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特表2024-537797低下した免疫原性を有する第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】低下した免疫原性を有する第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20241008BHJP
   C07K 14/755 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241008BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/755
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K48/00
A61K31/7088
A61P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519554
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022077228
(87)【国際公開番号】W WO2023056331
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,575
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】エクタ・セス・チャブラ
(72)【発明者】
【氏名】シユアン・タン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA53
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA66
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、コドン最適化第VIII因子配列、コドン最適化第VIII因子配列を含むベクター及び宿主細胞、コドン最適化第VIII因子配列のよりコードされるポリペプチド、並びにそのようなポリペプチドを生成する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号11と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号11と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
配列番号11のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号11の58~4815位のヌクレオチドと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号11の58~4815位のヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項8】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号14と少なくとも90%の配列同一性である、請求項7に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号14と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項7に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
配列番号14のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項11】
第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、前記遺伝子カセットが、配列番号16と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項12】
前記遺伝子カセットが、配列番号16と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
前記遺伝子カセットが、配列番号16と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、前記遺伝子カセットが、配列番号16のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項15】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって:
i)配列番号11又は配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列と;
ii)前記ヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーターと;
iii)転写終結配列と、
を含む単離された核酸分子。
【請求項16】
前記プロモーターが肝臓特異的プロモーターである、請求項15に記載の単離された核酸分子。
【請求項17】
前記プロモーターがマウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである、請求項15に記載の単離された核酸分子。
【請求項18】
前記プロモーターがmTTR482プロモーターである、請求項15に記載の単離された核酸分子。
【請求項19】
前記プロモーターが配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の単離された核酸分子。
【請求項20】
エンハンサーエレメントを更に含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項21】
前記エンハンサーエレメントがmTTRエンハンサーエレメントである、請求項20に記載の単離された核酸分子。
【請求項22】
前記mTTRエンハンサーエレメントが配列番号8のヌクレオチド配列を含む、請求項20又は21に記載の単離された核酸分子。
【請求項23】
合成エンハンサー配列を更に含む、請求項15~22のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項24】
前記合成エンハンサー配列が配列番号7のヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
ポリプリントラック(PPT)を更に含む、請求項15~24のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項26】
前記PPT配列が配列番号6のヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の単離された核酸分子。
【請求項27】
ヒトCMVプロモーター領域配列を更に含む、請求項15~26のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項28】
前記CMVプロモーター領域配列が配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載の単離された核酸分子。
【請求項29】
5’長末端反復配列(LTR)配列を更に含む、請求項15~28のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項30】
3’LTR配列を更に含む、請求項15~29のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項31】
ステムループ4配列を更に含む、請求項15~30のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項32】
前記ステムループ4配列が、配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項31に記載の単離された核酸分子。
【請求項33】
SL123のプライマー結合部位を更に含む、請求項15~32のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項34】
前記SL123のプライマー結合部位が配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項33に記載の単離された核酸分子。
【請求項35】
RU5領域のプライマー結合部位を更に含む、請求項15~34のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項36】
前記RU5領域配列が配列番号2のヌクレオチド配列を含む、請求項35に記載の単離された核酸分子。
【請求項37】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、前記遺伝子カセットが、5’から3’へ:
(a)5’長末端反復配列(LTR)配列;
(b)配列番号9のヌクレオチド配列を含む肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター;
(c)配列番号11又は配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列、及び
(d)3’LTR配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項39】
請求項1~37のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項38に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項40】
請求項39に記載の宿主細胞により産生されるポリペプチド。
【請求項41】
FVIII活性を有するポリペプチドの産生方法であって:FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、請求項39に記載の宿主細胞を培養することと、前記FVIII活性を有するポリペプチドを回収することと、を含む方法。
【請求項42】
請求項1~37のいずれか一項に記載の核酸分子を含む医薬組成物。
【請求項43】
請求項38に記載のベクターと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項44】
請求項1~37のいずれか一項に記載の核酸分子と、それを必要とする対象に前記核酸分子を投与するための使用説明書とを含むキット。
【請求項45】
対象におけるFVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法であって、配列番号11、配列番号14、又は配列番号16と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与することを含む方法。
【請求項46】
対象における出血障害を治療する方法であって、配列番号11、配列番号14、又は配列番号16と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与することを含む方法。
【請求項47】
対象における出血障害を治療する方法であって、請求項42又は43に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項48】
前記出血障害が血友病Aである、請求項46又は47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第63/250,575号(2021年9月30日出願)に対して優先権を主張し、その開示は本発明において参照によりその全体が含まれる。
【0002】
電子的に提出した配列表の参照
xmlファイルで電子的に提出した配列表(名称:732714 SA9-486PC.xml;サイズ:56,424バイト;作成日:2022年9月27日)の内容は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
低コストの組み換えFVIIIタンパク質を患者に提供するにあたって、主な障害は、商業生産コストの高さである。FVIIIタンパク質は、異種発現系では十分に発現せず、その発現は、同様のサイズのタンパク質の2分の1~3分の1である。(Lynch et al.,Hum.Gene.Ther.;4:259-72(1993)。FVIIIの発現の低さは部分的には、FVIIIコード配列に、FVIIIの発現を阻害するシス作動性エレメント(転写サイレンサーエレメント(Hoeben et al.,Blood 85:2447-2454(1995))、マトリックス付着様配列(MAR)(Fallux et al.,Mol.Cell.Biol.16:4264-4272(1996))、及び転写伸長阻害エレメント(Koeberl et al.,Hum.Gene.Ther.;6:469-479(1995))が存在することに起因する。したがって、当該技術分野では、異種系で効率的に発現するFVIII配列に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
FVIII活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子が開示される。
【0005】
特定の態様では、本明細書において、配列番号11と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、ヌクレオチド配列が、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が開示される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。また、本明細書において、配列番号11のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、ヌクレオチド配列が、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が開示される。
【0006】
また、本明細書において、配列番号11の58~4815位のヌクレオチドと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が開示される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列が、配列番号11の58~4815位のヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【0007】
特定の態様では、本明細書において、配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、ヌクレオチド配列が、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が開示される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号14と少なくとも90%の配列同一性である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号14と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。また、本明細書において、配列番号14のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、ヌクレオチド配列が、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が開示される。
【0008】
別の態様では、本明細書において、第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、遺伝子カセットが、配列番号16と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が開示される。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。また、本明細書において、第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、遺伝子カセットが、配列番号16のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が開示される。
【0009】
別の態様では、本明細書において、第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって:配列番号11又は配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列と、ヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーターと、転写終結配列と、を含む単離された核酸分子が開示される。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロモーターは肝臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターはマウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターはmTTR482プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは配列番号9のヌクレオチド配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子はエンハンサーエレメントを更に含む。いくつかの実施形態では、エンハンサーエレメントはmTTRエンハンサーエレメントである。いくつかの実施形態では、mTTRエンハンサーエレメントは配列番号8のヌクレオチド配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は合成エンハンサー配列を更に含む。いくつかの実施形態では、合成エンハンサー配列は配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、核酸分子はポリプリントラック(PPT)を更に含む。いくつかの実施形態では、PPT配列は配列番号6のヌクレオチド配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、核酸分子はヒトCMVプロモーター領域配列を更に含む。いくつかの実施形態では、CMVプロモーター領域配列は配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、核酸分子は5’長末端反復配列(LTR)配列を更に含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は3’LTR配列を更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、核酸分子はステムループ4配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ステムループ4配列は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、核酸分子はSL123のプライマー結合部位を更に含む。いくつかの実施形態では、SL123のプライマー結合部位は配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、核酸分子はRU5領域のプライマー結合部位を更に含む。いくつかの実施形態では、RU5領域配列は配列番号2のヌクレオチド配列を含む。
【0019】
別の態様では、本明細書において、第VIII因子ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離された核酸分子であって、遺伝子カセットが、5’から3’へ:5’長末端反復配列(LTR)配列、配列番号9のヌクレオチド配列を含む肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター、配列番号11又は配列番号14と少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列、及び3’LTR配列を含む単離された核酸分子が開示される。
【0020】
別の態様では、本明細書において、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターが開示される。
【0021】
別の態様では、本明細書において、本明細書に開示される核酸分子を含む宿主細胞が開示される。また、本明細書において、宿主細胞により産生されるポリペプチドが開示される。
【0022】
別の態様では、本明細書において、FVIII活性を有するポリペプチドを生成する方法であって:FVIII活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、本明細書に開示される宿主細胞を培養することと、FVIII活性を有するポリペプチドを回収することと、を含む方法が開示される。
【0023】
別の態様では、本明細書において、本明細書に開示される核酸分子を含む医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。
【0024】
別の態様では、本明細書に開示される核酸分子と、それを必要とする対象に核酸分子を投与するための使用説明書とを含むキットも、本明細書において開示される。
【0025】
別の態様では、本明細書において、対象におけるFVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法であって、配列番号11、配列番号14、又は配列番号16と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与することを含む方法が開示される。
【0026】
別の態様では、本明細書において、対象における出血障害を治療する方法であって、配列番号11、配列番号14、又は配列番号16と少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与することを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、対象における出血障害を治療する方法は、本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、出血障害は血友病Aである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】coBDDFVIII6-XTEN-3aa発現プラスミドのグラフ表示である。
図2A】約25週間のFVIII血漿活性(図2A)及びFVIII血漿抗原レベル(図2B)による測定で、coBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現するレンチウイルスを側頭静脈注射によって、1.5×10、3.0×10、6.0×10、又は1.3×1010TU/kgの用量で投与された新生仔(2日齢)のHemAマウスにおけるピーク循環FVIIIレベルのグラフ表示である。
図2B】約25週間のFVIII血漿活性(図2A)及びFVIII血漿抗原レベル(図2B)による測定で、coBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現するレンチウイルスを側頭静脈注射によって、1.5×10、3.0×10、6.0×10、又は1.3×1010TU/kgの用量で投与された新生仔(2日齢)のHemAマウスにおけるピーク循環FVIIIレベルのグラフ表示である。
図3】約25週間のFVIII血漿活性による測定で、coBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現するレンチウイルスを尾静脈注射によって、1.3×1010又は3.7×1010TU/kgの用量で投与された成体(16週齢)HemAマウスにおけるピーク循環FVIIIレベルのグラフ表示である。
図4A-4B】図4A~4Bは、coBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現するレンチウイルスを3×10TU/kg又は6×10TU/kgで投与されたオスのブタオザルにおけるヒトFVIII活性のピーク血漿レベル(図4A)及びヒトFVIII抗原レベル(図4B)のグラフ表示である。FVIII血漿活性(図4A)及びFVIII血漿抗原レベル(図4B)は、複数の時点にわたる平均として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子、最適化核酸分子を含むベクター及び宿主細胞、最適化核酸分子によってコードされるポリペプチド、並びにそのようなポリペプチドを生成する方法に関する。本開示は、また、血友病などの出血障害を治療する方法であって、対象に、最適化FVIII核酸配列、その最適化核酸配列を含むベクター、又はそれによってコードされるポリペプチドを投与することを含む方法に関する。
【0029】
本開示は、宿主細胞における発現が増加し、組み換えFVIIIを生成する方法において、FVIIIタンパク質の収量を改善させ、遺伝子療法で使用したときに、より優れた治療有効性が得られる可能性のある最適化FVIII配列を提供することによって、当該技術分野の重要なニーズを満たすものである。特定の実施形態では、本開示は、配列番号11のヌクレオチド配列に対して配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子について記載している。特定の実施形態では、本開示は、配列番号14のヌクレオチド配列に対して配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子について記載している。特定の実施形態では、本開示は、配列番号16のヌクレオチド配列に対して配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子について記載している。
【0030】
本明細書と特許請求の範囲が明確に理解されるように、以下の定義を下に示す。
【0031】
定義
「a」又は「an」という用語の付されたものは、そのものが1つ以上であることを指すことに留意されたい。例えば、「a」の付されたヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すことが分かる。すなわち、「a」(又は「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同義的に使用できる。
【0032】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、おおまかには、前後又はその領域を意味するものとして使用する。「約」という用語を数値範囲と併せて使用する場合、その用語は、示されている数値の前後まで、その境界を広げることによって、その範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、示されている値のプラスマイナス(上下)10パーセントの幅で、数値を修正する目的で使用する。
【0033】
「単離された」という用語は、本開示の目的においては、生物学的物質(細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はその断片、バリアント若しくは誘導体)の元の環境(その物質が天然において存在する環境)から取り出した生物学的物質を指す。例えば、天然の状態で、植物又は動物に存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、天然においてそのポリヌクレオチドが存在する隣接の核酸から分離した同じポリヌクレオチドは、「単離された」ものとみなす。特定の精製レベルが求められるわけではない。任意の好適な技法によって、分離、分画、又は部分的若しくは実質的に精製した天然のポリペプチド又は組み換えポリペプチドと同様に、宿主細胞で発現させた組み換え作製ポリペプチド及びタンパク質は、本開示の目的において、単離されたものとみなす。
【0034】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、同義的に用いられており、一本鎖形態又は二重らせんのいずれかである、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、若しくはシチジン、「RNA分子」)、若しくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン又はデオキシシチジン、「DNA分子」)、又はそれらの任意のホスホエステルアナログ(ホスホロチオエート及びチオエステルなど)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA及びRNA-RNAも可能である。核酸分子、特にはDNA分子又はRNA分子という用語は、その分子の一次構造と二次構造のみを指し、その分子をいずれかの特定の三次形態に限定するものではない。したがって、この用語には、とりわけ、直鎖状又は環状DNA分子(例えば制限断片)、プラスミド、超らせんDNA及び染色体に見られる二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる際には、本明細書では、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿って、5’から3’末端方向のみに配列を示す通常の慣例に従って、配列を説明することができる。「組み換えDNA分子」は、分子生物学的な操作を加えたDNA分子である。DNAとしては、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA及び半合成DNAが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されているような核酸を1つ以上含む。
【0035】
本明細書で使用する場合、「コード領域」又は「コード配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチド部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)は典型的には、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部とみなすことができる。ただし、いずれのフランキング配列(例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなど)も、コード領域の一部ではない。コード領域の境界は典型的には、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする、5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする、3’末端の翻訳終止コドンとによって定められる。2つ以上のコード領域が、1つのポリヌクレオチド構築物、例えば1つのベクター、又は別々のポリヌクレオチド構築物、例えば別々の(異なる)ベクターに存在できる。すなわち、1つのベクターは、1つのコード領域のみを含むことも、又は2つ以上のコード領域を含むこともできることになる。
