(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自動車用ブレーキテスト装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241008BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20241008BHJP
F16D 66/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01M17/007 E
B60T17/22 Z
F16D66/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518525
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 CA2021051651
(87)【国際公開番号】W WO2023087091
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524109577
【氏名又は名称】ミラー テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLER TECHNOLOGY INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】175 Eloy Road,North Bay,Ontario P1B 9T9,Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サマーズ,ポール アンドリュー ロイ
【テーマコード(参考)】
3D049
3J058
【Fターム(参考)】
3D049AA06
3D049BB36
3D049HH10
3D049HH51
3D049RR04
3D049RR10
3J058BA60
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC78
3J058CD24
3J058DB18
3J058DB21
3J058DB27
3J058FA11
(57)【要約】
【構成】本発明は安全規制の順守を担保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を担保する車両のブレーキシステム用のブレーキ試験装置およびブレーキ試験方法に関する。このブレーキ試験システムはi.少なくとも一つのオン/オフスイッチ、ii.少なくとも一つのディスプレイ、iii.少なくとも一つのオン/オフステータスインジケータ、iv.少なくとも一つのコントローラ、v.少なくとも一つのブレーキセンサ、vi.少なくとも一つのブレーキステータスインジケータ、vii.少なくとも一つのスロットル(アクセレータ)センサ、viii.少なくとも一つのスロットル(アクセレータ)センサ、ix.少なくとも一つのモータトルクセンサ、x.少なくとも一つのモータトルクステータスインジケータ、xi.少なくとも一つのギヤセンサ、xii.少なくとも一つのギヤステータスインジケータ、xiii.少なくとも一つのブレーキ試験ステータスインジケータ、xiv.ブレーキ試験からのデータを記録保管する少なくとも一つのデータ記録保管素子、およびxv.ブレーキ試験からのデータを通信する少なくとも一つの通信素子を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有し、安全規制の順守を担保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を担保する車両のブレーキシステム用のブレーキ試験装置であって、
ix.少なくとも一つのコントローラ、
x. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキセンサおよび少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、
xi. 前記コントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータおよび少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、
xii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡する方向センサまたはモータトルクセンサのうちの少なくとも一つ、
xiii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡する方向センサまたはモータトルクセンサのうちの前記少なくとも一つ、
xiv.少なくとも一つのブレーキ試験ステータスインジケータ、
xv.ブレーキ試験からのデータを記録するために適宜使用する少なくとも一つのデータ記録素子、および
xvi.前記ブレーキ試験からデータを通信するために適宜使用する少なくとも一つの通信素子、を有する
ことを特徴とするブレーキ試験装置。
【請求項2】
前記車両が電気車両である請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項3】
さらに少なくとも一つのスロットルセンサを有し、この少なくとも一つのスロットルセンサがスロットルペダル位置センサである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項4】
前記方向センサがドライブ位置センサである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのブレーキステータスインジケータが常用ブレーキステータスインジケータ、または緊急ブレーキステータスインジケータ、あるいはこれらを併用してものである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項6】
車両の緊急ブレーキおよび常用ブレーキの試験方法であって、
a.ブレーキ試験装置の少なくとも一つのコントローラに、
i. 最大車両速度値、
ii. 総車両重量、
iii.道路面の最大傾斜角度、
iv.当該車両の静的負荷タイヤの半径、
v.減速係数、および
vi.当該車両のモータと当該車両の車輪との総ギヤ比、
の値を入力し、
b. 前記車両の減速に必要なトルクを算出し、
c. 算出したトルクを前記少なくとも一つのコントローラに設定し、
d. 前記車両のスプリング式油圧式リリース(SAHR)ブレーキの現在の回路油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
e.肯定されれば工程fに移り、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程dに戻り、
f. 前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
g. 肯定されれば工程hに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程fに戻り、
h. 現在の常用ブレーキ回路油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
i.肯定されれば工程jに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程hに戻り、
j. 前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルクより大きいかどうかを決定し、
k. 工程d、fおよびjで肯定の回答が得られた場合には、タイマーを所定の時間値起動し、所定の時間値にわたって前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク以上に留まっているかどうかを測定し、否定されれば工程d、f、hおよびjで肯定の回答が得られるまで工程d、f、hおよびjに戻り、
l.所定の時間値全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値未満に留まっているかどうかを決定し、
m. 肯定されれば、前記緊急ブレーキ試験を通して算出されかつ決定されたデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプをコントローラに記録し、工程oに進み、
n. 否定されれば、前記ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを記録し、以下のうちの少なくとも一つを行い、
i. 試験不合格通知を出す、
ii. 最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、前記車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、前記車両を効果的に非駆動状態する、およびこれら三者を任意に組み合わせて行う、
o.前記車両の現在のSAHRブレーキ回路油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値より大きいかどうかを決定する、
p.肯定されれば工程qに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程oに戻る、
q. 前記車両のギヤ位置が前進方向ギヤ位置にあるかどうかを決定する、
r. 肯定されれば工程sに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程qに戻る、
s.現在の常用ブレーキ回路の油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値よりも大きいかどうかを決定し、
t. 肯定されれば工程uに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程sに戻る、
u.前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルクより大きいかどうかを決定する、
v. 工程o、q、sおよびuで肯定されれば、所定の時間値の間タイマーが起動し、所定時間値の全体を通して前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク値以上に留まっているかどうかを確認し、否定されれば、工程o、q、sおよびuで肯定の回答が得られるまで工程o、q、sおよびuに戻る、
w. 所定時間値の全体を通して、トルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値以上に留まっているかどうかを決定する、
x. 肯定されれば常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに合格試験データおよびタイムスタンプを記録し、前記車両の道路速度値を所定の最大道路速度値に維持し、試験を終了する、
y. 否定されれば、常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録し、以下のうちの少なくとも一つを行う、
i. 試験不合格通知を発する、
ii. 最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、車両を効果的に非駆動状態にする、およびこれら三者を任意に組み合わせて行う、そして試験を完了する、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項7】
前記試験方法に先立って、SAHRブレーキ回路の完全作動時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、SAHRブレーキ回路の完全解除時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、常用ブレーキ回路の完全作動時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、常用ブレーキ回路の完全解除時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、牽引モータの最大RPM閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、そしてタイマー実行時間の所定時間値を計算し、これを前記コントローラに入力する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
緊急ブレーキの試験中、緊急ブレーキを作動し、常用ブレーキを作動させずに、スロットルを作動して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保し、そして常用ブレーキの試験中、常用ブレーキを作動し、緊急ブレーキを作動させずに、スロットルを作動して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
タイマー実行時間の所定時間値が1~10秒である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記所定時間値がブレーキテストの最小必要条件を監視する規制機関によって定められた値である請求項6に記載の方法。
