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特表2024-537783解剖学的空間内の組織にエネルギーを送達し、異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するための外科用システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】解剖学的空間内の組織にエネルギーを送達し、異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するための外科用システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241008BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B34/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519422
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2022059091
(87)【国際公開番号】W WO2023052941
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,658
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/494,435
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ジェイソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ミューモー・ダニエル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス・シェーン・アール
(72)【発明者】
【氏名】シャイブ・チャールズ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ・デビッド・シー
(72)【発明者】
【氏名】メイプルズ・カーティス
(72)【発明者】
【氏名】ロス・ニコラス・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】カウパースウェイト・マシュー・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ディミートリアス
(72)【発明者】
【氏名】アロンホルト・テイラー・ダブリュ
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA32
4C160KK03
4C160KK18
4C160KK39
4C160MM43
(57)【要約】
外科用デバイスと、センサと、コントローラと、を備える、外科用システムが提供される。外科用デバイスは、患者の第1の解剖学的空間内にある間に、標的組織にエネルギーを送達するようにそれぞれ構成された複数の電極を含む。センサは、エネルギーが標的組織に送達されている状態で、患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するように構成されている。コントローラは、測定された組織パラメータを示すセンサからの信号を受信し、測定された組織パラメータを示す信号に基づいて複数の電極の各々の電力を制御するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用システムであって、
患者の第1の解剖学的空間内にある間に、標的組織にエネルギーを送達するようにそれぞれ構成された複数の電極を含む、外科用デバイスと、
前記エネルギーが前記標的組織に送達されている状態で、前記患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するように構成されたセンサと、
コントローラであって、
前記測定された組織パラメータを示す信号を前記センサから受信することと、
前記測定された組織パラメータを示す前記信号に基づいて、前記複数の電極の各々の電力を制御することと、を行うように構成されたコントローラと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記標的組織は、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にあり、
前記制御は、
前記複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させて前記エネルギーを送達し、前記複数の電極のうちの残りの数の電極はエネルギーを送達しないこと、及び
温度を含む前記組織パラメータを用いて、前記監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように前記電力を制御すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記組織パラメータは、インピーダンスを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記標的組織は組織壁であり、前記複数の電極は、前記組織壁の第1の側に位置し、前記第2の解剖学的空間は、前記組織壁の反対側に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の解剖学的空間は、中空器官内にあり、前記第2の解剖学的空間は、前記中空器官外にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の解剖学的空間は管腔内にあり、前記第2の解剖学的空間は前記管腔外にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記標的組織は、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にある、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
外科用ハブが、前記コントローラを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
ロボット外科用システムが、前記コントローラを含み、前記外科用デバイスが、前記ロボット外科用システムに解放可能に結合し、前記ロボット外科用システムによって制御されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
外科用デバイスの複数の電極の各々から、標的組織にエネルギーを送達することであって、前記複数の電極は、患者の第1の解剖学的空間内にある、ことと、
前記エネルギーが前記標的組織に送達されている状態で、センサを用いて、前記患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視することと、
コントローラにおいて、前記測定された組織パラメータを示す信号を前記センサから受信することと、
前記コントローラを用いて、前記測定された組織パラメータを示す前記信号に基づいて、前記複数の電極の各々の電力を制御することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記標的組織が、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にあり、
前記制御は、
前記複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させて前記エネルギーを送達し、前記複数の電極のうちの残りの数の電極はエネルギーを送達しないこと、及び
温度を含む前記組織パラメータを用いて、前記監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように前記電力を制御すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的組織は組織壁であり、前記複数の電極は、前記組織壁の第1の側に位置し、前記第2の解剖学的空間は、前記組織壁の反対側に位置する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の解剖学的空間は、中空器官内にあり、前記第2の解剖学的空間は、前記中空器官外にある、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の解剖学的空間は管腔内にあり、前記第2の解剖学的空間は前記管腔外にある、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
外科用ハブが、前記コントローラを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ロボット外科用システムが、前記コントローラを含み、前記外科用デバイスが、前記ロボット外科用システムに解放可能に結合され、前記ロボット外科用システムによって制御されている、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
方法であって、
外科用デバイスの複数の電極の各々から、標的組織にエネルギーを送達することであって、前記複数の電極は、組織壁の第1の側に位置する、ことと、
前記組織壁の第2の反対の側に位置するセンサを用いて、組織パラメータを感知することと、
前記エネルギー送達中に、コントローラを用いて、前記感知された組織パラメータに基づいて、複数の電極の各々の電力レベルを調整することと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記組織パラメータは、温度及びインピーダンスのうちの少なくとも1つを含み、
前記組織壁は、中空器官の壁又は体腔の壁である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記感知すること及び前記調整することは、前記感知された組織パラメータが所定の目標に到達し、前記エネルギー送達が停止するまで繰り返し行われる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムが請求項1に記載のシステムのコントローラによって実行されると、前記システムに、請求項11又は19に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項23】
請求項22に記載のコンピュータプログラム製品を記憶したコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
請求項22に記載のコンピュータプログラム製品を搬送するデータキャリア信号。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月29日に出願された「Surgical Devices,Systems,And Methods For Control Of One Visualization With Another」と題する米国仮特許出願第63/249,658号の優先権を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、1つの視覚化を別の視覚化で制御するための外科用デバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外科用システムは、多くの場合、撮像システムを組み込んでおり、撮像システムは、医療従事者が、1つ以上のディスプレイ(例えば、モニタ、コンピュータタブレット画面等)の上で、手術部位及び/又はその1つ以上の部分を視認することを可能にすることができる。ディスプレイ(複数可)は、外科手術の現場に対してローカル、及び/又は遠隔であることができる。撮像システムは、手術部位を見るカメラであって、医療従事者(複数可)が見ることができる1つ以上のディスプレイにビューを送信するカメラを備えたスコープを含むことができる。
【0004】
撮像システムは、それらが認識することができる情報によって、かつ/又は医療従事者(複数可)に伝達することができる情報によって制限される場合がある。例えば、三次元空間内の特定の隠れた構造、物理的輪郭、及び/又は寸法は、特定の撮像システムでは手術中に認識できないことがある。別の一例では、特定の撮像システムは、手術中に、特定の情報を、医療従事者(複数可)に通信すること、及び/又は伝達すること、ができない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改善された外科用の撮像が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、1つの視覚化を別の視覚化で制御するためのデバイス、システム、及び方法が提供される。
【0007】
一態様では、外科的方法が提供され、当該外科的方法は、一実施形態では、外科用デバイスの複数の電極のそれぞれから標的組織にエネルギーを送達することを含む。複数の電極は、患者の第1の解剖学的空間内にある。本方法は、エネルギーが標的組織に送達されている状態で、センサを用いて、患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視することと、コントローラにおいて、測定された組織パラメータを示すセンサからの信号を受信することと、コントローラを用いて、測定された組織パラメータを示す信号に基づいて、複数の電極の各々の電力を制御することと、を含む。
【0008】
この方法は、任意の数の変形例を有することができる。例えば、標的組織は、患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり得る。第1の解剖学的空間は、十二指腸内にあり得る。第2の解剖学的空間は、十二指腸外にあり得る。制御は、複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させて、エネルギーを送達させ、複数の電極のうちの残りの数には、エネルギーを送達させないこと、及び温度を含む組織パラメータを用いて、監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように電力を制御すること、のうちの少なくとも1つを含み得る。別の一例では、組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含むことができる。更に別の一例では、標的組織は組織壁とすることができ、複数の電極は組織壁の第1の側に位置することができ、第2の解剖学的空間は組織壁の反対側に位置することができる。また更に別の一例では、第1の解剖学的空間は中空器官内にあることができ、第2の解剖学的空間は中空器官外にある。別の一例では、第1の解剖学的空間は管腔内にあってもよく、第2の解剖学的空間は管腔外にあってもよい。更に別の一例では、外科用ハブが、コントローラを含むことができる。別の一例では、ロボット外科用システムは、コントローラを含むことができ、外科用デバイスは、ロボット外科用システムに解放可能に結合され、ロボット外科用システムによって制御され得る。
【0009】
別の一実施形態では、外科的方法は、外科用デバイスの複数の電極のそれぞれから標的組織にエネルギーを送達することを含む。複数の電極は、組織壁の第1の側に位置する。本方法はまた、組織壁の第2の反対の側に位置するセンサを用いて、組織パラメータを感知することと、エネルギー送達中に、コントローラを用いて、感知された組織パラメータに基づいて、複数の電極の各々の電力レベルを調整することとを含む。
【0010】
この方法は、あらゆる方法で変更可能である。例えば、組織パラメータは、温度及びインピーダンスのうちの少なくとも1つを含むことができ、組織壁は、中空器官の壁又は体腔の壁であり得る。別の一例では、感知された組織パラメータが所定の目標に到達し、エネルギー送達が停止するまで、感知及び調整を繰り返し行うことができる。
【0011】
別の態様では、外科用システムが提供され、当該外科用システムは、一実施形態では、患者の第1の解剖学的空間内にある間に、標的組織にエネルギーを送達するようにそれぞれ構成された複数の電極と、標的組織にエネルギーが送達されている状態で、患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するように構成されたセンサと、測定された組織パラメータを示す信号をセンサから受信することと、測定された組織パラメータを示す信号に基づいて、複数の電極のそれぞれの電力を制御することと、を行うように構成されたコントローラと、を含む、外科用デバイスを含む。
【0012】
システムは、いくつかの変形例を有し得る。例えば、標的組織は、患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり得る。第1の解剖学的空間は、十二指腸内にあり得る。第2の解剖学的空間は、十二指腸外にあり得る。制御は、複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させてエネルギーを送達し、複数の電極のうちの残りの数の電極はエネルギーを送達しないこと、及び温度を含む組織パラメータを用いて、監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように電力を制御すること、のうちの少なくとも1つを含み得る。別の一例では、組織パラメータは、インピーダンスを含むことができる。更に別の一例では、組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含むことができる。また更に別の一例では、標的組織は組織壁とすることができ、複数の電極は組織壁の第1の側に位置することができ、第2の解剖学的空間は組織壁の反対側に位置することができる。別の一例では、第1の解剖学的空間は中空器官内にあってよく、第2の解剖学的空間は中空器官外にあってよい。更に別の一例では、第1の解剖学的空間は管腔内にあってもよく、第2の解剖学的空間は管腔外にあってもよい。別の一例では、標的組織は、患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であってもよく、第1の解剖学的空間は、十二指腸内にあってもよく、第2の解剖学的空間は、十二指腸外にあってもよい。更に別の一例では、外科用ハブが、コントローラを含むことができる。更に別の一例では、ロボット外科用システムは、コントローラを含むことができ、外科手術デバイスは、ロボット外科用システムに解放可能に結合し、ロボット外科用システムによって制御されるように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、添付の図面を参照して説明する。
図1】手術可視化システムの一実施形態の概略図である。
図2図1の外科用デバイス、撮像デバイス、及び重要構造の間での三角測量の概略図である。
図3】手術可視化システムの別の一実施形態の概略図である。
図4】手術可視化システム用の制御システムの一実施形態の概略図である。
図5】手術可視化システムのための制御システムの制御回路の一実施形態の概略図である。
図6】手術可視化システムの組み合わせ論理回路の一実施形態の概略図である。
図7】手術可視化システムの順序論理回路の一実施形態の概略図である。
図8】手術可視化システムの更に別の一実施形態の概略図である。
図9】手術可視化システム用の制御システムの別の一実施形態の概略図である。
図10】種々の生物学的物質についての波長対吸収係数を示すグラフである。
図11】手術部位を視覚化するスペクトルエミッタの一実施形態の概略図である。
図12】尿管を遮蔽物と区別するための例示的なハイパースペクトル識別シグネチャを示すグラフである。
図13】動脈を遮蔽物と区別するための例示的なハイパースペクトル識別シグネチャを示すグラフである。
図14】神経を隠蔽物と区別するための例示的なハイパースペクトル識別シグネチャを示すグラフである。
図15】手術中に利用されている近赤外(NIR)飛行時間測定システムの一実施形態の概略図である。
図16図15のシステムの飛行時間タイミング図である。
図17】手術中に利用されている近赤外(NIR)飛行時間測定システムの別の一実施形態の概略図である。
図18】コンピュータ実装双方向外科用システムの一実施形態の概略図である。
図19】手術室内で外科処置を行うために使用されている、外科用システムの一実施形態の概略図である。
図20】スマート外科用器具と外科用ハブとを含む、外科用システムの一実施形態の概略図である。
図21図20のスマート外科用器具を制御する方法を示すフローチャートである。
図22】結腸の大規模な切除を示す、結腸の概略図である。
図23】十二指腸粘膜表面修復処置の一実施形態の斜視部分断面図である。
図24】補助材の一実施形態の斜視図である。
図25図24の補助材の一部分の斜視図である。
図26】補助材の別の一実施形態の斜視図である。
図27】補助材の更に別の一実施形態の斜視図である。
図28】アブレーションデバイスのエネルギーを制御する一実施形態を図示する。
図29】スコープが配置された組織壁を押圧する可撓性フォースプローブの一実施形態の概略断面図である。
図30図29のプローブ及びスコープの斜視図である。
図31】内部に第1の電極及び第2の電極が配置された体腔の概略断面図である。
図32】4つの時点にわたる、図31の第1の電極及び体腔の一部の図である。
図33】時間(図32の4つの時点を含む時間)に対する、温度、推定厚さ、電力、及びインピーダンスを示すグラフである。
図34】圧縮構成のアブレーションデバイスの一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図35】膨張構成にある図34のアブレーションデバイスの遠位部分の斜視図である。
図36】腫瘍に対して配置された図35のアブレーションデバイスの斜視図である。
図37】アブレーションデバイスの別の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図38】体腔内に配置されたスコープ及びアブレーションデバイスと、体腔外に配置された撮像デバイスとの、一実施形態の斜視部分断面図である。
図39図38の一部分の概略断面図である。
図40図38の実施形態に関する、時間に対する、電力、組織インピーダンス、組織温度、及び電極圧力を示すグラフである。
図41】内部に第1の電極及び第2の電極が配置された体腔の、別の概略断面図である。
図42図41の実施形態に関する、温度及び電力を示すグラフである。
図43】内部に第1の電極及び第2の電極が配置された体腔の、更に別の概略断面図である。
図44図43の実施形態に関する、温度及び電力を示すグラフである。
図45】体腔内に配置されたスコープ及びアブレーションデバイスと、体腔の外部に配置された光ファイバセンサとの、一実施形態の斜視部分断面図である。
図46図45の実施形態に関する、温度及び電力を示すグラフである。
図47】第1の膨張状態にあり、アブレーションデバイスの4つの電極がエネルギーを送達している、アブレーションデバイスの一実施形態の概略図である。
図48】第2の膨張状態にあり、4つの電極がエネルギーを送達している、図47のアブレーションデバイスの概略図である。
図49】第1の膨張状態にあり、4つの電極のうちの2つがエネルギーを送達している、図47のアブレーションデバイスの概略図である。
図50】第2の膨張状態にあり、4つの電極のうちの3つがエネルギーを送達している、図47のアブレーションデバイスの概略図である。
図51】上方ジョー及び下方ジョーを含むエンドエフェクタの一実施形態の側面概略図である。
図52】開放位置にある上方ジョー及び下方ジョーを含み、組織が上方ジョーと下方ジョーとの間に配置されている、エンドエフェクタの、別の一実施形態の側面概略図である。
図53】上方ジョー及び下方ジョーが閉鎖位置にある、図52のエンドエフェクタの電極構成の一実施形態の断面図である。
図53A図53の電極構成及び組織の概略図である。
図54図53の上方ジョー及び下方ジョー並びに組織の別の断面図である。
図55】上方ジョー及び下方ジョーが閉鎖位置にある、図52のエンドエフェクタの電極構成の別の一実施形態の断面図である。
図56図55の上方ジョー及び下方ジョー並びに組織の別の断面図である。
図57】上方ジョー及び下方ジョーが閉鎖位置にある、図52のエンドエフェクタの電極構成の、更に別の一実施形態の断面図である。
図58図57の上方ジョー及び下方ジョー並びに組織の別の断面図である。
図59】組織に印加され得る一連のパルスの一実施形態である。
図60】治療エネルギー印加どうしの間の組織を監視するために周波数応答を使用するプロセスの、一実施形態のフローチャートである。
図61図60のプロセスにおける多周波数印加の一実施形態を示す概略図である。
図62図60のプロセスの概略図である。
図63】可変周波数測定パルス及び組織に印加され得る治療的処置パルスの、一実施形態を示す図である。
図64図63のパルスを使用するプロセスの一実施形態を示す概略図である。
図65】高周波測定パルス及び組織に印加され得る治療的処置パルスの、一実施形態を示す図である。
図66図65の高周波測定パルスの測定された許容可能な状態を示す図である。
図67図65の高周波測定パルスの測定された不良状態を示す図である。
図68図65の高周波測定パルスの測定された限界状態を示す図である。
図69】第1の測定パルス及び第2の測定パルス並びに組織に印加され得る治療的処置パルスの、一実施形態を示す図である。
図70】可変周波数測定パルスを提供する一実施形態の概略図である。
図71図70の図の一部分を示す別の概略図である。
図72】アブレーションデバイスの別の一実施形態の遠位部分の斜視図である。
図73】十二指腸の内側に配置された第1の磁石を含むアブレーションデバイス、及び十二指腸外側に配置された第2の磁石を含む外科用デバイスの、一実施形態の斜視部分断面図である。
図74】十二指腸内の受動構成にある、図73の第1の磁石の断面図である。
図75】十二指腸内の吸引構成にある、図73の第1の磁石の断面図である。
図76】十二指腸内の反発構成にある、図73の第1の磁石の断面図である。
図77】中空器官又は体腔内に位置するスコープから遠位方向に延出するアブレーションデバイスの別の一実施形態の側面概略部分断面図である。
図78】磁石が中空器官又は体腔の外表面の周囲に配置された、図77のスコープ及びアブレーションデバイスの斜視部分透視図である。
図79】スコープ、アブレーションデバイス、及び第1の位置と第2の位置との間で移動させられる磁石の、側面概略部分断面図である。
図80図77のスコープの3つの位置についての組織厚さ及び磁力を示すグラフである。
図81】組織壁を通して視覚化する超音波撮像デバイスの側面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されるデバイス、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、ある特定の例示的な実施形態について、これから説明する。これらの実施形態の1つ以上の実施例が、添付の図面に例解されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示されるデバイス、システム、及び方法は、非限定的な例示的な実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0015】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に決定することができる点が認識されるであろう。当業者は、寸法が正確な値ではなくても、製作公差及び測定機器の感度などの諸々の要因により、その値に近い値であると考えられることを理解するであろう。システム及びデバイスのサイズ及び形状、並びにその構成要素は、少なくとも、システム及びデバイスがそれとともに使用される構成要素のサイズ及び形状に依存することができる。
【0016】
手術可視化
一般に、手術可視化システムは、「デジタル外科手術」を活用して、患者の解剖学的構造及び/又は外科処置に関する追加情報を取得するように構成されている。手術可視化システムは、データを、有用な様式で、1人以上の医療従事者に伝達するように更に構成されている。本開示の様々な態様は、患者の解剖学的構造及び/若しくは外科処置の改善された視覚化を提供し、かつ/又は外科用ツール(本明細書では「外科用デバイス」又は「外科用器具」とも呼ばれる)の改善された制御を提供するために視覚化を使用する。
【0017】
「デジタル外科手術」は、ロボットシステム、先進的撮像、先進的器具の利用、人工知能、機械学習、性能追跡及びベンチマーキングのためのデータ分析、手術室(OR)の内外両方での接続性などを包含することができる。本明細書に記載される様々な手術可視化システムは、ロボット外科用システムと組み合わせて使用することができるが、手術可視化システムは、ロボット外科用システムとともに使用することに限定されない。特定の事例では、ロボットなしで、並びに/又は、ロボット支援が制限されている、及び/若しくは任意選択である状態であっても、手術可視化システムを用いて、手術可視化を実施することができる。同様に、ロボットなしで、並びに/又はロボット支援が制限されている状態、及び/若しくは任意でこうした支援がある状態であっても、デジタル外科手術を実施することができる。
【0018】
特定の例では、手術可視化システムを組み込む外科用システムは、重要構造を特定し、それらを回避するためのスマート切開を可能にすることができる。重要構造としては、解剖学的構造、例えば他の解剖学的構造の中でもとりわけ、尿管、上腸間膜動脈などの動脈、門脈などの静脈、横隔神経などの神経、及び/又は腫瘍が挙げられる。他の例では、重要構造は、解剖学的領域における異物構造、例えば、外科用デバイス、手術用締結具、クリップ、留め金、ブジー、バンド、プレート、及び他の異物構造であることができる。重要構造は、患者ごと及び/又は処置ごとに決定される場合がある。スマート切開術は、例えば、切開のための改善された術中ガイダンスを提供することができ、かつ/又は、例えば、重要な解剖学的構造の検出及び回避技術によって、よりスマートな判断を可能にすることができる。
【0019】
手術可視化システムを組み込んだ外科用システムはまた、改善されたワークフローによって最適な位置(複数可)でより一貫した吻合を提供するスマート吻合術を可能にすることができる。癌の位置確定技術は、手術可視化プラットフォームを用いて改善されることができる。例えば、癌の位置確定技術は、癌の位置、向き、及びそのマージンを特定し、追跡することができる。特定の例では、癌の位置確定技術は、外科処置中に外科用器具、患者、及び/又は患者の解剖学的構造の移動を補い、医療従事者を、対象の点に戻す誘導を提供することができる。
【0020】
手術可視化システムは、組織の特徴付けの改善並びに/又はリンパ節診断の改善及びマッピングの改善を提供し得る。例えば、組織特性評価技術は、特に切開時、及び/又は組織内のステープリングデバイスの配置時に、物理的触覚を必要とせずに組織の種類及び健康状態を特性評価することができる。特定の組織特性評価技術は、電離放射線及び/又は造影剤を使用せずに利用することができる。リンパ節診断及びマッピングに関して、手術用視覚化プラットフォームは、例えば、癌診断及びステージ診断に関与するリンパ系及び/又はリンパ節を、例えば手術前に位置確定し、マッピングし、理想的には、診断することができる。
【0021】
外科処置中、「肉眼」及び/又は撮像システムを介して医療従事者が利用可能である情報は、不完全な手術部位のビューを提供する場合がある。例えば、器官内に埋め込まれた又は埋もれた構造などの特定の構造は、ビューから少なくとも部分的に隠され、見えない場合がある。追加的に、特定の寸法及び/又は相対距離は、既存のセンサシステムでの確認することが難しく、かつ/又は「肉眼」では把握が難しい場合がある。更に、特定の構造は、手術前(例えば、外科処置前であるが処置前のスキャン後)、及び/又は手術中に移動することがある。そのような例では、医療従事者は、手術中に重要構造の位置を正確に決定することができない場合がある。
【0022】
重要構造の位置が不確定である場合、及び/又は重要構造と外科手術ツールとの間の近接度が不明である場合、医療従事者の意思決定プロセスが阻害される場合がある。例えば、医療従事者は、重要構造を不注意で切開してしまうのを回避するために、特定の領域を回避するという場合があり得る。しかしながら、回避された領域が、不必要に大きく、かつ/又は、少なくとも部分的に場所を誤っている可能性がある。不確実性、及び/又は過度/過剰な用心に起因して、医療従事者が、特定の所望の領域に到達できない場合がある。例えば、重要構造がその特定領域にない場合、及び/又はその特定領域での医療従事者の行為によって悪影響がない場合であっても、用心のし過ぎにより、医療従事者が重要構造を回避しようと努力して、腫瘍及び/又は他の望ましくない組織の一部分を残してしまう場合がある。特定の例では、手術成績は知識及び/又は確実性が高まるとともに向上される場合があり、これにより、外科医にとってより正確であること、及び特定の事例では、特定の解剖学的領域に対してより抑制的/より積極的になることが可能になる。
【0023】
手術可視化システムは、術中に、重要な構造を識別したり、回避したりするのを可能にすることができる。したがって、手術可視化システムは、術中の意思決定を強化し、外科的転帰を改善するのを可能にし得る。手術可視化システムは、医療従事者が「肉眼」で見るもの、並びに/又は撮像システムが認識し、かつ/若しくは医療従事者に伝達できるものを超えた、高度な視覚化能を提供することができる。様々な手術可視化システムは、医療従事者が組織の治療(例えば、切開等)の前に知ることができることを補強かつ強化できることによって、様々な事例における転帰を改善することができる。結果として、手術可視化システムが、例えば、切開中に接近し得る重要構造を追跡していることを認識しているので、医療従事者は、外科処置を通して勢いを確実に維持することができる。手術可視化システムは、医療従事者が外科処置を休止し、及び/又は減速させ、重要構造に対する不注意による損傷を防止するためにその構造までの近接度を評価するのに十分な時間内で、医療従事者に対して指示を提供することができる。手術可視化システムは、理想的で、最適化された、及び/又はカスタマイズ可能な量の情報を医療従事者に提供して、健康な組織及び/又は重要構造(複数可)への不注意による損傷を回避しつつ、医療従事者が組織全体を確実及び/又は迅速に動くことを可能にし、これによって、外科処置から生じる損傷のリスクを最小限に抑えることができる。
【0024】
手術可視化システムは、以下に詳細に説明される。一般に、手術可視化システムは、複数のスペクトル波を放射するように構成されている第1の光エミッタと、光パターンを放射するように構成されている第2の光エミッタと、可視光、スペクトル波に対する分子応答(分光イメージング)、及び/又は光パターンを検出するように構成されている受信機又はセンサと、を含むことができる。手術可視化システムはまた、撮像システムと、受信機及び撮像システムを信号通信する制御回路と、を含むことができる。受信機からの出力に基づいて、制御回路は、手術部位における可視表面の幾何学的表面マップ、例えば、3次元表面トポグラフィ、及び例えば、少なくとも部分的に隠された構造までの距離などの、手術部位に対する距離を決定することができる。撮像システムは、幾何学的表面マップ及び距離を、医療従事者に伝達することができる。そのような例では、医療従事者に提供される手術部位の拡張ビューは、手術部位に関連するコンテキスト内で隠れた構造の表示を提供することができる。例えば、撮像システムは、表面の下方のユーティリティ配管を示すために地面に引かれた線と同様に、隠している及び/又は遮断している組織の幾何学的表面マップ上に隠れた構造を仮想的に強化することができる。追加的に、又は、代替的に、撮像システムは、可視の遮断している組織まで、及び/若しくは少なくとも部分的に隠れた構造までの外科手術ツールの近接度、並びに/又は、遮蔽している組織の可視表面の下方に隠れた構造の深さを伝達することができる。例えば、可視化システムは、視認できる組織の表面上の拡張された線に対する距離を決定し、その距離を撮像システムに伝達することができる。
【0025】
本開示を通じて、特に可視光に言及しない限り、「光」への言及は全て、電磁放射線(electromagnetic radiation、EMR)波長スペクトルの可視光部分及び/又は可視光外部分における電磁波又は光子を含むことができる。可視光スペクトルは、場合によっては、光スペクトル又は発光スペクトルとも称され、人間の目に見える(例えば、人間の目によって検出することができる)電磁スペクトルの一部分であり、可視光、又は単に光と称されることがある。典型的な人間の目は、空気中の約380nm~約750nmの波長に応答する。可視光外スペクトル(例えば、非発光スペクトル)は、可視スペクトルの下方及び上方にある電磁スペクトルの部分である。可視光外スペクトルは、人間の目では検出できない。約750nmを超える波長は、赤色の可視光スペクトルよりも長く、これらは可視光外赤外線(infrared、IR)、マイクロ波及び無線電磁放射線になる。約380nm未満の波長は、紫色スペクトルよりも短く、これらは可視光外紫外線、X線及びガンマ線電磁放射線になる。
【0026】
図1は、手術可視化システム100の一実施形態を示す。手術可視化システム100は、解剖学的領域内の重要構造101の視覚的表示を作り出すように構成されている。重要構造101は、単一の重要構造又は複数の重要構造を含むことができる。本明細書で論じるように、重要構造101は、解剖学的構造例えば、尿管、上腸間膜動脈などの動脈、門脈などの静脈、横隔神経などの神経、脈管、腫瘍、若しくは他の解剖構造、又は外来の構造(例えば、外科用デバイス、外科用締結具、外科用クリップ、外科用タック、ブジー、外科用バンド、外科用プレート、若しくは他の外来構造など)の様々な構造のうちの任意のものであることができる。本明細書において論じるように、重要構造101は、患者ごと及び/又は処置ごとに識別されることができる。重要構造の実施形態及び可視化システムを使用して重要構造を識別する実施形態は、2020年10月6日に発行された、「Visualization Of Surgical Devices」と題する米国特許第10,792,034号に更に説明されており、この特許文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0027】
いくつかの事例では、重要構造101は、組織103に埋め込まれることができる。組織103は、例えば、脂肪、結合組織、癒着、及び/又は器官等の、種々の組織のうちのいずれかであることができる。換言すれば、重要構造101は、組織103の表面105の下方に位置し得る。そのような例では、組織103が、医療従事者の「肉眼による」ビューから重要構造101を隠している。組織103はまた、手術可視化システム100の撮像デバイス120のビューから重要構造101を覆い隠す。重要構造101は、医師及び/又は撮像デバイス120のビューから完全に覆い隠される代わりに、部分的に覆い隠される場合もある。
【0028】
手術可視化システム100は、臨床分析及び/又は医学的介入で使用することができる。特定の事例では、手術可視化システム100を術中に使用して、近接データ、寸法、及び/又は距離に関するリアルタイム情報などのリアルタイム情報を、外科処置中に医療従事者に提供することができる。当業者であれば、情報は正確にリアルタイムでなくてもよく、それにもかかわらず、様々な理由のいずれかのためにリアルタイムであると見なされることを理解するであろう。その理由としては、データ送信によって引き起こされる時間遅延、データ処理によって引き起こされる時間遅延、及び/又は測定機器の感度などが挙げられる。手術可視化システム100は、重要構造(複数可)を術中に特定し、かつ/又は外科用デバイスが、重要構造(複数可)101を回避するのを容易にするように構成されている。例えば、重要構造101を特定することによって、医療従事者は、外科処置中に、重要構造101及び/又は重要構造101の既定の近接領域の周囲で、外科用デバイスを操作することを回避できる。別の一例では、重要構造101を識別することによって、医療従事者は、重要構造101及び/又はその近くの切開することを回避できるが、それによって、重要構造101への損傷を防止するのに役立ち、及び/又は医療従事者によって使用されている外科用デバイスが重要構造101によって損傷されるのを防止するのに役立つ。
【0029】
手術可視化システム100は、手術可視化システムの距離センサシステム104と組み合わせた、組織の特定及び幾何学的表面マッピングを組み込むように構成されている。組み合わせると、手術可視化システム100のこれらの特徴は、解剖学的領域内の重要構造101の位置、並びに/又は、可視組織103の表面105及び/若しくは重要構造101への外科用デバイス102の近接度を決定することができる。更に、手術可視化システム100は、手術部位のリアルタイムのビューを提供するように構成された撮像デバイス120を含む、撮像システムを含む。撮像デバイス120は例えば、反射されたスペクトル波形を検出し、様々な波長に対する分子応答に基づいて画像のスペクトルキューブを生成するように構成されているスペクトルカメラ(例えば、ハイパースペクトルカメラ、マルチスペクトルカメラ、又は選択的スペクトルカメラ)を含むことができる。撮像デバイス120からのビューは、例えばディスプレイ(例えば、モニタ、コンピュータタブレット画面等)上等で、医師にリアルタイムで提供されることができる。表示されたビューは、組織の識別、ランドスケープマッピング、及び距離センサシステム104に基づく追加の情報で、拡張されることができる。そのような事例では、手術可視化システム100は、複数のサブシステム、つまり、撮像サブシステム、表面マッピングサブシステム、組織特定サブシステム、及び/又は距離決定サブシステムを含む。これらのサブシステムは協働して、手術中に、高度なデータ合成及び統合された情報を医療従事者に対して提供することができる。
【0030】
撮像デバイス120は、例えば、可視光、スペクトル光波(可視光又は可視光外)、及び構造化された光パターン(可視光又は可視光外)を検出するように構成されることができる。撮像デバイス120の例としては、スコープ、例えば内視鏡、関節鏡、血管鏡、気管支鏡、胆道鏡、結腸鏡、膀胱鏡、十二指腸鏡、腸鏡、食道胃-十二指腸鏡(胃鏡)、喉頭鏡、鼻咽頭-鼻腔鏡、S状結腸鏡、胸腔鏡、尿管鏡、又は外視鏡を含む。スコープは、低侵襲外科処置において特に有用であることができる。切開手術用途では、撮像装置120はスコープを含まなくてもよい。
【0031】
組織識別サブシステムは、スペクトル撮像システムを用いて達成することができる。スペクトル撮像システムは、例えば、ハイパースペクトル撮像、マルチスペクトル撮像、又は選択的スペクトル撮像などの撮像に依拠することができる。組織のハイパースペクトル撮像の実施形態は、2016年3月1日に発行された、「System and method for gross anatomic pathology using hyperspectral imaging」と題する米国特許第9,274,047号に更に説明されており、その特許文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
