマップ(3)が少なくとも1つの設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映しているか否かを検査するための方法(100)であって、・少なくとも1つの姿勢(1a)からシーン(1)の観測(1b)を取得するステップ(110)と、・観測(1b)から、1つ又は複数の他の道路利用者(2)の実際挙動(2a)を算定するステップ(120)と、・デジタルロードマップ(3)の1つ又は複数の特徴(3a)に基づいて、1つ又は複数の他の道路利用者(2)の目標挙動(2b)を算定するステップ(130)と、・実際挙動(2a)が目標挙動(2b)と一致したことに応答して(140)、少なくとも目標挙動(2b)が算定された特徴(3a)に関して、デジタルロードマップ(3)が設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していることを確認するステップ(150)と、を含む方法(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルロードマップ(3)が少なくとも1つの設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映しているか否かを検査するための方法(100)であって、
・少なくとも1つの姿勢(1a)からシーン(1)の観測(1b)を取得するステップ(110)と、
・前記観測(1b)から、1つ又は複数の他の道路利用者(2)の実際挙動(2a)を算定するステップ(120)と、
・前記デジタルロードマップ(3)の1つ又は複数の特徴(3a)に基づいて、前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)の目標挙動(2b)を算定するステップ(130)と、
・前記実際挙動(2a)が前記目標挙動(2b)と一致したことに応答して(140)、少なくとも前記目標挙動(2b)が算定された特徴(3a)に関して、前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していることを確認するステップ(150)と、
を含む方法(100)。
【請求項2】
・前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)及び/又はその実際挙動(2a)が、前記デジタルロードマップ(3)の基準系へ変換され(131)、
・前記基準系において、前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)が、前記目標挙動(2b)に関連する前記デジタルロードマップ(3)の特徴(3a)に関連付けられる(132)、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記デジタルロードマップ(3)の同一の特徴(3a)に関連付けられている複数の他の道路利用者(2)に関する記述が、前記特徴(3a)がどの程度妥当であるかに関する記述へと統合される(141)、
請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記デジタルロードマップ(3)の少なくとも1つの特徴(3a)に対して、算定された実際挙動(2a)の条件のもとで当該特徴(3a)が妥当であることを表す条件付き確率又は条件付き成算が算定される(142)、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記特徴(3a)が妥当であることの無条件の基礎確率又は無条件の基礎成算の付加的な仮定のもとで、前記条件付き確率又は前記条件付き成算が算定される(142a)、
請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記基礎確率又は前記基礎成算は、前記デジタルロードマップ(3)の経年数の増加に伴って単調に減少させられる(142b)、
請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記条件付き確率又は前記条件付き成算は、前記デジタルロードマップ(3)の前記特徴(3a)の条件のもとで、複数の他の道路利用者(2)のうちの1つの道路利用者(2)の実際挙動(2a)が妥当であることをそれぞれ表す条件付き確率又は条件付き成算の積を含む、
請求項5又は6に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記観測(1b)は、車両(50)に携行されている少なくとも1つのセンサ(51)によって取得され(111)、
前記設定された姿勢(1a)が、前記観測(1b)と前記デジタルロードマップ(3)との比較に基づいて算定される(112)、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、
・前記設定された姿勢(1a)の複数の変更候補(1a’)が算定され(161)、
・前記デジタルロードマップ(3)につき、各変更候補(1a’)に対して、変更された前記姿勢(1a)を起点として視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかが再度検査され(162)、