【請求項11】
安全規制遵守を確保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を確保する車両のブレーキシステム用電子式ブレーキ試験装置であって、
a. 少なくとも一つのコントローラ、
b. 少なくとも一つの緊急ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、
c. 少なくとも一つの常用ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、
d. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、
e. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、
f. 少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルクセンサまたは少なくとも一つの方向レンジセンサ、
g. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのタイマー、および、
h. 前記少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルク発生器、を有し、
前記少なくとも一つのコントローラが前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つのモータトルクセンサ、前記少なくとも一つの方向レンジセンサ、および前記少なくとも一つのタイマーのそれぞれからの信号を受信する
ことを特徴とするブレーキ試験装置。
【請求項12】
前記車両は、電気車両、電気式鉱山用車両、および内燃式車両からなる群から選択される請求項11に記載のブレーキ試験装置。
【請求項13】
さらに以下のうちの少なくとも一つを有する請求項11に記載のブレーキ試験装置。
i.オン/オフスイッチ、
ii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するディスプレイ、
iii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するオン/オフステータスインジケータ、
iv. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのスロットルセンサ、
v. 前記少なくとも一つのコントローラおよび前記ディスプレイに連絡する少なくとも一つのスロットルステータスインジケータ、
vi.ブレーキ試験からのデータを保存する少なくとも一つのデータロガー、および、
vii. 前記少なくとも一つのデータロガーからの前記データを通信する少なくとも一つの通信素子。
【請求項14】
前記少なくとも一つの方向レンジセンサがフォワードドライブ、ニュートラルドライブおよびリバースドライブ(FNR)センサである請求項11に記載のブレーキ試験装置。
【請求項15】
さらに前記少なくとも一つのコントローラおよび前記少なくとも一つのディスプレイに連絡する少なくとも一つの方向ステータスインジケータを有する請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項16】
さらに前記少なくとも一つのコントローラおよび前記少なくとも一つのディスプレイに連絡するFNRインジケータを有する請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項17】
前記少なくとも一つの通信素子が有線通信素子、WiFi、ブルートゥース、モノのインターネット(IoT)、長期進化(LTE)ワイヤレス素子、データ保存メディアポートおよび/またはこれらを併用したものである請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項18】
さらにブレーキ試験の完了日付及び時間を供するデータおよびタイムスタンプを有する請求項11~17のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項19】
前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサおよび前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサがアナログセンサである請求項12~18のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項20】
前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサおよび前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサがブレーキパッドまたはブレーキラインにかかる圧力を検出し、この圧力を電圧出力に変換する圧力センサである請求項12~19のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項21】
車両のブレーキシステムの試験方法であって、前記ブレーキシステムは緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有し、該試験方法は、
a.前記緊急ブレーキを試験し、これは以下の工程を有し、
i.前記緊急ブレーキを完全かつ同時に作動する工程、
ii.前記車両が駆動走行中であるかどうかを決定する工程、および
iii.前記常用ブレーキがかかっていないかを決定する工程、
iv.ii.および/またはiii.が否定されればいずれも肯定の回答が得られるまで工程ii.およびiii.に戻る工程、
v. ii.およびiii.が肯定されれば、所定の値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを車両モータに適用する工程、
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記常用ブレーキの助けを借りことなく前記緊急ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動する工程、
vii.vi.が肯定されれば、前記緊急ブレーキの試験を終了し、緊急ブレーキの試験に合格したことを確認し、工程b.に移行し、そして場合に応じて緊急ブレーキの試験合格結果をコントローラに送信しかつ記録する工程、
viii.vi.が否定されれば、前記緊急ブレーキの試験を終了し、前記緊急ブレーキの試験不合格を確認し、そして場合に応じてこの緊急ブレーキの試験不合格を前記コントローラに送信しかつ記録し、上記工程vi.が肯定されるまで前記車両を運転不能状態に設定する工程、
b.前記常用ブレーキを試験し、これは以下の工程を有する、
i.前記常用ブレーキを完全かつ同時に作動する工程、
ii.前記車両が駆動走行中(または前進走行中)であるかどうかを決定する工程、および
iii.前記緊急ブレーキがかかっていないかかどうかを決定する工程、
iv.ii.およびiii.が否定されれば、いずれも肯定の回答が得られるまで工程ii.およびiii.に戻る工程、
v. ii.およびiii.が肯定されれば、所定値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを前記車両モータに加える工程、
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記緊急ブレーキの助けを借りることなく前記常用ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動する工程、
vii.工程vi.が肯定されれば、前記常用ブレーキの試験を終了し、前記常用ブレーキ試験に合格したことを確認し、常用ブレーキ試験合格結果をコントローラに送信しかつ記録し、緊急ブレーキ試験および常用ブレーキ試験の合格結果の確認後、前記車両の走行を許可する工程、および
viii.vi.が否定されれば、前記試験を終了し、前記常用ブレーキ試験不合格を確認し、そして場合に応じてこの常用ブレーキ試験不合格を前記コントローラに送信しかつ記録し、上記工程a.vi.及びb.viが肯定されるまで前記車両を運転不能状態に設定する工程、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項22】
さらに、
(1)ブレーキ試験装置の前記少なくとも一つのコントローラによって前記ブレーキに負荷を誘導するモータトルク値(一つの態様では前記ブレーキに負荷を誘導する前記モータトルク値は以下のa)~f)に対応するデータパラメータに基づいて算出する)を受信し、
a)許容可能な最大車両速度制限値、
b)総車両重量、
c)道路面の最大傾斜角度、
d)当該車両の静的負荷タイヤの半径、
e)場合に応じて使用する減速係数、および
f)当該車両のモータと当該車両の車輪体との間の総ギヤ比、または、
g)前記車両をゼロ速度に減速するために必要な前記最大減速トルク値を、TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG(式中TBは必要な最大減速トルク、rTは静的負荷タイヤの半径、Wvは総車両重量、Fdは減速係数、θは道路面の最大傾斜角度、RGはモータと車輪組立体の間の総ギヤ比である)に基づいて算出し、
(2)前記緊急ブレーキがかかっているかどうかを決定し、
(3)工程(2)が肯定されれば(即ち前記緊急ブレーキがかかっている場合には)工程(4)に移行し、否定されれば、肯定の回答が得られるまで工程(2)に戻り、
(4)前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
(5)工程(4)が肯定されれば工程(6)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(4)に戻り、
(6)前記常用ブレーキがかかっていないかどうかを決定し、
(7)肯定されれば工程(8)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(6)に戻り、
(8)スロットルを絞り、かつ前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が予め計算した牽引モータトルクよりも大きいかどうかを決定し、
(9)肯定されれば所定の時間間隔タイマーを起動し、前記車両の現在の牽引モータトルク出力値がこの所定時間間隔全体を通してこの予め計算した牽引モータトルク以上に留まっていることを確認し(一つの態様では、前記所定の時間間隔は約10ms~約500msの範囲内にあり、別な態様では前記所定の時間間隔は約10msの範囲内にある)、
(10)否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(8)に戻り、
(11)前記所定の時間間隔全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM未満かどうかを決定し、
(12)工程(9)および(11)が肯定されれば、前記緊急ブレーキのテスト全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに試験合格データおよびタイムスタンプを記録しかつ常用ブレーキ試験工程(13)に進み、
i.工程(9)および(11)が否定されれば前記ブレーキ試験全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録し、そして以下の処理、即ち
1.電子メールまたはテキストによって、OEMが指定する者に不合格試験通知する処理、
2.前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在のより低い車両速度制限値に設定し、ブレーキシステム試験に合格するまで車両を安全な方法で走行させる処理(一つの態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の0%以上かつ100%未満であり、別な態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の約50%であり、さらに別な態様では、前記より低い車両速度制限値はブレーキシステム試験に合格するまでローカルな作業場所の条件に従って設定する)、
3.前記コントローラがコマンドを送信し、前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うまで前記車両を非駆動状態に置く処理、およびこれらの併用処理、のうちの少なくとも一つの処理を行い、
(13)前記常用ブレーキが作動しているかどうかを決定し、
(14)工程(13)が肯定されれば(即ち、常用ブレーキが作動していれば)工程(15)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(13)に戻り、
(15)前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
(16)工程(15)が肯定されれば工程(17)に移行し;否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(15)に戻り、
(17)前記緊急ブレーキがかかっていないかどうかを決定し、
