(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】水素生成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
C01B3/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519923
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022077196
(87)【国際公開番号】W WO2023052550
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524121111
【氏名又は名称】カタゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,マシュー
(57)【要約】
熱化学サイクル、例えば硫黄-ヨウ素サイクルによって水から水素を生成するシステムは、サイクルの反応を実施するための反応ゾーンを有する反応器を備える。反応ゾーンは流体回路によって相互接続され、反応器は、反応生成物(複数可)を任意の反応ゾーンから別の反応ゾーンに導いて、他の反応ゾーンに反応物質(複数可)を提供するように構成される。流体は流体回路を回るように再循環され、その結果の下流反応ゾーン(複数可)からの反応生成物(複数可)が、上流反応ゾーン(複数可)の反応物質(複数可)として再使用される。反応ゾーン(複数可)内で発生した熱は、他の反応ゾーン(複数可)でも再使用される。結果として得られるシステムは、エネルギー効率が高く、さらに反応物質の使用においても効率的である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反応を含む熱化学サイクルによって水から水素を生成するためのシステムであって、前記システムは、前記熱化学サイクルを実施するように構成された反応器を備え、前記反応器は、
少なくとも1つの流体回路と、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を駆動する手段と、
前記もしくは各々の反応、または前記少なくとも1つの反応のうちのそれぞれの1つまたは複数を実施するためのそれぞれの反応ゾーンであって、前記または各々の反応ゾーンは前記少なくとも1つの流体回路に接続されている、前記反応ゾーンとを備え、
前記反応器は、
前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つの他の反応に少なくとも1つの反応物質を提供する、及び/または、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を再循環させ、それによって、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供する、ように構成されている、前記システム。
【請求項2】
前記反応器は、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記それぞれの少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、通常は、前記第1反応の前記反応ゾーンの下流の反応ゾーンで実施される少なくとも1つの他の反応とを含み、前記反応器は、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を前記第1反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記第1反応に少なくとも1つの反応物質を提供するように構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、通常は、前記第1反応の前記反応ゾーンの下流の反応ゾーンで実施される少なくとも1つの他の反応とを含み、前記反応器は、前記第1反応からの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの他の反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供するように構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバをさらに備え、前記反応器は、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記それぞれの反応ゾーンに送るために前記少なくとも1つのリザーバに再循環させるように構成される、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの反応ゾーンから排出される流体と、少なくとも1つの反応ゾーンに送られる流体との間で熱交換を実行するように構成された少なくとも1つの熱交換器をさらに備える、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記それぞれの反応ゾーンで前記少なくとも1つの反応を実施するために、前記少なくとも1つの流体回路内の流体の少なくとも1つのパラメータを制御するように構成された制御システムをさらに備え、前記少なくとも1つのパラメータは、流体組成物、流体温度、流体流量、流体圧力、流体レベルのうちの任意の1つまたは複数を含んでもよい、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記反応器内の流体を加熱する手段をさらに備える、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱化学サイクルは硫黄-ヨウ素サイクルであり、前記反応器は、
第1反応物質である水、二酸化硫黄及びヨウ素が反応して第1反応生成物である硫酸及びヨウ化水素を形成する第1反応を実施するための第1反応ゾーンと、
第2反応物質である硫酸を第2反応生成物である二酸化硫黄、酸素及び水に分解することを伴う第2反応を実施するための第2反応ゾーンと、
第3反応物質であるヨウ化水素を第3反応生成物であるヨウ素及び水素に分解することを伴う第3反応を実施するための第3反応ゾーンと、好ましくは、
前記第1反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバとを備え、
前記反応ゾーン及び前記少なくとも1つのリザーバが存在する場合にはそれらは前記少なくとも1つの流体回路によって相互接続され、
前記少なくとも1つのリザーバ(存在する場合)及び前記第1反応ゾーンは、前記流体回路の第1部分に配置され、前記第1回路部分は、前記第1反応ゾーンの下流で第2回路部分及び第3回路部分に分岐し、前記第2反応ゾーンは、前記第2回路部分に配置され、前記第3反応ゾーンは、前記第3回路部分に配置され、前記第2回路部分及び第3回路部分は、それぞれ前記第2反応ゾーン及び前記第3反応ゾーンの下流で前記第1回路部分に接続され、
前記反応器は、前記第1反応生成物を分離する手段をさらに含み、前記反応器は、分離された硫酸を前記第2反応ゾーンに導くと共に分離されたヨウ化水素を前記第3反応ゾーンに導くように構成され、
前記反応器は、前記第2反応生成物である二酸化硫黄を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して前記第1反応ゾーンに導くと共に前記第3反応生成物であるヨウ素を、好ましくは存在する場合には少なくとも1つのリザーバを介して前記第1反応ゾーンに導くように構成されており、好ましくは、前記システムは、前記第2反応生成物を分離する手段であって、前記反応器は、分離された二酸化硫黄を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くように構成される、前記分離する手段、及び/または前記第3反応生成物を分離する手段であって、前記反応器は、分離されたヨウ素を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くように構成される、前記分離する手段をさらに備える、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのリザーバは、前記第1反応ゾーンの上流に配置され、好ましくは、水及びヨウ素、好ましくは水中のヨウ素の懸濁液を貯蔵するための第1リザーバと、二酸化硫黄を、好ましくは気体の形態で貯蔵するための第2リザーバとを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記駆動する手段は、加圧下で前記少なくとも1つのリザーバから前記第1反応ゾーンに前記第1反応物質を送る手段を備え、前記駆動する手段は任意選択で、前記少なくとも1つのリザーバから前記二酸化硫黄を駆動するための圧縮機と、前記水及びヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバから駆動するポンプとを備える、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1回路部分は、前記第1反応物質を前記第1反応ゾーンに別個に送るように構成され、前記第1反応物質の前記第1反応ゾーンへの流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えてもよい、請求項9から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1反応ゾーンは、容器、導管、もしくはチャンバを備え、好ましくは、前記第1反応物質を加熱及び/もしくは混合して前記第1反応を実施するように構成され、前記第1反応ゾーンは、通常は、前記第2反応生成物を分離する前記手段への前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えるか、もしくはそれに関連付けられ、ならびに/または、前記第2反応ゾーンは、容器、導管、もしくはチャンバを備え、好ましくは、前記第2反応を実施するために前記第2反応物質を加熱するように構成され、前記第2反応ゾーンは、好ましくは、前記第2反応を促進するための触媒を備え、ならびに/または、前記第3反応ゾーンは、容器、導管、もしくはチャンバを備え、好ましくは、前記第3反応を実施するために前記第3反応物質を加熱するように構成される、請求項9から12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記加熱する手段は、前記第1反応物質を前記第1反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備え、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第1反応ゾーンに含まれ、ならびに/または、前記加熱する手段は、前記第2反応物質を前記第2反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備え、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第2反応ゾーンに含まれるか、もしくはそうでなければ前記第2反応ゾーンに関連付けられ、ならびに/または、前記加熱する手段は、前記第3反応物質を前記第3反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備え、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第3反応ゾーンに含まれるか、もしくはそうでなければ前記第3反応ゾーンに関連付けられ、前記第2反応ゾーンの前記加熱する手段及び/もしくは前記第3反応ゾーンの前記加熱する手段は、好ましくは、炉、好ましくは電気炉、より好ましくは高熱慣性電気炉、もしくは他の電気式加熱装置を備える、請求項9から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1反応生成物を分離する前記手段は、重量分離器または他の液体分離装置を備える、請求項9から14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記反応器は、分離された第1反応生成物を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバと、好ましくは、前記少なくとも1つのリザーバへの前記分離された前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブとをさらに備え、好ましくは、前記反応器は、分離された硫酸を前記少なくとも1つのリザーバから前記第2回路部分に導き、分離されたヨウ化水素を前記少なくとも1つのリザーバから前記第3回路部分に導くように構成され、好ましくは、前記少なくとも1つのリザーバから前記第1回路部分及び第2回路部分への分離された前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備え、ならびに/または、好ましくは前記少なくとも1つのリザーバは、好ましくは液体の形態で前記硫酸を貯蔵するための第3リザーバと、好ましくは液体の形態で前記ヨウ化水素を貯蔵するための第4のリザーバとを備える、請求項9から15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