(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】敗血症の早期検出のためのMR-proADMマーカーパネル
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241008BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519284
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077015
(87)【国際公開番号】W WO2023052446
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】グリューネバルト,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ヴィクトル・ヨハン・ラウル
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ホルタイ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ベクマイヤー,ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】ビーンヒューズ-テレン,ウルスラ-ヘンリケ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB03
(57)【要約】
本発明は、診断の分野に関する。具体的には、本発明は、感染が疑われる対象を評定するための方法であって、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーが、MR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程、バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに比較および/または計算に基づいて前記対象を評定する工程、を含む、方法に関する。本発明はまた、MR-proADMである第1のバイオマーカーならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染が疑われる対象を評定するための使用に関する。さらに、本発明は、感染が疑われる対象を評定するためのコンピュータ実装方法、ならびに感染が疑われる対象を評定するためのデバイスおよびキットに更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染が疑われる対象を評定するための方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーがMR-proADMである、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程、
(c)前記バイオマーカーの前記量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの前記量に基づいて感染が疑われる前記対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(b)において、
(i)GDF-15の前記量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼまたはアラニンアミノトランスフェラーゼの前記量を第3のバイオマーカーとして決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、救急部に来院している対象である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記評定が、敗血症を発症するリスクの評定、および/または前記対象の状態が悪化するリスクの評定である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準が、敗血症を発症するリスクがあることが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーの各々についての量が、対応する前記基準と本質的に同一であるかもしくは類似していることが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示し、前記バイオマーカーの各々についての量が、対応する前記基準とは異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示し、
かつ/または
前記基準が、敗血症を発症するリスクがないことが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似していることが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示し、前記バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示す、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、感染症に罹患しているか、または感染症に罹患していることが疑われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、血液試料もしくはそれに由来する試料(血液または血漿等)であり、かつ/または前記対象がヒトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
感染が疑われる対象を評定するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第1のバイオマーカーがMR-proADMである、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(c)前記バイオマーカーの前記量についての前記値を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの前記量に基づいて感染が疑われる前記対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評定する工程
を含み、
任意に、工程(b)において、
(i)GDF-15の前記量についての前記値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることを更に含む、コンピュータ実装方法。
【請求項9】
感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、
(a)前記対象の試料中のMR-proADMである第1のバイオマーカーと、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーに対する検出システムを含む、測定ユニットと、
(b)前記測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは請求項1~7のいずれか一項に記載されるような前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは請求項1~7のいずれか一項に記載されるような前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの前記量と基準との比較を実行するための、および/または前記バイオマーカーの前記量に基づいて感染が疑われる前記対象を評定するためのスコアの計算を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を含み、前記バイオマーカーの前記量についての値を前記測定ユニットから自動的に受け取ることができる、評価ユニットと
を含み、
任意に、前記測定ユニットが、第3のバイオマーカーを決定し、かつ第3のバイオマーカーに対する検出システムを含み、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、デバイス。
【請求項10】
前記検出システムが、前記バイオマーカーの各々を特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、MR-proADMである第1のバイオマーカーならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーについての保存された基準を有する、データベースと、好ましくは請求項1~8のいずれか一項に記載されるような前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの前記量と基準との比較を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を含む評価ユニットであって、前記対象の試料中で決定された前記バイオマーカーの前記量についての値を受け取ることができる、評価ユニットを含み、
任意に、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、
デバイス。
【請求項12】
MR-proADMである第1のバイオマーカーならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染が疑われる対象を評定するための使用。
【請求項13】
第3のバイオマーカーまたは前記第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
MR-proADMである第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染が疑われる対象を評定するためのキットであって、
任意に、前記キットが、第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤を更に含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、
キット。
【請求項15】
前記評定が、敗血症を発症するリスクの評定である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法、デバイス、使用またはキット。
【請求項16】
48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、デバイス、使用またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断の分野に関する。具体的には、本発明は、感染が疑われる対象を評定するための方法であって、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、当該第1のバイオマーカーが、MR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、当該第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程、バイオマーカーの量を当該バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに比較および/または計算に基づいて当該対象を評定する工程、を含む、方法に関する。本発明はまた、MR-proADMである第1のバイオマーカー、ならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカー、または当該第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および当該第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染が疑われる対象を評定するための使用に関する。さらに、本発明は、感染が疑われる対象を評定するためのコンピュータ実装方法、ならびに感染が疑われる対象を評定するためのデバイスおよびキットにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症、特に、そのより重度の徴候および症候を有する患者、例えば救急処置室に運ばれた患者において起こる感染症は、全身炎症反応症候群(SIRS)および敗血症を含む生命をより脅かす医学的症状に発展する場合がある。
【0003】
敗血症-3の定義によれば、敗血症は、感染症に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全として定義される。敗血症は急速に発症するため、早期の認識が、敗血症患者の管理、ならびに、入院の最初の1時間以内の適切な抗生物質治療、ならびに静脈内流体および血管作動性薬物を用いた蘇生の開始を含む正しい治療的措置の開始のために重要である(surviving sepsis campaign guidelines 2016)。1時間ごとの遅延は、罹患率および死亡率を徐々に増加させる。
【0004】
敗血症の診断は、非特異的であり、容易に見落とさる可能性がある臨床的徴候および症候に基づく。したがって、患者はしばしば誤診され、疾患の重症度は過小評価されることが多い。総合部門および特に救急部においてこれまで敗血症の診断のためのゴールドスタンダードはない。高所得国において、C反応性タンパク質(CRP)、プロカルシトニン(PCT)および白血球(WBC)カウントは、敗血症性ショックの検出のためのラクテートと共に、敗血症の発症のリスクがある血流感染症を有する患者の検出のために救急処置室において多くの場合に使用されている。低所得国において、診断は大抵、臨床徴候および症候、ならびにいくつかの事例においてSIRSおよびSOFA基準に基づく。しかしながら、ほとんどの現行のガイドラインにおいて、ラクテートの他に、(臨床化学、BGEおよびSOFAスコアの血液学的成分の例外と共に)敗血症を診断するためのバイオマーカーは列記されていない。PCTは、抗生物質療法を潜在的に緩和するためにのみ推奨されているが、証拠は中程度である。敗血症診断におけるPCTの制限は主に中程度の感度および特異性である。
