(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】予荷重摺動要素を有する滑り軸受ガイドデバイス、特にリニアガイドデバイス及びそのためのキャリッジ
(51)【国際特許分類】
F16C 29/02 20060101AFI20241008BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16C29/02
F16C33/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519871
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022076417
(87)【国際公開番号】W WO2023052242
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202021105330.5
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ムハメト エルカン ターカー
【テーマコード(参考)】
3J011
3J104
【Fターム(参考)】
3J011AA03
3J011AA06
3J011AA20
3J011BA07
3J011JA01
3J011KA07
3J011LA04
3J011MA21
3J011SA01
3J011SC03
3J011SC05
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3J011SC20
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3J011SE06
3J104AA44
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3J104BA67
3J104CA13
3J104CA14
3J104CA16
3J104CA22
3J104DA01
3J104DA16
3J104EA02
(57)【要約】
本発明はリニアガイドに関し、リニアガイドは、長手方向(V)に長くかつその両横断面に形成された長手方向(V)に沿って延在する各ガイド部(11、12)を有するレール本体(10)を有するレール(1)と、キャリッジ本体(20)を有するキャリッジ(2)であって、キャリッジ本体(20)にはガイド部の第1のガイド部(11)に接触する第1の滑り軸受部及びガイド部の第2のガイド部(12)に接触する第2の滑り軸受部が設けられた、キャリッジと、を備え、滑り軸受部の各々は、長手方向(V)に垂直にキャリッジ(2)をレール(1)上に保持するために各横断面上にガイド部(11、12)の一方の周囲に少なくとも部分的に係合し、少なくとも第1の滑り軸受部は摺動要素(21)を備え、リニアガイドの遊びの補償のために、キャリッジ(2)はばねデバイスを備え、ばねデバイスは摺動要素(21)を、横断面において長手方向(V)を横断する調整方向(S)に沿って第2の滑り軸受部に相対して第1のガイド部(11)に対して押圧する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り軸受ガイドデバイス、特にリニアガイドデバイスであって、
長手方向(V)に長いレール本体(10)を有するレール(1)であって、前記レール本体の2面の横断面に前記長手方向(V)に沿って延在する各ガイド部(11、12)が形成された、レール(1)と、キャリッジ本体(20)を有するキャリッジ(2)であって、前記キャリッジ本体には前記ガイド部の第1のガイド部(11)に当接する第1の滑り軸受部及び前記ガイド部の第2のガイド部(12)に当接する第2の滑り軸受部が設けられ、該第1及び第2の滑り軸受部によって前記キャリッジ(2)は前記レール(1)に相対して前記ガイド部を前記長手方向(V)に摺動可能にガイドされる、キャリッジ(2)と、を備え、前記滑り軸受部の各一方は、前記長手方向(V)に垂直に前記キャリッジ(2)を前記レール(1)上に保持するために各前記横断面において前記ガイド部(11、12)の一方の周囲に少なくとも部分的に係合し、少なくとも前記第1の滑り軸受部は摺動要素(21)を備え、
前記第1の滑り軸受部の前記摺動要素(21)は、各前記横断面において対応する前記ガイド部(11、12)の周囲に少なくとも部分的に係合し、
前記キャリッジ(2)は遊びの補償のためのばねデバイスを備え、該ばねデバイスは包囲する前記摺動要素(21)を、前記長手方向(V)を横断する調整方向(S)に沿って前記第2の滑り軸受部に相対して前記第1のガイド部(11)に対して押圧する、滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項2】
前記ばねデバイスは、特に前記調整方向(S)に沿って、弾性的に作用する少なくとも1つのばね要素(23)を備え又は該少なくとも1つのばね要素(23)からなり、前記キャリッジは、好ましくは、前記ばね要素(23)を前記キャリッジ本体(20)に少なくとも前記調整方向(S)に垂直な方向に固定する固定用要素(24)を備える、請求項1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項3】
前記キャリッジ(2)は、前記調整方向(S)に沿う調整経路上を前記キャリッジ本体(20)に相対して前記摺動要素(21)を変位可能にガイドする調整ガイドデバイス(25)を備え、該調整ガイドデバイス(25)は、好ましくは前記調整経路を制限する少なくとも1つの制止部を有し、かつ/又は好ましくは前記キャリッジ本体(20)内の凹部によって形成されている、請求項1又は2に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項4】
前記ばねデバイス、特に前記ばね要素は、前記摺動要素(21)において直接に、特に、前記調整ガイドデバイス(25)の高さにおいて及び/又は前記キャリッジ(2)の中心領域において前記長手方向(V)に相対して、係合する、請求項1、2又は3に記載の、特に請求項3に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項5】
前記第2の滑り軸受部は、他の摺動要素(22)を備え、かつ/又は
少なくとも一方の前記摺動要素(21)若しくは両摺動要素(21、22)の各々は少なくとも3面の摺動面を有し、前記滑り軸受部の一方の前記摺動面の少なくとも2面はいずれも前記ガイド部(11、12)の一方の各異なる面に摺動的に当接しかつ/若しくは相互に略垂直である、請求項1から4のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項6】
前記摺動要素(21、22)は同じ種類のものであり、特に同一設計かつ一片のものであり、
前記摺動要素(21、22)は、好ましくは、