2反応生成物を分離する前記手段は、少なくとも1つの凝縮器、もしくは少なくとも1つの他の気体分離器もしくは蒸気分離器を備え、前記分離する手段は、好ましくは水凝縮器及び/もしくは二酸化硫黄凝縮器を備えると共に、任意選択で、前記第2反応生成物から二酸化硫黄を液体の形態で分離する二酸化硫黄凝縮器と、前記液体二酸化硫黄を蒸気または気体の状態に変換する蒸発器とを備え、ならびに/または、前記第3反応生成物を分離する前記手段は、少なくとも1つの凝縮器、もしくは少なくとも1つの他の気体もしくは蒸気分離器を備え、前記分離する手段は、好ましくは水凝縮器及び/もしくはヨウ素凝縮器を備える、請求項9から16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1回路部分は、前記第1反応物質を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに流体を送るか、もしくはそうでなければ流体を前記第1反応ゾーンに直接的もしくは間接的に送るように構成された返送部を備え、前記第2回路部分は分離された二酸化硫黄を前記返送部に送るように構成されており、それは、前記第1反応物質を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに、もしくはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに送るためであり、前記分離された二酸化硫黄は、好ましくは蒸気もしくは気体の形態で前記少なくとも1つのリザーバもしくは前記第1反応ゾーンに戻され、及び/または、前記第3回路部分は分離されたヨウ素を前記返送部に送るように構成されており、それは、前記第1反応物質を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに、もしくはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに送るためであり、前記分離されたヨウ素は、好ましくは、水と混合されて前記少なくとも1つのリザーバまたは前記第1反応ゾーンに戻される、請求項9から17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2反応生成物を分離する前記手段、及び/または前記第3反応生成物を分離する前記手段は、前記分離された第2反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えるか、またはそれに関連付けられる、請求項9から18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記反応器は、前記分離されたヨウ素を水と混合するための混合器を備え、前記反応器は、水と混合された前記分離されたヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバに、またはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに導くように構成され、好ましくは、前記混合器は、前記分離されたヨウ素を、前記第3反応生成物から分離された水と混合するようにアレンジされる、請求項9から19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記反応器は、前記第2反応物質と、前記第2反応生成物及び前記第3反応生成物のうちの少なくとも1つとの間で熱交換を実行するようにアレンジされた少なくとも1つの熱交換器を備えており、それにより、前記第2反応物質は、前記第2反応生成物及び/もしくは第3反応生成物によって加熱され、前記第2及び/もしくは第3の反応生成物は、前記第2反応物質によって冷却され、前記少なくとも1つの熱交換器を、好ましくは前記第2回路部分に設けて、前記第2反応物質及び前記第2反応生成物を受け入れ、熱交換を実行するようにアレンジし、それにより、前記第2反応物質は前記第2反応生成物によって加熱され、前記第2反応生成物は前記第2反応物質によって冷却され、ならびに/または、前記反応器は、前記第3反応物質と、前記第2反応生成物及び前記第3反応生成物のうちの少なくとも1つとの間で熱交換を実行するようにアレンジされた少なくとも1つの熱交換器を備えており、それにより、前記第3反応物質は、前記第2反応生成物及び/もしくは第3反応生成物によって加熱され、前記第2及び/もしくは第3の反応生成物は、前記第3反応物質によって冷却され、少なくとも1つの熱交換器を、前記第3回路部分に設けて、前記第3反応物質及び前記第3反応生成物を受け入れ、熱交換を実行するようにアレンジし、それにより、前記第3反応物質は前記第3反応生成物によって加熱され、前記第3反応生成物は前記第3反応物質によって冷却される、請求項9から33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
複数の制御ゾーンがそれぞれの異なる位置で前記流体回路に含まれ、各制御ゾーンは、制御情報に従って前記流体の少なくとも1つのパラメータを制御するための少なくとも1つのデバイス、及び/または少なくとも1つのパラメータ測定デバイスを備え、前記システムは、前記反応器の動作を制御するための制御システムをさらに備え、前記制御システムは前記制御ゾーンと通信して、各制御ゾーンに前記制御情報を提供し、及び/または前記制御ゾーンからパラメータ測定情報を受信し、前記少なくとも1つのパラメータは、通常は、流体組成物、流体温度、流体流量、流体圧力、流体レベルのいずれか1つまたは複数を示すそれぞれのパラメータを備える、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御システムは、モデル予測制御(MPC)を使用して前記反応器を数学的にモデル化することによって前記制御情報を計算するように構成され、及び/または、前記制御システムは、前記反応器の数学的モデルを使用して前記制御情報を決定するように構成され、前記数学的モデルは、好ましくはニューラルネットワークモデルを備え、それにより、前記制御システムは、人工ニューラルネットワークを使用して前記制御情報を計算するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第3反応生成物を分離する前記手段は、前記水素を分離する手段と、分離された水素を放出、貯蔵及び/または収集する手段とを備える、請求項9から23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
少なくとも1つの反応を含む熱化学サイクルによって水から水素を生成する方法であって、前記方法は、
反応器のそれぞれの反応ゾーンにおいて、前記もしくは各々の反応、または前記少なくとも1つの反応のうちのそれぞれの1つまたは複数を実施して、少なくとも1つの反応物質から少なくとも1つの反応生成物を生成することを含み、
前記または各々の反応ゾーンは、前記反応器の少なくとも1つの流体回路に接続されており、前記方法はさらに、
前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つの他の反応に少なくとも1つの反応物質を提供すること、及び/または、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を再循環させることであって、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供することを含む、前記再循環させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素(H2)生成のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素(H2)生成の既知の方法には、天然ガスの水蒸気改質、メタンの部分酸化、石炭ガス化、バイオマスガス化、炭素捕捉をともなうメタン熱分解、及び水の電気分解が含まれる。これらの方法はすべて、以下のうち少なくとも1つの問題を抱えている。それは、(i)化石燃料に依存している;(ii)非効率的である;(iii)製造、設置、運営にコストがかかる;及び/または(iv)運用における柔軟性の欠如である。
【0003】
拡張可能で効率的な低炭素水素生成システム及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
第1態様から、本発明は、少なくとも1つの反応を備える熱化学サイクルによって水から水素を生成するためのシステムを提供し、前記システムは、前記熱化学サイクルを実施するように構成された反応器を備え、前記反応器は、
少なくとも1つの流体回路と、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を駆動する手段と、
前記もしくは各々の反応、または前記少なくとも1つの反応のうちのそれぞれの1つまたは複数を実施するためのそれぞれの反応ゾーンであって、前記または各々の反応ゾーンは前記少なくとも1つの流体回路に接続されている、前記反応ゾーンとを備え、
前記反応器は、
前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つの他の反応に少なくとも1つの反応物質を提供する、及び/または、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を再循環させ、それによって、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供する、ように構成されている。
【0005】
有利には、反応ゾーンは前記流体回路(複数可)によって相互接続され、前記反応器は、反応生成物(複数可)を1つまたは複数の反応ゾーンから1つまたは複数の他の反応ゾーンに導いて、前記または各々の他の反応ゾーンに反応物質(複数可)を提供するように構成される。有利には、流体は、前記流体回路(複数可)を回るように再循環され、その結果、1つまたは複数の下流反応ゾーン(複数可)からの反応生成物(複数可)が、1つまたは複数の上流反応ゾーン(複数可)のための反応物質(複数可)として再使用される。1つまたは複数の反応ゾーンで発生した熱は、好ましくは1つまたは複数の熱交換器によって有利に再使用されて、1つまたは複数の他の反応ゾーンに送られる流体を加熱する。結果として得られるシステムは、エネルギー効率が高く、さらに反応物質の使用においても効率的である。
【0006】
好ましくは、前記反応器は、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記それぞれの少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供するように構成される。
【0007】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、少なくとも1つの他の反応(通常は、前記第1反応の前記反応ゾーンの下流の反応ゾーンで実施される)とを含み、前記反応器は、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を前記第1反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記第1反応に少なくとも1つの反応物質を提供するように構成されている。
【0008】
好ましくは、前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、少なくとも1つの他の反応(通常は、前記第1反応の前記反応ゾーンの下流の反応ゾーンで実施される)とを含み、前記反応器は、前記第1反応からの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの他の反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供するように構成されている。
【0009】
前記システムは、少なくとも1つの反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバを任意選択で備え、前記反応器は、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記それぞれの反応ゾーンに送るために前記少なくとも1つのリザーバに再循環させるように構成される。
【0010】
前記システムは、好ましくは、少なくとも1つの反応ゾーンから排出される流体と、少なくとも1つの反応ゾーンに送られる流体との間で熱交換を実行するように構成された少なくとも1つの熱交換器を備える。
【0011】
好ましい実施形態では、前記システムは、前記それぞれの反応ゾーンで前記少なくとも1つの反応を実施するために、前記少なくとも1つの流体回路内の流体の少なくとも1つのパラメータ(または特性)を制御するように構成された制御システムを備え、前記少なくとも1つのパラメータは、流体組成物、流体温度、流体流量、流体圧力、流体レベルのうちの任意の1つまたは複数を含んでもよい。
【0012】
好ましい実施形態では、先行請求項のいずれかに記載のシステムは、前記反応器内の流体を加熱する手段をさらに備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記熱化学サイクルは硫黄-ヨウ素サイクルであり、前記反応器は、