・この場合に達成された改善が設定された基準を満たしたことに応答して(163)、前記センサ(51)によって取得された観測からの前記設定された姿勢(1a)の算定が誤処理であることが確認される(164)、
請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、
・前記デジタルロードマップ(3)の複数の変更候補(3’)が算定され(171)、
・このようにして変更された前記デジタルロードマップ(3)につき、前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかがそれぞれ再度検査され(172)、
・前記検査の結果が設定された基準を満たしたことに応答して(173)、実際の条件を最も良好に反映している変更されたデジタルロードマップ(3)によって従前のデジタルロードマップ(3)が置き換えられる(174)、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記デジタルロードマップが前記設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していることに応答して、
・前記デジタルロードマップ(3)は、少なくとも部分的に自動化された運転を行う車両(50)の行動計画(180a)、及び/又は、車両(50)内の運転支援システムの行動計画(180a)のために使用され(180)、
・前記車両(50)は、前記行動計画(180a)に基づいて制御される(190)、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
1つ又は複数のコンピュータにおいて実行されるときに、前記1つ又は複数のコンピュータに請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法(100)を実施させるための機械可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを含む機械可読データ担体及び/又はダウンロード製品。
【請求項14】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを含む、及び/又は、請求項13に記載の機械可読データ担体及び/又はダウンロード製品を備える1つ又は複数のコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば少なくとも部分的に自動化された運転を行う車両又は運転支援システムによって使用されるデジタルロードマップの検査に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
運転支援システム及び少なくとも部分的に自動化された運転のためのシステムは、車両の行動を計画するためにデジタルロードマップを利用している。例えば、完全に又は部分的に衛星によって支援されている測位システムのセンサデータ及び/又は情報に基づいて特定された車両の姿勢に基づいて、ロードマップから情報が呼び出され、当該計画に取り入れられる。
【0003】
車両によって実行される車両行動をそれぞれの交通条件に適合させるために、デジタルロードマップは、常に最新の状態に維持されなければならない。しかし、それぞれのメーカから提供される全ての更新が適時に組み入れられても、交通条件が短期間だけ変化し、このためにデジタルロードマップによって正確に反映されなくなる可能性は依然として存在する。例えば、車線を使用不能にする工事現場が夜間に設置されることがある。
【0004】
国際公開第2019/038185号には、モバイル装置を用いて事前に外部サーバから受信されたデジタルマップのための補正を検出し、当該補正のために計算された高精度のマップを外部サーバへ返送することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
本発明の枠組みにおいて、デジタルロードマップが少なくとも1つの設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映しているか否かを検査するための方法が開発されている。これに関連して、姿勢とは、デジタルロードマップの座標系に対する相対的な位置及び向きを含む。例えば、車両の姿勢は、車両の位置とこの車両が向いている方向との双方を含む。位置及び向きの双方により、車両から何を正確に視認することができるかが特定される。当該姿勢は、例えば、任意の位置特定デバイスによって特定可能であり、本明細書に記載する方法の入力を表している。位置特定デバイスにより、特に、例えば車両から視認可能な特徴をデジタルロードマップ内の特徴に適合させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該方法の枠組みにおいては、少なくとも1つの姿勢からのシーンの観測が取得される。このことにより、特に、制御すべき車両の姿勢がシーン内に配置され、ここでの観測が当該車両から作成可能となる。制御すべき車両とは、一般的な語用において、自車両とも称される。
【0008】
ここでの観測から、1つ又は複数の他の道路利用者の実際挙動が算定される。このことは特に、例えば、観測に基づいて、移動する対象物を識別し追跡することを含み得る。このようにして算定された他の道路利用者の軌道から、この道路利用者の実際挙動の様々な局面を算定することができる。当該局面は特に、例えば、交通標識、車線標示又は他の直接に評価可能な示唆とは異なり、シーンから直接には推定することができない局面を含み得る。
