(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ウエハ受け、電気化学的ポロシフィケーション装置およびそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241008BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241008BHJP
H01L 21/3063 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/02 Z
H01L21/306 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518865
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 CA2022051428
(87)【国際公開番号】W WO2023044585
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523308052
【氏名又は名称】ソクプラ シオンス エ ジェニ エス.ウー.セ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】プロヴォ、フィリップ-オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ブシェリフ、アブデラウフ
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA05
5F043BB02
5F043BB12
5F043DD14
5F043EE14
5F043EE35
5F131AA02
5F131BA18
5F131CA09
5F131CA18
5F131EA06
5F131EB01
(57)【要約】
電気化学的ポロシフィケーション工程に用いるためのウエハ受けが記載される。当該ウエハ受けは概して、電極本体を有し、電極本体は、第1の平坦面を有し、第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、第1の平坦面から凹んでおり、かつ、電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、電極本体の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能である前記導管を有し;かつ、当該ウエハ受けは台座に受け入れられる環状封止要素を有し、環状封止要素は前記電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性がある弾性材料製であり、環状封止要素は台座に受け入れられるときには第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的ポロシフィケーション工程に用いるためのウエハ受けであって、当該ウエハ受けは:
電極本体を有し、前記電極本体は、第1の平坦面を有し、前記の第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、前記の第1の平坦面から凹んでおり、かつ、前記電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、前記電極本体の前記中心領域の周りを環状に延び、かつ、前記の第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、前記溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能である前記導管を有し;かつ、
前記台座に受け入れられる環状封止要素を有し、前記環状封止要素は前記電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性がある弾性材料製であり、前記環状封止要素は前記台座に受け入れられるときには前記の第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有し;
前記環状封止要素の前記ウエハ受け面の上に半導体ウエハが受け入れられるときには、前記真空ポンプが前記導管および前記溝から空気を吸引する真空を形成するように駆動可能であり、前記真空は前記半導体ウエハを前記の第1の平坦面の方へと引き、前記の引くことは、前記環状封止要素を圧縮して前記ウエハ受け面を前記の第1の平坦面と同じ高さにすること、および、前記半導体ウエハの背面と前記の第1の平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含む、
前記ウエハ受け。
【請求項2】
前記弾性材料がフルオロエラストマー材料である、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項3】
前記弾性材料がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料である、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項4】
前記溝が少なくとも前記導管と流体連通する複数の溝を含む、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項5】
