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特表2024-537786電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20241008BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20241008BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241008BHJP
   H03F 1/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/24
H03F3/45
H03F1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519446
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022119557
(87)【国際公開番号】W WO2023051298
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111163809.2
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ゥレン,ジーシオーン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ユイイエン
(72)【発明者】
【氏名】ホゥイ,シヤオイエン
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA41
5J500AA63
5J500AA65
5J500AC21
5J500AC54
5J500AC81
5J500AF08
5J500AF17
5J500AH10
5J500AH29
5J500AH35
5J500AK02
5J500AK12
5J500AK29
5J500AM08
5J500AM13
5J500AS14
5J500AT01
5J500LV08
5J500NG02
(57)【要約】
本願は、電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器を提供する。電力増幅回路は電力増幅ユニット及び補償ユニットを含む。電力増幅ユニットは第1MOS電界効果トランジスタを含み、補償ユニットは第3MOS電界効果トランジスタを含み、第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、第3MOS電界効果トランジスタの導電型は第1MOS電界効果トランジスタの導電型と逆である。従って、入力電圧による第3MOS電界効果トランジスタのゲート-ソース間キャパシタの変化傾向は、入力電圧による第1MOS電界効果トランジスタのゲート-ドレイン間キャパシタの変化傾向と逆であり、第1MOS電界効果トランジスタのゲート-ドレイン間キャパシタは基本的に補償後の入力電圧により変化しないので、AM-PMは補償され、電力増幅回路の線形性は改善される。更に、電力増幅回路の設計は単純である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅ユニット及び補償ユニットを含む電力増幅回路であって、
前記電力増幅ユニットは第1MOS電界効果トランジスタを含み、前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記電力増幅回路の入力信号端に接続され、前記第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記電力増幅回路の出力信号端に接続され、前記第1MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記補償ユニットは第3MOS電界効果トランジスタを含み、前記第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第1バイアス電圧端に接続され、前記第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は第2バイアス電圧端に接続され、
前記第1MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第3MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、前記第1MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第3MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタである、
電力増幅回路。
【請求項2】
前記電力増幅ユニットは、第2MOS電界効果トランジスタ及び第1バイアスサブ回路を更に含み、
前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極は、前記第1バイアスサブ回路を介して前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第2MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、前記第2MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記第1バイアスサブ回路は、前記第2MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成され、
前記第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされ、かつ前記第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、あるいは、前記第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、かつ前記第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされる、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項3】
前記第1バイアスサブ回路は、第1キャパシタ及び第1抵抗を含み、
前記第1キャパシタの第1端は前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第1キャパシタの第2端は前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、
前記第1抵抗の第1端は前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、前記第1抵抗の第2端は第3バイアス電圧端に接続される、
請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項4】
前記電力増幅ユニットは、前記電力増幅回路の前記入力信号端と前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続されている第2バイアスサブ回路を更に含み、
前記第2バイアスサブ回路は、前記第1MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成される、
請求項2又は3に記載の電力増幅回路。
【請求項5】
前記第2バイアスサブ回路は、第2キャパシタ及び第2抵抗を含み、
前記第2キャパシタの第1端は前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第2キャパシタの第2端は前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、
前記第2抵抗の第1端は前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、前記第2抵抗の第2端は第4バイアス電圧端に接続される、
請求項4に記載の電力増幅回路。
【請求項6】
入力整合回路、出力整合回路、及び請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の電力増幅回路を有し、
前記入力整合回路の出力信号端は前記電力増幅回路の入力信号端に接続され、前記出力整合回路の入力信号端は前記電力増幅回路の出力信号端に接続される、
電力増幅器。
【請求項7】
前記電力増幅器が第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路を有する場合に、
前記電力増幅器は第3キャパシタを更に有し、前記第3キャパシタの第1端は、前記第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、前記第3キャパシタの第2端は、前記第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記入力整合回路の出力信号端は、前記第1電力増幅回路の入力信号端及び前記第2電力増幅回路の入力信号端に別々に接続され、前記出力整合回路の入力信号端は、前記第1電力増幅回路の出力信号端及び前記第2電力増幅回路の出力信号端に別々に接続される、
請求項6に記載の電力増幅器。
【請求項8】
第1バイアス電圧端は接地される、
請求項7に記載の電力増幅器。
【請求項9】
前記電力増幅器は、第4キャパシタ及び第5キャパシタを更に有し、
前記第4キャパシタは、前記第1電力増幅回路の出力信号端と前記第2電力増幅回路の入力信号端との間に接続され、
前記第5キャパシタは、前記第2電力増幅回路の出力信号端と前記第1電力増幅回路の入力信号端との間に接続される、
請求項7又は8に記載の電力増幅器。
【請求項10】
駆動段階増幅回路及び段階間整合回路を更に有し、
前記駆動段階増幅回路は、前記第1電力増幅回路及び前記第2電力増幅回路の出力ゲインを補償するよう構成され、
前記駆動段階増幅回路の入力信号端は前記入力整合回路の出力信号端に接続され、前記駆動段階増幅回路の出力信号端は前記段階間整合回路の入力信号端に接続され、
前記段階間整合回路の出力信号端は、前記第1電力増幅回路の入力信号端及び前記第2電力増幅回路の入力信号端に別々に接続される、
請求項7乃至9のうちいずれか一項に記載の電力増幅器。