(18)工程(17)が肯定されれば(即ち、緊急ブレーキがかかっていないなら)工程(19)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(17)に戻り、
(19)スロットルを絞り、前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク以上かどうかを決定し、
(20)肯定されれば、所定の時間間隔全体を通して、前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が確実に予め算出したモータトルク値以上に留まっているために十分な所定の時間間隔でタイマーを起動し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(8)に戻り、
(21)所定時間間隔全体を通して、前記牽引モータのRPM値が前記牽引モータの所定の最大RPM値未満であるかどうかを決定し、
(22)工程(19)および(21)が肯定されれば、前記緊急ブレーキの試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、操車および車両使用を許可し、
(23)工程(19)および(21)が否定されれば、前記ブレーキの試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、以下の処理、すなわち
1.電子メールまたはテキストによって、OEMが指定する者に不合格試験通知する処理、
2.前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在より低い車両速度制限値に設定し、前記ブレーキシステムの試験に合格するまで修理のため前記車両を安全な方法で走行させる処理、
3.前記コントローラがコマンドを送信し、前記緊急ブレーキを、一つの態様ではSAHRブレーキ回路値につき最大に設定し、診断および/または修理を行うまで車両を非駆動状態に置く処理、およびこれらの併用処理、
のうちの少なくとも一つの処理を行う、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のブレーキングシステムを試験するブレーキテスト装置および方法に関する。車両のブレーキングシステムは駐車時/緊急時ブレーキおよび常用ブレーキであるのが好ましく、またこの車両は電気自動車(EV)、特に鉱業における車両であるのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
鉱業用車両を始めとする工業用車両を対象とする多くの規制機関は鉱業における安全のための法規制の遵守を定めている。ところが、現地訪問および顧客フィードバックから得られるデータは法規制の順守に関して数多くの問題があることを示している。一例を挙げると、特定の日に車両を使用する前に、車両の駐車/緊急ブレーキおよび車両の常用ブレーキを備えた車両のブレーキシステムの試験を毎日記録保管する必要があるが、いくつかの事例では、車両運転手が実際には行っていないのに、ある種の(例えば手動)ブレーキ試験を実施したと述べていることが分かっている。あるいは、車両運転手が手動ブレーキ試験を不適切かつ気まぐれに行っていることも日常よく知られている。この結果、戻ってくるデータは誤りが多く、また根拠も乏しい。他の事例では、得られるデータの不適切な処理が認められるだけでなく、手動ブレーキ試験を運転者が失敗することも認められている。
【0003】
以上の実例はブレーキ故障の発生時の決定、ブレーキテストが完了したかどうかの決定および/またはブレーキテストの手順が適正であったかどうかの決定を行うことが難しいことを示している。さらに、ブレーキ故障に反応する責任を負うのは運転員であり、これはブレーキ故障を緩和し、ブレーキ故障後の対応を運転員が取る構成のコンピュータ化デバイスやシステムとは対照的である。ブレーキ試験をより信頼性のあるものにするためには、ブレーキ試験を一定の手順で行い、結果を一定の手順で記録する必要がある。現状のブレーキ試験方法はヒューマンエラーを招きやすく、車両の安全性、運転手、周囲の環境や他者に深甚な影響を与える場合がある。
【0004】
現状のブレーキ試験方法の場合、車両運転手がブレーキ試験を手動で行い、試験結果を書類に手書きする。具体的な一つの実例では、車両の運転員が最初にエンジン回転数(RPM)を3500に上げてから、車両のマニュアルトランスミッションを操作し、車両を第3ギヤに設定し、“クラッチを捨てるか”あるいはクラッチを素早く切ると同時に、ブレーキをかけ、車両が前進することを防ぐことによってブレーキ試験を行う。このような試験方法では、一定の手順に従って手動で行うことは難しいだけでなく、ブレーキ、クラッチやその他の車両構成部品を必要以上の、および/または過度な摩耗および引き裂きに晒すことになる。
【0005】
従って、車両運転手の介入を最小限に抑えた状態で車両のブレーキシステムを自動的に試験する必要性が求められている。また、ヒューマンエラーやオペレータエラーを軽減するブレーキ試験装置および方法の必要性もある。さらに、ブレーキを始めとする自動車部品の摩耗を軽減するブレーキ試験装置および方法の必要性もある。加えて、ブレーキ試験のデータおよび結果を自動的に文書に記録するブレーキ試験装置および方法の必要性もある。さらに、試験データおよび試験結果を割り当てられた個人に通信できる能力およびブレーキ試験のデータおよび結果を自動的にアーカイブできる能力をもつブレーキ試験装置および方法も求められている。さらに、車両がブレーキ試験に落ちた場合に、車両の運転を許可しないブレーキ試験装置および方法も求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で使用する用語“緊急ブレーキ”は主ブレーキまたは常用ブレーキが故障した場合に車両を停止するために使用するブレーキを指す。この緊急ブレーキは車両の駐車時にも使用することができる。用語“常用ブレーキ”は通常の運転条件で使用するブレーキを指す。本発明の一態様に係る電子式ブレーキ試験装置は安全基準の順守を確認しかつブレーキシステムが機能を果たしていることを確認するために車両のブレーキシステムを試験するための装置である。
【0007】
一つの態様では車両は電気車両を指し、別の態様では車両は電動式採掘車両であり、さらに別の態様では車両は内燃式車両を指す。一つの態様では、このブレーキ試験装置は、
a. 少なくとも一つのコントローラ;
b. 少なくとも一つの緊急ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ;
c. 少なくとも一つの常用ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキセンサ;
d. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ;
e. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ;
f. 少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルクセンサまたは少なくとも一つの方向レンジセンサ;
g. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのタイマー;および
h. 前記少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルクジェネレータを有し、
前記少なくとも一つのコントローラが前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つのモータトルクセンサ、前記少なくとも一つの方向レンジセンサ、および前記少なくとも一つのタイマーのそれぞれからの信号を受信する。
【0008】
一つの態様では、前記ブレーキ試験装置はさらに以下i.~vii.のうちの少なくとも一つを有する。即ち、
i.オン/オフスイッチ;
ii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するディスプレイ;
iii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するオン/オフステータスインジケータ;
iv. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのスロットルセンサ;
v. 前記少なくとも一つのコントローラおよび前記ディスプレイに連絡する少なくとも一つのスロットルステータスインジケータ;
vi.ブレーキ試験からのデータを記録保存する少なくとも一つのデータロガー;および
vii. 前記少なくとも一つのデータロガーからの前記データを通信する少なくとも一つ通信素子。
【0009】
一つの態様では、前記少なくとも一つの方向センサが前記少なくとも一つの方向レンジセンサがフォワードドライブ、ニュートラルドライブ/リバースドライブ(FNR)センサである。
【0010】
一つの態様では、前記少なくとも一つの方向センサがニュートラルドライブ位置センサである。
【0011】
別の態様では、前記ブレーキ試験装置はさらに前記少なくとも一つのコントローラおよび少なくとも一つのディスプレイに連絡する少なくとも一つの方向ステータスインジケータを有する。一つの態様では、FNRステータスインジケータを使用し、これが前記少なくともひとつのコントローラおよび前記少なくとも一つのディスプレイに連絡する。
【0012】
一つの態様では、前記少なくとも一つの通信素子が有線通信素子、WiFi、ブルートゥース、モノのインターネット(loT)、長期進化(LTE)ワイヤレス素子、データ保存メディアポートおよび/またはこれらを併用した素子である。
【0013】
一つの態様では、前記ブレーキ試験装置はさらにブレーキ試験の終了日付およびタイムスタンプ素子を有する。
【0014】
一つの態様では、ブレーキ試験終了時の試験結果は合否であり、試験結果の時刻、日付および状態を記録かつ保存し、好ましくはデジタル保存し、将来のアクセスに備える。
【0015】
別の態様では、ブレーキ試験結果の前記時刻、日付および状態を記録かつ保存し、好ましくはアナログ保存し、将来のアクセスに備える。
【0016】
別の態様では、次のブレーキ試験を行い、このブレーキ試験結果を前のブレーキ試験結果に上書きする(即ち前のブレーキ試験結果が現在のブレーキ試験結果によって上書きされる)まで、試験結果の前記時間、日付および条件は好ましくはブレーキ試験装置またはコントローラに保存しておく。
【0017】
一つの態様では、前記少なくとも一つのコントローラは限定するものではないが、Parker IQAN-MC(TM)などの電子コントローラである。
【0018】
別の態様では、前記ブレーキ試験システムはさらに前回のブレーキ試験日付、時刻および対応するデータのデータセット(即ちブレーキ試験の条件および結果)を有する日付およびタイムスタンプデータベースを有する。
【0019】
別の態様では、前記少なくとも一つのブレーキセンサはアナログセンサであり、制限するものではないが、ブレーキペダルの位置によってレバー作動し、移行距離25mm(1インチ)にわたって線形出力を与えるParker ADS50(TM)を例示することができる。
【0020】
一つの態様では、このアナログセンサは非接触式のホール効果を利用するセンサである。このホール効果センサは磁場の存在およびマグニチュードを非接触式で検出するものである。
【0021】
一つの態様では、アナログセンサは制限するものではないが、Parker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどのコントローラに接続し、前記少なくとも一つのブレーキセンサからの信号を受信し、これを処理する。
【0022】
別の態様では、前記少なくとも一つのブレーキセンサはブレーキパッドまたはブレーキラインに加わる圧力を検出し、この圧力を電圧出力に変換する圧力センサである。
【0023】
圧力センサの一例はParker SCP Compact Pressure Sensorである。
【0024】
一つの態様では、圧力センサは制限するものではないが、Parker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラに接続し、圧力センサからの信号を受信し、これを処理する。
【0025】
一つの態様では、前記少なくとも一つのモータトルクセンサは前記モータと一体化する。一つの態様では、前記少なくとも一つのモータトルクセンサは制限するものではないが、特にモータに加わるトルクを検出するDana TM4 CO150牽引インバータモータコントローラなどである。
【0026】
一つの態様では、前記少なくとも一つの方向レンジセンサを使用する。
【0027】
一つの態様では、前記方向レンジセンサは少なくとも一つのFNR位置センサである。
【0028】
一つの態様では、前記少なくとも一つのFNR位置センサは制限するものではないが、COBO Group Controller Area Network(CAN)FNRセンサなどのデジタルセンサである。このCOBO Group CAN FNRセンサはホール効果技術によって動作し、回転が起きているかどうか(またはニュートラルかどうか)(即ち回転がフォワードかリバースであるか)を決定する。
