IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨークの特許一覧 ▶ ニューサウス イノベーションズ ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

特表2024-537825MnOナノ材料による炎症及び癌転移の阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】MnOナノ材料による炎症及び癌転移の阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/32 20060101AFI20241008BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20241008BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K33/32
A61K9/14
A61P29/00
A61P37/02
A61P35/00
A61P17/02
A61P31/04
A61P43/00 111
A61P35/04
A61K47/54
A61K9/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519808
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022077427
(87)【国際公開番号】W WO2023056470
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,311
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/305,340
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】506093452
【氏名又は名称】ニューサウス イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】レオング, カム ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ズホング, イリング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB25
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC41
4C076DD40
4C076DD60
4C076DD68
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA38
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC02
(57)【要約】
無細胞核酸(例えば、細胞外ssRNA、dsRNA及び非メチル化DNA)を捕捉(結合)可能であるアニオン性酸化マンガンナノ粒子核酸スカベンジャーは、細胞毒性の低い生分解性アニオン性スカベンジャーであり、種々の病状に対する処置を提供する。スカベンジャーの主成分は、マンガン化合物(例えば、酢酸マンガン)及び酸(例えば、タンニン酸)を高温(例えば、100~150℃)で用いることによって合成され得る酸化マンガンである。合成は、水中のマンガン化合物及び酸を混合して混合物を形成し、それを撹拌し、加熱し、冷却させることによって行われ得る。アニオン性酸化マンガンナノ粒子は、冷却した混合物から抽出される。得られたナノ材料の通常のサイズは30~100nmの範囲であり、調製されたままのナノ材料のゼータ電位は約-20mVである。ナノ粒子は、炎症を処置し、又は癌を処置するための被検体への投与を含む種々の用途を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性酸化マンガンナノ粒子を含む核酸スカベンジャー。
【請求項2】
前記アニオン性酸化マンガンナノ粒子の平均粒子サイズは30~100nmである、請求項1に記載の核酸スカベンジャー。
【請求項3】
核酸スカベンジャーを作製する方法であって、
水中でマンガン化合物及び酸を混合して混合物を形成するステップと、
前記混合物を撹拌するステップと、
前記混合物を熱処理するステップと、
前記混合物を冷却するステップと、
冷却した前記混合物からアニオン性酸化マンガンナノ粒子を抽出するステップと、
を備える核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項4】
前記マンガン化合物は、酢酸マンガンを含む、請求項3に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項5】
前記酸は、タンニン酸を含む、請求項4に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項6】
前記混合物における前記タンニン酸に対する前記酢酸マンガンの質量比は1:2~6である、請求項5に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項7】
前記混合物を撹拌する前記ステップは、前記混合物を室温で10分間撹拌するステップを備える、請求項3に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項8】
前記混合物を熱処理する前記ステップは、前記混合物をオートクレーブ中で2時間加熱するステップを備える、請求項3に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項9】
前記混合物を冷却する前記ステップは、前記混合物を50℃未満の温度まで冷却するステップを備える、請求項3に記載の核酸スカベンジャーを作製する方法。
【請求項10】
クルクミンを有するアニオン性酸化マンガンナノ粒子を含むcfDNAスカベンジャー。
【請求項11】
前記クルクミンを有する前記アニオン性酸化マンガンナノ粒子は、ヨウ化IR780でさらに修飾される、請求項10に記載のcfDNAスカベンジャー。
【請求項12】
MnOナノ粒子を作製する方法であって、
マンガン化合物、酸及び溶媒を混合して混合物を作製するステップと、
前記混合物を90℃~175℃の温度まで少なくとも1時間加熱するステップと、
前記混合物を少なくとも50℃まで冷却するステップと、
を備えるMnOナノ粒子を作製する方法。
【請求項13】
前記マンガン化合物は、酢酸マンガンを含む、請求項12に記載のMnOナノ粒子を作製する方法。
【請求項14】
前記酸は、タンニン酸を含む、請求項13に記載のMnOナノ粒子を作製する方法。
【請求項15】
前記溶媒は、水を含む、請求項14に記載のMnOナノ粒子を作製する方法。
【請求項16】
被検体における炎症を処置する方法であって、請求項1、2、10及び11のいずれか一項に記載の核酸スカベンジャーの治療上有効量の前記被検体への投与を備える方法。
【請求項17】
被検体における炎症を処置する方法であって、請求項3から9及び13から15のいずれか一項に記載の方法から結果として得られる前記核酸スカベンジャーの治療上有効量の前記被検体への投与を備える方法。
【請求項18】
前記核酸スカベンジャーは、MnO@クルクミンナノ粒子を含む、請求項16及び17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
被検体における炎症の処置のための医薬品の製造における、請求項1、2、10及び11のいずれか一項に記載の核酸スカベンジャーの使用。
【請求項20】
被検体における炎症の処置のための医薬品の製造における、請求項3から9及び13から15のいずれか一項に記載の方法から結果として得られる前記核酸スカベンジャーの使用。
【請求項21】
前記核酸スカベンジャーは、MnO@クルクミンナノ粒子を含む、請求項19及び20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
請求項1、2、10及び11のいずれか一項に記載の核酸スカベンジャーを含む薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1、2、10及び11のいずれか一項に記載の核酸スカベンジャーを含む薬学的組成物。
【請求項24】
前記核酸スカベンジャーは、MnO@クルクミンナノ粒子を含む、請求項22及び23のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記核酸スカベンジャーは、cfDNAを効果的に捕捉又は結合して前記被検体における炎症応答を緩和する、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸スカベンジャーは、cfDNAを効果的に捕捉又は結合して前記被検体における炎症応答を緩和する、請求項19から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記組成物が被検体に投与される場合、前記組成物はcfDNAを効果的に捕捉又は結合して炎症応答を緩和する、請求項22から24のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記炎症は、自己免疫疾患、癌、外傷又は敗血症に起因する、請求項16及び17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記炎症は、核酸含有DAMP/PAMPによるToll様受容体(TLR)シグナル伝達の活性化に起因する、請求項16から18及び25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記被検体における1個以上の核酸感知TLRの活性化を防止する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1個以上の核酸感知TLRは、TLR3、TLR7、TLR9及び/又はTLR4を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記被検体におけるTLR寛容単球の発生を防止する請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
サイトカインストームの発生を防止する請求項16から18、25及び28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記MnOナノ粒子は、経口的、経鼻的又は局所的に投与される、請求項16から18、25及び28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記MnOナノ粒子は、静脈内、腹腔内又は筋肉内に投与される、請求項16から18、25及び28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
被検体における癌を処置する方法であって、請求項1、2、10及び11のいずれか一項に記載の方法から結果として得られる前記核酸スカベンジャーの治療上有効量の前記被検体への投与を備える方法。
【請求項37】
被検体における癌を処置する方法であって、請求項3から9及び13から15のいずれか一項に記載の方法から結果として得られる前記核酸スカベンジャーの治療上有効量の前記被検体への投与を備える方法。
【請求項38】
前記投与は、前記癌の転移を制限するのに役立つ、請求項36及び37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記核酸スカベンジャーは、アポトーシス性又はネクローシス性の癌細胞によって放出されたcfDNAを結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ここに記載及び図示される全て。
【請求項41】
ここに提供される情報において明示的又は暗示的に示され及び/又は記載される、当業者には明らかであり及び/又は理解され得る特徴に限定されることなく含む、いずれか及び全ての方法、処理、装置、システム、キット、生成物、材料、組成物及び/又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/250,311号及び2022年2月1日に出願された米国仮特許出願第63/305,340号の優先権を主張し、それらの内容がそれらの全体において参照により取り込まれる。
【0002】
連邦政府支援研究に関する声明
本発明は、米国陸軍医学研究(USAMR)よって授与された助成金番号W81XWH1910463及び国立衛生研究所よって授与された助成金番号R01AR073935の元で政府支援により行われた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
損傷関連分子パターン(DAMP)及び病原体関連分子パターン(PAMP)は、細胞ストレス又は組織傷害に応じて放出され、内因性の危険シグナルとして機能する分子である。DAMP及びPAMPは、自然免疫系を活性化することによって強力な炎症応答を開始するToll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体によって検出される。炎症は、傷害、疾患及び感染に対する身体の健常応答の重要な部分である。一方で、TLRの過剰活性化は、最終的に免疫恒常性の崩壊をもたらし、したがって、炎症性疾患及び自己免疫疾患のリスクを増大させ得る。したがって、TLR媒介性炎症を制御する方法は、多くの疾患の処置に役立つことになる。
【0004】
そのような疾患の1つがCOVID-19であり、それは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルスによって引き起こされる感染症である。COVID-19の症状は、上気道感染症の軽度の症状から、人工呼吸器又は体外式膜型人工肺を必要とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び呼吸不全にまで及ぶ。集中治療室(ICU)の患者などの疾患スペクトルの末期にある患者は、急速に悪化することがあり、死亡リスクが高い。これらのような転帰不良の根底には、肺傷害及びARDSの発生及び進行に寄与する過剰炎症応答がある。
【0005】
ワクチン及び抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体による治療は、SARS-CoV-2に対して有効であることが示されている。しかし残念なことに、全ての利用可能なワクチン及び治療は、最も突然変異しやすいウイルスの領域である同一のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的とする。ワクチンの接種ができない又は接種を望まない人々の集団が存在するために、この集団がウイルスの新規変異体の繁殖場として作用し、我々は、新しいブースターワクチン及び治療を継続的に開発及び配布してこれらの変異体を抑制する必要がある。したがって、より普遍的なSARS-CoV-2の感染の伝播及び重症化を制限するアプローチが必要である。
【0006】
近年、研究者らは、可溶性カチオン性核酸結合ポリマー(NABP)及びNABPによるナノ粒子が、cfDNA及び関連する脂質/タンパク質複合体を捕捉することによってTLR9活性化を低下させて敗血症、外傷及び関節リウマチ(RA)を治療し、膵臓癌及び乳癌転移を減少させ得ることを実証した。一方で、アミン末端デンドリマーは、マウス及びラットにおいて、血小板を活性化し、致死的な播種性血管内凝固症候群(DIC)様状態を引き起こすことが示されている。カチオン性NABP及びナノ粒子の潜在的な全身性の細胞毒性は、それらの臨床的な使用を制限することになる。したがって、効果的及び安全なcfDNAスカベンジャーは、未だに見出されておらず、利用されていない。
【0007】
カチオン性ナノ粒子と比較して、中性及び負の表面電荷を有するナノ粒子は、血清タンパク質の低い吸着を示し、結果としてより長い循環半減期をもたらす。より重要なこととして、研究は、ZnO、シリカ、シリカ-チタニア中空体及び金ナノ粒子などの正に帯電したナノ粒子は、非貪食細胞において、それらの負の、さらには中性の対応物より毒性が強いことを実証した。したがって、cfDNAを捕捉する負の表面電荷を有するアニオン性ナノ粒子を利用して炎症応答を効果的かつ安全に緩和することが望ましい。したがって、前述の問題を解決するアニオン性酸化マンガンナノ粒子核酸スカベンジャー及びその使用方法が望まれる。
【0008】
本開示は、炎症の処置及び癌転移の制限に関し、特に、核酸及びcfDNAスカベンジャーとしてのアニオン性酸化マンガンナノ粒子の開発及び使用に関する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、本発明は、ここに記載されるようにアニオン性MnOナノ粒子を含む核酸スカベンジャーを提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、被検体における炎症を軽減又は阻害する方法を提供する。本方法は、ここに記載されるMnOナノ粒子を被検体に投与するステップを備える。
【0011】
第3の態様において、本発明は、癌を処置して被検体における転移を制限するのに役立つ方法を提供する。本方法は、ここに記載されるMnOナノ粒子を被検体に投与するステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明者らによって生成されたアニオン性酸化マンガン(MnO)ナノ粒子の測定された流体力学的サイズを示すプロットである。
図2図2は、様々な濃度でのMnOナノ粒子及びPAMAM-G3で処置されたRAW264.7細胞の細胞生存能力を比較するグラフである。
図3A図3Aは、異なる材料でのMnOナノ粒子及びPAMAM-G3のDNA結合親和性を比較するグラフであり、TE緩衝液中のDNA質量比である。
図3B図3Bは、ウシ胎児血清(FBS)で処置したHEK-Blue hTLR3細胞及び未処置サンプルについて、アゴニスト誘導性Toll様受容体(TLR)活性化のMnOナノ粒子による阻害を比較するグラフである。
図3C図3Cは、FBSで処置したHEK-Blue hTLR8細胞及び未処置サンプルについて、アゴニスト誘導性TLR活性化のMnOナノ粒子による阻害を比較するグラフである。
図3D図3Dは、FBSで処置したHEK-Blue hTLR9細胞及び未処置サンプルについて、アゴニスト誘導性TLR活性化のMnOナノ粒子による阻害を比較するグラフである。
図4A図4Aは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の流体力学的サイズを比較するグラフである。
図4B図4Bは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子のゼータ電位を比較するグラフである。
図4C図4Cは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子、ヨウ化IR780及びクルクミンのUV可視光スペクトルを比較するグラフである。
図4D図4Dは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子、ヨウ化IR780及びクルクミンのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを比較するグラフである。
図5A図5Aは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンで24時間処置したRAW264.7細胞の細胞生存能力を比較するグラフである。
図5B図5Bは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンで24時間処置した4T1細胞の細胞生存能力を比較するグラフである。
図5C図5Cは、NIRレーザー照射の存在下及び非存在下でのMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の4T1細胞に対する細胞毒性のグラフである。生存細胞をカルセイン-AMで緑色に染色し、死滅/後期アポトーシス細胞をPIで赤色に染色した。
図5D図5Dは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子、クルクミン及び異なるナノ粒子でのタンニン酸のDNA結合親和性を比較するグラフであり、FBS無しのTE緩衝液中のDNA質量比である。
図5E図5Eは、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子、クルクミン及び異なるナノ粒子でのタンニン酸のDNA結合親和性を比較するグラフであり、10%のFBSを含むTE緩衝液中のDNA質量比である。
図5F図5Fは、RAW264.7細胞によるMnOナノ粒子の内在化並びにリソソームにおけるCy3標識MnOナノ粒子及びCy5標識シトシン-リン酸-グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド(CpG)の共局在化の共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)画像を示す(スケールバー:10μm)。
図6A図6Aは、24時間にわたってFBS無し(すなわち、未処置(UT))の、CpGに対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるHEK-Blue細胞の活性化を比較するグラフである。
図6B図6Bは、24時間にわたってFBS無し(すなわち、未処置(UT))の、ポリ(I:C)に対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるhTLR9細胞の活性化を比較するグラフである。
図6C図6Cは、24時間にわたってFBS無し(すなわち、未処置(UT))の、リポ多糖(LPS)に対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるhTLR3細胞の活性化を比較するグラフである。
図6D図6Dは、24時間にわたってFBS存在下で、CpGに対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるHEK-Blue細胞の活性化を比較するグラフである。
図6E図6Eは、24時間のFBS存在下で、ポリ(I:C)に対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるhTLR9細胞の活性化を比較するグラフである。