表面マッピングサブシステムは、光パターンシステムを用いて達成されることができる。表面マッピングのために光パターン(又は構造化された光)を使用する種々の表面マッピング技法を、本明細書に説明される手術可視化システムにおいて利用することができる。構造化光は、表面上に既知のパターン(多くの場合、グリッド又は水平バー)を投影するプロセスである。特定の例では、可視光外の(つまり、検知不能な)構造化された光を利用することができ、構造化された光は、投影されたパターンが混乱し得る他のコンピュータビジョンタスクと干渉することなく利用される。例えば、2つの正確に反対のパターンを繰り返す赤外光又は非常に速いフレームレートの可視光を利用して干渉を防止することができる。表面マッピングの実施形態と、光源及び光パターンを投影するためのプロジェクタを含む外科用システムとは、以下に更に記載されている:米国特許出願公開第2017/0055819号(2017年3月2日公開)、発明の名称「Set Comprising A Surgical Instrument」;米国特許出願公開第2017/0251900号(2017年9月7日公開)、発明の名称「Description system」;及び米国特許出願公開第2021/0196385号(2021年7月1日公開)、発明の名称「Surgical Systems For Generating Three Dimensional Constructs of Anatomical Organs And Coupling Identified Anatomical Structures Thereto」。なお、これらの特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
距離決定システムは、表面マッピングシステムに組み込むことができる。例えば、構造化された光を利用して、可視表面105の三次元(3D)仮想モデルを生成し、可視表面105に対する様々な距離を決定することができる。追加的に、又は、代替的に、距離決定システムは飛行時間測定に依存し、手術部位における特定された組織(又は他の構造)に対する1つ以上の距離を決定することができる。
【0034】
手術可視化システム100はまた、外科用デバイス102を含む。外科用デバイス102は、任意の好適な外科用デバイスであることができる。外科用デバイス102の例としては、外科用解剖器具、外科用ステープラ、外科用把持器、クリップアプライヤ、煙排出器、外科用エネルギーデバイス(例えば、単極プローブ、双極プローブ、アブレーションプローブ、超音波デバイス、超音波エンドエフェクタなど)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、外科用デバイス102は、外科用デバイス102のシャフトの遠位端から延在し、それらの間に組織を係合するように構成された対向するジョーを有するエンドエフェクタを含む。
【0035】
手術可視化システム100は、重要構造101を識別し、重要構造101に対する外科用デバイス102の近接性とを識別するように構成されることができる。手術可視化システム100の撮像デバイス120は、可視光、スペクトル光波(可視光又は可視光外)、及び構造化光パターン(可視光又は可視光外)などの様々な波長の光を検出するように構成されている。撮像デバイス120は、異なる信号を検出するための複数のレンズ、センサ、及び/又は受信機を含むことができる。例えば、撮像デバイス120は、本明細書で説明されるように、ハイパースペクトルカメラ、マルチスペクトルカメラ、又は選択的スペクトルカメラであることができる。撮像デバイス120は、波形センサ122(例えば、スペクトル画像センサ、検出器、及び/又は三次元カメラレンズ)を含むことができる。例えば、撮像デバイス120は、2つの二次元画像を同時に記録することによって、手術部位の三次元(3D)画像を生成し、手術部位の3D画像をレンダリングし、かつ/又は、手術部位で1つ以上の距離を決定するために一緒に使用される右側レンズ及び左側レンズを含むことができる。追加的に又は代替的に、撮像デバイス120は、本明細書で更に説明されるように、可視組織のトポグラフィ、並びに隠れた重要構造の特定及び位置を示す画像を受信するように構成することができる。例えば、図1に示すように、撮像デバイス120の視野を、組織103の表面105上の光パターン(構造化光)と重ねることができる。
【0036】
この図示されている実施形態のように、手術可視化システム100を、ロボット外科用システム110に組み込むことができる。ロボット外科用システム110は、本明細書で説明されるように、様々な構成を有することができる。この図示されている実施形態では、ロボット外科用システム110は、第1のロボットアーム112と第2のロボットアーム114とを含む。ロボットアーム112、114は各々、サーボモータ制御部を含むことができる剛性構造部材116及び継手118を含む。第1のロボットアーム112は、外科用デバイス102を操作するように構成されており、第2のロボットアーム114は、撮像デバイス120を操作するように構成されている。ロボット外科用システム110のロボット制御ユニットは、外科用デバイス102及び撮像デバイス120にそれぞれ作用し得る第1のロボットアーム112及び第2のロボットアーム114への制御動作を発するように構成することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム112、114のうちの1つ以上は、外科処置で使用される主ロボットシステム110とは別個であることができる。例えば、ロボットアーム112、114のうちの少なくとも1つは、サーボモータ制御部なしに特定の座標系に配置され、かつ位置合わせされることができる。例えば、ロボットアーム112、114用の閉ループ制御システム及び/又は複数のセンサは、特定の座標系に対するロボットアーム(複数可)112、114の位置を制御し、かつ/又は位置合わせすることができる。同様に、外科用デバイス102及び撮像デバイス120の位置は、特定の座標系に対して位置合わせすることができる。
【0038】
ロボット外科用システムの例としては、Ottava(商標)ロボット支援外科用システム(Johnson&Johnson (New Brunswick,NJ))、ダビンチ(登録商標)外科用システム(Intuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,CA))、Hugo(商標)ロボット支援外科用システム(Medtronic PLC(Minneapolis,MN))、Versius(登録商標)外科用ロボットシステム(CMR Surgical Ltd(Cambridge,UK))、及びMonarch(登録商標)プラットフォーム(Auris Health,Inc.(Redwood City,CA))が挙げられる。様々なロボット外科用システムの実施形態及びロボット外科用システムを使用する実施形態は、以下に更に説明されている:米国特許出願公開第2018/0177556号(2016年12月28日出願)、発明の名称「Flexible Instrument Insertion Using An Adaptive Force Threshold」;米国特許出願公開第2020/0000530号(2019年4月16日出願)、発明の名称「Systems And Techniques For Providing Multiple Perspectives During Medical Procedures」;米国特許出願公開第2020/0170720号(2020年2月7日出願)、発明の名称「Image-Based Branch Detection And Mapping For Navigation」;米国特許出願公開第2020/0188043号(2019年12月9日出願)、発明の名称「Surgical Robotics System」;米国特許出願公開第2020/0085516号(2019年9月3日出願)、発明の名称「Systems And Methods For Concomitant Medical Procedures」;米国特許第8,831,782号(2013年7月15日出願)、発明の名称「Patient-Side Surgeon Interface For A Teleoperated Surgical Instrument」;及び国際公開第2014151621号(2014年3月13日出願)、発明の名称「Hyperdexterous Surgical System」。なお、これらの特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
手術可視化システム100はまた、エミッタ106を含む。エミッタ106はまた、縞、グリッド線、及び/又はドットなどの光パターンを放射して、表面105のトポグラフィ又はランドスケープの決定を可能にするように構成されている。例えば、投影された光アレイ130は、表面105上の三次元スキャン及び位置合わせのために使用することができる。投影された光アレイ130は、外科用デバイス102、及び/又はロボットアーム112、114のうちの1つ、及び/又は撮像デバイス120上に位置するエミッタ106から放射することができる。一態様では、手術可視化システム100が投影された光アレイ130を利用して、組織103の表面105によって画定される形状及び/又は表面105の運動を、手術中に決定する。撮像デバイス120は、表面105から反射された投影された光アレイ130を検出して、表面105のトポグラフィ、及び表面105に対する様々な距離を決定するように構成されている。
【0040】
この図示された実施形態におけるように、撮像デバイス120は、撮像デバイス120上に搭載されるか、又は別様に取り付けられること等によって、光波形エミッタ123を含むことができる。光波形エミッタ123は、組織103の表面105を透過して重要構造101に到達することができる電磁放射線124(近赤外(NIR)光子)を放射するように構成されている。撮像デバイス120及び光波形エミッタ123は、ロボットアーム114によって位置決め可能であり得る。光波形エミッタ123は、撮像デバイス120上に搭載されるか、又は別様に搭載されるが、他の実施形態では、撮像デバイス120とは別個の外科用デバイス上に配置されることができる。撮像デバイス120の対応する波形センサ122(例えば、画像センサ、分光計、又は振動センサ)は、波形センサ122によって受信された電磁放射線の影響を検出するように構成されている。光波形エミッタ123から放射される電磁放射線124の波長は、重要構造101などの解剖学的構造及び/又は身体構造の種類の特定を可能にするように構成されている。重要構造101の特定は、例えば、スペクトル分析、光音響、及び/又は超音波によって達成することができる。一態様では、電磁放射線124の波長は可変であることができる。波形センサ122及び光波形エミッタ123は、例えば、マルチスペクトル撮像システム及び/又は選択的スペクトル撮像システムを含むことができる。他の例では、波形センサ122及び光波形エミッタ123は、例えば光音響撮像システムを含むことができる。
【0041】
手術可視化システム100の距離センサシステム104は、手術部位における1つ以上の距離を決定するように構成されている。距離センサシステム104は、例えばこの例示的な実施形態におけるエミッタ106などのエミッタを含み、かつ受信機108を含む、飛行時間型距離センサシステムとすることができる。他の例では、飛行時間エミッタは構造化光エミッタとは別個であることができる。エミッタ106は非常に小さなレーザ源を含むことができ、受信機108は、マッチングセンサを含むことができる。距離センサシステム104は、「飛行時間」、つまり、エミッタ106によって放射されたレーザ光が、受信機108のセンサ部分に跳ね返ってくるまでにかかる時間を検出するように構成される。エミッタ106中で非常に狭い光源を使用することにより、距離センサシステム104が、距離センサシステム104の直ぐ前にある組織103の表面105までの距離を決定することを可能にする。
【0042】
距離センサシステム104の受信機108は、この図示された実施形態では外科用デバイス102上に配置されるが、他の実施形態では、受信機108は、外科用デバイス102の代わりに別個の外科用デバイス上に搭載されることができる。例えば、受信機108は、外科用デバイス102が手術部位に到達するようにそこを通って延在するカニューレ又はトロカール上に装着することができる。更に他の実施形態では、距離センサシステム104のための受信機108は、外科用デバイス102が結合される第1のロボットアーム112とは別個のロボットシステム110のロボット制御アーム上に(例えば、第2のロボットアーム114上に)搭載されることができ、別のロボットによって操作される可動アーム上に搭載されることができ、又は手術室(operating room、OR)の台若しくは固定具に搭載されることができる。いくつかの実施形態では、撮像デバイス120は、外科用デバイス102上のエミッタ106と撮像デバイス120との間の線を使用して、エミッタ106から組織103の表面105までの距離を決定するのを可能にする、受信機108を含む。例えば、(外科用デバイス102上にある)距離センサシステム104のエミッタ106、及び(撮像デバイス120上にある)受信機108の既知の位置に基づいて、距離dを三角測量することができる。受信機108の3D位置は、手術中、ロボット座標平面にとって既知であり得る、かつ/又はこれに対して位置合わせされることができる。
【0043】
この図示されている実施形態のように、距離センサシステム104のエミッタ106の位置は、第1のロボットアーム112によって制御することができ、距離センサシステム104の受信機108の位置は、第2のロボットアーム114によって制御することができる。他の実施形態では、手術可視化システム100は、ロボットシステムとは別に利用することができる。そのような例では、距離センサシステム104は、ロボットシステムとは独立した状態であることができる。
【0044】
図1では、dは、エミッタ106から組織103の表面105までのエミッタ-組織間距離であり、dは、外科用デバイス102の遠位端から組織103の表面105までのデバイス-組織間距離である。距離センサシステム104は、エミッタ-組織間距離dを決定するように構成されている。デバイス-組織間距離dは、外科用デバイス102上のエミッタ106の、外科用デバイス102の遠位端に対する既知の位置、例えば外科用デバイス102の遠位端の近位側にある、シャフト上のエミッタ106の既知の位置から得ることができる。言い換えると、エミッタ106と外科用デバイス102の遠位端との間の距離が既知である場合、デバイス-組織間距離dは、エミッタ-組織間距離dから決定することができる。いくつかの実施形態では、外科用デバイス102のシャフトは、1つ以上の関節継手を含むことができ、外科用デバイス102の遠位端にあるエミッタ106及びジョーに対して関節運動可能であることができる。関節運動構成は、例えば、多関節椎骨様構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、3Dカメラを利用して、表面105までの1つ以上の距離を三角測量することができる。
【0045】
図1では、距離dは、撮像デバイス120上に位置する光波形エミッタ123から重要構造101の表面までのカメラ-重要構造間の距離であり、距離dは、組織103の表面105の下方の重要構造101の深さ(例えば、外科用デバイス102に最も近い表面105の一部分と重要構造101との間の距離)である。撮像デバイス120上に位置する光波形エミッタ123から放射される光波形の飛行時間は、カメラ-重要構造間距離dを決定するように構成することができる。
【0046】
図2に示されるように、組織103の表面105に対する重要構造101の深さdは、カメラ-重要構造間距離d、並びに、外科用デバイス102上のエミッタ106の既知の位置、及び撮像デバイス120上の光波形エミッタ123の既知の位置(ひいては、これらの間の既知の距離d)から、三角測量によって決定され、距離dとdとの合計である距離dを決定することができる。追加的に、又は代替的に、光波形エミッタ123からの飛行時間は、光波形エミッタ123から組織103の表面105までの距離を決定するように構成することができる。例えば、第1の波形(又は波形範囲)を利用して、カメラ-重要構造間距離dを決定でき、第2の波形(又は波形範囲)を利用して、組織103の表面105までの距離を決定することができる。そのような例では、異なる波形を利用して、組織103の表面105の下方の重要構造101の深さを決定することができる。
【0047】
追加的又は代替的に、距離dは、超音波、位置合わせされた磁気共鳴画像(MRI)、又はコンピュータ断層撮影(CT)スキャンから決定することができる。更に他の事例では、撮像デバイス120によって受信された検出信号が材料の種類(例えば組織103のタイプ)に基づいて変動し得るので、距離dは、スペクトル撮像によって決定することができる。例えば、脂肪は、検出信号を第1の方法、又は第1の量で減少させることができ、コラーゲンは、検出信号を異なる第2の方法、又は第2の量で減少させることができる。
【0048】
ここで図3に示される手術可視化システム160の別の一実施形態では、撮像デバイス120ではなく外科用デバイス162が、光波形エミッタ123と、反射された波形を検出するように構成されている波形センサ122とを含む。光波形エミッタ123は、本明細書で説明されるように、外科用デバイス162などの共通デバイスから距離d、及び距離dを決定するための波形を放射するように構成されている。そのような事例では、組織103の表面105から重要構造101の表面までの距離dは、以下のように決定することができる:
=d-d
【0049】
手術可視化システム100は、手術可視化システム100の様々な態様を制御するように構成された制御システムを含む。図4は、手術可視化システム100(又は本明細書に記載の他の手術可視化システム)の制御システムとして利用することができる制御システム133の、一実施形態を示す。制御システム133は、メモリ134と信号通信するように構成されている制御回路132を含む。メモリ134は、例えば、重要構造(例えば、図1の重要構造101)を決定及び/又は認識する命令、1つ以上の距離及び/又は三次元デジタル表示を決定及び/又は計算する命令、並びに情報を医療従事者に通信するための命令などの、制御回路132により実行可能な命令を記憶するように構成されている。したがって、メモリ134内に記憶された命令は、プロセッサによって実行されると、上述のようにプロセッサに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品を構成する。また、そのような命令は、任意のコンピュータ可読媒体(例えば、光ディスク、SDカード、USBドライブなど、又は別個のデバイスのメモリなど)に記憶されてもよく、そこからメモリ134にコピーされるか、又は直接実行されてもよい。コピー又は直接実行のプロセスは、コンピュータプログラム製品を搬送するデータキャリア信号の作成を含む。この図示された実施形態におけるように、メモリ134は、表面マッピングロジック136、撮像ロジック138、組織特定ロジック140、及び距離決定ロジック141を記憶することができるが、メモリ134は、ロジック136、138、140、141の任意の組み合わせを記憶することができ、及び/又は様々なロジックを一緒に組み合わせることができる。制御システム133はまた、カメラ144(例えば、図1の撮像装置120を含む撮像システム)と、ディスプレイ146(例えば、モニタ、コンピュータタブレット画面など)と、カメラ144及びディスプレイ146を制御する制御部148と、を含む撮像システム142を含む。カメラ144は、様々な可視光スペクトル及び可視光外スペクトルで光を放射する様々な光源(例えば、可視光スペクトルイメージャ、三次元レンズ等)からの信号を受信するように構成された画像センサ135(例えば、波形センサ122)を含む。ディスプレイ146は、実際の、仮想の、及び/又は仮想的に拡張された画像及び/又は情報を、医療従事者に示すように構成されている。
【0050】
例示的な一実施形態では、画像センサ135は、ピクセルと呼ばれる別個の光検出器部位を最大で数百万個含む固体電子デバイスである。画像センサ135の技術は、電荷結合素子(CCD)イメージャ及び相捕型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージャの2つの範疇のうちの1つに分類され、最近現れた撮像における新しい技術としては、短波赤外線(short-wave infrared、SWIR)がある。別の種類の画像センサ135は、ハイブリッドCCD/CMOSアーキテクチャ(「sCOMS」の名称で販売)を採用し、CCD撮像基板にバンプ接合されたCMOS読み出し集積回路(readout integrated circuit、ROIC)からなる。CCD及びCMOSイメージセンサは、例えば、約400nm~約1000nmの範囲内など、約350nm~約1050nmの範囲内の波長に対する感度がある。当業者であれば、測定機器の感度及び製造公差などの様々な理由のいずれかのために、値が正確な値ではないかもしれないが、それにもかかわらずその値に近いと見なされるということを理解するであろう。CMOSセンサは、一般に、CCDセンサよりもIR波長に対して感度が高い。固体画像センサは、光電効果に基づいており、その結果、色を区別することができない。したがって、1チップ及び3チップの2種類のカラーCCDカメラが存在する。1チップカラーCCDカメラは、よく採用される低コストの画像化ソリューションを提供し、モザイク(例えば、ベイヤー)光学フィルタを使用して、入射光を一連の色に分離し、補間アルゴリズムを採用してフルカラー画像を解像する。次いで、各色は、異なるピクセルセットに方向付けられる。3チップカラーCCDカメラは、プリズムを採用することによってより高い分解能を提供し、入射スペクトルの各セクションを異なるチップに誘導する。オブジェクトの空間内の各点が、色を決定するためのアルゴリズムを使用するのではなく、別個のRGB強度値を有するため、より正確な色再現が可能である。3チップカメラは、非常に高い分解能を提供する。
【0051】
制御システム133はまた、各々が制御回路133に動作可能に結合された、スペクトル光源150及び構造化光源152を含む、エミッタ(例えば、エミッタ106)を含む。単一の光源は、スペクトル光源150の範囲内の波長の光及び構造化光源152の範囲内の波長の光を放射するようにパルス化することができる。あるいは、単一の光源は、可視光外スペクトル内の光(例えば、赤外スペクトル光)及び可視光スペクトル上の波長の光を供給するようにパルス化することができる。スペクトル光源150は、例えば、ハイパースペクトル光源、マルチスペクトル光源、及び/又は選択的スペクトル光源であることができる。組織特定ロジック140は、カメラ144の画像センサ135によって受信したスペクトル光源150からのデータを介して、重要構造(複数可)(例えば、図1の重要構造101)を識別するように構成されている。表面マッピングロジック136は、反射された構造化光に基づいて、可視組織(例えば、組織103)の表面の輪郭を決定するように構成されている。飛行時間測定により、距離決定ロジック141は、可視組織及び/又は重要構造101までの1つ以上の距離を決定するように構成されている。表面マッピングロジック136、組織特定ロジック140、及び距離決定ロジック141からの出力は、撮像ロジック138に提供され、撮像ロジック138によって組み合わされ、一体化され、及び/又は重ね合わされて、撮像システム142のディスプレイ146を介して医療従事者に伝達されるように構成されている。
【0052】
制御回路132は、様々な構成を有することができる。図5は、手術可視化システム100の態様を制御するように構成された制御回路132として使用することができる制御回路170の一実施形態を示す。制御回路170は、本明細書に説明される様々なプロセスを実装するように構成されている。制御回路170は、メモリ174に動作可能に結合されたプロセッサ172(例えば、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ)を含む、マイクロコントローラを含む。メモリ174は、機械実行可能命令を記憶するように構成され、これらの機械実行可能命令は、プロセッサ172によって実行されると、プロセッサ172に、本明細書に記載される様々なプロセスを実装するための機械命令を実行させる。プロセッサ172は、当該技術分野で既知の多数のシングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサのうちの任意の1つであることができる。メモリ174は、揮発性及び不揮発性の記憶媒体を含むことができる。プロセッサ172は、命令処理ユニット176、及び演算ユニット178を含む。命令処理ユニット176は、メモリ174から命令を受信するように構成されている。
【0053】
表面マッピングロジック136、撮像ロジック138、組織特定ロジック140、及び距離決定ロジック141は、様々な構成を有することができる。図6は、例えば、表面マッピングロジック136、撮像ロジック138、組織特定ロジック140、及び距離決定ロジック141のうちの1つ以上等のロジックを使用して、手術可視化システム100の態様を制御するように構成されている、組み合わせ論理回路180の一実施形態を図示する。組み合わせ論理回路180は、組み合わせロジック182を含む有限状態マシンを含み、組み合わせロジック182は、入力184において外科用デバイス(例えば、外科用デバイス102及び/又は撮像デバイス120)に関連付けられたデータを受信することと、組み合わせロジック182によってデータを処理することと、出力184を制御回路(例えば、制御回路132)に提供することと、を行うように構成されている。
【0054】
図7は、例えば、表面マッピングロジック136、撮像ロジック138、組織特定ロジック140、及び距離決定ロジック141のうちの1つ以上等のロジックを使用して、手術可視化システム100の態様を制御するように構成されている、順序論理回路190の一実施形態を図示する。順序論理回路190は、組み合わせロジック192、メモリ194、及びクロック196を含む、有限状態マシンを含む。メモリ194は、有限状態マシンの現在の状態を記憶するように構成されている。順序論理回路190は、同期又は非同期であることができる。組み合わせロジック192は、入力426において外科用デバイス(例えば、外科用デバイス102及び/又は撮像デバイス120)に関連付けられたデータを受信することと、組み合わせロジック192によってデータを処理することと、出力499を制御回路(例えば、制御回路132)に提供することと、を行うように構成されている。いくつかの実施形態では、順序論理回路190は、プロセッサ(例えば、図5のプロセッサ172)と、本明細書の様々なプロセスを実装する有限状態マシンと、の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、有限状態マシンは、組み合わせ論理回路(例えば図7の組み合わせ論理回路192)と順序論理回路190との組み合わせを含むことができる。
【0055】
図8は、手術可視化システム200の別の一実施形態を示す。手術可視化システム200は、概ね、図1の手術可視化システム100と同様に構成され、使用されるが、例えば、外科用デバイス202及び撮像デバイス220を含む。撮像デバイス220は、例えば、隠れた構造のスペクトル画像を取得するために複数の波長のスペクトル光を放射するように構成されているスペクトル光エミッタ223を含む。撮像デバイス220はまた、三次元カメラ及び関連する電子処理回路を含むことができる。例えば、尿管201a、及び器官203の表面205上には見えない器官203(この例では、子宮)内の血管201bなどの、ある重要構造を特定し、それらの回避を容易にするために、手術中に利用されている、手術可視化システム200が図示されている。
【0056】
手術可視化システム200は、構造化光によって、外科用デバイス202上のエミッタ206から子宮203の表面205までのエミッタ-組織間距離dを決定するように構成されている。手術可視化システム200は、エミッタ-組織間距離dに基づいて、外科用デバイス202から子宮203の表面205までのデバイス-組織間距離dを推定するように構成されている。また、手術可視化システム200は、尿管201aから表面205までの組織-尿管間距離d、及び撮像デバイス220から尿管201aまでのカメラ-尿管間距離dを決定するように構成されている。例えば、図1の手術可視化システム100に関して本明細書で説明するように、手術可視化システム200は、例えば、スペクトル撮像及び飛行時間センサによって、距離dを決定するように構成されている。様々な実施形態では、手術可視化システム200は、本明細書に記載される他の距離、及び/又は表面マッピングロジックに基づいて、組織-尿管間距離d(つまり、深さ)を決定(例えば、三角測量)することができる。
【0057】
上述したように、手術可視化システムは、手術可視化システムの様々な態様を制御するように構成された制御システムを含む。制御システムは、様々な構成を有することができる。図9は、例えば、図1の手術可視化システム100、図8の手術可視化システム200、又は本明細書に記載の他の手術可視化システムなどの、手術可視化システムのための、制御システム600の一実施形態を示す。制御システム600は、スペクトルシグネチャ組織の識別及び構造化された光-組織位置決めを統合する変換システムであって、重要な構造、特にこれらの構造が、例えば脂肪、結合組織、血液組織及び/若しくは器官(複数可)、並びに/若しくは血液といった組織によって不明瞭である場合にこれらの組織を識別し、かつ/又は器官内の健常組織と腫瘍及び/若しくは非健常組織とを区別するなどの組織の変動を検出する、変換システムである。
【0058】
制御システム600は、ハイパースペクトル撮像可視化システムを実装するように構成されており、このシステムでは、分子応答を利用して、手術視野内の解剖学的構造を検出及び特定する。制御システム600は、組織データを外科医及び/又は他の医療従事者に使用可能な情報に変換するように構成された変換論理回路648を含む。例えば、遮蔽している材料に対する波長に基づく可変反射率を利用して、解剖学的構造中の重要構造を特定することができる。更に、制御システム600は、特定されたスペクトルシグネチャと構造化光データとを画像内で組み合わせるように構成されている。例えば、制御システム600を採用して、拡張画像オーバーレイを用いたシステムにおける手術用途のための三次元データセットを作成することができる。技術は、追加の視覚的情報を用いて、手術中及び手術前の両方で採用することができる。様々な実施形態では、制御システム600は、1つ以上の重要構造の近接時に、医療従事者に警告を提供するように構成されている。外科処置及び重要構造(複数可)への近接度に基づくロボット自動化アプローチ及び半自動化アプローチを誘導するために、様々なアルゴリズムを採用することができる。
【0059】
制御システム600は、投影された光アレイを利用して、組織の形状及び動きを、手術中に決定する。あるいは、フラッシュライダを、組織の表面マッピングに利用してもよい。
【0060】
制御システム600は、重要構造(上述のように1つ以上の重要構造を含み得る)を検出し、重要構造の画像オーバーレイを提供し、可視組織の表面までの距離、及び埋め込まれた/埋もれた重要構造(複数可)までの距離を測定するように構成されている。制御システム600は、可視組織の表面までの距離を測定し、又は重要構造を検出し、重要構造の画像オーバーレイを提供することができる。
【0061】
制御システム600は、スペクトル制御回路602を備える。スペクトル制御回路602は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は図6図7、及び図8に関して説明される構成等の別の好適な回路構成であることができる。スペクトル制御回路602は、ビデオ入力プロセッサ606からビデオ入力信号を受信するように構成されたプロセッサ604を含む。プロセッサ604は、ハイパースペクトル処理を行うように構成されてよく、例えば、C/C++コードを利用することができる。ビデオ入力プロセッサ606は、例えば、シャッタ時間、波長、及びセンサ分析などの制御(メタデータ)データのビデオ入力を受容するように構成されている。プロセッサ604は、ビデオ入力プロセッサ606からのビデオ入力信号を処理し、例えば、インターフェース制御(メタデータ)データのハイパースペクトルビデオ出力を含むビデオ出力信号を、ビデオ出力プロセッサ608に提供するように構成されている。ビデオ出力プロセッサ608は、ビデオ出力信号を画像オーバーレイコントローラ610に提供するように構成されている。
【0062】
ビデオ入力プロセッサ606は、患者隔離回路614を介して患者側のカメラ612に動作可能に結合される。カメラ612は、固体画像センサ634を含む。患者隔離回路614は、患者がシステム内の他の回路から隔離されるように、複数の変圧器を含むことができる。カメラ612は、光学素子632及び画像センサ634を介して術中画像を受信するように構成されている。画像センサ634は、例えば、CMOS画像センサを含むことができるか、又は図4に関連して本明細書で論じられるもの等の別の画像センサ技術を含むことができる。カメラ612は、14ビット/ピクセル信号で、画像を出力(613)するように構成されている。当業者は、より高解像度又はより低解像度が使用できるということを理解するであろう。分離カメラ出力信号613は、この図示されている実施形態では、カメラ出力信号613を処理するように構成されている、ハードウェアレジスタ618及びNios2コプロセッサ620を利用するカラーRGB融合回路616に、提供される。ビデオ入力プロセッサ606及びレーザパルス制御回路622には、カラーRGB融合出力信号が提供される。
【0063】
レーザパルス制御回路622は、レーザ光エンジン624を制御するように構成されている。レーザ光エンジン624は、近赤外線(NIR)を含む複数の波長(λ1、λ2、λ3...λn)で光を出力するように構成されている。レーザ光エンジン624は、複数のモードで動作することができる。例えば、レーザ光エンジン624は、2つのモードで動作することができる。第1のモード、例えば、標準動作モードでは、レーザ光エンジン624は、照明信号を出力するように構成されている。第2モード、例えば、特定モードでは、レーザ光エンジン624はRGBG及びNIR光を出力するように構成されている。様々な実施形態では、レーザ光エンジン624は、偏光モードで動作することができる。
【0064】
レーザ光エンジン624からの光出力626は、手術中の手術部位627内の標的とされる解剖学的構造を照明するように構成されている。レーザパルス制御回路622はまた、手術部位627における手術組織、又は器官上に所定の波長(λ)で、ライン及び/又はドットのグリッド又はパターンなどのレーザ光パターン631を投影するように構成されているレーザパターンプロジェクタ630用のレーザパルスコントローラ628を制御するように構成されている。カメラ612は、カメラ光学素子632を通して出力されたパターン化された光及び反射光を受信するように構成されている。画像センサ634は、受信した光をデジタル信号に変換するように構成されている。
【0065】
カラーRGB融合回路616はまた、画像オーバーレイコントローラ610、並びに、レーザパターンプロジェクタ630によって手術部位627の標的とされる解剖学的構造上に投影されたレーザ光パターン631を読み取るためのビデオ入力モジュール636に信号を出力するように構成されている。処理モジュール638は、レーザ光パターン631を処理し、手術部位627において可視組織までの距離を表す第1のビデオ出力信号640を出力するように構成されている。データは、画像オーバーレイコントローラ610に提供される。処理モジュール638はまた、手術部位における標的とされる解剖学的構造の組織又は器官の三次元レンダリングされた形状を表す第2のビデオ信号642を出力するように構成されている。
【0066】
第1のビデオ出力信号640及び第2のビデオ出力信号642は、集積モジュール643に提供される三次元表面モデル上の重要構造の位置を表すデータを含む。スペクトル制御回路602のビデオ出力プロセッサ608からのデータと組み合わせて、集積モジュール643は、埋もれた重要構造までの距離(例えば、図1の距離d)を(例えば、三角測量アルゴリズム644によって)決定するように構成され、埋もれた重要構造までの距離は、ビデオ出力プロセッサ646を介して、画像オーバーレイコントローラ610に提供することができる。前述の変換ロジックは、変換論理回路648、中間ビデオモニタ652、及び手術部位627に配置されたカメラ624/レーザパターンプロジェクタ630を包含することができる。
【0067】
例えばCT又はMRIスキャンによる、術前データ650を利用して、特定の三次元変形可能な組織を様々な例で位置合わせ又は整列させることができる。このような術前データ650は、集積モジュール643、最終的には、画像オーバーレイコントローラ610に提供することができるので、このような情報はカメラ612のビューと重ね合わせられ、ビデオモニタ652に提供することができる。術前データの位置合わせの実施形態は、更に、米国特許出願公開第2020/0015907号(2018年9月11日出願、発明の名称「Integration Of Imaging Data」)に説明されている。なお、この特許文献の全体は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0068】
ビデオモニタ652は、画像オーバーレイコントローラ610から統合/拡張ビューを出力するように構成されている。医療従事者は、1つ以上のモニタ上で、異なるビューを選択し、かつ/又は切り替えることができる。この図示されている実施形態のモニタである第1のモニタ652a上で、医療従事者は、(A)可視組織の三次元レンダリングが示されているビューと、(B)1つ以上の隠れた重要構造が可視組織の三次元レンダリングの上に描かれている拡張ビューとを切り替えることができる。この図示されている実施形態のモニタである第2モニタ652b上で、医療従事者は、例えば、1つ以上の隠れた重要構造までの距離測定値、及び/又は可視組織の表面までの距離測定値を切り替えることができる。
【0069】
本明細書に記載される様々な手術可視化システムを利用して、スペクトルの可視光部分においてEMRにより視覚化されるのが妨げられる得る組織及び/又は解剖学的構造を含む、様々な異なる種類の組織及び/又は解剖学的構造を、視覚化することができる。手術可視化システムは、上述したように、スペクトル撮像システムを利用することができ、スペクトル撮像システムは、構成材料の様々な組み合わせに基づいて、異なるタイプの組織を視覚化するように構成することができる。特に、スペクトル撮像システムは、様々なEMR波長にわたる組織の吸収係数に基づいて、視覚化されている組織内の様々な構成材料の存在を検出するように構成され得る。スペクトル撮像システムは、構成材料の特定の組み合わせに基づいて、視覚化されている組織の組織種類を特性評価するように構成することができる。
【0070】
図10は、様々な生体材料の吸収係数がEMR波長スペクトルにわたり、どのように変動するかを示すグラフ300である。グラフ300において、垂直軸302は、生体材料の吸収係数(cm-1単位)を表し、水平軸304は、EMR波長(μm単位)を表す。グラフ300の第1の線306は、様々なEMR波長での水の吸収係数を表し、第2の線308は、様々なEMR波長におけるタンパク質の吸収係数を表し、第3の線310は、様々なEMR波長におけるメラニンの吸収係数を表し、第4の線312は、様々なEMR波長における脱酸素化ヘモグロビンの吸収係数を表し、第5の線314は、様々なEMR波長における酸素化ヘモグロビンの吸収係数を表し、第6の線316は、様々なEMR波長におけるコラーゲンの吸収係数を表す。組織の種類が異なると、構成材料の組み合わせも異なるので、手術可視化システムによって視覚化されている組織の種類(複数可)は、検出された構成材料の特定の組み合わせに従って、識別され、区別されることが可能である。したがって、手術可視化システムのスペクトル撮像システムは、多くの異なる波長でEMRを放射し、異なる波長で検出された吸収EMR吸収応答に基づいて組織の構成材料を決定し、その後、構成材料の特定の検出された組み合わせに基づいて、組織の種類を特性評価するように構成することができる。
【0071】
図11は、異なる組織タイプ及び/又は解剖学的構造を視覚化するためのスペクトル撮像技法の利用の一実施形態を示す。図11では、スペクトルエミッタ320(例えば、図4のスペクトル光源150)は、手術部位322を視覚化するために撮像システムによって利用される。スペクトルエミッタ320によって放射され、手術部位322の組織及び/又は構造から反射されたEMRは、画像センサ(図4の画像センサ135)によって受信され、組織及び/又は構造を視覚化するが、この組織及び/又は構造は、可視であるか(例えば、手術部位322の表面に位置している)、又は遮蔽されている(例えば、手術部位322で他の組織及び/又は構造の下にある)かのいずれかであることができる。この実施形態では、撮像システム(例えば、図4の撮像システム142)は、様々な組織/構造種類の各々について、構成材料の異なる吸収特性(例えば、吸収係数)によって特性評価されるスペクトルシグネチャに基づいて、腫瘍324、動脈326、及び様々な異常328(例えば、既知の、又は予想されるスペクトルシグネチャに対して確認できない組織)を視覚化する。視覚化された組織及び構造は、撮像システムに関連付けられた又は結合されたディスプレイ画面(例えば、図4の撮像システム142のディスプレイ146)上に、主ディスプレイ(例えば、図19の主ディスプレイ819)上に、非滅菌ディスプレイ(例えば、図19の非滅菌ディスプレイ807、809)上に、外科用ハブのディスプレイ(例えば、図19の外科用ハブ806のディスプレイ)上に、デバイス/器具ディスプレイ上に、及び/又は別のディスプレイ上に、表示することができる。
【0072】
更に、撮像システム142は、特定された組織及び/又は構造種類に従って、表示された手術部位の視覚化を調整又は更新するように構成することができる。例えば、図11に示されるように、撮像システムは、撮像システムに関連付けられた又は結合された表示画面上、一次ディスプレイ上、非滅菌ディスプレイ上、外科用ハブのディスプレイ上、デバイス/器具ディスプレイ上、及び/又は別のディスプレイ上に、視覚化されている腫瘍324に関連付けられたマージン330を表示することができる。マージン330は、腫瘍324を確実に完全に除去するように切除されるべき組織の面積又は量を示すことができる。マージン330のサイズは、例えば、約5mm~約10mmの範囲内であることができる。手術可視化システムの制御システム(例えば、図4の制御システム133)は、撮像システムによって識別された組織及び/又は構造に基づいて、マージン330の寸法を制御又は更新するように構成されることができる。図示されている実施形態では、撮像システムは、視野(field of view、FOV)内の複数の異常328を特定している。したがって、制御システムは、この異常328を包含するのに十分な寸法を有する第1の更新されたマージン332に合わせて、表示されたマージン330を調整することができる。また、撮像システム142は、最初に表示されたマージン330(動脈326の強調表示された領域334で示す)と部分的に重なっている動脈326を特定している。したがって、制御システムは、この動脈326の関連部分を包含するのに十分な寸法を有する、第2の更新済みマージン336に合わせて、表示されたマージンを調整することができる。
【0073】
また、組織及び/又は構造は、図10及び図11に関して上述した吸収特性に加え又はそれに代えて、EMR波長スペクトルにわたるこれら組織や構造の反射特性に従って、撮像又は特性評価することができる。例えば、図12図13、及び図14は、様々なEMR波長にわたる異なる種類の組織又は構造の、反射率の様々なグラフを示す。図12は、覆い隠すものに対する、例示的な尿管シグネチャのグラフ表示340である。図13は、覆い隠すものに対する、例示的な動脈シグネチャのグラフ表示342である。図14は、覆い隠すものに対する、例示的な神経シグネチャのグラフ表示344である。図12図13、及び図14のプロットは、対応する波長における脂肪、肺組織、及び血液の対応する反射率に対する、特定の構造(尿管、動脈、及び神経)の波長(nm単位)の関数としての反射率を表している。これらのグラフは例示目的に過ぎず、他の組織及び/又は構造では、組織、及び/又は構造の特定かつ視覚化を可能にする対応する検出可能な反射率シグネチャを含み得ることを理解されたい。