【請求項11】
前記駆動段階増幅回路は、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、第7MOS電界効果トランジスタ、第3抵抗、第4抵抗、第6キャパシタ、及び第7キャパシタを有し、
前記第4MOS電界効果トランジスタのゲート電極は電源電圧端に接続され、前記第4MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記駆動段階増幅回路の第1出力信号端に接続され、前記第4MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記第5MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記第6キャパシタの第1端に接続され、前記第5MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、前記第6キャパシタの第2端は前記駆動段階増幅回路の第1入力信号端に接続され、
前記第6MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記電源電圧端に接続され、前記第6MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記駆動段階増幅回路の第2出力信号端に接続され、前記第6MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記第7MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記第7キャパシタの第1端に接続され、前記第7MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、前記第7キャパシタの第2端は前記駆動段階増幅回路の第2入力信号端に接続され、
前記第3抵抗は、前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極と第5バイアス電圧端との間に接続され、前記第4抵抗は、前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極と前記第5バイアス電圧端との間に接続される、
請求項10に記載の電力増幅器。
【請求項12】
前記駆動段階増幅回路は、第8キャパシタ及び第9キャパシタを更に有し、
前記第8キャパシタは、前記第4MOS電界効果トランジスタのソース電極と前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続され、
前記第9キャパシタは、前記第6MOS電界効果トランジスタのソース電極と前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続される、
請求項11に記載の電力増幅器。
【請求項13】
回路ボードと、該回路ボードに電気的に接続される、請求項6乃至12のうちいずれか一項に記載の電力増幅器とを有する送信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電子テクノロジの分野に、特に、電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器に関係がある。
【背景技術】
【0002】
相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor,CMOS)は、主流の半導体テクノロジとして、一般的な通信ベースバンド及びアナログトランシーバなどの様々なデジタル/アナログ信号処理チップの実施に広く使用されている。電力増幅器(Power Amplifier,PA)は送信器の最終段モジュールとなる。CMOSテクノロジに基づいて開発されたPAは、Bluetooth、Zigbee、及びNB-IoTなどの狭帯域低電力シナリオで主に使用され、初期のWi-Fiシステムでも使用されることがある。しかし、変調信号の直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation,QAM)次数の増加とともに、信号のロスレス伝送を確かにするために、通信リンクの信号対雑音比に対する要求もそれに応じて高まっている。従って、高次QAM信号の送信は、より高い線形性、例えば、より低い振幅変調-振幅変調(Amplitude Modulation-Amplitude Modulation,AM-AM)歪み及びより低い振幅変調-位相変調(Amplitude Modulation-Phase Modulation)歪みを有することをPAに要求する。従って、高帯域幅及び高次QAM信号の伝送を満足するために高線形性PAを如何に設計するかは、当業者によって至急解決される必要がある技術的課題である。
【発明の概要】
【0003】
本願は、高線形性電力増幅回路を提供するように電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器を提供する。
【0004】
第1の態様に従って、本願の実施形態は、電力増幅ユニット及び補償ユニットを含む電力増幅回路を提供し、電力増幅ユニットは第1MOS電界効果トランジスタを含んでもよく、第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極は電力増幅回路の入力信号端に接続され、第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は電力増幅回路の出力信号端に接続され、第1MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地される。補償ユニットは第3MOS電界効果トランジスタを含んでよく、第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第1バイアス電圧端に接続され、第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は電力増幅回路の出力信号端に接続され、第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は第2バイアス電圧端に接続される。第1MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ第3MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、第1MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ第3MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタである。
【0005】
本願のこの実施形態で提供される電力増幅回路に従って、第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、第3MOS電界効果トランジスタの導電型は第1MOS電界効果トランジスタM1の導電型と逆である。従って、入力電圧による第3MOS電界効果トランジスタのゲート-ソース間キャパシタCgsの変化傾向は、入力電圧による第1MOS電界効果トランジスタのゲート-ドレイン間キャパシタCgdの変化傾向と逆であり、第1MOS電界効果トランジスタのゲート-ドレイン間キャパシタは基本的に補償後の入力電圧により変化しないので、AM-PMは補償され、電力増幅回路の線形性は改善される。更に、電力増幅回路の設計は単純である。
【0006】
実施形態で、第1バイアス電圧端の電圧は0からVddの間にセットされ得、Vddは電源電圧であり、第2バイアス電圧端は仮想接地にセットされ得、つまり、第2バイアス電圧端はキャパシタを介して接地される。
【0007】
例えば、電力増幅回路では、電力増幅ユニットは、第2MOS電界効果トランジスタ及び第1バイアスサブ回路を更に含んでもよい。第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極は、第1バイアスサブ回路を介して電力増幅回路の入力信号端に接続され、第2MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は電力増幅回路の出力信号端に接続され、第2MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地される。第1バイアスサブ回路は、第2MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成される。第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされ、かつ第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、あるいは、第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、かつ第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされる。
【0008】
第1MOS電界効果トランジスタ及び第2MOS電界効果トランジスタは同じ導電型を有し、つまり、第1MOS電界効果トランジスタ及び第2MOS電界効果トランジスタは両方とも、N型MOS電界効果トランジスタ又はP型MOS電界効果トランジスタである。
【0009】
本願では、マルチゲートトランジスタ技術を使用することによって組み合わされる第1MOS電界効果トランジスタ及び第2MOS電界効果トランジスタが電力増幅ユニットに使用される。一方のMOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、それにより、そのMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は負になり、他方のMOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされ、それにより、その他方のMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は正になる。このようにして、2つのMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は反対に作用することになり、電力増幅回路のAM-AMは補償され、電力増幅回路のP1dB圧縮ポイントは改善される。