【0005】
国際公開第2007/009071号は、sFlt-1に基づいて検査対象における炎症応答を診断する方法を開示している。開示される方法は、VEGF、PlGF、TNF-α、IL-6、D-ダイマー、P-セレクチン、ICAM-I、VCAM-I、Cox-2、またはPAI-Iの少なくとも1つのレベルを分析することを更に含む。
【0006】
EP 2 174 143号B1は、感染症ではない原発性疾患を有する患者の予後診断のためのin vitro方法であって、プロカルシトニンのレベルを決定することを含む、方法を開示している。
【0007】
数多くのマーカーが、敗血症の検出または診断のために有用であると示唆されている。これらには、数ある中でも、PCT、プレセプシン、GDF-15、sFLT、CRPもしくはインターロイキンなどの炎症マーカー、または臓器不全に特異的なマーカーが含まれる(例えば、Spanuth,2014,Comparison of sCD14-ST(рresepsin)with еight biomarkers for mortality prediction in patients admitted with acute heart failure,2014 AACC Annual Meeting Abstracts.B-331;van Engelen,2018,Crit Care Clin 34(1):139-152.を参照)。
【0008】
国際公開第2015/031996号は、病気に対する危機的なもしくは生命を脅かす応答および/または処置応答の早期判定用のバイオマーカーを記載している。
【0009】
しかしながら、感染症の徴候および症候を呈する患者の信頼できるかつ早期の評定を可能とするバイオマーカーが依然として必要とされている。
【0010】
したがって、本発明は、これらの必要性に適合する手段および方法を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、感染が疑われる対象を評定するための方法であって、
(a)対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、当該第1のバイオマーカーがMR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程、
(b)対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、当該第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程、
(c)バイオマーカーの量を当該バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた比較および/または計算に基づいて当該対象を評定する工程
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および請求項において使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、それが使用される文脈に依存して、1つ以上を意味することができることが理解されるべきである。したがって、例えば、「1つの(an)」要素(item)への言及は、少なくとも1つの要素が利用され得ることを意味することができる。
【0013】
以下で使用されるように、「有する(have)」、「含む(comprise)」、もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的に使用される。よって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴に加えて、この文脈で説明されている存在物に更なる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との両方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独でかつ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、更には更なる要素等、1つ以上の更なる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。「含む(comprising)」という用語は、言及される項目のみが存在する実施形態も包含する、すなわち、「からなる(consisting of)」という意味で限定的な意味を有する。
【0014】
さらに、以下で使用するとき、「特に」、「より詳細には」、「典型的には」、および「より典型的には」という用語、または類似の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加/代替の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、追加の/代替の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者であれば理解できるとおり、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の一実施形態において」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の態様に関する制限なしに、本発明の範囲に関する制限なしに、およびそのように導入された特徴を本発明の他の追加の/代替のまたは非追加の/代替の特徴と組み合わせる可能性に関する制限なしに、追加の/代替の特徴であることが意図される。
【0015】
さらに、本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」という用語は、この用語に続いて言及される項目の1つ以上が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されよう。例えば、この用語が、少なくとも1つのサンプリングユニットが使用されるべきであることを示す場合、これは、1つのサンプリングユニットまたは2つ以上のサンプリングユニット、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つまたは任意の他の数として理解され得る。この用語が言及する項目に応じて、当業者は、上限が存在する場合、この用語がどの上限を指し得るかについて理解する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当該用語の後に記載された任意の数に関して、その中で技術的効果を達成することができる区間精度が存在することを意味する。したがって、約は、本明細書で言及される場合、好ましくは、正確な数値または±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、もしくは更により好ましくは±5%の当該正確な数値の周りの範囲を指す。
【0017】
さらに、明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも時系列的なまたは経時的な順序を記載するために使用されるものではない。
【0018】
本発明の方法は、上述の工程からなり得、または工程(d)で得られた評定の更なる評価のための工程、処置等の治療措置を推奨する工程等の追加の工程を含み得る。さらに、本発明の方法は、試料の前処理に関する工程等の工程(a)より前の工程を含み得る。しかしながら、好ましくは、上述の方法は、ヒトまたは動物の身体に対して実施されるいかなる工程も必要としないエクスビボ方法であることが想定される。さらに、本方法は、自動化によって補助され得る。典型的には、バイオマーカーの決定はロボット機器によって支援され得、比較および評定はコンピュータ等のデータ処理機器によって支援され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「評定する」という用語は、対象が敗血症に罹患しているかどうか、敗血症に罹患するリスクがあるかどうか、全体的な健康状態に関して、または敗血症もしくは敗血症および/もしくは感染に伴う徴候および症候に関して悪化する医学的症状を示すかどうかを評定することを指す。したがって、本明細書で使用される場合、評定するは、敗血症を診断すること、敗血症を発症するリスクを予測すること、ならびに/または特に敗血症および/もしくは感染に伴う徴候および症候に関して、対象の健康状態の任意の悪化を予測することを含む。典型的には、本発明にしたがって言及される評定は、敗血症を発症するリスクの評定(およびそのため敗血症を発症するリスクの予測)である。あるいは、評定は、対象の(健康)症状が悪化するリスクの予測である。さらに、敗血症を発症するリスクまたは健康状態の悪化のリスクが予測される場合、典型的には、予測は予測ウィンドウ内で実行されることが理解されるであろう。より典型的には、当該予測ウィンドウは、好ましくは、試料が得られた、約8時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約48時間、特に少なくとも約48時間後である。さらに、好ましくは試験試料が得られた、24または48時間後以内に、敗血症を発症するリスクが予測されてもよい。
【0020】
一実施形態において、24時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される。
【0021】
代替的な実施形態において、48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される。
【0022】
48時間の期間を実施例のセクションで分析した。
【0023】
更に別の実施形態において、評定は、対象の(健康)症状が将来的に悪化するのか否かのリスクの予測である。感染症に罹患していることが疑われる、かつ/または感染症に罹患している対象の「症状の悪化」という用語は、当業者によりよく理解されている。この用語は、典型的には、最終的に更なる投薬またはその他の介入をもたらし得る症状の悪化に関する。
【0024】
好ましくは、対象の疾患重症度が増加する場合、対象の抗生物質療法が強化される場合、対象がより高いレベルのケアのためにICUもしくは別のユニットに入院する場合、対象が緊急手術を必要とする場合、対象が病院で死亡する場合、対象が入院の30日以内に死亡する場合、対象が退院の30日以内に再入院する場合、対象が、例えばSOFAスコアで測定された場合に臓器機能不全もしくは不全を経験する場合、および/または対象が臓器支援を必要とする場合に、対象の症状は悪化する。
【0025】
当業者は、対象の症状が悪化しない場合を理解する。典型的には、対象が前の段落に挙げた結果を有さない場合、対象の症状は悪化しない。
【0026】
一実施形態において、対象が以下の転帰のうちの1つ以上を有する場合、対象の症状は悪化する:対象がICUに入院した場合、対象が病院で死亡する場合、対象が入院の30日以内に死亡する場合、および/または対象が退院の30日以内に再入院する場合。
【0027】
一実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、対象の抗生物質療法が強化されるリスクの予測である。
【0028】
一実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、ICUに入れられる対象のリスクの予測である。したがって、対象がICUに入れられるリスクがあるか否かが評定される。
【0029】
別の実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、病院で死亡する対象のリスクの予測である。したがって、対象が病院で死亡するリスクがあるか否かが評定される。
【0030】
更に別の実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、入院の30日以内の死の対象のリスクの予測である。したがって、対象が病院への入院の30日以内に死亡するリスクがあるか否かが評定される。
【0031】
更に別の実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、退院の30日以内の再入院の対象のリスクの予測である。したがって、対象が退院の30日以内に再入院するリスクがあるか否かが評定される。
【0032】
更に別の実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、対象が臓器機能不全または臓器不全を経験するリスクの予測である。臓器機能不全および臓器不全は、例えば、SOFAスコアを介して評定され得る。したがって、本発明は更に、(試験試料が得られた後に)対象のSOFAスコアが増加するか、否かというリスクの予測に関する。(少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点または少なくとも4点等の)SOFAスコアの増加は、症状の悪化と考えられる。対照的に、SOFAスコアが増加しない場合(但し、対象は最も高いSOFAスコアを有しない)に、症状は典型的には悪化しない。予測ウィンドウは、敗血症を発症するリスクの予測のために上記されている予測ウィンドウであってもよい。
【0033】