相互に略垂直な3面の内側摺動面を有し、かつ/又は
各々が、少なくとも部分的に略筒状の、特に円筒状の外側輪郭を有する、
請求項5に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項7】
前記キャリッジ本体(20)は対応する前記滑り軸受部において各摺動要素(21、22)のための受容領域(201)を形成し、該受容領域は各前記摺動要素(21、22)を受容するための前記摺動要素(21)の外側輪郭に実質的に共役な受容空間を備え、該受容空間は少なくとも部分的に、特に略筒状に、特に円筒状に設計され、前記ばねデバイスと協働する前記摺動要素(21)の前記受容空間は、調整ガイドデバイス(25)を構成するために、前記長手方向に横断する方向に拡げられて設計されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項8】
少なくとも一方の前記摺動要素、又は前記摺動要素(21、22)は、弾性偏向の下で各前記受容領域に対して適用可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項9】
少なくとも一方の前記摺動要素(21)はトライボロジー的な添加物を有するプラスチックからなり、
好ましくは、前記キャリッジ本体(20)は金属基材から、特にダイキャスト加工によって作製され、前記摺動要素(21、22)は前記金属基材とは異なる摺動材、特にトライボポリマーから、特に射出成形加工によって作製されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項10】
前記摺動要素(21)及び/又は前記他の摺動要素(22)は、各前記摺動要素(21、22)を前記長手方向(V)に沿って固定するために前記キャリッジ本体(20)の対応する固定用部分に係合するオフセット固定用部分を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項11】
前記固定用部分は、前記ばねデバイスの高さ及び/若しくは前記調整ガイドデバイス(25)の高さにおいて前記長手方向(V)に配置され、かつ/又は
前記キャリッジ本体(20)は、前記ばねデバイス、特に前記ばね要素(23)を前記キャリッジ本体(20)に挿入するためのアクセス開口を備える、
請求項10に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項12】
前記キャリッジ(2)は、各摺動要素(21、22)について回転防止部を有し、該回転防止部は、前記摺動要素(21、22)に、特にその固定用部分に、接すると、前記摺動要素(21、22)が、前記長手方向(V)に延びる回転軸周りに回転するのを防止する、請求項1から11のいずれか一項に記載の、特に請求項10又は11に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項13】
前記摺動要素(21)及び/又は前記他の摺動要素(22)は、前記長手方向(V)における前記キャリッジ本体(20)の全長の80%以上にわたって連続的に延在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイスのための、特にリニアガイドデバイスのためのキャリッジ(2)であって、
第1の滑り軸受部が前記リニアガイドデバイスのレール(1)の第1のガイド部(11)との当接のために設けられ、第2の滑り軸受部が前記レール(1)の第2のガイド部(12)との当接のために設けられた、キャリッジ本体(20)を備え、前記滑り軸受部は、前記キャリッジ(2)を長手方向(V)に前記レール(1)に相対して前記ガイド部(11、12)に対して摺動可能にガイドするために設計され、前記滑り軸受部の一方は、前記キャリッジ(2)を前記レール(1)上に前記長手方向(V)に垂直にそれぞれ保持するために前記ガイド部(11、12)の一方の周囲に少なくとも部分的に係合するようにそれぞれ設計され、少なくとも前記第1の滑り軸受部は摺動要素(21)を備え、
前記キャリッジ(2)は遊びの補償のためのばねデバイスを備え、該ばねデバイスは、包囲する摺動要素(21)を全体として、前記長手方向(V)を横断する調整方向(S)に沿って前記第2の滑り軸受部に相対して前記第1のガイド部(11)に対して押圧するように設計されている、キャリッジ。
【請求項15】
請求項2から15のいずれか一項に記載のキャリッジをさらに改良する特徴の少なくとも1つによって特徴付けられる請求項14に記載のキャリッジ。
【請求項16】
機械又はシステムにおける可動構成要素の無潤滑摺動支持のための請求項1から14のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受ガイドデバイス、特にリニアガイドデバイス、その滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスのためのキャリッジ、及び特に潤滑剤を使用しない無潤滑搭載(乾燥動作)のためのリニアガイドデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガイドデバイスは周知である。それらは、例えば、作業機器、製造工場、測定機器などにおける摺動リニア誘導に使用される。従来技術では、直線ガイド経路に沿う誘導のためのリニアガイドデバイス及び曲線ガイド経路に沿う誘導のための設計の双方が知られ、それらは(曲線)リニアガイドデバイスとみなされる。一般に、リニアガイドデバイスは、多様なサイズで存在し、様々な設計制約がサイズに応じて適用される。
【0003】
そのようなリニアガイドデバイスは、通常は、リニアガイドデバイスのレールに摺動的に支持されてレールに相対してレールの長い全長にわたって長手方向に前後に、例えば、直線又は曲線に沿って摺動可能なキャリッジを備える。この過程において、キャリッジの摺動面は、レールのガイド面に対して、好ましくは潤滑剤なしで、すなわち、潤滑剤が相互に対して摺動する面の間に与えられずに摺動する。相互に対して摺動する面のために、例えば、プラスチック-プラスチック又はプラスチック-金属の材料の組合せなど、特に低い摩擦係数によって特徴付けられる材料の組合せが、通常は用いられる。
【0004】
例えば、レールは、略一定の断面幾何形状、例えば、U形状、W形状、T形状などの長いプロファイルとして金属からなり得る。通常、キャリッジは、通常は平行六面体であり金属からなることが多いキャリッジ本体を含み、ガイドされる本体にキャリッジを固定するための固定手段を含み得る。同様に、キャリッジは、上記本体がガイドされるのに相対して本体に固定するための固定手段を含み得る。
【0005】
プラスチック-金属の材料の組合せを実現するために、例えば、少なくとも部分的にレールを金属で形成し、キャリッジの滑り軸受部をプラスチックの部品を摺動的に当接させることが知られている。