【0029】
一つの態様では、圧力センサは制限するものではないが、Parker IQAN-MC(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラに接続し、少なくとも一つのFNR位置センサからの信号を受信し、これを処理する。
【0030】
一つの態様では、前記少なくとも一つのディスプレイはアナログディスプレイおよびデジタルディスプレイから選択する。
【0031】
一つの態様では、前記少なくとも一つのディスプレイは液晶ディスプレイ(LCD)スクリーンおよび発光ダイオード(LED)スクリーンからなる群から選択する。
【0032】
一つの態様では、前記少なくとも一つのディスプレイはコントローラに接続したParker IQAN-MD(TM)ディスプレイモジュールである。
【0033】
一つの態様では、前記コントローラは前記少なくとも一つのディスプレイと一体化している。
【0034】
一つの態様では、前記コントローラは制限するものではないが、信号を受信し、かつこれを処理するParker IQAN-MD(TM)マスターコントローラなどの電子コントローラである。
【0035】
一つの態様では、前記少なくとも一つのオン/オフスイッチ、前記少なくとも一つのブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つのモータトルクステータスインジケータおよび前記少なくとも一つのギヤステータスインジケータは前記少なくとも一つのディスプレイ上のライト、音声、文字メッセージ、およびこれらを併用したものからなる群から選択する。
【0036】
本発明の一つの態様は一つの態様では電動車両であり、別の態様では鉱業用車両である車両の、緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有するブレーキシステムの試験方法に関し、この方法は、
a.以下のステップ(「工程」。以下同じ。)、
i.緊急ブレーキを完全かつ同時に作動するステップ;
ii.車両が駆動走行中であるかどうかを決定するステップ;および
iii.常用ブレーキがかかっているどうかを決定するステップ;
iv.ii.および/またはiii.に対してノーなら(「否定されれば」。以下同じ。)、いずれもイエス回答(「肯定の回答」。以下同じ。)が得られるまでステップii.およびiii.に戻るステップ;
v. ii.およびiii.に対してイエスなら(「肯定されれば」。以下同じ。)、所定の値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを車両モータに加えるステップ;
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記常用ブレーキの助けを借りことなく前記緊急ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動するステップ;
vii.vi.に対してイエスなら、前記緊急ブレーキ試験を終了し、緊急ブレーキ試験に合格したことを確認し、ステップb.に移行し、そして場合に応じて緊急ブレーキ試験合格結果をコントローラに送信しかつ記録するステップ;および
viii.vi.に対してノーなら、前記緊急ブレーキ試験を終了し、前記緊急ブレーキ試験不合格を確認し、そして場合に応じてこの緊急ブレーキ試験不合格を前記コントローラに送信しかつ記録し、上記ステップvi.に対してイエスになるまで前記車両を運転不能状態に設定するステップで前記緊急ブレーキを試験し、そして
b.以下のステップ、
i.常用ブレーキを完全かつ同時に作動するステップ;
ii.車両が駆動走行中(または前進走行中)であるかどうかを決定するステップ;および
iii.緊急ブレーキがかかっていないかかどうかを決定するステップ;
iv.ii.およびiii.に対してイエスでなければ、両方ともイエス回答が得られるまでステップii.およびiii.に戻るステップ;
v. ii.およびiii.に対してイエスなら、所定値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを車両モータに加えるステップ;
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記緊急ブレーキの助けを借りることなく前記常用ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動するステップ;
vii.ステップvi.に対してイエスなら、前記常用ブレーキ試験を終了し、常用ブレーキ試験に合格したことを確認し、常用ブレーキ試験合格結果をコントローラに送信しかつ記録し、緊急ブレーキ試験および常用ブレーキ試験の合格結果の確認後、前記車両の走行を許可するステップ;および
viii.vi.に対してノーなら、前記試験を終了し、前記常用ブレーキ試験不合格を確認し、そして場合に応じてこの常用ブレーキ試験不合格を前記コントローラに送信しかつ記録し、上記ステップa)vi.およびb)vi.に対してイエスになるまで前記車両を運転不能状態に設定するステップで常用ブレーキを試験する。
【0037】
さらに別の態様に係る、車両の、緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有するブレーキシステムの試験方法では、
1.ブレーキ試験装置の前記少なくとも一つのコントローラによってブレーキに負荷を誘導するモータトルク値(一つの態様では、ブレーキに負荷を誘導するこのモータトルク値は以下のa)~f)に対応するデータパラメータに基づいて算出する)を受信し;
a)許容可能な最大車両速度制限値;
b)総車両重量;
c)道路面の最大傾斜角度;
d)当該車両の静的負荷タイヤの半径;
e)場合に応じて使用する減速係数;および
f)当該車両のモータと当該車両の車輪体との間の総ギヤ比、これによって前記少なくとも一つのコントローラが前記車両をゼロ速度まで減速するために必要な最大減速トルク値を算出できる;あるいは、
2.前記車両をゼロ速度まで減速するために必要な前記最大減速トルク値を一つの態様ではTB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG(式中TBは必要な最大減速トルク、rTは静的負荷タイヤの半径、Wvは総車両重量、Fdは減速係数、θは道路面の最大傾斜角度、RGはモータ/車両間の総ギヤ比である)に基づいて算出する。緊急ブレーキがかかっているかどうかを決定する。一つの態様では、前記緊急ブレーキはSpringApplied Hydraulic Released (SAHR)ブレーキである。一つの態様では、前記電気自動車のSAHRブレーキ回路油圧値がゼロ付近にあるか、あるいは最大SAHRブレーキ作動回路油圧閾値未満であるかを決定する。この最大SAHRブレーキ作動回路油圧閾値はシステム内の、緊急ブレーキ作動バネを変位させない最大圧力である。これについては、緊急ブレーキセンサによって決定する。一つの態様では、このブレーキ圧力センサとしては本明細書に開示するセンサを使用する。
3.ステップ2に対してイエスなら(即ち緊急ブレーキがかかっている場合には)、ステップ4に移行し;ノーなら、イエス回答が得られるまで、ステップ2に戻り;
4.前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し;
5.ステップ4がイエスなら、ステップ6に移行し、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ4に戻り;
6.常用ブレーキがかかっていないかどうかを決定する。(一つの態様では、常用ブレーキ回路油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値(即ち、常用ブレーキがかかっていない圧力)未満であるかどうかを決定する。なお、当業者にとっては公知なように、最大常用ブレーキ回路油圧値はシステム設計時に決定する)。
7.イエスなら、ステップ8に移行し、ノーならば、イエス回答が得られるまで、ステップ6に戻る。
8.スロットルを絞り、かつ前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が予め計算した牽引モータトルク以上かどうかを決定する。
9.イエスなら、好ましくは所定の時間間隔全体を通して前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が予め算出したモータトルク値以上に確実に留まっているために十分な所定の時間間隔で前記すべての条件を同時に満足して時点でタイマーを起動する。一つの態様では、前記時間間隔は約10ミリ秒(ms)~約500ミリ秒(ms)の範囲にあり、別の態様ではこの時間間隔が約10msの範囲内にある。ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ8に戻る。
10.前記所定の時間間隔全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM未満かどうかを決定する。
11.ステップ9および10に対してイエスなら、緊急ブレーキテスト全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに試験合格データおよびタイムスタンプを記録保管しかつ常用ブレーキ試験ステップ13に進む。
12.ステップ9および10に対してノーなら、ブレーキ試験全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、そして以下a、b、およびcのうちの少なくとも一つを行う。
a.eメイルまたはテキストによって、OEM(Original Equipment Manufacturer)が指 定する者に不合格試験通知する。
b.前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在のより低い車両速度制限値に設定し、ブレーキシステム試験に合格するまで車両を安全な方法で走行させる。一つの態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の0%以上かつ100%未満であり、別の態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の約50%であり、さらに別の態様では、前記より低い車両速度制限値はブレーキシステム試験に合格するまでローカルな作業場所の条件に従って設定する。
c.前記コントローラがコマンドを送信し、前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うまで車両を非駆動状態に置く。これらa、b、cは併用可能である。
13.常用ブレーキがかかっているかどうかを決定する。この決定は常用ブレーキセンサによって行う。一つの態様では、本明細書に記載するブレーキ圧力センサを使用する。
14.ステップ13に対してイエス回答なら(即ち、常用ブレーキが作動している)、ステップ15に移行し;ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ13に戻り。
15. 前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定する。
16. ステップ15に対してイエスなら、ステップ17に移行し;ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ15に戻る。
17. 緊急ブレーキがかかっていないかどうかを決定する。
18.ステップ17に対してイエスなら(即ち、緊急ブレーキがかかっていないなら)、ステップ19に移行し;ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ17に戻る。
19.スロットルを絞り、前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出した牽引モータトルク以上かどうかを決定する。
20.イエスなら、好ましくは所定の時間間隔全体を通して、前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が予め算出したモータトルク値以上に確実に留まっているために十分な所定の時間間隔でタイマーを起動し、(一つの態様では、この時間間隔は約10ms~約500msの範囲にあり、別の態様では、この時間間隔は約10msの範囲にある)、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップ8に戻る。
21.所定時間間隔全体を通して、前記牽引モータのRPM値が前記牽引モータの所定の最大RPM値未満であるかどうかを決定する。
22.ステップ19および21に対してイエスなら、緊急ブレーキ試験全体を通して算出しかつ決定したデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、操車および車両使用を許可する。
23.ステップ19および21に対してノーなら、ブレーキ試験全体を通して算出しかつ決定したデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、以下のa、b、cの少なくとも一つを行う。