逐次的臓器不全評価(sequential organ failure assessment;SOFA)は、臓器機能障害/不全を定量的に記載する、臨床的な評定および実験室測定値を組み合わせた検証されたスコアである。呼吸、凝固、肝臓、心血管系、中枢神経系および腎臓の機能不全が個々にスコア化され、合算されて、0から24の範囲のSOFAスコアを得る。好ましくは、SOFAスコアは、Vincent 1996(Vincent et al.Intensive Care Med.1996 Jul;22(7):707-10.doi:10.1007/BF01709751.PMID:8844239に記載されるように決定される。
【0034】
さらに別の実施形態において、対象の症状が悪化するリスクの予測は、対象が臓器サポートを要求するリスクの予測、例えば対象が血管作動薬治療、血行動態サポート(例えば輸液治療)、酸素供給(例えば換気もしくは体外膜型人工肺によるもの)、および/または腎臓置換治療を要求するリスクの予測である。予測ウィンドウは、例えば試料が得られてから24時間または48時間後に敗血症を発症するリスクを予測するための上記の予測ウィンドウであり得る。
【0035】
一実施形態において、「評定」という用語は敗血症の診断を指す。したがって、感染が疑われる対象が敗血症に罹患しているか否かが診断される。好ましくは、評定は敗血症の早期検出を指す。
【0036】
当業者によって理解されるように、本発明に従って行われる評定は、調査された対象の100%に対して正しいことが好ましいが、通常、100%正しくないことがある。この用語は、典型的には、対象の統計学的に有意な部分が正確に評定され得ることを要求する。部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定等を使用して、当業者によって更に難なく決定され得る。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出され得る。典型的には、想定される信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、典型的には、0.2、0.1、0.05である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より典型的にはヒトを指す。本発明の方法により調べられる対象は、感染が疑われる対象である。「感染が疑われる」という用語は、本明細書で使用される場合、対象が、感染症の臨床的なパラメータ、徴候および/または症候を呈することを意味する。したがって、本発明による対象は、典型的には、感染症に罹患しているか、または感染症に罹患していることが疑われる対象である。典型的には、対象は、救急部に来院している対象である。有利には、試料は診察時に得られている。好ましくは、試料は、救急部での診察時に得られている。しかしながら、試料はまた、プライマリケア医での診断時に取得され得る。
【0038】
「試料」という用語は、本明細書で使用される場合、生理学的条件下で本明細書において言及される第1、第2および/または第3のバイオマーカーを含む任意の試料を指す。より典型的には、試料は、体液試料、例えば血液試料もしくはそれに由来する試料、尿試料、唾液試料、またはリンパ液試料等である。最も典型的には、当該試料は血液試料または血液試料に由来する試料である。したがって、試料は、血液、血清または血漿試料であり得る。血液試料は、典型的には、毛細血管、静脈または動脈の血液試料を含む。一実施形態において、試料は間質液試料である。
【0039】
「敗血症」という用語は当技術分野で周知である。本明細書で使用される場合、この用語は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全を指す。敗血症の定義は、例えば、Singer et al.(Sepsis-3 The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock.JAMA 2016;315:801-819)に見出すことができ、これは本開示内容全体に関して参照により組み込まれる。好ましくは、「敗血症」という用語は、Singer et al.(loc.cit.)において開示されているSepsis-3定義による敗血症を指す。
【0040】
典型的には、試験される対象は、感染症に罹患していることが疑われる対象である。「感染」という用語は、当業者にはよく理解されている。本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、好ましくは、疾患を引き起こす微生物による対象の身体組織の浸潤、その増殖および微生物に対する対象の組織の反応を指す。一実施形態において、感染症は細菌感染症である。したがって、対象は細菌感染に罹患している疑いがある。
【0041】
本明細書の他の箇所に記載されるように、本発明は、リスクのある患者の早期の特定を可能にする。したがって、本明細書に記載される予測の一実施形態において、試験される対象は、試料が得られた時点で敗血症に罹患していない。特に好ましい実施形態において、試験される対象は、好ましくは、試料が得られる時点で敗血症性ショックに罹患していない。「敗血症性ショック」という用語は、Singer et al.(と同じ文献)において定義されている。したがって、以下の基準が満たされれば、対象は敗血症性ショックに罹患している。
● 敗血症、すなわち感染の疑い/感染の記録、及び感染の結果として2点以上の総SOFAスコアの変化
● 及び十分な量の蘇生にもかかわらず、MAP≧65mmHgを維持するために昇圧薬を必要とし、かつ血清乳酸レベル>2mmol/L(18mg/dL)を有する持続性低血圧
【0042】
さらに、試験される対象は、SARS-CoV-2による感染に罹患していてもよく、または罹患していなくてもよいことが想定される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「決定する」という用語は、本発明に従って言及されるバイオマーカーの定性的および定量的決定を指し、すなわち、本用語は、当該バイオマーカーの存在もしくは非存在の決定または絶対量もしくは相対量の決定を包含する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、本明細書で言及される化合物の絶対量、当該化合物の相対量または濃度の他、それらと相関するかまたはそれらから誘導することができる任意の値またはパラメータを指す。このような値またはパラメータは、直接的な測定により当該化合物から得られる、すべての具体的な物理的または化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。更に、本明細書の他の箇所で明示される間接測定により得られる値またはパラメータすべて、例えば、特異的に結合したリガンドから得られる化合物または強度シグナルに応答して生物学的読み出しシステムにより決定される応答レベルが包含される。上述の量またはパラメータと相関する値は、すべての標準的な数学的演算によっても取得され得るということを理解されたい。バイオマーカーが、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTまたはASAT)等の酵素である場合、「量」という用語は、酵素の活性も包含し得る。
【0045】
本発明の方法における量の決定は、第1の分子からの第2の分子の放出時に、当該第2の分子の存在もしくは非存在または量を検出することを可能にする任意の技術によって実施され得る。適切な技術は、分子の性質およびバイオマーカーの特性に依存し、本明細書の他の箇所でより詳細に論じられる。
【0046】
典型的には、本発明に従って言及されるバイオマーカーの量は、サンドイッチ、競合または他のアッセイ形式を使用するイムノアッセイによって決定され得る。当該アッセイは、バイオマーカーの存在もしくは非存在または量を示すシグナルを発生する。更に適切な方法は、その正確な分子質量またはNMRスペクトル等のバイオマーカーに特異的な物理的または化学的特性を測定することを含む。当該方法は、好ましくは、バイオセンサー、免疫学的検定法と連関した光学装置、バイオチップ、質量分析計、NMR分析機、表面プラズモン共鳴測定機器またはクロマトグラフィーデバイス等の分析装置を含む。さらに、方法は、マイクロプレートELISAベースの方法、完全に自動化されたまたはロボット式イムノアッセイ(例えば、Rocheから入手可能)を含む。本発明による適切な測定方法はまた、沈降(特には免疫沈降)、電気化学発光(電気生成化学発光)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(ECLIA)、解離増強ランタニドフルオロイムノアッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、比濁法、比濁分析、ラテックス増強比濁法もしくは比濁分析、または固相免疫試験を含み得る。当技術分野において公知の更なる方法、例えばゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)またはウエスタンブロッティングがある。より典型的には、本明細書において言及されるバイオマーカーを決定するために特に想定される技術は、以下の付随する実施例において記載される。
【0047】
本発明に従って決定されるバイオマーカーは、当技術分野で周知である。さらに、バイオマーカーの量を決定するための方法は公知である。例えば、バイオマーカーは、実施例セクションに記載されるように測定され得る(実施例1を参照)。試験されるバイオマーカーの一部は酵素(例えばアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)である。これらのバイオマーカーの量はまた、試料中の当該酵素の活性を決定することにより決定され得る。
【0048】
バイオマーカーの中間領域プロアドレノメデュリン(MRproADM)は、当技術分野で周知である。バイオマーカーは敗血症のマーカーとして提案されている(Christ-Crain,M.,Morgenthaler,N.G.,Struck,J.et al.Mid-regional pro-adrenomedullin as a prognostic marker in sepsis:an observational study.Crit Care 9,R816(2005).https://doi.org/10.1186/cc3885)。MR-proADMは、proADM分子に由来する48アミノ酸長の断片であって、アドレノメデュリン(AM)と1:1の比である断片である。したがって、MR-proADMの量は、アドレノメデュリンの量および活性を表す。AM(アドレノメデュリン)およびPAMP(プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド)は、強力な降圧剤および血管拡張剤である。体液および電解質の恒常性の生理学的制御に最も関連する多くの作用が報告されている
【0049】
「増殖分化因子-15」または「GDF-15」という用語は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-サイトカインスーパーファミリーのメンバーであるポリペプチドに関する。ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。GDF-15は、最初はマクロファージ阻害性サイトカイン1としてクローニングされ、その後、胎盤形質転換成長因子-15、胎盤骨形成タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子1、および前立腺由来因子としても同定された(Bootcov loc cit;Hromas,1997 Biochim Biophys Acta 1354:40-44;Lawton 1997,Gene 203:17-26;Yokoyama-Kobayashi 1997,J Biochem(Tokyo),122:622-626;Paralkar 1998,J Biol Chem 273:13760-13767)。GDF-15のアミノ酸配列は、国際公開第99/06445、国際公開第00/70051号、国際公開第2005/113585等、Bottner 1999,Gene 237:105-111,Bootcov loc.cit,Tan loc.cit.,Baek 2001,Mol Pharmacol 59:901-908,Hromas loc cit,Paralkar loc cit,Morrish 1996,Placenta 17:431-441に開示されている。
【0050】
バイオマーカー内皮細胞特異的分子1(ESM-1と略記する)は当該技術分野でよく知られている。バイオマーカーは、しばしばエンドカンとも呼ばれる。ESM-1は分泌タンパク質であり、主にヒトの肺および腎臓組織の内皮細胞で発現される。パブリックドメインのデータは、甲状腺、肺、腎臓だけでなく、心臓組織でも発現することを示唆している。例えばProtein Atlas database(Uhlen M.et al.,Science 2015;347(6220):1260419)のESM-1のエントリーを参照されたい。この遺伝子の発現はサイトカインによって調節されている。ESM-1は、20kDaの成熟ポリペプチドと30kDaのO-結合型グリカン鎖で構成されるプロテオグリカンである(Bechard D et al.,J Biol Chem 2001;276(51):48341-48349)。本発明の好ましい実施形態において、ヒトESM-1ポリペプチドの量は、対象からの試料において決定される。ヒトESM-1ポリペプチドの配列は当技術分野で周知であり(例えば、Lassale P.et al.,J.Biol.Chem.1996;271:20458-20464を参照されたい、例えば、Uniprotデータベースを介して評定することができ、エントリーQ9NQ30(ESM1_HUMAN)を参照されたい。ESM-1の2つのアイソフォームは、選択的スプライシングによって生成され、アイソフォーム1(Uniprot識別子Q9NQ30-1を有する)およびアイソフォーム2(Uniprot識別子Q9NQ30-2を有する)である。アイソフォーム1は、長さ184アミノ酸である。アイソフォーム2では、アイソフォーム1のアミノ酸101から150が欠損している。アミノ酸1から19は、シグナルペプチドを形成する(該シグナルペプチドは切断され得る)。