【0006】
したがって、一般的な滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスの場合、リニアガイドデバイスが連続使用されて相互に対して摺動するキャリッジ及びレールの各部分が摩耗することは完全に回避することはできず、望ましくない遊びをリニアガイドデバイスにもたらしてしまう。従来技術は、摩耗に起因する遊びを補償することを種々の態様で試みている。例えば、摩耗を受ける部分を、摩耗限界を超えたときに交換される別個に形成された摺動要素として設計することが知られているが、これは頻繁な保守間隔を伴う。他の解決手段は、例えば、機構、例えば、そこに結合されたギアユニットによって手動又は自動で調整可能な、キャリッジにおける調整可能な摺動要素の構成を着想したものである。しかし、そのような解決手段は多数の構成要素による複雑な構造を有し、同様にそれらが摩耗を受けることになる。またさらに、この種のリニアガイドデバイスは、一部の用途に対しては大きすぎ、又は小型化が不充分である。
【0007】
そのような解決手段は、例えば、長手方向を横断するキャリッジの最大全長が最大で80mm、特に最大で60mmとなる場合、特にリニアガイドデバイスの小型化には適さない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの課題は、上記の不利な点の少なくとも1つを少なくとも部分的に取り除く滑り軸受ガイドデバイスを提供することである。特に、滑り軸受ガイドデバイスは、小型設計による自動的な遊び減少を可能とすべきである。この課題を達成するために、本発明は、リニアガイドデバイス、特に、請求項1に係る特徴を有するリニアガイドデバイスを提案する。
【0009】
本発明に係るリニアガイドデバイスは、基本的構成要素として、レール及びキャリッジを備え、特に請求項1の一般部分の特徴によって構成される。
【0010】
上記課題を達成するために、本発明によると、少なくとも1つの摺動要素がレールの対応するガイド部を一方の側面で、特に横断面において少なくとも部分的に包囲すること、及びキャリッジが遊びの補償のためのばねデバイスを備えることが提案される。そのばねデバイスは、包囲する摺動要素を全体として、すなわち、全体的に、特に横断面において長手方向に横断する調整方向に沿って、第2の滑り軸受部に相対して、レールの対応するガイド部に対して押圧する。
【0011】
摺動要素の包囲設計と単純に設計されたばねデバイスとの組合せによって、自動的な遊び減少によるキャリッジの特に小型の設計が可能となる。
【0012】
設計を簡素化するために、ばねデバイスは、好ましくは摺動要素に直接、すなわち、いずれの他の中間構成要素もなく係合する。
【0013】
特に、ばねデバイスは、基本的には1つのみ又は少数の弾性的に作用するばね要素からなり得る。
【0014】
レールは、長い、特に直線的又は曲線的なレール本体を長手方向に有する。レール本体の両横断面、すなわち、長手方向に垂直な横断方向に見たレールの両側には、長手方向に沿って延在する各ガイド部、すなわち、第1及び第2のガイド部が、特にレール本体と一体的に形成される。
【0015】
特に、レールは、好ましくは小型のプロファイル断面を有するT型レールであり得る。
【0016】
特に好ましくは、両ガイド部の各々は、レール本体の同じ鉛直面上に形成され、鉛直面は、好ましくは、レールが好ましくは外部構成要素に接続可能なレールの固定面に対向している。特に好ましくは、両ガイド部は、レールの長手方向の全長の80%以上、特に95%以上にわたって延在する。
【0017】
キャリッジは、2つの摺動要素、すなわち、二連滑り軸受に対する収納キャリッジとして設計され得る。
【0018】
キャリッジは、好ましくは、第1の滑り軸受部及び第2の滑り軸受部が設けられるキャリッジ本体を有する。第1の滑り軸受部はガイド部の第1のガイド部に当接し、第2の滑り軸受部はガイド部の第2のガイド部に当接する。
【0019】
好ましくは、滑り軸受部は、ガイド部に相対してガイド部に対するそれらの当接を維持しつつ、目的のように摺動可能にガイド又は支持され、それに従って摺動可能にガイドされる。一実施形態では、滑り軸受部及びキャリッジ本体は、一体形成される。他の実施形態では、キャリッジ本体と、滑り軸受部の少なくとも一方、特に両方とは別個に形成され、特にキャリッジ本体は滑り軸受部とは異なる材料からなる。キャリッジは、その滑り軸受部によって、レールに相対して摺動可能な態様で長手方向にガイド部上にガイドされる。
【0020】
好ましくは、キャリッジは、レールのガイド部に当接するその滑り軸受部を介して排他的にレールに接続される。
【0021】
滑り軸受部の一方はいずれも、キャリッジを長手方向に垂直な少なくとも一方向に、好ましくは完全に不動となるようにレール上に保持し、遊びを無視するために、ガイド部の一方をそれぞれの横断面上で少なくとも部分的に包囲する。好ましくは、第1の滑り軸受部は第1のガイド部の周囲に係合し、第2の滑り軸受部は第2のガイド部の周囲に係合する。
【0022】
本発明によると、少なくとも第1の滑り軸受部は、別個の摺動要素を備える。好ましくは、第1の滑り軸受部は、各ガイド部に摺動要素によって、特に排他的に当接する。
【0023】
摺動要素を、長手方向に横断して、特に横断方向に平行に延びる調整方向に沿って第2の滑り軸受部に相対して第1のガイド部に対して付勢又は押圧するばねデバイスは、遊びの補償を実行する。
【0024】
ばねデバイスによって、滑り軸受部は、好ましくは、調整方向に相互に相対して又はガイド部に対して予荷重を受ける。これは、特に、長手方向に横断する閉じた力のフローを生成しつつ行われ、その力のフローは、少なくとも、キャリッジ本体、ばねデバイス、摺動要素、第1のガイド部、レール本体、第2のガイド部及び第2の滑り軸受部を特にこの順序で通過する。
【0025】
一般に好ましくは、摺動要素はキャリッジ本体に取外し可能に受容され、摺動要素は、摺動要素を第2の滑り軸受部に相対して調整方向に変位させることによって、調整方向に沿うレールの断面の変化を補償するように設計されている。
【0026】
好ましくは、受動ばねデバイスは、摺動要素を第1のガイド部に対して付勢、押圧又は偏向することによって、第1のガイド部に対する摺動要素の実質的に連続的な当接をもたらすことができる。
【0027】
特に好ましくは、ばねデバイスは、摺動要素がレールから離れる方向に変位される場合に調整方向に沿う付勢力又は押圧力の増加をもたらす。特に好ましくは、滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスは、調整方向に略垂直でかつ特に長手方向に略垂直な外力によって主に荷重方向に負荷を受けることが意図されたプレート状キャリッジによって形成される。
【0028】
