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特表2024-537766CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法、ならびに癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法、ならびに癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241008BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20241008BHJP
   C07K 14/595 20060101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241008BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 38/22 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
G01N33/574 Z ZNA
C07K14/595
C12Q1/686 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K51/08 100
A61P43/00 121
A61K51/08 200
A61K38/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519044
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2021076701
(87)【国際公開番号】W WO2023051897
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501494414
【氏名又は名称】パウル・シェラー・インスティトゥート
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ポコルスカ-ボッチ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ アッティンガー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QQ53
4B063QR62
4B063QS25
4C084AA12
4C084AA22
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA42
4C084DB41
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045BA14
(57)【要約】
本発明は、予測方法、ならびに癌を治療および/またはイメージングする方法に使用するための化合物に関する。特に、本発明は、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法に関する。さらに、本発明は、癌と診断された患者において癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用するための、CCK2-Rを標的とする化合物にも関し、これによって、送達および治療効果が改善され、かつ/または腫瘍組織のイメージングの改善が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する、癌と診断された患者の応答を予測する方法であって、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをコレシストキニンB受容体(CCKBR)のmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)前記CCKBRのmRNA発現レベルが、前記患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する応答の可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と
を含み、
前記CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、式(1):
【化1】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
方法。
【請求項2】
前記CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、前記放射性核種が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、甲状腺髄様癌(MTC)、神経膠腫、小細胞肺癌(SCLC)、肺外小細胞癌(EPSCC)、胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、消化管間質腫瘍(GIST)、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌(CRC)、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、乳癌(BC)、およびコレシストキニン2受容体(CCK2-R)を発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記CCKBRのmRNA発現レベルが、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 transcripts per million(TPM)、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)前記CCKBRのmRNA発現レベルが、前記患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する応答可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする化合物の有効線量を前記患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において、癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用するための化合物であって、
前記CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化2】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
化合物。
【請求項9】
前記CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、前記放射性核種が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
前記患者が、MTC、神経膠腫、SCLC、EPSCC、GEP-NET、GIST、NSCLC、CRC、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、BC、およびCCK2-Rを発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される、請求項8または9記載の化合物。
【請求項11】
前記患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断される、請求項8から10までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
前記腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、請求項8から11までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
前記CCKBRのmRNA発現レベルが、RT-PCR、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、請求項8から12までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
前記カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 TPM、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、請求項8から13までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
前記CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、Xが177Luをキレートし、前記患者に投与される前記化合物の前記有効線量が、好ましくは、
(i)1.0~15.0GBq、好ましくは2.0~12.0GBq、より好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqの治療線量、および
(ii)0.5~3.0GBq、好ましくは0.7~2.5GBq、より好ましくは1.0~2.0GBq、例えば約1.85GBqのイメージング線量
から選択される、請求項8から14までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、Xが68Gaをキレートし、前記患者に投与される前記化合物の前記有効線量が、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人である、請求項8から14までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、2~10週間のサイクル毎に1回または2回、好ましくは4~8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは6週間のサイクル毎に1回または8週間のサイクル毎に1回、前記患者に投与される、請求項8から16までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が、
(A)少なくとも2回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、または
(B)少なくとも2回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、
前記患者に投与される、請求項8から17までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、1つ以上の他の治療剤または療法、例えばDNA損傷応答(DDR)阻害剤、化学療法剤、免疫調節剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、または任意の他の標的療法と同時、その前および/またはその後に投与される、請求項8から18までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)前記CCKBRのmRNA発現レベルが、前記患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療に対する応答可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量を前記患者に選択的に投与して、身体部分または組織の画像を得る工程と、
(d)CCK2-Rを標的とする第2の化合物の治療線量を前記患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において、癌を選択的に治療する方法に使用するための化合物であって、
前記CCK2-Rを標的とする第1の化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化3】
[式中、Xは、第1の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、
前記CCK2-Rを標的とする第2の化合物が、好ましくは、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、式中、Xは、第2の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す、化合物。
【請求項21】
前記CCK2-Rを標的とする第1および第2の化合物の各々が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、前記第1および第2の放射性核種の各々が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから独立して選択される、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
前記CCK2-Rを標的とする第1および第2の化合物の各々が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、
・前記第1の放射性核種が68Gaであり、前記患者に投与される前記イメージング線量が、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、より好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人であり、かつ/または
・前記第2の放射性核種が177Luであり、前記患者に投与される前記治療線量が、好ましくは1.0~15.0GBq、より好ましくは2.0~12.0GBq、さらに好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqである、
請求項20または21記載の化合物。
【請求項23】
前記患者が、MTC、神経膠腫、SCLC、EPSCC、GEP-NET、GIST、NSCLC、CRC、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、BC、およびCCK2-Rを発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断されている、請求項20から22までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
前記患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断されている、請求項20から23までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項25】
前記腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、請求項20から24までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項26】
前記CCKBRのmRNA発現レベルが、RT-PCR、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、請求項20から25までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項27】
前記カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 TPM、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、請求項20から26までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項28】
前記第1および/または第2の化合物が、1つ以上の他の治療剤または療法、例えばDNA損傷応答(DDR)阻害剤、化学療法剤、免疫調節剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、または任意の他の標的療法と同時、その前および/またはその後に投与される、請求項20から27までのいずれか1項記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測方法、ならびに癌を治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物に関する。特に、本発明は、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法に関する。さらに、本発明は、癌と診断された患者において癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体にも関し、これによって、送達および治療効果(抗腫瘍活性)が改善され、かつ/または腫瘍組織のイメージングの改善が可能となる。
【0002】
発明の背景
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞膜を介して化学シグナルを伝達する機能を有する膜タンパク質のスーパーファミリーを構成する。作動性リガンドによって標的化されたGPCRは、Gタンパク質αサブユニット(Gα)上でのGDPとGTPとの交換をもたらす立体構造変化を起こす。その後、GαおよびGβγサブユニットが受容体から解離すると、プロテインキナーゼAおよびC(PKA;PKC)、ならびにホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)が関与する様々なキナーゼシグナル伝達経路の活性化が生じる(O’Hayre et al. Curr Opin Cell Biol. 2014, 27, 126-135)。続いて、活性化されたGPCRは、アレスチン媒介内在化プロセスにより脱感作を受け、分解のためにリソソームに、または細胞表面へとリサイクルされるようにエンドソームに輸送され得る(Rajagopal et al. Cell Signal. 2018, 41, 9-16)。この内在化プロセスにより、リガンドコンジュゲート放射性核種を標的細胞、例えば癌細胞に送達することが可能となる。
【0003】
ペプチドリガンドと選択的に結合するGPCRの過剰発現により、ヒト癌に対するペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)の開発が可能となる(Lappano et al. Nat Rev Drug Discov. 2011, 10(1), 47-60)。PRRTの最も重要な目標の1つは、放射性標識リガンドの高い腫瘍取込みを達成することである。したがって、健常器官を細胞毒性副作用から免れさせながら、腫瘍または癌組織における放射性医薬品の取込みを高める戦略が検討されてきた。
【0004】