【0009】
デジタルロードマップの1つ又は複数の特徴に基づいて、1つ又は複数の他の道路利用者の目標挙動が算定される。道路利用者の目標挙動に影響を与えるデジタルロードマップの特徴の例として、
・走行道路間又は車線間に存在している接続部を含む走行道路及び/又は車線の配置構成、
・それぞれの車線変更がどの程度まで許容されるかの規定を含む車線間の境界、
・所定の目的地までの走行にとって好ましい走行経路、
・規定された走行方向、並びに、
・優先通行規則、
が挙げられる。
【0010】
ここで、実際挙動が目標挙動と一致しているか否かが検査される。このことが少なくとも設定された規模で又は設定された基準に従って成り立つ場合、少なくとも当該目標挙動が算定された特徴に関して、デジタルロードマップが設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していることが確認される。これに対して、実際挙動が目標挙動に一致していない場合には、当該目標挙動に関連付けられたデジタルロードマップの1つ又は複数の特徴が誤って形成されていること、すなわち、実際の条件に一致しないことを識別することができる。
【0011】
こうした検査を首尾良く進行させるために、一方では、他の道路利用者の実際挙動を適当に算定しなければならない。このためには、同様に、シーンの観測を十分に良好な品質で検出することが必要である。
【0012】
他方では、ここでの実際挙動が目標挙動に一致していなければならない。このことは、この場合にもまず最初に、設定された姿勢に基づいて呼び出されるデジタルロードマップの特徴が、シーンの観測を同様に取得したときの姿勢に正確に関連していることを必要とする。すなわち、例えば、誤処理を行っているGPSモジュールに起因して、車両が実際とは異なる姿勢を取っている場合、誤った姿勢に対するデジタルロードマップの特徴が呼び出されることとなる。なお、全く異なる姿勢に基づいて算定された目標挙動は、別の姿勢ひいては別の交通状況に関する実際挙動とも一致し得ない。さらに、他の道路利用者は、目標挙動に対応する程度に客観的に行動していなければならない。
【0013】
これらの全ての条件が満たされている場合、観測の検出と車両の固有姿勢の算定との双方が適正に機能しており、かつ、同時にここでの姿勢に関してデジタルロードマップも現実に即した状態でマッピングされていることを、高い確率で想定することができる。すなわち、1回のみの検査で、システム全体の多数のコンポーネントが1回ずつテストされる。よって、他の道路利用者の実際挙動が目標挙動と一致している通常のケースにおいては、車両が正しい姿勢にあり、最新のデジタルロードマップを用いて処理が行われていることを想定することができる。したがって、当該姿勢及び当該デジタルロードマップを用いて計画された車両行動は、交通状況に適合している確率が高い。
【0014】
これに対して、実際挙動がデジタルロードマップに基づいて算定された目標挙動と一致していない場合、その時点ではまだその正確な原因を一義的に推定することはできない。しかし、多くのケースにおいて、種々の原因の可能な寄与分を少なくとも部分的に確率論的にモデリングすることができる。ここで、例えば、運転者による速度制限の無視は、制裁措置の程度が比較的小さいため、赤信号通過又は自動車専用道路上での方向転換禁止の無視よりも発生し易い。
【0015】
なお、第一に重要なことは、予想通りの機能動作がそもそも行われなかったことが確認されることである。こうした情報は、対抗措置を導入するために既に十分なものとなり得る。例えば、
・他の道路利用者の実際挙動から、デジタルロードマップの誤った補正を独立して推論するように試行することができる、
・車両の運転者に対して、制御を完全に又は部分的に再び担当するように要求することができる、
・運転者支援システム又は少なくとも部分的に自動化された運転のためのシステムを、エラーをより多く受信し得る機能を減少させた動作モードへと移行させることができる、又は、
・この種の自動化システムを完全に停止させることができ、このことは、例えば、事前に計画された緊急停止軌道に車両を乗せることにつなげることができる、
といったことであり得る。
【0016】
1つ又は複数の他の道路利用者及び/又はその実際挙動を、特に、例えばデジタルロードマップの基準系へと変換することができる。次いで、当該基準系において、ここでの他の道路利用者及び/又はその実際挙動を、目標挙動に関連するデジタルロードマップの特徴に関連付けることができる。デジタルロードマップに登録されている全ての特徴が全ての道路利用者の目標挙動に影響を与えるわけではない。この場合、例えば、道路への進入が、所定のサイズ又は所定の重量を上回る車両に対してのみ禁止されることがある。
【0017】
特に、例えば、デジタルロードマップの同一の特徴に関連付けられている複数の他の道路利用者に関する記述を、当該特徴がどの程度妥当であるかに関する記述へと統合することができる。このようにすることにより、例えば、規定されている目標挙動に意識的に従わない個々の道路利用者の影響を抑制することができる。妥当性検査のための基礎となることは、他の道路利用者の大部分が設定された目標挙動に従うということである。例えば、デジタルロードマップの特徴に関する多数の他の道路利用者の実際挙動は、多数決又は類似のメカニズムによって集約することができる。