好ましくは、滑り軸受部の各一方は、各滑り軸受部が各滑り軸受部の摺動面の両側で作動方向に垂直に各ガイド部の背部に係合するように各ガイド部を包囲し、その摺動面は各ガイド部に作動方向に押圧される。これと同じことが単数の摺動要素又は複数の摺動要素にも当てはまる。
【0029】
本発明に係る滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスは、その簡素な構造のために特に強健な設計を有し、問題なく大幅に小型化可能となる。これは、とりわけ、有効な遊びの補償を確保するために、摺動要素がばねデバイスによって第1のガイド部に押圧される力が非常に低い場合、特に20N未満、好ましくは15N未満、特に好ましくは10N以下及び/又は2N以上である場合には、既に充分であることが分かっている。
【0030】
好適な実施形態によると、遊びの補償は、作動方向に対応する単一の空間方向に沿って排他的に与えられる。なぜなら、多くの用途において、それは、主に不正確なガイド特性をもたらす荷重方向に垂直な遊びであるためである。
【0031】
有利な実施形態によると、ばねデバイスは、弾性的に偏向されるばね要素を備える。好適な実施形態では、ばね要素は、特に適宜の金属からなる螺旋圧縮ばね又は渦巻ばねとして設計される。他の実施形態では、ばね要素は、例えば、ゴム弾性プラスチック構成要素として構成され得る。
【0032】
ばねデバイスは、摺動要素を適宜の予荷重又は押圧力によってガイド部に対して自動的に付勢又は押圧する。有利な実施形態では、その力は、ばね要素の偏向に応じる。好ましくは、ばね要素はその偏向に比例するばね力を有し、そのばね力は特に作動方向に作用する。特に好ましくは、ばね要素は、キャリッジの各位置において偏向され、その位置の各々において、摺動要素がばねデバイスによって第1のガイド部に対して付勢又は押圧される。特に好ましくは、ばね要素はキャリッジ本体内に配置され、それによって小型の設計が可能となる。
【0033】
一実施形態では、キャリッジは、ばね要素をキャリッジ本体に、調整方向に垂直でかつ特に長手方向に垂直な少なくとも一方向に固定する固定用要素を備える。好適な実施形態では、固定用要素はネジとして設計され、そのネジは、キャリッジ本体の外側からキャリッジ本体内に螺合されてばね要素に接続され、その結果としてばね要素がキャリッジ本体に、特にフォームフィッティングの態様で固定される。好適な実施形態では、固定用要素の少なくとも一部分は、特に調整の方向に沿って、当該部分がばね誘導のために特にばね心棒としてばね要素と協働するように、ばね要素と重なるように配置される。特に好ましくは、キャリッジ本体はアクセス開口を備え、ばね要素がアクセス開口を通じてキャリッジ本体内のその目的の位置まで調整方向に垂直な方向に挿入され、固定用要素によって固定される。特に好ましくは、ばね要素は、キャリッジ本体に対して及び/又は第1の摺動要素に対して直接当接する。好ましくは、ばね要素の偏向に応じた力が、キャリッジ本体及び/又は摺動要素に直接作用する。
【0034】
特に好ましくは、キャリッジは、摺動要素を、調整方向に沿って調整経路上で摺動体に相対して変位可能にガイドする調整ガイドデバイスを備える。特に好ましくは、キャリッジ本体は、この目的のために調整ガイドデバイスの第1の部分を構成し、それは、特に実はぎ接続の態様で摺動要素によって構成される調整ガイドデバイスの第2の部分と積極的に相互作用する。特に好ましくは、調整ガイドデバイスは、調整経路に沿う長手方向の摺動要素の変位を防止する。好ましくは、摺動要素は、それが排他的に調整方向に変位可能となるように、キャリッジ本体に相対して調整ガイドデバイスにおいてガイドされる。
【0035】
一般に、変位可能性は、両側の変位可能性、すなわち、往復変位に対する適性を意味する。好ましくは、調整ガイドデバイスは、調整経路を制限する少なくとも1つの制止部を有する。特に好ましくは、調整ガイドデバイスは、調整経路を両側に制限する2つの制止部を有する。この制止部、特に複数の制止部は、摺動要素との直接の接触の場合に、調整経路を越える調整方向での摺動要素の変位を防止するように設計される。特に、調整ガイドデバイスは、調整方向に垂直な摺動要素の傾きを防止する。
【0036】
好適な実施形態によると、ばねデバイスは、摺動要素を調整ガイドデバイスの高さにおいて長手方向に係合させる。これは、好ましくは、力が摺動要素に調整ガイドデバイスの高さにおいてばねデバイスから調整方向に伝達可能であることを意味する。特に好ましくは、ばねデバイスは、摺動要素をキャリッジ及び/又は摺動要素の中心領域に係合させる。中心領域は、領域を長手方向に有する構成要素の両絶対延長端部から、長手方向における各構成要素の最大延長の20%以上、特に30%以上だけ離隔された領域を意味する。結果として、摺動要素は、傾き又はカントなく第1のガイド部に対して付勢又は押圧可能となる。
【0037】
一般に好適な実施形態によると、第2の滑り軸受部は、他の摺動要素を備える。
【0038】
摺動要素は、好ましくは、同一構造の一片のプラスチック構成要素である。
【0039】
好ましくは、摺動要素の1つはいずれも、各横断面においてガイド部の一方を少なくとも部分的に包囲する。特に好ましくは、他の摺動要素は、キャリッジ本体に不動となるように保持される。一般に好ましくは、第1の滑り軸受部は摺動要素からなり、かつ/又は第2の滑り軸受部は他の摺動要素からなる。摺動要素を設けることによって、キャリッジ本体は、良好な耐荷重能力に有利となるように設計可能となり、摺動要素は良好な摺動能力に有利となるように設計可能となる。
【0040】
好適な実施形態によると、少なくとも3面の摺動面が設けられ、滑り軸受部の各々における摺動面のうちの少なくとも2面が、ガイド部の各々における異なる面、すなわち、長手方向に垂直な各面と摺動接触している。滑り軸受部の一方の摺動面はいずれも、特にそれらが異なる方向に向く点で異なる。好ましくは、滑り軸受部の一方の複数の摺動面が、中断なく相互に通じることになる。第1の滑り軸受部の摺動面の特に少なくとも1面、特に少なくとも2面、特に少なくとも3面が、摺動要素によって構成される。好ましくは、第2の滑り軸受部の摺動面の特に少なくとも1面、特に少なくとも2面、特に少なくとも3面が、他の摺動要素によって構成される。好ましくは、調整方向において横断面に向く第1の滑り軸受部の摺動面は、摺動要素によって構成される。特に、滑り軸受部の摺動面は、摺動面の少なくとも2面が相互に向き合い及び/又は滑り軸受部の一方の少なくとも2面の摺動面が相互とは逆に略平行に延在するように、相互に相対して配置される。特に好ましくは、摺動面の少なくとも1面が、長手方向におけるその延長において中心領域によって中断される。中心領域は、好ましくは、レールから離隔されて隣接する隙間面に対して後退した隙間面を有する。結果として、特にいずれも少なくとも10mmの所定の最小ガイド長が、ガイド部及び滑り軸受部の摺動接触について規定され、その結果としてカントが防止される。好ましくは、滑り軸受部の摺動面の少なくとも2面は、対応するガイド部と常に接触し、その少なくとも1面は調整方向に向く。