【0074】
スペクトル撮像のための選択波長は、手術部位において予測される重要構造及び/又は遮蔽物に基づいて特定し、利用することができる(例えば、「選択的スペクトル」撮像)。選択的スペクトル撮像を利用することにより、スペクトル画像を取得するために必要な時間量は、情報をリアルタイムで取得し、術中に利用することができるように、最小化することができる。波長は、医療従事者によって、又はユーザ(例えば、医療従事者)による入力に基づいて制御回路によって、選択されることができる。特定の例では、波長を、例えば、クラウド又は外科用ハブを介して制御回路にアクセス可能な機械学習及び/又はビッグデータに基づいて選択することができる。
【0075】
図15は、組織へのスペクトル撮像の一実施形態が、波形エミッタと、組織によって遮蔽された重要構造との間の距離を測定するために、手術中に利用されているのを示している。図15は、波形424、425を利用する飛行時間型センサシステム404の一実施形態を示す。飛行時間センサシステム404は、例えば図1の手術可視化システム100のセンサシステム104として、手術可視化システムに組み込むことができる。飛行時間センサシステム404は、同じ外科用デバイス402上に、波形エミッタ406及び波形受信機408(例えば、図1の同じ外科用デバイス102上に、エミッタ106及び受信機108)を含む。放射された波400は、エミッタ406から重要構造401(例えば、図1の重要構造101)まで延び、受信された波425は、重要構造401から受信機408に反射されている。この図示されている実施形態における外科用デバイス402は、患者の腔407内へと延在するトロカール410を通って配置される。この図示された実施形態ではトロカール410が使用されているが、他のトロカール又は他のアクセス装置を使用することができ、又はアクセス装置を使用しなくてもよい。
【0076】
波形424、425は、NIR又はSWIR波長のスペクトル内の波長を有すること等によって、遮蔽している組織403を貫通するように構成されている。スペクトル信号(例えば、ハイパースペクトル、マルチスペクトル、又は選択的スペクトル)又は光音響信号は、遠位方向を指す第1の矢印407によって示されるように、エミッタ406から放出され、重要構造401が隠されている組織403を、貫通することができる。放出された波形424は、近位方向を指す第2の矢印409によって示されるように、重要構造401によって反射される。受信した波形425は、外科用デバイス402の遠位端と重要構造401との間の距離dに起因して遅延する場合がある。波形424、425は、本明細書で説明されるように、重要構造401のスペクトルシグネチャに基づいて、組織403内の重要構造401を標的とするように選択することができる。エミッタ406は、例えば、図16に示されるように、オンとオフを表す二値信号を供給するように構成されており、それらの二値信号は、受信機408によって測定することができる。
【0077】
飛行時間センサシステム404は、放出波424と受信波425との間の遅延に基づいて、距離dを決定するように構成されている。図15のエミッタ406及び受信機408の飛行時間タイミング図430が、図16に示されている。遅延は、距離dの距離の関数であり、距離dは、次のように与えられる:
【0078】
【数1】
ここで、cは、光速度であり、tは、パルスの長さであり、qは、発光時の蓄積電荷であり、qは、非発光時の蓄積電荷である。
【0079】
波形424、425の飛行時間は、図15の距離dに対応する。様々な例では、追加のエミッタ/受信機及び/又はエミッタ406からのパルス信号は、非透過信号を発するように構成することができる。非透過信号は、エミッタ406から、遮蔽している組織403の表面405までの距離を決定するように構成することができる。様々な事例では、重要構造401の深さは、以下の式によって決定することができる:
=d-d
ここで、dは、重要構造401の深さであり、dは、エミッタ406から重要構造401までの距離(図15のd)であり、dは、エミッタ406(外科用デバイス402の遠位端上)から、遮蔽している組織403の表面405までの距離である。
【0080】
図17は、波524a、524b、524c、525a、525b、525cを利用する飛行時間型センサシステム504の、別の一実施形態を示す。飛行時間センサシステム504は、例えば、図1の手術可視化システム100のセンサシステム104として、手術可視化システムに組み込むことができる。飛行時間型センサシステム504は、波形エミッタ506及び波形受信機508(例えば、図1のエミッタ106及び受信機108)を含む。波形エミッタ506は、第1の外科用デバイス502a(例えば、図1の外科用デバイス102)上に配置され、波形受信機508は第2の外科用デバイス502b上に配置される。外科用デバイス502a、502bは、それぞれ、患者の腔507内に延在する第1のトロカール510a、第2のトロカール510bを通って配置される。トロカール510a、510bは、この図示された実施形態において使用されるが、他のトロカール又は他のアクセスデバイスが使用されてもよく、又はアクセスデバイスを使用しなくてもよい。放射された波524a、524b、524cは、エミッタ506から手術部位に向かって延び、受信された波525a、525b、525cは、手術部位における様々な構造、及び/又は表面から受信機508に反射される。
【0081】
異なる放射された波524a、524b、524cは、手術部位において異なる種類の材料を標的にするように構成されている。例えば、波524aは、遮蔽している組織503を標的とし、波524bは、この図示された実施形態では、血管である第1の重要構造501a(例えば、図1の重要構造101)を標的とし、波524cは、この図示された実施形態では癌性腫瘍である第2の重要構造501b(例えば、図1の重要構造101)を標的とする。波524a、524b、524cの波長は、可視光、NIR、又はSWIRスペクトルの波長であることができる。例えば、可視光は、組織503の表面505に反射することができ、NIR波形及び/又はSWIR波形は、組織503の表面505を透過することができる。様々な態様では、本明細書に記載されるように、スペクトル信号(例えば、ハイパースペクトル、マルチスペクトル、若しくは選択的スペクトル信号)又は光音響信号を、エミッタ506から放射することができる。波524b、524cは、本明細書で説明されるように、重要構造501a、501bのスペクトルシグネチャに基づいて、組織503内の重要構造501a、501bを標的とするように選択することができる。光音響撮像は、様々な米国特許出願に更に説明されており、それらの全体が参照により本開示に組み込まれる。
【0082】
放射された波524a、524b、524cは、標的とされる材料(すなわち、それぞれ表面505、第1重要構造501a、及び第2構造501b)から反射され得る。受信された波形525a、525b、525cは、距離d1a、d2a、d3a、d1b、d2b、d2cに起因して遅延することがある。
【0083】
エミッタ506及び受信機508を個別に位置決め可能である(例えば、別個の外科用デバイス502a、502b上で、及び/又は別個のロボットアームによって制御される)飛行時間センサシステム504において、様々な距離d1a、d2a、d3a、d1b、d2b、d2cは、エミッタ506及び受信機508の既知の位置から算出することができる。例えば、外科用デバイス502a、502bがロボット制御されている際、それらの位置は既知であることができる。エミッタ506と受信機508の位置、並びに特定組織を標的とする光子ストリームの時間、及び受信機508によって受信されたその特定の応答の情報の知識により、距離d1a、d2a、d3a、d1b、d2b、d2cを決定することができる。一態様では、遮蔽された重要構造501a、501bまでの距離は、透過波長を使用して三角測量することができる。光の速度は可視光又は可視光外光の任意の波長に対して一定であるため、飛行時間センサシステム504は、様々な距離を決定することができる。
【0084】
例えばディスプレイ上で、医療従事者に提供されたビューでは、結果として生じる画像内の標的構造の質量中心が一定のままとなるように、例えば、選択標的構造503、501a、又は501bの軸に垂直な平面内で、受信機508を回転させることができる。そのような向きは、標的構造に対する、1つ以上の関連する距離及び/又は視点を迅速に通信することができる。例えば、図17に示されるように、重要構造501aがビュー平面に垂直である(例えば、血管がページの内/外に向いている)視点から、手術部位が表示される。そのような向きは、デフォルト設定であることができる。しかしながら、ビューは、医療従事者によって回転、あるいは、他の様式で調整できる。特定の事例では、医療従事者は、撮像システムによって提供される手術部位の視点を画定する、異なる表面及び/又は標的構造を切り替えることができる。
【0085】
この図示された実施形態におけるように、受信機508は、それを通して外科用デバイス502bが位置決めされる、トロカール510b(又は他のアクセスデバイス)上に搭載されることができる。他の実施形態では、受信機508は、三次元位置が既知である別個のロボットアームに装着することができる。様々な事例では、受信機508は、外科用デバイス502aを制御するロボット外科用システムとは別個の可動アーム上に取り付けることができ、又は手術中にロボット座標平面に位置合わせ可能な、手術室(OR)台に装着することができる。そのような例では、エミッタ506及び受信機508の位置は、飛行時間センサシステム504の出力から距離を三角測量することができるように、同じ座標平面に位置合わせすることができる。
【0086】
飛行時間センサシステムとナノ秒の分解能を有するNIR光の時間分解プロファイルを測定することが可能である、TOF-NIRSと呼ばれる近赤外分光法(NIRS)との組み合わせは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Time-Of-Flight Near-Infrared Spectroscopy For Nondestructive Measurement Of Internal Quality In Grapefruit」と題する、Journal of the American Society for Horticultural Science,May 2013 vol.138 no.3 225-228の文献で見出すことができる。
【0087】
可視化システムの実施形態並びにその態様及び使用法は、以下に更に記載されている:米国特許出願公開第2020/0015923号(2018年9月11日出願、発明の名称「Surgical Visualization Platform」);米国特許出願公開第2020/0015900号(2018年9月11日出願、発明の名称「Controlling A Emitter Assembly Pulse Sequence」);米国特許出願公開第2020/0015668号(2018年9月11日出願、発明の名称「Singular EMR Source Emitter Assembly」);米国特許出願公開第2020/0015925号(2018年9月11日出願、発明の名称「Combination Emitter And Camera Assembly」、米国特許出願公開第2020/00015899号(2018年9月11日出願、発明の名称「Surgical Visualization With Proximity Tracking Features」);米国特許出願公開第2020/00015903号(2018年9月11日出願、発明の名称「Surgical Visualization Of Multiple Targets」);米国特許第10,792,034号(2018年9月11日出願、発明の名称「Visualization Of Surgical Devices」);米国特許出願公開第2020/0015897号(2018年9月11日出願、発明の名称「Operative Communication Of Light」、米国特許出願公開第2020/0015924号(2018年9月11日出願、発明の名称「Robotic Light Projection Tools」、米国特許出願公開第2020/0015898号(2018年9月11日出願、発明の名称「Surgical Visualization Feedback System」);米国特許出願公開第2020/0015906号(2018年9月11日出願、発明の名称「Surgical Visualization And Monitoring」);米国特許出願公開第2020/0015907号(2018年9月11日出願、発明の名称「Integration Of Imaging Data」);米国特許第10,925,598号(2018年9月11日出願、発明の名称「Robotically-Assisted Surgical Suturing Systems」);米国特許出願公開第2020/0015901号(2018年9月11日出願、発明の名称「Safety Logic For Surgical Suturing Systems」);米国特許出願公開第2020/0015914号(2018年9月11日出願、発明の名称「Robotic Systems With Separate Photoacoustic Receivers」);米国特許出願公開第2020/0015902号(2018年9月11日出願、発明の名称「Force Sensor Through Structured Light Deflection」);米国特許出願公開第2019/0201136号(2018年12月4日出願、発明の名称「Method Of Hub Communication」);米国特許出願第16/729,772号(2019年12月30日出願、発明の名称「Analyzing Surgical Trends By A Surgical System」);米国特許出願第16/729,747号(2019年12月30日出願、発明の名称「Dynamic Surgical Visualization Systems」);米国特許出願第16/729,744号(2019年12月30日出願、発明の名称「Visualization Systems Using Structured Light」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「System And Method For Determining,Adjusting,And Managing Resection Margin About a Subject Tissue」);米国特許出願第16/729729号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Proposing And Corerborating Organ Portion Removals」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical System For Overlaying Surgical Instrument Data Onto a Virtual Three Dimensional Construct of An Organ」);米国特許出願第16/729,751号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Generating Three Dimensional Constructs Of Anatomical Organs And Coupling Identified Anatomical Structures Thereto」);米国特許出願第16/729,740号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems Correlating Visualization Data And Powered Surgical Instrument Data」);米国特許出願第16/729,737号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Cloud Characteristics」);米国特許出願第16/729,796号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Particulate Characteristics」);米国特許出願第16/729,803号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Visualization By A Surgical System」);米国特許出願第16/729,807号(2019年12月30日出願、発明の名称「Method Of Using Imaging Devices In Surgery」);米国特許出願第17/493,913号(2021年10月5日出願、発明の名称「Surgical Methods Using Fiducial Identification and Tracking」);米国特許出願第17/493,904号(2021年10月5日出願、発明の名称「Surgical Methods Using MultiSource Imaging」);米国特許出願第17/450,020号(2021年10月5日出願、発明の名称「Methods And Systems For Controlling Cooperative Surgical Instruments」);米国特許出願第17/450,025号(2021年10月5日出願、発明の名称「Methods And Systems For Controlling Cooperative Surgical Instruments With Variable Surgical Site Access Trajectories」);米国特許出願第17/450,027号(2021年10月5日出願、発明の名称「Methods And Systems For Controlling Cooperative Surgical Instruments」);及び米国特許出願第17/449,765号(2021年10月1日出願、発明の名称「Cooperative Access」)。なお、これらの特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
外科用ハブ
本明細書に説明される種々の可視化又は撮像システムは、外科用ハブを含むシステムに組み込まれることができる。概して、外科用ハブは、複数の医療施設に又がることができ、統合され、かつ包括的な改善された医療を膨大な数の患者に提供するように構成された包括的なデジタル医療システムの構成要素とすることができる。包括的なデジタル医療システムは、多くの異なる医療施設にわたって位置する複数の外科用ハブに相互接続するように構成されたクラウドベースの医療分析システムを含む。外科用ハブは、患者に対して医療処置を行うために使用される1つ以上の外科用器具及び/又は医療処置の実行中に使用される1つ以上の可視化システムなどの1つ以上の要素と相互接続するように構成されている。外科用ハブは、医療処置の結果を改善するための多様な機能を提供する。様々な外科用デバイス、可視化システム、及び外科用ハブによって生成された、患者及び医療処置に関するデータは、クラウドベースの医療分析システムに送信され得る。次いで、このデータは、他の医療施設に位置する多くの他の外科用ハブ、可視化システム、及び外科用器具から収集された同様のデータと集約され得る。収集されたデータを分析するクラウドベースの分析システムを通じて、様々なパターン及び相関が見出され得る。結果として、データを生成するために使用される技術の改善をもたらすことができ、次いで、これらの改善は、種々の外科用ハブ、可視化システム、及び外科用器具に広めることができる。上述した構成要素の全ての相互接続性により、多くの構成要素がそのように相互接続されていない場合には見出されない可能性がある医療処置及び医療実践における改善が見出される可能性がある。
【0089】
データを受信し、分析し、出力するように構成された外科用ハブ、及びそのような外科用ハブを使用する方法の例は、以下の文献に更に説明されている:米国特許出願公開第2019/0200844号(2018年12月4日出願、発明の名称「Method Of Hub Communication,Processing,Storage And Display」);米国特許出願公開第2019/0200981号(2018年12月4日出願、発明の名称「Method Of Compressing Tissue Within A Stapling Device And Simultaneously Displaying The Location Of The Tissue Within The Jaws」);米国特許出願公開第2019/0201046号(2018年12月4日出願、発明の名称「Method For Controlling Smart Energy Devices」);米国特許出願第2019/0201114号(2018年3月29日出願、発明の名称「Adaptive Control Program Updates For Surgical Hub」);米国特許出願公開第2019/0201140号(2018年3月29日出願、発明の名称「Surgical Hub Situational Awareness」);米国特許出願公開第2019/0206004号(2018年3月29日出願、発明の名称「Interactive Surgical Systems With Condition Handling Of Devices And Data Capabilities」);米国特許出願公開第2019/0206555号(2018年3月29日出願、発明の名称「Cloud-based Medical Analytics For Customization And Recommendations To A User」);及び米国特許出願第2019/0207857号(2018年11月6日出願、発明の名称「Surgical Network Determination of Prioritization of Communication,Interaction,Or Processing Based On System Or Device Needs」)。なお、これらの特許文献は、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0090】
図18は、1つ以上の外科用システム702及びクラウドベースのシステム(例えば、記憶デバイス705に結合された遠隔サーバ713を含むことができるクラウド704)を含む、コンピュータ実装双方向外科用システム700の一実施形態を示す。各外科用システム702は、クラウド704と通信する少なくとも1つの外科用ハブ706を備える。一例では、図18に示すように、外科用システム702は、可視化システム708と、ロボットシステム710と、インテリジェント(又は「スマート」)外科用器具712とを含み、これらは、互いに、かつ/又はハブ706と通信するように構成されている。インテリジェント外科用器具712は、撮像デバイス(複数可)を含むことができる。外科用システム702は、M個のハブ706と、N個の可視化システム708と、O個のロボットシステム710と、P個のインテリジェント外科用器具712と、を含むことができ、ここで、M、N、O、及びPは、互いのいずれか1つ以上に等しくても等しくなくてもよい1以上の整数である。様々な例示的インテリジェント外科用器具及びロボットシステムが本明細書に記載される。
【0091】
手術可視化システムから外科用ハブによって受信されるデータは、種々の様式のうちの任意の様式で使用されることができる。例示的な一実施形態では、外科用ハブは、例えば外科処置の実行中に手術室で使用される、外科的設定において患者に対して使用される手術可視化システムから、データを受信することができる。外科用ハブは、本明細書で説明されるように、1つ以上の様式のいずれかの様式で、受信データを使用することができる。
【0092】
外科用ハブは、手術可視化システムを使用して受信データをリアルタイムで分析し、受信データの分析に基づいて、患者に対して使用される1つ以上の手術可視化システム及び/又は1つ以上のインテリジェント外科用器具の制御を調整するように構成されることができる。そのような調整は、例えば、インテリジェント外科用器具(複数可)の1つ以上の動作制御パラメータを調整すること、1つ以上のインテリジェント外科用器具の1つ以上のセンサに測定を行わせて、患者の現在の生理学的状態、及び/又はインテリジェント外科用器具の現在の動作状態の理解を助けること、並びに他の調整を含むことができる。インテリジェント外科用器具の動作を制御及び調整することは、以下で更に論じられる。インテリジェント外科用器具の動作制御パラメータの例としては、モータ速度、切断要素速度、時間、持続時間、エネルギー印加のレベル、及び発光が挙げられる。外科用ハブの例、並びにインテリジェント外科用器具の動作を制御及び調整する例は、先に言及した以下の文献に更に説明されている:米国特許出願第16/729,772号(2019年12月30日出願、発明の名称「Analyzing Surgical Trends By A Surgical System」);米国特許出願第16/729,747号(2019年12月30日出願、発明の名称「Dynamic Surgical Visualization Systems」);米国特許出願第16/729,744号(2019年12月30日出願、発明の名称「Visualization Systems Using Structured Light」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「System And Method For Determining,Adjusting,And Managing Resection Margin About a Subject Tissue」);米国特許出願第16/729,729号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Proposing And Corroborating Organ Portion Removals」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical System For Overlaying Surgical Instrument Data Onto a Virtual Three Dimensional Construct of An Organ」);米国特許出願第16/729,751号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Generating Three Dimensional Constructs Of Anatomical Organs And Coupling Identified Anatomical Structures Thereto」);米国特許出願第16/729,740号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems Correlating Visualization Data And Powered Surgical Instrument Data」);米国特許出願第16/729,737号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Cloud Characteristics」);米国特許出願第16/729,796号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Particulate Characteristics」);米国特許出願第16/729,803号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Visualization By A Surgical System」);米国特許出願第16/729,807号(2019年12月30日出願、発明の名称「Method Of Using Imaging Devices In Surgery」);米国特許出願第17/068,857号(2020年10月13日出願、発明の名称「Adaptive Responses From Smart Packaging Of Drug Delivery Absorbable Adjuncts」);米国特許出願第17/068,858号(2020年10月13日出願、発明の名称「Drug Administration Devices That Communicate With Surgical Hubs」);米国特許出願第17/068,859号(2020年10月13日出願、発明の名称「Controlling Operation Of Drug Administration Devices Using Surgical Hubs」);米国特許出願第17/068,863号(2020年10月13日出願、発明の名称「Patient Monitoring Using Drug Administration Devices」);米国特許出願第17/068,865号(2020年10月13日出願、発明の名称「Monitoring And Communicating Information Using Drug Administration Devices」);及び米国特許出願第17/068,867号(2020年10月13日出願、発明の名称「Aggregating And Analyzing Drug Administration Data」)。
【0093】
外科用ハブは、受信されたデータを視覚化したものを、手術環境においてディスプレイ上で提供させるように構成することができ、その結果、手術環境における医療従事者は、データを見ることができ、それによって、手術環境において使用されている撮像デバイス(複数可)の動作の理解を受け取ることができる。視覚化を介して提供されるそのような情報は、テキスト及び/又は画像を含むことができる。
【0094】
図19は、外科用ハブ806(例えば、図18の外科用ハブ706又は本明細書に記載される他の外科用ハブ)と、ロボット外科用システム810(例えば、図1のロボット外科用システム110又は本明細書に記載の他のロボット外科用システム)と、可視化システム808(例えば、図1の可視化システム100又は本明細書に記載の他の可視化システム)と、を含む外科用システム802の一実施形態を示す。外科用ハブ806は、本明細書で論じるように、クラウドと通信することができる。図19は、手術室816内の手術台814上に横たわっている患者に対して、外科処置を実施するために使用されている外科用システム802を示す。ロボットシステム810は、外科医のコンソール818と、患者側カート820(外科用ロボット)と、ロボットシステム外科用ハブ822とを含む。ロボットシステム外科用ハブ822は、概して、外科用ハブ822と同様に構成され、クラウドと通信することができる。いくつかの実施形態では、ロボットシステム外科用ハブ822と外科用ハブ806とは、組み合わせることができる。患者側カート820は、医療従事者、例えば、外科医、看護師、及び/又は他の医療従事者が、外科医コンソール818を通して手術部位を見ている間に、患者の身体の低侵襲切開を通して、インテリジェント外科手術ツール812を操作することができる。手術部位の画像は、撮像デバイス824(例えば、図1の撮像デバイス120、又は本明細書に記載の他の撮像デバイス)によって取得することができ、撮像デバイス824を配向するために患者側カート820によって操作することができる。ロボットシステム外科用ハブ822を使用して、手術部位の画像を処理し、その後、外科医のコンソール818を通して、外科医に表示することができる。
【0095】
主ディスプレイ819は、手術室816の滅菌野に配置され、手術台814にいるオペレータに見えるように構成されている。加えて、この図示されている実施形態に示されるように、視覚化タワー811が、滅菌野の外に配置されることができる。視覚化タワー811は、互いに反対側を向いている第1の非滅菌ディスプレイ807、及び第2の非滅菌ディスプレイ809を含む。外科用ハブ806によって誘導される可視化システム808は、ディスプレイ807、809、819を利用して、滅菌野の内側及び外側の医療従事者への情報フローを調整するように構成されている。例えば、外科用ハブ806は、一次ディスプレイ819上に手術部位のライブ映像を維持しながら、可視化システム808に、撮像デバイス824によって記録される手術部位のスナップショット及び/又は動画を、非滅菌ディスプレイ807、809のうちの一方又は両方に表示させることができる。非滅菌ディスプレイ807及び/又は809上のスナップショット及び/又は動画は、例えば、非滅菌医療従事者が、外科処置に関連する診断ステップを実施することを可能にすることができる。
【0096】
外科用ハブ806は、視覚化タワー811にいる非滅菌医療従事者によって入力された診断入力又はフィードバックを滅菌野内の主ディスプレイ819に送り、これを手術台814にいる滅菌医療従事者が見ることができるように構成されている。例えば、入力は、外科用ハブ806によって主ディスプレイ819に送られることができる、非滅菌ディスプレイ807及び/又は809上に表示されるスナップショット及び/又は動画への修正の形態であることができる。
【0097】
外科用ハブ806は、参照により本開示に組み込まれる様々な米国特許出願で記載されているように、インテリジェント外科用器具812のディスプレイに合わせて情報フローを調整するようにも構成されている。視覚化タワー818にいる非滅菌オペレータによって入力される診断入力又はフィードバックは、外科用ハブ806によって滅菌野内のディスプレイ819に送ることができ、これを外科用器具812のオペレータ及び/又は滅菌野にいる他の医療従事者(複数可)が見ることができる。
【0098】
インテリジェント外科用器具812及びインテリジェント外科手術ツールでもある撮像装置824は、外科用システム802の一部として外科処置において患者に対して使用されている。例えば患者側カート820に取り外し可能に結合され、ロボット外科用システム810及び外科用ハブ806と通信することができ、外科処置で使用することができる他のインテリジェント外科用器具812aも、利用可能であるものとして図19に示されている。非インテリジェント(又は「ダム」)外科用器具817、例えば、ロボット外科用システム810及び外科用ハブ806と通信することができない、鋏、トロカール、カニューレ、メス等もまた、使用するために利用可能であるものとして、図19に示されている。
【0099】
インテリジェント外科用器具の操作
インテリジェント外科用デバイスは、その上、例えばそのメモリに記憶されたアルゴリズムを有することができる。そのアルゴリズムは、例えばインテリジェント外科用デバイス上で、例えばそのプロセッサによって実行可能であり、インテリジェント外科用デバイスの動作を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、インテリジェント外科用デバイス上に記憶される代わりに又はそれに加えて、インテリジェント外科用デバイスと通信するように構成されている外科用ハブ上(例えばそのメモリ内)に記憶されることができる。
【0100】
アルゴリズムは、インテリジェント外科用デバイスの機能を制御するための、命令、通知、信号などを定義する、及び/又は表す複数のデータポイントの1つ以上のセットの形態で記憶される。いくつかの実施形態では、インテリジェント外科用デバイスによって収集されたデータは、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するために、インテリジェント外科用デバイス、例えばインテリジェント外科用デバイスのプロセッサによって使用されることができる。上述したように、外科用ハブは、インテリジェント外科用デバイスと通信することができ、したがって、インテリジェント外科用デバイスによって収集されたデータは、外科用ハブに伝達することができ、かつ/又は外科用ハブと通信する別のデバイスによって収集されたデータは、外科用ハブに伝達することができ、データは、外科用ハブからインテリジェント外科用デバイスに伝達することができる。したがって、インテリジェント外科用デバイスが、記憶された可変パラメータを変更するように構成される代わりに、又はそれに加えて、外科用ハブは、変更された少なくとも1つの変数を、単独で又はアルゴリズムの一部として、インテリジェント外科用デバイスに伝達するように構成されることができ、かつ/又は外科用ハブは、命令をインテリジェント外科用デバイスに伝達し、外科用ハブによって決定されるように少なくとも1つの変数を変更することができる。
【0101】
少なくとも1つの可変パラメータは、アルゴリズムのデータポイントの間にあり、例えば、インテリジェント外科用デバイスを動作させるための命令に含まれ、したがって、各々が、アルゴリズムの記憶された複数のデータポイントのうちの1つ以上を変更することによって、変更され得る。少なくとも1つの可変パラメータが変更された後、その後のアルゴリズムの実行は、変更されたアルゴリズムに従って行われる。したがって、患者の実際の状況並びにインテリジェント外科用デバイスが使用されている外科処置の実際の条件及び/又は結果を考慮することによって、インテリジェント外科用デバイスの有益な結果の使用を増加させるために、患者にとってのインテリジェント外科用デバイスの経時的な動作を管理することができる。少なくとも1つの可変パラメータの変更は、患者の転帰を改善するために自動化される。したがって、インテリジェント外科用デバイスは、スマートシステムを提供するために患者及び患者の周囲条件に基づいて個別化された治療を提供するように構成されることができる。外科処置の実行中にインテリジェント外科用デバイスが使用されている外科的設定において、少なくとも1つの可変パラメータの自動変更は、外科処置の実行中に収集されたデータに基づいてインテリジェント外科用デバイスが制御されることを可能にし得る。これは、インテリジェント外科用デバイスが効率的かつ正確に使用されることを確実にするのに役立ち得るが、かつ/又は重要な解剖学的構造を傷つけることによって患者を傷つける可能性を低下させるのに役立ち得る。
【0102】
少なくとも1つの可変パラメータは、様々な異なる動作パラメータのうちのいずれかであることができる。可変パラメータの例としては、モータ速度、モータトルク、エネルギーレベル、エネルギー印加持続時間、組織圧迫レート、ジョー閉鎖レート、切断要素速度、負荷閾値等を含む。
【0103】
図20は、少なくとも1つの可変パラメータを含むアルゴリズム904が記憶されたメモリ902を含む、インテリジェント外科用器具900の一実施形態を示す。アルゴリズム904は、単一のアルゴリズムであることができ、又は複数のアルゴリズム、例えば外科用器具の動作の異なる態様のための別個のアルゴリズムを含むことができ、各アルゴリズムは、少なくとも1つの可変パラメータを含む。インテリジェント外科用器具900は、図1の外科用デバイス102、図1の撮像デバイス120、図8の外科用デバイス202、図8の撮像デバイス220、図15の外科用デバイス402、図17の外科用デバイス502a、図17の外科用デバイス502b、図18の外科用デバイス712、図19の外科用デバイス812、図19の撮像デバイス824、又は他のインテリジェント外科用器具であることができる。外科用器具900はまた、アルゴリズム904を実行して外科用器具900の少なくとも1つの態様の動作を制御するように構成されたプロセッサ906を含む。アルゴリズム904を実行するために、プロセッサ906は、メモリ902に記憶されたプログラムを実行して、メモリ902内のアルゴリズム904の複数のデータポイントにアクセスするように構成されている。
【0104】
外科用器具900はまた、外科用ハブ910などの別のデバイスと通信するように構成された通信インターフェース908(例えば、無線送受信機、又は他の有線若しくは無線通信インターフェース)を含む。通信インターフェース908は、遠隔サーバ(例えば、クラウドサーバ又は他のサーバ)及び/若しくはローカルの外科用ハブサーバへのデータ提供、及び/若しくは遠隔サーバ及び/若しくはローカルの外科用ハブサーバからの命令又はコマンドの受信といった一方向通信、又は外科用器具900に関する情報、メッセージ、データ、及び/若しくはその上に記憶されたデータの提供、及び医師などからの命令と、リモートサーバからのソフトウェアの更新に関する命令と、ローカルな外科用ハブサーバからのソフトウェアの更新に関する命令と、を受信すること、などの双方向通信を可能にするように構成され得る。
【0105】
外科用器具900は、図20では簡略化されているが、例えばバスシステム、ハンドル、遠位端にエンドエフェクタを有する細長いシャフト、電源などの追加の構成要素を含むことができる。プロセッサ906はまた、メモリ902に記憶された命令を実行して、例えば、通信インターフェース908、オーディオスピーカ、ユーザインターフェースなどの、他の電気構成要素を含むデバイス900を、全般的に制御するように構成することができる。
【0106】
プロセッサ906は、アルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを変更して、アルゴリズム904の後続の実行が、変更された少なくとも1つの可変パラメータに従うように構成されている。アルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを変更するために、プロセッサ906は、メモリ902内の少なくとも1つの可変パラメータのデータポイントを修正又は更新するように構成されている。プロセッサ906は、外科処置の実行中に、アルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを、外科用デバイス900を使用してリアルタイムで変更するように構成することができ、これはリアルタイム条件に適応することができる。
【0107】
プロセッサ906が少なくとも1つの可変パラメータを変更することに加えて又はその代わりに、プロセッサ906は、外科用ハブ910から受信した命令に応答して、アルゴリズム904及び/又はアルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを変更するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ906は、外科用ハブ910と通信し、そこから命令を受信した後にのみ、少なくとも1つの可変パラメータを変更するように構成され、これは、外科用器具900が使用されている外科処置の他の態様との外科用器具900の協調動作を確実にするのに役立ち得る。
【0108】
例示的な一実施形態では、プロセッサ906は、アルゴリズム904を実行して、外科用器具900の動作を制御し、リアルタイムデータに基づいてアルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを変更し、少なくとも1つの可変パラメータを変更した後にアルゴリズム904を実行して外科用器具900の動作を制御する。
【0109】