前記電極本体が耐食材料製である、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項6】
休止位置では、前記ウエハ受け面が、間隔によって前記電極本体の前記の第1の平坦面の平面から離間した平面を有する、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項7】
前記間隔が、約0.5mm~3mmの範囲であり、好ましくは約1mm~2mmの範囲であり、かつ、最も好ましくは約1mm~1.5mmの範囲である、請求項6に記載のウエハ受け。
【請求項8】
前記環状封止要素が矩形の断面形状を有する、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項9】
前記環状封止要素が、外面と、前記外面内を延びる核を有し、前記外面は前記電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性があり、かつ、前記核は弾性材料製である、請求項1に記載のウエハ受け。
【請求項10】
電気化学的ポロシフィケーション装置であって、当該電気化学的ポロシフィケーション装置は:
内部キャビティを定める容器を有し;
前記内部キャビティ内に位置する第1の電極を有し;
前記内部キャビティ内に位置し、かつ、前記の第1の電極から離間したウエハ受けを有し、前記ウエハ受けは:
電極本体を有し、前記電極本体は、第1の平坦面を有し、前記の第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、前記の第1の平坦面から凹んでおり、かつ、前記電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、前記電極本体の前記中心領域の周りを環状に延び、かつ、前記の第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、前記溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能である前記導管を有し;かつ、
前記台座に受け入れられる環状封止要素を有し、前記環状封止要素は酸に耐性がある弾性材料製であり、前記環状封止要素は前記台座に受け入れられるときには前記の第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有し;
前記導管と流体連通しており、かつ、前記導管および前記溝から空気を吸引する真空を作り出すために駆動可能な真空ポンプを有し、前記真空は、前記環状封止要素の前記ウエハ受け面の上に受け入れられた半導体ウエハを前記の第1の平坦面の方へと引き、前記の引くことは、前記環状封止要素を圧縮して前記ウエハ受け面を前記の第1の平坦面と同じ高さにすること、および、前記半導体ウエハの背面と前記の第1の平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含み;
前記内部キャビティと流体連通しており、かつ、前記内部キャビティの少なくとも一部をエッチング溶液で浸すように構成されたエッチング溶液源を有し;かつ、
前記の第1の電極および前記電極本体を用いて前記エッチング溶液を横切るように電流を伝えるように構成された電流源を有し、前記電流および前記エッチング溶液が前記半導体ウエハの露出面内に孔を作る、
前記電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項11】
前記弾性材料がフルオロエラストマー材料である、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項12】
前記弾性材料がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料である、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項13】
前記溝が少なくとも前記導管と流体連通する複数の溝を含む、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項14】
前記電極本体が耐食材料製である、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項15】
休止位置では、前記ウエハ受け面が、約1mm~5mmの範囲であり、好ましくは約1mm~3mmの範囲であり、かつ、最も好ましくは約1mm~2mmの範囲である間隔によって前記電極本体の前記の第1の平坦面の平面から離間した平面を有する、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項16】
前記環状封止要素が矩形の断面形状を有する、請求項10に記載の電気化学的ポロシフィケーション装置。
【請求項17】
半導体ウエハに対して電気化学的ポロシフィケーション工程を実行する方法であって、当該方法は:
環状封止要素の上に前記半導体ウエハの背面を受け入れることを有し、前記環状封止要素は、エッチング溶液に耐性があり、かつ、弾性的であり;