【0041】
第2の滑り軸受部が他の摺動要素を備える好適な実施形態によると、好ましくは、第2の滑り軸受部の摺動面の少なくとも1面、特に少なくとも2面、特に少なくとも3面が、当該他の摺動要素によって形成される。好ましくは、摺動要素によって形成される摺動面は、調整方向に沿って相互に向き合う。
【0042】
特に好ましくは、摺動要素は、類似又は同一の設計のものである。摺動要素の各々は外側輪郭を有し、外側輪郭は、特に長手方向に沿って、長手方向における摺動要素の全長の特に60%以上、特に70%以上、特に80%以上にわたって少なくとも部分的に略筒状、特に円筒状である。
【0043】
好適な実施形態によると、キャリッジ本体は、摺動要素を受容するための受容空間を備える少なくとも1つの受容領域を有し、それは少なくとも部分的に摺動要素の外側輪郭で形成され、特に、少なくとも部分的に略筒状、特に円筒状である。一般に好ましくは、キャリッジ本体は、特にガイド部に直接当接することなくそれらの各横断面でガイド部の両方を少なくとも部分的に包囲するように、設計される。受容領域によって形成される受容空間において、摺動要素は、特に、キャリッジ本体と各ガイド部の間に、特に直接支持するように、キャリッジ本体に保持される。受容空間は、摺動要素が調整方向に沿って調整経路上をキャリッジ本体に相対して受容空間内で変位可能となるように拡げられる。この目的のために、例えば、受容空間の内側輪郭は、少なくとも部分的に楕円筒状の内側輪郭を有するように、少なくとも部分的に円筒状の摺動要素の外側輪郭を複製可能である。受容空間の延長の半径は、摺動要素の外側輪郭の外側半径と実質的に一致する。特に好ましくは、キャリッジ本体は、他の摺動要素を受容するための受容空間を備える他の受容領域を有する。その受容空間は、当該他の摺動要素の外側輪郭の少なくとも部分を複製し、特に、少なくとも部分的に略筒状、特に円筒状であり、当該他の摺動要素はキャリッジ本体に、特に不動となるように保持される。受容空間に関して開示された特徴は、他のガイド部に、すなわち、他の摺動要素に関してもそれに応じて転用可能である。ガイド部によって、摺動要素はキャリッジ本体内に保持され、キャリッジ本体は摺動要素を介してレール上にそのガイド部によって保持される。
【0044】
好適な実施形態によると、レールは、キャリッジ本体の通路に長手方向に通される。結果として、少なくとも一部分、特にガイド部は、好ましくは各位置でキャリッジ本体に受容される。この場合、各受容空間は、通路に隣接し、特に通路内部にわたって通り抜ける。好適な実施形態によると、摺動要素の少なくとも一方、特に両方は、各受容領域に対する保持のために各受容領域に対する弾性偏向の下で適用されるように、通路内に収容される。これは、特に、摺動要素を各受容領域に対して保持するために、摺動要素がまず通路内に配置され、それに応じて摺動要素が、各摺動要素の少なくとも部分の弾性偏向の下で各受容空間内に、特に調整方向に沿って変位可能となることを意味する。一般に、弾性偏向は、静止位置に相対する偏向として理解されるものであり、偏向は内在的反力(ばね力)の発生下で外力の作用によって生成される。特に好ましくは、摺動要素は、偏向なく受容領域内に保持される。
【0045】
特に好ましくは、キャリッジ本体は、特にダイキャスト加工を用いて基材から作製される。特に良好な強度及び/又は剛性を有する広範な材料が、基材として使用可能である。亜鉛合金が、基材として特に好適であることが実証されている。キャリッジ本体は、好ましくは亜鉛ダイキャスト加工によって製造され、特に好ましくは機械的製造工程によって、特に機械加工によってさらに加工される。好ましくは、摺動要素及び/又は他の摺動要素は、特にプラスチック射出成形加工を用いて基材とは異なる摺動材から作製される。
【0046】
特定の用途について、基材及び摺動材が同一である実施形態も可能である。特に、トライボロジー的に最適化されたプラスチック、特に、好ましくはプラスチック射出成形によって加工可能なトライボポリマーが、それ自体で摺動材として実証されている。
【0047】
特に、ここで適用可能なトライボポリマーは、熱可塑性物質であるポリエテン(ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエテン(ポリテトラフルオロエチレン)を含み、及び熱硬化性物質の場合にはフェノール樹脂を含む。摩擦をさらに低減するために、これらのプラスチックは、潤滑剤、特に、二硫化モリブデン又はグラファイトなどの微粒子固体潤滑剤を含み得る。そのようなポリマーを、ここではトライボポリマーともいう。摩擦の低減は摩耗及びさらには摩滅も減少させるので、これらの製品は、食品及び半導体業界並びに生化学的及び微生物学的用途など、高い純度が必要となる場合に特に適切となる。ポリマー材料は、機械特性を向上するために、例えば、プラスチック又はテキスタイルの充填材及び繊維材料を含有してもよい。トライボロジー的に最適化されたプラスチック又はトライボポリマーは、好ましくは化合物から形成される。その化合物は、好ましくはベースポリマー、例えば、熱可塑性物質、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレンを含有する。その化合物は、好ましくは、固体潤滑剤として作用する粒子、例えば、二硫化モリブデン及び/又はグラファイトを含有する。その化合物は、好ましくは1以上の充填材、例えば、強化繊維及び/又は強化粒子を含有する。好ましくは、レールは、一体形成される。好ましくは、レールは、特にアルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含有し、好ましくは硬質陽極酸化された金属材料からなり、プラスチックとの材料の組合せにおいて有利な摺動及び摩滅特性をもたらす。
【0048】
特に好ましくは、摺動要素及び/又は他の摺動要素は、各摺動要素を長手方向に沿って固定するためにキャリッジ本体の対応する固定用部分の背部に係合するオフセット固定用部分を有する。特に好ましくは、固定用部分の各々は、ばねデバイスの高さ及び/又は調整ガイドデバイスの高さにおいて長手方向に配置される。特に好ましくは、摺動要素の固定用部分及び第2の、すなわち、他の摺動要素の固定用部分は、同じ高さに配置される。特に好ましくは、固定用部分の全てがキャリッジ本体の中心領域の高さに配置され、それによりキャリッジは特に簡素な設計のものとなり得る。
【0049】
好適な実施形態によると、キャリッジ本体は、ばねデバイス、特にばね要素の少なくとも部分をキャリッジ本体に挿入するために、好ましくは長手方向に垂直な面にアクセス開口を有する。特に好ましくは、キャリッジ本体の固定用部分は、長手方向に沿って両側にアクセス開口を越えて延在する。このように、アクセス開口及び固定用部分は、各機能に悪影響を及ぼすことなく特に省スペースな態様で配置可能である。