【0018】
特に有利な構成においては、デジタルロードマップの少なくとも1つの特徴に対して、算定された実際挙動の条件のもとで当該特徴が妥当であることを表す条件付き確率又は条件付き成算が算定される。これにより、他の道路利用者の挙動の確率論的特性をマッピングすることができる。この場合、成算とは、算定された実際挙動の条件のもとで当該特徴が妥当であることの条件付き確率と、算定された同一の実際挙動の条件のもとで当該特徴が妥当でないことの条件付き確率との商を表す。
【0019】
他の有利な構成においては、当該特徴が妥当であることの無条件の基礎確率又は無条件の基礎成算の付加的な仮定のもとで、条件付き確率又は条件付き成算が算定される。このようにすることにより、デジタルロードマップの適正性における信頼度に関する予備知識を導入することができる。例えば、基礎確率又は基礎成算は、デジタルロードマップの経年数の増加に伴って単調に減少させることができる。これにより、例えば、典型的な都市プランが出版された年次に従って、所定の情報のパーセンテージ割合が平均では変化するという経験則を考慮することができる。
【0020】
この場合、多数の他の道路利用者の算定された実際挙動の条件のもとで当該特徴が妥当であることを表す条件付き確率又は条件付き成算は、特に、例えばベイズの定理に従って、デジタルロードマップの当該特徴の条件のもとで、ここでの他の道路利用者のうちの1つの道路利用者の実際挙動が妥当であることをそれぞれ表す条件付き確率又は条件付き成算の積を含み得る。このような確率又は成算は、比較的透明であり、ひいては容易に算定される。
【0021】
b
1,…,b
Nが、例えば他の道路利用者1,…,Nの実際挙動であり、p
G(m=1)が、デジタルロードマップの所定の特徴mが妥当であるとの当該実際挙動の仮定なしでの無条件の基礎確率であるものとする。この場合、特徴mが実際挙動b
1,…,b
Nの仮定において妥当であることの条件付き確率p(m=1|b
1,…,b
N)は、
【数1】
と記述される。ここで、cは正規化定数であり、p(b
i|m=1)は、特徴mが妥当であるとの仮定のもとで他の道路利用者1,…,Nの挙動b
1,…,b
Nが妥当であることを表す条件付き確率である。正規化定数cは、他の道路利用者1,…,Nの挙動b
1,…,b
Nが妥当であることの無条件の確率p(b
1,…,b
N)の逆数である。
【0022】
当該正規化定数cは、特徴mが実際挙動b
1,…,b
Nを考慮して妥当であることの条件付き成算o(m=1|b
1,…,b
N)が算定される場合に生じる。ここでの成算oは、
【数2】
によって、すなわち、特徴mが妥当である(m=1)又は妥当でない(m=0)との実際挙動b
1,…,b
Nを考慮した条件付き確率の比によって与えられる。
【0023】
なお、ここでの成算は、
【数3】
によって与えられ、ここで、
【数4】
は、特徴mが妥当ではないことの無条件の成算である。
【0024】
次いで、ここから、探索されている条件付き確率p(m=1|b
1,…,b
N)を、
【数5】
として算定することができる。
【0025】
上述したように、観測は、有利には、車両に携行されている少なくとも1つのセンサによって取得される。次いで、設定された姿勢が、ここでの観測とデジタルロードマップとの比較に基づいて算定される。この場合、デジタルロードマップがどの程度妥当であるかの検査は、特に、例えば車両の走行中、当該車両の行動計画がそれ自体の実証性を有する情報に基づいて行われるか否かを継続的に検査するために使用することができる。
【0026】
上述したように、主たる目的は、不一致をそもそもの初めから発見し、これに対応する措置を採ることである。なお、任意選択手段として、不一致の原因を少なくとも限定するための様々な手段が存在する。
【0027】
有利な構成においては、デジタルロードマップが設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、設定された姿勢の複数の変更候補が算定される。各変更候補に従って変更された姿勢を起点として、デジタルロードマップにつき、変更された姿勢を起点として視認可能な実際の条件がどの程度正確に反映しているかが、上述した方式で再度検査される。この場合に達成された改善が設定された基準を満たしたことに応答して、センサによって取得された観測からの設定された姿勢の算定が誤処理であることが確認される。
【0028】
例えば、車両が自身の向きを算定するコンパスが真の向きに対して10°のずれを有する場合、
・一方の、シーンの観測及びそこから算定される他の道路利用者の実際挙動と、
・他方の、デジタルロードマップから呼び出された特徴及びそこから算定される他の道路利用者の目標挙動と
は、相互に相対的にちょうど10°回転した交通状況に関連する。こうした回転は、実際挙動と目標挙動との間の一致を著しく劣化させるために十分となり得る。ここで、元の姿勢に対してそれぞれ異なる角度だけ相対的に回転された種々の候補姿勢に関する検査が反復されれば、10°の回転角に対して、当該実際挙動が目標挙動と格段に良好に合致するようになる。
【0029】
