(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】重複システムの一方の欠陥後にアクチュエータモーターの増大した最大出力電力で自動車のステアリングシステムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241008BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518540
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021075998
(87)【国際公開番号】W WO2023046265
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セペッシー, イムレ
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC34
3D232CC35
3D232CC37
3D232DC09
3D232DD05
3D232DE02
3D232EB11
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3D232EC37
3D232GG01
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3D333CD58
3D333CE29
3D333CE30
3D333CE32
3D333CE38
(57)【要約】
本発明は、道路車両のステアリングシステム(1)を制御する方法であって、ステアリングシステム(1)が、二つの重複パワーパックをそれぞれ有する少なくとも一つのアクチュエータ(5,8)を含み、前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする:少なくとも一つのアクチュエータのパワーパック中の欠陥又はパワーパックの欠陥を検出し(9,11)、機能不全のパワーパックをスイッチオフし;少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を、規定された時間期間、定格電力より高い値に増大させ(10,12);規定された時間期間後、少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を定格電力又はそれ未満に減少させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両のステアリングシステム(1)を制御する方法であって、前記ステアリングシステム(1)が、二つの重複パワーパックをそれぞれ有する少なくとも一つのアクチュエータ(5,8)を含み、前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
- 前記少なくとも一つのアクチュエータのパワーパック中の欠陥又はパワーパックの欠陥を検出し(9,11)、機能不全のパワーパックをスイッチオフし;
- 前記少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を、規定された時間期間、定格電力より高い値に増大させ(10,12);
- 規定された時間期間後、前記少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を定格電力又はそれ未満に減少させる。
【請求項2】
前記少なくとも一つのアクチュエータ(5,8)が、ステアバイワイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータ(8)及び/又はロードホイールアクチュエータ(5)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのアクチュエータが、電動パワーステアリングシステムにおいて補助トルクを与える単一のアクチュエータからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのアクチュエータの有する二つのパワーパックが、同一であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
最大出力電力の減少が、徐々になされることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法を実施するように設計された道路車両のための前記ステアリングシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文に記載の自動車のステアリングシステムを制御する方法、及びその方法を実施するように設計されたステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、ステアリングシステムのフェイルファンクションのアーキテクチャーを実施することが知られている。これらは、別個の独立したコントローラーとモーターを含む二つの同一のパワーパックを含む。各パワーパックは、両モジュールが一緒に作動して完全なステアリング機能を達成できるように、半分のステアリング制御の権限を与えられることができる。いずれのパワーパックの欠陥も、通常の状態の間の完全な性能と比べて半分にまで性能を低下させる。システム設計によっては、これは、全ての運転状況においてステアリング機能に対して十分でないかもしれない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、運転者がいつものように車両を制御できるように、アクチュエータの欠陥が起こった後であっても車両を操舵することを可能にする自動車のステアリングシステムを制御する方法を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車のステアリングシステムを制御する方法、及びその方法を実施するように設計されたステアリングシステムによって達成される。
【0005】
従って、自動車(道路車両)のステアリングシステムを制御する方法が提供され、そこでは、ステアリングシステムが、二つの重複パワーパックをそれぞれ有する少なくとも一つのアクチュエータを含み、前記方法が、以下の工程を含む:
- 少なくとも一つのアクチュエータのパワーパック中の欠陥を検出し、機能不全のパワーパックをスイッチオフし;
- 少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を、規定された時間期間、定格電力より高い値に増大させ;
- 規定された時間期間後、少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を定格電力又はそれ未満に減少させる。
【0006】
この方法は、重複システムの一つの側が故障し、残りの側が全ての状況においてステアリング機能を確保するように十分な電力で設計されていない場合であっても、重複ステアリングシステムにおいて完全なステアリング機能を与えることを可能にする。検出された機能不全は、電力増大のためのトリガーであることが好ましい。
【0007】