【0010】
例えば、第1バイアスサブ回路は、第1キャパシタ及び第1抵抗を含んでもよい。第1キャパシタの第1端は電力増幅回路の入力信号端に接続され、第1キャパシタの第2端は第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続される。第1抵抗の第1端は第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、第1抵抗の第2端は第3バイアス電圧端に接続される。従って、第1抵抗は、第2MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するために使用され、第1キャパシタは、第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極から第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極を絶縁するために使用され得、第1キャパシタは、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0011】
具体的な実施の間、第3バイアス電圧端の電圧は、第2MOS電界効果トランジスタの動作状態に基づき設計されてもよい。第2MOS電界効果トランジスタがN型MOS電界効果トランジスタである例が使用される。第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点がクラスCにバイアスされるとき、第3バイアス電圧端の電圧は第2MOS電界効果トランジスタの閾電圧よりも低くなる。第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点がクラスABにバイアスされるとき、第3バイアス電圧端の電圧は、第2MOS電界効果トランジスタの閾電圧よりも高くなる。
【0012】
例えば、電力増幅回路では、電力増幅ユニットは、電力増幅回路の入力信号端と第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続されている第2バイアスサブ回路を更に含んでもよく、第2バイアスサブ回路は、第1MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成される。従って、実際の適用の間、電力増幅回路の入力信号端が変圧器に接続されるとき、変圧器は第1MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御する必要がなく、コモン4ポート変圧器が使用され、設計複雑性は低下する。
【0013】
例えば、第2バイアスサブ回路は、第2キャパシタ及び第2抵抗を含んでもよい。第2キャパシタの第1端は電力増幅回路の入力信号端に接続され、第2キャパシタの第2端は第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続される。第2抵抗の第1端は第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、第2抵抗の第2端は第4バイアス電圧端に接続される。従って、第2抵抗は、第1MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するために使用され、第2キャパシタは、第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極から第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極を絶縁するために使用され得、第2キャパシタは、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0014】
具体的な実施の間、第4バイアス電圧端の電圧は、第1MOS電界効果トランジスタの動作状態に基づき設計されてもよい。第1MOS電界効果トランジスタがN型MOS電界効果トランジスタである例が使用される。第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点がクラスCにバイアスされるとき、第4バイアス電圧端の電圧は第1MOS電界効果トランジスタの閾電圧よりも低くなる。第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点がクラスABにバイアスされるとき、第4バイアス電圧端の電圧は第1MOS電界効果トランジスタの閾電圧よりも高くなる。
【0015】
本願では、第3MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧は、第1バイアス電圧端の電圧を調整することによって更に調整され得るので、第3MOS電界効果トランジスタのゲート-ソース間キャパシタCgsはその電圧を調整することによって調整でき、AM-PMが更に補償され、異なる変調信号の線形性を伝えるための電力増幅回路の要件は満足される。
【0016】
更に、本願では、特定の範囲において、より効果的な補償が、第3MOS電界効果トランジスタのサイズを変更することによってAM-PMに対して更に実行され得るので、電力増幅回路の線形性は更に改善される。
【0017】
第2の態様に従って、本願の実施形態は、入力整合回路、出力整合回路、及び第1の態様又は第1の態様の実施に従う電力増幅回路を含む電力増幅器を更に提供する。入力整合回路の出力信号端は電力増幅回路の入力信号端に接続され、出力整合回路の入力信号端は電力増幅回路の出力信号端に接続される。電力増幅器の課題解決原理は、上記の電力増幅回路のそれと同様である。従って、電力増幅器の実施については、上記の電力増幅回路の実施を参照されたい。繰り返しになる部分は再び記載されない。
【0018】
本願では、電力増幅回路がAM-AM及びAM-PMを補償し、優れた線形性が実装され得る。従って、その電力増幅回路を使用する電力増幅器も優れた線形性を備えている。
【0019】
具体的な実施の間、電力増幅器では、入力整合回路はシングルエンド出力を有してもよく、あるいは、確かに、デュアルエンド差動出力を有してもよい。入力整合回路がシングルエンド出力を有するとき、電力増幅器は1つの電力増幅回路を含む。入力整合回路がデュアルエンド差動出力を有するとき、電力増幅器は2つの電力増幅回路を含み得る。本願のこの実施形態で提供される電力増幅器は、入力整合回路がシングルエンド入力及びデュアルエンド差動出力を有する例を使用することによって、記載される。
【0020】
例えば、電力増幅器が第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路を有する場合に、電力増幅器は第3キャパシタを更に含んでもよく、第3キャパシタの第1端は、第1電力増幅回路の第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、第3キャパシタの第2端は、第2電力増幅回路の第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続される。入力整合回路の第1出力信号端は第1電力増幅回路の入力信号端に接続され、入力整合回路の第2出力信号端は第2電力増幅回路の入力信号端に接続される。出力整合回路の第1入力信号端は第1電力増幅回路の出力信号端に接続され、出力整合回路の第2入力信号端は第2電力増幅回路の出力信号端に接続される。従って、第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路は完全差動構造を形成し、2つの第3MOS電界効果トランジスタは両方とも第3キャパシタに直列接続され、それにより、電力供給は不要であり、電力増幅器の電力補償は増えない。
【0021】
任意に、本願のこの実施形態で提供される電力増幅器では、第1バイアス電圧端は接地されてもよく、それにより、1つの制御端が節約でき、電力増幅器の構造は簡単になる。
【0022】
例えば、電力増幅器は、第4キャパシタ及び第5キャパシタを更に含んでもよい。第4キャパシタは、第1電力増幅回路の出力信号端と第2電力増幅回路の入力信号端との間に接続される。第5キャパシタは、第2電力増幅回路の出力信号端と第1電力増幅回路の入力信号端との間に接続される。第4キャパシタ及び第5キャパシタは中和キャパシタであり、第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路に負帰還を提供するよう構成され、それにより、電力増幅器の逆隔離及び安定性は改善され得る。
【0023】
例えば、電力増幅器の出力ゲインを確かにするために、電力増幅器は、駆動段階増幅回路及び段階間整合回路を更に含んでもよい。駆動段階増幅回路は、第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路の出力ゲインを補償するよう構成される。駆動段階増幅回路の第1入力信号端は入力整合回路の第1出力信号端に接続され、駆動段階増幅回路の第2入力信号端は入力整合回路の第2出力信号端に接続される。駆動段階増幅回路の第1出力信号端は段階間整合回路の第1入力信号端に接続され、駆動段階増幅回路の第2出力信号端は段階間整合回路の第2入力信号端に接続される。段階間整合回路の第1出力信号端は第1電力増幅回路の入力信号端に接続され、段階間整合回路の第2出力信号端は第2電力増幅回路の入力信号端に接続される。
【0024】
電力増幅器は2段階増幅構造を有する。第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路は出力段増幅回路として使用される。駆動段階増幅回路は、出力段増幅回路の出力ゲインを補償するよう構成される。2段階増幅回路の周波数応答曲線の変化傾向はだいたい同じである。出力段増幅回路はAM-AM及びAM-PMを補償するので、電力増幅器は、ゲインの低下なしに優れた線形性を満足することができる。
【0025】