前記半導体ウエハの前記背面に囲まれたキャビティに真空を作り出すことを有し、前記キャビティから空気を吸引する前記真空は前記半導体ウエハを電極本体の平坦面の方へと引き、前記の引くことは、前記環状封止要素を圧縮して前記環状封止要素のウエハ受け面を前記平坦面と同じ高さにすること、および、前記ウエハの前記背面と前記平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含み;
前記真空を維持しながら、前記半導体ウエハの露出面をエッチング溶液に浸すことを有し、かつ、前記電極本体から離間した別の電極を用いて前記エッチング溶液を横切るように電流を伝えることを有し、前記エッチング溶液および前記電流が前記半導体ウエハの前記露出面内に孔を作る、
前記方法。
【請求項18】
前記真空を取り除く際に、前記環状封止要素が拡張し、かつ、前記電極本体から離れるように前記半導体ウエハを移動させることをさらに有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記半導体ウエハがシリコンウエハおよびゲルマニウムウエハのうちの一方である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記エッチング溶液がフッ化水素(HF)溶液を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本改善は概して半導体ウエハに関し、いっそう具体的には半導体ウエハに対して実行される電気化学的ポロシフィケーション工程に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
電気化学的ポロシフィケーションは、シリコンウエハまたはゲルマニウムウエハのような半導体ウエハの中に多孔層を作る工程である。かかる工程から生じる多孔性のシリコンまたはゲルマニウムの層は、いくつか例を挙げると微小電気機械システム(MEMS)、太陽電池、分布ブラッグ反射器、マイクロキャビティ、導波管を含む多くの応用例において有用であることが見出されている。ポロシフィケーション工程は、半導体ウエハの背面を第1の電極に接触させ、かつ、半導体ウエハの前面をエッチング溶液(例えば、フッ化水素(HF)酸を含有する溶液)に曝す、電気化学的ポロシフィケーション装置を用いて実行され得る。その後、第1の電極とエッチング溶液に浸された第2の電極との間に電圧が印加される。キーパラメーターが適切に設定されるとき、本技術分野で知られているように、半導体溶解による孔成長が始まり、そこでは半導体ウエハがエッチング溶液に曝される。エッチング溶液内で半導体ウエハを所定の位置に維持するために、環状部材を半導体ウエハの第1の面の周辺領域上に押し付けることによって半導体ウエハを第1の電極に押し付け、そのことにより環状部材が中空であるおかげで半導体ウエハの前面の中心領域をエッチング溶液に曝すことが知られている。既存の電気化学的ポロシフィケーション装置はある程度満足のいくものであるが、改善の余地が残っている。
【発明の概要】
【0003】
概要
半導体ウエハの前面の一部の妨害を回避し、かつ、孔が成長し得る面積を増大させる、電気化学的ポロシフィケーション装置および方法の当業界における必要性が存在することが見出された。さらに、少なくともいくつかの状況では、環状部材によって半導体ウエハに対して奏される力が所望されない程にそれを変形させ得、そのことが高品質の多孔性半導体ウエハが求められるときには有害であり得ることが見い出された。
【0004】
本開示の第1の態様によれば、電気化学的ポロシフィケーション工程において用いるためのウエハ受けが提供され、当該ウエハ受けは:電極本体を有し、該電極本体は、第1の平坦面を有し、第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、第1の平坦面から凹んでおり、かつ、電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、電極本体の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能な前記導管を有し;かつ、当該ウエハ受けは、台座に受け入れられる環状封止要素を有し、環状封止要素は、前記電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性がある弾性材料製であり、環状封止要素は、台座に受け入れられるときには第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有し;環状封止要素のウエハ受け面の上に半導体ウエハが受け入れられるときには、導管および溝から空気を吸引する真空を形成するように真空ポンプが駆動可能であり、真空は半導体ウエハを第1の平坦面の方へ引き、前記の引くことは、環状封止要素を圧縮してウエハ受け面を第1の平坦面と同じ高さにすること、および、半導体ウエハの背面と第1の平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含む。
【0005】
さらに、本開示の第1の態様によれば、弾性材料は例えば、フルオロエラストマー材料であり得る。
【0006】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、弾性材料は例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料であり得る。