【0036】
哺乳動物細胞によって分泌される特定のタンパク質は、成長しているタンパク質鎖が粗面小胞体を経て輸送され始めると、成熟タンパク質から切断される分泌シグナルペプチドと関連付けられている。シグナルペプチドは概して、ポリペプチドのN末端に融合しており、完全なポリペプチド、すなわち「完全長」ポリペプチドから切断されて、そのポリペプチドの分泌形態、すなわち「成熟」形態を作ることが、当業者に知られている。特定の実施形態では、ネイティブシグナルペプチド、又はポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持している、その配列の機能的誘導体が、そのポリペプチドと作動可能に関連付けられている。或いは、異種の哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)若しくはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、又はそれらの機能的誘導体を用いることができる。
【0037】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側にあるヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関するものである。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流にある。
【0038】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側のヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、上流ヌクレオチド配列は、コード領域又は転写開始点の5’側にある配列に関するものである。例えば、大半のプロモーターは、転写開始部位の上流にある。
【0039】
本明細書で使用する場合、「遺伝子カセット」、「発現カセット」、及び「遺伝子発現カセット」という用語は、同義的に用いられており、目的のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、適切な宿主細胞における特定のポリヌクレオチド配列の発現を方向づけることができるDNA配列を指す。遺伝子カセットは、コード領域の上流(5’非コード配列)、コード領域内、又はコード領域の下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を包含し得、これは関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、又は翻訳に影響を及ぼす。コード領域が真核生物細胞における発現を意図される場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は、通常はコード配列に対して3’に位置する。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは異種ポリヌクレオチド配列を含む。産物、例えば、miRNA又は遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質などのポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つ以上のコード領域と作動可能に関連付けられたプロモーター及び/又はその他の発現(例えば、転写又は翻訳)制御配列を含み得る。作動可能な関連付けにおいては、調節領域の影響又は制御下で、遺伝子産物、例えばポリペプチドの発現が行われるような形で、遺伝子産物のコード領域が、1つ以上の調節領域と関連付けられている。例えば、プロモーター機能が誘導されると、コード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAが転写される場合、また、プロモーターとコード領域との連携の性質によって、プロモーターが遺伝子産物の発現を誘導する能力が干渉されないか、又はDNA鋳型が転写される能力が干渉されない場合、コード領域とプロモーターは、「作動可能に関連付けられている」。プロモーター以外のその他の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルをコード領域と作動可能に関連付けて、遺伝子産物の発現を誘導することもできる。
【0040】
「発現制御配列」とは、宿主細胞においてコード配列の発現をもたらす調節ヌクレオチド配列(プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)を指す。発現制御配列は、一般には、それが作動可能に連結されているコード核酸の効率的な転写及び翻訳を促進する任意の制御性ヌクレオチド配列を包含する。発現制御配列の非限定的な例としては、プロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、又はステムループ構造が挙げられる。様々な発現制御配列が当業者に公知である。この領域としては、脊椎動物細胞において機能する発現制御配列などが挙げられるが、このような発現制御領域は、サイトメガロウイルス由来(イントロンAと連動する前初期プロモーター)、シミアンウイルス40由来(初期プロモーター)及びレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメントなどであるが、これらに限定されない。他の発現制御配列としては、脊椎動物遺伝子(アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビンなど)に由来するもの、並びに真核細胞において遺伝子の発現を制御できるその他の配列が挙げられる。更なる好適な発現制御配列としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、並びにリンフォカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロン又はインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。他の発現制御配列としては、イントロン配列、転写後調節エレメント、及びポリアデニル化シグナルが挙げられる。更なる例示的な発現制御配列は、本開示の他所で考察される。
【0041】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。このエレメントとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び翻訳終止コドン、並びにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、又はIRES)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「発現」という用語は、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドから遺伝子産物、例えばRNA又はポリペプチドを産生するプロセスを指す。発現としては、ポリヌクレオチドをメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、又は任意のその他のRNA産物に転写することと、mRNAをポリペプチドに翻訳することが挙げられるが、これらに限定されない。発現により、「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、又は転写産物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載されている遺伝子産物としては更に、転写後修飾、例えばポリアデニル化若しくはスプライシングが行われた核酸、又は翻訳後修飾、例えばメチル化、糖鎖付加、脂質付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、若しくはタンパク質切断が行われたポリペプチドが挙げられる。「収量」という用語は、本明細書で使用する場合、遺伝子の発現によって産生されるポリペプチドの量を指す。
【0043】
「ベクター」とは、核酸を宿主細胞にクローニング及び/又は移入するためのいずれかのビヒクルを指す。ベクターは、別の核酸セグメントを結合して、結合したセグメントを複製させるようにできるレプリコンであり得る。「レプリコン」とは、インビボで自己複製ユニットとして機能する、すなわち、自己制御下で複製できるいずれかの遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語には、インビトロ、エクスビボ又はインビボで核酸を細胞に導入するためのウイルスビヒクルと非ウイルスビヒクルの両方が含まれる。当該技術分野では、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス又は改変細菌ウイルスを含め、多くのベクターが知られているとともに、使われている。好適なベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、相補的な付着末端を有する選択したベクターに、適切なポリヌクレオチド断片をライゲーションすることによって行うことができる。
【0044】
ベクターを操作して、そのベクターが組み込まれた細胞の選択又は同定を行える選択可能なマーカー又はレポーターをコードするようにできる。選択可能なマーカー又はレポーターの発現により、ベクターに含まれる他のコード領域を組み込み及び発現する宿主細胞の同定及び/又は選択が可能になる。当該技術分野において公知であり、使用されている選択可能なマーカー遺伝子の例としては:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を付与する遺伝子と、表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。当該技術分野において公知であり、使用されているレポーターの例としては:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカーは、レポーターであるとみなすこともできる。
【0045】
「選択可能なマーカー」という用語は、そのマーカー遺伝子の作用、すなわち、抗生物質耐性、除草剤耐性に基づき選択できる同定因子、通常は抗生物質耐性若しくは薬品耐性遺伝子、発色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどを指し、その作用を用いて、目的の核酸の継承を追跡したり、及び/又は目的の核酸を受け継いだ細胞若しくは生物を同定したりできる。当該技術分野において公知であり、使用されている選択可能なマーカー遺伝子の例としては:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を付与する遺伝子と、表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
【0046】
「レポーター遺伝子」という用語は、そのレポーター遺伝子の作用に基づき同定できる同定因子をコードする核酸を指し、その作用を用いて、目的の核酸の継承を追跡したり、目的の核酸を受け継いだ細胞若しくは生物を同定したり、及び/又は遺伝子発現の誘導若しくは転写を測定したりする。当該技術分野において公知であり、使用されているレポーター遺伝子の例としては:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカー遺伝子は、レポーター遺伝子とみなすこともできる。
【0047】
「プロモーター」及び「プロモーター配列」は、同義的に使用されており、コード配列又は機能性RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’側にある。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来し得る、又は自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成され得る、又は更には合成DNAセグメントを含み得る。異なるプロモーターは、異なる組織若しくは細胞種においてか、異なる発生期においてか、又は異なる環境条件若しくは生理的条件に応答するかして、遺伝子の発現を誘導できることが当業者には理解される。大半の細胞種において、大半の時点に、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「構成的プロモーター」を指す。特定の細胞種において遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「細胞特異的プロモーター」又は「組織特異的プロモーター」を指す。特定の発生期又は細胞分化期に遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「発生特異的プロモーター」又は「細胞分化特異的プロモーター」を指す。プロモーターを誘導する作用剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などに細胞が曝露又は処置されると誘導されて、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「誘導性プロモーター」又は「調節性プロモーター」を指す。大半の場合、調節配列の正確な境界は、完全には定められていないので、長さの異なるDNA断片が、同じプロモーター活性を有する場合があることが更に認識されている。更なる例示的なプロモーターが、本開示の別の箇所で議論されている。
【0048】
プロモーター配列は典型的には、その3’末端で転写開始部位と結合し、バックグラウンドを上回る検出可能なレベルで、転写の開始に必要な最小限の数の塩基又はエレメントを含むように、上流(5’方向)に延びている。プロモーター配列内には、転写開始部位(利便的なことに、例えば、ヌクレアーゼS1でマッピングすることによって定められる)、並びにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られることになる。
【0049】
「プラスミド」という用語は、その細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多いとともに、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、任意の供給源に由来する自己複製配列、ゲノム組み込み型配列、ファージ又はヌクレオチド配列、直鎖状、環状又は超らせんの一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAであり得、そのエレメントにおいては、多くのヌクレオチド配列を結合又は組み換えて、適切な3’非翻訳配列とともに、選択した遺伝子産物のためのプロモーター断片とDNA配列を細胞に導入できる独自の構築体になっている。
【0050】
使用できる真核生物ウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、及びバイオポリマーが挙げられる。
【0051】
「クローニングベクター」とは、プラスミド、ファージ又はコスミドなど、順次複製される、ある単位長の核酸であるとともに、複製起点を含む「レプリコン」を指し、そのレプリコンに別の核酸セグメントを結合して、結合したセグメントを複製させるようにできる。特定のクローニングベクターは、一方の細胞種、例えば細菌細胞で複製できるとともに、別の細胞種、例えば真核細胞で発現できる。クローニングベクターは典型的には、そのベクター及び/又は目的の核酸配列の挿入用の1つ以上のマルチクローニング部位を含む細胞の選択に使用できる配列を1つ以上含む。
【0052】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞に挿入後に、挿入核酸配列の発現を可能にするように設計したビヒクルを指す。挿入された核酸配列は、上記のような調節領域と作動可能に関連付けた状態で配置する。
【0053】
ベクターは、当該技術分野において周知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、トランスダクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、又はDNAベクタートランスポーターによって、宿主細胞に導入する。
【0054】
「培養する」、「培養すること」、及び「培養」とは、本明細書で使用する場合、細胞の成長若しくは分裂を可能にするか、又は細胞を生きた状態に保つインビトロ条件下で、細胞をインキュベートすることを意味する。「培養細胞」とは、本明細書で使用する場合、インビトロで増殖されている細胞を意味する。
【0055】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」並びに複数の「ポリペプチド」を含むように意図されており、モノマー(アミノ酸)がアミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に結合されたもので構成された分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸のいずれかの1本の鎖又は複数の鎖を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」又は2つ以上のアミノ酸の1本の鎖又は複数の鎖を指す目的で使用するいずれかの他の用語が、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、上記の用語のいずれかの代わりに、又は上記の用語のいずれかと同義的に使用できる。「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの発現後修飾(糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断又は非天然型アミノ酸による修飾が挙げられるが、これらに限定されない)の産物も指すように意図されている。ポリペプチドは、天然の生物源に由来することも、組み換え技術によって作製することもできるが、必ずしも、特定の核酸配列から翻訳されたものである必要はない。ポリペプチドは、化学合成によるものを含む任意の方法で生成できる。
【0056】
「アミノ酸」という用語には、アラニン(Ala又はA);アルギニン(Arg又はR);アスパラギン(Asn又はN);アスパラギン酸(Asp又はD);システイン(Cys又はC);グルタミン(Gln又はQ);グルタミン酸(Glu又はE);グリシン(Gly又はG);ヒスチジン(His又はH);イソロイシン(Ile又はI):ロイシン(Leu又はL);リシン(Lys又はK);メチオニン(Met又はM);フェニルアラニン(Phe又はF);プロリン(Pro又はP);セリン(Ser又はS);トレオニン(Thr又はT);トリプトファン(Trp又はW);チロシン(Tyr又はY)、及びバリン(Val又はV)が含まれる。従来のアミノ酸以外のアミノ酸も、本開示の範囲内であり、そのようなアミノ酸としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllman et al.Meth.Enzym.202:301-336(1991)に記載されているようなその他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。このような非天然型アミノ酸残基を生成するには、Noren et al.Science 244:182(1989)及びEllman et al.,supraの文献の手順を用いることができる。簡潔には、これらの手順は、非天然型アミノ酸残基を有するサプレッサーtRNAを化学的に活性化してから、RNAのインビトロ転写及び翻訳を行うことが伴う。従来のアミノ酸以外のアミノ酸の導入は、当該技術分野で知られているペプチド化学を用いて行うこともできる。本明細書で使用する場合、「極性アミノ酸」という用語には、実効電荷が0であるが、その側鎖のそれぞれ異なる部分における部分電荷が0ではないアミノ酸(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用及び静電相互作用に関与し得る。本明細書で使用する場合、「荷電アミノ酸」という用語には、その側鎖の実効電荷が0以外であることのできるアミノ酸(例えば、R、K、H、E、D)が含まれる。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用及び静電相互作用に関与し得る。
【0057】
本開示には、ポリペプチドの断片又はバリアント、及びこれらの任意の組み合わせも含まれる。本開示のポリペプチド結合ドメイン又は結合分子に言及する場合、「断片」又は「バリアント」という用語には、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合ドメイン若しくはFcバリアントに対するFcRnの結合親和性、FVIIIバリアントの凝固活性、又はVWF断片のFVIII結合活性)の少なくともいくつかを保持しているいずれのポリペプチドも含まれる。ポリペプチドの断片には、本明細書の別の箇所で論じられている特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片並びに欠失断片が含まれるが、天然の完全長ポリペプチド(又は成熟ポリペプチド)は含まれない。本開示のポリペプチド結合ドメイン又は結合分子のバリアントには、上記の断片と、アミノ酸の置換、欠失又は挿入によりアミノ酸配列が改変されたポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然又は非天然のものであり得る。非天然のバリアントは、当該技術分野において公知の変異誘発技法を用いて作製できる。バリアントポリペプチドは、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失又は付加を含み得る。
【0058】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、ポリペプチド内のアミノ酸が、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に置き換えられている場合には、その置換は、保存的とみなす。別の実施形態では、アミノ酸鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/又は組成の異なる構造的に類似の鎖と保存的に置き換えることができる。
【0059】
当該技術分野において公知の「同一性%」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を、それらの配列の比較によって割り出したものである。当該技術分野において、「同一性」とは、場合によっては、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の配列類縁性の程度を、その配列群間の適合性によって割り出したものも意味する。「同一性」は、既知の方法:Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,New York(1991)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない)によって容易に算出できる。同一性を割り出すための好ましい方法は、調べる配列間の適合性が最大になるように設計されている。同一性を割り出すための方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムで体系化されている。配列アラインメント及び同一性%の算出は、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイートのMegalignというプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、GCGスイートのプログラム(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990))及びDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)のような配列解析ソフトウェアを用いて行うことができる。本出願の文脈内では、別段の定めのない限り、配列解析ソフトウェアを解析に用いる場合、解析結果は、参照するプログラムの「デフォルト値」に基づくものとなることが分かるであろう。本明細書で使用する場合、「デフォルト値」とは、初期化したときに、ソフトウェアに最初に搭載されている値又はパラメーターのいずれかのセットを意味することになる。本開示の最適化BDD FVIII配列と参照配列との同一性%を割り出す目的においては、参照配列内のヌクレオチドのうち、本開示の最適化BDD FVIII配列内のヌクレオチドに対応するヌクレオチドのみを用いて、同一性%を算出する。例えば、Bドメインを含む完全長FVIIIヌクレオチド配列と、本開示の最適化Bドメイン欠失(BDD)FVIIIヌクレオチド配列を比較する場合には、A1、A2、A3、C1、及びC2ドメインを含むアラインメント部分を用いて、同一性%を算出することになる。完全長FVIII配列のうち、Bドメインをコードする部分のヌクレオチド(アラインメントにおいて大きな「ギャップ」となる)は、非適合とはみなさない。加えて、本開示の最適化BDD FVIII配列又はその特定部分(例えば、配列番号16の2183~4474位と4924~7006位のヌクレオチド)と参照配列との同一性%を割り出す際には、同一性%は、適合ヌクレオチドの数を、最適化BDD-FVIII配列の完全配列又は本明細書に示されているようなその特定部分内のヌクレオチドの総数で除することによって算出することになる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「挿入部位」という用語は、FVIIIポリペプチド、又はその断片、バリアント、又は誘導体における位置のうち、異種の部分を挿入できる位置のすぐ上流の位置を指す。「挿入部位」は、数字で定められており、その数字は、成熟ネイティブFVIII(配列番号18)内のアミノ酸のうち、挿入位置のすぐN末端側である挿入部位に対応するアミノ酸の数値である。例えば、「a3は、配列番号24の1656位のアミノ酸に対応する挿入部位に、異種の部分を含む」という語句は、その異種の部分が、配列番号24の1656位のアミノ酸と1657位のアミノ酸に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。
【0061】
「アミノ酸のすぐ下流」という語句は、本明細書で使用する場合、そのアミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、「アミノ酸のすぐ上流」という語句は、そのアミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。
【0062】
「挿入された」、「挿入されている」、「~に挿入された」という用語、又は文法的に関連する用語は、本明細書で使用する場合、組み換えFVIIIポリペプチド内の異種の部分の位置を、ネイティブ成熟ヒトFVIII(配列番号18)における類似の位置と比較したものを指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、「半減期」という用語は、インビボにおける特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与した量の半分を、その動物の循環血液及び/又はその他の組織から除去するのに必要な時間によって表すことができる。所定のポリペプチドのクリアランス曲線を時間の関数として構築すると、その曲線は通常、急速なα相と、それよりも長いβ相を有する二相性の曲線となる。α相は典型的には、投与したFcポリペプチドが血管内と血管外で平衡状態となっていることを表し、部分的には、ポリペプチドのサイズによって決まる。β相は典型的には、血管内におけるポリペプチドの異化を表す。いくつかの実施形態では、FVIII及びFVIIIを含むキメラタンパク質は、単相のものであるので、α相を有さず、1つのβ相のみを有する。したがって、特定の実施形態では、半減期という用語は、本明細書で使用する場合、β相におけるポリペプチドの半減期を指す。
【0064】
「連結された」という用語は、本明細書で使用する場合、それぞれ、第2のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に共有又は非共有結合された第1のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に、直接結合又は並置されていることができ、或いは、介在配列が、第1の配列を第2の配列に共有結合させることもできる。「連結された」という用語は、C末端又はN末端で、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列に融合されていることを意味するのみならず、第1のアミノ酸配列(又は第2のアミノ酸配列)全体が、第2のアミノ酸配列(又は第1のアミノ酸配列、それぞれ)内の任意の2つのアミノ酸に挿入されていることも含まれる。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合又はリンカーによって、第2のアミノ酸配列に連結できる。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合又はリンカーによって、第2のヌクレオチド配列に連結できる。リンカーは、ペプチド若しくはポリペプチド(ポリペプチド鎖の場合)、若しくはヌクレオチド若しくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)、又は任意の化学的部分(ポリペプチド鎖とポリヌクレオチド鎖の両方の場合)であり得る。「連結された」という用語は、ハイフン(-)によっても示されている。
【0065】