さらなる有利な構成においては、デジタルロードマップが設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、デジタルロードマップの複数の変更候補が算定される。このようにして変更されたデジタルロードマップにつき、設定された姿勢から視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかがそれぞれ再度検査される。次いで、当該検査の結果が設定された基準を満たしたことに応答して、実際の条件を最も良好に反映している変更されたデジタルロードマップによって従前のデジタルロードマップが置き換えられる。このようにして、デジタルロードマップ内の所定のエラー又は不正確性を自動的に「治癒させる」ことができる。
【0030】
ここで、例えば、走行方向ごとに2車線を有する高速道路上で予想される目標挙動は、
・利用率が低度から中程度である場合、さしあたり、車両は、走行方向の右車線上に集まっており、左車線は、追い越しのためにのみ使用される、一方、
・利用率が過大となった場合には、2車線が同様に車両によって充填される
ことである。
【0031】
上述した自動検査で、具体的な原因が示唆されることなくさしあたり1回だけ他の道路利用者の実際挙動が目標挙動に適合しないことが示唆される場合、デジタルロードマップの変更候補は、例えば、1車線がブロックされていることであり得る。これは、例えば、新たに設置された工事現場に起因する、頻繁に生じる短期的な変更の1つである。ここで、このように変更されたデジタルロードマップを用いた自動検査が反復され、実際挙動が目標挙動と合致するようになれば、本来の不一致の原因が明らかとなる。こうした認識は、デジタルロードマップが全てのユーザのために即座に更新されるように、例えば、デジタルロードマップのメーカへフィードバックされる。
【0032】
上述したように、デジタルロードマップの自動検査は、主として、デジタルロードマップと車両の姿勢特定と車両の環境検出とから成るシステム全体がいまだ適正に機能しているか否かについての継続的な監視のために使用される。よって、有利には、デジタルロードマップが設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していることに応答して、デジタルロードマップが、少なくとも部分的に自動化された運転を行う車両及び/又は車両内の運転支援システムの行動計画のために使用される。この場合、車両は、当該行動計画に基づいて制御される。
【0033】
方法は、特に完全に又は部分的にコンピュータ実装可能である。したがって、本発明は、1つ又は複数のコンピュータにおいて実行されるときに、当該1つ又は複数のコンピュータに上述した方法を実施させるための機械可読命令を含むコンピュータプログラムにも関する。この意味においては、同様に機械可読命令を実行可能である、車両用の制御装置、及び、技術装置用の組込み型システムも、コンピュータとみなすことができる。
【0034】
同様に、本発明は、コンピュータプログラムを含む機械可読データ担体及び/又はダウンロード製品にも関する。ダウンロード製品とは、データネットワークを介して伝送可能なデジタル製品、すなわち、データネットワークのユーザによってダウンロード可能なデジタル製品であり、これは、例えば、オンラインショップでの即時のダウンロードにおいて販売可能である。
【0035】
さらに、コンピュータプログラムを含む、又は、機械可読データ担体若しくはダウンロード製品を備えるコンピュータを構成することもできる。
【0036】
以下に、本発明を改善するさらなる措置を、図面に即した本発明の好ましい実施例の説明と共に詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】デジタルロードマップの妥当性検査のための方法100の実施例を示す図である。
【
図2】他の道路利用者2の目標挙動2bと実際挙動2aとの間に不一致が生じている、例示的な交通状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例
図1は、デジタルロードマップ3が少なくとも1つの設定された姿勢1aから視認可能な実際の条件を正確に反映しているか否かを検査するための方法100の一実施例を示す概略的なフローチャートである。
【0039】
ステップ110において、少なくとも1つの姿勢1aからのシーン1の観測1bが取得される。
【0040】
ブロック111においては、観測1bを、車両50に携行されている少なくとも1つのセンサ51によって取得することができる。次いで、ブロック112において、当該観測1bとデジタルロードマップ3との比較に基づいて、設定された姿勢1aを算定することができる。
【0041】
ステップ120においては、観測1bから、1つ又は複数の他の道路利用者2の実際挙動2aが算定される。
【0042】
ステップ130においては、デジタルロードマップ3の1つ又は複数の特徴3aに基づいて、1つ又は複数の他の道路利用者2の目標挙動2bが算定される。
【0043】
このために、ブロック131において、1つ又は複数の他の道路利用者2及び/又はその実際挙動2aをデジタルロードマップ3の基準系へと変換することができる。次いで、ブロック132において、当該基準系において、1つ又は複数の他の道路利用者2を、その目標挙動2bに関連するデジタルロードマップ3の特徴3aに関連付けることができる。
【0044】