【0051】
好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム1の量が決定され、すなわち、アイソフォーム1はUniProt受入番号Q9NQ30-1の下に示されるような配列を有する。
【0052】
別の好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム2の量が決定され、すなわち、アイソフォーム2はUniProtアクセッション番号Q9NQ30-2の下に示されるような配列を有する。
【0053】
別の好ましい実施形態において、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム-1およびアイソフォーム2の量、すなわち総ESM-1が決定される。
【0054】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTまたはASAT)は、L-アスパラギン酸からα-ケトグルタル酸へのアミノ基転移を触媒して、L-グルタミン酸およびオキサロ酢酸を形成させる。形成されるオキサロ酢酸は、還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の同時の酸化と共にリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)によりリンゴ酸に還元される。NADへのNADHの変換に起因する経時的な吸光度における変化は、AST活性に正比例しており、例えば二色性(340nm、700nm)レート(bichromatic rate)技術を使用して測定され得る。
【0055】
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)は、α-ケトグルタル酸(α-KG)へのL-アラニンのアミノ基転移を触媒して、L-グルタミン酸およびピルビン酸を形成させる。形成されるピルビン酸は、還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の同時の酸化と共に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)により乳酸に還元される。吸光度における変化は、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性に正比例しており、例えば二色性(340nm、700nm)レート技術を使用して測定され得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「可溶性Flt-1」または「sFlt-1」(「可溶性fms様チロシンキナーゼ-1」の略語)という用語は、好ましくは、VEGF受容体Flt1の可溶性形態であるポリペプチドを指す。可溶性Flt-1は、ヒト臍帯静脈内皮細胞の馴化培養培地中に同定された。内因性可溶性Flt1(sFlt-1)受容体は、クロマトグラフィーおよび免疫学的に、組換えヒトsFlt-1と類似しており、同等の高親和性で[125I]VEGFを結合する。ヒトsFlt-1は、in vitroでKDR/Flk-1の細胞外ドメインと、VEGFで安定化された複合体を形成することが示されている。好ましくは、sFlt-1は、Kendall 1996,Biochem Biophs Res Commun 226(2):324-328に記載されているヒトsFlt-1を指す(アミノ酸配列については、例えば、ヒトについてはP17948,GI:125361およびマウスsFlt-1についてはBAA24499.1、GI:2809071も参照されたい)。
【0057】
本発明による方法において、第3のバイオマーカーが決定されてもよい。特に、本発明の方法の工程(b)において、
(i)GDF-15の量が第2のバイオマーカーとして決定される場合、方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することを更に含む。
【0058】
そのため、本発明は、少なくとも2つのバイオマーカー(すなわち本明細書において言及されている第1および第2のバイオマーカー)、または少なくとも3つのバイオマーカー(すなわち本明細書において言及されている第1、第2および第3のバイオマーカー)の決定に関する。
【0059】
第1のバイオマーカーはMR-proADMである。第2のバイオマーカーは、sFlt-1、GDF15およびESM1から選択されるものとする。
【0060】
一実施形態において、第2のバイオマーカーはGDF-15である。
【0061】
代替的な実施形態において、第2のバイオマーカーはsFlt1である。
【0062】
代替的な実施形態において、第2のバイオマーカーはESM1である。
【0063】
GDF-15が第2のマーカーである場合、方法は、第3のバイオマーカーとしてアラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量を決定することをさらに含み得る。一実施形態において、MR-proADM、GDF-15およびアラニンアミノトランスフェラーゼが決定される。
【0064】
代替的な実施形態において、MR-proADM、GDF-15およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが決定される。
【0065】
本発明は上記のマーカーに限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明は、追加のマーカーの決定を包含してもよい。
【0066】
「基準」の用語は、本明細書で使用される場合、疾患もしくは症状に罹患しているか、もしくはそれを発症するリスクがある対象の群、または当該疾患もしくは症状に罹患していないか、もしくはそれを発症するリスクがない対象の群のいずれかへの対象の割り当てを可能とする量または値を指す。このような基準は、これらのグループを互いに分離する閾値量であり得る。したがって、基準は、疾患もしくは症状に罹患しているか、もしくは疾患もしくは状態を発症するリスクがあるか、またはこれらに該当しない対象の群への対象の割り当てを可能にする量またはスコアであるものとする。例えば、基準は、(上記されている予測ウィンドウ内、例えば約48時間以内に)敗血症を発症するリスクがある対象の群、または敗血症を発症するリスクがない対象の群への対象の割り当てを可能とする量またはスコアである。
【0067】
2つの群を分離する適切な閾値量は、疾患もしくは症状に罹患しているか、もしくはそれを発症するリスクがあることが既知である対象もしくは対象の群、または疾患もしくは症状に罹患していないか、もしくはそれを発症するリスクがないことが既知である対象もしくは対象の群のいずれかからのバイオマーカーの量に基づいて本明細書の他の箇所において言及される統計的検定により更に難なく算出され得る。個々の対象のために適用可能な基準量は、様々な生理学的パラメータ、例えば年齢、性別、または亜集団に依存して変動し得る。
【0068】
典型的には、当該基準は、敗血症を発症するリスクがあることが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と本質的に同一または類似であることが、敗血症を発症するリスクがあることを示し、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準とは異なることが、敗血症を発症するリスクがない対象を示す。
【0069】
また、典型的には、当該基準は、敗血症を発症するリスクがないことが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と本質的に同一または類似であることが、敗血症を発症するリスクがない対象を示し、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準とは異なることが、敗血症を発症するリスクがある対象を示す。
【0070】
「少なくとも1の対象」という用語は、1の対象または2以上の対象、例えば少なくとも10、50、100、200または1000の対象を指す。
【0071】
一実施形態において、当該バイオマーカーについての基準よりも大きいバイオマーカーの量は、リスクがある対象を示す。さらに、当該バイオマーカーについての基準よりも低いバイオマーカーの量は、対象がリスクがないこと(例えば、本明細書の他の箇所に記載されている敗血症を発症すること)を示す。
【0072】
基準量は、原則として、標準的な統計的方法を適用することによって、所与のパラメータ、例えばバイオマーカー量の平均または平均値に基づいて、対象のコホートについて計算することができる。特に、事象の診断を目的とする方法等の検査が正確であるか否かは、受信者動作特性(ROC)により最もよく説明される(特に、Zweig 1993,Clin.Chem.39:561-577を参照)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を継続的に変動させることにより生じる、すべての感受性/特異性のペアのプロットである。診断方法の臨床成績は、その正確性、すなわち対象をある特定の予後または診断に正確に割り当てる能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うのに適した閾値の全範囲について、感度対1-特異性をプロットすることにより、2つの分布間の重なりを示す。y軸上は、感度、または真陽性率であり、真陽性の検査結果の数および偽陰性の検査結果の数の積に対する、真陽性の検査結果の数の比率として定義される。これは、疾患または症状の存在下での陽性とも呼ばれている。y軸は、影響を受ける下位群からのみ計算される。x軸上は、偽陽性率、または1-特異性であり、これは、真陰性の数および偽陽性結果の数の積に対する、偽陽性結果の数の比率として定義される。x軸は、特異性の指標であり、影響を受けない下位群からのみ計算される。真陽性率および偽陽性率は、2つの異なる下位群からの検査結果を使用することによって完全に別個に計算されるので、ROCプロットはコホートにおける事象の有病率に非依存性である。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に相当する感受性/-特異性の対を表す。完全な区別のある(結果の2つの分布に重なりがない)検査は、左上隅を通過するROCプロットを有しており、真陽性率は1.0、または100%(完全な感受性)であり、偽陽性率は0(完全な特異性)となる。区別のない(2つの群についての結果の分布が同一である)検査についての理論上のプロットは、左下隅から右上隅への45°の対角線となる。ほとんどのプロットは、これらの2つの極値の間に収まる。ROCプロットが45°対角線を完全に下回って収まる場合、これは、「陽性率」についての基準を「より高い」から「より低い」に入れ替え、逆もまた同様にすることによって、容易に修正される。定性的には、プロットが左上隅に近いほど、試験全体の精度が高くなる。所望の信頼区間に応じて、ROC曲線から閾値を導くことができ、これにより、感度および特異性の適切な平衡状態をそれぞれ備えた所与の事象についての診断または予測が可能になる。したがって、本発明の前述の方法に使用される基準、すなわち、リスクがある対象とリスクがない対象とを識別することを可能にする閾値は、通常、上記のように当該コホートのROCを確立し、そこから閾値量を導出することによって生成することができる。診断方法についての所望の感度および特異性に応じて、ROCプロットは、適切な閾値を導くことができる。リスクが増加しているかまたは疾患に罹患している対象を除外する(すなわち、ルールアウトする)ためには最適な感度が望ましいが、リスクが増加しているかまたは疾患に罹患している対象を含める/評定する(すなわち、ルールインする)ためには最適な特異度が想定されることが理解されよう。
【0073】
本発明の方法の工程c)は、バイオマーカー(すなわち第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカーおよび任意に第3のバイオマーカー)の量を当該バイオマーカーについての基準と比較し、ならびに/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算することを含む。
【0074】
したがって、それぞれ第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカーおよび任意に第3のバイオマーカーの量は、第1のバイオマーカーについての基準、第2のバイオマーカーについての基準および任意に第3のバイオマーカーについての基準と比較されてもよい。
【0075】