GPCRファミリーに属するコレシストキニン2受容体(CCK2-R)の高発現は、例えば甲状腺髄様癌(MTC)、小細胞肺癌(SCLC)、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫、ならびに大腸癌(CRC)、乳癌(BC)および卵巣癌を含む幾つかの特定の種類の癌において検証されている(Reubi et al. Cancer Res 1997, 57(7), 1377-1386)。さらに、小さなペプチドホルモンである「ミニガストリン」は、CCK2-Rと高い親和性で結合することが知られている。したがって、これまでの研究では、放射性標識(ミニ)ガストリン由来ペプチドを標的PRRTに使用することが示唆されている。
【0005】
国際公開第2015/067473号には、MTC組織を標的化するための111In等の放射性核種で標識されたガストリン類似体DOTA-(DGIn)-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH(「PP-F10N」と名付けられる)およびDOTA-(DGlu)-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH(「PP-F11N」と名付けられる)の使用が記載されている。国際公開第2015/067473号のガストリン類似体は、良好な化学的安定性(つまり、タンパク質分解および酸化に対する良好な耐性)のみならず、動物モデルにおける良好な生体内分布(つまり、移植されたCCKBR発現A431細胞における良好な取込み、および腎臓における低い蓄積)を示した。したがって、これらは臨床応用に適している。
【0006】
それにも拘わらず、かかる応用の成功は、標的組織におけるタンパク質(CCK2-R)の発現レベルによって決まる。さらに、タンパク質発現レベルは、(1)個々の腫瘍、(2)患者および(3)検出に用いられる技術に応じて大きく異なる可能性がある。或る特定の適応症においては、腫瘍組織におけるCCK2-Rの保有率は低く、PRRTを可能にするのに十分な発現レベルを示す患者は、僅か約10%~20%である。免疫組織化学(IHC)またはオートラジオグラフィー(RA)等の標準的な方法によるCCK2-R発現レベルの評定も、非常に困難であることが判明している。これは、これらの方法に制約があり、高レベルの最適化が必要とされ、かつ/または再現性のある結果が得られないためであり、例えば、利用可能な抗CCK2-R抗体が十分な選択性および/または特異性を示さないためと考えられる。
【0007】
これらの理由から、特定の患者において、CCK2-Rを標的とする化合物、例えばCCK2-Rを標的とする放射性標識リガンドによる腫瘍組織の治療および/またはイメージング(診断)が成功するかどうかを予測することは極めて困難であり得る。PRRTを受けているが、疾患がCCK2-Rを発現していない(またはそのレベルが不十分な)患者は、臨床効果が全くないにも拘わらず、不必要に放射線に曝される可能性がある。したがって、CCK2-Rを標的とする放射性標識リガンドによる治療および/またはイメージングから利益を得ることができるか、またはその可能性がある患者を特定することが可能なロバストな予測方法が必要とされている。
【0008】
以上のことを考慮すると、本発明の目的は、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、CCK2-Rリガンド、例えば放射性標識ガストリン類似体の十分な腫瘍取込みおよび生体内分布(つまり、腫瘍対健常組織比)を達成することで、優れた治療効果および/または腫瘍組織のイメージングをもたらす一方、健常組織における放射能の非特異的蓄積による副作用を防止することができる、癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物を提供することである。
【0010】
本発明の概要
本発明は、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法を提供する。本発明者らは、腫瘍細胞におけるCCKBRのmRNA発現レベルが、タンパク質(CCK2-R)の発現レベル、またCCK2-Rへの放射性標識リガンドの結合と密接に相関するため、CCKBRのmRNA発現レベルが、CCK2-Rを標的とする化合物、例えばCCK2-Rを標的とする放射性標識リガンドによる治療および/またはイメージングに対する臨床応答のロバストな予測バイオマーカーを構成することを見出した。mRNA発現レベルがタンパク質産物の発現の非常に劣った指標であることが知られているため、mRNA発現レベルとタンパク質発現レベルとの相関は、特に驚くべきことである(mRNA発現とタンパク質発現との低い相関に関する論考については、例えばKoussounadis et al. Scientific Reports 2015, 5, 10775;Wang D. Comput Biol Chem. 2008, 32(6), 462-468を参照されたい)。特にCCK2-Rについて、mRNA発現レベルとタンパク質発現レベルとの関連性は、非常に弱く、統計的に有意でないことが知られている(Mjones et al. Horm Canc 2018, 9, 40-54)。
【0011】
このため、本発明は、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法であって、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲(または値)以上であるかどうかを決定する工程と
を含み、
CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化1】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
方法に関する。
【0012】
さらに、本発明は、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲(または値)以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする化合物の有効線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物であって、
CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化2】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
使用する化合物にも関する。
【0013】
一態様では、本発明は、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療に応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量を患者に選択的に投与して、身体部分または組織の画像を得る工程と、
(d)CCK2-Rを標的とする第2の化合物の治療線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において癌を選択的に治療する方法に使用する化合物であって、
CCK2-Rを標的とする第1の化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化3】
[式中、Xは、第1の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、
CCK2-Rを標的とする第2の化合物が、好ましくは、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、式中、Xは、第2の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す、
使用する化合物に関する。
【0014】
本発明は、特に以下の実施形態(「項目」)を含む:
実施形態1 CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測する方法であって、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをコレシストキニンB受容体(CCKBR)のmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と
を含み、
CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、式(1):
【化4】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
方法。
【0015】
実施形態2 CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、放射性核種が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される、項目1記載の方法。
【0016】
実施形態3 患者が、甲状腺髄様癌(MTC)、神経膠腫、小細胞肺癌(SCLC)、肺外小細胞癌(EPSCC)、胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、消化管間質腫瘍(GIST)、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌(CRC)、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、乳癌(BC)、およびコレシストキニン2受容体(CCK2-R)を発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される、項目1または2記載の方法。
【0017】
実施形態4 患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断される、項目1から3までのいずれか1項記載の方法。
【0018】
実施形態5 腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、項目1から4までのいずれか1項記載の方法。
【0019】
実施形態6 CCKBRのmRNA発現レベルが、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、項目1から5までのいずれか1項記載の方法。
【0020】
実施形態7 カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 transcripts per million(TPM)、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、項目1から6までのいずれか1項記載の方法。
【0021】
実施形態8 (a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする化合物の有効線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物であって、
CCK2-Rを標的とする化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化5】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である、
使用する化合物。
【0022】
実施形態9 CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、放射性核種が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される、項目8記載の使用する化合物。
【0023】
実施形態10 患者が、MTC、神経膠腫、SCLC、EPSCC、GEP-NET、GIST、NSCLC、CRC、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、BC、およびCCK2-Rを発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される、項目8または9記載の使用する化合物。
【0024】
実施形態11 患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断される、項目8から10までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0025】
実施形態12 腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、項目8から11までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0026】
実施形態13 CCKBRのmRNA発現レベルが、RT-PCR、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、項目8から12までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0027】
実施形態14 カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 TPM、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、項目8から13までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0028】
実施形態15 CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、Xが177Luをキレートし、患者に投与される化合物の有効線量が、好ましくは、
(i)1.0~15.0GBq、好ましくは2.0~12.0GBq、より好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqの治療線量、および
(ii)0.5~3.0GBq、好ましくは0.7~2.5GBq、より好ましくは1.0~2.0GBq、例えば約1.85GBqのイメージング線量
から選択される、項目8から14までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0029】
実施形態16 CCK2-Rを標的とする化合物が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、Xが68Gaをキレートし、患者に投与される化合物の有効線量が、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人である、項目8から14までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0030】
実施形態17 化合物が、2~10週間のサイクル毎に1回または2回、好ましくは4~8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは6週間のサイクル毎に1回または8週間のサイクル毎に1回、患者に投与される、項目8から16までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0031】
実施形態18 化合物が、
(A)少なくとも2回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、または
(B)少なくとも2回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、
患者に投与される、項目8から17までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0032】
実施形態19 化合物が、1つ以上の他の治療剤または療法、例えばDNA損傷応答(DDR)阻害剤、化学療法剤、免疫調節剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、または任意の他の標的療法と同時、その前および/またはその後に投与される、項目8から18までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0033】
実施形態20 (a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者が、CCK2-Rを標的とする化合物による治療に応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量を患者に選択的に投与して、身体部分または組織の画像を得る工程と、
(d)CCK2-Rを標的とする第2の化合物の治療線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む、癌と診断された患者において癌を選択的に治療する方法に使用する化合物であって、
CCK2-Rを標的とする第1の化合物が、好ましくは、以下の式(1):
【化6】
[式中、Xは、第1の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、
CCK2-Rを標的とする第2の化合物が、好ましくは、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、式中、Xは、第2の放射性核種をキレートする部分、好ましくはDOTAまたはNODAGA、より好ましくはDOTAを表す、
使用する化合物。
【0034】
実施形態21 CCK2-Rを標的とする第1および第2の化合物の各々が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、第1および第2の放射性核種の各々が、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから独立して選択される、項目20記載の使用する化合物。
【0035】
実施形態22 CCK2-Rを標的とする第1および第2の化合物の各々が、式(1)によって表される放射性標識ガストリン類似体であり、
・第1の放射性核種が68Gaであり、患者に投与されるイメージング線量が、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、より好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人であり、かつ/または
・第2の放射性核種が177Luであり、患者に投与される治療線量が、好ましくは1.0~15.0GBq、より好ましくは2.0~12.0GBq、さらに好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqである、
項目20または21記載の使用する化合物。
【0036】
実施形態23 患者が、MTC、神経膠腫、SCLC、EPSCC、GEP-NET、GIST、NSCLC、CRC、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、BC、およびCCK2-Rを発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される、項目20から22までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0037】