ステップ140においては、実際挙動2aが目標挙動2bと一致しているか否かが検査される。
【0045】
ブロック141においては、デジタルロードマップ3の同一の特徴3aに関連付けられている複数の他の道路利用者2に関する記述を、当該特徴3aがどの程度妥当であるかに関する記述へと統合することができる。
【0046】
ブロック142においては、デジタルロードマップ3の少なくとも1つの特徴3aに対して、算定された実際挙動2aの条件のもとで当該特徴3aが妥当であることを表す条件付き確率又は条件付き成算を算定することができる。
【0047】
この場合、ブロック142aにおいて、特徴3aが妥当であるとの無条件の基礎確率又は無条件の基礎成算の付加的な仮定のもとで、条件付き確率又は条件付き成算を算定することができる。当該基礎確率又は当該基礎成算は、ブロック142bにおいて、デジタルロードマップ3の経年数の増加に伴って単調に減少させることができる。
【0048】
実際挙動2aが目標挙動2bと一致している場合(ステップ140における真理値が1である場合)、ステップ150において、少なくとも目標挙動2bが算定された特徴3aに関して、デジタルロードマップ3が設定された姿勢1aから視認可能な実際の条件を正確に反映していることが確認される。
【0049】
このケースにおいては、ステップ180において、少なくとも部分的に自動化された運転を行う車両50及び/又は車両50内の運転支援システムの行動計画180aのために、デジタルロードマップ3を使用することができる。車両は、ステップ190において、当該行動計画180aに基づいて制御可能となる。
【0050】
これに対して、実際挙動2aが目標挙動2bと一致していない場合(ステップ140における真理値が0である場合)には、ステップ161において、設定された姿勢の複数の変更候補1a’を算定することができる。次いで、ステップ162において、デジタルロードマップ3につき、各変更候補1a’に対して、変更された姿勢1aを起点として視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかを再度検査することができる。
【0051】
ここで、ステップ163において、設定された基準を満たす、元の姿勢1aに対する改善が達成されるか否かを検査することができる。達成された場合(真理値が1である場合)には、ステップ164において、センサ51によって取得された観測からの設定された姿勢1aの算定が誤処理であることを確認することができる。
【0052】
これに代えて又はこれに組み合わせて、ステップ171において、デジタルロードマップ3の複数の変更候補3’を算定することもできる。このようにして変更されたデジタルロードマップ3につき、ステップ172において、設定された姿勢1aから視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかをそれぞれ再度検査することができる。
【0053】
ステップ173においては、このような再度の検査の結果が設定された基準を満たしているか否か、すなわち、元のデジタルロードマップ3の検査に対する改善が特に示されているか否かを検査することができる。満たされている場合、ステップ174において、実際の条件を最も良好に反映している変更されたデジタルロードマップ3によって、従前のデジタルロードマップ3を置き換えることができる。
【0054】
図2には、他の道路利用者2の目標挙動2bと実際挙動2aとの間に不一致が生じている、例示的なシーン1が示されている。高速道路11が右車線11aと左車線11bとを有している。シーン1の観測1bから、車両2がさしあたり右車線11a上を走行していることがわかる。よって、高速道路11を含むデジタルマップ3に基づいて、車両2は、目標挙動2bとして、さしあたり当該右車線11aを前進することが予想される。しかし、デジタルロードマップ3には示されていない短期間の工事箇所12のために、車両2は、左車線11bへの移動を行う実際挙動2aを必然的に示すことになる。このことが特に多数の車両2に対して示される場合、上述した方法100に従って、ここでの不一致から、右車線11aが現在使用不能であることを導出することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルロードマップ(3)が少なくとも1つの設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映しているか否かを検査するための方法(100)であって、
・少なくとも1つの姿勢(1a)からシーン(1)の観測(1b)を取得するステップ(110)と、
・前記観測(1b)から、1つ又は複数の他の道路利用者(2)の実際挙動(2a)を算定するステップ(120)と、
・前記デジタルロードマップ(3)の1つ又は複数の特徴(3a)に基づいて、前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)の目標挙動(2b)を算定するステップ(130)と、
・前記実際挙動(2a)が前記目標挙動(2b)と一致したことに応答して(140)、少なくとも前記目標挙動(2b)が算定された特徴(3a)に関して、前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していることを確認するステップ(150)と、