図6F図6Fは、24時間のFBS存在下で、LPSに対して異なる質量比での、MnOナノ粒子、MnO@クルクミンナノ粒子及びクルクミンによるhTLR3細胞の活性化を比較するグラフである。
図6G図6Gは、24時間の異なる処置(#1:50μg/ml、#2:100μg/ml)後のマクロファージ(CpG活性化RAW264.7細胞)によるTNF-α産生を示す。
図6H図6Hは、24時間の異なる処置(#1:50μg/ml、#2:100μg/ml)後のマクロファージ(LPS活性化RAW264.7細胞)によるTNF-α産生を示す。
図6I図6Iは、24時間の異なる処置後のRAW264.7細胞(CpG活性化RAW264.7細胞)におけるCOX-2のmRNA発現を示す。
図6J図6Jは、24時間の異なる処置後のRAW264.7細胞(LPS活性化RAW264.7細胞)におけるCOX-2のmRNA発現を示す。
図6K図6Kは、24時間の異なる処置後のRAW264.7細胞におけるCOX-2のmRNA発現を示す。
図6L図6Lは、24時間の異なる処方(#1:50μg/ml、#2:100μg/ml)でのインキュベーション後の骨髄由来マクロファージ(BMDM)におけるCD86(M1マクロファージマーカー)発現のフローサイトメトリー分析を示す。
図6M図6Mは、CpG、CpG及びクルクミン、CpG及びMnOナノ粒子並びにCpG及びMnO@クルクミンナノ粒子で処置した細胞に対して未処置(UT)細胞を比較する、トランスウェルアッセイを用いて評価したCpG活性化の阻害を示す。
図6N図6Nは、LPS、LPS及びクルクミン、LPS及びMnOナノ粒子並びにLPS及びMnO@クルクミンナノ粒子で処置した細胞に対して未処置(UT)細胞を比較する、トランスウェルアッセイを用いて評価したLPS活性化マクロファージ誘導性マクロファージ遊走を示す。
図7A図7Aは、トランスウェル-マトリゲル浸潤アッセイの概略図である。
図7B図7Bは、コントロール処方、DAMP及びMnOナノ粒子を有するDAMPで処置したMDA-MB-231細胞の浸潤を示す。
図7C図7Cは創傷治癒アッセイの概略図である。
図7D図7Dは、コントロール培地、DAMP及びMnOナノ粒子を有するDAMPで様々な期間にわたって処置したMDA-MB-231細胞の創傷治癒画像を示す。
図7E図7Eは、コントロール培地、DAMP及びMnOナノ粒子を有するDAMPで処置したMDA-MB-231細胞の遊走を比較するグラフである。
図8A図8Aは、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の腫瘍内注入後の、異なる時間での担4T1腫瘍生存マウスの蛍光強度を示すグラフである。
図8B図8Bは、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の腫瘍内注入後の、異なる時間での担4T1腫瘍生存マウスの代表的な蛍光画像を示す。
図8C図8Cは、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子溶液を注入後6時間の、マウスからの摘出主要臓器及び腫瘍のex vivo蛍光画像を示す。
図9A図9Aは、PBS、MnOナノ粒子、クルクミン、MnO@クルクミンナノ粒子、レーザー処置、クルクミンと組み合わせたレーザー処置、MnOナノ粒子と組み合わせたレーザー処置及びMnO@クルクミンナノ粒子と組み合わせたレーザー処置で処置したマウスの体重を比較するグラフである。
図9B図9Bは、PBS、MnOナノ粒子、クルクミン、MnO@クルクミンナノ粒子、レーザー処置、クルクミンと組み合わせたレーザー処置、MnOナノ粒子と組み合わせたレーザー処置及びMnO@クルクミンナノ粒子と組み合わせたレーザー処置で処置したマウスの腫瘍体積を比較した一連のグラフである。
図9C図9Cは、PBS、MnOナノ粒子、クルクミン、MnO@クルクミンナノ粒子、レーザー処置、クルクミンと組み合わせたレーザー処置、MnOナノ粒子と組み合わせたレーザー処置及びMnO@クルクミンナノ粒子と組み合わせたレーザー処置で処置したマウスのIVIS(登録商標)画像を示す。
図9D図9Dは、PBS、MnOナノ粒子、クルクミン、MnO@クルクミンナノ粒子、レーザー処置、クルクミンと組み合わせたレーザー処置、MnOナノ粒子と組み合わせたレーザー処置及びMnO@クルクミンナノ粒子と組み合わせたレーザー処置で処置したマウスからの摘出腫瘍の画像を示す。
図9E図9Eは、ELISAによって検出されたマウス血清中のIL-6レベルを示す。
図9F図9Fは、ELISAによって検出されたマウス血清中のTNF-αレベルを示す。
図9G図9Gは、ELISAによって検出されたマウス血清中のIL-1ベータレベルを示す。
図9H図9Hは、PBS、MnOナノ粒子、クルクミン、MnO@クルクミンナノ粒子、レーザー処置、クルクミンと組み合わせたレーザー処置、MnOナノ粒子と組み合わせたレーザー処置及びMnO@クルクミンナノ粒子と組み合わせたレーザー処置で処置したマウスの生存率を比較するグラフである。
図9I図9Iは、種々の処置後のマウスからの代表的な肺の画像(i~iii)及び肺組織のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色(iv)を示す。
図9J図9Jは、血清中のcfDNAのレベルを示す。
図10図10は、集中治療室(ICU)においてデキサメタゾン有り及び無しでの、COVID-19死亡患者と対比した回復患者の血液中の免疫細胞サブセットのプロファイリングを示す。免疫細胞サブセットのデータを、研究の最終日における全白血球(TL)又は全単球(TM)の割合として示す。網掛け領域は、各免疫細胞サブセットの正常範囲を強調している。A.CD3T細胞の割合は、臨床状況にかかわらずリンパ球減少と一致し、デキサメタゾン(+)はデキサメタゾン(-)より低い傾向にある。B.CD4T細胞の割合は全T細胞と一致する。C.CD8T細胞の割合は、CD4T細胞及び全T細胞と一致する。D.ナチュラルキラー(NK)細胞の割合は、臨床状況又はデキサメタゾン状況にかかわらず、正常範囲を下回る。E.ナチュラルキラーT(NKT)細胞の割合は、臨床状況にかかわらず、デキサメタゾン(-)患者において正常範囲より高い。デキサメタゾン(+)患者は、正常範囲に近いNKT細胞の割合を有し、退院患者は死亡患者より高い傾向にある。F.B細胞の割合は、臨床状況又はデキサメタゾン状況にかかわらず、正常範囲を下回る。G.好中球の割合は、臨床状況又はデキサメタゾン状況にかかわらず、正常範囲を上回る。H.回復患者の中では、好酸球はデキサメタゾン(-)において正常範囲より高く、デキサメタゾン(+)において正常範囲内であり、このパターンは、死亡患者の中では逆転する。I.好塩基球の割合は、臨床状況又はデキサメタゾン状況にかかわらず、正常範囲内である。J.全単球の割合は、臨床状況又はデキサメタゾン状況にかかわらず、正常範囲内である。K.CD16単球の割合は、デキサメタゾン(+)患者において臨床転帰にかかわらずほぼ同等である一方で、CD16単球の割合は、デキサメタゾン(-)患者において、死亡患者と対比して退院患者においてより低い傾向にある。L.CD16単球の割合は、デキサメタゾン(+)患者において臨床転帰にかかわらずほぼ同等である一方で、CD16単球の割合は、デキサメタゾン(-)患者において、死亡患者と対比して退院患者において有意に高い。*はp<0.05であり、nsは両側t検定を介して有意差無しであり、図に示されない限り統計上の有意差は見られなかった。
図11図11は、Toll様受容体(TLR)3、4、7及び9についてHEK-TLRレポーター細胞を用いた、COVID-19のICU患者からの血清及び気管内吸引液(ETA)の縦断的TLR活性化プロファイリングを示す。A.COVID-19患者の血清を用いたTLR3、TLR4、TLR7及びTLR9活性化の縦断的プロファイリングは、以下の、(1)全ての時点にわたる血清によるTLR3及びTLR7の強力な活性化、(2)1日目、3日目、14日目及び21日目の血清によるTLR4の活性化並びに(3)3日目、14日目及び21日目の血清によるTLR9の活性化を示す。B.COVID-19患者の血清及びETAは、正常な血清と比較してTLR3、TLR4、TLR7及びTLR9を有意に活性化する。*は両側t検定を介してp<0.05であり、***は両側t検定を介してp<0.001であり、****は両側t検定を介してp<0.0001であり、nsは両側t検定を介して有意差無しであり、Dは日数であり、dilは希釈である。
図12図12は、COVID-19のICU患者からの血清及びETAを核酸結合マイクロ繊維で処置することは、TLR活性化損傷関連分子パターン及び病原体関連分子パターン(DAMP/PAMP)の活性及び量を減少させることを示す。核酸結合繊維による血清の処置は、A.TLR3、B.TLR4、C.TLR7及びD.TLR9に対するHEK-TLRレポーター細胞のTLR活性化を有意に減少させる。核酸結合繊維によるETAの処置は、E.TLR3、F.TLR4、G.TLR7及びH.TLR9に対するHEK-TLRレポーター細胞のTLR活性化を有意に減少させる。核酸結合繊維による血清の処置は、I.DNA、J.RNA、K.ヌクレオソーム及びL.HMGB-1のレベルを有意に減少させる。核酸結合繊維によるETAの処置は、M.DNA、N.RNA、O.ヌクレオソーム及びP.HMGB-1のレベルを有意に減少させる。Q.核酸結合繊維による血清の処置は、アルブミンレベルをわずかに減少させる。R.核酸結合繊維によるETAの処置は、アルブミンレベルに影響しない。*は両側t検定を介してp<0.05であり、***は両側t検定を介してp<0.001であり、****は両側t検定を介してp<0.0001であり、NSは両側t検定を介して有意差無しである。
図13図13は、プロテオミクスを用いた、死亡患者における骨髄活性化及びPAMPの担体消費を示す。A.生存者に対する死亡患者において差次的に上方制御されたプロテオームの(p<0.05に調整済みの)有意なパスウェイの類似性クラスタリングである。B.差次的に上方制御されたプロテオーム及びそれらの優勢的パスウェイの骨髄関連免疫相互作用の高信頼度(信頼度0.9超)STRINGネットワークである。C.全感染患者についての平均値に対して差次的に上方制御(赤色)及び下方制御(青色)される免疫関連タンパク質の、非感染コントロール(右のバー)と比較したそれらのレベルによって順序付けられた経時的な発現ヒートマップである。D.差次的に下方制御されるプロテオーム及び優勢的パスウェイのタンパク質相互作用についての高信頼度(信頼度0.9超)STRINGネットワークである。E.差次的に発現するタンパク質ヒットについての動向及び有意な時点値による時系列プロットである。
図14図14は、酸化マンガン(MnO)ナノ粒子が、アゴニスト媒介性TLR活性化を阻害することを示す。MnOナノ粒子は、ウシ胎児血清(FBS)非存在下又は存在下で24時間のナノ材料処置後、HEK-Blue hTLR3(左)、hTLR8(中)及びhTLR9(右)細胞の活性化を用量依存的に阻害する。実験は、反復して行われた(N=3)。データをバー±SEMとして示す。全てのアゴニストを、Invivogen社から購入した。ORNは、ORN06/LyoVecをいう。
図15図15は、MnOナノ粒子が、COVIDのETA及び血清中のTLR活性化PAMP/DAMPの活性を減少させ、単球におけるDAMP/PAMP媒介性TLR寛容を防止することを示す。A.MnOナノ粒子は、TLRレポーター細胞アッセイにおいて、COVID-19血清によるTLR3、4、7及び9の刺激を有意に減少させる。B.MnOナノ粒子は、TLRレポーター細胞アッセイにおいて、COVID-19ETAによるTLR3、4、7及び9の刺激を有意に減少させる。C.新たに単離した単球を、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(polyI:C、二本鎖ウイルスRNA DAMP模倣体)の有り又は無しで24時間処置し、続けてリポ多糖(LPS、細菌DAMP模倣体)の有り又は無しで5時間処置を行い、その後、細胞上清を採取し、IL-6のレベルを定量した。MnOナノ粒子での処置は、順次的なTLR刺激に応じた単球によるIL-6産生を有意に減少させた。**は両側t検定を介してp<0.01であり、****は両側t検定を介してp<0.0001である。
図16図16は、死亡患者と対比した回復患者のプロテオーム分析の縦断的特徴を示す。A.測定された時点について、死亡患者と生存患者の間の双方の結果(タンパク質ラベルの左)間の平均値に対して差次的に上方制御(赤色)及び下方制御(青色)された全てのタンパク質の、健常な個人(右)に対する死亡サンプルの差次的な発現によって順序付けられたヒートマップである。B.探索された差次的な発現タンパク質の時間的経過プロットである。C.正規化前後の個々のサンプルのタンパク質強度分布のボックスプロット(方法参照)である。D.プロテオミクスでプロファイリングされた患者コホートの人口統計である。
図17図17は、MnOナノ粒子がSARS-CoV-2の複数の株、すなわちヨーロッパの「G」変異体(左)及び南アフリカの「B.1.1.7」変異体(右)のプラーク形成を減少させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
組成物
アニオン性酸化マンガンナノ粒子核酸スカベンジャーは、無細胞核酸(例えば、細胞外ssRNA、dsRNA及び非メチル化DNA)を捕捉又は結合可能である細胞毒性の低い生分解性アニオン性スカベンジャーであり、炎症に対抗し、癌転移を制限するための処置として使用され得る。MnOナノ粒子の主成分は、マンガン化合物及び酸を高温で組み合わせることによって合成され得る酸化マンガンである。酸化マンガンの合成は、溶媒中でマンガン化合物及び酸を少なくとも1分間混合して混合物を形成し、そして、それを撹拌し、約90~175℃の温度で少なくとも1時間加熱し、そして、自然冷却することによって行われ得る。そして、アニオン性酸化マンガンナノ粒子を冷却した混合物から抽出する。例えば、本発明者らは、Milli-Q(登録商標)超純水中で酢酸マンガン及びタンニン酸を1:2~6の質量比で、室温で10分間混合し、混合物を150℃で2時間加熱し、そして、それを50℃未満まで自然冷却することによって、彼らのMnOナノ粒子を調製した。得られたナノ材料の通常のサイズは、図1に示すように30~100nmの範囲であり、調製されたままのナノ材料のゼータ電位は約-20mVである。
【0014】
代替の実施形態では、MnO NPは、マンガン化合物、酸及び溶媒から作製されてもよく、マンガン化合物及び任意の適切なタイプの酸を溶媒と少なくとも1分間混合し、そして、約90℃~約175℃の範囲の温度で少なくとも1時間加熱し、そして、少なくとも50℃まで自然冷却する。酸化マンガンを作製するのに適したマンガン化合物は、限定されることなく、リン酸マンガン、酸化マンガン、酢酸マンガン、硫化マンガン、二酸化マンガン、七酸化マンガン、塩化マンガン、炭酸マンガンなどを含む。
【0015】
MnOナノ粒子の炎症誘発性分子捕捉能力は、MnOナノ粒子の表面リガンド、すなわちタンニン酸に由来するはずである。酸については、我々は、DNA結合親和性を有するフェノール酸を用いてもよい。したがって、適切な酸は、例えば、タンニン酸、エラグ酸、没食子酸及びタンニン酸の他の誘導体などのフェノール酸を含む。
【0016】
溶媒は、マンガン化合物及び酸を完全に溶解する必要がある。適切な溶媒は、例えば、単独又は任意の組合せで、水、エタノール又はメタノールを含む。
【0017】
さらに、マンガン化合物、酸及び溶媒の混合は、マンガン化合物及び酸が溶媒に完全に溶解し、よく混合される限り、例えば、0.5分~5分など、任意の適切な期間にわたって行われ得ることが理解されるべきである。
【0018】
MnOナノ粒子は、およそ5nm~125nmを範囲とするサイズ、約0.5:1~7及び1:2~6を範囲とするマンガン化合物の酸に対する質量比並びに/又は約-5mV~-30mVを範囲とするゼータ電位を有し得る。例えば、本発明者らによって生成されたMnOナノ粒子は、約30~100nmのサイズを有し(図1)、約-20mVのゼータ電位を有する。
【0019】
より詳細に以下に説明するように、本発明者らは、in vitro及びin vivoでのMnOナノ粒子の抗炎症治療活性を、(1)cfDNA誘導性TLR活性化及び核因子カッパーB(NF-kB)シグナル伝達を阻害する、炎症性無細胞DNA(cfDNA)を結合及び捕捉、(2)活性化マクロファージ誘導性マクロファージ動員の阻害及び(3)腫瘍細胞の遊走及び浸潤の阻害、の3つの作用機序に焦点を当てて特徴付けた。
【0020】
研究者らは、可溶性カチオン性核酸結合ポリマー(NABP)及びNABPによるナノ粒子はcfDNA及び関連する脂質/タンパク質複合体を捕捉することによって、TLR9活性化を低下させるように使用可能であることを実証した。一方で、近年、マウス及びラットにおいて、アミン末端デンドリマーが血小板を活性化し、致死的な播種性血管内凝固症候群(DIC)様状態を引き起こすことが示された。したがって、NABPの潜在的な細胞毒性は、それらの臨床的な使用を制限し得る。図2では、本発明者らは、MnOナノ粒子は核酸結合カチオン性ポリマーPAMAM-G3よりも細胞毒性が低いことを実証した(図2)。細胞毒性を、MTSアッセイを用いて評価した。このアッセイを行うために、RAW264.7細胞を96ウェルプレートに1×10個/ウェルの密度で播種し、37℃、5%のCOで成長培地中で一晩接着させた。細胞を、種々の濃度でのMnOナノ粒子又はPAMAM-G3で24時間処置した。そして、培地を10%のMTSを含有する100μLの培地と交換し、細胞生存能力を、マルチウェルプレートリーダーを用いて490nmのODを測定して決定した。
【0021】
図3Aでは、本発明者らは、MnOナノ粒子がDNAに対して強い親和性を有することを実証する。このデータは、12.5μLのQuant-iT PicoGreen(登録商標)及び25μLの5mg/mLの子牛胸腺DNAを1×Tris-EDTA(TE)緩衝液と暗所で混合するDNA結合アッセイを用いて生成された。100μLの異なる濃度のMnOナノ粒子を100μLの上記溶液と組み合わせ、96ウェルブラックプレートに添加し、37℃で30分間インキュベーションした。非結合のPicoGreen(登録商標)-DNA複合体の520nmでの蛍光強度を、490nmでの励起を介してマルチウェルプレートリーダーで測定した。本発明者らは、それらの正味の負の表面電荷にもかかわらず、MnOナノ粒子が市販のスカベンジャーポリマーPAMAM-G3のものと同等の高いDNA結合親和性を示すことを見出した。
【0022】
MnO NPは、無細胞DNA(cfDNA)を捕獲して細胞内アゴニスト誘導性TLR活性化を阻害するのに使用され得る。我々は、HEK-Blue hTLR3(図3B)、hTLR8(図3C)及びhTLR9(図3D)を含む広範囲のToll様受容体細胞(TLR)においてMnO NPを検証した。HEK-Blue hTLR3、hTLR8及びhTLR9細胞を、HEK293細胞にhTLR遺伝子及び最適化された分泌型胚アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子をコトランスフェクションすることによって得た。HEK-Blue hTLR細胞を、10%のFBS及び1%のペニシリン-ストレプトマイシンを有するDMEM中で培養及び維持した。TLR活性化を阻害するMnOナノ粒子の能力を評価するため、HEK-Blue hTLR細胞を96ウェルプレートに1時間播種し、そして、2μLのアゴニスト(TLR9に対してCPG Bw006、TLR3に対してポリ(I:C)、TLR8に対してORN06/Lyo Vecであり、1mg/mL)で処置した。10分間のインキュベーション後、20μLの異なる濃度でのMnOナノ粒子を200μLの最終容量で導入した。24時間後、上清を採取し、Quanti-Blue(商標)と混合した。SEAP活性に関連するTLR活性化を、マルチウェルプレートリーダーで620nmでのODを測定することによって特定した。用いた(96ウェルプレート中の)細胞密度は、HEK-Blue hTLR9細胞に対して8×10個/ウェル、HEK-Blue hTLR3細胞に対して5×10個/ウェル及びHEK-Blue hTLR8細胞に対して4×10個/ウェルであった。本発明者らは、MnOナノ粒子が、FBSの存在又は非存在にかかわらず、用量依存的に、HEK-Blue hTLR9細胞のCpG誘導性活性化を阻害し、HEK-Blue hTLR3細胞のポリ(I:C)誘導性活性化を阻害し、HEK-Blue hTLR8細胞のORN06/Lyo Vec(ORN)誘導性活性化を阻害することを見出した。
【0023】
一実施形態では、負の表面電荷を有するアニオン性MnOナノ粒子は、cfDNAを捕捉又は結合して光温熱治療(PTT)によって引き起こされる炎症応答などの炎症応答を効果的かつ安全に緩和するのに用いられる。PTTは、近赤外(NIR)光吸収剤を利用して光エネルギーを熱アブレーションのための熱に変換する、病状を処置する方法である。それは、低侵襲かつ高効率の癌の処置とみなされている。近赤外光の良好な制御性及び暗所での光温熱剤(PTA)の無視することができる毒性により、PTTは正常組織に害を与えることなく腫瘍細胞を特異的に排除し得る。一方で、PTAによって誘導される異常高熱のため、PTT後の最も可能性のある細胞死の様式は、原形質膜の破裂及びその後の細胞内容物の放出によって特徴付けられるネクローシスである。ネクローシスの間に放出されるDAMP及びPAMPは、サイトカインストーム、多臓器不全及び死を引き起こし得る炎症反応を開始する。炎症性循環cfDNA、すなわち損傷宿主細胞によって放出される核DNA又はミトコンドリアDNAは、そのようなDAMPの1つである。PTTによって誘導される炎症は、腫瘍の再生、転移性播種及び治療抵抗性を含む深刻な副作用を引き起こし得る。したがって、PTTによって引き起こされる炎症応答の効果的な緩和は、腫瘍処置に対して大きな意義がある。
【0024】
ここに用いられるように、被検体における炎症を処置するためなどの、MnO NP又はMnO@クルクミンNPを含む組成物又は薬学的組成物の治療上有効量の投与は、非経口又は経口経路による送達、筋肉内注入、皮下/皮内注入、静脈内注入、髄腔内投与、口腔投与、経皮送達、局所投与及び鼻腔又は気道経路による投与を限定されることなく含む、被検体における望ましい場所に送達するための任意の適切な経路によって、意図される被検体又は被検体の特定の細胞に物質を分配、送達又は適用することによって達成され得る。
【0025】