【0007】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、溝は例えば、少なくとも導管と流体連通する複数の溝を含み得る。
【0008】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、電極本体は例えば、耐食材料製であり得る。
【0009】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、休止位置では、ウエハ受け面は例えば、間隔によって電極本体の第1の平坦面の平面から離間した平面を有し得る。
【0010】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、間隔は例えば、約0.5mm~3mmの範囲であり得、好ましくは約1mm~2mmの範囲であり得、かつ、最も好ましくは約1mm~1.5mmの範囲であり得る。
【0011】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、環状封止要素は例えば、矩形の断面形状を有し得る。
【0012】
まださらに、本開示の第1の態様によれば、環状封止要素は例えば、外面と、外面内を延びる核を有し得、外面は電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性があり、かつ、核は弾性材料製である。
【0013】
本開示の第2の態様によれば、電気化学的ポロシフィケーション装置が提供され、当該電気化学的ポロシフィケーション装置は:内部キャビティを定める容器を有し;内部キャビティ内に位置する第1の電極を有し;内部キャビティ内に位置し、かつ、第1の電極から離間したウエハ受けを有し、ウエハ受けは:電極本体を有し、電極本体は、第1の平坦面を有し、第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、第1の平坦面から凹んでおり、かつ、電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、電極本体の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能な前記導管を有し;かつ、ウエハ受けは、台座に受け入れられる環状封止要素を有し、環状封止要素は、酸に耐性がある弾性材料製であり、環状封止要素は、台座に受け入れられるときには第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有し;当該電気化学的ポロシフィケーション装置は真空ポンプを有し、真空ポンプは導管と流体連通しており、かつ、導管および溝から空気を吸引する真空を作り出すために駆動可能であり、真空は環状封止要素のウエハ受け面の上に受け入れられた半導体ウエハを第1の平坦面の方へ引き、前記の引くことは、環状封止要素を圧縮してウエハ受け面を第1の平坦面と同じ高さにすること、および、半導体ウエハの背面と第1の平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含み;当該電気化学的ポロシフィケーション装置はエッチング溶液源を有し、エッチング溶液源は、内部キャビティと流体連通しており、かつ、内部キャビティの少なくとも一部をエッチング溶液で浸すように構成され;かつ、当該電気化学的ポロシフィケーション装置は、第1の電極および電極本体を用いてエッチング溶液を横切るように電流を伝えるように構成された電流源を有し、前記電流および前記エッチング溶液が、半導体ウエハの露出面内に孔を作る。
【0014】
さらに、本開示の第2の態様によれば、弾性材料は例えば、フルオロエラストマー材料であり得る。
【0015】
まださらに、本開示の第2の態様によれば、弾性材料は例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料であり得る。
【0016】
まださらに、本開示の第2の態様によれば、溝は例えば、少なくとも導管と流体連通する複数の溝を含み得る。
【0017】
まださらに、本開示の第2の態様によれば、電極本体は例えば、耐食材料製であり得る。
【0018】
まださらに、本開示の第2の態様によれば、休止位置では、ウエハ受け面は例えば、約1mm~5mmの範囲であり、好ましくは約1mm~3mmの範囲であり、かつ、最も好ましくは約1mm~2mmの範囲である間隔によって電極本体の第1の平坦面の平面から離間した平面を有し得る。
【0019】
まださらに、本開示の第2の態様によれば、環状封止要素は例えば、矩形の断面形状を有し得る。
【0020】
本開示の第3の態様によれば、半導体ウエハに対して電気化学的ポロシフィケーション工程を実行する方法が提供され、当該方法は:環状封止要素の上に半導体ウエハの背面を受け入れることを有し、環状封止要素は、エッチング溶液に耐性があり、かつ、弾性的であり;半導体要素の背面に囲まれたキャビティに真空を作り出すことを有し、キャビティから空気を吸引する真空は、半導体ウエハを電極本体の平坦面の方へ引き、前記の引くことは、環状封止要素を圧縮して環状封止要素のウエハ受け面を平坦面と同じ高さにすること、および、ウエハの背面と平坦面が互いに物理的に接触する状態をもたらすことを含み;前記真空を維持しながら、半導体ウエハの露出面をエッチング溶液に浸し、かつ、電極本体から離間した別の電極を用い、エッチング溶液を横切るように電流を伝えることを有し、エッチング溶液および電流が半導体ウエハの露出面内に孔を作る。