を含む方法(100)。
【請求項2】
・前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)及び/又はその実際挙動(2a)が、前記デジタルロードマップ(3)の基準系へ変換され(131)、
・前記基準系において、前記1つ又は複数の他の道路利用者(2)が、前記目標挙動(2b)に関連する前記デジタルロードマップ(3)の特徴(3a)に関連付けられる(132)、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記デジタルロードマップ(3)の同一の特徴(3a)に関連付けられている複数の他の道路利用者(2)に関する記述が、前記特徴(3a)がどの程度妥当であるかに関する記述へと統合される(141)、
請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記デジタルロードマップ(3)の少なくとも1つの特徴(3a)に対して、算定された実際挙動(2a)の条件のもとで当該特徴(3a)が妥当であることを表す条件付き確率又は条件付き成算が算定される(142)、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記特徴(3a)が妥当であることの無条件の基礎確率又は無条件の基礎成算の付加的な仮定のもとで、前記条件付き確率又は前記条件付き成算が算定される(142a)、
請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記基礎確率又は前記基礎成算は、前記デジタルロードマップ(3)の経年数の増加に伴って単調に減少させられる(142b)、
請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記条件付き確率又は前記条件付き成算は、前記デジタルロードマップ(3)の前記特徴(3a)の条件のもとで、複数の他の道路利用者(2)のうちの1つの道路利用者(2)の実際挙動(2a)が妥当であることをそれぞれ表す条件付き確率又は条件付き成算の積を含む、
請求項5又は6に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記観測(1b)は、車両(50)に携行されている少なくとも1つのセンサ(51)によって取得され(111)、
前記設定された姿勢(1a)が、前記観測(1b)と前記デジタルロードマップ(3)との比較に基づいて算定される(112)、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、
・前記設定された姿勢(1a)の複数の変更候補(1a’)が算定され(161)、
・前記デジタルロードマップ(3)につき、各変更候補(1a’)に対して、変更された前記姿勢(1a)を起点として視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかが再度検査され(162)、
・この場合に達成された改善が設定された基準を満たしたことに応答して(163)、前記センサ(51)によって取得された観測からの前記設定された姿勢(1a)の算定が誤処理であることが確認される(164)、
請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記デジタルロードマップ(3)が前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件を正確に反映していないことに応答して、
・前記デジタルロードマップ(3)の複数の変更候補(3’)が算定され(171)、
・このようにして変更された前記デジタルロードマップ(3)につき、前記設定された姿勢(1a)から視認可能な実際の条件をどの程度正確に反映しているかがそれぞれ再度検査され(172)、
・前記検査の結果が設定された基準を満たしたことに応答して(173)、実際の条件を最も良好に反映している変更されたデジタルロードマップ(3)によって従前のデジタルロードマップ(3)が置き換えられる(174)、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記デジタルロードマップが前記設定された姿勢から視認可能な実際の条件を正確に反映していることに応答して、
・前記デジタルロードマップ(3)は、少なくとも部分的に自動化された運転を行う車両(50)の行動計画(180a)、及び/又は、車両(50)内の運転支援システムの行動計画(180a)のために使用され(180)、
・前記車両(50)は、前記行動計画(180a)に基づいて制御される(190)、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項12】
1つ又は複数のコンピュータにおいて実行されるときに、前記1つ又は複数のコンピュータに請求項
1に記載の方法(100)を実施させるための機械可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを含む機械可読データ担体
。
【請求項14】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを含む
、又は、請求項13に記載の機械可読データ担体
を備える1つ又は複数のコンピュータ。
【国際調査報告】