実施形態24 患者が、SCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患、より好ましくはSCLCと診断される、項目20から23までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0038】
実施形態25 腫瘍サンプルが、生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された生検サンプル、新鮮生検サンプル、凍結生検サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである、項目20から24までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0039】
実施形態26 CCKBRのmRNA発現レベルが、RT-PCR、RNAシークエンシング、または細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイする任意の他の方法、好ましくはRT-PCRまたはRNAシークエンシング、より好ましくはRNAシークエンシングによって決定される、項目20から25までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0040】
実施形態27 カットオフ範囲が、0.4~2.0log2 TPM、好ましくは0.5~1.8log2 TPM、より好ましくは0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.0log2 TPMである、項目20から26までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【0041】
実施形態28 第1および/または第2の化合物が、1つ以上の他の治療剤または療法、例えばDNA損傷応答(DDR)阻害剤、化学療法剤、免疫調節剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、または任意の他の標的療法と同時、その前および/またはその後に投与される、項目20から27までのいずれか1項記載の使用する化合物。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】癌、つまり、GIST、SCLC、NSCLC、MTCと診断された患者からの生体サンプル(つまり、腫瘍、患者由来の異種移植片、健常サンプル)における、CCK2Rへの111In-PP-F111Nの結合(x軸)とCCKBRのmRNA発現レベル(y軸)との相関を示すグラフ表示である。
【0043】
発明の詳細な説明
1.定義
本明細書で使用される「ガストリン類似体」という表現は、内因性ペプチドホルモンであるガストリンに構造的に関連し、CCK2-Rに結合し得る化合物(ペプチド)の群を指す。ガストリンは、十二指腸のG細胞により、また胃の幽門洞において産生される線状ペプチドホルモンである。ガストリンは血流中に分泌される。コードされるポリペプチドはプレプロガストリンであり、これが翻訳後修飾において酵素によって切断され、プロガストリン、続いて主にビッグガストリン(G-34)、リトルガストリン(G-17)およびミニガストリンを含む様々な形態のガストリンが産生される。CCKは、ガストリンに構造的に関連したペプチドホルモンであり、両化合物は5つのC末端アミノ酸が共通する。CCKは、例えばCCK8を含む幾つかの形態で天然に存在する。ガストリンおよびそれに関連するペプチドホルモンは通例、CCK2-Rへの結合を可能にする同じC末端アミノ酸モチーフを含む。
【0044】
CCK2-Rに対する所与のガストリン類似体の薬理活性は、Blaeker et al. (Regulatory Peptides 2004, 118, 111-117)に記載されているように、ガストリン類似体により刺激された細胞におけるカルシトニンレベルの細胞内増加を測定することによって決定することができる。
【0045】
本発明で使用されるガストリン類似体は、好ましくは以下の式(1):
【化7】
によって表される。
【0046】
式中、Xは、放射性核種をキレートする部分、例えばDOTAまたはNODAGAを表し、DOTAまたはNODAGAは、177Luまたは68Ga等の放射性核種をキレートする。
【0047】
「DOTA」は、カルボキシル基の1つを介してペプチド鎖のN末端に共有結合するキレート部分1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸を指す。XがDOTAである式(1)の化合物は、「PP-F11N」と名付けられる化合物に相当する。
【0048】
「NODAGA」は、カルボキシル基の1つを介してペプチド鎖のN末端に共有結合するキレート部分1,4,7-トリアザシクロノナン、1-グルタル酸-4,7-酢酸を指す。
【0049】
特に明記されていない限り、または文脈上他の指定がない限り、隣接アミノ酸基間の全ての連結は、ペプチド(アミド)結合によって形成される。本明細書に記載されるペプチドは、左から右へ従来のアミノからカルボキシの方向に示される。
【0050】
「CCK2-Rを標的とする化合物」(または「CCK2-Rを標的とすることが可能な化合物」)は、CCK2-Rに結合することができる化合物、例えばCCK2-Rアゴニスト、例えば(ミニ)ガストリンおよびその誘導体、非硫酸化ガストリン、CCK、非硫酸化CCK、RB-400およびPBC-264、ならびにCCK2-Rアンタゴニスト(好適なCCK2-Rアンタゴニストの例については、Kaloudi et al. Mol Pharm. 2020, 17(8), 3116-3128を参照されたい)を指す。式(1)のガストリン類似体は、CCK2-Rを標的とする化合物として理解される。
【0051】
本明細書で使用される「放射性核種をキレートする部分」という表現は、放射性核種に電子を供与し、つまり、それと少なくとも1つの配位共有(双極子)結合を形成することにより、配位錯体を形成することができるDOTA等の部分を指す。キレート機構は、キレート剤および/または放射性核種によって異なる。例えば、DOTAは、カルボキシレートおよびアミノ基(ドナー基)を介して放射性核種を配位させることができ、それにより高い安定性を有する錯体を形成すると考えられる(Dai et al. Nature Com. 2018, 9, 857)。放射性核種をキレートすることができる部分(全て式(1)の化合物における使用部分「X」に適している)の非限定的な例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CH-X-DTPA)、デスフェリオキサミン(DFO)、N1-(27-アミノ-11,22-ジヒドロキシ-7,10,18,21-テトラオキソ-6,11,17,22-テトラアザヘプタコシル)-N1-ヒドロキシ-N4-(5-(N-ヒドロキシアセトアミド)ペンチル)スクシンイミド(DFO’)、N1-(5-(3-(4-アミノブチル)-1-ヒドロキシ-2-オキソピペリジン-3-カルボキサミド)ペンチル)-N1-ヒドロキシ-N4-(5-(N-ヒドロキシ-4-((5-(N-ヒドロキシアセトアミド)ペンチル)アミノ)-4-オキソブタンアミド)ペンチル)スクシンイミド(DFO-cyclo’)、1-(1,3-カルボキシプロピル)-4,7-カルボキシメチル-1,4,7-四酢酸(NODAGA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-グルタル酸-4,7,10-三酢酸(DOTAGA)、2,2’-(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ジイル)ジアセテート(NO2A)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、メルカプトアセチル-グリシル-グリシル-グリシン(maGGG)、メルカプトアセチル-セリン-セリン-セリン(maSSS)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸-メチオニン(DOTA-Met)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(シクラム)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸(CB-TE2A)、2,2’,2’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセトアミド(DO3AM)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-二酢酸(DO2A)、1,5,9-トリアザシクロドデカン(TACD)、(3a1s,5a1s)-ドデカヒドロ-3a,5a,8a,10a-テトラアザピレン(cis-グリオキサール-シクラム)、1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(シクレン)、トリ(ヒドロキシピリジノン)(THP)、3-(((4,7-ビス((ヒドロキシ(ヒドロキシメチル)ホスホリル)メチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)プロパン酸(NOPO)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸(PCTA)、2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-テトライル)四酢酸(TRITA)、2、2’、2’’、2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-テトライル)テトラアセトアミド(TRITAM)、2,2’,2’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7-トリイル)トリアセトアミド(TRITRAM)、trans-N-ジメチル-シクラム、2,2’,2’’-(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリイル)トリアセトアミド(NOTAM)、オキソシクラム、ジオキソシクラム、1,7-ジオキサ-4,10-ジアザシクロドデカン、架橋シクラム(CB-シクラム)、トリアザシクロノナンホスフィネート(TRAP)、ジピリドキシルジホスフェート(DPDP)、meso-テトラ-(4-スルフォナトフェニル)ポルフィン(TPPS4)、エチレンビスヒドロキシフェニルグリシン(EHPG)、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジメチルホスフィノメタン(DMPE)、メチレン二リン酸、ジメルカプトコハク酸(DMPA)が挙げられる。
【0052】
本明細書で使用される「癌」という用語は、悪性腫瘍を形成する異常な細胞増殖を特徴とする哺乳動物組織の病的状態を意味し、他の組織または身体部分に浸潤または進展して、転移として知られる「二次」腫瘍を形成する可能性を有し得る。腫瘍は1つ以上の癌細胞を含む。
【0053】
本明細書で使用される「癌と診断された患者」という表現は、少なくとも1種類の癌性疾患に関して陽性診断を受けたヒト患者を指す。一態様では、患者は、CCK2-Rを発現することが知られる少なくとも1種類の癌、例えば甲状腺髄様癌(MTC)、神経膠腫、小細胞肺癌(SCLC)、肺外小細胞癌(EPSCC)、胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、消化管間質腫瘍(GIST)、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌(CRC)、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌および乳癌で陽性と診断されている。「陽性診断」とは、患者が疾患の組織学的および/または細胞学的状態を有し、任意に以下の1つ以上を有することを意味する:
(1)少なくとも1回の全身治療レジメン後にX線写真で実証された疾患の進行または再発;
(2)最後の抗癌療法後に固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)1.1(RECIST 1.1)に従って実証された、少なくとも1つの非照射の頭蓋外の測定可能な標的病変;
(3)固形腫瘍における陽電子放出断層撮影応答基準(Positron Emission Tomography Response Criteria in Solid Tumors)1.0(PERCIST 1.0)に従う少なくとも1つの腫瘍病変;および
(4)0~2の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)スコア。
【0054】
好ましくは、癌の陽性診断とは、患者が以下の(i)~(viii)の1つ以上を有することを意味する:
(i)1.5×ULN以下の血清クレアチニン、または慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)式に基づく50mL/分超の推定糸球体濾過量(eGFR);
(ii)1500細胞/μL以上の血液絶対好中球数(ANC);
(iii)100000細胞/μL以上の血小板数;
(iv)9g/dL以上の血中ヘモグロビン;
(v)3×ULN以下のASTまたはALT;
(vi)20g/L超の血清アルブミン;
(vii)2.5mg/dL以下の総ビリルビン;および
(viii)5×ULN未満のアルカリホスファターゼ。
【0055】
(放射性医薬品の)「腫瘍取込み」という表現は、分子、例えば放射性標識ガストリン類似体が腫瘍(癌)細胞に取り込まれる生物学的プロセスを指す。腫瘍取込みには、分子の腫瘍細胞取込みおよび/または腫瘍微小環境におけるそれらの保持が含まれる。結果として、分子は腫瘍(癌)細胞内に、細胞膜に、例えば細胞膜上に蓄積して、かつ/または腫瘍微小環境内に存在し得る。続いて、放射能の蓄積は、DNAの一本鎖もしくは二本鎖分断を生じることによる直接的活性、または腫瘍細胞死をもたらすフリーラジカルの発生を伴う間接的活性を介して腫瘍細胞DNAを損傷する(Desouky et al. Journal of Radiation Research and Applied Sciences 2015, 8(2), 247-254)。
【0056】
本明細書で使用される「予測する(predicting)」または「予測する(predict)」という用語は、癌と診断された個々の患者が、放射性標識化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対して特定の臨床応答、つまり、陽性の(有益な)または陰性の応答を有する可能性があるかどうかを医師が決定することを可能にする情報が方法により提供されることを意味する。これは100%の精度で患者が治療および/またはイメージングに応答するかどうかを予測する能力を指すものではない。代わりに、予測とは、推測以上ではあるが確実性未満の確率の増加を指す。
【0057】
「治療および/またはイメージングに対する患者の応答を予測する」という表現は、癌と診断された患者が放射性標識化合物による治療および/またはイメージングに対して特定の臨床応答、つまり、陽性または陰性の応答を有する可能性があるかどうかを予測する能力を指す。陽性の(有益な)臨床応答は、限定されるものではないが、(1)減速および完全な増殖停止を含む、腫瘍増殖の少なくとも或る程度の阻害、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの減少、(4)隣接する周辺器官および/もしくは組織への腫瘍細胞の浸潤の阻害、つまり、低減、減速もしくは完全停止、(5)転移の阻害、(6)抗腫瘍免疫応答の増強、(7)癌に関連する1つ以上の症状の少なくとも或る程度の緩和、(8)生存期間の延長、(9)死亡率の低下、ならびに/または(10)腫瘍組織の可視化を含む、治療および/または診断に関する患者へのあらゆる臨床効果を指すことができる。患者の陽性応答は、同等の臨床診断を有する患者の群に対する個々の患者との関連において考慮されることもあり、限定されるものではないが、(11)無再発期間の延長、(12)集団における全生存期間と比較した生存時間の延長、(13)無病生存時間の延長、および/または(14)遠隔無再発期間の延長を含み得る。
【0058】
さらに、「イメージング」の文脈における陽性臨床応答は、患者における疾患の診断を確立する(医師の)能力を指すことがある。診断が別の方法によって既に確立されている場合、最初の診断の確認、2回目の診断の確立、疾患の状態および/または進行のモニタリング等にイメージングを用いることができる。イメージングは、CCK2-Rを標的とする(放射性標識)化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体のイメージング線量を患者に投与し、続いてSPECTまたはPET等の好適な方法によりトレーサーを可視化することによって行うことができる。一態様では、イメージングは、(i)データを収集し、(ii)データを標準値と比較し、(iii)比較中に任意の有意な偏差、例えば症状を発見し、(iv)その偏差を特定の臨床像に帰属させて診断を確立するために用いられる。
【0059】
本明細書で使用される「アッセイする」という用語は、特定、スクリーニング、プロービング、試験、測定、定量化または決定する行為を指す。一態様では、「アッセイする」という用語は、mRNA等の特定の遺伝子バイオマーカーを定量化する行為を指す。生体(腫瘍)サンプル中の遺伝子バイオマーカーの発現レベルをアッセイする方法の非限定的な例は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、磁気イノムアッセイ(MIA)、フローサイトメトリーおよび分子プロファイリング(シークエンシング)技術、例えば全トランスクリプトームのシークエンシングを可能にするmRNAシークエンシングプラットホームが挙げられる。本発明の一態様では、CCKBRのmRNA発現レベルは、例えばCaris Life Sciences(登録商標)から入手可能な全トランスクリプトームのRNAシークエンシングによってアッセイされる。
【0060】
本明細書で使用される「腫瘍サンプル」という用語は、患者が診断された癌のサンプル、例えば生検サンプルを指す。腫瘍サンプルは診断、予測および/またはモニタリングの目的で使用することができる。
【0061】
遺伝子に適用される「発現レベル」という用語は、遺伝子産物の正規化レベル、例えば、CCKBRのmRNA発現レベルについて決定された正規化値を指す。CCKBRに適用されるmRNA発現レベルは、上述の方法によって定量化することができる。本明細書で使用される発現データは正規化されており、これは、mRNA発現レベルが、アッセイされたRNAの量および使用されたRNAの品質の変動性の差について補正されることを意味する。アッセイでは、ハウスキーピング遺伝子のような関連条件下で比較的不変の或る特定の正規化遺伝子の発現を組み込むことによって正規化を行うことができる。