【0021】
さらに、本開示の第3の態様によれば、当該方法は例えば、前記真空の除去の際に、前記環状封止要素が拡張し、かつ、半導体ウエハを電極本体から離れるように移動させることをさらに有し得る。
【0022】
まださらに、本開示の第3の態様によれば、半導体ウエハは例えば、シリコンウエハおよびゲルマニウムウエハのうちの一方であり得る。
【0023】
まださらに、本開示の第3の態様によれば、エッチング溶液は例えば、フッ化水素(HF)溶液を含み得る。
【0024】
本開示の第4の態様によれば、電気化学的ポロシフィケーション工程において用いるためのウエハ受けが提供され、当該ウエハ受けは:電極本体を有し、電極本体は、第1の平坦面を有し、第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、第1の平坦面から凹んでおり、かつ、電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、電極本体の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能な前記導管を有し;かつ、当該ウエハ受けは、台座に受け入れられる環状封止要素を有し、環状封止要素は、前記電気化学的ポロシフィケーション工程に耐性がある弾性材料製であり、環状封止要素は、台座に受け入れられるときには第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有する。
【0025】
本開示の第5の態様によれば、内部キャビティを定める容器が提供され;内部キャビティ内に位置する第1の電極が提供され;内部キャビティ内に位置し、かつ、第1の電極から離間したウエハ受けが提供され、ウエハ受けは:電極本体を有し、電極本体は、第1の平坦面を有し、第1の平坦面の反対側に第2の平坦面を有し、溝であって、第1の平坦面から凹んでおり、かつ、電極本体の中心領域内を走る前記溝を有し、台座であって、電極本体の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面から凹んでいる前記台座を有し、導管であって、溝と流体連通しており、かつ、真空ポンプに接続可能な前記導管を有し;かつ、ウエハ受けは、台座に受け入れられる環状封止要素を有し、環状封止要素は、酸に耐性がある弾性材料製であり、環状封止要素は、台座に受け入れられるときには第1の平坦面から突出するウエハ受け面を有し;真空ポンプが提供され、真空ポンプは導管と流体連通しており、かつ、半導体ウエハを環状封止要素に対して引く真空を導管内に作り出すために駆動可能であり;エッチング溶液源が提供され、エッチング溶液源は、内部キャビティと流体連通しており、かつ、内部キャビティの少なくとも一部をエッチング溶液で浸すように構成され;かつ、第1の電極および電極本体を用いてエッチング溶液を横切るように電流を伝えるように構成された電流源が提供される。
【0026】
本開示では、用語「弾性材料」は、曲げ、伸縮または圧縮の後でその元の形状へと跳ね返り得る任意の材料であり得る。環状封止要素の文脈では、環状封止要素の弾性材料は、真空によって半導体ウエハと電極本体との間に挟まれるときには弾力的に変形するのみであろうことが理解される。真空が遮断されるとすぐに、環状封止要素の弾性材料は、その真空前の形状へと跳ね返る。
【0027】
本改善に関する多くのさらなる特徴およびその組み合わせが、本開示を読んだ当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面の説明
図中、
【0029】
【
図1】
図1は、1つ以上の実施形態による、電気化学的ポロシフィケーション装置の例の断面斜視図であり、例示的なウエハ受けとともに示されている。
【
図2】
図2は、1つ以上の実施形態による、
図1のウエハ受けの斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、1つ以上の実施形態による、断面2A-2Aに沿ってとった
図2のウエハ受けの環状封止要素の断面図である。
【
図3】
図3は、1つ以上の実施形態による、
図1の電気化学的ポロシフィケーション装置の断面斜視図であり、その中に半導体ウエハが受け入れられた状態が示されている。
【
図4A】
図4Aは、1つ以上の実施形態による、半導体ウエハを受け入れるウエハ受けの例の断面図であり、真空引き前の状態が示されている。
【
図4B】
図4Bは、1つ以上の実施形態による、
図4のウエハ受けの断面図であり、真空引きの最中の状態が示されている。
【
図5】
図5は、1つ以上の実施形態による、ウエハホルダーを用いた電気化学的ポロシフィケーション工程を実行する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