a. eメイルまたはテキストによって、OEMが指定する者に不合格試験通知する処理。
b. 前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在のより低い車両速度制限値に設定し、ブレーキシステム試験に合格するまで車両を安全な方法で走行させる処理 (一つの態様では、このより低い車両速度制限値は0%以上~最大諸力速度制限値の100%未満、別の態様では、このより低い車両速度制限値は最大車両速度制限値の約50%、さらに別の態様では、このより低い車両速度制限値はブレーキシステム試験に合格するまで作業現場条件に応じて設定する処理)。
c.前記コントローラがコマンドを送信し、緊急ブレーキを(一つの態様ではSAHRブレーキ回路値を)最大に設定し、診断および/または修理を行うまで車両を非駆動状態に置く処理、およびこれらの併用処理。
【0038】
一つの態様では、前記試験方法を実施する前に、緊急ブレーキを有することができるSAHRブレーキ回路がブレーキを十分にかけたときに、圧力閾値を算出しかつ前記コントローラに入力し、常用ブレーキ回路がブレーキを十分に解除したときに、圧力閾値を算出しかつ前記コントローラに入力し、牽引モータの最大RPM閾値を算出しかつ前記コントローラに入力し、そしてタイマー起動期間の所定時間値を算出しかつ前記コントローラに入力する。
【0039】
さらに別の態様は、緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有し、安全規制の順守を担保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を担保する車両のブレーキシステム用のブレーキ試験装置に関し、この試験装置は
i.少なくとも一つのコントローラ、
ii. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキセンサおよび少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、
iii. 前記コントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータおよび少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、
iv. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡するモータトルクセンサまたは方向センサのうちの少なくとも一つ、
v.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するモータトルクセンサまたは方向センサのうちの前記少なくとも一つ、
vi.少なくとも一つのブレーキ試験ステータスインジケータ、
vii.ブレーキ試験からのデータを記録保管するために適宜使用する少なくとも一つのデータ記録素子、および
viii.前記ブレーキ試験からデータを通信するために適宜使用する少なくとも一つの通信素子を有する。
【0040】
さらに別の態様は車両の緊急ブレーキおよび常用ブレーキを試験する方法に関する。この試験方法では、
a.ブレーキ試験装置の少なくとも一つのコントローラに、
i. 最大車両速度、
ii. 総車両重量、
iii.道路面の最大傾斜角度、
iv.当該車両の静的負荷タイヤの半径、
v.減速係数、および
vi.当該車両のモータと当該車両の車輪との総ギヤ比のうちの一つの値を入力し、
b.前記車両の減速に必要なトルクを算出し、
c.算出したトルクを前記の少なくとも一つのコントローラに設定し、
d. 前記車両のスプリング式油圧式リリース(SAHR)ブレーキの現在の回路油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
e.イエスなら、ステップfに移り、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップdに戻り、
f.前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
g.イエスなら、ステップhに移行し、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップfに戻り、
h.現在の常用ブレーキ回路油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
i.イエスなら、ステップjに移行し、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップhに戻り、
j.前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出した牽引モータトルクより大きいかどうかを決定し、
k.ステップd、f、hおよびjでイエス回答が得られた場合には、タイマーを所定の時間値起動し、所定の時間値にわたって前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出した牽引モータトルク以上に留まっているかどうかを測定し、ノーならステップd、f、hおよびjでイエス回答が得られるまでステップに戻り、
l.所定の時間値全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値未満に留まっているかどうかを決定し、
m.イエスなら、前記緊急ブレーキ試験を通して算出されかつ決定されたデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプをコントローラに記録保管し、ステップoに移行し、
n.ノーなら、前記ブレーキ試験全体をとおして算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを記録保管し、以下のうちの一つを行う;
i.試験不合格通知を発する、
ii.最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、車両を効果的に非駆動状態する、およびこれら三者を任意に組み合わせて行う、
o.前記車両の現在のSAHRブレーキの油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値より大きいかどうかを決定する;
p.イエスなら、ステップqに移行し;ノーなら、イエス回答が得られるまでステップoに戻る;
q.前記車両のギヤ位置が前進方向ギヤ位置にあるかどうかを決定する;
r.イエスなら、ステップsに移行し、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップqに戻る;
s.現在の常用ブレーキ回路の油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値よりも大きいかどうかを決定し;、
T.イエスなら、ステップuに移行し、ノーなら、イエス回答が得られるまでステップsに戻る、
u.前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出した牽引モータトルク以上かどうかを決定する;
v.ステップo、q、sおよびuでイエス回答なら、所定の時間値の間タイマーが起動し、所定時間値の全体を通して前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出した牽引モータトルク値以上に留まっているかどうかを確認し、ノーなら、ステップo、q、sおよびuでイエス回答が得られるまでステップsに戻る;
w. 所定時間値の全体を通して、トルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値以上に留まっているかどうかを決定する;
x.イエスなら、常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに合格試験データおよびタイムスタンプを記録保管し、前記車両の道路速度値を所定の最大道路速度値に維持し、試験を終了する;
y.ノーなら、常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録し、以下のうちの少なくとも一つを行う;
i.試験不合格通知を発する、
ii.最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、車両を効果的に非駆動状態する、およびこれら三者を任意に組み合わせて行い、そして試験を完了する。
【0041】
上記において、緊急ブレーキの試験中、緊急ブレーキを作動し、常用ブレーキを作動させずに、牽引モータトルクリクエストを出して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保し、そして常用ブレーキの試験中、常用ブレーキを作動し、緊急ブレーキを作動させずに、牽引モータトルクリクエストを出して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保する。
【0042】
上記において、緊急ブレーキおよび/または常用ブレーキの合格試験を評価する前記所定時間間隔は1~10秒であり、この時間間隔では、モータがトルク値を確実に獲得でき、モータが所定の時間トルクを維持する条件下で被試験ブレーキを試験できる意味のある試験結果を得ることができるとともに、時間間隔があまりにも短く、被試験ブレーキによって持続可能なトルクを確実に保持できない場合に、誤った合格通知を出すこともなくなる。
【0043】
上記の態様において、前記所定時間値はブレーキテストの最小必要条件を監視する規制機関によって定められた値である。
【0044】
上記の態様において、前記所定時間値はブレーキシステムの最小必要条件に関してOEMによって定められた値である。
【0045】
上記の態様において、所定時間値は被試験ブレーキシステムが機能を発揮し、かつすべての試験要件を満足することを確認するために決定した値である。
【0046】
別の一つの態様では、この所定時間値は約3秒である。
【0047】
別の一つの態様では、この所定時間値は少なくとも3秒である。
【0048】
別の一つの態様では、牽引モータセンサは高性能エンコーダである。
【0049】
一つの態様では、コントローラの方法ステップアルゴリズムはParker IQANdesignソフトウェアで設定することができるが、本明細書に記載するアーキテクチュアおよび機能処理を実施するためには他のソフトウェア言語およびプログラムも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】発明の一態様に係るシステムおよび方法の確定フローチャートを示す概略図である。
【
図2】発明の一態様に係るシステム構成要素を示す概略図である。
【
図3-1-3-5】発明の一態様における車両のブレーキ試験を行うオペレータのシーケンスステップを示す図である。
【
図4】発明の一態様におけるブレーキセンサおよび/または加速度センサ用のアナログセンサを示す図である。
【
図5】発明の一態様におけるブレーキセンサ用の圧力センサを示す図である。
【
図6】発明の一態様係る対地速度センサを示す図である。
【
図7】発明の一態様に係る真対地速度センサを示す図である。
【
図8】発明の一態様に係るコントローラを示す図である。
【
図9】発明の一態様に係る牽引モータ/インバータユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1を参照して以下説明するが、
図1は発明の一態様に係るブレーキ試験装置の方法および操作手順を示す図である。
【0052】
ブレーキ試験開始時400では、緊急ブレーキを作動する(410)。試験装置は同時にドライブ420が前進方向にあり、そして常用ブレーキ430がかかっていないことを確認する。ドライブ420が前進方向にないか、あるいは常用ブレーキ430がかかっているかのいずれかの場合には、ドライブ420が前進方向にありかつ常用ブレーキ430がかからなくなるまで操作を繰り返す。試験装置はこれを本明細書に記載するセンサ類によって行う。ドライブ420が前進方向にありかつ常用ブレーキ430がかかっていない場合には、所定トルク値のトルクをシステムがモータ400に加え、負荷を緊急ブレーキ410に誘導する。モータトルク値450が所定値に達したならば、タイマー460が起動し、モータトルク値450が所定値かそれ以上であり、かつモータ440のRPMがゼロである限り、このタイマーが維持される。モータトルク値450が所定値に達していない場合には、所定値になるまでトルクをモータ440に加える。所定の時間間隔にわたってモータトルク値450が所定値かそれ以上で、モータ440のRPMがゼロの場合には、緊急ブレーキ試験合格メッセージ470をコントローラに記録する。所定の時間間隔にわたってモータトルク値450が所定値にないか、あるいはそれ以上ではなく、および/またはモータ440にRPMが検出された場合には、緊急ブレーキ試験不合格メッセージ480をコントローラに記録し、コントローラが、操車が安全でないことを指示し、車両の許容可能な最大速度を前記したように設定する。所定の時間間隔にわたってモータトルク値450が所定値かそれ以上であり、かつモータ440のRPMがゼロの場合には、緊急ブレーキ試験合格メッセージ470をコントローラに記録し、ブレーキ試験装置が常用ブレーキ500の試験に移る。常用ブレーキ500を踏み、試験装置が、同時にドライブ420が前進方向にあるかどうかを、そして緊急ブレーキ530がかかっていないかどうかを確認する。ドライブ420が前進方向ではなく、および/または緊急ブレーキ530がかかっている場合には、ドライブ420が前進方向にあり、緊急ブレーキ530がかからなくなるまで試験装置がステップを繰り返す。ドライブ420が前進方向にあり、および緊急ブレーキ530がかかっていない場合には、試験装置が所定値のトルクをモータ440に加えて、常用ブレーキ500に負荷を誘導する。モータトルク値450が所定値に達した場合には、タイマー460が起動し、モータトルク値450が所定値かそれ以上の値に留まっている限り、そしてモータ440のRPMがゼロである限り、このタイマーが維持される。モータトルク値450が所定値に達していない場合には、所定値に達するまでトルクをモータ440に加える。所定の時間間隔にわたってモータトルク値450´が所定値かそれ以上の値に留まっている限り、またモータ440の検出RPMがゼロである限り、常用ブレーキ試験合格メッセージ570をコントローラに記録する。所定の時間間隔にわたってモータトルク値450が所定値かそれ以上の値に留まっていない場合には、またモータ440RPMが検出された場合には、常用ブレーキ試験不合格メッセージ580をコントローラに記録し、コントローラが、操車が安全ではないことを指示し、車両の許容可能な最大速度を上記したように設定する。