図21は、アルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータの変更を含む、外科用器具900を使用する方法912の一実施形態を示す。プロセッサ906は、メモリ902に記憶されたアルゴリズム904を実行することによって、外科用器具900の動作を制御する(ステップ914)。この後続の既知のデータ及び/又は後続の収集されたデータのいずれかに基づいて、プロセッサ904は、アルゴリズム904の少なくとも1つの可変パラメータを変更する(ステップ916)。少なくとも1つの可変パラメータを変更した後、プロセッサ906は、ここでは変更された少なくとも1つの可変パラメータを用いて、アルゴリズム904を実行することによって、外科用器具900の動作を制御する(ステップ918)。プロセッサ904は、外科処置の実行中に少なくとも1つの可変パラメータを、任意の回数(例えば、0回、1回、2回、3回など)変更することができる(ステップ916)。方法912の任意の部分中に、外科用器具900は、通信インターフェース908を使用して、1つ以上のコンピュータシステム、例えば、外科用ハブ910、クラウドサーバ遠隔サーバなどと通信して、そこにデータを提供し、かつ/又はそこから命令を受信することができる。
【0110】
状況認識
インテリジェント外科用器具の動作は、患者の状況認識に基づいて変更されることができる。インテリジェント外科用器具の動作は、インテリジェント外科用器具のユーザが、器具を異なるように取り扱うこと、器具に異なる入力を提供すること、器具の使用を停止することなどによって、手動で変更され得る。追加的に又は代替的に、インテリジェント外科用器具の動作は、器具のアルゴリズムが変更されることによって、例えばアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更することによって、自動的に変更されることができる。上述したように、アルゴリズムは、変更を要求するユーザ入力なしに、自動的に調整することができる。外科処置の実行中に調整を自動化することは、時間を節約するのに役立ち得るが、医師が外科処置の他の態様に集中することを可能にすることができ、かつ/又は医師のために外科用器具を使用するプロセスを容易にすることができる。これらはそれぞれ、重要な構造を回避すること、外科用器具がその上及び/又は近くで使用されている組織タイプを考慮して器具を制御することなどによって、患者の転帰を改善し得る。
【0111】
本明細書に記載される可視化システムは、外科用ハブ(例えば、外科用ハブ706、外科用ハブ806、又は本明細書に記載される他の外科用ハブ)によって具現化又は実行され得る状況認識システムの一部として利用されることができる。具体的に言えば、外科用器具(これらの位置、向き、アクションを含む)、組織、構造、ユーザ、及び/若しくは術野若しくは手術室内に位置する他のものを特性評価し、特定し、かつ/又は視覚化すると、状況認識システムによって利用され、外科処置の種類又は実行されているステップ、外科医又は他の医療従事者によって操作されている組織(複数可)及び/又は構造(複数可)の種類、及び他の情報などの様々な情報を推測することができるコンテキストデータを提供することができる。次に、このコンテキストデータは、状況認識システムによって利用されて、ユーザへのアラートの提供、ユーザが行うべき後続のステップ又はアクションの示唆、外科用デバイスの利用を予測した準備(例えば、電気手術器具が外科処置の後のステップで利用されることを予測して、電気手術用発生器を起動する、など)、インテリジェント外科用器具の動作の制御(例えば、後ほど更に論じる、アルゴリズムの、外科用器具の動作パラメータのカスタマイズ)などを可能にすることができる。
【0112】
感知されたデータに(例えば、少なくとも1つの可変パラメータを変更することにより)応答するアルゴリズムを含むインテリジェント外科用デバイスは、感知されたデータを考慮せずに動作する「ダム」デバイスに対する改善であり得るが、いくつかの感知されたデータは、それが単独で考慮される場合、すなわち、実行されている外科処置の種類、又は手術されている組織の種類のコンテキストなしには、不完全であったり又は決定的ではなかったりする可能性がある。処置の状況を知ることがなければ(例えば、手術されている組織の型又は行われている処置のタイプを知ることなければ)、アルゴリズムは、特定の状況のない感知されたデータが与えられても、外科用デバイスを、不正確又は最適未満にしか制御することができない。例えば、特定の検知されたパラメータに応答して外科用器具を制御するためのアルゴリズムの最適な様式は、手術されている特定の組織の種類に応じて変動することができる。これは、異なる組織の種類が、異なる特性(例えば、引き裂きに対する抵抗力、切断の容易性など)を有し、そのため、外科用器具によってとられたアクションに対して、異なった応答をするという事実に起因するものである。したがって、特定のパラメータについて同じ測定値が検知された場合であっても、外科用器具が異なるアクションをとることが望ましいことがある。一例として、手術用ステープラがそのエンドエフェクタを閉鎖するための予想外に高い力を検知することに応答して、手術用ステープラを制御する最適な様式は、その種類の組織が引き裂きの影響を受けやすいか、又はこれに耐性があるかによって異なる。肺組織など、引き裂きの影響を受けやすい組織の場合、外科用器具の制御アルゴリズムは、組織の引き裂きを回避するために、閉鎖するための予想外に高い力に応答してモータを最適に減速させる、例えば、モータの速度又はトルクを制御する可変パラメータを、モータが減速するように変更する。胃組織など、引き裂きに耐性がある組織の場合、器具のアルゴリズムは、エンドエフェクタが組織に適切にクランプされることを確実にするために、閉鎖するための予想外に高い力に応答して、モータを最適に加速させる、例えば、モータの速度又はトルクを制御する可変パラメータを、モータが加速するように変更する。肺又は胃の組織がクランプされたかどうかを知ることがなければ、アルゴリズムは最適未満にしか変更されないか、又は全く変更されない可能性がある。
【0113】
外科用ハブは、様々なデータソースから受信されたデータに基づいて、行われている外科処置に関する情報を導出するように構成され得るが、次にモジュール式装置をそれに応じて制御することができる。換言すれば、外科用ハブは、受信されたデータから外科処置に関する情報を推測し、次いで、外科処置の推測された状況に基づいて、外科用ハブと動作可能に結合されたモジュール式装置を制御するように構成されることができる。モジュール式デバイスは、例えば可視化システムデバイス(例えば、カメラ、ディスプレイスクリーンなど)、スマート外科用器具(例えば、超音波手術器具、電気手術器具、あるいは手術用ステープラ、煙排出器、スコープ等)などの状況認識システムによって制御可能な、任意の外科用デバイスを含むことができる。モジュール式デバイスは、デバイスが使用されている患者に関連付けられたパラメータ、及び/又はモジュール式デバイス自体に関連付けられたパラメータを検出するように構成されたセンサ(複数可)を含むことができる。
【0114】
受信されたデータに由来する、又はそれから推測されるコンテキスト情報は、例えば、行われている外科処置のタイプ、外科医(又は他の医療従事者)が行っている外科処置の特定のステップ、手術されている組織のタイプ、又は外科処置の対象である体腔を含むことができる。外科用ハブの状況認識システムは、様々な異なる方式でデータソースから受信されたデータから、コンテキスト情報を導出するように構成することができる。例示的な一実施形態では、外科用ハブの状況認識システムによって受信されたコンテキスト情報は、1つ以上のモジュール式デバイスに対する特定の制御調整、又は制御調整の特定のセットに関連付けられる。制御調整は、それぞれ可変パラメータに対応する。一例では、状況認識システムは、様々な入力(例えば、データベース、患者モニタリングデバイス、及び/又はモジュール式デバイスからのデータ)を、外科処置に関する対応するコンテキスト情報と相関させるために、訓練データで訓練されたパターン認識システム、又は機械学習システム(例えば、人工ニューラルネットワーク)を含む。言い換えると、機械学習システムは、提供された入力から外科処置に関するコンテキスト情報を正確に導出するように訓練することができる。別の一例では、状況認識システムは、外科処置に関する事前に特性評価されたコンテキスト情報を、そのコンテキスト情報に対応する1つ以上の入力(又は、入力の範囲)と関連付けて記憶する、ルックアップテーブルを含むことができる。1つ又は複数の入力による問い合わせに応答して、ルックアップテーブルは、少なくとも1つのモジュール式デバイスを制御するために状況認識システムの対応するコンテキスト情報を返すことができる。別の一例では、状況認識システムは、コンテキスト情報を入力として提供された際、1つ以上のモジュール式デバイスの1つ以上の制御調整を生成又は読み出す、更なる機械学習システム、ルックアップテーブル、又は他のそのようなシステムを含む。
【0115】
状況認識システムを含む外科用ハブは、外科用システムに任意の数の利点を提供し得る。1つの利点としては、感知及び収集されたデータの解釈を改善することを含み、これは、外科処置の過程中の処理精度、及び/又はデータの使用を改善させる。別の利点としては、外科用ハブ用の状況認識システムが、各外科処置の特定のコンテキスト用に外科用器具(及び、他のモジュール式デバイス)を調整し(例えば、異なる組織種類に合わせて調整する)、外科処置中のアクションを検証することを可能にすることによって、外科処置の転帰を改善させ得る。更に別の利点としては、状況認識システムは、処置の特定のコンテキストに従って、次のステップを自動的に示唆し、データを提供し、手術現場内のディスプレイ及び他のモジュール式デバイスを調整することによって、外科処置を実行する際の外科医及び/又は他の医療従事者の効率を改善し得る。別の利点は、実施されている外科処置の特定のステップに従って、モジュール式デバイスを積極的かつ自動的に制御して、例えば、処置の後続のステップが器具の使用を必要とすると判断した場合に、RF電気外科用器具が接続されている発生器を状況認識外科用ハブが積極的に起動することなどによって、医療従事者が外科処置の過程中に外科用システムと相互作用するか又は外科用システムを制御する必要がある回数を減らすことを含む。エネルギー源を積極的に起動することにより、処置の先行するステップが完了すると直ぐに器具を使用準備完了にすることができる。
【0116】
例えば、状況認識外科用ハブは、どのタイプの組織が手術されているかを決定するように構成されることができる。したがって、外科用器具のエンドエフェクタを閉じるための予期せぬ強い力が検出されたとき、状況認識外科用ハブは、例えば、モータ速度又はトルクに関する外科用器具のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するか又は変更を引き起こすことによって、組織の種類に対して外科用器具のモータを正確にランプアップ又はランプダウンするように構成されることができる。
【0117】
別の一例として、手術されている組織の種類は、特定の組織間隙測定用の手術用ステープラの圧縮レートと負荷閾値になされる調整に影響を及ぼすことができる。状況認識外科用ハブは、行われている外科処置が胸部処置であるのか、又は腹部処置であるのかを推測するように構成され得るが、これにより、外科用ハブは、外科用ステープラのエンドエフェクタによってクランプされている組織が肺組織であるのか(胸部処置の場合)、又は胃組織であるのか(腹部処置の場合)を判定することができる。次に、外科用ハブは、例えば圧縮レート及び負荷閾値に関する外科用ステープラのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するか又は変更を引き起こすことによって、組織のタイプに適切な外科用ステープラの圧縮レート及び負荷閾値の調整を引き起こすように構成されることができる。
【0118】
更に別の一例として、送気処置中に手術されている体腔の種類は、煙排出器の機能に影響を及ぼすことができる。状況認識外科用ハブは、手術部位が(外科処置がガス注入を利用していることを判定することによって)圧力下にあるかどうかを判定し、処置のタイプを判定するように構成されることができる。あるタイプの処置は一般に、ある特定の体腔内で行われるので、外科用ハブは、例えば運動速度に関する煙排出器のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するか、変更を引き起こすことによって、手術される体腔に対して適切に煙排出器のモータ速度を制御するように構成されることができる。したがって、状況認識外科用ハブは、胸部処置及び腹部処置の両方のために一貫した量の煙排出を提供することができる。
【0119】
更に別の一例として、実行されている処置の種類は、超音波外科用器具、又は高周波(RF)電気外科用器具が動作するのに最適なエネルギーレベルに影響を及ぼすことができる。例えば、関節鏡処置では、超音波手術器具、又はRF電気手術器具のエンドエフェクタが流体中に浸漬されるので、より高いエネルギーレベルを必要とする。状況認識外科用ハブは、外科手術が関節鏡処置であるかどうかを判定するように構成されることができる。外科用ハブは、例えば、エネルギーレベルに関する器具及び/又は発生器のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するか又は変更を引き起こすことによって、発生器のRF電力レベル又は超音波振幅を調整(例えば、エネルギーレベルを調製)して、流体で満たされた環境を補うように構成することができる。関連して、手術されている組織のタイプは、超音波外科用器具又はRF電気外科用器具が動作するのに最適なエネルギーレベルに影響を及ぼすことができる。状況認識外科用ハブは、どのタイプの外科処置が行われているかを決定し、次いで、外科処置のための予想される組織プロファイルに従って、例えば器具及び/又はエネルギーレベルに関する発生器のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更するか又は変更を引き起こすことによって、超音波外科用器具又はRF電気外科用器具のためのエネルギーレベルをそれぞれカスタマイズするように構成されることができる。更に、状況認識外科用ハブは、単に処置ごとにではなく、外科手術の過程にわたって、超音波外科用器具又はRF電気外科用器具のエネルギーレベルを調整するように構成されることができる。状況認識外科用ハブは、外科手術のどのステップが行われているか、又は引き続き行われるかを判定し、次いで、発生器、及び/又は超音波外科用器具若しくはRF電気外科用器具の制御アルゴリズム(複数可)を更新して、外科手術のステップに従って予想される組織のタイプに適切な値までエネルギーレベルを設定するように構成されることができる。
【0120】
別の一例として、状況認識外科用ハブは、外科医及び/又は他の医療従事者が見る必要があると予想される手術部位の形状部(複数可)に従って、外科処置の現ステップ、又は後続のステップが、ディスプレイ上の異なるビューや倍率を必要とするかどうかを決定するように構成されることができる。外科用ハブは、表示されたビュー(例えば、可視化システム用に撮像デバイスから供給される)を、適宜、積極的に変化させることができ、これにより、ディスプレイは外科手術にわたって自動的に調整するように構成されることができる。
【0121】
更に別の一例として、状況認識外科用ハブは、外科処置のどのステップが実行されているか、又は次に実行されるか、及び特定のデータ又はデータどうしの比較が外科処置の該当ステップに必要とされるかどうかを決定するように構成されることができる。外科用ハブは、外科医又は他の医療従事者が特定の情報を尋ねるのを待機することなく、行われている外科手術のステップに基づいて、データスクリーンを自動的に呼び出すように構成されることができる。
【0122】
別の一例として、状況認識外科用ハブは、例えば手術前手術計画において提供されるように、外科医及び/又は他の医療従事者が、外科処置の過程中にエラーを起こしているか、又は例えば、術前の外科手術計画に提供されている通りの予想される行動方針から逸脱しているかどうかを判定するように構成されることができる。例えば、外科用ハブは、行われている外科処置のタイプを判定し、機器使用のステップ又は順序の対応リストを(例えば、メモリから)読み出し、次いで、外科処置の過程中に行われているステップ又は使用されている機器を、外科用ハブが行われていることを判定した外科処置のタイプについて予想されるステップ又は機器と比較するように構成されることができる。外科用ハブは、外科手術における特定のステップで予想外のアクションが行われているか、又は予想外のデバイスが利用されていることを示すアラート(視覚的、聴覚的、及び/又は触覚的)を提供するように構成されることができる。
【0123】
特定の例では、本明細書に記載される様々なロボット外科用システムのいずれかなどのロボット外科用システムの動作は、その状況認識及び/若しくはその構成要素からのフィードバックに基づいて、並びに/又はクラウド(例えば、図18のクラウド713)からの情報に基づいて、外科用ハブによって制御されることができる。
【0124】
状況認識システムの実施形態及び外科処置の実行中に状況認識システムを使用する実施形態は、先に言及した以下文献に更に説明されている:米国特許出願第16/729,772号(2019年12月30日出願、発明の名称「Analyzing Surgical Trends By A Surgical System」);米国特許出願第16/729,747号(2019年12月30日出願、発明の名称「Dynamic Surgical Visualization Systems」);米国特許出願第16/729,744号(2019年12月30日出願、発明の名称「Visualization Systems Using Structured Light」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「System And Method For Determining,Adjusting,And Managing Resection Margin About a Subject Tissue」);米国特許出願第16/729,729号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Proposing And Corroborating Organ Portion Removals」);米国特許出願第16/729,778号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical System For Overlaying Surgical Instrument Data Onto a Virtual Three Dimensional Construct of An Organ」);米国特許出願第16/729,751号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems For Generating Three Dimensional Constructs Of Anatomical Organs And Coupling Identified Anatomical Structures Thereto」);米国特許出願第16/729,740号(2019年12月30日出願、発明の名称「Surgical Systems Correlating Visualization Data And Powered Surgical Instrument Data」);米国特許出願第16/729,737号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Cloud Characteristics」);米国特許出願第16/729,796号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Surgical System Control According To Surgical Smoke Particulate Characteristics」);米国特許出願第16/729,803号(2019年12月30日出願、発明の名称「Adaptive Visualization By A Surgical System」);及び第16/729,807号(2019年12月30日出願、発明の名称「Method Of Using Imaging Devices In Surgery」)。
【0125】
肺の外科処置
本明細書に説明されるデバイス、システム、及び方法の種々の態様は、肺に行われる外科処置に関連してもよい。例えば、肺切除術、例えば肺葉切除は、肺葉の全部又は一部、例えば1つ以上の肺葉が除去される外科処置である。肺切除を行う目的は、例えば、肺癌、肺気腫、又は気管支拡張症の結果として損傷又は罹患した肺を治療することである。
【0126】
肺切除の間、肺(複数可)は、最初に収縮させられ、その後、1つ以上の切開部が、腹腔鏡下で肺に到達するように患者の肋骨の間で患者の側に作られる。把持器及び腹腔鏡などの外科用器具が、切開部を通して挿入される。肺の感染又は損傷領域が特定されると、その領域は肺から切り離され、1つ以上の切開部から除去される。切り離された領域及び1つ又は複数の切開部は、例えば、外科用ステープラ又は縫合によって閉じることができる。
【0127】
肺は手術中に収縮するので、肺又は肺の特定の部分は、外科用器具が手術部位に到達することを可能にするために可動化される必要があり得る。この可動化は、把持具で肺の外側組織層を把持し、把持具を介して肺に力を加えることによって行うことができる。しかしながら、肺の胸膜及び実質組織は非常に脆弱であり、したがって、加えられた力の下で容易に引き裂かれ、又は引きちぎられる場合がある。加えて、可動化中、把持器は、肺の1つ以上の領域への血液供給を遮断することができる。
【0128】
更に、呼吸管が患者の気道内に配置されて、手術中に各肺を別々に膨張させることができる。肺の膨張は、肺を移動させ、術前撮像に適合させ、かつ/又は外科医が切開された領域(複数可)における漏出をチェックすることを可能にすることができる。しかしながら、肺全体を膨張させることによって、胸腔が充填されるため、肺の周りの作業空間が失われる。加えて、肺全体を膨張させることは、時間がかかる可能性があり、外科処置中に肺の複数の部分が手術される場合、容易な漏出検出を保証しない。
【0129】
結腸の外科処置
本明細書に説明されるデバイス、システム、及び方法の種々の態様は、結腸に行われる外科処置に関連してもよい。例えば、外科手術は、しばしば、初期段階の結腸癌に対する主要な治療法である。使用される手術のタイプは、癌のステージ(程度)、癌が結腸内のどこにあるか、及び外科手術の目標に依存する。一部の初期結腸癌(ステージ0及び一部の初期ステージI腫瘍)及び大部分のポリープは、結腸鏡検査の間に除去することができる。しかし、癌が進行した場合、局所切除又は結腸切除が必要とされ得る。結腸切除は、結腸の全部又は一部を除去するための外科手術である。特定の事例では、近くのリンパ節も除去される。大腸の一部のみが除去される場合、それは、半大腸切除、結腸部分切除、又は分節切除と呼ばれ、外科医は、両側の非罹患大腸の小セグメントとともに大腸の罹患部分を取り出す。通常、癌のサイズ及び位置に応じて、結腸の約4分の1~3分の1が除去される。大腸の主要な切除を図22に示し、ここで、A-Bは右半結腸切除であり、A-Cは拡張右半結腸切除であり、B-Cは横行結腸切除であり、C-Eは左半結腸切除であり、D-EはS状結腸切除であり、D-Fは前方切除であり、D-Gは(超)低位前方切除であり、D-Hは腹会陰切除であり、A-Dは結腸亜全摘であり、A-Eは結腸全摘除であり、A-Hは全直腸結腸切除である。切除が完了したら、結腸の残りの無傷の切片を再び取り付ける。
【0130】
結腸切除は、冒された結腸組織の分離及び除去のために結腸にアクセスするために腹壁を通る単一の切開が使用される開放結腸切除を介して、及び腹腔鏡支援結腸切除を介して行われることが可能である。腹腔鏡支援結腸切除術では、外科用器具を用いて多くのより小さな切開部を通して手術が行われ、腹腔鏡が小さな切開部を通過して結腸全体又はその一部を除去する。処置の開始時に、腹部は、ガス(例えば、二酸化炭素)で膨張させられ、外科医のための作業空間を提供する。腹腔鏡は、腹腔内の画像を伝送し、外科医に、モニタ又は他のディスプレイ上に患者の内臓の拡大図を与える。いくつかの他のカニューレが挿入されて、外科医が結腸の内側で作業し、結腸の一部を除去することを可能にする。結腸の罹患部分が除去されると、結腸の残りの端部は、例えばステープラ又は縫合を介して、互いに取り付けられる。全処置は、カニューレを通して、又は小カニューレ切開のうちの1つを延長することによって、完了されてもよい。
【0131】
腹腔鏡補助結腸切除処置の間、適切な術野を得ることはしばしば困難である。多くの場合、切開は骨盤の深部で行われるため、その領域を十分に視覚化することが困難である。その結果、可動中に直腸の両側の静脈及び動脈にアクセスするために、下部直腸を持ち上げて回転させなければならない。下部直腸の操作中に、組織のバンチング及び/又は組織の過伸展が起こる可能性がある。加えて、直腸内の腫瘍は、周囲の骨盤において癒着を引き起こす可能性があり、結果として、これは、腫瘍の離断及び除去の前に、直腸断端を解放し、腸間膜及び血液供給を動員することを必要とする可能性がある。
【0132】
更に、複数の把持具が、結腸からの除去のために腫瘍を位置付けるために必要とされる。結腸の切開の間、腫瘍は張力下に置かれるべきであり、これは結腸の周囲の健康な組織を把持して伸ばすことを必要とする。しかしながら、腫瘍を取り囲む組織の操作は、把持器が組織に高い把持力をかけることに起因して、血流の減少及び外傷を生じる可能性がある。更に、結腸切除術の間、横行結腸及び上部下行結腸は、腫瘍を含む大腸の部分が横切されて除去された後に、健康で良好な残存大腸が直腸断端に接続するように下げられることを可能にするために動かされる必要があり得る。
【0133】
結腸切除後、結腸の残りの健康な部分を互いに再び付着させて、老廃物が身体から出るための経路を作らなければならない。しかしながら、腹腔鏡器具を使用して結腸切除を行う場合、単一の入口ポートは、結腸の一端を結腸の接続部分に移動させるのに十分な大きさの運動範囲を有していない場合がある。したがって、第2の入口ポートが、結腸を移動させて結腸を適切に位置決めするのを助けるために、外科用器具を腹腔鏡下で挿入するのに必要となる。
【0134】
胃の外科処置
本明細書に説明されるデバイス、システム、及び方法の種々の態様は、胃に行われる外科処置に関連してもよい。例えば、外科手術は、胃癌の最も一般的な治療法である。胃癌のために手術が必要とされる場合、目標は、腫瘍全体並びに腫瘍の周りの健胃組織の良好なマージンを除去することである。異なる処置を使用して、胃癌を除去することができる。使用される処置のタイプは、癌が胃のどの部分に位置するか、及び癌が近くの領域にどれだけ成長したかに依存する。例えば、胃に対する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection、EMR)及び内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection、ESD)は、一部の早期癌を治療するために使用することができる。これらの処置は、皮膚の切断を必要としないが、その代わりに、外科医は、内視鏡を患者の咽喉を通して胃の中に通す。次いで、外科手術ツール(例えば、MEGADYNE(商標)Tissue Dissector又はElectrosurgical Pencil)を内視鏡の作業チャネルに通して、腫瘍及びその下及び周囲の正常な胃壁のいくつかの層を除去する。
【0135】
胃に対して行われる他の外科処置には、切開処置として行うことができる全体未満(部分)又は胃全摘が含まれる。この場合、例えば、外科用器具は、腹部の皮膚の大きな切開部を通して挿入される。あるいは腹腔鏡処置として、例えば、外科用器具は、いくつかの小さな切開部を通して腹部に挿入される。例えば、腹腔鏡による胃切除処置は、一般に、約15ミリメートル水銀(mmHg)の圧力まで二酸化炭素ガスを腹腔に吹き込むことを含む。腹壁が穿孔され、次いで、約5mm~約10mmの範囲内の直径を有するカニューレ又はトロカール等の直線管状カニューレ又はトロカールが、腹腔内に挿入される。手術室のモニタに接続された腹腔鏡を用いて術野を視覚化するが、これはトロカール(複数可)のうちの1つを通して配置する。腹腔鏡外科用器具は、胃の所望の部分(複数可)を除去するために、医療従事者(複数可)、例えば外科医及び外科助手(複数可)による操作のために、2つ以上の追加のカニューレ又はトロカールを通して配置される。
【0136】
特定の事例では、腹腔鏡及び内視鏡の協働手術を使用して、胃の腫瘍を除去することができる。この協働手術は、典型的には、内視鏡例えば、胃鏡、及び腹腔鏡トロカールの導入を伴う。腹腔鏡及び組織操作器具及び切開外科用器具は、トロカールを通して導入される。腫瘍の位置は、内視鏡を介して特定することができ、内視鏡の作業チャネル内に挿入される切断要素が、次いで、腫瘍の周囲の粘膜下切除のために使用される。次に、腹腔鏡切開外科用器具を使用して、腫瘍マージンに隣接する漿膜切開を行い、胃壁を貫通する切開部を形成する。次いで、腫瘍は、この切開部を通して、例えば胃の内側の管腔内空間から、例えば胃の外側の管腔外空間に、旋回される。次いで、腹腔鏡外科用器具、例えば、エンドカッターを使用して、胃壁からの腫瘍の離断を完了し、切開部を封止することができる。
【0137】
腸の外科処置
本明細書に説明されるデバイス、システム、及び方法の種々の態様は、腸に行われる外科処置に関連してもよい。例えば、十二指腸粘膜表面修復(duodenal mucosal resurfacing、DMR)処置は、2型糖尿病などのインスリン抵抗性代謝疾患を治療するために内視鏡的に行われることが可能である。DMR処置は、食物の検出に影響を及ぼすので、有効な処置である可能性がある。DMR処置は、食物が正常よりも腸のより深くで感知される、例えば、(小腸の最初の部分である)十二指腸を通過した後に感知される傾向があるように、十二指腸機能を阻害する。したがって、患者の身体は、典型的なものよりも腸の深部で糖を感知し、したがって、典型的なものよりも遅く糖に反応し、その結果、血糖コントロールを改善することができる。十二指腸の不規則な機能は、食物に対する身体の典型的な応答を変化させ、神経系及び化学的シグナルを介して、身体に、その応答をグルコースレベルに適応させて、インスリンレベルを増加させる。
【0138】
DMR処置では、十二指腸粘膜は、生理食塩水等を用いて持ち上げられ、次いで、粘膜は、例えば内視鏡の作業チャネルを通して十二指腸内に前進させられるアブレーションデバイスを使用して、アブレーションされる。アブレーション前に粘膜を持ち上げることは、アブレーションによる損傷から十二指腸の外層を保護するのに役立つ。粘膜がアブレーションされた後、粘膜は後に再生する。アブレーションデバイスの一例は、NeuWave(商標)アブレーションプローブ(Ethicon US LLC(Cincinnati,OH)から入手可能)である。アブレーションデバイスの別の一例は、Hyblateカテーテルアブレーションプローブ(Hyblate Medical (Misgav,Israel)から入手可能)である。アブレーションデバイスの別の一例は、Barxx(商標)HaloFlex(Medtronic(Minneapolis,MN)から入手可能)である。
【0139】
図23は、DMR処置の一実施形態を例示する。図23に示されるように、腹腔鏡1400は、十二指腸1402の外部視覚化のために、十二指腸1402の外部に配置される。内視鏡1404は、十二指腸1402の内部視覚化のために、食道1406を通り、胃1408を通り、十二指腸1402内へ、経口的に前進させられる。アブレーションデバイス1410は、内視鏡1404の作業チャネルを通して前進させられ、内視鏡1404から十二指腸1402の中へ遠位方向に延出する。アブレーションデバイス1410のバルーン1412は、図23において拡張又は膨張されて示される。拡張又は膨張したバルーン1412は、アブレーションを繰り返すためにアブレーションデバイス1410が前進及び/又は後退させられる前に、均等な円周方向アブレーション生じ得るように、アブレーションデバイスの電極をセンタリングするのに役立てることができる。粘膜がアブレーションデバイス1410を使用してアブレーションされる前に、十二指腸粘膜は、生理食塩水等で持ち上げられる。いくつかの実施形態では、バルーン1412を含むことに加えて又はその代わりに、アブレーションデバイス1410は、拡張されるかつ折り畳まれるように構成される電極アレイ又はバスケットを使用して、拡張可能/折り畳み可能であることができる。
【0140】
腹腔鏡による十二指腸1402の外部視覚化は、十二指腸1402の熱監視を可能にすることができ、これは、十二指腸1402の外層が、十二指腸が穿孔されることなどによる十二指腸粘膜のアブレーションによって損傷されないことを確実にするのに役立てることができる。熱監視の種々の実施形態は、例えば、以下及び米国特許出願第17/493,904号(2021年10月5日出願、発明の名称「Surgical Methods Using Multi-Source Imaging」)において更に議論される。内視鏡1404及び/又はアブレーションデバイス1410は、腹腔鏡1400が、例えば可視光外光を使用することによって十二指腸の組織を通して視覚化するように構成され得る基準マーカを含むことができ、アブレーションが行われる位置において、腹腔鏡1400が、十二指腸1402を外部から視覚化すべき場所を決定するのを助ける。基準マーカの種々の実施形態は、例えば、以下及び米国特許出願第17/493,913号(2021年10月5日出願、発明の名称「Surgical Methods Using Fiducial Identification and Tracking」)において更に議論される。
【0141】
管腔内及び管腔外協調
本明細書で提供されるマルチソース撮像のためのデバイス、システム、及び方法は、管腔内及び管腔外協働を可能にし得る。一般に、管腔内及び管腔外の協働において、中空器官又は体腔は、内部の視点から視覚化され(管腔内視覚化)、かつ外部の視点から視覚化される(管腔外視覚化)。管腔内視覚化及び管腔外視覚化は、協働して、管腔内視覚化及び管腔外視覚化のうちの1つのみが利用可能である場合に可能であるよりも、外科処置の実行中に、少なくともその着目エリアにおける中空器官又は体腔のより完全なビューを医療従事者に提供する。したがって、医師は、外科処置を実行する際により多くの情報に基づいた決定を行うことが可能であり得る。かつ/又はコントローラ(例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラ)は、外科用器具及び/又は撮像デバイスのより良好な制御をもたらすことが可能であり得る。
【0142】
DMR処置は、管腔内及び管腔外協調を含み得る外科処置の一例である。内視鏡及び腹腔鏡が、それぞれ、十二指腸の内側及び外側を視覚化するために使用されるDMR処置では、血流介入は、十二指腸の腹腔鏡側から、例えば十二指腸の外側から提供されることができる。血流介入は、管腔内治療を補強し、粘膜回復を最小限にし、粘膜アブレーションの効果の持続性を延長し得る。腹腔鏡下で導入される外科用インプラントは、血流介入を提供するように構成することができる。外科用インプラントは、粘膜アブレーションの効果を誘導するように、及び/又はアブレーションされている十二指腸領域への血液供給を制限するように構成され得る。
【0143】
血管流の減少は、例えば、患者の血液に導入されたインドシアニングリーン(ICG)又は他の造影剤などの造影剤の赤外線(IR)読取りによって測定することができる。十二指腸の外側に配置された腹腔鏡は、IR(及び場合によっては、可視光、UVなどの1つ又は複数の追加の視覚化モダリティ)を使用して視覚化するように構成することができ、それによって、腹腔鏡が造影剤のIR読取り値を提供することを可能にする。
【0144】
管腔内処置の補強は、脂肪酸が腸を通ってより速く移動することを可能にすることによって、膵臓と小腸との相互接続を、胃腸の運動性をわずかに変化させるように適合させるために使用され得る。この腹腔鏡適合は、内視鏡による小さな制限又は増大した構造開口部又は接続を介して案内され、協働することができる。
【0145】
別の一例では、内視鏡及び腹腔鏡を使用して十二指腸の内側及び外側を視覚化するDMR処置において、DMR処置の治療効果を向上させるために、補助材を十二指腸に埋め込むことができる。補助材は、アブレーション後に十二指腸が適切に治癒するのを助けるために、補助材が十二指腸の外側から十二指腸に治療を提供することを可能にする薬剤溶出補助材である。補助材によって溶出された薬剤は、十二指腸内の感知を制限し、それによって、患者の身体の別の部分への感知の信号伝達を防止するように構成され得る。したがって、粘膜アブレーション及び補助材はそれぞれ、DMR処置の治療効果に寄与し得る。
【0146】
補助材は、その内部に、少なくとも1種の薬剤を放出可能に保持し得る。当該薬剤は、多数の異なる薬剤から選択され得る。薬剤としては、所望の機能を有する、補助材内に含まれ、又は、同補助材に関連付けられた薬物又は他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬剤の例としては、例えば、抗菌剤及び抗生物質などの殺菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、成長因子、鎮痛薬、麻酔剤、組織マトリックス変性阻害剤、抗ガン剤、止血剤、並びに生物学的応答を引き起こす他の作用剤が挙げられる。
【0147】
抗菌剤の例としては、銀イオン、アミノ配糖体、ストレプトマイシン、ポリペプチド、バシトラシン、トリクロサン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ニトロフラン、フラゾリドン、ニトロフラントイン、ベータ-ラクタム、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン+クラブラン酸、アズロシリン、フルクロキサシリン、チカルシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、タゾシン、Biopiper TZ、ゾシン、カルバペネム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、ビアペネム、パニペネム/ベタミプロン、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、スルホンアミド、マフェニド、スルファセトアミド、スルファジアジン、銀スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、バクトリム、プロントシル、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、フィダキソマイシン、グリコペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババシン、オリタバンシン、リンコサミド、クリンダマイシン、リンコマイシン、リポペプチド、ダプトマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、オキサゾリジノン、リネゾリド、アミノ配糖体、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロマイシン、パロモマイシン、セファロスポリン、セフトビプロール、セフトロザン、セフクリジン、フロモキセフ、モノバクタム、アズトレオナム、コリスチン、及びポリミキシンBが挙げられる。
【0148】
抗真菌剤の例としては、トリクロサン、ポリエン、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、エキノカンジン、アニデュラファンジン、カスポファンジン、ミカファンジン、シクロピロックス、及び安息香酸が挙げられる。
【0149】
抗ウイルス剤の例としては、脱殻阻害剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリルなど;逆転写阻害剤、例えば、アシクロビル、ラミブジン、アンチセンス、フォミビルセン、モルホリノ、リボザイム、リファンピシンなど;及び抗ウイルス薬、例えば、シアノビリン-N、グリフィスシン、シトビリン、α-ラウリル-L-アルギニンエチルエステル(LAE)、並びに銀イオンが挙げられる。
【0150】
抗炎症剤の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、サリチル酸塩、アスピリン、ジフルニサール、プロピオン酸誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、及びロキソプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、トルメチン、スリンダク、及びジクロフェナク)、エノール酸誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、ドロキシカム、及びロルノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、及びフルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(セレブレックス)、パレコキシブ、ロフェコキシブ(Vioxx)、スルホンアニリド、ニメスリド、及びクロニキシン)、免疫選択的抗炎症誘導体、副腎皮質ホルモン(例えば、デキサメタゾン)、及びiNOS阻害剤が挙げられる。
【0151】
成長因子の例としては、細胞の成長、治癒、再形成、増殖、及び分化を刺激する細胞シグナル伝達分子である因子が挙げられる。例示的な成長因子は、短い範囲(パラクリン)、長い範囲(エンドクリン)、又は自己刺激(オートクリン)のものであり得る。成長因子の更なる例は、成長ホルモン(例えば、組換え成長因子、ニュートロピン、ヒューマトロープ、ゲノトロピン、ノルディトロピン、サイゼン、オムニトロープ、及び生合成成長因子)、表皮成長因子(EGF)(例えば、阻害剤、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びセツキシマブ)、へパリン結合EGF様成長因子(例えば、エピレグリン、ベタセルリン、アンフィレグリン、及びエピジェン)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-a)、ニューロレグリン1-4、線維芽細胞成長因子(FGF)(例えば、FGF-1-2、FGF2、FGF11-14、FGF18、FGF15/19、FGF21、FGF23、FGF7、又はケラチノサイト成長因子(KGF)、FGF10、又はKGF2、及びフェニトイン)、インスリン様成長因子(IGF)(例えば、IGF-1、IGF-2、及び血小板由来成長因子(PDGF))、血管内皮成長因子(VEGF)(例えば、阻害剤、ベバシズマブ、ラニビズマブ、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びベカプレルミン)が挙げられる。
【0152】
成長因子の追加的例としては、サイトカイン、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えば、炎症応答を阻害する阻害剤並びに組換えDNA技術を使用して及び組換え酵母由来ソースにより製造されたGM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(例えば、フィルグラスティム、レノグラスティム、及びニューポジェン)、組織成長因子ベータ(TGF-B)、レプチン、及びインターロイキン(IL)(例えば、IL-1a、IL-1b、カナキヌマブ、IL-2、アルデスロイキン、インテルキング、デニロイキン、ジフチトックス、IL-3、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及びオプレルベキン)が挙げられる。成長因子の例としては、エリスロポエチン(例えば、ダルベポエチン、エポセプト、ダイネポ、エポマックス、ネオレコルモン、シラポ、及びレタクリット)が、更に挙げられる。