本明細書で使用する場合、「~と会合した」という用語は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間に形成された共有結合又は非共有結合を指す。一実施形態では、「~と会合した」という用語は、共有結合、非ペプチド結合又は非共有結合を意味する。この会合は、コロン、すなわち(:)によって示すことができる。別の実施形態では、この会合は、ペプチド結合以外の共有結合を意味する。例えば、アミノ酸のシステインは、第2のシステイン残基のチオール基とジスルフィド結合又は架橋を形成できるチオール基を含む。大半の天然のIgG分子では、CH1領域及びCL領域は、ジスルフィド結合によって会合しており、2本の重鎖は、Kabatの番号付けシステムを用いた場合、239位と242位(EUの番号付けシステムでは226位又は229位の位置)に対応する位置で、2つのジスルフィド結合によって会合している。共有結合の例としては、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、σ結合、π結合、δ結合、グリコシド結合、アゴスチック結合、曲がった結合、双極子結合、π逆供与結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数又は反結合が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えば、カチオン-π結合又は塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低障壁水素結合又は対称的水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械結合、ハロゲン結合、金-金相互作用(aurophilicity)、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、又は化学極性が挙げられる。
【0066】
「止血」とは、本明細書で使用する場合、出血若しくは大量出血を止めるか若しくは遅くするか、又は血管若しくは身体部分を通る血流を止めるか若しくは遅くすることを意味する。
【0067】
「止血障害」とは、本明細書で使用する場合、遺伝的に継承又は獲得した状態であって、フィブリン血餅を形成する能力の低下又はその能力がないことが原因で、自然に、又は外傷によるかのいずれかで大量出血する傾向によって特徴付けられる状態を意味する。このような障害の例としては、血友病が挙げられる。主要な3つの型は、血友病A(第VIII因子の欠損)、血友病B(第IX因子の欠損、すなわち「クリスマス病」)、及び血友病C(第XI因子の欠損、軽度な出血傾向)である。その他の止血障害としては、例えば、フォンビルブランド病、第XI因子の欠損(PTAの欠損)、第XII因子の欠損、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、又は第XIII因子の欠損又は構造的異常、ベルナールスーリエ症候群(GPIbの欠陥又は欠損)が挙げられる。VWFレセプターであるGPIbに欠陥があると、一次血餅形成(一次止血)が行われなくなり、出血傾向が高くなり、グランツマン及びネーゲリの血小板無力症(グランツマン血小板無力症)に至ることがある。肝不全(急性型及び慢性型)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分で、出血リスクが向上し得る。
【0068】
本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、又は単離された核酸分子を含むベクターは、予防的に用いることができる。本明細書で使用する場合、「予防的治療」という用語は、出血エピソードの前に、分子を投与することを指す。一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、又は手術を受けようとしている者である。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチド、又はベクターは、予防法として、手術の前又は後に投与できる。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチド、又はベクターは、急性出血エピソードを制御するために、手術中又は手術後に投与することができる。手術としては、肝移植、肝切除、歯科的処置、又は幹細胞移植が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、又はベクターは、オンデマンド治療にも用いられる。「オンデマンド治療」という用語は、出血エピソードの症状に応じて、又は出血の原因となり得る活動の前に、単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、又はベクターを投与することを指す。一態様では、オンデマンド治療は、損傷後のように、出血が開始したら、又は手術前のように、出血が予測されるときに、対象に行うことができる。別の態様では、オンデマンド治療は、コンタクトスポーツのように、出血リスクを向上させる活動の前に行うことができる。
【0070】
本明細書で使用する場合、「急性出血」という用語は、根本的な原因にかかわらず、出血エピソードを指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば第VII因子の欠損)、血小板障害、又は凝固因子に対する抗体の発生による耐性を有する者であり得る。
【0071】
「治療する」、「治療」、「治療すること」とは、本明細書で使用する場合、例えば、疾患若しくは病態の重症度の低下、疾患経過期間の短縮、疾患若しくは病態と関連する1つ以上の症状の改善、疾患若しくは病態を有する対象への有益な作用の提供(必ずしも、疾患若しくは病態を治癒させる必要はない)、又は疾患若しくは病態と関連する1つ以上の症状の予防を指す。一実施形態では、「治療すること」又は「治療」という用語は、本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、又はベクターを投与することによって、対象において、FVIIIトラフレベルを少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、又は20IU/dLに保つことを意味する。別の実施形態では、治療すること又は治療とは、FVIIIトラフレベルを約1~約20IU/dL、約2~約20IU/dL、約3~約20IU/dL、約4~約20IU/dL、約5~約20IU/dL、約6~約20IU/dL、約7~約20IU/dL、約8~約20IU/dL、約9~約20IU/dL、又は約10~約20IU/dLに保つことを意味する。疾患若しくは病態の治療、又は疾患若しくは病態を治療することには、対象において、FVIII活性を、血友病ではない対象におけるFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%に相当するレベルに保つことを含めることもできる。治療に必要な最低トラフレベルは、1つ以上の既知の方法によって測定でき、それぞれの人に合わせて調節できる(上昇又は低下させることができる)。
【0072】
「投与すること」とは、本明細書で使用する場合、薬学的に許容される経路を介して、本開示の第VIII因子をコードする薬学的に許容される核酸分子、第VIII因子ポリペプチド、又は第VIII因子をコードする核酸分子を含むベクターを対象に与えることを意味する。投与経路は、静脈内、例えば、静脈内注射及び静脈内注入であり得る。追加の投与経路としては、例えば、皮下投与、神経内投与、眼内投与、くも膜下腔内投与、筋肉内投与、経口投与、経鼻投与、及び経肺投与が挙げられる。核酸分子、ポリペプチド及びベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与できる。
【0073】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする対象」という語句には、例えば、止血を改善する目的で、本開示の核酸分子、ポリペプチド、又はベクターを投与すると、恩恵を受けると見られる対象(哺乳動物の対象など)が含まれる。一実施形態では、対象としては、血友病の個体が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、対象としては、FVIIIインヒビターが発生しているために、バイパス療法が必要な個体が挙げられるが、これらに限定されない。対象は、成人であることも、未成年(例えば12歳未満)であることもできる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「凝固因子」という用語は、天然のものであるか、又は組み換え作製した分子又はそのアナログであって、対象において出血エピソードを予防するか、又はその期間を短縮する分子若しくはそのアナログを指す。換言すると、この因子は、凝固促進活性を有する分子、すなわち、フィブリノゲンをメッシュ状の不溶性フィブリンに変換して、血液を凝固(coagulate)又は凝固(clot)させることを担う分子を意味する。「活性化可能な凝固因子」は、活性形態に変換できる不活性形態(例えば、そのチモーゲン形態)にある凝固因子である。
【0075】
「凝固活性」とは、本明細書で使用する場合、フィブリン血餅を形成させ、及び/又は大量出血若しくは出血エピソードの重症度、期間若しくは頻度を低減する生化学反応カスケードに関与する能力を意味する。
【0076】
本明細書で使用する場合、「異種」又は「外因性」という用語は、通常、所定の状況、例えば細胞又はポリペプチドでは見られないような分子を指す。例えば、外因性又は異種分子は、細胞に導入でき、例えばトランスフェクション若しくはその他の形態の遺伝子組み換えによって、その細胞を操作した後のみに存在するか、又は異種アミノ酸配列は、天然においてはその配列が見られないタンパク質に存在できる。
【0077】
本明細書で使用する場合、「異種ヌクレオチド配列」という用語は、天然においては所定のポリヌクレオチド配列で見られないヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、FVIIIの半減期を延長できるポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、FVIIIの流体力学的半径を増大させるポリペプチドをコードする。他の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、FVIIIの生物学的活性又は機能(例えば、その凝固促進活性)に有意な影響を及ぼすことなく、FVIIIの1つ以上の薬物動態特性を改善するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、FVIIIは、異種のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに、リンカーによって連結又は接合されている。
【0078】
「参照ヌクレオチド配列」とは、本明細書において本開示のヌクレオチド配列に対する比較配列として用いる場合、FVIII配列に対応する部分が最適化されていない以外は、本開示のヌクレオチド配列と本質的に同一のポリヌクレオチド配列である。
【0079】
本明細書で使用する場合、「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列に関しては、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリヌクレオチド配列の特性が増強されるように変異させたポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態では、最適化は、転写レベルを高めたり、翻訳レベルを高めたり、定常状態のmRNAレベルを高めたり、調節タンパク質(基本転写因子など)の結合を増大若しくは低減したり、スプライシングを増大若しくは低減したり、又はポリヌクレオチド配列によって産生されるポリペプチドの収量を増加させたりするために行う。ポリヌクレオチド配列を最適化するために、ポリヌクレオチド配列に加えることのできる変更の例としては、コドンの最適化、G/C含有率の最適化、反復配列の除去、ATリッチエレメントの除去、クリプティックスプライス部位の除去、転写又は翻訳を抑制するシス作動性エレメントの除去、ポリT配列又はポリA配列の付加又は除去、転写を増強する転写開始部位周囲配列(Kozakコンセンサス配列など)の付加、ステムループ構造を形成し得る配列の除去、不安定化配列の除去、CpGモチーフの除去、及びこれらを2つ以上組み合わせたものが挙げられる。
【0080】
ポリヌクレオチド配列
本開示の特定の態様は、例えば、治療用タンパク質及び/又はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含む核酸分子に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、治療用タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は凝固因子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は少なくとも1つの非コード領域を更に含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの非コード領域はプロモーター配列、イントロン、発現制御配列、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列はコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターよって駆動されるコドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、その全体が参照により組み込まれる国際出願第PCT/US2017/015879号明細書で開示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、国際出願第PCT/US2017/015879号明細書に記載される遺伝子カセット「hFVIIIco6XTEN」である。いくつかの実施形態では、参照ヌクレオチド配列は、国際出願第PCT/US2017/015879号明細書に開示されるhFVIIIco6XTEN配列に相当する。
【0082】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、Bドメイン欠失(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子分子をコードするコドン最適化cDNAを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットはcoBDDFVIII6-3aaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットはXTENポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、144のアミノ酸XTENポリペプチドと融合したBドメイン欠失(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードするコドン最適化cDNAを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号11として示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号11と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットはcoBDDFVIII6-XTEN-3aaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16として示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化核酸分子に関する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、完全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全体又は一部が欠失している。特定の一実施形態では、核酸分子は、配列番号12又はその断片と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、シグナルペプチド又はその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、シグナルペプチドが欠損しているFVIIIポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号13アミノ酸配列を含む。
【0087】
一実施形態では、遺伝子カセットは1本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは2本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは終端閉口(closed-end)2本鎖核酸(ceDNA)である。
【0088】
「FVIII活性を有するポリペプチド」とは、本明細書で使用する場合、別段の定めのない限り、凝固の際のその正常な役割における機能性FVIIIポリペプチドを意味する。FVIII活性を有するポリペプチドという用語には、凝固経路における完全長野生型第VIII因子の機能を保持しているその機能性断片、バリアント、アナログ、又は誘導体が含まれる。「FVIII活性を有するポリペプチド」は、FVIIIタンパク質、FVIIIポリペプチド、又はFVIIIと同義的に用いられている。FVIIIの機能の例としては、凝固を活性化させる能力、第IX因子の補因子として作用する能力、又はCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とのテナーゼ複合体を形成させてから、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、2本のポリペプチド鎖を含み、その第1の鎖は、FVIII重鎖を有し、第2の鎖は、FVIII軽鎖を有する。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、一本鎖FVIIIである。一本鎖FVIIIは、成熟ヒトFVIII配列(配列番号19)に対応する1645位及び/又は1648位のアミノ酸残基に、1つ以上の変異又は置換を含むことができる。国際出願第PCT/US2012/045784号明細書(参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。FVIIIタンパク質は、ヒトFVIIIタンパク質、ブタFVIIIタンパク質、イヌFVIIIタンパク質、ラットFVIIIタンパク質、又はマウスFVIIIタンパク質であり得る。加えて、ヒトのFVIIIとその他の種のFVIIIとの比較により、機能するために必要な可能性の高い保存残基が同定されている。例えば、Cameron et al.(1998)Thromb.Haemost.79:317-22;及び米国特許第6,251,632号明細書を参照されたい。
【0089】
ポリペプチドのFVIII活性を評価するための多数の検査が利用可能である:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEM(登録商標)アッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(INRの決定にも使用される)、フィブリノゲン試験(クラウス法によることが多い)、血小板数、血小板機能試験(PFA-100によることが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿を正常な血漿と混合した場合に異常が是正されるか否か)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-ダイマー、遺伝子検査(例えば、V因子ライデン、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィ(TEG又はSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、又はオイグロブリン溶解時間(ELT)。
【0090】
aPTT試験は、「内因性」凝固経路(接触活性化経路とも呼ばれる)及び一般的な凝固経路の効力を測定する性能指数である。この試験は、市販されている組換え凝固因子、例えば、FVIII又はFIXの凝固活性を測定するために一般的に使用される。これは外因性経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と併用して使用される。
【0091】
ROTEM(登録商標)分析は、止血の全体的な動態:凝固時間、クロット形成、血塊の安定性、及び溶解に関する情報を提供する。トロンボエラストメトリーの様々なパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、又はこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血の全景を提供することができる。
【0092】
FVIIIの「Bドメイン」は、本明細書で使用する場合、当該技術分野において公知のBドメインであって、内部アミノ酸配列同一性とトロンビンによるタンパク質切断部位によって定められるBドメイン、例えば、完全長ヒトFVIII(配列番号20)のSer741~Arg1648の残基と同じである。その他のヒトFVIIIドメインは、以下のアミノ酸残基:A1がAla1~Arg372のアミノ酸残基、A2が、Ser373~Arg740のアミノ酸残基、A3がSer1690~Ile2032のアミノ酸残基、C1がArg2033~Asn2172のアミノ酸残基、C2が、Ser2173~Tyr2332のアミノ酸残基によって定められている。A3-C1-C2の配列には、Ser1690~Tyr2332の残基が含まれる。残りの配列(Glu1649~Arg1689の残基)は通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと称されている。ブタFVIII、マウスFVIII及びイヌFVIIIについても、Bドメインを含む全てのドメインの境界線の位置が、当該技術分野において公知である。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)という組み換えBDD FVIII(Wyeth Pharmaceuticals,Inc.)である。
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号明細書、同第6,346,513号明細書、同第7,041,635号明細書、同第5,789,203号明細書、同第6,060,447号明細書、同第5,595,886号明細書、同第6,228,620号明細書、同第5,972,885号明細書、同第6,048,720号明細書、同第5,543,502号明細書、同第5,610,278号明細書、同第5,171,844号明細書、同第5,112,950号明細書、同第4,868,112号明細書、及び同第6,458,563号明細書(その各々が、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている完全欠失又は部分欠失を有し得る。Bドメイン欠失FVIIIの他の例は、Hoeben R.C.,et al.(1990)J.Biol.Chem.265(13):7318-7323;Meulien et al.(1988),Protein Eng.2(4):301-6;Toole et al.(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83,5939-5942;Eaton,et al.(1986)Biochemistry 25:8343-8347;(Sarver,et al.(1987)DNA6:553-564;欧州特許出願公開第295597号明細書;及び国際公開第91/09122号パンフレット、同第88/00831号パンフレット、及び同第87/04187号パンフレット(その各々が、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。上記の各欠失は、いずれのFVIII配列においても行うこともできる。
【0093】
コドン最適化
一実施形態では、本開示は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、核酸配列がコドン最適化されている単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする配列は、ヒトでの発現用に、コドン最適化されている。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする配列は、マウスでの発現用に、コドン最適化されている。
【0094】
「コドン最適化」という用語は、各種宿主のトランスフォーメーション用の核酸分子の遺伝子又はコード領域に関する場合、そのDNAによってコードされるポリペプチドを改変せずに、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するように、核酸分子の遺伝子又はコード領域のコドンを改変することを指す。このような最適化としては、少なくとも1つ、2つ以上、又は有意な数のコドンを、宿主生物の遺伝子での使用頻度がより高い1つ以上のコドンに置き換えることが挙げられる。
【0095】
任意のポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列における偏差によって、その遺伝子のコード配列の変動が可能になる。各コドンは、3つのヌクレオチドからなり、DNAを構成するヌクレオチドは、4つの特定の塩基に制限されているので、考え得るヌクレオチドの組み合わせは64個あり、そのうちの61個が、アミノ酸をコードする(残りの3つのコドンは、翻訳を停止するシグナルをコードする)。結果として、多くのアミノ酸に、2つ以上のコドンが対応している。例えば、アミノ酸のアラニンとプロリンは、4つのトリプレットによって、セリン及びアルギニンは、6つのトリプレットによってコードされるが、トリプトファン及びメチオニンは、1つのトリプレットのみによってコードされる。この縮退によって、DNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を改変することなく、DNAの塩基組成を広範に変化させることが可能になる。
【0096】
多くの生物では、成長しているペプチド鎖において特定のアミノ酸の挿入をコードする特定のコドンの使用で、バイアスが見られる。生物間におけるコドン優先度又はコドンバイアス(コドン使用頻度の差)は、遺伝暗号の縮退により可能になり、多くの生物間において十分に立証されている。コドンバイアスは、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関する場合が多く、ひいては、とりわけ、翻訳されるコドンの特性と、特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用性に左右されると考えられている。細胞において、選択されるtRNAの優勢は概して、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンが反映されたものである。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づき、所定の生物において最適な遺伝子発現が行われるように適合させることができる。
【0097】
多種多様な動物種、植物種及び微生物種に利用可能な多数の遺伝子配列を踏まえて、相対的なコドン使用頻度が算出されている。コドン使用頻度表は、例えば、www.kazusa.or.jp/codon/(2012年6月18日に閲覧)に掲載されている「Codon Usage Database」から入手可能である。Nakamura,Y.,et al.Nucl.Acids Res.28:292(2000)を参照されたい。
【0098】
所定のポリペプチド配列をコードするように、最適化頻度のコドンをランダムに割り当てる作業は、各アミノ酸のコドン頻度を算出してから、それらのコドンをポリペプチド配列にランダムに割り当てることによって、手動で行うことができる。加えて、様々なアルゴリズム及びコンピューターソフトウェアプログラムを用いて、最適な配列を算出することができる。
【0099】
コドン最適化は、ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質配列からの潜在的な免疫原性配列の除去も含み得る。いくつかの実施形態では、in silico法は、タンパク質又はヌクレオチド配列における潜在的な免疫原性配列の同定に使用される。これらの方法の非限定的な例としては、ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子(例えば、DR、DP、DQ)の同定及び所与のタンパク質配列における主要組織適合性複合体クラスII(MHCII)結合部位の同定が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫エピトープデータベース及び解析リソース(IEDB)(http://www.iedb.org/)などのパブリックデータベースを使用して、潜在的な免疫原性配列を同定することができる(例えば、Zhang Q et al.Nucleic Acids Res(2008)36:W513-8;Kim Y et al.Nucleic Acids Res(2012)40:W525-30;Dhanda et al.Nucleic Acids Res(2019)47:W502-W506を参照されたい)。いくつかの実施形態では、Lamberth K,et al.Sci Transl Med.2017;9(372):eaag1286に記載されるように、NetMHCIIpan3.0法を使用して、潜在的な免疫原性配列を同定することができる。いくつかの実施形態では、潜在的な免疫原性配列をコードするヌクレオチド配列は、欠失している。
【0100】
異種ヌクレオチド配列