【0053】
次に
図2を参照して説明するが、この図は車両200、特に電気車両の構成部品を示す概略図である。ブレーキ試験装置202は多数の構成素子を有する。例示すると、複数のセンサに連絡するPIDコントローラを使用することができるコントローラ204、ブレーキセンサ206、一つの態様では常用ブレーキおよび/または緊急ブレーキの作動を検出する圧力センサ、現在のモータトルクをコントローラ204に入力するアクセレータ(またはスロットル)またはモータトルク入力センサ208、モータスピード入力209、車両200のFNR位置を検出するFNRセンサ210、ブレーキステータスインジケータ214を有するディスプレイ212、モータトルクステータスインジケータ216、FNR位置ステータスインジケータ218、ブレーキ試験スタータスインジケータ220、およびオン/オフステータスインジケータ222を挙げることができる。オン/オフスイッチ224はコントローラ204に連絡する。ブレーキ試験装置202は実施している試験からデータを格納することができるデータ/タイムスタンプ素子226などのメモリおよびブレーキ試験装置202からデータおよび結果を対象となる当事者や団体に通信する通信モジュール228を備えることも可能である。さらに、ブレーキ試験装置202はこのブレーキ試験装置202に電力を供給する電源230を備える。センサ206、208および210はコントローラ204に連絡し、各センサからの信号をコントローラ204に送信する。
【0054】
モータトルクインプット208が車両モータのトルクを与える。このインプットについては当業者にとって公知なアルゴリズムによって決定することができ、車両モータのRPMおよび印加電流を測定することができる。モータトルクインプット208およびモータ速度インプット209はメーカーによって車両モータに組み込まれている。
【0055】
ブレーキセンサ206がブレーキから車両200に加わる制動のレベルを測定する。このブレーキセンサ206の場合、緊急ブレーキ(またはSAHRブレーキ回路)および/または常用ブレーキ(複数の場合もある)の制動のレベルを測定することができる。上記したように、制動レベルはブレーキペダル位置やその他の制動測定値に基づいて測定することができる。
【0056】
FNRセンサ210が、ブレーキ試験を目的としてギヤ位置が前進方向(または駆動方向)にあるかどうかを測定する。この測定では、上記したように、ギヤシフトレバーの位置やその他当業者にとって公知な手順などを測定すればよい。
【0057】
電源230がコントローラ204に電力を供給し、この電源は車両モータによって充電すればよい。
実施例1
【0058】
以下に、本明細書に記載する装置および方法を実施するさいの一般的な実施例を記載する。
【0059】
第1工程で、パラメータ値を入力し、以下に記載する最大速度から車両を安全に減速するための最大設計減速トルク(maximum designed retardive torque)を算出する。
【0060】
i.操車位置において許される最大車両速度
【0061】
ii.車両総重量
【0062】
iii.車両の最大設計傾斜角度(車両の最大勾配角度)
【0063】
iv.静的負荷タイヤの半径(即ち静的負荷半径)
静的負荷半径とは、推奨される通常圧力まで膨張させた静的タイヤの負荷半径を意味する。負荷半径は車輪平面で測定した車輪中心に接触するタイヤの中心からの距離である。
【0064】
v.減速計数
車両運転者が減速プロセスを断続的かつ突発的なプロセスではなくスムーズなプロセスとして感じる減速率の値である。(即ち前進方向に急に傾いた状態で制動を行うと、車両運転者がハンドルに向かって前進方向に動くため)、車両速度を減速すべき場合に車両運転者が不快になる。
【0065】
vi.モータおよび車輪間の総減速比
【0066】
これらの数値を下記の式に挿入すると、車両の減速に必要なトルクを算出できる。
【0067】
TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG
式中、TB=位相差トルク、rT=静的負荷タイヤの半径、Wv=総車両重量、Fd=減速係数、θ=道路面の傾斜角度、RG=モータと車輪との間の総減速比である。
【0068】
一つの態様では、次に算出されたTBを0~100のスケーリングされた数学的値であればよいベクトルに変換する。0は車両への位相差トルクがない場合を指し、そして100は車両にかかる最大位相差トルクを指す。別の態様では、TB値はそのまま組み込む。
【0069】
試験を開始する前に、この情報をコントローラに読み込む。
実施例2
【0070】
以下の実施例は現場で操車を行う前に、運転者が必要な車両ブレーキ試験を行うさいの一般的な手順を示すものである。試験車両には以下の装置を使用する。
a.ブレーキ試験要請ボタン Elobau normally open push button switch 145101AE60
b.緊急ブレーキボタン Honeywell emergency Stop Switch 50058830-05
c.F-N-Rレンジセレクタスイッチ Cobo OMNIA F-N-R switch 01-1113-0000
d.ブレーキペダル位置センサ Parker ADS50 Analog distance sensor 01710ECD
e.加速ペダル位置センサ Makersan accelerator pedal MO450_H10_P009
f.(モータ速度も設定する)牽引モータ TM4 Sumo MD motor LSM110C-HV1500-A
g.(モータ速度からモータトルク(位相差装置)および算出車両速度も設定する)牽引モータ制御ユニット/インバータ TM4 inverter/controller CO150-HV-A2
h.マスターディスプレーモジュール/スクリーン Parker IQAN MD4-10 module 20077774
i.ブレーキ圧力センサ Parker SCP compact pressure sensors 2820016
【0071】
ここで
図3-1、
図3-2、
図3-3、
図3-4および
図3-5を参照して説明する。運転者がブレーキ試験要請ボタン300を押し、離すことによってブレーキ試験を開始する。表示スクリーン310には第1試験は緊急ブレーキ試験であることが、そして緊急ブレーキがかかっている状態を示すインジケータ312、車両が駆動位置にあることを示すインジケータ314、常用ブレーキに圧力がかかっていない状態を示す圧力インジケータ316やモータトルク値318(単位Nm)などのいくつかのインジケータが表示されている。本実施例において、試験を実施するためには500Nm以上のモータトルク値が必要である。表示スクリーン310には試験全体を通してアナログモータトルクダイヤル320およびブレーキ試験タイマーインジケータ322も表示する。本実施例では、車両運転者が緊急ブレーキをかけ、緊急ブレーキをかけた状態を表示するインジケータ312をポジティブにする。また、運転者が車両の方向位置が駆動方向または前進方向にあることを確認し、車両が駆動位置にあることを示すインジケータ314をポジティブにする。また、車両運転手が、常用ブレーキがかかっていない(即ち解除されている)ことを確認し、常用ブレーキに圧力が作用していないことを示すインジケータ316をポジティブにする。最後に、312、314および316がポジティブになった後は、運転者が車両のスロットルまたはアクセレータを踏み、モータトルク値を500Nm以上に設定する(本実施例では、他の値は状況に依存する)。一旦アナログモータトルクダイヤル320が500Nm以上の車両モータトルクを表示し、かつモータトルク値318がポジティブになった後は(即ちインジケータ312、314、316および318がすべてポジティブ(パネル上のグリーンライトがポジティブで、レッドライトがネガティブ))の場合に、タイマーがブレーキ試験タイマーインジケータ322の表示されている秒数のカウントダウンを(例えばt=2から)行い、そしてモータトルク値318が全体を通して500Nm以上に留まり、そして車両が移動していない場合には、表示スクリーン310は緊急ブレーキがブレーキ試験に合格したとのメッセージ324を表示する(
図3-2を参照)。緊急ブレーキがブレーキ試験に合格した後は、装置は常用ブレーキ試験に移り、表示スクリーン310が常用ブレーキインジケータ326(
図3-3を参照)、車両が駆動位置にあることを示すインジケータ314、緊急ブレーキ解除328およびモータトルク値318を表示する。常用ブレーキ試験では、車両運転手は常用ブレーキが利いているかどうかを、車両方向位置が駆動方向か前進方向にあるかを、緊急ブレーキが解除されているかどうかを確認し、運転手が車両のスロットルまたはアクセレータを踏み、モータトルク値を500Nm以上に設定する必要がある。一旦アナログモータトルクダイヤル320が500Nm以上の車両モータトルク値を示し、かつモータトルク値318がポジティブになった後は(即ちインジケータ326、314、328および318がすべてポジティブ(即ちパネル上のグリーンライトがポジティブで、レッドライトがネガティブになった時に)、タイマーがブレーキ試験タイマーインジケータ322に表示されている2秒からカウントダウンを行い、そしてモータトルク値318が全体を通して500Nm以上に留まり、そして車両が移動していない場合には、表示スクリーン310は常用ブレーキがブレーキ試験に合格したとのメッセージ330を表示する(
図3-4を参照)。一旦常用ブレーキおよび緊急ブレーキの両ブレーキが試験に合格した後は、装置がデータを記録し、表示スクリーン310が通常の表示モードに移り、常用ブレーキおよび緊急ブレーキ試験の合格日時とともに試験合格メッセージ332(
図3-5を参照)を発する。装置は試験合格データのリストを出すことができ、このリストを印刷し、および/または当業者にとっては公知な無線プロトコルまたは有線プロトコルによって関係者に連絡できる。緊急ブレーキおよび/または常用ブレーキのいずれかが不合格の場合には、装置はブレーキ試験不合格のメッセージを発信し、ブレーキシステムが修理されるまで車両を操車不可にするか、あるいは車両速度を上記の最大許容速度未満の速度に制限する。一つの態様では、エンドユーザの好みに対応するために、常用ブレーキを試験してから、緊急ブレーキを試験することも可能である。
【0072】
図4を参照して説明する。この図はブレーキおよび/またはスロットルセンサ用のアナログセンサ1100を示す図である。レバー1110はその一端においてブレーキおよび/またはスロルペダルに装着し、解除時(位置はレバーの0%および0インチ行程である)および完全踏み込み時(位置はレバーお100%および1インチ行程である)のブレーキおよび/またはスロットルペダルの位置を決定することができる。アナログセンサ1100の他端1120はコントローラに接続する。電圧信号(0%に対して0.5Vおよび100%に対して4.5V)としての0~100%の値は通信ライン1130によってコントローラ1130に送信する。
【0073】
対地速度センサを示す
図6を参照して説明すると、第1端部3110がホール効果によって非接触状態で、車両のギヤまたは車輪またはモータ上における磁石の回転数/分を計測する。他端3120がコントローラに連絡し、回転数/分のデジタル信号をコントローラに送信し、ここでコントローラが回転数を車両速度に転換する。
【0074】
真の対地速度センサ(TGSS)を示す
図7を参照して説明すると、TGSSセンサ4100にドップラーシフトを組み込み、車両の真の対地速度を計測する。TGSSセンサ4100については、信号を道路面に発信するように設けることができ、道路面から反射した信号をこのTGSSセンサ4100が受信する。道路面がTGSS4100に対して移動すると、反射信号(ドップラーシフト)周波数が変化する。車両の真の対地速度は周波数変化を測定することによって算出する。
【0075】