第1反応物質である水、二酸化硫黄及びヨウ素が反応して第1反応生成物である硫酸及びヨウ化水素を形成する第1反応を実施するための第1反応ゾーンと、
第2反応物質である硫酸を第2反応生成物である二酸化硫黄、酸素及び水に分解することを伴う第2反応を実施するための第2反応ゾーンと、
第3反応物質であるヨウ化水素を第3反応生成物であるヨウ素及び水素に分解することを伴う第3反応を実施するための第3反応ゾーンと、好ましくは、
前記第1反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバとを備え、
前記反応ゾーン及び前記少なくとも1つのリザーバが存在する場合にはそれらは前記少なくとも1つの流体回路によって相互接続され、存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバ、及び前記第1反応ゾーンは、前記流体回路の第1部分に配置され、前記第1回路部分は、前記第1反応ゾーンの下流で第2回路部分及び第3回路部分に分岐し、前記第2反応ゾーンは、前記第2回路部分に配置され、前記第3反応ゾーンは、前記第3回路部分に配置され、前記第2回路部分及び第3回路部分は、それぞれ前記第2反応ゾーン及び前記第3反応ゾーンの下流で前記第1回路部分に接続され、前記反応器は、前記第1反応生成物を分離する手段をさらに備え、前記反応器は、分離された硫酸を前記第2反応ゾーンに導くと共に分離されたヨウ化水素を前記第3反応ゾーンに導くように構成され、前記反応器は、前記第2反応生成物である二酸化硫黄を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して前記第1反応ゾーンに導くと共に前記第3反応生成物であるヨウ素を、好ましくは存在する場合には少なくとも1つのリザーバを介して前記第1反応ゾーンに導くように構成されている。
【0014】
通常、前記システムは、前記第2反応生成物を分離する手段であって、前記反応器は、分離された二酸化硫黄を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くように構成される、前記分離する手段、及び/または前記第3反応生成物を分離する手段であって、前記反応器は、分離されたヨウ素を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くように構成される、前記分離する手段を備える。
【0015】
前記少なくとも1つのリザーバは、通常は前記第1反応ゾーンの上流に配置され、好ましくは、水及びヨウ素、好ましくは水中のヨウ素の懸濁液を貯蔵するための第1リザーバと、二酸化硫黄を、好ましくは気体の形態で貯蔵するための第2リザーバとを備える。
【0016】
前記駆動する手段は、加圧下で前記少なくとも1つのリザーバから前記第1反応ゾーンに前記第1反応物質を送る手段を備えてもよく、前記駆動する手段は任意選択で、前記少なくとも1つのリザーバから前記二酸化硫黄を駆動するための圧縮機と、前記水及びヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバから駆動するポンプとを備える。
【0017】
前記第1回路部分は、前記第1反応物質を前記第1反応ゾーンに別個に送るように構成されてもよく、前記第1反応物質の前記第1反応ゾーンへの流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えてもよい。
【0018】
通常、前記第1反応ゾーンは、容器、導管、またはチャンバを備え、好ましくは、前記第1反応物質を加熱及び/または混合して前記第1反応を実施するように構成され、前記第1反応ゾーンは、通常は、前記第2反応生成物を分離する前記手段への前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えるか、またはそれに関連付けられる。
【0019】
通常、前記加熱する手段は、前記第1反応物質を前記第1反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備え、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第1反応ゾーンに含まれる。
【0020】
前記第1反応生成物を分離する前記手段は、重量分離器または他の液体分離装置を備えてもよい。
【0021】
任意選択で、前記反応器は、分離された第1反応生成物を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバと、好ましくは、前記少なくとも1つのリザーバへの前記分離された前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブとをさらに備える。
【0022】
任意選択で、前記反応器は、分離された硫酸を前記少なくとも1つのリザーバから前記第2回路部分に導き、分離されたヨウ化水素を前記少なくとも1つのリザーバから前記第3回路部分に導くように構成され、好ましくは、前記少なくとも1つのリザーバから前記第1回路部分及び第2回路部分への分離された前記第1反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備える。
【0023】
前記少なくとも1つのリザーバは、好ましくは液体の形態で前記硫酸を貯蔵するための第3リザーバと、好ましくは液体の形態で前記ヨウ化水素を貯蔵するための第4のリザーバとを備えてもよい。
【0024】
通常は、前記第2反応ゾーンは、容器、導管、またはチャンバを備え、好ましくは、前記第2反応を実施するために前記第2反応物質を加熱するように構成され、前記第2反応ゾーンは、好ましくは、前記第2反応を促進するための触媒を備える。
【0025】
前記加熱する手段は、前記第2反応物質を前記第2反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備えてもよく、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第2反応ゾーンに含まれるか、またはそうでなければ前記第2反応ゾーンに関連付けられる。
【0026】
好ましくは、前記第2反応ゾーンの前記加熱する手段は、炉、好ましくは電気炉、より好ましくは高熱慣性電気炉、または他の電気式加熱装置を備える。
【0027】
通常は、前記第2反応生成物を分離する前記手段は、少なくとも1つの凝縮器、または少なくとも1つの他の気体分離器もしくは蒸気分離器を備え、前記分離する手段は、好ましくは水凝縮器及び/または二酸化硫黄凝縮器を備える。前記分離する手段は、前記第2反応生成物から二酸化硫黄を液体の形態で分離する二酸化硫黄凝縮器と、前記液体二酸化硫黄を蒸気または気体の状態に変換する蒸発器とを備えてもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、前記第1回路部分は、前記第1反応物質(存在する場合)を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに流体を送るか、またはそうでなければ流体を前記第1反応ゾーンに直接的もしくは間接的に送るように構成された返送部を備える。第2回路部分は、好ましくは分離された二酸化硫黄を前記返送部に送るように構成され、前記分離された二酸化硫黄は、好ましくは蒸気または気体の形態で前記少なくとも1つのリザーバ、またはそうでなければ第1反応ゾーンに戻される。
【0029】
前記第2反応生成物を分離する前記手段は、前記分離された第2反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えるか、またはそれに関連付けられてもよい。
【0030】
通常は、前記第3反応ゾーンは、容器、導管、またはチャンバを備え、好ましくは、前記第3反応を実施するために前記第3反応物質を加熱するように構成される。
【0031】
通常は、前記加熱する手段は、前記第3反応物質を前記第3反応に望まれる温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを備え、前記少なくとも1つの加熱デバイスは、任意選択で前記第3反応ゾーンに含まれるか、またはそうでなければ前記第3反応ゾーンに関連付けられる。前記第3反応ゾーンの加熱する手段は、好ましくは、炉、好ましくは電気炉、より好ましくは高熱慣性電気炉、または他の電気式加熱装置を備える。
【0032】
通常は、前記第3反応生成物を分離する前記手段は、少なくとも1つの凝縮器、または少なくとも1つの他の気体もしくは蒸気分離器を備え、前記分離する手段は、好ましくは水凝縮器及び/またはヨウ素凝縮器を備える。
【0033】
任意選択で、前記反応器は、前記分離されたヨウ素を水と混合するための混合器を備え、前記反応器は、水と混合された分離されたヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバに、またはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに導くように構成され、好ましくは、前記混合器は、前記分離されたヨウ素を、前記第3反応生成物から分離された水と混合するようにアレンジされる。
【0034】
好ましい実施形態では、前記第1回路部分は、前記第1反応物質を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに流体を送るか、またはそうでなければ流体を前記第1反応ゾーンに直接的もしくは間接的に送るように構成された返送部を備え、前記第3回路部分は分離されたヨウ素を前記返送部に送るように構成されており、それは、前記第1反応物質を貯蔵するための前記少なくとも1つのリザーバに、またはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに送るためであり、前記分離されたヨウ素は、好ましくは、水と混合されて前記少なくとも1つのリザーバまたは前記第1反応ゾーンに戻される。
【0035】
前記第3反応生成物を分離する前記手段は、前記分離された第3反応生成物の流れを制御するように動作可能な少なくとも1つのバルブを備えるか、またはそれに関連付けられてもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、前記反応器は、前記第2反応物質と、前記第2反応生成物及び前記第3反応生成物のうちの少なくとも1つとの間で熱交換を実行するようにアレンジされた少なくとも1つの熱交換器を備えており、それにより、前記第2反応物質は、前記第2反応生成物及び/または第3反応生成物によって加熱され、前記第2及び/または第3の反応生成物は、前記第2反応物質によって冷却される。前記少なくとも1つの熱交換器を、前記第2回路部分に設けて、前記第2反応物質及び前記第2反応生成物を受け入れ、熱交換を実行するようにアレンジしてもよく、それにより、前記第2反応物質は前記第2反応生成物によって加熱され、前記第2反応生成物は前記第2反応物質によって冷却される。
【0037】
好ましくは、前記反応器は、前記第3反応物質と、前記第2反応生成物及び前記第3反応生成物のうちの少なくとも1つとの間で熱交換を実行するようにアレンジされた少なくとも1つの熱交換器を備えており、それにより、前記第3反応物質は、前記第2反応生成物及び/または第3反応生成物によって加熱され、前記第2及び/または第3の反応生成物は、前記第3反応物質によって冷却される。前記少なくとも1つの熱交換器を、前記第3回路部分に設けて、前記第3反応物質及び前記第3反応生成物を受け入れ、熱交換を実行するようにアレンジしてもよく、それにより、前記第3反応物質は前記第3反応生成物によって加熱され、前記第3反応生成物は前記第3反応物質によって冷却される。
【0038】
好ましい実施形態では、複数の制御ゾーンがそれぞれの異なる位置で前記流体回路に含まれ、各制御ゾーンは、制御情報に従って前記流体の少なくとも1つのパラメータ(または特性)を制御するための少なくとも1つのデバイス、及び/または少なくとも1つのパラメータ測定デバイスを備え、前記システムは、前記反応器の動作を制御するための制御システムをさらに備え、前記制御システムは前記制御ゾーンと通信して、各制御ゾーンに前記制御情報を提供し、及び/または前記制御ゾーンからパラメータ測定情報を受信する。前記少なくとも1つのパラメータは、流体組成物、流体温度、流体流量、流体圧力、流体レベルのいずれか1つまたは複数を示すそれぞれのパラメータを備えてもよい。任意選択で、前記制御システムは、モデル予測制御(MPC)を使用して前記反応器を数学的にモデル化することによって前記制御情報を計算するように構成される。
【0039】
有利には、前記制御システムは、前記反応器の数学的モデルを使用して前記制御情報を決定するように構成され、前記数学的モデルは、好ましくはニューラルネットワークモデルを備え、それにより、前記制御システムは、人工ニューラルネットワークを使用して前記制御情報を計算するように構成される。
【0040】
前記第3反応生成物を分離する前記手段は、前記水素を分離する手段と、分離された水素を放出、貯蔵及び/または収集する手段とを備えてもよい。
【0041】
第2態様から、本発明は、少なくとも1つの反応を含む熱化学サイクルによって水から水素を生成する方法を提供し、前記方法は、