【0153】
鎮痛薬の例としては、麻酔剤、オピオイド、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、トラマドール、非麻酔剤、パラセタモール、アセトアミノフェン、NSAID、及びフルピルチンが挙げられる。
【0154】
麻酔剤の例としては、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、ベンゾカイン、及びロピバカイン)及び全身麻酔剤が挙げられる。
【0155】
メタロプロテイナーゼ(MMP)及び他のプロテアーゼの作用を阻害する組織マトリックス分解阻害剤の例としては、MMP阻害剤(例えば、外来性MMP阻害剤、ヒドロキシメート系MMP阻害剤、バチマスタット(BB-94)、イロマスタット(GM6001)、マリマスタット(BB2516)、チオール、ペリオスタット(ドキシサイクリン)、スクアリン酸、BB-1101、ヒドロキシ尿素、ヒドラジン、内在性、カルバモイルリン酸塩、ベータラクタム、及びMMPの組織阻害剤(TIMP))が挙げられる。
【0156】
抗ガン剤の例としては、モノクローナル抗体、ベバシズマブ(アバスチン)、細胞/化学遊走剤、アルキル化剤(例えば、二重機能性(bifunctional)、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、単機能性(monofunctional)、ニトロソ尿素及びテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシン)、細胞骨格分解剤(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、微小管機能を阻害することにより細胞分裂を制限するエポチロン剤、細胞分裂又は特定の細胞機能に必要とされる様々な酵素をブロックする阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、ボリノスッタト及びロミデプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン及びトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、及びタフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、及びビスモデジブ)、ヌクレオチド類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、5-FU、アドルシル、カラック、エフジックス、エフデックス、フルオロプレックス、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、及びチオグアニン)、DNAを開裂させ、DNAの巻戻し/巻取りを中断させるペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシン及びアクチノマイシン)、DNAに架橋し、DNAの修復及び/又は合成を阻害するプラチナ系抗新生物剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、及びエロキサチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アルトレチノイン、及びベクサロテン)、有糸分裂及び微小管形成を阻害するビンカアルカロイド剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、抗イレウス剤、運動促進剤、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス)、血液アスペクト改変剤(例えば、血管拡張剤、バイアグラ及びニフェジピン)、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG CoA)還元酵素阻害剤(例えば、アトルバスタチン)、及び抗血管新生剤が挙げられる。
【0157】
例示的な薬剤はまた、創傷治癒に受動的に寄与する作用剤、例えば、栄養、酸素排除剤、アミノ酸、コラーゲン合成剤、グルタミン、インスリン、ブチレート、及びデキストランなども含む。例示的な薬剤はまた、抗癒着剤も含む。その例としては、ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(seprafilm)、酸化再生セルロース(Interceed)、及びイコデキストリン4%(Extraneal、Adept)が挙げられる。
【0158】
図24及び図25は、内部に放出可能に保持された薬剤1422を有する補助材1420の一実施形態を示す。この例では、補助材1420は、シート様ファイバ織物メッシュの形態である。図24に示したように、その元の構成において補助材1420の密なファイバは、薬剤1422が内部に保持されるのを可能にする。補助材1420が治療部位に運搬されると、図24において滴1424a、1424bとして模式的に示された水及び/又は他の作用剤は、ファイバを膨潤させ、伸張させるように構成される。これにより、図25に示したように、ファイバ間の距離が長くなる。この方法において、図25にも示したように、薬剤1422が放出される。当業者であれば、補助材1420が、異なる種類のファイバから形成され得ることを理解するであろう。ファイバは、異なる吸収速度、密度、方向、パターン、サイズ、及び所望の組織再成長を提供するように選択される他の性質を有することができる。補助材の一部の領域は、少なくとも1種の薬剤を組織再成長を亢進させるために放出するように構成され得る一方で、補助材の1つ以上の領域は、少なくとも1種の薬剤を、組織再成長を抑制するために放出するように構成されることができる。
【0159】
図26は、異なる分解速度を有し、かつ、異なる薬剤を組み込んだ異質な部分又は層を含む、積層体の形態である補助材1426の別の1つの実施形態を図示する。示したように、補助材1426は、異なる分解速度を有する、上部層又は部分1428及び底部層又は部分1430を含む。更に、上部及び底部部分1428、1430はそれぞれ、個別的な又は連続的な様式で変化する分解速度を有する様々な部分を有することができる。分解速度は、補助材にわたって、補助材により提供される所望の処置効果に応じた多くの適切な様式で変動することができる。いくつかの実施形態では、補助材は、異なる分解速度を有する代わりに、単一の分解速度を有することができる。
【0160】
図26の実施形態では、補助材1426の上部部分1428は、異なる分解速度を有する2つの部分1428a、1428bを含む。底部部分1430は、異なる分解速度を有する2つの部分1430a、1430bを含む。これらの部分はそれぞれ、異なる薬剤を含み得る。これにより、部分が分解すると、各薬剤が溶出され又は放出される。部分1428a、1428b、1430a、1430bのうちの1つ以上における、分解速度、及び薬剤の分布は、補助材1426が図26のグラフ1432に示した溶出プロファイルを提供し得るように、個別的な又は連続的な様式で更に変動することができる。示されるように、その中央部分1436を中心とする補助材1426の中央領域1434は、中央部分1436でピークに達する1種以上の薬剤の増加した溶出速度を有するが、より少量の薬剤(複数可)が、その長さ1426Lに沿って補助材1426の両側から溶出される。増加した溶出速度は、中心領域1434における補助材1426の特性及び薬剤の濃度に起因し得る。
【0161】
図26にも示したように、補助材1426は、異なる溶出プロファイルで、その長さ1426L及びその幅1426Wに沿って、薬剤を放出するように構成されている。例えば、薬剤は、幅1426Wに沿ってボーラス投与量として、及び、長さに沿って徐放投与量として放出されることができる。1種以上の薬剤の放出は、少なくとも1種の他の薬剤の放出を調整することができる。ただし、薬剤は、任意の他の様式で、運搬される所望の処置に応じて放出されることができる。
【0162】
補助材1426は、線状ステープラへのその使用を容易にし得る、概ね矩形の形状を有する。他の補助材は、例えば、輪状ステープラとのその使用を容易にするため、異なる形状を有することができる。図27は、円形外科用ステープラとともに使用するように構成された補助材1436のそのような実装形態を示す。このため、補助材1436は、概ね輪の形状を有する。
【0163】
図27の図示した実施における補助材1436は、複数のファイバから形成され、複数の異質な繊維格子区画1438a、1438b、1438c、1438dを含む。第1の繊維格子区画1438aは、補助材1436の上側及び外側に位置し、抗癒着剤などの組織成長を妨げるように構成された第1の薬剤(図示せず)を内部に放出可能に保持することによって、組織成長を妨げるように構成されている。第2の繊維格子区画1438bは、補助材1436の底側に位置し、成長因子などの組織成長を促進するように構成された第2の薬剤(図示せず)を内部に放出可能に保持することによって、組織成長を促進するように構成されている。第3の繊維格子区画1438cは、補助材1436の内側に位置し、止血剤などの止血を容易にするように構成された第3の薬剤(図示せず)を内部に放出可能に保持することによって、止血を容易にするように構成されている。第4の繊維格子区画1438dは、補助材1436の内部領域に位置しており、補助材1436の上側と底側とを分離することにより、補助材1436の組織成長亢進部分と組織成長抑制部分とが分離されるように構成されている。第4の繊維格子区画1438dは、内部に放出可能に保持された第4の薬剤(図示せず)を有することができる。第4の薬剤は、例えば、抗接着剤を含むことができ、又は、ORC及び/又は別の止血剤を含むことができる。
【0164】
補助材は、様々な様式で植え込むことができる。例えば、補助材は、腹腔鏡下で導入される外科用ステープラを使用して送達することができる。
【0165】
補助材、植え込み補助材、及び/又は外科用ステープラの様々な実施形態は、以下に更に論じられている:米国特許出願公開第2018/0353174号(2017年6月13日出願、発明の名称「Surgical Stapler with Controlled Healing」);米国特許第10,569,071号(2020年2月25日発行、発明の名称「Medicament Eluting Adjuncts And Methods Of Using Medicament Eluting Adjuncts」);米国特許第10,716,564号(2020年7月21日発行、発明の名称「Stapling Adjunct Attachment」);米国特許出願公開第2013/0256377号(2013年2月8日出願、発明の名称「Layer Comprising Deployable Attachment Members」);米国特許第8,393,514号(2010年9月30日出願、発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」);米国特許第8,317,070号(2007年2月28日出願、発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」);米国特許第7,143,925号(2005年6月21日出願、発明の名称「Surgical Instrument Incorporating EAP Blocking Lockout Mechanism」);米国特許出願公開第2015/0134077号(2013年11月8日出願、発明の名称「Sealing Materials For Use In Surgical Stapling」);米国特許出願公開第2015/0134076号(2013年11月8日出願、発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」);米国特許出願公開第2015/0133996号(2013年11月8日出願、発明の名称「Positively Charged Implantable Materials and Method of Forming the Same」);米国特許出願公開第2015/0129634号(2013年11月8日出願、発明の名称「Tissue Ingrowth Materials and Method of Using the Same」);米国特許出願公開第2015/0133995号(2013年11月8日出願、発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」);米国特許出願公開第2015/0272575号(2014年3月26日出願、発明の名称「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」);及び米国特許出願公開米国特許出願公開第2015/0351758号、(2014年6月10日出願、発明の名称「Adjunct Materials and Methods of Using Same in Surgical Methods for Tissue Sealing」);米国特許出願公開第2013/0146643号(2013年2月8日出願、発明の名称「Adhesive Film Laminate」);米国特許第7,601,118号(2007年9月12日出願、発明の名称「Minimally Invasive Medical Implant And Insertion Device And Method For Using The Same」);米国特許出願公開第2013/0221065号(2013年2月8日出願、発明の名称「Fastener Cartridge Comprising A Releasably Attached Tissue Thickness Compensator」)。なお、これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
例示的な一実施形態では、補助材は生体吸収性かつ生体適合性である。このような実施形態では、補助材を形成する材料(複数可)は、ホモポリマー及びコポリマーを含む、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含むことができる。ホモポリマー及びコポリマーの例としては、p-ジオキサノン(p-dioxanone、PDO又はPDS)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate、TMC)、及びポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリ(グリコール酸-コ-乳酸)(poly(glycolic acid-co-lactic acid)、PLA/PGA)(例えば、Vicryl(登録商標)、Vicryl Rapide(商標)、PolySorb、及びBiofixに使用されるPLA/PGA材料)、ポリウレタン(例えば、Elastane、Biospan、Tecoflex、Bionate、及びPellethaneファイバ)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物(例えば、Gliadel及びBiodelポリマー)、ポリオキサエステル、ポリエステルアミド、及びチロシン系ポリエステルアミドが挙げられる。また、コポリマーは、ポリ(乳酸-コ-ポリカプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(L-乳酸-コ-ポリカプロラクトン)(PLLA/PCL)、ポリ(グリコール酸-コ-トリメチレンカーボネート)(PGA/TMC)(例えば、Maxon)、ポリ(グリコール酸-コ-カプロラクトン)(PCL/PGA)(例えば、Monocryl及びCapgly)、PDS/PGA/TMC(例えば、Biosyn)、PDS/PLA、PGA/PCL/TMC/PLA(例えば、Caprosyn)、及びLPLA/DLPLA(例えば、Optima)も含み得る。
【0167】
十二指腸の内側の粘膜アブレーション位置に対応する位置で、どこに補助材を十二指腸に埋め込むかという位置は、例えば、十二指腸の内側に配置される基準マーカを使用して決定することができる。基準マーカは、磁性であってもよく、それによって、基準マーカ又は基準マーカが取り付けられるバルーンの裸眼による又は可視光による視覚化を伴わずに、十二指腸内の基準マーカが、十二指腸の外側から磁気的に位置することを可能にする。アブレーションデバイス及び/又はアブレーションデバイスが前進させられたスコープの場所を判定するために基準マーカを使用する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0168】
例えば、内視鏡及び腹腔鏡が十二指腸の内側及び外側を視覚化するために使用されるDMR処置では、植え込み可能な神経刺激スリーブ又はステントが、十二指腸の外径の周囲の十二指腸に植え込まれることができる。埋め込まれたスリーブ又はステントは、アブレーションの血液供給及び長さ効果を抑制するために、十二指腸に電流を供給するように構成されている。電流は、迷走神経等の神経を刺激するように構成され、それによって、胃腸管内十二指腸における患者の感知を制限し、それによって、患者の身体の別の部分への感知の信号伝達を更に防止し、DMR処置の治療効果を向上させる。神経刺激は、患者の胃腸管における感知を制限し、神経信号を圧倒するか、又は摂食により神経信号を刺激して、シーケンスから外れさせることによって、粘膜アブレーションの効果を増強するように構成されることができる。したがって、粘膜アブレーション及び神経刺激はそれぞれ、処置の治療効果に寄与し得る。
【0169】
十二指腸の外部に印加される電流は、より低い電流がアブレーションのために使用されること、及び/又はアブレーションデバイスが、刺激を受けない粘膜の特定の領域をアブレーションするためにより正確に配置されることを可能にし得る。電流は、例えば、スリーブ又はステントに取り付けられた電極を使用して送達することができる。
【0170】
植え込まれたスリーブ又はステントは、患者の摂食の検出等のトリガイベントに応答して、電気刺激を送達するように構成されることができる。
【0171】
スリーブ又はステントは、十二指腸の全周にわたって、又は十二指腸の周囲の特定の領域のみにおいて収縮するように構成することができる。十二指腸周囲の特定の領域でのみ収縮するスリーブ又はステントは、十二指腸周囲のスリーブ又はステントのいかなる収縮効果も最小限に抑えることができる。なぜなら、十二指腸内が圧迫されて閉じられるか、又はそうでなければ直径が過度に縮小され、正常な腸機能を妨げる事態になってはならないからである。
【0172】
十二指腸の内側の粘膜アブレーション位置に対応する位置で、十二指腸の外側のどこにスリーブ又はステントを埋め込むかという位置は、例えば、十二指腸の内側に配置された基準マーカを使用して決定することができる。基準マーカは、磁性であってもよく、それによって、基準マーカ又は基準マーカが取り付けられる要素の裸眼による又は可視光による視覚化を伴わずに、十二指腸内の基準マーカが、十二指腸の外側から磁気的に位置することを可能にする。アブレーションデバイス及び/又はアブレーションデバイスが前進させられたスコープの場所を判定するために基準マーカを使用する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0173】
スリーブ又はステントは、生体吸収性及び生体適合性であり得る。このような実施形態では、スリーブ又はステントを形成する材料(複数可)は、ホモポリマー及びコポリマーを含む、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含むことができる。
【0174】
神経刺激、食物摂取の感知と反応、及び神経の電気刺激を提供するように構成されたインプラントの様々な実施形態は、更に、以下に記載されている:米国特許第5,188,104号(1993年2月23日発行、発明の名称「Treatment Of Eating Disorders By Nerve Stimulation」);米国特許第5,231,988号(1993年8月3日発行、発明の名称「Treatment Of Endocrine Disorders By Nerve Stimulation」);米国特許第5,263,480号(1993年11月23日発行、発明の名称「Treatment Of Eating Disorders By Nerve Stimulation」);米国特許第5,540,730号(1996年7月30日発行、発明の名称「Treatment Of Motility Disorders By Nerve Stimulation」);米国特許第8,352,026号(2013年1月8日発行、発明の名称「Implantable Pulse Generators And Methods For Selective Nerve Stimulation」);米国特許第9,044,606号(2015年6月2日発行、発明の名称「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Electrical Energy」);米国特許第10,092,738号(2018年10月9日発行、発明の名称「Methods And Devices For Inhibiting Nerves When Activating Brown Adipose Tissue」);米国特許出願公開第2009/0132018号(2007年11月16日出願、発明の名称「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」);米国特許出願公開第2008/0147146号(2006年12月19日出願、発明の名称「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」);米国特許出願公開第2005/0277998号(2005年6月7日出願、発明の名称「System And Method For Nerve Stimulation」);米国特許出願公開第2006/0195153号(2006年1月31日出願、発明の名称「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」);米国特許出願公開第2007/0185541号(2006年8月2日出願、発明の名称「Conductive Mesh For Neurostimulation」);米国特許出願公開第2006/0195146号(2006年1月31日出願、発明の名称「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」);米国特許出願公開第2008/0132962号(2006年12月1日出願、発明の名称「System And Method For Affecting Gastric Functions」);米国特許出願公開第2008/0147146号(2006年12月19日出願、発明の名称「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」);米国特許出願公開第2009/0157149号(2007年12月14日出願、発明の名称「Dermatome Stimulation Devices And Methods」);米国特許出願公開第2009/0149918号(2007年12月6日出願、発明の名称「Implantable Antenna」);米国特許出願公開第2009/0132018号(2007年11月16日出願、発明の名称「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」);米国特許出願公開第2010/0161001号(2008年12月19日出願、発明の名称「Optimizing The Stimulus Current In A Surface Based Stimulation Device」);米国特許出願公開第2010/0161005号(2008年12月19日出願、発明の名称「Optimizing Stimulation Therapy Of An External Stimulating Device Based On Firing Of Action Potential In Target Nerve」);米国特許出願公開第2010/0239648号(2009年3月20日出願、発明の名称「Self-Locating,Multiple Application,And Multiple Location Medical Patch Systems And Methods Therefor」);米国特許出願公開第2011/0094773号(2009年10月26日出願、発明の名称「Offset Electrode」);及び米国特許第8,812,100号(2012年5月10日出願、発明の名称「A Device And Method For Self-Positioning Of A Stimulation Device To Activate Brown Adipose Tissue Depot In Supraclavicular Fossa Region」)。これらの特許文献は、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0175】
更に別の一例では、内視鏡及び腹腔鏡が十二指腸の内側及び外側を視覚化するために使用されるDMR処置において、植え込み可能な縫合糸は、十二指腸の外径の周りに巻き付けられることによって十二指腸に植え込まれることができる。十二指腸の内側の粘膜アブレーション位置に対応する位置において、十二指腸の外側で縫合糸を巻き付ける位置は、例えば、十二指腸の内側に配置されるアブレーションデバイスのバルーン上又はその別の要素上等のアブレーションデバイス上の基準マーカを使用して決定されることができる。アブレーションデバイス及び/又はアブレーションデバイスが前進させられたスコープの場所を判定するために基準マーカを使用する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0176】
縫合糸は、薬剤溶出縫合糸及び/又は抗菌縫合糸であり、これは、縫合糸が十二指腸の外側から十二指腸に治療を提供して、アブレーション後に十二指腸が適切に治癒するのを助けることを可能にする。薬剤溶出縫合糸によって溶出された薬剤は、十二指腸における胃腸管内での感知を制限し、それによって患者の身体の別の部分への感知の信号伝達を防止するように構成されることができる。したがって、粘膜アブレーション及び縫合はそれぞれ、DMR処置の治療効果に寄与し得る。
【0177】
縫合糸は、十二指腸の周りに螺旋状に巻き付くように螺旋形状とすることができる。十二指腸を縛って閉じたり、過度に縮径させたりして、正常な腸機能を妨げてはならないので、螺旋形状は、十二指腸の周りの縫合糸のいかなる収縮効果も最小限に抑えることができる。
【0178】
例示的な一実施形態では、縫合糸は生体吸収性及び生体適合性である。このような実施形態では、縫合糸を形成する材料は、ホモポリマー及びコポリマーを含む、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含むことができる。
【0179】
インテリジェント外科用器具の制御
本明細書で提供される多光源撮像のためのデバイス、システム、及び方法は、インテリジェント外科用器具を制御することを可能にし得る。撮像システムは、本明細書で議論されるように、外科処置の実行中に手術部位を視覚化するように構成されることができる。また、本明細書で議論されるように、インテリジェント外科用器具等の外科用デバイスが、外科処置を行う際に使用されることができる。外科用デバイスは、撮像システムが視覚化を提供している間、手術部位で使用され得るが、撮像システムによって収集された画像が外科用デバイスを完全に又は全く示さないように、撮像システムの外科用デバイスのビューは、遮られることができる。
【0180】
遮られたビューは、例えば、撮像システムが組織壁の第1の側に配置され、外科用デバイスが組織壁の第2の反対側に配置される場合等、組織が撮像システムの外科用デバイスのビューを遮ることによって引き起こされることができる。DMR処置は、外科処置の一例であり、外科用デバイスは、十二指腸によって画定される組織壁の第1の側に配置されるように、十二指腸内に配置されることができ、撮像デバイスは、十二指腸によって画定される組織壁の第2の反対側に配置されるように、十二指腸外に配置されることができる。肺切除は、外科処置の別の一例であり、外科用デバイスは、肺によって画定される組織壁の第1の側に配置されるように肺内に配置されることができ、撮像デバイスは、肺によって画定される組織壁の第2の反対側に配置されるように肺の外に配置されることができる。結腸切除は、外科処置の別の一例であり、結腸によって画定される組織壁の第1の側に配置されるように外科用デバイスを結腸内に配置することができ、結腸によって画定される組織壁の第2の反対側に位置決めされるように撮像デバイスを結腸の外に配置することができる。EMR及びESDは、外科処置の他の例であり、外科用デバイスは、胃によって画定される組織壁の第1の側に配置されるように、胃の中に配置されることができ、撮像デバイスは、胃によって画定される組織壁の第2の反対側に配置されるように、胃の外に配置されることができる。外科用デバイスが組織壁の第1の側に配置され、撮像デバイスが組織壁の第2の反対側に配置され得る他の外科処置が行われることができる。
【0181】
撮像システム及び外科用デバイスが組織壁の両側にそれぞれ存在しなくても、組織は、外科処置の実行中に組織が位置をシフトし、したがって、組織シフトの前に撮像システムが有していた外科用デバイスのビューを妨げる場合などに、撮像システムの外科用デバイスのビューを遮る可能性がある。
【0182】
撮像システムによる外科用デバイスのビューの妨害の原因にかかわらず、外科用デバイスのビューの妨害を有する撮像システムは、外科用デバイスの制御をより困難にし得る。撮像デバイスによって収集された画像を見て外科用デバイスを制御する医療従事者は、外科用デバイスのビューが遮られ、そうでなければ外科用デバイスの制御に考慮に入れる情報を医療従事者が見ることを妨げる可能性があるので、外科用デバイスの制御について完全に情報を得た上で決定を下すことができない可能性がある。外科用デバイスを制御する、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラは、外科用デバイスのビューが遮られ、コントローラが、そうでなければコントローラによる外科用デバイスの制御に考慮に入れる画像内の情報を検出することを妨げる場合があるので、外科用デバイスの制御について完全に情報を得た上で決定を行うことができない可能性がある。
【0183】
インテリジェント外科用デバイスのビューが手術部位において遮られている撮像デバイスは、手術部位を視覚化し、それによって、外科用デバイスが組織をアブレーションすること、組織を把持すること、組織をステープル留めすること、又は他の方法で組織に係合することなどによって、外科用デバイスによって係合された組織のパラメータを監視するように構成されることができる。撮像デバイス及び外科用デバイスと通信する、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラ等のコントローラは、監視されたパラメータに関する信号を撮像デバイスから受信することができる。コントローラは、撮像デバイスから直接、又は1つ以上の中間デバイスを通して、信号を受信することができる。上記で議論されるように、インテリジェント外科用デバイス上に記憶されるか、又は他の場所に記憶されるアルゴリズムは、1つ以上の可変パラメータを含むことができる。コントローラは、受信信号によって示されるように、監視されたパラメータに基づいて、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを調整するように構成することができる。したがって、撮像装置が外科用デバイスのビューを遮られているにもかかわらず、撮像装置によって収集された情報に基づいて、外科用デバイスを制御することができる。
【0184】
撮像デバイスは、本明細書で説明されるように、画像を収集するように構成されている。画像の収集は、撮像デバイスの通常動作がパラメータの監視を可能にすることができるように、撮像デバイスがパラメータを監視する方法であり得る。例えば、上述したように、撮像装置は、可視光外の光を用いて画像を収集するように構成され得る。可視光外の光は組織壁を通して「見る」ことができることから、可視光外の光によって、撮像デバイスが配置されている箇所と対向する組織壁の側で画像を収集することが可能となる。したがって、可視光外の光を使用して画像を収集するように構成されている撮像デバイスは、撮像デバイスがパラメータを監視することを可能にすることができる。
【0185】
上述のように、外科用デバイスのアルゴリズムの可変パラメータの例としては、モータ速度、モータトルク、エネルギーレベル、エネルギー印加持続時間、組織圧迫レート、ジョー閉鎖レート、切断要素速度、負荷閾値、及び他のパラメータが挙げられる。例示的な一実施形態では、監視されたパラメータに基づいて変更された可変パラメータ(複数可)は、外科用デバイスの移動、組織にエネルギーを送達するように構成された外科用デバイスの電極(外科用デバイスがアブレーションデバイスなどの電極を含む実施形態において)、外科用デバイスの電力レベル、又は外科用デバイスの電圧制御に影響を及ぼすことができる。
【0186】
図28は、肺内の腫瘍1442にエネルギーを印加するために肺内に配置されたインテリジェントアブレーションデバイス(アブレーションプローブ)1440の一実施形態を示す。撮像デバイス1444は、肺の外に配置され、少なくとも赤外光(IR)を使用して、例えば赤外線カメラを使用することによって、画像を収集するように構成されている。アブレーションデバイス1440は、したがって、肺によって画定される組織壁1446の第1の側に配置され、撮像デバイス1444は、アブレーションデバイス1440の遮られたビューを有するように、組織壁1446の第2の側、すなわち反対側に配置される。しかしながら、撮像デバイスのIR能力は、撮像デバイス1444に肺の内側を「見る」ことを可能にさせ、肺内部の温度情報を収集させる。4つの時点t、t、t、tにおいてIRサーマルカメラによって収集された赤外線画像1448が、図28に示されている。
【0187】
図28はまた、時間に対する、IRカメラ温度(℃)、アブレーションプローブ1440の位置(cm)、及びアブレーションプローブ1440の電力レベル(W)のそれぞれを示すグラフを示す。グラフに示されるように、IRサーマルカメラは、アブレーションデバイスのアブレーションゾーン(例えば、アブレーションデバイス1440が生成することができるアブレーションのエリア)を含むエリアの温度を監視し、アブレーションゾーンは、腫瘍1442と、アブレーションゾーン内の腫瘍1442の周囲のマージンエリアとを含む。グラフ中の時点は、IR画像が示される4つの時点t、t、t、tを含む。
【0188】
組織アブレーションのための治療温度範囲は、約60℃~約100℃の範囲内である。グラフに示すように、電力レベルは、収集されたIR画像に示されるように、監視された温度に基づいて制御され、したがって、腫瘍1442は、時点tとtとの間の時間から、時点tとtとの間で、時点tの直前に、エネルギー印加が停止するときまで、治療温度範囲内でアブレーションされている。温度は、時点t及びtから低下し、したがって、アブレーションデバイスの電力レベル及び/又はアブレーションデバイス1440によって送達されるエネルギーに影響を及ぼす他の可変パラメータ等の、アブレーションデバイスのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータが、電力レベルを増加させ、したがって、温度が約60℃を下回ることを防止するように、時点tにおいて変更される。温度は時点t及びtから上昇するので、可変パラメータは時点tで再び変更されて電力レベルを低下させ、それによって温度が約100℃を超えて上昇するのを防止する。温度は時点tの直前に再び低下するので、可変パラメータは時点tで再び変更されて電力レベルを増加させ、それによって温度が約60℃未満に低下するのを防止する。上述したように、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラは、可変パラメータを変更することができ、アルゴリズムの実行を制御することができる。
【0189】
約41℃までの温度である組織は、血管拡張及び血液灌流の増加を引き起こし得、熱ショック応答を誘発し得るが、長期的効果はほとんどない。組織が約41℃を超える温度であると、組織が不可逆的な細胞損傷を受けやすくなるか、又は組織が不可逆的な細胞損傷を受ける原因となり、温度が高いほど損傷が大きくなる。グラフに示すように、また以下で更に説明するように、この図示された実施形態では、腫瘍1442の効果的なアブレーションを維持しながら、健康な非標的肺組織の温度を約41℃未満に保つように、可変パラメータ(複数可)も調整される。
【0190】
図28は、肺に関して説明されるが、別の中空器官又は体腔において行われる外科処置に関して、同様の制御が実行されることができる。例えば、DMR処置では、インテリジェントアブレーションデバイスなどのインテリジェント外科用デバイスを十二指腸内に配置することができ、腹腔鏡などの撮像装置を十二指腸外に配置することができる。したがって、撮像装置は、介在する、十二指腸の組織壁のために、アブレーションデバイスのビューが遮られてしまう。撮像デバイスは、図28の撮像デバイス1444に関して上述したものと同様に、例えば少なくとも赤外光を使用して撮像することによって、例えばIRカメラを使用することによって、温度情報を示す画像を収集するように構成されることができる。したがって、インテリジェントアブレーションデバイスは、図28のアブレーションデバイス1440に関して上述したものと同様に(以下で更に説明するように)制御することができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、インテリジェント外科用デバイス(例えば、インテリジェントアブレーションデバイス又は他のデバイス)は、エネルギーを組織に印加するように構成された電極を含むことができ、組織接触の完全性は、電力変化、組織インピーダンス閾値、又は1つ以上の可変パラメータを介して制御可能な他のパラメータ等の外科用デバイスの別の態様に加えて、外科用デバイスの電力レベルを制御するために(例えば、少なくとも1つの可変パラメータを変化させることによって)感知されることができる。そのような感知は、電極の既知のサイズ及び形状を前提として、予想される接触量未満への電極-組織接触を防止し得るが、電極の断面積が、電極によって提供されるアブレーションレベルを過度に集中させる電力密度の不慮のレベルをもたらすことを防止し得るだけでなく、インピーダンス等の組織パラメータに基づいて、必要よりも高いRF出力電圧を防止し、かつ/又はアーク放電電位を低下させ得る。
【0192】
アブレーションデバイス、例えば、図23のアブレーションデバイス1410及び本明細書に説明されるアブレーションデバイスの他の実施形態は、バルーン又はバスケット等の膨らませることが可能又は膨張可能部材と、少なくとも膨らませることが可能又は膨張可能部材が中空器官又は体腔内で膨らませる又は膨張されると、組織に接触するように構成されている、膨らませることが可能又は膨張可能部材に取り付けられる複数の電極(電極アレイ)とを含む、双極デバイスであることができる。戻り部には、中空器官又は体腔の外径に接触し、圧力を印加する、セグメント化電極を提供されることができる。戻り電極の種々の実施形態は、以下で更に議論される。外径に圧力を印加することは、アブレーションされることが意図される組織とアブレーションされることが意図されない隣接組織との間の間隙を制御することに役立ち得る。インピーダンス測定値は、戻り圧力/電極接触面積が所望のインピーダンス帯域を生成するまでサンプリングすることができる。例えば、DMR処置において、アブレーションされる十二指腸粘膜組織は、本明細書で説明されるように、十二指腸の外層を保護するのを助けるために、生理食塩水などで持ち上げられる。したがって、十二指腸の外径に圧力を印加することは、アブレーションされることが意図される標的十二指腸粘膜組織と、アブレーションされることが意図されない非標的十二指腸外層との間の間隙を、制御するのに役立ち得る。必要に応じて、追加の生理食塩水を加えて間隙を調整することができる。追加の生理食塩水はまた、組織インピーダンスを調整する。組織の圧力は、例えば、歪みゲージを使用して感知されることができ、それは、印加される外圧並びに/又は生理食塩水の量及び/若しくは送達速度の調整を補助することができる。
【0193】
セグメント化された電極は、単一の戻り部又は戻り部の弧(例えば、戻り部の90°の弧)であることができる。戻り電極の種々の実施形態は、以下で更に議論される。戻り部のための適切なサイジング及び/又は間隔を決定するために、中空器官又は体腔の周囲にサイジングツールを使用することができ、これは、単一のアブレーションサイクルで完全な360°アブレーションを可能にすることができる。
【0194】
図29及び図30は、組織壁1452の一方の側から組織壁1452に力を加えるように構成された可撓性力プローブ1450の一実施形態を示しており、この図示された実施形態では、組織壁1452は、スコープ1456が配置されている体腔1454の外側にある。組織内腔1454は、図30には示されていない。可撓性力プローブ1450は、戻り部として機能し、組織壁1452に当接して押圧するように構成されたアーム1450aを含む。可撓性であるアーム1450aは、アーム1450aが組織壁1452の形状に適合することを可能にし得る。スコープ1456の内部経路は、管腔1454内で既知であり得るので、管腔1454の外部のプローブ1450は、アーム1450aが組織壁1452を押圧した状態で、同じスプライン経路を辿ることができる。アーム1450aは、したがって、管腔1454の外表面に対して押圧する位置にあることができ、管腔1454の中に導入されるアブレーションデバイスは、管腔1454の内側から管腔1454をアブレーションする。
【0195】
いくつかの実施形態では、接地パッドは、アブレーションされる組織の外側、例えば十二指腸又は他の組織の外面に適用されることができる。接地パッドは、アブレーションゾーンにアブレーションを抑制するのに役立つ電流経路を提供するように構成されている。具体的なアブレーションデバイスについて、アブレーションゾーンサイズは、既知である。例えば、NeuWave(商標)アブレーションプローブ(Ethicon US LLC (Cincinnati,OH)から入手可能)は、2cmのアブレーションゾーンを有する。接地パッドは、アブレーションゾーン全体が接地パッドの利益を受けることを確実にするのに役立つように、アブレーションデバイスのアブレーションゾーンよりも広い長さに延在することができる。アブレーションゾーンの場所(例えば、アブレーションゾーンを提供する電極の場所)は、例えば、十二指腸内のアブレーションデバイスでアブレーションされている十二指腸外に配置された腹腔鏡を使用すること等によって、マルチスペクトル撮像を使用することによって、又は電磁若しくはRF監視を使用することによって、内部からアブレーションされている組織の外側から判定されることができる。中空器官又は体腔内のアブレーションデバイス及び/又はスコープの場所を判定する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0196】