いくつかの実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列を更に含む。異種ヌクレオチド配列は、本開示の最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列と、5’末端、3’末端で連結することも、最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列の中間に挿入することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、この異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列は、ヌクレオチド配列によってコードされるFVIIIアミノ酸配列のN末端若しくはC末端に連結されるか、又はFVIIIアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入される。いくつかの実施形態では、異種アミノ酸配列は、1つ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入できる。いくつかの実施形態では、異種アミノ酸配列は、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチド内に、国際公開第2013/123457A1号パンフレット、同第2015/106052A1号パンフレット、又は米国特許出願公開第2015/0158929A1号明細書(この各々が、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているいずれかの部位で挿入できる。
【0101】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列は、Bドメイン又はその断片内に挿入される。いくつかの実施形態では、異種アミノ酸配列は、FVIII内に、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号19)の745位のアミノ酸に対応するアミノ酸のすぐ下流で挿入される。特定の一実施形態では、FVIIIは、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号19)の746~1637位に対応するアミノ酸の欠失を含むとともに、異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列が、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号19)の745位に対応するアミノ酸のすぐ下流に挿入される。本明細書において参照される挿入部位は、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号19)のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸の位置を示している。
【0102】
いくつかの実施形態では、異種部分は、本開示のタンパク質に組み込まれた場合にインビボ半減期の延長を伴う、非構造的又は構造的な特徴のいずれかを有するペプチド又はポリペプチドである。非限定的な例として、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリン若しくはその断片、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合部分、又はこれらのポリペプチドの任意の断片、誘導体、バリアント、若しくは組み合わせが挙げられる。
【0103】
特定の実施形態では、異種部分は、FVIIIタンパク質の生物学的活性又は機能に有意な影響を及ぼさずに、FVIIIタンパク質の1つ以上の薬物動態特性を改善する。いくつかの実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIタンパク質のインビボ及び/又はインビトロ半減期を延長する。FVIIIタンパク質のインビボ半減期は、当業者に公知の任意の方法、例えば、活性アッセイ(発色アッセイ又は一段階凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(登録商標)などによって決定することができる。
【0104】
他の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIタンパク質又はその断片(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質分解切断後の異種部分を含む断片)の安定性を高める。本明細書で使用する場合、「安定性」という用語は、環境条件(例えば、温度上昇又は低下)に応じて、FVIIIタンパク質の1つ以上の物理特性の維持についての当該技術分野で認識される尺度を指す。特定の態様では、物理特性は、FVIIIタンパク質の共有結合構造の維持(例えば、タンパク質分解切断、望ましくない酸化又は脱アミド化のないこと)であり得る。他の態様では、物理特性は、正しくフォールディングされた状態にあるFVIIIタンパク質の存在(例えば、可溶性又は不溶性の凝集又は沈殿のないこと)でもあり得る。一態様では、FVIIIタンパク質の安定性は、FVIIIタンパク質の生物物理学的特性、例えば、熱安定性、pHアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定な除去、溶解度、生化学的機能(例えば、タンパク質、受容体、又はリガンドに結合する能力)など、及び/又はこれらの組み合わせをアッセイすることによって測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性によって実証される。一態様では、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱の負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)などの当該技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。熱安定性を測定する方法としては、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光定量(DSF)、円二色性(CD)、及び熱負荷アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施形態では、異種部分は、1つ以上のXTEN配列、その断片、バリアント、又は誘導体を含む。本明細書で使用する場合、「XTEN配列」は、小型の親水性アミノ酸で主に構成され、生理的条件下では二次構造又は三次構造をとる程度が低いか又はとらない、天然に存在しない実質的に非反復性の配列を有する、伸長したポリペプチドを指す。異種部分として、XTENは、半減期延長部分としての役割を果たすことができる。加えて、XTENは、薬物動態パラメーター及び溶解特性の強化を含むがこれらに限定されない、所望の特性をもたらし得る。XTEN配列を導入することにより付与される可能性のあるその他の有利な特性としては、コンフォメーションの柔軟性、水溶解性の向上、高度なプロテアーゼ耐性、免疫原性の低さ、哺乳動物受容体への結合性の低さ、又は流体力学的(又はストークス)半径の増加が挙げられる。
【0106】
XTENは、FVIIIへの挿入又はFVIIIへの結合のために様々な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、本開示に有用なXTEN配列は、約20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、750個、800個、850個、900個、950個、1000個、1200個、1400個、1600個、1800個、又は2000個超のアミノ酸残基を有するペプチド又はポリペプチドである。特定の実施形態では、XTENは、約20個超~約3000個のアミノ酸残基、30個超~約2500個の残基、40個超~約2000個の残基、50個超~約1500個の残基、60個超~約1000個の残基、70個超~約900個の残基、80個超~約800個の残基、90個超~約700個の残基、100個超~約600個の残基、110個超~約500個の残基、又は120個超~約400個の残基を有するペプチド又はポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、長さが42アミノ酸よりも長く144アミノ酸よりも短いアミノ酸配列を含む。
【0107】
本開示のXTEN配列は、5~14個(例えば、9~14個)のアミノ酸残基の1つ以上の配列モチーフ、又は配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、そのモチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)、及びプロリン(P)からなる群から選択される4~6種のアミノ酸(例えば、5種類のアミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。米国特許出願公開第2010-0239554A1号明細書を参照されたい。
【0108】
本開示のキメラタンパク質において、異種の部分として使用できるXTEN配列の例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0239554A1号明細書、同第2010/0323956A1号明細書、同第2011/0046060A1号明細書、同第2011/0046061A1号明細書、同第2011/0077199A1号明細書、若しくは同第2011/0172146A1号明細書、又は国際公開第2010091122A1号パンフレット、同第2010144502A2号パンフレット、同第2010144508A1号パンフレット、同第2011028228A1号パンフレット、同第2011028229A1号パンフレット、若しくは同第2011028344A2号パンフレット(その各々が、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0109】
1つ以上のXTEN配列は、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のC末端又はN末端に挿入することも、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入することもできる。例えば、XTENは、1つ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入できる。FVIII内の部位のうち、XTENの挿入部位として許容できる例は、例えば、国際公開第2013/123457A1号パンフレット、又は米国特許出願公開第2015/0158929A1号明細書(これらは、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に見ることができる。
【0110】
特定の実施形態では、異種部分はペプチドリンカーである。
【0111】
本明細書で使用する場合、「ペプチドリンカー」又は「リンカー部分」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2つのドメインを接続するペプチド又はポリペプチド配列(例えば、合成ペプチド又はポリペプチド配列)を指す。
【0112】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーをコードする異種ヌクレオチド配列は、本開示の最適化FVIIIポリヌクレオチド配列と、例えばアルブミンなどの上記の異種部分の1つをコードする異種ヌクレオチド配列との間に挿入することができる。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に柔軟性を提供することができる。リンカーは典型的には切断されないが、そのような切断が望ましいことがある。一実施形態では、これらのリンカーは、処理の間に除去されない。
【0113】
本開示のキメラタンパク質中に存在することができるタイプのリンカーは、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子、又はトロンビン切断部位)を含み、その切断部位のN末端若しくはC末端のいずれか又は両側に追加のリンカーを含むことができる、プロテアーゼで切断可能なリンカーである。これらの切断可能なリンカーは、本開示の構築物に組み込まれると、異種切断部位を有するキメラ分子を生じる。
【0114】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖に含まれるFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結された2つ又はそれ以上のFcドメイン若しくはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素によって切断される部位に隣接している。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位でポリペプチドが切断されると、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むポリペプチドが得られる。
【0115】
他のペプチドリンカーを、本開示の構築物において、例えば、FVIIIタンパク質をFc領域に接続するために、任意選択的に使用することができる。本開示との関連で使用し得るいくつかの例示的なリンカーとしては、例えば、下に更に詳述されるGlySerアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。
【0116】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成性、すなわち天然に存在しないものである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸からなる第1の直鎖状配列を、天然においては連結されていないか又は自然においては遺伝的に融合されていないアミノ酸からなる第2の直鎖状配列に連結又は遺伝的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(又はポリペプチド)(天然に存在し得るか、又は存在することができない)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置換又は欠失などの突然変異を含む)天然に存在しないポリペプチドを含み得る。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在しないアミノ酸を含み得る。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、自然においては存在しない直鎖状配列中に存在する、天然に存在するアミノ酸を含み得る。更に別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含み得る。
【0117】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むか又はそれからなる。本明細書で使用する場合、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン残基及びセリン残基からなるペプチドを指す。特定の実施形態では、上記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの2つの他の配列の間に挿入することができる。他の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの別の配列の一端又は両端に結合する。更に他の実施形態では、2つ又はそれ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカーに直列に組み込まれる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4分子に由来する)上流の少なくとも一部、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4分子に由来する)中央の少なくとも一部、及び一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0118】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1アミノ酸長であり、様々な長さであり得る。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1~約50アミノ酸長である。本文脈で使用する場合、「約」という用語は、+/-2個のアミノ酸残基を示す。リンカー長は、正の整数でなければならないため、約1~約50アミノ酸長の長さは、1~3から48~52アミノ酸長の長さを意味する。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10~約20アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約50アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20~約45アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約35又は約20~約30アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、又は2000アミノ酸長である。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、20又は30アミノ酸長である。
【0119】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、又は少なくとも100個のアミノ酸を含み得る。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、又は少なくとも1000個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1100個、1200個、1300個、1400個、1500個、1600個、1700個、1800個、1900個、又は2000個のアミノ酸を含み得る。ペプチドリンカーは、1~5個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、50~100個のアミノ酸、100~200個のアミノ酸、200~300個のアミノ酸、300~400個のアミノ酸、400~500個のアミノ酸、500~600個のアミノ酸、600~700個のアミノ酸、700~800個のアミノ酸、800~900個のアミノ酸、又は900~1000個のアミノ酸を含み得る。
【0120】
ペプチドリンカーは、当該技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド配列に導入することができる。改変は、DNA配列解析によって確認することができる。プラスミドDNAを使用して、産生されるポリペプチドが安定して産生されるように宿主細胞を形質転換することができる。
【0121】
発現制御配列
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子又はベクターは、少なくとも1つの発現制御配列を更に含む。例えば、本開示の単離された核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結され得る。発現制御配列は、例えば、プロモーター配列又はプロモーター-エンハンサーの組み合わせであり得る。
【0122】
哺乳動物の構成的プロモーターとしては、以下の遺伝子に関するプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、ベータアクチンプロモーター、及び他の構成的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長末端反復配列(LTR)、及び他のレトロウイルスからのプロモーター、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で、転写及び翻訳を促進するように誘導される。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。
【0123】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーター及び/又はエンハンサーの制御下で、導入遺伝子を発現させることを含む。別の実施形態では、プロモーター又は他の発現制御配列は、肝細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の実施形態では、プロモーター又は他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、及び/又は内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーター又は他の発現制御配列は、内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の実施形態では、プロモーター又は他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼球、肝臓、心臓、又はこれらの任意の組み合わせにおける導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝特異的プロモーターの例としては、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、ネイティブヒト第VIII因子プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、及びマウスアルブミンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子はmTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターは、Costa et al.(1986)Mol.Cell.Biol.6:4697に記載されている。FVIIIプロモーターは、Figueiredo and Brownlee,1995,J.Biol.Chem.270:11828-11838に記載されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1-抗トリプシン(AAT))、筋肉特異的プロモーター(例えば、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)及びデスミン(DES))、合成プロモーター(例えば、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK及びtMCK)、又はこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0124】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、肝臓を標的とする。特定の実施形態では、導入遺伝子発現は、肝細胞を標的とする。他の実施形態では、導入遺伝子発現は、内皮細胞を標的とする。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを自然に発現した任意の組織を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は中枢神経系を標的とする。特定の実施形態では、導入遺伝子発現は神経細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、求心性神経細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、遠心性神経細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、介在神経細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、グリア細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、星状細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、乏突起膠細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、ミクログリアを標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、上衣細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、シュワン細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、衛星細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、筋細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、平滑筋を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、心筋を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、骨格筋を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、眼を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、光受容細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現は、網膜神経節細胞を標的とする。
【0125】
本明細書に開示される核酸分子において有用なその他のプロモーターとしては、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、ネイティブヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP;ZFP36としても知られる)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、及びtMCKプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子はトランスサイレチン(TTR)プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターはマウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。mTTRプロモーターの非限定的な例としては、米国特許出願公開第2019/0048362号明細書(その全容が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている、mTTR202プロモーター、mTTR202optプロモーター、及びmTTR482プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロモーターは肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターmTTR482である。mTTR482プロモーターの例は、Kyostio-Moore et al.(2016)Mol Ther Methods Clin Dev.3:16006、及びNambiar B.et al.(2017)Hum Gene Ther Methods,28(1):23-28に記載されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号9の核酸配列を含む肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。
【0127】
1つ以上のエンハンサーエレメントを使用して、発現レベルを更に高めて、治療効能を達成することができる。1つ以上のエンハンサーは、単独で又は1つ以上のプロモーターエレメントと一緒に提供することができる。典型的には、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメント及び組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーの1つ以上の複製を含む(Rouet et al.(1992)J.Biol.Chem.267:20765-20773;Rouet et al.(1995),Nucleic Acids Res.23:395-404;Rouet et al(1998)Biochem.J.334:577-584;Ill et al.(1997)Blood Coagulation Fibrinolysis 8:S23-S30)。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6などの肝特異的転写因子結合部位に由来し、Enh1は、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、配列番号8の核酸配列を含むmTTR482エンハンサーである。
【0128】
いくつかの実施形態では、エンハンサーは、1つ若しくは2つの改変されたプロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つ若しくは2つのα1-ミクロビクニンエンハンサー(A1MB2)、改変されたマウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)、又はCRM8エンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、エンハンサーは合成エンハンサーである。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、配列番号7の核酸配列を含む合成エンハンサーである。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子は、イントロン又はイントロン配列を含む。いくつかの実施形態では、イントロン配列は天然に存在するイントロン配列である。いくつかの実施形態では、イントロン配列は合成配列である。いくつかの実施形態では、イントロン配列は天然に存在するイントロン配列に由来する。いくつかの実施形態では、イントロン配列は、ハイブリッド合成イントロン又はキメライントロンである。いくつかの実施形態では、イントロン配列は、ニワトリベータ-アクチン/ウサギベータ-グロビンイントロンからなり、偽翻訳開始を減らすために5つの既存のATG配列を除去するように改変されているキメライントロンである。特定の実施形態では、イントロン配列はSV40スモールTイントロンを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子は、1つ以上のDNA核標的化配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核内への移行を促進する。特定の実施形態では、DTSはSV40エンハンサー配列を含む。特定の実施形態では、DTSはc-Mycエンハンサー配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、第1のITRと第2のITRの間にあるDTSを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、第1のITRに対して3’及び導入遺伝子(例えば、FVIIIタンパク質)に対して5’に位置するDTSを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、導入遺伝子に対して3’及び、核酸分子上の第2のITRに対して5’に位置するDTSを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子は、Toll様受容体9(TLR9)阻害配列を含む。例示的なTLR9阻害配列は、例えば、Trieu et al.(2006)Crit Rev Immunol.26(6):527-44;Ashman et al.Int’l Immunology 23(3):203-14に記載されている。