反応器のそれぞれの反応ゾーンにおいて、前記もしくは各々の反応、または前記少なくとも1つの反応のうちのそれぞれの1つまたは複数を実施して、少なくとも1つの反応物質から少なくとも1つの反応生成物を生成することを含み、
前記または各々の反応ゾーンは、前記反応器の少なくとも1つの流体回路に接続されており、前記方法はさらに、
前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つの他の反応に少なくとも1つの反応物質を提供すること、及び/または、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を再循環させることであって、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記少なくとも1つの反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供することを含む、前記再循環させることを含む。
【0042】
好ましくは、前記再循環させることは、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つの他の反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記それぞれの少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供することを含む。
【0043】
好ましくは、前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、少なくとも1つの他の反応とを含み、前記方法は、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記第1反応の前記それぞれの反応ゾーンに再循環させて、前記第1反応に少なくとも1つの反応物質を提供することを含む。
【0044】
好ましくは、前記少なくとも1つの反応は、第1反応と、少なくとも1つの他の反応とを含み、前記方法は、前記第1反応からの少なくとも1つの反応生成物を、前記少なくとも1つの他の反応のうちの少なくとも1つの前記それぞれの反応ゾーンに導いて、前記少なくとも1つの他の反応のうちの前記少なくとも1つに少なくとも1つの反応物質を提供することを含む。
【0045】
前記方法は、少なくとも1つの反応物質を少なくとも1つのリザーバに貯蔵することを含んでもよく、前記再循環させることは、前記少なくとも1つの反応のうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの反応生成物を、前記それぞれの反応ゾーンに送るために前記少なくとも1つのリザーバに再循環させることを伴う。
【0046】
好ましくは、前記方法は、少なくとも1つの反応ゾーンから排出される流体と、少なくとも1つの反応ゾーンに送られる流体との間で熱交換を実行することを含む。
【0047】
好ましくは、前記方法は、前記それぞれの反応ゾーンで前記少なくとも1つの反応を実施するために、前記少なくとも1つの流体回路内の流体の少なくとも1つのパラメータを制御することを含み、前記少なくとも1つのパラメータは、流体組成物、流体温度、流体流量、流体圧力、流体レベルのうちの任意の1つまたは複数を含んでもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記熱化学サイクルは硫黄-ヨウ素サイクルであり、前記方法は、前記反応器の第1反応ゾーン内で、第1反応物質である水、二酸化硫黄及びヨウ素が反応して第1反応生成物である硫酸及びヨウ化水素を形成する第1反応を実施することと、前記反応器の第2反応ゾーン内で、第2反応物質である硫酸を第2反応生成物である二酸化硫黄、酸素及び水に分解することを伴う第2反応を実施することと、前記反応器の第3反応ゾーン内で、第3反応物質であるヨウ化水素を第3反応生成物であるヨウ素及び水素に分解することを伴う第3反応を実施することと、任意選択で、前記第1反応物質を少なくとも1つのリザーバに貯蔵することと、前記第1反応生成物を分離し、分離された硫酸を前記第2反応ゾーンに送り、分離されたヨウ化水素を前記第3反応ゾーンに送ることと、前記第2反応生成物である二酸化硫黄を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くことと、前記第3反応生成物であるヨウ素を、好ましくは存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバを介して、前記第1反応ゾーンに導くこととを含む。
【0049】
通常は、前記方法は、前記第2反応生成物を分離し、分離された二酸化硫黄を、存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバに、またはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに送ること、及び/または前記第3反応生成物を分離し、分離されたヨウ素を、存在する場合には前記少なくとも1つのリザーバに、またはそうでなければ直接的もしくは間接的に前記第1反応ゾーンに送ることを含む。
【0050】
好ましい実施形態では、水素(H2)を、有利には触媒作用を伴う硫黄-ヨウ素サイクル(S-Iサイクル)を用いて再循環気体反応器内で発生させる。好ましい実施形態は水素の低炭素生成方法を提供して、大規模生成または広範な分散生成のための環境への影響を軽減する。
【0051】
好ましい実施形態では、水素は熱循環H2生成反応器内で生成される。有利には、水素は、水の電気分解を使用する従来のアプローチと比較して、S-Iサイクルのブンゼン反応に基づく多段熱化学反応サイクルを利用することにより、より少ないエネルギーを使用してよりコスト効率よく生成される。有利には、流体、特に気体は前記反応器内で再循環され、熱及び反応物質の効率的な使用を提供する。したがって、生成処理は低エネルギーでコスト効率が高く、水及び再生可能電力からグリーン水素ガス(及び副生成物として酸素)を生成する。有利には、再循環反応器は、それぞれ個々の熱化学反応を促進するための制御ゾーンを作り出す制御システムを備える。高温(最大1090℃)での材料の熱的及び化学的劣化を容易に管理することができる。エネルギーは現場で変換されるため、風力発電地帯などの再生可能エネルギー源の近くで水素を生成することは非常に望ましい。しかしながら、風力は変動して送電網の電力需要と一致しないことがよくあり、安定した供給が必要なため、直接的に電気分解装置ではうまく機能しない。本発明の好ましい実施形態は、直接的に負荷追従することができると共に、風力発電地帯または個々のタービンで利用可能な総余剰電力に基づいてH2生成を調整できる1つまたは複数の高熱慣性電気管状炉(複数可)を使用する。加えて、本発明の好ましい実施形態は、風力発電地帯または個々のタービンで利用可能な余剰電力を熱エネルギーとして吸収(及び貯蔵)するための熱慣性として1つまたは複数の流体リザーバを使用する。これにより、車両の電動化により需要が高まっている高コストのバッテリー材料など、現場での他の追加プラントの必要性が低減される。
【0052】
別の態様から、本発明は、水素を生成するためのシステムを提供し、前記システムは、硫黄-ヨウ素サイクルを実施するように構成された反応器を備え、前記反応器は、
少なくとも1つの流体回路と、
前記少なくとも1つの流体回路を回るように流体を駆動する手段と、
第1反応物質である水、二酸化硫黄及びヨウ素が反応して第1反応生成物である硫酸及びヨウ化水素を形成する第1反応を実施するための第1反応ゾーンと、
第2反応物質である硫酸を第2反応生成物である二酸化硫黄、酸素及び水に分解することを伴う第2反応を実施するための第2反応ゾーンと、
第3反応物質であるヨウ化水素を第3反応生成物であるヨウ素及び水素に分解することを伴う第3反応を実施するための第3反応ゾーンと、
前記第1反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバと、
前記反応器内の流体を加熱する手段とを備え、
前記反応ゾーン及び前記少なくとも1つのリザーバは前記少なくとも1つの流体回路によって相互接続され、
前記少なくとも1つのリザーバ及び前記第1反応ゾーンは、前記流体回路の第1部分に配置され、前記第1回路部分は、前記第1反応ゾーンの下流で第2回路部分及び第3回路部分に分岐し、前記第2反応ゾーンは、前記第2回路部分に配置され、前記第3反応ゾーンは、前記第3回路部分に配置され、前記第2回路部分及び第3回路部分は、それぞれ前記第2反応ゾーン及び前記第3反応ゾーンの下流で前記第1回路部分に接続され、
前記反応器は、前記第1反応生成物を分離する手段をさらに含み、前記反応器は、分離された硫酸を前記第2反応ゾーンに導くと共に分離されたヨウ化水素を前記第3反応ゾーンに導くように構成され、
前記反応器は、前記第2反応生成物である二酸化硫黄を前記少なくとも1つのリザーバに導き、前記第3反応生成物であるヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバに導くように構成される。
【0053】
さらなる態様から、本発明は、硫黄-ヨウ素サイクルによって水素を生成する方法を提供し、前記方法は、
反応器の第1反応ゾーン内で、第1反応物質である水、二酸化硫黄及びヨウ素が反応して第1反応生成物である硫酸及びヨウ化水素を形成する第1反応を実施することと、
前記反応器の第2反応ゾーン内で、第2反応物質である硫酸を第2反応生成物である二酸化硫黄、酸素及び水に分解することを伴う第2反応を実施することと、
前記反応器の第3反応ゾーン内で、第3反応物質であるヨウ化水素を第3反応生成物であるヨウ素及び水素に分解することを伴う第3反応を実施することと、
前記第1反応物質を少なくとも1つのリザーバに貯蔵することと、
前記反応生成物を分離し、分離された硫酸を前記第2反応ゾーンに送り、分離されたヨウ化水素を前記第3反応ゾーンに送ることと、
前記第2反応生成物である二酸化硫黄を前記少なくとも1つのリザーバに導くことと、
前記第3反応生成物であるヨウ素を前記少なくとも1つのリザーバに導くこととを含む。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、既知の水素生成方法と比較して、エネルギー及び反応物質の使用量の点で比較的効率的である。通常、本発明の実施形態は70%のオーダーのエネルギー効率を示すが、これはそれより高いこともあれば、低いこともある。本発明の実施形態は、例えば、50~500kWの範囲、またはそれを超える、例えば最大20MWの電力を消費する場合がある。本発明の好ましい実施形態は、再生可能エネルギーサイト(例えば、再生可能エネルギーサイトで利用可能な未使用電力を利用するための風力発電地帯)に設置するのに適しているが、より大容量の使用に拡張可能であってもよい。電気炉(複数可)(及び/または他の電気式加熱装置)を使用することで、再生可能エネルギー供給との統合も促進される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態は、カスケードシステム(そのいずれもが本発明の実施形態を含んでもよい)のそれぞれの構成要素にカスケード様式でエネルギーが供給されるカスケードエネルギーシステムへの組み込みに適しており、例えば、第1構成要素は一次エネルギー源(例えば、風力または太陽エネルギー源(複数可))からエネルギーを受け入れてもよく、第2構成要素は最高等級の廃熱エネルギーを受け入れてもよく、第3構成要素はより低い等級の二次的または余剰の廃熱エネルギーなどを受け入れてもよい。カスケード型エネルギーシステムを、一次エネルギー及び廃熱利用の観点でのエネルギー使用を任意の適切な様式でカスケードするように構成してもよい(例えば、処理/構成要素Aは最高等級の廃熱を使用し、次いで前記廃熱を使用して処理/構成要素Bを支援し、その後、最後に処理/構成要素Cを支援する)。
【0056】
好ましい実施形態では、単一の再循環反応器がS-Iサイクルを実施するように構成され、前記反応器は周期的動作を促進し、その結果としてエネルギー及び反応物質の効率的な使用がもたらされる。有利には、熱交換器の使用はエネルギー効率を促進する。有利には、不安定なエネルギー源が使用される場合に、前記反応器がそれぞれ個々の反応速度を効率的に制御して、時間の経過とともに利用可能なエネルギーを最大限に利用できるように、熱交換器は構成される。有利には、例えば、利用可能なエネルギー及び反応物質レベルを最大限に使用するために、AIベースのモデル制御を使用して、リアルタイムで反応器の動作を最適化することができる。有利には、構成要素(特に炉)の熱慣性により、前記反応器は不安定なエネルギー供給(例えば、再生可能エネルギー供給)に対して高い寛容性を有することができる。有利には、本発明を具体化するシステムは比較的小型であり、再生可能エネルギー源、例えば風力タービン(複数可)との統合に適している。電気炉(複数可)(及び/または他の電気式加熱装置)を使用することで、再生可能エネルギー供給との統合も促進される。
【0057】