速度コントローラシステムの一部を構成するコントローラ(またはコンピュータ)5100示す
図8を参照して説明すると、コントローラ5100は本明細書に記載する各種センサに接続し、本明細書に記載する各種センサから受信した信号に基づいて補正係数を算出し、そして信号を送信しかつ減速ブレーキシステムをかけるために必要なセンサ電圧信号を工学単位に変換する。
【0076】
図9は、本明細書に記載するブレーキ試験時に車両およびトルクを駆動する牽引モータ/制御ユニットインバータ6100を示す図である。
【0077】
発明の範囲から逸脱することなく、発明の好適な実施態様は多くの変更が可能であり、本明細書に記載した事項はすべて例示であり、限定的なものである。
【符号の説明】
【0078】
10、206、208、1100 センサ
200 車両
202 ブレーキ試験装置
204 コントローラ
208 モータトルクインプット
209 モータ速度インプット
210 FNRセンサ
212 ディスプレイ
214 ブレーキステータスインジケータ
218、312、314 インジケータ
224 オン/オフスイッチ
300 ボタン
310 表示スクリーン
316 圧力インジケータ
318 モータトルク値
328 緊急ブレーキ解除
400 ブレーキ試験開始時
400、440 モータ
410 緊急ブレーキ
420 ドライブ
430 常用ブレーキ
450 モータトルク値
460 タイマー
470 合格メッセージ
480 不合格メッセージ
500 常用ブレーキ
530 緊急ブレーキ
570 合格メッセージ
580 不合格メッセージ
1110 レバー
4100 TGSSセンサ
5100 コントローラ
6100 インバータ
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有し、安全規制の順守を担保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を担保する車両のブレーキシステム用のブレーキ試験装置であって、
i.少なくとも一つのコントローラ、
ii. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキセンサおよび少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、
iii. 前記コントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータおよび少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、
iv.前記少なくとも一つのコントローラに連絡する方向センサまたはモータトルクセンサのうちの少なくとも一つ、
v.前記少なくとも一つのコントローラに連絡する方向センサまたはモータトルクセンサのうちの前記少なくとも一つ、
vi.少なくとも一つのブレーキ試験ステータスインジケータ、
を有する
ことを特徴とするブレーキ試験装置。
【請求項2】
前記車両が電気車両である請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項3】
さらに少なくとも一つのスロットルセンサを有し、この少なくとも一つのスロットルセンサがスロットルペダル位置センサである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項4】
前記方向センサがドライブ位置センサである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのブレーキステータスインジケータが常用ブレーキステータスインジケータ、または緊急ブレーキステータスインジケータ、あるいはこれらを併用してものである請求項1に記載のブレーキ試験装置。
【請求項6】
車両の緊急ブレーキおよび常用ブレーキの試験方法であって、
a.ブレーキ試験装置の少なくとも一つのコントローラに、
i. 最大車両速度値、
ii. 総車両重量、
iii.道路面の最大傾斜角度、
iv.当該車両の静的負荷タイヤの半径、
v.減速係数、および
vi.当該車両のモータと当該車両の車輪との総ギヤ比、
の値を入力し、
b. 前記車両の減速に必要なトルクを算出し、
c. 算出したトルクを前記少なくとも一つのコントローラに設定し、
d. 前記車両のスプリング式油圧式リリース(SAHR)ブレーキの現在の回路油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
e.肯定されれば工程fに移り、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程dに戻り、
f. 前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
g. 肯定されれば工程hに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程fに戻り、
h. 現在の常用ブレーキ回路油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値未満であるかどうかを決定し、
i.肯定されれば工程jに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程hに戻り、
j. 前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルクより大きいかどうかを決定し、
k. 工程d、fおよびjで肯定の回答が得られた場合には、タイマーを所定の時間値起動し、所定の時間値にわたって前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク以上に留まっているかどうかを測定し、否定されれば工程d、f、hおよびjで肯定の回答が得られるまで工程d、f、hおよびjに戻り、
l.所定の時間値全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値未満に留まっているかどうかを決定し、
m. 肯定されれば、前記緊急ブレーキ試験を通して算出されかつ決定されたデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプをコントローラに記録し、工程oに進み、
n. 否定されれば、前記ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを記録し、以下のうちの少なくとも一つを行い、
i. 試験不合格通知を出す、
ii. 最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、前記車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、前記車両を効果的に非駆動状態する、およびこれら三者を任意に組み合わせて行う、
o.前記車両の現在のSAHRブレーキ回路油圧値が最大SAHRブレーキ回路油圧値より大きいかどうかを決定する、
p.肯定されれば工程qに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程oに戻る、
q. 前記車両のギヤ位置が前進方向ギヤ位置にあるかどうかを決定する、
r. 肯定されれば工程sに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程qに戻る、
s.現在の常用ブレーキ回路の油圧値が最大常用ブレーキ回路油圧値よりも大きいかどうかを決定し、
t. 肯定されれば工程uに移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程sに戻る、
u.前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルクより大きいかどうかを決定する、
v. 工程o、q、sおよびuで肯定されれば、所定の時間値の間タイマーが起動し、所定時間値の全体を通して前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク値以上に留まっているかどうかを確認し、否定されれば、工程o、q、sおよびuで肯定の回答が得られるまで工程o、q、sおよびuに戻る、
w. 所定時間値の全体を通して、トルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM値以上に留まっているかどうかを決定する、
x. 肯定されれば常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに合格試験データおよびタイムスタンプを記録し、前記車両の道路速度値を所定の最大道路速度値に維持し、試験を終了する、
y. 否定されれば、常用ブレーキ試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録し、以下のうちの少なくとも一つを行う、
i. 試験不合格通知を発する、
ii. 最大車両速度値をより低い車両速度値に設定し、車両を安全運転で修理に出す、
iii.前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うことができるまで、車両を効果的に非駆動状態にする、およびこれら三者を任意に組み合わせて行う、そして試験を完了する、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項7】
前記試験方法に先立って、SAHRブレーキ回路の完全作動時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、SAHRブレーキ回路の完全解除時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、常用ブレーキ回路の完全作動時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、常用ブレーキ回路の完全解除時の圧力閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、牽引モータの最大RPM閾値を計算し、これを前記コントローラに入力し、そしてタイマー実行時間の所定時間値を計算し、これを前記コントローラに入力する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
緊急ブレーキの試験中、緊急ブレーキを作動し、常用ブレーキを作動させずに、スロットルを作動して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保し、そして常用ブレーキの試験中、常用ブレーキを作動し、緊急ブレーキを作動させずに、スロットルを作動して、必要に応じて前記牽引モータトルク値を確保する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
タイマー実行時間の所定時間値が1~10秒である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記所定時間値がブレーキテストの最小必要条件を監視する規制機関によって定められた値である請求項6に記載の方法。
【請求項11】
安全規制遵守を確保し、かつ車両のブレーキシステムの機能発揮を確保する車両のブレーキシステム用電子式ブレーキ試験装置であって、
a. 少なくとも一つのコントローラ、
b. 少なくとも一つの緊急ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、
c. 少なくとも一つの常用ブレーキおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、
d. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、
e. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、
f. 少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルクセンサまたは少なくとも一つの方向レンジセンサ、
g. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのタイマー、および、
h. 前記少なくとも一つのモータおよび前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのモータトルク発生器、を有し、
前記少なくとも一つのコントローラが前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサ、前記少なくとも一つの緊急ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つの常用ブレーキステータスインジケータ、前記少なくとも一つのモータトルクセンサ、前記少なくとも一つの方向レンジセンサ、および前記少なくとも一つのタイマーのそれぞれからの信号を受信する
ことを特徴とするブレーキ試験装置。
【請求項12】
前記車両は、電気車両、電気式鉱山用車両、および内燃式車両からなる群から選択される請求項11に記載のブレーキ試験装置。
【請求項13】
さらに以下のうちの少なくとも一つを有する請求項11に記載のブレーキ試験装置。