【0132】
ベクター系
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上のコドン最適化核酸分子を含むベクターと、そのベクターを含む宿主細胞と、そのベクターを用いて出血障害を治療する方法に関する。本開示は、対象における発現が増加する最適化FVIII配列であって、遺伝子療法で用いると、治療効果を高める可能性のある最適化FVIII配列を含むベクターを提供することによって、当該技術分野における重要なニーズを満たす。
【0133】
本開示に好適なベクターとしては、発現ベクター、ウイルスベクター、及びプラスミドベクターが挙げられる。一実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0134】
本明細書で使用する場合、発現ベクターとは、挿入されているコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメント、又はRNAウイルスベクターの場合には、適切な宿主細胞に導入したときに、複製及び翻訳に必要なエレメントを含む任意の核酸構築物を指す。発現ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウイルス及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0135】
本開示の発現ベクターは、本明細書に記載のBDD FVIIIタンパク質をコードする最適化ポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、BDD FVIIIタンパク質の最適化されたコード配列は、発現制御配列に作動可能に連結される。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列は、それらが各構成要素の核酸配列がその機能を保持することを可能にするような様式で共有結合している場合、作動可能に連結されている。コード配列及び遺伝子発現制御配列は、それらがコード配列の発現若しくは転写及び/又は翻訳を遺伝子発現制御配列の影響下又は制御下に置くような様式で共有結合する場合、作動可能に連結されると言われる。2つのDNA配列は、5’遺伝子発現配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、及び2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を導く能力に干渉しない、又は(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力に干渉しない場合、作動可能に連結されると言われる。したがって、遺伝子発現配列は、結果として生じる転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるように、遺伝子発現配列がそのコード核酸配列の転写を生じさせ得る場合には、コード核酸配列に作動可能に連結されていると考えられる。
【0136】
ウイルスベクターとしては、以下のウイルスからの核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス及びラウス肉腫ウイルスなどのレトロウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;並びにレトロウイルスなどのRNAウイルス。当該技術分野において周知のその他のベクターを容易に採用できる。特定のウイルスベクターは、非必須遺伝子が、目的の遺伝子に置き換えられている非細胞変性真核ウイルスに基づいている。一実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルス、二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、操作して複製欠損性にできるとともに、広範なタイプ及び種の細胞に感染できる。
【0137】
ほぼいずれの抗原型にも由来する異なるAAVベクター配列のうちの1つ以上を本開示に従って用いることができる。特定のAAVベクター配列の選択は、目的のトロピズム、所要ベクター収量などのような既知のパラメーターによって導き出すことになる。概して、AAV抗原型は、アミノ酸レベルと核酸レベルの相同性がかなりの程度であるゲノム配列を有し、関連する一連の遺伝機能をもたらし、関連するビリオンを産生し、同様の形式で複製とアセンブルを行う。各種のAAV抗原型のゲノム配列と、ゲノム類似性の概要については、例えば、GenBankアクセッション番号U89790;GenBankアクセッション番号J01901;GenBankアクセッション番号AF043303;GenBankアクセッション番号AF085716;Chlorini et al.(1997)J.Vir.71:6823-33;Srivastava et al.(1983)J.Vir.45:555-64;Chlorini et al.(1999)J.Vir.73:1309-1319;Rutledge et al.(1998),J.Vir.72:309-319;又はWu et al.(2000)J.Vir.74:8635-47を参照されたい。AAV抗原型1、2、3、4、及び5は、本開示の文脈において使用するためのAAVヌクレオチド配列の例示的な供給源である。特定の開示用途には、AAV6、AAV7、AAV8若しくはAAV9、又は例えばキャプシドシャッフリング法と、AAVキャプシドライブラリー、若しくは新たに設計、開発若しくは進化したITRライブラリーによって得られる新開発のAAV様粒子も好適である。Dalkara et al.(2013),Sci.Transl.Med.5(189):189ra76;Kotterman MA(2014)Nat.Rev.Genet.15(7):455を参照されたい。
【0138】
その他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは、当該技術分野において詳細に説明されており、当業者には周知である。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照されたい。この数年で、プラスミドベクターが、インビボで遺伝子を細胞に送達するのに特に有用であることが分かった。プラスミドベクターは、宿主ゲノム内で複製したり、宿主ゲノムに組み込んだりできないからである。しかしながら、宿主細胞と適合するプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で作動可能にコードされる遺伝子からペプチドを発現できる。一般に使用される市販業者から入手可能ないくつかのプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、様々なpcDNAプラスミド、pRC/CMV、様々なpCMVプラスミド、pSV40、及びpBlueScriptが挙げられる。具体的なプラスミドの更なる例としては、いずれもInvitrogen(Carlsbad,CA.)からのpcDNA3.1(カタログ番号V79020);pcDNA3.1/hygro(カタログ番号V87020);pcDNA4/myc-His(カタログ番号V86320);及びpBudCE4.1(カタログ番号V53220)が挙げられる。その他のプラスミドは、当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特定の断片を除去及び/又は付加するように、標準的な分子生物学的技法を用いて、カスタム設計することができる。
【0139】
特定の実施形態では、例えば、最適化FVIII導入遺伝子に作動可能に連結されている1つ以上のmiRNA標的配列をベクター内に含めるのが有用となる。ベクターに含まれるmiRNA標的配列が2コピー以上であると、そのベクター系の有効性を高めることができる。例えば、2つ以上の導入遺伝子を発現するベクターは、2つ以上のmiRNA標的配列(同じであることも、異なることもできる)の制御下で、それらの導入遺伝子を有することができる。miRNA標的配列は、タンデムに存在することができるが、その他の並べ方も含まれる。miRNA標的配列を含む導入遺伝子発現カセットは、ベクター内にアンチセンス方向で挿入できる。miRNA標的配列の例は、国際公開第2007/000668号パンフレット、同第2004/094642号パンフレット、同第2010/055413号パンフレット、又は同第2010/125471号パンフレット(それら全体が、本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。しかしながら、特定の他の実施形態では、ベクターは、いずれのmiRNA標的配列も含まないことになる。miRNA標的配列を含めるか否か(及び何個のmiRNA標的配列を含めるか)の選択は、意図する組織標的、所要発現レベルなどの既知のパラメーターによって導き出すことになる。
【0140】
レンチウイルスベクター
レンチウイルスには、ウシレンチウイルス群、ウマレンチウイルス群、ネコレンチウイルス群、ヒツジヤギレンチウイルス群、及び霊長類レンチウイルス群のメンバーが含まれる。遺伝子療法のためのレンチウイルスベクターの開発は、Klimatcheva et al.(1999)Frontiers in Bioscience 4:481-496にレビューされている。遺伝子療法に好適なレンチウイルスベクターの設計及び使用は、例えば、米国特許第6,207,455号明細書及び同第6,615,782号明細書に記載されている。レンチウイルスの例としては、HIV-1、HIV-2、HIV-1/HIV-2シュードタイプ化、HIV-1/SIV、FIV、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びウシ免疫不全ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、「第三世代」レンチウイルスベクターである。本明細書で使用する場合、用語「第三世代」レンチウイルスベクターは、第二世代ベクター系の特徴を有し、更に機能的tat遺伝子を欠くレンチウイルスパッケージング系、例えば、tat遺伝子が欠失しているか又は不活性化されているものを指す。典型的には、revをコードする遺伝子は、別個の発現構築物上に提供される。例えば、Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-8471を参照されたい。本明細書で使用する場合、「第二世代」レンチウイルスベクター系とは、機能的アクセサリー遺伝子を欠くレンチウイルスパッケージング系、例えば、アクセサリー遺伝子vif、vpr、vpu、及びnefが欠失しているか又は不活性化されているものを指す。例えば、Zufferey et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:871-875を参照されたい。本明細書で使用する場合、「パッケージング系」とは、組換えウイルスのパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードするウイルス構築物のセットを指す。典型的には、パッケージング系の構築物は、最終的にパッケージング細胞に組み込まれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示の第三世代レンチウイルスベクターは、自己不活性化レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV.Gシュードタイプレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子発現のための肝細胞特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、肝細胞特異的プロモーターは、強化トランスサイレチンプロモーターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子産物に対する免疫応答を低下させるためのmiR-142の1つ以上の標的配列を含む。いくつかの実施形態では、miR-142の1つ以上の標的配列を本開示のレンチウイルスベクターに組み込むことは、所望の導入遺伝子発現プロファイルを可能にする。例えば、miR-142の1つ以上の標的配列を組み込むことで、血管内及び血管外の造血細胞系列における導入遺伝子発現を抑制することができ、一方、非造血細胞では導入遺伝子発現が維持される。本開示のレンチウイルスベクター系で処置された腫瘍傾向マウスにおいて、発がんは全く検出されていない。Brown et al.(2007)Blood 110:4144-52,Brown at al.(2006)Nat.Ned.12:585-91,及びCantore et al.(2015)Sci.Transl.Med.7(277):277ra28を参照されたい。
【0143】
本開示のレンチウイルスベクターは、本明細書に記載のBDD FVIIIタンパク質をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、BDD FVIIIタンパク質の最適化されたコード配列は、発現制御配列に作動可能に連結される。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列は、それらが各構成要素の核酸配列がその機能を保持することを可能にするような様式で共有結合している場合、作動可能に連結されている。コード配列及び遺伝子発現制御配列は、それらがコード配列の発現若しくは転写及び/又は翻訳を遺伝子発現制御配列の影響下又は制御下に置くような様式で共有結合する場合、作動可能に連結されると言われる。2つのDNA配列は、5’遺伝子発現配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、及び2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を導く能力に干渉しない、又は(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力に干渉しない場合、作動可能に連結されると言われる。したがって、遺伝子発現配列は、結果として生じる転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるように、遺伝子発現配列がそのコード核酸配列の転写を生じさせ得る場合には、コード核酸配列に作動可能に連結されていると考えられる。
【0144】
本明細書に開示される例示的なレンチウイルスベクターの実施形態の略図は、図1として提示される。例示的なレンチウイルスベクター生成の実施形態の追加情報は、実施例2に見出すことができる。遺伝子治療用のレトロウイルスベクターの設計に関する更なる議論は、Poletti&Mavilio,Viruses.2021(13):1526で提供される。
【0145】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を感染させることができる組換えレンチウイルスのベクターである。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝臓細胞(例えば、肝細胞)を感染させることができる組換えレンチウイルスのベクターである。レンチウイルスゲノムとプロウイルスDNAは典型的には、レトロウイルスで見られる3つの遺伝子:gag、pol及びenvを有し、これらの遺伝子は、2つの長鎖末端反復(LTR)配列に挟まれている。gag遺伝子は、内部構造(マトリックス、キャプシド及びヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子は、RNA依存型DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)と、プロテアーゼと、インテグラーゼをコードし、env遺伝子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’LTR及び3’LTRは、ビリオンRNAの転写とポリアデニル化を促す働きをする。LTRは、ウイルス複製に必要な全ての他のシス作動性配列を含む。レンチウイルスは、(HIV-1、HIV-2及び/又はSIVにおける)vif、vpr、tat、rev、vpu、nef、及びvpxを含む更なる遺伝子を有する。
【0146】
5’LTRに隣接するのは、ゲノムを逆転写する際に必要な配列(tRNAプライマー結合部位)と、ウイルスRNAを効率的にキャプシドに包んで粒子にする際に必要な配列(Psi部位)である。キャプシドに包む際(又はレトロウイルスRNAをパッケージングして感染性ビリオンにする際)に必要な配列が、ウイルスゲノムから欠損している場合には、シス欠損により、ゲノムRNAのキャプシド包囲が阻止される。
【0147】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、ステムループ123(SL123)のプライマー結合部位(PBS)を含む。いくつかの実施形態では、PBSは配列番号3のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、Psiステムループ4(SL4)配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。Psi及び関連配列の更なる議論はKim et al.PLoS ONE 2012.7(11):e50148で見出すことができる。
【0148】
しかしながら、得られる変異体は、依然として、全てのビリオンタンパク質の合成を誘導できる。本開示は、非分裂細胞に感染できる組み換えレンチウイルスの作製方法であって、好適な宿主細胞に、パッケージング機能、すなわち、gag、pol及びenv、並びにrev及びtatを有する2つ以上のベクターをトランスフェクションすることを含む方法を提供する。本明細書の下記に開示するように、特定の用途では、機能性tat遺伝子が欠損しているベクターが望ましい。したがって、例えば、第1のベクターは、ウイルスgagとウイルスpolをコードする核酸を提供することができ、もう一方のベクターは、パッケージング細胞を産生するように、ウイルスenvをコードする核酸を提供することができる。異種の遺伝子を提供するベクター(本明細書では、トランスファーベクターと定める)をそのパッケージング細胞に導入すると、目的の外来遺伝子を有する感染性ウイルス粒子を放出するプロデューサー細胞が得られる。
【0149】
ベクターと外来遺伝子の上記の構成に従って、第2のベクターは、ウイルスエンベロープ(env)遺伝子をコードする核酸を提供することができる。env遺伝子は、レトロウイルスを含め、ほぼ全ての好適なウイルスに由来し得る。いくつかの実施形態では、envタンパク質は、ヒトとその他の種の細胞のトランスダクションを可能にするアンフォトロピックエンベロープタンパク質である。
【0150】
レトロウイルス由来のenv遺伝子の例としては:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV又はMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV又はHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV又はMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV又はGALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されない。水疱性口内炎ウイルス(VSV)プロテインG(VSV G)、肝炎ウイルスのenv遺伝子、インフルエンザのenv遺伝子などの他のenv遺伝子も使用できる。いくつかの実施形態では、ウイルスenv核酸配列は、本明細書の別の箇所に記載されている調節配列と作動可能に関連付けられている。
【0151】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するベクターの能力を損なうことなく、HIV 病原性遺伝子 env、vif、vpr、vpu、及びnefを欠失している。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、3’LTRのU3領域の欠失を含む。U3領域の欠失は、完全な欠失であるか、又は部分的な欠失であり得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているFVIIIヌクレオチド配列を含む本開示のレンチウイルスベクターは、(a)gag遺伝子、pol遺伝子、又はgag遺伝子とpol遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列と、(b)異種のenv遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列とともに、細胞にトランスフェクションでき、このレンチウイルスベクターは、機能性tat遺伝子が欠損している。他の実施形態では、細胞には、rev遺伝子を含む第4のヌクレオチド配列を更にトランスフェクションする。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、vif、vpr、vpu、vpx、及びnef、又はこれらの組み合わせから選択した機能性遺伝子が欠損している。
【0153】
特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、gagタンパク質、Rev応答エレメント、セントラルポリプリントラック(cPPT)、又はこれらの任意の組み合わせをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチウイルスベクター又はコードされるFVIIIポリペプチドの標的化及び/又は活性を改善する1つ以上のポリペプチドをその表面に発現する。1つ以上のポリペプチドは、レンチウイルスベクターによってコードされ得るか、又は宿主細胞からのレンチウイルスベクターの出芽の間に組み込まれ得る。レンチウイルスの生成の間に、ウイルス粒子は産生宿主細胞から出芽する。出芽過程の間に、ウイルス粒子は脂質コートを獲得し、それは宿主細胞の脂質膜に由来する。結果として、ウイルス粒子の脂質コートは、宿主細胞の表面に前から存在していた膜結合ポリペプチドを含むことができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、ヒト対象への投与後のレンチウイルスベクターに対する免疫応答を阻害する、1つ以上のポリペプチドをその表面に発現する。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターの表面は、1つ以上のCD47分子を含む。CD47は「自己マーカー」タンパク質であり、ヒト細胞上に遍在的に発現される。CD47の表面発現は、CD47とマクロファージにより発現されるSIRPαとの相互作用を通じて、内因性細胞のマクロファージ誘導食作用を阻害する。高レベルのCD47を発現する細胞は、インビボでヒトマクロファージによって標的化されて破壊される可能性が低い。
【0156】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、高濃度のCD47ポリペプチド分子をその表面に含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、高いCD47発現レベルを有する細胞系において生成される。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターはCD47high細胞で生成され、細胞は細胞膜上にCD47の高発現を有する。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターはCD47highHEK293T細胞で生成され、HEK293Tは細胞膜上にCD47の高発現を有する。いくつかの実施形態では、HEK293T細胞は、非改変HEK293T細胞に比してCD47の発現が増加するように改変される。特定の実施形態では、CD47はヒトCD47である。
【0157】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、主要組織適合性複合体クラスI(MHC-I)の表面発現をほとんど又は全く有しない。表面に発現されるMHC-Iは、細胞内からの「非自己」タンパク質のペプチド断片、例えば、感染を示すタンパク質断片を提示し、細胞に対する免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはMHC-Ilow細胞で生成され、細胞は細胞膜上のMHC-Iの発現低下を有する。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、MHC-I-(又は「MHC-Ifree」、「MHC-1neg」又は「MHC陰性」)細胞において生成され、細胞はMHC-Iの発現を欠く。
【0158】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、高濃度のCD47ポリペプチドを含み、MHC-Iポリペプチドを欠く脂質コートを含む。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、CD47high/MHC-Ilow細胞系、例えば、CD47high/MHC-IlowHEK293T細胞系において生成される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、CD47high/MHC-Ifree細胞系、例えば、CD47high/MHC-IfreeHEK293T細胞系において生成される。
【0159】
レンチウイルスベクターの例は、米国特許第9,050,269号明細書、並びに国際公開第9931251号パンフレット、同第9712622号パンフレット、同第9817815号パンフレット、同第9817816号パンフレット、及び同第9818934号パンフレットに開示されており、これらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0160】
末端逆位反復(ITR)配列
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸配列は末端逆位反復(ITR)配列を含む。本明細書で使用する場合、「末端逆位配列」(又は「ITR」)は、一組のヌクレオチド(初期配列)とその下流に続くその逆相補鎖、すなわち回文配列とを含む、一本鎖核酸配列の5’末端又は3’末端のいずれかに位置する核酸配列を指す。初期配列と逆相補鎖との間に介在するヌクレオチド配列は、ゼロを含めて任意の長さであり得る。一実施形態では、本開示に有用なITRは、1つ以上の「回文配列」を含む。ITRは任意の数の機能を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるITRはヘアピン構造を形成する。いくつかの実施形態では、ITRはT字形ヘアピン構造を形成する。いくつかの実施形態では、ITRは非T字形ヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核において核酸分子の長期存続を増進する。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核において核酸分子の永続的な存続を増進する(例えば、細胞の寿命全体の間)。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核における核酸分子の安定性を増進する。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核における核酸分子の保持を増進する。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核における核酸分子の持続性を増進する。いくつかの実施形態では、ITRは細胞の核における核酸分子の分解を阻害するか又は防止する。
【0161】
したがって、本明細書において使用される「ITR」は、それ自身の上で折り返すことができ、そして二本鎖セグメントを形成することができる。例えば、配列GATCXXXXGATCは、折りたたまれた場合に二重らせんを形成する初期配列GATC及びその相補鎖(3’CTAG5’)を含む。いくつかの実施形態では、ITRは、初期配列と逆相補鎖との間に連続した回文配列(例えば、GATCGATC)を含む。いくつかの実施形態では、ITRは、初期配列と逆相補鎖との間に中断された回文配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。いくつかの実施形態では、連続した又は中断された回文配列の相補セクションは、互いに相互作用して「ヘアピンループ」構造を形成する。本明細書で使用する場合、「ヘアピンループ」構造は、一本鎖ヌクレオチド分子塩基対上の少なくとも2つの相補性配列が二本鎖セクションを形成する場合に生じる。いくつかの実施形態では、ITRの一部のみがヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITR全体がヘアピンループを形成する。
【0162】
本開示において、少なくとも1つのITRは、非アデノウイルス随伴ウイルス(非AAV)のITRである。特定の実施形態では、ITRは、パルボウイルス科(Parvoviridae)のウイルスの非AAVメンバーのITRである。いくつかの実施形態では、ITRは、ディペンドウイルス属(Dependovirus)又はエリスロウイルス属(Erythrovirus)の非AAVメンバーのITRである。