実現可能な実施で、駆動段階増幅回路は、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、第7MOS電界効果トランジスタ、第3抵抗、第4抵抗、第6キャパシタ、及び第7キャパシタを含んでもよい。第4MOS電界効果トランジスタのゲート電極は電源電圧端に接続され、第4MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は駆動段階増幅回路の第1出力信号端に接続され、第4MOS電界効果トランジスタのソース電極は第5MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続される。第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第6キャパシタの第1端に接続され、第5MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、第6キャパシタの第2端は駆動段階増幅回路の第1入力信号端に接続される。第6MOS電界効果トランジスタのゲート電極は電源電圧端に接続され、第6MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は駆動段階増幅回路の第2出力信号端に接続され、第6MOS電界効果トランジスタのソース電極は第7MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続される。第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第7キャパシタの第1端に接続され、第7MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、第7キャパシタの第2端は駆動段階増幅回路の第2入力信号端に接続される。第3抵抗は、第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極と第5バイアス電圧端との間に接続され、第4抵抗は、第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極と第5バイアス電圧端との間に接続される。駆動段階増幅回路では、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、及び第7MOS電界効果トランジスタは完全差動カスコード構造を形成し、第3抵抗及び第4抵抗はバイアス抵抗であり、第6キャパシタ及び第7キャパシタは、第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極から第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極を絶縁することができ、第6キャパシタ及び第7キャパシタは、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0026】
本願では、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、及び第7MOS電界効果トランジスタは全てN型MOS電界効果トランジスタであってよい。具体的な実施の間、代替的に、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、及び第7MOS電界効果トランジスタは全てP型MOS電界効果トランジスタであってよい。
【0027】
例えば、駆動段階増幅回路は、第8キャパシタ及び第9キャパシタを更に含んでもよい。第8キャパシタは、第4MOS電界効果トランジスタのソース電極と第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続される。第9キャパシタは、第6MOS電界効果トランジスタのソース電極と第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続される。第8キャパシタ及び第9キャパシタは中和キャパシタであり、駆動段階増幅回路に負帰還を提供するよう構成され、それにより、駆動段階増幅回路の安定性は改善され得る。
【0028】
例えば、入力整合回路は、第1変圧器及び第5抵抗を含んでもよい。第5抵抗は、第1変圧器の第1入力端から第2入力端の間に接続され、第1変圧器の2つの出力端は夫々、入力整合回路の第1出力信号端及び第2出力信号端であり、第5抵抗の一端は入力整合回路の入力信号端に接続され、第5抵抗の他端は接地される。入力整合回路では、変圧に加えて、第1変圧器は、シングルエンド入力から差動出力への変換を更に実装し得る。
【0029】
例えば、段階間整合回路は、第2変圧器及び第10キャパシタを含んでもよい。第10キャパシタは、第2変圧器の第1入力端から第2入力端の間に接続され、第2変圧器の第3入力端は電源電圧端に接続され、第2変圧器の2つの出力端は夫々、段階間整合回路の第1出力信号端及び第2出力信号端であり、第2変圧器の第1入力端及び第2入力端は夫々、段階間整合回路の第1入力信号端及び第2入力信号端である。
【0030】
例えば、出力整合回路は、第3変圧器、第11キャパシタ、及び第6抵抗を含んでもよい。第6抵抗及び第11キャパシタは両方とも、第3変圧器の2つの出力端の間に接続され、第3変圧器の第1入力端及び第2入力端は夫々、出力整合回路の第1入力信号端及び第2入力信号端であり、第3変圧器の第3入力端は電源電圧に接続され、第6抵抗の一端は出力整合回路の出力信号端に接続され、第6抵抗の他端は接地される。
【0031】
第3の態様に従って、本願の実施形態は、回路ボードと、回路ボードに電気的に接続される、第2の態様又は第2の態様の実施に従う電力増幅器とを含む送信器を更に提供する。送信器の課題解決原理は上記の電力増幅器のそれと同様であるから、変圧器の実施については、上記の電力増幅器の実施を参照されたい。繰り返しの部分は再び記載されない。
【0032】
第3の態様で達成できる技術的効果については、第2の態様のいずれかの可能な設計で達成できる技術的効果の記載を参照されたい。詳細はここで再び記載されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本願の実施形態に従う電力増幅回路の構造の模式図である。
図2】本願の実施形態に従う他の電力増幅回路の構造の模式図である。
図3】本願の実施形態に従う他の電力増幅回路の構造の模式図である。
図4】本願の実施形態に従う電力増幅器の構造の模式図である。
図5】本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。
図6】本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。
図7】本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。
図8】本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。
図9図6に示される電力増幅器内の補償ユニットなしの比較回路の構造の模式図である。
図10a図9に示される電力増幅器が補償ユニットを含まない場合の入力電力による電力増幅回路の出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。
図10b】入力電力による図6に示された電力増幅器の出力整合回路の出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。
図10c】入力電力による図6に示された電力増幅器内の補償ユニットの出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。
図11図8に示された電力増幅器内の補償ユニットなしの比較回路の構造の模式図である。
図12a】入力信号が5.5GHzである場合の入力電力による出力電圧位相の変化傾向の比較図である。
図12b】入力信号が5.6GHzである場合の入力電力による出力電圧位相の変化傾向の比較図である。
図12c】入力信号が5.7GHzである場合の入力電力による出力電圧位相の変化傾向の比較図である。
図12d】入力信号が5.8GHzである場合の入力電力による出力電圧位相の変化傾向の比較図である。
図13】本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。
図14】異なる第1バイアス電圧での図13に示された電力増幅器のAM-PMのエミュレーション結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本願の目的、技術的解決法、及び利点についてより明りょうにするために、以下は、添付の図面を参照して本願について更に詳細に記載する。ただし、実施例は複数の形式で実施可能であり、ここで記載されている実施に限定されるものとして解釈されるべきではない。対照的に、これらの実施は、本願をより網羅的及び完全にするために与えられており、実施例の概念は、当業者に包括的に伝えられる。図中の同じ参照番号は同じ又は類似した構造を表す。従って、その繰り返しの記載は省略される。本願において位置及び方向を表す語は、添付の図面を例として使用することによって記載される。ただし、必要に応じて変更が行われることがあり、全ての変更は本願の保護範囲内に入るべきである。本願の添付の図面は、相対的な位置関係を示すために単に使用され、実際の寸法を表すものではない。
【0035】
留意すべきは、本願を完全に理解するのを容易にするために、以下の記載では、具体的な詳細な説明されている点である。ただし、本願は、ここで記載されているのとは異なる複数の方式で実施可能であり、当業者は、本願の含意から逸脱せずに、同様のプロモーションを実行することができる。従って、本願は、以下で開示される具体的な実施に限定されない。本明細書の以下の記載は、本願を実施する例示的な様態である。ただし、記載は、本願の一般原理について記載することを意図し、本願の範囲を限定する意図はない。本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきである。
【0036】
以下は、当業者の理解を助けるために、本願の実施形態でのいくつかの用語について記載する。
【0037】
1.電力増幅器の動作状態は、異なる通流角度に基づき3種類の動作状態、つまり、クラスA(第1)、クラスB(第2)、及びクラスC(第3)に分類され得る。動作状態がクラスAであるとき、増幅器の通流角度は360°である。動作状態がクラスBであるとき、増幅器の通流角度は180°である。動作状態がクラスCであるとき、増幅器の通流角度は180°よりも小さい。動作状態がクラスABであるとき、増幅器の通流角度は180°から360°の間である。
【0038】