或いは、バイオマーカーの量に基づいて、すなわち第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、および任意に第3のバイオマーカーの量に基づいて、スコアが計算され得る。当該スコアは、感染が疑われる対象を評定すること、例えば敗血症を発症するリスクを予測することを可能とする。任意に、当該スコアは、適切な基準スコアと比較されてもよい。
【0076】
「比較する」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書において言及されているバイオマーカーについての決定された量を基準と比較することを包含する。比較は、本明細書で使用される場合、量についての値と基準との間で実行される任意の種類の比較を指すことが理解されるべきである。しかしながら、好ましくは、同一のタイプの値が互いと比較され、例えば、絶対量が本発明の方法において決定され、比較される場合、基準もまた絶対量であり、相対量が本発明の方法において決定され、比較される場合、基準もまた相対量であること等が理解されるべきである。或いは、本明細書で使用される場合、「比較する」という用語は、計算されたスコアを適切な基準スコアと比較することを包含する。比較は、手動またはコンピュータ支援により実行され得る。量および基準の値は、例えば、互いに比較することができ、また当該比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより自動的に実施され得る。当該評価を実行するコンピュータプログラムは、適切な出力形式で、所望の評定を提供する。
【0077】
上記のように、第1および第2のバイオマーカー、または第1、第2および第3のバイオマーカーの量、すなわち単一のスコアに基づいてスコア(特に単一のスコア)を計算すること、ならびにこのスコアを基準スコアと比較することもまた想定される。好ましくは、スコアは、試験対象からの試料中の第1および第2のバイオマーカーの量に基づき、第3のバイオマーカーの量が決定される場合、試験対象からの試料中の第1、第2および第3のバイオマーカーの量に基づく。
【0078】
計算されたスコアは、典型的には、少なくとも2または3つのバイオマーカーの量に関する情報を組み合わせている。さらに、スコアにおいて、バイオマーカーは、好ましくは、評定の確立に対するそれらの寄与にしたがって重み付けされる。したがって、個々のマーカーについての値は典型的には重み付けされ、重み付けされた値がスコアを計算するために使用される。適切な係数(重み)は、当業者により更に難なく決定され得る。スコアはまた、少なくとも2つのバイオマーカーに対して訓練された決定木または決定木のセット(アンサンブル)から算出され得る。本発明の方法で適用されるバイオマーカーの組み合わせに基づいて、個々のバイオマーカーの重みならびに決定木の構造は異なり得る。
【0079】
スコアは、本明細書に記載されるように対象を評定するための分類器パラメータとみなされ得る。特に、それは、単一のスコアに基づく評定を提供することを可能にする。基準スコアは、好ましくは値、特に、本明細書に記載されるように感染が疑われる対象を評定することを可能とするカットオフ値である。好ましくは、基準は単一の値である。したがって、個々のバイオマーカーの量に関する全情報を解釈する必要はない。本明細書に記載されているスコアリングシステムを使用して、有利には、バイオマーカーのために異なる次元または単位の値が使用されてもよく、その理由は、値はスコアに数学的に変換されるからである。したがって、例えば絶対的な濃度についての値は、スコアにおいてピーク面積比と組み合わせられてもよい。応用される基準スコアは、所望される感度または所望される特異性に基づいて選択されてもよい。適切な基準スコアを選択する方法は当技術分野において周知である。
【0080】
有利なことに、第2および、好ましくは、第3のバイオマーカーとの第1のバイオマーカーの組合せは、感染症の徴候および症候を呈する患者の信頼できるかつ早期の評定を可能とすることが本発明の基礎となる研究において見出されている。例えば、対象の評定は、試験試料が得られてから5時間以内に行うことができる。研究において、医療(非外科)救急である救急部に来院している患者が調べられた。この目的のために、患者を、高い確率で敗血症を罹患している患者および敗血症を伴わずに感染症を罹患していると疑われる患者に更に分けた様々なバイオマーカーの量が決定されており、バイオマーカーは、ロジスティック回帰分析を介して分析され、数学的に組み合わせられた。バイオマーカー性能を評価するために受信者動作特性曲線下面積(AUC)が使用された。AUC値は、区間[a][b]内での関数f(x)の数学的積分である。AUCはまた、バイオマーカーペアおよびトリプレットについても調べられた。合わせて、最も優れた単一のバイオマーカーAUCよりも改善されたAUCを示したバイオマーカーの組み合わせが特定された。結果は、以下の添付の実施例に記載されている。
【0081】
特に、これらの患者が、例えば、救急処置室に現れている場合、重度合併症、例えば敗血症、SIRSまたは全体的健康状態の一般的悪化を発症するリスクの早期評定は、薬物投与、物理的もしくは他の治療的介入および/または入院を含む治療的措置を開始するために決定的である。これらの治療的措置は、特に、例えば、広域抗生物質の迅速な投与、輸液蘇生、血管作動性薬物治療、機械的換気、他の臓器サポート(例えば、連続的な血液濾過、体外膜型人工肺)を含み得る。治療的措置として包含されるのはまた、より高レベルの治療(例えば集中治療室、中間治療室)へのトリアージである。重度合併症のリスクがない場合、患者は、退院させて外来状況において管理され得るか、または病院の低レベル治療(例えば一般病棟)に入院させられ得る。本発明のおかげで、患者はバイオマーカー判定により早期ステージにおいて評定され得るので、生命を脅かす発症が予防され得る。本発明の基礎となる研究において同定されたバイオマーカーペアおよびトリプレットは、医学的決定のための信頼できる基礎であり、評定は、時間および費用効果の高い方式で行われ得る。
【0082】
そのため、本発明の方法は、適切な治療措置を推奨または開始することを更に含んでもよい。典型的には、当該適切な治療措置は、International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock(Intensive Care Med,2017)等の敗血症の管理のための医療ガイドラインまたは推奨から選択される。例えば、治療措置は、敗血症の処置、または更なる診断調査、または専門家が必要と考えるケアの他の態様であり得る。
【0083】
一実施形態において、患者にリスクがあると評定された場合に推奨または開始される治療措置は、以下から選択される。
● セファロスポリン、ベータ-ラクタム/ベータ-ラクタマーゼ阻害剤(例えば、ピペラシリン)、またはカルバペネム等の少なくとも1つ以上の広域抗生物質、典型的には可能性の高い病原体と考えられる生物および抗生物質感受性に応じた、経験的広域治療の投与
● 輸液による蘇生
● ノルエピネフリンの投与等の1つ以上の血管収縮薬の投与、ならびに
● ヒドロコルチゾンの投与等の1つ以上のコルチコステロイドの投与
【0084】
本明細書での上で与えられた定義は、以下に準用される。
【0085】
本発明はまた、感染が疑われる対象を評定するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、当該第1のバイオマーカーがMR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(b)対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、当該第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1(NTproBNPまたはBNP等)からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(c)バイオマーカーの量についての値を当該バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた比較および/または計算に基づいて当該対象を評定する工程
を含む、コンピュータ実装方法に関する。
【0086】
「コンピュータ実装」という用語は、本明細書で使用される場合、方法が、典型的には、コンピュータまたは類似したデータ処理デバイス中に含まれる、データ処理ユニット上で自動化された様式で実行されることを意味する。データ処理ユニットは、バイオマーカーの量についての値を受け取る。このような値は、本明細書の他の箇所において詳細に記載されている量を反映する量、相対量または任意の他の算出された値であることができる。したがって、上述の方法は、バイオマーカーについての量の決定を必要とせず、むしろ既に予め決定された量についての値を使用することを理解されたい。
【0087】
典型的には、当該方法の工程(b)において、
(i)GDF-15の量についての値が第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることを更に含む。
【0088】
本発明はまた、原理的に、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、または当該コンピュータプログラムが有形的に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体も企図し、コンピュータプログラムは、データ処理デバイスまたはコンピュータで実行されると上記のような本発明の方法を実行する、命令を含む。具体的には、本開示は、以下を更に包含する:
- 少なくとも1つのプロセッサを備えており、プロセッサは、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されているコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- コンピュータ上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータロード可能データ構造、
- コンピュータスクリプトであって、コンピュータプログラムが、プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、コンピュータスクリプト、
- コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に保存された、先行する実施形態によるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- データ構造が記憶媒体に保存され、データ構造が、コンピュータもしくはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業記憶装置にロードされた後、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、この明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が保存されることができる、または記憶媒体上に保存されることができる、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
- 本明細書の他の箇所で定義されているパラメータのデータを含む、典型的には暗号化されたデータストリームシグナル、ならびに
- 本発明の方法によって提供される評定を含む、典型的には暗号化されたデータストリームシグナル。
【0089】
本発明は、感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、
(a)対象の試料中のMR-proADMである第1のバイオマーカーと、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーに対する検出システムを含む、当該測定ユニットと、
(b)測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは上記に記載されるような第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは上記に記載されるような第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、および/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアの計算を実行するための、ならびに比較に基づいて当該対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を含み、測定ユニットからバイオマーカーの量についての値を自動的に受信することができる、当該評価ユニットと
を含む、デバイスに関する。
【0090】
「デバイス」という用語は、本明細書で使用される場合、評定が提供され得るように本発明の方法によるバイオマーカーの量の決定およびその評価を可能とするように互いに機能的に連結された上述のユニットを含むシステムに関する。
【0091】
分析ユニットは、典型的には、試料と接触させられる固体支持体または担体上に固定化された形態で第1および第2のバイオマーカーおよび、好ましくはまた第3のバイオマーカー用のバイオマーカー検出剤を有する少なくとも1つの反応ゾーンを含む。さらに、反応ゾーンにおいて、試料中に含まれるバイオマーカーに対する検出剤(複数可)の特異的結合を可能とする条件を適用することが可能である。
【0092】