MnOナノ粒子の抗炎症効果を増加するために、それらをクルクミンと組み合わせて、以下「MnO@クルクミン」ナノ粒子といわれるものを形成し得る。クルクミンは、長年にわたって病状を処置するのに用いられている天然の抗炎症剤である。MnO@クルクミンナノ粒子を近赤外(NIR)色素であるヨウ化IR780で修飾して「MnO@クルクミン@IR780」ナノ粒子を形成し得る。ヨウ化IR780は、レーザー照射の存在下で、PTT及び光線力学的治療(PDT)の効果を同時に達成するのに用いられることもあり、FDAによって臨床適用が承認されている。一方で、そのような光増感剤の疎水的な性質及び癌特異性の欠如は、それらの臨床適用を制限する。したがって、本発明者らは、優れた溶解性を有するMnO@クルクミンナノ粒子をヨウ化IR780のための担体として利用した。MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子は、病原性cfDNAスカベンジャー及び抗炎症剤としてPTTに対して使用可能である。
【0026】
図4Aに示すように、MnO@クルクミンナノ粒子はMnOナノ粒子(約50nm)よりも大きい流体力学的サイズ(約100nm)を示し、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子はさらに大きかった(約240nm)。MnO、MnO@クルクミン及びMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子は全て負に帯電した表面及び約-23mVのゼータ電位を示した(図4B)。MnO、MnO@クルクミン及びMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子のUV-vis吸収スペクトル、フォトルミネッセンス(PL)スペクトル及び写真を図4C及び4Dに示す。MnO@クルクミンナノ粒子の吸収スペクトルは、MnOナノ粒子と比較して、約430nmにクルクミンに起因する明らかなピークを示す。さらに、MnO@クルクミンのPLスペクトルは、約550nmのλmaxでクルクミンの特徴的なPLピークを含む(図4D)。MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子は、広い吸収帯(約600~800nm)及びIR780に帰属する約780nmに明らかなPLピークを示し、MnO@クルクミンナノ粒子におけるIR780の修飾に成功したことを実証した。MnO@クルクミンナノ粒子に対するMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の流体力学的サイズの増大はクルクミン(IR780)による機能化が成功したことを示唆し、これは色の変化及び変化した吸収/PLスペクトルによってさらに証明された。
【0027】
抗PTT誘導性炎症を軽減するMnO及びMnO@クルクミンナノ粒子の能力を評価するために、本発明者らはまず、MTSアッセイによってそれらのin vitroでの細胞毒性を調べた。結果は、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、RAW264.7マウスマクロファージ細胞(図5A)及び4T1細胞(図5B)に対して無視することができる細胞毒性を示すことを明らかにした。さらに、NIRレーザー照射の存在及び非存在におけるMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の4T1細胞に対する細胞毒性も研究した(図5C)。
【0028】
PTT損傷宿主細胞によって放出される炎症性循環cfDNAは、cfDNAの捕捉によって軽減され得る深刻な炎症応答を引き起こし得る。したがって、種々のナノ粒子のcfDNA捕捉能力を調べるために、本発明者らは、非結合のPicoGreen(登録商標)-標識DNAを測定することによって、10%のFBSの有り及び無しでのTris-EDTA(TE)緩衝液におけるナノ粒子の子牛胸腺DNA結合親和性を調べた(図5D及び5E)。図5D及び5Eに示すように、無視することができるクルクミンのDNA結合能力とは対照的に、以前の報告と一致して、遊離タンニン酸はDNAに結合し得る。興味深いことに、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、それらの正味の負の表面電荷にもかかわらず、それらのタンニン酸機能的リガンドに帰属する高いDNA結合親和性を示した。興味深いことに、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、おそらくは比表面積の高いそれらのナノ構造に起因して、遊離タンニン酸より強いDNA結合能力を示した。DNA結合能力は、血清タンパク質の競合的相互作用のため、全てのグループにおいて10%のFBSの添加で減少したが、この効果はDNAに対するナノ材料の質量比を増加させることによって克服された。これらの結果は、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子が、アポトーシス性及びネクローシス性の癌細胞によって放出されるcfDNAを結合するスカベンジャーとして作用し得ることを実証する。
【0029】
cfDNAは、TLR活性化を介して炎症応答を活性化し得る。具体的には、非メチル化CpGモチーフを有するcfDNA種(ここでは「CpG DNA」という)は、TLR9を活性化し得る。TLR9は、結果的に炎症誘発性パスウェイの上方制御となる、核因子カッパーB(NF-kB)に関与するシグナル伝達カスケードを開始する。したがって、本発明者らはナノ粒子を内在化させ、in vitroでのcfDNA-TLR相互作用をブロックするそれらの能力を評価した。図5F(上段)は、MnO-Cy3ナノ粒子がRAW264.7細胞によって内在化され、エンドリソソーム内に局在化したことを実証し、ナノ粒子の細胞取り込み効率が高いことを実証する。Cy5-CpG及びMnO-Cy3の蛍光シグナルの共局在化は、エンドリソソーム区画で観察され(図5Eの下段)、ナノ粒子が細胞に侵入し、エンドリソソーム区画中のcfDNAを捕捉し得ることを示す。
【0030】
我々はさらに、HEK-BlueヒトTLR(hTLR)細胞を用いることによって、炎症誘発性分子誘導性TLR活性化のナノ粒子媒介性阻害を研究した。クルクミンは、HEK-Blue hTLR9/3/4細胞において、アゴニスト誘導性活性化に対して無視することができる阻害効果を示した。これに対して、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、FBSの存在又は非存在にかかわらず、HEK-Blue hTLR9細胞のCpG誘導性活性化、HEK-Blue hTLR3細胞のポリ(I:C)誘導性活性化及びHEK-Blue hTLR4細胞のLPS誘導性活性化を用量依存的に阻害し得る(図6A~6F)。これに対して、クルクミンは、HEK-Blue hTLR9/3/4のアゴニスト誘導性活性化を阻害できない。これらの結果は、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、cfDNA及びcfRNAを阻害するだけでなく、LPS誘導性TLR活性化も阻害することを示す。
【0031】
TLRは、いくつかの炎症誘発性サイトカインの分泌を誘導する様々なPAMP及びDAMPを認識する。TLR活性化を阻害し、DAMP-TLR相互作用をブロックすることは、PTT誘導性炎症を緩和し、腫瘍の再生及び転移を減少させる有望な戦略である。CpG Bw006及びLPSを用いて、RAW264.7細胞においてそれぞれTLR9及びTLR4を活性化し、そして、MnO及びMnO@クルクミンの抗炎症効果をTNF-α及びCOX-2のレベルを測定することによって評価した。図6Gに示すように、CpGは、RAW264.7細胞におけるサイトカインTNF-αの生成を、コントロール群(UT)のものと比べて大きく悪化させた。クルクミンは、サイトカインTNF-αの量を用量依存的にわずかに減少させた。これに対して、TNF-α産生は、MnO処置によって大きく軽減された。MnO@クルクミンは、TNF-αのCpG誘導性RAW264.7細胞放出を有意に阻害し、それは同一用量のクルクミンでは無修飾クルクミンのものよりもはるかに強力であった。増強された阻害効果は、MnOに起因した。RAW264.7細胞に対するLPSの効果は、CpGのものと同様であり、LPSはTNF-αの分泌を大きく増強し得る(図6H)。クルクミンは、LPS誘導性RAW264.7細胞によるTNF-α産生をわずかに減少させるのみであった。これに対して、MnO及びMnO@クルクミンは、TNF-αの量を用量依存的に顕著に減少させ得た。さらに、RT-qPCRの結果は、MnO及びMnO@クルクミンは、CpG活性化及びLPS活性化RAW264.7細胞においてCOX-2のmRNA発現を緩和することを示した(図6I及びJ)。無修飾クルクミンは、CpG誘導性RAW264.7細胞においてCOX-2のmRNAの生成をある程度まで緩和したが、LPS誘導性RAW264.7細胞によるCOX-2のmRNAの産生に対しては明らかな阻害効果がなかった(図6K)。これらの所見は、MnO及びMnO@クルクミンがCpG-TLR/LPS-TLR相互作用をブロックし、さらにサイトカインTNF-α及びCOX-2のmRNAの発現を下方制御し、炎症誘発性分子のスカベンジャーとして作用してPTT誘導性炎症を緩和し、腫瘍再生及び転移を阻害し得ることを示した。さらに、我々は、FACS分析によって証明されるように、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子がM1表現型(炎症誘発性表現型)へのマクロファージ分極シフトを阻害することを示した(図6L)。
【0032】
炎症部位におけるマクロファージの集積は、炎症を悪化させる。光温熱癌治療において、活性化マクロファージ誘導性マクロファージ動員を減少させることは、PTT誘導性炎症を緩和する1つの態様である。図6M及び6Nに示すように、CpG Bw006活性化及びLPS活性化RAW264.7マクロファージによって放出される誘引物質は、トランスウェルチャンバーの上側から下側への多数のマクロファージの動員をもたらす走化性を誘導した。MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子の添加は、マクロファージの遊走を大きく減少させることを示し、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子は、マクロファージが活性化されると、活性化マクロファージ誘導性マクロファージ遊走を阻害し得ることを実証した。
【0033】
大多数の癌による死亡は転移によって引き起こされ、腫瘍細胞は他の組織に遊走及び浸潤する。したがって、我々は、図7A~7Eに示すように、MnO及びMnO@クルクミンが乳癌細胞の浸潤及び遊走を阻害し得るか否かを、トランスウェル-マトリゲル浸潤アッセイを用いて評価した。ここで、凍結融解法によって調製したMDA-MB-231細胞のDAMPの添加は、MDA-MB-231腫瘍細胞の浸潤を誘導し、これらの効果はMnOナノ粒子処置によって有意に阻害された(図7A及び7B)。これらの結果の概略図を図7Cに示し、写真を図7Dに示し、定量化を図7Eに示す。処置の48時間後、DAMPによる群の創傷治癒領域は急速に回復し、経時的にほぼ完全に閉じた(図7E)。これに対して、創傷修復は、MnOナノ粒子での処置後に明らかに妨害された。これらの所見は、MnOがin vitroでのDAMPの侵襲誘発作用及び遊走を中和し得ることを示唆する。
【0034】
PTTによって引き起こされる炎症応答に対するMnO及びMnO@クルクミンの効果を調べるために、我々は、4T1-ルシフェラーゼ細胞をBalb/cマウスの皮下脂肪体に接種することによって、4T1転移腫瘍モデルを確立した。腫瘍体積が80~100mmとなった場合、担4T1腫瘍マウスにMnO@クルクミン@IR780ナノ粒子を腫瘍内注入して近赤外蛍光撮影及び光線治療を行った。蛍光シグナル強度を、異なる時間間隔でIVIS(登録商標)装置に記録した。図8Aにおいて観察されるように、腫瘍部位の蛍光シグナルは注入後6時間で最高レベルに到達し、そして経時的に低下し、それは図8Bの蛍光画像と一致した。したがって、注入後6時間後に、マウスに808nmのレーザー(1W/cm)を10分間照射し、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の生体内分布及び腫瘍集積挙動を調べた。MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子を用いて、担4T1腫瘍マウスのEx vivoでの蛍光撮像を実施した。図8Cに示すように、腫瘍領域で強力な蛍光シグナルが存在し、MnO@クルクミン@IR780ナノ粒子の効率的な腫瘍集積を実証した。さらに、肝臓及び肺も、単核食細胞系の吸収に起因し得る可視的な微弱な蛍光を示した。
【0035】
MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子のPTT誘導性炎症応答を緩和する能力を、担4T1腫瘍マウスにおいて検討した。腫瘍体積がほぼ100mmに達した場合、担4T1腫瘍マウスを無作為に8個の群に分け(1群あたりn=8)、以下の、PBS、MnO、クルクミン、MnO@クルクミン、レーザー、レーザー+クルクミン、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミンのうちの1つで処置した。担4T1腫瘍マウスは、最初に光温熱治療を受け、そして、週3回の静脈内注入によって異なる処方でさらに処置された。図9A及び9Bに示すように、クルクミン、MnO及びMnO@クルクミン群のみが、マウスの体重及び腫瘍のサイズに対して明らかな効果を示さなかった。レーザー群は体重の増加を示したが、PTT治療後15日目に腫瘍の再発が観察された。レーザー+クルクミン、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミン群のマウスは体重の増加を示し、腫瘍の再発及び転移を阻害し、したがって、クルクミン、MnOナノ粒子及びMnO@クルクミンナノ粒子が炎症応答を阻害するのに使用可能であることを確認した。
【0036】
具体的には、クルクミン、MnO又はMnO@クルクミンでの処置は、各々、レーザー治療の非存在下では、腫瘍抑制に対するわずかな効果を示した。レーザー処置は、初期には腫瘍成長を阻害したが、レーザー群中のほとんどのマウス(75%)はPTT後10~15日に腫瘍再発を示した。これに対して、レーザー+クルクミン、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミンでの処置は、腫瘍成長を初期に抑制しただけでなく、75%超の阻害率で腫瘍再発も明らかに阻害した。
【0037】
異なる処方で処置したマウスのIVIS(登録商標)画像を図9Cに示し、これはPTT誘導性炎症に関するMnO及びMnO@クルクミンナノ粒子の治療効果をさらに実証する。さらに、図9Dに示すように、MnO@クルクミンナノ粒子群中の8個の腫瘍のうちの5個は処置後に完全に消失し、cfDNAスカベンジャー及び抗炎症剤の組合せが腫瘍再発を阻害する可能性を有することを証明した。
【0038】
さらに、マウス血清中のサイトカインレベル(すなわち、IL-6、TNF-α及びIL-1β)をELISAによって分析した(図9E~G)。レーザー+クルクミン、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミン群は、PBS群及びレーザー群より明らかに低いサイトカインレベルを示し、レーザー処置後のさらなる処置のためのクルクミン、MnO又はMnO@クルクミンナノ粒子の適用が炎症性サイトカインレベルを減少させ得ることを示した。これらの所見により、クルクミン、MnO及びMnO@クルクミンナノ粒子が、それらの炎症誘発性分子捕捉及び抗炎症効果により、炎症応答及び原発性腫瘍再発を阻害し得ることが確認された。重要なこととして、クルクミン、MnO及びMnO@クルクミンの腫瘍再発に対する抗炎症性効果及び阻害効果は、PTT後のマウスの生存率も大きく改善した(図9H)。
【0039】
治療誘導性炎症は、原発性腫瘍再生を引き起こすだけでなく、転移にもつながり得る。したがって、我々は、処方の肺組織における抗腫瘍活性及び抗転移活性をさらに調べた。図9Iに示すように、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミン群は、炎症誘発性分子の捕捉及び抗炎症効果により、レーザー群と比較して肺転移の有意な阻害を示した。レーザー+クルクミン、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミンでの処置は原発性腫瘍再発を阻害し得たが、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミン群はMnO及びMnO@クルクミンナノ粒子による炎症誘発性分子(例えば、cfDNA及びcfRNA)の捕捉により、レーザー+クルクミンよりも良好な肺転移に対する阻害効果を示した。
【0040】
我々は、マウス血清中のcfDNAレベルをさらに検討して異なる処置の前後の傾向を調べた(図9J)。レーザー処置後(レーザー群)、PTT損傷細胞によって放出されたcfDNA量は上昇した。これに対して、レーザー+MnO及びレーザー+MnO@クルクミン群の双方が低いcfDNAレベルを示し、レーザー治療後の追加的なMnO及びMnO@クルクミンが効果的にcfDNAを捕捉し得ることを示した。
【0041】
COVID-19の病理をより深く理解するために、本発明者らはCOVID-19の集中治療室(ICU)患者からの血液及び呼吸器サンプルを研究した。彼らは、これらの患者が死細胞及び瀕死細胞によって放出される循環している損傷関連分子パターン(DAMP)及び病原体関連分子パターン(PAMP)によって刺激される炎症性ストームに罹患することを見出した。彼らは、長期にわたる高レベルのDAMP/PAMPが単球を過剰刺激し、疾患で死亡するCOVID-19患者における単球の疲弊(すなわち、免疫寛容)をもたらすことを観察した。最後に、彼らは、酸化マンガン(MnO)ナノ粒子は、単球寛容を誘導するDAMP/PAMPの能力を制限するのに使用可能であることを示した。これらのナノ粒子は、深刻なCOVID-19及び他の疾患を有する患者において、過剰炎症及び免疫疲弊に対抗する治療薬としての使用に対する可能性を有する。これらのナノ粒子は、(1)それらは、任意のSARS-CoV-2変異体に対して、突然変異について調整するための改変無しに使用可能であること、及び(2)それらは4℃で保存されてもよく、それが-80℃での保存を必要とするワクチンよりそれらをより利用しやすいこと、を含む、SARS-CoV-2に対して利用可能な治療を超えるいくつかの有利な効果を提供する。重要なこととして、それらはまた、生分解性であり細胞毒性が低い。
【0042】
MnOナノ粒子を用いる他の方法
本発明は、(1)MnOナノ粒子、(2)MnO粒子を用いて被検体における癌を処置する方法及び(3)MnO粒子を用いて被検体における炎症を処置又は軽減する方法に向けられる。
【0043】
MnO粒子は、細胞をMnOナノ粒子と接触させることによって、細胞のウイルス感染を減少又は阻害する方法に有用であることも知られている。ここで用いられるように、例えば、「サンプルを接触させること又は細胞を接触させること」のように、「接触させること」は、in vitro、ex vivo又はin vivo(すなわち、ここに定義される被検体内)で、直接的又は間接的にサンプル又は細胞を接触させることをいう。サンプル又は細胞を接触させることは、化合物のサンプルへの添加、細胞への添加、組織への添加、例えば、被検体の鼻腔若しくは粘膜通路へのコーティング若しくは添加又は被検体への投与などの被検体の所定部位への添加を含み得る。接触させることは、溶液、細胞、組織、哺乳動物、被検体、患者又はヒトへの投与を含む。さらに、細胞を接触させることは、細胞培養物に薬剤を添加することを含む。
【0044】
「ウイルス感染」は、細胞中又は被検体中のウイルスの存在によって引き起こされる感染である。ウイルス感染は、様々な公知の方法を用いて評価され得る。例えば、ウイルス感染は、ウイルスタンパク質を検出する(すなわち、ウイルス特異的抗体を用いて)イムノアッセイを用いて又はウイルスゲノム材料を検出するPCR若しくは核酸シーケンシングを用いて評価され得る。
【0045】
このような方法は、未処置のコントロール細胞、すなわちMnOナノ粒子と接触していない同等の細胞と比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はそれ以上に細胞のウイルス感染を減少又は阻害し得る。実施例は、細胞をMnOナノ粒子と接触させた後のプラーク形成の80%の減少を実証する。ウイルス感染の減少又は阻害は、コントロールの未処置の細胞と比較して、本方法を予防的に、すなわち、感染より前の細胞集団に適用して細胞から細胞へのウイルスの感染及び/又は拡散を減少させる場合、感染のリスク又はウイルス感染の拡散の減少となり得る。ウイルス感染の減少は、ここに提供される組成物で処置されていない細胞と比較して、ウイルス侵入、ウイルス複製、ウイルス細胞間拡散の減少をもたらし得る。例えば、実施例に示すように、プラーク数及び/又はサイズが低減され得る。
【0046】
ほとんどのウイルスは、細胞表面の受容体に結合し、エンドサイトーシスを受けることによって宿主細胞に侵入する。実施例では、本発明者らは、彼らのMnOナノ粒子がSARS-CoV-2ウイルスの侵入、複製及び細胞死を防止し得ることを実証する。理論によって束縛されることなく、本発明者らは、ナノ粒子が荷電カルボキシル基及びアミン基でスパイクタンパク質を取り囲み、立体障壁を作製することによって、宿主細胞におけるウイルススパイクタンパク質とACE-2受容体の間の相互作用を阻害することにより、この効果を発揮し得ると考えている。
【0047】
「細胞」は、全ての生物を構成する基本単位である。全ての細胞は、膜内に囲まれた細胞質(すなわち、細胞の内部を満たすゼラチン状の液体)からなる。
【0048】
細胞は、MnOナノ粒子と直接的又は間接的に接触し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、MnOナノ粒子とin vitro又はex vivoで接触する。例えば、細胞は、培養培地にMnOナノ粒子を添加することによって、組織培養において(例えば、組織培養プレート又はフラスコにおいて)MnOナノ粒子と接触し得る。他の実施形態では、細胞は、MnOナノ粒子とin vitroで、すなわち、被検体において接触する。これらの実施形態では、接触ステップは、MnOナノ粒子を被検体に投与することによって行われ得る。
【0049】
炎症を処置する又は癌を処置する方法