【0062】
本明細書で使用される「CCKBRのmRNA」という表現は、CCK2-Rタンパク質(CCK2-Rは、好ましくはGenBankアクセッション番号NP_795344.1に開示されるような配列を有する)をコードする遺伝子の任意のmRNA転写産物(転写物)を指す。一態様では、mRNA発現レベルは、GenBankアクセッション番号NM_001363552.2、NM_176875.4、NM_001318029.2およびXM_017018516.1に開示される配列から選択される1つ以上の転写物の発現レベル、好ましくはGenBankアクセッション番号NM_176875.4に開示される配列を有する転写物の発現レベルに相当する)。これに関連して、当該技術分野で一般的に使用される用語法に従い、「CCKBR」(または「cckbr」)という用語がmRNAを指し、「CCK2-R」という用語がタンパク質を指すことに留意すべきである。
【0063】
本明細書で使用される「カットオフ値」という用語は、予測目的で使用される所定の値を指す。特に、生体(腫瘍)サンプル中のmRNA発現レベルがカットオフ値以上である場合、患者が「CCK2-R陽性」であり、したがってCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答する可能性があると予測され、mRNA発現レベルがカットオフ値未満である場合、患者がCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答する可能性がない(または可能性が低い)と予測される。
【0064】
同様に、本明細書で使用される「カットオフ範囲」という用語は、予測目的で使用される所定の範囲を指す。特に、生体サンプル中のmRNA発現レベルがカットオフ範囲に等しい(つまり、範囲内にある)か、またはそれを上回る場合、患者が「CCK2-R陽性」であり、したがってCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答する可能性があると予測され、mRNA発現レベルがカットオフ範囲を下回る場合、患者がCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答する可能性がない(または可能性が低い)と予測される。「或る範囲に等しい」発現レベルは、発現レベルがその範囲(範囲の限界を規定する値を含む)に含まれることを意味すると理解される。
【0065】
予測目的で本明細書に使用されるカットオフ範囲(または値)は、GISTまたはSCLC等のCCK2-Rを発現することが知られる疾患の確立された陽性診断を有する患者パネルから得られた腫瘍生検、健常組織(胃、肺、腎臓)、および患者由来の異種移植片(PDX)サンプルにおいて、CCKBRのmRNA発現レベル(mRNAシークエンシングによって測定される)およびガストリン類似体の特異的結合(つまり、111In-PP-F11N;オートラジオグラフィーによって測定される;Reubi et al. Cancer Res 1997, 57(7), 1377-1386を参照されたい)の統計分析、例えばカイ二乗統計分析によって決定することができる。RAによって測定される「CCK2-R陽性」のサンプルと他の(陰性の)サンプルとを区別するためのカットオフ範囲は、放射性標識化合物111In-PP-F11Nの50%~65%の特異的結合である。カットオフ値は、Reubi et al. (Cancer Res 1997, 57(7), 1377-1386)によって記載されているように50%である。測定は二連で行う。カットオフ範囲(または値)は正規化され、transcripts per million(TPM)のlog2で表される。
【0066】
本明細書で使用される「投与する」という用語は、任意の経路による患者への化合物の送達を指す。
【0067】
癌患者への化合物の投与に関して本明細書で使用される「選択的に」という用語は、所定の基準、つまり、患者が特定の化合物、例えば放射性標識化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性に基づいて、より大きな患者群から特定の患者を特異的に選ぶ(選択する)ことを意味する。このため、選択的投与は、遺伝子発現状態に関わらず、化合物を全患者に投与する標準的投与とは異なる。
【0068】
本明細書で使用される「有効線量」(または「有効量」)という表現は、腫瘍組織の治療および/またはイメージング、例えば癌細胞増殖の低減または停止、増殖癌細胞数の低減等を行うために1回の投与サイクルで患者に投与される放射能の総線量(ベクレル単位)を指すことがある。一態様では、有効線量は、「治療線量」(1回の治療サイクルで患者に投与される放射能の総線量を指すことがある)または「イメージング線量」(腫瘍組織のPETまたはSPECT/CTイメージング等のイメージングを行うために患者に投与される放射能の総線量を指すことがある)である。有効線量は、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば式(1)の放射性標識ガストリン類似体単独の量として理解される。このため、例えば、放射性標識ガストリン類似体を別の異なる放射線療法と組み合わせて投与する場合、有効線量は放射性標識ガストリン類似体の線量のみを指す。
【0069】
医師は、有効線量を線量測定に基づいて決定することができる。任意の特定の被験体/患者に対する有効線量および投与頻度は、変えることができ、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別、食生活、投与の方法および時間、排出速度、疾患の重症度、ならびに療法を受けている個体を含む様々な要因によって異なる。医師は、有効線量を決定する際にこれらの要因を考慮する。
【0070】
数値Xに関する「約」という用語は、科学技術文献で適用される四捨五入の慣例に従い、「X±許容誤差」を意味する。数値の最後の小数位は、その正確度を示す。例えば、6.5GBqの線量については、許容誤差は6.45~6.54GBqである。
【0071】
本明細書で使用される「サイクル」という用語は、化合物を患者に投与し(治療時間)、続いて別のサイクルに入る前に患者を休息させる(休息時間)、期間を指す。治療は1回以上のサイクル、例えば最大10サイクル含み得る。一連のサイクルは通常、「コース」と呼ばれ、各サイクルの長さに応じて数ヶ月、例えば3~6ヶ月続くことがある。
【0072】
本明細書で「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも、この「好ましい」実施形態/特徴の組合せが技術的に有意義である限り、開示されるとみなすものとする。
【0073】
以下、本発明の明細書および特許請求の範囲において、「含有する」および「含む」という用語の使用は、言及した要素に加えて言及していない追加の要素が存在し得るように理解される。しかしながら、これらの用語はまた、より限定された実施形態として、技術的に有意義である限り、言及していない追加の要素が存在し得ないように、「からなる」という用語も開示すると理解すべきである。
【0074】
文脈上そうでないことが指示されない限り、かつ/または代替的な意味が本明細書で明示的に提示されない限り、全ての用語は、IUPAC Gold Book(2017年11月1日現在)またはDictionary of Chemistry, Oxford, 6th Edに反映されるような当該技術分野で一般的に認められる意味を有することが意図される。
【0075】
2.概要
本発明は、癌と診断された患者の腫瘍組織におけるCCKBRのmRNA発現レベルが、CCK2-Rタンパク質発現レベル、さらにはCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識リガンドのCCK2-Rへの特異的結合と密接に相関し、CCKBRのmRNA発現レベルが、CCK2-Rを標的とする化合物、例えばCCK2-Rを標的とする放射性標識リガンド、例えば177Lu-PP-F11Nによる治療および/またはイメージングに対する臨床応答のロバストな予測バイオマーカーを構成するという発見に基づく。
【0076】
したがって、CCKBRのmRNA発現レベルにより、例えば他の患者の、例えば放射線への不必要な曝露を回避しながら、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答することができるか、またはその可能性がある患者を選択することが可能である。mRNAおよびタンパク質の発現が殆ど相関しないことが知られているため、この知見は特に驚くべきことである。mRNA発現に基づく予測(可能な場合)は通常、単一のバイオマーカーではなく、複数のバイオマーカーの測定を必要とする(Koussounadis et al. Scientific Reports 2015, 5, 10775;Wang D. Comput Biol Chem. 2008, 32(6), 462-468を参照されたい)。特にCCK2-Rについて、mRNAとタンパク質との発現レベルの関連性は、非常に弱く、統計的に有意でないことが知られている(Mjones et al. Horm Canc 2018, 9, 40-54)。
【0077】
効率的なPRRTのための最も重要な目標の1つは、放射性医薬品の高い腫瘍取込みであり、これは標的受容体、例えばCCK2-Rの発現レベルに依存する。本発明の方法により、腫瘍組織がPRRTの達成に必要とされるCCK2-Rの発現レベルを示し、つまり、健常組織および/または器官ではなく、標的癌細胞への放射性標識ガストリン類似体等の放射性医薬品の高い取込みが示され、結果として優れた生体内分布(つまり、腫瘍対健常組織の比率)および治療効果(つまり、腫瘍組織の治療および/またはイメージング)が生じ、健常組織または器官への放射能の非特異的な蓄積による副作用が防止され得る患者を選択可能であることが予想される。
【0078】
3.疾患の治療および/またはイメージングに対する応答を予測する方法
本発明の方法では、患者から得られる腫瘍サンプル中のCCKBRのmRNA発現レベルを分析することにより、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対する癌と診断された患者の応答を予測することができる。本方法により、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療/イメージングに応答する(それから利益を得る)可能性がある患者を選択し、副作用を最小限に抑え、他の患者の放射線への不必要な曝露を回避しながら、有効性を最大化することが可能となる。
【0079】
方法は、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者がCCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と
を含む。
【0080】
増殖性疾患と診断された患者から採取した任意の腫瘍サンプルを使用し、CCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイすることができる。一実施形態では、患者は甲状腺髄様癌(MTC)、神経膠腫、小細胞肺癌(SCLC)、肺外小細胞癌(EPSCC)、胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、消化管間質腫瘍(GIST)、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌(CRC)、星状細胞腫、胃癌、卵巣癌、乳癌(BC)、およびCCK2Rを発現する任意の他の疾患から選択される疾患と診断される。
【0081】
一実施形態では、患者はSCLC、GIST、CRC、BCおよびNSCLC、好ましくはSCLCおよびGISTから選択される疾患と診断される。より好ましくは、患者はSCLCと診断される。
【0082】
サンプルは、生検または外科的切除によって得ることができる。一実施形態では、腫瘍サンプルは生検サンプル、例えばパラフィン包埋および固定された(保存)サンプル、新鮮サンプル、凍結サンプル、またはコア針もしくは細針吸引生検から得られるサンプルである。好ましくは、腫瘍サンプルはコア針または細針吸引生検である。腫瘍サンプルが得られた後、そのCCKBRのmRNA発現レベルを直接測定するか、または任意に、当該技術分野で既知の方法により、それに含まれるmRNAを抽出、濃縮および/もしくは単離するために予め処理することができる。かかる方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、mRNA抽出の方法は、例えば分子生物学の標準的な教科書、例えばCurrent Protocols of Molecular Biology, Ed. John Wiley & Sons, 1997に開示されている。さらに、mRNA単離は、Qiagen等の様々な製造業者から入手可能な市販の精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを用いて行うことができる。
【0083】
一実施形態では、癌と診断された患者は、腫瘍サンプルを得る前に以下の基準(i)~(viii)の1つ以上を満たす:
(i)1.5×ULN以下の血清クレアチニン、または慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)式に基づく50mL/分超の推定糸球体濾過量(eGFR);
(ii)1500細胞/μL以上の血液絶対好中球数(ANC);
(iii)100000細胞/μL以上の血小板数;
(iv)9g/dL以上の血中ヘモグロビン;
(v)3×ULN以下のASTまたはALT;
(vi)20g/L超の血清アルブミン;
(vii)2.5mg/dL以下の総ビリルビン;および
(viii)5×ULN未満のアルカリホスファターゼ。
【0084】
一実施形態では、方法は、患者が上記の基準(i)~(viii)の1つ以上を満たすかどうかを決定する予備工程を含み得る。
【0085】
CCKBRのmRNA発現レベルは、細胞におけるmRNA発現レベルをアッセイするのに適した当該技術分野で既知の任意の方法を用いてアッセイすることができる。好適な方法の非限定的な例としては、核酸シークエンシングベースの方法(mRNAシークエンシング)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、マイクロアレイ等が挙げられる。一実施形態では、CCKBRのmRNA発現レベルは、RT-PCRまたはRNAシークエンシングによってアッセイされる。好ましくは、CCKBRのmRNA発現レベルは、RNAシークエンシングによってアッセイされる。この技術は、全トランスクリプトームのシークエンシングが可能であり、コード配列だけでなく、非コード配列の分析を可能にする点で有利である。好適なシークエンシングプラットホームは、例えばCaris Life Sciences(登録商標)から市販されている。
【0086】
CCK2-Rを標的とする化合物は、CCK2-RアゴニストまたはCCK2-Rアンタゴニスト等のCCK2-Rに結合することが可能な任意の化合物であり得る。一実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は、放射性核種で標識される(放射性標識)。好ましくは、化合物は、以下の式(1):
【化8】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分を表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である。
【0087】
好ましい実施形態では、XはDOTAまたはNODAGAを表す(ここで、DOTAまたはNODAGAは、放射性核種をキレートする)。より好ましくは、XはDOTAである。
【0088】
一実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、放射性核種は、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Smから選択される。好ましい一実施形態では、放射性核種は177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される。
【0089】
工程(a)でアッセイされたCCKBRのmRNA発現レベルを、工程(b)において、患者が上記のCCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかどうかを決定するために使用する。この点において、mRNA発現レベルの値を所定のカットオフ範囲に対して比較し、それにより、カットオフ範囲に等しい(範囲内)か、またはそれを上回るmRNA発現レベルでは、患者がCCK2-R陽性であり、したがって、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があることが予測され、カットオフ範囲を下回るmRNA発現レベルでは、患者がCCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性がない(または可能性が低い)ことが予測される。
【0090】
一実施形態では、カットオフ範囲は、0.4~2.0log2 transcripts per million(TPM)、例えば0.4~1.0、0.5~1.1、0.6~1.2、0.7~1.3、0.8~1.4、0.9~1.5、1.0~1.6、1.1~1.7、1.2~1.8、1.3~1.9、1.4~2.0、0.4~0.9、0.5~1.0、0.6~1.1、0.7~1.2、0.8~1.3、0.9~1.4、1.0~1.5、1.1~1.6、1.2~1.7、1.3~1.8、1.4~1.9、1.5~2.0、0.4~0.8、0.5~0.9、0.6~1.0、0.7~1.1、0.8~1.2、0.9~1.3、1.0~1.4、1.1~1.5、1.2~1.6、1.3~1.7、1.4~1.8、1.5~1.9、1.6~2.0、0.4~0.7、0.5~0.8、0.6~0.9、0.7~1.0、0.8~1.1、0.9~1.2、1.0~1.3、1.1~1.4、1.2~1.5、1.3~1.6、1.4~1.7、1.5~1.8、1.6~1.9、1.7~2.0、0.4~0.6、0.5~0.7、0.6~0.8、0.7~0.9、0.8~1.0、0.9~1.1、1.0~1.2、1.1~1.3、1.2~1.4、1.3~1.5、1.4~1.6、1.5~1.7、1.6~1.8、1.7~1.9、1.8~2.0、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9または1.9~2.0log2 TPMである。
【0091】