反応ゾーンは、試料適用を直接的に可能としてもよく、または試料が適用されるローディングゾーンに接続されていてもよい。後者の場合、試料は、ローディングゾーンと反応ゾーンとの間の接続を介して反応ゾーンに能動的にまたは受動的に輸送され得る。さらに、反応ゾーンはまた、検出器に接続される。接続は、検出器がバイオマーカーのそれらの検出剤への結合を検出できるようなものである。適切な接続は、バイオマーカーの存在または量を測定するために使用される技術に依存する。例えば、光学的な検出のために、光の伝播が検出器と反応ゾーンとの間に要求されることがあり、電気化学的決定のために、流体接続が、例えば、反応ゾーンと電極との間に、要求されることがある。
【0093】
検出器は、バイオマーカーの量の決定を検出するように適合される。決定された量は引き続いて評価ユニットに伝達され得る。当該評価ユニットは、試料中に存在する量を決定するための実装されたアルゴリズムを有するコンピュータ等のデータ処理要素を備える。
【0094】
本発明の方法に従って言及されている処理ユニットは、典型的には、中央処理装置(CPU)および/または1つ以上のグラフィック処理ユニット(GPU)および/または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つ以上のテンソル処理ユニット(TPU)および/または1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を備える。データ処理要素は、例えば、汎用コンピュータまたは携帯型コンピューティングデバイスであってもよい。本明細書に開示される方法の1つ以上の工程を行うために、ネットワーク越しにまたはデータを転送する他の方法等で、複数のコンピューティングデバイスが一緒に使用されてもよいこともまた理解されるべきである。例示的なコンピューティングデバイスは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パーソナルデータアシスタント(「PDA」)、セルラーデバイス、スマートまたはモバイルデバイス、タブレットコンピュータ、およびサーバー等を含む。一般に、データ処理要素は、複数の命令(例えばソフトウェアのプログラム)を実行することができるプロセッサを含む。
【0095】
評価ユニットは、典型的には、メモリを含むか、またはメモリに対するアクセスを有する。メモリはコンピュータ読取り可能な媒体であり、例えば、コンピューティングデバイスとローカルに位置するか、またはネットワークを通じてコンピューティングデバイスにアクセス可能な単一のストレージデバイスもしくは複数のストレージデバイスを含んでもよい。コンピュータ読取り可能な媒体は、コンピューティングデバイスによりアクセス可能な任意の利用可能な媒体であってもよく、揮発性媒体および非揮発性媒体の両方を含む。さらに、コンピュータ読取り可能な媒体は、リムーバブル媒体および非リムーバブル媒体の一方または両方であってもよい。例として、非限定的に、コンピュータ読取り可能な媒体はコンピュータストレージ媒体を含んでもよい。例示的なコンピュータストレージ媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリーもしくは任意の他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光学ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージもしくは他の磁気ストレージデバイス、またはコンピューティングデバイスによりアクセス可能であり、かつコンピューティングデバイスのプロセッサにより実行可能な複数の命令を保存するために使用され得る任意の他の媒体を含むが、それに限定されない。
【0096】
本開示の実施形態によれば、ソフトウェアは、コンピューティングデバイスのプロセッサにより実行された場合に、本明細書に開示される方法の1つ以上の工程を行い得る命令を含んでもよい。命令のいくつかは、他の機械の動作を制御するシグナルを生成するように適合され得、したがって、コンピュータ自体から遠く離れたマテリアル(materials)を変換するためにそれらの制御シグナルを介して動作し得る。これらの記述および表現は、データ処理技術の当業者によって、例えば、研究の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される手段である。
【0097】
複数の命令はまた、所望される結果に繋がるつじつまの合う工程の配列であると一般に考えられるアルゴリズムを含んでもよい。これらの工程は、物理量の物理的マニピュレーションを要求するものである。必ずしもそうではないが、通常、これらの量は、保存、伝達、変換、結合、比較、および他にマニピュレートされ得る電気的なまたは磁気的なパルスまたはシグナルの形態を取る。これらのシグナルを、このようなシグナルが具体化または表現される物理的なアイテムまたは表現の参照として、値、文字、表示データ、数字等として参照することは、主に一般的な使用上の理由から、時には便利であることが判明している。しかしながら、これらのおよび類似した用語のすべては、適切な物理量と関連付けられ、これらの量に適用される好都合な標識として本明細書において単に使用されていることが留意されるべきである。
【0098】
評価ユニットはまた、出力デバイスを備えてもよく、または出力デバイスへのアクセスを有し得る。例示的な出力デバイスは、例えば、ファックス機、ディスプレイ、プリンター、およびファイルを含む。本開示のいくつかの実施形態によれば、コンピューティングデバイスは、本明細書に開示される方法の1つ以上の工程を行い、その後に、方法の結果、指標、比または他の因子に関する出力を、出力デバイスを介して提供してもよい。
【0099】
典型的には、当該測定ユニットは、第3のバイオマーカーを決定し、かつ第3のバイオマーカーに対する検出システムを含み、当該データベースは、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、当該第3のバイオマーカーは、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。
【0100】
より典型的には、当該検出システムは、バイオマーカーの各々に特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む。
【0101】
本発明は、感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、評価ユニットを含み、評価ユニットが、MR-proADMである第1のバイオマーカーならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーのための保存された基準を有するデータベース、ならびに、好ましくは、上記に規定されるように、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するため、ならびに比較に基づいて当該対象を評定するための命令を含むデータプロセッサを含み、当該評価ユニットが、対象の試料において決定されたバイオマーカーの量についての値を受信することができる、デバイスをさらに想定する。
【0102】
典型的には、当該データベースは、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、当該第3のバイオマーカーは、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。
【0103】
本発明はまた、原則的として、MR-proADMである第1のバイオマーカー、ならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカー、または当該第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および当該第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染が疑われる対象を評定するための使用に関する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「検出剤」という用語は、典型的には、バイオマーカーに特異的に結合する任意の薬剤、すなわち試料中に存在する他の成分と交差反応しない薬剤を指す。典型的には、本明細書において言及されているバイオマーカーに特異的に結合する検出剤は、抗体、抗体断片もしくは誘導体、アプタマー、バイオマーカーのリガンド、バイオマーカーの受容体、バイオマーカーに結合しかつ/もしくはバイオマーカーを変換させることが既知である酵素、またはバイオマーカーに特異的に結合することが既知である小分子であってもよい。例えば、検出剤として本明細書において言及されている抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方の他に、その断片、例えば抗原またはハプテンに結合することができるFv、FabおよびF(ab)2断片を含む。本発明はまた、単鎖抗体、および、所望される抗原特異性を呈する非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列がヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせられたヒト化ハイブリッド抗体を含む。ドナー配列は、ドナーの少なくとも抗原結合性アミノ酸残基を通常含むが、ドナー抗体の他の構造的におよび/または機能的に妥当なアミノ酸残基もまた含み得る。このようなハイブリッドは、当技術分野において周知のいくつかの方法により調製され得る。例えば、アプタマー検出剤は核酸またはペプチドアプタマーであってもよい。このようなアプタマーを調製する方法は当技術分野において周知である。例えば、ランダム突然変異が、アプタマーのための基礎となる核酸またはペプチドに導入され得る。これらの誘導体は次に、当技術分野において公知のスクリーニング手順、例えばファージディスプレイに従って結合について試験され得る。検出剤の特異的結合は、分析される試料中に存在する別のペプチド、ポリペプチドまたは物質と実質的に結合しない、すなわち交差反応しないことを意味する。好ましくは、特異的に結合したバイオマーカーは、試料の任意の他の成分よりも少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、よりいっそう好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合しているべきである。非特異的結合は、それが、例えばウエスタンブロット上でのそのサイズに従って、または試料中でのその相対的により高い存在量により、依然として明確に区別および測定され得る場合に、許容される場合がある。
【0105】
検出剤は、検出可能な標識に永久的にまたは可逆的に融合または連結していてもよい。適切な標識は当業者に周知である。適切な検出可能な標識は、適切な検出方法で検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識(「例えば磁気ビーズ」、常磁性および超常磁性標識を含む)、および蛍光標識が挙げられる。酵素的に活性な標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびそれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(Roche Diagnostics製の既成の保存溶液として入手可能な4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスファート)、CDP-Star(商標)(Amersham Biosciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光または化学発光が生じてもよく、これは、当該技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルムまたは適切なカメラシステムを使用して)、測定することができる。酵素反応を測定することについては、上記の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えばAlexa568)が挙げられる。更なる蛍光標識が、例えばMolecular Probes(オレゴン州)から入手可能である。また、蛍光標識としての量子ドットの使用が、企図される。典型的な放射性標識としては、35S、125I、32P、33P等が挙げられる。放射性標識は、公知かつ適切な、例えば感光膜またはホスホイメージャー(phosphor imager)等の任意の方法により検出され得る。適切な標識はまた、タグ、例えばビオチン、ジゴキシゲニン(digoxygenin)、His-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc-タグ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質等であってもよいか、またはそれらを含んでもよい。
【0106】
AST、ALTなどのバイオマーカーのための好ましい薬剤は、例えば実施例に記載されており、実施例1を参照されたい。
【0107】
バイオマーカーがASTまたはALTなどの酵素である場合、検出剤は、酵素の基質、または検出に使用される任意の薬剤であり得る(実施例を参照)。
【0108】
一実施形態において、ALT(ALAT)用の検出剤は、例えばL-アラニンである。
【0109】
一実施形態において、AST(ASAT)用の検出剤は例えばL-アスパルテートである。
【0110】