好ましくは、少なくとも一つのアクチュエータは、ステアバイワイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータ及び/又はロードホイールアクチュエータを含む。この場合において、この方法は、独立して、重複フィードバックアクチュエータ及び/又は重複ロードホイールアクチュエータに適用されることができる。
【0008】
本発明の別の実施形態では、少なくとも一つのアクチュエータは、電動パワーステアリングシステムにおいて補助トルクを与える単一のアクチュエータからなる。
【0009】
種々の部品及びコストに関して、もし少なくとも一つのアクチュエータの有する二つのパワーパックが同一であるなら有利である。
【0010】
最大出力電力の減少は、徐々に、好ましくは傾斜率調整でなされることが好ましい。
【0011】
さらに、上記の方法を実施するように設計された道路車両のためのステアリングシステムが提供される。このステアリングシステムは、ステアバイワイヤーシステム又は電動パワーステアリングシステムであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
【
図1】
図1は、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、ステアバイワイヤーステアリングシステムのアクチュエータの欠陥を取り扱う方法のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、ハンドル3に接続されたステアリング軸2を有するステアバイワイヤーステアリングシステム1の概略図である。ハンドル3とロードホイール4の間に機械的接続は全くない。ロードホイールアクチュエータ5は、ラックアンドピニオンギヤ7によってギヤラック6を作動させる。
【0014】
運転者がハンドル3を操作するとき、ステアリング軸2が回転され、それは、軸センサー(図には示されず)によって検出される。制御ユニットは、軸センサーによって検出された信号からロードホイールアクチュエータ5のための作動信号を計算する。作動信号でギヤラック6を作動させることによって、ロードホイール4は、方向転換される。同時に、ロードホイール4からギヤラック6に導入された力は、別のセンサー(図には示されず)によって認識され、フィードバック信号が計算され、それは、フィードバックアクチュエータとも称されるハンドルアクチュエータ8によってステアリング軸2に付与され、従って運転者は、ハンドル3においてフィードバックを認識することができる。
【0015】
ロードホイールアクチュエータ5及びフィードバックアクチュエータ8は、各々二つの重複パワーパック(図示せず)を有し、それらは、同一設計又は異なる設計であることができる。
【0016】
図2は、ステアバイワイヤーステアリングシステム1の制御方法を概略的に示す。もしフィードバックアクチュエータの欠陥が重複システムの一つの側で検出9されるなら、それぞれのモーターは、スイッチオフされ、フィードバックアクチュエータの性能は、残りの機能するモーターの定格電力に減少される。電気モーターの定格電力は、一定負荷の最大電力に基づく。
【0017】
一つのモーターの定格電力だけでは、全ての運転状況においてステアリング機能のために十分でない。そこで、モーター制御回路は、機能するモーターの最大出力電力を定格電力より高い値に増加させ10、それは、完全なステアリング機能を可能にする。ある時間期間後、最大出力電力は、定格電力にまで徐々に減少される。この方法は、モーターが増大した電力で短い時間期間だけ作動されるにすぎず、熱動形過負荷を信頼性高く回避するためにちょうどよいタイミングで定格電力又は減少された電力での作動に戻されることを確実にする。同じ方法は、ロードホイールアクチュエータ5にも適用される。ロードホイールアクチュエータは、同様に重複パワーパックを有する。もし一つの欠陥が起こる11なら、機能するモーターは、ステアリング機能を与えるが、これはあらゆる状況において可能であるわけではない。それゆえ、機能するモーターはまた、上記の方法で制御される。最大出力電力は、完全なステアリング機能を与えるために短い時間期間、定格電力より上に増大される12。その後、最大出力電力は、熱動形過負荷を回避するために定格電力にまで低下される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、ステアリングシステムは、アクチュエータを有する電動パワーステアリングシステム(EPAS)である。アクチュエータは、同じ向きの補助トルクを付与することによって、トルクをステアリング機構に付与する際に運転者を補助し、例えば駐車操作時、ハンドルを回転することを容易にするために使用される。従って、アクチュエータの操作は、ステアリングコラム軸を回転したり、又はステアリングラック機構の一部を動かすことを補助することができる。もちろん、アクチュエータは、それが運転者がハンドルを回転するのを助けるために補助トルクを与えることができる限り、いかなる一般的なステアリング機構のいかなる部分にも接続されることができる。上述と同様に、アクチュエータは、二つのパワーパックを重複して有するように設計される。重複システムの一つの側が故障するなら、故障した側のモーターは、スイッチオフされ、他の機能するモーターは、補助トルクを与える。もし単一モーターの定格電力が低すぎて運転者を補助できないなら、上記の方法が適用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両のステアリングシステム(1)を制御する方法であって、前記ステアリングシステム(1)が、二つの重複パワーパックをそれぞれ有する少なくとも一つのアクチュエータ(5,8)を含み、前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
- 前記少なくとも一つのアクチュエータのパワーパック中の欠陥又はパワーパックの欠陥を検出し(9,11)、機能不全のパワーパックをスイッチオフし;
- 前記少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を、規定された時間期間、定格電力より高い値に増大させ(10,12);
- 規定された時間期間後、前記少なくとも一つのアクチュエータの機能するパワーパックの最大出力電力を定格電力又はそれ未満に減少させる。
【請求項2】
前記少なくとも一つのアクチュエータ(5,8)が、ステアバイワイヤーステアリングシステムのフィードバックアクチュエータ(8)及び/又はロードホイールアクチュエータ(5)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのアクチュエータが、電動パワーステアリングシステムにおいて補助トルクを与える単一のアクチュエータからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのアクチュエータの有する二つのパワーパックが、同一であることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
最大出力電力の減少が、徐々になされることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の方法を実施するように設計された道路車両のための前記ステアリングシステム(1)。
【国際調査報告】