好ましい実施形態では、カットオフ範囲は、0.5~1.8log2 TPM、例えば0.5~1.1、0.6~1.2、0.7~1.3、0.8~1.4、0.9~1.5、1.0~1.6、1.1~1.7、1.2~1.8、0.5~1.0、0.6~1.1、0.7~1.2、0.8~1.3、0.9~1.4、1.0~1.5、1.1~1.6、1.2~1.7、1.3~1.8、0.5~0.9、0.6~1.0、0.7~1.1、0.8~1.2、0.9~1.3、1.0~1.4、1.1~1.5、1.2~1.6、1.3~1.7、1.4~1.8、0.5~0.8、0.6~0.9、0.7~1.0、0.8~1.1、0.9~1.2、1.0~1.3、1.1~1.4、1.2~1.5、1.3~1.6、1.4~1.7、1.5~1.8、0.5~0.7、0.6~0.8、0.7~0.9、0.8~1.0、0.9~1.1、1.0~1.2、1.1~1.3、1.2~1.4、1.3~1.5、1.4~1.6、1.5~1.7、1.6~1.8、0.5~0.6、0.6~0.7、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7または1.7~1.8log2 TPMである。
【0092】
より好ましい実施形態では、カットオフ範囲は0.6~1.4log2 TPM、例えば0.6~1.2、0.7~1.3、0.8~1.4、0.6~1.1、0.7~1.2、0.8~1.3、0.9~1.4、0.6~1.0、0.7~1.1、0.8~1.2、0.9~1.3、1.0~1.4、0.6~0.9、0.7~1.0、0.8~1.1、0.9~1.2、1.0~1.3、1.1~1.4、0.6~0.8、0.7~0.9、0.8~1.0、0.9~1.1、1.0~1.2、1.1~1.3、1.2~1.4、0.6~0.7、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3または1.3~1.4log2 TPMである。
【0093】
さらに好ましい実施形態では、カットオフ範囲は0.6~1.0log2 TPM、例えば0.6~0.8、0.7~0.9、0.8~1.0、0.6~0.7、0.8~0.9または0.9~1.0log2 TPMである。
【0094】
別の実施形態では、mRNA発現レベルの値を所定のカットオフ値に対して比較し、それにより、カットオフ値以上のmRNA発現レベルでは、患者がCCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があることが予測され、カットオフ値未満のmRNA発現レベルでは、患者がCCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性がない(または可能性が低い)ことが予測される。カットオフ値は0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9および2.0log2 TPM、好ましくは0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4および1.5log2 TPM、より好ましくは0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1および1.2log2 TPM、さらに好ましくは0.6、0.7、0.8、0.9、1.0および1.1log2 TPMからなる群から選択され得る。
【0095】
4.疾患を治療および/またはイメージングする方法に使用する化合物
化合物は、癌と診断された患者において癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法に使用することができ、それにより癌または腫瘍細胞を治療および/または可視化する。治療は、治療的および/または予防的治療とすることができ、その目的は、腫瘍細胞の標的破壊を介して疾患の進行を予防、軽減または停止することである。イメージング(例えば診断)は、陽電子放出断層撮影(PET)等の既知のコンピュータ断層撮影法によって行うことができる。この技術およびその応用の概説については、例えば、Shankar Vallabhajosula (ed.), Molecular Imaging, Radiopharmaceuticals for PET and SPECT, Springer VerlagまたはLucia Martiniova et al., Gallium-68 in Medical Imaging, Current Radiopharmaceuticals, 2016, 9, 187-207を参照されたい。
【0096】
一実施形態によると、癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法は、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者がCCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲(または値)以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする化合物の有効線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む。
【0097】
本実施形態によると、工程(a)および(b)、ならびにそこで定義される特徴(つまり、腫瘍サンプル、mRNA発現レベルアッセイ、患者診断、カットオフ範囲/値)は、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに対する応答を予測する方法に関して上で定義した通りである。
【0098】
CCK2-Rを標的とする化合物は、CCK2-RアゴニストまたはCCK2-Rアンタゴニスト等のCCK2-Rに結合することが可能な任意の化合物であり得る。一実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は放射性標識される。好ましくは、CCK2-Rを標的とする化合物は、以下の式(1):
【化9】
[式中、Xは、放射性核種をキレートする部分を表す]
によって表される放射性標識ガストリン類似体である。
【0099】
一実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は、式(1)によって表されるガストリン類似体であり、放射性核種は、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Smから選択される。好ましい一実施形態では、放射性核種は177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択される。
【0100】
好ましい一実施形態では、方法は、CCK2-Rを標的とする化合物、好ましくは、DOTAまたはNODAGA、好ましくはDOTAが177Luをキレートする、式(1)の放射性標識ガストリン類似体を用いた癌の治療に関する。別の好ましい実施形態では、方法は、CCK2-Rを標的とする化合物、好ましくは、DOTAまたはNODAGA、好ましくはDOTAが68Gaをキレートする、式(1)の放射性標識ガストリン類似体を用いた癌または腫瘍細胞のイメージングに関する。
【0101】
工程(c)においては、工程(a)でアッセイしたCCKBRのmRNA発現レベルに基づいて、工程(b)でCCK2-R陽性、つまり、CCK2-Rを標的とする化合物による治療および/またはイメージングに応答する可能性があると特定された患者に化合物を選択的に投与する。したがって、腫瘍サンプル中のCCKBRのmRNA発現レベルは、化合物による治療および/またはイメージングから利益を得ることが予想される患者を選択するために工程(b)で使用される。そうでなければ、治療および/または診断(イメージング)目的で患者群全体に化合物を投与する必要があり、一部の患者については、臨床効果がなく、例えばベネフィットリスク比が低くなるため、これは非常に有益である。低線量の放射性標識化合物、例えば177Lu-PP-F11Nであっても、放出される放射線のエネルギーは強く、望ましくない副作用が容易に起こり得る。したがって、患者の選択により、副作用を最小限に抑えながら、あらゆる種類の治療および/またはイメージングの有効性が著しく高められる。
【0102】
CCK2-Rを標的とする化合物は、任意の有効線量で投与することができる。一実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は、放射性核種が177Luである、式(1)の放射性標識ガストリン類似体であり、患者に投与されるCCK2-Rを標的とする化合物の有効線量は、好ましくは、
(i)1.0~15.0ギガベクレル(GBq)、好ましくは2.0~12.0GBq、より好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqの治療線量;および
(ii)0.5~3.0GBq、好ましくは0.7~2.5GBq、より好ましくは1.0~2.0GBq、例えば約1.85GBqのイメージング線量
から選択される。
【0103】
別の実施形態では、CCK2-Rを標的とする化合物は、放射性核種が68Gaである、式(1)の放射性標識ガストリン類似体であり、患者に投与されるCCK2-Rを標的とする化合物の有効線量は、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人(のイメージング線量)である。
【0104】
化合物は患者に一度に、または、例えば化合物が式(1)の放射性標識ガストリン類似体等の放射性医薬品の場合には、一連の投与サイクルにわたって投与することができる。イメージングとの関連においては、化合物は、好ましくは一度に投与されるが、反復投与もモニタリング目的、例えば疾患進行のモニタリングに有用であり得る。化合物は、2~10週間のサイクル毎に1回または2回、好ましくは4~8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは6週間のサイクル毎に1回または8週間のサイクル毎に1回、患者に投与することができる。化合物をサイクル毎に2回投与する場合、有効線量(治療線量)は、2つの半線量に分割され、サイクルの間に別々に投与される。サイクル数は、1~最大10サイクル、例えば1~8または1~6サイクル、例えば3または4サイクルの範囲であり得る。
【0105】
一態様では、CCK2-Rを標的とする化合物は放射性医薬品、例えば式(1)の放射性標識ガストリン類似体、例えば177Lu-PP-F11Nであり、治療および/またはイメージングは、以下の投与パターンの1つに従って化合物を投与することにより行うことができる:
(A)少なくとも2回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回;または
(B)少なくとも2回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回。
【0106】
別の実施形態によると、癌を選択的に治療および/またはイメージングする方法は、
(a)癌と診断された患者からの腫瘍サンプルをCCKBRのmRNA発現レベルについてアッセイする工程と、
(b)CCKBRのmRNA発現レベルが、患者がCCK2-Rを標的とする化合物による治療に応答する可能性があるかを予測するための所定のカットオフ範囲以上であるかどうかを決定する工程と、
(c)CCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量を患者に選択的に投与して、身体部分または組織の画像を得る工程と、
(d)CCK2-Rを標的とする第2の化合物の治療線量を患者に選択的に投与する工程と
を含む。
【0107】
ここで、CCK2-Rを標的とする第1および第2の化合物の両方が、好ましくは、本明細書に開示されるような放射性医薬品(放射性標識化合物)、例えば式(1)の放射性標識ガストリン類似体である。
【0108】
第2の実施形態に従い、工程(a)および(b)、ならびにそこで定義される特徴(つまり、腫瘍サンプル、mRNA発現レベルアッセイ、患者診断、カットオフ範囲/値)は、CCK2-Rを標的とする化合物、例えば放射性標識ガストリン類似体による治療および/またはイメージングに対する応答を予測する方法に関して上で定義した通りである。
【0109】
CCK2-Rを標的とする第1の化合物は、CCK2-RアゴニストまたはCCK2-Rアンタゴニスト等のCCK2-Rに結合することが可能な任意の化合物であり得る。一実施形態では、CCK2-Rを標的とする第1の化合物は放射性標識される。好ましくは、CCK2-Rを標的とする第1の化合物(工程(c)で使用される)は、第1の放射性核種で標識された式(1)の放射性標識ガストリン類似体(上で定義される)である。
【0110】
化合物は、工程(b)でCCK2-R陽性、つまり、CCK2-Rを標的とする化合物による治療に応答する可能性があると特定された患者にイメージング目的で選択的に投与される。したがって、腫瘍サンプル中のCCKBRのmRNA発現レベルは、化合物による治療から利益を得ることが予想される患者を(予め)選択するために工程(b)で使用される。その後、CCK2-Rを標的とする第1の化合物の投与は、工程(c)においてイメージング目的で、つまり、腫瘍組織の可視化によりCCK2-R陽性を確認するために用いられる。したがって、工程(c)は、化合物による治療から利益を得ることが予想される患者をさらに選択するために用いることができる。この選択プロセスは、治療から利益を得る可能性が最も高い患者を特定することで、副作用を最小限に抑えながら有効性をさらに高めることができるため非常に有益である。
【0111】
CCK2-Rを標的とする第1の化合物が、式(1)の放射性標識ガストリン類似体である場合、第1の放射性核種は、PET、単光子放出断層撮影(SPECT)等の標準的なイメージング技術による身体部分または組織のイメージングに適した任意の放射性核種(または「トレーサー」)であり得る。第1の放射性核種は、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択することができる。
【0112】
一実施形態では、第1の放射性核種は177Luであり、患者に投与されるCCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量は、好ましくは0.5~3.0GBq、好ましくは0.7~2.5GBq、より好ましくは1.0~2.0GBq、例えば約1.85GBqである。
【0113】
好ましくは、工程(c)で画像を得るために用いられるイメージング技術はPETである。可視化は、68Ga等の放射性核種によって放出された放射線のエネルギーおよび位置を記録することによって達成され、この情報は、続いて体内の放射性核種濃度の三次元(3D)画像を再構築するためにコンピュータプログラムによって使用される。最新のPETコンピュータ断層撮影スキャナーでは、PET画像は多くの場合、トレーサーの投与中またはその直後に同じ装置で患者に対して行われるコンピュータ断層撮影スキャンを用いて再構築される。
【0114】
PET画像は通例、非常に高い分解能を示し、特に68Gaを用いて得た場合には、通例、SPECTによって達成可能な分解能よりもはるかに高い。SPECTは、放射性トレーサー物質を使用するという点ではPETと同様である。しかしながら、PETスキャナーは、これらの放射を時間的に「同時に」検出するため、より多くの放射線事象の局在化の情報、ひいてはSPECT(分解能は約1cm)よりも空間分解能が高い画像が得られる。
【0115】
好ましい実施形態では、第1の放射性核種は68Gaであり(したがって、CCK2-Rを標的とする第1の化合物は68Ga-PP-F11Nである)、患者に投与されるイメージング線量は、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、より好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人である。
【0116】
68Gaの好都合な半減期(T1/2=68分間)は、様々なPETイメージング用途に十分な放射能をもたらす。68Gaは、最大エネルギー1.9MeV、平均0.89MeVの陽電子放出により87.94%崩壊する。68Ga3+カチオンは、ドナー原子として酸素および窒素を含む多くのリガンド、特にDOTAと安定した錯体を形成することができる。
【0117】
一実施形態では、方法は、
(e)CCK2-Rを標的とする第1の化合物のイメージング線量、例えば177Lu-PP-F11Nまたは68Ga-PP-F11Nを患者に投与して、身体部分または組織の画像を得る工程
を(工程(d)後に)含み得る。
【0118】
工程(e)は、例えば疾患の状態をモニタリングする、CCK2-Rを標的とする第2の化合物による治療の有効性をモニタリングする、第2の化合物の投与量を適合させる等のために用いることができる。これは一度に行うか、または必要とみなされる場合、CCK2-Rを標的とする第2の化合物の毎回の投与(サイクル)後に行うことができる。
【0119】
CCK2-Rを標的とする第2の化合物は、CCK2-RアゴニストまたはCCK2-Rアンタゴニスト等のCCK2-Rに結合することが可能な任意の化合物であり得る。一実施形態では、CCK2-Rを標的とする第2の化合物は放射性標識される。好ましくは、CCK2-Rを標的とする第2の化合物(工程(d)で使用される)は、第2の放射性核種で標識された式(1)の放射性標識ガストリン類似体(上で定義される)である。
【0120】
化合物は、CCK2-R陽性、つまり、CCK2-Rを標的とする化合物による治療に応答する可能性があると特定された患者に治療目的で選択的に投与される。したがって、腫瘍サンプル中のCCKBRのmRNA発現レベルは、化合物による治療および/またはイメージングから利益を得ることが予想される患者を(予め)選択するために工程(b)で使用され、一方、患者をさらに選択するか、またはCCK2-R陽性を確認するために腫瘍組織のイメージングが工程(c)で行われる。これは、CCK2-Rを標的とする第2の化合物による治療に応答する可能性が最も高い患者を対象とすることで、副作用を最小限に抑えながら治療効果を高めることができるため非常に有益である。
【0121】
CCK2-Rを標的とする第2の化合物が、式(1)の放射性標識ガストリン類似体である場合、第2の放射性核種は、124I、131I、86Y、90Y、177Lu、111In、188Re、64Cu、67Cu、68Ga、99mTc、212Pb、212Bi、213Bi、211At、225Ac、223Ra、149Tb、161Tb、226Th、227Th、89Sr、44/43Sc、47Scおよび153Sm、好ましくは177Lu、90Y、68Ga、225Acおよび111In、より好ましくは177Luおよび68Gaから選択することができる。
【0122】
好ましい一実施形態では、第2の放射性核種は177Luであり(CCK2-Rを標的とする第2の化合物は、177Lu-PP-F11Nである)、患者に投与される治療線量は、好ましくは1.0~15.0GBq、より好ましくは2.0~12.0GBq、さらに好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqである。
【0123】