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような核酸分子中のITRは、転写活性化ITRであってもよい。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの包含によって転写活性化された野生型ITRの全部又は一部を含むことができる。各種の転写活性エレメントが本文脈での使用に好適である。いくつかの実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは継続したレベルの遺伝子転写を提供し、導入遺伝子が継続的に発現されることが望まれるときに好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導可能な転写活性エレメントである。誘導可能な転写活性エレメントは、インデューサー(また、誘導条件)の不在下で低い活性を一般的に示し、インデューサーの存在(又は、誘導条件への切り替え)下で上方制御される。特定の時だけ若しくは特定の場所だけで発現が望ましい場合、又は誘導剤を使用して発現レベルを滴定することが望ましい場合、誘導可能な転写活性エレメントが好ましい場合がある。転写活性エレメントは、組織特異的であってもよい;すなわち、それらは、特定の組織又は細胞型においてだけ活性を示す。
【0164】
転写活性エレメントを、様々な方法でITRに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分の5’側に、又はITRの任意の部分の3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが間隔をあけなければならない2つ以上のエレメントを含む場合、それらのエレメントはITRの部分を交互になり得る。いくつかの実施形態では、ITRのヘアピン構造は欠失し、転写エレメントの逆方向反復で置き換えられる。この後者の配置は、構造の欠失部分を模倣するヘアピンを形成する。転写活性化ITRに複数のタンデム転写活性エレメントが存在することができ、これらは隣接していても離れていてもよい。更に、転写活性化ITRの転写活性エレメントに、タンパク質結合部位(例えば、Rep結合部位)を導入することができる。転写活性エレメントは、RNAを形成するRNAポリメラーゼによるDNAの制御された転写を可能にする任意の配列を含むことができ、例えば、下で規定される転写活性エレメントを含むことができる。
【0165】
転写活性化ITRは、比較的制限されたヌクレオチド配列長の核酸分子に転写活性化及びITR機能の両方を提供し、それは、核酸分子から運び、発現させることができる導入遺伝子の長さを効果的に最大にする。転写活性エレメントのITRへの組み込みは、様々な方法で達成することができる。転写活性エレメントのITR配列及び配列必要条件の比較は、ITR内のエレメントをコードする方法に関する識見を提供することができる。例えば、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列における特異的変更の導入を通して、転写活性をITRに加えることができる。特異的部位で特定のヌクレオチド配列を効率的に加え、削除し、及び/又は変更するための多数の技術が当該技術分野に存在する(例えば、Deng and Nickoloff(1992)Anal.Biochem.200:81-88を参照されたい)。転写活性化ITRを作製する別の方法は、ITRの所望の位置での制限部位の導入を含む。更に、当該技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性エレメントを転写活性化ITRに組み込むことができる。
【0166】
実例として、転写活性化ITRは、TATAボックス、GCボックス、CCAATボックス、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβボックス、APBαボックス、CArGボックス、CCACボックス、又は当該技術分野で公知であるような転写に関与する任意の他のエレメントなどの、1つ以上の転写活性エレメントの包含によって生成することができる。
【0167】
宿主細胞
本開示は、本開示の核酸分子又はベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用する場合、「トランスフォーメーション」という用語は、広い意味で、レシピエント宿主細胞へのDNAの導入のうち、遺伝型を変化させ、その結果、レシピエント細胞を変化させる導入を指す目的で用いるものを指す。
【0168】
「宿主細胞」とは、組み換えDNA技法を用いて構築したとともに、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターでトランスフォーメーションした細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物起源のものであり、最も好ましくは、ヒト又はマウス起源のものである。当業者には、目的に最も適する具体的な宿主細胞株を選択的に割り出す能力がある。例示的な宿主細胞株としては、CHO、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1C1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21及びHEK293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の一実施形態では、宿主細胞は:CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、及びCAP細胞からなる群から選択される。宿主細胞株は、典型的には、商業サービスのAmerican Tissue Culture Collection又は公の文献から入手可能である。
【0169】
本開示の単離された核酸分子又はベクターの、宿主細胞への導入は、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。これらの技法としては、トランスフェクション(電気泳動及びエレクトロポレーションを含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープ化DNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、並びにインタクトウイルスへの感染が挙げられるが、これらに限定されない。Ridgway,A.A.G.“Mammalian Expression Vectors”Chapter 24.2,pp.470-472 Vectors,Rodriguez and Denhardt,Eds.(Butterworths,Boston,Mass.1988)を参照されたい。宿主へのプラスミドの導入は、エレクトロポレーションによるものであり得る。トランスフォーメーションした細胞を、軽鎖と重鎖の産生に適する条件下で培養して、重鎖タンパク質及び/又は軽鎖タンパク質の合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0170】
本開示の単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞は、適切な培養培地で培養する。本明細書で使用する場合、「適切な培養培地」という用語は、細胞の成長に必要な栄養素を含む培地を意味する。細胞の成長に必要な栄養素としては、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、及び成長因子を挙げることができる。任意選択的には、培地は、1つ以上の選択因子を含み得る。任意選択的には、培地は、仔ウシ血清又はウシ胎仔血清(FCS)を含み得る。一実施形態では、培地はIgGを実質的に含まない。培養培地では概して、例えば、薬物選択、又はDNA構築物上の選択可能なマーカー若しくはDNA構築物とコトランスフェクションした選択可能なマーカーによって相補される必須栄養素の欠損によって、DNA構築物を含む細胞を選択する。培養哺乳動物細胞は概して、市販の血清含有培地又は無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)で増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen,Carlsbad,CA.)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen,Carlsbad,CA.)である。使用する具体的な細胞株に適する培地の選択は、当業者のレベルの範囲内である。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明での使用に好適な宿主細胞は昆虫起源のものである。いくつかの実施形態では、好適な昆虫宿主細胞としては、例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf)から単離された細胞株又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)(Tni)から単離された細胞株が挙げられる。当業者であれば、任意のSf又はTni細胞株の適合性を容易に決定できるであろう。例示的な昆虫宿主細胞としては、Sf9細胞、Sf21細胞、及びHigh Five(商標)細胞が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な昆虫宿主細胞としてはまた、外来ウイルス汚染のない任意のSf又はTni細胞株、例えば、Sf-ラブドウイルス陰性(Sf-RVN)及びTn-ノダウイルス陰性(Tn-NVN)細胞があげられるがこれらに限定されない。その他の好適な宿主昆虫細胞は、当業者に公知である。特定の一実施形態では、昆虫宿主細胞はSf9細胞である。
【0172】
本開示の態様は、本明細書に記載される核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を好適なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを好適な細菌宿主株に導入することを含む。当該技術分野で公知のように、核酸の複雑な二次構造(例えば、長い回文領域)は不安定であり、細菌宿主株にクローン化することは困難である場合がある。例えば、本開示の第1のITR及び第2のITR(例えば、非AAVパルボウイルスITR、例えば、HBoV1 ITR)を含む核酸分子は、従来の方法論を使用してクローン化することが困難な場合がある。長いDNAパリンドロームはDNA複製を抑制し、大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、出芽酵母(S.cerevisiae)、マウス、及びヒトのゲノム中で不安定である。これらの効果は、ストランド内塩基対合によるヘアピン又は十字型構造の形成から生じる。大腸菌(E.coli)において、DNA複製の抑制は、SbcC又はSbcD変異体において有意に克服され得る。SbcDはヌクレアーゼサブユニットであり、SbcCはSbcCD複合体のATPaseサブユニットである。大腸菌(E.coli)SbcCD複合体は、長いパリンドロームの複製を防止する原因となるエキソヌクレアーゼ複合体である。SbcCD複合体は、ATP依存性二本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性及びATP依存性一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ活性の核である。SbcCDはDNAパリンドロームを認識し得、生じるヘアピン構造を攻撃することにより複製フォークを崩壊させる。
【0173】
特定の実施形態では、好適な細菌宿主株は、十字型DNA構造を分解することができない。特定の実施形態では、好適な細菌宿主株はSbcCD複合体において破壊を含む。いくつかの実施形態では、SbcCD複合体における破壊はSbcC遺伝子及び/又はSbcD遺伝子における遺伝子破壊を含む。特定の実施形態では、SbcCD複合体における破壊はSbcC遺伝子における遺伝子破壊を含む。SbcC遺伝子において遺伝子破壊を含む様々な細菌宿主株が当該技術分野で公知である。例えば、限定はされないが、細菌宿主株PMC103は、遺伝子型sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株PMC107は遺伝子型recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株SUREは遺伝子型recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含む。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核酸分子をクローン化する方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を好適なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを宿主株PMC103、PMC107、又はSUREに導入することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される核酸分子をクローン化する方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を好適なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを宿主株PMC103に導入することを含む。
【0174】
好適なベクターは当該技術分野で公知であり、本明細書の他所に記載される。特定の実施形態では、本開示のクローン化方法での使用に好適なベクターは、低コピーベクターである。特定の実施形態では、本開示のクローン化方法での使用に好適なベクターは、pBR322である。
【0175】
ポリペプチドの産生
本開示は、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドも提供する。他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離された核酸分子を含むベクターによってコードされる。更に他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離された核酸分子を含む宿主細胞によって産生させる。
【0176】
本開示の最適化核酸分子からFVIIIタンパク質を組み換え産生させるには、様々な方法が利用可能である。所望の配列のポリヌクレオチドは、デノボ固相DNA合成又は事前に調製したポリヌクレオチドのPCR変異誘発によって生成できる。オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発は、ヌクレオチド配列に置換、挿入、欠失又は改変(例えば改変コドン)を行う方法の1つである。例えば、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドを一本鎖DNA鋳型にハイブリダイズすることによって、出発DNAを改変する。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを用いて、オリゴヌクレオチドプライマーが組み込まれている鋳型の第2の相補鎖全体を合成する。一実施形態では、遺伝子組み換え、例えばプライマーベースのPCR変異誘発は、本明細書に定められているように、本開示のポリヌクレオチドを生成するための改変を組み込むのに十分である。
【0177】
組み換えタンパク質の生成のためには、FVIIIタンパク質をコードする本開示の最適化ポリヌクレオチド配列を適切な発現ビヒクル、すなわち、挿入されるコード配列の転写と翻訳に必要なエレメントを含むベクター、又はRNAウイルスベクターの場合には、複製と翻訳に必要なエレメントを含むベクターに挿入する。
【0178】
本開示のポリヌクレオチド配列は、ベクターに、適切なリーディングフレーム内で挿入する。次いで、ポリペプチドを発現することになる好適な標的細胞に、発現ベクターをトランスフェクションする。当該技術分野において公知のトランスフェクション技法としては、リン酸カルシウム沈殿(Wigler et al.1978,Cell 14:725)及びエレクトロポレーション(Neumann et al.1982,EMBO,J.1:841)が挙げられるが、これらに限定されない。様々な宿主発現ベクター系を用いて、本明細書に記載されているFVIIIタンパク質を真核細胞において発現させることができる。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞を含む動物細胞である(例えば、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、CHO細胞、BHK細胞、Cos細胞、HeLa細胞)。本開示のポリヌクレオチド配列は、FVIIIタンパク質を分泌可能にするシグナル配列もコードできる。当業者であれば、FVIIIタンパク質が翻訳される際、シグナル配列が細胞によって切断されて、成熟タンパク質が形成されることは分かる。様々なシグナル配列(例えば、ネイティブ第VII因子シグナル配列、ネイティブ第IX因子シグナル配列及びマウスIgK軽鎖シグナル配列)が当該技術分野において知られている。或いは、シグナル配列が含まれない場合には、FVIIIタンパク質は、細胞を溶解することによって回収できる。
【0179】
本開示のFVIIIタンパク質は、トランスジェニック動物(齧歯動物、ヤギ、ヒツジ、ブタ、又はウシなど)で合成できる。「トランスジェニック動物」という用語は、そのゲノムに外来遺伝子が組み込まれた、ヒト以外の動物を指す。この遺伝子は、生殖系組織に存在するので、親から子孫に伝わる。外因性遺伝子は、単一細胞胚に導入する(Brinster et al.1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:4438)。トランスジェニック動物の生成方法は、免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニック動物を含め、当該技術分野において知られている(Wagner et al.1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA78:6376;McKnight et al.1983,Cell 34:335;Brinster et al.1983,Nature 306:332;Ritchie et al.1984,Nature 312:517;Baldassarre et al.2003,Theriogenology 59:831;Robl et al.2003,Theriogenology 59:107;Malassagne et al.2003,Xenotransplantation 10(3):267)。
【0180】
発現ベクターは、組み換え生成したタンパク質を容易に精製又は同定できるようにするタグをコードできる。例としては、ベクターpUR278(Ruther et al.1983,EMBO J.2:1791)(本明細書に記載のFVIIIタンパク質のコード配列をそのベクターに、lac Zコード領域とインフレームでライゲーションして、ハイブリッドタンパク質が産生されるようにできる)が挙げられるが、これに限定されず、pGEXベクターを用いて、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグとともに、タンパク質を発現できる。これらのタンパク質は通常、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズに吸着させてから、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、細胞から容易に精製できる。ベクターは、精製後にタグを除去しやすいように、切断部位(例えばPreCission Protease(Pharmacia,Peapack,N.J.))を含む。
【0181】
本開示の目的においては、数多くの発現ベクター系を用いることができる。これらの発現ベクターは典型的には、宿主生物において、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの一体部分のいずれかとして複製可能である。発現ベクターは、発現制御配列を含むことができ、その配列としては、プロモーター(例えば、天然において関連付けられているプロモーター又は異種のプロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞をトランスフォーメーション又はトランスフェクションできるベクターにおける真核生物プロモーター系である。発現ベクターでは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV又はMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、又はSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNAエレメントも用いることができる。その他は、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニックな系の使用を伴う。
【0182】
一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列でトランスフォーメーションされた細胞を検出できるように、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性又はネオマイシン耐性)を含む(例えば、Itakura et al.,米国特許第4,704,362号明細書を参照されたい)。所望のDNAが染色体に組み込まれた細胞は、トランスフェクションされた宿主細胞を選択可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択できる。マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性を付与したり、殺生物剤(例えば抗生物質)耐性又は重金属(銅など)耐性を付与したりできる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結するか又はコトランスフォーメーションによって、同じ細胞に導入するかのいずれかをすることができる。
【0183】
最適化FVIII配列を発現させるための有用なベクターの例は、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号明細書)である。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサーと、マウスβグロビン主要プロモーターと、SV40複製起点と、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列と、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエキソン1及びエキソン2と、ジヒドロフォレートレダクターゼ遺伝子と、リーダー配列と、を含む。このベクターは、可変及び定常領域遺伝子に組み込み、細胞にトランスフェクションしてから、G418含有培地で選択し、メトトレキセート増幅をすると、非常に高い抗体発現レベルが得られることが分かっている。ベクター系は、米国特許第5,736,137号明細書及び同第5,658,570号明細書(その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)にも教示されている。この系は、高い発現レベル(例えば、>30pg/細胞/日)をもたらす。その他の例示的なベクター系は、例えば米国特許第6,413,777号明細書に開示されている。
【0184】
他の実施形態では、本開示の本開示のポリペプチドは、ポリシストロニックな構築物を用いて発現させることができる。これらの発現系では、複数の目的遺伝子産物(多量体結合タンパク質の複数のポリペプチドなど)を1つのポリシストロニックな構築物から生成できる。これらの系は、有益なことに、内部リボソーム侵入部位(IRES)を用いて、真核宿主細胞において、比較的高いレベルのポリペプチドをもたらす。適合性のあるIRES配列は、米国特許第6,193,980号明細書(これも本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0185】
より一般的には、ポリペプチドをコードするベクター又はDNA配列を調製したら、発現ベクターを適切な宿主細胞に導入できる。すなわち、宿主細胞をトランスフォーメーションできる。宿主細胞へのプラスミドの導入は、上で論じたように、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。トランスフォーメーションした細胞を、FVIIIポリペプチドの産生に適する条件下で増殖させて、FVIIIポリペプチドの合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0186】
組み換え宿主からポリペプチドを単離するプロセスの説明においては、「細胞」及び「細胞培養液」という用語は、明らかに別段の定めのない限り、ポリペプチド源を示す目的で同義的に使用する。換言すれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、スピンダウンした全細胞、又は培地と懸濁細胞の両方を含む細胞培養液のいずれかからの回収を意味し得る。
【0187】
本開示の単離された核酸は、ヒト細胞において発現するように最適化されているので、タンパク質発現で用いる宿主細胞株は、好ましくは哺乳動物起源の株、最も好ましくは、ヒト又はマウス起源の株である。例示的な宿主細胞株は、上述されている。FVIII活性を有するポリペプチドの作製方法の一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。FVIII活性を有するポリペプチドの生成方法の別の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0188】
本開示のポリペプチドをコードする遺伝子は、哺乳動物以外の細胞(細菌細胞、酵母細胞又は植物細胞など)でも発現できる。この関連においては、哺乳動物以外の様々な単細胞微生物(細菌など)もトランスフォーメーションでき、すなわち、これらの微生物を培養又は発酵で増殖させることができることは分かるであろう。トランスフォーメーションを行える細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)又はサルモネラ(Salmonella)の株などのエンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、(バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、及びヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzae)のメンバーが挙げられる。更に、細菌で発現させると、ポリペプチドは典型的には、封入体の一部になることが分かるであろう。そのポリペプチドは、単離、精製してから、機能性分子にアセンブルする必要がある。
【0189】
或いは、本開示の最適化ヌクレオチド配列は、トランスジェニック動物のゲノムに導入してから、トランスジェニック動物のミルクで発現させるための導入遺伝子に組み込むことができる(例えば、Deboer et al.の米国特許第5,741,957号明細書、Rosenの米国特許第5,304,489号明細書、及びMeade et al.の米国特許第5,849,992号明細書を参照されたい)。好適な導入遺伝子は、カゼイン又はβラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子のプロモーター及びエンハンサーと作動可能に連結したポリペプチドコード配列を含む。
【0190】
インビトロ生成により、所望のポリペプチドを大量に得るためのスケールアップが可能になる。組織培養条件下で哺乳動物細胞を培養する技法は、当該技術分野において公知であり、この技法としては、例えば、エアリフト反応器若しくは連続撹拌反応器での均質懸濁培養、又は例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上若しくはセラミックカートリッジ上に固定又は捕捉した細胞の培養が挙げられる。必要及び/又は所望の場合、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの選択的生合成後、又は本明細書に記載されているHICクロマトグラフィー工程の前若しくは後に、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセスロースクロマトグラフィー又は(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって、ポリペプチドの溶液を精製できる。アフィニティータグ配列(例えばHis(6)タグ)を、任意選択的に、ポリペプチド配列に結合させたり、含めたりして、下流精製を促すことができる。
【0191】
FVIIIタンパク質は、発現したら、当該技術分野の標準的な手順(硫安分画、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含む)に従って精製できる(概して、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,(1982)を参照されたい)。医薬用途には、均質性が少なくとも約90~95%の実質的に純粋なタンパク質が好ましく、98~99%以上の均質性が最も好ましい。
【0192】
医薬組成物
本開示の単離された核酸分子、FVIII活性を有するポリペプチドであって、その核酸分子によってコードされるポリペプチド、ベクター又は宿主細胞を含む組成物は、薬学的に許容される好適な担体を含むことができる。例えば、この組成物は、活性化合物を処理して、作用部位への送達用に設計された調製物にするのを容易にする賦形剤及び/又は補助剤を含むことができる。
【0193】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内投与、皮下投与又は筋肉内投与)用に製剤化できる。注射用製剤は、例えば、投与単位形態でアンプル内に、又は複数回用量容器内に保存剤を加えた状態で供給できる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤のような形態を取ることができ、製剤化剤(懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散化剤など)を含む。或いは、活性成分は、好適なビヒクル、例えばパイロジェンフリー水で構成される粉末形態であることができる。