本主題の一態様において、本主題は、被検体における炎症を軽減し、又は癌を処置する方法を提供する。本方法は、MnOナノ粒子を被検体に投与するステップを備える。
【0050】
被検体における癌又は炎症を処置する本方法について、MnOナノ粒子は、予防的又は治療的に被検体に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、被検体は、単に炎症若しくは炎症増加のリスクにあり、又は、例えば、炎症をもたらす状態に罹患することもあれば、炎症をもたらす状態若しくは環境になりやすいと見なされることもある。
【0051】
「炎症」とは、病原体、損傷細胞、毒性化合物又は照射などの有害な刺激に対する免疫系の自然な応答である。いくつかの実施形態では、本方法によって処置される炎症は、ウイルス感染、自己免疫疾患、癌、外傷又は敗血症に関連する。
【0052】
炎症の軽減は、炎症マーカーの発現を測定することによって評価され得る。炎症の軽減はまた、腫脹、発赤若しくは疼痛などの炎症の症状の軽減として、又は特定の炎症性疾患の症状の軽減として検出され得る。例えば、COVIDでは、炎症の減少は、被検体の血液の酸素飽和度の維持及び正常な肺機能の維持として測定され得る。本発明のMnOナノ粒子は、TLRシグナル伝達のDAMP/PAMP媒介性活性化をブロックすることによって炎症を軽減する。したがって、いくつかの実施形態では、炎症の軽減は、TLRシグナル伝達パスウェイの下流エフェクターの発現又は活性化を測定することによって評価される。本発明の方法は、未処置のコントロール被検体において測定された同様の炎症応答と比較して、被検体における炎症を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はそれ以上で軽減又は阻害し得る。炎症の軽減は、未処置のコントロール被検体と比較して予防的に本方法を適用する場合、すなわち、本組成物を、COVID感染患者と共に作業し、又はCOVID感染患者に曝露される看護師若しくは医師などの感染リスクの高い個人などの未感染の個人に投与する場合、被検体における感染の症状、ウイルス感染に関連する病的状態、病的状態若しくは感染の期間又は被検体における炎症の他の任意の測定値の減少となり得る。ウイルス誘導性炎症の軽減は、治療的に(すなわち、診断後に)ここに提供される組成物と接触しない又はここに提供される組成物を投与されない被検体と比較して、感染被検体における疾患/病的状態の深刻度又は長さの減少をもたらし得る。例えば、感染した個人は、感染した個人のための疾患の経過を短縮するここに説明される方法を用いてもよく、したがって、投与は、被検体における感染の診断後となり得る。
【0053】
本発明の方法は、核酸含有DAMP/PAMPによるToll様受容体(TLR)-シグナル伝達の活性化による炎症を軽減するのに使用可能である。実施例では、本発明者らは、MnOナノ粒子の添加が、COVID-19のICU患者の血清及びETAに存在するDAMP/PAMPによるTLR3、TLR4、TLR7及びTLR9の刺激を有意に減少させたことを実証する(図15A~B)。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、被検体における1個以上の核酸感知TLRの活性化を防止又は低減する。好適な実施形態では、本方法は、TLR3、TLR4、TLR7及び/又はTLR9の活性化を防止する。
【0054】
単球などの免疫細胞がTLRアゴニストに反復的に曝露される場合、それらは、さらなる刺激に対して「寛容」となり、効果的な応答を起こすことができない。「TLR寛容」は、TLRの繰り返される活性化又は慢性的な活性化に対して変化した細胞の応答性の状態として説明され得る。実施例では、本発明者らは、MnOナノ粒子での処置は、順次的なTLR刺激に応じた単球によるIL-6産生を有意に減少させることを実証する(図15C)。分泌されるIL-6のレベルが高いことは、TLR寛容表現型を示す。したがって、本研究は、MnOナノ粒子が、TLR寛容表現型の誘導を制限することを実証する。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、被検体におけるTLR寛容単球の発生を防止する。TLR寛容は、単球におけるIL-10、IL-1β及びIL-12の産生の減少又はIL-6産生レベルの増加として検出され得る。
【0055】
本発明者らはまた、COVID-19死亡患者からのCD16単球はTLR寛容表現型を示すことも特定した。回復患者からの単球はTLR活性化に対する強固な抗ウイルス応答を発揮するが、死亡患者からの単球は、サイトカインストームの効果を増幅させる不完全な抗ウイルス応答を起こす。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームの発生を防止する。「サイトカインストーム」は、自然免疫系がサイトカインと呼ばれる炎症誘発性シグナル伝達分子の無制御及び過度の放出を引き起こす生理学的反応である。通常は、サイトカインは感染に対する身体の免疫応答の一部であるが、それらの大量の突然の放出は多臓器不全及び死を引き起こし得る。
【0056】
ここに記載される方法のいずれも、被検体に対して行われ得る。方法が適用される「被検体」は、哺乳動物又は鳥類などの非哺乳動物であり得る。適切な哺乳動物は、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、コウモリ、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない。所定の実施形態では、本方法は、研究目的で実験動物(例えば、マウス及びラット)に対して行われる。他の実施形態では、本方法は、商業的に重要な農場動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ及びニワトリ)又はコンパニオン動物(例えば、ネコ及びイヌ)を処置するのに用いられる。好適な実施形態では、被検体はヒトである。
【0057】
ここで用いられるように、「処置/治療(treatment)」、「治療(therapy)」及び/又は「治療レジメン」は、患者によって示される又は患者が影響を受けやすいことがある疾患、障害又は生理学的状態に応じて行われる臨床的介入をいう。処置(treatment)の目的は、症状の緩和若しくは停止、疾患、障害若しくは状態の進行若しくは悪化の減速若しくは停止及び/又は疾患、障害若しくは状態の寛解を含む。ここで用いられるように、用語「防止する」、「防止している」、「防止」、「予防的処置」などは、疾患、障害又は状態を有していないが、疾患、障害又は状態を発生するリスクにある又は発生しやすい被検体において、疾患、障害又は状態を発生する確率を減少させることをいう。用語「有効量」又は「治療上有効量」は、有益又は望ましい生物学的及び/又は臨床的な結果をもたらすのに十分な量をいう。
【0058】
ここで用いられるように、動物又は細胞に治療物などの薬剤を「投与する」という用語は、意図する標的に物質を分配、送達又は適用するということを意図する。治療剤に関して、用語「投与している」は、動物/被検体における所望の位置まで治療剤を送達するための任意の適切な経路によって、被検体に治療剤を接触させ、又は分配、送達若しくは適用するということを意図する。投与の方法は当技術分野において周知であり、経口投与、経皮投与、吸入/鼻腔投与による投与、鼻腔投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、大脳内投与、腸内投与、舌下投与、口腔内投与並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、髄腔内投与及び皮下投与などの注入可能なものを含む非経口投与を含むが、これらに限定されない。投与は連続的又は断続的であり得る。実施例では、本発明者らは、主に気道にある組織に感染するSARS-CoV-2によって引き起こされる感染及び炎症を軽減するMnOナノ粒子の能力を試験した。したがって、いくつかの実施形態では、MnOナノ粒子は、経口的、経鼻的又は局所的に投与される。
【0059】
好適な実施形態では、MnOナノ粒子は、治療上有効量、すなわち、有益又は望ましい生物学的又は臨床的な結果をもたらすのに十分な量で投与される。その結果は、炎症又は疾患若しくは状態(例えば、ウイルス感染)の1つ以上の症状を軽減、緩和、阻害又は防止することであり得る。有効な投与手段及び投与量を決定する方法は、当業者には周知であり、治療のために用いられる処方、治療の目的及び処置される被検体によって異なる。単回又は複数回の投与は、治療医によって選択される用量レベル及びパターンで実行され得る。
【0060】
ここで用いられるように、用語「ウイルス感染」は、(被検体の)体内のウイルスの存在によって特徴付けられる状態のものをいう。被検体は、症状(例えば、発熱、悪寒、鼻づまり/鼻水など)を示すこともあれば、無症状であることもある。ここに提供される方法及び処方は、ウイルス感染の防止にも有用であり、ウイルス感染を発生するリスクにある被検体(例えば、医療従事者)のための予防薬として使用され得る。ウイルス感染は、任意の種類のウイルスによって引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、ウイルスは、ヒト被検体に感染可能である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、粘膜/鼻/肺/呼吸器に感染可能である。適切な例は、インフルエンザ、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなどを含む。いくつかの実施形態では、ウイルス剤は、コロナウイルスによってもたらされる。他の実施形態では、コロナウイルスは、229E(アルファコロナウイルス)、NL63(アルファコロナウイルス)、OC43(ベータコロナウイルス)、HKU1(ベータコロナウイルス)、MERS-CoV(ベータコロナウイルス)、SARS-CoV(ベータコロナウイルス)、SARS-CoV-2及びそれらの組合せからなる群から選択される。一実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2を含む。
【0061】
本開示は、ここに説明される構造、構成要素の配置又は方法のステップの特定の詳細に限定されない。ここに開示される組成物及び方法は、以下の開示に照らして当業者に明らかとなる様々な態様において作製、実施、使用、実行及び/又は形成されることができる。ここで用いられる語句及び用語は、説明の目的のみのためのものであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。説明及び特許請求の範囲において様々な構造又は方法ステップをいうのに用いられるような、第1、第2及び第3などの序数指示子は、任意の特定の構造若しくはステップ又はそのような構造若しくはステップに対する任意の特定の順序若しくは構成を示すように解釈されることを意味するものではない。ここに記載される全ての方法は、ここに特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。ここに提供される任意の及び全ての例又は例示的な言語(例えば、「などの」)の使用は、単に本開示を容易にすることを意図するものであり、特に主張のない限り本開示の範囲に対して限定を意味するものではない。本明細書中のいかなる文言及び図面に示されたいかなる構造も、請求されていない要素が開示された本主題の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。用語「含んでいる(including)」、「備えている/含んでいる(comprising)」又は「有している」及びそれらの変形のここでの使用は、それ以降に列挙される要素及びそれらの等価物並びに追加の要素を包含することを意味する。所定の要素を「含んでいる」、「備えている/含んでいる」又は「有している」として示される実施形態は、それらの所定の要素「から本質的になる」及びそれらの所定の要素「からなる」としても考えられる。
【0062】
ここでの値の範囲の提示は、特にここでの断りのない限り、範囲内にある各個別の値を個々にいう省略した方法として作用することを単に意図するものであり、各個別の値は、ここに個々に示されているかのように本明細書に取り込まれる。例えば、濃度範囲が1%~50%と述べられる場合、2%~40%、10%~30%又は1%~3%などの値が、本明細書に明示的に列挙されることが意図される。これらは具体的に意図されたものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値の間及び列挙された最低値及び最高値を含む数値の全ての可能な組合せが、本開示において明示的に述べられると考えられる。特定の示された量又は量の範囲を説明するための単語「約」の使用は、示された量に非常に近い値は、製作公差、測定値の形成における機器及び人為的誤差などに起因して計上され得る又は自然と計上されることになる値などのその量に含まれることを示すことを意味する。量をいう全ての割合は、特に断りのない限り全て重量による。
【0063】
本明細書において引用したいずれの非特許文献又は特許文献を含む任意の参照も先行技術であることは、認めていない。特に、特に断りのない限り、ここでの任意の文献への参照は、これらの文献のいずれかは、米国又はその他のいずれかの国での当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されることになる。参考文献に関する任意の討論は、それらの著者が主張することを述べたものであり、出願人は、ここに引用された文献の正確性及び適切性について異議を申し立てる権利を留保する。ここに引用される全ての文献は、明示的に断りのない限り、参照により完全に取り込まれる。本開示は、引用された参照に見られる任意の定義及び/又は説明の間に任意の相違が存在する場合に支配するものとする。
【0064】
本主題の以下の実施例及びMnOナノ粒子の他の関連用途は、例示のみを意味するものであり、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲の限定として意味されるものではない。
【実施例
【0065】
実施例
何百万人ものCOVID-19患者が、呼吸器系及び全身性の炎症で死亡している。Toll様受容体(TLR)シグナル伝達の過剰刺激は、ウイルスによる感染に続く免疫病理の重要な駆動要素である。以下の実施例に説明するように、本発明者らは、集中治療室(ICU)にいる重症のCOVID-19患者が、彼らの血液及び肺中に存在する核酸感知TLRの豊富なアゴニストによるそのような過剰刺激の特質を示すことを見出した。本発明者らは、これらの核酸含有損傷関連分子パターン及び病原体関連分子パターン(DAMP/PAMP)は核酸結合マイクロ繊維を用いて枯渇されてもよく、この枯渇が、患者サンプルのそのような自然免疫受容体を過剰活性化する能力を制限することを示した。彼らは、シングルセルRNAシーケンシングを用いて、回復しなかったICU死亡患者からのCD16単球がTLR寛容表現型及びex vivoのTLR刺激後の不完全な抗ウイルス応答を示すことを明らかにし、彼らは、血漿プロテオミクスを用いて、そのような骨髄過剰活性化を確認し、死亡患者におけるDAMP/PAMP担体消費を明らかにした。彼らは、これらのCOVID-19患者サンプルのMnOナノ粒子での処置が、彼らの肺及び血液中に存在する豊富な核酸含有DAMP/PAMPによるTLR活性化を効果的に中和することを見出した。最後に、彼らは、MnOナノスカベンジャー処置が、単球のTLR寛容を誘導するDAMP/PAMPの能力を制限することを特定した。したがって、マイクロ繊維による又はナノ粒子によるDAMP/PAMPスカベンジャーでの処置は、SARS-CoV-2誘導性過剰炎症を制限し、単球のTLR寛容を防止し、重症のCOVID-19患者における転帰を改善するのに有用であることを証明し得る。
【0066】
いくつかのグループは、様々な疾患タイプにおいて、死細胞及び瀕死細胞から放出されるDAMP/PAMPによって駆動される自然免疫応答の過剰活性を研究してきた[1、2、3]。DAMP及びPAMPは、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体によって検出される。TLRは重要な自然免疫センサであり、そのうちのいくつかは核酸含有DAMP/PAMPを認識してシグナル伝達カスケード及び下流の免疫応答を開始する[4、5]。TLR3及びTLR7/8はRNAを感知するのに対し、TLR9はDNAを感知し、TLR4はDNA-タンパク質複合体を感知する。総合して、これらの核酸感知TLRは、癌、自己免疫疾患及び感染症における炎症応答の重要な媒介物質である[5、6、7、8]。一方で、TLR及びそれらのNFκBを介した下流シグナル伝達パスウェイの過度の活性化は、血管透過性の増加並びにリンパ球及び好中球の活性化により、肺傷害及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発生及び進行に寄与し得る[9、10]。我々及び他者は、所定の核酸結合マイクロ材料及びナノ材料の可溶性繊維処方及び非可溶性繊維処方の双方が、紅斑性狼瘡、関節リウマチ、癌、外傷、敗血症及びインフルエンザ感染症のモデルにおいて、そのようなDAMP/PAMPを中和し、それらのTLR及び下流のNFκBの活性化を防止し得ることを以前に示している。
【0067】
SARS-CoV-2による感染は、上気道感染症の軽度の症状から、人工呼吸器又は体外式膜型人工肺を必要とするARDS及び呼吸不全まで、広いスペクトルの疾患を引き起こす[23、24、25]。集中治療室(ICU)の患者などの疾患スペクトルの末期にある患者は、急速に悪化することがあり、死亡リスクがより高い[23、25、26]。これらのような転帰不良の根底には、ウイルス感染を併発する重症患者における、他の検査値異常の中でもDダイマー、IL-6、リンパ球減少及び好中球増加のレベルの上昇と関連する過剰炎症応答がある[24、26]。我々は、他の疾患のタイプにおいて我々が研究してきたTLR過剰刺激がCOVID-19の過剰炎症応答に関連し得ると考えた。したがって、本研究では、COVID-19のICU患者におけるTLR媒介性炎症を特徴付け、この患者集団における核酸含有DAMP/PAMPの下流の負の結果を軽減する核酸結合材料の能力を試験することに着手した。
【0068】
DAMP及びPAMPによるTLR活性化は、細胞表面受容体、サイトカイン及びケモカインの発現の変化をもたらす。ICU患者におけるSARS-CoV-2感染は、顕著な好中球増加と関連しており、好中球はこの患者集団におけるDAMPの主要な供給源ともなる[27]。いくつかの報告は、深刻な感染と関連する単球個体数の増加を同定した[28、29]。単球は、特にウイルス感染に続くTLR媒介性炎症の主要なセンサであり、その応答物である。健常状態では、通常、古典的単球(すなわち、CD16CD14単球)が循環する単球の大部分(単球全体の80~95%)を表し、中間体(CD16CD14)及び非古典的単球(CD16CD14lo/-)が残りの20~5%を含む[30、31]。CD16単球はTLR7/8媒介性炎症に応答し、CD16単球はTLR4媒介性炎症に応答する[31]。COVID-19におけるTLR媒介性炎症と単球応答の間の関係は未だに解明されてなく、本研究の焦点となる。
【0069】
正常な環境下では、TLR活性化は、下流のシグナル伝達及び単球を感染に応答させる遺伝子転写の変化をもたらす。一方で、深刻な感染及び過剰炎症性情勢は、TLRの過剰刺激をもたらし、その後に異常なTLR下流シグナル伝達をもたらし得る。過剰炎症の状況におけるこの持続的かつ異常な下流TLRシグナル伝達は、「TLR寛容」といわれる。TLR寛容は、細胞がDAMP及びPAMPに反復的に曝露される場合に生じる[15、32、33、34、35、36]。正常な環境下では、TLRシグナル伝達カスケードは、NFκBを活性化し、強固な免疫応答をもたらす。一方で、単球などの免疫細胞がTLRアゴニストに反復的に曝露される場合、それらは、さらなる刺激に対して寛容となり、効果的な応答を起こすことができなくなる[15、32、33、34、35、36]。以前の研究は、敗血症の患者から単離された単球は、患者の生存にかかわらず、LPS処置に応じてIL-10、IL-1β及びIL-12の産生を減少させることを示す[37]。一方で、敗血症の後期に単球を単離し、LPSで活性化した場合、生存者からの単球はLPS処置に応じてこれらのサイトカインを産生する能力を回復したのに対し、死亡患者からの単球は回復しなかった。さらに、このサイトカインの機能不全は、IFN-γのin vitro処置では救済できなかった。炎症の解消におけるIL-10、IL-1β及びIL-12の重要性を考えると、この表現型は、これらの患者をその後の細菌感染にかかりやすくしている[37、38、39、40]。したがって、我々は、単球のTLR寛容が核酸含有DAMP/PAMPに応じてCOVID-19患者において生じるか、及び核酸結合ナノ材料による治療が患者サンプルによるTLR過剰活性化を緩和し、単球のDAMP/PAMP誘導性寛容を制限できるか否かを調べた。
【0070】
我々研究者らは、ICUレベルのケアを必要とするCOVID-19の患者の免疫及びDAMP/PAMPの縦断的プロファイリングを行った。彼らは、フローサイトメトリーを用いて重篤なCOVID-19患者からの血液中の免疫サブセットを調べ、レポーター細胞アッセイを用いてTLR活性化の可能性を測定し、シングルセルRNAシーケンシング及び血漿プロテオームプロファイリングを用いて、生存しなかった患者と対比した生存した患者の差を評価した。彼らは、患者の肺及び血液中の核酸含有DAMP/PAMPの顕著な増加を観察し、それにより核酸結合マイクロ材料及びナノ材料の過度のDAMP/PAMPを中和する能力を調べた。DAMP/PAMPスカベンジャー処置は、過剰炎症を阻害し、TLR寛容を制限することが見出され、そのような材料が重症のCOVID-19患者の転帰を改善するのに有用であることを証明し得ることを示唆した。
【0071】
結果:
COVID-19のICU患者血液の免疫プロファイリングは、異なる単球サブセットが臨床転帰と関連することを明らかにする
指示された時点で患者から新規に全血を採取し、材料及び方法の章に説明されるように分析した。フローサイトメトリーの結果は、デキサメタゾンでの処置又は臨床転帰にかかわらず、ほとんどの患者におけるリンパ球減少及び好中球増加を含む、以前の報告[23、24、41、42、43、44、45、46、47]で観察された傾向を支持する(図10A~G)。デキサメタゾン処置及び臨床転帰によって患者群を比較した場合、末梢におけるCD4及びCD8T細胞、NKT細胞、NK細胞、好塩基球又は好酸球の出現頻度に有意差は観察されなかった(図10B~I)。我々は、ある患者サブセットは単球の上昇した割合を有する一方で、他の患者は正常範囲内の割合を有することを観察した(図10J)。これは、我々にこの細胞サブセット及び単球の正準なサブ集団をさらに調べることを促した。