さらに好ましい実施形態では、第1の放射性核種は68Gaであり、患者に投与されるイメージング線量は、好ましくは0.5~4MBq/kg/人、より好ましくは1~3MBq/kg/人、例えば約2MBq/kg/人であり、第2の放射性核種は177Luであり、患者に投与される治療線量は、好ましくは1.0~15.0GBq、より好ましくは2.0~12.0GBq、さらに好ましくは5.0~10.0GBq、特に6.0~8.0GBq、例えば約6.5GBqである。
【0124】
さらに別の実施形態では、第1および第2の放射性核種は同一であり、例えば177Luである。
【0125】
CCK2-Rを標的とする第2の化合物は、患者に一度に、または一連の投与サイクルにわたって投与することができる。化合物は、2~10週間のサイクル毎に1回または2回、好ましくは4~8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは6週間のサイクル毎に1回または8週間のサイクル毎に1回、患者に投与することができる。化合物をサイクル毎に2回投与する場合、有効線量(治療線量)は、2つの半線量に分割され、サイクルの間に別々に投与される。サイクル数は、1~最大10サイクル、例えば1~8または1~6サイクル、例えば3または4サイクルの範囲であり得る。
【0126】
一態様では、CCK2-Rを標的とする第2の化合物、例えば式(1)の放射性標識ガストリン類似体は、以下の投与パターンの1つに従って投与される:
(A)少なくとも2回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の6週間サイクルについて6週間のサイクル毎に1回;または
(B)少なくとも2回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、好ましくは少なくとも3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回、より好ましくは3回の8週間サイクルについて8週間のサイクル毎に1回。
【0127】
上記の実施形態によると、化合物は注射、特に静脈注射によって患者に投与される。この点で、化合物は、水性担体(例えば、水または0.9%塩化ナトリウム)等の薬学的に許容可能な注射用担体中の溶液として提供することができる。CCK2-Rを標的とする化合物が放射性標識化合物、特に式(1)の放射性標識ガストリン類似体である場合、注射用の化合物の溶液は、300~500MBq/mLの範囲、例えば約400MBq/mLの放射性標識ガストリン類似体の濃度を有し得る。注入速度は35~60mL/時間、例えば約50mL/時間であり得る。
【0128】
一実施形態では、上記の方法は、
(α)薬学的に許容可能な注射用担体に化合物を溶解して、化合物の注射用溶液、好ましくは、CCK2-Rを標的とする化合物が式(1)の放射性標識ガストリン類似体である場合、300~500MBq/mL、例えば400MBq/mLの化合物濃度を有する注射用溶液を得ることによって化合物の注射用溶液を調製する工程と、
(β)工程(α)から得られた化合物の注射用水溶液を、好ましくは、CCK2-Rを標的とする第1の化合物が式(1)の放射性標識ガストリン類似体である場合、20~60分間、例えば30~45分間の注入期間にわたって35~60mL/時間、例えば50mL/時間の注入速度で患者に投与する工程と
を含み得る。
【0129】
一実施形態では、化合物は1つ以上の他の治療剤または療法、例えばDNA損傷応答(DDR)阻害剤、化学療法剤、免疫調節剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、または任意の他の標的療法と同時、その前および/またはその後に投与される。更なる一実施形態では、化合物はDDR阻害剤、パントプラゾール等のPPI、およびラニチジン等のヒスタミンH受容体アンタゴニストから選択される別の治療剤と同時かつ/またはその前、好ましくはパントプラゾールおよびラニチジンから選択される別の治療剤と同時かつ/またはその前、より好ましくはパントプラゾールと同時かつ/またはその前に投与される。
【0130】
5.放射性標識ガストリン類似体の調製
以下、放射性標識ガストリン類似体を調製する方法を提供する。ガストリン類似体は、樹脂上ペプチドカップリングおよび収束戦略を含む標準的なFmocベースの固相ペプチド合成(SPPS)に基づいて合成することができる。本発明のガストリン類似体の調製および放射性標識に用いることができる一般的な戦略および方法論は、当業者によく知られており、以下でさらに記載される。
【0131】
6.実施例
6.1 略語の一覧
BSA:ウシ血清アルブミン
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EGTA:エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸
ESI:エレクトロスプレーイオン化
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HBTU:3-[ビス(ジメチルアミノ)メチリウミル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IU:国際単位
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
SQD:シングル四重極検出
SPECT:単光子放出コンピュータ断層撮影
SPPS:固相ペプチド合成
TBST:Tween 20を含むトリス緩衝生理食塩水
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
Tris:トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン
UPLC:超高速液体クロマトグラフィー
【0132】
6.2 材料および方法
本発明の化合物および方法を評価するために以下の材料および方法を使用した。
【0133】
6.2.1 ガストリン類似体の調製
本明細書に記載され、使用されるガストリン類似体(PP-F11N)は、Activo-P-11 Automated Peptide Synthesizer(Activotec)およびRink Amide樹脂(装填量:0.60mmol/g;Novabiochem)を用いた、樹脂上ペプチドカップリングおよび収束戦略を含む標準的なFmocベースのSPPSによって調製した。
【0134】
アミド結合形成のためのカップリング反応は、DIEA(6当量)の存在下、HBTU(2.9当量)で活性化した3当量のFmoc-アミノ酸を用い、室温で30分かけて行った。Fmoc脱保護は、DMF中の20%ピペリジンの溶液を用いて行った。N末端標識化部分のカップリングは、DIEA(6当量)の存在下、HATU(2.9当量)で活性化した3当量のDOTAトリス-t-Buエステル(Novabiochem)を用い、室温で30分かけて行うことができる。
【0135】
TFA/TIS/水(95/2.5/2.5、v/v/v)で60分間処理することにより、同時に側鎖を脱保護してペプチドを樹脂から切断した。切断混合物の濃縮後に、粗ペプチドを冷ジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離した。
【0136】
ペプチドは、XSelect Peptide CSH C18 OBD Prepカラム(130Å、5μm、19mm×150mm)を用いるSQD質量分析計と連結したWatersのAutopurification HPLCシステムで、溶媒系(水中の0.1%TFA)およびB(アセトニトリル中の0.1%TFA)を用い、25mL/分の流量および20~60%のBの勾配で30分かけて精製した。適切な画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥した。純度は、CSH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)を用いるSQD質量分析計と連結したWatersのAcquity UPLC System、溶媒系A(水中の0.1%TFA)および(アセトニトリル中の0.1%TFA)を用い、0.6mL/分の流量および5~85%のBの勾配で5分かけて決定した。
【0137】
MS分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを用い、ポジティブおよびネガティブモードで行った。
【0138】
6.2.2 ガストリン類似体の放射性標識
ルテチウム放射性標識:
ルテチウム標識ガストリン類似体(177Lu-PP-F11N;試験化合物)を調製するために、1:30の核種/ペプチド比の上記のように調製したN末端DOTAコンジュゲートガストリン類似体PP-F11N(DOTA-(DGlu)-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe)の溶液および177Lu(ITG GmbHから入手可能)を0.4M酢酸アンモニウムバッファー(pH5.5)中で調製し、標識を90℃で15分間行った。
【0139】
ルテチウム取込みは、C18カラムを用いる標準的なHPLCによって分析し、95%超の効率が達成された。
【0140】
インジウム放射性標識:
下記実施例1で使用するインジウム標識ガストリン類似体(111In-PP-F11N)を調製するために、PP-F11Nの溶液を放射性核種溶液(20mM HCl中の111InCl、Curiumから入手可能)に添加した。標識バッファー(酢酸ナトリウムpH5.3)を最終濃度が0.1Mバッファーとなるように添加した。80℃で25分間加熱した後、反応混合物を5分間冷却してから、50μlあたり1μlの10mM DTPAおよび1μlの5%TWEEN-20を添加した。品質管理のために、反応混合物をHPLCサンプル希釈剤(0.1M酢酸ナトリウムpH5.3中の0.1%TWEEN-20)で1:10に希釈した。
【0141】
標識効率および放射化学的純度を、AgilentのPoroshell HPH C18カラム(勾配:水中の0.1%TFA中、15分以内で5%アセトニトリル(ACN)~70%ACN;流量:0.5ml/分)を用いてHPLCによって決定した。111In-PPF11Nの標識効率および放射化学的純度は、94%超であった。
【0142】
ガリウム放射性標識:
ガリウム標識ガストリン類似体(68Ga-PP-F11N;イメージング化合物)を調製するために、ガリウム発生剤の溶出液をPP-F11N 80μg、マンニトール6mg、アスコルビン酸1mgおよび酢酸ナトリウム(100mg)の溶液(pH3.9)に添加した。95℃で20分間加熱した後、反応混合物を10分間冷却した。放射化学的純度をTLC(薄層クロマトグラフィー)によって分析した。シリカゲルプレート上で5μLのサンプル。移動相:水、メタノール50:50V/V中の酢酸アンモニウムの77g/L溶液。放射能の分布を決定するのに適した検出器による検出。3%以下の遊離ガリウム-68。
【0143】
6.2.3 組織の取得および調製
20人のSCLC患者、24人(four twenty)のGC患者および20人のPDAC患者から分離した組織(新鮮凍結ブロック)をTissue Biobank供給業者から取得した。組織をLeicaの3050クライオトームチャンバーで少なくとも1時間平衡化させてから、-18℃(チャンバ温度)および20μmの厚さで切片化した。
【0144】
6.2.4 オートラジオグラフィー
以下のバッファーを各アッセイ前に新たに調製した。
【0145】
【表1】
【0146】
オートラジオグラフィーのプロトコル:
サンプル(腫瘍切片)を初めに、冷風機を用いて少なくとも5分間乾燥させ、スライドへの組織吸着を高めた。CCKBRの潜在的な占有を減少させるためにPre-IBとインキュベートし、続いてさらに10分間の乾燥工程を行った。その後、サンプルをIB中で111In-PPF11Nとインキュベートした。非特異的結合を評定するために、200nMの非標識ヒトガストリンI(スイスのBachemから入手可能)と混合したトレーサー溶液中で隣接切片をインキュベートした。この手順後に、スライドを予冷WB1中で6×15分間、WB2中で2×5秒間洗浄してから、冷風機を用いて少なくとも15分間切片を乾燥させた。切片をX線カセットのBiomax MRフィルムに並べ、フィルムを自動化現像機で現像した。
【0147】
シグナルの定量化:
シグナルの定量化のために、実験毎に別々の標準曲線を記録した。オートラジオグラムを、MCIDソフトウェア(InterFocus)を用いて定量分析した。関心領域(ROI)は、全トレーサー結合により組織上で1回、非特異的結合についてサンプル上で1回の2回測定した。全結合シグナルが非特異的シグナルの少なくとも2倍高い場合、放射性リガンド結合を特異的とみなした(Reubi et al. Cancer Res. 1997, 57(7), 1377-1386)。種々の腫瘍サンプル切片が腫瘍組織および正常隣接組織から構成されるため、スライド中の腫瘍組織への放射性シグナルの共局在化をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色によって確認した。
【0148】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色:
オートラジオグラフィーに使用した切片に隣接する切片のH&E染色により、オートラジオグラフィーシグナルの局在化が可能である。H&E染色のために、凍結組織切片を1:1アセトン-エタノール溶液(トリクロロ酢酸1mol/l)中で10秒間固定した。その後、アルコール系列(100;96;70;50%EtOH)中で水和させ、続いてHO中で短時間すすいだ。マイヤーのヘマラウン(hemalaun)溶液中で10分間インキュベートして、細胞の核を染色した。HOおよびdd HO中で洗浄した後、スライドを塩酸アルコールに短時間浸漬した。その後、温水中で10分間インキュベートすると、赤色から青色に変色した。エオシン溶液での対比染色により、好酸性構造(ピンク色)のコントラストが得られる。スライドを洗浄し、上昇アルコール系列(70~100%)で脱水した。サンプルを2回キシレンに入れ、続いてEukittおよびガラスカバースリップを用いて包埋した。
【0149】
6.2.5 統計分析
統計分析は、CCK2-Rへの放射性標識ガストリン類似体(111In-PP-F11N)の特異的結合とCCKBRのmRNA発現レベルとの間の相関の間の相関を評定するために行う。
【0150】
特異的結合のパーセンテージ(Yと表す)とmRNA発現(Zと表す)との関係は、線形である可能性が低いため、一般的なヒト相関係数は適切でない。次いで、両エンドポイント間の相関をχ検定によって評定する(Fisher, R. A. (1922), On the Interpretation of a χ2 from Contingency Tables, and the Calculation of P. Journal of the Royal Statistical Society 1922, 85(1), 87-94を参照されたい)。χ検定を行うために、特異的結合およびmRNA発現レベルの両方のエンドポイントを

【数1】
[式中、aは、特異的結合の高いパーセンテージを定義するためのカットオフ値であり、Xは、分析したサンプルの数である]

【数2】
[式中、bは、高いmRNA発現レベルを定義するためのカットオフ値であり、Xは、分析したサンプルの数である]
のように分類する。
【0151】
YとZとの相関は、
【数3】

【数4】
とのχ検定のp値p(a,b)と定義される。
【0152】
最適カットオフ値(a,b)は
【数5】
のように定義される。
【0153】
かかる最適カットオフ値は、分類された特異的結合のパーセンテージとmRNA発現との間の一貫性を最大化する。
【0154】
実施例1:生体サンプルにおける放射性標識ガストリン類似体( 111 In-PP-FF11N)の特異的結合とmRNA発現レベルとの関連性
本実施例の目的は、腫瘍組織および健常組織(健常組織を陽性/陰性対照として使用する)におけるCCK2-Rへの放射性標識ガストリン類似体(111In-PP-F11N)の特異的結合とCCKBRのmRNA発現レベルとのとの相関を評定することであった。
【0155】
57個の組織サンプルを得て、111In-PP-F11N結合およびmRNA発現レベルについて特性評価した。データセットは、GIST、SCLC、NSCLCまたはMTCと診断された患者から採取したサンプル(つまり、17個のGISTサンプル、1個のGIST-PDXサンプル、13個のSCLCサンプル、17個のSCLC-PDXサンプル、4個のNSCLCサンプル、2個のMTCサンプル)と、陽性対照(胃)および陰性対照(肺、腎臓)として使用される健常組織、つまり、胃、肺、腎臓から採取したサンプルとを組み合わせた。各サンプル中の111In-PP-F11Nの特異的結合をオートラジオグラフィー(上記)によって測定し、mRNA発現レベルを全トランスクリプトームのmRNAシークエンシングによって測定した。mRNA発現レベルの測定は、Caris Life Sciences(登録商標)によって行われた。
【0156】
サンプルにおけるCCK2-Rへの111In-PP-F11Nの特異的結合とCCKBRのmRNA発現レベルとの間の相関をχ統計分析(上記)によって分析した。結果を図1に示す。
【0157】
統計分析から、二重陰性サンプルと二重陽性サンプルとを区別するための適切なカットオフ値が、放射性標識リガンドの特異的結合については50~65%、CCKBRのmRNA発現レベルのlog2については0.6~1.0の範囲であることが示された。特異的結合について決定されたカットオフ値は、同じ型の腫瘍組織について文献に報告されているカットオフ値と一致している(Reubi et al. Cancer Res 1997, 57(7), 1377-1386を参照されたい)。さらに、オートラジオグラフィーとmRNAシークエンシングとの測定間の同一分類の関連率は、非常に高いことが見出された(93%~96%)。したがって、これらの結果から、CCKBRのmRNA発現レベルが、CCK2-Rを標的とする放射性リガンドによる治療および/またはイメージングに対する特定の患者の臨床応答のロバストかつ高信頼性の予測バイオマーカーを構成することが実証される。
【0158】
実施例2:診断用陽電子放出断層撮影放射性トレーサーとして 68 Ga-PP-FF11Nを用いて選択された、切除不能な局所進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者における 177 Lu-PP-FF11Nの安全性、忍容性、全身放射能分布および放射線量測定の多施設第1a/1b相研究
研究設計の概要:これは、切除不能な局所進行性または転移性の腫瘍を有する患者における177Lu-PP-F11N(以下、「試験化合物」)の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PDy)、放射線量測定および予備的抗腫瘍活性の多施設マルチアーム非盲検第1a/1b相研究である。
【0159】
研究は、2つのパート、つまり、以下のように(I)第1a相および(II)第1b相で構成される:
(I)第1a相:このパートには、研究スクリーニング時にCCK2R発現状態が不明な小細胞肺癌(SCLC)患者6人が登録される。適格性を確認した後、第1a相の全患者に試験化合物を1.85GBqの活性線量で投与し、分布および線量推定を可能にする画像診断ツールとして使用する。
【0160】
(II)第1b相:このパートは、第1a相の完了後に開始され、以下の患者集団が登録される:
・コホート1:最大20人のSCLC患者
・コホート2:最大20人の消化管間質腫瘍(GIST)患者
・コホート3:
最大10人の大腸癌(CRC)患者
最大10人の非小細胞肺癌(NSCLC)患者
最大10人の乳癌(BC)患者
からなるバスケットコホートの最大30人の患者
・コホート4:任意の組織型の腫瘍を有する最大10人の患者。
【0161】
スクリーニング期間に入る前に、患者を以下のようにCCK2-R発現について予め選択する:
-コホート番号1、2および3では、全患者をCCKBR mRNA発現について一元的にプレスクリーニングしなければならない。その目的で、保存生検または新たに取得した生検のいずれかが必要とされる。
【0162】
-コホート4では、現場で検証された方法によって決定された既知のCCKBR発現を有する患者。CCKBR発現の結果は、スポンサーがその妥当性を決定し、スクリーニングに対する患者の適格性が確認できるようにしなければならない。
【0163】
腫瘍のCCK2-R発現が陽性の患者のみをスクリーニング段階に進める。スクリーニング段階では、68Ga-PP-F11N(以下、「イメージング化合物」)の陽電子放出断層撮影(PET)イメージングに基づいて患者をさらに選択する。陽性のイメージング化合物PETイメージングスキャンが一元的に読み取られた患者のみが、試験化合物による治療に適格である(陽性のイメージング化合物PETスキャンの定義については以下を参照されたい)。
【0164】
適格性を確認した後、第1b相の全患者に試験化合物を6.5GBqの治療線量で投与し、これが治療サイクルを構成する。患者は最大3回の治療サイクルを受けることができる。治療サイクルは6週間毎に実施する(+2週間の時間枠が許容される)。
【0165】
目的:
(I)第1a相:第1a相の主要目的は、1)SCLC患者における試験化合物の単回イメージング線量(1.85GBq;50mCi)の投与後の腫瘍および決定臓器における放射線量測定および放射能分布を評定すること、2)第1b相で投与される治療線量を決定するために器官/組織吸収線量を外挿すること、ならびに3)静脈内投与した試験化合物の単回イメージング線量の安全性および忍容性を評定することである。
【0166】
(II)第1b相:第1b相の主要目的は、1)試験化合物の単回治療線量の投与後の腫瘍および決定臓器における放射線量測定および放射能分布を評定すること、ならびに2)静脈内投与した試験化合物の治療線量の安全性および忍容性を評定することである。
【0167】
研究集団:
研究集団には、標準的な療法が利用可能でない、組織学的に確認された切除不能な局所進行性もしくは転移性の固形腫瘍を有する成人患者、または治療医の意見により、標準治療では忍容性もしくは利益の見込みがない患者が含まれる。研究集団は、下記の組入れおよび除外基準によって定義される。プロトコルの免除は認められない。患者は以下のコホートに割り当てられる:
(I)第1a相:SCLCと診断された最大6人の評価可能な成人(18歳以上)女性および男性患者の単一コホート。
【0168】
(II)第1b相
・コホート1:最大20人のSCLC患者
・コホート2:最大20人の消化管間質腫瘍(GIST)患者
・コホート3:
最大10人の大腸癌(CRC)患者
最大10人の非小細胞肺癌(NSCLC)患者
最大10人の乳癌(BC)患者
からなるバスケットコホートの最大30人の患者
・コホート4:任意の組織型の腫瘍を有する最大10人の患者。
【0169】
適格性を確認した後、スクリーニング期間を超えることなく患者を登録する。適格患者は、登録日または現場での論理的理由から必要であればその後7日以内に試験化合物による治療を受ける。スクリーニング不合格率を50%と仮定すると、およそ160人の患者がスクリーニングされ、研究関連のスクリーニング評定を受け、第1b相に約80人の患者が登録される。
【0170】
組入れ基準:
1)年齢18歳以上。
【0171】
2)任意の研究特有の手順の前に患者による署名および日付入りの書面によるインフォームドコンセント。
【0172】
3)第1a相の患者については、CCK2-R腫瘍状態が不明の組織学的または細胞学的に確認されたSCLC。
【0173】
4)第1b相の患者については、
4.1)中央で検証された分子アッセイにより特定された、CCKBR mRNA発現レベルが既知の切除不能な局所進行性または転移性の癌(つまり、SCLC、GIST、NSCLC、CRC、BC)。現場で検証された方法により決定された既知のCCKBR発現を有する他の腫瘍型の患者は、コホート4への登録に適格であり得る。CCKBR発現試験の結果は、スポンサーがその妥当性を決定し、スクリーニングに対する患者の適格性が確認できるようにしなければならない。
4.2)およそ半数の標的腫瘍病変(RECIST V1.1に従う)がスクリーニングで陽性の画像複合スキャンを示す。
【0174】
5)全ての研究患者について、少なくとも1回の全身治療レジメン後にX線写真で実証された疾患の進行または再発。2種類以上の化学療法、免疫療法または免疫-化学療法併用レジメンによる前治療が許容される。
【0175】
6)最後の抗癌療法後に実証された、RECIST V1.1に従う少なくとも1つの非照射の非中枢神経系(CNS)の測定可能な標的病変。
【0176】
7)ECOGパフォーマンススコア0~1。
【0177】
8)第1b相の患者については、研究者の最善の判断による6ヶ月超の平均余命。
【0178】
9)
・1.5×ULN未満の血清クレアチニン、または慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)式に基づく50mL/分超の推定糸球体濾過量(eGFR)。
・1500個/μL以上の血液絶対好中球数(ANC)。
・100000個/μL以上の血小板。
・9g/dL以上のヘモグロビン。
・2000個/μL超の白血球。
・3×ULN以下のASTおよびALT(または肝転移の場合は5×ULN以下)。
・1.5×ULN以下の総ビリルビン(または直接ビリルビンレベルが正常範囲内であり、間接ビリルビンに上昇が限定される場合は2.0×ULN以下が許容される)
と定義される十分な研究室機能。
【0179】
10)女性は、被験薬の初回投与前の尿妊娠検査が陰性でなくてはならず、または女性患者は、スクリーニング時に以下の基準の1つを満たすことにより妊娠可能性がないことを証明する必要がある:
・年齢が50歳を超え、全ての外因性ホルモン治療の中止後少なくとも12ヶ月にわたって無月経であると定義される閉経後。
・50歳未満の女性は、外因性ホルモン治療の中止後12ヶ月以上にわたって無月経であり、黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)のレベルがその施設の閉経後範囲内である場合、閉経後とみなされる。
・卵管結紮ではなく、子宮摘出、両側卵巣摘出または両側卵管切除による不可逆的な避妊手術の実証。
【0180】
11)生殖能があり、性的に活発な患者は、以下のように定義される適切な避妊法を用いる必要がある:
・女性については、ホルモン避妊薬、子宮内避妊用具、または二重バリア避妊法、つまり、コンドーム+ペッサリー、コンドームまたはペッサリー+殺精子ジェルまたはフォーム。
・男性については、二重バリア避妊法、つまり、コンドーム+ペッサリー、コンドームまたはペッサリー+殺精子ジェルまたはフォーム。
【0181】
除外基準:
1)妊娠または授乳中。
【0182】
2)積極的治療下の続発性悪性腫瘍の併発。
【0183】
3)治療開始前に先行抗癌治療に関連したNCI-CTCAE v5.0のグレード1を超える毒性が発現している(グレード2の脱毛症、または安定したグレード2の感覚性ニューロパシーを除く)。
【0184】
4)積極的な医学的管理または局所介入を必要とする症候性の中枢神経系(CNS)疾患。治療的頭蓋照射を以前に受けたことがあり、ステロイドを継続している、減少させている、または使用していない、CNS転移を有する無症候の患者が適格である。
【0185】
5)急性、閉塞性、穿通性または出血性とみなされる消化性潰瘍。
【0186】
6)以前に骨髄の25%超に体外照射療法を受けたことがある。
【0187】
7)放射性リガンド内用療法を以前に受けたことがある。
【0188】
8)現在、自然尿失禁がある。
【0189】
9)重篤なアレルギー反応、過敏症または腎不全によるX線造影剤との不適合が知られている。
【0190】
10)コントロール不良の糖尿病、出血傾向の兆候、コントロール不良の精神障害、重篤感染症、または評価中の治療により悪化する可能性がある任意の他の医学的状態。
【0191】
11)以下の心性基準のいずれか:
a.3回の心電図(ECG)から得られた470ミリ秒超(女性)または450ミリ秒超(男性)のFridericiaの式により補正した平均安静時QT間隔(QTcF)。
b.安静時ECGのリズム、伝導または形態における任意の臨床的に関連する異常(例えば完全左脚ブロック、第3度心ブロック、第2度心ブロック、250ミリ秒を超えるPR間隔)。
c.QTc延長のリスクまたは不整脈イベントのリスクを高める任意の要因(例えば心不全、低カリウム血症、先天性QT延長症候群、一等親血縁者における40歳未満のQT延長症候群もしくは原因不明の急死の家族歴、またはQT間隔を延長することが知られている任意の併用薬)。
【0192】
12)登録前12週間以内の大手術(頭蓋、胸部、腹部、骨盤内の任意の臓器を含む、または関節置換術)。
【0193】
13)長時間のイメージングのために腕を上げた姿勢を取るのを妨げる任意の病態。
【0194】
14)スクリーニング中に68Ga-PET放射性トレーサーがCNSに浸透した証拠(つまり、陽性スキャン)。
【0195】
被験化合物:
・試験化合物(177Lu-PP-F11N)は、集中管理された放射性医薬/製造施設により、予め配合された使用準備済溶液として提供される。注入用溶液は、30~45分かけて約50mL/時間の注入速度で緩徐な静脈内投与として与えられる。チューブを洗うために、生理食塩水を同じ注入速度(50mL/時間を超えない)で並行して注入する。更なる情報は、治験薬管理手順に見ることができる。放射性標識化合物専用のポンプまたは点滴注入(flebo-infusion)システムを使用する。ルテチウム177(177Lu)源を用いてSPECTスキャンを較正する;
・イメージング化合物(68Ga-PP-F11N)は、放射性核種でキレートされるペプチドリガンドを含む前駆体成分と、放射性標識を行うための賦形剤および補助剤を含む調製成分とを含むキットとして提供される。ペプチドリガンド前駆体は、注射用のイメージング化合物の溶液を生成するために、適用され得る現地の規制に従い、現場または中央の放射性医薬施設にて68Gaで放射性標識する必要がある。放射性標識診断薬は、最適な範内(3MBq/kg、最大200MBq)内の活性線量の投与を確実にするために貯蔵寿命内に製造、品質管理、放出および投与される。イメージング化合物の線量は、静脈内ボーラスとして注射される。
【0196】
投与スキーム:
(I)試験化合物( 177 Lu-PP-F11N)
第1a相:試験化合物のイメージング線量(1.85GBq(50mCi))を第1a相に参加する全患者に投与し、放射能分布および線量測定研究を行い、非選択SCLCにおけるCCK2-R発現をマッピングする。投与は患者の登録後1日目に行われる。
【0197】
研究責任者(PI)は、第1a相に参加する患者が線量測定研究の完了後(つまり、28日目±2日の後)に試験化合物の治療線量を受けるのに適格であり得るかを評価し、判断する。適格であれば、患者に最大3回の試験化合物を6週間毎に投与し(+2週間の時間枠が許容される)、第1b相患者と同様に追跡する(下記を参照されたい)。治療アクセスの対象である研究の第1a相パートからの患者は、研究の第1b相パートに参加するのに適格でない。
【0198】
患者に投与される活性線量は、放射性リガンドの物理的減衰(半減期6.65日)に基づき、予定注射日時によって算出される。効果的な注射時間に幾らかの増減が生じ得るため、試験化合物をイメージング線量で投与する場合(診断薬)と治療線量で投与する場合との両方で、実際の注射活性に最大10%の変動が許容され得る。
【0199】
第1b相:スクリーニング期間に入る全ての第1b相患者(コホート4を除く)は、腫瘍生検サンプルの中央分子アッセイによってCCKBR mRNA発現の陽性が確認されなければならない。コホート4のみ、現場で検証された方法により決定されたCCKBR発現が既知の患者。結果は、スポンサーが結果の妥当性を決定し、スクリーニングに対する患者の適格性が確認できるようにしなければならない。
【0200】
治療に適格な患者は、6週間毎に投与される(+2週間の時間枠が許容される)、最大3回の連続治療線量(つまり、最大3回の治療サイクル)を受ける。各サイクルの1日目に約6.5GBqの試験化合物の治療線量を投与する。実際の注射活性線量には最大10%の変動が許容される。
【0201】
確認のための線量測定セットに参加する患者については、3D-定量SPECT-CTをサイクル1の初回投与後にのみ行う。追加のサイクルの線量調節は、個々の線量測定データを用いて行うことができる。
【0202】
同時投薬:治療線量の試験化合物が投与されている患者のみに適用可能。試験化合物の治療線量の投与およびその後14日間に、患者に40mgのパントプラゾール(または線量当量のプロトンポンプ阻害剤[PPI])を投与する。PPI投与が禁忌の患者には、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(例えばラニチジン)を使用することができる。
【0203】
(II)イメージング化合物( 68 Ga-PP-F11N)
スクリーニング中に、全患者に68Ga-PET診断用イメージング化合物を3MBq/kgの線量で投与する(200MBqの最大総線量まで)。試験化合物による治療に適格であるためには、患者は以下のように定義される陽性のイメージング化合物PETイメージングスキャンを有する必要がある:
・放射性トレーサーの取込みを示す、およそ50%の選択標的病変(RECIST V1.1に従う)(疾患負荷を代表する)、ならびに
・肝臓よりも大きな取込みに基づく顕著な(Avid)腫瘍病変、ならびに
・一致した陽性68Ga-PETおよび18F-FDG-PETを示す、腫瘍負荷(RECIST V1.1に従う)を代表する選択腫瘍病変。
【0204】
研究の相、期間および全体的な手順:
(I)第1a相:CCKBR腫瘍状態が不明なSCLC患者が本研究部分に参加し、分子イメージング、線量測定計算およびPK分析のために単一試験化合物イメージング線量(1.85GBq[50mCi])を受ける。イメージングのために試験化合物が投与された全ての患者が、安全性について評価可能である。患者は、イメージング線量の被験薬を受け、少なくとも3時点日において利用可能なSPECTイメージングスキャンを有し、臨床試験結果の解釈を危うくし得る大幅なプロトコル偏差がない場合、線量測定について評価可能である(統計分析計画[SAPを参照されたい])。
【0205】
スクリーニング期間:
スクリーニング評定は、線量測定期間の開始前28日以内に完了する。
【0206】
線量測定期間:
試験化合物を1日目に投与する。1日目に投与される試験化合物のイメージング線量は、投与予定日の少なくとも3週間前(つまり、-21日目±2日)に指示する。線量測定、放射能分布、PKおよびバイオマーカーのサンプリングは、試験化合物の注入後7日間まで行う。
【0207】
-線量測定イメージング:
注入終了後の規定の時点で、注射後7日間にわたって、注入終了から1日目の90分(±30分)および6時間(±2時間)、2日目の24時間(±4時間)、3日目の48時間(±4時間)および7日目(±1日)に疾患位置(少なくとも胸部および腹部を含む)に焦点を合わせた全身3D定量的(Q)SPECT/CT(2または3ベッド位置)を取得する。取得後に、全ての画像を匿名化し、イメージング取得マニュアルに詳述されているように、提供されたイメージングおよび患者データシートとともに安全な環境に送信(アップロード)する。全ての画像を一元的に評価する。追加情報は、イメージング取得マニュアルに見ることができる。
【0208】
-薬物動態評定:放射性リガンド
計画されたSPECT/CTイメージングの前に、薬物注入の対側腕からの尿サンプルおよび血液サンプルを1日目の規定の時点で、続いてその後の各測定日に1回、PK評定のために系統的に採取する。各時点で採取した血液、血漿および尿サンプルのアリコートをガンマカウンターで読み取る。
【0209】
(a)採血:注入前(-1時間から注入開始までの間)、注入終了の5分前(±3分)(=注入中)、続いて注入終了の10分後(±5分)、30分後(±10分)、60分後(±15分)、3時間後(±0.5時間)、6時間後(±1時間)、24時間後(±1時間)および48時間後(±4時間)。
【0210】
(b)採尿:注入前(-1時間から注入開始までの間)の1つの尿サンプルの採取、および以下の時間間隔における全尿の採取:注入開始後0~90分、90分~6時間および6~24時間。各時点で、尿の全量および正確な採取時間を記録する。この多量の尿は、該当する場合、放射性生物学的廃棄物に関する適切な規則に従って処分される。
【0211】
-薬物動態評定:ペプチドリガンド
採取した尿および血漿のアリコートを超低温フリーザーに保管し、代謝産物プロファイリングを行い、無傷ペプチドリガンドおよび任意の最終的な代謝産物のPKおよび尿中への排出を調査する。
【0212】
-薬力学的バイオマーカー:血中SCC関連バイオマーカーの評定:
腫瘍負荷をモニタリングするために、薬物注入の対側腕からの血液サンプルを1日目(注入前)に採取する。治療時に試験化合物が投与された患者(下記を参照されたい)については、該当する場合、サイクル1(7日目および28日目)、サイクル2(1日目[注入前])およびサイクル3(1日目[注入前])中、ならびに治療終了時(EOT)に追加の血液サンプルを採取する。採取した血漿および/または血清のアリコートを超低温フリーザーに保管し、PDyバイオマーカーをさらに分析する。
【0213】
-予測バイオマーカーの評定:
CCK2-Rの発現を分析して、放射性リガンドの腫瘍取込みとの相関の可能性を評価する目的で、患者に試験前の化合物液体生検と、可能であれば腫瘍サンプル(保存または新鮮)とを提供するよう求める。循環腫瘍細胞(CTC)計数も行い、ベースライン時の疾患負荷との関連で分析する。
【0214】
利用可能な生体サンプルにおけるCTC数およびCCK2-R/バイオマーカー発現を再評価するために、治療線量(以下の小節を参照)が投与された患者は、各治療サイクルの終了時(つまり、次のサイクルの投与前の1日目および治療終了時[EOT])にも液体生検を提供する。
【0215】
臨床経過観察:
全ての第1a相患者について、注入1週間後に臨床訪問が行われ、身体検査および安全性/臨床評定が含まれる。
【0216】