本明細書に記載されているバイオマーカーの決定は、(例えばLCまたはHPLCによる)分離工程後に実行される質量分析(MS)を含んでもよい。質量分析は、本明細書で使用される場合、分子量(すなわち質量)または本発明に従って決定されるべき化合物、すなわちバイオマーカーに対応する質量変数の決定を可能とするすべての技術を包含する。好ましくは、質量分析は、本明細書で使用される場合、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析、任意の逐次的に連結された質量分析、例えばMS-MSもしくはMS-MS-MS、ICP-MS、Py-MS、TOFまたは上述の技術を使用する任意の組み合わせられたアプローチに関する。これらの技術をどのように適用するかは、当業者に周知である。さらに、適切なデバイスが市販されている。より好ましくは、本明細書で使用される場合、質量分析は、LC-MSおよび/またはHPLC-MS、すなわち、事前の液体クロマトグラフィー分離工程に動作可能に連結されている質量分析に関する。好ましくは、質量分析はタンデム質量分析(MS/MSとしても知られる)である。タンデム質量分析は、MS/MSとしても知られており、2つ以上の質量分析工程を含み、段階の間に断片化が起こる。タンデム質量分析において、連続した2つの質量分析計がコリジョンセルにより接続される。質量分析計は、クロマトグラフィーデバイスに連結されている。クロマトグラフィーにより分離された試料は、第1の質量分析計において選別および計量され、次にコリジョンセルにおいて不活性ガスにより断片化され、1つまたは複数の小片は第2の質量分析計において選別および計量される。断片は、第2の質量分析計において分別および秤量される。MS/MSによる同定がより正確である。
【0111】
一実施形態において、質量分析は、本明細書で使用される場合、四重極MSを包含する。最も好ましくは、当該四重極MSは以下のように実行される:a)質量分析計の第1の分析四重極におけるイオン化により作出されたイオンの質量/電荷比(m/z)の選択、b)コリジョンガスを充填されており、コリジョンチャンバーとして作用する追加の引き続いての四重極において加速電圧を印加することによる工程a)において選択されたイオンの断片化、c)追加の引き続いての四重極における工程b)における断片化プロセスにより作出されたイオンの質量/電荷比の選択が為され、方法の工程a)~c)は少なくとも1回実行され、イオン化プロセスの結果として物質の混合物中に存在するすべてのイオンの質量/電荷比の分析が実行され、四重極はコリジョンガスで充填されているが、加速電圧は分析の間に印加されない。本発明に従って使用される当該最も好ましい質量分析に関する詳細は、国際公開第2003/073464号において見出され得る。
【0112】
より好ましくは、当該質量分析は、液体クロマトグラフィー(LC)MS、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)MS、特にHPLC-MS/MSである。液体クロマトグラフィーは、本明細書で使用される場合、液体または超臨界相中の化合物(すなわち代謝物)の分離を可能とするすべての技術を指す。
【0113】
質量分析のために、試料中の分析物は、荷電分子または分子断片を生成するためにイオン化される。その後、イオン化された分析物、特にイオン化されたバイオマーカー、またはその断片の質量-電荷が測定される。イオン化に先立って、試料は、プロテアーゼ、例えばトリプシンでの切断に供されてもよい。プロテアーゼは、タンパク質バイオマーカーをより小さい断片に切断する。
【0114】
したがって、質量分析工程は、好ましくは、決定されるべきバイオマーカーがイオン化されるイオン化工程を含む。当然、試料/溶出液中に存在する他の化合物もまたイオン化される。バイオマーカーのイオン化は、適切であるとみなされる任意の方法により、特に電子衝撃イオン化、高速原子衝突、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)により実行され得る。
【0115】
好ましい実施形態において、(質量分析のための)イオン化工程は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)によって行われる。したがって、質量分析はESI-MS(またはタンデムMSが行われる場合:ESI-MS/MS)が好ましい。エレクトロスプレーは、化学結合を破壊することなくイオンの形成をもたらすソフトイオン化法である。
【0116】
より典型的には、第3のバイオマーカーまたは当該第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、当該第3のバイオマーカーは、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。
【0117】
また、本発明は、MR-proADMである第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染が疑われる対象を評定するためのキットに関する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、典型的には、別個にまたは単一の容器内に提供される、上述の構成要素の集合を指す。容器はまた、典型的には、本発明の方法を実行するための説明書も含む。これらの説明書は、マニュアルの形式であってもよく、またはコンピュータもしくはデータ処理デバイス上で実行される場合に本発明の方法において言及されるバイオマーカーの決定を実行もしくはサポートすることができるコンピュータプログラムコードにより提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、データストレージ媒体もしくはデバイス、例えば光学ストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク)上にもしくは直接的にコンピュータもしくはデータ処理デバイス上に提供されてもよく、またはダウンロードフォーマット、例えばアクセス可能なサーバーもしくはクラウドへのリンクにおいて提供されてもよい。さらに、キットは、本明細書の他の箇所において詳細に記載されている軟正目的のためにバイオマーカーの基準量のための標準品を通常は含んでもよい。本発明によるキットはまた、本発明の方法を実行するために必要な更なる成分、例えば溶媒、緩衝剤、洗浄溶液および/または放出された第2の分子の検出のために要求される試薬を含んでもよい。さらに、キットは、本発明のデバイスを部分的にまたは全体的に含んでもよい。
【0119】
より典型的には、当該キットは、第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤を更に含み、当該第3のバイオマーカーは、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。
【0120】
上記で実行された用語の定義および説明は、本明細書および添付の請求項において記載されるすべての実施形態のために然るべく適用されることが理解されるべきである。以下の実施形態は、本発明に従って想定される特定の実施形態である。
【0121】
1.感染が疑われる対象を評定するための方法であって、
(a)対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーがMR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程、
(b)対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程、
(c)バイオマーカーの量をバイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた比較および/または計算に基づいて前記対象を評定する工程
を含む、方法。
【0122】
2.工程(b)において、
(i)GDF-15の量が第2のバイオマーカーとして決定される場合、方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0123】
3.対象が、救急部に来院している対象である、実施形態1または2に記載の方法。
【0124】
4.評定が、敗血症を発症するリスクの評定、および/または対象の症状が悪化するリスクの評定である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
5.前記基準が、敗血症を発症するリスクがあることが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似していることが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示し、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準とは異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示す、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
6.前記基準が、敗血症を発症するリスクがないことが既知である少なくとも1の対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似していることが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示し、バイオマーカーの各々についての量が、対応する基準と異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示す、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
7.前記対象が、感染症に罹患しているか、または感染症に罹患していることが疑われる、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0128】
8.前記試料が、血液試料またはそれに由来する試料である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
9.前記対象が、ヒトである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
10.感染が疑われる対象を評定するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第1のバイオマーカーがMR-proADMである、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(b)対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第2のバイオマーカーが、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程、
(c)バイオマーカーの量についての値をバイオマーカーについての基準と比較し、かつ/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに
(d)工程(c)で行われた比較および/または計算に基づいて前記対象を評定する工程
を含む、コンピュータ実装方法。
【0131】
11.工程(b)において、
(i)GDF-15の量についての値が第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることを更に含む、
実施形態10に記載の方法。
【0132】
12.感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、
(a)対象の試料中のMR-proADMである第1のバイオマーカーと、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーに対する検出システムを含む、測定ユニットと、
(b)測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは実施形態1~9のいずれか1つに記載されるような第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは実施形態1~9のいずれか1つに記載されるような第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、および/またはバイオマーカーの量に基づいて感染が疑われる対象を評定するためのスコアの計算を実行するための、ならびに比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を含み、バイオマーカーの量についての値を測定ユニットから自動的に受け取ることができる、評価ユニットと
を含む、デバイス。
【0133】
13.前記測定ユニットが、第3のバイオマーカーを決定し、かつ第3のバイオマーカーに対する検出システムを含み、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、実施形態12に記載のデバイス。
【0134】
14.前記検出システムが、バイオマーカーの各々を特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む、実施形態12または13に記載のデバイス。
【0135】