【0072】
単球サブセットは、CD16及びCD14の表面発現によって分類される。中間体単球(CD16CD14)又は非古典的単球(CD16CD14lo/-)として分類されるCD16を発現する単球は、CD16単球と注釈された[30、31]。感染症から回復したデキサメタゾン未投与(ナイーブ)のICU患者は、CD16単球の個体数に基づいて死亡患者と区別可能であった(図10J~L)。デキサメタゾン未投与で感染症から回復した患者は、より高レベルのCD16単球を有した。回復を、退院又はICUからの移行と定義した。これに対して、死亡患者はより低レベルのCD16単球を有し、これらの患者の末梢ではCD16単球が優勢な単球集団であった。デキサメタゾンで処置された患者におけるCD16単球個体数と良好な臨床転帰の間の関連は統計学的に有意ではなく、デキサメタゾンの強力な免疫調節効果を例証した。新生単球機能に対するCOVID-19の効果を直接調べるため、我々は、デキサメタゾン未投与であるCOVID-19のICU患者コホートからのサンプルを分析した。RNAによるDAMP/PAMPによるTLR7/8活性化に対して特に感受性が高いことが知られているCD16細胞の差は、我々に患者サンプル中のそのような炎症性核酸のレベルを評価することを促した。
【0073】
COVID-19のICU患者からの血清及び気管内吸引液の縦断的プロファイリングは、核酸感知TLRシグナル伝達を強力に活性化する上昇したレベルのDAMP及びPAMPを明らかにする
CD16単球、TLR活性化及び臨床転帰の間の関連を、COVID-19のICU患者からの血液、血漿、気管内吸引液(ETA)をTLRアゴニストについて分析することによって調べた。健常なコントロールと比較した場合、試験した4個のTLRの中で、TLR3及びTLR7は、全ての患者及び全ての時点にわたって、血清によって最も一貫した活性化を示した(図11A)。TLR3及びTLR7は、それぞれ二本鎖RNA及び一本鎖RNAについてのセンサであるため、我々は、我々のCOVID-19のICUコホートからの血清サンプルは上昇したレベルの炎症誘発性RNA分子を有していると結論付けた。これは、SARS-CoV-2がRNAウイルスであるということと一致している。TLR4及びTLR9もCOVID-19のICU患者からの血清によって活性化されたが、活性化のレベルは、特に縦断的に見た場合、TLR3及びTLR7で見られるほどは高くなかった(図11A)。TLR4及びTLR9は、それぞれリポ多糖(LPS)及び細菌DNAのセンサである。TLR4及びTLR9は、ヌクレオソーム、HMGB-1及びミトコンドリアDNAなどの、細胞死時に放出される内因性分子によっても活性化される[48]。我々は、10名のCOVID-19のICU患者からのETAのTLRプロファイルも特徴付けた。試験した各TLRについて、ETAは、72名のCOVID-19患者からの血清より3~4倍高い活性化を発揮した(図11B)。これらのデータは、COVID-19による重篤患者における炎症性症候群の呼吸器局在化をさらに強調している。これらの結果は、気道は、これらの患者では依然として、核酸感知TLR、特にCD16単球上にあるRNAセンサであるTLR3及びTLR7/8を活性化する高レベルの炎症性アゴニストによって特徴付けられるDAMP/PAMP生成及び過剰炎症の主要位置であることを示す。
【0074】
核酸結合マイクロ繊維は、COVID-19のICU患者の血清及びETAからのDAMP/PAMPを枯渇させ、TLRを刺激して下流のNFκB活性化を誘導するそれらの能力を制限し得る
核酸含有DAMP/PAMPがCOVID-19のICU患者サンプルに豊富であるという観察結果は、我々に、そのようなTLRアゴニストが核酸捕捉マイクロ繊維メッシュを用いて枯渇され得るかを調べさせた。以前に、我々は、そのようなマイクロ繊維が、外傷患者サンプルの血液中に存在するDAMPを効果的に除去し、TLRを刺激するそのような患者サンプルの能力を制限し得ることを観察した[15]。エレクトロスパンPSMA/ポリスチレンマイクロ繊維(平均直径2.5±0.1μM)を生成し、前述したように、PEI及びPAMAM-G3をPSMA/ポリスチレンメッシュ上に結合させた[15]。これらの核酸結合マイクロ繊維での患者サンプルの処置は、COVID-19患者からの血清及びETAによるTLR3、TLR4、TLR7及びTLR9の活性化を劇的に低下させた。図12A~Hに示すように、マイクロ繊維がTLR活性化のレベルを培地のみで観察されたレベルまで減少させたように、達成された阻害のレベルは本質的に完全である。したがって、この核酸結合マイクロ繊維メッシュでの処置は、DAMP及びPAMPを中和し、重篤なCOVID-19患者の血液及び肺から採取した血清及びETAサンプルから、これらのTLRアゴニストを枯渇させることによって、NFκB活性化を防止した。
【0075】
我々はまた、患者サンプルからDAMP/PAMPを枯渇させる核酸捕捉繊維の能力を定量した。我々は、繊維での処置は、COVID-19患者サンプルの血清及びETAの双方から、DNA、RNA、HMGB-1及びヌクレオソームを有意に枯渇可能であることを見出した(図12I~P)。(注:DNA及びHMGB-1は、TLR9の強力な内因性活性化物質である[49]。RNAはTLR3及びTLR7の正準な活性化物質である。HMGB-1及びヌクレオソームもTLR4を強力に活性化する)。我々はまた、非炎症性タンパク質コントロールとして、ヒト血清アルブミンを測定した。アルブミンは正味の負の電荷を担持するが、核酸結合繊維による枯渇効果は血清ではわずかであり、ETAでは存在しなかった(図12Q~R)。これらのデータは、核酸含有DAMP/PAMPスカベンジャー繊維が、コントロールタンパク質に対してわずかな効果のみ有する一方で、COVID-19患者サンプル中に存在する多種多様な炎症誘発性分子を枯渇させ得ることを実証し、そのような繊維は体外式膜型人工肺(ECMO)などの救命的な支援的ケアを必要とするCOVID-19患者からDAMP/PAMPを枯渇させるのに有用となり得ることを示唆する。
【0076】
縦断的プロテオミクスは、死亡患者における亢進された骨髄活性化及びPAMP担持タンパク質の消費のマーカーを明らかにする
我々のRNAシーケンシングデータからの差次的発現及び機能的観察のさらなる検証のために、我々はCOVID-19から回復した4名の異なるICU患者及び回復しなかった4名の異なる患者からの血漿に対して不偏プロテオーム分析を行った。
【0077】
我々は、4名の死亡患者からの循環プロテオームと、3名の異なる死亡患者から単離された単球のトランスクリプトームプロファイルとの類似性を同定した。血漿プロテオームに対して行われた機能的パスウェイ分析は、生存者に対して死亡患者において、骨髄活性化、動員及び遊走に関係する生物学的プロセスのエンリッチメントを実証した(図13A)。具体的には、これらのプロテオームデータに対して行われたクラスタリングは、死亡患者における粘膜自然免疫、抗細菌応答及びリポ多糖に対する細胞応答のマーカーを同定した。さらに、死亡患者において回復患者を超えてエンリッチメントされたタンパク性マーカーは、亢進された骨髄活性を示した(図13B)。
【0078】
次に、我々は、回復患者及び死亡患者の双方からの縦断的サンプルを比較した(図13C)。我々は、死亡患者はNGAL、PRTN3、MMP9、MPO、TRFL、DEF1を含む活性化された好中球によって分泌されるより高い循環レベルのタンパク質を有することを観察した[67]。これらのタンパク質は、微生物誘導性炎症に応じて好中球によって分泌され、TLRシグナル伝達によって媒介される(図13C)[67、68、69、70、71]。さらに、アラーミンタンパク質であるS100A9のレベルも、回復患者と比較して死亡患者において上昇した(図13C)[48、72]。S100タンパク質は、TLR4発現の正のフィードバックに関与する炎症のマーカーである[48、72]。これらのデータは、抗微生物パスウェイが回復患者と比較して死亡患者からの細胞において上昇していることを示した単球RNAシーケンシングデータと一致する。
【0079】
我々はまた、死亡患者と比較して回復患者においてより高いレベルを有するタンパク質を同定した。例えば、循環中のPAMPを結合してTLRシグナル伝達を活性化する、マクロファージによって発現されるスカベンジャー受容体であるMARCO[73、74]は、回復患者に対して死亡患者において有意により低い(図13C)。これらの所見は、死亡患者において、PAMPの結合及びTLRへの送達がMARCOを消費していることを示唆する(図13C、E)。同様のパターンを、死亡患者からの血漿において回復患者と比較して減少したレベルを有する、APOA1、APOA2、APOH(図13C、E)並びにAPOD及びAPOC4(図16)を含む種々のアポリポタンパク質について観察した(図13C~E)。アポリポタンパク質は、PAMPのための担体として作用してTLRシグナル伝達を活性化し、抗ウイルス免疫を促進する[75、76、77]。遊離MARCO及びアポリポタンパク質が死亡患者の血液において低下し、明らかに消費されているというプロテオームの証拠は、死亡患者からの単球がTLRの活性化を増加させたというトランスクリプトーム所見と一致する。
【0080】
まとめると、COVID-19のICU患者のDAMP/PAMPのTLRレポーター細胞活性化研究、シングルセルRNAシーケンシング及びプロテオーム分析は、核酸含有DAMP/PAMPによるTLR過剰刺激が、それらの全てがCOVID-19のICU患者の転帰不良に関連する過度の単球活性化及び免疫調節物質の消費をもたらし得ることを示した。したがって、我々は次に、DAMP/PAMPナノスカベンジャーが、単球におけるそのようなTLR過剰活性化及びTLR寛容を制限し得るか否かを調べた。
【0081】
MnOによるナノ粒子は、COVID-19のICU患者の血清及びETAによるTLR刺激を緩和し、単球におけるTLR寛容のDAMP/PAMP媒介性誘導を防止する
核酸結合マイクロ繊維がDAMP/PAMPを捕獲及び中和し得るという観察結果から(図12)、我々は、COVID-19患者サンプル中のDAMP/PAMPに対抗する可溶性ナノ粒子が同定され得るか否かを評価することになった。この目的のため、我々は、酸化マンガン(MnO)基づく新規の可溶性形態の核酸結合ナノ粒子を評価した。このMnOナノ材料の特徴付けされていない性質を考慮して、我々は、最初にその基本的特性を評価した。合成後、我々は、生成されたMnO粒子が、30~100nmの範囲のサイズであり、約-20mVであるゼータ電位を有することを特定した。我々は、非結合のPicoGreen標識DNAを測定することによって、Tris-EDTA(TE)緩衝液中の酸化マンガン(MnO)ナノ粒子の子牛胸腺DNA結合親和性を評価した。MnOナノ粒子は、それらの正味の負の表面電荷にもかかわらず、核酸結合ポリマー(PAMAM-G3)と同等である高いDNA結合親和性を示し、PAMAM-G3と比較して減少した細胞毒性を有する(図3A)。次に、我々は、TLRレポーター細胞を用いて、MnOナノ粒子の核酸捕捉活性を評価した。我々は、MnOナノ粒子は、FBSの存在又は非存在にかかわらず、用量依存的に、HEK-Blue hTLR9細胞のCpG誘導性活性化を阻害し、HEK-Blue hTLR3細胞のポリ(I:C)誘導性活性化及びHEK-Blue hTLR8細胞のORN06/LyoVec(ORN)誘導性活性化を阻害することを見出した(図14)。MnOによるナノ粒子は、我々が以前に試験した他の可溶性核酸結合ナノ材料と比較した場合、いくつかの明確な有利な効果を有する。第1に、MnOナノ粒子は、他のポリマーと比較した場合、有意に改善された毒性プロファイルとともに、炎症性核酸に結合する強力な能力を維持する(図14)。第2に、MnOナノ粒子は、生分解性であり、したがって、ポリアミドアミン及びPAMAMファミリーのポリマーなどの他のクラスの核酸結合ナノ材料で観察されるクリアランス臓器に対する同じレベルの毒性を示すとは予想されない。
【0082】
これらの有利な効果を考慮して、我々は、COVID-19のICU患者サンプルによるTLR刺激の制御におけるそのようなMnOナノ粒子の実用性を試験したいと考えた。図15A、Bに示すように、MnOナノ粒子の添加は、COVID-19のICU患者の血清及びETAに存在するDAMP/PAMPによるTLR3、4、7及び9の刺激を有意に減少させた。ナノ粒子スカベンジャーで達成された阻害のレベルは、本質的に100%であり、マイクロ繊維DAMP/PAMPスカベンジャーを用いて達成されたものと同等である(図12及び図15を比較)。次に、我々は、MnOナノ粒子によるTLR刺激の緩和が、単球におけるTLR寛容の誘導をex vivoで防止し得るか否かを調べた。この目的のため、我々は、新規に単離した初代ヒト単球をポリI:C(TLR3を活性化する二本鎖ウイルスRNA PAMP模倣体)で24時間処置し、続けてLPS(TLR4を活性化する細菌PAMP模倣体)での処置を5時間行い、その後、細胞上清を採取し、炎症誘発性サイトカインIL-6のレベルを定量する実験を行った。より高いレベルの分泌されるIL-6は、TLR寛容表現型を示す[78]。この実験的セットアップは、単球を最初にウイルスPAMP模倣体(ポリI:C)に曝露し、そして細菌PAMP模倣体(LPS)に曝露することによる、ex vivoでのTLR寛容の誘導を可能とした。この順次的な刺激はまた、COVID-19のICU患者の単球によって見られる炎症性曝露、すなわち、彼らのウイルス感染とそれに続く任意の2次的な細菌感染による曝露を反復する。この実験設計を用いて、我々は、LPS又はポリI:C単独で処置された単球は、ポリI:CそしてLPSで順次的に処置された単球と比較した場合、より低いレベルのIL-6を分泌することを見出した。実際に、順次的に処置された単球は、ポリI:C又はLPS単独で処置された単球よりも、少なくとも1.2倍多くのIL-6を産生した。一方で、MnOナノ粒子の添加は、ポリI:CそしてLPSで順次的に処置された単球におけるIL-6産生を完全に抑止可能であった。したがって、MnO DAMP/PAMPナノスカベンジャーでの処置は、順次的なTLR刺激に応じた単球によるIL-6産生を有意に減少させ、それによりTLR寛容表現型の誘導を制限することができる(図15C)。
【0083】
MnOナノ粒子によるアゴニスト誘導性TLR活性化の阻害
HEK-Blue hTLR3、hTLR8及びhTLR9を、HEK293細胞にhTLR遺伝子及び最適化した分泌型胚アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を共導入することにより得た。HEK-Blue hTLR細胞を、10%のFBS及び1%のペニシリン-ストレプトマイシンとともにDMEM中で培養及び維持した。TLR活性化のナノ粒子阻害を評価するため、HEK-Blue hTLR細胞を96ウェルプレートに1時間播種し、そして、2μlのアゴニスト(TLR9に対してCPG Bw006、TLR3に対してポリ(I:C)又はTLR8に対してORN06/Lyo Vecであり、1mg/ml)で処置した。10分間のインキュベーション後、20μlの異なる濃度でのナノ粒子を200μlの最終容量で導入した。24時間後、上清を採取し、Quanti-Blueと混合した。SEAP活性に関連するTLR活性化を、マルチウェルプレートリーダーで620nmでのODを測定することによって特定した。使用した(96ウェルプレート中の)細胞密度は、HEK-Blue hTLR9細胞に対して8×10個/ウェル、HEK-Blue hTLR3細胞に対して5×10個/ウェル、HEK-Blue hTLR8細胞に対して4×10個/ウェルであった。これらの方法を用いて、ここに提供されるようなMnOナノ粒子をHEK-Blue hTLR3、hTLR8及びhTLR9を含む広範囲のTLR細胞において検証した。ナノ粒子は、FBSの存在又は非存在にかかわらず、用量依存的に、HEK-Blue hTLR9細胞のCpG誘導性活性化を阻害し、HEK-Blue hTLR3細胞のポリ(I:C)誘導性活性化及びHEK-Blue hTLR8細胞のORN06/LyoVec(ORN)誘導性活性化を阻害することを示す(図3B~D)。
【0084】
プラーク中和/低減アッセイ
最後に、プラーク低減中和試験(PRNT)を用いて、MnOナノ粒子がSARS-CoV-2に結合し、ウイルスの侵入、複製及びその後の細胞死を用量依存的に防止し得ることを示した。プラーク低減アッセイを、当業者に利用可能な標準的な方法を用いて行った。簡潔には、Vero E6細胞を24ウェルプレートに標準培地において1×10個/ウェルで一晩播種し、100μg/mLから始めてMnOナノ粒子の連続希釈物をウェルに添加し、2倍希釈を行った。陰性コントロールを含めた。そして、Sars-CoV-2を50pfu/ウェルで添加し、30分間インキュベーションした。アッセイについて、2×MEM中の1.2%のメチルセルロースの1mLを各ウェルに添加し、アッセイを4日間インキュベーションした。オーバーレイを除去し、プレートを10%のNBFで固定し、Crystal Violetで染色した。そして、各ウェルについてプラークを計数し、全てのウェルをデュプリケートで完成した。重要なこととして、MnOナノ粒子は、ヨーロッパの「G」変異体及び南アフリカの「B.1.1.7」変異体を含むSARS-CoV-2の複数の株を中和することが示された(図17)。このアプローチを用いて、株にかかわらずウイルスの取り込み及び複製を制限可能とする汎SARS-CoV-2阻害剤を確立した。この発見の含意は、コロナウイルスのパンデミックに対処する強力な手段を提供する。ナノ粒子による治療薬は、経鼻的に送達され、あらゆるSARs-CoV-2変異体の取り込み及び複製を制限し得る。我々の治療法は、摂氏4度で安定に保存され得る。これは、SARs-CoV-2の全ての変異体へのほぼ常時の曝露によりワクチン接種に加えて防御を必要とする医療従事者にとって絶大なインパクトを有しうる。それはまた、-80℃での保存を必要とするワクチンを入手できない人々にも、予防の手段を提供できる可能性を有する。
【0085】
検討:
本研究では、我々は、上昇したレベルの核酸含有DAMP/PAMPがCOVID-19のICU患者の血清及びETA中に存在することを実証する免疫及び分子アッセイを行った。我々はまた、死亡したCOVID-19のICU患者において、単球のTLR寛容表現型を観察した。我々は、2つの生体材料がDAMP/PAMP介在性過剰炎症を緩和するのに潜在的に使用され得ることを確証した。患者の血清及びETAを用いたTLR活性化分析は、TLR3、TLR4、TLR7及びTLR9シグナル伝達の強力な刺激によって示されるような全身性及び局所性の炎症を明らかにした。特に気道において高いDAMP及びPAMPは、全身性の循環へ流出しやすく、持続的なTLR刺激を介した過剰炎症をもたらす。我々は、死亡したCOVID-19のICU患者と比較して、回復した患者は、ウイルスのssRNAによるTLR7/8活性化に応答することが知られているより高い個体数のCD16単球を有することを観察した。我々は、これらの単球における機能的差異を特徴付け、異なる臨床転帰を有する患者がプロトタイプのウイルスPAMP及び細菌PAMPへの異なる応答を起こすことを見出した[31]。ICU生存者及び非生存者における単球の特徴付けるために、我々は、TLRアゴニストでの活性化後の単球サブセットの応答を測定し、患者からの血清プロテオームをアッセイした。これらの免疫プロファイリング分析、トランスクリプトーム分析及びプロテオーム分析は全て、核酸含有DAMP/PAMPが重篤なCOVID-19のICU患者において中心的な病理学的役割を果たすことを示唆した。したがって、我々は、核酸捕捉剤がこれらのICU患者からのサンプルにおいてそのようなDAMP/PAMPに対抗するのに利用され得るか否かを探索した。我々は、これらの過剰炎症性の肺及び血液サンプルの活性化可能性を中和するための、2個の相補的な生体材料によるアプローチであるマイクロ繊維及び可溶性ナノ粒子を説明する。
【0086】
死亡患者及び回復患者からの単離された単球をTLRアゴニストで刺激することによって、我々は、同じ細胞学的表現型を有する細胞が異なる分子バイオマーカーを含み、患者を異なる臨床転帰で区別する差次的な転写応答を受けることを発見した。全体として、回復患者からの単球はTLR活性化に対して強固な抗ウイルス応答を発揮するのに対し、死亡患者からの単球は、TNF-α及びアラーミンmRNAの発現を介して、COVID-19患者において観察されるサイトカインストームの影響を増幅する。死亡患者において観察されるこれらの分子パターンは、MAPK及びAP-1のシグナル伝達パスウェイによって誘導されるIL-12産生の欠如によって示されるTLR寛容の概念と一致する[15、32、33、34、35、36]。実際、我々は、TLR寛容を初期のウイルス感染及び2次的な細菌感染で誘導したマウスからの先天性骨髄細胞におけるIL-12産生の以前の特徴付けと一致するトランスクリプトームプロファイルを同定した[79、80]。一方で、COVID-19のICU死亡患者からのCD16単球は、ベースラインで減少した発現のJUNDを有し、LPS又はR848での刺激に際してAP-1シグナル伝達パスウェイを活性化しなかった(データ不図示)。この観察結果は、寛容単球はIL-12を産生する能力を失い、患者を2次的な細菌感染の増加したリスクに置くことを示唆する[37、40、81]。したがって、深刻なSARS-CoV-2感染時に増加及び長期化した炎症は、臨床転帰不良をもたらし得る、その後の感染に対する十分な応答を防止する免疫抑制された表現型を生じさせ得る。我々のデータは、死亡患者がTLR寛容単球を有するだけでなく、死亡患者の第2の独立したグループが有意に上昇した深刻な細菌感染のタンパク性マーカーを有することを示す。我々のプロテオームデータは、最終的にICUにおいて死亡した患者が、特に感染後期の時点で、彼らの血中に有意により低いレベルのMARCO並びにAPOA1、APOA2、APOH及びAPODを含むアポリポタンパク質などのPAMP及びDAMPキャリアタンパク質を有したことを明らかにする。MARCO及びアポリポタンパク質は、PAMPに結合し、免疫細胞にそれらを輸送し、かつLPSを中和してサイトカインストームを和らげるそれらの能力により、細菌感染に対して保護することが示されている[73、74、75、76、77]。これらの因子の循環レベルの低下は、それらのリガンドが長期にわたって豊富であることに起因するPAMPキャリアの消費によりもたらされる可能性が最も高く、それはTLR過剰活性化と一致し、これらの患者を2次的な細菌感染にかかりやすくする可能性がある。