前記システムの好ましい実施形態は、エネルギー効率が高く、前記反応物質が化学反応によって生成物に変換される1つまたは複数の反応ゾーンにおける化学組成、流れ及び温度の正確な制御を可能にする再循環流体反応器を備える。有利には、数学的モデルベースの制御は、1つまたは複数の制御ゾーンで実施される。通常は、前記反応器の動作は、1つまたは複数の気体及び/または液体を、一定の既知の容積のクローズドシステムまたはクローズドゾーン内に送ることを伴う。複数の測定源の三角形分割、予測モデル、及び校正された気体/液体配送システムにより、動的環境における精度を確実にすることができる。
【0058】
好ましい実施形態では、前記再循環気体または液体(流体)生成反応器は、統合型炉(複数可)、貯蔵リザーバ(複数可)、及び送風機(複数可)または他の流体駆動手段を備えた少なくとも1つ、通常は2つまたはそれより多くの再循環気体システム/回路を備える。統合型熱交換器(複数可)を通じて熱を再生する。熱を前記システムの前記熱慣性全体にわたって貯蔵してもよい。
【0059】
本発明のさらなる有利な態様は、特定の実施形態についての以下の説明を検討し、添付図面を参照することにより、当業者には明らかとなるであろう。
【0060】
ここで、本発明の実施形態を、例として、添付図面を参照して説明する。図中、同様の符号は同様の部分を示すために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図2】本発明の一態様を具体化した水素生成システムの概略図である。
【
図3】制御システムを備える、
図2のシステムの代替となる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
熱化学サイクルは、熱源(複数可)を化学反応と組み合わせて、水をその水素成分と酸素成分に分解する。
図1は、水素(H
2)、特に水素(H
2)ガスを生成するための熱化学サイクルを示しており、これを熱循環水素生成と呼んでもよい。特に、
図1は硫黄-ヨウ素サイクル(S-Iサイクル)を示している。
【0063】
S-Iサイクルは3つの化学反応からなる。第1反応を以下に示す。これは一般にブンゼン反応と呼ばれている。
I2+SO2+2H2O+熱→2HI+H2SO4 (反応1)
反応1は発熱反応であり、例えば、120℃、または任意選択で100℃~150℃の範囲で起こり得る。反応物質は最初にブンゼン反応を開始するのに十分な温度まで加熱される。これに続いて、反応から放出されたエネルギーがシステムから除去されるが、これは、好ましくは受動的な冷却または熱損失、任意選択で能動的な冷却によって実現することができる。ヨウ化水素及び硫酸を、任意の適切な手段、例えば蒸留または液体/液体重力分離によって分離してもよい。
【0064】
第2反応は硫酸の分解を伴う。
2H2SO4+熱→2SO2+2H2O+O2 (反応2)
反応2は吸熱反応であり、例えば830℃または他の適切な温度で起こり得る。反応2を非常な高温で実行することができるが、任意選択で触媒を関与させて活性化エネルギーを低減し、エネルギー効率を向上させてもよい。生成された酸素を、任意の好都合な分離手段、例えば凝縮を使用して、水、SO2、及び任意の残留硫酸から分離してもよい。
【0065】
第3反応は、ヨウ化水素を熱的に分解することを伴う。
2HI+熱→I2+H2 (反応3)
反応3は吸熱反応であり、例えば、450℃または他の適切な温度で起こり得る。反応3は高温で達成することができるが、任意選択で触媒を関与させて活性化エネルギーを低減し、エネルギー効率を向上させてもよい。生成された水素は、任意の好都合な分離手段、例えば凝縮を使用して、ヨウ素(及び存在する可能性がある任意の水またはSO2)から分離してもよく、水素生成物は通常は気体として残る。
【0066】
反応1~3から、S-Iサイクルの正味の反応物質は水であり、正味の生成物は水素及び酸素であることがわかる。反応2からの二酸化硫黄、及び反応3からのヨウ素は回収され、反応1で再使用される。吸熱化学反応2及び3で熱がS-Iサイクルに入り、発熱反応1で熱がサイクルから出る。通常、S-Iサイクルには熱エネルギーの入力、及び水の供給が必要である。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、再循環流体(気体及び/または液体)反応器を使用して、反応したヨウ素及び二酸化硫黄を再循環させてブンゼン反応に再度使用する。
【0068】
好ましい実施形態では、再循環気体または液体(流体)生成反応器は、少なくとも1つ、任意選択で2つまたはそれより多くの再循環気体または流体回路を備え、各々が通常は1つまたは複数の炉、貯蔵リザーバ、及び送風機を備える。熱を1つまたは複数の熱交換器を通じて再生する。熱を反応器全体に貯蔵してもよい。通常の実施形態では、ブンゼン反応の第1段階は液体段階であり、続いて硫酸及びヨウ化水素が分離される。
【0069】
ここで
図2及び
図3を参照すると、本発明の一態様を具体化した水素生成システム(全体が10で指示されている)が示されている。水素生成システム10は、反応器12と、反応器12の動作を制御するための制御システム14とを備える。反応器12は、使用中に化学反応を引き起こすと共に制御することを意図としており、化学反応器として説明され得る。反応器12は、流体(気体及び/または液体)を反応器12内で再循環させることができる1つまたは複数の流体回路を備える。したがって、反応器12は、再循環流体反応器として説明され得る。好ましい実施形態では、システム10、特に反応器12は、水を水素成分及び酸素成分に分解することにより、水素(H
2)、特に水素(H
2)ガスを生成するための熱化学サイクルを実施するように、すなわち、熱循環水素生成を実施するように、構成される。有利には、システム10は、以下でより詳細に説明するように、再循環流体反応器12内で硫黄-ヨウ素サイクル(S-Iサイクル)の3つの反応を実施するように構成される。代替的な実施形態では、システムは、水を水素及び酸素に分解するための任意の代替的熱化学サイクルを実施するように構成されてもよい。
【0070】
反応器12は、使用中に流体がぐるぐると循環し、有利には再循環する流体回路16を備える。好ましい実施形態では、流体回路16は第1回路部分16Aを有し、第1回路部分16Aは第2回路部分16B及び第3回路部分16Cに分岐し、第2回路部分16B及び第3回路部分16Cは後に第1回路部分16Aと再結合する。流体回路16は、通常は、パイプ(複数可)、チューブ(複数可)、ホース、ダクト(複数可)及び/または他の流体導管のうちの任意の1つまたは複数を備える任意の好都合な構成であってもよい。これらを、任意の好都合な材料、例えば金属またはプラスチックから形成してもよく、任意選択で、断熱しても、及び/または1つまたは複数の耐食性皮膜で保護してもよい。
【0071】
流体回路16は、水素生成処理の一部である各反応を実施するためのそれぞれの反応ゾーン18を備える。好ましい実施形態では、流体回路16は、反応1(ブンゼン反応)を実施するための反応ゾーン1(
図2ではRZ1として表示)と、反応2を実施するための反応ゾーン2(
図2ではRZ2として表示)と、反応3を実施するための反応ゾーン3(
図2ではRZ3として表示)とを含む。有利には、反応ゾーン1は第1回路部分16Aに含まれており、反応ゾーン2は第2回路部分16Bに含まれており、反応ゾーン3は第3回路部分16Cに含まれている。反応器の構成は、反応ゾーンRZ1内の反応1によって生成された硫酸は、第2回路部分16Bを介して反応ゾーンRZ2に流れ、反応ゾーンRZ1内の反応1によって生成されたヨウ化水素は、第3の回路部分16Cを介して反応ゾーンRZ3に流れるものである。反応器12はさらに、反応ゾーンRZ2内の反応2によって生成された二酸化硫黄は、反応1での使用のために反応ゾーンRZ1に供給するために第1回路部分16Aに戻され、反応ゾーンRZ3内の反応3によって生成されたヨウ素は、反応1での使用のために反応ゾーンRZ1に供給するために第1回路部分16Aに戻されるように構成される。
【0072】
通常の実施形態では、反応器12の各領域の流体相を、処理条件によって決定してもよい。通常、ブンゼン反応は、関連する処理(反応)温度では反応物質(SO2を除く)及び生成物が液体であるため、液相である。HI及び硫酸の分解は通常液体から始まるが、反応は(温度により)気相で起こる。反応器の各領域の全域で相を利用して、液体を加熱することによって流体の流れを駆動し、高圧の蒸気を生成してもよい。回路内の流体の流れを、必要に応じて流体回路内の1つまたは複数の位置にある1つまたは複数の追加のポンプまたは他の流体駆動デバイス(複数可)によって任意選択で駆動してもよい。
【0073】
各反応ゾーン18は任意の適切な形態をとってもよく、この適切な形態は、例えば、それぞれの回路部分16A、16B、16Cに組み込まれたチャンバまたは容器を備えるか、または回路部分16A、16B、16Cを形成する導管の一部である。各反応ゾーン18が、それぞれの流体回路部分16A、16B、16Cと流体連通していることで、使用中に流体が反応ゾーン18に送られてもよく、反応ゾーン18から送られてもよい。
【0074】
反応器12は、通常は、多量の気体及び/または液体を貯蔵するための1つまたは複数の流体リザーバ24を備えるか、またはこれに接続されており、流体リザーバ24はエネルギーも貯蔵し得る(すなわち、回路内の流体と比較して高い温度で流体を貯蔵することによって)。利用可能な余剰再生可能エネルギー(例えば、使用中にシステム10が接続され得る風力発電地帯、風力タービン、または他の再生可能エネルギー源から)を利用するために、利用可能な場合には、任意の好都合な加熱する手段、例えば、前記または各々のリザーバ用のそれぞれの加熱デバイスを使用して、リザーバ(複数可)の能動的な加熱を任意選択で実施してもよい。このような加熱は、貯蔵された流体(複数可)の高い熱慣性を利用して、その後のエネルギー利用可能性が比較的低い期間中において反応器を加熱する要件を低減する。貯蔵された反応物質の熱慣性により、反応器12は変動するまたは不安定なエネルギー供給下で効果的に動作することができる。好ましい実施形態では、反応器12は、反応1の反応物質を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバ24A、24Bを備えるか、またはこれに接続されている。特に、リザーバ24Aを、二酸化硫黄を貯蔵するために設けてもよく、他方で、リザーバ24Bを、水及びヨウ素を貯蔵するために設けてもよい。リザーバ(複数可)24A、24Bは、好都合にも、第1回路部分16Aに含まれるか、またはこれに接続されており、関連する反応物質(複数可)を、第1回路部分16Aを介して反応ゾーンRZ1に供給するために、反応ゾーンRZ1の上流に配置される。有利には、反応器12は、反応ゾーンRZ2内の反応2によって生成された二酸化硫黄が第1回路部分16Aによってそれぞれのリザーバに戻され、反応ゾーンRZ3内の反応3によって生成されたヨウ素が第1回路部分16Aによってそれぞれのリザーバに戻されるように構成される。任意選択で、反応器12は、反応1の生成物を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバ24C、24Dを備えるか、またはこれに接続されている。特に、リザーバ24Cを、ヨウ化水素を貯蔵するために設けてもよく、他方で、リザーバ24Dを、硫酸を貯蔵のために設けてもよい。リザーバ(複数可)24C、24Dは、好都合にも、第1回路部分16Aに含まれるか、またはこれに接続されており、関連する生成物を、第1回路部分16Aを介して反応ゾーンRZ1から受け入れるために、反応ゾーンRZ1の下流に配置される。
【0075】
好ましい実施形態では、SO2は気体として貯蔵される。I2を水中に(温度及び/または圧力に応じて液体または固体として)懸濁させて、反応ゾーンRZ1への配送を促進することも好ましい。さらに、温度が十分に低下してI2が固化する結果となった場合に備えて、有利には、水をヨウ素のキャリアーとして使用する。また、ブンゼン反応では水が必要であり、液相反応物質(または液体+懸濁固体相)が1つのリザーバに貯蔵されることが好ましい。HI及び硫酸を、好ましくは液体として、例えばアキュムレータ型リザーバ(不活性ガスの存在により、反応器12を通る流れを駆動するためにリザーバ圧力を容易に制御できる)に貯蔵する。通常、液体の形態での貯蔵は、RZ1からの反応生成物の温度/容器の貯蔵温度によって決定される。
【0076】
反応器12は、通常は、流体回路16を回るように流体を流れさせるための流体駆動手段20を備える。図示の実施形態では、流体駆動手段20は、圧縮機20Aとポンプ20Bとを備える。より全体的には、流体駆動手段20は、任意の従来の形態、例えば、1つまたは複数のファンまたは送風機(例えば、軸流ファン、プロペラファン、遠心(ラジアル)ファン、斜流ファン及び横流ファンを含む)、ポンプ(例えば、遠心ポンプまたは容積式ポンプ)、圧縮機及び/またはタービンであってもよい。流体駆動手段20は、流体回路16を回る流体の流れ、特に流量を制御するように制御可能であることが好ましい。回路16を回る流体の流れは、1つまたは複数のバルブ15を使用して制御可能であってもよく、及び/または必要に応じて、流体回路内の1つまたは複数の位置にある1つもしくは複数の追加のポンプまたは他の流体駆動デバイス(複数可)によって支援されてもよい。例えば、分離器34Aの後に、流体を貯蔵リザーバ24A及び24Bに移送するために、1つもしくは複数のポンプまたは他の流体駆動デバイスを設けてもよい。
【0077】