15.感染が疑われる対象を評定するためのデバイスであって、MR-proADMである第1のバイオマーカー、ならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーについての保存された基準を有する、データベースと、好ましくは実施形態1~11のいずれか1つに記載されるような第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、ならびに比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を含む評価ユニットであって、対象の試料中で決定されたバイオマーカーの量についての値を受け取ることができる、評価ユニットを含む、デバイス。
【0136】
16.前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、実施形態15に記載のデバイス。
【0137】
17.MR-proADMである第1のバイオマーカー、ならびにsFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染が疑われる対象を評定するための使用。
【0138】
18.第3のバイオマーカーまたは前記第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、実施形態17に記載の使用。
【0139】
19.MR-proADMである第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、sFlt-1、GDF15およびESM1からなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染が疑われる対象を評定するためのキット。
【0140】
20.前記キットが、第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤を更に含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)GDF-15が第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、実施形態19に記載のキット。
【0141】
21.評定が敗血症を発症するリスクの評定である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法、デバイス、使用またはキット。
【0142】
22.48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法、デバイス、使用またはキット。
【0143】
本明細書の全体を通じて基準されるすべての参考文献は、上記に特に言及される開示内容の他に、それらの全体に関して本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0144】
実施例1:バイオマーカーの決定
GDF-15の決定のためのElecsys(登録商標)電気化学発光(ECL)技術およびアッセイ方法を以下に簡単に説明する。GDF-15の濃度を、cobas e 801分析装置によって決定した。cobas e 801分析装置を用いたGDF-15の検出は、Elecsys(登録商標)電気化学発光(ECL)技術に基づく。簡潔には、ビオチン標識およびルテニウム標識抗体をそれぞれの量の未希釈試料と合わせ、分析装置でインキュベートする。続いて、ビオチン標識免疫複合体の結合を促進するために、ストレプトアビジン被覆磁性微粒子を添加し、機器でインキュベートする。このインキュベーション工程の後、反応混合物を測定セルに移し、そこでビーズを電極の表面に磁気的に捕捉する。次いで、結合したイムノアッセイ複合体を遊離の残りの粒子から分離するために、その後のECL反応のためのトリプロピルアミン(TPA)を含有するProCell M緩衝液を測定セルに導入する。次いで、作用電極と対電極との間の電圧の誘導は、ルテニウム錯体およびTPAによる光子の放出をもたらす反応を開始させる。得られた電気化学発光シグナルは、光電子増倍管によって記録され、それぞれの分析物の濃度レベルを示す数値に変換される。
【0145】
中間領域プロアドレノメデュリン(MRproADM)を、市販のB・R・A・H・M・S MR-proADM KRYPTORアッセイ、すなわち、ThermoFisher KRYPTORプラットフォームのために開発されたサンドイッチ免疫アッセイ(BRAHMS GMbH、ThermoFisher Scientific、ドイツ)を用いて測定した。アッセイは、ユウロピウムクリプテートとコンジュゲートした抗pro-ADMヒツジポリクローナル抗体およびXL665とコンジュゲートした抗pro-ADMヒツジポリクローナル抗体を含む。各血漿試料から26μLを使用し、ThermoFisher KRYPTOR分析器(ThermoFisher Scientific、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0146】
SFLT1またはsFLT-1(可溶性fms様チロシンキナーゼ-1)を、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に開発されたサンドイッチイムノアッセイである、商用のsFLT-1用ECLIAアッセイで測定した。アッセイは、sFLT-1に特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から12μLを使用し、cobas e801分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0147】
GDF15(増殖/分化因子15)を、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に開発されたサンドイッチ免疫アッセイである、GDF-15の市販のECLIAアッセイで測定した。アッセイは、GDF-15に特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から21μLを使用し、cobas e801分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0148】
ESM1(Endothelial cell-specific molecule 1)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に自社で開発されたサンドイッチイムノアッセイである、ESM-1用のロバストなプロトタイプECLIAアッセイで測定した。アッセイは、ESM-1に特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から20μLを使用し、cobas e 601分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0149】
STREM1またはsTREM-1(Soluble triggering receptor expressed on myeloid cells 1)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に自社で開発されたサンドイッチイムノアッセイである、sTREM-1用のロバストなプロトタイプECLIAアッセイで測定した。アッセイは、sTREM-1に特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から50μLを使用し、cobas e 601分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0150】
ANG2またはAng-2(アンジオポエチン-2)を、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に自社で開発されたサンドイッチイムノアッセイである、アンジオポエチン-2用のロバストなプロトタイプECLIAアッセイで測定した。アッセイは、Ang-2に特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から20μLを使用し、cobas e 601分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0151】
PSP(膵石タンパク質)を市販のAbionic Platform(Abionic、スイス)で測定した。30μL EDTA-血漿試料からのPSPを定量するナノ流体PSP(膵石タンパク質)イムノアッセイ。試験原理は、抗PSP抗体が固定化されているナノメートルサイズのチャネルを通る、蛍光標識検出抗体を含有する溶液と数秒間予め混合された検体の通過に依存する。これらの抗体は、蛍光検出抗PSP抗体に結合したPSPを捕捉する。abioSCOPEは、PSPセンサからの蛍光発光を読み取り、高度なシグナル処理を使用して、アッセイの埋め込まれたロット特異的較正のおかげでシグナルを濃度に変換する。
【0152】
NGAL(好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン)試験は、NGALの定量的決定のための粒子増強型比濁イムノアッセイである。3μLの血漿が反応緩衝液R1と混合される。短いインキュベーションの後、免疫粒子懸濁液(NGALに対するマウスモノクローナル抗体で被覆されたポリスチレン微粒子)の添加によって反応を開始する。Roche Diagnostics(ドイツ)からのアッセイ。試料中のNGALは、免疫粒子を凝集させる。凝集の程度は、光の吸収として測定される光散乱の量によって定量化される。試料中のNGAL濃度は、確立された検量線上の内挿によって決定される。試料をcobas c 501分析装置(Roche Diagnostics、Germany)上で測定した。
【0153】
CREA(クレアチニン):この速度論的比色アッセイは、Jaffe法に基づく。アルカリ性溶液中で、クレアチニンは、ピクリン酸とイエローオレンジの複合体を形成する。色素形成速度は、検体中のクレアチニン濃度に比例する。このアッセイは、ビリルビンによる干渉を最小限に抑えるために「レートブランキング」を使用する。Roche Diagnostics(ドイツ)からのアッセイ。7.5μLの血漿を判定に使用した。試料を、cobas c 501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定した。
【0154】
ALAT(アラニンアミノトランスフェラーゼ):アラニンアミノトランスフェラーゼは、α-ケトグルタル酸(α-KG)へのL-アラニンのアミノ基転移を触媒して、L-グルタミン酸およびピルビン酸を形成させる。形成されるピルビン酸は、還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の同時の酸化と共に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)により乳酸に還元される。吸光度における変化は、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性に正比例しており、二色性(340nm、700nm)レート技術を使用して測定される。
【0155】
ASAT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、L-アスパラギン酸からα-ケトグルタル酸へのアミノ基転移を触媒して、L-グルタミン酸およびオキサロ酢酸を形成させる。形成されるオキサロ酢酸は、還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の同時の酸化と共にリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)によりリンゴ酸に還元される。NADへのNADHの変換に起因する経時的な吸光度における変化は、AST活性に正比例しており、例えば二色性(340nm、700nm)レート技術を使用して測定される。
【0156】
実施例2:TRIAGE Studyからの患者の分析
TRIAGE Study,Kantonsspital Aarau,Switzerland,Emergency Department.(Schuetz 2013,BMC emergency medicine,13(1),12).
【0157】
医学的緊急事態のために救急部(ED)のケアを受けようとしているすべての連続患者をED入院時に含めた。以下に従って、合計4000人の患者から、入院時に感染が疑われる患者のサブセットを選択し、可能性の高い敗血症症例群または感染対照群に分類した。
● 症例(N=64):ICUに入院しているか、またはRhee 2017、“Incidence and Trends of Sepsis in US Hospitals Using Clinical vs Claims Data,2009-2014.”JAMA 318(13):1241-1249の基準を満たす場合、ED来院の48時間以内に悪化/より高い重症度を有する可能性の高い敗血症症例。
● 対照(N=207):ED来院の48時間以内に感染が疑われるが敗血症を有しない患者。
【0158】
ロジスティック回帰を介してマーカーを数学的に組み合わせ、「受信者動作特性曲線下面積」(AUC)をマーカー性能についての一般的尺度として使用した。
【0159】
単一のマーカーより少なくとも1パーセンテージポイント改善されたAUCを有するマーカー対の組み合わせ(二変量マーカー組み合わせ)を表1に示す。
【表1】
【0160】
少なくとも1パーセンテージ点だけ二変量マーカーペアの他に3つすべての単一マーカーに対してAUCの向上を有するマーカートリプレットの組合せ(三変量マーカー組合せ)を表2に示す。
【表2】
【0161】
単一マーカーに対する向上を有しないマーカーの二変量組合せの例を表3に示す。
【表3】
【国際調査報告】