【0087】
残念ながら、以前の研究は、TLR寛容となった単球を救済することが困難であることを示している[37]。したがって、COVID-19患者が重篤となるのを処置又は停止するように設計される治療戦略は、ほぼ確実に、最初にTLR寛容の発生を防止する必要がある。これを考慮して、我々は、核酸結合マイクロ繊維及びナノ粒子を用いてTLRアゴニストを中和し、枯渇した内因性PAMPスカベンジャーのMARCO及びアポリポタンパク質の機能を効果的に補完する戦略を評価した。我々及び他者が、外傷、敗血症、癌、インフルエンザ及び現在のCOVID-19のモデルにおいて示しているように、核酸結合生体材料を用いて循環からDAMP及びPAMPを中和又は除去することは、TLR活性化を防止することによって全身性の炎症及びTLR寛容を減少させ得る[11、12、13、14、15、16、17、21、22]。マイクロ繊維メッシュ戦略は、COVID-19のICU患者を処置するのに一般的に用いられる透析のためのフィルター及び体外式膜型人工肺(ECMO)を含む様々な装置における使用のために理論的に改変され得る[82]。MnOによるナノスカベンジャーは、侵襲的気道確保を必要とする前に、患者における全身性送達又は吸入送達に使用可能である。ウイルス誘導性呼吸不全により挿管された患者は、2次的な人工呼吸器関連細菌性肺炎(VAP)にかかりやすい[83、84、85]。これらの細菌は、病原性因子LPSのそれらの表面発現によって認識される。マウスにおけるLPSでの2次的免疫チャレンジは、深刻な炎症反応及び高い死亡率を引き起こし、COVID-19により死亡するICU患者において観察されるものと同様の軌跡を定義した[81、86]。TLR寛容は、COVID-19に関連するVAPの場合のように、その後の免疫チャレンジに的確に応答する単球の能力の喪失及び転帰不良をもたらす。MnOは、COVID-19による重篤者において、PAMP/DAMPによって逸走される内因性スカベンジャーを補完及び補充するのに有用であることを証明し得る。図15に示すように、MnOナノスカベンジャーは、COVID-19患者サンプルによるTLR刺激を制限する。TLR刺激を制限することにより、そのようなナノ粒子は、TLR過剰刺激によって引き起こされる患者単球のTLR寛容を抑止するはずである。
【0088】
ここで、このDAMP/PAMP中和の概念のin vivo移行は、疾患の他の動物モデルにおいて観察されているように、COVID-19感染の状況において転帰を改善し得るか否かを特定することを試験されることを必要とする[11、12、13、14、16、17]。特にSARS-CoV-2感染に関連することとして、我々は、DAMP/PAMPの中和がインフルエンザ及び敗血症の動物モデルにおいて転帰を改善することを示している[13、19、20]。提案されたマイクロ繊維によるDAMP/PAMP捕獲戦略の実用性を特徴付け得るECMO動物モデルの確立を可能とするように、COVID-19のICU患者において観察されたTLR寛容表現型を反復するCOVID-19の大型動物モデルを用いたさらなる研究が遂行されるべきである。我々は、同様のTLR寛容単球が非COVID-19のARDSの患者と関連するか否かを検討しなかったが、共通の免疫病理学が敗血症及び他の深刻な感染における機能不全の根底に同様にあり得ると仮定する。さらに、我々は、TLRも発現し、COVID-19血栓性炎症症候群にも関与している好中球及び血小板の役割を調べられなかった。新鮮な血液を用いたさらなる研究が、COVID-19及び他の感染症におけるTLR媒介性炎症応答へのこれらの細胞の寄与並びにそのような過剰炎症を制御するマイクロ繊維及びナノ粒子によるDAMP/PAMPスカベンジャーの潜在的な実用性を比較するのに必要とされる。
【0089】
要約すると、我々は、核酸含有DAMP/PAMPがCOVID-19のICU患者の肺及び血液において大幅に上昇していること並びにそのような患者から単離されたCD16単球は、臨床転帰を反映するTLR活性化表現型によって定義されることを観察する。具体的には、死亡患者からの細胞は、繰り返される慢性的なDAMP/PAMP誘導性炎症のためにTLR活性化に対して寛容となるが、SARS-CoV-2感染から回復する患者は、TLR7/8などのTLRの活性化を通じて有能な抗ウイルス免疫応答を発揮可能なCD16単球を有する。我々は、死亡患者からの単球が、核酸DAMP/PAMPが患者の血清及びETAにおいて大幅に上昇しているという観察結果と一致する、TLR寛容に特徴的なトランスクリプトームマーカー及びタンパク性マーカーを有することを観察した。我々は、適切に開発されれば、過剰炎症及び単球のTLR寛容を防止し、COVID-19で重症の個人について臨床転帰を改善し得るような炎症性媒介物質を中和する2つの相補的なアプローチを試験した。
【0090】
材料及び方法:
COVID-19のICUの研究集団
本研究は、Duke University Institutional Review Board(IRB)によって承認された(Pro 00101196)。適格な患者は、PCR試験によって確認されたSARS-CoV-2感染により成人ICUに入院した18歳以上の男女である。インフォームドコンセントは、患者又は彼らの法的代理人(LAR)から得た。
【0091】
Duke ICUのCOVID-19バイオレポジトリ
我々は、全血及び気管内吸引液(ETA)上清を採取した。全血を血清、クエン酸血漿、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)血漿及び末梢血単核球(PBMC)に分離した。ETAを600gで10分間、4℃でスピンダウンした。上清をピペットで取り除き、ペレット及び上清を-80℃で保存した。サンプルを試験1日目、3日目、7日目、14日目及び21日目に採取した。本論文で報告される全てのデータは、Duke ICUのバイオレポジトリからの患者サンプルにより得られたものであり、本研究はバイオレポジトリチームと共同で行われた。
【0092】
本研究に関与する患者の臨床的特徴付けの概要を、以下の表1に示す。
表1.研究に関与する患者の臨床的特徴付け
【表1】
【0093】
健常コントロール
全血を健常ドナーから採取し、同様に処理した。
【0094】
試薬
健常ドナーからプールされたヒト血清はSigma Aldrich社から購入した。CpG ODN2006、ポリI:C、LPS、R848はInvivoGen社から購入した。ELISAキットは、以下のHMGB-1(Tecan社-ST51011)、Cell-Death Detection ELISA Plus(Roche社-11,774,425,001)、アルブミン(Abcam社-ab179887)のように購入した。Picogreen染色及びRibogreen染色は、Life Technologies社から得た(P7589及びR41190)。PAMAM-G3による核酸結合繊維及びポリエチレンイミン(PEI)による核酸結合繊維は、Jaewoo Lee博士から快く提供され、前述したように合成された[15]。
【0095】
核酸結合繊維の合成並びに血清及びETAからのTLRリガンドの除去
前述したように、エレクトロスピニング法を利用して核酸結合マイクロ繊維を生成した[15]。簡潔には、ポリ(スチレン-アルト無水マレイン酸)(PSMA)ポリマーメッシュを用いて、PSMA及びポリスチレンコポリマーの混合物を含むマイクロ繊維メッシュ上にPAMAM-G3又はPEIを機能的に固定化した[87、88]。前述したように[87、89]、PSMA(0.3g)(Sigma社、マサチューセッツ州、セントルイス)及びポリスチレン(0.4g)(Sigma社)を、テトラヒドロフラン:アセトン:ジメチルホルムアミドの1:1:1(v:v:v)混合物(3mL)(Sigma社)に室温で溶解し、マイクロ繊維を、2mLのコポリマー溶液を約17.3kVの印加電圧で2mL/hの分注速度でエレクトロスピニングすることによって生成した。マイクロ繊維メッシュを生成するために、記載されるように[15]マイクロ繊維を接地した円筒状のマンドレルにおいて採取した。PEI及びPAMAM-G3をPSMA/ポリスチレンマイクロ繊維メッシュにおいて固定化するために、1.8kDaの分岐ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences社、ペンシルバニア州、ワーリントン)(0.005M)及びPAMAM-G3(0.004M)(Sigma社)を、記載されるように[15]室温(PEI)又は4℃(PAMAM-G3)で72時間インキュベーションした。
【0096】
患者の血清[10μL]又はETA[1μL]を無血清AIM-V培地で100μLの最終容量に希釈した。希釈物をPAMAM-G3による繊維とともに37℃で30分間、回転させながらインキュベーションした。TLRレポーターアッセイにおける使用の前に、懸濁液を除去し、PEIによる繊維及びPAMAMによる繊維と、各々37℃で30分間、回転させながら組み合わせた。この順次的な繊維による戦略は、以前の研究において最も効果的な捕捉繊維アプローチとして検証された[15]。
【0097】
MnOナノ粒子の合成並びにMnOナノ粒子を用いた血清及びETAからのTLRリガンドの中和
酸化マンガンは、マンガン化合物(例えば、酢酸マンガン)及び酸(例えば、タンニン酸)を高温(例えば、100~150℃)で用いることによって合成され得る。酢酸マンガン及びタンニン酸のミリQ水中の混合物(酢酸マンガン及びタンニン酸の質量比は1:2~6である)を室温で10分間撹拌し、そして、溶液をオートクレーブに移す。150℃での2時間の熱処理後、サンプル溶液を50℃未満まで自然冷却する。MnOナノ粒子のサイズは30~100nmの範囲であり、ゼータ電位は約-20mVである。
【0098】
患者の血清[10μL]又はETA[1μL]を、無血清AIM-V培地で100μLの最終容量に希釈した。TLRレポーターアッセイ及び単球刺激アッセイにおける使用の前に、希釈物をMnOとともに37℃で30分間、回転させながらインキュベーションした。
【0099】
全血フローサイトメトリー
免疫サブセットプロファイリング抗体パネルをBeckman-Coulter社から得た。製造元の指示に従い、1本の基本免疫サブセットパネルのチューブ(B53309)及び1本の顆粒球パネルのチューブ(B88651)を、患者ごとに時点ごとに用いた。BSL2*のバイオセーフティ慣行に従い、固定及び染色された細胞を、The Duke Immune Profiling Core(DIPC)による採取後2日以内に取得した。データを、FlowJoを用いて分析した。
【0100】
TLR活性化アッセイ
HEK-BlueヒトTLR3、4、7及び9レポーター細胞株を、InvivoGen社から購入した(hkb-htlr3、hkb-htlr4、hkb-htlr7、hkb-tlr9)。活性化を、QUANTI-blue SEAP検出培地(InvivoGen社)を用いて、製造元の指示に従って特定した。細胞を40000個/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、100μLの最終容量の培地中の、培地、低分子量(LMW)ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C)[1μg/mL]、リポ多糖(LPS)[1μg/mL]、R848(Resiquimod)[1μg/mL]若しくはCpG ODN2006[1μM]、プールした健常ヒト血清[10μL]、COVID-19患者の血清[10μL]又はCOVID-19患者のETA[2μL]で12時間処置した。細胞上清を採取し、QUANTI-blueと20:80の容積:容積の比で混合し、37℃で90分間インキュベーションした。吸光度を、Spectramax i3プレートリーダー(Molecular Devices社)を用いて655nmで測定した。全てのサンプルをトリプリケートで行い、結果を比較吸光度値として報告する。
【0101】
COVID-19のICU患者からの単球のシングルセルRNAシーケンシング
ICUバイオレポジトリ(上記参照)の一部として分離及び凍結されたPBMCをこの実験に用いた。抗炎症/免疫調節薬デキサメタゾンを投与されなかった、回復した3名の患者及びパンデミックの初期に死亡した3名の患者からのPBMCを用いた。PBMCを37℃で解凍し、FBSを含まないAIM-V培地に再懸濁した。その後、Stem Cell社のビーズによる単離キット(19,058)を用いて、全PBMCから単球を単離した。そして、各患者から単離した単球を、低結合性の24ウェルプレート(Corning社-3473)の3ウェルに分配した。そして、これらの単球を培地、LPS(1μg/mL)又はR848(1μg/mL)で37℃で6時間処置した。そして、これらの単球を温めたAIM-V培地で1回洗浄し、シングルセルRNAシーケンシングコアに運んだ。
【0102】
細胞をTotalSeq-B抗ヒト ハッシュタグ抗体(Biolegend社-サンディエゴ、CA#394631、394633、394635、394637及び394639)で、製造元のプロトコールに従い、わずかな改変を加えて染色した。細胞をCellometer(Nexcelom社-マサチューセッツ州、ローレンス)でヨウ化プロピジウム及びアクリジンオレンジを用いて計数し、計数の正確性及び細胞生存能力を保証した。細胞を5μLのHuman TruStain(商標)Fc Blocking Reagent(Biolegend社-サンディエゴ、CA#422301)と共に50μLの細胞染色緩衝液(CSB、Biolegend社-サンディエゴ、CA#420201)に再懸濁し、氷上で10分間インキュベーションした。Fcブロッキング後、インキュベーション上清を除去し、各細胞サンプルを以前に決定したハッシュタグ抗体(表2参照)で染色し、氷上で30分間インキュベーションした。
【表2】
【0103】
インキュベーション後、細胞を3回洗浄し、1.5×10個/mLの濃度で再懸濁し、40μmのFlowmi Cell Strainer(Bel-Art社 H13680-0040)でろ過した。ハッシュタグ染色した細胞を表に従ってプールし(1サンプルあたり2000個の細胞、1プールあたり4又は5サンプル)、10xGenomics NextGEMチップに充填した。
【0104】
4個の遺伝子発現ライブラリー及び4個のハッシュタグオリゴライブラリーを、the Chromium Next GEM Single Cell 3’Reagent Kits v3.1 with feature barcoding technology for cell surface protein protocol CG000206 versionDに従って、Chromium NextGEM Single Cell 3’v3.1 assay(10xGenomics社 PN-1000128)、Chromium Next GEM Chip G Single Cell Kit(PN-1000127)及びSingle Index Kit Set A(PN-1000127)を用いて作製した。細胞を、逆転写(RT)試薬を含むマスターミックスに再懸濁し、そして、Illumina TruSeq Read 1シーケンシングプライマー、16ntの10xバーコード、12ntの固有分子識別子及びRTのためのポリdTプライマーを担持するゲルビーズと結合させた。全長cDNAをDynabeads MyOne SILANEで精製し、続けてcDNA増幅を11サイクル行った。増幅されたcDNAを、4200 TapeStation High Sensitivity D5000 ScreenTape(Agilent社、カリフォルニア州、サンタクララ)においてアッセイし、200~5000bpの長さを保証した。エンドリペア、A-テーリング、アダプターライゲーション及びPCRを介したIllumina(カリフォルニア州、サンディエゴ)のP5及びP7アダプター、i5サンプルインデックス並びにTruSeq read2プライマーを添加する前に、酵素的断片化及びサイズ選択を用いて、cDNAアンプリコンサイズを最適化した。High Sensitivity D1000 ScreenTapeによるAgilent 4200 TapeStationにおけるアッセイの前に、ライブラリーを400~500bpのサイズとするように、KAPA Library Quant qPCR(Roche社、KK4873)を用いて、ABI ViiA7(Applied Biosystems社、カリフォルニア州、フォスターシティ)におけるP5及びP7アダプターのライゲーションを評価した。配列を、Illumina NovaSeq 6000におけるペアエンドシーケンシングを用いて、ペアエンド、約50000リード/セルでのシングルインデックスフローセルにおいて生成した。
【0105】
scRNA-seqデータセット処理及び細胞タイプアノテーション
シーケンシングに続いて、10xGenomics Cell Rangerパイプラインを用いてデータセットを逆多重化し、FASTQファイル及びフィーチャーカウントマトリックスを生成した。ハッシュタグ標識されたリードを、全てのデフォルトパラメータ値を用いてSeurat3によって実施されたHTODemux()関数を用いてそれぞれのサンプルにマッピングした[90]。200個未満又は3500個より多くの遺伝子が検出された細胞を、下流分析から除去した。同様に、ミトコンドリアゲノムにマッピングするリードを10%より多く有する細胞を、データセットから除去した。遺伝子数を対数正規化し、データセット統合のために上位2000個の変動特徴(variable feature)を同定した。データセットを、次元数を30に設定してFindIntegrationAnchors()関数及びIntegrateData()関数を用いて、単一のSeuratオブジェクトに統合した。主成分分析及びUMAP次元削減を、最初の30個の主成分を用いて実行した。Seuratの関数SCTransform()を統合されたデータセットに適用し、最初の20個の主成分を考慮して、Harmonyパッケージを用いてUMAP埋め込みを再計算した[91]。そして、グラフによるクラスタリングを解像度=1で行った。細胞タイプのアノテーションを、SingleRパッケージにより提供されるシングルセルRNA-seqリファレンスを用いて行った[92]。具体的には、DatabaseImmuneCellExpressionData()関数によるアノテーションに基づいて、細胞をCD16単球又はCD16単球として標識化した。単球としてアノテーションされない細胞を、下流分析から除去した。細胞タイプの標識を、Nebulosaパッケージを用いて、全ての細胞のCD14及びFCGR3A(CD16)の発現密度をUMAPとしてプロットすることによって確認した[93]。
【0106】
scRNA-seqデータセットにおける差次的な発現の単変量検定
擬似バルク単変量検定を、CD16単球又はCD16単球のいずれかについての統合したシングルセル遺伝子発現プロファイルを用いて全サンプルについて行った。回復患者からの細胞を、培地、LPS又はR848の3条件の各々において、死亡患者からの細胞と比較した。EdgeRパッケージを用いてMDS順序プロットを生成して、各単球サブ集団についての次元削減を行った[94、95]。MDSの埋め込み上に多角形をプロットしてサンプルのクラスターを可視化した。各細胞タイプについての遺伝子発現プロファイルを単一マトリックスに統合してEdgeRパイプラインを用いて単変量検定を行った。単変量検定のための設計式に被検体の転帰を組み込み、3条件の各々の元でCD16単球及びCD16単球の双方について差次的遺伝子発現試験を行った。対数倍変化エンリッチメント及びFDR補正p値を、EnhancedVolcanoパッケージ(github.com/kevinblighe/EnhancedVolcano)を用いてプロットした。有意性を、絶対対数倍変化量が0.5超であり、FDR補正p値が0.05未満であるとして定義した。差次的に発現した遺伝子セットの交点を計算し、UpSetプロットとして可視化した[96]。機能的エンリッチメント分析を死亡患者からのCD16単球において高発現を有する遺伝子についてg:Profilerを用いて行い、パスウェイレベルのエンリッチメントをFDR補正p値として報告する[97]。
【0107】
単球サブセットに適用された非負値行列因子分解
非負値行列因子分解のCoGAPS実装を、培地処置単球、LPS処置単球及びR848処置単球に別個に適用した[98]。ミトコンドリア遺伝子及びリボソームタンパク質遺伝子を含む技術的分散の高い遺伝子を分析から除去した。5個の遺伝子発現パターンを、各細胞集団について500回の繰り返しを用いて同定した。各実験についてのCoGAPSのローディングを用いて、5個のパターンの各々に関連する上位10個の遺伝子を同定した。これらの遺伝子をヒートマップとして可視化して各パターンを構成する相関発現を有する遺伝子のコンテキストを与えた。各細胞に割り当てられたCoGAPSスコアをバイオリンプロットとしてプロットして5個の遺伝子発現パターンに類似した発現を有する細胞の多モード分布を同定した。単球のサブ集団を臨床転帰によって階層化するパターンスコアにおける分布を散布図としてプロットし、単変量検定比較を定義するのに用いた。機能的エンリッチメント分析をこれらの差次的な発現遺伝子について行って臨床転帰に関連するパスウェイエンリッチメントを推定した。
【0108】
遺伝子制御ネットワーク推論
scRNA-seq SeuratオブジェクトをSingleCellExperimentに変換し、SCENICパッケージによる分析のための入力として用いた[99]。回復被検体及び死亡被検体からのCD16単球の間の差次的発現を有する遺伝子を、各処置条件について同定した。そして、SCENIC分析を実行する標準的なワークフローを、これらのマーカー遺伝子についてのカウントマトリックスを入力として用いて行った[100]。GENIE3を用いて相関する共発現を有する転写因子及び制御標的を含むレギュロンを同定し、AUCellを用いて各単球サブ集団についてレギュロン活性をスコアリングした。「top10perTarget」共発現パラメータを用いて、スコアリングされたレギュロンのリストをプルーニングした。レギュロン活性のzスコアをヒートマップとしてプロットして臨床転帰に関連するエンリッチメントを同定した。
【0109】