i.オン/オフスイッチ、
ii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するディスプレイ、
iii.前記少なくとも一つのコントローラに連絡するオン/オフステータスインジケータ、
iv. 前記少なくとも一つのコントローラに連絡する少なくとも一つのスロットルセンサ、
v. 前記少なくとも一つのコントローラおよび前記ディスプレイに連絡する少なくとも一つのスロットルステータスインジケータ、
vi.ブレーキ試験からのデータを保存する少なくとも一つのデータロガー、および、
vii. 前記少なくとも一つのデータロガーからの前記データを通信する少なくとも一つの通信素子。
【請求項14】
前記少なくとも一つの方向レンジセンサがフォワードドライブ、ニュートラルドライブおよびリバースドライブ(FNR)センサである請求項11に記載のブレーキ試験装置。
【請求項15】
さらに前記少なくとも一つのコントローラおよび前記少なくとも一つのディスプレイに連絡する少なくとも一つの方向ステータスインジケータを有する請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項16】
さらに前記少なくとも一つのコントローラおよび前記少なくとも一つのディスプレイに連絡するFNRインジケータを有する請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項17】
前記少なくとも一つの通信素子が有線通信素子、WiFi、ブルートゥース(R)、モノのインターネット(IoT)、長期進化(LTE)ワイヤレス素子、データ保存メディアポートおよび/またはこれらを併用したものである請求項13または14に記載のブレーキ試験装置。
【請求項18】
さらにブレーキ試験の完了日付及び時間を供するデータおよびタイムスタンプを有する請求項11~17のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項19】
前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサおよび前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサがアナログセンサである請求項12~18のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項20】
前記少なくとも一つの緊急ブレーキセンサおよび前記少なくとも一つの常用ブレーキセンサがブレーキパッドまたはブレーキラインにかかる圧力を検出し、この圧力を電圧出力に変換する圧力センサである請求項12~19のいずれか一項に記載のブレーキ試験装置。
【請求項21】
車両のブレーキシステムの試験方法であって、前記ブレーキシステムは緊急ブレーキおよび常用ブレーキを有し、該試験方法は、
a.前記緊急ブレーキを試験し、これは以下の工程を有し、
i.前記緊急ブレーキを完全かつ同時に作動する工程、
ii.前記車両が駆動走行中であるかどうかを決定する工程、および
iii.前記常用ブレーキがかかっていないかを決定する工程、
iv.ii.および/またはiii.が否定されればいずれも肯定の回答が得られるまで工程ii.およびiii.に戻る工程、
v. ii.およびiii.が肯定されれば、所定の値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを車両モータに適用する工程、
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記常用ブレーキの助けを借りことなく前記緊急ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動する工程、
vii.vi.が肯定されれば、前記緊急ブレーキの試験を終了し、緊急ブレーキの試験に合格したことを確認し、工程b.に移行
する工程、
viii.vi.が否定されれば、前記緊急ブレーキの試験を終了し、前記緊急ブレーキの試験不合格を確認し、そして
上記工程vi.が肯定されるまで前記車両を運転不能状態に設定する工程、
b.前記常用ブレーキを試験し、これは以下の工程を有する、
i.前記常用ブレーキを完全かつ同時に作動する工程、
ii.前記車両が駆動走行中(または前進走行中)であるかどうかを決定する工程、および
iii.前記緊急ブレーキがかかっていないかかどうかを決定する工程、
iv.ii.およびiii.が否定されれば、いずれも肯定の回答が得られるまで工程ii.およびiii.に戻る工程、
v. ii.およびiii.が肯定されれば、所定値をもつ所定のトルク、あるいは一態様では可能な最大トルクを前記車両モータに加える工程、
vi.前記車両モータへのトルクが所定トルクに達したなら、所定のトルクを所定の時間間隔にわたって前記車両モータに確実に加え、かつ前記緊急ブレーキの助けを借りることなく前記常用ブレーキが、前記車両が移動することを抑制した状態で、所定の時間間隔タイマーを起動する工程、
vii.工程vi.が肯定されれば、前記常用ブレーキの試験を終了し、前記常用ブレーキ試験に合格したことを確認し、常用ブレーキ試験合格結果をコントローラに送信しかつ記録し、緊急ブレーキ試験および常用ブレーキ試験の合格結果の確認後、前記車両の走行を許可する工程、および
viii.vi.が否定されれば、前記試験を終了し、前記常用ブレーキ試験不合格を確認し、そして
上記工程a.vi.及びb.viが肯定されるまで前記車両を運転不能状態に設定する工程、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項22】
さらに、
(1)ブレーキ試験装置の前記少なくとも一つのコントローラによって前記ブレーキに負荷を誘導するモータトルク値(一つの態様では前記ブレーキに負荷を誘導する前記モータトルク値は以下のa)~f)に対応するデータパラメータに基づいて算出する)を受信し、
a)許容可能な最大車両速度制限値、
b)総車両重量、
c)道路面の最大傾斜角度、
d)当該車両の静的負荷タイヤの半径、
および
e)当該車両のモータと当該車両の車輪体との間の総ギヤ比、または、
f)前記車両をゼロ速度に減速するために必要な前記最大減速トルク値を、TB=[rT×Wv×(Fd+sinθ)]/RG(式中TBは必要な最大減速トルク、rTは静的負荷タイヤの半径、Wvは総車両重量、Fdは減速係数、θは道路面の最大傾斜角度、RGはモータと車輪組立体の間の総ギヤ比である)に基づいて算出し、
(2)前記緊急ブレーキがかかっているかどうかを決定し、
(3)工程(2)が肯定されれば(即ち前記緊急ブレーキがかかっている場合には)工程(4)に移行し、否定されれば、肯定の回答が得られるまで工程(2)に戻り、
(4)前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
(5)工程(4)が肯定されれば工程(6)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(4)に戻り、
(6)前記常用ブレーキがかかっていないかどうかを決定し、
(7)肯定されれば工程(8)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(6)に戻り、
(8)スロットルを絞り、かつ前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が予め計算した牽引モータトルクよりも大きいかどうかを決定し、
(9)肯定されれば所定の時間間隔タイマーを起動し、前記車両の現在の牽引モータトルク出力値がこの所定時間間隔全体を通してこの予め計算した牽引モータトルク以上に留まっていることを確認し(一つの態様では、前記所定の時間間隔は約10ms~約500msの範囲内にあり、別な態様では前記所定の時間間隔は約10msの範囲内にある)、
(10)否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(8)に戻り、
(11)前記所定の時間間隔全体を通して、前記牽引モータトルクのRPM値が前記牽引モータトルクの所定の最大RPM未満かどうかを決定し、
(12)工程(9)および(11)が肯定されれば、前記緊急ブレーキのテスト全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに前記コントローラに試験合格データおよびタイムスタンプを記録しかつ常用ブレーキ試験工程(13)に進み、
i.工程(9)および(11)が否定されれば前記ブレーキ試験全体を通して計算されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録し、そして以下の処理、即ち
1.電子メールまたはテキストによって、OEMが指定する者に不合格試験通知する処理、
2.前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在のより低い車両速度制限値に設定し、ブレーキシステム試験に合格するまで車両を安全な方法で走行させる処理(一つの態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の0%以上かつ100%未満であり、別な態様では、前記より低い車両速度制限値は前記最大車両速度制限値の約50%であり、さらに別な態様では、前記より低い車両速度制限値はブレーキシステム試験に合格するまでローカルな作業場所の条件に従って設定する)、
3.前記コントローラがコマンドを送信し、前記SAHRブレーキ回路値を最大に設定し、診断および/または修理を行うまで前記車両を非駆動状態に置く処理、およびこれらの併用処理、のうちの少なくとも一つの処理を行い、
(13)前記常用ブレーキが作動しているかどうかを決定し、
(14)工程(13)が肯定されれば(即ち、常用ブレーキが作動していれば)工程(15)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(13)に戻り、
(15)前記車両のギヤ位置が前進ギヤ位置にあるかどうかを決定し、
(16)工程(15)が肯定されれば工程(17)に移行し;否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(15)に戻り、
(17)前記緊急ブレーキがかかっていないかどうかを決定し、
(18)工程(17)が肯定されれば(即ち、緊急ブレーキがかかっていないなら)工程(19)に移行し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(17)に戻り、
(19)スロットルを絞り、前記車両の現在の牽引モータ出力値が予め算出された牽引モータトルク以上かどうかを決定し、
(20)肯定されれば、所定の時間間隔全体を通して、前記車両の現在の牽引モータトルク出力値が確実に予め算出したモータトルク値以上に留まっているために十分な所定の時間間隔でタイマーを起動し、否定されれば肯定の回答が得られるまで工程(8)に戻り、
(21)所定時間間隔全体を通して、前記牽引モータのRPM値が前記牽引モータの所定の最大RPM値未満であるかどうかを決定し、
(22)工程(19)および(21)が肯定されれば、前記緊急ブレーキの試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、操車および車両使用を許可し、
(23)工程(19)および(21)が否定されれば、前記ブレーキの試験全体を通して算出されかつ決定されたデータとともに不合格試験データおよびタイムスタンプを前記コントローラに記録保管し、以下の処理、すなわち
1.電子メールまたはテキストによって、OEMが指定する者に不合格試験通知する処理、
2.前記コントローラがOEMによって許容可能な最大車両速度制限値を現在より低い車両速度制限値に設定し、前記ブレーキシステムの試験に合格するまで修理のため前記車両を安全な方法で走行させる処理、
3.前記コントローラがコマンドを送信し、前記緊急ブレーキを、一つの態様ではSAHRブレーキ回路値につき最大に設定し、診断および/または修理を行うまで車両を非駆動状態に置く処理、およびこれらの併用処理、
のうちの少なくとも一つの処理を行う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、
vii.ブレーキ試験からのデータを記録するために使用する少なくとも一つのデータ記録素子、
viii.前記ブレーキ試験からデータを通信するために使用する少なくとも一つの通信素子、およびこれらの組み合わせ、
のうちの少なくとも一つを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のブレーキシステム用のブレーキ試験装置。
【請求項24】
さらに、
a. 緊急ブレーキの試験合格結果又は不合格結果をコントローラに送信しかつ記録する工程、および、
b. 常用ブレーキ試験不合格結果をコントローラに送信しかつ記録する工程、
のうちの少なくとも一つを備える、請求項21又は22に記載の車両のブレーキシステムの試験方法。
【請求項25】
前記ブレーキに負荷を誘導するモータトルク値は、減速係数に対応するデータパラメータを有するデータパラメータに基づいて算出される、請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】