2.1dB圧縮ポイント(P1dB)は出力電力の性能パラメータである。より高い圧縮ポイントは、より高い出力電力を示す。P1dBは、ゲインが極低電力と比較して1dBだけ下がるときに使用される入力(又は出力)電力ポイントを指す。
【0039】
本願の実施形態で提供される電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器の理解を助けるために、以下は最初に、電力増幅回路、電力増幅器、及び送信器の具体的な適用シナリオについて記載する。本願の実施形態で提供される技術的解決法は、Bluetooth、Zigbee、NB-IoT、4G LTE、及び5G NRなどのシナリオで使用されてよく、また、Wi-Fiシステムなどでも使用されてよい。留意すべきは、本願の実施形態で提供される技術的解決法は、これらのシナリオ及び任意の他の適切なシステムで使用されることを含むよう意図されるが、そのように限定されない点である。以下は更に、添付の図面を参照して本願について更に詳細に記載する。
【0040】
図1は、本願の実施形態に従う電力増幅回路の構造の模式図である。電力増幅回路1は電力増幅ユニット01及び補償ユニット02を含み得る。電力増幅ユニット01は第1MOS電界効果トランジスタM1を含み得る。第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極は電力増幅回路1の入力信号端Inに接続され、第1MOS電界効果トランジスタM1のドレイン電極は電力増幅回路1の出力信号端Outに接続され、第1MOS電界効果トランジスタM1のソース電極は接地される。補償ユニット02は第3MOS電界効果トランジスタM3を含み得る。第3MOS電界効果トランジスタM3のゲート電極は第1バイアス電圧端Vb1に接続され、第3MOS電界効果トランジスタM3のソース電極は電力増幅回路1の出力信号端Outに接続され、第3MOS電界効果トランジスタM3のドレイン電極は第2バイアス電圧端Vb2に接続される。第1MOS電界効果トランジスタM1はN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ第3MOS電界効果トランジスタM3はP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、第1MOS電界効果トランジスタM1はP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ第3MOS電界効果トランジスタM3はN型MOS電界効果トランジスタである。図1は、第1MOS電界効果トランジスタM1がN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ第3MOS電界効果トランジスタM3がP型MOS電界効果トランジスタである例を使用することによって、表されている。
【0041】
本願のこの実施形態で提供される電力増幅回路に従って、電力増幅ユニット01は第1MOS電界効果トランジスタM1を含み、補償ユニット02は第3MOS電界効果トランジスタM3を含み、第3MOS電界効果トランジスタM3のソース電極は第1MOS電界効果トランジスタM1のドレイン電極に接続され、第3MOS電界効果トランジスタM3の導電型は第1MOS電界効果トランジスタM1の導電型と逆である。従って、入力電圧による第3MOS電界効果トランジスタM3のゲート-ソース間キャパシタCgsの変化傾向は、入力電圧による第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート-ドレイン間キャパシタCgdの変化傾向と逆であり、第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート-ドレイン間キャパシタは基本的に補償後の入力電圧により変化しないので、AM-PMは補償され、電力増幅回路の線形性は改善される。更に、電力増幅回路の設計は単純である。
【0042】
実施形態で、第1バイアス電圧端の電圧は0からVddの間にセットされ得、Vddは電源電圧であり、第2バイアス電圧端は仮想接地にセットされ得、つまり、第2バイアス電圧端はキャパシタを介して接地される。
【0043】
例えば、図2は、本願の実施形態に従う他の電力増幅回路の構造の模式図である。電力増幅回路1では、電力増幅ユニット01は、第2MOS電界効果トランジスタM2及び第1バイアスサブ回路011を更に含んでもよい。第2MOS電界効果トランジスタM2のゲート電極は、第1バイアスサブ回路011を介して電力増幅回路1の入力信号端Inに接続され、第2MOS電界効果トランジスタM2のドレイン電極は電力増幅回路1の出力信号端Outに接続され、第2MOS電界効果トランジスタM2のソース電極は接地される。第1バイアスサブ回路011は、第2MOS電界効果トランジスタM2のゲートバイアス電圧を制御するよう構成される。第1MOS電界効果トランジスタM1の直流動作点はクラスCにバイアスされ、かつ第2MOS電界効果トランジスタM2の直流動作点はクラスABにバイアスされ、あるいは、第1MOS電界効果トランジスタM1の直流動作点はクラスABにバイアスされ、かつ第2MOS電界効果トランジスタM2の直流動作点はクラスCにバイアスされる。
【0044】
第1MOS電界効果トランジスタM1及び第2MOS電界効果トランジスタM2は同じ導電型を有し、つまり、第1MOS電界効果トランジスタM1及び第2MOS電界効果トランジスタM2は両方とも、N型MOS電界効果トランジスタ又はP型MOS電界効果トランジスタである。
【0045】
本願では、マルチゲートトランジスタ(Multigate Transistor,MGTR)技術を使用することによって組み合わされる第1MOS電界効果トランジスタM1及び第2MOS電界効果トランジスタM2が電力増幅ユニット01に使用される。一方のMOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、それにより、そのMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は負になり、他方のMOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされ、それにより、その他方のMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は正になる。このようにして、2つのMOS電界効果トランジスタの相互コンダクタンスgmの三次非線形gm”は反対に作用することになり、電力増幅回路のAM-AMは補償され、電力増幅回路のP1dB圧縮ポイントは改善される。
【0046】
なお、本願では、相互コンダクタンスgmの非線形方程式は次のように示される:
【数1】
【0047】
例えば、依然として図2を参照して、第1バイアスサブ回路011は、第1キャパシタC1及び第1抵抗R1を含み得る。第1キャパシタC1の第1端は電力増幅回路1の入力信号端Inに接続され、第1キャパシタC1の第2端は第2MOS電界効果トランジスタM2のゲート電極に接続される。第1抵抗R1の第1端は第2MOS電界効果トランジスタM2のゲート電極に接続され、第1抵抗R1の第2端は第3バイアス電圧端Vb3に接続される。従って、第1抵抗R1は、第2MOS電界効果トランジスタM2のゲートバイアス電圧を制御するために使用され、第1キャパシタC1は、第2MOS電界効果トランジスタM2のゲート電極から第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極を絶縁するために使用され得、第1キャパシタC1は、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0048】
具体的な実施の間、第3バイアス電圧端Vb3の電圧は、第2MOS電界効果トランジスタM2の動作状態に基づき設計されてもよい。第2MOS電界効果トランジスタM2がN型MOS電界効果トランジスタである例が使用される。第2MOS電界効果トランジスタM2の直流動作点がクラスCにバイアスされるとき、第3バイアス電圧端Vb3の電圧は第2MOS電界効果トランジスタM2の閾電圧よりも低くなる。第2MOS電界効果トランジスタM2の直流動作点がクラスABにバイアスされるとき、第3バイアス電圧端Vb3の電圧は、第2MOS電界効果トランジスタM2の閾電圧よりも高くなる。
【0049】
例えば、図3は、本願の実施形態に従う他の電力増幅回路の構造の模式図である。電力増幅回路1では、電力増幅ユニット01は、電力増幅回路1の入力信号端Inと第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極との間に接続されている第2バイアスサブ回路012を更に含んでもよく、第2バイアスサブ回路012は、第1MOS電界効果トランジスタM1のゲートバイアス電圧を制御するよう構成される。従って、電力増幅回路の実際の適用の間、電力増幅回路1の入力信号端Inが変圧器に接続されるとき、変圧器は第1MOS電界効果トランジスタM1のゲートバイアス電圧を制御する必要がなく、コモン4ポート変圧器が使用され、設計複雑性は低下する。
【0050】
例えば、依然として図3を参照して、第2バイアスサブ回路012は、第2キャパシタC2及び第2抵抗R2を含んでもよい。第2キャパシタC2の第1端は電力増幅回路1の入力信号端Inに接続され、第2キャパシタC2の第2端は第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極に接続される。第2抵抗R2の第1端は第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極に接続され、第2抵抗R2の第2端は第4バイアス電圧端Vb4に接続される。従って、第2抵抗R2は、第1MOS電界効果トランジスタM1のゲートバイアス電圧を制御するために使用され、第2キャパシタC2は、第2MOS電界効果トランジスタM2のゲート電極から第1MOS電界効果トランジスタM1のゲート電極を絶縁するために使用され得、第2キャパシタC2は、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0051】