【0050】
一般に、特に好ましくは、キャリッジは、摺動要素の少なくとも一方、特に両方に対して回転防止部を有する。それは、各摺動要素と、特にその固定用部分と接すると、長手方向に延びる回転軸周りのキャリッジ本体に対する摺動要素の回転を防止する。この目的のため、回転防止部は、好ましくは、異なる方向に向くとともに摺動要素に対抗する複数の平面を有していてもよく、その平面は、摺動要素に接すると、キャリッジ本体に対する摺動要素の回転を阻止する。回転防止部は、キャリッジがレール上にガイドされない場合でも、キャリッジ本体内の摺動要素の目的の位置が保持されることを保証する。
【0051】
一般に好ましくは、各摺動要素は、長手方向に沿ってキャリッジ本体の最大延長の80%以上、特に90%以上にわたって連続的に延在する。特に好ましくは、第1の滑り軸受部の摺動面の全てが、特に長手方向に沿って摺動要素の全長の90%以上にわたって、摺動要素によって形成される。特に好ましくは、第2の滑り軸受部の摺動面の全ては他の摺動要素によって形成される。第2の滑り軸受部の摺動面は、好ましくは長手方向に摺動要素の全長の90%以上にわたって延在する。
【0052】
本発明はさらに、本発明に係る滑り軸受ガイドデバイスのために設計されたキャリッジ自体に関する。キャリッジはキャリッジ本体を有し、そこには、第1の滑り軸受部が滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスのレールの第1のガイド部との当接のために設けられ、第2の滑り軸受部がレールの第2のガイド部との当接のために設けられる。滑り軸受部は、キャリッジ、特にキャリッジ本体をレールに相対してガイド部上に長手方向に変位可能な態様でガイドするように設計される。滑り軸受部の一方は、いずれもガイド部の一方の周囲に少なくとも部分的に係合するように設計される。ガイド部周囲に係合する滑り軸受部は、長手方向に垂直にキャリッジをレール上に保持する。
【0053】
本発明によると、キャリッジは、摺動要素を、長手方向に横断する調整方向に沿って第2の滑り軸受部に相対して第1のガイド部に対して、横断方向にかつ側方に付勢又は押圧して遊びを補償するように構成されたばねデバイスを備える。
【0054】
一般に、キャリッジは、キャリッジとの接続において上記に開示した好適な特徴のうちの1つ以上を有し得る。
【0055】
本発明はさらに、機械又はシステムにおける可動構成要素の無潤滑平軸受のための、本発明に係る滑り軸受ガイドデバイス又はリニアガイドデバイスの使用に関する。
【0056】
動作のモードに関して、特に、ばねデバイスは、摺動要素を全体的にかつ全体として、長手方向又は横断方向に横断する調整方向に沿って、第2の滑り軸受部に相対して第1のガイド部に対して側方に押圧することが規定され得る。受動ばねデバイスによって、摺動要素は、動作時に、リニアガイドデバイスの自動的な遊びの補償のために、調整方向に第2の滑り軸受部に相対して自動的に変位される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明に係るリニアガイドデバイスの好適な実施形態の分解図である。
【
図2A】
図1に示す本発明に係るキャリッジの断面図である。
【
図2B】
図1に示す本発明に係るキャリッジの平面図である。
【
図2C】
図1に示す本発明に係るキャリッジの断面図である。
【
図2D】
図1に示す本発明に係るキャリッジの平面図である。
【
図2E】
図1に示す本発明に係るキャリッジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の好適な実施形態を、限定することなく、2図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0059】
図1は、本発明に係るリニアガイドデバイスの実施形態の分解図を模式表示で示す。リニアガイドデバイスは、レール1、及びレール1に相対して摺動接触状態でガイドされるように設計されたキャリッジ2を備える。レール1は、キャリッジ2がレール1に相対して変位される長手方向Vに長い一片のプロファイルとして設計される。レール1は、硬質陽極酸化されたアルミニウム合金からなる。レール1はレール本体10を備え、その2面の横断面上に、各ガイド部11、12がレール本体10と一体形成して延在する。長手方向Vに沿って等距離で離隔された複数の貫通孔が、レール本体10に設けられる。貫通孔は、適宜の固定手段によってレール1を固定するために使用される。レール1は、途中を省略して示されており、長手方向に直線的にその延長全体に沿って延在する。ガイド部11、12の各々は複数のガイド面を有し、ガイド部11、12の一方のガイド面の全てはそれぞれ異なる空間方向を向く。ガイド部11、12の各々のガイド面の2面は反対方向を向いて略平行に延在し、ガイド部11、12の各々のガイド面の中間の面はそれに対して垂直に延在する。結果として、レール1は、長手方向Vに沿ったその範囲全体に沿って略T形状断面を有する。
【0060】
キャリッジ2はキャリッジ本体20を備え、それは略平行六面体の形状であり、2つの突出する固定用部分を有し、その各々は適宜の締結手段によって本体に接続されるように適合された2つのネジ穴を有する。第1の滑り軸受部及び第2の滑り軸受部がキャリッジ本体20に設けられ、それらの滑り軸受部によって、キャリッジ2は長手方向にレール1に相対してガイド部11、12上に摺動可能にガイドされ得る。この場合、第1の滑り軸受部はキャリッジ本体20から独立して形成された摺動要素21を有し、第2の滑り軸受部はキャリッジ本体20から独立して形成された他の摺動要素22を有する。摺動要素21、22は、好ましくはトライボポリマーからなる一片の同一の射出成形部品である。
【0061】
拡大図に示すリニアガイドデバイスの構成要素が組み立てられると、ガイド部の各々は、それらの摺動要素21、22に、各横断面上のガイド部11、12の一方の周囲で少なくとも部分的に係合する。それにより、キャリッジ2は、長手方向に沿うレール1に相対するキャリッジ2の摺動変位を可能としつつ、レール1上に長手方向Vに垂直に保持される。キャリッジは、ばね要素23、ここでは例えば、螺旋圧縮ばねを有するばねデバイスをさらに備える。ばね要素23は、目的のようにキャリッジ本体20内に収容され、摺動要素21とキャリッジ本体20の間で特に弾性的に偏向された態様で作用する。ばね要素23によって、ばねデバイスは、摺動要素21を調整方向Sに沿って第1のガイド部11に対して付勢又は押圧し、それにより、第2のガイド部12を第2の滑り軸受部の他の摺動要素22に対して付勢又は押圧する。これが、調整方向に垂直に動作するリニアガイドデバイスの構成要素の摺動特性に影響を与えることなく、調整方向に沿うリニアガイドデバイスの遊びの補償となる。