反応器12は、回路16、特に反応ゾーン18内の流体の温度を制御するための加熱する手段22を備える。通常の実施形態では、加熱する手段は1つまたは複数の炉を備えるが、代替的に、任意の他の適切な加熱装置または加熱デバイス、例えばボイラーを備えてもよい。加熱する手段は、通常は、熱の貯蔵及び移送のために熱質量のための格納容器または圧力流れ導管を備える。加熱装置は、任意の従来の加熱デバイス(複数可)、例えば、電気、ガスまたは液体燃料の燃焼または熱交換の型式(複数可)を備えてもよい。図示の実施形態では、第1炉22Aは反応ゾーンRZ2に含まれるか、またはそこに関連付けられ、第2炉22Bは反応ゾーンRZ3に含まれるか、またはそこに関連付けられる。以下に、より詳細に説明するように、他の加熱デバイスを反応器12内に設けてもよい。加熱する手段22は、例えば、化学炉もしくはガス炉(例えば、プロパン炉もしくは天然ガス炉)、または電気炉(例えば、赤外線炉、電気管状炉もしくは平床炉)、または電気ヒータ(複数可)、赤外線ヒータ(複数可)、ガスヒータ(複数可)、及び/もしくは加熱ランプ(複数可)(例えば、石英またはタングステン加熱ランプ)を含む任意の他の好都合な加熱デバイスを備えてもよい。電気式炉及び/またはその他の電気式加熱デバイスの使用が好ましい。それは、原子力発電処理からの廃熱利用よりも、再生可能エネルギー供給との統合を促進するからである。有利には、構成要素(特に炉及びリザーバ)の熱慣性により、反応器12は不安定なエネルギー供給(例えば、再生可能エネルギー供給)に対して高い寛容性を有することができる。加熱する手段22は、回路16のそれぞれの部分における流体の温度を制御及び/もしくは調整し、したがってそれぞれの反応ゾーン18における基準温度を制御及び/もしくは調整し、ならびに/または必要に応じて反応物質の温度を制御するように制御可能であることが好ましい。各炉または他の加熱装置は、以下の構成要素のいずれか1つまたは複数を備えてもよい。すなわち、それらはリモートアクチュエーター(複数可)及び/または質量流量コントローラ(複数可)または他の流体注入器(複数可)を備えた流量制御及び/または圧力調節のバルブ(複数可);フロー測定デバイス(複数可);圧力測定デバイス(複数可);温度測定デバイス(複数可);流体レベルならびに/または組成の測定デバイス(複数可)である。これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、反応器、またはより具体的には流体回路16を、例えば流体回路16内の流体の温度を制御するために、反応器に熱エネルギーを供給するように構成された外部の加熱する手段(図示せず)に結合してもよい。ここで、熱エネルギーは廃熱エネルギーであることが有利である。外部の加熱する手段は、例えば、セメント生産、ガラス生産、鉄鋼生産、及び/または任意の他の廃熱を生成する産業プロセスといった産業プロセスを実行するように構成された外部装置またはシステムを備えてもよい。熱エネルギー、好ましくは廃熱エネルギーを反応器/流体回路に移送し得るように、任意の適切な従来の結合手段(例えば、1つまたは複数の熱交換器)によって、及び/または任意の好都合な熱交換媒体(例えば、水蒸気)を介して、外部の加熱する手段を反応器、より具体的には流体回路16に結合してもよい。例えば、図示の実施形態では、1つまたは複数の外部の加熱する手段を、任意の1つまたは複数の炉22の位置で(炉と同様に、または炉の代わりに)流体回路16に結合してもよい。
【0079】
反応器12は、特に反応器12内に望まれる流体温度をエネルギー効率よく維持することに関して、反応器12の効率を改善する1つまたは複数の熱交換器26を任意選択で備える。熱交換器26を、しかるべく、気体対気体型、気体対液体型、または液体対液体型としてもよい。図示の実施形態では、熱交換器26Aは回路部分16Bに含まれており、反応ゾーンRZ2内の反応2によって生成された生成物、すなわち、二酸化硫黄、酸素及び水からの熱を使用して、反応ゾーンRZ2に送られる硫酸を加熱するように構成されている。図示の実施形態では、熱交換器26Bは回路部分16Cに含まれており、反応ゾーンRZ3内の反応3によって生成される生成物、すなわち水素、ヨウ素、及び存在する可能性がある任意の水またはSO2からの熱を使用して、反応ゾーンRZ3に送られるヨウ化水素を加熱するように構成されている。代替的な実施形態(図示せず)では、熱交換器を、反応2の反応物質と、反応2及び反応3のいずれかまたは両方からの反応生成物との間で熱交換を実行するように、及び/または反応3の反応物質と、反応2及び反応3のいずれかまたは両方からの反応生成物との間で熱交換を実行するように、アレンジしてもよい。
【0080】
好ましい実施形態では、反応器12は複数の制御ゾーン28を備える。各制御ゾーン28は、それぞれの位置で流体回路16に組み込まれる。反応器の動作の少なくとも1つの態様を測定するように、制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数に装備を施してもよい。各制御ゾーン28を、それが組み込まれるそれぞれの流体回路16内のそれぞれの位置で流体の1つまたは複数の特性またはパラメータを測定するように構成してもよい。以下に、より詳細に説明するように、各制御ゾーン28を、例えば、以下の流体特性、すなわち、流量、温度、化学組成、圧力のうちの任意の1つまたは複数を測定するように構成してもよく、この目的のために任意の適切な従来の測定デバイス(複数可)を備えてもよい。制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数を、流体回路16内の流体の特性、例えば、流体の流量、温度、圧力及び/もしくは化学組成のうちの1つもしくは複数を制御するように、ならびに/または流体(例えば、ベントもしくは反応器12の別の構成要素への)の流れを方向転換、誘導、もしくはそうでなければ制御するように構成してもよい。この目的を達成するために、各制御ゾーン28は、以下に、より詳細に説明するように、1つまたは複数の制御デバイス、例えば1つまたは複数のバルブ15、流体注入器または流体混合デバイスを備えてもよい。それぞれの制御デバイス(複数可)の任意の1つまたは複数をそれぞれの制御ゾーン28に配置してもよく、この場合、制御ゾーン28は、それ自体の場所で関連する流体特性を直接制御する。代替的に、それぞれの制御デバイス(複数可)の任意の1つまたは複数を、それぞれの制御ゾーン28から遠く離れて配置してもよく、この場合、制御ゾーン28は、制御ゾーン28自体から遠く離れた流体回路(複数可)内の1つまたは複数の位置で関連する流体特性を制御する。このような場合、制御ゾーン28は、制御デバイスの動作を制御するという点で制御デバイスを備えると言える。
【0081】
好ましい実施形態では、制御ゾーン28のうちの任意の1つまたは複数を、流体回路16への1つまたは複数の流体(適用可能な液体(複数可)及び/または気体(複数可))の導入を監視及び制御するように(例えば、反応物質のレベル及び/または濃度を制御するため)構成してもよい。この目的を達成するために、そのような各制御ゾーン28は、1つまたは複数の流体注入器及び/またはバルブ15を備えてもよい。各流体注入器は、任意の従来の形態をとることができ、通常は1つまたは複数の流体源、例えばキャニスタ、圧縮機及び/または1つもしくは複数のリザーバ24(通常は加圧流体源である)に接続された1つまたは複数のバルブ及び導管(複数可)を備える。各流体源は、用途、及びそれぞれの制御ゾーンによって実行されるタスクに応じて、単一の流体または2つもしくはそれより多くの流体の混合物を含み得る。各流体注入器は、1つまたは複数の流体入口(図示せず)を介してそれぞれの流体回路(複数可)に1つまたは複数の流体を選択可能に注入するように動作可能である。好都合には、流体入口(複数可)はそれぞれの制御ゾーン28に配置されるが、代替的または追加的に流体回路(複数可)内の他の場所に配置されてもよい。好都合には、各流体注入器はそれぞれの制御ゾーン28に配置されるが、代替的または追加的に流体回路(複数可)内の他の場所に配置されてもよい。任意選択で、流体(複数可)をリザーバ(複数可)に注入するために、1つまたは複数の流体注入器(図示せず)を設けてもよい。
【0082】
好ましい実施形態では、各反応ゾーン18は、少なくとも1つのそれぞれの制御ゾーン18を備えるか、またはそれに関連付けられており、前記または各々のそれぞれの制御ゾーン28は、それぞれの反応ゾーン18内の流体の1つまたは複数の特性を制御するように(好ましい実施形態では制御システム14によって)動作可能である。好ましくは、前記または各々のそれぞれの制御ゾーン28は、それぞれの反応ゾーン18内に含まれるか、またはその上流に(好ましくは、それぞれの反応ゾーン18のすぐ上流、例えば、それぞれの反応ゾーン28の流体入口に)配置される。各制御ゾーン28には、1つもしくは複数のセンサ/測定デバイス及び/または1つもしくは複数の制御デバイス(例えば、バルブ及び/または流体注入器)が装備されており、それにより、それぞれの反応ゾーン18内の流体の関連する特性(複数可)を監視及び/または制御することができる。
【0083】
例えば遠隔分析装置(複数可)及び/または制御システムを含む、システム10の他の構成要素と通信するために、各制御ゾーン28は、必要に応じて1つまたは複数の有線及び/または無線の通信デバイスを備える通信システムを備えてもよい。
【0084】
制御ゾーン28は通常、その構成要素の少なくとも一部が好都合に収容される筐体を備える。筐体は、例えば、回路16に組み込まれたチャンバ、または回路16が接続されるかまたは通過するチャンバを備えてもよく、または回路16を形成する1つまたは複数の導管の一部を備えてもよい。
【0085】
好ましい実施形態では、反応器12は、反応ゾーン18内で実施される反応によって生成される生成物を分離するための少なくとも1つの分離器34を備える。各分離器34は、関連する生成物を分離することができる方法、例えば凝縮、蒸留、または液体/液体の重力分離または重量分離に適合する任意の従来の形態をとってもよい。好ましくは、例えば重量分離装置または他の適切な分離デバイス/装置を備え得る第1分離器34Aが、反応ゾーンRZ1内の反応1によって生成されるヨウ化水素及び硫酸を分離するために、第1回路部分16Aに設けられる。反応器12は、分離されたヨウ化水素及び硫酸をそれぞれ第3回路部分16C及び第2回路部分16Bに送るように構成されている。好ましい実施形態では、反応器12は、分離された生成物を回路部分16C、16Bに送る前に、任意選択でバルブ15を介して、及び/または任意選択で1つまたは複数のポンプもしくは他の流体駆動デバイスによって支援されて、それらをそれぞれリザーバ24C、24Dに送るように構成される。好ましくは、例えば水凝縮器及び二酸化硫黄凝縮器または他の適切な分離デバイス(複数可)/装置を備え得る第2分離器34Bが、反応ゾーンRZ2内の反応2によって生成される水、二酸化硫黄及び酸素を分離するために、第2回路部分16Bに設けられる。反応器12は、分離された二酸化硫黄を、第1回路部分16Aの返送部16ARに送るように構成されており、第1回路部分16Aは二酸化硫黄をリザーバ24Aに送る。任意選択で、反応器12は二酸化硫黄を、リザーバ24Aに送るための気体の形態に変換するための蒸発器37を備える。任意選択で、ポンプまたは他の流体駆動デバイス(図示せず)は蒸発器37の上流または下流に配置されて、流れを第1回路部分16Aの返送部16ARへ強制的に向ける。反応2で生成される水と酸素を、任意の好都合な手段により副生成物として収集してもよい。好ましくは、例えばヨウ素凝縮器及び水凝縮器または他の適切な分離デバイス(複数可)/装置を備え得る第3分離器34Cが、反応ゾーンRZ3内の反応3によって生成される水素から、ヨウ素、及び存在する可能性がある任意の水を分離するために、第3回路部分16Cに設けられる。反応器12は、分離されたヨウ素を第1回路部分16Aの返送部16ARに送るように構成され、第1回路部分16Aはヨウ素をリザーバ24Bに送り、流体の流れは、任意選択でポンプまたは他の流体駆動デバイス(図示せず)によって駆動される。好ましくは、反応器12は、分離されたヨウ素を水(特に反応3によって生成される水)と混合するための混合器38を備えることで、反応器はヨウ素と水との混合物をリザーバ24Bに送る。反応3で生成される水素及び任意の水を、任意の好都合な手段で収集してもよい。反応器12内に設けられる任意の凝縮器(複数可)を任意選択で熱交換器として役立つように構成してもよく、そうすることで、例えば、リザーバ24A~24Dのいずれか1つまたは複数から出る比較的冷たい処理流体を凝縮器内の冷却流体として使用してもよい。
【0086】
システム10は、システム構成要素の動作を制御及び/または監視するための制御システム14を備える。このシステム構成要素は、必要に応じて、反応ゾーン18、制御ゾーン28、バルブ15、流体駆動装置20、炉22及び分離器34、蒸発器37、混合器38、ならびに任意の他の制御可能なデバイス(例えば、流体注入器、センサなど)を含む。制御システム14は通常、マスターコントローラ52を備え、このマスターコントローラ52は通常、1つまたは複数の適切にプログラムまたは構成されたハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアコントローラによって実施され、例えば、1つまたは複数の適切にプログラムまたは構成されたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または他のプロセッサ、例えば、ASIC、DSP、またはFPGAなどのICプロセッサ(図示せず)を備える。