具体的な実施の間、第4バイアス電圧端Vb4の電圧は、第1MOS電界効果トランジスタM1の動作状態に基づき設計されてもよい。第1MOS電界効果トランジスタM1がN型MOS電界効果トランジスタである例が使用される。第1MOS電界効果トランジスタM1の直流動作点がクラスCにバイアスされるとき、第4バイアス電圧端Vb4の電圧は第1MOS電界効果トランジスタM1の閾電圧よりも低くなる。第1MOS電界効果トランジスタM1の直流動作点がクラスABにバイアスされるとき、第4バイアス電圧端Vb4の電圧は第1MOS電界効果トランジスタM1の閾電圧よりも高くなる。
【0052】
本願では、第3MOS電界効果トランジスタM3のゲートバイアス電圧は、第1バイアス電圧端Vb1の電圧を調整することによって更に調整され得るので、第3MOS電界効果トランジスタM3のゲート-ソース間キャパシタCgsはその電圧を調整することによって調整でき、AM-PMが更に補償され、異なる変調信号の線形性を伝えるための電力増幅回路の要件は満足される。
【0053】
更に、本願では、特定の範囲において、電力増幅回路の線形性を更に改善するように、AM-PMが、第3MOS電界効果トランジスタM3のサイズを変更することによって更に補正され得る。
【0054】
本願のこの実施形態に従う上記の電力増幅回路によれば、優れた線形性が、AM-AM及びAM-PMを補償することによって実装され得る。更には、電力増幅回路は簡単に設計され、効率は下がらないので、電力増幅回路は無線周波数電力増幅器に適用され得る。
【0055】
図4は、本願の実施形態に従う電力増幅器の構造の模式図である。電力増幅器10は、入力整合回路2と、出力整合回路3と、本願の実施形態で提供される上記の電力増幅回路1のいずれか1つとを含む。入力整合回路2の出力信号端Out2は電力増幅回路1の入力信号端In1に接続され、出力整合回路3の入力信号端In3は電力増幅回路1の出力信号端Out1に接続される。電力増幅器10の課題解決原理は、上記の電力増幅回路1のそれと同様である。従って、電力増幅器10の実施については、上記の電力増幅回路1の実施を参照されたい。繰り返しになる部分は再び記載されない。
【0056】
本願では、電力増幅回路がAM-AM及びAM-PMを補償し、優れた線形性が実装され得る。従って、その電力増幅回路を使用する電力増幅器も優れた線形性を備えている。
【0057】
具体的な実施の間、電力増幅器では、入力整合回路はシングルエンド出力を有してもよく、あるいは、確かに、デュアルエンド差動出力を有してもよい。入力整合回路がシングルエンド出力を有するとき、電力増幅器は1つの電力増幅回路を含む。入力整合回路がデュアルエンド差動出力を有するとき、電力増幅器は2つの電力増幅回路を含み得る。本願のこの実施形態で提供される電力増幅器は、入力整合回路がシングルエンド入力及びデュアルエンド差動出力を有する例を使用することによって、記載される。
【0058】
図5は、本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。電力増幅器10が第1電力増幅回路1a及び第2電力増幅回路1bを有する場合に、電力増幅器10は第3キャパシタC3を更に含んでもよく、第3キャパシタC3の第1端は、第1電力増幅回路1aの第3MOS電界効果トランジスタM3のドレイン電極に接続され、第3キャパシタの第2端は、第2電力増幅回路1bの第3MOS電界効果トランジスタM3のドレイン電極に接続される。入力整合回路2の第1出力信号端Out2aは第1電力増幅回路1aの入力信号端In1aに接続され、入力整合回路2の第2出力信号端Out2bは第2電力増幅回路1bの入力信号端In1bに接続される。出力整合回路3の第1入力信号端In3aは第1電力増幅回路1aの出力信号端Out1aに接続され、出力整合回路3の第2入力信号端In3bは第2電力増幅回路1bの出力信号端Out1bに接続される。従って、第1電力増幅回路1a及び第2電力増幅回路1bは完全差動構造を形成し、2つの第3MOS電界効果トランジスタM3は両方とも第3キャパシタC3に直列接続され、それにより、電力供給は不要であり、電力増幅器の電力補償は増えない。
【0059】
図6は、本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。任意に、本願のこの実施形態で提供される電力増幅器10では、第1バイアス電圧端Vb1は接地されてもよく、それにより、1つの制御端が節約でき、電力増幅器10の構造は簡単になる。
【0060】
依然として図6を参照して、電力増幅器10は、第4キャパシタC4及び第5キャパシタC5を更に含み得る。第4キャパシタC4は、第1電力増幅回路1aの出力信号端Out1aと第2電力増幅回路1bの入力信号端In1bとの間に接続される。第5キャパシタC5は、第2電力増幅回路1bの出力信号端Out1bと第1電力増幅回路1aの入力信号端In1aとの間に接続される。第4キャパシタC4及び第5キャパシタC5は中和キャパシタであり、第1電力増幅回路1a及び第2電力増幅回路1bに負帰還を提供するよう構成され、それにより、電力増幅器10の逆隔離及び安定性は改善され得る。
【0061】
例えば、図7は、本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。電力増幅器の出力ゲインを確かにするために、電力増幅器10は、駆動段階増幅回路4及び段階間整合回路5を更に含んでもよい。駆動段階増幅回路4は、第1電力増幅回路1a及び第2電力増幅回路1bの出力ゲインを補償するよう構成される。駆動段階増幅回路4の第1入力信号端In4aは入力整合回路2の第1出力信号端Out2aに接続され、駆動段階増幅回路4の第2入力信号端In4bは入力整合回路2の第2出力信号端Out2bに接続される。駆動段階増幅回路4の第1出力信号端Out4aは段階間整合回路5の第1入力信号端In5aに接続され、駆動段階増幅回路4の第2出力信号端Out4bは段階間整合回路5の第2入力信号端In5bに接続される。段階間整合回路5の第1出力信号端Out5aは第1電力増幅回路1aの入力信号端In1aに接続され、段階間整合回路5の第2出力信号端Out5bは第2電力増幅回路1bの入力信号端In1bに接続される。
【0062】
電力増幅器は2段階増幅構造を有する。第1電力増幅回路1a及び第2電力増幅回路1bは出力段増幅回路として使用される。駆動段階増幅回路4は、出力段増幅回路の出力ゲインを補償するよう構成される。2段階増幅回路の周波数応答曲線の変化傾向はだいたい同じである。出力段増幅回路はAM-AM及びAM-PMを補償するので、電力増幅器は、ゲインの低下なしに優れた線形性を満足することができる。
【0063】
実現可能な実施で、図8は、本願の実施形態に従う他の電力増幅器の構造の模式図である。駆動段階増幅回路4は、第4MOS電界効果トランジスタM4、第5MOS電界効果トランジスタM5、第6MOS電界効果トランジスタM6、第7MOS電界効果トランジスタM7、第3抵抗R3、第4抵抗R4、第6キャパシタC6、及び第7キャパシタC7を含み得る。第4MOS電界効果トランジスタM4のゲート電極は電源電圧端VDDに接続され、第4MOS電界効果トランジスタM4のドレイン電極は駆動段階増幅回路4の第1出力信号端Out4aに接続され、第4MOS電界効果トランジスタM4のソース電極は第5MOS電界効果トランジスタM5のドレイン電極に接続される。第5MOS電界効果トランジスタM5のゲート電極は第6キャパシタC6の第1端に接続され、第5MOS電界効果トランジスタM5のソース電極は接地され、第6キャパシタC6の第2端は駆動段階増幅回路4の第1入力信号端In4aに接続される。第6MOS電界効果トランジスタM6のゲート電極は電源電圧端VDDに接続され、第6MOS電界効果トランジスタM6のドレイン電極は駆動段階増幅回路4の第2出力信号端Out4bに接続され、第6MOS電界効果トランジスタM6のソース電極は第7MOS電界効果トランジスタM7のドレイン電極に接続される。第7MOS電界効果トランジスタM7のゲート電極は第7キャパシタC7の第1端に接続され、第7MOS電界効果トランジスタM7のソース電極は接地され、第7キャパシタC7の第2端は駆動段階増幅回路4の第2入力信号端In4bに接続される。第3抵抗R3は、第5MOS電界効果トランジスタM5のゲート電極と第5バイアス電圧端Vb5との間に接続され、第4抵抗R4は、第7MOS電界効果トランジスタM7のゲート電極と第5バイアス電圧端Vb5との間に接続される。駆動段階増幅回路4では、第4MOS電界効果トランジスタM4、第5MOS電界効果トランジスタM5、第6MOS電界効果トランジスタM6、及び第7MOS電界効果トランジスタM7は完全差動カスコード構造を形成し、第3抵抗R3及び第4抵抗R4はバイアス抵抗であり、第6キャパシタC6及び第7キャパシタC7は、第7MOS電界効果トランジスタM7のゲート電極から第5MOS電界効果トランジスタM5のゲート電極を絶縁することができ、第6キャパシタC6及び第7キャパシタC7は、直流を遮断し、交流を導くという役割を更に果たし得る。
【0064】
具体的な実施の間、第5バイアス電圧端Vb5の電圧は、第7MOS電界効果トランジスタM7及び第5MOS電界効果トランジスタM5の動作状態に基づき設計されてもよい。一般に、第7MOS電界効果トランジスタM7及び第5MOS電界効果トランジスタM5の直流動作点はクラスABにバイアスされる。
【0065】
図8では、第4MOS電界効果トランジスタM4、第5MOS電界効果トランジスタM5、第6MOS電界効果トランジスタM6、及び第7MOS電界効果トランジスタM7が全てN型MOS電界効果トランジスタである例が、説明のために使用されている。具体的な実施の間、代替的に、第4MOS電界効果トランジスタM4、第5MOS電界効果トランジスタM5、第6MOS電界効果トランジスタM6、及び第7MOS電界効果トランジスタM7は全てP型MOS電界効果トランジスタであってもよい。
【0066】
例えば、図8を参照して、駆動段階増幅回路4は、第8キャパシタC8及び第9キャパシタC9を更に含み得る。第8キャパシタC8は、第4MOS電界効果トランジスタM4のソース電極と第7MOS電界効果トランジスタM7のゲート電極との間に接続される。第9キャパシタC9は、第6MOS電界効果トランジスタM6のソース電極と第5MOS電界効果トランジスタM5のゲート電極との間に接続される。第8キャパシタC8及び第9キャパシタC9は中和キャパシタであり、駆動段階増幅回路4に負帰還を提供するよう構成され、それにより、駆動段階増幅回路4の安定性は改善され得る。
【0067】