患者を試験化合物の注入後4週間にわたって安全性について臨床的にモニタリングする。研究終了時(EOS)訪問は、注入の28日後(±2日)、または患者が別の治療を開始する場合にはそれ以前に行う。
【0217】
第1a相に参加する患者の治療アクセス:
イメージングに基づく線量測定の記録完了後に、第1a相パートの患者は、ケースバイケースで治療線量の試験化合物が投与されるのに適格であるとみなされる場合がある。試験化合物による治療の開始前に、患者は第1b相のインフォームドコンセント用紙(ICF)を読み、理解し、署名することにより、治療計画、リスクおよびプロトコル要件に同意することが求められる。継続的な安全審査が安全審査委員会(SRC)によって行われ、患者の臨床状態および個々の線量測定データに従い、研究者により患者の治療が決定される。各患者に投与される試験化合物の放射線活性線量の計算には、所与の各患者の個々の線量測定データを考慮する。試験化合物による治療は、治療線量を受ける第1b相患者について設計されたのと同じ全体的な計画および評定スケジュールに従う(下記を参照されたい)。
【0218】
試験化合物による治療を開始する可能性がある第1a相の患者は、第1b相セットには登録されていないとみなされる。
【0219】
第1a相の患者の研究参加終了:
患者の研究参加終了は、試験化合物のイメージング線量の注入(EOS訪問)の28日後(±2日)、または被験体が別の治療を開始する場合にはそれ以前のうちいずれか早い方と定義される。
【0220】
試験化合物による治療を受けている患者については、最終来院は、治療線量の試験化合物の注入後、患者が治療期間の終了時のEOS訪問を完了した日(つまり、6週間±2日)、または被験体が別の治療を開始する場合にはそれ以前のうちいずれか早い方によって決まる。
【0221】
(II)第1b相:研究の第1a相パートにおいて6人の患者のうち2人以下が、臨床的に関連する研究治療関連の安全性事象(つまり、投与から4週間でベースラインまで回復していない3以上のNCI-CTCAE v5.0グレード)を示した場合に第1b相を開始する。
【0222】
本研究の第1b相パートへの参加に適格であるためには、上記のような固形腫瘍を有する患者は、コホート4の患者を除き、中央分子アッセイ(プレスクリーニング)によりCCKBR mRNAの陽性発現が事前に確認されていなければならない。コホート4についてのみ、患者は、現場で検証された試験により既知のCCKBR mRNA発現状態を有し、それらの結果に基づいてスポンサーが適格性を確認している必要がある。
【0223】
潜在的に適格な患者は、プレスクリーニング活動(プレスクリーニングICFに記載)に同意する必要がある。プレスクリーニングには保存生検または新鮮生検のいずれかが必要とされる。CCKBR mRNA発現レベルが規定のカットオフレベルを上回ることが確認された場合、患者は研究への参加の提案を受け、インフォームドコンセントへの署名後にスクリーニング手順を受ける。スクリーニング中に、全患者に3MBq/kgの線量イメージング化合物を最大で200MBqの総投与放射能まで投与する。イメージング化合物PETスキャンが陽性の患者は、残り全ての組入れ/除外基準を満たす限りにおいて、試験化合物による研究治療を受けるのに適格とみなされる。
【0224】
陽性のイメージング化合物PETスキャンは、以下のように定義される:
-放射性トレーサーの取込みを示す、およそ50%の選択標的病変(RECIST V1.1に従う)(疾患負荷を代表する)、ならびに
-肝臓より大きな取込みに基づく顕著な腫瘍病変、ならびに
-一致した陽性68Ga-PETおよび18F-FDG-PETを示す選択腫瘍病変。
【0225】
適格患者は、1治療サイクル当たり6.5GBqの投与活性線量の試験化合物による治療を受ける。サイクル2および3について、個々の線量測定データに基づき治療線量の調節を行うことができる。各サイクルは、試験化合物の単回投与からなる。各被験患者には、6週間の間隔を空けて3サイクルまで投与する(+2週間の時間枠が許容される)。
【0226】
1つの腫瘍型につき、試験化合物の投与による治療を最初に受けた最初の連続6人の患者が、線量測定セット集団に入れられる。同じ組織学的腫瘍型と診断された患者が6人超試験に登録された場合、追加の線量測定は行わない。
【0227】
患者に治療線量の試験化合物が投与されたかどうかに関わらず、イメージング化合物の投与を受けた全ての患者が安全性について評価可能である。患者は、少なくとも1つの試験化合物の治療線量が投与され、RECIST V1.1に従う標的病変によるベースラインおよびベースライン後のイメージングに基づく腫瘍評定が行われた場合、抗腫瘍活性について評価可能とみなされる。線量測定について評価可能となるためには、第1b相パートの患者は、少なくとも3つの異なる時点で利用可能なSPECT/CTスキャンを有する必要がある。線量測定について評価可能でない患者は入れ替えない。
【0228】
スクリーニング期間:
患者は、初回の試験化合物の治療線量前28日以内にスクリーニング評定を受ける。全患者に、3MBq/kgの線量(最大総線量200MBqまで)のイメージング化合物を投与する。イメージング化合物の投与後に、全患者をスクリーニング期間の終了まで安全性(つまり、TEAE)について追跡する。イメージング化合物68Ga-PETスキャン後にスクリーニング不合格となった患者は、1週間後に臨床経過観察の一環として評価される。この期間中に18FDG-PET手順を行う。およそ50%の選択標的病変におけるCCK2-R陽性スキャン(RECIST V1.1に従う)が、試験化合物の治療線量を受けるための適格性に必要とされる。
【0229】
陽性のイメージング化合物PETイメージングスキャンが確認された後、試験化合物の治療線量が指示される。
【0230】
治療期間:
-試験化合物の治療線量:
試験化合物による治療に適した患者に、毎回最大6.5GBqを最大3回投与し、6週間の間隔を空けて3回連続の治療サイクルを行う(さらに最大2週間の時間枠が許容される)。現在利用可能な健常器官および組織におけるヒト放射能分布および線量測定データは、決定臓器における総累積放射線吸収量が、最も感受性の高い臓器について推奨される閾値を下回ることが示されるため、試験化合物による治療計画の提案を支持する。
【0231】
試験化合物の初回投与後に、線量測定セット集団に登録された患者において治療1週間目に線量測定評定を行う。
【0232】
第1の試験化合物の治療線量は1日目に投与する。臨床的に関連する関連の安全性事象(つまり、投与から4週間でベースラインまで回復していない3以上のNCI-CTCAE v5.0グレード)が見られない場合、患者は最大2回の追加の試験化合物の治療線量(つまり、合計最大3回の治療線量)を、6週間毎に受けることができる(さらに最大2週間の時間枠が許容される)。
【0233】
各治療サイクルの初日(1日目)に試験化合物を投与した後、患者に40mgのパントプラゾール(または線量当量のPPI)を14日間毎日投与する。PPI投与が禁忌の患者には、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(例えばラニチジン)を使用することができる。
【0234】
前回の投与から4週間でベースラインまで回復していない、臨床的に関連する関連毒性(つまり、3以上のNCI-CTCAE v5.0グレード)が見られる場合、患者は追加投与を受ける(患者内の線量の低減は許容されない)。研究の第1b相パートにおいて2人以上の患者が、上記のような許容不能な毒性により治療線量を受けることができない場合、研究に参加する可能性がある任意の新たな患者について投与線量の30%の低減が行われる。
【0235】
患者は、EOT訪問(つまり、試験化合物の最終投与の6週間後)まで安全性について臨床的にモニタリングされる。腫瘍および健常器官における累積吸収放射線線量の推定に加え、完全な臨床および研究室での評定を行う。
【0236】
-確認線量測定セット:
確認線量測定は、第1b相に登録された患者において初回治療線量の後にのみ行う。1つの腫瘍型につき、サイクル1において試験化合物による治療を受けた最初の連続6人の患者が、線量測定セット集団に入れられる。確認線量測定については、技術的イメージング様式は、腫瘍および健常器官からのシグナルの捕捉を確実にするために、頭蓋骨から大腿中央部までをカバーする全身3D Q-SPECT/CTからなる。関連する全ての手順は、研究の第1a相パートと同一である。
【0237】
試験化合物の注入が終了してから、注入後1日目の6時間(±2時間)、2日目の24時間(±4時間)、3日目の48時間(±4時間)および7日目(±1日)に全身3D Q-SPECT/CT(3ベッド位置)画像を取得する。
【0238】
試験化合物による治療を受けているが、線量測定セット集団に入れられない患者は、注入後2日目の24時間(±4時間)にのみ全身3D Q-SPECT/CTスキャンを受ける。取得後、全ての画像(確認線量測定セット用に取り込まれたものを含む)を匿名化し、イメージングマニュアルに詳述されているように安全な環境に送信(アップロード)する。全ての画像を一元的に評価する。追加情報は、イメージングマニュアルに見ることができる。
【0239】
-腫瘍イメージング:
標準的な形態学的イメージング:試験化合物による治療中、患者が試験化合物の新たな投与を受ける前に腫瘍評定(RECIST v1.1.に従う)を6週間毎に行う。治療の完了後(経過観察期間)、評定を12週間毎に行う。全ての評定は、ベースライン評定中に使用したのと同じ画像様式(コンピュータ断層撮影(CT)/核磁気共鳴画像法(MRI))で行う必要がある。
【0240】
分子イメージング:第1a相に参加する患者について、SPECT/CT画像を以下の時点で取得する:注入終了後1日目の90分(±30分)および6時間(±2時間);2日目の24時間(±4時間);3日目の48時間(±4時間);7日目(±1日)。
【0241】
研究の第1b相パートに参加する全ての患者に、スクリーニングの一環としてイメージング化合物を注射する。試験化合物による治療に適格であるためには、患者は陽性のイメージング化合物PETイメージングスキャンを有する必要がある。イメージングマニュアルに詳述されているように、匿名化した画像を安全な環境に送信(アップロード)する。全ての画像を一元的に評価する。追加情報は、イメージングマニュアルに見ることができる。
【0242】
-薬物動態評定:放射性リガンド
試験化合物の注入ラインを設置した対側腕から採取される血液サンプルは、以下の時点でPK評定のために採取する(計画されたSPECTイメージングの前):
・サイクル1:注入前(-1時間から注入開始までの間)、注入終了の5分前(±3分)(=注入中)、続いて注入終了の10分後(±5分)、30分後(±10分)、60分後(±15分)、3時間後(±0.5時間)、6時間後(±1時間)、24時間後(±1時間)および48時間後(±4時間)。
【0243】
・サイクル2および3:注入終了の5分前(±3分)(=注入中)、ならびに注入終了の20分後(±10分間)および6時間後(±1時間)。
【0244】
少なくとも6人の患者からの血漿サンプルおよび尿を、サイクル1中にPK評定のために以下の時点で採取する:
・血漿採取:注入前(-1時間から注入開始までの間)、注入終了の5分前(±3分)(=注入中)、続いて注入終了の10分後(±5分)、30分後(±10分)、60分後(±15分)、3時間後(±0.5時間)、6時間後(±1時間)、24時間後(±1時間)および48時間後。
【0245】
・採尿:注入前の1つのサンプル(-1時間から注入開始までの間)、ならびに以下の時間間隔における全尿の採取:注入開始後0~90分、90分~6時間および6~24時間。
【0246】
各時点で採取した血液、血漿および尿サンプルのアリコートを、較正ガンマカウンターで読み取る。
【0247】
-薬物動態評定:ペプチドリガンド:
採取した尿および血漿のアリコートを超低温フリーザー(つまり、-65℃以下)に保管し、代謝産物プロファイリングを行い、無傷ペプチドリガンドおよび任意の最終的な代謝産物のPKおよび尿中への排出を調査する。
【0248】
-薬力学的バイオマーカー:血中SCC関連バイオマーカーの評定
コホート1(SCLC)に含まれる患者については、薬物注入の対側腕からの血液サンプルをサイクル1の1日目(注入前)、該当する場合、サイクル1(7日目および28日目)、サイクル2(1日目[注入前])およびサイクル3(1日目[注入前])中、ならびにEOT時に採取する。採取した血漿および/または血清のアリコートを超低温フリーザーに保管し、PDyバイオマーカーをさらに分析する。
【0249】
-予測バイオマーカー研究
患者に試験前の化合物血液サンプルを提供するよう求める。腫瘍遺伝子変異量(TMB)および他のバイオマーカーも血液サンプルにおいて評定する。
【0250】
患者に任意の生検手順を受けるよう依頼する。新たに取得された腫瘍生検を、CCKBRを含むが、これに限定されない関連遺伝子のmRNA発現、および放射性リガンド腫瘍取込みとの相関の可能性の分析に利用する。生検の取得は必須ではなく、それに同意しない患者が研究に参加できなくするものではない。
【0251】
患者はまた、試験化合物の抗腫瘍活性、TMBおよび他のバイオマーカーの相関の可能性を調査するために、投与前の各治療サイクルの開始時(つまり、各サイクルの1日目の投与前)およびEOT時に血液サンプルを提供するよう求められる。
【0252】
治療:
第1b相に参加する全ての患者は、身体検査および安全性/臨床評定を含む、治療剤の注入後の定期的な訪問により経過観察される。加えて、確認線量測定セットに参加する患者は、治療投与後1週間にわたって特定のイメージングおよび生物学的サンプリング計画に従う。
【0253】
最後の治療線量の6週間後に、ベースライン時と同じイメージング様式および手順条件を用いた疾患評定を含むEOT訪問を行う。EOT訪問は、患者が別の療法を開始する必要がある場合には、いずれの場合も任意の新たな抗腫瘍療法を行う前に実施する必要がある。
【0254】
全ての患者を身体検査、バイタルサイン、ECG、血液学を含む研究室での評定、血液化学および尿検査に基づき、安全性および忍容性について評価する。これらの試験は、評定スケジュールに従って行われる。安全性は、NCI-CTCAE v5.0に従って等級分けされる。腎臓、骨髄および腹部内臓を含む放射線感受性の可能性がある決定臓器には特に注意が払われる。
【0255】
経過観察:
EOT訪問後に、疾患進行、新たな抗癌治療の開始、死亡、または研究対象の最後の患者のEOT訪問から6ヶ月のうちいずれか早い時点まで3ヶ月毎の定期的な訪問により、全ての患者を有効性および安全性について経過観察する。イメージングに基づく腫瘍評定は、FU訪問の前週に行う必要がある。
【0256】
第1b相のEOS:
個々の患者レベルでのEOSは、疾患進行、死亡、または研究対象の最後の患者のEOT訪問から6ヶ月のうちいずれか早い時点で起こる。死亡の場合を除き、患者はEOS評定を受ける。
【0257】
全体的なEOSは、研究対象の最後の患者がEOT訪問から6ヶ月に達した時点で行われる。この時点で、それまで研究を早期に中断しなかった全ての患者がEOS評定を受け、研究を完了したとみなされる。
【0258】
統計方法:
スクリーニング期間:
データは記述的に報告されるため、正式な統計的サンプルサイズの算出は必要でない:
第1a相:6人の評価可能な患者。評価可能な患者とは、イメージング線量で被験薬投与を受け、異なる日の少なくとも3つの時点で利用可能なSPECTイメージングスキャンを有する患者と定義される。さらに、患者は臨床試験結果の解釈を危うくし得る大幅なプロトコル偏差を有していてはならない。
【0259】
第1b相:最大20人の評価可能なSCLC患者、最大20人の評価可能なGIST患者、バスケットコホート(CRC、BCおよびNSCLC)に入れられる最大30人の評価可能な患者、およびコホート4に登録された他の腫瘍型を有する最大10人の評価可能な患者。評価可能な患者とは、治療線量で被験薬投与を受け、ベースラインおよびベースライン後のイメージングに基づく腫瘍評定を有し、大幅なプロトコル偏差を有しない患者と定義される。線量測定について評価可能な患者は、少なくとも3つの時点で利用可能なSPECT/CTスキャンを有し、臨床試験結果の解釈を危うくし得る大幅なプロトコル偏差を有していてはならない。
【0260】
およそ80人の評価可能な患者を第1b相に登録するために、最大160人の患者がスクリーニングされ得ることが予想される。
【0261】
分析のタイミング:
以下の分析を計画する:
1.第1a相に登録された全患者が本研究パートへの参加を完了した時点、EOT訪問時点、または研究を中断した時点。
【0262】
2.第1b相の確認線量測定セットの全患者が線量測定評定を完了した時点。
【0263】
3.第1b相コホートについては、
1.コホート1:6人の患者がEOT訪問を完了した時点
2.コホート2:6人の患者がEOT訪問を完了した時点
3.コホート3:1つの腫瘍型につき、6人の患者がEOT訪問を完了した時点
4.コホート4:10人の患者がEOT訪問を完了した時点
【0264】
4.最終分析は、研究に登録された全患者がEOS訪問を完了した時点、または研究を中断した時点で行われる。
【0265】
安全性分析:
以下の分析を計画する:
TEAEは、NCI-CTCAE v5.0を用いて等級分けされる。TEAE、関連TEAE、70歳までのTEAE、治療中断/変更につながるTEAE、および重篤有害事象(SAE)を表にし、MedDRA器官別大分類および優先使用語によって挙げる。あらゆる研究時の死亡および理由を挙げる。安全性の研究室パラメーターおよびベースラインからの変化は、相別および時点別に記述統計として提示する。シフト表を提示する。
【0266】
有効性分析:
RECIST v1.1に基づく疾患評定および抗腫瘍活性は、評価可能な全患者について記述統計で提示する。
【0267】
他の分析:
-試験化合物のイメージング線量が投与された第1a相の患者および第1b相の確認線量測定セットに含まれるSCLC患者に基づく包括的な線量測定分析。
【0268】
-腫瘍型別に分離した、SCLC以外の腫瘍を有する患者からの追加の線量測定分析。
【0269】
-研究に登録された全患者の正常な健常器官からのプールした線量測定データ。
【0270】
-第1a相からのプールした腫瘍線量測定データ(吸収線量)に基づく、第1b相のコホート1(SCLC)の推奨治療線量の推定。
【0271】
安全監視:
研究の第1a相パートを行う間、SRCが全患者における試験化合物注入(該当する場合、診断薬および治療)の安全性および忍容性を個別に評価する。SRCは、臨床腫瘍医、核医学医、およびスポンサーの医療ディレクター、ファーマコビジランス(PV)担当者、および生物統計学者を含む参加研究者から構成される。更なる専門的知識が必要な場合、適切な支援スタッフを会議に招くことができる。SRCの役割および責任、ならびに会議の形式および頻度に関する詳細は、SRCの憲章に規定されている。
【0272】
研究の第1b相パートを行う間、SRCは3ヶ月毎に会議を開き、イメージング化合物および試験化合物が投与された患者群を分析し、必要と判断される場合には勧告を行う。
図1
【国際調査報告】