いくつかの実施形態では、インテリジェント外科用デバイス(例えば、インテリジェントアブレーションデバイス又は他のデバイス)は、エネルギーを組織に印加するように構成された電極を含むことができ、外科用デバイスの制御アルゴリズムは、エネルギー印加が開始する前に、少なくとも1つの測定された組織パラメータに基づいて、電極の制御を較正するように調整されることができる(例えば、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータが変更される)。したがって、エネルギーは、アブレーションの開始からより効率的に印加され得るが、かつ/又はアブレーションは、より迅速に完了されて、したがって、アブレーションされることが意図されない任意の近傍組織(非標的組織)を損傷する可能性を低下させ得る。
【0197】
例示的な一実施形態では、電極の制御を較正する際に使用される組織パラメータは、組織温度、組織インピーダンス、及び組織厚さのうちの少なくとも1つを含む。本明細書で議論されるように、種々の外科処置は、外科用デバイスが中空器官又は体腔の内側に配置され、撮像デバイスが中空器官又は体腔の外側に配置されることを伴う場合があるが、その場合、撮像デバイスが、外科用デバイスの遮られたビューを有することとなる。撮像デバイスは、1つ以上の撮像モダリティを介して測定される外部表面温度等、中空器官又は体腔の外部温度を測定するように構成されることができ、外科用デバイスは、温度センサ測定を使用して測定される内部表面温度等、中空器官又は体腔の内部温度を測定するように構成されることができる。多くの場合、外部温度及び内部温度は、例えば組織の厚さに起因して、一致しない。一般的に、より大きな壁厚を有する場所では、より小さな厚さを有する同じ組織の場所よりも、外面においてより冷温である。加えて、同じ組織壁の厚さといっても、通常、患者間で変動し、また、厚さが測定される、組織に沿った軸方向の場所及び組織の周囲の円周方向の場所に応じて、1人の特定の患者における組織壁についても変動し得る。
【0198】
図31図32、及び図33は、電極の制御を較正する際に、少なくとも1つの測定された組織パラメータを使用する一実施形態を示す。この図示された実施形態では、第1の電極及び第2の電極1460、1462はそれぞれ、体腔1466の内面1464に接触するように配置される。体腔1466は、例えば、バルーン又はバスケット等の膨らませることが可能又は膨張可能部材に取り付けられた第1の電極1460及び第2の電極1460を含むアブレーションデバイスを使用して、DMR処置においてアブレーションされる十二指腸であることができる(例えば、図23及び本明細書に説明されるアブレーションデバイスの他の実施形態を参照のこと)。
【0199】
第1の電極及び第2の電極1460、1462の各々は、身体の内腔の内面(本明細書では「内面」とも呼ばれる)1464の温度T1、T2を監視するように構成されるが、それは、温度を監視するように構成された一体型温度センサを含む第1の電極及び第2の電極1460、1462の各々によって、又はIRを測定し、特定の温度に対応するIR周波数信号を放出するように構成された一体型IRセンサを含む第1の電極及び第2の電極1460、1462の各々によってなど、の手段によって行われる。したがって、体腔の内面1464の温度は、第1の電極及び第2の電極1460、1462の場所に対応する体腔1466の内周の周りの第1の電極及び第2の場所1468、1470において監視することができる。他の実施形態では、異なる数の電極を使用することができ、対応する異なる数の内部表面温度測定値が収集される。
【0200】
この図示された実施形態では、体腔1466の外表面(本明細書では「外側表面」とも呼ばれる)1472の温度も測定される。外面1472の温度T1’、T2’は、体腔1466の内周の周りの第1の電極1474及び第2の場所1476に対応し、したがって、第1の電極及び第2の電極1460、1462の場所に対応する、体腔1466の外周の周りの第1の電極1468及び第2の場所1470において監視される。外面1472の温度T1’、T2’は、例えば、体腔1466の外側に配置された腹腔鏡などの撮像デバイス(図示せず)によって提供される熱撮像を使用することによって、温度センサ(例えば、撮像デバイスの作業チャネルを通して前進させられる可撓性力プローブ又は他の外科用デバイス上の温度センサ)を使用することによって、又はIRセンサ(例えば、撮像デバイスの作業チャネルを通して前進させられる可撓性力プローブ又は他の外科用デバイス上のIRセンサ)を使用することによって、測定することができる。他の実施形態では、異なる数の電極を使用することができ、対応する異なる数の外表面温度測定値が収集される。
【0201】
中空器官又は体腔の外部における温度の上昇は、その下にある組織壁における変性の進行に比例する。外部組織温度を測定することは、したがって、外部組織温度が測定された場所の下で行われているアブレーションに結び付けられ得る。したがって、体腔1466の内部及び外部温度T1、T2、T1’、T2’を測定することは、各組織層の温度が確立され得るように、管腔1466の内側の漿膜層の外側から粘膜層への温度勾配が確立されることを可能にする。粘膜層が断熱体として作用するので、内部及び外部温度T1、T2、T1’、T2’は、典型的には、アブレーションが始まる前は同じではない。アブレーション中は、体内管腔1466の内面1464が加熱されているので、内部及び外部温度T1、T2、T1’、T2’は、通常、同じではない。しかしながら、内部温度と外部温度との間の指数関係又は多項式関係は、同じ組織壁厚及び組織タイプに対して一貫している。アブレーションが始まる前の内部及び外部温度T1、T2、T1’、T2’の較正は、第1の内部及び外部温度T1、T1’と第2の内部及び外部温度T2、T2’との間の関係を定義することができる。この図示された実施形態におけるように、中空器官又は体腔の円周の周りの2つ以上の場所で内部温度及び外部温度を測定することは、円周の周りの組織壁厚さの差異を説明するのに役立ち得る。
【0202】
外部温度T1’、T2’を測定することは、体腔1466の内面1464の加熱が、アブレーションの意図しない標的である組織の外層を過熱しないことを確実にするのに役立つことができる。上述したように、約41℃を超える温度にある組織は、組織を不可逆的な細胞損傷を受けやすいものとし始めるか、又は組織に不可逆的な細胞損傷を受けさせ始める。外部温度T1’、T2’が、41℃、50℃、60℃、70℃、又は他の温度等の所定の最大外部温度閾値を上回ると判定されると、アブレーション制御アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータは、アブレーションデバイスの電力レベルを低減する等、(例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラによって)変更されて、意図される内部組織を超えて組織が加熱されるのを低下させることができる。60℃以下である所定の最大外部温度閾値は、60℃を上回る非標的組織の加熱を防止するのに役立ち得るが、60℃は、上述のように、組織アブレーションのための治療温度範囲を開始する温度付近である。50℃以下である所定の最大外部温度閾値は、約50℃が不可逆的組織損傷が生じ始める温度であるため、50℃を超えて非標的組織を加熱することを防止するのに役立てることができる。少なくとも1つの可変パラメータを変更することは、少なくとも1つの可変パラメータに関連付けられた電極が、例えば温度を低下させ、温度を上昇させ、又は所望のように温度を維持しようとして、異なるレベルで電力を送達し続けるようなものであってもよく、又は例えば治療されている標的組織が所定の目標温度まで加熱されているので、少なくとも1つの可変パラメータに関連付けられた電極が電力の送達を停止するように、電力がオフにされるようなものであることができる。
【0203】
内部温度T1、T2を測定することは、体腔1466の内面1464の加熱が組織アブレーションのための治療温度範囲内であることを確実にするのを助けることができる。上述したように、組織アブレーションの治療温度範囲は、約60℃~約100℃の範囲である。内部温度T1、T2が、100℃若しくは他の温度等の所定の最大内部温度閾値を上回る、又は60℃若しくは他の温度等の所定の最小内部温度閾値を下回ると判定されると、アブレーション制御アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータは、アブレーションデバイスの電力レベルを変更する等して、加熱を停止する、又は意図された内部組織における組織の効果的な加熱を維持するように、(例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラによって)変更されることができる。
【0204】
第1の電極1460及び第2の電極1462を含むアブレーションデバイスは、アブレーションデバイスのバルーン上又はその別の要素上等、その上に、磁気基準マーカ等の基準マーカを含むことができる。基準マーカの様々な実施形態が、以下で更に説明される。体腔1466の外側に位置する外部撮像デバイスは、第1の場所及び第2の場所における組織厚さ1478、1480を推定することに役立つように、基準マーカを検出するように構成されることができる。この図示された実施形態では、第1の厚さ1478は第2の厚さ1480よりも大きい。撮像デバイスは、既知の場所を有し、したがって、検出された基準マーカは、組織厚さ1478、1480に対応するそれらの間の距離が計算されることを可能にすることができる。組織の厚さは、温度を決定するために使用され得る変数である。組織の厚さはまた、アブレーションデバイスの電力出力に影響を与え得る変数でもある。
【0205】
赤外線が内部及び外部温度T1、T2、T1’、T2’を測定するために使用される実施形態では、内部デバイス(例えば、アブレーションデバイス)及び外部デバイス(例えば、腹腔鏡)の各々は、較正が両方向で達成され得るように、IRエミッタ及び受信機を含むことができる。
【0206】
図31及び図32は、時点1における、第1の内部位置1468と第1の外部位置1476との間の第1の組織厚さ1478と、第2の内部位置1470と第2の外部位置1478との間の第2の組織厚さ1480とを示す。図32は、外科処置の実行中の4つの時点(時点1、時点2、時点3、及び時点4)のそれぞれにおける第1の電極1460、第1の内部位置1468、及び第1の外部位置1474を含む、図31のハッシュ線によって描かれた図31の一部分を示す。
【0207】
図33は、第1の内部及び外部温度T1、T1’、第1の推定組織厚さ1478及び第2の推定組織厚さ1480に基づく推定組織厚さ、電極1460、1462を含むアブレーションデバイスの電力レベル、及び組織インピーダンスがそれぞれ、図32の4つの時点のそれぞれを含む時間に対してプロットされたグラフを示す。グラフに示されるように、電力は、電極1460、1462が時点1において組織にエネルギーを送達し始めるように、時点1において電極1460、1462に供給され始める。エネルギー送達は、時点2及び3を通して継続し、時点4で終了する。図32に示されるように、第1の組織厚さ1478は、アブレーション中、ときとともに減少する。第2の組織厚さ1480もアブレーション中に減少する。図32はまた、第1の内部及び外部温度T1、T1’が、アブレーションデバイスの電力レベルがアブレーション中に経時的に減少している場合であっても、加熱が累積効果を提供することができるため、アブレーション中に経時的に上昇することを示す。第2の内部及び外部温度T2、T2’もアブレーション中に時間とともに上昇する。図32はまた、組織が熱くなり、組織の厚さが減少するにつれて、アブレーション中に組織インピーダンスが経時的に増加することを示す。第1の外部温度T1’が所定の最大外部温度閾値を上回ると判定されたことに応答して、時点4においてアブレーションが停止し、例えば電力レベルが0になる。
【0208】
圧力又は流体流量の制御
本明細書で提供される多光源撮像のためのデバイス、システム、及び方法は、圧力又は流体流量を制御することを可能にし得る。本明細書で論じるように、外科処置は、電極を使用して組織をアブレーションすることを含むことができる。また、本明細書で議論されるように、そのような外科処置は、非標的組織が過度に加熱されることから保護することを補助するために、アブレーションの前に、流体の導入等によって、組織を持ち上げることを含むことができる。例示的な一実施形態では、組織に対する電極圧力及び/又は流体放出は、組織の少なくとも1つの監視されたパラメータ、電極と組織との接触、及び電極から組織へのエネルギー伝達の態様のうちの1つに基づいて制御されることができる。電極がエネルギーを送達している組織に対する電極の接触圧力を制御することは、伝導性を改善するのに役立ち得るが、かつ/又は電極のエネルギーを均一かつ予測可能に方向付けるのに役立ち得る。アブレーション前に組織を持ち上げるために使用される生理食塩水又は他の流体の排出等、流体排出を制御することは、組織と電極との電気的結合を向上させるのに役立ち得る。
【0209】
本明細書で議論されるように、アブレーションデバイスは、スコープ、例えば、内視鏡の作業チャネルを通して十二指腸又は他の解剖学的構造の中に導入されることができ、スコープを越えて遠位方向に前進させられると、半径方向外向きに拡張することができる。図23は、電極及び膨張可能又は膨らませることが可能バルーン1412を含む、そのようなアブレーションデバイス1410の一実施形態を図示する。
【0210】
図34図35、及び図36は、半径方向外向きに拡張し、半径方向内向きに圧縮するように構成される、アブレーションデバイス1490の別の一実施形態を図示する。アブレーションデバイス1490は、患者の内外へのアブレーションデバイス1490の移動を促進する圧縮構成と、それぞれが組織に接触する電極による組織へのエネルギー印加を促進する拡張構成との間で移動するように構成されている複数の電極を含む。電極は、この図示された実施形態では、デバイス1490の中心の周りに等間隔に配置される。図34は、アブレーションデバイスの電極が直線的に延在する、圧縮構成のアブレーションデバイス1490を示す。図35及び図36は、電極が半径方向に拡張された、拡張構成のアブレーションデバイス1490を示す。図36はまた、内視鏡1494を通して腫瘍1492に対して定位置に前進させられたアブレーションデバイス1490を示し、電極は、拡張され、アブレーションデバイスのシース1496から遠位方向に前進させられる。シース1496から外への電極の遠位方向前進(又は電極に対するシース1496の近位方向移動)は、電極を自動的に半径方向に拡張させる。それに対応して、シース1496内への電極の近位方向移動(又は電極に対するシース1496の遠位方向移動)は、電極を自動的に半径方向に収縮させる。いくつかの実施形態では、シース1496は、内視鏡1494の内外への電極の移動が、電極の拡張及び圧縮を引き起こすように、省略されてもよい。
【0211】
図37は、半径方向外向きに拡張するように構成されたアブレーションデバイス1500の別の一実施形態を示す。アブレーションデバイス1500は、それぞれ電極1506が取り付けられた複数の圧縮可能なストランド又はワイヤ1504によって画定された、バスケット1502を含む。バスケット1502、したがってそれに取り付けられた電極1506は、患者の内外へのアブレーションデバイス1500の移動を容易にする圧縮構成と、それぞれが組織に接触する電極1506による組織へのエネルギー印加を容易にする拡張構成との間で移動するように構成されている。アブレーションデバイス1500はまた、シース1508を含む。シース1508から外へのバスケット1502の遠位方向前進(又はバスケット1502に対するシース1508の近位方向移動)は、バスケット1502を自動的に半径方向に拡張させる。それに対応して、バスケット1502のシース1508内への近位方向移動(又はバスケット1502に対するシース1508の遠位方向移動)は、バスケット1502を自動的に半径方向に収縮させる。
【0212】
アブレーションデバイス1500は、膨張可能又は膨らませることが可能なトロイドバルーン1510を含む。バルーン1510は、生理食塩水等の流体で加圧されるように構成され、それは、バルーン1510を拡張又は膨張させる。バルーン1510は、複数組の孔1512を含み、各組の孔1512は、電極1506の1つに隣接して配置される。各組は、この図示された実施形態では4つの孔1512を含むが、別の数の孔も可能である。バルーン1510を加圧する流体は、孔1512から漏出するように構成されている。孔1512は、流体が孔1512からゆっくりと漏出するように構成されているように小さく、例えば電極1506よりも小さい。孔1512は、孔1512が組織に当接するように同様に構成されているように、組織に接触して押し付けるように構成される電極1506と同様に、半径方向外向きに面する。したがって、孔1512から漏出した流体は、したがって、組織に向かって方向付けられることができる。バルーン1510を加圧する流体は、例えば、ストランド又はワイヤ1504のうちの1つ以上の中に、次いで、バルーン1510の中に通されることによって、バルーン1510の中に導入されることができる。流体が液体である実施形態では、バルーン1510は、電極1506と、その中に流体を含有するバルーン1510の流体チャンバとの間に断熱体を含むことができる。断熱体は、ヒートシンクになるバルーン1510の量を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0213】
アブレーションデバイス1500は、第1の可撓性吸引管1514及び第2の可撓性吸引管1516を含む。第1の吸引管1514は、第2の吸引管1516に対して遠位側に配置される。吸引管1514、1516の各々は、そこに形成された複数の開口部を有する遠位ヘッド1514h、1516hを含み、それを通して吸引がそれらのそれぞれの管1514、1516の中へ近位方向に提供されることができる。第1のヘッド1514h及び第2のヘッド1516hは、重力がヘッド1514h、1516hを同じ方向(図37では下向きの方向)に引っ張るように、それぞれ第1の管1514及び第2の管1516の重りとして作用する。重力はまた、ヘッド1514h、1516hが、流体が集まる傾向がある方向に引っ張られ、それによって、吸引管1514、1516を通した流体の吸引を最大化するように、アブレーションデバイス1500が位置する中空器官又は体腔内の流体を引っ張る。
【0214】
本明細書で議論されるように、組織に接触し、エネルギーを送達するように構成されたアブレーションデバイスの電極に提供される電力は、調整可能であり得る。図23のアブレーションデバイス1410、図34図36のアブレーションデバイス1490、図37のアブレーションデバイス1500、及び他のアブレーションデバイス等のアブレーションデバイスが拡張可能/圧縮可能である実施形態では、アブレーションデバイスの拡張/圧縮は、電力に相関されることができる。このようにして、アブレーションデバイスの拡張/圧縮は、例えば電力の制御アルゴリズムの可変パラメータに基づいてアブレーションデバイスの拡張/圧縮のアルゴリズムの可変パラメータを調整することによって、アブレーションデバイスの電極(単一の電極又は複数の電極を含んでもよい)に供給される電力量に基づいて制御することができる。アブレーションデバイスの拡張/圧縮を電力に相関させることは、導電率が可変である組織上の場所であっても、アブレーションの制御及び組織内のアブレーションの深さを改善するのに役立ち得る。
【0215】
本明細書で議論されるように、アブレーションデバイスは、シース又はスコープ等の封じ込め機構から外へ遠位方向に前進させられると、自動的に拡張するように構成されることができ、封じ込め機構の中へ近位方向に後退させられると圧縮するように構成されることができる。封じ込め機構は、封じ込め機構内に収容されるアブレーションデバイスの拡張可能部分を拘束するので、アブレーションデバイスが封じ込め機構から遠位方向に前進する量は、したがって、アブレーションデバイスの拡張の量に影響を及ぼす可能性がある。アブレーションデバイスの拡張可能部分上の電極が組織に印加する圧力の量は、したがって、アブレーションデバイスが封じ込め機構から遠位方向に前進させられる量によっても影響され得る。拡張が完全な拡張未満であれば、より低い電極圧力に対応できる。同様に、封じ込め機構は、封じ込め機構内に収容されるアブレーションデバイスの圧縮可能な部分を拘束するので、アブレーションデバイスが封じ込め機構の中へ近位方向に後退させられる量は、したがって、アブレーションデバイスの圧縮の量に影響を及ぼすことができる。アブレーションデバイスの拡張可能部分上の電極が組織に印加する圧力の量は、アブレーションデバイスが封じ込め機構の中へ近位方向に後退させられる量によっても影響され得るが、より少ない後退がより多くの電極圧力に対応する。
【0216】
本明細書で議論されるように、アブレーションデバイス等の外科用デバイスは、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラによって、例えば、後退/前進の量に対応する可変パラメータ(例えば、0%前進、10%前進、25%前進、50%前進、74%前進、100%前進等)、前進速度に対応する可変パラメータ、及び/又は後退速度に対応する可変パラメータ等のアブレーションデバイスのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータに従って、アブレーションデバイスを後退/前進させることによって、制御されることができる。封じ込め機構に対するアブレーションデバイスの位置は、コントローラが、アブレーションデバイスが封じ込め機構から遠位方向に前進させられる、又は封じ込め機構の中に近位方向に後退させられる量を制御することによって制御されることができ、それによってまた、組織に対するアブレーションデバイスの電極圧力の量を制御する。アブレーションデバイスの拡張/圧縮は、電力の可変パラメータの現在の値に基づいて調整される前進/後退の量の可変パラメータによって、アブレーションデバイスの電極に提供される電力に相関させることができる。例えば、前進/後退量の可変パラメータとパワーの可変パラメータとの間に一定の関係を予め設定しておき、パワーの可変パラメータの増減に応じて前進/後退量の可変パラメータをそれに対応して増減させることができる。
【0217】
アブレーションデバイスが外科処置で使用されるいくつかの実施形態では、流体排出を制御することができる。例示的な一実施形態において、流体は生理食塩水である。流体放出を制御することは、組織とアブレーションデバイスの電極(単一の電極又は複数の電極であり得る)との電気的結合を改善するのに役立てることができる。流体排出を制御することは、例えば少なくとも1つの可変パラメータを調整することによって、流体の流量及び/又は流体の塩分(低張又は高張)を制御することを含むことができる。流体の送達は、それぞれ異なる流体のための2つの別個の流体供給を使用して達成されることができる。2つの供給物は、導電率又は塩含量を改善するために、所望の塩含量に応じて所望の任意の様式で組み合わせることができる。例えば、第1の流体供給は、高塩分生理食塩水のためのものであってよく、第2の別個の流体供給は、蒸留水のためのものであることができる。
【0218】
流体送達を達成する種々の実施形態は、米国特許第10,751,117号(2020年8月25日発行、発明の名称「Electrosurgical Instrument With Fluid Diverter」);及び米国特許出願公開第2019/0099209号(2019年4月4日公開、発明の名称「Bipolar Electrode Saline Linked Closed Loop Modulated Vacuum System」)に更に論じられている。
【0219】
図23のアブレーションデバイス1410、図34図36のアブレーションデバイス1490、図37のアブレーションデバイス1500、及び他のアブレーションデバイスなどのアブレーションデバイスは、組織との電極接触を改善するように構成された電極構成を含むことができる。電極は、図34図36のアブレーションデバイス1490、図37のアブレーションデバイス1500、及び他のアブレーションデバイスのように、複数の電極を含む電極アレイを含むことができる。電極アレイの電極接触を制御することは、アブレーションされている組織に対する電極の各々の全体的な接触を改善するのに役立ち得る。
【0220】
例えば、電極アレイのための電極接触制御は、各電極における形に沿った変化を使用して達成されることができる。
【0221】
別の一例では、電極アレイのための電極接触制御は、上述したように、電極接点の部位に送達される流体(例えば、生理食塩水)の流れの速度を調整することによって、及び/又は流体(例えば、生理食塩水)の塩分を調整することによって、達成することができる。
【0222】
更に別の一例では、アブレーションデバイスの電極の組織接触を改善するためにアブレーションデバイスのバルーンの圧力を変化させることによって、電極アレイの電極接触制御を達成することができる。一例として、バルーンの圧力を変化させることは、図37のアブレーションデバイス1500のバルーン1510の孔1512等の、バルーン内の孔を使用して達成されることができる。孔1512は、バルーン1510内の流体がバルーン1510から漏出することを可能にし、その結果、バルーンの圧力が時間とともに減少する(追加の流体がバルーン1512内に導入されない場合)。したがって、電極1506が有する組織との接触は、電極1506がバルーン1512に取り付けられているので、バルーン1510が収縮/圧縮するにつれて、経時的に減少する。この電極接触の減少は、組織が過熱すること、及び/又はアブレーションのために意図されていない近くの組織が過熱されることを防止するのに役立ち得る。別の一例として、バルーンの圧力を変化させることは、複数のセグメントの各々が独立して収縮/圧縮されるように構成されたセグメント化バルーンを使用することによって、達成することができる。バルーンセグメントの各々は、バルーンセグメントの関連付けられた電極が、バルーンセグメントの膨張/拡張及び収縮/圧縮によって制御されるそれらの接触を有することができるように、バルーンセグメントに取り付けられた少なくとも1つの電極を有することができる。独立して制御可能なバルーンセグメントは、偏心圧力が提供されることを可能にすることができ、これは、中空器官又は体腔の不規則な内部円形形状に適応させることができる。バルーンセグメントは、完全な周囲制御のために360°延在するように、花弁半径方向パターンで配列されること等によって、トロイドを形成するように配列されることができる。
【0223】
更に別の一例では、電極アレイの電極接触制御は、真空を使用して組織を引っ張ってアブレーションデバイスの電極と接触させることによって達成することができる。真空は、例えば、図37のアブレーションデバイス1500の吸引管1514、1516を使用することによって等、少なくとも1つの吸引管を通した吸引を使用して、達成され得る。真空は、単一の供給源から生じ得るが、そのような場合、真空は、個々の真空チャネルが個々の電極に従うことができるように、セグメント化されることができる。電極接触が既に十分であるため、他の電極に関連付けられた1つ以上の他の真空チャネルが吸引を適用していない場合、そのような分割は、閉塞を最小限にし得る、かつ/又は電極接触を改善するために、1つ以上の真空チャネル及びそれらの関連付けられた電極に対して吸引が継続することを可能にし得る。真空を使用する種々の実施形態は、先に言及した、米国特許第10,751,117号(2020年8月25日発行、発明の名称「Electrosurgical Instrument With Fluid Diverter」);及び米国特許出願公開第2019/0099209号(2019年4月4日公開、発明の名称「Bipolar Electrode Saline Linked Closed Loop Modulated Vacuum System」)に更に議論されている。
【0224】
別の一例では、電極アレイのための電極接触制御は、管腔の前方及び遠位側のバルーン閉塞を使用して達成され、各電極のアブレーションゾーンにおける場所ごとの吸引を提供することができる。電極のアブレーションゾーンを越えて約1cm~約3cmの範囲内に閉塞を位置付けることは、電極アレイへの管腔内適合を可能にすることができる。
【0225】
更に別の一例では、電極アレイのための電極接触制御は、電極接触の質を測定し、測定値に基づいて、電極接触の質を改善するための措置を講じることによって達成することができる。電極接触の質は、例えば、戻りパッド回路内のリターン電極監視(return electrode monitoring、REM)システムを使用して測定することができる。接触の質問題は、電極の任意の2つのセット間の接触抵抗が電極の他のセットと著しく異なると判定されることに基づいて特定することができる。接触の質問題を特定することに応答して、例えば外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又はアブレーションデバイス及び/若しくは他の関連デバイスを制御する他のコンピュータシステムのコントローラによって、応答アクションが自動的にとられ得る。応答動作の例には、アブレーションデバイスのバルーンの圧力を変化させること、アブレーションデバイスを回転及び/又は並進移動させて電極位置を再調整し、それによって電極接触を再調整すること、及び問題のある電極接触領域に生理食塩水を導入することが含まれる。戻り電極の種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0226】
更に別の一例では、電極アレイのための電極接触制御は、電極アレイに動作可能に結合され、組織温度等の適応力印加構造に局所的に測定された温度に比例する外向きの力を印加するように構成された適応力印加構造を使用して達成されることができる。組織温度は、本明細書で論じられるように、種々の方法で測定されることができる。
【0227】
適応力印加構造は、四次元(4D)印刷を使用して印刷することができる。4D印刷された物体は、構造を経時的に変えることができる3D印刷された物体である。4D印刷構造が印刷される材料(複数可)は、熱、磁気エネルギー、水、光、又は他の条件などの特定の条件にさらされたときに変化するように構成されている。例えば、図37のアブレーションデバイス1500のバスケット1502などのアブレーションデバイスのバスケットは、温度に応じて変化するように構成された材料を使用して、4D印刷することができる。バスケットは、したがって、特定の温度に応答して圧縮又は拡張するように構成されることができ、それによって、バスケットに取り付けられた電極が、バスケットが電極組織接触を増加させるように拡張するか、又は電極組織接触を減少させるように圧縮するかに基づいて、それらの組織接触を調整することを可能にする。別の一例では、図37のアブレーションデバイス1500のバスケット1502などのアブレーションデバイスのバスケットは、温度変化に応答して形状を変化させるように構成された形状記憶材料から作製することができる。アブレーションが行われると、加えられている熱は、形状記憶材料の形状を変化させることができ、それによって、電極を半径方向外向きに押して電極を組織と接触させることなどによって、アブレーションデバイスの電極の組織との接触を変化させる。
【0228】
温度変化に応答するように構成された材料(複数可)で4D印刷される代わりに、4D印刷構造は、電極接触を制御するために磁気に応答するように構成された材料(複数可)で印刷されることができる。本明細書で議論されるように、アブレーションデバイスが十二指腸又は他の解剖学的構造内で使用される外科処置はまた、アブレーションデバイスが位置する十二指腸又は他の解剖学的構造の外側に配置される、腹腔鏡又は他の撮像デバイスを含むことができる。磁石は、アブレーションデバイスが配置される十二指腸又は他の解剖学的構造の外側で、腹腔鏡又は他の撮像デバイスの作業チャネルを通して導入されることができる。次いで、磁石は、アブレーションデバイスが配置されている十二指腸又は他の解剖学的構造内で、磁気構造を反発することによって、4D印刷された構造を移動させるために使用されることができる。
【0229】
磁性材料を用いて4D印刷される代わりに、1つ以上の磁石が、電極アレイの各アーム又はワイヤ上等で、アブレーションデバイスに取り付けられることができる。磁石は、アブレーションデバイスが配置される十二指腸又は他の解剖学的構造の外側で、腹腔鏡又は他の撮像デバイスの作業チャネルを通して導入されることができる。次いで、磁石は、アブレーションデバイスが配置されている十二指腸又は他の解剖学的構造内で、1つ以上の磁石を反発させることによって、1つ以上の磁石が配置されている構造を移動させるために使用されることができる。
【0230】
中空器官又は体腔の外側に位置する磁気要素と、中空器官又は体腔の中に位置する磁気要素とを使用する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0231】
更に別の一例では、電極アレイの電極接触制御は、電極アレイの各電極が独立したばねワイヤに動作可能に結合され、ばねワイヤがカラーによって互いに接続されることによって達成することができる。カラーは、電極アレイを選択的に後退させる(カラーを遠位方向に前進させる)、又は拡張させる(カラーを近位方向に後退させる)ように、遠位方向に選択的に前進し、近位方向に選択的に後退するように構成されている。カラーは、したがって、電極アレイがシース又はスコープから遠位方向に前進させられるか、又はシース又はスコープの中に近位方向に後退させられることをシミュレートすることができる。
【0232】
更に別の一例では、電極アレイのための電極接触制御は、アブレーションデバイスが組織をアブレーションするように位置付けられる十二指腸又は他の解剖学的構造の外径の周囲に配置されるスリーブ又はステントを使用して達成されることができる。そのように配置されたスリーブ又はステントは、電極が十二指腸又は他の解剖学的構造の内側から、組織単独で提供することができるよりも均一な表面を提供するように構成され、これは、より均一な組織接触を可能にすることによって、より正確かつ一貫したエネルギー送達を可能にし得る。
【0233】
スリーブ又はステントは、様々な方法で外径の周りに配置することができる。例えば、スリーブ又はステントは、外科用デバイスが外径の周りを前進する細長い部材であってよく、細長い部材の自由な遠位端が前進をリードする。自由な遠位端は、外径の周りで巻き付いて戻り、磁石などを用いてデバイスに解放可能に取り付けられる。自由遠位端は、その後、デバイスから解放され、細長い部材を外径の周囲から解くことができ、したがって、細長い部材は、患者の身体から除去されることができる。したがって、スリーブ又はステントは、LINX(登録商標)Laparoscopic Sizing Tool(Ethicon US LLC(Cincinnati,OH)から入手可能)などの腹腔鏡サイジングツールが組織の外径の周りに位置するサイザーと同様であり得る。
【0234】
十二指腸又は他の解剖学的構造の外側の、内部アブレーション位置に対応する位置にスリーブ又はステントを配置する場所は、十二指腸又は他の解剖学的構造の内側に配置されたアブレーションデバイスのバルーン又は他の要素上の、例えば図23のアブレーションデバイス1410のバルーン1412上の基準マーカを使用して決定することができる。基準マーカは、磁性を有するものであってもよく、それによって、十二指腸又は他の解剖学的構造の内側の基準マーカが、基準マーカ又は基準マーカが取り付けられるバルーンの、裸眼での、又は可視光視覚化を伴わずに、十二指腸又は他の解剖学的構造の外側から磁気的に位置確定されることを可能にする。スリーブは、その場所を、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラに通信するように構成されることができ、コントローラは、アブレーションデバイスの位置が既知であるため、スリーブがアブレーション部位に適切に配置されているかを検証するために使用することができる。
【0235】
アブレーションが実施された後、スリーブ又はステントは、十二指腸又は他の解剖学的構造から、及び患者の身体から除去されることができる。
【0236】
電極接触がどのように制御されるかにかかわらず、電極の通電のオン及びオフは、圧力及び電力が同時に制御され得るように、電極によって組織に印加されている外向き半径方向圧力と相関させられることができる。例えば、電極の各々は、その電極の圧力閾値が満たされる場合、例えば、電極が所定の最小圧力閾値を上回る圧力を組織に加えていると測定される場合にのみ通電されるように構成することができ、それにより、圧力及び電力を同時に制御することができる。したがって、電極の組織との接触が効果的なアブレーションのために不十分であるとき、電極は、不必要にエネルギーを組織に送達しようとしなくてもよい。圧力は、例えば、圧力センサを用いて測定することができる。
【0237】
電極電力の制御
本明細書で提供されるマルチソース撮像のためのデバイス、システム、及び方法は、電極電力を制御することを可能にし得る。本明細書で説明するように、外科処置は、複数の電極を使用して組織をアブレーションすることを含むことができる。例えば、図23は、複数の電極を含むことができる電極を含むアブレーションデバイス1410を示す。別の一例として、図28は、複数の電極を含むことができる電極を含むアブレーションデバイス1440を示す。更に別の一例として、図31は、複数の電極1460、1462を含むアブレーションデバイスを示す。更に別の一例として、図34図36は、複数の電極を含むアブレーションデバイス1490を示す。別の一例として、図37は、複数の電極1506を含むアブレーションデバイス1500を示す。
【0238】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、電極の各々が同じ電力レベルにあり、同時にオン/オフされるように集合的に制御されることができる。そのような電力制御は、エネルギー制御を単純化し得るが、電極のうちの異なるものが、異なる温度、異なる厚さ、及び/又は異なるインピーダンス等の異なる特性を有する組織にエネルギーを送達し得ることを考慮せず、したがって、電極のうちの1つ以上が、エネルギーを組織に効率的に送達しておらず、かつ/又はアブレーションのために意図されない隣接組織が、電極のエネルギー送達によって過剰に加熱されている。いくつかの状況では、アブレーションデバイスの電極のうちの1つ又はそれを上回るものは、組織と全く接触しない場合もあり、又は組織と完全には接触しない場合もある。例えば、アブレーションデバイスは、不規則形状の内周及び/又は凹凸のある内側表面を有する十二指腸又は他の体腔内で拡張され、アブレーションデバイスの電極のうちの1つ以上が、十二指腸又は他の体腔内の組織と全く接触しないか、又は組織の内側表面と部分的にのみ接触する場合がある。したがって、組織と全く接触していないか又は部分的にのみ接触している電極は、その電極の組織接触状態に対して不適切に又は不必要に電力供給され得る。
【0239】
電極電力を制御することは、複数の電極の各々を個別に制御することを含むことができる。したがって、電極はそれぞれ、電極が接触している組織に適切なエネルギーを送達することができ、かつ/又は電極の組織接触状態を考慮するようにその電力を制御することができる。
【0240】
上述したように、インテリジェントアブレーションデバイスなどのインテリジェント外科用デバイスに搭載されて記憶された、又は他の場所に記憶されたアルゴリズムは、外科用デバイスの制御に影響を及ぼす1つ以上の可変パラメータを含むことができる。外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラは、電極電力を制御するためにアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを調整するように構成することができる。インテリジェントアブレーションデバイスの複数の電極の各々は、電極の各々が個別に制御されることができるように、異なる可変パラメータによって影響されることができる。電極電力の制御することに関連する可変パラメータの例は、電極電力ステータス(例えば、電極オン及びエネルギー送達、又は電極オフ及びエネルギー非送達)、エネルギー送達速度、及び電力レベル(例えば、電極によって送達されている電力量)を含む。
【0241】
コントローラは、測定されたパラメータを示す信号を受信し、その信号に基づいて、電極電力を制御するためにアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを調整するか否かを決定し、そのように決定された場合、それに応じて少なくとも1つの可変パラメータを調整するように構成することができる。したがって、電極電力は、測定されたパラメータに基づいて制御され得る。測定されたパラメータは、特定の電極、又は電極の特定のサブセットに関連付けることができ、それによって、コントローラが、電極のうちの関連付けられた1つ(複数可)について少なくとも1つの可変パラメータを調整することを可能にする。したがって、測定されたパラメータに基づいて個々の電極を制御することができる。測定されるパラメータの例には、温度、厚さ、インピーダンスなどの組織特性が含まれる。
【0242】
本明細書で議論されるように、種々の外科処置は、インテリジェントアブレーションデバイス及び撮像デバイスの使用を含むことができる。例えば、肺に対する処置では、インテリジェントアブレーションデバイスを肺内に配置することができ、腹腔鏡などの撮像装置を肺外に配置することができる。図28は、そのような肺の処置の一実施形態を示す。別の一例では、腸に対する処置では、インテリジェントアブレーションデバイスを十二指腸内に配置することができ、腹腔鏡などの撮像装置を十二指腸外に配置することができる。図23は、そのような腸の処置の一実施形態を示す。
【0243】
撮像デバイスによって集められた画像は、アブレーションデバイスの電極の電力を制御するために、例えば外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラによって使用され得る。例示的な一実施形態では、画像は、組織アブレーションの深さを示すことができ、したがって、組織の意図されない層(複数可)が、例えば過熱によって損傷される危険があるかどうかを示すことができる。例えば、本明細書で説明するように、DMR処置では、十二指腸の粘膜層が十二指腸の意図されたアブレーションターゲットであり、十二指腸の外側の層はアブレーションを意図されていない。
【0244】
撮像デバイスは、例えば、図28に関して本明細書で議論されるように、撮像された組織内の温度レベルを変動させることによって、アブレーション深度を示す画像とともに、アブレーションされている組織の温度を示す画像を収集することができる。別の一例として、術中CT撮像は、アブレーションされている組織の温度を示す画像を提供することができる。
【0245】
コントローラは、電極の各々の位置及び向きを知ることができ、したがって、収集された温度データを個々の電極と関連付けることができる。例えば、撮像デバイスは、本明細書で論じられるように、場所及び配向が決定され得る画像を収集するように構成され得る。別の一例では、ホール効果センサ又は他のセンサは、組織の外側から電極のクロッキングを感知するように構成することができる。クロッキングを使用して、各個々の電極を測定された温度の位置に関連付け、電極位置を測定された温度に関連付けることができる。
【0246】
本明細書で論じられるように、撮像デバイスは、「隠れた」物体までの距離を判定するために使用されることができ、この場合、物体は、組織及び/又はアブレーションデバイスの電極のそれぞれであることができる。この距離は、反射率又は温度放射の影響における任意の補正係数に使用することができる。
【0247】