【0062】
図2A~2Eの各々は、
図1のリニアガイドデバイスの例示的実施形態のキャリッジ2を平面図、側面図及び2つの断面図で模式的に示す。
図2A及び2Cの断面図は、
図2B及び2Dにおける長手方向Vに垂直なキャリッジ2の2つの異なる位置での断面を示し、その断面は長手方向Vに沿って相互に離隔されている。キャリッジ本体20は、そのガイド部11、12を有するレール1が目的のように通される通路203を有する。キャリッジ本体20は、通路203に隣接して、調整方向に沿って両側に受容領域201、202を有し、その各々は摺動要素21及び他の摺動要素22を受容するための受容空間をそれぞれ形成する。摺動要素21、22は、受容領域201、202によってキャリッジ本体20に保持される。キャリッジ2は、キャリッジ本体20と一体の凹部として形成された調整ガイドデバイス25をさらに有し、それに沿って摺動要素21は調整経路上をキャリッジ本体20に相対して摺動的に変位され得る。したがって、受容領域201の受容空間及び他の受容領域202の受容空間は、他の摺動要素22がキャリッジ本体20に不動となるように保持され、摺動要素21が調整距離にわたって調整方向Sに沿ってキャリッジ本体20内に変位可能に保持されるように、異なる態様で形成される。キャリッジ本体20におけるばねデバイスのばね要素23は調整方向Sにおいて摺動要素21を押圧し、摺動要素21は第1のガイド部11を押圧してリニアガイドの遊びを補償する。摺動要素21の調整経路は制止部によって制限され、これは受容領域201の調整方向に沿う受容空間の断面の減少によって実現される。
【0063】
両摺動要素21、22は実質的に同様に構成され、摺動要素21、22の各々は、その断面において、固定用部分によっていずれも中心領域において中断された略円筒状の外側輪郭を有し、固定用部分は包囲する外側輪郭に対してオフセットされ、長手方向Vに沿って各摺動要素21、22を固定するためにキャリッジ本体20の対応する固定用部分の背部に係合するように設計されている。中心部分において、複数の平面が、各摺動要素21、22の外側輪郭上にさらに形成されて、キャリッジ本体20における対応する面に当接する。それにより、長手方向Vに延びる回転軸周りのキャリッジ本体20に対する各摺動要素21、22の回転が抑止される。これにより、それらの平面は一体として、各摺動要素21、22の回転防止部を形成する。概して有利には、摺動要素21、22の各々は、長手方向Vに沿ってキャリッジ本体20のほぼ延長全体にわたって長手方向Vに沿って延在する。なお、断面
図Cでは、受容領域201、202の各受容空間の略筒状の内側輪郭をより良く示すために、摺動要素21、22は非表示とされている。
【0064】
本発明の他の顕著な有利な効果は、
-無潤滑走行(潤滑剤なし)、
-キャリッジの段差なしでの滑らかな摺動、
-キャリッジの強固な支持(位置安定性)、
-静音でかつガタツキなしの動作、
-遊び調整の簡素な設計、及び
-レール及びキャリッジの小型設計
である。
【符号の説明】
【0065】
1 レール
2 キャリッジ
10 レール本体
11 第1のガイド部
12 第2のガイド部
20 キャリッジ本体
21 摺動要素
22 他の摺動要素
23 ばね要素
24 固定用要素
25 調整ガイドデバイス
201 受容領域
202 他の受容領域
203 通路
S 調整方向
V 長手方向
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り軸受ガイドデバイス、特にリニアガイドデバイスであって、
長手方向(V)に長いレール本体(10)を有するレール(1)であって、前記レール本体の2面の横断面に前記長手方向(V)に沿って延在する各ガイド部(11、12)が形成された、レール(1)と、キャリッジ本体(20)を有するキャリッジ(2)であって、前記キャリッジ本体には前記ガイド部の第1のガイド部(11)に当接する第1の滑り軸受部及び前記ガイド部の第2のガイド部(12)に当接する第2の滑り軸受部が設けられ、該第1及び第2の滑り軸受部によって前記キャリッジ(2)は前記レール(1)に相対して前記ガイド部を前記長手方向(V)に摺動可能にガイドされる、キャリッジ(2)と、を備え、前記滑り軸受部の各一方は、前記長手方向(V)に垂直に前記キャリッジ(2)を前記レール(1)上に保持するために各前記横断面において前記ガイド部(11、12)の一方の周囲に少なくとも部分的に係合し、少なくとも前記第1の滑り軸受部は摺動要素(21)を備え、
前記第1の滑り軸受部の前記摺動要素(21)は、各前記横断面において対応する前記ガイド部(11、12)の周囲に少なくとも部分的に係合し、
前記キャリッジ(2)は遊びの補償のためのばねデバイスを備え、該ばねデバイスは包囲する前記摺動要素(21)を、前記長手方向(V)を横断する調整方向(S)に沿って前記第2の滑り軸受部に相対して前記第1のガイド部(11)に対して押圧
し、ばね荷重がかけられた前記摺動要素(21)が前記レール(1)の前記第1のガイド部(11)に対して前記調整方向(S)に押圧され、該調整方向に垂直な方向において両側で前記第1のガイド部(11)の背部に係合し、前記ばね荷重がかけられた摺動要素(21)はトライボロジー的な添加物を有するプラスチックからなる、滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項2】
前記ばねデバイスは、特に前記調整方向(S)に沿って、弾性的に作用する少なくとも1つのばね要素(23)を備え又は該少なくとも1つのばね要素(23)からなり、前記キャリッジは、好ましくは、前記ばね要素(23)を前記キャリッジ本体(20)に少なくとも前記調整方向(S)に垂直な方向に固定する固定用要素(24)を備える、請求項1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項3】
前記キャリッジ(2)は、前記調整方向(S)に沿う調整経路上を前記キャリッジ本体(20)に相対して前記摺動要素(21)を変位可能にガイドする調整ガイドデバイス(25)を備え、該調整ガイドデバイス(25)は、好ましくは前記調整経路を制限する少なくとも1つの制止部を有し、かつ/又は好ましくは前記キャリッジ本体(20)内の凹部によって形成されている、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項4】
前記ばねデバイ
スは、前記摺動要素(21)において直接に、特に、前記調整ガイドデバイス(25)の高さにおいて及び/又は前記キャリッジ(2)の中心領域において前記長手方向(V)に相対して、係合する
、請求項3に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項5】
前記第2の滑り軸受部は、他の摺動要素(22)を備え、かつ/又は