図1は、実施形態による、電気化学的ポロシフィケーション装置10の例の断面図を示している。描かれているように、装置10は、内部キャビティ14を定める容器12を有し、内部キャビティ14内に位置する第1の電極16を有し、かつ、同じく内部キャビティ14内に位置し、かつ、第1の電極16から離間したウエハ受け18を有する。ウエハ受け18は電極本体20を有し、電極本体20は、第1の平坦面22を有し、第1の平坦面22の反対側に第2の平坦面24を有し、かつ、溝26を有し、溝26は、第1の平坦面22から凹んでおり、かつ、電極本体20の中心領域内を走る。ウエハ受け18はまた、台座30を備え、台座30は、電極本体20の中心領域の周りを環状に延び、かつ、第1の平坦面22から凹んでいる。示されているように、導管32が電極本体内を延び、かつ、溝26と流体連通している。示されているように、導管32は真空ポンプ34に接続可能である。装置10は、電極本体20の導管32に接続可能な真空ポンプ34を有する。真空ポンプ34は、導管32および溝26を介して容器の内部キャビティ14の少なくとも所定の部分に真空を作り出すために駆動可能である。装置10はエッチング溶液源36を備え、エッチング溶液源36は、内部キャビティ14と流体連通しており、かつ、内部キャビティ14の少なくとも一部をエッチング溶液で浸すように構成される(図示せず)。内部キャビティ14が部分的または完全にエッチング溶液で満たされたときに、第1の電極16とウエハ受け18との間を、エッチング溶液を横切るように電流iを伝えるために、電流源38もまた提供される。
【0031】
図2に最もよく示されているように、ウエハ受け18は、電極本体20の台座30に受け入れられる環状封止要素40を有する。環状封止要素40はエッチング溶液に耐性があり、かつ、この実施形態においてはいっそう具体的には耐酸性である。さらに、環状封止要素40は、それに対する力の印加の際には圧縮され得、かつ、力の解放の際にはその元の形状をとり得るという意味で弾性的である。したがって、内部キャビティがエッチング溶液で満たされたとき、環状封止要素40は良好な状態のままであり、かつ、その機能を実行する。この特定の例では、溝は、直径が増大する3つの環状の溝26’と、互いに垂直に延びる2つの直線状の溝26’’を含む。直線状の溝26’’は、3つの環状の溝26’のそれぞれのものを互いと流体的に接続する。溝26’および26’’は、それらが電極本体20の中心領域に沿って走る限り、任意のその他の適切な形状を有し得る。電極本体20は、任意の導電性材料製であり得る。例えば、電極本体は、銅、グラファイト、チタン、真鍮、銀、混合金属酸化物、プラチナ、ガラス状炭素などで作られ得る。電極本体は、当該装置がクリーンルームに適合するものであるべき実施形態では、グラフォイル、グラファイト-プラスチック複合体、シリコン、ダイヤモンド様被覆シリコンなどで作られ得る。グラフォイルは耐食性であることに加えて高度に導電性の材料であるので、いくつかの実施形態では電極本体にそれを用いることが便宜であることが見出された。
【0032】
ここで
図2Aに示されている特定の実施形態を参照すると、環状封止要素40は、外面42と、外面42内を延びる核44を備える。これらの実施形態では、外面42は耐酸性材料製であり得、一方で核44は弾性材料製であり得る。追加的または代替的には、外面42は弾性的であり得、一方で核44は耐酸性であり得る。いくつかの実施形態では、外面はジャケットまたはシースの形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、環状封止要素は、耐酸性であることに加えて弾性的であるように選択される単体の材料製である。示されているように、環状封止要素40はウエハ受け面46を有し、使用の最中、ウエハ受け面46の上には半導体ウエハ48(破線で示されている)が受け入れられ得る。
図3は、ウエハ受け18(いっそう具体的には、環状封止要素40のウエハ受け面46)が半導体ウエハ48を受け入れている、装置10を示している。いくつかの実施形態では、外面42は、Vitоn
TMのような硫化した、重合化した、そうでなければ固化したフルオロエラストマー材料製である。いくつかの実施形態では、核44は、Vitоn
TMフォームのような乳化フルオロエラストマー材料製である。かかるフルオロエラストマーは、耐酸性であることが知られており、いっそう具体的にはフッ化水素(HF)酸に耐性があることが知られている。いくつかのその他の実施形態では、その他の耐酸性材料が用いられ得る。例えば、核は、耐酸性材料の別の例であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(Teflon
TM)フォーム材料製であり得る。
【0033】
図2および2Aに戻ると、環状封止要素40は、電極本体40の台座30にぴったりと受け入れられるようなサイズおよび形状であることが意図される。例えば、この例では、台座30は、電極本体20の半径方向に延びる壁50と軸方向に延びる壁52との間で直角Rをなす。したがって、示されているように、環状封止要素40は、台座30の中に受け入れられるときには、それにぴったりと適合する矩形の断面形状を有する。いくつかの実施形態では、環状封止要素40は、約1mm~20mmの範囲であり、好ましくは約5mm~15mmの範囲であり、かつ、好ましくは約7mm~12mmの範囲である断面寸法dを有する。いくつかの実施形態では、環状封止要素40の外面42は、約0.1mm~5mmの範囲であり、好ましくは約0.1mm~3mmの範囲であり、かつ、好ましくは約0.1mm~1mmの範囲である厚さtを有する。
【0034】