【0087】
好ましい実施形態では、制御システム14は、反応1、2、及び3を実施するために、システム10の他の構成要素、例えば制御ゾーン28、バルブ15、流体駆動装置20及び/または炉22に制御情報を伝達する。処理設定を、処理設定インターフェースユニット51を介して受信してもよい。処理設定は、例えば、反応ゾーン18の温度(複数可)、流量(複数可)、及び/または圧力(複数可)、及び/または反応物質のレベル(及び/または濃度)に関連して、環境条件を指定してもよい。制御システム14はまた、システム10の他の構成要素、例えば、制御ゾーン28、センサ、測定デバイス、バルブ15、流体駆動装置20及び/または炉22からフィードバック情報を受信してもよく、それに応答して、制御システム14は、1つまたは複数の関連するシステム構成要素に制御情報を発行してもよい。この目的を達成するために、制御システム14は、制御ゾーン28によって提供される測定値または他の情報の分析を実行してもよい。この分析を、制御システム14によってリアルタイムで自動的に実行してもよい。代替的に、または追加して、システムの測定値及び性能の分析を、オペレータによってリアルタイムまたはオフラインで行ってもよい。オペレータは、インターフェースユニット51を介して制御命令を提供することによって、システム10の動作の調整を行ってもよい。
【0088】
安全コントローラ56を設けてもよく、これは、1つまたは複数の警報センサ(図示せず)、例えば、システム10に含まれ得るガスセンサもしくは漏れ検出器または緊急停止から警報信号を受信し、警報センサから受信した警報信号に基づいて警報情報をマスターコントローラ52に提供してもよい。
【0089】
好ましい実施形態では、処理設定に応じて、及び/またはシステム10の動作中に1つまたは複数のシステム構成要素から受信したフィードバック信号に応じて、制御システム14がシステム10、特に反応器12の挙動を数学的にモデル化することを可能にするため、制御システム14、より具体的にはマスターコントローラ52は、例えば、数学的モデルソフトウェアまたはファームウェア60をサポートすることにより、システムモデルロジックを実施するように構成される。
【0090】
任意選択で、制御システム14を、モデル予測制御(MPC)を実施するように構成する。MPCを使用して、制御システム14は、関連する処理設定点からの対応する偏差が実際に生じる前に、制御ゾーン28の制御作用を調整させる。この予測能力は、従来のフィードバック動作と組み合わせると、制御システム14が他の方法で得られるものよりも滑らかで、最適な制御作用値に近い調整を行うことを可能にする。システム10の制御モデルは、例として、Matlab、Simulink、またはLabviewで記述され、マスターコントローラ52によって実行され得る。有利には、MPCはMIMO(複数入力、複数出力)システムを扱うことができる。
【0091】
制御システム14は、利用可能なエネルギー、反応物質レベルなどを最大限に使用するためにシステム10の動作をリアルタイムで最適化するように構成された人工知能(AI)ベースのモデルコントローラ53を備えてもよい。
【0092】
有利には、反応器12の1つまたは複数の部分をモジュール式の様式に構成して、反応器12(またはその任意の部分)のモジュールの構築及び輸送を促進し、及び/または反応器12またはその任意の部分のモジュールの拡大縮小を促進してもよい。例えば、各反応ゾーン18をそれぞれの反応器モジュール内に設けてもよく、これをサブ反応器と呼んでもよい。有利には、各反応器モジュールは、それぞれの反応ゾーン18のモジュール式拡大縮小をサポートするように構成される。任意の所与の反応ゾーン18について、それぞれの反応(複数可)を実行するために、それぞれの種類の反応器モジュールの1つまたは複数のインスタンスを提供(及び必要に応じてモジュール式に相互接続)してもよい。使用される反応器モジュールのインスタンスの選択された数は、関連する用途の1つまたは複数の所望の動作パラメータ(例えば、エネルギー使用量、利用可能なエネルギー、反応物質の使用量、反応物質の利用可能性、反応生成物の生成速度などのいずれか1つまたは複数)に依存してもよい。結果として、反応器12、またはその任意のモジュール部分を、用途に適合させて拡大縮小させてもよい。したがって、好ましい実施形態では、反応器12は、製作/製造及び輸送を容易にするためにモジュールに組み込まれた1つまたは複数の化学サブ反応器を備える。さらに、反応器の出力は、個々の反応器のサイズによるのみではなく、各反応に提供されるモジュールの数に基づいてサイズ設定または拡大縮小してもよい。これにより、反応器のターンダウン比が拡張されるという利点が追加される。追加的に、必要に応じて、補助設備(例えば、バルブ(複数可)、ポンプ(複数可)、及び/またはヒータ(複数可))及び/または前処理及び後処理工程(例えば、分別蒸留)をモジュールに含めることができる。
【0093】
反応器12のサイズ、特にその電力消費の観点からのサイズは、用途に適合させて変更してもよい。有利には、反応器12のサイズ設定または拡大縮小は、反応器12または少なくともその部分(複数可)の好ましいモジュール性によってサポートされる。例えば、本発明を具体化する反応器は、必要に応じて、最大200kW、最大500kW、最大1MW、最大2MW、最大5MW、または最大10MW、または最大20MWの電力消費範囲で設計され得る。
【0094】
次に、好ましい実施形態についてさらに詳細に説明する。H2O&Iリザーバ24A及びSO2リザーバ24Bはそれぞれ、それぞれの反応物質(複数可)を貯蔵するための適切な容器または導管、例えば圧力容器を備える。好ましくは、SO2は気体の形態で貯蔵され、他方で、水及びヨウ素は液体混合物(通常は水中に懸濁したヨウ素を含む)として貯蔵される。通常、ヨウ素は通常使用される貯蔵温度では固体である。I2のH2Oに対する比は、好ましくは1:1であり、これは、好ましくは、外部供給源からリザーバへのH2Oの添加によって管理される。リザーバ24A、24Bは、回路部分16Aの再循環または返送部16ARから、及び通常は関連する反応物質(複数可)の外部供給源からも、関連する反応物質(複数可)を受け入れるための少なくとも1つの入口を備える。水、ヨウ素及び/または二酸化硫黄を、必要に応じて外部供給源から受け入れることができる。
【0095】
リザーバ24A、24Bの各々は、必要に応じて、適用可能な以下の構成要素のうちの任意の1つまたは複数をそれぞれ備えてもよい。すなわち、それらは、加熱デバイス、ポンプまたは他流体駆動デバイス、混合デバイス、圧力測定デバイス(複数可)、温度測定デバイス(複数可)、遮断バルブ(複数可)、圧力逃がしバルブ(複数可)、レベル測定デバイス(複数可)である。それらのそれぞれは制御システム14によって制御され、及び/または制御システム14に情報を提供して、例えば、それぞれの反応物質を望まれる条件で確実に貯蔵し、ならびに/またはリザーバ24A、24Bへの、及び/もしくはリザーバ24A、24Bからの反応物質の流れを制御してもよい。通常は、流体レベル、圧力及び/または温度の表示は、リザーバ24A、24Bによって制御システム14に提供される。リザーバ24A、24Bは、反応ゾーン1で反応1を実施するために必要な反応物質を貯蔵する。有利には、リザーバ24A、24Bは、反応ゾーン及び/または反応器内の他の場所での可変の処理速度に対応できるようにするバッファを提供する。
【0096】
第1制御ゾーンCZ1は、リザーバ24A、24Bの下流に設けられ、反応ゾーンRZ1(ブンゼン反応器とも呼ばれ得る)へのそれぞれの反応物質の流れを制御するように構成される。制御ゾーンCZ1は、好ましくは、反応器12を通して流体を駆動するための流体圧力を発生させる手段を備える。例えば、圧縮機20Aを、気体反応物質(SO2)をリザーバ24Aから反応ゾーンRZ1に駆動するようにアレンジしてもよく、他方で、ポンプ20Bを、液体反応物質(H2O及びI)をリザーバ24Bから反応ゾーンRZ1に駆動するようにアレンジしてもよい。バルブ15を、リザーバ24A、24Bから制御ゾーンCZ1への関連する反応物質の流れを制御するために設けてもよい。制御ゾーンCZ1は、必要に応じて、流量、圧力、及び/または温度を示す情報を制御システム14に送信してもよい。制御ゾーンCZ1は、必要に応じてポンプまたは圧縮機の動作速度(複数可)、及び/またはバルブ15の動作を制御するために、制御システム14から制御信号を受信してもよい。また、制御ゾーンCZ1は、以下の構成要素のいずれか1つまたは複数を備えてもよい。すなわち、それらはリモートアクチュエーター(複数可)及び/または質量流量コントローラ(複数可)または他の流体注入器(複数可)を備えた流量制御及び/または圧力調節のバルブ(複数可);フロー測定デバイス(複数可);圧力測定デバイス(複数可);温度測定デバイス(複数可)である。これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0097】
第1反応ゾーンRZ1は、制御ゾーンCZ1の下流に配置され、第2制御ゾーンCZ2を備えると言える。反応ゾーンRZ1は、反応物質を加熱及び混合して、好ましい実施形態では液相反応であるブンゼン反応(反応1)を促進するように構成されている。RZ1は容器または導管、通常は圧力容器を備え、そこで反応1が実施される。RZ1は、少なくとも1つの加熱デバイスを備えることが好ましい。RZ1は、任意選択で撹拌デバイス及び/または混合デバイスを備える。RZ1は通常、1つまたは複数の圧力測定デバイス及び/または1つまたは複数の温度測定デバイスを備える。これらのデバイスは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。使用中、反応ゾーンRZ1では、容器内で混合された反応物質は反応1に望まれる温度(通常は120℃)に加熱される。例えば、SO2を容器に送って泡立てながら、液体反応物質を容器内で加熱してもよい。送られる前にSO2は十分に加熱されているという条件で、ブンゼン反応は自己持続的な発熱反応になる。反応ゾーンRZ1は、必要に応じて(加熱デバイス(複数可)を介して)反応温度及び/または反応物質温度を制御するために制御システム14から制御信号を受信する。反応ゾーンRZ1は、必要に応じて、温度及び/または圧力の測定信号を制御システム14に送信する。反応1が完了すると、反応生成物(ヨウ化水素及び硫酸)は、通常、制御システム14によって制御され得るバルブ15を介して、第1分離器34Aに送られる。
【0098】
第1分離器34Aは、反応ゾーンRZ1の下流に配置され、反応ゾーンRZ1から反応生成物を受け入れ、それらを分離するように構成されている。ヨウ化水素及び硫酸は、通常は液体の形態で生成され、任意の従来の液体を分離する手段を使用して分離してもよい。好ましい実施形態では、第1分離器34Aは重量分離器を備えるが、他の任意の適切な従来の分離装置、例えば蒸留装置を使用してもよい。第1分離器34Aは、容器(例えば圧力容器)及び分離手段(例えば重量分離装置)を備えてもよい。第1分離器34Aはまた、流量制御バルブ(複数可)及び/または遮断バルブ(複数可)、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。好ましい分離器34Aは、RZ1からの反応生成物を沈降させ、それらの異なる密度によりそれらを分離できるように構成される。分離器34Aは、反応物質/未反応水の比を示す信号を制御システム14に送信してもよい。反応物質の比を、反応ゾーンRZ1の性能の指標として使用してもよい。不均衡がある場合、または余剰の反応物質が残っている場合は、これは、反応1の実施に修正が必要な可能性があることを示している。各反応物質の比及び/またはレベルは、分離器からリザーバ24A及び24Bへの反応物質の流れを促進することもできる。
【0099】
有利には、分離器34Aは、反応生成物を反応ゾーンRZ1から別個のバッファリザーバ、すなわち図示の例ではリザーバ24C、24Dに移送する手段として役立つ。反応生成物を、通常は制御システム14によって制御され得るそれぞれのバルブを介して、分離器24Aからそれぞれのリザーバ24C、24Dに別個に送ってもよい。任意選択で、反応ゾーンRZ1からリザーバ24C、24Dへの反応生成物の移送を支援するために、1つまたは複数のポンプまたは他の流体駆動デバイス(図示せず)を設けてもよい。
【0100】
HIリザーバ24C及びH2SO4リザーバ24Dは各々、通常は液体の形態で貯蔵されるそれぞれの反応生成物(複数可)を貯蔵するための適切な容器、例えば圧力容器を備える。リザーバ24C、24Dは、分離器24Aから関連する反応生成物を受け入れるための少なくとも1つの入口を備える。リザーバ24C、24Dの各々は、必要に応じて、適用可能な以下の構成要素のうちの任意の1つまたは複数をそれぞれ備えてもよい。すなわち、それらは、加熱デバイス、ポンプまたは他流体駆動デバイス、圧力測定デバイス(複数可)、温度測定デバイス(複数可)、遮断バルブ(複数可)、流量制御バルブ(複数可)、圧力逃がしバルブ(複数可)、レベル測定デバイス(複数可)である。それらのそれぞれは制御システム14によって制御され、及び/または制御システム14に情報を提供して、例えば、それぞれの反応生成物を望まれる条件で確実に貯蔵し、ならびに/またはリザーバ24C、24Dへの、及び/もしくはリザーバ24C、24Dからの反応生成物の流れを制御してもよい。通常は、流体レベル、圧力、流量及び/または温度の表示は、リザーバ24C、24Dによって制御システム14に提供される。通常、リザーバ24C、24Dは、制御システム14から制御信号を受信して、反応ゾーンRZ2及びRZ3への反応物質の流れを制御するために、適用可能な内部圧力、制御バルブ、及びポンプを調節する。