少なくとも一方の前記摺動要素(21)若しくは両摺動要素(21、22)の各々は少なくとも3面の摺動面を有し、前記滑り軸受部の一方の前記摺動面の少なくとも2面はいずれも前記ガイド部(11、12)の一方の各異なる面に摺動的に当接しかつ/若しくは相互に略垂直である、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項6】
前記摺動要素(21、22)は同じ種類のものであり、特に同一設計かつ一片のものであり、
前記摺動要素(21、22)は、好ましくは、
相互に略垂直な3面の内側摺動面を有し、かつ/又は
各々が、少なくとも部分的に略筒状の、特に円筒状の外側輪郭を有する、
請求項5に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項7】
前記キャリッジ本体(20)は対応する前記滑り軸受部において各摺動要素(21、22)のための受容領域(201)を形成し、該受容領域は各前記摺動要素(21、22)を受容するための前記摺動要素(21)の外側輪郭に実質的に共役な受容空間を備え、該受容空間は少なくとも部分的に、特に略筒状に、特に円筒状に設計され、前記ばねデバイスと協働する前記摺動要素(21)の前記受容空間は、調整ガイドデバイス(25)を構成するために、前記長手方向に横断する方向に拡げられて設計されている、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項8】
少なくとも一方の前記摺動要素、又は前記摺動要素(21、22)は、弾性偏向の下で各前記受容領域に対して適用可能である、請求
項7に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項9】
前記キャリッジ本体(20)は金属基材から、特にダイキャスト加工によって作製され、前記摺動要素(21、22)は前記金属基材とは異なる摺動材、特にトライボポリマーから、特に射出成形加工によって作製されている、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項10】
前記摺動要素(21)及び/又は前記他の摺動要素(22)は、各前記摺動要素(21、22)を前記長手方向(V)に沿って固定するために前記キャリッジ本体(20)の対応する固定用部分に係合するオフセット固定用部分を有する、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項11】
前記固定用部分は、前記ばねデバイスの高さ
、及び/若しくは
、前記キャリッジ(2)が備え、前記調整方向(S)に沿う調整経路上を前記キャリッジ本体(20)に相対して前記摺動要素(21)を変位可能にガイドする調整ガイドデバイス(25)の高さにおいて前記長手方向(V)に配置され、かつ/又は
前記キャリッジ本体(20)は、前記ばねデバイ
スを前記キャリッジ本体(20)に挿入するためのアクセス開口を備える、
請求項10に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項12】
前記キャリッジ(2)は、各摺動要素(21、22)について回転防止部を有し、該回転防止部は、前記摺動要素(21、22)に、特にその固定用部分に、接すると、前記摺動要素(21、22)が、前記長手方向(V)に延びる回転軸周りに回転するのを防止する、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項13】
前記摺動要素(21)及び/又は前記他の摺動要素(22)は、前記長手方向(V)における前記キャリッジ本体(20)の全長の80%以上にわたって連続的に延在する、請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイス。
【請求項14】
請求項
1に記載の滑り軸受ガイドデバイスのための、特にリニアガイドデバイスのためのキャリッジ(2)であって、
第1の滑り軸受部が前記リニアガイドデバイスのレール(1)の第1のガイド部(11)との当接のために設けられ、第2の滑り軸受部が前記レール(1)の第2のガイド部(12)との当接のために設けられた、キャリッジ本体(20)を備え、前記滑り軸受部は、前記キャリッジ(2)を長手方向(V)に前記レール(1)に相対して前記ガイド部(11、12)に対して摺動可能にガイドするために設計され、前記滑り軸受部の一方は、前記キャリッジ(2)を前記レール(1)上に前記長手方向(V)に垂直にそれぞれ保持するために前記ガイド部(11、12)の一方の周囲に少なくとも部分的に係合するようにそれぞれ設計され、少なくとも前記第1の滑り軸受部は摺動要素(21)を備え、
前記キャリッジ(2)は遊びの補償のためのばねデバイスを備え、該ばねデバイスは、包囲する摺動要素(21)を全体として、前記長手方向(V)を横断する調整方向(S)に沿って前記第2の滑り軸受部に相対して前記第1のガイド部(11)に対して押圧するように設計され
、ばね荷重がかけられた前記摺動要素(21)が前記レール(1)の前記第1のガイド部(11)に対して前記調整方向(S)に押圧され、該調整方向に垂直な方向において両側で前記第1のガイド部(11)の背部に係合し、前記ばね荷重がかけられた摺動要素(21)はトライボロジー的な添加物を有するプラスチックからなる、キャリッジ。
【請求項15】
機械又はシステムにおける可動構成要素の無潤滑摺動支持のための請求項1から
13のいずれか一項に記載の滑り軸受ガイドデバイスの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そのような解決手段は、例えば、長手方向を横断するキャリッジの最大全長が最大で80mm、特に最大で60mmとなる場合、特にリニアガイドデバイスの小型化には適さない。スイス国特許出願公開第663373号明細書、特許第3740708号、特開第2003-314545号公報、独国特許出願公開第2718362号明細書、米国特許第10584746号明細書及び米国特許出願公開第2006/083447号明細書から、ばねデバイスによってレールとキャリッジの間に予荷重が付与されるいくつかの様々なリニア軸受ガイドデバイスが知られている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
好ましくは、滑り軸受部の各一方は、各滑り軸受部が各滑り軸受部の摺動面の両側で作動方向に垂直に各ガイド部の背部に係合するように各ガイド部を包囲し、その摺動面は各ガイド部に作動方向に押圧される。これと同じことが単数の摺動要素又は複数の摺動要素にも当てはまる。本発明によると、少なくとも第1の滑り軸受部は摺動要素を備え、ばね荷重がかけられた摺動要素がレールの第1のガイド部に対して作動方向に押圧され、作動方向に垂直な方向において両側で第1のガイド部の背部に係合することが意図される。
【国際調査報告】