組織アブレーションの深さは、アブレーションデバイスの電極のうちの特定のものがそれらの電力を調整されるべきかどうかを決定するために、コントローラによって使用され得る。したがって、図28に関して本明細書で説明したものと同様に、コントローラは、特定の電極に関連する少なくとも1つの可変パラメータを調整して、その電極の電力を制御するように構成することができる。本明細書で論じられるように、組織は、様々な厚さ及び/又は組成を有することができ、したがって、個々の電極を制御する際にアブレーションの深さを考慮することは、一部の電極が他の電極よりも多い又は少ないエネルギーを送達することを可能にすることによって、組織の外周の周りの異なる厚さ及び/又は組成を考慮に入れるのに役立てることができる。例えば、コントローラは、外側の非標的組織層の測定された温度が第1の所定の最大閾値を上回り、アブレーションが過度に加熱しているか、又は組織の意図しない層を過度に加熱し始める危険性があることを示すことに応答して、少なくとも1つの可変パラメータを調整して、電力を減少させるか又はオフにすることができる。別の一例では、コントローラは、アブレーションのために意図された内側の標的組織層の測定された温度が、第2の所定の最大閾値を上回り、アブレーションが治療されている標的組織を所定の目標温度まで加熱したこと、又はアブレーションが組織の意図された層(複数可)を過度に加熱している、若しくは過度に加熱し始める危険性があることを示すことに応答して、少なくとも1つの可変パラメータを調整して、電力を減少させるか又はオフにすることができる。更に別の一例では、コントローラは、アブレーションが意図された内側の標的組織層の測定された温度が第1の所定の最小閾値未満であり、アブレーションが組織の標的層(複数可)をアブレーションするために効果的に加熱していないことを示すことに応答して、少なくとも1つの可変パラメータを調整して、電力を増加又はオンにすることができる。
【0248】
本明細書で議論されるように、スリーブ又はステントは、アブレーションデバイスが組織をアブレーションするように位置付けられる十二指腸又は他の解剖学的構造の外径の周囲に配置されることができる。そのように配置されたスリーブ又はステントは、外径の任意の変動を軽減するのに役立ち得る。
【0249】
本明細書で説明されるように、戻り電極(複数可)は、他の電極(複数可)を用いて組織の別の側をアブレーションされている組織の外側に配置することができる。リターン電極は、内部に適用される電極に関して本明細書で論じられるものと同様に制御されることができる。戻り電極(複数可)の通電を制御することは、所望の封止効果を達成するのを助けることができ、かつ/又は戻り電極(複数可)を特定の組織位置に指向的に移動させて、その位置により集中したエネルギーを提供することを可能にすることができる。戻り電極の種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0250】
いくつかの実施形態では、組織温度が何らかの他の方法で測定される代わりに、又はそれに加えて、アブレーションデバイスの複数の電極の各電極は、組織温度を測定するように構成されることができる。例えば、電極の各々は、一体型の正温度係数(PTC)センサ又は他の温度センサを含むことができる。したがって、コントローラは、別の方法で測定された温度を使用して電極を制御する上述した方法と同様に、電極を制御する際に電極によって測定された温度を使用することができる。例えば、コントローラは、電極によって測定された温度が所定の最大閾値よりも大きく、アブレーションが治療されている標的組織を所定の目標温度まで加熱したこと、又はアブレーションが標的組織を過度に加熱しているか、若しくは標的組織を過度に加熱し始める危険があることを示すことに応答して、少なくとも1つの可変パラメータを調整して、電極の電力を減少させるか又はオフにすることができる。更に別の一例では、コントローラは、電極によって測定された温度が所定の最小閾値未満であり、アブレーションが標的組織を効果的に加熱していないことを示すことに応答して、少なくとも1つの可変パラメータを調整して、電極の電力を増加させるか又はオンにすることができる。
【0251】
PTCセンサを含む電極は、電極がそのエネルギー送達を自己制御することを可能にし得る。PTCセンサは、電極のエネルギー供給経路内に配置することができる。電力を自己制御する電極は、電極電力を制御するコントローラの代わりに、又はそれに加えて使用することができる。測定された温度が所定の最大閾値よりも大きく、アブレーションが過度に加熱されていること、又はアブレーションされている組織を過度に加熱し始める危険性があることを示すことに応答して、PTCの抵抗は、測定された温度が所定の最大閾値を下回るまで(及び下回る場合)、電極への電力を制限する。
【0252】
いくつかの実施形態では、アブレーションデバイスが患者の身体内に導入されるスコープの移動は、アブレーションデバイスの電極の電力レベル、測定された温度、組織インピーダンス、組織上の電極の圧力、及び組織導電率の関数であることができる。このようにして、組織は、次の場所に移動する前に各場所で組織を効果的にアブレーションするように、場所間を移動するスコープで、スコープの移動経路に沿った異なる場所でアブレーションすることができる。
【0253】
図38は、アブレーションデバイスの電極の電力レベル、測定された温度、組織インピーダンス、組織上の電極の圧力、及び組織伝導率の関数であるスコープ移動の一実施形態を図示する。図38は、DMR処置などにおいてアブレーションされている十二指腸1520を示すが、他の外科処置が、本明細書で説明されるようなスコープ移動を用いて実行されることができる。この図示された実施形態では、内視鏡などのスコープ1522が、患者の食道1524及び胃1526を通して十二指腸1520に導入されている。アブレーションデバイスは、スコープ1522から遠位方向に延出するように、スコープ1522の作業チャネルを通して十二指腸1520に導入されている。図38及び図39に示すように、この図示された実施形態におけるアブレーションデバイスは、膨らませることが可能又は拡張可能なバルーン1544にそれぞれ取り付けられた第1、第2、第3、及び第4の電極1530a、1530b、1530c、1530dを含む。腹腔鏡などの撮像装置1528は、患者内の十二指腸1520の外に配置される。図38は、撮像デバイス1528によって提供される視覚化物が、本明細書で議論されるように、十二指腸1520の近位壁1534と撮像デバイス1528との間の第1の距離1532、及び十二指腸1520の遠位壁1538と撮像デバイス1528との間の第2の距離1536が、判定されることを可能にすることを示す。
【0254】
この図示された実施形態では、スコープ1522は、その図示された場所から図示された場所の近位側の第1の場所1540まで、及び第1の場所1540から第1の場所1540の近位側の第2の場所1542まで、連続的な動きで近位方向に動かされる(例えば、後退させられる)。電極1530a、1530b、1530c、1530dは、これらの2つの場所1540、1542よりも多くの十二指腸1420内の組織をアブレーションすることができる。
【0255】
図40は、時点tから時点t10までの経時的なグラフを示し、4つの電極1530a、1530b、1530c、1530dのそれぞれが、第1の場所及び第2の場所1540、1542のそれぞれにおいてエネルギーを送達しているアブレーション中の、電力(δ)、組織電極インピーダンス(Z)、組織温度(T)、及び組織への電極の圧力(P)を示す。図40では、第1の電極1530a、第2の電極1530b、第3の電極1530c、及び第4の電極1530dの線上に、円形状、三角形形状、長方形形状、及び六角形形状がそれぞれ示されているが、これらは、どの線がどの電極1530a、1530b、1530c、1530dに対応するかを示すのに役立つ、識別目的のためだけに提供されている。
【0256】
電極電力を制御することは、測定された組織の厚さを推定するために使用され得る、温度の変化率を監視することを含むことができる。次いで、推定された組織厚さは、電極電力を制御する際に、例えばアブレーションデバイスの少なくとも1つの電極のために、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更する際に、使用され得る。
【0257】
図41及び図42は、測定された温度を使用して電極電力を制御する一実施形態を示す。この図示された実施形態では、第1の電極1550及び第2の電極1552はそれぞれ、体腔1556の内面1554に接触するように配置される。体腔1556は、例えば、膨らませることが可能又は膨張可能バルーン(例えば、図23図37、及び図38参照)又は他の拡張可能部材上に、第1の電極1550及び第2の電極1552を含む、アブレーションデバイスを使用して、DMR処置においてアブレーションされている十二指腸であることができる。
【0258】
この図示された実施形態では、体腔1556の外面1558の温度が測定される。外面1558の温度は、第1の電極1550及び第2の電極1552の場所に対応する、体腔1556の外周の周りの第1の場所1560及び第2の場所1562において監視される。外面1558の温度は、例えば、体腔1556の外側に配置される腹腔鏡などの撮像デバイス(図示せず)によって提供される熱撮像を使用することによって、温度センサ(例えば、撮像デバイスの作業チャネルを通して前進させられる可撓性力プローブ又は他の外科用デバイス上の温度センサ)を使用することによって、又はIRセンサ(例えば、撮像デバイスの作業チャネルを通して前進させられる可撓性力プローブ又は他の外科用デバイス上のIRセンサ)を使用することによって、測定されることができる。他の実施形態では、異なる数の電極を使用することができ、対応する異なる数の外表面温度測定値が収集される。
【0259】
第1の場所1560及び第2の場所1562で外部温度を測定することは、第1の電極1550及び第2の電極1552によって提供される加熱が、アブレーションの意図されない標的である組織の外層を過熱しないことを確実にするのに役立てることができる。上述したように、組織アブレーションのための治療温度範囲は、約60℃~約100℃の範囲であり、約41℃を超える温度にある組織は、組織を不可逆的な細胞損傷を受けやすいものにし始めるか、又は組織に不可逆的な細胞損傷を負わせ始め、約50℃を超える温度にある組織では、不可逆的な組織損傷が起こり始める。
【0260】
図41は、第1の電極1550が位置し、第1の外部温度が測定されている体腔1556の第1の組織厚さ1566と、第2の電極1552が位置し、第2の外部温度が測定されている体腔1556の第2の組織厚さ1568とを示す。この図示された実施形態では、第1の組織厚さ1566は、第2の組織厚さ1568よりも大きい。
【0261】
図42は、時間に対して、第1の場所1560及び第2の場所1562それぞれにおける測定された第1の外部温度及び第2の外部温度、並びに電極1550、1552を含むアブレーションデバイスの電力レベルをプロットしたグラフを示す。図42では、第1の場所1560及び第2の場所1562の線上に、円形状及び矩形形状がそれぞれ示されているが、これは、どの線が、電極1550、1552のいずれに関連付けられた場所1560、1562のいずれにおける温度に対応するかを示すのに役立つ識別目的のためだけに提供されている。グラフは、組織の厚さを示すために使用される、測定された第1の外部温度及び第2の外部温度の変化率を実証する。
【0262】
電極1550、1552が、体腔1556にエネルギーを送達するために電極1550、1552に電力が供給され始める(グラフの垂直軸線)とき、電力は、この図示された実施形態では、80Wであるその所定のエネルギー開始レベルにある。グラフ中の符号Aは、第2の測定外部温度に対する変化の開始速度を示し、グラフ中の符号Cは、第1の測定外部温度に対する、変化の開始速度を示す。組織は、第1の外部温度が測定されている場所と比較して、第2の外部温度が測定されている場所でより薄く、したがって、変化率「A」は、変化率「C」より大きい。グラフに示されるように、第1の場所1560及び第2の場所1562のうちの1つで測定された外部温度が、所定の最大温度閾値に達することに応答して、関連付けられた電極1550、1552の電力レベルが低下される。所定の最大温度閾値は、この図示された実施形態では60℃であるが、41℃、50℃、70℃、又は他の値などの別の値を設定することができる。電極の電力レベルの変更は、本明細書で説明するように、アブレーションを制御するために使用されているアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更することによって達成することができる。第1の外部温度は、最初に、より低い開始変化率「C」によって反映されるように、第1の組織厚さ1566が第2の組織厚さ1568より大きいことに起因して、第2の外部温度より遅く、所定の最大温度閾値に到達する。第1の電極1550及び第2の電極1552の各々の電力レベルは、各電極の関連付けられた測定温度の変化率及び測定された第1の外部温度(第1の電極の電力を制御する際に使用される)に応答して、並びに測定された第2の外部温度(第2の電極の電力を制御する際に使用される)に応答して、繰り返し増加又は減少される。グラフ中の符号Bは、第2測定外部温度に対する終了変化率を示し、グラフ中の符号Dは、第1測定外部温度に対する終了変化率を示す。第2の測定された外部温度の終了変化率の検出に応答して、第2の電極1552の電力がオフにされ、その後、第2の測定された外部温度は、グラフに示されるように減少する。第1の測定された外部温度の終了変化率の検出に応答して、第1の電極1550の電力がオフにされ、その後、第1の測定された外部温度は、グラフに示されるように減少する。第1の外部温度は、最初に、第1の組織厚さ1566が第2の組織厚さ1568よりも大きいことに起因して、第2の外部温度よりも遅く終了変化率に到達する。
【0263】
いくつかの実施形態では、監視された温度変化率を使用して電極電力を制御するで、組織の漿膜層に対して組織の粘膜層への熱の印加を制限又は制御することができる。フラッシュ強度のエネルギーが、粘膜層をアブレーションするために送達され得るが、組織の層間の相互接続は、印加されたエネルギーの伝導性を変化させる一過性境界として作用する。熱のフラッシュは、粘膜層の粘膜細胞を殺すのに十分であり得るが、熱が漿膜層に放散するときまでに、熱は漿膜層を損傷するのに十分なものではなくなっている。フラッシュ強度は、アブレーションのために通常適用されるものよりも高くすることができるが、非常に高速のフラッシュ様式で送達されるので、漿膜層を過度に加熱することなく大量の電力を使用することができる。
【0264】
電極電力を制御することは、温度勾配を監視することを含むことができ、その温度勾配は、次いで、電極電力を制御する際に、例えば、アブレーションデバイスの少なくとも1つの、電極のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更する際に使用され得る。
【0265】
図43及び図44は、温度勾配を使用して電極電力を制御する一実施形態を示す。この図示された実施形態では、第1の電極1570及び第2の電極1572はそれぞれ、体腔1576の内面1574に接触するように配置される。体腔1576は、例えば、膨らませることが可能又は膨張可能バルーン(例えば、図23図37、及び図38参照)又は他の拡張可能部材上に、第1の電極1570及び第2の電極1572を含むアブレーションデバイスを使用して、DMR処置においてアブレーションされる十二指腸であることができる。
【0266】
第1の電極1570及び第2の電極1572の場所に対応する、体腔1576の外周の周りの第1の場所1580及び第2の場所1582における体腔1576の外面1578の温度は、図31及び図41に関して上述したものと同様に、この図示された実施形態において測定される。体腔1576の内面1574の温度は、この図示された実施形態では、図31に関して上述したものと同様に、第1の電極1570及び第2の電極1572の場所で測定される。他の実施形態では、異なる数の電極を使用することができ、対応する異なる数の外部及び内部表面温度測定値が収集される。
【0267】
図43は、第1の電極1570が位置し、第1の外部温度が測定されている体腔1576の第1の組織厚さ1586と、第2の電極1572が位置し、第2の外部温度が測定されている体腔1576の第2の組織厚さ1588とを示す。この図示された実施形態では、第1の組織厚さ1586は第2の組織厚さ1588よりも大きい。
【0268】
上述したものと同様に、体腔1576の内部温度及び外部温度を測定することにより、漿膜層の外側から管腔1576の内側の粘膜層への温度勾配を確立することができ、それにより各組織層の温度を確立することができる。内部組織層、例えば、粘膜層が、断熱体として作用するので、アブレーションが始まる前は、内部温度と外部温度は同じではない。体内管腔1576の内面1574に熱が加えられているので、アブレーション中、内部温度と外部温度は同じではない。
【0269】
図44は、電極1570、1572を含むアブレーションデバイスの、時間に対する、温度及び電力レベルをプロットしたグラフを示す。第1の測定された内部温度及び第2の測定された内部温度並びに第1の測定された外部温度及び第2の測定された外部温度がグラフに示されている。図44では、第1の測定された外部温度及び第2の測定された外部温度並びに第1の測定された内部温度及び第2の測定された内部温度のそれぞれの線上に、円形状、矩形形状、六角形形状、及び三角形形状が示されているが、これは、どの線が、電極1570、1572のいずれに関連付けられた場所のいずれにおける温度に対応するかを示すのに役立つ識別目的のためだけに提供されている。グラフは、組織の厚さを示すために使用されている温度勾配を示す。
【0270】
電極1570、1572が、体腔1576にエネルギーを送達するために電極1570、1572に電力が供給され始める(グラフの垂直軸線)とき、電力は、この図示された実施形態では、80Wであるその所定のエネルギー開始レベルにある。電力レベルは、測定された第2の外部温度が所定の最大温度閾値に達したときに、第2の電極1570に関連付けられた温度勾配G1が、第2の電極1572についての所定の温度勾配閾値を満たさないと判定される時間(1)まで、電極1572、1572の各々対して80Wのままである。第2の電極1572に関連する温度勾配は、測定された第2の外部温度と第2の内部温度との間の差によって定義される。所定の最大温度閾値は、この図示された実施形態では60℃であるが、41℃、50℃、70℃、又は他の値などの別の値を設定することができる。組織は、第1の外部温度及び第1の内部温度が測定されている場所と比較して、第2の外部温度及び第2の内部温度が測定されている場所ではより薄く、したがって、第1の外部温度が所定の最大温度閾値に達する前に、第2の外部温度は所定の最大温度閾値に達する。グラフに示されるように、測定された第2の外部温度が所定の最大温度閾値に達したときに、第2の電極1572に関連付けられた温度勾配G1が、第2の電極1572の所定の温度勾配閾値を満たさない、例えば、超えることに応答して、時点(1)において第2の電極1572の電力レベルが低下される。電極の電力レベルの変更は、本明細書で説明するように、アブレーションを制御するために使用されているアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更することによって達成することができる。
【0271】
第1の外部温度は、第1の組織厚さ1586が第2の組織厚さ1588よりも大きいことに起因して、第2の外部温度の時点(1)における所定の最大温度閾値到達よりも遅い、時点(2)において、所定の最大温度閾値に初めて到達する。グラフに示されるように、測定された第1の外部温度が所定の最大温度閾値に達したときに、第1の電極1570に関連付けられた温度勾配G2が第1の電極1570の所定の温度勾配閾値を満たさないことに応答して、時点(2)において第1の電極1570の電力レベルが低下される。第1の電極1570に関連する温度勾配は、測定された第1の外部温度と第1の内部温度との間の差によって定義される。
【0272】
第1の電極1570及び第2の電極1572の各々に対する電力レベルは、それに関連する測定された外部温度が所定の最大温度閾値に達するとき、各電極1570、1572に関連する温度勾配に応答して、繰り返し増加又は減少される。
【0273】
時点(3)において、第2の電極1572に関連付けられた温度勾配G3は、例えば測定された第2の外部温度が所定の最大温度閾値に達したときに、第2の電極1572についての所定の温度勾配閾値を最初に満たす、例えばそれ未満となる。これに応じて、時点(3)において、第2の電極1572に対する電力がオフにされる。第2の測定された外部温度及び内部温度は、その後、グラフに示されるように減少する。時点(4)において、測定された第1の外部温度が所定の最大温度閾値に到達するとき、第1の電極1570に関連付けられた温度勾配G4は、第1の電極1570についての所定の温度勾配閾値を最初に満たす、例えば、それ未満となる。これに応じて、時点(4)において、第1の電極1570に対する電力がオフにされる。最初に測定された外部温度及び内部温度は、その後、グラフに示されるように減少する。第1の電極1570に関連する温度勾配は、第1の組織厚さ1586が第2の組織厚さ1588よりも大きいことに起因して、第2の電極1572に関連する温度勾配よりも遅く、所定の温度勾配閾値を満たす。
【0274】
電極電力を制御することは、アブレーションされる組織の少なくとも1つの光学特性(吸収、散乱等)を監視することを含むことができ、次いで、それは、電極電力を制御する際に、例えば変化率及び温度勾配に関して上記で議論されるものと同様に、アブレーションデバイスの少なくとも1つの電極のためのアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変化させる際に使用されることができる。
【0275】
電極電力を制御することは、本明細書で議論されるように、内部組織温度も監視しながら、又は監視することなく、外部組織温度を監視することを含むことができる。いくつかの実施形態では、外部組織温度を監視することは、1つ以上の光ファイバセンサを使用することを含むことができる。光ファイバセンサは、組織の内側からアブレーションされている、例えばアブレーションデバイスを使用して、アブレーションされている組織の外側に配置される、腹腔鏡等の撮像デバイスの作業チャネルを通して、組織に向かって前進させられることができる。光ファイバセンサは、光ファイバ圧力センサ及び/又は光ファイバ温度センサを含むことができる。光ファイバ圧力センサの一例は、カナダ、ケベック州のOpsens Solutions Inc.から入手可能なOPP-M200光ファイバ圧力センサである。光ファイバ温度センサの例としては、カナダ、ケベック州のOpsens Solutions Inc.から入手可能な光ファイバ温度センサのOTGシリーズが挙げられる。
【0276】
1つ以上の光ファイバセンサの各々は、アブレーションデバイスの電極が組織内部の組織に接触している場所に対応する場所に配置されることができる。したがって、光ファイバセンサの数は、電極の数に等しくすることができる。組織内部の1つ以上の電極に対応する場所で、組織の外側の1つ以上の光ファイバセンサの各々を配置する場所は、例えば、組織内部に配置される基準マーカを使用して、決定されることができる。アブレーションデバイスの場所及び/又はアブレーションデバイスが内部を前進させられたスコープの場所を決定するために基準マーカを使用する種々の実施形態は、以下で更に議論される。
【0277】
図45及び図46は、1つ又は複数の光ファイバ温度センサを使用して外部組織温度を監視し、監視された外部組織温度を使用して電極電力を制御する一実施形態を示す。4つの電極1590及び4つの光ファイバ温度センサ1592が、この例示的な実施形態に示されているが、別の数の電極及び光ファイバセンサを使用することができる。電極1590のうちの1つ及び光ファイバセンサ1592のうちの1つは、図45では不明瞭である。
【0278】
図45は、DMR処置などにおいてアブレーションされている十二指腸1594を示すが、光ファイバセンサを使用して他の外科処置を行うことができる。この図示された実施形態では、内視鏡などのスコープ1596が、患者の食道1598、食道括約筋1600、及び胃1602を通して、患者の十二指腸1594に導入されている。アブレーションデバイスは、スコープ1596から遠位方向に延出するように、スコープ1596の作業チャネルを通して十二指腸1594に導入されている。アブレーションデバイスの第1、第2、第3、及び第4の電極1590の各々は、アブレーションデバイスの膨らませることが可能又は膨張可能バルーン1604に取り付けられる。腹腔鏡などの撮像装置(図示せず)が、患者内の十二指腸1594の外に配置される。光ファイバセンサ1592は、撮像デバイスの作業チャネルを通して十二指腸1594に向かって前進させられ、十二指腸1594外に配置されており、光ファイバセンサ1592の各々は、十二指腸1594内の電極の場所のうちの1つに対応する場所であって、十二指腸の外部表面上の場所に配置されている。
【0279】
図46は、時点tから時点tまでの、時間に対する光ファイバセンサ1592によって測定された電力(ワット単位)及び組織温度(℃)のグラフを示す。図46では、第1、第2、第3、及び第4の光ファイバセンサ1592、並びに第1、第2、第3、及び第4の対応する電極1590の線上に、円形状、三角形形状、矩形形状、及び六角形形状がそれぞれ示されているが、これは、どの線がどの電極1590/光ファイバセンサ1592の対に対応するかを示すのに役立つ識別目的のためだけに提供されている。アブレーションは、時点tで始まり、電極1590の各々がエネルギーを送達し始める。グラフ内の温度Tは、特定の光ファイバセンサ1592によって測定されたときに、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラをトリガして、例えばアルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを変更することによって、対応する電極1590のための電力を調整する、所定の最大閾値を定義し、したがって、組織温度は、アブレーションのために意図されていない十二指腸の外層を過度な加熱から保護するのに役立つように低下することができる。4つの測定された外部組織温度の各々が、温度T未満である所定の最小閾値を規定する温度Tに到達したときに、対応する時点tにおいて、電力は、電極1590の各々に提供されることが停止される。温度は、時点tから時点tにわたって、電極1590/光ファイバセンサ1592の対の各々について同じではなく、各電極1590/光ファイバセンサ1592の対が配置される組織の厚さが同じではないということを示す。
【0280】
図45及び図46の実施形態では光ファイバ温度センサ1592が使用されているが、上述したように、光ファイバ圧力センサを使用することもできる。そのような実施形態では、組織に対する電極の圧力を測定し、それに応じて電極電力を制御することができる。光ファイバ圧力センサは、光ファイバ温度センサ又は他の温度感知手段に加えて、又はその代わりに使用することができる。
【0281】
複数の電極を含むアブレーションデバイスでは、複数の電極の全てが同時に電力を送達することができ、複数の電極のうちの1つ以上がエネルギーを送達することができる一方で、複数の電極のうちの他の1つ以上はエネルギーを送達していない。また、本明細書で議論されるように、複数の電極は、バスケット又はバルーン等の膨張可能又は膨らませることが可能な部材に取り付けられることができる。図47図50は、アブレーションデバイス1616のバスケット1612に取り付けられ、異なる拡張状態にあるバスケット1612を用いてエネルギーを送達するアブレーションデバイス1616の複数の電極1610のうちの様々なもの(図47図50に部分的に示す)を示す。バスケット1612の遠位端が取り付けられるアブレーションデバイス1616の遠位先端1618も、図47図50に示されている。この図示された実施形態では4つの電極1610が示されているが、別の数の電極を使用することができる。バスケット1612が配置される体腔のサイズに応じて、バスケット1612は、電極1610がそれぞれ組織の内面に接触するための異なる量の拡張を有することができる。測定されたパラメータ(複数可)に応じて、電極1610のうちの異なるものが、図47図50に示されるもの以外の組み合わせで、エネルギーを同時に送達することができる。
【0282】
図47は、バスケット1612が第1の膨張状態にあるのと、電極1610の各々がそれぞれのアブレーションゾーン1614においてエネルギーを送達しているのを示す。電極1610はそれぞれ、同じ電力を有し、したがって同じサイズのアブレーションゾーン1614を有する。隣接するアブレーションゾーン1614は互いに重なり合う。したがって、2つ以上の電極1610は、同じ組織の場所のアブレーションに寄与することができる。図48は、バスケット1612が第2の、より大きく膨張した状態にあるのと、電極1610の各々がそれぞれのアブレーションゾーン1614においてエネルギーを送達しているのを示す。電極1610はそれぞれ、同じ電力を有し、したがって同じサイズのアブレーションゾーン1614を有する。第1の、より小さい膨張状態にあるバスケット1612とは異なり、アブレーションゾーン1614は、図47及び図48において電極1610が同じ電力を有する場合であっても、バスケット1612が第2の膨張状態にある場合には、重なり合わない。図49は、第1の膨張状態にあるバスケット1612を示し、電極1610’のうちの2つはエネルギーを送達しておらず(電源オフ)、電極1610のうちの2つはそれぞれのアブレーションゾーン1614においてエネルギーを送達している。エネルギーを送達している電極1610は、図47図48、及び図49において同じ電力を有し、したがって、同じサイズのアブレーションゾーン1614を有する。図50は、第2の膨張状態にあるバスケット1612を示し、電極1610’のうちの1つはエネルギーを送達しておらず(電源オフ)、電極1610、1610”のうちの3つは、それぞれのアブレーションゾーン1614においてエネルギーを送達する。エネルギーを送達する電極1610”のうちの1つは、エネルギーを送達する他の2つの電極1610よりも多くの電力を有し、したがって、より大きいアブレーションゾーン1614”を有する。エネルギーを送達している他の2つの電極1610は、図47図48、及び図49と同じ電力を有し、したがって、同じサイズのアブレーションゾーン1614を有する。
【0283】
いくつかの実施形態では、電極電力を制御することは、特定の患者及び特定のアブレーションデバイスで使用された以前のアブレーション設定であって、アブレーションデバイスがその患者内の異なる場所で使用される場合に使用された設定を使用することを含むことができる。したがって、アブレーションは、より速く及び/又はより効率的に実行され得る。例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又はアブレーションデバイスを制御する他のコンピュータシステムのコントローラに動作可能に結合されたメモリは、患者内の特定の場所で組織をアブレーションする際にアブレーションデバイスを制御するために、コントローラが外科処置中に使用するアルゴリズムの、1つ以上の可変パラメータをその中に記憶することができる。本明細書で説明されるように、1つ以上の可変パラメータは、外科処置の実行中に変化し得る。アブレーションが停止し、アブレーションデバイスが患者内の第2の場所に移動した後、その第2の場所で組織をアブレーションするという場合、コントローラは、第2の場所でアブレーションを開始するときに、アルゴリズムの記憶された1つ以上の可変パラメータを使用することができるが、それは、それらの可変パラメータが、その患者及びその組織に対して有効であると既に決定されているからである。1つ以上の可変パラメータ(複数可)は、第2の場所でのアブレーション中に変化し得るが、以前に使用されたパラメータ設定を使用することによって、多くの調整を必要としない又はいかなる調整をも必要としない可能性がより高い。
【0284】
電極電力を制御することは、複数のパラメータを監視することと、監視されたパラメータの各々を使用して、組織をアブレーションするために使用されている1つ以上の電極の各々に対する電力を調整することとを含むことができる。複数のパラメータは、例えば、組織インピーダンス、外部組織温度(例えば、撮像を使用して、光ファイバ温度センサを使用して、温度センサを使用して測定される)、内部組織温度(例えば、撮像を使用して、温度センサを使用する等して測定される)、及び組織圧力(例えば、光ファイバ圧力センサを使用して、圧力センサなどを使用して測定される)のうちの2つ以上を含むことができる。
【0285】
電極電力を制御することは、アブレーションデバイスの1つ以上の電極にエネルギーを供給する発生器に、各監視されたパラメータの測定値を通信することを含むことができる。
【0286】
いくつかの実施形態では、外科用デバイスのエンドエフェクタは、細長いシャフトと、細長いシャフトの遠位端にある対向するジョーとを含むことができる。そのようなエンドエフェクタは、エンドエフェクタが2つのジョーを含むので、デュアルジョー構成を有する。このジョーは、開放位置と閉鎖位置との間で同期して移動するように構成されている。ジョーの一方又は両方は、開放位置と閉鎖位置との間でジョーを移動させるように移動可能であることができる。ジョーは、ジョーの間に係合された組織にエネルギーを送達するように構成された、少なくとも1つの電極を含む。送達されたエネルギーは、例えば組織が外科用デバイスの切断要素によって切断された後に封止する場合等、組織を封止する。少なくとも1つの電極を含むエンドエフェクタは、様々な構成を有することができる。
【0287】
図51は、その間に組織を係合するように構成された、対向する上方ジョー1702及び下方ジョー1704を含むエンドエフェクタ1700の一実施形態を示す。図51は、開放状態のエンドエフェクタ1700を示す。上方ジョー1702は、ジョー1702、1704の間に係合された組織に接触するように構成された正電極1706を含み、下方ジョー1704は、ジョー1702、1704の間に係合された組織に接触するように構成された負電極1708を含む。正電極のための電極電力を制御することは、アブレーションデバイスの電極に関して上述されたものと同様であることができる。
【0288】
図52は、組織1716をその間に係合するように構成された対向する上方ジョー1712及び下方ジョー1714を含むエンドエフェクタ1710の別の一実施形態を示す。図52は、エンドエフェクタ1710が閉鎖状態にあるのを示す。上方ジョー1712及び下方ジョー1714の一方又は両方は、セグメント化電極を含む。例えば、図53図53A、及び図54に示すように、エンドエフェクタ1710は、上方ジョー1712が4つのセグメント1718を含むセグメント化された正極を含み、下方ジョーが4つのセグメント1720を含むセグメント化された負極を含む、マルチソース、マルチリターン構成を有することができる。別の数のセグメントを使用することができる。図53及び図54は、エンドエフェクタ1710が閉鎖状態であるのを示す。別の一例では、図55及び図56に示されるように、エンドエフェクタ1710は、上方ジョー1712が1つの正電極1722を含み、下方ジョーが4つのセグメント1724を含むセグメント化された負電極を含む、シングルソースマルチリターン構成を有することができる。別の数のセグメントを使用することができる。図55及び図56は、エンドエフェクタ1710が閉鎖状態であるのを示す。更に別の一例では、図57及び図58に示すように、エンドエフェクタ1710は、上方ジョー1712が、4つのセグメント1726を含むセグメント化された正電極と、1つの負電極1728とを含む、マルチソース、シングルリターン構成を有することができる。別の数のセグメントを使用することができる。図57及び図58は、エンドエフェクタ1710が閉鎖状態であるのを示す。
【0289】
セグメント化された電極のための電極電力を制御することは、アブレーションデバイスの複数の電極の独立制御に関して上で議論されたものと同様に、電極セグメントの各々が独立して制御されることを含むことができる。
【0290】
デュアルジョー構成を有するエンドエフェクタのための電極電力を制御することは、付随的な熱損傷を監視することと、監視された付随的な熱損傷をジョーの間に係合された組織に印加される電力のための制御として使用することとを含むことができる。一般に、付随的な熱損傷を監視することは、本明細書で論じられるように、組織の外部表面における少なくとも1つのパラメータ、例えば、温度、インピーダンスなどを監視することと、監視された少なくとも1つのパラメータに基づいて電力を制御することとを含む。
【0291】
デュアルジョー構成を有するエンドエフェクタのための電極電力を制御することは、ジョーの間に係合された組織の領域を使用して組織の1つ以上のパラメータを監視することと、監視された1つ以上のパラメータを使用して電極電力を制御することとを含むことができる。例示的な一実施形態では、パラメータ(複数可)は、特定の電極のエネルギーゾーン(アブレーションゾーンに類似する)の外側で監視され、それにより、電極によって通電されることが意図される組織付近の組織の1つ又は複数の特性を使用して、電極の電力を制御することができる。換言すれば、エネルギーを送達する電極の戻り経路にない組織は、電極の電力を制御する際に使用されることができる。したがって、電極が、意図された組織を封止するのに有効なエネルギーを印加することを可能にしながら、付近の組織は、電極のエネルギー送達によって意図せずに損傷されることから保護され得る。例えば、エンドエフェクタが、そのジョーの間で組織に係合し、セグメント化された電極を含む場合、セグメントのうちの1つに接触する組織を監視して、セグメントのうちの別の1つを制御することができる。
【0292】
監視されるパラメータの例は、周波数応答、静電容量、圧力、温度、及びインピーダンスを含む。圧力、インピーダンス、及び温度のうちの少なくとも1つを含む監視されるパラメータの実施形態は、本明細書の他の場所で議論される。周波数応答及び静電容量のうちの少なくとも1つを含む、監視されるパラメータの実施形態は、以下で更に説明される。
【0293】
上述したように、電極を制御するために組織内で監視することができるパラメータの一例は、周波数応答である。いくつかの実施形態では、周波数応答は、ジョーによって係合される組織への治療エネルギー印加の前又は間に、検出又は非治療掃引として使用されることができる。図59は、治療エネルギー印加どうしの間に組織を監視するために周波数応答を使用する一実施形態を示す。第1の低電力測定パルス1730(例えば、約10Hz~約1000Hzの範囲内)は、エネルギー印加されることが意図される組織付近の組織に印加されるが、例えば、パルス1730を印加する1つの電極セグメントによって第1の低電力測定パルス1730が、別の電極セグメントによってエネルギー印加されることが意図される組織に印加される。エネルギー送達を制御している外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラは、第1の低電力測定パルスを使用して、例えば、電圧/電流サンプリングを介した暗示されたインピーダンス、信号反射及び測定(ドップラーレーダーに類似する)、赤外線容量測定、並びに複数の周波数のうちの1つ以上を使用して、現在の組織状態を判定することができる。時間遅延T_delayの後、決定された現在の組織状態に基づいたエネルギー印加高周波治療パルス1732が組織に送達される。エネルギー印加治療パルス1732の送達に続く別の時間遅延T_delayの後、第2の低電力測定パルス1734が、エネルギー印加されることが意図される組織付近の組織に印加され、このプロセスは、エネルギー送達が停止するまで繰り返される。
【0294】
図60は、周波数応答を使用して組織を監視するために周波数応答を使用する別の一実施形態を示す。この図示された実施形態では、ネスト化された多周波数信号は、離散治療周波数電力レベルに上乗せされるように、離散治療周波数電力レベルで、1つ以上の電極を介して印加される(ステップ1740)。図61は、(例えば、外科用デバイスに搭載されるか、又は外科用デバイスにエネルギーを供給する発生器にある)マルチプレクサ及び3つの周波数を用いる、多周波数適用の一実施形態を図示する。多周波数信号の変化率が監視され(ステップ1742)、その変化率は、電極電力を制御する際に、すなわち、電力を印加する(ステップ1744)か電力を印加しない(ステップ1746)かを決定することによって制御する際に使用される。短絡が存在する場合、電力は印加されず(ステップ1746)、そうでない場合、電力が印加される(ステップ1744)。多周波数信号のソースは既知であり、したがって、変化率は、例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又はエネルギー送達を制御する他のコンピュータシステムのコントローラによって決定されることができる。低周波数パルス(例えば、約10Hz~約1000Hzの範囲内)は、低インピーダンス対短絡条件において、より低い周波数を掃引する際に、組織とは異なるより低いインピーダンスを有することになる。組織は、ある周波数に対して別の周波数よりも最適に応答し得る。組織を視覚化する撮像装置を使用して、適切な活性化周波数をフィルタ除去することができる。
【0295】
図62は、一例として、図51のエンドエフェクタ1700を使用する、図60のプロセスを概略的に示す。第1のインピーダンスセンサ1748は、送出側のインピーダンス(ローカル又はリモート)を測定し、第2のインピーダンスセンサ1750は、戻り側のインピーダンス(ローカル又はリモート)を測定する。低インピーダンス条件は、電極短絡(電力を印加しない;ステップ1746)と低インピーダンス(電力を印加する;ステップ1744)とを区別する。
【0296】
図63及び図64は、組織を監視するために周波数応答を使用する別の一実施形態を示す。この図示された実施形態では、可変周波数測定パルス1760及び固定周波数の治療処置パルス1762が、組織1764に同時に印加される。コンバイナ又はマルチプレクサ1766は、可変周波数パルスと治療処置パルス1762とを組み合わせるために使用される。この図示された例では、高周波(RF)がエネルギーとして使用されるが、他のエネルギーも可能である。ハイパスフィルタ1768は、高出力治療処置パルス1762と可変周波数感知パルス1760とを区別する。可変周波数感知パルス1760の変化率は、上述したものと同様に電極電力を制御する際に使用される。
【0297】
高周波測定パルス1780及び治療処置パルス1782を使用して、短絡(電力を印加しない)又は低インピーダンス(電力を印加する)を決定する一実施形態が、図65に示される。図65は、時間領域における治療処置パルス1782に対する高周波測定パルス1780を示す。高周波測定パルス1780は、この図示された実施形態では4つのベースライン信号を含む。組織の誘電率と導電率の典型的な周波数依存性については、例えば、Miklavcic et al.,Wiley Encyclopedia of Biomedical Engineering,「Electric Properties of Tissue,」 John Wiley & Sons,Inc.,2006,p.1-12で更に議論されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