なお、上記は、駆動段階増幅回路の具体的な構造について説明するための例にすぎない。具体的な実施の間、駆動段階増幅回路の具体的な構造は、本願の実施形態で提供される上記の構造に限定されず、代替的に、当業者によって知られている他の構造であってもよい。これはここで限定されない。
【0068】
例えば、依然として図8を参照して、入力整合回路2は、第1変圧器T1及び第5抵抗R5を含み得る。第5抵抗R5は、第1変圧器T1の第1入力端から第2入力端の間に接続され、第1変圧器T1の2つの出力端は夫々、入力整合回路2の第1出力信号端Out2a及び第2出力信号端Out2bであり、第5抵抗R5の一端は入力整合回路2の入力信号端In2に接続され、第5抵抗R5の他端は接地される。入力整合回路2では、変圧に加えて、第1変圧器T1は、シングルエンド入力から差動出力への変換を更に実装し得る。
【0069】
なお、上記は、入力整合回路の具体的な構造について説明するための例にすぎない。具体的な実施の間、入力整合回路の具体的な構造は、本願の実施形態で提供される上記の構造に限定されず、代替的に、当業者によって知られている他の構造であってもよい。これはここで限定されない。
【0070】
例えば、依然として図8を参照して、段階間整合回路5は、第2変圧器T2及び第10キャパシタC10を含んでもよい。第10キャパシタC10は、第2変圧器T2の第1入力端から第2入力端の間に接続され、第2変圧器T2の第3入力端は電源電圧端VDDに接続され、第2変圧器T2の2つの出力端は夫々、段階間整合回路5の第1出力信号端Out5a及び第2出力信号端Out5bであり、第2変圧器T2の第1入力端及び第2入力端は夫々、段階間整合回路5の第1入力信号端In5a及び第2入力信号端In5bである。
【0071】
なお、上記は、段階間整合回路の具体的な構造について説明するための例にすぎない。具体的な実施の間、段階間整合回路の具体的な構造は、本願の実施形態で提供される上記の構造に限定されず、代替的に、当業者によって知られている他の構造であってもよい。これはここで限定されない。
【0072】
例えば、依然として図8を参照して、出力整合回路3は、第3変圧器T3、第11キャパシタC11、及び第6抵抗R6を含んでもよい。第6抵抗R6及び第11キャパシタC11は両方とも、第3変圧器T3の2つの出力端の間に接続され、第3変圧器T3の第1入力端及び第2入力端は夫々、出力整合回路3の第1入力信号端In3a及び第2入力信号端In3bであり、第3変圧器Tの第3入力端は電源電圧端VDDに接続され、第6抵抗R5の一端は出力整合回路3の出力信号端Out3に接続され、第6抵抗R6の他端は接地される。
【0073】
なお、上記は、出力整合回路の具体的な構造について説明するための例にすぎない。具体的な実施の間、出力整合回路の具体的な構造は、本願の実施形態で提供される上記の構造に限定されず、代替的に、当業者によって知られている他の構造であってもよい。これはここで限定されない。
【0074】
図6に示される電力増幅器が例として使用される。図9に示されている、補償ユニットなしの比較回路が構築され、入力電力による電力増幅器の出力電圧位相の変化傾向がシミュレーションされる。シミュレーション結果からは、5.0GHzから6.0GHzの周波数帯域での入力信号の出力電圧位相の変化傾向は基本的に不変であることが分かる。ここで、5.2GHzが例として使用され、シミュレーション結果は図10a~図10cに示される。図10aは、図9に示される電力増幅器が補償ユニットを含まない場合の入力電力による電力増幅回路の出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。図10bは、入力電力による図6に示された電力増幅器の出力整合回路の出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。図10cは、入力電力による図6に示された電力増幅器内の補償ユニットの出力電圧位相の変化傾向の曲線を示す。シミュレーション結果からは、入力電力による補償ユニットの出力電圧位相の変化傾向は、入力電力による、補償ユニットを含まない電力増幅回路の出力電圧位相の変化傾向と逆であることが分かる。従って、補償ユニットよって実行された補償後の入力電力による電力増幅回路の出力電圧位相の変化傾向は、基本的に不変である。従って、シミュレーション結果からは、本願の実施形態で提供される電力増幅回路が位相を有効に補償し、非線形性を改善し、そして簡単な構造を有することができることが証明され得る。更には、AM-AMは、AM-PMが補償されるときに、基本的に影響されない。
【0075】
本願の実施形態で提供される電力増幅回路をシミュレーション方式で更に検証するために、図8に示される増幅器が例として使用される。図11に示されている、補償ユニットなしの比較回路が構築される。シミュレーション結果は図12a~図12dに示される。比較結果からは、5.5GHzから5.8GHzの周波数範囲で、補償ユニットが加えられた後に得られたAM-PM値は1°に満たず、補償前の7°よりもずっと小さいことが分かる。
【0076】
更に、第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路の第1バイアス電圧端が調整可能な電圧端であるとき、図13に示されている電力増幅器が例として使用され、第1バイアス電圧端Vb1の異なる電圧で、AM-PMのシミュレーション結果は図14に示される。図の結果からは、第3MOS電界効果トランジスタM3のゲートバイアス電圧は、第1バイアス電圧端Vb1の電圧を調整することによって調整されることが証明され得る。このようにして、第3MOS電界効果トランジスタM3のゲート-ソース間キャパシタCgsは、AM-PMの最適な設定を達成し、かつ異なる変調信号の線形性を伝えるための要件を満足するために、調整され得る。
【0077】
本願の実施形態は、回路ボードと、回路ボードに電気的に接続される電力増幅器とを含む送信器を更に提供する。送信器の課題解決原理は上記の電力増幅器のそれと同様であるから、変圧器の実施については、上記の電力増幅器の実施を参照されたい。繰り返しの部分は再び記載されない。
【0078】
明らかに、当業者は、本願の精神及び範囲を逸脱せずに本願に様々な変更及び変形を行うことができる。この場合に、本願は、本願のこれらの変更及び変形を、それらが続く特許請求の範囲及びそれらの同等の技術によって定義される保護の範囲内にあるという条件でカバーするよう意図される。
【0079】
[関連出願への相互参照]
本願は、2021年9月30日に「POWER AMPLIFICATION CIRCUIT, POWER AMPLIFIER, AND TRANSMITTER」という発明の名称で中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第202111163809.2号の優先権を主張するものである。なお、先の中国出願は、その全文を参照により本願に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅ユニット及び補償ユニットを含む電力増幅回路であって、
前記電力増幅ユニットは第1金属酸化膜半導体(MOS電界効果トランジスタを含み、前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記電力増幅回路の入力信号端に接続され、前記第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記電力増幅回路の出力信号端に接続され、前記第1MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記補償ユニットは第3MOS電界効果トランジスタを含み、前記第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は第1バイアス電圧端に接続され、前記第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は第2バイアス電圧端に接続され、
前記第1MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第3MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、前記第1MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第3MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタである、
電力増幅回路。
【請求項2】
前記電力増幅ユニットは、第2MOS電界効果トランジスタ及び第1バイアスサブ回路を更に含み、
前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極は、前記第1バイアスサブ回路を介して前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第2MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、前記第2MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記第1バイアスサブ回路は、前記第2MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成され、
前記第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされ、かつ前記第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、あるいは、前記第1MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスABにバイアスされ、かつ前記第2MOS電界効果トランジスタの直流動作点はクラスCにバイアスされる、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項3】
前記第1バイアスサブ回路は、第1キャパシタ及び第1抵抗を含み、
前記第1キャパシタの第1端は前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第1キャパシタの第2端は前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、