【0101】
リザーバ24C、24Dは、不活性ガスを使用してリザーバを加圧し得るアキュムレータ型のリザーバであってもよい。アキュムレータ型の動作により、反応ゾーンRZ1からの反応物質の一定供給を必要とせずに、反応2及び3を進行させることができる。
【0102】
リザーバ24Cは、反応ゾーン3内で反応3を実施するために必要な反応物質を貯蔵する。リザーバ24Dは、反応ゾーン2内で反応2を実施するために必要な反応物質を貯蔵する。有利には、リザーバ24C、24Dは、反応ゾーン及び/または対応する反応器内の他の場所における可変処理速度を可能にするバッファを提供する。リザーバは、余剰の電気エネルギーを吸収するためのエネルギー貯蔵庫として、また液体を蒸発させて反応物質の流れを処理の次の段階に駆動するためのボイラーとして有利に機能する。
【0103】
リザーバ24Cは、ヨウ化水素を反応ゾーンRZ3に送るために第3回路部分16Cに接続された出口を有する。リザーバ24Dは、ヨウ化水素を反応ゾーンRZ2に送るために第2回路部分16Bに接続された出口を有する。
【0104】
反応ゾーンRZ2は、反応2が起こる反応容器または導管を備える。反応2は、硫酸の熱的分解または解離を備えると言える。好ましい実施形態では、容器は、液体硫酸から水蒸気ならびに気体状SO2/SO3及びO2への相変化を支援する。任意選択で、SO3からSO2への還元の活性化エネルギーを低減するために、適切な触媒を容器内に供給してもよい。反応ゾーンRZ2は、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)、フロー測定デバイス(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0105】
炉22Aは、硫酸を、SO3、H2O、及びO2への解離を開始するのに十分な温度(通常は>340℃)まで加熱するように動作可能である。また、SO3からSO2への変換を可能にするために、炉22Aを使用して、解離による蒸気相反応生成物を加熱(通常>850℃)してもよい。好ましい実施形態では、炉22Aは反応ゾーンRZ2の一部であり、制御ゾーンCZ3を備えると言える。任意選択の触媒を使用して、必要なピーク温度を下げてもよい。炉22Aの動作は、任意選択で、制御システム14によって反応ゾーンRZ2から受信される温度測定値に応じて、制御システム14によって制御される。
【0106】
好ましい実施形態では、炉22Aは高熱慣性電気炉を備える。より大まかには、電気式炉が好ましい。代替的に、燃焼ベースのヒータまたは他の加熱デバイス(複数可)を使用して、RZ2に必要な加熱を実行してもよい。
【0107】
反応ゾーンRZ2からの反応生成物(水蒸気、SO2及びO2)は、分離のために反応容器から分離器34Bに移送される。好ましい実施形態では、これらの反応生成物(これらは比較的熱い)は熱交換器26Aに導かれ、リザーバ24Dから供給される硫酸反応物質(これは比較的冷たい)も、反応ゾーンRZ2に送られる前に熱交換器26Bを通過する。反応ゾーンRZ2からの比較的熱い反応生成物(水蒸気、SO2及びO2)は、硫酸反応物質が加熱される間に熱交換器26によって冷却され、それによって反応器12のエネルギー効率が改善される。このような様式で反応ゾーンRZ2に入る前に反応物質の温度を上昇させると、そうでなければ無駄になるエネルギーが使用され、反応ゾーンRZ2のエネルギー入力の要件が低減される。さらに、熱交換器26Aは、硫酸の相変化(液体から気体へ)を開始し、及び/または反応2を開始し得るので、これによっても、反応ゾーンRZ2のエネルギー入力の要件が低減される。熱交換器26Aは、気体-気体または気体-液体の熱交換デバイス(複数可)の任意の適切な構成を備えてもよい。熱交換器26Aは、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0108】
分離器34Bは、反応ゾーンRZ2(及び熱交換器26A、ただし存在する場合)の下流に配置され、反応ゾーンRZ2から反応生成物を受け入れ、それらを分離するか、または少なくともSO2を分離するように構成される。水蒸気、SO2、及びO2は、通常、気体または蒸気の形態で受け入れられ、従来の任意のガス/蒸気の分離する手段を使用して分離されてもよい。好ましい実施形態では、第2分離器34Bは1つまたは複数の凝縮器を備える。図示の例では、分離器34Bは、水蒸気を凝縮させるための水凝縮器を備える。次いで、要望どおりに、凝縮水を貯蔵または排出してもよい。分離器34Bは、SO2を凝縮させるための二酸化硫黄凝縮器を備えていてもよい。SO2及びO2を分離するための代替的手段を使用してもよい。任意選択で、SO2とO2は分離されない(両方がリザーバ(複数可)に戻されてもよい)。好ましくは、凝縮したSO2は蒸発器に供給されて、SO2を貯蔵のために気体または蒸気の状態に戻す。残りの酸素を、要望どおりに放出または貯蔵してもよい。凝縮器(複数可)用の冷却剤を、外部供給源から、または内部供給源から、例えばリザーバ24B、24C、24Dのうちの1つまたは複数から供給してもよい。
【0109】
制御ゾーンCZ4を備えるとも言い得る分離器34Bは、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)、フロー測定デバイス(複数可)、レベル測定デバイス(複数可)、流体駆動デバイス(複数可)、流量制御バルブ(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。使用中、分離器34Bは、熱交換器を出た後の反応生成物を冷却して凝縮させる。任意選択で、冷たい反応生成物を凝縮器冷却流体として使用してもよい。代替的にまたは追加的に、特に凝縮温度が低いSO2を凝縮させるために、外部供給源から冷却剤を供給することもできる。分離器34Bは、温度、圧力、及び/または凝縮器の流体レベル(複数可)を示す信号を制御システム14に送信してもよく、制御システム14から制御信号を受信して、冷却剤の流れ及び/または温度を調節し、及び凝縮器から出る流体の流れを調節してもよい。凝縮器からの流体の流れを制御するために、必要に応じてバルブを設けてもよい。分離器34Bは、分離されたSO2をリザーバ24Aに再循環させるために、SO2を第1回路部分16Aの返送部16ARに送るための出口を有する。好ましい実施形態では、分離されたSO2が蒸発器から排出されることで、それは貯蔵のために気体または蒸気の形態でリザーバ24Aに戻される。
【0110】
反応ゾーンRZ3は、反応3が起こる反応容器または導管を備える。反応3は、ヨウ化水素の熱的分解または解離を備えると言える。好ましい実施形態では、容器は液体ヨウ化水素の蒸気への相変化を支援する。反応ゾーンRZ3は、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)、フロー測定デバイス(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0111】
炉22Bは、ヨウ化水素を、蒸気への相変化を生じさせるのに十分な温度(通常は>130℃)まで加熱するように動作可能である。炉22Bはさらに、蒸気相HI水溶液を加熱してHIをH2及びI2に解離させるように動作する(通常は>450℃)。HIは通常、100%濃縮されていないため、通常は水蒸気が存在する。好ましい実施形態では、炉22Bは反応ゾーンRZ3の一部であり、制御ゾーンCZ5を備えると言える。炉22Bの動作は、任意選択で、制御システム14によって反応ゾーンRZ3から受信される温度測定値に応じて、制御システム14によって制御される。
【0112】
好ましい実施形態では、炉22Bは高熱慣性電気炉を備える。より大まかには、電気式炉が好ましい。代替的に、燃焼ベースのヒータまたは他の加熱デバイス(複数可)を使用して、RZ3に必要な加熱を実行してもよい。
【0113】
反応ゾーンRZ3からの反応生成物(水蒸気、ヨウ素及びH2)は、分離のために反応容器から分離器34Cに移送される。好ましい実施形態では、これらの反応生成物(これらは比較的熱い)は熱交換器26Bに導かれ、リザーバ24Cから供給されるヨウ化水素反応物質(これは比較的冷たい)も、反応ゾーンRZ3に送られる前に熱交換器26Bを通過する。反応ゾーンRZ3からの比較的熱い反応生成物は、ヨウ化水素反応物質が加熱される間に熱交換器26Bによって冷却され、それによって反応器12のエネルギー効率が改善される。このような様式で反応ゾーンRZ3に入る前に反応物質の温度を上昇させると、そうでなければ無駄になるエネルギーが使用され、反応ゾーンRZ3のエネルギー入力の要件が低減される。さらに、熱交換器26Bは、ヨウ化水素の相変化(液体から気体へ)を開始し、及び/または反応3を開始し得るので、これによっても、反応ゾーンRZ3のエネルギー入力の要件が低減される。熱交換器26Bは、気体-気体、液体-液体、気体-液体の熱交換デバイス(複数可)の任意の適切な構成を備えてもよい。熱交換器26Bは、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。
【0114】
分離器34Bは、反応ゾーンRZ3(及び熱交換器26B、ただし存在する場合)の下流に配置され、反応ゾーンRZ3から反応生成物を受け入れ、それらを分離するように構成される。水蒸気、ヨウ素、及びH2は、通常、気体または蒸気の形態で受け入れられ、従来の任意のガス/蒸気の分離する手段を使用して分離されてもよい。好ましい実施形態では、第2分離器34Cは1つまたは複数の凝縮器を備える。図示の例では、分離器34Bは、ヨウ素を凝縮させるためのヨウ素凝縮器を備える。分離器34Cは、水蒸気を凝縮させるための水凝縮器も備える。次いで、要望どおりに、凝縮水の少なくとも一部を、貯蔵、ポンプ揚液、及び/または排出してもよい。凝縮器(複数可)用の冷却剤を、外部供給源から、または内部供給源から、例えばリザーバ24B、24C、24Dのうちの1つまたは複数から供給してもよい。凝縮したヨウ素は、第1回路部分16Aの返送部16ARによってリザーバ24Bに戻される、または再循環される。好ましくは、ヨウ素は、リザーバ24Bに戻される前に水と混合される。これは、凝縮したヨウ素及び凝縮水の少なくとも一部を混合器38に導くことによって達成され得る。混合器38は、水及びヨウ素の混合物をリザーバ24Bに戻すための返送部16ARに接続された出口を有してもよい。分離されたH2ガスを、要望どおりに放出及び/または貯蔵してもよい。
【0115】
制御ゾーンCZ6を備えるとも言い得る分離器34Cは、通常、温度測定デバイス(複数可)、圧力測定デバイス(複数可)、フロー測定デバイス(複数可)、レベル測定デバイス(複数可)、流体駆動デバイス(複数可)、流量制御バルブ(複数可)のいずれか1つまたは複数を備えてもよく、これらのそれぞれは、制御システム14によって制御され、及び/または必要に応じて制御システム14に情報を提供してもよい。使用中、分離器34Cは、熱交換器を出た後の反応生成物を冷却して凝縮させる。任意選択で、冷たい反応生成物を凝縮器冷却流体として使用してもよい。代替的または追加的に、外部供給源から冷却剤を供給することもできる。分離器34Cは、温度、圧力、及び/または凝縮器の流体レベル(複数可)を示す信号を制御システム14に送信してもよく、制御システム14から制御信号を受信して、冷却剤の流れ及び/または温度を調節し、及び凝縮器から出る流体の流れを調節してもよい。凝縮器からの流体の流れを制御するために、必要に応じてバルブを設けてもよい。分離器34Cは、分離されたヨウ素をリザーバ24Bに再循環させるために、ヨウ素を第1回路部分16Aの返送部16ARに送るための出口を有する。好ましい実施形態では、分離されたヨウ素が混合器38から排出されることで、それは水と混合されてリザーバ24Bに戻される。通常、ヨウ素は適度な高温(>100℃)で液相から急速に凝固し、ヨウ素を液体の形態に維持するにはエネルギーを大量に消費する可能性があるため、キャリアー(特に水)が好まれる。代替的な実施形態では、ヨウ素を液体の形態に維持するように反応器12を構成してもよく、この場合、ヨウ素を水(または他のキャリアー)と混合する必要がなく、任意選択で水とは別個のリザーバに貯蔵してもよい。
【0116】
好ましい実施形態では、第2回路部分16B及び第3回路部分16Cの各々がそれ自体の熱交換器26A、26Bを利用して、可変電源が使用される場合の不均一な反応速度に対するより大きな柔軟性を可能にすることに注意するべきである。3つの反応が単一の再循環反応器で実行されるが、必要な場合にはいくらか独立して動作することができる。
【0117】
本発明は、本明細書に記載された実施形態(複数可)に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく補正または修正され得る。
【国際調査報告】