図4は、休止状態において、環状封止要素40が電極本体20の台座30に受け入れられるときには、ウエハ受け面46が第1の平坦面22から突出していることを示している。したがって、休止状態においては、半導体ウエハ48と電極本体20の第1の平坦面22との間には隙間47が存在する。いくつかの実施形態では、隙間47は、約1mm~5mmの範囲であり得、好ましくは約1mm~3mmの範囲であり得、かつ、最も好ましくは約1mm~2mmの範囲であり得る。したがって、導管32に真空を作り出す際には、
図4Bに示されているように、導管32および溝26から空気が吸引され、そのことにより半導体48を電極本体20の第1の平坦面22の方へ引く。そうすることによって、環状封止要素40は半導体48の移動によって圧縮されて、ウエハ受け面46を第1の平坦面22と同じ高さにし、そのことが次いで、半導体ウエハ48の背面50と第1の平坦面22とが互いに物理的に接触する状態をもたらす。把握され得るように、かかる真空状態では、内部キャビティはエッチング溶液で満たされ得、かつ、エッチング溶液および半導体ウエハを横切るように第1の電極と電極本体との間を電流iが伝わるときには、電流Iおよびエッチング溶液が一緒になって半導体ウエハ48の露出面52内に孔を作る。休止状態と真空状態との間の環状封止要素の厚さの差は、好ましくは
図4Aを参照して紹介された隙間47に対応することが意図される。
【0035】
図5は、半導体ウエハに対して電気化学的工程を実行する方法の例を示している。
【0036】
ステップ502において、半導体ウエハの背面が環状封止要素の上に受け入れられる。半導体ウエハは、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、炭化ケイ素(SiC)ウエハ、リン化インジウム(InP)ウエハ、ヒ化ガリウム(GaAs)ウエハ、窒化ガリウム(GaN)ウエハ、または、任意のその他の適切な半導体ウエハであり得る。例えば、ウエハは、シリコン、窒化シリコン(SiN)、シリコン-オン-インシュレータ(SOI)、窒化シリコン(Si3N4)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、アンチモン化インジウム(InSb)、テルル化カドミニウム水銀(MCT)、ヒ化インジウム(InAs)、セレン化鉛(PbSe)、硫化鉛(PbS)、硫化物系材料・セレン化物系材料・テルル化物系材料のようなカルコゲニド系材料、n型ドーピング・p型ドーピング・ゲルマニウムドーピング・シリコンドーピング・ホウ素ドーピング・ヒ素ドーピング・炭素ドーピング・ヘリウムドーピング・アンチモンドーピングおよび/もしくは活性レーザー材料ドーピング(エルビウム、イッテルビウムのような希土類イオンドーピングのような)を含む任意のドープ半導体、量子ドット、気体、または、それらの任意の組み合わせを含むがそれらに限定されない、任意のタイプの半導体材料を伴い得る。上記で説明されたように、環状封止要素はエッチング溶液に耐性がある。典型的なエッチング溶液は概して、HF酸またはその他のタイプの酸を有し、したがって環状封止要素は耐酸性である。環状封止要素はまた、上記で説明されたように弾性的である。環状封止要素の圧縮性は、その構成および/または組成に基づく。例えば、環状封止要素は、固体材料製の外面と、外面を満たす弾性材料製の核を有し得る。いくつかの実施形態では、外面の固体材料はVitоnTMのようなフルオロエラストマーである。弾性材料は、VitоnTMフォームのようなフルオロエラストマーフォームであり得る。いくつかのその他の実施形態では、その他の耐酸性材料が用いられ得る。
【0037】
ステップ504において、半導体ウエハの背面に囲まれたキャビティに真空が作り出される。真空はキャビティから空気を吸引し、そのことにより半導体ウエハを電極本体の平坦面の方へ引く。引くことは次いで、環状封止要素を圧縮して、環状封止要素のウエハ受け面を平坦面と同じ高さにする。そうすることによって、ウエハの背面および平坦面が互いに物理的に接触するようになる。環状封止要素の圧縮性は、真空が半導体ウエハを電極本体の方へと引くにつれて、そのあらゆる曲げを回避するのに十分であることが意図される。
【0038】
ステップ506において、ステップ504の真空を維持しながら、エッチング溶液に半導体ウエハの露出面が浸され、かつ、電極本体から離間した別の電極を用いて、エッチング溶液を横切るように電流が伝わる。従来のポロシフィケーション工程におけるように、エッチング溶液および電流は、半導体ウエハの露出面内に孔を作る。この方式において、半導体ウエハの露出面全体が一度にポロシフィケーションされ得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、ステップ504において作り出され、かつ、ステップ506において維持された真空を除去する際に、環状封止要素が拡張し、かつ、電極本体から離れるように半導体ウエハを移動させる。その後、半導体ウエハは、環状封止要素から離れるように引かれてもよい。
【0040】
理解され得るように、上記され、かつ、示された例は、例示的であることのみが意図される。例えば、電極本体は複数の溝を有するように示されているが、その他の電極本体は、その中心領域内を延びる単一の溝のみを有し得る。範囲は、添付の請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】