図66図67、及び図68は、それぞれ、測定パルス1780に対する、測定された許容可能条件、測定された障害条件、及び測定された限界条件の実施形態を示す。電力が送達され得ることを示す、測定された許容可能な状態では、測定された応答は、第1の周波数信号が不変であっても、様々な周波数にわたる4つのベースライン信号にわたる大きさ、位相、及びプロファイルの変動を示す。電力が供給されるべきではないことを示す、測定された障害状態において、周波数応答は、閾値レベル1784を下回る変動を示さず、それによって短絡を示す。電力が送達され得ることを示す、測定された限界条件において、短絡は、ある周波数(周波数2及び3)で存在するが、他の周波数(周波数1及び4)では存在しない。いくつかの周波数のみが変動を検出し、他の周波数は検出せず、したがって短絡の可能性が小さいので、電力送達は許容可能であり得る。一部の周波数は障害を示し得るが、他の周波数はそうではないというのは、四分の一波長スタブに起因する短絡として現れる、RFオープンなどの条件に起因する。
【0299】
ネスト式多周波数信号は、図65図68の実施形態で印加されるが、説明される状態分析は、治療エネルギー印加の前又は間に、検出用すなわち非治療用掃引とともに同様に使用され得る。例えば、図69は、時間領域において、第1の測定パルス1786、第1の時間遅延後に印加される治療的処置パルス1788、及び第2の時間遅延後の第2の測定パルス1790を示す。
【0300】
図70及び図71は、可変周波数測定パルスを提供し、コントローラ1792(例えば、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラ)が、そこからの応答として、コントローラが組織1794に電力を印加するかどうかを決定する際に使用することができるデータを受信する一実施形態とを示す。可変周波数測定パルスは、RFソース1796によって提供され、この図示された実施形態においては、例えば、内視鏡を介して提供され得る。RF源1796は、第1の時点に第1の周波数(Freq=1)を生成し、第2の時点に第2の周波数(Freq=2)~第Nの時間に第Nの周波数(Freq=N)までの、追加の周波数をループする。なお、ここで、Nは2より大きい整数である。RFアンテナ1798は、生成された第1~第Nの周波数をブロードキャストする。それぞれが第1から第Nの周波数のうちの1つに同調され、組織1794の外側に配置された受信機アンテナ1800は、受信機アンテナ1800が同調される周波数でブロードキャストされた信号を受信する。受信された信号はそれぞれ、コントローラ1792に渡される前に、対応する同調帯域通過フィルタ1802及びアナログデジタル変換器1804を通過する。受信機アンテナ1800の構成及び配置は、先験的に知られているので、RFアンテナ1798に対する受信機アンテナ1800の相対的な位置を知ることができる。信号特性(振幅及び位相遅延)の変化に基づいて、コントローラ1792によって受信された信号は、相対的位置によって示される方向における組織1794に関する情報を提供する。
【0301】
上述したように、デュアルジョーエンドエフェクタの電極を制御するために組織内で監視することができるパラメータの一例は、静電容量である。誘電変化は、ジョーによって係合される組織のタイプを判定し、電極電力を制御するために使用されることができる。非治療用RF信号、例えば、組織に対する治療効果を誘発するレベル未満の電力を有する信号が、例えば、ジョーのうちの1つの上の電極によって組織に送達され、ジョーに沿った組織タイプの密度又は変化を決定することができる。電極内の電力と電極に隣接する組織の静電容量との比を使用して、圧力、導電率、又は電力のバランスをとることができる。
【0302】
例えば、ジョーによって係合された組織は、癒着又は慢性疾患に起因して、可変的な圧縮性及び厚さを有することができる。治療エネルギーを送達する電極に隣接する静電容量の変化率を測定することは、電極溶接を完了するための圧力の変動又は電力の変動を決定するために使用されることができる。異なる効果を誘導するために、上限及び下限閾値を使用することができる。
【0303】
別の一例では、抵抗対寄生(寄生キャパシタンス及び寄生インダクタンス)の比は、組織の可変的な圧縮性及び厚さに起因して、エネルギー印加中にその比が変化し得るので、エネルギー印加中に測定することができる。したがって、電力供給は期待通りではない可能性がある。上記の比に基づく電力の周波数のシフトは、寄生浸出効果を最小限にし得る。組織は、低周波数で高インピーダンス、高周波数で低インピーダンス、又はその逆を有することができ、これは、コントローラが周波数を組織に同調させて、組織に対する電力レベルの有効性を改善することを可能にする。
【0304】
図70に関して上述されたものと同様に、同調アンテナアレイによって受信され得る可変周波数測定パルスを提供することは、組織の配向及び特性の検出を可能にすることができる。また、フィルタは、電極の一部として使用されてもよく、それは、RFソース、例えば、発生器が、フィルタ制御措置を伴う全出力を有することを可能にし得る。
【0305】
組織の1つ以上のパラメータが監視されるいくつかの実施形態では、組織の以前に封止された領域が、組織の隣接領域の封止を監視及び制御するために使用されることができる。以前に封止された組織の領域は、コラーゲンが既に融合しており、水分が除去されているので、より高いインピーダンス及びより低い導電率を有する変性ゾーンの機能特性を有し、それによって、より感度が低い可能性がある測定であっても、より安定した測定を可能にする。組織の1つ以上のパラメータが監視されるいくつかの実施形態では、まだ封止されていない、又は封止のために意図されていない組織の領域(非標的組織)が、組織の隣接領域の封止を監視及び制御するために使用されることができる。まだ封止されていないそのような組織領域は、以前に封止された組織領域よりも多くの水分、より高い導電率、及びより低いインピーダンスを有し、したがって、組織の隣接領域の監視効果に対してより敏感である。組織の1つ以上のパラメータが監視されるいくつかの実施形態では、組織の以前に封止された領域と、まだ封止されていないか、又は封止のために意図されていない組織の領域との両方が、組織の隣接領域の封止を監視及び制御するために使用されることができる。
【0306】
封止される組織の領域に隣接する組織を監視することは、例えば、エンドエフェクタのジョーの縁部上の第1の非治療用電極セットを使用して達成することができ、その一方で、第1の電極セットの半径方向内側に位置するジョー上の第2の治療用電極セットを使用して、意図された標的組織を封止することができる。電極の非治療セットは、治療回路の通電状態で「浮動」することができる。変圧器などの独立要素を使用して、非治療用電極セットに電力を供給することができる。
【0307】
治療用電極セットは、低電流感知を可能にしながら、治療用高電力フロースルーを防止するために、高インピーダンスコーティングを有することができる。高インピーダンスコーティングの態様は、個別化された抵抗性指紋がより高い感知信号に応答することができるかどうかを決定するように特徴付けることができる。
【0308】
デュアルジョー構成を有するエンドエフェクタのための電極電力を制御することは、電力パラメータ、又は外科用デバイスの、戻り経路への接続の電極態様若しくは外科用デバイスにエネルギーを供給する発生器への接続の電極態様を監視することを含むことができ、それによって、遠位方向に制御された電力送達が監視されることを可能にする。したがって、単極アレイに対してリターンロス監視(手術部位から離れた遠隔監視)を実行することができる。
【0309】
組織に対するソースのインピーダンスを最適化することは、戻りの組織経路不慮の変化が識別されることを可能にすることによって、外科用デバイスへの有効電力送達を最大化し得る。送達電力(外科用デバイスに供給される電力)と反射電力(外科用デバイスから戻される電力)との比は、インピーダンスを患者に整合させることができ、これは、最大電力効率を可能にすることができる。送達効率が突然シフトすることが検出された場合、エネルギー焦点がシフトした可能性が高い。電流は、不慮の短絡を示すので、電力レベル調整をトリガするが、一方、インピーダンスは、戻りの組織経路の不慮の変化を示すので、電力レベル調整をトリガしない。
【0310】
スコープ及び電極の場所の監視及び制御
本明細書で提供されるマルチソース撮像のためのデバイス、システム、及び方法は、スコープ及び電極の場所の監視及び制御を可能にし得る。
【0311】
本明細書で議論されるように、外科処置は、撮像デバイスを使用して外部視点から視覚化(管腔外視覚化)されている中空器官又は体腔内に配置される、スコープ及びアブレーションデバイスを含むことができる。例えば、DMR処置では、内視鏡などのスコープを十二指腸内に配置することができ、電極(単一の電極であっても複数の電極であってもよい)を含むアブレーションデバイスをスコープの遠位の十二指腸内に配置することができ、腹腔鏡などの撮像装置を十二指腸外に配置することができる。他の外科処置では、スコープ及びアブレーションデバイスは、別の中空器官又は体腔内に配置されることができる。
【0312】
中空器官又は体腔内のスコープ及びアブレーションデバイスは、例えば、中空器官又は体腔内の湾曲に起因して、かつ/又は撮像装置を中空器官又は体腔内に配置してスコープ及び/若しくはアブレーションデバイスの完全なビュー又は部分的ビューを達成することを可能にするための中空器官又は体腔内の限られた空間に起因して、中空器官又は体腔の中から視覚化することが困難な場合がある。したがって、アブレーションデバイスの電極(複数可)が、中空器官又は体腔内の標的組織をアブレーションするために通電される前に適切に配置されているかどうかを決定することは、電極(複数可)の場所が知られていない場合があるために困難である可能性がある。かつ/又は、中空器官又は体腔内のアブレーションの各意図された標的が意図されたようにアブレーションされたかどうかを決定することは、スコープが中空器官又は体腔内でアブレーションデバイスが各標的にアクセスしてアブレーションするのに十分に移動したかどうかが知られていない場合があるため、困難であり得る。
【0313】
中空器官又は体腔の外側からのスコープ及び/又はアブレーションデバイスの、撮像デバイスによる視覚化は、中空器官又は体腔内のスコープ及び/又はアブレーションデバイスの場所を決定するために使用されることができる。したがって、アブレーションデバイスの電極の場所は、電極が通電されて中空器官又は体腔内の標的組織をアブレーションする前に、かつ/又は電極が通電されて標的組織をアブレーションしている間に決定することができる。これは、電極が標的組織をアブレーションするために適切に位置付けられることを確実にするのに役立てることができる。撮像デバイスによるスコープ及び/又はアブレーションデバイスの視覚化は、スコープ及び/又はアブレーションデバイスの場所を決定することに加えて又はその代わりに、中空器官又は体腔内のスコープ及び/又はアブレーションデバイスの移動を制御するために使用されることができる。これは、中空器官又は体腔内のアブレーションの各意図された標的が、アブレーションのために到達されることを確実にすることに役立てることができる。
【0314】
いくつかの実施形態では、スコープ及び電極の場所の監視及び制御は、スコープが配置される中空器官又は体腔の外側から監視される少なくとも1つのパラメータに基づいて、スコープの移動を制御することを含むことができる。中空器官又は体腔の外側に配置される撮像デバイスは、本明細書で議論されるように、画像を収集し、それによって、少なくとも1つのパラメータを監視するように構成されることができる。撮像デバイス及びスコープと通信するコントローラは、監視されたパラメータ(複数可)に関する信号を撮像デバイスから受信することができる。コントローラは、撮像デバイスから直接、又は1つ以上の中間デバイスを通して、信号を受信することができる。上述したように、スコープに搭載されて記憶されるか、又は他の場所に記憶されるアルゴリズムは、1つ以上の可変パラメータを含むことができる。コントローラは、受信信号によって示されるように、監視されたパラメータに基づいて、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータ(複数可)を調整するように構成することができる。少なくとも1つの可変パラメータは、前進速度(遠位方向移動の速度)又は後退速度(近位方向移動の速度)等の、中空器官又は体腔内でのスコープの移動に関連するものであることができる。したがって、スコープの移動は、撮像デバイスが、スコープが配置される中空器官又は体腔の外側に位置するにもかかわらず、撮像デバイスによって収集される情報に基づいて制御されることができる。結果として、スコープを通して前進させられる、及び/又はスコープの外側に前進させられ、スコープの遠位側に配置されるアブレーションデバイスの場所もまた、そのように制御されることができ、それは、アブレーションのための各意図された標的がアブレーションされることを確実にすることに役立てることができる。
【0315】
撮像デバイスによる視覚化を使用して監視されるパラメータは、例えば、組織の温度、組織内の電流、組織のインピーダンス、組織の厚さ、及び組織の水密度のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、撮像デバイスは、例えば赤外線(IR)カメラを使用して、熱情報を収集し、スコープ及びアブレーションデバイスが位置する中空器官又は体腔の外表面の温度を監視するように構成されることができる。画像は、アブレーションデバイスが、組織を加熱するように、例えば、組織の内面に接触する1つ以上の電極を使用して、エネルギーを組織に送達している間に、収集されることができる。外部温度が所定の最大閾値に達したことに応答して、コントローラは、スコープ及び/又はアブレーションデバイスを移動させる、例えば、後退させることができるが、アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを調整して、監視された温度の変化率に基づいて、スコープ及び/又はアブレーションデバイスの移動率を調整することができる。IR熱撮像を使用して組織の温度を監視することはまた、監視される開始及び停止温度に基づいて、アブレーションによって提供されるエネルギー封止の幅を決定するために使用されることができる。
【0316】
図28は、撮像デバイスによって収集された熱情報が、アブレーションデバイスの位置を制御するために使用されることができる一実施形態を示す。上述したように、図28は、肺の中に配置されたアブレーションデバイス(アブレーションプローブ)1440を示し、肺の外側に配置され、少なくとも赤外光を使用して、例えばIRカメラを使用することによって、画像を収集するように構成された撮像デバイス1444を示す。図28のグラフに示されるように、IR熱カメラは、グラフの温度対時間部分における「肺組織」線によって示されるように、肺の外部表面の温度を監視する。グラフはまた、時間に対するアブレーションデバイス1440の位置を示す。時点tで測定された外部表面温度が、この図示された実施形態では41℃である所定の最大閾値に達することに応答して、アブレーションデバイスの位置は、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラ等が、アブレーションデバイス又はアブレーションデバイス1440が位置するスコープの移動を引き起こすことによって変更される。時点tにおいて、アブレーションデバイス1440は、x、y、及びz次元において移動するようにグラフに示されている。時点tにおいて測定された外部表面温度が、再び所定の最大閾値に達することに応答して、アブレーションデバイスの位置が再び変更される。時点tにおいて、アブレーションデバイス1440は、y及びz次元で移動するとグラフに示されている。
【0317】
いくつかの実施形態では、スコープ及び電極位置の監視及び制御は、中空器官又は体腔内でのアブレーションデバイスの電極のセンタリングを制御することを含むことができる。
【0318】
本明細書で説明するように、アブレーションデバイスは、複数の電極を含むことができる。例えば、図23のアブレーションデバイス1410は、バルーン1412に取り付けられた複数の電極を含むことができる。別の一例では、図34のアブレーションデバイス1490は複数の電極を含む。更に別の一例では、図37のアブレーションデバイス1500は、複数の電極1506を含む。
【0319】
また更に別の一例では、図72に示すように、アブレーションデバイスは、バルーン1810及び複数の電極1812を含むことができる。図72は、アブレーションデバイスの長手方向と同軸である、バルーン1810の長手方向軸線1810Aを示す。電極1812は、この図示された実施形態ではセグメント化されているので、電源と動作可能に結合するために遠位方向に延出する電力線を介して電極1812のうちの特定の電極のみに電力を供給することなどによって、独立して制御することができる。この図示された実施形態におけるバルーン1810は、可撓性回路材料から形成される。この図示された実施形態における電極1812は、バルーン1810の円周の周りに等間隔で離間され、フレキシブル回路材料の外面上に印刷される。
【0320】
この図示された実施形態におけるアブレーションデバイスはまた、可撓性回路材料の外面上に印刷された複数の基準マーカ1814も含む。基準マーカ1814は、バルーン1810の外面に接着された小さなコイルであるなど、他の方法でバルーンの外面に適用することができる(この場合、材料は可撓性回路材料であってもよいが、可撓性回路材料である必要はない)。バルーン1810は、バルーン1810の内部に流体を選択的に導入し、そこから流体を引き出すことによって、選択的に拡張及び圧縮するように構成されている。バルーン1810は、流体の導入及び回収を可能にするために選択的に開くことができる弁1816のある部分を除いて封入されている。いくつかの実施形態では、流体は熱水であってもよく、熱水は、バルーン1810の内部にあるときに、電極1812が電源からエネルギーを供給されることがなくても、組織をアブレーションするのに十分に電極1812を加熱することができる。
【0321】
アブレーションデバイスの電極を中空器官又は体腔内でセンタリングすることは、中空器官又は体腔の内部表面に対する電極の各々の接触を最大化することに役立ち得る。それによって、アブレーションが中空器官又は体腔の内周全体で生じることを確実にすることに役立つ。アブレーションデバイスのバルーン又は他の拡張可能部材の長手方向軸線は、電極がバルーン又は他の拡張可能部材に取り付けられるため、中空器官又は体腔内でアブレーションデバイスの電極をセンタリングする際に使用されることができる。アブレーションデバイスのバルーン又は他の拡張可能部材の長手方向軸線を、アブレーションデバイスが配置される中空器官又は体腔の長手方向軸線と同軸に整合させることで、アブレーションデバイスの電極を、中空器官又は体腔内においてセンタリングすることになる。中空器官又は体腔の長手方向軸線は、中空器官又は体腔の外側に配置されている撮像デバイスによって提供される視覚化を介して、かつ/又は撮像デバイスによって視覚化される中心投影線によって等、撮像を通して把握することができる。投影線は、例えば、それを通してアブレーションデバイスが前進させられ、そこからアブレーションデバイスが遠位方向に延出するスコープによって、遠位方向に投影されることができる。外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は撮像デバイスと通信する他のコンピュータシステムのコントローラは、したがって、中空器官又は体腔の長手方向軸線及びアブレーションデバイスのバルーン又は他の拡張可能部材の長手方向軸線のそれぞれを知ることができる。それによって、コントローラが、アブレーションデバイスを移動させて、長手方向軸線が同軸に整合され、したがって、電極がセンタリングされることを可能にする。
【0322】
アブレーションデバイスの電極は、様々なやり方でセンタリングすることができる。例えば、電極の各々は、低レベル電磁パルスを放出するように構成することができる。アブレーションデバイスが位置する中空器官又は体腔の外側に位置する撮像デバイスは、電磁センサ等を用いて、放出されたパルスを受信し、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は撮像デバイスと通信する他のコンピュータシステムのコントローラ等によって、電極の位置のそれぞれが決定されることを可能にすることができる。それは、磁場の強度が、受信機に対する各電極の相対距離を示すためである。電極の位置に基づいて、コントローラは、アブレーションデバイスを中空器官又は体腔内で移動させて、電極をセンタリングすることができる。
【0323】
別の一例では、アブレーションデバイスの基準マーカの各々は、磁気的であり得るが、それがアブレーションデバイスの場所を検出するために使用されることができる。基準マーカは、例えば、アブレーションデバイスのバルーン又は他の拡張可能部材に取り付けることができる。アブレーションデバイスが位置する中空器官又は体腔の外側に位置する撮像装置は、基準マーカの磁気シグネチャに基づいて、基準マーカの場所、したがってバルーン又は他の膨張可能部材の場所及びその上の電極の場所を決定するように構成された磁気抵抗センサを含むことができる。バルーン又は他の膨張可能部材の位置に基づいて、コントローラは、アブレーションデバイスを中空器官又は体腔内で移動させ、電極をセンタリングすることができる。
【0324】
基準マーカの場所は、バルーン又は他の拡張可能部材の場所の決定を容易にし、したがって、電極の場所の決定を容易にすることができる。例えば、図72の実施形態では、第1の基準マーカ1814(図72の図の左上位置にある)は、バルーン1810の後端又は近位端に配置され、第2の基準マーカ1814(図72の図の右下位置にある)は、バルーン1810の前端又は遠位端に配置され、第3の基準マーカ1814(図72の図の中心位置にある)は、バルーン1810の前端と後端との間に等距離に配置され、第4の基準マーカ1814は、電極1812の前端又は遠位端に配置される。電極の場所の決定を容易にするために電極1812に対して配置された第4の基準マーカ1814は、バルーン1810の場所の決定を容易にするためにバルーン1810に対して配置された第1、第2、及び第3の基準マーカ1814よりも小さいサイズを有する。基準マーカ1814は、本明細書に説明されるように検出されることができ、それによって、コントローラが、例えばより大きい第1、第2、及び第3の基準マーカ1814に基づいて、バルーン1814の場所を決定し、例えば中心にある第3の基準マーカ1814及びより小さい第4の基準マーカ1814に基づいて、電極1812の場所を決定することを可能にする。いくつかの実施形態では、第4の基準マーカ1814及び/又は第3の基準マーカ1814を省略することができるが、他の実施形態では、第1、第2、及び第3の基準マーカ1814を省略することができる。
【0325】
いくつかの実施形態では、スコープ及び電極位置の監視及び制御は、アブレーションの完了を検出して、アブレーションデバイスの電極(複数可)への電力の供給をいつ停止してアブレーションを停止するかを決定することを含むことができる。例えば、アブレーションデバイスが配置される中空器官又は体腔の外側に配置された撮像装置によって提供されるCT撮像は、組織温度を示す熱画像を収集することができる。CT撮像装置は、Cアームを使用する術中CT撮像の場合など、完全に患者の体外に位置することができる。測定された温度がアブレーション完了を示す所定の最大温度に達したことに応答して、アブレーションデバイスの電極(複数可)への電力の供給を停止することができる。
【0326】
いくつかの実施形態では、スコープ及び電極位置の監視及び制御は、磁石を使用することを含むことができる。磁石は、移動及び/若しくは場所を決定することを可能にすることができ、並びに/又は組織の厚さを決定することを可能にすることができる。
【0327】
図73は、磁石を使用した、場所の監視及び制御の一実施形態を示す。図73は、患者の十二指腸1822内に配置されたアブレーションデバイス1820を示すが、磁石は、他の中空器官及び体腔内でも同様に使用されることができる。アブレーションデバイス1820は、複数の電極が取り付けられたバスケットの形態の拡張可能部材1824を含む。第1の磁石1826は、拡張可能部材1824の遠位側にあるアブレーションデバイス1820の遠位先端にある。第1の磁石1824のS極(S)及びN極(N)が図73に示されている。
【0328】
アブレーションデバイスは、オーバー管及び/又はスコープ(例えば、スコープの作業チャネル)を通して中空器官又は体腔の中へ前進させられることができる。この図示された実施形態では、アブレーションデバイス1820は、オーバー管1828を通して十二指腸1822の中へ前進させられる。内視鏡1830もまた、オーバー管1828を通って前進しており、十二指腸1822内に配置されている。しかしながら、内視鏡1830は、十二指腸1822の湾曲と、内視鏡1830及び拡張可能部材1824の相対位置とに起因して、図73に配置されるような拡張可能部材1824(又はそれに取り付けられた電極のいずれか)を視覚化することができない。
【0329】
図73に示されるように、外科用デバイス1832は、十二指腸1822の外に配置される。外科用デバイス1832は、この図示される実施形態のように、腹腔鏡1834を通して腹腔鏡下で前進させることによって等、種々の方法のうちのいずれかで上記のように配置されることができる。外科用デバイス1832は、その遠位先端に第2の磁石1836を含む。第2の磁石1836のS極(S)及びN極(N)が図73に示されている。第2の磁石1836は、十二指腸1822外に移動され、第1の磁石1826と磁気的に相互作用することによって、十二指腸1822内の第1の磁石1826、したがって拡張可能部材1824及び電極の移動を引き起こすように構成されている。第2の磁石の移動は、回転(第1の矢印1838によって示される)、平行移動(第2の矢印1840によって示される)、又は横方向移動(第3の矢印1842によって示される)の任意の組み合わせであることができる。
【0330】
第2の磁石1836の移動に応答した第1の磁石1826の移動は、第1の磁石1826及び第2の磁石1836のN極及びS極の相対位置に依存する。図74は、第2の磁石1836が第1の磁石1826と磁気的に相互作用していない受動構成における、十二指腸1822内の第1の磁石1826を示す。図75は、第1の磁石1826が第2の磁石1836に引き付けられるように、第2の磁石1836が第1の磁石1826に対して配置される、引き付け構成における十二指腸1822内の第1の磁石1826を示す。したがって、第1の磁石1826、したがって拡張可能部材1824及びそれに取り付けられた電極は、第2の磁石1836に向かう方向で、十二指腸1822の内壁に近づいている。図75では、第1の磁石1826は、第2の磁石1836の南(S)極が第1の磁石1824の北(N)極に隣接して配置されることによって、十二指腸1822の組織壁をそれらの間に挟んで、第2の磁石1836に引き付けられる。吸引構成において第2の磁石1836のS極が第1の磁石1824のN極に隣接して配置される代わりに、第2の磁石1836のN極が第1の磁石1824のS極に隣接して配置されることができる。図76は、第1の磁石1826が第2の磁石1836によって反発されるように第2の磁石1836が第1の磁石1826に対して配置されている、反発構成における十二指腸1822内の第1の磁石1826を示す。したがって、第1の磁石1826、したがって拡張可能部材1824及び電極は、第2の磁石1836から離れる方向で、十二指腸1822の内壁に近づくように移動している。図76はまた、第4の矢印1844(第1の矢印1838と同様)によって、第2の磁石1836が図75におけるその位置から回転されて、第1の磁石の引き付け構成から反発構成への移動を引き起こすことを示す。図76では、第1の磁石1826は、第2の磁石1836の北(N)極が、十二指腸1822の組織壁をその間に挟んで、第1の磁石1824の北(N)極に隣接して配置されることによって、第2の磁石1836によって反発される。反発構成において第2の磁石1836のN極が第1の磁石1824のN極に隣接して配置される代わりに、第2の磁石1836のS極が第1の磁石1824のS極に隣接して配置されることができる。
【0331】
いくつかの実施形態では、磁気要素は、例えば図73の実施形態における等のように、中空器官又は体腔内に配置されるように構成されたアブレーションデバイスに取り付けられることができる。他の実施形態では、磁気要素は、中空器官又は体腔内に配置されるように構成されたスコープに取り付けられることができる。スコープに取り付けられている磁気要素は、スコープの場所が体腔の外側から中空器官又は体腔内で追跡されることを可能にし得るが、かつ/又は組織厚さが決定されることを可能にし得る。
【0332】
図77は、第1の磁石1852を含むスコープ1850の一実施形態を示す。この図示された実施形態における第1の磁石1852は、スコープ1850の遠位端のすぐ近位側で、スコープ1850の周りに円周方向に延在する磁気カラーの形態である。図77及び図78は、中空器官又は体腔1854内に配置されたスコープ1850を示し、アブレーションデバイスのバスケットの形態の拡張可能部材1856が、スコープ1850から遠位方向に延出しているのを示す。第1の磁石1852は、第2の磁石1858を使用して、中空器官又は体腔1854の外側から磁気的に検出されるように構成されている。この図示される実施形態における第2の磁石1858は、鎖状の複数の磁石を含み、この鎖状の複数の磁石は、図78に示されるように、中空器官又は体腔1854の外部表面の周囲に円周方向に巻き付けられるように構成されている。第2の磁石1858は、中空器官又は体腔の外径の周囲に配置されるスリーブ又はステントに関して上記で議論されるものと同様等、種々のやり方で外部表面の周囲に巻着されることができる。
【0333】
第2の磁石1858は、第1の磁石1852及び第2の磁石1858の引力により、中空器官又は体腔1854内で、スコープ1850の移動、したがって第1の磁石1852の移動に対応して、中空器官又は体腔の外面に沿って移動するように構成されている。図79は、中空器官又は体腔1854内でのスコープ1850の移動の一実施形態を示す。スコープ1850は、矢印1860によって示されるように、第1の遠位位置から第2の近位位置まで、近位方向に後退させられる。したがって、第1の磁石1852及び第2の磁石1858も近位方向に移動する。スコープ1850’、第1の磁石の第1の遠位位置1852’、及び第2の磁石の第1の遠位位置1858’は、ダッシュ付きの番号をそれぞれの要素に付して示されている。
【0334】
中空器官又は体腔内に配置される第1の磁石と、中空器官又は体腔の外に配置される第2の磁石とは、第1の磁石と第2の磁石の間に位置する組織壁とともに、協働して、組織壁の厚さの決定を可能にするように構成されている。第1の磁石と第2の磁石との間の磁力の強度は、それらの間の組織壁の厚さに基づいて変化する。したがって、中空器官又は体腔の軸方向長さに沿った異なる場所における磁力の強度は、その場所における組織壁の厚さを示すことができる。
【0335】
例えば、図77図79の第1の磁石1852及び第2の磁石1858は、第1の磁石1852と第2の磁石1858との間に配置された中空器官又は体腔1854の厚さを決定することを可能にするように構成されている。図77に示されるように、中空器官又は体腔1854の厚さは、中空器官又は体腔1854の長さに沿って異なる軸方向位置において異なっている。組織は、第1の軸方向位置(1)において第1の厚さ1862を有し、第1の軸方向位置(1)の近位側の第2の軸方向位置(2)において第2の厚さ1864を有し、第2の軸方向位置(2)の近位側の第3の軸方向位置(3)において第3の厚さ1866を有する。この図示された実施形態では、第1の厚さ1862は、第3の厚さ1866よりも小さく、これは、第2の厚さ1868よりも小さい。スコープ1850が中空器官又は体腔1854内で後退させられる(近位方向に移動させられる)につれて、上記で議論されるように、第1の磁石1852及び第2の磁石1858間の磁力は、第1、第2、及び第3の位置(1)、(2)、(3)のそれぞれに対する組織厚さ及び電力(磁力)をプロットする図80に示されるグラフに示されるように変動する。第1の磁石1852と第2の磁石1858との間の異なる磁力は、複数の異なる組織厚さの各々に対して既知であり、したがって、検出された磁力は、外科用ハブのコントローラ、ロボット外科用システムのコントローラ、又は他のコンピュータシステムのコントローラにアクセス可能なメモリに記憶されたルックアップテーブルを使用すること等によって、既知の組織厚さに相互に関連付けられることができる。
【0336】
スコープ及び電極位置の監視及び制御のために磁石を使用することに加えて又はその代わりに、超音波撮像を使用して、スコープ及び/又は電極の場所を決定することができる。超音波撮像は、中空器官又は体腔内でのスコープ及び/又は電極の場所を特定するために使用されることができる。次いで、磁石は、特定された場所の近くの中空器官又は体腔の外に配置され、上記で議論されるように、電極移動を制御するために使用されることができる。追加的に又は代替的に、超音波撮像は、磁気的に制御された電極の移動の間に、中空器官又は体腔内での電極の場所を特定するために使用され得るが、それにより、例えば収集された超音波画像の表示によって、電極の移動を視覚的に確認することができる。図81は、十二指腸又は腸の他の部分を視覚化するために腹壁などの組織壁1872を通して視覚化する、超音波撮像デバイス1870の一実施形態を示す。
【0337】
いくつかの実施形態では、位置監視及び制御は、アブレーションデバイスの回転を制御することを含むことができる。アブレーションデバイスの回転を制御することは、焼灼露出を制御するのに役立ち得るが、かつ/又は中空器官又は体腔の内面のその周囲の完全なアブレーションを確実にするのに役立ち得る。温度監視などによって、内面の一部がアブレーションされていると判定されると、アブレーションデバイスを回転させて、組織のうちの、今完了した領域をアブレーションしていた電極が、組織の内面に沿った別の領域にエネルギーを送達することができる。回転の速度及び/又は量は、制御アルゴリズムの少なくとも1つの可変パラメータを調整することによって制御することができる。アブレーションデバイスの回転は、アブレーションデバイスの回転を介して制御することができ、アブレーションデバイスがスコープとともに回転するように(その作業チャネル内等に)配置されるスコープの回転を介して制御することができ、又はアブレーションデバイスがオーバー管とともに回転するように(その内側ルーメン内等に)配置されるオーバー管の回転を介して、制御されることができる。アブレーションデバイスはまた、本明細書で議論されるように、長手方向に平行移動され、全ての標的組織がアブレーションされることを確実にする助けとなることができる。
【0338】
本明細書に開示されるデバイス及びシステムは、1回の使用後に廃棄されるように設計され得るか、又は複数回使用されるように設計され得る。しかしながら、いずれの場合も、デバイスは、少なくとも1回の使用の後に再使用のために再調整することができる。再調整には、デバイスの分解ステップ、それに続く洗浄ステップ又は特定の部品の交換ステップ、及びその後の再組み立てステップの任意の組み合わせを含むことができる。具体的には、デバイスは分解することができ、デバイスの任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部品が洗浄及び/又は交換されると、続く使用のためにデバイスを再調整施設において、又は外科処置の直前に外科チームによって再組み立てすることができる。当業者であれば、デバイスの再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることを理解するであろう。このような技術の使用、及び結果として得られる再調整されたデバイスは、全て本出願の範囲内にある。
【0339】
本明細書に開示されるデバイスは、使用前に滅菌されることが好ましいものであり得る。これは、β線又はγ線放射、酸化エチレン、蒸気、及び液浴(例えば、低温浸漬)などの当業者には既知の様々な方法によって行うことができる。内部回路を含む装置を滅菌する典型的な実施形態は、米国特許第8,114,345号(2012年2月14日発行、発明の名称「System And Method Of Sterilizing An Implantable Medical Device」);により詳細に記載されている。装置は、埋め込まれる場合、完全に密封されることが好ましい。これは、当業者に既知の様々な方法によって行うことができる。
【0340】
本開示は、本明細書で提供される開示全体の文脈内で、例示のみを目的として上で説明された。本開示の全体的な範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内の修正を行い得ることが理解されよう。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0341】
〔実施の態様〕
(1) 外科用システムであって、
患者の第1の解剖学的空間内にある間に、標的組織にエネルギーを送達するようにそれぞれ構成された複数の電極を含む、外科用デバイスと、
前記エネルギーが前記標的組織に送達されている状態で、前記患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視するように構成されたセンサと、
コントローラであって、
前記測定された組織パラメータを示す信号を前記センサから受信することと、
前記測定された組織パラメータを示す前記信号に基づいて、前記複数の電極の各々の電力を制御することと、を行うように構成されたコントローラと、
を備える、システム。
(2) 前記標的組織は、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にあり、
前記制御は、
前記複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させて前記エネルギーを送達し、前記複数の電極のうちの残りの数の電極はエネルギーを送達しないこと、及び
温度を含む前記組織パラメータを用いて、前記監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように前記電力を制御すること、
のうちの少なくとも1つを含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記組織パラメータは、インピーダンスを含む、実施態様1又は2に記載のシステム。
(4) 前記組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含む、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記標的組織は組織壁であり、前記複数の電極は、前記組織壁の第1の側に位置し、前記第2の解剖学的空間は、前記組織壁の反対側に位置する、実施態様1に記載のシステム。
【0342】
(6) 前記第1の解剖学的空間は、中空器官内にあり、前記第2の解剖学的空間は、前記中空器官外にある、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記第1の解剖学的空間は管腔内にあり、前記第2の解剖学的空間は前記管腔外にある、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記標的組織は、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にある、
実施態様1に記載のシステム。
(9) 外科用ハブが、前記コントローラを含む、実施態様1に記載のシステム。
(10) ロボット外科用システムが、前記コントローラを含み、前記外科用デバイスが、前記ロボット外科用システムに解放可能に結合し、前記ロボット外科用システムによって制御されるように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0343】
(11) 方法であって、
外科用デバイスの複数の電極の各々から、標的組織にエネルギーを送達することであって、前記複数の電極は、患者の第1の解剖学的空間内にある、ことと、
前記エネルギーが前記標的組織に送達されている状態で、センサを用いて、前記患者の第2の異なる解剖学的空間内の組織パラメータを監視することと、
コントローラにおいて、前記測定された組織パラメータを示す信号を前記センサから受信することと、
前記コントローラを用いて、前記測定された組織パラメータを示す前記信号に基づいて、前記複数の電極の各々の電力を制御することと、
を含む、方法。
(12) 前記標的組織が、前記患者の十二指腸の十二指腸粘膜組織であり、
前記第1の解剖学的空間は、前記十二指腸内にあり、
前記第2の解剖学的空間は、前記十二指腸外にあり、
前記制御は、
前記複数の電極のうちの第1の数の電極を作動させて前記エネルギーを送達し、前記複数の電極のうちの残りの数の電極はエネルギーを送達しないこと、及び
温度を含む前記組織パラメータを用いて、前記監視された温度が所定の閾値を超えることを防止するように前記電力を制御すること、
のうちの少なくとも1つを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記組織パラメータは、温度、インピーダンス、及び圧力のうちの少なくとも2つを含む、実施態様11又は12に記載の方法。
(14) 前記標的組織は組織壁であり、前記複数の電極は、前記組織壁の第1の側に位置し、前記第2の解剖学的空間は、前記組織壁の反対側に位置する、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記第1の解剖学的空間は、中空器官内にあり、前記第2の解剖学的空間は、前記中空器官外にある、実施態様11に記載の方法。
【0344】
(16) 前記第1の解剖学的空間は管腔内にあり、前記第2の解剖学的空間は前記管腔外にある、実施態様11に記載の方法。
(17) 外科用ハブが、前記コントローラを含む、実施態様11に記載の方法。
(18) ロボット外科用システムが、前記コントローラを含み、前記外科用デバイスが、前記ロボット外科用システムに解放可能に結合され、前記ロボット外科用システムによって制御されている、実施態様11に記載の方法。
(19) 方法であって、
外科用デバイスの複数の電極の各々から、標的組織にエネルギーを送達することであって、前記複数の電極は、組織壁の第1の側に位置する、ことと、
前記組織壁の第2の反対の側に位置するセンサを用いて、組織パラメータを感知することと、
前記エネルギー送達中に、コントローラを用いて、前記感知された組織パラメータに基づいて、複数の電極の各々の電力レベルを調整することと、
を含む、方法。
(20) 前記組織パラメータは、温度及びインピーダンスのうちの少なくとも1つを含み、
前記組織壁は、中空器官の壁又は体腔の壁である、
実施態様19に記載の方法。
【0345】
(21) 前記感知すること及び前記調整することは、前記感知された組織パラメータが所定の目標に到達し、前記エネルギー送達が停止するまで繰り返し行われる、実施態様19又は20に記載の方法。
(22) コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムが実施態様1に記載のシステムのコントローラによって実行されると、前記システムに、実施態様11又は19に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
(23) 実施態様22に記載のコンピュータプログラム製品を記憶したコンピュータ可読媒体。
(24) 実施態様22に記載のコンピュータプログラム製品を搬送するデータキャリア信号。
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【国際調査報告】