転写因子NFκBによって制御される遺伝子を、KEGG機能的アノテーションデータベースから検索し、臨床転帰に関連する発現の傾向を可視化するのに用いた[101]。各パスウェイ遺伝子の平均発現を、Seuratを用いて計算し、平均発現を全てのパスウェイの遺伝子をともに用いて計算した。NFKBIAの発現を、JUNDの発現に対して散布図としてプロットし、相関を全てのCD16単球を用いて計算した。
【0110】
COVID-19のICU患者標本による血漿プロテオミクス
サンプルを解凍し、20μLの血漿を96ウェル形式の750μLのマトリックスチューブ(Thermo社)に分注した。試験プールQC(SPQC)サンプルを、全てのサンプルの同等容量を混合することによって作製した。SPQCサンプルの3個の複製をプレートに添加した。サンプルを、11mMのジチオトレイトールを含む50mMの炭酸水素アンモニウム(AmBic)中の5.5%(w/v)のデオキシコール酸ナトリウム(SDC)の200μLで希釈し、サンプルを80℃で15分間加熱することによって不活化した。冷却した後、サンプルを、AmBic中の250mMのヨードアセトアミド(IAM)の10μLで、暗所において室温で30分間アルキル化した。アルキル化物を、AmBic中の220mMのDTTの10μLの添加によってクエンチングし、消化を、AmBic中の5mg/mLのTPCKトリプシン(Sigma社)の20μLを添加し、続けて37℃で2時間サーモミキサー内でインキュベーションすることによって行った。反応物を、0.33pmolの酵母ADH1消化物(Waters社、MassPrep)を含む5/20/65(v/v/v)のTFA/MeCN/水の30μLを各サンプルに添加することによってクエンチングし、続けて短時間のボルテックスを行い、サーモサイクラーにおいて5分間インキュベーションし、10000×gで2分間遠心分離した。15000×gで2分間遠心分離し、上清及び沈殿残留物をDeepwell 96/1000μlプレート(Eppendorf社)にテープで固定したISOLUTE Filtration+filter plate(Biotage社)に移し、続けて1250rpmで3分間振盪した。最後に、サンプルを96ウェルプレートにおける減圧マニホールドで10分間ろ過し、キャップマットで密封した。
【0111】
定量的データ非依存取得(DIA)-LC-MS/MS:サンプルを、Exploris480高分解能タンデム質量分析計(Thermo社)に接続したAcquity UPLC(Waters社)を用いて、DIA-LCMS/MSによって分析した。血漿サンプルの分析には、10μLのペプチド消化物(約33μg)を用いた。直接注入後、ペプチドを、1mm×15mmの1.7μmのCSHC18カラム(Waters社)において、流速100μL/分、カラム温度55℃並びにHO中の0.1%(v/v)のギ酸(FA)(移動相A)及びMeCN中の0.1%(v/v)のFA(移動相B)を以下の0~60分を3~28%のB、60~60.5分を28~90%のB、60.5~62.5分を90%のB、62.5~63分を90~3%のB及び63~67分を3%のBで再平衡化のように用いるグラジエントを用いて分離した。ティーをポストカラムに用いて、50%(v/v)のジメチルスルホキシド/アセトニトリル(DMSO/MeCN)溶液を10μL/分で導入した。LCを、加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)条件下で、以下の、32のシースガス、5のauxガス、3.5kVのスプレー電圧、275℃のキャピラリー温度、125℃のauxガスヒーター温度の調整パラメータで、OptamaxNGイオン源を有するMSに接続した。
【0112】
DIA分析は、375~1600m/zの12万の分解能の前駆体イオン(MS1)スキャン、300%のAGCターゲット、45ミリ秒の最大注入時間(IT)及び40%のRFレンズを用い、データをセントロイドモードにおいて採取した。MS/MSは、デフォルト電荷状態=3、3万の分解能、1000%のAGCターゲット、60ミリ秒の最大IT、30のNCEでtMS2法を用いて行い、データをセントロイドモードで採取した。18個の可変DIAウィンドウは400~1200m/zに及んだ。MSサイクルタイムは1.65秒であり、注入から注入までの合計時間は67分であった。
【0113】
スペクトルライブラリー作成のための高pH逆相(HPRP)画分:個別のサンプルからプールされた約500μgのタンパク質消化物を凍結乾燥し、pH10の20mMのギ酸アンモニウムに再懸濁した。ペプチドを、2.1mm×5cmのBEHC18カラム(Waters社)及びWaters ACQUITY I-Class UPLCを用いて分画した。分離は0.4mL/minの流速及び55℃のカラム温度を利用し、移動相はpH10の20mMのギ酸アンモニウム(MPA)及び原液のMeCN(MPB)からなっていた。グラジエントは、以下の、0~3分を3%のMPB、3~50分を3~35%のMPB、50~51分を35~90%のMPB、51~55分を90%のMPB、55~56分を90~3%のMPB、56~70分を3%のMPBであった。48個の同等画分(各画分約0.4mL)を3~53分に10μlの40%のTFAを含むウェルに採取し、LCMS/MS分析のピークキャパシティを最大にするようにウェルの各列(例えば、ウェル/画分1、13、25及び37)を組み合わせた。凍結乾燥後、サンプルをHO中の1%(v/v)のTFA/2%(v/v)のMeCNの25μlに再懸濁した。
【0114】
スペクトルライブラリー生成のためのHPRP画分サンプルの定性分析:20μLの画分プールの各々(各々12画分)を、データをSpectronaut14において研究特異的ライブラリーを用いて分析したこと以外は上述のようにマイクロフローLC-MS/MSによって分析した。データの欠落を最小化するために、「プロファイリング」を用いて、全てのランにおいて有意値(q値<0.01)を満たさない前駆体を定量した。20%のスパースカットオフ(データは、少なくとも20%のランにおいてq値を満たした全ての前駆体を含んだ)を用いて、血漿サンプルにおいて定量された559個のタンパク質が存在した。これらのうち、450個のタンパク質(ADH1、トリプシン及び3個の変異体タンパク質エントリーを含む)を、より確実な同定のための測定基準である2個以上の固有前駆体によって定量した。
【0115】
正規化:タンパク質群生データ(定量された全前駆体の総和)を、ライブラリーサイズによって正規化し、続けてMのトリム平均(TMM)正規化を行った。正規化は、発現測定にほとんど影響せず、測定した研究サンプル間の高度に安定したサンプル調製、データ取得及び全体的なタンパク質含量を示唆した。
【0116】
データ分析:最初に、正規化されたデータを、全ての患者の転帰による時点をグループ化することによって評価した。データセットを絞り込むために、我々は、Benjamini-Hochberg(BH)補正による多重T検定を行い、調整済みp<0.05の閾値を満たすタンパク質で進めた。転帰による平均タンパク質測定値を用いて、我々は、各タンパク質についてlog2倍変化を計算し、上方制御及び下方制御されたタンパク質を別個にグループ化した。これらを、非連結ノードを無視する最高信頼度(0.900)の必要スコアでのフルSTRINGネットワークのためのSTRING V11.0及びデフォルト設定を用いたg:Profiler(バージョンe103_eg50_p15_68c0e33)において分析した[97、102]。そして、我々は、g:Profilerからダウンロードしたパスウェイ及びエンリッチメントデータを用い、Cytoscape3.8を介したEnrichmentmap3.3アプリケーションを用いてパスウェイクラスタリングで進めた[103、104]。我々は、最もエンリッチメントされたパスウェイクラスター、すなわち、上方制御されたタンパク質に対して防御/免疫細胞パスウェイ並びに下方制御された遺伝子に対して創傷治癒/補体及び免疫に一致するヒットを絞り込んだ。
【0117】
我々は、転帰間のヒットの差を0日、7日又は14日での一致した時点によってT検定を用いてさらに評価してこれらのタンパク質が最も差を有しやすい場合を見出した。
【0118】
ELISA及び核酸定量化
ELISA、Picogreen及びRibogreenアッセイ(Life Sciences社)を、製造元の指示に従い、トリプリケートで行った。
【0119】
統計分析
統計検定を、一元ANOVAを介したGraphPad Prismにおいて行い、続けて健常血清コントロールとCOVID-19サンプルの間又はCOVID-19サンプルタイプの間でSidak多重比較検定を行った。他の全てのグラフを、GraphPad Prismソフトウェアで作成した。

References:
1. Medzhitov R. Origin and physiological roles of inflammation. Nature. 2008;454(7203):428-435.
2. Barton G.M. A calculated response: control of inflammation by the innate immune system. J. Clin. Invest. 2008;118(2):413.
3. Hansen J.D., Vojtech L.N., Laing K.J. Developmental & Comparative; 2011. Sensing Disease and Danger: a Survey of Vertebrate PRRs and Their Origins.
4. Rakoff-Nahoum S., Medzhitov R. Toll-like receptors and cancer. Nat. Rev. Cancer. 2009;9(1):57-63.
5. Bhatelia K., Singh K., Singh R. TLRs: linking inflammation and breast cancer. Cell. Signal. 2014;26(11):2350-2357.
6. Pandey S., Singh S., Anang V., Bhatt A.N., Natarajan K., Dwarakanath B.S. Pattern recognition receptors in cancer progression and metastasis. Cancer Growth Metastasis. 2015;8:25-34.
7. Mehmeti M., Allaoui R., Bergenfelz C., Saal L.H., Ethier S.P., Johansson M.E., Jirstrom K., Leandersson K. Expression of functional toll like receptor 4 in estrogen receptor/progesterone receptor-negative breast cancer. Breast Cancer Res. 2015;17(1):130.
8. Gonzalez-Reyes S., Marin L., Gonzalez L., Gonzalez L.O., del Casar J.M., Lamelas M.L., Gonzalez-Quintana J.M., Vizoso F.J. Study of TLR3, TLR4 and TLR9 in breast carcinomas and their association with metastasis. BMC Cancer. 2010;10:665.
9. Sun S., Sursal T., Adibnia Y., Zhao C., Zheng Y., Li H., Otterbein L.E., Hauser C.J., Itagaki K. Mitochondrial DAMPs increase endothelial permeability through neutrophil dependent and independent pathways. PLoS One. 2013;8(3).
10. Feng Z., Qi S., Zhang Y., Qi Z., Yan L., Zhou J., He F., Li Q., Yang Y., Chen Q., Xiao S., Li Q., Chen Y., Zhang Y. Ly6G+ neutrophil-derived miR-223 inhibits the NLRP3 inflammasome in mitochondrial DAMP-induced acute lung injury. Cell Death Dis. 2017;8(11) e3170-e3170.
11. Holl E.K., Shumansky K.L., Borst L.B., Burnette A.D., Sample C.J., Ramsburg E.A., Sullenger B.A. Scavenging nucleic acid debris to combat autoimmunity and infectious disease. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2016;113(35):9728-9733.
12. Holl E.K., Bond J.E., Selim M.A., Ehanire T., Sullenger B., Levinson H. The nucleic acid scavenger polyamidoamine third-generation dendrimer inhibits fibroblast activation and granulation tissue contraction. Plast. Reconstr. Surg. 2014;134(3):420-433.
13. Holl E.K., Shumansky K.L., Pitoc G., Ramsburg E., Sullenger B.A. Nucleic acid scavenging polymers inhibit extracellular DNA-mediated innate immune activation without inhibiting anti-viral responses. PLoS One. 2013;8(7).
14. Naqvi I., Gunaratne R., McDade J.E., Moreno A., Rempel R., Rouse D.C., Herrera S.G., Pisetsky D.S., Lee J., White R.R., Sullenger B.A. Polymer-mediated inhibition of pro-invasive nucleic acid DAMPs and microvesicles limits pancreatic cancer metastasis. Mol. Ther. 2018;26(4):1020-1031.
15. Eppensteiner J., Kwun J., Scheuermann U., Barbas A., Limkakeng A.T., Kuchibhatla M., Elster E.A., Kirk A.D., Lee J. Damage- and pathogen-associated molecular patterns play differential roles in late mortality after critical illness. Jci Insight. 2019;4(16).
16. Jain S., Pitoc G.A., Holl E.K., Zhang Y., Borst L., Leong K.W., Lee J., Sullenger B.A. Nucleic acid scavengers inhibit thrombosis without increasing bleeding. Proc. Natl. Acad. Sci. Unit. States Am. 2012;109(32).
17. Lee J., Sohn J.W., Zhang Y., Leong K.W., Pisetsky D., Sullenger B.A. Nucleic acid-binding polymers as anti-inflammatory agents. Proc. Nat. Acad. Sci. 2011;108(34):14055-14060. PMID: 21844380.
18. Liang H., Peng B., Dong C., Liu L., Mao J., Wei S., Wang X., Xu H., Shen J., Mao H.-Q., Gao X., Leong K.W., Chen Y. Cationic nanoparticle as an inhibitor of cell-free DNA-induced inflammation. Nat. Commun. 2018;9(1):4291.
19. Dawulieti J., Sun M., Zhao Y., Shao D., Yan H., Lao Y.-H., Hu H., Cui L., Lv X., Liu F., Chi C.-W., Zhang Y., Li M., Zhang M., Tian H., Chen X., Leong K.W., Chen L. Treatment of severe sepsis with nanoparticulate cell-free DNA scavengers. Sci. Adv. 2020;6(22).
20. Kelly L., Olson L.B., Rempel R.E., Everitt J.I., Levine D., Nair S.K., Davis M.E., Sullenger B.A. β-Cyclodextrin-containing polymer treatment of cutaneous lupus and influenza improves outcomes. Mol. Ther. 2021;30:845-854.
21. Holl E.K., Frazier V., Landa K., Boczkowski D., Sullenger B., Nair S.K. Controlling cancer-induced inflammation with a nucleic acid scavenger prevents lung metastasis in murine models of breast cancer. Mol. Ther. 2021;29(5):1772-1781.
22. Eteshola E.O.U., Landa K., Rempel R.E., Naqvi I.A., Hwang E.S., Nair S.K., Sullenger B.A. Breast cancer-derived DAMPs enhance cell invasion and metastasis, while nucleic acid scavengers mitigate these effects. Mol. Ther. Nucleic Acids. 2021;26:1-10.
23. Zhou F., Yu T., Du R., Fan G., Liu Y., Liu Z., Xiang J., Wang Y., Song B., Gu X., Guan L., Wei Y., Li H., Wu X., Xu J., Tu S., Zhang Y., Chen H., Cao B. Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study. Lancet. 2020;395:1054-1062.
24. Rodriguez-Morales A.J., Cardona-Ospina J.A., Gutierrez-Ocampo E., Villamizar-Pena R., Holguin-Rivera Y., Escalera-Antezana J.P., Alvarado-Arnez L.E., Bonilla-Aldana D.K., Franco-Paredes C., Henao-Martinez A.F., Paniz-Mondolfi A., Lagos-Grisales G.J., Ramirez-Vallejo E., Suarez J.A., Zambrano L.I., Villamil-Gomez W.E., Balbin-Ramon G.J., Rabaan A.A., Harapan H., Dhama K., Nishiura H., Kataoka H., Ahmad T., Sah R., L.A.N.o.C.D. Covid-Research . Travel Med Infect Di; 2020. Clinical, Laboratory and Imaging Features of COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis; p. 101623.
25. Goh K.J., Choong M.C., Cheong E.H., Kalimuddin S., Wen S.D., Phua G.C., Chan K.S., Mohideen S.H. Rapid progression to acute respiratory distress syndrome: review of current understanding of critical illness from COVID-19 infection. Ann. Acad. Med. Singapore. 2020;49(1):1-9.
26. Lin L., Lu L., Cao W., Li T. Hypothesis for potential pathogenesis of SARS-CoV-2 infection--a review of immune changes in patients with viral pneumonia. Emerg. Microb. Infect. 2020:1-14.
27. Shigeto H., Tomoya H., Yukihiro A., Naoya M., Taro I., Masafumi S., Hideo H., Osamu T., Kazunori O., Takeshi S., Kazunori T. Identification of neutrophil extracellular traps in the blood of patients with systemic inflammatory response syndrome. J. Int. Med. Res. 2013;41(1):162-168.