【0194】
非経口投与用の好適な製剤としては、水溶性形態、例えば水溶性塩である、活性化合物の水性液剤も挙げられる。加えて、適切な油性注射用懸濁剤としての活性化合物懸濁剤を投与できる。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪酸、例えば、ゴマ油又は合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエート又はトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及びデキストランを含め、懸濁剤の粘度を向上させる物質を含むことができる。任意選択的に、懸濁剤は、安定剤も含むことができる。リポソームを用いて、細胞又は間質腔への送達用に、本開示の分子を封入することもできる。例示的な薬学的に許容される担体は、生理学的に適合可能な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。いくつかの実施形態では、組成物は、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、又は塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される物質(湿潤剤など)、又は活性成分の貯蔵寿命若しくは有効性を向上させる少量の補助物質(湿潤剤、乳化剤、保存剤、又は緩衝剤など)を含む。
【0195】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液及び注入用溶液)、分散液、懸濁液、半固体及び固体の剤形を含め、様々な形態であることができる。好ましい形態は、投与方法及び治療用途に依存する。
【0196】
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソーム、又は高い薬物濃度に適するその他の規則構造体として製剤化できる。無菌注射用溶液は、活性成分を、必要に応じて上記1種の成分又は成分の組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要とされる量で組み込み、それに続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散系は、活性成分を、基本分散媒及び上に列挙したものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合には、好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過した溶液から、活性成分及び任意の所望の追加成分との粉末をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを使用することによって、分散剤の場合には、所要粒径を保持することによって、及び界面活性剤を使用することによって保持できる。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアレート塩及びゼラチンをその組成物に含めることによって実現できる。
【0197】
活性成分は、放出制御製剤又は放出制御器具で製剤化できる。このような製剤及び器具の例としては、インプラント、軽皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系が挙げられる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を用いることができる。このような製剤及び器具の調製方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0198】
注射用デポー製剤は、生分解性ポリマー(ポリラクチド-ポリグリコリドなど)内の薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製できる。薬物とポリマーとの比率と、使用するポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御できる。その他の例示的な生分解性ポリマーは、ポリオルトエステル及びポリアンハイドライドである。注射用デポー製剤は、薬物をリポソーム又はマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製できる。
【0199】
組成物には、補足的な活性化合物を組み込むことができる。一実施形態では、本開示のキメラタンパク質は、別の凝固因子、又はそのバリアント、断片、アナログ若しくは誘導体とともに製剤化する。例えば、凝固因子としては、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノゲン、フォンビルブランド因子、又はこれらのいずれかの組み換え可溶性組織因子(rsTF)若しくは活性化形態が挙げられるが、これらに限定されない。止血剤の凝固因子としては、抗線溶薬、例えば、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0200】
投与レジメンを調節して、最適な所望の応答をもたらすことができる。例えば、単回ボーラス投与を行うことも、経時的に、数回の分割投与を行うことも、治療状況の緊急性によって示されるのに応じて、用量を比例的に減少又は増加させることもできる。投与のしやすさと、用量の均一化のために、非経口組成物を投与単位形態で調合するのが有益である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,Pa.1980)を参照されたい。
【0201】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステルなどの不活性成分を含有することができる。
【0202】
好適な製剤用担体の非限定的な例は、E.W.Martin.によるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。賦形剤のいくつかの例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、pH緩衝試薬、及び湿潤剤又は乳化剤を含有することもできる。
【0203】
経口投与用には、医薬組成物は、従来の手段によって調製した錠剤又はカプセル剤の形態をとることができる。組成物を液剤、例えば、シロップ剤又は懸濁剤として調製することもできる。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体、又は水素添加食用脂)、乳化剤(レシチン又はアラビアガム)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分別植物油)、及び保存剤(例えば、メチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)を含むことができる。調製物は、矯味矯臭剤、着色剤及び甘味剤を含むこともできる。或いは、組成物を、水又は別の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することもできる。
【0204】
口腔内投与用には、組成物は、従来のプロトコールに従って錠剤又はロゼンジ剤の形態をとることができる。
【0205】
吸入による投与用には、本開示に従う使用のための化合物は、賦形剤を含むか若しくは含まない噴霧エアロゾル剤の形態で、又は任意選択的に噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素若しくは他の好適な気体とともに加圧パック若しくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で、好都合に送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、計量された量を送達するための弁を設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器又は注入器において使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル剤及びカートリッジを製剤化することができる。
【0206】
また、医薬組成物を、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐薬又は滞留浣腸として直腸投与用に製剤化することもできる。
【0207】
一実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性を有するポリペプチド、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化された核酸分子、核酸分子を含むベクター、又はベクターを含む宿主細胞、及び薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与、及び経口投与からなる群から選択される経路によって投与される。非経口投与は、静脈内投与又は皮下投与であり得る。
【0208】
治療方法
いくつかの態様では、本開示は、本明細書において開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、又は医薬組成物を投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は病態を治療する方法に関する。
【0209】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるFVIII活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、配列番号11、配列番号14、又は配列番号16と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与することを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、本開示は、出血障害を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、血友病Aを治療する方法に関する。
【0211】
単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドは、静脈内、皮下、筋肉内に、又は任意の粘膜表面を通して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、経鼻、直腸、経膣により、又は肺経路を介して投与することができる。単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドは、神経内、眼内、及びくも膜下腔内に投与することもできる。凝固因子タンパク質は、所望の部位へのキメラタンパク質の徐放を可能にするバイオポリマー固体支持体の中に植え込むか、又はそれに接続することができる。
【0212】
一実施形態では、単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドの投与経路は、非経口的である。本明細書で使用する場合、非経口という用語には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、又は膣内投与が含まれる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドは、静脈内投与される。これらの全ての投与形態は明らかに、本開示の範囲内と想定されているが、投与形態は、注射用液剤、特に静脈内注射、動脈内注射又は点滴用の液剤となる。
【0213】
病態の治療のための本開示の組成物の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与される他の医薬品、及び治療が予防的であるか又は治療的であるかを含む、多くの異なる因子によって異なる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。安全性及び有効性を最適化するために、当業者に公知である慣行的な方法を使用して、治療投薬量を調節することができる。
【0214】
本開示の核酸分子、ベクター、又はポリペプチドは、任意選択的に、治療(例えば、予防的又は治療的)を必要とする障害又は病態の治療において有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0215】
本明細書で使用する場合、補助療法と併用して又は組み合わせての本開示の単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドの投与は、その療法及び開示されるポリペプチドの逐次的な、同時の、共存性の、並行性の、併存性の又は同時発生的な投与又は適用を意味する。当業者は、組み合わせた療法レジメンの様々な構成要素の投与又は適用の時間を、治療の全体的な効果を強化するために調整し得ることを理解するであろう。当業者(例えば、医師)は、選択された補助療法及び本明細書の教示に基づいて、不必要な実験を行わずに有効な併用療法レジメンを容易に見極めることができると考えられる。
【0216】
更に、本開示の単離された核酸分子、ベクター、又はポリペプチドを、(例えば、組み合わせた療法レジメンを提供するために)1つ又は複数の薬剤と併用して、又は組み合わせて使用し得ることが理解されるであろう。本開示のポリペプチド又はポリヌクレオチドと組み合わせることができる例示的な薬剤としては、治療される特定の障害に対する現行の標準医療に相当する薬剤が挙げられる。そのような薬剤は、化学的又は生物学的な性質のものであり得る。「生物学的」又は「生物学的薬剤」という用語は、生体及び/又はその産物から作製される、治療薬としての使用を目的とする任意の薬学的活性薬剤を指す。
【0217】
本開示のポリヌクレオチド又はポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象によって異なることがあり、又は当該技術分野で公知であるものに従って投与することができる。例えば、Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 1233-1287の、Bruce A Chabner et al.,Antineoplastic Agents((Joel G.Hardman et al.,eds.,9th ed.1996)を参照されたい。別の実施形態では、標準医療に合致するそのような薬剤の量が投与される。
【0218】
一実施形態では、本明細書に開示される核酸分子及び、それを必要とする対象に核酸分子を投与するための使用説明書を含むキットも、本明細書に開示されている。別の実施形態では、本発明において提供される核酸分子の産生のためのバキュロウイルス系が、本明細書に開示されている。核酸分子は、昆虫細胞において産生される。別の実施形態では、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書に開示されている核酸分子を含む。
【0219】
遺伝子療法
体細胞遺伝子療法は、出血性障害、特に血友病Aに対する可能性のある治療として検討されている。遺伝子療法は、FVIIIをコードするベクターの単回投与後にFVIIIの連続的な内因性産生を通じて疾患を治癒させる可能性があることから、血友病に対する特に魅力的な治療である。血友病Aは、その臨床病態が血漿中を微量(200ng/ml)に循環する単一の遺伝子産物(FVIII)の欠如に完全に起因するため、遺伝子補充アプローチによく適する。
【0220】
レンチウイルスは、その収容力が大きく、組み込みを介して導入遺伝子発現を維持する能力があることから、遺伝子送達ビヒクルとして注目を集めている。レンチウイルスは、数多くのエクスビボ細胞療法臨床プログラムで評価され、有望な有効性及び安全性プロファイルが示されている。
【0221】
本開示は、対象における発現が増加するコドン最適化FVIII配列であって、遺伝子療法で用いると、治療効果を高める可能性のあるコドン最適化FVIII配列を含むレンチウイルスベクターを提供することによって、当該技術分野における重要なニーズを満たす。本開示の実施形態は、本明細書に記載されるように、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上のコドン最適化核酸分子を含むレンチウイルスベクター、レンチウイルスベクターを含む宿主細胞(例えば、肝細胞)、及び開示されるレンチウイルスベクターの使用方法(例えば、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターを使用する出血性障害に対する治療)を対象とする。
【0222】
一般に、本明細書に開示される治療方法は、FVIII凝固因子をコードする少なくとも1つのコドン最適化核酸配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクターの投与を伴い、FVIII凝固因子をコードする核酸配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され、これはいくつかの実施形態では、レンチウイルスベクター(例えば、複製能欠損レンチウイルスウイルスベクター)に組み込まれる。
【0223】
本開示は、それを必要とする対象における出血性障害(例えば、血友病A)を治療する方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むレンチウイルスベクターを5×1010トランスダクションユニット/kg(TU/kg)以下、(10TU/kg以下、又は10TU/kg以下)の少なくとも1回の用量で対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号14と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0224】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、単回用量又は複数回用量として投与される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクター用量は、一度に、又は複数の部分用量、例えば、2つの部分用量、3つの部分用量、4つの部分用量、5つの部分用量、6つの部分用量、若しくは6つを上回る部分用量に分割して投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上のレンチウイルスベクターが投与される。
【0225】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターの用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、又は少なくとも10回、繰り返して投与される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、静脈内注射を介して投与される。
【0226】
いくつかの実施形態では、対象は小児対象であるが、他の態様では、対象は成人対象である。
【0227】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、少なくとも1つの組織特異的プロモーター、すなわち、特定の組織又は細胞型におけるFVIII活性を有するポリペプチドの発現を調節すると考えられるプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターの中の組織特異的プロモーターは、標的肝臓細胞においてFVIII活性を有するポリペプチドの発現を選択的に強化する。いくつかの実施形態では、標的肝臓細胞においてFVIII活性を有するポリペプチドの発現を選択的に強化する組織特異的プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、標的肝臓細胞は肝細胞である。
【0228】
レンチウイルスベクターは、全ての肝臓細胞型に形質導入を行うことができるため、異なる細胞型における導入遺伝子(例えば、FVIII)の発現を、レンチウイルスベクター中の異なるプロモーターを使用して制御することができる。したがって、レンチウイルスベクターは、異なる組織又は細胞型、例えば異なる肝組織又は細胞型におけるFVIII導入遺伝子の発現を制御すると考えられる特異的プロモーターを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝内皮組織におけるFVIII導入遺伝子の発現を制御すると考えられる内皮特異的プロモーター、若しくは肝細胞におけるFVIII導入遺伝子の発現を制御すると考えられる肝細胞特異的プロモーター、又はその両方を含むことができる。
【0229】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝臓以外の組織におけるFVIII導入遺伝子の発現を制御する、1つ又は複数の組織特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、標的細胞又は標的組織のゲノム、例えば、肝細胞のゲノム又は肝内皮細胞のゲノムの中に安定して組み込まれる。
【0230】
いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターにおけるFVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、coBDDFVIII-3aa(配列番号14)を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0231】
他の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターにおけるFVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、coBDDFVIII6-XTEN-3aa(配列番号11)を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0232】
他の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターにおけるFVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号16を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。
【0233】
本明細書に開示されるレンチウイルスベクターは、治療的に有益であると考えられる、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘における出血からなる群から選択される出血性疾患又は障害の治療のための遺伝子療法アプローチを使用して、哺乳動物、例えば、ヒト患者においてインビボで、低用量(例えば、1010TU/kg以下、10TU/kg以下、又は10TU/kg以下)にて使用することができる。一実施形態では、出血性疾患又は障害は血友病である。別の実施形態では、出血性疾患又は障害は血友病Aである。
【0234】
いくつかの実施形態では、標的細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、低用量(例えば、1010TU/kg以下、10TU/kg以下、又は10TU/kg以下)の本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、インビトロで処理される。特定の実施形態では、標的細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、約3.0×10TU/kgの本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、インビトロで処理される。更に別の実施形態では、患者からの細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、低用量(例えば、1010TU/kg以下、10TU/kg以下、又は10TU/kg以下)の本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、エクスビボで処理される。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるレンチウイルスベクター(例えば、1010TU/kg以下、10TU/kg以下、又は10TU/kg以下で投与される)の投与後の血漿中FVIII活性は、生理的に正常な循環FVIIIレベルに対して、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも約220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、又は少なくとも約300%増加する。
【0236】
本開示はまた、それを必要とする対象における止血障害(例えば、血友病Aなどの出血性障害)を治療する、予防する、又は改善する方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むレンチウイルスベクターの治療有効量を対象に投与することを含み、レンチウイルスベクターが、5×1010TU/kg以下、10TU/kg以下、又は10TU/kg以下の少なくとも1回の用量として投与される方法も提供する。
【0237】
本開示のレンチウイルスベクターによる治療、改善、及び予防は、バイパス療法であり得る。バイパス療法を受ける対象は、凝固因子、例えば、FVIIIに対するインヒビターを既に生じているか、又は凝固因子インヒビターを生じやすい状態にある。
【0238】
本開示のレンチウイルスベクターは、フィブリン塊の形成を促進することによって、止血障害を治療又は予防する。本開示の核酸分子によってコードされるFVIII活性を有するポリペプチドは、凝固カスケードのメンバーを活性化することができる。凝固因子は、外因性経路、内因性経路又はその両方に関与するものであり得る。
【0239】
本開示のレンチウイルスベクターは、FVIIIによって治療し得ることが知られている止血障害を治療するために使用することができる。本開示の方法を使用して治療し得る止血障害には、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、第XI因子欠乏症(PTA欠乏症)、第XII因子欠乏症、並びにフィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子若しくは第XIII因子の欠乏症又は構造的な異常、関節血症、筋肉出血、口内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、及び腸腰筋鞘における出血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0240】
対象への投与のための組成物としては、FVIII凝固因子をコードする本開示の最適化ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクター(遺伝子療法用途のため)、並びにFVIIIポリペプチド分子が挙げられる。いくつかの実施形態では、投与のための組成物は、本開示のレンチウイルスベクターとインビボ、インビトロ、又はエクスビボで接触させた細胞である。
【0241】
いくつかの実施形態では、止血障害は遺伝性障害である。一実施形態では、対象は血友病Aを有する。他の実施形態では、止血障害は、FVIIIの欠乏の結果である。他の実施形態では、止血障害は、欠陥のあるFVIII凝固因子の結果であり得る。
【0242】
別の実施形態では、止血障害は、後天性障害であり得る。後天性障害は、基礎にある二次性の疾患又は病態に起因し得る。非関連性の病態としては、限定的ではないが、一例として、がん、自己免疫疾患、又は妊娠が挙げられる。後天性障害は、老齢に、又は基礎にある二次障害を治療するための薬物療法(例えば、がん化学療法)に起因し得る。
【0243】
本開示はまた、止血障害又は止血障害の獲得をもたらす二次性の疾患又は病態を有しない対象を治療する方法にも関する。したがって、本開示は、一般的な止血剤を必要とする対象を治療する方法であって、本開示のレンチウイルスベクターの治療有効量を投与することを含む方法に関する。例えば、一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、又は受けようとしている。本開示のレンチウイルスベクターは、予防薬として手術の前後に投与することができる。
【0244】
本開示のレンチウイルスベクターは、急性出血エピソードを制御するために、手術中又は手術後に投与することができる。手術としては、肝移植、肝切除、又は幹細胞移植が挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
別の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、止血障害を有しない、急性出血エピソードを有する対象を処置するために使用することができる。急性出血エピソードは、重度の外傷、例えば、手術、自動車事故、創傷、裂傷銃撃、又は止血不能な出血をもたらす任意の他の外傷イベントに起因し得る。
【0246】
レンチウイルスベクターは、止血障害を有する対象を予防的に処置するために使用することができる。レンチウイルスベクターは、止血障害を有する対象において急性出血エピソードを治療するために使用することもできる。
【0247】
別の実施形態では、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターの投与及び/又はFVIIIタンパク質のその後の発現は、対象における免疫応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、免疫応答は、FVIIIに対する抗体の発生を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、サイトカイン分泌を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、B細胞、T細胞、又はB細胞とT細胞の両方の活性化を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、対象における免疫応答が、免疫応答を生じていない対象におけるFVIIIの活性に比してFVIIIタンパク質の活性を低下させる、抑制性免疫応答である。特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターを投与することによるFVIIIタンパク質の発現は、単離された核酸分子又はレンチウイルスベクターから発現されるFVIIIタンパク質又はFVIIIタンパク質に対する抑制性免疫応答を阻止する。