前記第1抵抗の第1端は前記第2MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、前記第1抵抗の第2端は第3バイアス電圧端に接続される、
請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項4】
前記電力増幅ユニットは、前記電力増幅回路の前記入力信号端と前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続されている第2バイアスサブ回路を更に含み、
前記第2バイアスサブ回路は、前記第1MOS電界効果トランジスタのゲートバイアス電圧を制御するよう構成される、
請求項に記載の電力増幅回路。
【請求項5】
前記第2バイアスサブ回路は、第2キャパシタ及び第2抵抗を含み、
前記第2キャパシタの第1端は前記電力増幅回路の前記入力信号端に接続され、前記第2キャパシタの第2端は前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、
前記第2抵抗の第1端は前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極に接続され、前記第2抵抗の第2端は第4バイアス電圧端に接続される、
請求項4に記載の電力増幅回路。
【請求項6】
入力整合回路、出力整合回路、及び請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の電力増幅回路を有し、
前記入力整合回路の出力信号端は前記電力増幅回路の入力信号端に接続され、前記出力整合回路の入力信号端は前記電力増幅回路の出力信号端に接続される、
電力増幅器。
【請求項7】
電力増幅器であって、
入力整合回路、出力整合回路、第1電力増幅回路及び第2電力増幅回路を有
前記第1電力増幅回路は、当該第1電力増幅回路の電力増幅ユニット及び当該第1電力増幅回路の補償ユニットを有し、
前記第1電力増幅回路の前記電力増幅ユニットは、当該第1電力増幅回路において第1MOS電界効果トランジスタを有し、当該第1電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極は当該第1電力増幅回路の入力信号端に接続され、当該第1電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は当該第1電力増幅回路の出力信号端に接続され、当該第1電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記第1電力増幅回路の前記補償ユニットは、当該第1電力増幅回路において第3MOS電界効果トランジスタを有し、当該第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は当該第1電力増幅回路の第1バイアス電圧端に接続され、当該第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は当該第1電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、
前記第1電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、前記第1電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、
前記第2電力増幅回路は、当該第2電力増幅回路の電力増幅ユニット及び当該第2電力増幅回路の補償ユニットを有し、
前記第2電力増幅回路の前記電力増幅ユニットは、当該第2電力増幅回路において第1MOS電界効果トランジスタを有し、当該第2電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのゲート電極は当該第2電力増幅回路の入力信号端に接続され、当該第2電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は当該第2電力増幅回路の出力信号端に接続され、当該第2電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、
前記第2電力増幅回路の前記補償ユニットは、当該第2電力増幅回路において第3MOS電界効果トランジスタを有し、当該第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのゲート電極は当該第2電力増幅回路の第1バイアス電圧端に接続され、当該第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのソース電極は当該第2電力増幅回路の前記出力信号端に接続され、
前記第2電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、あるいは、前記第2電力増幅回路の前記第1MOS電界効果トランジスタはP型MOS電界効果トランジスタであり、かつ前記第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタはN型MOS電界効果トランジスタであり、
前記電力増幅器は第3キャパシタを更に有し、前記第3キャパシタの第1端は、前記第1電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、前記第3キャパシタの第2端は、前記第2電力増幅回路の前記第3MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記入力整合回路の出力信号端は、前記第1電力増幅回路の入力信号端及び前記第2電力増幅回路の入力信号端に別々に接続され、前記出力整合回路の入力信号端は、前記第1電力増幅回路の出力信号端及び前記第2電力増幅回路の出力信号端に別々に接続される、
力増幅器。
【請求項8】
第1バイアス電圧端は接地される、
請求項7に記載の電力増幅器。
【請求項9】
前記電力増幅器は、第4キャパシタ及び第5キャパシタを更に有し、
前記第4キャパシタは、前記第1電力増幅回路の出力信号端と前記第2電力増幅回路の入力信号端との間に接続され、
前記第5キャパシタは、前記第2電力増幅回路の出力信号端と前記第1電力増幅回路の入力信号端との間に接続される、
請求項に記載の電力増幅器。
【請求項10】
駆動段階増幅回路及び段階間整合回路を更に有し、
前記駆動段階増幅回路は、前記第1電力増幅回路及び前記第2電力増幅回路の出力ゲインを補償するよう構成され、
前記駆動段階増幅回路の入力信号端は前記入力整合回路の出力信号端に接続され、前記駆動段階増幅回路の出力信号端は前記段階間整合回路の入力信号端に接続され、
前記段階間整合回路の出力信号端は、前記第1電力増幅回路の入力信号端及び前記第2電力増幅回路の入力信号端に別々に接続される、
請求項に記載の電力増幅器。
【請求項11】
前記駆動段階増幅回路は、第4MOS電界効果トランジスタ、第5MOS電界効果トランジスタ、第6MOS電界効果トランジスタ、第7MOS電界効果トランジスタ、第3抵抗、第4抵抗、第6キャパシタ、及び第7キャパシタを有し、
前記第4MOS電界効果トランジスタのゲート電極は電源電圧端に接続され、前記第4MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記駆動段階増幅回路の第1出力信号端に接続され、前記第4MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記第5MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記第6キャパシタの第1端に接続され、前記第5MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、前記第6キャパシタの第2端は前記駆動段階増幅回路の第1入力信号端に接続され、
前記第6MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記電源電圧端に接続され、前記第6MOS電界効果トランジスタのドレイン電極は前記駆動段階増幅回路の第2出力信号端に接続され、前記第6MOS電界効果トランジスタのソース電極は前記第7MOS電界効果トランジスタのドレイン電極に接続され、
前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極は前記第7キャパシタの第1端に接続され、前記第7MOS電界効果トランジスタのソース電極は接地され、前記第7キャパシタの第2端は前記駆動段階増幅回路の第2入力信号端に接続され、
前記第3抵抗は、前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極と第5バイアス電圧端との間に接続され、前記第4抵抗は、前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極と前記第5バイアス電圧端との間に接続される、
請求項10に記載の電力増幅器。
【請求項12】
前記駆動段階増幅回路は、第8キャパシタ及び第9キャパシタを更に有し、
前記第8キャパシタは、前記第4MOS電界効果トランジスタのソース電極と前記第7MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続され、
前記第9キャパシタは、前記第6MOS電界効果トランジスタのソース電極と前記第5MOS電界効果トランジスタのゲート電極との間に接続される、
請求項11に記載の電力増幅器。
【請求項13】
回路ボードと、該回路ボードに電気的に接続される、請求項に記載の電力増幅器とを有する送信器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
例えば、依然として図8を参照して、出力整合回路3は、第3変圧器T3、第11キャパシタC11、及び第6抵抗R6を含んでもよい。第6抵抗R6及び第11キャパシタC11は両方とも、第3変圧器T3の2つの出力端の間に接続され、第3変圧器T3の第1入力端及び第2入力端は夫々、出力整合回路3の第1入力信号端In3a及び第2入力信号端In3bであり、第3変圧器Tの第3入力端は電源電圧端VDDに接続され、第6抵抗R6の一端は出力整合回路3の出力信号端Out3に接続され、第6抵抗R6の他端は接地される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】