28. Zhang D., Guo R., Lei L., Liu H., Wang Y., Wang Y., Dai T., Zhang T., Lai Y., Wang J., Liu Z., He A., O'Dwyer M., Hu J. Medrxiv; 2020. COVID-19 Infection Induces Readily Detectable Morphological and Inflammation-Related Phenotypic Changes in Peripheral Blood Monocytes, the Severity of Which Correlate with Patient Outcome; p. 2020. 03.24.20042655.
29. Zhou Y., Fu B., Zheng X., Wang D., Zhao C., Qi Y., Sun R., Tian Z., Xu X., Wei H. National Science Review; 2020. Pathogenic T-Cells and Inflammatory Monocytes Incite Inflammatory Storms in Severe COVID-19 Patients.
30. Ka M.B., Olive D., Mege J.-L. Modulation of monocyte subsets in infectious diseases. World J. Immunol. 2014;4(3):185.
31. Cros J., Cagnard N., Woollard K., Patey N., Zhang S.-Y., Senechal B., Puel A., Biswas S.K., Moshous D., Picard C., Jais J.-P., D'Cruz D., Casanova J.-L., Trouillet C., Geissmann F. Human CD14dim monocytes patrol and sense nucleic acids and viruses via TLR7 and TLR8 receptors. Immunity. 2010;33(3):375-386.
32. Tsukada K., Kitazawa T., Fukushima A., Okugawa S., Yanagimoto S., Tatsuno K., Koike K., Nagase H., Hirai K., Ota Y. Macrophage tolerance induced by stimulation with Toll-like receptor 7/8 ligands. Immunol. Lett. 2007;111(1):51-56.
33. Ziegler-Heitbrock H.W., Wedel A., Schraut W., Strobel M., Wendelgass P., Sternsdorf T., Bauerle P.A., Haas J.G., Riethmuller G. Tolerance to lipopolysaccharide involves mobilization of nuclear factor kappa B with predominance of p50 homodimers. J. Biol. Chem. 1994;269(25):17001-17004.
34. Broad A., Jones D., Kirby J. Toll-like receptor (TLR) response tolerance: a key physiological “ damage limitation ” effect and an important potential opportunity for therapy. Curr. Med. Chem. 2006;13(21):2487-2502.
35. Butcher S.K., O'Carroll C.E., Wells C.A., Carmody R.J. Toll-like receptors drive specific patterns of tolerance and training on restimulation of macrophages. Front. Immunol. 2018;9:933.
36. Broad A., Kirby J.A., Jones D.E.J. Toll-like receptor interactions: tolerance of MyD88-dependent cytokines but enhancement of MyD88-independent interferon-β production. Immunology. 2007;120(1):103-111.
37. Weighardt H., Heidecke C.-D., Emmanuilidis K., Maier S., Bartels H., Siewert J.-R., Holzmann B. Sepsis after major visceral surgery is associated with sustained and interferon-γ-resistant defects of monocyte cytokine production. Surgery. 2000;127(3):309-315.
38. Altare F., Lammas D., Revy P., Jouanguy E., Doffinger R., Lamhamedi S., Drysdale P., Scheel-Toellner D., Girdlestone J., Darbyshire P., Wadhwa M., Dockrell H., Salmon M., Fischer A., Durandy A., Casanova J.-L., Kumararatne D.S. Inherited interleukin 12 deficiency in a child with bacille Calmette-Guerin and Salmonella enteritidis disseminated infection. J. Clin. Invest. 1998;102(12):2035-2040.
39. Haraguchi S., Day N.K., Nelson R.P., Emmanuel P., Duplantier J.E., Christodoulou C.S., Good R.A. Interleukin 12 deficiency associated with recurrent infections. Proc. Natl. Acad. Sci. Unit. States Am. 1998;95(22):13125-13129.
40. Hensler T., Heidecke C.D., Hecker H., Heeg K., Bartels H., Zantl N., Wagner H., Siewert J.R., Holzmann B. Increased susceptibility to postoperative sepsis in patients with impaired monocyte IL-12 production. J. Immunol. 1998;161(5):2655-2659.
41. Bhatraju P.K., Ghassemieh B.J., Nichols M., Kim R., Jerome K.R., Nalla A.K., Greninger A.L., Pipavath S., Wurfel M.M., Evans L., Kritek P.M., West T.E., Luks A., Gerbino A., Dale C.R., Goldman J.D., O'Mahony S., Mikacenic C. Covid-19 in critically ill patients in the seattle region - case series. N. Engl. J. Med. 2020;382:2012-2022.
42. Liu Y., Du X., Chen J., Jin Y., Peng L., Wang H.H.X., Luo M., Chen L., Zhao Y. Neutrophil-to-lymphocyte ratio as an independent risk factor for mortality in hospitalized patients with COVID-19. J. Infect. 2020;81:6-12.
43. Liu Z., Long W., Tu M., Chen S., Huang Y., Wang S., Zhou W., Chen D., Zhou L., Wang M., Wu M., Huang Q., Xu H., Zeng W., Guo L. Lymphocyte subset (CD4+, CD8+) counts reflect the severity of infection and predict the clinical outcomes in patients with COVID-19. J. Infect. 2020;81:318-356.
44. Phua J., Weng L., Ling L., Egi M., Lim C.-M., Divatia J.V., Shrestha B.R., Arabi Y.M., Ng J., Gomersall C.D., Nishimura M., Koh Y., Du B., Group A.C.C.C.T. Intensive care management of coronavirus disease 2019 (COVID-19): challenges and recommendations. Lancet Respir. Med. 2020;8:506-517.
45. Poston J.T., Patel B.K., Davis A.M. Management of critically ill adults with COVID-19. JAMA. 2020;323(16).
46. Qin C., Zhou L., Hu Z., Zhang S., Yang S., Tao Y., Xie C., Ma K., Shang K., Wang W., Tian D.-S. Clin Infect Dis Official Publ Infect Dis Soc Am; 2020. Dysregulation of Immune Response in Patients with COVID-19 in Wuhan, China.
47. Ruan Q., Yang K., Wang W., Jiang L., Song J. Clinical predictors of mortality due to COVID-19 based on an analysis of data of 150 patients from Wuhan, China. Intensive Care Med. 2020:1-3.
48. Srikrishna G., Freeze H.H. Endogenous damage-associated molecular pattern molecules at the crossroads of inflammation and cancer. Neoplasia. 2009;11(7):615-628.
49. Ivanov S., Dragoi A.-M.M., Wang X., Dallacosta C., Louten J., Musco G., Sitia G., Yap G.S., Wan Y., Biron C.A., Bianchi M.E., Wang H., Chu W.-M.M. A novel role for HMGB1 in TLR9-mediated inflammatory responses to CpG-DNA. Blood. 2007;110(6):1970-1981.
50. Haghbin M., Rostami-Nejad M., Forouzesh F., Sadeghi A., Rostami K., Aghamohammadi E., Asadzadeh-Aghdaei H., Masotti A., Zali M.R. The role of CXCR3 and its ligands CXCL10 and CXCL11 in the pathogenesis of celiac disease. Medicine. 2019;98(25) e15949-e15949.
51. Shaath H., Vishnubalaji R., Elkord E., Alajez N.M. Single-cell transcriptome analysis highlights a role for neutrophils and inflammatory macrophages in the pathogenesis of severe COVID-19. Cells. 2020;9(11) 2374-2374.
52. Gauss K.A., Nelson-Overton L.K., Siemsen D.W., Gao Y., DeLeo F.R., Quinn M.T. Role of NF-κB in transcriptional regulation of the phagocyte NADPH oxidase by tumor necrosis factor-α J. Leukoc. Biol. 2007;82(3):729-741.
53. Khanmohammadi S., Rezaei N. Role of Toll-like receptors in the pathogenesis of COVID-19. J. Med. Virol. 2021;93(5):2735-2739.
54. Mahler M., Meroni P.-L., Infantino M., Buhler K.A., Fritzler M.J. Circulating calprotectin as a biomarker of COVID-19 severity. Expet Rev. Clin. Immunol. 2021;17(5):431-443.
55. Forster R., Davalos-Misslitz A.C., Rot A. CCR7 and its ligands: balancing immunity and tolerance. Nat. Rev. Immunol. 2008;8(5):362-371.
56. Higuchi H., Shoji T., Iijima S., Nishijima K.-i. Constitutively expressed Siglec-9 inhibits LPS-induced CCR7, but enhances IL-4-induced CD200R expression in human macrophages. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2016;80(6):1141-1148.
57. Li S., Miao T., Sebastian M., Bhullar P., Ghaffari E., Liu M., Symonds A.L.J., Wang P. The transcription factors Egr 2 and Egr3 are essential for the control of inflammation and antigen-induced proliferation of B and T cells. Immunity. 2012;37(4):685-696.
58. Chevrier N., Mertins P., Artyomov M.N., Shalek A.K., Iannacone M., Ciaccio M.F., Gat-Viks I., Tonti E., DeGrace M.M., Clauser K.R., Garber M., Eisenhaure T.M., Yosef N., Robinson J., Sutton A., Andersen M.S., Root D.E., von Andrian U., Jones R.B., Park H., Carr S.A., Regev A., Amit I., Hacohen N. Systematic discovery of TLR signaling components delineates viral-sensing circuits. Cell. 2011;147(4):853-867.
59. Saichi M., Ladjemi M.Z., Korniotis S., Rousseau C., Ait Hamou Z., Massenet-Regad L., Amblard E., Noel F., Marie Y., Bouteiller D., Medvedovic J., Pene F., Soumelis V. Single-cell RNA sequencing of blood antigen-presenting cells in severe COVID-19 reveals multi-process defects in antiviral immunity. Nat. Cell Biol. 2021;23(5):538-551.
60. Zhang C., Bai N., Chang A., Zhang Z., Yin J., Shen W., Tian Y., Xiang R., Liu C. ATF4 is directly recruited by TLR4 signaling and positively regulates TLR4-trigged cytokine production in human monocytes. Cell. Mol. Immunol. 2013;10(1):84-94.
61. Cohen D.M., Won K.-J., Nguyen N., Lazar M.A., Chen C.S., Steger D.J. ATF4 licenses C/EBPβ activity in human mesenchymal stem cells primed for adipogenesis. Elife. 2015;4.
62. Kawai T., Akira S. TLR signaling. Semin. Immunol. 2007;19(1):24-32.
63. Kawai T., Akira S. Signaling to NF-kappaB by toll-like receptors. Trends Mol. Med. 2007;13(11):460-469.
64. Kaisho T., Akira S. Toll-like receptor function and signaling. J. Allergy Clin. Immunol. 2006;117(5):979.
65. Kawai T., Akira S. Signaling to NF-kappaB by toll-like receptors. Trends Mol. Med. 2007;13(11):460-469.
66. Adelaja A., Hoffmann A. Signaling crosstalk mechanisms that may fine-tune pathogen-responsive NFκB. Front. Immunol. 2019;10.
67. Borregaard N., Sorensen O.E., Theilgaard -.M.K. Neutrophil granules: a library of innate immunity proteins. Trends Immunol. 2007;28(8):340-345.
68. Prince L.R., Whyte M.K., Sabroe I., Parker L.C. The role of TLRs in neutrophil activation. Curr. Opin. Pharmacol. 2011;11(4):397-403.
69. Hayashi F., Means T.K., Luster A.D. Blood; 2003. Toll-like Receptors Stimulate Human Neutrophil Function.
70. Krisztina F., Szabina F., Attila M. Neutrophil cell surface receptors and their intracellular signal transduction pathways. Int. Immunopharm. 2013;17(3).
71. Flo T.H., Smith K.D., Sato S., Rodriguez D.J., Holmes M.A., Strong R.K., Akira S., Aderem A. Lipocalin 2 mediates an innate immune response to bacterial infection by sequestrating iron. Nature. 2004;432(7019):917-921.
72. Geetha S. S100A8 and S100A9: new insights into their roles in malignancy. J. Innate Immun. 2011;4(1):31-40.
73. Mukhopadhyay S., Varin A., Chen Y., Liu B., Tryggvason K., Gordon S. SR-A/MARCO-mediated ligand delivery enhances intracellular TLR and NLR function, but ligand scavenging from cell surface limits TLR4 response to pathogens. Blood. 2011;117(4):1319-1328.
74. Komai K., Shichita T., Ito M., Kanamori M., Chikuma S., Yoshimura A. Role of scavenger receptors as damage-associated molecular pattern receptors in Toll-like receptor activation. Int. Immunol. 2017;29(2):59-70.
75. Jiao Y.-l., Wu M.-P. Apolipoprotein A-I diminishes acute lung injury and sepsis in mice induced by lipoteichoic acid. Cytokine. 2008;43(1):83-87.
76. Georgila K., Vyrla D., Drakos E. Apolipoprotein A-I (ApoA-I), immunity, inflammation and cancer. Cancers. 2019;11(8):1097.
77. Wurfel M.M., Kunitake S.T., Lichenstein H., Kane J.P., Wright S.D. Lipopolysaccharide (LPS)-binding protein is carried on lipoproteins and acts as a cofactor in the neutralization of LPS. J. Exp. Med. 1994;180(3):1025-1035.
78. Monguio-Tortajada M., Franquesa M., Sarrias M.-R., Borras F.E. Low doses of LPS exacerbate the inflammatory response and trigger death on TLR3-primed human monocytes. Cell Death Dis. 2018;9(5):499.
79. Dong C., Davis R.J., Flavell R.A. Map kinases in the immune response. Annu. Rev. Immunol. 2002;20(1):55-72.
80. Lu H.T., Yang D.D., Wysk M., Gatti E., Mellman I., Davis R.J., Flavell R.A. Defective IL-12 production in mitogen-activated protein (MAP) kinase kinase 3 (Mkk3)-deficient mice. EMBO J. 1999;18(7):1845-1857.
81. Nansen A., Thomsen A.R. Viral infection causes rapid sensitization to lipopolysaccharide: central role of IFN-αβ J. Immunol. 2001;166(2):982-988.
82. Xu Z., Tang Y., Huang Q., Fu S., Li X., Lin B., Xu A., Chen J. Systematic review and subgroup analysis of the incidence of acute kidney injury (AKI) in patients with COVID-19. BMC Nephrol. 2021;22(1):52.
83. Luyt C.-E., Sahnoun T., Gautier M., Vidal P., Burrel S., Chambrun M.P.d., Chommeloux J., Desnos C., Arzoine J., Nieszkowska A., Brechot N., Schmidt M., Hekimian G., Boutolleau D., Robert J., Combes A., Chastre J. Ventilator-associated pneumonia in patients with SARS-CoV-2-associated acute respiratory distress syndrome requiring ECMO: a retrospective cohort study. Ann. Intensive Care. 2020;10(1):158.
84. Davis K.A. Ventilator-associated pneumonia: a review. J. Intensive Care Med. 2006;21(4):211-226.
85. Sluijs K.F.v.d., Poll T.v.d., Lutter R., Juffermans N.P., Schultz M.J. Bench-to-bedside review: bacterial pneumonia with influenza - pathogenesis and clinical implications. Crit. Care. 2010;14(2):219.
86. Nansen A., Christensen J.P., Marker O., Thomsen A.R. Sensitization to lipopolysaccharide in mice with asymptomatic viral infection: role of T cell-dependent production of interferon-γ J. Infect. Dis. 1997;176(1):151-157.
87. Tang C., Ye S., Liu H. Electrospinning of poly(styrene-co-maleic anhydride) (SMA) and water-swelling behavior of crosslinked/hydrolyzed SMA hydrogel nanofibers. Polymer. 2007;48(15):4482-4491.
88. Stoilova O., Ignatova M., Manolova N., Godjevargova T., Mita D.G., Rashkov I. Functionalized electrospun mats from styrene-maleic anhydride copolymers for immobilization of acetylcholinesterase. Eur. Polym. J. 2010;46(10):1966-1974.
89. Ignatova M., Stoilova O., Manolova N., Markova N., Rashkov I. Electrospun mats from styrene/maleic anhydride copolymers: modification with amines and assessment of antimicrobial activity. Macromol. Biosci. 2010;10(8):944-954.
90. Stuart T., Butler A., Hoffman P., Hafemeister C., Papalexi E., Mauck W.M., Hao Y., Stoeckius M., Smibert P., Satija R. Comprehensive integration of single-cell data. Cell. 2019;177(7):1888-1902. e21. 91. Korsunsky I., Millard N., Fan J., Slowikowski K., Zhang F., Wei K., Baglaenko Y., Brenner M., Loh P.-r., Raychaudhuri S. Fast, sensitive and accurate integration of single-cell data with Harmony. Nat. Methods. 2019;16(12):1289-1296.
92. Aran D., Looney A.P., Liu L., Wu E., Fong V., Hsu A., Chak S., Naikawadi R.P., Wolters P.J., Abate A.R., Butte A.J., Bhattacharya M. Reference-based analysis of lung single-cell sequencing reveals a transitional profibrotic macrophage. Nat. Immunol. 2019;20(2):163-172.
93. Alquicira-Hernandez J., Powell J.E. Nebulosa recovers single-cell gene expression signals by kernel density estimation. Bioinformatics. 2021;37:2485-2487.
94. Robinson M.D., McCarthy D.J., Smyth G.K. edgeR: a Bioconductor package for differential expression analysis of digital gene expression data. Bioinformatics. 2010;26(1):139-140.
95. McCarthy D.J., Chen Y., Smyth G.K. Differential expression analysis of multifactor RNA-Seq experiments with respect to biological variation. Nucleic Acids Res. 2012;40(10):4288-4297.
96. Conway J.R., Lex A., Gehlenborg N. UpSetR: an R package for the visualization of intersecting sets and their properties. Bioinformatics. 2017;33(18):2938-2940.
97. Raudvere U., Kolberg L., Kuzmin I., Arak T., Adler P., Peterson H., Vilo J. g:Profiler: a web server for functional enrichment analysis and conversions of gene lists (2019 update) Nucleic Acids Res. 2019;47(W1):W191-W198.
98. Fertig E.J., Ding J., Favorov A.V., Parmigiani G., Ochs M.F. CoGAPS: an R/C++ package to identify patterns and biological process activity in transcriptomic data. Bioinformatics. 2010;26(21):2792-2793.
99. Aibar S., Gonzalez-Blas C.B., Moerman T., Huynh-Thu V.A., Imrichova H., Hulselmans G., Rambow F., Marine J.-C., Geurts P., Aerts J., van den Oord J., Atak Z.K., Wouters J., Aerts S. SCENIC: single-cell regulatory network inference and clustering. Nat. Methods. 2017;14(11):1083-1086.
100. Van de Sande B., Flerin C., Davie K., De Waegeneer M., Hulselmans G., Aibar S., Seurinck R., Saelens W., Cannoodt R., Rouchon Q., Verbeiren T., De Maeyer D., Reumers J., Saeys Y., Aerts S. A scalable SCENIC workflow for single-cell gene regulatory network analysis. Nat. Protoc. 2020;15(7):2247-2276.
101. Kanehisa M. KEGG: kyoto encyclopedia of genes and genomes. Nucleic Acids Res. 2000;28(1):27-30.
102. Szklarczyk D., Gable A.L., Lyon D., Junge A., Wyder S., Huerta-Cepas J., Simonovic M., Doncheva N.T., Morris J.H., Bork P., Jensen L.J., Mering C.v. STRING v11: protein-protein association networks with increased coverage, supporting functional discovery in genome-wide experimental datasets. Nucleic Acids Res. 2019;47(D1):D607-D613.
103. Merico D., Isserlin R., Stueker O., Emili A., Bader G.D. Enrichment map: a network-based method for gene-set enrichment visualization and interpretation. PLoS One. 2010;5(11) e13984-e13984.
104. Shannon P. Cytoscape: a software environment for integrated models of biomolecular interaction networks. Genome Res. 2003;13(11):2498-2504.
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図6N
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図13-5】
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図16-5】
図17
【国際調査報告】