【0248】
いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、止血を促進する少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて投与される。止血を促進する上記他の薬剤は、凝固活性を有することが実証されている治療薬である。一例として、止血剤としては、第V因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、若しくはフィブリノゲン、又は上記のいずれかの活性化形態が挙げられるがこれらに限定されない。凝固因子又は止血剤としては、抗線溶剤、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸を挙げることもできる。
【0249】
本開示の一実施形態では、組成物(例えば、レンチウイルスベクター)は、対象に投与された場合にFVIIIが活性化可能な形態で存在するものである。そのような活性化可能な分子は、対象への投与後に凝固部位においてインビボで活性化し得る。
【0250】
本開示のレンチウイルスベクターは、静脈内、皮下、筋肉内に、又は任意の粘膜表面を通して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、経鼻、直腸、経膣により、又は肺経路を介して投与することができる。レンチウイルスベクターは、所望の部位へのベクターの徐放を可能にするバイオポリマー固体支持体の中に植え込むか、又はそれに接続することができる。
【0251】
一実施形態では、レンチウイルスベクターの投与経路は、非経口的である。本明細書で使用する場合、非経口という用語には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、又は膣内投与が含まれる。静脈内形態の非経口投与が好ましい。これらの全ての投与形態は明らかに、本開示の範囲内と想定されているが、投与形態は、注射用液剤、特に静脈内注射、動脈内注射又は点滴用の液剤となる。通常、好適な注射用医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸、又はクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意選択的に安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含むことができる。しかし、本明細書における教示に適合する他の方法では、レンチウイルスベクターは、有害な細胞集団の部位に直接送達して、それにより、患部組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
【0252】
非経口投与のための調製物としては、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液、及び乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液又は懸濁液が挙げられる。本開示では、薬学的に許容される担体としては、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝剤、又は0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。その他の一般的な非経口ビヒクルとしては、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補給液、電解質補液(リンゲルデキストロースベースのものなど)などが挙げられる。保存剤並びに他の添加物、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、及び不活性ガスなども存在してよい。
【0253】
より詳細には、注射用に好適な医薬組成物としては、無菌の水性溶液(水溶性)又は分散液、及び無菌の注射用溶液又は分散液の即時使用調製物のための無菌の粉末が挙げられる。そのような場合、組成物は無菌でなければならず、容易に注射し得る程度に流動性である必要がある。それは製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されることが好ましいと考えられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)及びその好適な混合物を含有する、溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合は要求される粒子径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0254】
微生物活動の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合には、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいと考えられる。吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによって、注射用組成物の長期吸収をもたらすことができる。
【0255】
いずれの場合にも、無菌の注射溶液は、必要に応じて、本明細書に列挙された成分の1つ又はその組み合わせと一緒に、活性化合物(例えば、ポリペプチド単独又は他の活性剤との組み合わせ)を必要な量で適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒体及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合は、好ましい調製方法は、有効成分とあらかじめ濾過滅菌しておいた溶液からの任意の所望の追加成分との粉末が得られる真空乾燥及び凍結乾燥である。注射のための調製物は、処理されて、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジ、又はバイアルなどの容器に充填され、当該技術分野で公知の方法に従って無菌条件下で密封される。更に、調製物をキットの形でパッケージ化して販売することができる。そのような製造品は、付随する組成物が、凝固障害に罹患しているか又はその素因を有する対象を治療するために有用であることを示すラベル又は添付文書を有することが好ましいと考えられる。
【0256】
また、医薬組成物を、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐薬又は滞留浣腸として直腸投与用に製剤化することもできる。
【0257】
病態の治療のための本開示の組成物の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与される他の医薬品、及び治療が予防的であるか又は治療的であるかを含む、多くの異なる因子によって異なる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。安全性及び有効性を最適化するために、当業者に公知である慣行的な方法を使用して、治療投薬量を調節することができる。
【0258】
レンチウイルスベクターは、単回用量として又は複数回用量として投与することができ、複数回用量は連続的に又は特定の時間間隔で投与することができる。最適な用量範囲及び/又は投与スケジュールを決定するために、インビトロアッセイを用いることができる。凝固因子活性を測定するインビトロアッセイは、当該技術分野で公知である。加えて、有効用量を、動物モデル、例えば血友病のイヌ(Mount et al.2002,Blood 99(8):2670)から得られる用量反応曲線から外挿して推定することもできる。
【0259】
上記の範囲内にある中間の用量も、本開示の範囲内にあるものとする。そのような用量を、毎日、隔日、毎週、又は実証的分析によって決定される任意の他のスケジュールに従って、対象に投与することができる。例示的な治療は、長期間、例えば、少なくとも6カ月にわたる複数の投薬による投与を必要とする。
【0260】
本開示のレンチウイルスベクターは、複数の機会に投与することができる。単一の投薬の間隔は、毎日、毎週、毎月、又は毎年であってもよい。また、間隔は、患者で改変ポリペプチド又は抗原の血中レベルを測定することによって指示される通りに不規則であってもよい。本開示のレンチウイルスベクターの投薬量及び頻度は、患者における導入遺伝子によってコードされるFVIIIポリペプチドの半減期によって異なる。
【0261】
本開示のレンチウイルスベクターの投与の投薬量及び頻度は、治療が予防的であるか又は治療的であるかに応じて異なり得る。予防的適用では、本開示のレンチウイルスベクターを含有する組成物は、まだ疾患状態にはない患者に対して、患者の抵抗性を強化するか又は疾患の影響を最小にするために投与される。そのような量は、「予防的有効用量」と定義される。長期間にわたって、比較的低頻度の間隔で、比較的低い投薬量が投与される。一部の患者は、残りの存命期間中、治療を受け続ける。
【0262】
本開示のレンチウイルスベクターは、任意選択的に、治療(例えば、予防的又は治療的)を必要とする障害又は病態の治療において有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0263】
本明細書で使用する場合、補助療法と併用して又は組み合わせての本開示のレンチウイルスベクターの投与は、その療法及び開示されるポリペプチドの逐次的な、同時の、共存性の、並行性の、併存性の、又は同時発生的な投与又は適用を意味する。当業者は、組み合わせた療法レジメンの様々な構成要素の投与又は適用の時間を、治療の全体的な効果を強化するために調整し得ることを理解するであろう。当業者(例えば、医師)は、選択された補助療法及び本明細書の教示に基づいて、不必要な実験を行わずに有効な併用療法レジメンを容易に見極めることができると考えられる。
【0264】
更に、本開示のレンチウイルスベクターを、(例えば、組み合わせた療法レジメンを提供するために)1つ又は複数の薬剤と併用して、又は組み合わせて使用し得ることが理解されるであろう。本開示のレンチウイルスベクターと組み合わせることができる例示的な薬剤としては、治療される特定の障害に対する現行の標準医療に相当する薬剤が挙げられる。そのような薬剤は、化学的又は生物学的な性質のものであり得る。「生物学的」又は「生物学的薬剤」という用語は、生体及び/又はその産物から作製される、治療薬としての使用を目的とする任意の薬学的活性薬剤を指す。
【0265】
本開示のレンチウイルスベクターと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象によって異なることがあり、又は当該技術分野で公知であるものに従って投与することができる。例えば、Chabner et al.,Pharmacological Basis of Therapeutics 1233-1287(Joel G.Hardman et al.,eds.,9th ed.1996)を参照されたい。別の実施形態では、標準医療に合致するそのような薬剤の量が投与される。
【0266】
特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、又は抗炎症剤と併用して投与される。これらの薬剤は一般に、本明細書において治療される対象の免疫系を抑制又はマスキングするように作用する物質を指す。これらの薬剤には、サイトカイン産生を抑制するか、自己抗原の発現をダウンレギュレート若しくは抑制するか、又はMHC抗原をマスキングする物質が含まれる。そのような薬剤の例としては、2-アミノ-6-アリール-5置換ピリミジン;アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド;MHC抗原及びMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;糖質コルチコイドなどのステロイド、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及びデキサメタゾン;抗インターフェロン-γ、-β又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子-α抗体、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体及び抗IL-2受容体抗体を含むサイトカイン又はサイトカイン受容体アンタゴニスト;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体;LFA-3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド;ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;並びにラパマイシンが挙げられる。特定の実施形態では、薬剤は抗ヒスタミン剤である。本明細書で使用される「抗ヒスタミン剤」は、ヒスタミンの生理作用に拮抗する薬剤である。抗ヒスタミン剤の例としては、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、クロモリンナトリウム、アステミゾール、マレイン酸アザタジン、マレイン酸ブロフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸セチリジン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、マレイン酸デクスブロムフェニラミン、マレイン酸デクスクロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、塩酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、塩酸フェキソフェンダジン、塩酸テルフェナジン、塩酸ヒドロキシジン、ロラチジン、塩酸メクリジン、クエン酸トリペラナミン、塩酸トリペレナミン、及び塩酸トリプロリジンが挙げられる。
【0267】
免疫抑制剤、抗アレルギー剤又は抗炎症剤を、レンチウイルスベクター投与レジメンに組み込んでもよい。例えば、免疫抑制剤又は抗炎症剤の投与を、開示されるレンチウイルスベクターの投与の前に開始してよく、その後に単回又はそれ以上の回数の投与を続けてもよい。特定の実施形態では、免疫抑制剤又は抗炎症剤は、レンチウイルスベクターの前投薬として投与される。
【0268】
以前に考察したように、本開示のレンチウイルスベクターは、凝固障害のインビボ治療のために薬学的有効量で投与することができる。この点に関して、本開示のレンチウイルスベクターを、投与を助けて活性薬剤の安定性を促進するために製剤化し得ることが理解されるであろう。好ましくは、本開示による医薬組成物は、生理的食塩水、非毒性緩衝液、保存剤などの薬学的に許容される非毒性無菌担体を含む。当然ながら、本開示の医薬組成物は、ポリペプチドの薬学的有効量を提供するために、単回又は複数回の用量で投与することができる。
【0269】
凝固系の機能の評価には:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検査、発色アッセイ、ROTEM(登録商標)アッセイ、プロトロンビン時間(PT)検査(INRを割り出すのにも使用する)、フィブリノゲン検査(クラウス方法による場合が多い)、血小板数、血小板機能検査(PFA-100による場合が多い)、TCT、出血時間、ミキシングテスト(患者の血漿を正常な血漿と混合した場合に、異常が補正されるか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子検査(例えば、第V因子Leiden、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、多面的な血小板機能検査、トロンボエラストグラフィ(TEG又はSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えばROTEM(登録商標))、又はオイグロブリン溶解時間(ELT)といった多くの検査が利用可能である。
【0270】
aPTT試験は、「内因性」凝固経路(接触活性化経路とも呼ばれる)及び一般的な凝固経路の効力を測定する性能指数である。この試験は、市販されている組換え凝固因子、例えば、FVIII又はFIXの凝固活性を測定するために一般的に使用される。これは外因性経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と併用して使用される。
【0271】
ROTEM(登録商標)分析は、止血の全体的な動態:凝固時間、クロット形成、血塊の安定性、及び溶解に関する情報を提供する。トロンボエラストメトリーの様々なパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、又はこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血の全景を提供することができる。
【0272】
本明細書に記載の様々な態様、実施形態、及び選択肢は全て、いずれか及び全ての変形形態で組み合わせることができる。
【0273】
本明細書に記載される全ての公報、特許、及び特許出願は、各公報、特許、又は特許出願が参照により援用されたことが具体的且つ個別に示されている場合、同程度参照により援用される。
【0274】
本開示について概ね説明してきたが、本明細書において提供される実施例を参照することによって、更に深い理解を得ることができる。これらの実施例は、例示を目的とするに過ぎず、限定を意図するものではない。
【実施例
【0275】
実施例1:最適化coBDDFVIII6-XTEN-3aa導入遺伝子の生成
導入遺伝子発現レベルは、標的宿主のコード配列をコドン最適化することによって増加できるという仮説が立てられた。先の研究では、コドン最適化FVIIIco6XTEN遺伝子カセットを使用して、より高レベルのFVIII発現が示された。本遺伝子カセットは、FVIIIのBドメインにおいてXTEN144ペプチドと融合したBドメイン欠失ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードするコドン最適化cDNAを含む。
【0276】
標的特異性を更に向上させ、免疫原性を低減するために、in silico抗原性解析を使用して評価し、ネオエピトープをFVIIIco6XTENタンパク質に導入するリスクを最小化した。種々の代表的ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子(例えば、DR、DP、DQ)を、オープンソースの免疫エピトープデータベース及び解析リソース(IEDB)及び推奨される予測方法を使用して評価し、キメラタンパク質への主要組織適合性複合体クラスII(MHCII)の結合を決定した。追加の分析には、HLA-DR対立遺伝子(北米又は日本の母集団を代表する)を用いたNetMHCIIpan3.0法も使用した(Lamberth K,et al.Sci Transl Med.2017;9(372):eaag1286,を参照されたい)。
【0277】
半最大阻害濃度(IC50)値が<50nM、<500nM、<5000nMであるペプチドは、それぞれ、MHCIIに対して高い親和性(高い免疫原性リスク)、中程度の親和性、及び低い親和性を有すると考えられた。500nMのIC50カットオフを使用して、HLA-DR対立遺伝子を評価した。IC50値>500nMは、有意な免疫原性の可能性があるとはみなされなかった。
【0278】
キメラタンパク質のFVIII-XTEN接合部に位置するGAP残基は、免疫原性の可能性があることが確認された。出願人は、これらのGAP残基が、もともとクローニングを容易にするために導入された、XhoI制限酵素部位に対応するヌクレオチド配列によってコードされるものとして同定した。GAP残基をコードする9つのヌクレオチドは、FVIIIタンパク質のコード配列から削除された。これらのヌクレオチド及び翻訳されたタンパク質内の対応するGAP残基の欠失により、FVIII-XTEN接合部における免疫原性の可能性が排除されることが確認された。
【0279】
これにより、本明細書で試験されるキメラFVIIIタンパク質をコードする最終的なFVIIIヌクレオチド配列がもたらされ、これは「coBDDFVIII6-XTEN-3aa」と称される。coBDDFVIII6-XTEN-3aaをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11として開示されている。coBDDFVIII6-XTEN-3aaのアミノ酸配列は、配列番号12として開示されている(更なる配列情報については表1を参照されたい)。
【0280】
実施例2:coBDDFVIII-XTEN-3aaをコードする遺伝子発現カセットの生成
遺伝子発現カセットは、in vivo発現のために肝細胞特異的プロモーターの制御下でcoBDDFVIII-XTEN-3aa導入遺伝子を運ぶように設計された。遺伝子発現カセットは、トランスファープラスミド配列の宿主ゲノムへの組み込みを促進する5’及び3’長末端反復配列(LTR)配列が隣接している。
【0281】
LTRコードエレメントには、異種ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期遺伝子プロモーター領域に融合したキメラ5’LTR(配列番号1)、3’LTRのU3領域のエンハンサー/プロモーター配列の自己不活化(SIN)欠失(配列番号X_「dU3RU5」と注釈が付けられている)、並びにTat結合を可能にするR領域及びU5領域(配列番号2_RU5領域)が含まれる。
【0282】
トランスファープラスミドは、キャプシド形成、逆転写、及び宿主細胞ゲノムへの組み込みに必要なシス作用ウイルス配列を維持する。シス作用ウイルス配列は、パッケージングシグナル(Psi、Ψ)、SL123のプライマー結合部位(PBS)(配列番号3)、ステムループ4(SL4)(配列番号4)、逆転写に必要なポリプリントラクト(PPT)(配列番号6)、ドナースプライス部位とアクセプタースプライス部位を有するイントロン、及びスプライスされていない完全なゲノム転写物のRev媒介核輸送に必要なRev応答エレメント(RRE)(配列番号5)である。更に、このプラスミドは、造血系特異的マイクロRNA、miR-142-3pT(配列番号10)の相補配列の4つのタンデムコピーもコードしており、造血系抗原提示細胞における導入遺伝子発現を非造血細胞内で維持しながら3’UTRに組み込まれる(Brown et al.Nature 12:585-591(2006))。
【0283】
遺伝子カセットは、潜在的なMHCII結合部位(XTEN-3aa)を回避するためにFVIII/XTEN接合部の3つのアミノ酸残基(Gly-Ala-Pro)が除去されたXTEN144ペプチドと融合した、Bドメイン欠失ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードするコドン最適化cDNAを含む(実施例1を参照)。このcoBDDFVIII6-XTEN-3aaとも称される導入遺伝子は、2つの上流エンハンサー配列を有する肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(配列番号9)、mTTRエンハンサーエレメント(配列番号8)、及び合成エンハンサー(配列番号7)によって調節される。
【0284】
coBDDFVIII6-XTEN-3aaをコードする遺伝子発現カセットを含むプラスミドのグラフ表示を図1に示す。
【0285】
以下の実施例では、複数の動物モデルにおいて、coBDDFVIII-XTEN-3aa導入遺伝子のインビボ機能を試験する。
【0286】
実施例3:HemAマウス新生仔におけるLV-coBDDFVIII6-XTEN-3aa処置の長期間用量応答
小児のHemAモデルにおいてcoBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現し、FVIII活性を生成するレンチウイルス系を使用することの有効性を評価するために、新生仔(2日齢)のHemAマウスに、側頭静脈注射によって、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを約1.5×10、3.0×10、6×10、又は1.3×1010TU/kg投与した。循環FVIII活性をFVIII発色アッセイで測定した。循環FVIIIタンパク質をヒトFVIII特異的ELISAアッセイで測定した。
【0287】
LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを投与した全てのマウスについて、持続的な長期FVIII発現が用量依存的に観察された。レンチウイルスベクター処理後、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを投与されたマウスのFVIII活性レベルは、25週目の研究終了まで比較的安定したままであった(図2A)。約50%という最も高いFVIII活性は、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを1.3×1010TU/kgの用量で投与されたマウスで観察された。FVIII活性データと一致して、循環FVIIIタンパク質のレベルは、研究の終了まで全てのレンチウイルス用量に対して比較的安定したままであった(図2B)。
【0288】
これらのデータは、レンチウイルス系を使用して送達されたcoBDDFVIII6-XTEN-3aaが新生仔HemAマウスにおいて治療用のFVIIIレベルを生成できることを示している。
【0289】
これらのデータは、小児のHemA患者の治療にLV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを使用することの潜在的な治療効果を裏付けている。
【0290】
実施例4:HemAマウス成体におけるLV-coBDDFVIII6-XTEN-3aa処置の長期間用量応答
成体のHemAモデルにおいてcoBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現し、FVIII活性を生成するレンチウイルス系を使用することの有効性を評価するために、成体(16週齢)のHemAマウスに、側頭静脈注射によって、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを約1.3×1010又は3.7×1010TU/kg投与した。循環FVIII活性をFVIII発色アッセイで測定した。循環FVIIIタンパク質をヒトFVIII特異的ELISAアッセイで測定した。
【0291】
持続的な長期FVIII発現は、用量依存的に両方の用量群において観察された。レンチウイルスベクター処理後、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを投与された全てのマウスのFVIII活性レベルは、少なくとも20週目の研究終了まで比較的安定したままであった(図3)。LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを3.7×1010TU/kg受け取るマウスは、研究期間中、FVIII活性は正常の約50%であった。LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを低用量の1.3×1010TU/kg受け取るマウスは、FVIII活性は正常の5~7%以上であった。
【0292】
これらのデータは、レンチウイルス系を使用して送達されたcoBDDFVIII6-XTEN-3aaが成体HemAマウスにおいて治療用のFVIIIレベルを生成できることを示している。
【0293】
これらのデータは、成体のHemA患者の治療にLV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを使用することの潜在的な治療効果を裏付けている。これらのデータは、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaを使用する治療上の利点が比較的低用量のLVで達成される可能性があることも示唆している。
【0294】
実施例5:非ヒト霊長類におけるLV-coBDDFVIII6-XTEN-3aa処置の長期間用量応答
非ヒト霊長類において、レンチウイルス系を使用してcoBDDFVIII6-XTEN-3aaを発現させ、FVIII活性を生じさせる有効性を評価するために、10頭のオスのブタオザル(体重3.5~4.3kg)を、CD47high/MHC-Ifree 293T細胞から生成したLV-coFVIII-6又はLV-coFVIII-6-XTENで、1.5mL/分の注入速度で静脈内(IV)注入により、処置した。LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaに関する用量は、1×10又は3×10TU/kgであった。抗ヒトFVIII抗体形成を制御するために、LV処置の1日前から7日目まで、10mg/kgの用量で、SOLU-MEDROL(登録商標)(メチルプレドニゾロン)の筋肉内注射により、動物を毎日処置した。LV処置の30分前に、潜在的アレルギー反応を制御するために、4mg/kgの用量で、ポララミン(デクスクロルフェニラミン)のIV注射でも動物を処置した。
【0295】
血漿試料を、LV処置後0、1、3、7、14、21、28、45、及び60日目に採取し、ヒトFVIII活性及びFVIII抗原レベルに関して分析した。循環FVIII活性をFVIII発色アッセイで測定した。循環FVIIIタンパク質をヒトFVIII特異的ELISAアッセイで測定した。各LV投与群のFVIII活性レベル及びFVIII抗原レベルを、治療後の時点全体にわたって平均した。
【0296】
1×10及び3×10TU/kg処置群の平均FVIII活性レベルは、それぞれ正常の約20%及び約75%であった(図4A)。1×10又は3×10TU/kg処置群の平均FVIII抗原レベルは、それぞれ約31ng/mL又は約140ng/mLであった(図4B)。
【0297】
これらのデータは、LV-coBDDFVIII6-XTEN-3aaが、非ヒト霊長類において治療レベルのヒトFVIIIを産生できることを示す。
【0298】
配列
【0299】
【表1】
【0300】
【表2】
【0301】
【表3】
【0302】
【表4】
【0303】
【表5】
【0304】
【表6】
【0305】
【表7】
【0306】
【表8】
【0307】
【表9】
【0308】
【表10】
【0309】
【表11】
【0310】
【表12】
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【0314】
【表16】
図1
図2A
図2B
図3
図4A-4B】
【配列表】
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【国際調査報告】